光伝送システムおよび光伝送方法
【課題】1シンボル時間で多ビットの情報を伝送可能な光信号を送受信する際に、該光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信データの誤りを確実に補償若しくは訂正して良好な伝送特性を実現する。
【解決手段】本光伝送システムは、光送信器10において、予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成し、該各送信信号に従って光を変調して生成した光信号を伝送路20に送信する際に、該送信光の状態に変化を与えることで、伝送路の伝播時に発生する各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるようにする。光受信器30においては、送信時に与えられた状態の変化に対応させて光信号を受信し、該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する。
【解決手段】本光伝送システムは、光送信器10において、予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成し、該各送信信号に従って光を変調して生成した光信号を伝送路20に送信する際に、該送信光の状態に変化を与えることで、伝送路の伝播時に発生する各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるようにする。光受信器30においては、送信時に与えられた状態の変化に対応させて光信号を受信し、該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1符号(1シンボル時間)に複数のビットの情報を伝達可能な光信号を用いた光伝送システムおよび光伝送方法に関し、特に、光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信信号の誤りを補償若しくは訂正して良好な伝送特性を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及に伴い、40Gbit/sec(ギガビット毎秒)以上の伝送容量を有する基幹系光通信システムへの要求が高まっている。その実現手段として、10Gbit/sec以下の従来の光通信システムで適用されてきたNRZ(Non Return to Zero)変調方式と比べて、周波数利用効率、光信号対雑音比(Optical Signal-to-Noise Ratio:OSNR)耐力および非線形性耐力などが優れている様々な光変調方式の採用が模索されている。このような流れの中で、1シンボル時間で多ビットの情報を伝送する方式が注目されている。例えば、4相位相変調(Quadrature Phase Shift Keying:QPSK)と偏波多重とを組み合わせた40Gbit/secや100Gbit/secの光伝送システムが活発に議論されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、多値変調方式、偏波多重伝送方式またはデジタルコヒーレント受信方式を用いた光伝送システムでは、光送信器の動作点の変化、局部発振光の初期位相、信号光および局部発振光の位相変動などの要因により、送信した信号の論理が受信時にビット毎で反転する場合がある。また、上記要因に加えて受信時の偏波の入れ替わりにより、受信ビットの順番が入れ替わる、ビットスワップと呼ばれる現象が発生する可能性もある。
【0004】
例えば、図17に示すようなQPSKおよび偏波多重を組み合わせたデジタルコヒーレント受信方式の光伝送システムにおいては、図18に示すようなパターンで論理反転およびビットスワップが動的に発生する可能性が考えられる。具体的に説明すると、この光伝送システムでは、光送信器1100の光源1102で発生した光が偏波分離器1103で直交する偏波成分に分離され、X偏波およびY偏波の各光が更に2分岐されて位相変調器1104にそれぞれ与えられる。各位相変調器1104に入力された光は、送信信号処理回路1101で処理された送信信号に従って位相変調され、さらに各偏波に対応した1組の光のうちの一方の位相が位相シフタ1105でπ/2シフトされた後、偏波合成器1106で各々の光が合成される。これにより4ビット符号化された光信号が光送信器1100から伝送路1200を介して光受信器1300まで伝送される。光受信器1300では、伝送路1200からの光信号と局部発振光源1301から出力される局部発振光とが偏波ダイバシティ90°ハイブリッド回路1302に与えられ、該回路1302の出力光が光検出器1303で電気信号に変換される。そして、当該受信信号がADコンバータ1304でAD変換された後に、デジタル信号処理回路1305および受信信号処理回路1306に与えられることで、4ビット符号復調処理が行われる。これにより、1シンボル時間で4ビット(16値)の情報が光送信器1100および光受信器1300の間で伝送される。なお、図17では、光送信器1100で符号化処理される4ビットの送信データをA,B,C,Dとし、光受信器1300で復調処理された4ビットの受信データをA’,B’,C’,D’としている。
【0005】
上記のような光伝送システムでは、光送信器1100内の位相変調器1104のバイアス点、偏波分離器1103と偏波合成器1106の間における光路長差、伝送路1200での偏波モード分散(Polarization Mode Dispersion:PMD)、非線形位相雑音、光受信器1300内での偏波間光路長差、または、局部発振光源1301の位相変動が要因となって、図18の上段に示すような16パターンの論理反転が動的に発生する可能性がある。また、局部発振光源1301の位相変動、受信時の偏波チャネル(X偏波、Y偏波)の入れ替わり、または、非線形位相雑音が要因となって、図18の下段に示すような8パターンのビットスワップが動的に発生する可能性がある。
【0006】
なお、ここでは特に図示しないが、差動4相位相変調(Differential Quadrature Phase Shift Keying:DQPSK)および偏波多重を組み合わせた、デジタルコヒーレント受信方式または直接検波方式の光伝送システムにおいては、差動受信が行われることにより動的な論理反転は発生せず、論理反転のパターン数は減少する。また、送信側の位相変調器のバイアス、または、偏波チャネルの入れ替わりが要因となって、上記図18の下段に示した場合と同様の8パターンのビットスワップが、動的ではないが発生する可能性がある。
【0007】
上記のような論理反転およびビットスワップに対して受信データのビット誤りを回避するためには、光受信器において高速な論理反転制御および多重化タイミング(ビットスワップ)制御を行う必要がある。当該制御に関する従来技術の一例としては、直接検波を用いたDQPSK方式について、フレーム同期検出を利用して論理反転およびビットスワップの制御を行う方法などが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−270909号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.Laperle et al., "Wavelength Division Multiplexing (WDM) and Polarization Mode Dispersion (PMD) Performance of a Coherent 40Gbit/s Dual-Polarization Quadrature Phase Shift Keying (DP-QPSK) Transceiver", OFC'07, PDP16, 2007.
【非特許文献2】H. Masuda et al., "20.4-Tb/s (204 x 111 Gb/s) Transmission over 240 km using Bandwidth-Maximized Hybrid Raman/EDFAs", OFC'07, PDP20, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようなフレーム同期検出を利用した従来の制御技術は、1シンボル時間で2ビット(4値)の情報を伝送する場合に発生する論理反転およびビットスワップの制御には有効であるが、前述した4相位相変調(QPSK)と偏波多重とを組み合わせた光伝送システムのように、1シンボル時間で2ビットより多い情報を伝送する場合に発生する論理反転やビットスワップには対応できない。また、直接検波した受信信号のフレーム同期可否により論理反転を検出する方法であるため、コヒーレント受信方式を用いた光伝送システムへの適用も難しいという課題がある。
【0011】
また、上記のフレーム同期検出を利用した従来の制御技術を適用するか否かにかかわらず、多値変調方式を用いるなどして1シンボル時間で多ビットの情報を伝送する場合、伝送チャネル間で特性のばらつきが発生する可能性があり、特に、偏波多重方式を組み合わせて伝送容量の拡大を図った場合には、X偏波で伝送されるチャネルとY偏波で伝送されるチャネルとの特性のばらつきがより大きくなることが懸念される。このようなチャネル間の特性ばらつきは、例えば、公知の誤り訂正符号を用いて受信信号の誤り訂正処理を行う場合に、誤り訂正性能を劣化させる原因になるという問題がある。すなわち、誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理はランダム誤りを想定した技術であるため、チャネル間の特性ばらつきは受信信号の誤りのランダム性を低下させることになり、誤り訂正性能の劣化を招いてしまうのである。
【0012】
図19は、チャネル間の特性ばらつきの有無に応じて、誤り訂正前後のビットエラーレート(BER)特性を表した一例である。ただし、横軸は、誤り訂正前の全チャネルについてのBERの平均値(InputBER)を表し、縦軸は、誤り訂正後の全チャネルについてのBERの平均値(OutputBER)を表している。図19より、受信信号の各チャネル間に特性のばらつきがあってランダムエラーにならない場合、InputBERに対するOutputBERの改善量、すなわち、コーディングゲイン(coding gain)の劣化が生じていることが分かる。
【0013】
ここで、上記のようなチャネル間の特性ばらつきが発生する原因について詳しく説明する。
例えば偏波多重方式でチャネル間の特性ばらつきが発生する最大の原因は、伝送路および光デバイスの偏波依存性損失(Polarization Dependent Loss:PDL)である。図20の上段に例示するような光伝送システムにおいて、図20の中段に示すようなPDLがある場合、各中継スパンの光増幅器2001の出力では、伝送路2002に送出する光信号のパワーが一定に制御されるが、伝送路2002のPDLにより、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間にパワー差が発生し、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの平均パワー(Ave)は各々の中継スパンで一定になるものの、X偏波チャネルおよびY偏波チャネル間のパワー差は中継スパン数が増えるのに伴って徐々に大きくなっていく。このため、図20の下段に示すように、X偏波チャネルおよびY偏波チャネル間のOSNRの差も徐々に増大し、その結果、異なる偏波チャネル間で特性のばらつきが発生する。
【0014】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な光信号を送受信する際に、該光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信データの誤りを確実に補償若しくは訂正して、良好な伝送特性を実現することのできる光伝送システムおよび光伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明による光伝送システムの一態様は、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信する光送信器と、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光受信器と、を備えた光伝送システムであって、前記光送信器は、予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する送信信号処理回路と、光源と、前記送信信号処理回路から出力される各送信信号に従って、前記光源からの出力光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する光変調部と、前記光変調部で生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える特性平均化部と、を備える。また、前記光受信器は、前記特性平均化部で与えられる光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う構成とする。
【0016】
また、本発明による光伝送方法の一態様は、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信し、該伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する過程と、該生成された各送信信号に従って光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する過程と、該生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える過程と、該光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う過程と、を含む方法である。
【0017】
上記のような光伝送システムおよび光伝送方法では、複数の伝送チャネルが多重化された光信号を伝送路に送信する際に該送信光の状態に変化を与えることで、伝送路の伝播時に発生する各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるようにし、受信側では、送信時に与えられた状態の変化に対応させて光信号が受信され、誤りのランダム性が保たれた受信信号についての誤り訂正処理等が行われる。
【発明の効果】
【0018】
上記のように本光伝送システムおよび本光伝送方法によれば、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な光信号を伝送路に送信する際に、送信光の状態に変化を与えて各伝送チャネル間の特性のばらつきを平均化することによって、光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信データの誤りを確実に補償若しくは訂正することができるようになるため、良好な伝送特性を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に関連する光伝送システムの一例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光伝送システムにおけるビットスワップ論理反転制御部での処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図1の光伝送システムにおけるビットスワップ論理反転制御部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3のビットスワップ検出回路の具体例を示す回路図である。
【図5】図3のビットスワップ補償回路の具体例を示す回路図である。
【図6】図3の論理反転検出回路および論理反転補償回路の具体例を示す回路図である。
【図7】本発明に関連する光伝送システムの他の例の構成を示すブロック図である。
【図8】図7の光伝送システムにおける送信データ構造の一例を示す図である。
【図9】本発明による光伝送システムの第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図10】上記第1実施形態におけるデータ割当部の構成例を示す図である。
【図11】上記第1実施形態における送信信号処理回路の動作を説明する図である。
【図12】上記第1実施形態における誤り訂正デコーディング部の動作を説明する図である。
【図13】本発明による光伝送システムの第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図14】上記第2実施形態におけるプリコーディング部の構成例を示す図である。
【図15】上記第2実施形態における偏波間差動受信部の構成例を示す図である。
【図16】本発明による光伝送システムの第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図17】従来の光伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図18】図17のシステムで発生する論理反転およびビットスワップのパターンを示す図である。
【図19】従来の光伝送システムにおけるチャネル間の特性ばらつきに起因した誤り訂正性能の劣化の様子を説明するための図である。
【図20】偏波多重方式においてチャネル間の特性ばらつきが発生する原因を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
図1は、本発明に関連する光伝送システムの一例の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示す光伝送システムは、例えば、多値変調方式と偏波多重方式を組み合わせることにより、1シンボル時間で4ビット(16値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、上述したような論理反転およびビットスワップの発生を、送信側で付与した所定の検出用ビットを用いて受信側にて検出し、該検出結果に応じて論理反転およびビットスワップの補償を行うようにしたものである。図1の構成例では、送信信号処理回路11、光源(LD)12および光変調部13を備えた光送信器10と、光受信部31および受信信号処理回路32を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されており、送信信号処理回路11が上記検出用ビットを送信信号に付与する機能を具備し、受信信号処理回路32が受信信号に含まれる検出用ビットを用いて論理反転およびビットスワップを検出し補償する機能を具備している。
【0022】
具体的に、光送信器10内の送信信号処理回路11は、図1の上部に拡大して例示しているように、パラレル変換部111、フレームエンコーディング部112、誤り訂正エンコーディング部113、スクランブル部114、検出用ビット付与部115およびN:M多重部116を有している。
【0023】
パラレル変換部111は、外部等から入力される送信情報を示すシリアルデータをNビットのパラレルデータに変換して出力する。フレームエンコーディング部112は、パラレル変換部111から出力される各データ列を公知のフレームフォーマットに従ってエンコーディングする。誤り訂正エンコーディング部113は、フレームエンコーディングされた各信号に対して所要の誤り訂正符号を付加する。スクランブル部114は、誤り訂正エンコーディング部113から出力される各信号を、ユーザに固有に割り当てられるスクランブリングコードでスクランブルして出力する。
【0024】
検出用ビット付与部115は、スクランブル部114からの各出力信号に対して、1シンボル時間に伝送するビット数に応じて設定した特定のパターンを有する検出用ビットを付与する。なお、上記検出用ビットのパターンについては後で詳しく説明する。
【0025】
N:M多重部116は、検出用ビット付与部115から出力されるNビットのパラレル信号を多重化することにより、Mチャネル(M<N)の送信信号を生成する。例えば、40Gbit/sec高速光通信用インターフェース回路の標準化規格となるOIF(Optical Internetworking Forum)で規定されているSFI(Serdes Framer Interface)−5準拠のインターフェースの場合には、N=16,M=4とすればよい。ただし、本発明におけるM,Nの値は上記の具体例に限定されるものではない。N:M多重部116で多重化された各送信信号は、光変調部13に与えられる。
【0026】
なお、上記の送信信号処理回路11の構成例では、検出用ビット付与部115がN:M多重部116の前段に設けられているが、N:M多重部116の後段に検出用ビット付与部115を配置するようにしてもよい。
【0027】
光変調部13は、光源12から出力される光を偏波分離した後に、送信信号処理回路11からの各送信信号に従って変調して偏波合成することにより、多値変調と偏波多重を組み合わせた光信号を生成し、該光信号を伝送路20に送信する。この光変調部13の具体例としては、QPSKおよび偏波多重を組み合わせた光信号を伝送路20に送信する場合を想定すると、上述の図17に示した光送信器1100内の偏波分離器1103、位相変調器1104、位相シフタ1105および偏波合成器1106と同様の構成を用いることができる。ただし、光変調部13の構成は、上記の具体例に限定されるものではなく、送信する光信号の方式に対応した公知の構成を適用することが可能である。
【0028】
光受信器30の光受信部31は、伝送路20を伝播した光信号を受信して電気信号に変換するものであり、ここではコヒーレント受信方式を適用したもの、または、直接検波方式を適用したもののいずれであってもよい。
【0029】
受信信号処理回路32は、例えば図1の下部に拡大して示しているように、M:N分離部321、ビットスワップ論理反転制御部322、デスクランブル部323、誤り訂正デコーディング部324、フレームデコーディング部325およびシリアル変換部326を有している。
【0030】
M:N分離部321は、光受信部31から出力されるMチャネル(図1の例ではA〜Dの4チャネル)の受信信号を、Nビット(例えば、前述したSFI−5準拠の場合にはM=16)のパラレル信号に分離して出力する。ビットスワップ論理反転制御部322は、M:N分離部321からの各出力信号について、送信側で付与された検出用ビットを利用してビットスワップおよび論理反転の発生状態を検出し、該検出結果に応じてビットスワップおよび論理反転の補償を行うものである。なお、ビットスワップ論理反転制御部322は、M:N分離部321の前段に配置することも可能であり、受信信号処理回路32内で行ってもよい。上記ビットスワップおよび論理反転の検出方法と補償方法とについては後で詳しく説明する。
【0031】
デスクランブル部323は、ビットスワップ論理反転制御部322から出力される各信号について、送信側で用いたスクランブリングコードに従いデスクランブル処理を実行して出力する。誤り訂正デコーディング部324は、デスクランブル部323から出力される各信号に含まれる誤り訂正符号を利用して誤り訂正処理を実行する。フレームデコーディング部325は、誤り訂正デコーディング部324から出力される各信号を送信側に対応したフレームフォーマットに従ってデコーディングする。シリアル変換部326は、フレームデコーディング部325から出力されるNビットのパラレルデータをシリアルデータに変換し、受信情報として外部等に出力する。
【0032】
ここで、送信側で付与される検出用ビットのパターンについて、例えば、前述したQPSKおよび偏波多重を組み合わせた光信号を伝送するときのように、1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合を想定して詳しく説明する。
【0033】
1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合、論理反転およびビットスワップを検出するための検出用ビットは、16個のビット列(A1B1C1D1A2B2C2D2A3B3C3D3A4B4C4D4)で表記され、その16ビットのパターンは、A1,A2,A3,A4をAチャネル、B1,B2,B3,B4をBチャネル、C1,C2,C3,C4をCチャネル、D1,D2,D3,D4をDチャネルとして、各チャネルの1番目と2番目の排他的論理和と、3番目と4番目の排他的論理和とを演算した2ビットの値が、各々のチャネルで互いに異なる値となることを第1の要件とする。また、先頭のA1,B1,C1,D1が同符号であることを第2の要件とする。ただし、第2の要件については、後述するように論理反転およびビットスワップを検出する順序によっては必須とならない場合があるので注意を要する。
【0034】
上記のような要件を満たす検出用ビットの具体例としては、(A1B1C1D1A2B2C2D2A3B3C3D3A4B4C4D4)=0000110000011011を挙げることができる。ただし、本発明における検出用ビットのパターンがこの具体例に限定されることを意味するものではなく、少なくとも上記第1の要件を満たすパターンであれば検出用ビットとして使用することが可能である。
【0035】
上記の具体例について第1の要件を確認すると、Aチャネルに関して、A1とA2の排他的論理和は1(A1exorA2=1)であり、A3とA4の排他的論理和も1(A3exorA4=1)であるので、排他的論理和の2ビット演算値(A_exor)は11となる。以下に示す関係式は、上記のAチャネルと同様にして他のチャネルに関しても排他的論理和を演算し、その演算結果をまとめたものである。
【0036】
A_exor=A1exorA2,A3exorA4=11=3
B_exor=B1exorB2,B3exorB4=10=2
C_exor=C1exorC2,C3exorC4=01=1
D_exor=D1exorD2,D3exorD4=00=0
なお、ここでは各チャネルの2ビット演算値の11,10,01,00に対して、十進数の3,2,1,0をそれぞれ割り当るようにしているが、これとは異なる割当を行うようにしても構わない。
【0037】
上記のような関係式は、各チャネルに論理反転が発生した場合でも同一の演算結果が得られるため、論理反転に依存しない。よって、受信信号に含まれる検出用ビットの各チャネルの2ビット演算値がどのような順番になっているかを識別することにより、ビットスワップの発生状態を検出することが可能である。また、検出用ビットの先頭のA1,B1,C1,D1は0000で同一符号になっているので、当該部分はビットスワップに依存しない。よって、検出用ビットの先頭の4ビットを識別することにより、論理反転の発生状況を検出することが可能である。
【0038】
このような特定のパターンを有する検出用ビットを利用した、ビットスワップの検出と、論理反転の検出とは、任意の順番で行うことが可能である。なお、ビットスワップの検出を論理反転の検出よりも先に行い、その検出結果に応じてビットスワップを補償した後に、論理反転の検出を行うようにした場合には、検出用ビットの先頭の4ビットが既知であれば同一符号でなくても論理反転の発生状態を検出することが可能であるので、検出用ビットのパターンに関する制約を緩くすることができる。また、これとは逆に、検出用ビットの先頭の4ビット(同一符号)を用いて論理反転を先に検出してその補償を行った後に、ビットスワップの検出を行うようにした場合には、排他的論理和の2ビット演算値を求めなくても、受信信号のビット列(A’B’C’D’)がビットスワップの8通りの発生パターン(図18の下段参照)のいずれに該当しているかを順番に判定して行くことで、ビットスワップの発生状態を検出することも可能である。また、検出用ビットに上記2つの制約を設けず、ビットスワップ8通りと16通りの論理反転の全組み合わせ(64通り)を順番に判定していく方法も可能である。ただし、このような方法でビットスワップの検出を行った場合、その検出に比較的長い時間を要することになるため、検出用ビットのパターンに関する第1の要件による検出時間の短縮は有効である。
【0039】
なお、上記検出用ビットのパターンに関する説明では、1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合を想定したが、本発明はこれに限らず、1シンボル時間で4ビットよりも大きな情報を伝送する場合でも、上記4ビットの情報を伝送する場合と同様の考え方に従って検出用ビットのビット数を増加させることにより対応可能である。例えば、1シンボル時間で8ビットの情報を伝送する場合は、48ビットの検出用ビットを用いて、第1の要件は、A1とA2、A3とA4の排他的論理和に加えて、A5とA6の排他的論理和を使用する。また、第2の要件は先頭の8ビットを同一符号とする。すなわち、1シンボル時間で2n個のビット(nは正の数)の情報を伝送する場合、検出用ビットは、2n+1×n個のビット列からなり、先頭からi番目(ただしi=1,2,…,2nとする)のビットより2nビット間隔で順次取り出したビット列で定義される第1〜第nのチャネルについて、該各チャネルのビット列のうちの前後する2ビットの組み合わせについて排他的論理和を順次演算することで得られる値が、各々のチャネルで互いに異なることが、前述した第1の要件となる。また、先頭の2nビットが同符号になることが、前述した第2の要件となる。
【0040】
次に、受信側のビットスワップ論理反転制御部322の具体例について、前述した検出用ビットの説明と同様に1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合を想定して詳しく説明する。
【0041】
ビットスワップ論理反転制御部322は、光送信器10のシステムの立ち上げ直後や信号断の発生直後などのデータ受信直後に、検出用ビットとの同期がとれているか否かの確認を行い、信号同期の確認がとれた後に、ビットスワップおよび論理反転の検出と補償を行う。また、サービス運用中に動的なビットスワップまたは論理反転が発生し得る場合には、その発生状態を常時監視して補償を継続的に行うことが可能である。
【0042】
図2は、上記のようなビットスワップ論理反転制御部322での処理の流れを示したフローチャートの一例である。ここでは、データ受信直後に、受信信号に含まれる検出用ビットについての排他的論理和の2ビット演算値(前述したA_exor,B_exor,C_exor,D_exorの各値)を使用して信号の同期状態を確認し、そして、ビットスワップの検出および補償を行った後に、論理反転の検出および補償を行うようにした制御フローが示してある。また、図3は、図2の制御フローに対応したビットスワップ論理反転制御部322の具体的な構成例を示すブロック図である。
【0043】
図3の構成例において、ビットスワップ論理反転制御部322に入力されるM:N分離部321からのパラレル信号は、ビットスワップ補償回路322Aを通った後に、同期検出回路322B、ビットスワップ検出回路322C、論理反転検出回路322Dおよび論理反転補償回路322Eにそれぞれ与えられる。同期検出回路322Bでは、データ受信直後に、入力信号に含まれる検出用ビットを用いて信号同期の有無が検出される。この信号同期検出は、後述するようにビットスワップ状態設定回路322Fの設定を順次変更しながら行われる。同期検出回路322Bで信号同期がとられたことが検出されると、同期成功を示す信号が同期検出回路322Bからスイッチ回路322Gに出力されると共に、同期タイミング信号が同期検出回路322Bからビットスワップ検出回路322Cおよび論理反転検出回路322Dにそれぞれ出力される。スイッチ回路322Gは、信号同期の検出中はビットスワップ状態設定回路322Fから出力される制御信号をビットスワップ補償回路322Aに伝え、信号同期がとられた後はビットスワップ検出回路322Cから出力される制御信号をビットスワップ補償回路322Aに伝える。
【0044】
ビットスワップ検出回路322Cは、例えば図4に示すように、同期タイミング信号に従ってパラレル信号より検出用ビットを抽出する検出用ビット抽出回路322C1と、該検出用ビット抽出回路322C1で抽出された検出用ビットについての排他的論理和の2ビット演算値を演算するための4個の1:4デマルチプレクサ322C2および8個のEXOR回路322C3とから構成される。ここでは、図中の上から1,2番目のEXOR回路から出力される演算値a1,a2がA_exorに対応し、3,4番目のEXOR回路から出力される演算値b1,b2がB_exorに対応し、5,6番目のEXOR回路から出力される演算値c1,c2がC_exorに対応し、7,8番目のEXOR回路から出力される演算値d1,d2がD_exorに対応している。
【0045】
ビットスワップ補償回路322Aは、例えば図5に示すように、A_exor〜D_exorにそれぞれ対応した4組のスイッチ部322A1と、各スイッチ部322A1の4出力のうちの1出力の論理積を演算する4個のAND回路322A2とから構成される。各スイッチ部322A1は、ここでは3個のスイッチを組み合わせて構成されている。
【0046】
論理反転検出回路322Dは、例えば図6の上段に示すように、同期タイミング信号に従ってパラレル信号より検出用ビットの先頭の4ビットを抽出する検出用ビット抽出回路322D1からなり、また、論理反転補償回路322Eは、例えば図6の下段に示すように、検出用ビット抽出回路322D1で抽出された各ビットとパラレル信号との排他的論理和を演算する4個のEXOR回路322E1〜322E4から構成される。
【0047】
上記のような構成のビットスワップ論理反転制御部322の動作を図2のフローチャートを参照しながら説明すると、まず、ステップ1(図中S1で示し、以下同様とする)では、データ受信直後に、図2の右側に示したビットスワップ状態表にある8通りのパターン#1〜#8のうちの1つ(ここでは#1とする)がビットスワップ状態設定回路322Fの初期状態に設定される。これにより、パターン#1に対応した制御信号がスイッチ回路322Gを介してビットスワップ補償回路322Aに与えられる。なお、ビットスワップ状態表は、A_exor〜D_exorの各値(前述の十進数で表した0,1,2,3のいずれかの値)の組み合わせにより、発生し得るビットスワップのパターンを表現している。
【0048】
ステップ2では、同期検出回路322Bにおいて、ビットスワップ補償回路322Aを通過して同期検出回路322Bに入力されたパラレル信号についてのA_exor〜D_exorが演算され、その信号を使って信号の同期状態が検出される。ステップ1での設定パターンの不一致により信号同期のとれてないことが検出された場合には、ステップ3に進んでビットスワップ状態設定回路322Fの設定パターンが変更され、ステップ2に戻って上記の処理が繰り返される。そして、演算結果と設定パターンの一致により信号同期のとれていることが検出されると、スイッチ回路322Gがビットスワップ検出回路322C側に切り替えられ、ステップ4に進んでビットスワップの検出および補償が行われる。
【0049】
なお、上記のように検出用ビットを用いて信号の同期をとる場合、検出用ビットのビット長が短いために誤同期が発生し得るようであれば、所要のビット列を検出用ビットに付加して誤同期を防止することも可能である。
【0050】
ステップ4では、まず、ビットスワップ検出回路322Cにおいて、入力されるパラレル信号に含まれる検出用ビットについてのA_exor〜D_exorが演算され、その演算結果がスイッチ回路322Gを介してビットスワップ補償回路322Aに出力される。そして、ビットスワップ補償回路322Aでは、ビットスワップ検出回路322Cからの出力信号が対応するスイッチ部322A1に与えられ、AND回路322A2で各スイッチ部322A1の出力の論理積が演算されることにより、ビットスワップの補償が行われる。
【0051】
ビットスワップの補償が完了すると、ステップ5に進んで論理反転の検出および補償が行われる。ここでは、ビットスワップの補償されたパラレル信号に含まれる検出用ビットの先頭の4ビットが論理反転検出回路322Dにより抽出され、該各ビット値が論理反転補償回路322Eの各EXOR回路322E1〜322E4にそれぞれ与えられることにより、論理反転の補償が行われる。そして、システム運用中は、上記ステップ4およびステップ5の処理が所要の周期で繰り返され、動的なビットスワップおよび論理反転の検出と補償が継続的に行われる。
【0052】
上記のように図1に示した光伝送システムによれば、従来の技術では対応が困難であった、多値変調方式と偏波多重方式を組み合わせることにより1シンボル時間で4ビット以上の情報を伝送するシステムについても、当該伝送ビット数に応じて設定した特定のパターンを有する検出用ビットを送信信号に付与するようにしたことで、受信信号に含まれる検出用ビットを用いてビットスワップと論理反転の制御(検出および補償)を高速かつ確実に実施することが可能になる。
【0053】
なお、上記図1に示した光伝送システムにおいて、図2に示したビットスワップ論理反転制御部322の制御フローでは、ビットスワップの制御を行った後に論理反転の制御を行うようにしたが、これとは逆に、論理反転の制御を行った後にビットスワップの制御を行うことも可能である。また、動的なビットスワップや論理反転に対応するために、運用中はビットスワップと論理反転の各制御を繰り返し行うようにしたが、例えば、同一チャネルについての差動受信が適用されるシステムのように動的なビットスワップや論理反転が起こらない場合には、立ち上げ時等にビットスワップおよび論理反転の検出と補償を1度だけ行えばよい。
【0054】
さらに、動的なビットスワップや論理反転が起こらない場合の応用例として、OTN(Optical Transport Network)フレームフォーマットに従って送信信号がフレーム化されるシステムについては、OTNフレームのヘッダを検出用ビットとして利用することにより、光送信器および光受信器の構成の簡略化を図ることが可能である。すなわち、OTNフレームでは、フレーム同期ビットとして、FAS(Frame Alignment Signal)バイトが規定されており、OA1(11110110)と、OA2(00101000)とをOA1,OA1,OA1,OA2,OA2,OA2として受信できたときに、フレームの同期がとれた状態を判定している。このOA1,OA2信号のビットパターン(1111011000101000)は、上述した本発明におけるビットスワップおよび論理反転の検出用ビットの要件を満たしている。したがって、1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合は、上記フレーム同期ビットを検出用ビットとして利用することができる。よって、図1に示した送信信号処理回路11内の検出用ビット付与部115に相当する機能がフレームエンコーディング部112により実現されるため、検出用ビット付与部115を省略することが可能になる。また、OA1,OA2信号により論理反転の16パターンとビットスワップの8パターンの全てを表現できるので、フレーム同期が成功するかどうかで論理反転およびビットスワップを検出することもできる。よって、受信信号処理回路32内のビットスワップ論理反転制御部322の構成を簡略化することが可能になる。
【0055】
次に、本発明に関連する光伝送システムの他の例について説明する。
図7は、上記光伝送システムの他の例の構成を示すブロック図である。
図7に示す光伝送システムは、上述の図1に示した光伝送システムについて、光受信器30にコヒーレント受信方式を適用した場合に、誤り訂正フレームよりも短いサブフレームを送信信号に定義し、該サブフレームの先頭に、図1に示した光伝送システムの場合と同様の検出用ビットを配置することにより、コヒーレント受信に用いる局部発振光の位相変動等により発生する動的なビットスワップおよび論理反転の検出と補償をより確実に行うことができるようにしたものである。
【0056】
具体的に、本光伝送システムの構成が図1に示した光伝送システムの構成と異なる点は、光送信器10内の送信信号処理回路11’について、図1に示した光伝送システムで用いた検出用ビット付与部115に代えてサブフレームエンコーディング部117を設けている点である。また、光受信器30’については、図1に示した光伝送システムの光受信部31に相当する局部発振光源33およびコヒーレント受信部34を設けている点と、受信信号処理回路32’の構成として、M:N分離部321およびビットスワップ論理反転制御部322の間に、サブフレームデコーディング部327を設けている点とが、図1に示した光伝送システムの場合とは相違している。
【0057】
上記のサブフレームエンコーディング部117は、スクランブル部114から出力されるパラレル信号に対してサブフレームをそれぞれ設定する。このサブフレームは、例えば図8の送信データ構造に示すように、ヘッダ、送信データおよび誤り訂正符号(FEC)で構成される誤り訂正フレームのフレーム長よりも短いフレーム長を有し、1つの誤り訂正フレーム内に複数のサブフレームが設定され、各サブフレームは、ビットスワップおよび論理反転を検出するための検出用ビットを含んだヘッダと送信データとから構成される。なお、各サブフレームのフレーム長は、局部発振光の位相変動等による動的なビットスワップおよび論理反転の発生状況に応じて適宜に設定することができる。
【0058】
局部発振光源33およびコヒーレント受信部34は、例えば、QPSKおよび偏波多重を組み合わせた光信号をデジタルコヒーレント受信する場合を想定すると、上述の図17に示した光受信器1300内の局部発振光源1301、偏波ダイバシティ90°ハイブリッド回路1302、光検出器1303、ADコンバータ1304およびデジタル信号処理回路1305と同様の構成が適用される。ただし、コヒーレント受信部34の構成は、上記の具体例に限定されるものではなく、公知の構成を適用することが可能である。
【0059】
サブフレームデコーディング部327は、M:N分離部321から出力されるパラレル信号をデコーディングし、サブフレームのヘッダに含まれる検出用ビットを識別可能な状態として、ビットスワップ論理反転制御部322に出力する。ビットスワップ論理反転制御部322では、各サブフレームに対応した検出用ビットを利用し、図1に示した光伝送システムの場合と同様の方法により、ビットスワップおよび論理反転の検出と補償が行われる。
【0060】
上記のような構成の光伝送システムでは、誤り訂正フレームよりも短いサブフレームを単位としてビットスワップおよび論理反転の制御が行われるようになるため、誤り訂正フレームの途中でビットスワップや論理反転が発生したとしても、その発生を確実に検出して補償することができる。なお、サブフレームの途中で発生するビットスワップや論理反転については、誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理により補償される。したがって、光伝送システムによれば、局部発振光の位相変動等により発生する動的なビットスワップおよび論理反転を高い精度で補償することが可能になる。
【0061】
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
図9は、本発明による光伝送システムの第1実施形態の構成を示すブロック図である。
第1実施形態の光伝送システムは、例えば、偏波多重方式または多値変調方式を利用することにより1シンボル時間で2ビット(4値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、伝送路や光デバイスのPDLなどが原因で発生する伝送チャネル間の特性のばらつきを考慮し、該ばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように各伝送チャネルへの送信データの割当を行うことで、受信時の誤り訂正性能の劣化を抑えるようにしたものである。図9の構成例では、送信信号処理回路11’’、光源(LD)12および光変調部13を備えた光送信器10と、光受信部31および受信信号処理回路32’’を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されており、送信信号処理回路11’’が上記チャネル間の特性ばらつきを平均化するための送信データの割当を行う機能を具備し、また、受信信号処理回路32’’が送信側での割当に対応させて受信データの引当を行う機能を具備している。なお、送信信号処理回路11’’および受信信号処理回路32’’を除いた他の部分の構成は、上述の図1に示した光伝送システムの場合と基本的に同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0062】
送信信号処理回路11’’は、図9の上部に拡大して例示しているような構成になっており、図1に示した光伝送システムの送信信号処理回路11との相違点は、検出用ビット付与部115に代えてデータ割当部118を設けている点である。このデータ割当部118は、スクランブル部114から出力されるパラレル信号について、通常の割当ではX偏波で伝送されることになるチャネル(例えばA,C)の各ビットと、Y偏波で伝送されることになるチャネル(例えばB,D)の各ビットとが所要の割合で入れ替わるように、各偏波チャネルへのデータ(ビット)の割当を変更する。
【0063】
図10は、上記データ割当部118の具体的な構成例を示したものである。この回路は、スクランブル部114から出力されるNビット(例えば、N=16ビット)のパラレル信号が伝播する並列信号配線の一部について、奇数番目(例えば、5,7,13および15番目)と偶数番目(例えば、6,8,14および16番目)を入れ替えて構成されている。このような回路では、図10の左上にシリアル化して示した入力データについて、A2とB2、C2とD2、A4とB4、C4とD4の順番がそれぞれ入れ替えられ、図10の右下に示すような出力データが生成される。これにより、図11の右側に示すように、Aチャネルの各ビットA1〜A4、Bチャネルの各ビットB1〜B4、Cチャネルの各C1〜C4、Dチャネルの各ビットD1〜D4が、X偏波およびY偏波の各チャネルに混在するようになる。なお、データ割当部118の構成は上記の一例に限定されるものではない。
【0064】
また、受信信号処理回路32’’は、図9の下部に拡大して例示しているような構成になっており、図1に示した光伝送システムの受信信号処理回路32との相違点は、ビットスワップ論理反転制御部322に代えてデータ引当部328を設けている点である。このデータ引当部328は、M:N分離部321から出力されるパラレル信号について、送信側で入れ替えられた各ビットの順番を元に戻す処理を行う。データ引当部328の具体的な回路構成としては、前述の図10に示した回路構成と基本的に同様のものを適用することが可能である。
【0065】
上記のような構成の光伝送システムでは、受信信号処理回路32’’内の誤り訂正デコーディング部324で受信信号の誤り訂正処理(FECデコード)を行う際、図12に示すように、X偏波で伝送されたA1,A3とY偏波で伝送されたA2,A4とがAチャネルとしてFECデコードされ、X偏波で伝送されたB2,B4とY偏波で伝送されたB1,B3とがBチャネルとしてFECデコードされる。また、これと同様にして、X偏波で伝送されたC1,C3とY偏波で伝送されたC2,C4とがCチャネルとしてFECデコードされ、X偏波で伝送されたD2,D4とY偏波で伝送されたD1,D3とがDチャネルとしてFECデコードされる。よって、伝送路20のPDLなどが原因でX偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間に特性のばらつきが発生しても、受信側でFECデコードされるA〜Dチャネルはそれぞれランダム誤りとなるため、偏波チャネル間の特性ばらつきによる誤り訂正性能の劣化を抑えることができる。
【0066】
なお、上記の第1実施形態では、具体例として、偏波多重方式が適用される場合を想定し、X偏波およびY偏波の各チャネル間の特性ばらつきが平均化されるように各チャネルへの送信データの割当を行うことで、誤り訂正性能の劣化を抑える場合を説明したが、このような考え方は、例えば多相位相変調方式が適用される場合に、異なる位相チャネルの間で特性にばらつきが発生するようなときにも有効である。この場合、特性ばらつきが全ての位相チャネルに亘って平均化されるように各位相チャネルへの送信データの割当を最適化すればよい。
【0067】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図13は、本発明による光伝送システムの第2実施形態の構成を示すブロック図である。
第2実施形態の光伝送システムは、例えば、少なくとも偏波多重方式を利用することにより1シンボル時間で2ビット(4値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信を行うことで、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきを低減し、受信時の誤り訂正性能の劣化を抑えるようにしたものである。図13の構成例では、送信信号処理回路11’’’、光源(LD)12および光変調部13を備えた光送信器10と、偏波間差動受信部35および受信信号処理回路32’’’を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されており、送信信号処理回路11’’’が上記X偏波およびY偏波のチャネル間での差動受信を行うための送信信号のプリコーディング機能を具備し、また、偏波間差動受信部35が受信した光信号を電気信号に変換してX偏波およびY偏波にそれぞれ対応した信号間の差動受信を行う機能を具備している。
【0068】
なお、受信信号処理回路32’’’は、上述の図17に示した従来のシステムに用いられるものと同様の構成を適用することが可能であり、ここでは図13の下部に拡大して例示しているように、M:N分離部321、デスクランブル部323、誤り訂正デコーディング部324、フレームデコーディング部325およびシリアル変換部326からなる構成を用いている。また、送信信号処理回路11’’’、偏波間差動受信部35および受信信号処理回路32’’’を除いた他の部分の構成は、上述の図1に示した光伝送システムの場合と基本的に同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0069】
送信信号処理回路11’’’は、図13の上部に拡大して例示しているような構成になっており、図1に示した光伝送システムの送信信号処理回路11との相違点は、検出用ビット付与部115およびN:M多重部116に代えてプリコーディング部119を設けている点である。このプリコーディング部119は、例えば図14に示すように、スクランブル部114からの出力信号をプリコーダ119Aでプリコーディングした後、該プリコーダ119Aから出力される2つの信号をデマルチプレクサ119B,119Cでそれぞれ2つに分岐し、各デマルチプレクサ119B,119Cの2出力を相互に組み合わせることで、X偏波側変調信号およびY偏波側変調信号を生成する。
【0070】
偏波間差動受信部35は、例えば図15に示すように、局部発振光源351、偏波ダイバシティ90°ハイブリッド回路352、光検出器353、ADコンバータ354およびデジタル信号処理回路355から構成されており、さらに、デジタル信号処理回路355は、機能ブロックとして、波形歪み補償回路355A、偏波分離回路355B、X偏波用位相同期回路355C、Y偏波用位相同期回路355D、X偏波用識別回路355E、Y偏波用識別回路355Fおよび差動受信回路355Gを有している。ただし、偏波間差動受信部35の構成は上記の一例に限定されるものではない。
【0071】
上記のような構成の光伝送システムでは、X偏波チャネルとY偏波チャネルの間で差動受信が行われることにより、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきによる影響が実質的になくなるため、従来のような受信信号の誤りのランダム性の低下による誤り訂正性能の劣化を抑えることができる。
【0072】
なお、上記の第2実施形態では、デジタルコヒーレント受信方式の光受信器に対してX偏波およびY偏波間の差動受信を適用する一例を示したが、直接検波方式の光受信器に対してX偏波およびY偏波間の差動受信を適用しても同様の作用効果を得ることが可能である。
【0073】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図16は、本発明による光伝送システムの第3実施形態の構成を示すブロック図である。
第3実施形態の光伝送システムは、例えば、少なくとも偏波多重方式を利用することにより1シンボル時間で2ビット(4値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、送信側で偏波多重した光信号の偏波状態をスクランブルした後に伝送路に送信し、受信側では光信号の偏波回転に追従しながら偏波分離を行って所要の受信処理を実行することで、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきを低減し、受信時の誤り訂正性能の劣化を抑えるようにしたものである。
【0074】
具体的に、図16の構成例では、送信信号処理回路11’’’’、光源(LD)12、光変調部13および偏波スクランブラ14を備えた光送信器10と、偏波分離部36、光受信部31および受信信号処理回路32’’’’を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されている。なお、送信信号処理回路11’’’’および受信信号処理回路32’’’’は、上述の図17に示した従来のシステムに用いられる回路と同様の構成である。また、送信側の光源12および光変調部13、並びに、光受信部31の構成は、上述の図1に示した光伝送システムの場合と基本的に同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0075】
偏波スクランブラ14は、光変調部13内の偏波合成器(図17参照)の後段に配置され、偏波多重された光信号の偏波面を、誤り訂正フレームのフレーム長に相当する時間よりも短い時間で回転させ、該光信号を伝送路20に出力する。この偏波スクランブラ14は、光信号の偏波面を360°回転させる構成のものを用いてもよいが、例えば、0°と90°の間で偏波面を回動(往復)させるだけの簡単な構成のものを使用してもよい。このような偏波スクランブラ14は、例えば、1/2波長板、可変ファラデー回転子、電気光学デバイス、音響光学デバイス、PLZT素子などを利用することで比較的簡単に実現することが可能である。
【0076】
偏波分離部36は、ここでは例えば、偏波面回転回路361、偏波分離回路362、偏波分離モニタ363、ループフィルタ364およびデジタル制御発振器365から構成されている。偏波面回転回路361は、送信側で偏波スクランブルされた光信号が伝送路20を介して入力され、該光信号の偏波面をデジタル制御発振器365から出力される制御信号に従って回転させる回路である。偏波分離回路362は、偏波面回転回路361で偏波面の回転された光信号をX偏波成分とY偏波成分に分離する回路である。この偏波分離回路362で分離されたX偏波およびY偏波の各光信号は、後段の光受信部31に与えられると共に、各々の光信号の一部がモニタ光として分岐されて偏波分離モニタ363に送られる。
【0077】
偏波分離モニタ363は、X偏波およびY偏波のモニタ光を用いて、受信した光信号が正しく偏波分離されているかどうかをモニタする回路である。この偏波分離モニタ363は、例えば、X偏波とY偏波のパワーの相関をとるか、または、送信側でX偏波若しくはY偏波のどちらか一方にパイロット信号を予め重畳しておき、X偏波およびY偏波のモニタ光に含まれるパイロット信号を検出することにより、受信光の偏波分離が送信側での偏波スクランブルに追従して行われているかをモニタする。該モニタ結果は、ここでは偏波分離のずれ量を示すモニタ信号としてループフィルタ364に出力される。
【0078】
ループフィルタ364は、偏波分離モニタ363から出力されるモニタ信号の交流成分をカットすることで、偏波面回転回路361における偏波面の回転をトラッキング可能にする。デジタル制御発振器365は、ループフィルタ364からの出力信号に従って、送信側での偏波スクランブルに追従した偏波面の回転量を示す制御信号を生成し、該制御信号を偏波面回転回路361に出力する。
【0079】
なお、ここではデジタル制御発振器を使用する一例を示したが、ループフィルタの出力信号を平均化された偏波分離のずれ量を示す信号とした場合には、デジタル制御発振器に代えて積分回路を使用してもよい。
【0080】
上記のような構成の光伝送システムでは、送信側において、偏波多重された直後の光信号の偏波面が、誤り訂正フレームのフレーム長相当時間よりも短い時間で高速に回動されることで、X偏波およびY偏波の各チャネル間の特性ばらつきが誤り訂正フレーム内で平均化されるようになる。そして、上記送信側での偏波スクランブルに追従させて受信光の偏波分離を行うことにより、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきによる影響が実質的になくなるため、従来のような受信信号の誤りのランダム性の低下による誤り訂正性能の劣化を抑えることができる。
【0081】
なお、上記の第3実施形態では、光受信器30内で光受信部31の前段に偏波分離部36を配置し、受信信号の偏波回転および偏波分離を光段で行う一例を示したが、例えば、光受信部31内のデジタル信号処理回路(図17参照)で上記の偏波回転および偏波分離に相当する処理を行うようにすることも可能である。
【0082】
また、上述した第1〜第3実施形態では、光送信器10および光受信器30を伝送路20の両端に配置して、光信号が光送信器10から光受信器30に一方向に伝送されるシステム構成例を示したが、光信号が上下回線を介して双方向に伝送されるシステムにも本発明は適用可能である。双方向の場合には、上記の光送信器10および光受信器30を組み合わせて光送受信装置を構成し、該光送受信装置を端局若しくは中継局として配置したシステム構成となる。
【0083】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
【0084】
(付記1) 1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信する光送信器と、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光受信器と、を備えた光伝送システムであって、
前記光送信器は、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する送信信号処理回路と、
光源と、
前記送信信号処理回路から出力される各送信信号に従って、前記光源からの出力光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する光変調部と、
前記光変調部で生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える特性平均化部と、を備え、
前記光受信器は、前記特性平均化部で与えられる光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0085】
(付記2) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、前記各伝送チャネル間の特性のばらつきに応じて、各伝送チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、各伝送チャネル間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について、前記特性平均化部における各伝送チャネルへの送信データの割当に対応させて受信データの引当を行い、該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0086】
(付記3) 付記2に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきに応じて、各偏波チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0087】
(付記4) 付記2に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、多相位相変調方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、異なる位相チャネルの間の特性のばらつきに応じて、各位相チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、異なる位相チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0088】
(付記5) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信を行うためのプリコーディング処理を施すことで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信する偏波間差動受信部と、
前記偏波間差動受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0089】
(付記6) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記光変調部から前記伝送路に送信される光信号の偏波面を、誤り訂正フレームのフレーム長に相当する時間よりも短い時間で回転させることで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号の偏波面を回転させた後にX偏波およびY偏波に分離してモニタし、該モニタ結果に応じて受信光の偏波面の回転角をフィードバック制御することで、前記特性平均化部での偏波面の回転に追従しながら受信光をX偏波およびY偏波の各光信号に分離する偏波分離部と、
前記偏波分離部で偏波分離された各光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0090】
(付記7) 付記6に記載の光伝送システムであって、
前記特性平均化部は、前記光信号の偏波面を0°と90°の間で回動させる構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0091】
(付記8) 1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信し、該伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する過程と、
該生成された各送信信号に従って光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する過程と、
該生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える過程と、
該光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う過程と、を含むことを特徴とする光伝送方法。
【符号の説明】
【0092】
10…光送信器
11…送信信号処理回路
12…光源
13…光変調部
14…偏波スクランブラ
20…伝送路
30…光受信器
31…光受信部
32…受信信号処理回路
33…局部発振光源
34…コヒーレント受信部
35…偏波間差動受信部
36…偏波分離部
111…パラレル変換部
112…フレームエンコーディング部
113…誤り訂正エンコーディング部
114…スクランブル部
115…検出用ビット付与部
116…N:M多重部
117…サブフレームエンコーディング部
118…データ割当部
119…プリコーディング部
321…M:N分離部
322…ビットスワップ論理反転制御部
323…デスクランブル部
324…誤り訂正デコーディング部
325…フレームデコーディング部
326…シリアル変換部
327…サブフレームデコーディング部
328…データ引当部
【技術分野】
【0001】
本発明は、1符号(1シンボル時間)に複数のビットの情報を伝達可能な光信号を用いた光伝送システムおよび光伝送方法に関し、特に、光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信信号の誤りを補償若しくは訂正して良好な伝送特性を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及に伴い、40Gbit/sec(ギガビット毎秒)以上の伝送容量を有する基幹系光通信システムへの要求が高まっている。その実現手段として、10Gbit/sec以下の従来の光通信システムで適用されてきたNRZ(Non Return to Zero)変調方式と比べて、周波数利用効率、光信号対雑音比(Optical Signal-to-Noise Ratio:OSNR)耐力および非線形性耐力などが優れている様々な光変調方式の採用が模索されている。このような流れの中で、1シンボル時間で多ビットの情報を伝送する方式が注目されている。例えば、4相位相変調(Quadrature Phase Shift Keying:QPSK)と偏波多重とを組み合わせた40Gbit/secや100Gbit/secの光伝送システムが活発に議論されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、多値変調方式、偏波多重伝送方式またはデジタルコヒーレント受信方式を用いた光伝送システムでは、光送信器の動作点の変化、局部発振光の初期位相、信号光および局部発振光の位相変動などの要因により、送信した信号の論理が受信時にビット毎で反転する場合がある。また、上記要因に加えて受信時の偏波の入れ替わりにより、受信ビットの順番が入れ替わる、ビットスワップと呼ばれる現象が発生する可能性もある。
【0004】
例えば、図17に示すようなQPSKおよび偏波多重を組み合わせたデジタルコヒーレント受信方式の光伝送システムにおいては、図18に示すようなパターンで論理反転およびビットスワップが動的に発生する可能性が考えられる。具体的に説明すると、この光伝送システムでは、光送信器1100の光源1102で発生した光が偏波分離器1103で直交する偏波成分に分離され、X偏波およびY偏波の各光が更に2分岐されて位相変調器1104にそれぞれ与えられる。各位相変調器1104に入力された光は、送信信号処理回路1101で処理された送信信号に従って位相変調され、さらに各偏波に対応した1組の光のうちの一方の位相が位相シフタ1105でπ/2シフトされた後、偏波合成器1106で各々の光が合成される。これにより4ビット符号化された光信号が光送信器1100から伝送路1200を介して光受信器1300まで伝送される。光受信器1300では、伝送路1200からの光信号と局部発振光源1301から出力される局部発振光とが偏波ダイバシティ90°ハイブリッド回路1302に与えられ、該回路1302の出力光が光検出器1303で電気信号に変換される。そして、当該受信信号がADコンバータ1304でAD変換された後に、デジタル信号処理回路1305および受信信号処理回路1306に与えられることで、4ビット符号復調処理が行われる。これにより、1シンボル時間で4ビット(16値)の情報が光送信器1100および光受信器1300の間で伝送される。なお、図17では、光送信器1100で符号化処理される4ビットの送信データをA,B,C,Dとし、光受信器1300で復調処理された4ビットの受信データをA’,B’,C’,D’としている。
【0005】
上記のような光伝送システムでは、光送信器1100内の位相変調器1104のバイアス点、偏波分離器1103と偏波合成器1106の間における光路長差、伝送路1200での偏波モード分散(Polarization Mode Dispersion:PMD)、非線形位相雑音、光受信器1300内での偏波間光路長差、または、局部発振光源1301の位相変動が要因となって、図18の上段に示すような16パターンの論理反転が動的に発生する可能性がある。また、局部発振光源1301の位相変動、受信時の偏波チャネル(X偏波、Y偏波)の入れ替わり、または、非線形位相雑音が要因となって、図18の下段に示すような8パターンのビットスワップが動的に発生する可能性がある。
【0006】
なお、ここでは特に図示しないが、差動4相位相変調(Differential Quadrature Phase Shift Keying:DQPSK)および偏波多重を組み合わせた、デジタルコヒーレント受信方式または直接検波方式の光伝送システムにおいては、差動受信が行われることにより動的な論理反転は発生せず、論理反転のパターン数は減少する。また、送信側の位相変調器のバイアス、または、偏波チャネルの入れ替わりが要因となって、上記図18の下段に示した場合と同様の8パターンのビットスワップが、動的ではないが発生する可能性がある。
【0007】
上記のような論理反転およびビットスワップに対して受信データのビット誤りを回避するためには、光受信器において高速な論理反転制御および多重化タイミング(ビットスワップ)制御を行う必要がある。当該制御に関する従来技術の一例としては、直接検波を用いたDQPSK方式について、フレーム同期検出を利用して論理反転およびビットスワップの制御を行う方法などが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−270909号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.Laperle et al., "Wavelength Division Multiplexing (WDM) and Polarization Mode Dispersion (PMD) Performance of a Coherent 40Gbit/s Dual-Polarization Quadrature Phase Shift Keying (DP-QPSK) Transceiver", OFC'07, PDP16, 2007.
【非特許文献2】H. Masuda et al., "20.4-Tb/s (204 x 111 Gb/s) Transmission over 240 km using Bandwidth-Maximized Hybrid Raman/EDFAs", OFC'07, PDP20, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようなフレーム同期検出を利用した従来の制御技術は、1シンボル時間で2ビット(4値)の情報を伝送する場合に発生する論理反転およびビットスワップの制御には有効であるが、前述した4相位相変調(QPSK)と偏波多重とを組み合わせた光伝送システムのように、1シンボル時間で2ビットより多い情報を伝送する場合に発生する論理反転やビットスワップには対応できない。また、直接検波した受信信号のフレーム同期可否により論理反転を検出する方法であるため、コヒーレント受信方式を用いた光伝送システムへの適用も難しいという課題がある。
【0011】
また、上記のフレーム同期検出を利用した従来の制御技術を適用するか否かにかかわらず、多値変調方式を用いるなどして1シンボル時間で多ビットの情報を伝送する場合、伝送チャネル間で特性のばらつきが発生する可能性があり、特に、偏波多重方式を組み合わせて伝送容量の拡大を図った場合には、X偏波で伝送されるチャネルとY偏波で伝送されるチャネルとの特性のばらつきがより大きくなることが懸念される。このようなチャネル間の特性ばらつきは、例えば、公知の誤り訂正符号を用いて受信信号の誤り訂正処理を行う場合に、誤り訂正性能を劣化させる原因になるという問題がある。すなわち、誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理はランダム誤りを想定した技術であるため、チャネル間の特性ばらつきは受信信号の誤りのランダム性を低下させることになり、誤り訂正性能の劣化を招いてしまうのである。
【0012】
図19は、チャネル間の特性ばらつきの有無に応じて、誤り訂正前後のビットエラーレート(BER)特性を表した一例である。ただし、横軸は、誤り訂正前の全チャネルについてのBERの平均値(InputBER)を表し、縦軸は、誤り訂正後の全チャネルについてのBERの平均値(OutputBER)を表している。図19より、受信信号の各チャネル間に特性のばらつきがあってランダムエラーにならない場合、InputBERに対するOutputBERの改善量、すなわち、コーディングゲイン(coding gain)の劣化が生じていることが分かる。
【0013】
ここで、上記のようなチャネル間の特性ばらつきが発生する原因について詳しく説明する。
例えば偏波多重方式でチャネル間の特性ばらつきが発生する最大の原因は、伝送路および光デバイスの偏波依存性損失(Polarization Dependent Loss:PDL)である。図20の上段に例示するような光伝送システムにおいて、図20の中段に示すようなPDLがある場合、各中継スパンの光増幅器2001の出力では、伝送路2002に送出する光信号のパワーが一定に制御されるが、伝送路2002のPDLにより、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間にパワー差が発生し、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの平均パワー(Ave)は各々の中継スパンで一定になるものの、X偏波チャネルおよびY偏波チャネル間のパワー差は中継スパン数が増えるのに伴って徐々に大きくなっていく。このため、図20の下段に示すように、X偏波チャネルおよびY偏波チャネル間のOSNRの差も徐々に増大し、その結果、異なる偏波チャネル間で特性のばらつきが発生する。
【0014】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な光信号を送受信する際に、該光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信データの誤りを確実に補償若しくは訂正して、良好な伝送特性を実現することのできる光伝送システムおよび光伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明による光伝送システムの一態様は、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信する光送信器と、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光受信器と、を備えた光伝送システムであって、前記光送信器は、予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する送信信号処理回路と、光源と、前記送信信号処理回路から出力される各送信信号に従って、前記光源からの出力光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する光変調部と、前記光変調部で生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える特性平均化部と、を備える。また、前記光受信器は、前記特性平均化部で与えられる光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う構成とする。
【0016】
また、本発明による光伝送方法の一態様は、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信し、該伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する過程と、該生成された各送信信号に従って光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する過程と、該生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える過程と、該光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う過程と、を含む方法である。
【0017】
上記のような光伝送システムおよび光伝送方法では、複数の伝送チャネルが多重化された光信号を伝送路に送信する際に該送信光の状態に変化を与えることで、伝送路の伝播時に発生する各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるようにし、受信側では、送信時に与えられた状態の変化に対応させて光信号が受信され、誤りのランダム性が保たれた受信信号についての誤り訂正処理等が行われる。
【発明の効果】
【0018】
上記のように本光伝送システムおよび本光伝送方法によれば、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な光信号を伝送路に送信する際に、送信光の状態に変化を与えて各伝送チャネル間の特性のばらつきを平均化することによって、光信号の変調方式や多重化方式などに起因して発生する受信データの誤りを確実に補償若しくは訂正することができるようになるため、良好な伝送特性を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に関連する光伝送システムの一例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光伝送システムにおけるビットスワップ論理反転制御部での処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図1の光伝送システムにおけるビットスワップ論理反転制御部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3のビットスワップ検出回路の具体例を示す回路図である。
【図5】図3のビットスワップ補償回路の具体例を示す回路図である。
【図6】図3の論理反転検出回路および論理反転補償回路の具体例を示す回路図である。
【図7】本発明に関連する光伝送システムの他の例の構成を示すブロック図である。
【図8】図7の光伝送システムにおける送信データ構造の一例を示す図である。
【図9】本発明による光伝送システムの第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図10】上記第1実施形態におけるデータ割当部の構成例を示す図である。
【図11】上記第1実施形態における送信信号処理回路の動作を説明する図である。
【図12】上記第1実施形態における誤り訂正デコーディング部の動作を説明する図である。
【図13】本発明による光伝送システムの第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図14】上記第2実施形態におけるプリコーディング部の構成例を示す図である。
【図15】上記第2実施形態における偏波間差動受信部の構成例を示す図である。
【図16】本発明による光伝送システムの第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図17】従来の光伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図18】図17のシステムで発生する論理反転およびビットスワップのパターンを示す図である。
【図19】従来の光伝送システムにおけるチャネル間の特性ばらつきに起因した誤り訂正性能の劣化の様子を説明するための図である。
【図20】偏波多重方式においてチャネル間の特性ばらつきが発生する原因を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
図1は、本発明に関連する光伝送システムの一例の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示す光伝送システムは、例えば、多値変調方式と偏波多重方式を組み合わせることにより、1シンボル時間で4ビット(16値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、上述したような論理反転およびビットスワップの発生を、送信側で付与した所定の検出用ビットを用いて受信側にて検出し、該検出結果に応じて論理反転およびビットスワップの補償を行うようにしたものである。図1の構成例では、送信信号処理回路11、光源(LD)12および光変調部13を備えた光送信器10と、光受信部31および受信信号処理回路32を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されており、送信信号処理回路11が上記検出用ビットを送信信号に付与する機能を具備し、受信信号処理回路32が受信信号に含まれる検出用ビットを用いて論理反転およびビットスワップを検出し補償する機能を具備している。
【0022】
具体的に、光送信器10内の送信信号処理回路11は、図1の上部に拡大して例示しているように、パラレル変換部111、フレームエンコーディング部112、誤り訂正エンコーディング部113、スクランブル部114、検出用ビット付与部115およびN:M多重部116を有している。
【0023】
パラレル変換部111は、外部等から入力される送信情報を示すシリアルデータをNビットのパラレルデータに変換して出力する。フレームエンコーディング部112は、パラレル変換部111から出力される各データ列を公知のフレームフォーマットに従ってエンコーディングする。誤り訂正エンコーディング部113は、フレームエンコーディングされた各信号に対して所要の誤り訂正符号を付加する。スクランブル部114は、誤り訂正エンコーディング部113から出力される各信号を、ユーザに固有に割り当てられるスクランブリングコードでスクランブルして出力する。
【0024】
検出用ビット付与部115は、スクランブル部114からの各出力信号に対して、1シンボル時間に伝送するビット数に応じて設定した特定のパターンを有する検出用ビットを付与する。なお、上記検出用ビットのパターンについては後で詳しく説明する。
【0025】
N:M多重部116は、検出用ビット付与部115から出力されるNビットのパラレル信号を多重化することにより、Mチャネル(M<N)の送信信号を生成する。例えば、40Gbit/sec高速光通信用インターフェース回路の標準化規格となるOIF(Optical Internetworking Forum)で規定されているSFI(Serdes Framer Interface)−5準拠のインターフェースの場合には、N=16,M=4とすればよい。ただし、本発明におけるM,Nの値は上記の具体例に限定されるものではない。N:M多重部116で多重化された各送信信号は、光変調部13に与えられる。
【0026】
なお、上記の送信信号処理回路11の構成例では、検出用ビット付与部115がN:M多重部116の前段に設けられているが、N:M多重部116の後段に検出用ビット付与部115を配置するようにしてもよい。
【0027】
光変調部13は、光源12から出力される光を偏波分離した後に、送信信号処理回路11からの各送信信号に従って変調して偏波合成することにより、多値変調と偏波多重を組み合わせた光信号を生成し、該光信号を伝送路20に送信する。この光変調部13の具体例としては、QPSKおよび偏波多重を組み合わせた光信号を伝送路20に送信する場合を想定すると、上述の図17に示した光送信器1100内の偏波分離器1103、位相変調器1104、位相シフタ1105および偏波合成器1106と同様の構成を用いることができる。ただし、光変調部13の構成は、上記の具体例に限定されるものではなく、送信する光信号の方式に対応した公知の構成を適用することが可能である。
【0028】
光受信器30の光受信部31は、伝送路20を伝播した光信号を受信して電気信号に変換するものであり、ここではコヒーレント受信方式を適用したもの、または、直接検波方式を適用したもののいずれであってもよい。
【0029】
受信信号処理回路32は、例えば図1の下部に拡大して示しているように、M:N分離部321、ビットスワップ論理反転制御部322、デスクランブル部323、誤り訂正デコーディング部324、フレームデコーディング部325およびシリアル変換部326を有している。
【0030】
M:N分離部321は、光受信部31から出力されるMチャネル(図1の例ではA〜Dの4チャネル)の受信信号を、Nビット(例えば、前述したSFI−5準拠の場合にはM=16)のパラレル信号に分離して出力する。ビットスワップ論理反転制御部322は、M:N分離部321からの各出力信号について、送信側で付与された検出用ビットを利用してビットスワップおよび論理反転の発生状態を検出し、該検出結果に応じてビットスワップおよび論理反転の補償を行うものである。なお、ビットスワップ論理反転制御部322は、M:N分離部321の前段に配置することも可能であり、受信信号処理回路32内で行ってもよい。上記ビットスワップおよび論理反転の検出方法と補償方法とについては後で詳しく説明する。
【0031】
デスクランブル部323は、ビットスワップ論理反転制御部322から出力される各信号について、送信側で用いたスクランブリングコードに従いデスクランブル処理を実行して出力する。誤り訂正デコーディング部324は、デスクランブル部323から出力される各信号に含まれる誤り訂正符号を利用して誤り訂正処理を実行する。フレームデコーディング部325は、誤り訂正デコーディング部324から出力される各信号を送信側に対応したフレームフォーマットに従ってデコーディングする。シリアル変換部326は、フレームデコーディング部325から出力されるNビットのパラレルデータをシリアルデータに変換し、受信情報として外部等に出力する。
【0032】
ここで、送信側で付与される検出用ビットのパターンについて、例えば、前述したQPSKおよび偏波多重を組み合わせた光信号を伝送するときのように、1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合を想定して詳しく説明する。
【0033】
1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合、論理反転およびビットスワップを検出するための検出用ビットは、16個のビット列(A1B1C1D1A2B2C2D2A3B3C3D3A4B4C4D4)で表記され、その16ビットのパターンは、A1,A2,A3,A4をAチャネル、B1,B2,B3,B4をBチャネル、C1,C2,C3,C4をCチャネル、D1,D2,D3,D4をDチャネルとして、各チャネルの1番目と2番目の排他的論理和と、3番目と4番目の排他的論理和とを演算した2ビットの値が、各々のチャネルで互いに異なる値となることを第1の要件とする。また、先頭のA1,B1,C1,D1が同符号であることを第2の要件とする。ただし、第2の要件については、後述するように論理反転およびビットスワップを検出する順序によっては必須とならない場合があるので注意を要する。
【0034】
上記のような要件を満たす検出用ビットの具体例としては、(A1B1C1D1A2B2C2D2A3B3C3D3A4B4C4D4)=0000110000011011を挙げることができる。ただし、本発明における検出用ビットのパターンがこの具体例に限定されることを意味するものではなく、少なくとも上記第1の要件を満たすパターンであれば検出用ビットとして使用することが可能である。
【0035】
上記の具体例について第1の要件を確認すると、Aチャネルに関して、A1とA2の排他的論理和は1(A1exorA2=1)であり、A3とA4の排他的論理和も1(A3exorA4=1)であるので、排他的論理和の2ビット演算値(A_exor)は11となる。以下に示す関係式は、上記のAチャネルと同様にして他のチャネルに関しても排他的論理和を演算し、その演算結果をまとめたものである。
【0036】
A_exor=A1exorA2,A3exorA4=11=3
B_exor=B1exorB2,B3exorB4=10=2
C_exor=C1exorC2,C3exorC4=01=1
D_exor=D1exorD2,D3exorD4=00=0
なお、ここでは各チャネルの2ビット演算値の11,10,01,00に対して、十進数の3,2,1,0をそれぞれ割り当るようにしているが、これとは異なる割当を行うようにしても構わない。
【0037】
上記のような関係式は、各チャネルに論理反転が発生した場合でも同一の演算結果が得られるため、論理反転に依存しない。よって、受信信号に含まれる検出用ビットの各チャネルの2ビット演算値がどのような順番になっているかを識別することにより、ビットスワップの発生状態を検出することが可能である。また、検出用ビットの先頭のA1,B1,C1,D1は0000で同一符号になっているので、当該部分はビットスワップに依存しない。よって、検出用ビットの先頭の4ビットを識別することにより、論理反転の発生状況を検出することが可能である。
【0038】
このような特定のパターンを有する検出用ビットを利用した、ビットスワップの検出と、論理反転の検出とは、任意の順番で行うことが可能である。なお、ビットスワップの検出を論理反転の検出よりも先に行い、その検出結果に応じてビットスワップを補償した後に、論理反転の検出を行うようにした場合には、検出用ビットの先頭の4ビットが既知であれば同一符号でなくても論理反転の発生状態を検出することが可能であるので、検出用ビットのパターンに関する制約を緩くすることができる。また、これとは逆に、検出用ビットの先頭の4ビット(同一符号)を用いて論理反転を先に検出してその補償を行った後に、ビットスワップの検出を行うようにした場合には、排他的論理和の2ビット演算値を求めなくても、受信信号のビット列(A’B’C’D’)がビットスワップの8通りの発生パターン(図18の下段参照)のいずれに該当しているかを順番に判定して行くことで、ビットスワップの発生状態を検出することも可能である。また、検出用ビットに上記2つの制約を設けず、ビットスワップ8通りと16通りの論理反転の全組み合わせ(64通り)を順番に判定していく方法も可能である。ただし、このような方法でビットスワップの検出を行った場合、その検出に比較的長い時間を要することになるため、検出用ビットのパターンに関する第1の要件による検出時間の短縮は有効である。
【0039】
なお、上記検出用ビットのパターンに関する説明では、1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合を想定したが、本発明はこれに限らず、1シンボル時間で4ビットよりも大きな情報を伝送する場合でも、上記4ビットの情報を伝送する場合と同様の考え方に従って検出用ビットのビット数を増加させることにより対応可能である。例えば、1シンボル時間で8ビットの情報を伝送する場合は、48ビットの検出用ビットを用いて、第1の要件は、A1とA2、A3とA4の排他的論理和に加えて、A5とA6の排他的論理和を使用する。また、第2の要件は先頭の8ビットを同一符号とする。すなわち、1シンボル時間で2n個のビット(nは正の数)の情報を伝送する場合、検出用ビットは、2n+1×n個のビット列からなり、先頭からi番目(ただしi=1,2,…,2nとする)のビットより2nビット間隔で順次取り出したビット列で定義される第1〜第nのチャネルについて、該各チャネルのビット列のうちの前後する2ビットの組み合わせについて排他的論理和を順次演算することで得られる値が、各々のチャネルで互いに異なることが、前述した第1の要件となる。また、先頭の2nビットが同符号になることが、前述した第2の要件となる。
【0040】
次に、受信側のビットスワップ論理反転制御部322の具体例について、前述した検出用ビットの説明と同様に1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合を想定して詳しく説明する。
【0041】
ビットスワップ論理反転制御部322は、光送信器10のシステムの立ち上げ直後や信号断の発生直後などのデータ受信直後に、検出用ビットとの同期がとれているか否かの確認を行い、信号同期の確認がとれた後に、ビットスワップおよび論理反転の検出と補償を行う。また、サービス運用中に動的なビットスワップまたは論理反転が発生し得る場合には、その発生状態を常時監視して補償を継続的に行うことが可能である。
【0042】
図2は、上記のようなビットスワップ論理反転制御部322での処理の流れを示したフローチャートの一例である。ここでは、データ受信直後に、受信信号に含まれる検出用ビットについての排他的論理和の2ビット演算値(前述したA_exor,B_exor,C_exor,D_exorの各値)を使用して信号の同期状態を確認し、そして、ビットスワップの検出および補償を行った後に、論理反転の検出および補償を行うようにした制御フローが示してある。また、図3は、図2の制御フローに対応したビットスワップ論理反転制御部322の具体的な構成例を示すブロック図である。
【0043】
図3の構成例において、ビットスワップ論理反転制御部322に入力されるM:N分離部321からのパラレル信号は、ビットスワップ補償回路322Aを通った後に、同期検出回路322B、ビットスワップ検出回路322C、論理反転検出回路322Dおよび論理反転補償回路322Eにそれぞれ与えられる。同期検出回路322Bでは、データ受信直後に、入力信号に含まれる検出用ビットを用いて信号同期の有無が検出される。この信号同期検出は、後述するようにビットスワップ状態設定回路322Fの設定を順次変更しながら行われる。同期検出回路322Bで信号同期がとられたことが検出されると、同期成功を示す信号が同期検出回路322Bからスイッチ回路322Gに出力されると共に、同期タイミング信号が同期検出回路322Bからビットスワップ検出回路322Cおよび論理反転検出回路322Dにそれぞれ出力される。スイッチ回路322Gは、信号同期の検出中はビットスワップ状態設定回路322Fから出力される制御信号をビットスワップ補償回路322Aに伝え、信号同期がとられた後はビットスワップ検出回路322Cから出力される制御信号をビットスワップ補償回路322Aに伝える。
【0044】
ビットスワップ検出回路322Cは、例えば図4に示すように、同期タイミング信号に従ってパラレル信号より検出用ビットを抽出する検出用ビット抽出回路322C1と、該検出用ビット抽出回路322C1で抽出された検出用ビットについての排他的論理和の2ビット演算値を演算するための4個の1:4デマルチプレクサ322C2および8個のEXOR回路322C3とから構成される。ここでは、図中の上から1,2番目のEXOR回路から出力される演算値a1,a2がA_exorに対応し、3,4番目のEXOR回路から出力される演算値b1,b2がB_exorに対応し、5,6番目のEXOR回路から出力される演算値c1,c2がC_exorに対応し、7,8番目のEXOR回路から出力される演算値d1,d2がD_exorに対応している。
【0045】
ビットスワップ補償回路322Aは、例えば図5に示すように、A_exor〜D_exorにそれぞれ対応した4組のスイッチ部322A1と、各スイッチ部322A1の4出力のうちの1出力の論理積を演算する4個のAND回路322A2とから構成される。各スイッチ部322A1は、ここでは3個のスイッチを組み合わせて構成されている。
【0046】
論理反転検出回路322Dは、例えば図6の上段に示すように、同期タイミング信号に従ってパラレル信号より検出用ビットの先頭の4ビットを抽出する検出用ビット抽出回路322D1からなり、また、論理反転補償回路322Eは、例えば図6の下段に示すように、検出用ビット抽出回路322D1で抽出された各ビットとパラレル信号との排他的論理和を演算する4個のEXOR回路322E1〜322E4から構成される。
【0047】
上記のような構成のビットスワップ論理反転制御部322の動作を図2のフローチャートを参照しながら説明すると、まず、ステップ1(図中S1で示し、以下同様とする)では、データ受信直後に、図2の右側に示したビットスワップ状態表にある8通りのパターン#1〜#8のうちの1つ(ここでは#1とする)がビットスワップ状態設定回路322Fの初期状態に設定される。これにより、パターン#1に対応した制御信号がスイッチ回路322Gを介してビットスワップ補償回路322Aに与えられる。なお、ビットスワップ状態表は、A_exor〜D_exorの各値(前述の十進数で表した0,1,2,3のいずれかの値)の組み合わせにより、発生し得るビットスワップのパターンを表現している。
【0048】
ステップ2では、同期検出回路322Bにおいて、ビットスワップ補償回路322Aを通過して同期検出回路322Bに入力されたパラレル信号についてのA_exor〜D_exorが演算され、その信号を使って信号の同期状態が検出される。ステップ1での設定パターンの不一致により信号同期のとれてないことが検出された場合には、ステップ3に進んでビットスワップ状態設定回路322Fの設定パターンが変更され、ステップ2に戻って上記の処理が繰り返される。そして、演算結果と設定パターンの一致により信号同期のとれていることが検出されると、スイッチ回路322Gがビットスワップ検出回路322C側に切り替えられ、ステップ4に進んでビットスワップの検出および補償が行われる。
【0049】
なお、上記のように検出用ビットを用いて信号の同期をとる場合、検出用ビットのビット長が短いために誤同期が発生し得るようであれば、所要のビット列を検出用ビットに付加して誤同期を防止することも可能である。
【0050】
ステップ4では、まず、ビットスワップ検出回路322Cにおいて、入力されるパラレル信号に含まれる検出用ビットについてのA_exor〜D_exorが演算され、その演算結果がスイッチ回路322Gを介してビットスワップ補償回路322Aに出力される。そして、ビットスワップ補償回路322Aでは、ビットスワップ検出回路322Cからの出力信号が対応するスイッチ部322A1に与えられ、AND回路322A2で各スイッチ部322A1の出力の論理積が演算されることにより、ビットスワップの補償が行われる。
【0051】
ビットスワップの補償が完了すると、ステップ5に進んで論理反転の検出および補償が行われる。ここでは、ビットスワップの補償されたパラレル信号に含まれる検出用ビットの先頭の4ビットが論理反転検出回路322Dにより抽出され、該各ビット値が論理反転補償回路322Eの各EXOR回路322E1〜322E4にそれぞれ与えられることにより、論理反転の補償が行われる。そして、システム運用中は、上記ステップ4およびステップ5の処理が所要の周期で繰り返され、動的なビットスワップおよび論理反転の検出と補償が継続的に行われる。
【0052】
上記のように図1に示した光伝送システムによれば、従来の技術では対応が困難であった、多値変調方式と偏波多重方式を組み合わせることにより1シンボル時間で4ビット以上の情報を伝送するシステムについても、当該伝送ビット数に応じて設定した特定のパターンを有する検出用ビットを送信信号に付与するようにしたことで、受信信号に含まれる検出用ビットを用いてビットスワップと論理反転の制御(検出および補償)を高速かつ確実に実施することが可能になる。
【0053】
なお、上記図1に示した光伝送システムにおいて、図2に示したビットスワップ論理反転制御部322の制御フローでは、ビットスワップの制御を行った後に論理反転の制御を行うようにしたが、これとは逆に、論理反転の制御を行った後にビットスワップの制御を行うことも可能である。また、動的なビットスワップや論理反転に対応するために、運用中はビットスワップと論理反転の各制御を繰り返し行うようにしたが、例えば、同一チャネルについての差動受信が適用されるシステムのように動的なビットスワップや論理反転が起こらない場合には、立ち上げ時等にビットスワップおよび論理反転の検出と補償を1度だけ行えばよい。
【0054】
さらに、動的なビットスワップや論理反転が起こらない場合の応用例として、OTN(Optical Transport Network)フレームフォーマットに従って送信信号がフレーム化されるシステムについては、OTNフレームのヘッダを検出用ビットとして利用することにより、光送信器および光受信器の構成の簡略化を図ることが可能である。すなわち、OTNフレームでは、フレーム同期ビットとして、FAS(Frame Alignment Signal)バイトが規定されており、OA1(11110110)と、OA2(00101000)とをOA1,OA1,OA1,OA2,OA2,OA2として受信できたときに、フレームの同期がとれた状態を判定している。このOA1,OA2信号のビットパターン(1111011000101000)は、上述した本発明におけるビットスワップおよび論理反転の検出用ビットの要件を満たしている。したがって、1シンボル時間で4ビットの情報を伝送する場合は、上記フレーム同期ビットを検出用ビットとして利用することができる。よって、図1に示した送信信号処理回路11内の検出用ビット付与部115に相当する機能がフレームエンコーディング部112により実現されるため、検出用ビット付与部115を省略することが可能になる。また、OA1,OA2信号により論理反転の16パターンとビットスワップの8パターンの全てを表現できるので、フレーム同期が成功するかどうかで論理反転およびビットスワップを検出することもできる。よって、受信信号処理回路32内のビットスワップ論理反転制御部322の構成を簡略化することが可能になる。
【0055】
次に、本発明に関連する光伝送システムの他の例について説明する。
図7は、上記光伝送システムの他の例の構成を示すブロック図である。
図7に示す光伝送システムは、上述の図1に示した光伝送システムについて、光受信器30にコヒーレント受信方式を適用した場合に、誤り訂正フレームよりも短いサブフレームを送信信号に定義し、該サブフレームの先頭に、図1に示した光伝送システムの場合と同様の検出用ビットを配置することにより、コヒーレント受信に用いる局部発振光の位相変動等により発生する動的なビットスワップおよび論理反転の検出と補償をより確実に行うことができるようにしたものである。
【0056】
具体的に、本光伝送システムの構成が図1に示した光伝送システムの構成と異なる点は、光送信器10内の送信信号処理回路11’について、図1に示した光伝送システムで用いた検出用ビット付与部115に代えてサブフレームエンコーディング部117を設けている点である。また、光受信器30’については、図1に示した光伝送システムの光受信部31に相当する局部発振光源33およびコヒーレント受信部34を設けている点と、受信信号処理回路32’の構成として、M:N分離部321およびビットスワップ論理反転制御部322の間に、サブフレームデコーディング部327を設けている点とが、図1に示した光伝送システムの場合とは相違している。
【0057】
上記のサブフレームエンコーディング部117は、スクランブル部114から出力されるパラレル信号に対してサブフレームをそれぞれ設定する。このサブフレームは、例えば図8の送信データ構造に示すように、ヘッダ、送信データおよび誤り訂正符号(FEC)で構成される誤り訂正フレームのフレーム長よりも短いフレーム長を有し、1つの誤り訂正フレーム内に複数のサブフレームが設定され、各サブフレームは、ビットスワップおよび論理反転を検出するための検出用ビットを含んだヘッダと送信データとから構成される。なお、各サブフレームのフレーム長は、局部発振光の位相変動等による動的なビットスワップおよび論理反転の発生状況に応じて適宜に設定することができる。
【0058】
局部発振光源33およびコヒーレント受信部34は、例えば、QPSKおよび偏波多重を組み合わせた光信号をデジタルコヒーレント受信する場合を想定すると、上述の図17に示した光受信器1300内の局部発振光源1301、偏波ダイバシティ90°ハイブリッド回路1302、光検出器1303、ADコンバータ1304およびデジタル信号処理回路1305と同様の構成が適用される。ただし、コヒーレント受信部34の構成は、上記の具体例に限定されるものではなく、公知の構成を適用することが可能である。
【0059】
サブフレームデコーディング部327は、M:N分離部321から出力されるパラレル信号をデコーディングし、サブフレームのヘッダに含まれる検出用ビットを識別可能な状態として、ビットスワップ論理反転制御部322に出力する。ビットスワップ論理反転制御部322では、各サブフレームに対応した検出用ビットを利用し、図1に示した光伝送システムの場合と同様の方法により、ビットスワップおよび論理反転の検出と補償が行われる。
【0060】
上記のような構成の光伝送システムでは、誤り訂正フレームよりも短いサブフレームを単位としてビットスワップおよび論理反転の制御が行われるようになるため、誤り訂正フレームの途中でビットスワップや論理反転が発生したとしても、その発生を確実に検出して補償することができる。なお、サブフレームの途中で発生するビットスワップや論理反転については、誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理により補償される。したがって、光伝送システムによれば、局部発振光の位相変動等により発生する動的なビットスワップおよび論理反転を高い精度で補償することが可能になる。
【0061】
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
図9は、本発明による光伝送システムの第1実施形態の構成を示すブロック図である。
第1実施形態の光伝送システムは、例えば、偏波多重方式または多値変調方式を利用することにより1シンボル時間で2ビット(4値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、伝送路や光デバイスのPDLなどが原因で発生する伝送チャネル間の特性のばらつきを考慮し、該ばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように各伝送チャネルへの送信データの割当を行うことで、受信時の誤り訂正性能の劣化を抑えるようにしたものである。図9の構成例では、送信信号処理回路11’’、光源(LD)12および光変調部13を備えた光送信器10と、光受信部31および受信信号処理回路32’’を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されており、送信信号処理回路11’’が上記チャネル間の特性ばらつきを平均化するための送信データの割当を行う機能を具備し、また、受信信号処理回路32’’が送信側での割当に対応させて受信データの引当を行う機能を具備している。なお、送信信号処理回路11’’および受信信号処理回路32’’を除いた他の部分の構成は、上述の図1に示した光伝送システムの場合と基本的に同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0062】
送信信号処理回路11’’は、図9の上部に拡大して例示しているような構成になっており、図1に示した光伝送システムの送信信号処理回路11との相違点は、検出用ビット付与部115に代えてデータ割当部118を設けている点である。このデータ割当部118は、スクランブル部114から出力されるパラレル信号について、通常の割当ではX偏波で伝送されることになるチャネル(例えばA,C)の各ビットと、Y偏波で伝送されることになるチャネル(例えばB,D)の各ビットとが所要の割合で入れ替わるように、各偏波チャネルへのデータ(ビット)の割当を変更する。
【0063】
図10は、上記データ割当部118の具体的な構成例を示したものである。この回路は、スクランブル部114から出力されるNビット(例えば、N=16ビット)のパラレル信号が伝播する並列信号配線の一部について、奇数番目(例えば、5,7,13および15番目)と偶数番目(例えば、6,8,14および16番目)を入れ替えて構成されている。このような回路では、図10の左上にシリアル化して示した入力データについて、A2とB2、C2とD2、A4とB4、C4とD4の順番がそれぞれ入れ替えられ、図10の右下に示すような出力データが生成される。これにより、図11の右側に示すように、Aチャネルの各ビットA1〜A4、Bチャネルの各ビットB1〜B4、Cチャネルの各C1〜C4、Dチャネルの各ビットD1〜D4が、X偏波およびY偏波の各チャネルに混在するようになる。なお、データ割当部118の構成は上記の一例に限定されるものではない。
【0064】
また、受信信号処理回路32’’は、図9の下部に拡大して例示しているような構成になっており、図1に示した光伝送システムの受信信号処理回路32との相違点は、ビットスワップ論理反転制御部322に代えてデータ引当部328を設けている点である。このデータ引当部328は、M:N分離部321から出力されるパラレル信号について、送信側で入れ替えられた各ビットの順番を元に戻す処理を行う。データ引当部328の具体的な回路構成としては、前述の図10に示した回路構成と基本的に同様のものを適用することが可能である。
【0065】
上記のような構成の光伝送システムでは、受信信号処理回路32’’内の誤り訂正デコーディング部324で受信信号の誤り訂正処理(FECデコード)を行う際、図12に示すように、X偏波で伝送されたA1,A3とY偏波で伝送されたA2,A4とがAチャネルとしてFECデコードされ、X偏波で伝送されたB2,B4とY偏波で伝送されたB1,B3とがBチャネルとしてFECデコードされる。また、これと同様にして、X偏波で伝送されたC1,C3とY偏波で伝送されたC2,C4とがCチャネルとしてFECデコードされ、X偏波で伝送されたD2,D4とY偏波で伝送されたD1,D3とがDチャネルとしてFECデコードされる。よって、伝送路20のPDLなどが原因でX偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間に特性のばらつきが発生しても、受信側でFECデコードされるA〜Dチャネルはそれぞれランダム誤りとなるため、偏波チャネル間の特性ばらつきによる誤り訂正性能の劣化を抑えることができる。
【0066】
なお、上記の第1実施形態では、具体例として、偏波多重方式が適用される場合を想定し、X偏波およびY偏波の各チャネル間の特性ばらつきが平均化されるように各チャネルへの送信データの割当を行うことで、誤り訂正性能の劣化を抑える場合を説明したが、このような考え方は、例えば多相位相変調方式が適用される場合に、異なる位相チャネルの間で特性にばらつきが発生するようなときにも有効である。この場合、特性ばらつきが全ての位相チャネルに亘って平均化されるように各位相チャネルへの送信データの割当を最適化すればよい。
【0067】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図13は、本発明による光伝送システムの第2実施形態の構成を示すブロック図である。
第2実施形態の光伝送システムは、例えば、少なくとも偏波多重方式を利用することにより1シンボル時間で2ビット(4値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信を行うことで、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきを低減し、受信時の誤り訂正性能の劣化を抑えるようにしたものである。図13の構成例では、送信信号処理回路11’’’、光源(LD)12および光変調部13を備えた光送信器10と、偏波間差動受信部35および受信信号処理回路32’’’を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されており、送信信号処理回路11’’’が上記X偏波およびY偏波のチャネル間での差動受信を行うための送信信号のプリコーディング機能を具備し、また、偏波間差動受信部35が受信した光信号を電気信号に変換してX偏波およびY偏波にそれぞれ対応した信号間の差動受信を行う機能を具備している。
【0068】
なお、受信信号処理回路32’’’は、上述の図17に示した従来のシステムに用いられるものと同様の構成を適用することが可能であり、ここでは図13の下部に拡大して例示しているように、M:N分離部321、デスクランブル部323、誤り訂正デコーディング部324、フレームデコーディング部325およびシリアル変換部326からなる構成を用いている。また、送信信号処理回路11’’’、偏波間差動受信部35および受信信号処理回路32’’’を除いた他の部分の構成は、上述の図1に示した光伝送システムの場合と基本的に同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0069】
送信信号処理回路11’’’は、図13の上部に拡大して例示しているような構成になっており、図1に示した光伝送システムの送信信号処理回路11との相違点は、検出用ビット付与部115およびN:M多重部116に代えてプリコーディング部119を設けている点である。このプリコーディング部119は、例えば図14に示すように、スクランブル部114からの出力信号をプリコーダ119Aでプリコーディングした後、該プリコーダ119Aから出力される2つの信号をデマルチプレクサ119B,119Cでそれぞれ2つに分岐し、各デマルチプレクサ119B,119Cの2出力を相互に組み合わせることで、X偏波側変調信号およびY偏波側変調信号を生成する。
【0070】
偏波間差動受信部35は、例えば図15に示すように、局部発振光源351、偏波ダイバシティ90°ハイブリッド回路352、光検出器353、ADコンバータ354およびデジタル信号処理回路355から構成されており、さらに、デジタル信号処理回路355は、機能ブロックとして、波形歪み補償回路355A、偏波分離回路355B、X偏波用位相同期回路355C、Y偏波用位相同期回路355D、X偏波用識別回路355E、Y偏波用識別回路355Fおよび差動受信回路355Gを有している。ただし、偏波間差動受信部35の構成は上記の一例に限定されるものではない。
【0071】
上記のような構成の光伝送システムでは、X偏波チャネルとY偏波チャネルの間で差動受信が行われることにより、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきによる影響が実質的になくなるため、従来のような受信信号の誤りのランダム性の低下による誤り訂正性能の劣化を抑えることができる。
【0072】
なお、上記の第2実施形態では、デジタルコヒーレント受信方式の光受信器に対してX偏波およびY偏波間の差動受信を適用する一例を示したが、直接検波方式の光受信器に対してX偏波およびY偏波間の差動受信を適用しても同様の作用効果を得ることが可能である。
【0073】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図16は、本発明による光伝送システムの第3実施形態の構成を示すブロック図である。
第3実施形態の光伝送システムは、例えば、少なくとも偏波多重方式を利用することにより1シンボル時間で2ビット(4値)以上の情報を伝送することが可能なシステムについて、送信側で偏波多重した光信号の偏波状態をスクランブルした後に伝送路に送信し、受信側では光信号の偏波回転に追従しながら偏波分離を行って所要の受信処理を実行することで、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきを低減し、受信時の誤り訂正性能の劣化を抑えるようにしたものである。
【0074】
具体的に、図16の構成例では、送信信号処理回路11’’’’、光源(LD)12、光変調部13および偏波スクランブラ14を備えた光送信器10と、偏波分離部36、光受信部31および受信信号処理回路32’’’’を備えた光受信器30とが、伝送路20を介して互いに接続されている。なお、送信信号処理回路11’’’’および受信信号処理回路32’’’’は、上述の図17に示した従来のシステムに用いられる回路と同様の構成である。また、送信側の光源12および光変調部13、並びに、光受信部31の構成は、上述の図1に示した光伝送システムの場合と基本的に同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0075】
偏波スクランブラ14は、光変調部13内の偏波合成器(図17参照)の後段に配置され、偏波多重された光信号の偏波面を、誤り訂正フレームのフレーム長に相当する時間よりも短い時間で回転させ、該光信号を伝送路20に出力する。この偏波スクランブラ14は、光信号の偏波面を360°回転させる構成のものを用いてもよいが、例えば、0°と90°の間で偏波面を回動(往復)させるだけの簡単な構成のものを使用してもよい。このような偏波スクランブラ14は、例えば、1/2波長板、可変ファラデー回転子、電気光学デバイス、音響光学デバイス、PLZT素子などを利用することで比較的簡単に実現することが可能である。
【0076】
偏波分離部36は、ここでは例えば、偏波面回転回路361、偏波分離回路362、偏波分離モニタ363、ループフィルタ364およびデジタル制御発振器365から構成されている。偏波面回転回路361は、送信側で偏波スクランブルされた光信号が伝送路20を介して入力され、該光信号の偏波面をデジタル制御発振器365から出力される制御信号に従って回転させる回路である。偏波分離回路362は、偏波面回転回路361で偏波面の回転された光信号をX偏波成分とY偏波成分に分離する回路である。この偏波分離回路362で分離されたX偏波およびY偏波の各光信号は、後段の光受信部31に与えられると共に、各々の光信号の一部がモニタ光として分岐されて偏波分離モニタ363に送られる。
【0077】
偏波分離モニタ363は、X偏波およびY偏波のモニタ光を用いて、受信した光信号が正しく偏波分離されているかどうかをモニタする回路である。この偏波分離モニタ363は、例えば、X偏波とY偏波のパワーの相関をとるか、または、送信側でX偏波若しくはY偏波のどちらか一方にパイロット信号を予め重畳しておき、X偏波およびY偏波のモニタ光に含まれるパイロット信号を検出することにより、受信光の偏波分離が送信側での偏波スクランブルに追従して行われているかをモニタする。該モニタ結果は、ここでは偏波分離のずれ量を示すモニタ信号としてループフィルタ364に出力される。
【0078】
ループフィルタ364は、偏波分離モニタ363から出力されるモニタ信号の交流成分をカットすることで、偏波面回転回路361における偏波面の回転をトラッキング可能にする。デジタル制御発振器365は、ループフィルタ364からの出力信号に従って、送信側での偏波スクランブルに追従した偏波面の回転量を示す制御信号を生成し、該制御信号を偏波面回転回路361に出力する。
【0079】
なお、ここではデジタル制御発振器を使用する一例を示したが、ループフィルタの出力信号を平均化された偏波分離のずれ量を示す信号とした場合には、デジタル制御発振器に代えて積分回路を使用してもよい。
【0080】
上記のような構成の光伝送システムでは、送信側において、偏波多重された直後の光信号の偏波面が、誤り訂正フレームのフレーム長相当時間よりも短い時間で高速に回動されることで、X偏波およびY偏波の各チャネル間の特性ばらつきが誤り訂正フレーム内で平均化されるようになる。そして、上記送信側での偏波スクランブルに追従させて受信光の偏波分離を行うことにより、異なる偏波チャネル間の特性ばらつきによる影響が実質的になくなるため、従来のような受信信号の誤りのランダム性の低下による誤り訂正性能の劣化を抑えることができる。
【0081】
なお、上記の第3実施形態では、光受信器30内で光受信部31の前段に偏波分離部36を配置し、受信信号の偏波回転および偏波分離を光段で行う一例を示したが、例えば、光受信部31内のデジタル信号処理回路(図17参照)で上記の偏波回転および偏波分離に相当する処理を行うようにすることも可能である。
【0082】
また、上述した第1〜第3実施形態では、光送信器10および光受信器30を伝送路20の両端に配置して、光信号が光送信器10から光受信器30に一方向に伝送されるシステム構成例を示したが、光信号が上下回線を介して双方向に伝送されるシステムにも本発明は適用可能である。双方向の場合には、上記の光送信器10および光受信器30を組み合わせて光送受信装置を構成し、該光送受信装置を端局若しくは中継局として配置したシステム構成となる。
【0083】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
【0084】
(付記1) 1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信する光送信器と、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光受信器と、を備えた光伝送システムであって、
前記光送信器は、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する送信信号処理回路と、
光源と、
前記送信信号処理回路から出力される各送信信号に従って、前記光源からの出力光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する光変調部と、
前記光変調部で生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える特性平均化部と、を備え、
前記光受信器は、前記特性平均化部で与えられる光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0085】
(付記2) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、前記各伝送チャネル間の特性のばらつきに応じて、各伝送チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、各伝送チャネル間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について、前記特性平均化部における各伝送チャネルへの送信データの割当に対応させて受信データの引当を行い、該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0086】
(付記3) 付記2に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきに応じて、各偏波チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0087】
(付記4) 付記2に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、多相位相変調方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、異なる位相チャネルの間の特性のばらつきに応じて、各位相チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、異なる位相チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0088】
(付記5) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信を行うためのプリコーディング処理を施すことで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信する偏波間差動受信部と、
前記偏波間差動受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0089】
(付記6) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記光変調部から前記伝送路に送信される光信号の偏波面を、誤り訂正フレームのフレーム長に相当する時間よりも短い時間で回転させることで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号の偏波面を回転させた後にX偏波およびY偏波に分離してモニタし、該モニタ結果に応じて受信光の偏波面の回転角をフィードバック制御することで、前記特性平均化部での偏波面の回転に追従しながら受信光をX偏波およびY偏波の各光信号に分離する偏波分離部と、
前記偏波分離部で偏波分離された各光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0090】
(付記7) 付記6に記載の光伝送システムであって、
前記特性平均化部は、前記光信号の偏波面を0°と90°の間で回動させる構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【0091】
(付記8) 1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信し、該伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する過程と、
該生成された各送信信号に従って光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する過程と、
該生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える過程と、
該光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う過程と、を含むことを特徴とする光伝送方法。
【符号の説明】
【0092】
10…光送信器
11…送信信号処理回路
12…光源
13…光変調部
14…偏波スクランブラ
20…伝送路
30…光受信器
31…光受信部
32…受信信号処理回路
33…局部発振光源
34…コヒーレント受信部
35…偏波間差動受信部
36…偏波分離部
111…パラレル変換部
112…フレームエンコーディング部
113…誤り訂正エンコーディング部
114…スクランブル部
115…検出用ビット付与部
116…N:M多重部
117…サブフレームエンコーディング部
118…データ割当部
119…プリコーディング部
321…M:N分離部
322…ビットスワップ論理反転制御部
323…デスクランブル部
324…誤り訂正デコーディング部
325…フレームデコーディング部
326…シリアル変換部
327…サブフレームデコーディング部
328…データ引当部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信する光送信器と、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光受信器と、を備えた光伝送システムであって、
前記光送信器は、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する送信信号処理回路と、
光源と、
前記送信信号処理回路から出力される各送信信号に従って、前記光源からの出力光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する光変調部と、
前記光変調部で生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える特性平均化部と、を備え、
前記光受信器は、前記特性平均化部で与えられる光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、前記各伝送チャネル間の特性のばらつきに応じて、各伝送チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、各伝送チャネル間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について、前記特性平均化部における各伝送チャネルへの送信データの割当に対応させて受信データの引当を行い、該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信を行うためのプリコーディング処理を施すことで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信する偏波間差動受信部と、
前記偏波間差動受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記光変調部から前記伝送路に送信される光信号の偏波面を、誤り訂正フレームのフレーム長に相当する時間よりも短い時間で回転させることで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号の偏波面を回転させた後にX偏波およびY偏波に分離してモニタし、該モニタ結果に応じて受信光の偏波面の回転角をフィードバック制御することで、前記特性平均化部での偏波面の回転に追従しながら受信光をX偏波およびY偏波の各光信号に分離する偏波分離部と、
前記偏波分離部で偏波分離された各光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項5】
1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信し、該伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する過程と、
該生成された各送信信号に従って光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する過程と、
該生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える過程と、
該光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正処理を行う過程と、を含むことを特徴とする光伝送方法。
【請求項1】
1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信する光送信器と、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光受信器と、を備えた光伝送システムであって、
前記光送信器は、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する送信信号処理回路と、
光源と、
前記送信信号処理回路から出力される各送信信号に従って、前記光源からの出力光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する光変調部と、
前記光変調部で生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える特性平均化部と、を備え、
前記光受信器は、前記特性平均化部で与えられる光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を行う構成としたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、前記各伝送チャネル間の特性のばらつきに応じて、各伝送チャネルに割り当てる送信データを入れ替えることで、各伝送チャネル間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について、前記特性平均化部における各伝送チャネルへの送信データの割当に対応させて受信データの引当を行い、該受信信号の誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記送信信号処理回路において前記複数の送信信号を生成する際に、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信を行うためのプリコーディング処理を施すことで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号を、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間で差動受信する偏波間差動受信部と、
前記偏波間差動受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記光送信器から前記伝送路に送信される光信号は、少なくとも偏波多重方式を用いた光信号であり、
前記特性平均化部は、前記光変調部から前記伝送路に送信される光信号の偏波面を、誤り訂正フレームのフレーム長に相当する時間よりも短い時間で回転させることで、X偏波チャネルおよびY偏波チャネルの間の特性のばらつきを平均化する構成とし、
前記光受信器は、
前記伝送路を伝播した前記光信号の偏波面を回転させた後にX偏波およびY偏波に分離してモニタし、該モニタ結果に応じて受信光の偏波面の回転角をフィードバック制御することで、前記特性平均化部での偏波面の回転に追従しながら受信光をX偏波およびY偏波の各光信号に分離する偏波分離部と、
前記偏波分離部で偏波分離された各光信号を受信して電気信号に変換する光受信部と、
前記光受信部から出力される受信信号について誤り訂正を含んだデコーディング処理を実行する受信信号処理回路と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項5】
1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能であり多重化した複数の伝送チャネルを含んだ光信号を伝送路に送信し、該伝送路を伝播した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、
予め設定したフォーマットに従って送信情報をエンコーディングして前記複数の伝送チャネルにそれぞれ対応した複数の送信信号を生成する過程と、
該生成された各送信信号に従って光をそれぞれ変調し、該各変調光を多重化することにより、前記伝送路に送信する光信号を生成する過程と、
該生成された光信号が前記伝送路を伝播することで発生する前記各伝送チャネル間の特性のばらつきが全ての伝送チャネルに亘って平均化されるように、前記伝送路に送信する光信号の状態に変化を与える過程と、
該光信号の状態の変化に対応させて、前記伝送路を伝播した前記光信号を受信し、当該受信信号の誤り訂正処理を行う過程と、を含むことを特徴とする光伝送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−124934(P2012−124934A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20485(P2012−20485)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2007−258157(P2007−258157)の分割
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2007−258157(P2007−258157)の分割
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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