説明

光信号処理装置および光通信システム

【課題】搬送光に多重された信号を、搬送光に与える影響を抑制して取得することが可能になる。
【解決手段】非線形光学媒質1には、搬送光EOが伝搬する。合波器3は、搬送光EOのアイドラ光EOCを発生させるための出力制御光EPを搬送光EOに合波する。分波器4は、搬送光EOからアイドラ光EOCを分波する。受信機は、分波器4によって分波されたアイドラ光EOCから、搬送光EOに多重されている信号を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、搬送光を伝搬する光信号処理装置および光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の光ネットワークは、例えば、従来の光通信システムをベースとしつつ、中継光ノード等、端局装置から離れた地点におかれた装置において、制御光の分岐挿入やスイッチング等の処理を行う必要がある。その際、できるだけ光信号と電気信号との間の変換なしに、情報を伝搬・処理していくことが、エネルギー効率の観点から有効である。
【0003】
現在の中継光ノード等においては、端局装置のように光−電気変換を用いて信号処理を行っており、例えば、伝送されてきた制御光をいったん電気信号に変換し、これを電気的に処理した後、再び光信号に変換している。このため、装置構成は複雑となり、また、光−電気変換による損失を補償するために大きな電力を必要とする。
【0004】
ところで、光ネットワークは、例えば、光ネットワークの各所において各種情報をモニタし、そのモニタ信号を光ネットワークの別の地点に送信する場合がある。例えば、光ネットワークのある地点に設けられた光信号処理装置は、伝送路を伝搬している搬送光に、当該装置が設けられている地点のモニタ信号を多重し、別の地点の光信号処理装置にそのモニタ信号を送信する。
【0005】
なお、従来、送信局と、受信局との間に、光伝送路を介して敷設される中継局に、送信局からの入力制御光および励起光を非線形光学媒質に供給する制御光/励起光供給手段と、非線形光学媒質に供給された入力制御光および励起光により発生した出力制御光および位相共役光を抽出する制御光/位相共役光抽出手段とを有する位相共役光発生装置と、励起光を中継局固有の監視データにより変調する変調手段を備え、変調された監視データを含む位相共役光を受信局へ送信することを特徴とする位相共役光を用いた中継局が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3436310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、信号が多重された搬送光を伝送路から分岐して信号を受信するようにすると、伝送路を伝搬している搬送光に、例えば、パワーロス等の影響が生じるという問題点があった。
【0008】
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、搬送光に多重された信号を、搬送光に与える影響を抑制して取得することが可能になる光信号処理装置および光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、光信号処理装置が提供される。この光信号処理装置は、搬送光が伝搬する非線形光学媒質と、前記搬送光のアイドラ光を発生させるための制御光を前記搬送光に合波する合波器と、前記搬送光から前記アイドラ光を分波する分波器と、前記分波器によって分波された前記アイドラ光から前記搬送光に多重されている信号を取得する受信機と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
開示の装置およびシステムによれば、搬送光に多重された信号を、搬送光に与える影響を抑制して取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係る光信号処理装置を示した図である。
【図2】図1の光ネットワークを伝搬する搬送光のスペクトルを示した図である。
【図3】合波器および分波器の波長特性を示した図である。
【図4】第2の実施の形態に係る光信号処理装置を示した図である。
【図5】合波器および分波器の波長特性を示した図である。
【図6】第3の実施の形態に係る光通信システムを示した図である。
【図7】信号光を生成する信号光生成装置の例を示した図である。
【図8】信号光生成装置の他の例を示した図である。
【図9】信号光生成装置の他の例を示した図である。
【図10】受信機の例を示した図である。
【図11】受信機の他の例を示した図である。
【図12】第4の実施の形態に係る光信号処理装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る光信号処理装置を示した図である。図1に示すように、光信号処理装置は、非線形光学媒質1、光SW(SW:switch)2、合波器3、および分波器4を有している。
【0013】
非線形光学媒質1には、波長λOの搬送光EOが伝搬している。非線形光学媒質1は、例えば、光ネットワークの伝送路を形成している光ファイバの一部であってもよい。また、非線形光学媒質1は、非線形光学効果を高めた非線形光ファイバであってもよい。
【0014】
搬送光EOには、データ信号が多重されている。搬送光EOに多重されているデータ信号は、例えば、図1に示す光信号処理装置より上流側(図1中のA側)に設けられた、図示しない光信号処理装置によって、搬送光EOに多重されている。データ信号の多重は、後述する方法と同様の方法によって、搬送光EOに多重されている。データ信号は、例えば、前記の上流側に設けられた光信号処理装置の地点における温度や映像などのモニタ信号、あるいはその地点から発信される情報信号などである。
【0015】
光SW2には、波長λSの信号光ESと、波長λPの出力制御光EPとが入力される。波長λO,λS,λPは、それぞれ異なる波長である。光SW2は、例えば、下流側(図1中のB側)に設けられた、図示しない光信号処理装置にデータ信号を送信する場合、信号光ESを合波器3に出力する。図示しない下流側の光信号処理装置に送信するデータ信号は、例えば、図1に示す光信号処理装置の地点における温度や映像などのモニタ信号、あるいはその地点から発信される情報信号などである。信号光ESは、後述するが、周波数fのキャリア信号をデータ信号により変調したキャリア変調信号によって光変調した光である。
【0016】
また、光SW2は、例えば、図示しない上流側の光信号処理装置によって搬送光EOに多重されたデータ信号を、図1の光信号処理装置で受信する場合、出力制御光EPを合波器3に出力する。
【0017】
合波器3には、光SW2から出力される信号光ESおよび出力制御光EPの一方が入力される。合波器3は、光SW2から出力される信号光ESおよび出力制御光EPの一方を、非線形光学媒質1に入力される搬送光EOに合波する。合波器3は、例えば、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラである。
【0018】
光SW2が信号光ESを出力する場合、非線形光学媒質1には、合波器3によって信号光ESと搬送光EOが合波され入力される。搬送光EOは、非線形光学媒質1の相互位相変調(XPM:Cross Phase Modulation)により、信号光ESのパワーに比例した位相変調を受け、これによりデータ信号が多重される。多重されたデータ信号は、例えば、下流の図示しない光信号処理装置で受信される。
【0019】
また、光SW2が出力制御光EPを出力する場合、非線形光学媒質1には、合波器3によって出力制御光EPが合波された搬送光EOが入力される。非線形光学媒質1は、出力制御光EPを励起光とする、波長λOCのアイドラ光EOC(非線形光学媒質1が光ファイバの場合、四光波混合光)を発生する。
【0020】
図2は、図1の光ネットワークを伝搬する搬送光のスペクトルを示した図である。図2の(A)は、図1の合波器3の入力における搬送光EOのスペクトルを示している。図2の(B)は、非線形光学媒質1の出力における搬送光EO、出力制御光EPおよびアイドラ光EOCのスペクトルを示している。光SW2からは、出力制御光EPが出力されているとする。
【0021】
図2の(A)に示すように、搬送光EOには、例えば、図1に図示しない上流側の光信号処理装置によって、j−1個のデータ信号が多重されているとする。この搬送光EOに波長λPの出力制御光EPが合波され、非線形光学媒質1に入力されると、非線形光学媒質1からは、図2の(B)に示すスペクトルの搬送光EO、出力制御光EP、およびアイドラ光EOCが出力される。
【0022】
アイドラ光EOCのスペクトルは、図2の(B)に示すように、波長λPを中心として搬送光EOのスペクトルを折り返したスペクトルとなっている。すなわち、非線形光学媒質1に出力制御光EPを入力すると、搬送光EOのコピーがアイドラ光EOCとして得られる。
【0023】
これにより、図1に示す光信号処理装置は、伝送路から搬送光EOを分岐しなくても、分波器4でアイドラ光EOCを分岐すれば、例えば、図示しない上流側の光信号処理装置によって多重されたデータ信号を得ることができる。つまり、図1に示す光信号処理装置は、伝送路を伝搬している搬送光EOに与える影響を抑制して、データ信号を得ることが可能となる。
【0024】
図1の説明に戻る。光SW2が信号光ESを合波器3に出力する場合、搬送光EOと信号光ESが合波され、非線形光学媒質1に入力されている。分波器4は、搬送光EOから信号光ESを分波し、後段の伝送路に信号光ESが伝搬しないようにする。また、光SW2が出力制御光EPを合波器3に出力する場合、搬送光EOには、出力制御光EPが合波されている。分波器4は、搬送光EOから出力制御光EPを分波し、後段の伝送路に出力制御光EPが伝搬しないようにする。さらに、光SW2が出力制御光EPを合波器3に出力する場合、非線形光学媒質1にてアイドラ光EOCが発生する。分波器4は、搬送光EOからアイドラ光EOCを分波し、後段の伝送路にアイドラ光EOCが伝搬しないようにする。すなわち、光ネットワークの伝送路には、搬送光EOが伝搬するようにする。
【0025】
なお、分波器4によって分波されたアイドラ光EOCは、例えば、受信機のPD(Photo Diode)にて電気信号に変換され、データ信号に復調される。分波器4は、例えば、WDMカプラである。
【0026】
図3は、合波器および分波器の波長特性を示した図である。図3の横軸は波長を示し、縦方向はパワーを示している。図3には、図1で説明した波長λOの搬送光EO、波長λSの信号光ES、波長λPの出力制御光EP、および波長λOCのアイドラ光EOCのパワーが示してある。
【0027】
図3に示す点線矢印A1は、合波器3と分波器4の遮断波長を示している。合波器3と分波器4は、例えば、搬送光EOの入力ポートに対して、点線矢印A1に示す遮断波長より短い波長の光を通過させ、点線矢印A1に示す遮断波長以上の波長の光の通過を遮断(分波)する。
【0028】
すなわち、図1に示す合波器3と分波器4の搬送光EOの入力ポートに対する遮断波長を、点線矢印A1に示すように設定し、搬送光EOの波長λO、信号光ESの波長λS、および出力制御光EPの波長λPを、図3に示すように配置する。これにより、搬送光EOは、損失を抑えたまま、信号光ESによる相互位相変調を受け、出力制御光EPによる四光波混合光を発生することができる。そして、光ネットワークの伝送路には、搬送光EOが伝搬し、信号光ESおよび出力制御光EPは伝搬しない。
【0029】
図1の動作について説明する。まず、搬送光EOにデータ信号を多重する場合について説明する。光SW2は、例えば、図示しない下流側の光信号処理装置のモニタ要求に応じて、信号光ESを合波器3に出力する。合波器3に出力された信号光ESは、搬送光EOに合波され、非線形光学媒質1に入力される。搬送光EOは、非線形光学媒質1において、信号光ESによる相互位相変調がかけられ、信号光ESの有するデータ信号が周波数多重される。これにより、図1に示す光信号処理装置の地点におけるデータ信号を下流側に送信することができる。
【0030】
なお、信号光ESは、例えば、上記したように、周波数fのキャリア信号をデータ信号により変調したキャリア変調信号によって光変調した光である。従って、例えば、光ネットワークの伝送路に設けられている各光信号処理装置のキャリア変調信号の周波数を変えることによって、搬送光EOにデータ信号を周波数多重できる。
【0031】
次に、図1に示す光信号処理装置において、搬送光EOに多重されているデータ信号を取得する場合について説明する。すなわち、図1の光信号処理装置より上流側の地点におけるモニタ情報を取得する場合について説明する。
【0032】
この場合、光SW2は、搬送光EOの波長λOと異なる波長λPの出力制御光EPを合波器3に出力する。合波器3に出力された出力制御光EPは、搬送光EOに合波され、非線形光学媒質1に入力される。非線形光学媒質1では、出力制御光EPを励起光とするアイドラ光EOCが発生する。
【0033】
分波器4は、搬送光EOからアイドラ光EOCを分波する。アイドラ光EOCは、図2で説明したように、搬送光EOのコピーといえる。従って、光信号処理装置は、伝送路から搬送光EOを分波せずアイドラ光EOCを分波し、分波したアイドラ光EOCからデータ信号を取得することができる。すなわち、光信号処理装置は、伝送路を伝搬する搬送光EOに、パワーロス等の影響を与えないようにして、搬送光EOに多重されているデータ信号を取得することができる。
【0034】
このように、光信号処理装置は、搬送光EOのアイドラ光EOCから、搬送光EOに多重されているデータ信号を取得するために、アイドラ光EOCを発生させるための出力制御光EPを搬送光EOに合波するようにした。これにより、光信号処理装置は、搬送光EOに多重されたデータ信号を、搬送光EOに与える影響を抑制して取得することが可能になる。
【0035】
また、搬送光EOは、分岐による損失を生じることなく伝送路を伝搬し、また、出力制御光EPのパワーが十分大きい場合、光パラメトリック増幅により線形増幅される。よって、光信号処理装置は、搬送光EOの光信号対雑音比をほとんど低下させることなく、データ信号を取得することが可能となる。
【0036】
なお、図1では、光SW2によって、信号光ESと出力制御光EPとを切替えて合波器3に出力するようにしたが、分波器4で分波したアイドラ光EOCから、データ信号のみを受信する場合には、光SW2を設けずに出力制御光EPを合波器3に入力するようにしてもよい。
【0037】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態では、搬送光が伝送路を一方向に伝搬する場合について説明した。第2の実施の形態では、搬送光が伝送路を双方向に伝搬する場合について説明する。
【0038】
図4は、第2の実施の形態に係る光信号処理装置を示した図である。図4に示すように、光信号処理装置は、非線形光学媒質1、光SW2,11、合波器3,12、および分波器4,13を有している。図4において、図1と同じものには同じ符号が付してある。
【0039】
図4に示す光ネットワークの伝送路には、AからB方向に、波長λO1の搬送光EO1が伝搬している。また、光ネットワークの伝送路には、搬送光EO1の伝搬方向とは反対方向のBからA方向に、波長λO2の搬送光EO2が伝搬している。
【0040】
光SW2には、波長λS1の信号光ES1および波長λP1の出力制御光EP1が入力されている。信号光ES1は、周波数f1のキャリア信号をデータ信号により変調したキャリア変調信号によって光変調した光である。
【0041】
光SW11には、波長λS2の信号光ES2および波長λP2の出力制御光EP2が入力されている。信号光ES2は、周波数f2のキャリア信号をデータ信号により変調したキャリア変調信号によって光変調した光である。
【0042】
分波器4は、搬送光EO1から信号光ES1、出力制御光EP1、およびアイドラ光EOC1を分波する。アイドラ光EOC1は、出力制御光EP1を励起光とした搬送光EO1のアイドラ光である。
【0043】
分波器13は、搬送光EO2から信号光ES2、出力制御光EP2、およびアイドラ光EOC2を分波する。アイドラ光EOC2は、出力制御光EP2を励起光とした搬送光EO2のアイドラ光である。
【0044】
図4に示す非線形光学媒質1、光SW2、合波器3、および分波器4は、図1で説明した非線形光学媒質1、光SW2、合波器3、および分波器4と同様である。すなわち、図4に示す非線形光学媒質1、光SW2、合波器3、および分波器4は、AからB方向に伝搬する搬送光EO1にデータ信号を多重し、また、上流側(図4中のA側)にて搬送光EO1に多重されたデータ信号を取得できるようにする。
【0045】
非線形光学媒質1、光SW11、合波器12、および分波器13も、図1で説明した非線形光学媒質1、光SW2、合波器3、および分波器4と同様である。ただし、図4に示す非線形光学媒質1、光SW11、合波器12、および分波器13は、搬送光EO1とは反対方向に伝搬する搬送光EO2にデータ信号を多重し、また、下流側(図4中のB側)にて搬送光EO2に多重されたデータ信号を取得できるようにする。すなわち、非線形光学媒質1、光SW11、合波器12、および分波器13は、非線形光学媒質1、光SW2、合波器3、および分波器4とは逆に、上流方向にデータ信号を送信するようにし、下流方向から送信されるデータ信号を取得(受信)するようにする。
【0046】
図5は、合波器および分波器の波長特性を示した図である。図5の横軸は波長を示し、縦方向はパワーを示している。図5には、図4で説明した波長λO1,λO2の搬送光EO1,EO2、波長λS1,λS2の信号光ES1,ES2、波長λP1,λP2の出力制御光EP1,EP2、および波長λOC1,λOC2のアイドラ光EOC1,EOC2のパワーが示してある。
【0047】
図5に示す点線矢印A11は、合波器3と分波器4の遮断波長を示している。合波器3と分波器4は、例えば、搬送光EO1の入力ポートに対して、点線矢印A11に示す遮断波長より短い波長の光を通過させ、点線矢印A11に示す遮断波長以上の波長の光の通過を遮断(分波)する。
【0048】
図5に示す点線矢印A12は、合波器12と分波器13の遮断波長を示している。合波器12と分波器13は、例えば、搬送光EO2の入力ポートに対して、点線矢印A12に示す遮断波長より長い波長の光を通過させ、点線矢印A12に示す遮断波長以下の波長の光の通過を遮断(分波)する。
【0049】
点線矢印A11に示す合波器3と分波器4の遮断波長は、図5に示すように、点線矢印A12に示す合波器12と分波器13の遮断波長より大きいとする。すなわち、図5に示す点線矢印A11と点線矢印A12の間の波長が、伝送路を伝搬する光の透過帯域となるようにする。
【0050】
搬送光EO1の波長λO1と搬送光EO2の波長λO2は、点線矢印A11と点線矢印A12との間の透過帯域内となるように設定する。また、信号光ES1の波長λS1と信号光ES2の波長λS2は、透過帯域の外側に対称となるように設定する。また、出力制御光EP1の波長λP1と出力制御光EP2の波長λP2は、透過帯域の外側に対称となるように設定する。さらに、アイドラ光EOC1の波長λOC1とアイドラ光EOC2の波長λOC2は、透過帯域の外側に対称となるように設定する。
【0051】
すなわち、図4に示す合波器3,12と分波器4,13の遮断波長を点線矢印A11,A12に示すように設定し、搬送光EO1,EO2の波長λO1,λO2を、図5に示すように配置することにより、搬送光EO1,EO2は、ほとんど損失なしに信号光ES1,ES2による相互位相変調を受けることができる。また、波長λS1,λS2の信号光ES1,ES2、波長λP1,λP2の出力制御光EP1,EP2、および波長λOC1,λOC2のアイドラ光EOC1,EOC2を、図5に示すように配置することにより、光ネットワークを形成している伝送路を伝搬しないようにすることができる。
【0052】
図4の動作について説明する。まず、AからB方向の搬送光EO1にデータ信号を多重する場合について説明する。光SW2は、例えば、図示しない下流側の光信号処理装置のモニタ要求に応じて、信号光ES1を合波器3に出力する。合波器3に出力された信号光ES1は、搬送光EO1に合波され、非線形光学媒質1に入力される。搬送光EO1は、非線形光学媒質1において、信号光ES1による相互位相変調がかけられ、信号光ES1の有するデータ信号が周波数多重される。これにより、図4に示す光信号処理装置は、当該装置の地点におけるデータ信号を下流側に送信することができる。
【0053】
BからA方向に伝搬する搬送光EO2にデータ信号を多重する場合には、光SW11は、例えば、図示しない上流側の光信号処理装置のモニタ要求に応じて、信号光ES2を合波器12に出力する。合波器12に出力された信号光ES2は、搬送光EO2に合波され、非線形光学媒質1に入力される。搬送光EO2は、非線形光学媒質1において、信号光ES2による相互位相変調がかけられ、信号光ES2の有するデータ信号が周波数多重される。これにより、図4に示す光信号処理装置は、当該装置の地点におけるデータ信号を上流側に送信することができる。
【0054】
次に、図4に示す光信号処理装置において、搬送光EO1に多重されているデータ信号を取得する場合について説明する。すなわち、図4に示す光信号処理装置より上流側におけるモニタ情報を取得する場合について説明する。
【0055】
この場合、光SW2は、搬送光EO1の波長λO1と異なる波長λP1の出力制御光EP1を合波器3に出力する。合波器3に出力された出力制御光EP1は、搬送光EO1に合波され、非線形光学媒質1に入力される。非線形光学媒質1では、出力制御光EP1を励起光とするアイドラ光EOC1が発生する。
【0056】
分波器4は、搬送光EO1からアイドラ光EOC1を分波する。アイドラ光EOC1は、搬送光EO1のコピーといえる。従って、光信号処理装置は、伝送路から搬送光EO1を分波せずアイドラ光EOC1を分波し、分波したアイドラ光EOC1から上流側のデータ信号を取得することができる。すなわち、光信号処理装置は、伝送路を伝搬する搬送光EO1に、パワーロス等の影響を与えないようにして、上流側のデータ信号を取得することができる。
【0057】
BからA方向に伝搬する搬送光EO2から、図4に示す光信号処理装置より下流側のデータ信号を取得する場合には、光SW11は、搬送光EO2の波長λO2と異なる波長λP2の出力制御光EP2を合波器12に出力する。合波器12に出力された出力制御光EP2は、搬送光EO2に合波され、非線形光学媒質1に入力される。非線形光学媒質1では、出力制御光EP2を励起光とするアイドラ光EOC2が発生する。
【0058】
分波器13は、搬送光EO2からアイドラ光EOC2を分波する。アイドラ光EOC2は、搬送光EO2のコピーといえる。従って、光信号処理装置は、伝送路から搬送光EO2を分波せずアイドラ光EOC2を分波し、分波したアイドラ光EOC2から下流側のデータ信号を取得することができる。すなわち、光信号処理装置は、伝送路を伝搬する搬送光EO2に、パワーロス等の影響を与えないようにして、下流側のデータ信号を取得することができる。
【0059】
このように、光信号処理装置は、非線形光学媒質1を双方向に伝搬する搬送光EO1,EO2のアイドラ光EOC1,EOC2から、搬送光EO1,EO2に多重されているデータ信号を取得するために、アイドラ光EOC1,EOC2を発生させるための出力制御光EP1,EP2を搬送光EO1,EO2に合波するようにした。これにより、光信号処理装置は、搬送光EO1,EO2に多重されたデータ信号を、搬送光EO1,EO2に与える影響を抑制して取得することが可能になる。
【0060】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第3の実施の形態では、光ネットワークの伝送路に複数の光信号処理装置を挿入した光通信システムについて説明する。
【0061】
図6は、第3の実施の形態に係る光通信システムを示した図である。図6に示すように、光通信システムは、光信号処理装置21〜23および伝送路31を有している。光信号処理装置21〜23は、伝送路31の間に挿入され、伝送路31の両端には、ターミナルA,Bが接続されている。波長λO1の搬送光EO1は、ターミナルAからターミナルB方向へ伝搬し、波長λO2の搬送光EO2は、ターミナルBからターミナルA方向へ伝搬している。
【0062】
なお、図6では、光信号処理装置21〜23は、3個しか示していないが、N個存在しているものとする。以下では、光信号処理装置21〜23のそれぞれを1番目、…、j番目、…、N番目の光信号処理装置と呼ぶことがある。また、ターミナルA側を上流側、ターミナルB側を下流側とする。
【0063】
図6に示す光信号処理装置21〜23のそれぞれは、図4で説明した光信号処理装置に対応する。すなわち、光信号処理装置21〜23のそれぞれは、図4で説明した光信号処理装置と同様に、1個の非線形光学媒質、2個の光SW、2個の合波器、および2個の分波器を有している。非線形光学媒質は、例えば、伝送路31を形成している光ファイバの一部であってもよい。
【0064】
以下、j番目の光信号処理装置22について説明する。1番目の光信号処理装置21およびN番目の光信号処理装置23は、j番目の光信号処理装置22のjをj=1、j=Nとした場合と同様である。
【0065】
j番目の光信号処理装置22には、波長λS1j,λS2jの信号光ES1j,ES2jと、波長λP1j,λP2jの出力制御光EP1j,EP2jとが入力されている。信号光ES1jは、後述するが、周波数f1jのサブキャリア信号をデータ信号により変調したサブキャリア変調信号によって光変調した光である。また、信号光ES2jは、後述するが、周波数f2jのサブキャリア信号をデータ信号により変調したサブキャリア変調信号によって光変調した光である。
【0066】
信号光ES1jと出力制御光EP1jは、光信号処理装置22の有する合波器によって、搬送光EO1に合波される。これにより、j番目の光信号処理装置22は、例えば、下流側の光信号処理装置からの要求に応じて、光信号処理装置22の地点におけるデータ信号を下流側に送信することができる。また、j番目の光信号処理装置22は、上流側の光信号処理装置のデータ信号を取得することができる。
【0067】
信号光ES2jと出力制御光EP2jは、光信号処理装置22の有する合波器によって、搬送光EO2に合波される。これにより、j番目の光信号処理装置22は、例えば、上流側の光信号処理装置からの要求に応じて、光信号処理装置22の地点におけるデータ信号を上流側に送信することができる。また、j番目の光信号処理装置22は、下流側の光信号処理装置のデータ信号を取得することができる。
【0068】
N個の光信号処理装置のそれぞれにおけるサブキャリア信号の周波数f11,…,f1j,…,f1N,f21,…,f2j,…,f2Nは異なるように割り当てられている。これにより、光ネットワークに設けられたN個の光信号処理装置は、データ信号を搬送光EO1,EO2に周波数多重することができる。例えば、図2の(B)に示すように、データ信号を搬送光EO1,EO2に周波数多重することができる。なお、搬送光EO1,EO2は、ターミナルA,Bにおいて信号検波される。
【0069】
このように、光通信システムは、伝送路31に挿入された光信号処理装置21〜23において、非線形光学媒質を双方向に伝搬する搬送光EO1,EO2のアイドラ光EOC1,EOC2から、搬送光EO1,EO2に多重されているデータ信号を取得するために、アイドラ光EOC1,EOC2を発生させるための出力制御光EP1,EP2を搬送光EO1,EO2に合波するようにした。これにより、光通信システムは、搬送光EO1,EO2に多重されたデータ信号を、搬送光EO1,EO2に与える影響を抑制して取得することが可能になる。
【0070】
図7は、信号光を生成する信号光生成装置の例を示した図である。図7には、j番目の光信号処理装置22に入力される信号光ES1jを生成する信号光生成装置を示している。図7に示すように、信号光生成装置は、発振器41、乗算器42、および光変調器43を有している。
【0071】
発振器41は、例えば、RF(Radio Frequency)の周波数f1jのサブキャリア信号を出力する。
乗算器42には、搬送光EO1で伝送する(搬送光EO1に多重する)データ信号B1jと、発振器41から出力されるサブキャリア信号とが入力される。乗算器42は、サブキャリア信号をデータ信号B1jによって変調し、サブキャリア変調信号B1j(f1j)を光変調器43に出力する。
【0072】
光変調器43は、乗算器42から出力されるサブキャリア変調信号B1j(f1j)に応じたパワーPS1jの信号光ES1jを出力する。
光変調器43から出力される波長λS1jの信号光ES1jは、図6に示すj番目の光信号処理装置22の光SWに入力される。信号光ES1jは、j番目の光信号処理装置22の光SWの切替え制御によって合波器に出力され、搬送光EO1に合波される。これにより、搬送光EO1は、j番目の光信号処理装置22の有する非線形光学媒質の相互位相変調により、信号光ES1jのパワーに比例した位相変調を受け、データ信号が周波数多重される。
【0073】
このように、信号光生成装置は、データ信号B1jによって変調されたサブキャリア変調信号B1j(f1j)により変調された信号光ES1jを出力する。これにより、光ネットワークを伝搬している搬送光EO1にデータ信号B1jを周波数多重することができ、光ネットワークの任意の場所からデータ信号B1jを送信することができる。
【0074】
なお、信号光生成装置は、光信号処理装置22が有していてもよい。また、信号光ES2jも図7と同様の信号光生成装置によって生成される。その他の光信号処理装置に入力される信号光も図7と同様の信号光生成装置によって生成される。また、図1で説明した信号光ESおよび図4で説明した信号光ES1,ES2も図7と同様の信号光生成装置によって生成される。
【0075】
また、データ信号B1jには、振幅変調信号、位相変調信号、周波数変調信号、多値変調信号、または直交周波数多重信号等の信号を適用することもできる。
また、信号光ES1jの偏光状態と搬送光EO1の偏光状態は、所望の相互位相変調を得ることができるように調整して、合波器に入力するようにしてもよい。例えば、信号光ES1jの偏光状態は、偏光制御器を用いて搬送光EO1の偏光状態に一致させる。または、2つの直交偏波ごとに変調度のほぼ同じ光位相変調をかける偏光ダイバーシティ方式を用いてもよい。
【0076】
さらに、信号光ES1jと搬送光EO1の偏光状態が一致している場合に比べ、互いに直交している場合の相互位相変調の変調度は約2/3(−2dB)に低下する。この場合、例えば、受信機において、搬送光EO1を電気信号に変換してデータ信号B1jに復調した後、補償回路やデジタル信号処理回路等を用いて変調度の差を補償することもできる。
【0077】
図8は、信号光生成装置の他の例を示した図である。図8において、図7と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図8の信号光生成装置は、LD(Laser Diode)44を有している。乗算器42から出力されるサブキャリア変調信号B1j(f1j)は、LD44の駆動電流としてLD44に入力される。これにより、LD44からは、光変調された信号光ES1jが出力される。
【0078】
このように、信号光生成装置は、LD44によって信号光ES1jを出力する。これにより、搬送光EO1は、j番目の光信号処理装置22の非線形光学媒質において信号光ES1jにて相互位相変調され、光ネットワークの任意の場所からデータ信号B1jを送信することができる。
【0079】
図9は、信号光生成装置の他の例を示した図である。図9において、図7と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。図8では、LD44をサブキャリア変調信号B1j(f1j)で駆動し、直接変調する場合を示した。図9では、光源と外部変調器を用いて変調する場合について説明する。
【0080】
信号光生成装置は、波長λS1jの光を出力するLD45を有している。LD45の光は、光変調器43に出力される。
光変調器43は、例えば、マッハ・ツェンダ変調器やLN(Lithium Niobate)変調器である。光変調器43は、乗算器42から出力されるサブキャリア変調信号B1j(f1j)に基づいて、LD45から出力される光を変調し、波長λS1jの信号光ES1jを出力する。
【0081】
このように、信号光生成装置は、光源と外部変調器を用いた変調によって信号光ES1jを出力することもできる。この場合、広帯域の外部変調器を用いることにより、信号光生成装置は、図8で説明した直接変調の場合よりも、高周波のサブキャリア変調信号B1j(f1j)に対応して、信号光ES1jを出力することが期待できる。なお、図8の直接変調の場合は、図9の外部変調に対し、部品点数が少なくて済み、コストを抑制することができる。
【0082】
なお、信号光生成装置のその他の例として、異なる波長(周波数)を有する2つの光波を合波した際の差周波数成分として得られるビート光を信号光ES1jとして用いることも可能である。
【0083】
図10は、受信機の例を示した図である。図6に示すN個の光信号処理装置は、例えば、図10に示す受信機を有している。受信機には、例えば、光信号処理装置の有する分波器によって分波されたアイドラ光が入力される。図10に示すように、受信機は、PD51、増幅器52、BPF(Band Pass Filer)53、および復調回路54を有している。
【0084】
PD51には、分波器によって分波されたアイドラ光が入力される。PD51は、アイドラ光を電気信号に変換する受光器である。PD51からは、例えば、nチャネルのサブキャリア変調された電気信号が出力される。
【0085】
増幅器52は、PD51から出力される電気信号を増幅する。BPF53は、サブキャリア信号の周波数を中心に、増幅器52から出力される電気信号を通過させる。例えば、BPF53は、増幅器52からnチャネルのサブキャリア信号を含む電気信号が出力される場合、n個のサブキャリア信号のそれぞれの周波数を中心に電気信号を通過させる。すなわち、BPF53は、増幅器52から出力される電気信号をチャネルごとに分離する。もちろん、BPF53は、nチャネル全てを通過させる必要はなく、必要なチャネルのサブキャリア信号を通過させるようにしてもよい。
【0086】
復調回路54は、例えば、データ信号の変調方式に応じて、データ信号を復調させる回路である。復調回路54は、例えば、包絡線検波器、2乗検波器、位相検波器、周波数検波器などである。
【0087】
このように、受信機は、分波器によって分波されたアイドラ光からデータ信号を復調することができる。
なお、図10の受信機は、ターミナルA,Bに設けることもできる。すなわち、ターミナルA,Bは、図10の受信機によって、搬送光EO1,EO2の信号検波を行うことができる。
【0088】
また、図10の受信機は、図1および図4の光信号処理装置においても適用できる。例えば、図1のアイドラ光EOCをPD51に入力することにより、搬送光EOに多重されたデータ信号を復調できる。また、図4のアイドラ光EOC1,EOC2をPD51に入力することにより、搬送光EO1,EO2に多重されたデータ信号を復調できる。
【0089】
また、復調回路54の後段には、復調したデータ信号の誤り検出や揺らぎ等の影響を補償するデジタル信号処理回路を設けてもよい。
図11は、受信機の他の例を示した図である。図11において、図10と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
図11の受信機は、LD55および合波器56を有している。LD55は、局発光ELOを出力する。合波器56は、PD51に入力されるアイドラ光に局発光ELOを合波する。
局発光ELOの周波数は、アイドラ光の周波数と所望の離調周波数(fif)分だけ異なるようにする。これにより、PD51からは、中間周波数帯(fif)の電気信号を得ることができる。あるいはまた、アイドラ光を受光した後、デジタル信号処理装置を用いて電気信号を復調することもできる。
【0091】
このように、局発光ELOを用いた受信機においても、分波器によって分波されたアイドラ光からデータ信号を復調することができる。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第4の実施の形態では、光SWの制御について説明する。
【0092】
図12は、第4の実施の形態に係る光信号処理装置を示した図である。図12において、図1と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。図12に示すように、光信号処理装置は、カプラ61、PD62、モニタ回路63、および制御回路64を有している。
【0093】
カプラ61には、分波器4によって分波されたアイドラ光EOCが入力される。カプラ61は、アイドラ光EOCを分岐し、PD62と図示しない受信機とに出力する。図示しない受信機は、例えば、図10、図11に示した受信機である。
【0094】
PD62は、アイドラ光EOCを電気信号に変換する受光器である。PD62からは、例えば、nチャネルのサブキャリア変調された電気信号が出力される。
モニタ回路63は、nチャネルのサブキャリア変調された電気信号のうち、所定の電気信号を復調する。例えば、モニタ回路63は、データ信号の送信要求を示す制御信号を復調する。モニタ回路63には、例えば、図10、図11に示した受信機を適用してもよい。
【0095】
制御回路64は、モニタ回路63から出力される制御信号に基づいて、光SW2の出力を切替える切替え信号を出力する。例えば、制御回路64は、データ信号の送信要求を示す制御信号がモニタ回路63から出力された場合、光SW2から信号光ESが出力されるための切替え信号を出力する。
【0096】
このように、光SW2の出力を切替えるための制御信号を搬送光EOに多重して伝送することにより、光信号処理装置は、光SW2の出力を切替えることができる。
なお、上記では、光SW2を切替えるための制御信号を搬送光EOに多重して伝送するようにしたが、例えば、ワイヤレス通信された制御信号を制御回路64に入力して、光SW2の切替え制御を行うこともできる。例えば、下流側の光信号処理装置において、図12に示す光信号処理装置の地点の光ネットワークの状態をモニタしたい場合、下流側の光信号処理装置は、ワイヤレス通信で制御回路64に制御信号を送信する。制御回路64は、受信した制御信号に基づき、光SW2が信号光ESを出力するように、切替え信号を出力する。
【0097】
また、図12のカプラ61、PD62、モニタ回路63、および制御回路64は、双方向通信の図4の光信号処理装置および図6の光通信システムにも適用できる。この場合、例えば、下流側の光信号処理装置は、搬送光EO2に制御信号を多重して、上流側の光信号処理装置にデータ信号の送信要求を行うことができる。上流側の光信号処理装置は、下流側の光信号処理装置からのデータ信号の送信要求に応じて、搬送光EO1にデータ信号を多重し、下流側の光信号処理装置にデータ信号を送信することができる。同様に、例えば、上流側の光信号処理装置は、搬送光EO1に制御信号を多重して、下流側の光信号処理装置にデータ信号の送信要求を行うことができる。下流側の光信号処理装置は、上流側の光信号処理装置からのデータ信号の送信要求に応じて、搬送光EO2にデータ信号を多重し、上流側の光信号処理装置にデータ信号を送信することができる。
【0098】
以下、光ファイバ内の相互位相変調について説明する。
光ファイバの長さをL、損失をαとする。この場合、搬送光の光位相変調量φ(L)は、次の式(1)で近似される。
【0099】
【数1】

【0100】
【数2】

【0101】
ここで、式(1)のPP(0)は信号光の光パワー、式(2)は非線形相互作用長を示す。また、式(1)のγは、三次非線形定数を表し、次の式(3)で示される。
【0102】
【数3】

【0103】
ここで、cは光速、ωは搬送光の各周波数を示す。また、n2およびAeffは、それぞれ光ファイバ内の非線形屈折率および有効コア断面積を示す。
上記で説明した各実施の形態において、搬送光が波長多重されている場合には、信号を一括して多重することができ、搬送光が流れたままの状態において、リアルタイムに新たな情報を多重することができる。これにより、例えば、各地点jに非線形光ファイバを配置し、その入出力端に信号光を合波および分波するためのWDMカプラを配置することにより、搬送光への信号多重が可能となる。
【0104】
非線形光ファイバは、例えば、数mから数100m程度の非線形光ファイバであり、この非線形光ファイバにデータ信号を周波数多重するのに十分なパワーの信号光を入力する。例えば、搬送光に1%の光位相変調(マーク率1/2)をかける場合に、長さ100m、非線形定数20(1/W/km)の非線形光ファイバを用いるとすると、必要となる信号光のパワーは、5mW程度である。なお、実際に必要となる変調度は、データ信号のビットレートや検出感度に依存する。
【0105】
また、非線形光ファイバとして、伝送路の適当な長さの部分を用い、その前後に、例えば、WDMカプラを配置して、データ信号を多重することも可能である。すなわち、伝送路の非線形光学効果を用いて、データ信号を多重することも可能である。例えば、通常の伝送路の光ファイバの非線形定数は、2(1/W/km)程度であるから、前記のモデルでは、100m〜1km程度の長さがあれば、上記で説明した各実施の形態の光信号処理装置を実現することができる。また、搬送光は、信号光が入力されない場合には、何ら影響を受けずに透過し、従来システムとの整合性が極めてよい。
【0106】
非線形光ファイバの長さを短くにする場合には、非線形効果を高めた非線形光ファイバを用いればよい。例えば、光ファイバとしては、高非線形光ファイバ(HNLF:High Nonlinear optical Fiber)をはじめ、コアにゲルマニウムやビヒマス等をドープして、非線形屈折率を高めた光ファイバが考えられる。また、導波路構成やモードフィールドを小さくすることで光パワー密度を高めた光ファイバが考えられる。また、カルコゲナイドガラスを用いた光ファイバやフォトニック結晶ファイバ等が考えられる。
【符号の説明】
【0107】
1 非線形光学媒質
2 光SW
3 合波器
4 分波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送光が伝搬する非線形光学媒質と、
前記搬送光のアイドラ光を発生させるための制御光を前記搬送光に合波する合波器と、
前記搬送光から前記アイドラ光を分波する分波器と、
前記分波器によって分波された前記アイドラ光から前記搬送光に多重されている信号を取得する受信機と、
を有することを特徴とする光信号処理装置。
【請求項2】
前記制御光と前記非線形光学媒質による相互位相変調により前記搬送光に信号を多重する信号光とを切替えて前記合波器に出力するスイッチをさらに有することを特徴とする請求項1記載の光信号処理装置。
【請求項3】
前記スイッチは、他光信号処理装置からの要求に応じて前記信号光を前記合波器に出力することを特徴とする請求項2記載の光信号処理装置。
【請求項4】
前記搬送光は、前記非線形光学媒質を双方向に伝搬し、
前記合波器は、第1の方向に伝搬する前記搬送光に第1の制御光を合波する第1の合波器と前記第1の方向とは反対の第2の方向に伝搬する前記搬送光に第2の制御光を合波する第2の合波器とを有することを特徴とする請求項1記載の光信号処理装置。
【請求項5】
前記搬送光に多重されている信号は、サブキャリア信号光によって前記搬送光に多重されていることを特徴とする請求項1記載の光信号処理装置。
【請求項6】
双方向の搬送光が伝搬する非線形光学媒質と、前記搬送光のアイドラ光を発生させるための制御光を前記搬送光に合波する合波器と、前記搬送光から前記アイドラ光を分波する分波器と、前記分波器によって分波された前記アイドラ光から前記搬送光に多重されている信号を取得する受信機と、を備えた複数の光信号処理装置と、
前記複数の光信号処理装置が挿入された伝送路と、
を有することを特徴とする光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−249014(P2012−249014A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118232(P2011−118232)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】