説明

光偏向装置並びにこれを備えた光走査装置、画像投影装置、画像読取装置および画像形成装置

【課題】ミラーの動的変形を抑制し、かつ、高速駆動を実現することができる光偏向装置並びに光走査装置、画像投影装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】一対のトーションバースプリング20a,20bを介して一対の駆動部30a,30bの自由端に支持されているミラー部10の反射面10aと反対側の面である裏面10bに、ミラー部10を補強する細長く直線状に盛り上がった畝状の補強リブ11が複数設けられている。具体的には、補強リブは、ミラー部10の回動軸方向と直交する方向に延びる複数の第1補強リブ11aと、ミラー部10の回転中心に設けられ、ミラー部10の回動軸方向に延びる第2補強リブ11bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向装置並びにこれを備えた光走査装置、画像投影装置、画像読取装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光走査装置、バーコードリーダなどの画像読取装置、プロジェクターなどの画像投影装置などに、光を偏向する光偏向装置が用いられている。
【0003】
光偏向装置としては、弾性支持部材たるトーションバースプリングに支持されたミラーと、トーションバースプリングをねじり変形させて、ミラーを揺動させるための圧電体などを有する駆動手段とで構成されたものが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の光偏向装置は、トーションバースプリングの一端にミラーが固定され、他端にトーションバースプリングをねじるための駆動手段が接続されている。駆動手段を駆動させて、トーションバースプリングをねじることにより、ミラーが回動し、光源からミラーへ入射した光を偏向走査することができる。
【0004】
また、上記光偏向装置を用いて、高速で光走査を行う場合、ミラーを高速で回転振動させることになり、ミラー自身のイナーシャによりミラーに動的変形が生じ、ミラーの反射面が歪曲して、走査光が劣化する。そこで、ミラーの厚みを厚くして、剛性を高めることが考えられる。しかし、ミラーの厚みを厚くすると、ミラーの重量が重くなり、ミラーのイナーシャが増大し、ミラーの反応が低下して高速駆動を阻害してしまう。
【0005】
特許文献2には、ミラーの動的変形が大きい箇所の厚みを厚くし、ミラーの動的変形が少ない部分の厚みを薄くしたり、一部を切り欠いたりして、ミラーの重量の増加を抑制しつつ、ミラーの剛性を高める光偏向装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の光偏向装置においては、十分なミラー重量を抑制することができず、十分な高速駆動を実現することができなかった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ミラーの動的変形を抑制し、かつ、高速駆動を実現することができる光偏向装置並びに光走査装置、画像投影装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、光源からの光を反射するミラーと、上記ミラーを支持する弾性支持手段と、上記弾性支持手段をねじり変形させて、ミラーを回動させる駆動手段とを備えた光偏向装置において、上記ミラーの光を反射する反射面と反対側の面に、当該ミラーを補強する複数の補強リブを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の光偏向装置において、上記補強リブは、細長い線状の形状であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の光偏向装置において、上記ミラーを、上記ミラーの回動の中心軸方向が長径の楕円形状としたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかの光偏向装置において、上記補強リブは、上記ミラーの回動の中心軸方向と直交する方向を補強する第1リブと、上記ミラーの回動の中心軸方向を補強する第2リブとを有すること特徴とする光偏向装置。
また、請求項5の発明は、請求項4の光偏向装置において、上記第1リブは、上記ミラーの回動の中心軸方向に対して直交する方向に延びる複数のリブであり、上記第2リブは、上記ミラーの回動の中心に設けられ、上記ミラーの回動の中心軸方向に延びるリブであることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至3いずれかの光偏向装置において、上記補強リブは、上記ミラーの回動の中心軸方向に対して+45°傾けた第1リブと、上記ミラーの回動の中心軸方向に対して−45°傾けた第2リブとを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項4乃至6いずれかの光偏向装置において、上記補強リブは、上記ミラーの縁部を補強する第3リブを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の光偏向装置において、上記ミラーが、上記ミラーの回動の中心軸方向が長径の楕円形状であり、上記第3リブは、上記ミラーの楕円形状と相似形であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7の光偏向装置において、上記ミラーが、上記ミラーの回動の中心軸方向が長径の楕円形状であり、上記第3リブは、小判形状であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9いずれかの光偏向装置において、上記弾性支持手段は、一端がミラーの一方側に接続された第1弾性支持部材と、一端がミラーの他方側に接続された第2弾性支持部材とを備え、上記駆動手段は、片持ち支持され、自由端部に上記第1弾性支持部材の他端が接続された第1駆動梁と、上記第1弾性支持部材の上記駆動梁との接続方向回りに上記駆動梁を撓み振動させる第1圧電部材とを備えた第1駆動部と、片持ち支持され、自由端部に上記第2弾性支持部材の他端が接続された第2駆動梁と、上記第2弾性支持部材の上記第2駆動梁との接続方向回りに上記第2駆動梁を撓み振動させる第2圧電部材とを備えた第2駆動部とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項10の光偏向装置において、上記第1、第2駆動部を、ユニモルフ構造またはバイモルフ構造としたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項1乃至11いずれかの光偏向装置において、上記駆動手段を支持し、上記ミラーの反射面と平行、かつ、上記ミラーの回動の中心軸に対して直交する方向回りに回動可能に固定枠に支持された可動枠と、上記可動枠を回動させる可動枠駆動手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項12の光偏向装置において、上記可動枠の一方側に接続された第1可動枠弾性支持部材と、上記可動枠の他方側に接続された第2可動枠弾性支持部材とを備え、上記可動枠駆動手段は、上記固定枠に片持ち支持され、自由端部に上記第1可動枠弾性支持部材が接続された第1可動枠駆動梁と、上記第1可動枠駆動梁を上記可動枠の回動の中心軸回りに撓み振動させる第1可動枠圧電部材とを備えた第1可動枠駆動部と、上記固定枠に片持ち支持され、自由端部に上記第2可動枠弾性支持部材が接続された第2可動枠駆動梁と、上記第2可動枠駆動梁を上記可動枠の回動の中心軸回りに撓み振動させる第2可動枠圧電部材とを備えた第2可動枠駆動部とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項13の光偏向装置において、上記第1、第2可動枠駆動部を、ユニモルフ構造またはバイモルフ構造としたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、光源と、光源からの光を偏向走査する光偏向手段とを備えた光走査装置において、上記光偏向手段として、請求項1乃至11いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、光走査によって該潜像担持体の表面に潜像を形成する光走査手段と、該潜像担持体に担持された潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置において、上記光走査手段として、請求項15の光走査装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、光源と、画像信号に応じて光出力を変調する変調器と、変調器からの光を偏向走査する光偏向手段とを備えた画像投影装置において、上記光偏向手段として、請求項12乃至14いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、光源と、光源からの光を偏向走査する光偏向手段と、画像から反射した光を受光する受光手段と、該受光手段で受光した光に基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段とを備えた画像読取装置において、上記光偏向手段として、請求項1乃至11いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミラーの反射面と反対側の面に複数の補強用リブを設けることにより、ミラーの強度を高めることができる。また、ミラーの厚みを厚くして、ミラーの剛性を高める場合に比べて、ミラーの重量の増加を抑制することができ、ミラーのイナーシャの増加を抑制することができ、ミラーの厚みを厚くした構成に比べて、高速駆動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る光偏向装置の斜視図。
【図2】同光偏向装置の裏面斜視図。
【図3】同光偏向装置の裏面正面図。
【図4】第1駆動部とその近傍の固定枠を拡大して示した模式図。
【図5】各駆動部の圧電部材への印加電圧に対するミラー部の回転角度の振幅の周波数応答特性を示すグラフ。
【図6】図5の周波数応答特性中の共振点a,bにおけるミラー部の各固有振動モード形状を示した図。
【図7】モード2の場合の各駆動部の撓み変形とミラー部の回転の関係を示した図。
【図8】ミラー部の中心を、トーションバースプリングの中心軸に対して一致させた場合の各駆動部の圧電部材への印加電圧に対するミラー部の回転角度の振幅の周波数応答特性を示すグラフ。
【図9】図8の周波数応答特性中の共振点a,bにおけるミラー部の固有振動モード形状を示した図。
【図10】ミラー部の動的変形を説明する図。
【図11】変形例1の光偏向装置の裏面斜視図。
【図12】変形例1の光偏向装置の裏面正面図。
【図13】変形例2の光偏向装置の裏面斜視図。
【図14】変形例2の光偏向装置の裏面正面図。
【図15】変形例3の光偏向装置の裏面斜視図。
【図16】変形例3の光偏向装置の裏面正面図。
【図17】変形例4の光偏向装置の裏面斜視図。
【図18】変形例4の光偏向装置の裏面正面図。
【図19】変形例4の光偏向装置について、有限要素法により動的変形を求めた結果を示す図。
【図20】画像形成装置の概略構成図。
【図21】光走査装置の光学系部品を示した斜視図。
【図22】光偏向器と駆動手段との接続図。
【図23】画像投影装置の全体構成を示す図。
【図24】画像投影装置の制御系も含めた概略構成図。
【図25】バーコードリーダーの全体構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る光偏向装置1の斜視図であり、図2は、光偏向装置1の裏面斜視図であり、図3は、光偏向装置1の裏面正面図である。
図に示すように、光偏向装置1は、光を反射させる反射面10aを有するミラー部10を備えている。このミラー部10の一方の端部には、ミラー部10を回転(揺動)可能に支持する第1弾性支持部材としての第1トーションバースプリング20aが接続されており、他方の端部には、第2弾性支持部材としての第2トーションバースプリング20bが接続されている。第1トーションバースプリング20aのミラー部10と反対側の端部は、固定枠40に片持ち支持された第1駆動梁31aの自由端部から延びた第1接続部310aに接続されている。また、第2トーションバースプリング20bのミラー部10と反対側の端部は、固定枠40に片持ち支持された第2駆動梁31bの自由端部から延びた第2接続部310aに接続されている。
【0013】
第1駆動梁31aの片面には、薄膜チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる第1圧電部材32aが積層され、第1駆動梁31aと第1圧電部材32aとで、平板短柵状のユニモルフ構造の第1駆動部30aを形成している。また、第2駆動梁31bの片面にも、薄膜チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる第2圧電部材32bが積層され、第2駆動梁31aと第2圧電部材31aとで、平板短柵状のユニモルフ構造の第2駆動部30bを形成している。
【0014】
図2、図3に示すように、ミラー部10の反射面10aと反対側の面である裏面10bには、ミラー部10を補強する細長く直線状に盛り上がった畝状の補強リブ11が複数設けられている。具体的には、補強リブは、ミラー部10の回動軸方向と直交する方向に延びる複数の第1補強リブ11aと、ミラー部10の回転中心に設けられ、ミラー部10の回動軸方向に延びる第2補強リブ11bとを備えている。
【0015】
ミラー部10は、ミラー部10の回転軸方向が長径、回転軸方向に対して直交する方向が短径の楕円形状としている。これにより、ミラー部10の回転軸方向に対して直交する方向をなるべく短くでき、かつ光量を確保できる。ミラー部10を四角形状にしても、4角には光が当ることがないため、無駄である。よって、光を良好に偏向しつつ、四角形状にしたものに比べて、ミラー部10の重量を軽量化できる。また、回転軸方向に対して直交する方向が短径の楕円形状として、ミラー部10の回転軸方向に対して直交する方向をなるべく短くすることにより、ミラー部10のイナーシャを低減することができ、高速駆動を実現することができる。
【0016】
上記駆動部30a,30b、ミラー部10、トーションバースプリング20a,20bは、例えば、MEMS(micro electro mechanical systems)プロセスによる加工により一体で形成されている。ミラー部10は、シリコン基板の表面にアルミニウムや金などの金属の薄膜を形成することによって反射面10aを形成する。
【0017】
図4は、第1駆動部30aとその近傍の固定枠40を拡大して示した模式図で、(a)は絶縁層で覆う前の平面図、(b)は絶縁層で覆った後の平面図、(c)は(b)のA−A'線部分の断面図である。なお、第2駆動部30bも同様の構成であるので、図示は省略する。
図4に示すように、第1駆動部30aは、固定枠40から突出して形成された第1駆動梁31aの上に、接着層33a、下部電極35a、圧電材料(第1圧電部材)32a、上部電極34a、絶縁層36aの順でスパッタにより成膜し積層して構成され、ランド部37a,38aなどの必要な部分だけが残るようにエッチング加工されている。接着層33aの材料はチタン(Ti)、上部電極34a、下部電極35aは白金(Pt)、圧電材料32aはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などが使用される。
【0018】
ランド部37a,38aから配線を引き出し、上部電極34aと下部電極35aの間に電圧を印加すると、圧電材料32aは、その電歪特性により、第1駆動梁31a表面の面内方向に伸縮することで、第1駆動部30a全体が反って、曲げ変形する。第2駆動部30bについても、圧電部材32aと同相の電圧を印加することで、第2駆動部30b全体が、第1駆動部30aと同一方向に曲げ変形する。各駆動部30a.30bの圧電部材32a,32bに印加する電圧の波形は、パルス波や正弦波などのいずれでもよい。
【0019】
また、下部電極35a、上部電極34aと共に、スパッタにより圧電材料を成膜した構成を示したが、圧電材料はバルク材料を所定のサイズに切断したものを接着剤により貼り付けても良いし、またエアロゾルデポジション法(AD法)で形成しても良い。また、駆動梁31aの片面に圧電材料が配置されたユニモルフ構造としたが、駆動梁の両面に圧電材料を配置したバイモルフ構造としてもよい。これは、以後の各実施例においても同様である。
【0020】
各トーションバースプリング20a,20bの長手方向と、各駆動部30a,30bの長手方向とが略直交して配置されて接続されていることにより、各駆動部30a,30bの曲げ振動による各駆動梁31a,31bの接続部310a上下振動が各トーションバースプリング20a,20bの捻り中心軸に対して垂直に働くため、各駆動部30a,30bの曲げ振動が各トーションバースプリング20a,20bの回転振動(捻り振動)に効率よく変換され、ミラー部10が大きく回転振動する。また、トーションバースプリング20a,20bとミラー部10は、各駆動梁31a,31bの自由端側に支持されているため、ミラー部10はより大きな角度振幅を得ることができる。さらに、一つの駆動部30(駆動梁31と圧電部材)で、トーションバースプリングをねじり振動させることができ、小型化が可能である。これらの作用・効果は、以後の各実施例においても基本的に同様である。
【0021】
図5は、本実施形態の光偏向装置1における各駆動部30a,30bの圧電部材32a,32bへの印加電圧に対するミラー部10の回転角度の振幅の周波数応答特性を示すグラフである。図5において、aとbはそれぞれ共振点であるが、aとbとでは、ミラー部10はそれぞれ異なる固有振動モード形状を示す。ここでは、aの共振点での固有振動モード形状をモード1、bの共振点での固有振動モードをモード2と称す。
【0022】
図6は、図5の周波数応答特性中の共振点a,bにおけるミラー部10の固有振動モード形状(モード1、モード2)を示したものである。図5(a)に示すように、モード1では、各トーションバースプリング20a,20bの曲げ変形が発生し、ミラー部10全体が図中Z方向に変動する。一方、モード2では、図5(b)に示すように、トーションバースプリング20a,20bの曲げ変形がほとんどなく、トーションバースプリング20a,20bが大きく捻じれて、ミラー部10はミラー中心近傍で大きく回転する。光偏向装置1では、ミラー部全体のZ方向の変動を阻止し、ミラー部10の中心近傍で回転させる必要があるため、モード2の固有振動モードでの周波数を使用すればよいことが分かる。モード2の固有周波数で、駆動部30a,30bの圧電部材32a,32bへ印加電圧を与えることによって、ミラー部10は大きな角度振幅を得ることができ、かつ、ミラー部10全体のZ方向の変動を阻止することができる。
【0023】
ミラー部10の質量は、高速駆動のため、予めミラー部形状(質量)は、決まっているため、トーションバースプリング20a,20bを形状により、システムにより得たい共振周波数を得ている。また、各駆動部30a,30bの1次の曲げ変形のモードの固有周波数が、各トーションバースプリング20a,20bの1次の捻り変形のモードの固有周波数の近傍に設定する。こうすることで、ミラー部10は大きな角度振幅で振動する。
【0024】
また、本実施形態の光偏向装置1は、図3に示すように、ミラー部10の中心(重心)Oが、トーションバースプリング20a,20bのミラー部10との接続部よりも、固定枠40の駆動部30a,30bが片持ち支持されている側に距離ΔSだけオフセットされている。こうすることで、トーションバースプリング20a,20bのミラー部10との接続部とミラー部10の中心(重心)Oとをミラー部10の回転軸方向と直交する方向において同じ位置に設けた場合に比べて、駆動部30a,30bのたわみ変形を利用してミラー部10を大きく回転振動させることができる。また、ミラー部10全体のZ方向の変動を阻止することができる。しかも、ミラー部10は、より大きな角度振幅を得ることができる。
【0025】
図7は、モード2の場合の各駆動部30a,30bの撓み変形とミラー部10の回転の関係を示したものである。各トーションバースプリング20a,20bが捩じれるモード2において、ミラー部10と、各トーションバースプリング20a,20bの接続部pとミラー部10の回転中心qとの距離ΔL、ミラー部10の回転角度をθとしたとき、駆動部30a,30bのミラー反射面と垂直方向(Z方向)の撓み変形分dがΔL・sinθとなるように設定することで、ミラー部10が回転する際に、ミラー部10の回転中心bがZ方向に変動しない構成とすることができる。また、ミラー部10の回転中心がミラー部10の重心Oに近くなるため、慣性モーメントが小さくなり、固有周波数を高くすることが可能となる。すなわち、より高速駆動が可能になる。
【0026】
なお、ミラー部10の重心とは、トーションバースプリング20a,20bで支持されている回転部全体の重心であり、ミラー裏面のリブ構造なども含めて重心をオフセットしてもよい。ミラー部全体が等質量の場合には、ミラー部10の中心=重心である。
【0027】
また、ミラー部10の中心(重心)を、トーションバースプリング20a,20bの中心軸に対して一致させてもよい。図8は、ミラー部10の中心(重心)を、トーションバースプリング20a,20bの中心軸に対して一致させた場合の各駆動部30a,30bの圧電部材32a,32bへの印加電圧に対するミラー部10の回転角度の振幅の周波数応答特性を示すグラフである。また、図9は、図8の周波数応答特性中の共振点a,bにおけるミラー部10の固有振動モード形状(モード1、モード2)を示したものである。
【0028】
ミラー部10の中心(重心)を、トーションバースプリング20a,20bの中心軸に対して一致させた場合も、モード2の固有周波数で、各駆動部30a,30bの圧電部材32a,32bへ印加電圧を与えることによって、ミラー部10は大きな角度振幅を得ることができ、かつ、ミラー部10全体のZ方向の変動を阻止することができる。
【0029】
本実施形態においては、ミラー部10を高速駆動させるため、ミラー部10のイナーシャによりミラー部10が、図10の点線で示すような動的変形をしてしまう。このような動的変形が生じてしまうと、ミラー部10の反射面10aが歪曲して、走査光が劣化する。しかし、本実施形態においては、図2、図3に示すように、ミラー部10の裏面10bに第1、第2補強リブ11a,11bを設けている。ミラー部10の回動軸方向と直交する方向に延びる複数の第1補強リブ11aにより、ミラー部10の回動軸方向と直交する方向が補強される。これにより、ミラー部10が、ミラー部の回動軸回りの変形を抑制することができる。また、ミラー部10の回転中心に設けられ、ミラー部10の回動軸方向に延びる第2補強リブ11bにより、ミラー部10の回動軸方向が補強される。これにより、ミラー部10の回動軸方向と直交する方向回りの変形を抑制することができる。このように、第1補強リブと第2補強リブとで、ミラー部10を補強することにより、ミラー部10の剛性を高めることができ、ミラー部10の動的変形を抑制することができる。
【0030】
また、各補強リブ11a,11bは、細長く直線状に盛り上がった畝状形状であるため、ミラー部10の質量の増加を必要最小限に留めることができ、駆動効率の低下を必要最小限に留めることができる。
【0031】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0032】
[変形例1]
図11は、変形例1の光偏向装置1aの裏面斜視図であり、図12は、変形例1の光偏向装置1aの裏面正面図である。
図11、図12に示すように、変形例1の光偏向装置1aは、ミラー部10の楕円形状と相似形の楕円形状を有する第3の補強リブ11cを設けたものである。この第3の補強リブ11cにより、ミラー部10の縁部まわりが補強される。ミラー部10の縁部は、ミラー部10の回転中心から離れた位置にあるため、ミラー部10を回転させたときの慣性力の影響が最も大きく動的変形しやすい。よって、第3補強リブ11cを設けることにより、ミラー部10の縁部の動的変形を抑制することができ、走査光の劣化を抑制することができる。
【0033】
[変形例2]
図13は、変形例2の光偏向装置1bの裏面斜視図であり、図14は、変形例2の光偏向装置1bの裏面正面図である。
図13、図14に示すように、この変形例2は光偏向装置1bは、第3補強リブを、小判形状にしたものである。第2補強リブを、小判形状にしても、ミラー部10の縁部まわりを補強することができる。
【0034】
[変形例3]
図15は、変形例3の光偏向装置1cの裏面斜視図であり、図16は、変形例3の光偏向装置1cの裏面正面図である。
図15、図16に示すように、この変形例3の光偏向装置1cは、ミラー部10の中心(重心)Oを通り、回動の中心軸Rに対して+45°傾けた第1傾斜補強リブ11d−1と、ミラー部10の中心(重心)Oを通り、回動の中心軸Rに対して−45°傾けた第2傾斜補強リブ11d−2と、ミラー部10の形状と相似形の第3補強リブ11cとを備えている。補強リブを傾斜させるにより、2本の補強リブでミラー部の回動軸方向と、回動軸方向に対し直交する方向とを補強することができる。これにより、補強リブの本数を削減することができ、ミラー部10を軽量化することができ、ミラー部10のイナーシャをより低減することができ、さらなる高速駆動を図ることが可能となる。
【0035】
[変形例4]
図17は、変形例4の光偏向装置1dの裏面斜視図であり、図17は、変形例4の光偏向装置1cの裏面正面図である。
図に示すように、この変形例4の光偏向装置1dは、駆動部30a,30bは、ミラー部10の駆動部30a,30bによる回動軸方向に対して直交する方向回りに回動自在に支持された可動枠140に片持ち支持されている。可動枠140は、一対の可動枠トーションバースプリング120a,120bを介して固定枠40に支持されている。各可動枠トーションバースプリング120a,120bには、可動枠トーションバースプリングの長手方向と略直交する向きが長手方向の可動枠駆動部130a,130bがそれぞれ接続されている。各可動枠駆動部130a,130bは、先の図4に示した駆動部30a,30bと同様な構成をしており、固定枠40に片持ち支持され、可動枠駆動部130a,130bの自由端部側に可動枠トーションバースプリング120a,120bが接続されている。
【0036】
この変形例4の光偏向装置1dは、可動枠駆動部130a,130bの上下振動により可動枠トーションバースプリング120a,120bを捩れ変形させて、可動枠140を、可動枠トーションバースプリング120a,120bの長手方向回りに揺動させることで、駆動部30a,30b、トーションバースプリング20a,20bを介して可動枠140に支持されたミラー部10を、可動枠トーションバースプリング120a,120bの長手方向回りに揺動させることができる。これにより、ミラー部10に接続されたトーションバースプリング20a,20bの長手方向回りの揺動と、可動枠140に接続された可動枠トーションバースプリング120a,120bの長手方向に対して直交する方向回りの揺動とを行うことができる。これにより、2軸方向に光を偏向することができる。トーションバースプリング20a,20bの長手方向回りの揺動の固有周波数と、可動枠トーションバースプリング120a,120bの長手方向回りの揺動の固有周波数と、を異ならせておき、それぞれの周波数で駆動部30a,30bと、可動枠駆動部130a,130bを駆動することで、ミラー部10を2軸方向に大きく回転させることができる。
【0037】
図19は、変形例4の光偏向装置1dについて、有限要素法により動的変形を求めた結果を示す図である。図中点線は、ミラー部10の反射有効面を示している。ミラー部10は、長径:1.2mm、短径1.0mmの楕円形状で、厚み1.0mmである。また、共振周波数:約20kHzにおいて動的変形を計算した。補強リブは、図17、図18に示す通りである。すなわち、トーションバースプリングの長手方向に対して直交する方向に延びる複数の第1補強リブと、トーションバースプリングの長手方向に延びミラー部10の中心を通る第2補強リブと、小判形状の第3補強リブとを設けたものである。図からわかるように図中点線のミラー部10の反射有効面における動的変形量を、約50nmに抑えることができた。
【0038】
次に、上述した光偏向装置を用いた装置の構成例について、説明する。
まず、画像形成装置の光書き込みユニットとしての光走査装置に本発明の光偏向装置を適用した例について説明する。
図20は、本発明の光偏向装置を用いた光走査装置1001を備えた画像形成装置の概略構成図であり、図21は、光走査装置1001の光学系部品を示した斜視図である。
図20に示すように、画像形成装置は、感光体ドラム1002を備えており、感光体ドラムの周囲に帯電手段1004、現像手段1005、転写手段1006、クリーニング手段を備えている。
【0039】
感光体ドラム1002は矢印1003方向に回転駆動され、帯電手段1004により帯電された表面に、光走査装置1001により光走査されることによって、静電潜像が形成される。この静電潜像は現像手段1005でトナー像に顕像化され、このトナー像は転写手段1006で記録紙1007に転写される。転写されたトナー像は定着手段1008によって記録紙1007に定着される。感光体ドラム1002の転写手段1006対向部を通過した感光体ドラムの表面部分はクリーニング部1009で残留トナーを除去される。
【0040】
なお、感光体ドラム1002に代えてベルト状の感光体を用いる構成も可能である。また、トナー像を記録紙以外の転写媒体に一旦転写し、この転写媒体からトナー像を記録紙に転写して定着させる構成とすることも可能である。
【0041】
図21に示すように、光走査装置1001は記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームを発するレーザ素子としての光源部1020と、レーザビームを変調する光源駆動手段1500と、レーザビームを偏向する光偏向器1022と、この光偏向器1022のミラー基板のミラー面に光源部1020からの、記録信号によって変調されたレーザビーム(光ビーム)を結像させるための結像光学系1021と、ミラー面で反射・偏向された1本又は複数本のレーザビームを感光体ドラム1002の表面(被走査面)に結像させるための手段である走査光学系1023などから構成される。光偏向器1022としては、1軸方向にレーザビームを偏向する上述した光偏向装置1〜1cのいずれかが用いられる。
【0042】
光偏向器1022は、その駆動のための集積回路(駆動手段)1024とともに回路基板1025に実装された形で光書込みユニット1001に組み込まれている。
図22は、光偏向器1022と駆動手段1024との接続図である。図に示すように、光偏向器1022は駆動手段1024と電気的に連結されている。この駆動手段1024が、光偏向器1022の駆動部30a,30bの上部電極34aと下部電極35aに駆動電圧を印加する(図4参照)。これにより、光偏向器1022のミラー部10が回転してレーザ光が偏向され、ビーム走査面1002上が光走査される。
【0043】
図20に示すように、光源部1020からのレーザ光は、コリメータレンズ系1021を経た後、光偏向器1022により偏向される。光偏向装置1022で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ1023aと第二レンズ1023b、反射ミラー1023cからなる走査光学系1023を経て感光ドラム等のビーム走査面1002に照射される。
【0044】
本発明の光偏向装置1は、従来の回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、本発明の光偏向装置を、光走査装置の光偏向器1022に用いることで、画像形成装置の省電力化を図ることができる。また、本発明の光偏向装置1は、ミラー基板の振動時の風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、本発明の光偏向装置を、光走査装置の光偏向器1022に用いることで、画像形成装置の静粛性の改善を図ることができる。さらに、本発明の光偏向装置1は、回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また、発熱量もわずかであるため、本発明の光偏向装置1を、光走査装置の光偏向器1022に用いることで、画像形成装置の小型化を容易に図ることができる。
【0045】
次に、本発明の光偏向装置を画像投影装置に用いた例について、説明する。
図23は、画像投影装置の全体構成を示す図である。
図に示すように、筐体2000に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる3波長のレーザ光を出射するレーザ光源2001−R,2001−G,2001−Bが取り付けられ、これらレーザ光源2001−R,2001−G,2001−Bの出射端近傍には、レーザ光源2001−R,2001−G,2001−Bからの出射光を略平行光に集光する集光レンズ2002−R,2002−G,2002−Bが配置されている。集光レンズ2002−R,2002−G,2002−Bで略平行になったR,G,Bのレーザ光は、ミラー2003やハーフミラー2004を経て、合成プリズム2005によって合成され、光偏向器2006のミラー面に入射される。光偏向器2006には、図17、図18に示すような2軸方向に光を偏向する構成の光偏向装置1dが使用される。光偏向器2006のミラー面に入射した合成レーザ光は、光偏向器2006によって二次元偏向走査されて投影面に投射され、画像を投影する。
【0046】
図24は、画像投影装置の制御系も含めた概略構成図である。なお、図24では、3波長のレーザ光源や集光レンズは一つにまとめて示し、また、ミラー、ハーフミラー、合成プリズムは省略してある。
【0047】
画像情報に応じて画像生成部2011で画像信号を生成し、この画像信号が変調器2012を介して光源駆動回路2013に送られると共に、スキャナ駆動回路2014に画像同期信号が送られる。スキャナ駆動回路2014は、画像同期信号に応じて駆動信号を光偏向器2006に与える。この駆動信号によって、光偏向器2006のミラー部10は、直交した2つの方向に所定角度(例えば10deg程度)の振幅で共振振動し、入射したレーザ光が二次元偏向走査される。一方、レーザ光源2001から出射されるレーザ光は、光源駆動回路2013により、光偏向器2006の二次元偏向走査のタイミングに合わせて強度変調されており、これによって、投影面2007に二次元の画像情報が投影される。強度変調はパルス幅を変調してもよいし、振幅を変調してもよい。変調器2012は画像信号をパルス幅変調あるいは振幅変調し、この変調された信号を光源駆動回路2013によりレーザ光源2001を駆動できる電流に変調してレーザ光源2001を駆動する。
【0048】
ここで、光偏向装置2006には、ポリゴンミラーなどの回転走査ミラーを使用することもできるが、本発明の光偏向装置1dを用いることにより、駆動のための消費電力が小さくでき、画像投影装置の省電力化を図ることができる。また、回転走査ミラーを使用する場合に比べて、ミラー基板の振動時の風切り音が低減でき、画像投影装置の静粛性の改善を図ることができる。さらに本発明の光偏向装置を用いることで、画像投影装置の小型化を図ることができる。
【0049】
次に、本発明の光偏向装置を画像読取装置としてのバーコードリーダーに用いた例について、説明する。
図25は、バーコードリーダーの全体構成を示す斜視図である。
図に示すように、バーコードリーダーは、レーザダイオード3001から出射されたレーザ光を、集光レンズ3002で収束して、開口絞り3003およびコレクターレンズ3004の中央に形成した開口を経て光偏向器3005で偏向し、これによりバーコード面3006に照射して印刷されている画像としてのバーコード3007を走査するようにしている。
【0050】
また、バーコード面3006からの反射光は、光偏向器3005およびコレクターレンズ3004で順次反射した後、バンドパスフィルタ3008を経てホトディテクタ3009で受光し、その出力に基づいてバーコード3007を読み取る。光偏向器3005には、1軸方向に光を偏向する構成の光偏向装置1〜1cのいずれかが使用される。
【0051】
光偏向器3005として、本発明の光偏向装置を用いることにより、ポリゴンミラーなどの回転走査ミラーを使用した場合に比べて、バーコードリーダーの省電力化、静粛性、小型化を図ることができる。
【0052】
また、本発明の光偏向装置は、上記以外にもレーザーレーダー装置などにも適用することができる。
【0053】
以上、本実施形態の光偏向装置によれば、光源からの光を反射するミラーたるミラー部10と、ミラー部10を支持する弾性支持手段たる一対のトーションバースプリング20a,20bと、これらトーションバースプリング20a,20bと、ミラー部10を回動させる駆動部30a,30bとを備えている。そして、ミラー部10の光を反射する反射面10aと反対側の面である裏面10bに、ミラー部10を補強する複数の補強リブ11を設けた。これにより、ミラー部10が補強され、ミラー部10の動的変形を抑制することができ、走査光の劣化を抑制することができる。
【0054】
また、補強リブ11は、細長い線状の形状であるため、補強リブによる重量の増加を必要最小限度に留めることができ、ミラー部10の重量増加を抑制することができ、ミラー部10のイナーシャの増加を必要最小限に留めることができる。これにより、高速駆動の阻害を必要最小限に留めることができる。
【0055】
また、ミラー部10を、上記ミラー部10の回動の中心軸方向が長径の楕円形状とした。これにより、ミラー部10の反射有効面を確保しつつ、ミラー部10の回動軸に対して直交する方向の長さを短くすることができる。これにより、ミラー部10を軽量化することができ、ミラー部10のイナーシャを低減することができ、高速駆動を実現することができる。また、回動軸に対して直交する方向の長さを短くすることで、ミラー部10のイナーシャを低減することができ、高速駆動を実現することができる。
【0056】
上記補強リブは、ミラー部10の回動の中心軸方向と直交する方向を補強する第1リブ11aと、ミラー部10の回動の中心軸方向を補強する第2リブ11bとを有する。これにより、ミラー部10の回動の中心軸方向回りに動的変形と、ミラー部10の回動の中心軸方向と直交する方向回りの動的変形を抑制することができる。
【0057】
具体的には、第1リブ11aを、ミラー部の回動の中心軸方向に対して直交する方向に延びる複数のリブとすることにより、ミラー部10の回動の中心軸方向と直交する方向を補強することができる。また、上記第2リブ11bを、ミラー部10の回動の中心に設けられ、ミラー部の回動の中心軸方向に延びるリブとすることにより、ミラー部10の回動の中心軸方向を補強することができる。また、第2リブ11bを、ミラー部10の回動の中心に設けることにより、ミラー部10を揺動させた際、この第2リブの重量が、ミラー部のイナーシャに影響を及ぼさない。これにより、ミラー部10の高速駆動を実現することができる。
【0058】
また、変形例3に示すように、補強リブを、ミラー部10の回動の中心軸方向に対して+45°傾けた第1リブ11−dと、ミラー部10の回動の中心軸方向に対して−45°傾けた第2リブ11d−2とで構成しても、ミラー部10の回動の中心軸方向と、ミラー部10の回動の中心軸方向に対して直交する方向とを補強することができる。また、このように、補強リブを形成することにより、ミラー部の回動の中心軸方向に対して直交する方向に延びるリブと、ミラー部の回動の中心軸方向に延びるリブとで、ミラー部10の回動の中心軸方向と、ミラー部10の回動の中心軸方向に対して直交する方向とを補強した場合に比べて、少ない本数でミラー部10を補強することができ、ミラー部10の軽量化を図ることができる。
【0059】
また、ミラー部10の縁部を補強する第3リブを備えることにより、ミラー部10の縁部周りの動的変形を抑制することができる。縁部は、ミラー部10を揺動振動させた際、最もイナーシャが大きくなる部分となるので、ここを第3リブで補強することにより、ミラー部10の動的変形を効果的に抑制することができる。
【0060】
また、第3リブ11cを、上記ミラーの楕円形状と相似形としたり、小判形状としたりすることで、楕円形状のミラー部10の縁部を良好に補強することができる。
【0061】
また、駆動部30a,30bは、片持ち支持され、自由端部にトーションバースプリング20a,20bが接続された駆動梁31a,31bと、トーションバースプリング20a,20bの上記駆動梁31a,31bとの接続方向回りに駆動梁31a,31bを撓み振動させる圧電部材32a,32bとで構成した。圧電部材32a、32bを駆動させて、駆動梁31a,31bを撓み振動させると、トーションスプリングバーが捩れ変形して、ミラー部10を揺動振動させることができる。特に、本実施形態においては、駆動梁31a,31bの自由端にトーションバースプリング20a,20bが接続されているため、駆動梁31a,31bの撓み振動が各トーションバースプリング20a,20bの回転振動(捻り振動)に効率よく変換することができ、ミラー部10が大きく回転振動させることができる。また、トーションバースプリング20a,20bの上記駆動梁31a,31bとの接続方向回りに駆動梁31a,31bを撓み振動させることで、一つの駆動部30で、トーションバースプリングをねじり振動させることができ、小型化を図ることができる。
【0062】
また、各駆動部30a,30bを、ユニモルフ構造またはバイモルフ構造とすることで、簡単な構成で、駆動梁31a,31」bを撓み振動させることができる。
【0063】
また、変形例4に示すように、駆動部30a,30bを支持し、ミラー部10の反射面10aと平行、かつ、ミラー部10の回動の中心軸に対して直交する方向に回動可能に固定枠40に支持された可動枠140と、可動枠140を回動させる可動枠駆動手段たる可動枠駆動部130a,130bとを備えた。これにより、2軸方向に光を偏向することができる。
【0064】
また、一端が、可動枠140の一方側に接続された一対の可動枠弾性支持部材たる可動枠トーションバースプリング120a,120bを備え、可動枠駆動部130a,130bは、固定枠40に片持ち支持され、自由端部に可動枠トーションバースプリング120a,120bが接続された可動枠駆動梁131a,131bと、可動枠の回転軸方向回りに可動枠駆動梁131a,131bを撓み振動させる可動枠圧電部材とを備えている。これにより、可動枠圧電部材132a、132bを駆動させて、可動枠駆動梁131a,131bを撓み振動させると、可動枠トーションバースプリング120a,120bが捩れ変形して、可動枠140を揺動振動させることができる。特に、可動枠駆動梁131a,131bの自由端に可動枠トーションバースプリング20a,20bが接続されているため、可動枠駆動梁131a,131bの撓み振動が各可動枠トーションバースプリング120a,120bの回転振動(捻り振動)に効率よく変換することができ、ミラー部10を大きく回転振動させることができる。また、一つの駆動部30で、可動枠トーションバースプリングをねじり振動させることができ、小型化を図ることができる。
【0065】
また、可動枠駆動部130a,130bを、ユニモルフ構造またはバイモルフ構造とすることにより、簡単な構成で、可動枠駆動梁131a,131bを撓み振動させることができる。
【0066】
また、光走査装置の光偏向器として、上述した光偏向装置を用いることで、走査光の劣化が抑制され、高速で感光体ドラム上に光書込を行うことができる。また、光偏向器として、ポリゴンスキャナを用いた場合に比べて、省電力化、静粛性、小型化を図ることができる。
【0067】
また、画像形成装置として、上述した光走査を用いることで、潜像画像の劣化を抑制することができ高品位な画像を得ることができる。また、高速で潜像画像の書込みを行うことができるので、装置の生産性を高めることができる。
【0068】
また、画像投影装置の光偏向器に上述した光偏向装置を用いることにより、ミラー部10の動的変形を抑えることができるので、良好な投影画像を投影面に投影することができる。また、ミラー部10を高速駆動させることができるので、投影画像のちらつきを抑制することができる。また、ポリゴンスキャナを用いた場合に比べて、省電力化、静粛性、小型化を図ることができる。
【0069】
また、画像読取装置たるバーコードリーダーの光偏向器として、上述した光偏向装置を用いることにより、ミラー部10の動的変形を抑えることができるので、良好にバーコードを読み取ることができる。また、ミラー部10を高速駆動させることができるので、すばやくバーコードを読み取ることができる。また、ポリゴンスキャナを用いた場合に比べて、省電力化、静粛性、小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1:光偏向装置
10:ミラー部
10a:反射面
10b:裏面
11a:第1補強リブ
11b:第2補強リブ
11c:第3補強リブ
11d:傾斜補強リブ
20:トーションバースプリング
30:駆動部
31:駆動梁
32:圧電材料
40:固定枠
120a:可動枠トーションバースプリング
130:可動枠駆動部
131:可動枠駆動梁
132:可動枠圧電部材
140:可動枠
310:接続部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2011−18026号公報
【特許文献2】特開2010−244012号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を反射するミラーと、
上記ミラーを支持する弾性支持手段と、
上記弾性支持手段をねじり変形させて、ミラーを回動させる駆動手段とを備えた光偏向装置において、
上記ミラーの光を反射する反射面と反対側の面に、当該ミラーを補強する複数の補強リブを設けたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
請求項1の光偏向装置において、
上記補強リブは、細長い線状の形状であることを特徴とする光偏向装置。
【請求項3】
請求項1または2の光偏向装置において、
上記ミラーを、上記ミラーの回動の中心軸方向が長径の楕円形状としたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの光偏向装置において、
上記補強リブは、上記ミラーの回動の中心軸方向と直交する方向を補強する第1リブと、上記ミラーの回動の中心軸方向を補強する第2リブとを有すること特徴とする光偏向装置。
【請求項5】
請求項4の光偏向装置において、
上記第1リブは、上記ミラーの回動の中心軸方向に対して直交する方向に延びる複数のリブであり、上記第2リブは、上記ミラーの回動の中心に設けられ、上記ミラーの回動の中心軸方向に延びるリブであることを特徴とする光偏向装置。
【請求項6】
請求項1乃至3いずれかの光偏向装置において、
上記補強リブは、上記ミラーの回動の中心軸方向に対して+45°傾けた第1リブと、上記ミラーの回動の中心軸方向に対して−45°傾けた第2リブとを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれかの光偏向装置において、
上記補強リブは、上記ミラーの縁部を補強する第3リブを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項8】
請求項7の光偏向装置において、
上記ミラーが、上記ミラーの回動の中心軸方向が長径の楕円形状であり、
上記第3リブは、上記ミラーの楕円形状と相似形であることを特徴とする光偏向装置。
【請求項9】
請求項7の光偏向装置において、
上記ミラーが、上記ミラーの回動の中心軸方向が長径の楕円形状であり、
上記第3リブは、小判形状であることを特徴とする光偏向装置。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれかの光偏向装置において、
上記弾性支持手段は、一端がミラーの一方側に接続された第1弾性支持部材と、一端がミラーの他方側に接続された第2弾性支持部材とを備え、
上記駆動手段は、片持ち支持され、自由端部に上記第1弾性支持部材の他端が接続された第1駆動梁と、上記第1弾性支持部材の上記駆動梁との接続方向回りに上記駆動梁を撓み振動させる第1圧電部材とを備えた第1駆動部と、
片持ち支持され、自由端部に上記第2弾性支持部材の他端が接続された第2駆動梁と、上記第2弾性支持部材の上記第2駆動梁との接続方向回りに上記第2駆動梁を撓み振動させる第2圧電部材とを備えた第2駆動部とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項11】
請求項10の光偏向装置において、
上記第1、第2駆動部を、ユニモルフ構造またはバイモルフ構造としたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれかの光偏向装置において、
上記駆動手段を支持し、上記ミラーの反射面と平行、かつ、上記ミラーの回動の中心軸に対して直交する方向回りに回動可能に固定枠に支持された可動枠と、
上記可動枠を回動させる可動枠駆動手段とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項13】
請求項12の光偏向装置において、
上記可動枠の一方側に接続された第1可動枠弾性支持部材と、上記可動枠の他方側に接続された第2可動枠弾性支持部材とを備え、
上記可動枠駆動手段は、上記固定枠に片持ち支持され、自由端部に上記第1可動枠弾性支持部材が接続された第1可動枠駆動梁と、上記第1可動枠駆動梁を上記可動枠の回動の中心軸回りに撓み振動させる第1可動枠圧電部材とを備えた第1可動枠駆動部と、
上記固定枠に片持ち支持され、自由端部に上記第2可動枠弾性支持部材が接続された第2可動枠駆動梁と、上記第2可動枠駆動梁を上記可動枠の回動の中心軸回りに撓み振動させる第2可動枠圧電部材とを備えた第2可動枠駆動部とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項14】
請求項13の光偏向装置において、
上記第1、第2可動枠駆動部を、ユニモルフ構造またはバイモルフ構造としたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項15】
光源と、光源からの光を偏向走査する光偏向手段とを備えた光走査装置において、
上記光偏向手段として、請求項1乃至11いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とする光走査装置。
【請求項16】
潜像を担持する潜像担持体と、光走査によって該潜像担持体の表面に潜像を形成する光走査手段と、該潜像担持体に担持された潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置において、
上記光走査手段として、請求項15の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
光源と、
画像信号に応じて光出力を変調する変調器と、
変調器からの光を偏向走査する光偏向手段とを備えた画像投影装置において、
上記光偏向手段として、請求項12乃至14いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項18】
光源と、
光源からの光を偏向走査する光偏向手段と、
画像から反射した光を受光する受光手段と、
該受光手段で受光した光に基づいて画像情報を生成する画像情報生成手段とを備えた画像読取装置において、
上記光偏向手段として、請求項1乃至11いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−198298(P2012−198298A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60974(P2011−60974)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】