説明

光全周エンコーダ及びモータシステム

【課題】製造を容易にしつつ小型化することが可能な、光全周エンコーダ及びモータシステムを提供すること。
【解決手段】回転軸AX上に位置する発光部111が一面側に配置された基板110と、基板110の他面側において回転軸AX周りに回転可能に配置され、回転軸AXを中心とし複数の回転スリットS2,S3を有する2つの回転トラックT2,T3を有するディスク140と、発光部111から照射された光を、ディスク140の外周方向のほぼ全域に向けて放射状に導き、回転トラックT2,T3に導く導光部120とを有し、導光部120は、回転トラックT2に間接的に対向する略リング状の照射入光面126を有し、該面126から回転トラックT2に向けて出射するために光を放射状に導くインクレ用第1導光部123等と、放射状に導いた光の一部を回転トラックT3に導くアブソ用第2導光部1293と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光全周エンコーダ及びモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の位置や速度等の物理量を測定するために、光学式エンコーダが使用される。光学式エンコーダには、ディスクの回転に対応した反射光又は透過光を発生させるために、ディスクに形成された回転スリットに対応した固定スリットが使用されるものがある。このような光学式エンコーダでは、高精度な位置検出を行うためには、回転スリットと固定スリットとの位置関係を高精度に調整する必要がある。なぜならば、固定スリットと回転スリットとの位置関係に誤差がある場合、その誤差の分、設計上望まない反射光及び透過光が受光素子に受光されるなどにより、ノイズが増加してしまうからである。このようなノイズを低減するために、光全周補正タイプのロータリエンコーダ(以下「光全周エンコーダ」ともいう。)が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−515426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光全周エンコーダは、ディスクの全周に形成された複数のスリットほぼ全てに対して光を照射し、その反射光又は透過光を受光する。従って、例えばディスクが偏心して取り付けられた場合などのように、固定ディスクと回転ディスクとの位置関係に誤差が生じた場合であっても、全周から得られる反射光又は透過光を使用することで、誤差を相殺させることが可能である。このように誤差に対する耐性が高まる結果、光全周エンコーダは、製造を容易化することが可能である。
【0005】
一方、上記光全周エンコーダでは、特許文献1に示すように、回転軸周りの全周に亘って形成する回転スリット及び固定スリットの少なくとも一方が、径方向で並べられた二重のスリットで形成される。そして、2重化されたスリット毎に異なる信号が得られるように、光路等が径方向や高さ方向(スラスト方向)で二重化される。このように径方向や高さ方向で二重化された光路等は、装置全体を大型化する原因となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、製造を容易にしつつ小型化することが可能な、光全周エンコーダ及びモータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、回転軸上に位置する光源が一面側に配置された基板と、
上記基板の他面側において上記回転軸周りに回転可能に配置され、上記回転軸を中心とし複数の回転スリットを有する少なくとも2以上の回転トラックを有するディスクと、
上記光源から照射された光を、上記ディスクの外周方向のほぼ全域に向けて放射状に導き、上記2以上の回転トラックに導く導光部と、
を有し、
上記導光部は、
第1の上記回転トラックに直接的又は間接的に対向する略リング状の面を有し、該面から上記第1の回転トラックに向けて出射するために上記光を放射状に導く第1導光部と、
少なくとも2以上配置され、上記放射状に導いた光の一部を上記第1の回転トラック以外の少なくとも1以上の第2の上記回転トラックに導く第2導光部と、を有する、光全周エンコーダが提供される。
【0008】
また、上記ディスクの軸方向一方側又は他方側において固定され、上記第1の回転トラックの上記回転スリットに対応した複数の固定スリットを有する固定トラックを更に有し、
上記固定トラックは、周方向で2以上の領域に分割され、
上記第1導光部は、少なくとも上記2以上の領域の境界に対応した位置に光を遮蔽する複数の遮光部を有し、
上記第2導光部は、上記遮光部より上記ディスク側に突出して設けられ、上記放射状に導かれ上記遮光部に進入した光を上記第2の回転トラックに導いてもよい。
【0009】
また、上記第1導光部は、上記複数の固定スリット及び上記複数の回転スリットに作用された光を集光しつつ上記回転軸近傍に向けて導き、
上記回転軸近傍に配置され、上記第1導光部により導かれた光を、上記2以上の領域毎にそれぞれ受光する2以上の受光部を更に有し、
上記固定トラックにおける、一の上記領域内の複数の固定スリットと、該一の領域に隣接する他の上記領域内の複数の固定スリットとは、上記受光部による受光信号間に回転方向が判別可能な位相差が生じるように形成されてもよい。
【0010】
また、上記固定トラックは、4の整数倍の個数の上記領域に分割され、
上記第2導光部は、上記領域と同数設けられてもよい。
【0011】
また、上記固定トラックが有する2以上の領域は、上記回転軸周りに上記領域の数の回転対称に設定され、
上記回転軸周りに点対称の関係となる2の上記領域毎の上記複数の回転スリット又は固定スリットは、2の上記受光部による受光信号間に電気角で0°又は180°の位相差が生じるように形成されてもよい。
【0012】
また、上記点対称の関係となる2の領域から得られた2の受光信号同士を加算又は減算した結果に基づいて、回転体の回転方向を含む位置データを生成する位置データ生成部を更に有してもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、回転シャフトを回転させるモータ部と、
上記回転シャフトに連結されて上記回転シャフトの位置を測定する光全周エンコーダと、
上記光全周エンコーダが検出した位置に基づいて、上記モータ部の回転を制御する制御部と、
を備え、
上記光全周エンコーダは、
上記回転シャフトの回転軸上に位置する光源が一面側に配置された基板と、
上記基板の他面側において上記回転軸周りに回転可能に配置され、上記回転軸を中心とし複数の回転スリットを有する少なくとも2以上の回転トラックを有するディスクと、
上記光源から照射された光を、上記ディスクの外周方向のほぼ全域に向けて放射状に導き、上記2以上の回転トラックに導く導光部と、
を有し、
上記導光部は、
第1の上記回転トラックに直接的又は間接的に対向する略リング状の面を有し、該面から上記第1の回転トラックに向けて出射するために上記光を放射状に導く第1導光部と、
少なくとも2以上配置され、上記放射状に導いた光の一部を上記第1の回転トラック以外の少なくとも1以上の第2の上記回転トラックに導く第2導光部と、を有する、モータシステムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、製造を容易にしつつ小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るモータシステムの構成について説明するための説明図である。
【図2】同実施形態に係るエンコーダの構成について説明するための説明図である。
【図3】同実施形態に係るエンコーダの構成について説明するための説明図である。
【図4】同実施形態に係る基板の構成について説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係る基板の構成について説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係る導光部の構成について説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係る導光部の構成について説明するための説明図である。
【図8】同実施形態に係る導光部の構成について説明するための説明図である。
【図9】同実施形態に係る導光部の構成について説明するための説明図である。
【図10】同実施形態に係るマスクの構成について説明するための説明図である。
【図11】同実施形態に係るディスクの構成について説明するための説明図である。
【図12】同実施形態に係る信号処理部の構成について説明するための説明図である。
【図13】変形例に係るエンコーダの構成について説明するための説明図である。
【図14】変形例に係る導光部の構成について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素は、原則として同一の符号で表し、これらの構成要素についての重複説明は、適宜省略するものとする。
【0017】
以下で説明する本発明の各実施形態では、ロータリ型の光学式エンコーダを有するロータリモータシステムを例に挙げて説明する。つまり、各実施形態に係る光全周エンコーダは、ロータリモータシステム(以下「モータシステム」ともいう。)に適用され、モータシステムが有するモータのシャフト(回転体の一例)の回転角度(「位置」ともいう。)を含む位置データを測定する。しかしながら、ここで説明する各実施形態に係る光全周エンコーダは、例えば原動機やステアリング等のように一定の回転軸周りに回転する様々な回転体に対して適用可能であることは言うまでもない。
【0018】
なお、本発明の各実施形態について理解が容易になるように以下の順序で説明することとする。
<1.第1実施形態>
(1−1.第1実施形態に係るモータシステム)
(1−2.第1実施形態に係るエンコーダの構成)
(1−3.第1実施形態に係るエンコーダの動作)
(1−4.第1実施形態による効果の例)
<2.変形例等>
【0019】
<1.第1実施形態>
(1−1.第1実施形態に係るロータリモータシステム)
まず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るモータシステムの構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るモータシステムの構成について説明するための説明図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るモータシステム1は、モータ10と、制御部20とを有する。また、モータ10は、光学式の光全周エンコーダ(以下単に「エンコーダ」ともいう。)100と、モータ部200とを有する。
【0021】
モータ部200は、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。このモータ部200を単にモータという場合もある。モータ部200は、少なくとも一側に回転シャフト201を有し、この回転シャフト201を回転軸AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
【0022】
なお、モータ部200は、位置データに基づいて制御されるサーボモータであれば特に限定されるものではない。また、モータ部200は、動力源として電気を使用する電動式モータ部である場合に限られるものではなく、例えば、油圧式モータ部、エア式モータ部、蒸気式モータ部等の他の動力源を使用したモータ部であってもよい。ただし、説明の便宜上、以下ではモータ部200が電動式モータ部である場合について説明する。
【0023】
エンコーダ100は、回転シャフト201の回転力が出力される出力端(負荷側端部)とは逆側の端部(反負荷側端部)202に連結され、回転シャフト201(回転体の一例)の位置データを検出する。ただし、エンコーダ100の配置位置は特に限定されるものではなく、例えば、減速機や回転方向変換機などの他の機構を介して回転シャフト201等の回転体に連結されてもよい。
【0024】
なお、本実施形態に係るエンコーダ100が検出する位置データには、回転シャフト201等の位置(回転角度。以下「モータ位置」等ともいう。)と、回転シャフト201等の回転方向を含む速度(回転速度。以下「モータ速度」等ともいう。)とが含まれるものとして、以下では説明する。ただし、本実施形態に係るエンコーダ100は、モータ速度の代わりにも回転方向だけを検出してもよく、回転シャフト201等の加速度(角加速度。以下「モータ加速度」等ともいう。)を更に検出してもよい。
【0025】
制御部20は、エンコーダ100から出力される位置データを取得して、当該位置データに基づいて、モータ部200の回転を制御する。従って、モータ部200として電動式モータ部が使用される本実施形態では、制御部20は、位置データに基づいて、モータ部200に印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータ部200の回転を制御する。更に、制御部20は、上位制御装置(図示せず)から上位制御信号を取得して、当該上位制御信号に表された位置又は速度等がモータ部200の回転シャフト201から出力されるように、モータ部200を制御することも可能である。なお、モータ部200が、油圧式、エア式、蒸気式などの他の動力源を使用する場合には、制御部20は、それらの動力源の供給を制御することにより、モータ部200の回転を制御することが可能である。
【0026】
(1−2.第1実施形態に係るエンコーダの構成)
次に、図2及び図3を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明する。図2及び図3は、本実施形態に係る光全周エンコーダの構成について説明するための説明図である。なお、図2は、本実施形態に係るエンコーダ100の一部構成を斜め上方より見た図であり、図3は、図2に示したエンコーダ100を、A−A線で切断した断面図である。
【0027】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、大きく分けて、基板110と、導光部120と、マスク130と、ディスク140と、を有する。以下、適宜図面を参照して各構成について説明した後、エンコーダ100の動作を通じて光の流れや検出原理等について説明する。なお、以下では説明の便宜上、回転軸AXにおけるモータ部200側(シャフト端部202側)を「下方」や「下」ともいい、モータ部200から離れる方向を「上方」や「上」ともいい、回転軸AXと垂直な方向を「側方」や「径方向」ともいう。ただし、本実施形態に係るエンコーダ100は、上下の概念に縛られるものではなく、どのような姿勢で配置されてもよいことはいうまでもない。
【0028】
(基板110)
基板110は、図3に示すように、発光部111と、受光部112と、アブソ検出部113と、信号処理部114(図13参照)を有する。そして、基板110は、マスク130の上方に配置される。この基板110が有する構成を、図4及び図5に示す。図4及び図5は、本実施形態に係る基板の構成について説明するための説明図である。なお、図4は、基板110の上面を示す図であり、図5は、基板110の下面を示す図である。
【0029】
発光部111は、光源の一例であり、図4に示すように、基板110の上面において回転軸AX上に配置される。そして、発光部111は、回転軸AXに沿って上方に向けて光を発生させる。なお、この発光部111が発する光は、レーザ光、平行光、発散光、収束光など様々な光であってもよく、また、その波長も特に限定されるものではない。
【0030】
受光部112は、2以上の受光部の一例であり、図4に示すように、本実施形態では4の受光部112A〜112Dで構成される。受光部112A〜112Dは、基板110の上面において発光部111を取り囲むように、回転軸AXの近傍においてそれぞれ4の領域XA〜XD毎に配置される。なお、本実施形態では、4つの領域XA〜XDが回転軸AX周りの点対称に設定されるため、受光部112A〜112Dも回転軸AX周りの点対称に配置される。この受光部112A〜112Dは、それぞれ各領域XA〜XD毎に光を受光し、受光信号を生成する。つまり、本実施形態では、各領域XA〜XD毎に4の受光信号が生成される。
【0031】
なお、本実施形態では、後述するようにマスク130に設けられた複数の固定スリットS1は回転軸AX周りに点対称な4つの領域XA〜XDに分割されている。よって、この受光部112A〜112Dや、後述する他の構成は4つ配置される。しかし、このマスク130に設定される領域数は2以上であればよく、領域の設定位置も点対称でなくてもよい。この場合、受光部112や他の構成は、領域の個数とその設定位置に応じて配置されることが望ましい。なお、領域が4の整数倍である場合に、本実施形態に係るエンコーダ100は、偏心に対する影響を低減する効果をより一層高めることが可能である。そして、このような耐偏心性は、領域が点対称で形成される場合、更に一層高められる。
【0032】
一方、アブソ検出部113は、本実施形態では4つのアブソ検出部113A〜113Dで構成される。アブソ検出部113A〜113Dは、図5に示すように、基板110の下面において、回転軸AXから離れた位置に点対称に配置される。アブソ検出部113A〜113Dとしては、例えば受光素子を使用する事が可能である。アブソ検出部113A〜113Dは、発光部111で発光され後述するアブソ用導光部129によりディスク140に導かれて反射された光を受光する。その結果アブソ検出部113A〜113Dは、受光信号を生成する。このアブソ検出部113A〜113Dが生成する受光信号には、アブソリュート位置、つまり絶対位置の情報が含まれ、後述するモータ位置の算出に使用される。よって、このアブソ検出部113の個数及び配置位置は、モータ位置の絶対値が検出可能な構成であれば本実施形態に限定されるものではない。
【0033】
なお、アブソ検出部としては、例えば受発光一体型素子を使用してもよい。この場合、発光部111からの光とアブソ検出部からの光の両方をアブソ検出に用いることが可能となり、アブソ検出部での受光量を増大して検出精度を向上することが可能である。
【0034】
信号処理部114は、図4及び図5では省略されているが、基板110に配置される。そして、信号処理部114は、上記受光部112及びアブソ検出部113から受光信号を取得し、当該複数の受光信号から、モータ位置(絶対値を含む)及びモータ速度(回転方向を含む)を含む位置データを生成する。この生成された位置データは、制御部20に送られる。なお、この信号処理部114については、エンコーダ100の動作において構成を含めて説明する(図13参照)。また、信号処理部114は、本実施形態とは異なり、基板110以外のエンコーダ100の構成若しくは制御部20内に配置されてもよく、また、エンコーダ100及び制御部20とは異なる構成であってもよい。
【0035】
なお、図4及び図5に示すように、基板110にはアブソ検出部113と同数の貫通孔115が設けられる。貫通孔115は、後述するアブソ用導光部129を基板110の上方から下方に貫通させるためのものであり、この例では受光部112の外周側且つアブソ検出部113の内周側において、アブソ検出部113に対応した位置に配置される。
【0036】
(導光部120)
導光部120は、主に例えばガラス材料やプラスチック材料などの光を透過する材質で形成され、マスク130(固定トラックT1)との間に基板110を挟んでその基板110の上方及び側方のほぼ全体を覆うように、回転軸AX上からマスク130に向けて延長形成される。そして、導光部120は、発光部111から発せられた光を、側方に発散させつつ(言い換えればディスク140の外周方向のほぼ全域に向けて放射状に)導いた後下方へと導き、マスク130の固定トラックT1のほぼ全周に照射する。それだけでなく、導光部120は、後述する複数の固定スリット及び複数の回転スリットのほぼ全周を透過した光を、上記照射時と同様な光路で集光しつつ回転軸AX近傍に向けて導き、受光部112に照射する。ここでは、この光の流れ上、マスク130に光を照射する過程を「往路」ともいい、マスク130等からの戻り光を受光部112に照射する過程を「復路」ともいう。また導光部120は、上記放射状に導いた光の一部を下方へと導き、後述する回転トラックT3に照射する。
【0037】
この導光部120の構成等を、図3及び図6〜図9を参照しつつ、より詳細に説明する。図6〜図9は、本実施形態に係る導光部の構成について説明するための説明図である。なお、図6は、導光部120を斜め上方から見た図であり、図7は、導光部120を上方から見た図であり、図8は、導光部120を斜め下方から見た図であり、図9は、導光部120を下方から見た図である。
【0038】
導光部120は、図3,図6及び図8に示すように、大きく分けて、入光部121と、発散集光部122と、インクレ用第1導光部123と、方向変換面124と、インクレ用第2導光部125と、照射入光面126と、出光部127と、鍔部128と、アブソ用導光部129と、コーティングCOと、遮光部SPとを有する。インクレ用第1導光部123と、方向変換面124と、インクレ用第2導光部125と、照射入光面126とが、第1導光部の一例に相当する。第2導光部の一例であるアブソ用導光部129は、アブソ用第1導光部1291と、方向変換面1292と、アブソ用第2導光部1293と、照射面1294とを有する。
【0039】
入光部121は、図8及び図9に示すように、回転軸AX上に配置され、回転軸AXに沿ってインクレ用第1導光部123から発光部111に向けて延長形成される。そして、入光部121は、発光部111から発せられた光が入光され、その光を上方に導く。この際、入光部121は、上方にいくにつれて半径が大きくなる円柱状に形成されることが望ましい。入光部121から入光した光は、発散集光部122の発散面122Aに照射される。
【0040】
発散集光部122は、下方に陥没して形成された略円錐形状の面を有し、かつ、回転軸AXから周方向に発散面122Aと集光面122Bに分かれる。発散面122Aは、入光部121から伝搬された光を、径方向に反射させつつ、光をインクレ用第1導光部123及びアブソ用第1導光部1291の全周にわたるように発散させるように、湾曲した面で形成される。なお、この湾曲面は、径方向の外周から平行な光が照射された時に、発光部111に集光されるように設定されることが望ましい。他方、集光面122Bは、発散集光部122の略円錐形状のうち発散面122Aよりも半径方向外側に設けられる。そして、集光面122Bは、復路を伝搬してインクレ用第1導光部123を径方向に回転軸AXに向けて集光された光を、受光部112方向に反射させるように、湾曲した面で形成される。この湾曲面は、径方向の外周から平行な光が照射された時に、焦点が受光部112に最大限集光するように設定されることが望ましい。
【0041】
インクレ用第1導光部123は、図3及び図6〜図9に示すように、基板110を覆うように略円板状に形成され、発散面122Aで発散された光を径方向外周に向けて放射状に導光する一方、復路の光を径方向内周に向けて導光する。
【0042】
方向変換面124は、図3及び図6等に示すように、インクレ用第1導光部123の径方向外周において半径方向に対して略45°のリング状の面として形成される。そして、方向変換面124は、インクレ用第1導光部123を径方向に向けて伝搬された光を下方に向けて反射する。一方、方向変換面124は、インクレ用第2導光部125が上方に向けて伝搬した光を径方向で回転軸AXに向けて反射する。
【0043】
インクレ用第2導光部125は、リング状の方向変換面124の下方においてリング状に配置され、基板110の側方を覆いつつ、方向変換面124からマスク130(固定トラックT1)近傍まで延長形成される。そして、このインクレ用第2導光部125の下方には、略リング状の面の一例である照射入光面126が形成される。よって、導光部120の往路を伝搬した光は、インクレ用第2導光部125により、マスク130近傍まで導かれ、照射入光面126を介してマスク130に照射される。一方、マスク130等からの戻り光は、照射入光面126からインクレ用第2導光部125に入光して、導光部120により上記復路を伝搬される。
【0044】
出光部127は、入光部121の近傍において各領域XA〜XD毎に受光部112A〜112Dに対応した位置に出光部127A〜127Dの4つが配置される。そして各出光部127A〜127Dは、復路を伝搬し集光面122Bで集光された光を各受光部112A〜112D近傍まで導き、受光部112A〜112Dに向けて照射する。
【0045】
鍔部128は、インクレ用第2導光部125の外周から径方向外側に向けて突出して形成される。この鍔部128は、導光部120をエンコーダ100の筐体(図示せず)に固定する役割を担う。
【0046】
アブソ用導光部129は、少なくとも2以上の第2導光部の一例であり、図3及び図6〜図9に示すように、本実施形態では4つの領域XA〜XDの境界に対応した位置に配置された4のアブソ用導光部129で構成される。アブソ用第1導光部1291は、図3及び図6〜図9に示すように、4つの領域XA〜XDの境界に対応した位置に楔状に配置され、発散面122Aで発散された光の一部を径方向外周に向けて放射状に導光する。
【0047】
方向変換面1292は、図3及び図6等に示すように、アブソ用第1導光部1291の径方向外周において半径方向に対して略45°の矩形状の面として形成される。そして、方向変換面1292は、アブソ用第1導光部1291を径方向に向けて伝搬された光を下方に向けて反射する。
【0048】
アブソ用第2導光部1293は、矩形状の方向変換面1292の下方においてディスク140側に突出して設けられ、基板110の貫通孔115及びマスク130の開口部131を貫通しつつ、方向変換面1292からディスク140(回転トラックT3)近傍まで延長形成される。そして、このアブソ用第2導光部1293の下方には、照射面1294が形成される。よって、アブソ用第1導光部1291を伝搬した光は、アブソ用第2導光部1293により、ディスク140近傍まで導かれ、照射面1294を介してディスク140に照射される。なお、この照射面1294からの照射光に対するディスク140等からの戻り光は、再度マスク130の開口部131を透過し、アブソ検出部113により受光される。
【0049】
コーティングCOは、照射入光面126・入光部121の入光面・出光部127の出光面・照射面1294以外の導光部120の面に配置される。そして、このコーティングCOは、光を反射又は遮蔽する材質で形成される。よって、コーティングCOは、導光部120が導光する光が外部に漏れたり、導光部120に照射光及び戻り光以外の余分な光が混ざることを防止できる。なお、このコーティングCOは、漏れ光や迷光による影響が少なければ、配置されなくてもよい。
【0050】
遮光部SPは、図9に示すように、4つの領域XA〜XDの境界に対応した位置に配置され、領域XA〜XD間を跨ぐ光を遮蔽する。つまり、本実施形態の場合、遮光部SPは、4つの領域XA〜XDの4つの境界に1ずつ配置される。このような遮光部SPを有することにより、導光部120は、マスク130の領域XA〜XDそれぞれから入射した光を、それぞれ対応した受光部112A〜112Dへと導くことができ、受光信号のノイズ成分を減少させることができる。
【0051】
より詳細に遮光部SPについて説明する。
遮光部SPは、図9等に示すように、回転軸AXから順に第1遮光部SP1と第2遮光部SP2と第3遮光部SP3とを有する。第1遮光部SP1は、回転軸AXから径方向外周に向かうにつれて、導光部120の幅(回転軸AXと垂直な面内の幅)が拡大しかつ厚み(回転軸AX方向の厚み)は略一定となるように形成される。なお、第1遮光部SP1は、上述のアブソ用第1導光部1291と同一である。すなわち、アブソ用導光部129は第1遮光部SP1をその構成要素として含んでおり、アブソ用第2導光部1293が第1遮光部SP1よりディスク140側に突出して設けられた構成とも言うことができる。一方、第2遮光部SP2及び第3遮光部SP3は、図3、図7及び図8に示すように、導光部120の切り欠きとして形成される。なお、第1遮光部SP1は、上記のような形状を有することにより、一体としての導光部120の機械的強度を向上させる。更に第1遮光部SP1は、このような形状により、往路光が拡散されることを防ぎつつ復路光のクロストークを各領域XA〜XD間で適切に防止する効果を向上させることができる。なお、第2遮光部SP2及び第3遮光部SP3は、切り欠き等ではなく光を透過しない材質で形成されてもよい。
【0052】
このような形状を有する導光部120は、往路光と復路光をマスク130と発光部111又は受光部112とマスク130との間で伝搬することが可能である。この際、導光部120は、遮光部SPを有することにより、各領域XA〜XD間を跨ぐ光を低減させて受光信号のノイズを低減することが可能である。また、導光部120は、往路光の一部を発光部111とディスク140との間で伝搬することが可能である。そして、導光部120は、コーティングCOを有することにより、漏れ光や迷光が受光されることを防止して、更に受光信号のノイズを低減することが可能である。また、導光部120は、一部構成を除き、導光する部材の全体を同一の材質で一体に形成することが可能であるため、型を使用して成形するなど製造が容易である。
【0053】
(マスク130)
マスク130は、主に少なくとも表面が光を吸収又は拡散する材質で形成され、ディスク140の回転トラックT2の上面を覆う形状を有し、導光部120が照射する光を遮る位置に固定して配置される。このマスク130の構成を、図10に示す。図10は、本実施形態に係るマスクの構成について説明するための説明図である。図10に示すように、マスク130は、固定トラックT1と、開口部131とを有する。
【0054】
固定トラックT1は、回転トラックT2の上方(軸方向一方側の一例)において、回転軸AXを中心としたリング状に設定される。なお、この固定トラックT1は、回転トラックT2に対応した形状を有する。そして、この固定トラックT1は、図10に示すように、周方向(回転方向)で4つの領域XA〜XDに分割されている。そして、この領域XA〜XD毎に複数の固定スリットS1が配置される。
【0055】
固定スリットS1は、図10に示すように、回転軸AXを中心とし、各領域XA〜XD内でピッチ(繰り返し間隔)pが等しい放射状のパターンで複数形成される。そして、固定スリットS1は、往路光及び復路光を透過する。なお、領域XA〜XDそれぞれに含まれる複数の固定スリットS1を、固定スリットS1A〜S1Dという。つまり、固定スリットS1Aを透過した光が、領域XAを伝搬され、固定スリットS1Bを透過した光が、領域XBを伝搬され、固定スリットS1Cを透過した光が、領域XCを伝搬され、固定スリットS1Dを透過した光が、領域XDを伝搬されることになる。
【0056】
より具体的に、複数の固定スリットS1Aを例に挙げて説明する。
複数の固定スリットS1Aは、固定トラックT1の領域XAに配置される。複数の固定スリットS1Aは、等しいピッチp(例えば角度ピッチ)で回転軸AXを中心とした放射状に配置される。なお、固定スリットS1B〜S1Dそれぞれのピッチpも固定スリットS1Aのピッチpと等しく設定されることになる。
【0057】
他方、固定トラックT1における、一の領域内の複数の固定スリットS1と、その一の領域に隣接する他の領域内の複数の固定スリットS1とは、受光部112による受光信号間に回転方向が判別可能な位相差が生じるように形成される。つまり、一の領域内で複数の固定スリットS1は、回転軸AX周りの角度に対して所定の繰り返し周期(ピッチp)で形成されるが、その一の領域とそれに隣接する他の領域の固定スリットS1は、繰り返し周期は同じでも、その周期に位相差が生じるように形成される。そして、この位相差は、後述するディスク140の回転方向を判別可能な位相差に設定される。なお、この位相差は、固定トラックT1の分割数(本実施形態では4)や受光信号の分解能に応じて望ましい値が異なるが、0°より大きく180°より小さい値に設定されることで、ディスク140の回転方向を判別可能となる。なお、本実施形態の場合、領域XA〜XDが4つの等分割された領域であることから、位相差は、90°又は180°に設定されることが望ましい。これにより、各領域間の位相差を同一にすることができ、製造や信号処理が容易になる。なお、本実施形態では、隣接した領域間の位相差が90°である場合を例にあげて説明する。
【0058】
より具体的に、相隣接した固定スリットS1Aと固定スリットS1Bとの関係を例にあげて説明する。領域XAの固定スリットS1B側端部に位置した固定スリットS1Aと、領域XBの固定スリットS1A側端部に位置した固定スリットS1Bとの間には、スリット間隔φA(位相差)が設けられる。このスリット間隔φAは、本実施形態では位相差が90°であるため、ピッチpの4分の1の奇数倍に設定されることになる。そして、他のスリット間隔φB〜φDも、同様にピッチpの4分の1の奇数倍に設定される。なお、位相差が180°の場合には、スリット間隔φA〜φDは、ピッチpの2分の1の奇数倍に設定されることになる。
【0059】
開口部131は、マスク130の中央位置に設けられる。この開口部131は、後述するアブソ用回転スリットS3(アブソ用回転スリットS31〜S37)に対応する位置まで設けられており、アブソ用第2導光部1293が当該開口部131を貫通してディスク140近傍まで延長形成される。また、開口部131は、基板110の発光部111等で発せられた熱を放熱する。なお、シャフト端部202に送風機構を設けてその回転による風を開口部131を介して基板110に送り、上記遮光部SPの切り欠きから熱を逃がすことも可能である。この場合、送風機構は、シャフト端部202の開口部190(図3参照)内に設けられてもよい。
【0060】
(ディスク140)
ディスク140は、図3に示すように、モータ部200の回転出力が伝達される回転シャフト201の端部202に固定される。なお、上記マスク130や導光部120のインクレ用第1導光部123、基板110等の構成も同様であるが、ディスク140は、回転軸AXと垂直な面と平行に配置される。また、ディスク140は、図3に示すように、マスク141と導光部142とを有する。そして、マスク141は、2以上の回転トラックの一例である回転トラックT2と回転トラックT3とを有する。このディスク140の構成についてより具体的に図3及び図11を参照しつつ説明する。図11は、本実施形態に係るディスクの構成について説明するための説明図である。なお、図11は、ディスク140のマスク141側の面(上方)を見た図である。
【0061】
図11に示すように、ディスク140は、回転軸AXを中心とした円板状に形成される。そして、マスク141は、ディスク140の上面に配置される。なお、マスク141の配置位置は、特に限定されるものではないが、導光部142の反射部V1及びV2よりも基板110側に配置されることが望ましい。
【0062】
マスク141は、例えば光を透過又は正反射させずに吸収又は拡散させる材質で形成される。他方、マスク141には、回転トラックT2が設定され、この回転トラックT2には、光を透過する複数の回転スリットS2が配置される。更に、マスク141には、回転トラックT2の内周側に回転トラックT3が設定され、この回転トラックT3は、光を透過するアブソ用回転スリットS3(アブソ用回転スリットS31〜S37)を有する。なお、これらのスリットは、マスク141の他の部位と異なり光を透過する。
【0063】
回転トラックT2は、第1の回転トラックの一例であり、図10に示したマスク130の固定トラックT1の下方にほぼ同一の半径で回転軸AXを中心としたリング状に設定される。そして、回転スリットS2は、固定スリットS1A〜S1Dのピッチpと同一のピッチpで、回転軸AXを中心とした放射状に形成される。すなわち、回転スリットS2はインクリメンタルパターンを有する。よって、ディスク140が回転して、図10に示す固定スリットS1A〜S1Dと回転スリットS2とが回転軸AX方向で一致した領域XA〜XDのマスク141だけが光を下方(導光部142側)に透過する。
【0064】
一方、回転トラックT3は、第2の回転トラックの一例であり、回転軸AXからの距離がアブソ検出部113A〜113Dと同様な位置に配置される。そして、回転トラックT3のアブソ用回転スリットS31〜S37は、所定のアブソリュートパターンを有し、アブソ用回転スリットS31〜S37とアブソ用導光部129の照射面1294とが回転軸AX方向で一致した場合に、光を下方に透過する。なお、このアブソ用回転スリットS3のアブソリュートパターンは、ディスク140の1回転内で、アブソ用導光部129の照射面1294のいずれかと回転軸AX方向で一致する組み合わせが、同一にならないように設定される。つまり、このアブソ用回転スリットS3のアブソリュートパターンは、照射面1294のいずれかと回転軸AX方向で一致する組み合わせにより、1回転内の絶対位置を示すように形成される。
【0065】
導光部142は、図3に示すように、反射部V1と、反射部V2と、コーティングCOとを有する。
【0066】
反射部V1及び反射部V2は、それぞれ回転スリットS2及びアブソ用回転スリットS3の下方に配置され、回転スリットS2及びアブソ用回転スリットS3を透過した光を上方に向けて反射して回転スリットS2及びアブソ用回転スリットS3を再度透過させる。本実施形態における反射部V1,V2は、図3に示すように、導光部142の下面において断面がV字のリング状に突出して形成される。これにより、反射部V1,V2は、各スリットを透過して回転軸AXと略平行な光路を下方に向かう光を、径方向(反射部V1は径方向内側、反射部V2は径方向外側)にずらし、回転軸AXと略平行な光路を今度は上方に向けて反射する。なお、反射部V1における復路光を見ると、この復路光は、再度回転スリットS2及び固定スリットS1を透過して導光部120へと入射し、方向変換面124で反射される結果、往路光よりも上方を通過して、集光面122Bへと到達し、受光部112に向けて集光されることになる。一方、反射部V2における反射光を見ると、この反射光は、再度アブソ用回転スリットS3及びマスク130の開口部131を透過して、アブソ検出部113により受光される。
【0067】
なお、反射部V1及び反射部V2は、このように光路を径方向でずらしつつ、光を各スリットに戻すように反射するような構成であれば、このような構成に限定されるものではない。例えば、反射部V1及び反射部V2は、導光部142の上面に設けられたV字状の溝であってもよい(この場合、導光部142は光を透過する必要はない。)。ただし、このように反射部V1及び反射部V2を導光部142の下方に突起として設けることにより、遠心力や信号が伝わるディスク140の機械的強度を向上させることが可能である。
【0068】
以上、本発明の第1実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明した。次に、本発明の第1実施形態に係るエンコーダ100の動作について説明する。なお、このエンコーダ100が有する信号処理部114の詳しい構成については、この動作の説明において図12を参照しつつ説明する。図12は、本実施形態に係る信号処理部の構成について説明するための説明図である。
【0069】
(1−3.第1実施形態に係るエンコーダの動作)
信号処理部114は、図12に示すように、A相信号生成部1141と、B送信号生成部1142と、アブソ信号生成部1143と、位置データ生成部1144とを有する。各構成については、動作を通じて説明する。
【0070】
(アブソ信号生成動作)
まず、アブソリュート(絶対位置)信号(アブソ信号)の生成動作について説明する。このアブソ信号生成動作は、図12に示すアブソ信号生成部1143で行われる。以下、光の流れと共に説明する。
【0071】
図3及び図4に示す発光部111は、導光部120の入光部121に向けて光を照射する。入光部121から入射した光は、入光部121を上方に伝播し、発散集光部122の回転軸AX側に位置した発散面122Aで径方向に向けて反射され、アブソ用第1導光部1291を径方向の外周側に向けて伝搬される。そして、この光は、方向変換面1292で更に下方(マスク130側)に向けて反射され、アブソ用第2導光部1293を下方に向けて伝搬され、照射面1294からディスク140に照射される。他方、ディスク140は、モータ部200の回転により回転するため、図11に示す所定のパターンを有するアブソ用回転スリットS31〜S37も回転する。その結果、アブソ用回転スリットS31〜S37と照射面1294のいずれかが一致した光が、アブソ用回転スリットS31〜S37を透過する。透過した光は、導光部142の反射部V2で反射される。その反射された光は、再度アブソ用回転スリットS31〜S37とマスク130の開口部131を透過して、アブソ検出部113A〜113Dの受光素子で受光される。従って、アブソ検出部113A〜113Dは、ディスク140の1回転内の周期を有する所定の組み合わせの受光信号を出力する。
【0072】
そこで、アブソ信号生成部1143は、アブソ検出部113A〜113Dからこの受光信号を取得する。そして、アブソ信号生成部1143は、この4つの受光信号の組み合わせから、1回転内の大体の絶対位置を割り出す。このアブソ信号生成部1143による絶対位置を表すアブソ信号生成処理は、例えば予め4つの受光信号の組み合わせと絶対位置との間の関係をテーブル等で記憶しておき、その関係から割り出すなど、様々な方法が使用可能である。そして、アブソ信号生成部1143は、生成したアブソ信号を位置データ生成部1144に出力する。
【0073】
(A相信号及びB相信号生成動作)
次に、上記アブソ信号生成動作と共に行われる、インクリメンタル信号に対応したA相信号及びB相信号の生成動作について説明する。このA相信号及びB相信号生成動作は、A相信号生成部1141とB相信号生成部1142とで行われる。以下、光の流れと共に説明する。
【0074】
図3及び図4に示す発光部111は、導光部120の入光部121に向けて光を照射する。入光部121から入射した光は、入光部121を上方に伝播し、発散集光部122の回転軸AX側に位置した発散面122Aで径方向に向けて反射され、インクレ用第1導光部123を径方向の外周のほぼ全周に向けて伝搬される。そして、この光は、方向変換面124で更に下方(マスク130側)に向けて反射され、インクレ用第2導光部125を下方に向けて伝搬され、照射入光面126からマスク130に照射される。図10に示すように、マスク130の領域XA〜XDそれぞれには、90°位相差がついた同一ピッチpの複数の固定スリットS1A〜S1Dが形成されている。従って、導光部120から照射された光は、この固定スリットS1A〜S1Dを透過して、その固定スリットS1A〜S1Dのパターンでディスク140に照射される。
【0075】
一方、回転しているディスク140は、図11に示すように、全周に亘って等ピッチpの回転スリットS2が形成されているため、そのディスク140の位置(角度)に応じて、固定スリットS1A〜S1Dと回転スリットS2とが重なりあう部位だけ光を下方に透過させる。従って、ディスク140が回転スリットS2の1ピッチp分回転する間に略正弦波状に強度が変化する光が、ディスク140の回転スリットS2を透過することになる。一方、固定スリットS1A〜S1Dは、各領域XA〜XD同士で90°又は180°の位相差が形成されているため、各領域XA〜XDに対応した位置でディスク140を透過する光は、それぞれ90°又は180°の位相差を有する略正弦波状の光となる。つまり、ディスク140が1ピッチp分回転する間に、例えば、回転スリットS2は、順次、領域XAの固定スリットS1A・領域XBの固定スリットS1B・領域XCの固定スリットS1C・領域XDの固定スリットS1Dと一致する。
【0076】
このようにディスク140を透過した光は、図3に示すようにディスク140の裏面に形成された導光部142を透過してV字状の反射部V1で一旦径方向内側に反射された後、再度上方(回転スリットS2側)に向けて反射される。径方向内側にずらされた復路を往路と反対方向に進む光は、順次回転スリットS2及び固定スリットS1を透過して、導光部120に入光する。すると、この光は、往路とは逆に、コーティングCOの施されてない照射入光面126から導光部120のインクレ用第2導光部125に導かれ、インクレ用第2導光部125を上方に向けて伝搬される。そして、この光は、方向変換面124で径方向内側(つまり回転軸AX側)に向けて反射・集光される。方向変換面124で反射された光は、反射前までは往路光よりも径方向内側を通過していたため、反射後では往路光よりも上方(マスク130から離れる方向)を通過する。従って、この復路光は、往路光とは異なり、主に発散集光部122の集光面122Bに到達する。一方、集光面122Bは、光路が出光部127で受光部112の受光面近傍に集光されるよう設定されているため、集光面122Bで反射した光は、集光されつつ出光部127を伝搬して受光部112で受光される。
【0077】
なお、上述の通り、この復路光等は、ディスク140の回転に応じて、固定スリットS1A〜S1Dにより領域XA〜XD毎に異なるタイミングで受光部112A〜112Dに受光される。そして導光部120は、図7及び図8等に示すように、この異なるタイミングで生じた領域XA〜XD毎の光がクロストークすることを防止可能な遮光部SPを有する。そして、図4及び図8〜図9に示すように、出光部127及び受光部112A〜112Dは、各領域XA〜XD毎に設けられている。従って、本実施形態に係るエンコーダ100によれば、受光部112A〜112Dは、ノイズが低減され、90°又は180°位相差を各領域XA〜XD毎に有する正弦波状の受光信号を発生する。そして、図12に示すように、回転軸AXを挟んで対向した受光部112A及び受光部112Cの受光信号は、信号処理部114のA相信号生成部1141に出力され、同じく回転軸AXを挟んで対向した受光部112B及び受光部112Dの受光信号は、信号処理部114のB相信号生成部1142に出力される。
【0078】
A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142は、点対称の関係となる2の領域から2の受光部がそれぞれ受光して得られた2の受光信号をそれぞれ取得する。そして、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142それぞれは、その2の受光信号同士を減算(差動)することにより1の信号を生成する。よって、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142からは、2の信号(A相信号及びB相信号)が生成される。
【0079】
この際、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142がそれぞれ取得した2の受光信号は、本実施形態の場合、回転軸AXを挟んで配置された領域の固定スリットS1が180°位相差を有するため、180°位相差を有する。従って、このように差動されることにより、2の受光信号からは、偏心量などの誤差が相殺された1のA相信号又はB相信号が生成されることになる。つまり、例えば、図10において、ディスク140の回転軸AXが所望の位置から領域XAと領域XCの方向に偏心した場合、この偏心による誤差は、他の領域に比べて、領域XAからの受光信号と領域XCからの受光信号に生じる。しかし、この誤差による受光信号の強度は、領域XAの受光信号と領域XCの受光信号では逆となる。よって、本実施形態のようにA相信号生成部1141が両受光信号を差動させることによりこのような誤差を相殺することが可能である。同様に、B相信号生成部1142は、ディスク140の回転軸AXが所望の位置から領域XBと領域XDの方向に偏心した場合に生じる誤差を相殺することが可能である。
【0080】
また、上記のように生成されたA相信号とB相信号とは、固定スリットS1A,S1Cと固定スリットS1B,S1Dとが電気角で90°位相差を有するため、ディスク140の1ピッチp分の回転で1周期となり、かつ、90°の位相差を有する。
そして、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142は、生成したA相信号及びB相信号を位置データ生成部1144に出力する。この際、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142は、生成したA相信号及びB相信号を所定の逓倍数で逓倍して出力することにより、分解能を向上させてもよい。また、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142は、A相信号及びB相信号を生成する過程で、アナログ・デジタル変換処理や信号増幅処理を施すことが好ましい。
【0081】
なお、ここでは、A相信号生成部1141及びB相信号生成部1142は、それぞれ取得する2の受光信号が180°の位相差を有するため、この2の受光信号を差動増幅させるが、例えば、2の受光信号が0°の位相差を有する場合には、この2の受光信号を加算して増幅させることにより、同様に誤差を相殺することが可能である。
【0082】
(位置データ生成動作)
最後に、上記アブソ信号とA相信号とB相信号とから、位置データを生成する動作について説明する。この位置データ生成動作は、位置データ生成部1144で行われる。
【0083】
位置データ生成部1144は、上述のように生成されたアブソ信号とA相信号とB相信号とを取得する。そして、位置データ生成部1144は、これらの信号に基づいて、ディスク140の回転方向を含む位置データを生成する。つまり、位置データ生成部1144は、アブソ信号に基づいて、ディスク140の1回転内の大まかな絶対位置(アブソリュート位置)を特定する。一方、位置データ生成部1144は、A相信号及びB相信号の少なくとも一方をカウント等することにより、上記の大まかな絶対位置に対してより詳細な絶対位置を特定する。更に、位置データ生成部1144は、A相信号及びB相信号の位相差が90°であるか−90°であるかを参照することにより、ディスク140の回転方向を特定する。そして、位置データ生成部1144は、特定した精度の高い絶対位置と回転方向とを含む位置データを生成して、制御部20に出力することになる。
【0084】
(1−4.第1実施形態による効果の例)
以上、本発明の第1実施形態に係るエンコーダ100及びこのエンコーダ100を備えたモータシステム1について説明した。このエンコーダ100等によれば、ディスク140のほぼ全周に亘って光を照射して、その全周から得られた信号から受光信号を生成している。従って、エンコーダ100等は、ディスク140の偏心等により生じる誤差の影響を低減して、精度の高い位置検出を行うことが可能である。従って、エンコーダ100等によれば、ディスク140等の高精度な位置決めが要求されず、エンコーダ100等の製造を容易にすることが可能である。
【0085】
一方で、エンコーダ100等によれば、導光部120がインクレ用第1導光部123等とアブソ用導光部129を有しており、導光部120によって発光部111から照射された光を2以上の回転トラックT2,T3に導くことを可能としている。従って、回転トラックT3より得られるアブソ信号に基づいて、ディスク140の1回転内の大まかな絶対位置を特定できると共に、回転トラックT2より得られるインクレ信号に基づいて、上記大まかな絶対位置に対してより詳細な絶対位置を特定することができ、精度の高い絶対位置を含む位置データを生成することができる。このように、精度の高い絶対位置を含む位置データを生成するためにディスク140に設定された複数のトラックに応じ、複数の導光部を用意せずに済む。よって、このエンコーダ100等によれば、部品点数を減少させて製造コストを低減するだけでなく、装置自体を小型化することが可能である。更に言えば、このことは原材料の使用量の低減につながるだけでなく、発光部111を複数用意する必要がないため、エネルギー消費量を低減することも可能である。
【0086】
なお、上述の通り、アブソ検出部として、本実施形態とは異なり受発光一体型の素子を使用することも可能であるが、本実施形態のように、受光のみを行うアブソ検出部を使用すれば、そのための構成を増やすことなく、消費電力をより効果的に低減することが可能である。特に、外部電源が供給されないバッテリ駆動時には、非常に大きな消費電力削減効果を発揮しえる。
【0087】
また、エンコーダ100等によれば、アブソ用導光部129(アブソ用第2導光部1293)を第1遮光部SP1に設ける。このようなアブソ用導光部129を設けない場合、発光部111から発せられ放射状に導かれた光のうち遮光部SPに進入した光は活用されないこととなるが、本実施形態によれば遮光部SPに進入した光をアブソ用第2導光部1293で回転トラックT3に導きアブソ検出に用いることを可能とするので、発光部111の光を無駄なく有効活用することができる。更に、このような構成が、導光部120として一体に形成可能であるため、例えば、金型を使用して導光部120を形成するなど、容易かつ低コストで製造することが可能である。
【0088】
さらに、このエンコーダ100等は、1つのトラックT1中に複数の領域XA〜XDを有し、各領域XA〜XD毎に位相の異なる受光信号を得ることを可能にしている。従って、このエンコーダ100等は、回転方向を検出する複数相の受光信号を得るために、ディスク140やマスク130に複数のトラックを設定する必要や、それに応じた複数の導光部を用意せずに済む。よって、このエンコーダ100等によれば、上記と同様に部品点数を減少させて製造コストを低減するだけでなく、装置自体を小型化することが可能である。
【0089】
この際、エンコーダ100等によれば、軸を挟んで対向した領域から電気角で0°又は180°位相が異なる受光信号が得られるように、固定スリットS1が設定され、かつ、両領域から得られた2の受光信号を位相差が180°であれば減算し0°であれば加算する。従って、このエンコーダ100等によれば、上記偏心誤差低減効果が減少することを防止することが可能である。なお、このことについて言えば、本実施形態ではトラックT1が4分割される場合について説明したが、このトラックT1の分割数は特に限定されるものではない。しかし、分割数が4の倍数の場合に、回転軸AXを挟んで対向した領域から、A相信号又はB相信号を生成することが可能であり、より大きな偏心誤差低減効果を発揮することが可能である。また、分割数が大きいほど、更に大きな偏心誤差低減効果を発揮可能である。
【0090】
更に、エンコーダ100等によれば、各領域XA〜XDを伝搬する光のクロストークを防止する遮光部SPを有することにより、A相信号用の受光信号とB相信号用の受光信号とを同一導光部120中を伝搬させることにより生じるノイズを低減することが可能である。従って、エンコーダ100等は、更に精度の高い位置検出が可能である。更に、エンコーダ100によれば、この遮光部SPを有効に活用し、アブソ用導光部129を兼用させることで、アブソ用の光源及びそれに伴う光路を省略することが可能である。
【0091】
<2.変形例等>
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明はこれらの実施形態の例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正を行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更後や修正後の技術も、当然に本発明の技術的範囲に属するものである。
【0092】
例えば、上記実施形態では、マスク130に設定される領域数(上記実施形態では4)と同数のアブソ用導光部129を設ける場合を一例として説明したが、アブソ用導光部129の数をこれに限定するものではない。例えば、図13及び図14に示すように、4つの領域XA〜XDの境界に対応した4箇所に加え、各領域XA〜XDの中心部に1つずつ、計8のアブソ用導光部129を設けてもよい。図13は、本変形例に係るエンコーダ100′の一部構成を斜め上方より見た図であり、図14は、本変形例に係る導光部120′を上方から見た図である。
【0093】
この場合、特に図示はしないが、アブソ用回転スリットS3のアブソリュートパターンは、ディスク140の1回転内で、8つのアブソ用導光部129の照射面1294のいずれかと回転軸AX方向で一致する組み合わせが、同一にならないように設定される。本変形例によれば、上記実施形態よりもアブソ用導光部129の数を増やせるので、アブソ信号に基づいて特定される絶対位置の精度を高めることができる。
【0094】
また例えば、上記実施形態では、相隣接する領域XA〜XDから得られる受光信号同士の位相が90°異なるように、相隣接する固定スリットS1A〜S1X間に、電気角で90°のスリット間隔φA〜φDを設けた。しかし、このスリット間隔φA〜φDは、この例に限定されるものではなく、受光信号に電気角で0°より大きく180°より小さい分解能以上の位相差が生じるような間隔であればよい。
【0095】
また、上記実施形態では、反射部V1,V2がディスク140の裏面に突出した部位として設けられる場合について説明した。しかしながら、この反射部V1,V2は、回転スリットS2を透過した往路光を、その往路と同一又は平行な光路で反射可能な構成であれば様々な構成が考えられる。つまり、例えば反射部V1、V2は、回転スリットS2自体又は回転スリットS2の下方に配置されたV字状の溝として形成されてもよい。この場合、導光部142は必ずしも必要ではない。また、往路光と復路光を同一光路で伝搬させる場合、回転スリットS2自体を反射スリットとして構成することも可能である。例えば、平板状の低反射部材の上に高反射コートを部分的に、141のスリット開口部のみ、配置することで142が不要な構造とすることが可能である。
【0096】
また、上記実施形態では、導光部120として複数の反射面等を有する導光部材として説明した。しかしながら、この導光部120は、例えば、全周に光を照射可能な光ファイバや光ファイバの束などで構成することも可能である。
【0097】
更に、上記実施形態では、最終的にアブソリュート形のエンコーダを構成するために、アブソ信号をえる構成も備える例について説明した。しかし、このアブソ信号用の構成は、上記実施形態以外にも、光学式・磁気式・レゾルバ式・機械式問わず様々な構成を使用することが可能である。更にいえば、インクリメンタル形のエンコーダを構成する場合、アブソ信号用の構成は不要で、アブソ用素子配置とアブソ用スリット配置をU,V,W相等の配置とすることで対応可能であることは言うまでもない。
【0098】
また、上記実施形態では、固定トラックT1を複数の領域XA〜XDに分割することで、1つの回転トラックT2より位相の異なる受光信号を得るようにしたが、必ずしも固定トラックを複数の領域に分割しなくともよい。例えば、位相の異なる複数の受光信号を得るために、位相が異なる回転トラックをディスク140の径方向に多重に並べた構成とし、導光部120でそれら複数の回転トラックにそれぞれ光を導く構成としてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、マスク130をディスク140の上方(軸方向一方側の一例)に設けた場合を説明したが、反対にマスク130をディスク140の下方(軸方向他方側の一例)に設けた構成としてもよい。この場合、ディスク140をマスク141のみで構成し、反射部V1と反射部V2を有する導光部142をマスク130のディスク140と反対側に設ける構成とすればよい。
【符号の説明】
【0100】
1 モータシステム
10 モータ
20 制御部
100 エンコーダ
110 基板
111 発光部(光源の一例)
112,112A,112B,112C,112D 受光部
113,113A,113B,113C,113D アブソ検出部
114 信号処理部
1141 A相信号生成部
1142 B相信号生成部
1143 アブソ信号生成部
1144 位置データ生成部
120 導光部
121 入光部
122 発散集光部
122A 発散面
122B 集光面
123 インクレ用第1導光部(第1導光部の一例)
124 方向変換面(第1導光部の一例)
125 インクレ用第2導光部(第1導光部の一例)
126 照射入光面(略リング状の面、第1導光部の一例)
127,127A,127B,127C,127D 出光部
128 鍔部
129 アブソ用導光部(第2導光部の一例)
CO コーティング
SP 遮光部
SP1 第1遮光部
SP2 第2遮光部
SP3 第3遮光部
130 マスク
131 開口部
T1 固定トラック
S1 固定スリット
140 ディスク
141 マスク
142 導光部
T2 回転トラック(第1の回転トラックの一例)
T3 回転トラック(第2の回転トラックの一例)
S2,S3 回転スリット
S31,S32,S33,S34,S35,S36,S37 アブソ用回転スリット
V1,V2 反射部
200 モータ部
201 回転シャフト
202 シャフト端部
203 開口部
AX 回転軸
XA,XB,XC,XD 領域
φA,φB,φC,φD スリット間隔
p ピッチ
x 位置
100′ エンコーダ
120′ 導光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸上に位置する光源が一面側に配置された基板と、
前記基板の他面側において前記回転軸周りに回転可能に配置され、前記回転軸を中心とし複数の回転スリットを有する少なくとも2以上の回転トラックを有するディスクと、
前記光源から照射された光を、前記ディスクの外周方向のほぼ全域に向けて放射状に導き、前記2以上の回転トラックに導く導光部と、
を有し、
前記導光部は、
第1の前記回転トラックに直接的又は間接的に対向する略リング状の面を有し、該面から前記第1の回転トラックに向けて出射するために前記光を放射状に導く第1導光部と、
少なくとも2以上配置され、前記放射状に導いた光の一部を前記第1の回転トラック以外の少なくとも1以上の第2の前記回転トラックに導く第2導光部と、を有する、光全周エンコーダ。
【請求項2】
前記ディスクの軸方向一方側又は他方側において固定され、前記第1の回転トラックの前記回転スリットに対応した複数の固定スリットを有する固定トラックを更に有し、
前記固定トラックは、周方向で2以上の領域に分割され、
前記第1導光部は、少なくとも前記2以上の領域の境界に対応した位置に光を遮蔽する複数の遮光部を有し、
前記第2導光部は、前記遮光部より前記ディスク側に突出して設けられ、前記放射状に導かれ前記遮光部に進入した光を前記第2の回転トラックに導く、請求項1に記載の光全周エンコーダ。
【請求項3】
前記第1導光部は、前記複数の固定スリット及び前記複数の回転スリットに作用された光を集光しつつ前記回転軸近傍に向けて導き、
前記回転軸近傍に配置され、前記第1導光部により導かれた光を、前記2以上の領域毎にそれぞれ受光する2以上の受光部を更に有し、
前記固定トラックにおける、一の前記領域内の複数の固定スリットと、該一の領域に隣接する他の前記領域内の複数の固定スリットとは、前記受光部による受光信号間に回転方向が判別可能な位相差が生じるように形成される、請求項2に記載の光全周エンコーダ。
【請求項4】
前記固定トラックは、4の整数倍の個数の前記領域に分割される、請求項3に記載の光全周エンコーダ。
【請求項5】
前記固定トラックが有する2以上の領域は、前記回転軸周りに前記領域の数の回転対称に設定され、
前記回転軸周りに点対称の関係となる2の前記領域毎の前記複数の回転スリット又は固定スリットは、2の前記受光部による受光信号間に電気角で0°又は180°の位相差が生じるように形成される、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光全周エンコーダ。
【請求項6】
前記点対称の関係となる2の領域から得られた2の受光信号同士を加算又は減算した結果に基づいて、回転体の回転方向を含む位置データを生成する位置データ生成部を更に有する、請求項5に記載の光全周エンコーダ。
【請求項7】
回転シャフトを回転させるモータ部と、
前記回転シャフトに連結されて前記回転シャフトの位置を測定する光全周エンコーダと、
前記光全周エンコーダが検出した位置に基づいて、前記モータ部の回転を制御する制御部と、
を備え、
前記光全周エンコーダは、
前記回転シャフトの回転軸上に位置する光源が一面側に配置された基板と、
前記基板の他面側において前記回転軸周りに回転可能に配置され、前記回転軸を中心とし複数の回転スリットを有する少なくとも2以上の回転トラックを有するディスクと、
前記光源から照射された光を、前記ディスクの外周方向のほぼ全域に向けて放射状に導き、前記2以上の回転トラックに導く導光部と、
を有し、
前記導光部は、
第1の前記回転トラックに直接的又は間接的に対向する略リング状の面を有し、該面から前記第1の回転トラックに向けて出射するために前記光を放射状に導く第1導光部と、
少なくとも2以上配置され、前記放射状に導いた光の一部を前記第1の回転トラック以外の少なくとも1以上の第2の前記回転トラックに導く第2導光部と、を有する、モータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−83446(P2013−83446A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221409(P2011−221409)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】