説明

光共振器

【課題】本発明の実施形態は、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる光共振器を提供する。
【解決手段】実施形態に係る光共振器は、第1の反射面を有する第1の反射部と、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2の反射部と、前記第1の反射部の前記第1の反射面とは反対側の面に入射させる光を複数の波長成分に分散させる分散部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、光共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
相対して配設された一対の反射部(例えば、反射鏡など)を有する光共振器が知られている。このような光共振器においては、光共振器の内部に入射した光を一対の反射部の間を往復させることで干渉させ、干渉による増幅を行うようにしている。
ここで、広いスペクトル幅と高い増幅率(エンハンス率)とを有する光共振器とすることが望ましいが、一般的には、広いスペクトル幅と高い増幅率とを同時に達成することは二律背反の関係にある。
そのため、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる光共振器の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−186978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる光共振器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る光共振器は、第1の反射面を有する第1の反射部と、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2の反射部と、前記第1の反射部の前記第1の反射面とは反対側の面に入射させる光を複数の波長成分に分散させる分散部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の比較例に係る光共振器について例示するための模式図である。(a)は光共振器の構成を例示するための模式図、(b)はギャップ距離とスペクトル幅と増幅率との関係を例示する模式グラフ図である。
【図2】第2の比較例に係る光共振器について例示するための模式図である。(a)は入射させる光A1のビーム径が小さい場合、(c)は入射させる光A2のビーム径が大きい場合である。(b)は(a)の場合におけるスペクトル幅Δνと増幅率Eとを表し、(d)は(c)の場合におけるスペクトル幅Δνと増幅率Eとを表している。
【図3】第1の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
【図4】分散部の作用を例示するための模式図である。
【図5】第2の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
【図6】第3の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
【図7】第4の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
【図8】第5の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。(a)は分散部としてプリズムを用いた場合、(b)は分散部として回折格子を用いた場合である。
【図9】第6の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
まず、本発明者が発明をした過程において検討を加えた比較例に関して例示をする。
図1は、第1の比較例に係る光共振器について例示するための模式図である。また、図1(a)は光共振器の構成を例示するための模式図、図1(b)はギャップ距離とスペクトル幅と増幅率との関係を例示する模式グラフ図である。なお、図1(b)中のν1、ν2、ν3のスペクトル幅は異なるものとされており、ν1は0.004cm−1、ν2は0.04cm−1、ν3は0.4cm−1の場合である。
【0008】
図1(a)に示すように、光共振器100には、相対して配設された一対の反射部101、102が設けられている。
反射部101、102の反射面101a、102aは平面となっている。光Aは光共振器100に入射させる光、光Bは干渉により増幅された光である。lはギャップ距離(反射部101と反射部102との間の距離;共振器長)である。
【0009】
反射部101の反射面101aとは反対側の面に入射した光Aの一部は光共振器100の内部に導入される。光共振器100の内部に導入された光Aは、反射部101と反射部102との間を往復することで干渉し、干渉により増幅される。すなわち、反射部101、102によって光共振器100の内部に閉じ込められた光Bは、光共振器100の内部において増幅される。
【0010】
この場合、増幅率Eは以下の(1)式で表すことができる。
【数1】


ここで、Eは光Bの光強度が光Aの光強度に比べて何倍に増幅されたかを表す増幅率、cは光速、lはギャップ距離、Δνはスペクトル幅である。
【0011】
図1(b)、(1)式から分かるように、増幅率Eはギャップ距離lとスペクトル幅Δνに反比例する。
すなわち、広いスペクトル幅Δνと高い増幅率Eとを同時に達成することは二律背反の関係にあることが分かる。
【0012】
図2は、第2の比較例に係る光共振器について例示するための模式図である。また、図2(a)と図2(c)に示す光共振器の構成自体は同じものとされており、図2(a)は入射させる光A1のビーム径が小さい場合、図2(c)は入射させる光A2のビーム径が大きい場合である。図2(a)中のB1は光共振器110の内部における光路を表し、図2(c)中のB1、B2は光共振器110の内部における光路を表している。図2(b)は図2(a)の場合におけるスペクトル幅Δνと増幅率Eとを表し、図2(d)は図2(c)の場合におけるスペクトル幅Δνと増幅率Eとを表している。
【0013】
図2(a)と図2(c)に示す光共振器110は、共焦点共振器である。
図2(a)と図2(c)に示すように、光共振器110には、相対して配設された一対の反射部111、112が設けられている。反射部111は反射面111aを有し、反射面111aは曲面となっている。反射部112は反射面112aを有し、反射面112aは曲面となっている。反射面111a、112aの曲率半径rはギャップ距離laと同じ値とされている。
【0014】
図2(a)に示すように、反射部111、112の中心軸113(反射面111aの中心と反射面112aの中心とを結ぶ軸)から寸法H1だけ離れた位置において中心軸113と平行に入射した光A1は反射面111aと反射面112aとの間を4回反射して反射面111aにおける入射位置へ戻る。すなわち、中心軸113と平行に入射した光A1は光路B1をb1、b2、b3、b4の順に辿り反射面111aにおける入射位置へ戻る。
【0015】
この場合の光路長Lは以下の(2)式で表すことができる。
【数2】


(2)式から分かるように、寸法H1が大きくなると、すなわち、中心軸113から離れた位置に入射した光ほど光路長Lは短くなる。このように入射位置を変化させれば、光路長Lを変化させることができる。そして、光路長Lが入射した光の波長の整数倍となるような寸法H1とすれば、入射した光を干渉させることができるので増幅させることができる。
【0016】
図2(a)に示すように、入射させる光A1のビーム径が小さい場合、光A1の入射位置のばらつきは小さくなる。すなわち、寸法H1のばらつきが小さくなるため光路長Lをほぼ所定のものとすることができる。そのため、増幅率Eを向上させることができる。しかしながら、光路長Lの長さがほぼ所定のものとなるので、干渉により増幅させることができる波長の範囲が限られたものとなる。
その結果、図2(b)に示すように、特定の波長の近傍において高い増幅率Eを得ることができるが、スペクトル幅Δν1は狭くなる。なお、この様な特性は図1において例示をした光共振器100の場合も同様である。
【0017】
一方、図2(c)に示すように、入射させる光A2のビーム径が大きい場合、光A2の入射位置のばらつきは大きくなる。この場合、例えば、図2(c)に示すように、寸法H1の位置に入射した光A2は光路B1を辿り反射面111aにおける入射位置へ戻り、寸法H2の位置に入射した光A2は光路B2を辿り反射面111aにおける入射位置へ戻ることになる。このように、光路長Lの長さにばらつきを持たせることができるので、干渉により増幅させることができる波長の範囲を拡げることができる。そのため、光A2に含まれる各波長成分の光に対応させやすくなる。
【0018】
しかしながら、入射した光を増幅させる場合、光A2に含まれる各波長成分の光に対応して適切な光路長Lがそれぞれ決まるので、総合的に増幅率Eが低下することになる。例えば、光路B1の光路長が所定の波長成分の光の波長の整数倍であり、光路B2の光路長が所定の波長成分の光の波長の整数倍ではない場合、寸法H1の位置に入射した所定の波長成分の光を増幅することができても、寸法H2の位置に入射した所定の波長成分の光を増幅することができない。
その結果、図2(d)に示すように、スペクトル幅Δν2を拡張することができるが、増幅率Eが低下してしまうことになる。
【0019】
[第1の実施形態]
次に、第1の実施形態に係る光共振器について例示する。
図3は、第1の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
図3に示すように、光共振器1には、相対して配設された一対の反射部11(第1の反射部の一例に相当する)、反射部12(第2の反射部の一例に相当する)と、分散部14が設けられている。
【0020】
反射部11は反射面11a(第1の反射面の一例に相当する)を有し、反射面11aは曲面となっている。反射部12は反射面11aに対向する反射面12a(第2の反射面の一例に相当する)を有し、反射面12aは曲面となっている。反射面11a、12aの曲率半径rはギャップ距離laと同じ値とされている。曲率半径rとギャップ距離laとを同じ値とすることで、共焦点共振器を形成させることができる。また、反射部11、12は、反射面11aと反射面12aとを対向させるようにして設けられている。この場合、反射面11aに入射する位置、すなわち、反射面11aとは反対側の面11bに光が入射する位置により、反射面11aと反射面12aとの間を光が往復することで形成された光路の光路長が変化する。
【0021】
また、反射部11、12の形状は、メニスカス(三日月)形状とすることができる。反射部11、12の形状をメニスカス形状とすれば、反射部11、12の中心軸13(反射面11aの中心と反射面12aの中心とを結ぶ軸)と平行に面11bに入射した光を、中心軸13と平行に反射面11aから出射させることができる。
また、反射部11、12の厚み寸法(中心軸13方向の寸法)は色分散が無視できる程度に薄くすることが好ましい。
【0022】
反射部11、12は、例えば、CaF(フッ化カルシウム)、LiF(弗化リチウム)、MgF(弗化マグネシウム)、BaF(弗化バリウム)、KRS−5(臭沃化タリウム)、KRS−6(臭塩化タリウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、KBr(臭化カリウム)、KCl(塩化カリウム)、SiO(光学ガラス)、Csl(ヨウ化セシウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)などから形成され、反射面11a、12aには光を反射させる反射コーティングが施されている。また、反射面11a、12aの反対側の面11b、12bには反射を抑制するためのコーティングが施されている。
反射面12aの反射コーティングとしては、例えば、金、アルミニウムなどの金属コーティング、または誘電体コーティングなどを例示することができる。反射面11aの反射コーティングとしては、例えば、誘電体コーティングなどを例示することができる。
反射を抑制するためのコーティングとしては、例えば、誘電体コーティングなどを例示することができる。
この場合、誘電体コーティングは、膜圧を制御することにより、反射コーティングにも反射を抑制するためのコーティングにも使用することができる。
【0023】
分散部14は、反射部11の反射面11aとは反対側の面11bに入射させる光を複数の波長成分に分散させる。また、分散部14は、出射する光の光軸が中心軸13と平行となるように光を出射する。そして、分散部14は、任意の波長成分の光の波長の整数倍の光路長となる位置にその波長成分の光を入射させる。
【0024】
分散部14は、透光性材料から形成されている。
分散部14は、例えば、CaF(フッ化カルシウム)、LiF(弗化リチウム)、MgF(弗化マグネシウム)、BaF(弗化バリウム)、KRS−5(臭沃化タリウム)、KRS−6(臭塩化タリウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、KBr(臭化カリウム)、KCl(塩化カリウム)、SiO(光学ガラス)、Csl(ヨウ化セシウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)などから形成され、入射した光を分散させる。
分散部14は面14aと面14bとを有し、面14aと面14bとが平行となっている。すなわち、分散部14は互いに平行な主面(面14a、14b)を有する板状体とすることができる。
また、分散部14の少なくとも面14aと面14bには反射を抑制するためのコーティングが施されている。また、反射を抑制するためにブリュースタ角で光を入射させるようにすることもできる。
反射を抑制するためのコーティングとしては、例えば、誘電体コーティングなどを例示することができる。
【0025】
ここで、分散部14に入射させる光A3に含まれている長波長成分の光をA3a、短波長成分の光をA3bとする。また、光A3の光軸と中心軸13とが同軸となるようにしている。その様にすれば、反射部11、12、分散部14の位置合わせの容易化を図ることができる。例えば、反射部11、12の中心軸13と光A3の光軸との位置合わせを行い、その後、分散部14を配設するようにすれば、反射部11、12、分散部14の位置合わせを容易に行うことができる。
【0026】
図3に例示をしたように、長波長成分の光A3aの屈折角は小さくなり短波長成分の光A3bの屈折角は大きくなるので、分散部14に入射した光A3は分散部14の内部において分散されることになる。そのため、波長に応じて面14bからの出射位置を異なるものとすることができる。そして、面14aと面14bとが平行となっているので、光A3の光軸、長波長成分の光A3aの光軸、短波長成分の光A3bの光軸が相互に平行となるようにすることができる。
すなわち、分散部14は、入射した光A3の各波長成分の光の波長に応じて出射位置を変化させるとともに、入射した光A3に平行な各波長成分の光が出射されるようにすることができる。
そのため、各波長成分の光を反射部11の適切な位置に入射させることができるようになる。
【0027】
図4は、分散部14の作用をさらに例示するための模式図である。
ここで、分散部14の厚み寸法をd、屈折率をn、入射角をθ、屈折角をΦ、出射位置である中心軸13からの寸法をHとする。
この場合、屈折率nと波長λとの間には以下の(3)式に表す関係がある。
【数3】


ここで、α、βは分散部14の材料により規定される係数、λoは吸収端波長である。 そのため、(3)式から分かるように、各波長成分の光の波長に基づいて屈折率nを変化させることができる。
【0028】
また、屈折角Φは以下の(4)式で表すことができる。
【数4】


そのため、(3)式、(4)式から分かるように、各波長成分の光の波長に基づいて屈折角Φを変化させることができる。
【0029】
そして、寸法Hは以下の(5)式で表すことができる。
【数5】

(3)式、(4)式、(5)式から分かるように、各波長成分の光の波長に基づいて寸法Hを変化させることができる。すなわち、分散部14は各波長成分の光の波長に応じて出射位置を異なるものとすることができる。
なお、厚み寸法d、分散部14の材料により規定される係数α、β、入射角θなどの少なくともいずれかを変化させることで寸法Hを変化させることもできる。
この場合、入射角θはブリュースタ角とすることが好ましい。
【0030】
このように、分散部14を設けるようにすれば、各波長成分の光を反射部11の適切な位置に入射させることができるようになる。この場合、(2)式に例示をしたように、光路長Lは寸法Hにより規定することができる。そのため、入射させる波長成分の光の波長の整数倍の光路長Lとなる寸法Hの位置にその波長成分の光を入射させることができるようになる。その結果、各波長成分の光において干渉による増幅を行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる。
【0031】
次に、光共振器1の作用について例示をする。
【0032】
図3に示すように、分散部14の面14aに入射した光A3は分散部14の内部において分散される。この際、長波長成分の光A3aの屈折角は小さくなり短波長成分の光A3bの屈折角は大きくなるので、波長に応じて面14bからの出射位置が異なるものとなる。また、面14aと面14bとが平行となっているので、光A3の光軸、長波長成分の光A3aの光軸、短波長成分の光A3bの光軸が相互に平行となる。
【0033】
分散部14から出射した光A3aは寸法H1の位置において反射部11の面11bに入射する。この場合、光A3aの波長の整数倍の光路長を有する光路B1が形成される寸法H1の位置に光A3aが入射するようにする。面11bに入射した光A3aは中心軸13と平行に反射面11aから出射され、光路B1を辿るようにして反射面11aにおける入射位置に戻る。そのため、光A3aが干渉により増幅される。
【0034】
分散部14から出射した光A3bは寸法H2の位置において反射部11の面11bに入射する。この場合、光A3bの波長の整数倍の光路長を有する光路B2が形成される寸法H2の位置に光A3bが入射するようにする。面11bに入射した光A3bは中心軸13と平行に反射面11aから出射され、光路B2を辿るようにして反射面11aにおける入射位置に戻る。そのため、光A3bが干渉により増幅される。
【0035】
なお、一例として、光A3a、光A3bの場合を例示したが光A3に含まれる他の波長成分の光の場合も同様とすることができる。
そのため、各波長成分の光において干渉による増幅を行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる。
【0036】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る光共振器について例示する。
図5は、第2の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
図5に示すように、光共振器21には、相対して配設された一対の反射部11、反射部12と、分散部14、制御部22が設けられている。
制御部22には、駆動部22a、連結部22b、回転部22cが設けられている。
駆動部22aは、例えば、パルスモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。連結部22bの一端は分散部14に接続され、他端は駆動部22aに接続されている。回転部22cは分散部14に設けられ、回転部22cを中心に分散部14が回転移動できるようになっている。そして、駆動部22aにより連結部22bの位置を変化させることで、回転部22cを中心に分散部14の位置が回転方向に変化するようになっている。なお、連結部22bや回転部22cは必ずしも必要ではなく、駆動部22aにより分散部14の位置を直接的に変化させるようにすることもできる。
【0037】
次に、制御部22の作用についてさらに例示する。
前述した(5)式に示すように、入射角θを変化させることができれば寸法Hを制御することができる。
そのため、制御部22は、分散部14の位置、または角度を変化させることで入射角θ、ひいては寸法Hを制御する。
駆動部22aにより連結部22bの位置を変化させることで、回転部22cを中心に分散部14の位置、または角度を回転方向に変化させる。分散部14の位置、または角度を回転方向に変化させれば、入射角θを変化させることができるので、前述した(5)式に示すように寸法Hを制御することができる。
【0038】
この場合、光A3に含まれている波長成分の光の波長に基づいて寸法Hを制御することができる。すなわち、各波長成分の光が反射部11の適切な位置に入射するように制御するようにすることができる。
なお、反射部11、反射部12、分散部14の作用に関しては前述した光共振器1の場合と同様とすることができる。
そのため、光共振器21の作用に関する詳細は省略する。
また、一例として、制御モータを用いて分散部14の位置、または角度を変化させる場合を例示したがこれに限定されるわけではない。分散部14の位置、または角度を変化させることができる機構を適宜選択することができる。
【0039】
本実施の形態によれば、各波長成分の光において干渉による増幅をさらに効果的に行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とをさらに図ることができる。
【0040】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る光共振器について例示する。
図6は、第3の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
図6に示すように、光共振器31には、相対して配設された一対の反射部11、反射部12と、分散部14、制御部32が設けられている。
制御部32には、熱源32a、伝熱部32bが設けられている。
熱源32aは、発熱および吸熱の少なくともいずれかを行うものとすることができる。熱源32aとしては、例えば、ジュール熱を発生させる発熱体やペルチェ素子などを例示することができる。伝熱部32bの一端は分散部14に接続され、他端は熱源32aに接続されている。伝熱部32bは、金属などの熱伝達率の高い材料から形成されるようにすることができる。そして、熱源32aにより伝熱部32bを介して分散部14の温度を変化させることができるようになっている。なお、伝熱部32bは必ずしも必要ではなく、熱源32aにより分散部14の温度を直接的に変化させるようにすることもできる。
【0041】
次に、制御部32の作用についてさらに例示する。
前述した(5)式に示すように、分散部14の厚み寸法dを変化させることができれば寸法Hを制御することができる。
そのため、制御部32は、分散部14の温度を変化させて熱膨張により厚み寸法d、ひいては寸法Hを制御する。
熱源32aにより伝熱部32bを介して分散部14の温度を変化させる。すなわち、熱源32aにより伝熱部32bを介して分散部14の温度を上昇または下降させる。分散部14の温度が変化すれば、熱膨張により厚み寸法dを変化させることができるので、前述した(5)式に示すように寸法Hを制御することができる。
【0042】
この場合、光A3に含まれている波長成分の光の波長に基づいて寸法Hを制御することができる。すなわち、各波長成分の光が反射部11の適切な位置に入射するように制御するようにすることができる。
なお、反射部11、反射部12、分散部14の作用に関しては前述した光共振器1の場合と同様とすることができる。
そのため、光共振器31の作用に関する詳細は省略する。
本実施の形態によれば、各波長成分の光において干渉による増幅をさらに効果的に行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とをさらに図ることができる。
【0043】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る光共振器について例示する。
図7は、第4の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
図7に示すように、光共振器41には、相対して配設された一対の反射部11、反射部12と、分散部14、制御部32、検出部42が設けられている。
検出部42は、分散部14に光A3を入射させる際の反射光A3cのスペクトルを検出し、検出されたスペクトルを有する光に対する増幅率が増大するように制御部32における制御条件を求める。
【0044】
検出部42には、相対して配設された一対の反射部43、反射部44と、演算部45が設けられている。
反射部43は反射部11と同様とすることができ、反射部44は反射部12と同様とすることができる。また、反射部43、反射部44の配置は、反射部11、反射部12の配置と同様とすることができる。この場合、反射部43、反射部44の寸法関係が反射部11、反射部12の寸法関係と相似となるようにすることができる。
【0045】
また、光A3が分散部14に入射する際に反射された光A3cを入射させることができる位置に反射部43、反射部44が配設されている。そして、反射部43、44の中心軸46(反射面43aの中心と反射面44aの中心とを結ぶ軸)と、光A3cの光軸とが平行となるようになっている。
演算部45は、反射部44から漏れ出た光A3dを検出し、制御部32における制御条件を演算する。
熱源32aは、演算部45により演算された制御条件に基づいて、前述した分散部14の厚み寸法d、ひいては寸法Hを制御する。
【0046】
次に、検出部42の作用についてさらに例示する。
光A3が分散部14に入射する際に反射した光A3cは反射部43に入射する。反射部43に入射した光A3cは、反射面43aと反射面44aとの間を4回反射して反射面43aにおける入射位置へ戻る。この際、寸法H3により規定された光路長に適合する波長成分の光が増幅される。このように、反射部43、反射部44はスペクトルを検出するスペクトルアナライザとしての機能を有する。
【0047】
そして、演算部45により反射部44から漏れ出た光A3dを検出する。この場合、反射部43、反射部44の寸法関係が反射部11、反射部12の寸法関係と相似となっているので、光A3dを検出することで反射部11、反射部12における増幅の状態を知ることができる。すなわち、反射部11、反射部12における増幅率が高くなるほど光A3dの強度が高くなる。
【0048】
そのため、光A3dの強度に基づいて制御部32における制御条件を演算することができる。この場合、光A3dの強度と制御部32における制御条件との相関関係を予め実験やシミュレーションなどにより求めておくようにすることができる。また、寸法H3を変化させて異なる波長成分の光に関する増幅率をも考慮して制御部32における制御条件を演算するようにすることもできる。
なお、一例として、図6に示した光共振器31に検出部42を追加した場合を例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、図5に示した光共振器21に検出部42を追加することもできる。
【0049】
なお、反射部11、反射部12、分散部14、制御部32の作用に関しては前述した光共振器1、光共振器31の場合と同様とすることができる。
そのため、光共振器41の作用に関する詳細は省略する。
本実施の形態によれば、各波長成分の光において干渉による増幅をさらに効果的に行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とをさらに図ることができる。
【0050】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態に係る光共振器について例示する。
図8は、第5の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。なお、図8(a)は分散部54としてプリズムを用いた場合、図8(b)は分散部64として回折格子を用いた場合である。
図8(a)に示すように、光共振器51には、相対して配設された一対の反射部11、反射部12と、分散部54が設けられている。また、分散部54は、プリズム54a、54bを備えている。このように、分散部54としてプリズムを用いるようにすることができる。この場合、分散部54に入射させる光A3の光軸と中心軸13とが平行となるようにすることができる。また、分散部54により分散されて出射する長波長成分の光A3aの光軸と、短波長成分の光A3bの光軸とが中心軸13と平行となるように、プリズム54a、54bを組み合わせるようにすることができる。
【0051】
なお、プリズム54a、54bを備える場合を例示したがプリズムの数は適宜変更することができる。例えば、1つのプリズムを設けるようにすることもできるし、3つ以上のプリズムを設けるようにすることもできる。
【0052】
図8(b)に示すように、光共振器61には、相対して配設された一対の反射部11、反射部12と、分散部64が設けられている。また、分散部64は回折格子64a、64bを備えている。このように、分散部64として回折格子を用いるようにすることができる。この場合、分散部64に入射させる光A3の光軸と中心軸13とが平行となるようにすることができる。また、分散部64により分散されて出射する長波長成分の光A3aの光軸と、短波長成分の光A3bの光軸とが中心軸13と平行となるように、回折格子64a、64bを組み合わせるようにすることができる。
【0053】
なお、回折格子64a、64bを備える場合を例示したが回折格子の数は適宜変更することができる。例えば、1つの回折格子を設けるようにすることもできるし、3つ以上の回折格子を設けるようにすることもできる。
【0054】
図3、図8(a)に例示をしたものは分散部を透過させることで入射光を分散させる場合であるが、図8(b)に例示をしたものは分散部により入射光を反射させることで入射光を分散させる場合である。
また、前述した制御部22、制御部32、検出部42などを適宜設けるようにすることもできる。
なお、反射部11、反射部12の作用に関しては前述した光共振器1の場合と同様とすることができる。
そのため、光共振器51、光共振器61の作用に関する詳細は省略する。
【0055】
本実施の形態に係る光共振器51、光共振器61の場合にも各波長成分の光において干渉による増幅を行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる。
【0056】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る光共振器について例示する。
図9は、第6の実施形態に係る光共振器について例示するための模式図である。
図9に示すように、光共振器1aには、相対して配設された一対の反射部11、反射部12と、分散部14が設けられている。すなわち、光共振器1aの構成は図3において例示をした光共振器1の構成と同様とすることができる。
ここで、光共振器1aの場合には、分散部14に入射させる光A3の光軸の位置が光共振器1とは異なる。
すなわち、光共振器1の場合には光A3の光軸と中心軸13とを同軸としているが、光共振器1aの場合には光A3の光軸と中心軸13とが離隔されるとともに光A3の光軸と中心軸13とが平行となっている。
【0057】
このようにしても、分散部14に入射した光A3を分散部14の内部において分散させることができる。また、分散部14から出射した長波長成分の光A3aの光軸、短波長成分の光A3bの光軸とが中心軸13と平行となるようにすることができる。
本実施の形態に係る光共振器1aの場合にも各波長成分の光において干渉による増幅を行わせることができるので、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる。 なお、図5〜図7に例示をした光共振器の場合にも光A3の光軸と中心軸13とが離隔されるとともに光A3の光軸と中心軸13とが平行となるようにすることができる。
【0058】
以上に例示をした実施形態によれば、スペクトル幅の拡張と増幅率の向上とを図ることができる光共振器を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びそれと等価とみなされるものの範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
例えば、光共振器1、光共振器1a、光共振器21、光共振器31、光共振器41、光共振器51、光共振器61などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 光共振器、1a 光共振器、11 反射部、11a 反射面、12 反射部、12a 反射面、14 分散部、21 光共振器、22 制御部、31 光共振器、32 制御部、41 光共振器、42 検出部、43 反射部、44 反射部、45 演算部、51 光共振器、54 分散部、54a プリズム、54b プリズム、61 光共振器、64 分散部、64a 回折格子、64b 回折格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反射面を有する第1の反射部と、
前記第1の反射面に対向する第2の反射面を有する第2の反射部と、
前記第1の反射部の前記第1の反射面とは反対側の面に入射させる光を複数の波長成分に分散させる分散部と、
を備えたことを特徴とする光共振器。
【請求項2】
前記第1の反射面と、前記第2の反射面と、は、曲面を有し、
前記第1の反射面とは反対側の面に光が入射する位置により、前記第1の反射面と前記第2の反射面との間を光が往復することで形成される光路の光路長が変化すること、を特徴とする請求項1記載の光共振器。
【請求項3】
前記分散部は、前記波長成分の光の波長の整数倍の光路長となる前記位置に前記波長成分の光を入射させること、を特徴とする請求項2記載の光共振器。
【請求項4】
前記分散部は、出射する光の光軸が前記第1の反射面の中心と前記第2の反射面の中心とを結ぶ軸と平行となるように前記光を出射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光共振器。
【請求項5】
前記分散部は、透光性材料から形成された互いに平行な主面を有する板状体、プリズム、回折格子からなる群より選ばれた1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光共振器。
【請求項6】
前記分散部は、複数のプリズムを有することを特徴とする請求項5記載の光共振器。
【請求項7】
前記分散部は、複数の回折格子を有することを特徴とする請求項5記載の光共振器。
【請求項8】
前記分散部の位置、前記分散部の角度、前記分散部の厚み寸法からなる群より選ばれた少なくとも1つを変化させる制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光共振器。
【請求項9】
前記分散部に光を入射させる際の反射光のスペクトルを検出し、前記検出されたスペクトルを有する光に対する増幅率が増大するように前記制御部における制御条件を求める検出部をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の光共振器。
【請求項10】
前記第1の反射部と前記第2の反射部は、それぞれメニスカス形状を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の光共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−128216(P2012−128216A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280096(P2010−280096)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】