説明

光制御型フェーズドアレイアンテナ

アンテナ放射ビームの走査角の分解能が高く、かつ光学系が短い光制御型フェーズドアレイアンテナを得るもので、マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光のビームを空間に出射し、空間光変調器で変調されフーリエ変換レンズを介した信号光ビームとローカル光ビームとを空間的に重ね合わせた合成ビーム光を空間的にサンプリングしヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器とを備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、前記フーリエ変換レンズの焦点距離を短く制御すべく、合成ビーム光のビームを拡大するビーム拡大光学系を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、アレイアンテナから放射するマイクロ波ビームを、光波により制御する光制御型フェーズドアレイアンテナに関するものである。
【背景技術】
従来、この種の光制御型フェーズドアレイアンテナとして、マイクロ波信号の周波数だけ周波数が異なる第1と第2のビーム光を空間に放射し、第1のビーム光を、信号光として、空間光変調器によりアレイアンテナからの放射ビームのパターンに対応した分布の信号光ビームに変換し、フーリエ変換レンズにより空間的にフーリエ変換すると共に、第2のビーム光を、ローカル光ビームとし、前記の信号光ビームと空間的に重ね合わせ、重ね合わされた合成ビーム光を光ファイバアレイにより空間的にサンプリングし、そのサンプリング光を複数の光電変換器によるヘテロダイン検波により、複数のマイクロ波信号に変換した後、アレイアンテナを用いて空間に放射するものがある(例えば、特許文献1)。
また、前記空間光変調器の代わりに、複数の光ファイバを並べた光ファイバアレイ中、任意の一つ乃至は複数の光ファイバから信号光ビームを放射させるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平03−044202号公報(第1図参照)
【特許文献2】特開平09−139620号公報(図1参照)
ここで、信号光ビームの分布と、アレイアンテナから空間に放射するマイクロ波の主ビーム方向との関係を1次元の場合で説明する。例えば、特許文献1では、信号光ビームの分布をイメージマスクにより形成している。イメージマスクとしてピンホール(微少な穴)を用いた場合、アレイアンテナから放射するマイクロ波ビームは細いビームとなる。この時、ピンホールの位置を光軸を基準にXとおく。フーリエ変換レンズの焦点距離をf、光源の波長をλo、サンプリング用光ファイバアレイの隣接光ファイバ間隔をdo、マイクロ波の波長をλm、アレイアンテナの素子間隔をdmとし、アンテナ放射ビームの主ビーム方向を正面方向を基準にθmとおくと、角度θmは、式(1)とおける。
sinθm=(do/λo)/(dm/λm)・X/f (1)
式(1)のように、イメージマスクのピンホール位置Xを変えることにより、アンテナ放射ビームの主ビーム方向θmを変えることができる。例えば、do=1mm、λo=1.3μm、dm=5cm、λm=10cm、f=500mmで、X=100μmとした場合、主ビーム方向θmは、18度となる。
(課題1)
イメージマスクとしては、マスクパターン生成の柔軟性から、特許文献1の実施例に記載されたように、液晶素子による空間光変調器や、特許文献2に記載のように、光ファイバアレイを代わりに用いても良い。
例えば、空間光変調器を用いた場合の主ビームの方向θmについて計算例を示す。空間光変調器を構成する各素子のピッチが50μmの場合、イメージマスクのピンホール位置に相当するXは、X=0、50、100、150、200、250、300、・・・、μmの離散的な値をとる。この時、アンテナ放射ビームの主ビームの方向θmは、式(1)及び前記の条件から、θm=0、8.8、18、28、38、50、67度となる。
しかし、この構成では、これらの方向の間、例えば23度方向には主ビームを向けることができないという欠点がある。
また、前記の波長の光源、マイクロ波、素子ピッチの空間光変調器、サンプリング光ファイバアレイ、アレイアンテナを用いて、アレイアンテナ放射ビームを、例えば正面付近で2度以下の間隔で走査するためには、フーリエ変換レンズの焦点距離fは2.2m以上が必要である。
このように、アンテナ放射ビームを細かい間隔で走査するには、光学系の焦点距離を長くする必要があるために装置が大きくなる。更に、光学系が長いために、空間光変調器から出力した信号光ビームの波面は、大気の擾乱や光学系の振動による劣化の影響を受けやすくなるなどの課題がある。
(課題2)
更に、アレイアンテナ放射ビームの方向は、式(1)のように、イメージマスクのパターンの位置X、フーリエ変換レンズ、光ファイバアレイ、アレーアンテナなどの装置が同一でも、マイクロ波の周波数(波長)が異なると、アレイアンテナから放射するビームの方向θmが変わるという欠点もある。
例えば、do=1mm、λo=1.3μm、dm=10cm、f=500mm、X=100μmとした場合、マイクロ波の周波数が1.5GHz(波長λm=20cm)では、アンテナ放射ビームの主ビーム方向θmは18度であるが、マイクロ波の周波数が2.0GHz(波長λm=15cm)になると、主ビーム方向θmは13.3度方向となり、マイクロ波周波数によりアンテナ放射ビームが異なる方向を向いてしまうという課題がある。
(発明の目的)
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、アンテナ放射ビームの走査角の分解能が高く、かつ光学系が短い光制御型フェーズドアレイアンテナを得るものである。
また、第2の目的は、アレイアンテナから放射する主ビームの方向が、マイクロ波周波数に依存しない、光制御型フェーズドアレイアンテナを得るものである。
【発明の開示】
この発明に係る光制御型フェーズドアレイアンテナは、マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光の二つのレーザ光を出力する光出力装置と、前記光出力装置から出力された信号光を信号光ビームとして空間に出射する信号光出射装置と、前記光出力装置から出力されたローカル光をローカル光ビームとして空間に出射するローカル光出射装置と、前記信号光ビームの空間強度分布に強度変調を行う空間光変調器と、前記空間光変調器で変調された信号光ビームを空間的にフーリエ変換するフーリエ変換レンズと、前記フーリエ変換レンズを介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る光ビーム合成器と、前記合成ビーム光を空間的にサンプリングする光ファイバアレイと、前記光ファイバアレイから出射された光をヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器とを備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、前記フーリエ変換レンズの焦点距離を短く制御する光学系を備えたことを特徴とする。
また、他の発明に係る光制御型フェーズドアレイアンテナは、マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光の二つのレーザ光を出力する光出力装置と、前記光出力装置から出力された信号光を信号光ビームとして空間に出射する信号光出射装置と、前記光出力装置から出力されたローカル光をローカル光ビームとして空間に出射するローカル光出射装置と、前記信号光ビームの空間強度分布に強度変調を行う空間光変調器と、前記空間光変調器で変調された信号光ビームを空間的にフーリエ変換するフーリエ変換レンズと、前記フーリエ変換レンズを介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る光ビーム合成器と、前記合成ビーム光を空間的にサンプリングする光ファイバアレイと、前記光ファイバアレイから出射された光をヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器とを備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、前記アレイアンテナから放射する主ビームの方向を前記マイクロ波周波数によらず一定に制御する光学系を備えたことを特徴とする。
さらに、他の発明に係る光制御型フェーズドアレイアンテナは、マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光の二つのレーザ光を出力する光出力装置と、前記光出力装置から出力された信号光を信号光ビームとして空間に出射する信号光出射装置と、前記光出力装置から出力されたローカル光をローカル光ビームとして空間に出射するローカル光出射装置と、前記信号光ビームの空間強度分布に強度変調を行う空間光変調器と、前記空間光変調器で変調された信号光ビームを空間的にフーリエ変換するフーリエ変換レンズと、前記フーリエ変換レンズを介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る光ビーム合成器と、前記合成ビーム光を空間的にサンプリングする光ファイバアレイと、前記光ファイバアレイから出射された光をヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器とを備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、前記光出力装置として、信号光とローカル光の波長を、前記マイクロ波周波数に比例した波長に制御する波長可変型光出力装置を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明の実施の形態1による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図、
図2は、信号光ビームの波面を簡易的に示す図、
図3は、この発明の実施の形態2による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図、
図4は、この発明に実施の形態3による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図、
図5は、この発明に実施の形態4による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図、
図6は、この発明の実施の形態5による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成を示す図である。図1において、光出力装置1は、マイクロ波信号源2から入力されるマイクロ波信号周波数により、所望のマイクロ波周波数で離調した信号光3とローカル光4の二つのレーザ光を出力する。このような光出力装置1を実現する手段としては、例えば、音響光学効果を用いた光周波数シフタなどの適用がある。
信号光3は、必要に応じて光ファイバで伝送した後、レンズ5により所定のビーム幅に変換し、信号光ビーム6として空間に出射する。空間に出射した信号光ビーム6は、空間光変調器7に入射する。空間光変調器7は、入射した信号光ビーム6を、空間光変調器制御端子8から入力した制御信号により、アレイアンテナから放射させるビームのパターンに対応した、所望の強度分布の信号光ビーム9に変換し、再び空間に出射する。空間光変調器7としては、例えば液晶を用いたものが既に商品化されている。
フーリエ変換レンズ10は、空間光変調器7のビーム出射面がレンズ10の前側焦点面となる位置に設置される。フーリエ変換レンズ10にて回折した信号光ビーム11は、ビーム合成器12に入射する。
一方、光出力装置1から出射したローカル光4は、必要に応じて光ファイバで伝送した後、レンズ13により所定のビーム幅に変換され、ローカル光ビーム14として空間に出射し、ビーム合成器12に入射する。
ビーム合成器12は、入射した信号光ビーム11とローカル光ビーム14とを空間的に重ね合わせ、合成ビーム光とする。合成光ビームは、前記フーリエ変換レンズ10の後側焦点面を入射面とする位置に設置したビーム拡大光学系20に入射し、合成ビーム光のビーム径が拡大され、かつビームの波面傾き角が小さくされ、ビーム拡大光学系20から出射される。
ビーム拡大光学系20から出射したビーム光は、ビーム拡大光学系20の出射面、もしくはその近傍を入射端とする光ファイバアレイ15の各光ファイバに入力し、空間的にサンプリングされる。
光ファイバアレイ15は、所定の間隔をおいて、光ファイバの長手方向が平行になるように、並置された複数本の光ファイバから構成される。光ファイバアレイ15の入射端には、光ファイバアレイ15を構成する各光ファイバへの入射光ビームとの結合効率を高める為に、レンズアレイを備えても良い。
各光ファイバに入射した光は、光ファイバ中を伝搬し、各光ファイバの出射端側に接続した各光電変換器16に入力され、ヘテロダイン検波によりマイクロ波信号に変換され、それぞれマイクロ波信号出力端17より出力される。
本装置をアレイアンテナへ適用する場合、マイクロ波信号出力端子17からの各出力信号を、必要に応じてマイクロ波増幅器などを介して、アレイアンテナの各アンテナ素子に給電し、空間に放射させる。
以上の構成において、マイクロ波信号出力端子17から出力されるマイクロ波信号の位相分布について1次元の場合で説明する。図2は、信号光ビームの波面を簡易的に示す図である。空間光変調器7の出力をフーリエ変換レンズ10の光軸から距離Xの点光源とすると、焦点距離fのフーリエ変換レンズ10の透過後、ビーム拡大光学系20へ入射する信号光ビーム11の波面の傾き角θ1は、距離Xが焦点距離fに対して十分に小さいとき、sinθ1=X/fとおける。ビーム拡大光学系20の倍率をMとおくと、ビーム拡大光学系20からの出力光ビームの波面の傾き角θ2は、式(2)となる。
sinθ2=X/(M×f)=sinθ1/M (2)
従って、光ファイバアレイ15を構成する各光ファイバの隣接ファイバの間隔をdoとおくと、任意の隣接する光ファイバに入射するビーム光間の位相差Δφoは、式(3)とおける。但し、λoは光源の波長とする。
Δφo=2π/λo do sinθ2
=2π/λo do sinθ1(1/M) (3)
M=1の場合が、ビーム拡大光学系20を使用しない場合の隣接光ファイバ間の位相差Δφoである。ビーム拡大光学系20を適用することにより、隣接ファイバ間の位相差を1/Mにすることが可能になる。前記位相差Δφoの関係を維持したまま光ファイバに入射した光は、各光電変換素子16で光電変換され、各々同一の位相差Δφoをもつマイクロ波信号に変換される。
このマイクロ波信号を、素子間隔dmのアレイアンテナに給電し、空間から放射させた時のアンテナ放射ビームの主ビーム方向θmは、式(4)とおける。
sinθm=(do/λo)/(dm/λm)×(X/f)×(1/M)
=(do/λo)/(dm/λm)×X/(f×M) (4)
このように、ビーム拡大率Mのビーム拡大光学系20を適用することにより、ビーム走査角θmの分解能を1/Mにすることが可能となる。あるいは、ビーム走査角の分解能を変えずに、フーリエ変換レンズ10の焦点距離を1/Mにすることが可能であり、装置の小型化を実現することが可能である。
ビーム拡大光学系20を適用したときのアレイアンテナから放射する主ビームの方向の計算例を1次元の場合で示す。例えば、光ファイバアレイ15の隣接ファイバの間隔をdo=1mm、光の波長をλo=1.3μm、アレイアンテナの素子間隔をdm=5cm、マイクロ波の波長をλm=10cm、フーリエ変換レンズ10の焦点距離をf=500mmとする。
空間光変調器7を構成する各変調素子のピッチが50μmの場合、Xは、X=0,50,100,150,200,250,300,・・・μmの離散的な値をとる。この時、アンテナ放射ビームの主ビームの方向θmは、式(1)及び前記の条件からθm=0,8.8,18,28,38,50,67,・・・度となる。光ファイバアレイ15の前面にビームの倍率M=5のビーム拡大光学系20を挿入した場合、アンテナ放射ビームの主ビームの方向θmは、θ=0,1.8,3.5,5.3,7.1,8.8,10,・・・度となり、同一の装置を用いてもアンテナ放射ビームの走査角の分解能を細かくすることが可能となる。
また、ビーム拡大光学系20を用いずに同様の走査角分解能を得るには、フーリエ変換レンズの焦点距離fは2.5mと、約5倍の長さが必要であることから、ビーム拡大光学系20を適用することにより、光学系の全長を短くすることが可能となり、大気の擾乱や光学系の振動による劣化への要求を緩和することができる。
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図である。図3において、図1に示す実施の形態1と同一の構成部品に関しては説明を省略する。空間光変調器7から出力した信号光ビームはビーム縮小光学系21にてビームサイズが縮小されて、ビーム縮小光学系21から出射する。例えば、ビーム縮小光学系21の倍率をm(m<1)とすると、空間光変調器7から出射しビーム縮小光学系21に入射した、光軸を中心に半径Rのビーム光は、半径mRのビームに変換される。また、ビーム縮小光学系21に入射した、光軸からXの位置の点光源は、光軸からmXの位置に変換される。
ビーム縮小光学系21から出射した信号光ビーム9は、実施の形態1と同様に、ビーム縮小光学系の出力端21を前側焦点面にしたフーリエ変換レンズ10で回折した後、ビーム合成器12にてローカル光ビーム14と重ね合わせ、合成ビーム光として、フーリエ変換レンズ10の後側焦点面を入射面とした光ファイバアレイ15に入射する。
光ファイバアレイ15の各光ファイバに入射した合成光は、各光ファイバの出射端に接続した各光電変換に入力され、ヘテロダイン検波によりマイクロ波信号に変換され、それぞれ、マイクロ波信号出力端より出射する。
以上で構成した光制御型フェーズドアレイアンテナを用いてアレイアンテナからマイクロ波を放射させた場合の主ビームの方向θmは、前記の実施の形態1と同様の変数を用いて式(5)とおける。
sinθm=(do/λo)/(da/λm)mX/f (5)
式(5)のように、ビーム縮小率mのビーム縮小光学系21を空間光変調器7とフーリエ変換レンズ10の間に備えることにより、フーリエ変換レンズ10の焦点距離f、空間光変調器7の空間分解能を変えずに、アレイアンテナからの放射ビームの走査角の分解能を概ねm倍に向上することが可能となる。あるいは、ビーム走査角の分解能を劣化させることなく、フーリエ変換レンズ10の焦点距離をm倍に短くすることが可能であり、装置の小型化が可能となる。
実施の形態3.
図4は、この発明に実施の形態3による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図である。図4において、図1に示す実施の形態1と同一の構成部品に関しては説明を省略する。この実施の形態3においては、光ビーム合成器12と光ファイバアレイ15との間に、アレイアンテナから放射する主ビームの方向をマイクロ波周波数によらず一定に制御する光学系として、マイクロ波周波数に比例してズーム倍率が制御されるズーム光学系22を備えている。
空間光変調器7から出射した信号光ビーム9は、フーリエ変換レンズ10にて回折し、ビーム合成器12によりローカル光ビーム14と重ね合わされ、合成ビーム光となり、ズーム光学系22に入射する。マイクロ波周波数設定装置23にて設定したマイクロ波周波を元にズーム倍率制御装置24によりズーム光学系22の倍率をマイクロ波周波数に比例させる。
ズーム光学系22の倍率を変化させたときに光学系の出射端が移動する場合は、光ファイバアレイ15の入射端もあわせて移動させる。
ズーム光学系から出力したビーム光は、光ファイバアレイ15にてサンプリングし、光電変換器16にてヘテロダイン検波によりマイクロ波信号に変換され、マイクロ波信号出力端子17から出力する。出力信号はアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する。
本実施の形態3におけるアレイアンテナからの放射ビームの主ビームの方向θmは、ズーム光学系の倍率をZ=z0・λmとおくと、式(6)とおける。但し、z0は定数である。
sinθm=(do/λo)/(dm/λm)・X/f・1/Z
=(do/λo)/(dm/λm)・X/f・1/(z0 λm)
=(do/λo)/dm・X/f・1/z0 (6)
式(6)に示したように、ビームの方向θmはマイクロ波の波長λmに依存しないので、マイクロ波の周波数(波長)を変化させても、アレイアンテナから放射するビームの主ビームの方向を一定とすることが可能となる。
実施の形態4.
図5は、この発明に実施の形態4による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図である。この実施の形態4においては、図1に示すフーリエ変換レンズ10の代わりに、アレイアンテナから放射する主ビームの方向をマイクロ波周波数によらず一定に制御する光学系として、マイクロ波周波数に比例してズーム倍率が制御されるズーム光学系22を備えている。
すなわち、空間光変調器7からの信号光ビーム9をズーム光学系22に入力している。この時、ズーム光学系22の倍率つまり焦点距離をズーム倍率制御装置24の信号に従い、マイクロ波周波数に比例させることにより、アレイアンテナからの放射ビームの主ビーム方向はマイクロ波周波数によらず一定とすることが可能となる。
実施の形態5.
図6は、この発明の実施の形態5による光制御型フェーズドアレイアンテナの構成図である。図6において、既に述べた構成部品に関しては説明を省略する。マイクロ波周波数設定装置23にて設定したマイクロ波の周波数(波長)情報を光波長設定装置25に入力する。光波長設定装置25は、入力マイクロ波波長情報に従い、波長可変型光出力装置26の波長を制御し、マイクロ波の波長に比例させて変化させる。
この波長可変型光出力装置26では、波長が変化すると同時に、実施の形態1の光出力装置1と同様に、マイクロ波周波数で離調した信号光3とローカル光4を出力する。
波長可変型光出力装置26を適用した場合の、アレイアンテナ放射ビームの主ビーム方向θmについて説明する。波長可変型光出力装置26から出力する光の波長λoはマイクロ波信号の波長λmに比例させるので、λo=a・λmとおける。aは所定の定数である。この時、アンテナ放射ビームの主ビーム方向θmは、式(1)より式(7)とおける。
sinθm=(do/λo)/(dm/λm)・X/f
=(do/(a λm)/(dm/λm)・X/f
=(do/a)/dm・X/f (7)
θmは、マイクロ波周波数λmに依存しなくなる。例えば、マイクロ波の周波数を10.0GHzから10.5GHzに変化させたときに、波長可変型光出力装置26の出力光の周波数(波長)を1515nmから1590nmまで変化させることにより、アンテナ放射ビームの主ビーム方向を一定に保つことが可能である。また、同一の波長可変量によりマイクロ波周波数が30GHzから31.5GHzまで対応することも可能である。
このように、波長可変型光出力装置26の波長をマイクロ波の周波数に応じて変化させることにより、マイクロ波周波数が変化しても、アンテナ放射ビームの主ビーム方向を一定にすることが可能となる。
【産業上の利用の可能性】
以上のように、この発明によれば、アンテナ放射ビームの走査角の分解能が高く、かつ光学系が短い光制御型フェーズドアレイアンテナを得ることができる。また、アレイアンテナから放射する主ビームの方向が、マイクロ波周波数に依存しない、光制御型フェーズドアレイアンテナを得ることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光の二つのレーザ光を出力する光出力装置と、
前記光出力装置から出力された信号光を信号光ビームとして空間に出射する信号光出射装置と、
前記光出力装置から出力されたローカル光をローカル光ビームとして空間に出射するローカル光出射装置と、
前記信号光ビームの空間強度分布に強度変調を行う空間光変調器と、
前記空間光変調器で変調された信号光ビームを空間的にフーリエ変換するフーリエ変換レンズと、
前記フーリエ変換レンズを介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る光ビーム合成器と、
前記合成ビーム光を空間的にサンプリングする光ファイバアレイと、
前記光ファイバアレイから出射された光をヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器と
を備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記フーリエ変換レンズの焦点距離を短く制御する光学系を備えた
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記光学系として、前記光ビーム合成器と前記光ファイバアレイとの間に、前記合成ビーム光のビームを拡大するビーム拡大光学系を備えた
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
請求項1に記載の光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記光学系として、前記空間光変調器と前記フーリエ変換レンズとの間に、前記空間光変調器で変調された信号光ビームのビームを縮小するビーム縮小光学系を備えた
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光の二つのレーザ光を出力する光出力装置と、
前記光出力装置から出力された信号光を信号光ビームとして空間に出射する信号光出射装置と、
前記光出力装置から出力されたローカル光をローカル光ビームとして空間に出射するローカル光出射装置と、
前記信号光ビームの空間強度分布に強度変調を行う空間光変調器と、
前記空間光変調器で変調された信号光ビームを空間的にフーリエ変換するフーリエ変換レンズと、
前記フーリエ変換レンズを介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る光ビーム合成器と、
前記合成ビーム光を空間的にサンプリングする光ファイバアレイと、
前記光ファイバアレイから出射された光をヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器と
を備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記アレイアンテナから放射する主ビームの方向を前記マイクロ波周波数によらず一定に制御する光学系を備えた
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。
【請求項5】
請求項4に記載の光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記光学系として、前記光ビーム合成器と前記光ファイバアレイとの間に、前記マイクロ波周波数に比例してズーム倍率が制御されるズーム光学系を備えた
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。
【請求項6】
請求項4に記載の光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記光学系として、前記フーリエ変換レンズの代わりに、前記マイクロ波周波数に比例してズーム倍率が制御されるズーム光学系を備え、
前記光ビーム合成器は、前記ズーム光学系を介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。
【請求項7】
マイクロ波周波数で離調した信号光とローカル光の二つのレーザ光を出力する光出力装置と、
前記光出力装置から出力された信号光を信号光ビームとして空間に出射する信号光出射装置と、
前記光出力装置から出力されたローカル光をローカル光ビームとして空間に出射するローカル光出射装置と、
前記信号光ビームの空間強度分布に強度変調を行う空間光変調器と、
前記空間光変調器で変調された信号光ビームを空間的にフーリエ変換するフーリエ変換レンズと、
前記フーリエ変換レンズを介した信号光ビームと前記ローカル光ビームとを空間的に重ね合わせて合成ビーム光を得る光ビーム合成器と、
前記合成ビーム光を空間的にサンプリングする光ファイバアレイと、
前記光ファイバアレイから出射された光をヘテロダイン検波することでマイクロ波信号に変換してアレイアンテナの各アンテナ素子に給電する複数の光電変換器と
を備えた光制御型フェーズドアレイアンテナにおいて、
前記光出力装置として、信号光とローカル光の波長を、前記マイクロ波周波数に比例した波長に制御する波長可変型光出力装置を備えた
ことを特徴とする光制御型フェーズドアレイアンテナ。

【国際公開番号】WO2004/105181
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−572109(P2004−572109)
【国際出願番号】PCT/JP2003/006408
【国際出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】