光半導体素子及びその製造方法
【課題】特性の低下を回避しながら高次横モードの励振を抑制することができる光半導体素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の領域11内のコア層17及び第2の領域12内のコア層17は、光の伝搬方向に連続して延びている。第1の領域11には、コア層17の側面を露出する第1の突起部が形成され、第2の領域12には、コア層17の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成されている。第1の突起部の底部は、コア層17の下面よりも下方に位置し、第2の突起部の底部は、第1の突起部の底部よりも上方に位置する。
【解決手段】第1の領域11内のコア層17及び第2の領域12内のコア層17は、光の伝搬方向に連続して延びている。第1の領域11には、コア層17の側面を露出する第1の突起部が形成され、第2の領域12には、コア層17の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成されている。第1の突起部の底部は、コア層17の下面よりも下方に位置し、第2の突起部の底部は、第1の突起部の底部よりも上方に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一モード導波路を含むパッシブ光半導体素子は、光通信システム内で、光信号の伝送だけでなく、合分岐及び合分波等の光信号処理も行う。
【0003】
その一方で、近年、光通信システムにおける伝送容量の増大のために、光信号の伝送方法及び光変調方法に関する研究開発が活発に行われている。光信号の伝送方法としては、波長多重分割を採用したものが挙げられる。また、光変調方法としては、四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase shift keying)又は差分四位相偏移変調(DQPSK:differential quadrature phase shift keying)を採用したものが挙げられる。このような状況下において、パッシブ光半導体素子には、小型化及び高密度化が要請されている。
【0004】
パッシブ光半導体素子に含まれる導波路の構造としてハイメサ構造が挙げられる。しかし、ハイメサ構造の導波路では、高さ方向に比べて幅方向の屈折率の差が大きい。このため、高次横モードが励振されやすい。更に、小型化及び高密度化に伴って曲げ導波路の曲率半径が小さくなっているため、モードシフトによる高次横モードが励振しやすくなっている。パッシブ光半導体素子の導波路で高次横モードが励振すると、光機能素子、特に、光分岐・結合素子、及び干渉計を用いた素子の特性が大幅に低下するおそれがある。また、パッシブ光半導体素子が小さくなるほど、励振した高次横モードが漏洩モードとして伝搬しても、特性が低下しやすくなる。
【0005】
このため、ハイメサ構造の導波路を含むパッシブ光半導体素子では、高次横モードの影響を排除することが重要である。そこで、ハイメサ構造の導波路における高次横モードの影響を排除するための種々の検討がなされている。
【0006】
しかしながら、これまでのところ、有効な技術が確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−67047号公報
【特許文献2】特開平2−198401号公報
【特許文献3】特開2003−258368号公報
【特許文献4】特開2003−207665号公報
【特許文献5】特開2000−221345号公報
【特許文献6】特表平8−508351号公報
【特許文献7】特開平4−213407号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE Journal of Lightwave Technology, Vol(22) No(2) pp499-508 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特性の低下を回避しながら高次横モードの励振を抑制することができる光半導体素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光半導体素子の一態様には、光の伝搬方向の第1の領域に位置する第1の下部クラッド層と、前記光の伝搬方向の第2の領域に位置する第2の下部クラッド層と、前記第1の下部クラッド層上方に形成された第1のコア層と、前記第2の下部クラッド層上方に形成された第2のコア層と、前記第1のコア層及び前記第2のコア層上方に形成された上部クラッド層と、が設けられている。前記第1のコア層及び前記第2のコア層は、前記光の伝搬方向に連続して延びている。前記第1の領域には、前記第1のコア層の側面を露出する第1の突起部が形成され、前記第2の領域には、前記第2のコア層の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成されている。前記第1の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも下方に位置し、前記第2の突起部の底部は、前記第1の突起部の底部よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0011】
上記の光半導体素子等によれば、第1の領域及び第2の領域の相互作用により、素子の特性の低下を回避しながら高次横モードの励振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】調査対象である光半導体導波路の構造を示す図である。
【図2】シミュレーションの結果を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光半導体素子を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図5】図3(d)に示す平面形状の光半導体素子を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図6】マスクパターン19の平面形状を示す図である。
【図7】シミュレーションの結果を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【図9】種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における伝搬特性を示す図である。
【図10】種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における波長とトランスミッタンスとの関係のシミュレーションの結果を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係る光半導体装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
(メサ高と伝搬特性との関係)
本願発明者は、メサ構造の光半導体導波路のメサ高(メサ部の高さ)と伝搬特性との関係を調査した。この調査について説明する。この調査では、図1に示すように、入力導波路部1、直線導波路部2及び出力導波路部3がこの順で接続された光半導体導波路の伝搬特性をシミュレーションにより求めた。図1(a)は、調査対象である光半導体導波路の構造を示す平面図であり、図1(b)は、調査対象である光半導体導波路の構造を示す断面図である。
【0015】
平面形状に関し、図1(a)に示すように、入力導波路部1の光信号の入力部の幅は4.0μmであり、入力導波路部1の直線導波路部2との連結部の幅は1.6μmであり、入力導波路部1の長さは100μmである。入力導波路部1の幅は、直線導波路部2との連結部に向かって直線的に狭くなっている。直線導波路部2の幅は1.6μmであり、直線導波路部2の長さは100μmである。出力導波路部3の幅は1.6μmであり、出力導波路部3の長さは300μmである。
【0016】
一方、入力導波路部1、直線導波路部2及び出力導波路部3の断面形状は共通している。いずれにおいても、図1(b)に示すように、下部クラッド層6上にコア層7が形成され、コア層7上に上部クラッド層8が形成されている。コア層7は、発光波長λgが1.3μm、厚さが0.3μmのGaInAsP層である。また、上部クラッド層8の厚さは2.0μmである。また、メサ高Tmesaは、3.1μm、2.6μm又は2.3μmである。つまり、下部クラッド層6の突出部の高さTlcを0.8μm、0.3μm又は0μmとした。このような構造の光半導体導波路は単一モード条件を満たす。
【0017】
一方、光半導体導波路に複数のモードが励振した場合、光半導体導波路の形状及び入力光のフィールド分布に応じて、励振モードの分布が異なり、モード振幅係数Cν(νはモード番号)は数1で表わされる。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、Ψ(y)は入力フィールド分布を示し、φν(y)は光半導体導波路におけるそれぞれの励振モード分布を示す。
【0020】
そして、このシミュレーションでは、入力モード及び光半導体導波路の励振モードが、それぞれGaussian分布及び正弦波分布を有すると仮定し、典型的なモード振幅係数Cνを算出した(C0=0.6、C1=0.3、C2=0.1)。また、このような3つの入力モードを励振させ、3次元ビーム伝搬法(BPM:beam propagation method)により伝搬特性を計算した。
【0021】
このシミュレーションの結果を図2に示す。図2(a)は、高さTlcが0.8μmの場合の伝搬特性を示し、図2(b)は、高さTlcが0.3μmの場合の伝搬特性を示し、図2(c)は、高さTlcが0μmの場合の伝搬特性を示す。
【0022】
高さTlcが0.8μmである場合、図2(a)に示すように、数百μmにわたり、光波が蛇行しながら伝搬する。つまり、高次横モードが漏洩モードとして伝搬する。
【0023】
一方、高さTlcが0.3μmである場合、図2(b)に示すように、光の蛇行が緩和され、光が400μm程度伝搬すれば、分布は0次モードになる。これは、高さTlcが低いため、高次横モードの減衰率が増大したためである。
【0024】
さらに、高さTlcが0μmである場合、図2(c)に示すように、高次漏洩モードの減衰が更に顕著になり、光が100μm程度伝搬すれば、高次横モードはほぼ放射する。
【0025】
このようなシミュレーションの結果から、メサ構造の光半導体導波路における下部クラッド層6の突出部の高さTlcが低いほど、漏洩モードとして伝搬する高次横モードの影響を抑制することができるといえる。
【0026】
なお、メサ構造には、ハイメサ構造、リッジ構造及びリブ構造が含まれる。図1(b)に示す例では、メサ高さTmesaが2.3μmより大きい場合にハイメサ構造となり、メサ高さTmesaが2.0μmより大きく2.3μm以下の場合にリッジ構造となり、メサ高さTmesaが2.0μm以下の場合にリブ構造となる。つまり、コア層7の全体がメサ部に含まれているか、コア層7の一部がメサ部に含まれているか、コア層7がメサ部に含まれていないかに応じてメサ構造を分別することができる。上記のシミュレーションは、ハイメサ構造を対象したものであるが、ハイメサ構造における傾向を考慮すると、リッジ構造では漏洩モードとして伝搬する高次横モードの減衰がより一層顕著になり、このような高次横モードの抑制に極めて有効であるといえる。
【0027】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態について説明する。図3は、第1の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【0028】
第1の実施形態に係る光半導体素子には、図3(a)に示すように、平面視で、メサ部の幅が例えば1.6μmの第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12が設けられており、これらが互いに接続されている。図3(b)は、図3(a)中のI−I線に沿った断面図であり、図3(c)は、図3(a)中のII−II線に沿った断面図である。第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12のいずれにおいても、図3(b)及び図3(c)に示すように、下部クラッド層16上にコア層17が形成され、コア層17上に上部クラッド層18が形成されている。第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12の間で、下部クラッド層16、コア層17及び上部クラッド層18の組成及び厚さは共通しており、コア層17の下面及び上面の位置も第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12の間で共通している。
【0029】
第1のメサ領域11の構造はハイメサ構造であり、第2のメサ領域12の構造はリッジ構造である。つまり、第1のメサ領域11では、メサ部に、上部クラッド層18、コア層17、及び下部クラッド層16の一部が含まれているのに対し、第2のメサ領域12では、メサ部に、上部クラッド層18、及びコア層17の一部が含まれているが、下部クラッド層16は含まれていない。
【0030】
下部クラッド層16は、例えば、n型のInP基板又はアンドープのInP基板である。コア層17は、例えば、アンドープのGaInAsPコア層であり、その発光波長は1.3μm、その厚さは0.3μmである。上部クラッド層18は、例えばp型のInP層又はアンドープのInP層であり、その厚さは2.0μmである。そして、第1のメサ領域11内のメサ部の高さは、例えば2.7μm〜3.2μmであり、第2のメサ領域12内のメサ部の高さは、例えば2.0μm〜2.5μmである。
【0031】
なお、これらの厚さ、幅及び発光波長は特に限定されないが、単一モード条件が満たされていることが好ましい。
【0032】
このように構成された光半導体素子では、第1のメサ領域11から第2のメサ領域12に向かって光信号が伝搬する場合には、第1のメサ領域11又はその前段で高次横モードが発生したとしても、第2のメサ領域12において高次横モードが減衰する。逆に、第2のメサ領域12から第1のメサ領域11に光信号が向かって伝搬する場合には、第2のメサ領域12に高次横モードが励振した光信号が入力されても、第1のメサ領域11に伝搬する光信号は高次横モードが減衰したものとなる。このように、第1の実施形態によれば、高次横モードの光信号を減衰することができる。
【0033】
更に、このような第1の実施形態を応用すれば、曲率半径の制限及び光分岐・結合素子の特性劣化を回避することができる。
【0034】
なお、図3(d)に示すように、2個の第1のメサ領域11の間に第2のメサ領域12が接続されていてもよい。第2のメサ領域12の長さは、例えば100μmである。この場合、一方の第1のメサ領域11で高次横モードが生じたとしても、他方の第1のメサ領域11に伝搬するまでの間に、第2のメサ領域12により当該高次横モードを減衰させることができる。
【0035】
次に、図3(d)に示す平面形状の光半導体素子を製造する方法について説明する。図4及び図5は、図3(d)に示す平面形状の光半導体素子を製造する方法を工程順に示す断面図である。なお、図4は、第1のメサ領域11を形成する部分を示し、図5は、第2のメサ領域12を形成する部分を示す。
【0036】
先ず、図4(a)及び図5(a)に示すように、基板を兼ねる下部クラッド層16上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE:metal organic vapor phase epitaxy)法によってコア層17及び上部クラッド層18をこの順で形成する。つまり、コア層17及び上部クラッド層18をエピタキシャル成長させる。
【0037】
次いで、図4(b)及び図5(b)に示すように、上部クラッド層18上に、ハードマスクのマスクパターン19を形成する。図6(a)に、マスクパターン19の平面形状を示す。マスクパターン19には、メサ部を形成する部分に相当するメサ形成部19a、及びメサ高の調整のためにメサ形成部19aから離間して位置するメサ高調整部19bが設けられている。メサ形成部19aの幅は、例えば1.6μmであり、第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12の間で共通している。一方、メサ高調整部19bとメサ形成部19aとの間隔は、第2のメサ領域12を形成する部分において、第1のメサ領域11を形成する部分よりも狭くなっている。例えば、第2のメサ領域12を形成する部分での間隔は、0.5μm〜1.5μm(例えば1.0μm)であり、第1のメサ領域11を形成する部分での間隔は、5.0μm〜15.0μm(例えば9.0μm)である。このようなマスクパターン19は、次のようにして形成することができる。即ち、上部クラッド層18上に、例えばシリコン酸化膜等の無機膜を蒸着法等により形成し、その上にフォトレジストを形成し、このフォトレジストを、光露光プロセスによってパターニングする。次いで、パターニング後のフォトレジスト、即ちレジストパターンをマスクとして用いて無機膜を加工する。このようにして、ハードマスクのマスクパターン19を形成することができる。
【0038】
マスクパターン19の形成後には、図4(c)及び図5(c)に示すように、マスクパターン19をマスクとして用いて上部クラッド層18、コア層17及び下部クラッド層16の加工を行う。この加工では、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)反応性イオンエッチング等のドライエッチングを行う。
【0039】
このとき、第2のメサ領域12を形成する部分では、メサ高調整部19bとメサ形成部19aとの間隔が狭いため、マイクロローディング効果によって、第1のメサ領域11を形成する部分と比較してエッチング速度が低い。従って、第2のメサ領域12を形成する部分の溝がコア層17に達したころには、第1のメサ領域11を形成する部分の溝は下部クラッド層16まで達している。実際に、本願発明者が、第2のメサ領域12を形成する部分での間隔を1.0μm、第1のメサ領域11を形成する部分での間隔を9.0μmとして、上記と同様の積層体のICP反応性ドライエッチングを行ったところ、第2のメサ領域12を形成する部分の溝の深さ(メサ高)が2.5μmのとき、第1のメサ領域11を形成する部分の溝の深さ(メサ高)は3.2μmとなっていた。つまり、マイクロローディング効果によって約0.7μmの差が生じていた。
【0040】
上部クラッド層18、コア層17及び下部クラッド層16の加工後には、マスクパターン19を除去する。このようにして光半導体素子を製造することができる。
【0041】
なお、マイクロローディング効果を利用したドライエッチングでは、エッチング量を厳密に制御することは困難である。つまり、第2のメサ領域12内のメサ部の高さを厳密に制御することは困難である。しかし、本実施形態では、第2のメサ領域12内のメサ部の高さを厳密に制御する必要はないため、このことは問題につながらない。つまり、特性に影響を及ぼしやすい実効屈折率は第1のメサ領域11でほぼ決定されるため、第2のメサ領域12は高次横モードの励振を減衰させることできればよく、実効屈折率が第2のメサ領域12で多少変動しても特性の低下は極めて小さい。
【0042】
ここで、第1の実施形態に関して本願発明者が行ったシミュレーションについて説明する。このシミュレーションでは、第1のメサ領域11のメサ高を3.2μmに固定した場合の、第2のメサ領域12のメサ高Tmesaと光半導体素子全体の実効屈折率との関係を調査した。また、第2のメサ領域12のメサ高Tmesaと、第1のメサ領域11と第2のメサ領域12との界面における反射率との関係も調査した。これらの結果を図7(a)及び(b)に示す。
【0043】
図7(a)に示すように、第2のメサ領域12のメサ部がリブ構造(0<Tmesa≦2.0)又はリッジ構造(2.0<Tmesa≦2.3)の場合、メサ高Tmesaが高くなるほど、実効屈折率が低くなるが、光半導体素子全体の実効屈折率の変化は大きくても0.03である。
【0044】
また、図7(b)に示すように、メサ高Tmesaが低くなるほど、第1のメサ領域と第2のメサ領域との界面における反射率が大きくなるが、第2のメサ領域12のメサ部がリッジ構造(2.0<Tmesa≦2.3)の場合には、10-5未満である。
【0045】
これらの結果からも、第2のメサ領域12におけるメサ高Tmesaが多少変動したとしても実効屈折率及び反射率への影響は小さいといえる。そして、更に図1及び図2に示すシミュレーションの結果を考慮すると、第2のメサ領域12におけるメサ高Tmesaの許容範囲の大きさは0.8μm以上であるといえる。このため、既存のドライエッチング技術の精度からすれば、高い歩留まりを得ることができるといえる。
【0046】
なお、図4及び図5に示す製造方法では、第1のメサ領域11を形成する部分にもメサ高調整部19bを設けているが、この部分にはメサ高調整部19bを設けなくてもよい。マイクロローディング効果によってドライエッチングの速度を低下させる必要はないからである。
【0047】
また、図6(b)に示すように、マスクパターン19のメサ高調整部19bに、第2のメサ領域12を形成する部分の端部から徐々に離間していく部分が設けられていてもよい。このような部分の長さは、第2のメサ領域12の長さが100μm程度であれば、例えば50μm〜100μmとすればよい。この場合でも、マイクロローディング効果によって、第2のメサ領域12のメサ高を低くすることができる。また、図6(a)に示すマスクパターン19を用いた場合と比較して、メサ高の変化が緩やかになるため、第1のメサ領域11と第2のメサ領域12との界面の反射率を低減することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。なお、図8(b)は、図8(a)中のI−I線に沿った断面図であり、図8(c)は、図8(a)中のII−II線に沿った断面図であり、図8(d)は、図8(a)中のIII−III線に沿った断面図である。
【0049】
第2の実施形態は、4:4多モード干渉型(MMI:multimode interference)のカプラ23を備えた光分岐・結合素子である。このカプラ23入力側には4本の入力導波路21が接続され、出力側には4本の出力導波路22が接続されている。各入力導波路21には、第1のメサ領域31、第2のメサ領域32及び第1のメサ領域33が含まれている。第2のメサ領域32は、第1のメサ領域31及び第1のメサ領域33の間に位置している。カプラ23には、第1のメサ領域34が含まれている。各出力導波路22には、第1のメサ領域35、第2のメサ領域36及び第1のメサ領域37が含まれている。
【0050】
図8(b)、(c)及び(d)に示すように、第1のメサ領域31、第2のメサ領域32及び第1のメサ領域34のいずれにおいても、基板を兼ねる下部クラッド層41上にコア層42及び上部クラッド層43が形成されている。これらの領域間で、下部クラッド層41、コア層42及び上部クラッド層43の組成及び厚さは共通しており、コア層42の下面及び上面の位置もこれらの領域間で共通している。また、第1のメサ領域31のメサ高及び第1のメサ領域34のメサ高は互いに一致しているが、第2のメサ領域32のメサ高は、これらよりも低い。
【0051】
第1のメサ領域31では、図8(b)に示すように、入力導波路21の間にメサ部が存在しないが、第2のメサ領域32では、図8(c)に示すように、入力導波路21の間に、エッチング残部24が存在する。このエッチング残部24は、上記のマイクロローディング効果を利用したドライエッチングの制御のために残存したものであるが、ここに光信号が入出力されることはない。また、カプラ23には、図8(d)に示すように、入力導波路21よりも広い分岐結合部25が設けられている。
【0052】
なお、第1のメサ領域33、35及び37のメサ部の断面構造は、第1のメサ領域31のメサ部の断面構造と同様である。また、第2のメサ領域36のメサ部の断面構造は、第2のメサ領域32のメサ部の断面構造と同様である。また、第1のメサ領域31及び37に、曲げ導波路が含まれている。
【0053】
このように構成された第2の実施形態では、入力導波路21を伝搬する光信号に高次横モードが含まれていたとしても、第2のメサ領域32において高次横モードが減衰する。従って、カプラ23では適切な光結合及び光分岐が行われる。また、カプラ23等において高次横モードが発生したとしても、第2のメサ領域36において高次横モードが減衰する。
【0054】
更に、本実施形態では、カプラ23の分岐結合部25が第1のメサ領域34に相当し、このメサ高が第1のメサ領域31、33、35及び37のメサ高と同等であり、第2のメサ領域32及び36のメサ高よりも高い。このため、光結合及び光分岐の特性が良好に維持される。
【0055】
また、分岐・結合特性の波長依存性及び偏光依存性を低減するために、分岐結合部25に接続される入力導波路21(アクセス導波路)に幅テーパが設けられていてもよい。つまり、図1(a)に示すように、入力導波路21に、入力側から出力側にかけて幅が徐々に狭まる部分が含まれていてもよい。更に、入力導波路21に、入力側から出力側にかけて幅が徐々に広がる部分が含まれていてもよい。従来の構造では、幅テーパが設けられていると、導波路の幅が広くなるにつれて、高次横モードが励振する可能性が高くなり、素子特性が著しく劣化しやすくなるが、本実施形態では、このような高次横モードが励振しても、第2のメサ領域32において減衰する。
【0056】
図9は、種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における伝搬特性のシミュレーションの結果を示す図である。図9(a)は、従来の光分岐・結合素子に0次モード(C0=0.333)の光信号を入力した場合の伝搬特性を示す。図9(b)は、従来の光分岐・結合素子にマルチモード(0次モード(C0=0.333)、1次モード(C1=0.333)及び2次モード(C2=0.333))の光信号を入力した場合の伝搬特性を示す。図9(c)は、第2の実施形態に係る光分岐・結合素子にマルチモード(0次モード(C0=0.333)、1次モード(C1=0.333)及び2次モード(C2=0.333))の光信号を入力した場合の伝搬特性を示す。なお、これらの光分岐・結合素子では、4:4MMIカプラに接続される入力導波路には、2個の幅テーパ部が設けられており、これらの間に幅が一定の直線部が設けられている。入力側の幅テーパ部の長さは100μmであり、幅が4.0μmから1.6μmに直線的に狭くなっている。直線部の長さは100μmであり、幅は1.6μmである。出力側(4:4MMIカプラ側)の幅テーパ部の長さは100μmであり、幅が1.6μmから4.0μmに直線的に広くなっている。そして、出力側の幅テーパ部が4:4MMIカプラの入力ポートに接続されている。また、各4:4MMIカプラの4か所の入力ポート同士の間隔は2.0μm程度、4:4MMIカプラの導波路の長さは1.2mm程度である。
【0057】
図9(a)に示すように、0次モードの光信号のみが入力された場合には、従来の光分岐・結合素子でも、高次横モードの励振が生じることはなく、4等分岐されている。しかしながら、従来の光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されると、入力導波路において高次横モードが漏洩モードとして伝搬するため(図2(a)参照)、図9(b)に示すように、光信号が4等分岐されない。つまり、4:4MMIカプラ内でのモード干渉作用が相違し、高次横モードが励振し続けてしまう。従って、分岐・結合特性が低下している。これに対し、第2の実施形態に係る光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されても、入力導波路において高次横モードが減衰し(図2(b)及び(c)参照)、4:4MMIカプラに入力される光信号は、ほぼ0次モードの光信号のみとなる。このため、図9(c)に示すように、光信号が4等分岐される。このように、第2の実施形態によれば、漏洩モードとして伝搬する高次横モードを減衰させて、適切に光信号の分岐を行うことができる。
【0058】
図10は、種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における波長とトランスミッタンスとの関係のシミュレーションの結果を示す図である。図10は、分岐特性における波長依存性を示している。図10(a)、(b)及び(c)に示すシミュレーションに用いた4:4MMIカプラの構造及び入力光信号は、夫々、図9(a)、(b)及び(c)のものと同一である。
【0059】
図10(a)に示すように、0次モードの光信号のみが入力された場合には、高次横モードの影響がないため、従来の光分岐・結合素子でも、Cバンド帯域内での波長依存性は0.9dB程度である。なお、入力導波路に幅テーパ部が設けられていない場合には、Cバンド帯域内での波長依存性は2.3dB程度となる。しかしながら、従来の光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されると、Cバンド帯域内での波長依存性が2.0dB程度と大きくなる。また、波長スペクトルもいびつな形状になる。更に、チャネル(Ch−1、Ch−2、Ch−3、Ch−4)間の偏差も顕著になる。高次横モードによる分岐特性の低下の程度はモード振幅係数Cνに依存し、高次横モードのモード振幅係数Cνが更に大きくなれば、波長依存性及びチャネル間の偏差が更に大きくなる。これに対し、第2の実施形態に係る光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されても、波長スペクトル特性は、図10(a)と同等になる。
【0060】
このように、第2の実施形態によれば、高次横モードのモード振幅係数Cνに拘わらず、光分岐・結合素子の波長依存性及びチャネル間の偏差を一定に保つことができる。また、第1の実施形態と同様に製造することができるため、第2のメサ領域32及び36のメサ高の許容範囲を広く確保することができる。従って、高い歩留まりで製造することができる。なお、第2の実施形態において、第2のメサ領域32及び36の断面構造がリッジ構造となっていてもよい。また、第1の実施形態において、第2のメサ領域12のメサ高が第1のメサ領域11のメサ高よりも低ければ、第2のメサ領域12がハイメサ構造となっていてもよい。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図11は、第3の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。なお、図11(b)は、図11(a)中のIV−IV線に沿った断面図であり、図11(c)は、図11(a)中のV−V線に沿った断面図である。
【0062】
第3の実施形態は、入力導波路21が2本であり、これらがカプラ23の入力ポートに非対称に接続されている点で、第2の実施形態と相違している。他の構成は第2の実施形態と同様である。つまり、2本の入力導波路21が、カプラ23の幅方向の中心位置を基準にして非対称に位置する入力ポートに接続されている。入力ポートの数は特に限定されないが、例えば4個であり、そのうちの2個のみに入力導波路21が接続されている。
【0063】
このように構成された第3の実施形態は、90度ハイブリッド光回路として機能し得る。つまり、一方の入力導波路21に四位相偏移変調(QPSK)信号光を入力し、他方の入力導波路21に局発(LO:local oscillator)光を入力し、かつ、これらの入力を時間的に同期させることにより、QPSK信号光とLO光との相対位相差Δφに応じて異なる信号を出力させることができる。なお、チャネルch−1の信号(S+L)の位相を0とすると、チャネルch−2の信号(S+jL)の位相は−π/2であり、チャネルch−3の信号(S−jL)の位相は+π/2であり、チャネルch−4の信号(S−L)の位相はπである。
【0064】
第3の実施形態でも、第2の実施形態と同様に、漏洩モードとして伝搬する高次横モードの影響を排除することができる。従って、90度ハイブリッド動作における動作帯域幅(波長依存性)及び位相ずれ特性を向上することができる。また、メサ高の制御も容易であるため、高い歩留まりで製造することができる。
【0065】
なお、QPSK信号光に代えて、差分四位相偏移変調信号(DQPSK)光を用いてもよい。
【0066】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図12は、第4の実施形態に係る光半導体装置の構造を示す図である。
【0067】
第4の実施形態には、第3の実施形態の光半導体素子(90度ハイブリッド光回路)、LO光源、差動型フォトダイオード(BPD:balanced photodiode)、AD(アナログ−デジタル)変換部及びデジタル信号処理回路が含まれている。つまり、第3の実施形態の90度ハイブリッド光回路の入力側に、入力導波路21の一方にLO光を入射するLO光源50が設けられている。また、第3の実施形態の90度ハイブリッド光回路の入力側に、同相(In-phase)の位相関係を有するチャネルの信号が入力されるBPD1、及び直交(Quadrature)の位相関係を有するチャネルの信号が入力されるBPD2が設けられている。BPD1には、チャネルch−1の信号が入力されるPD1、及びチャネルch−4の信号が入力されるPD2が含まれ、BPD2には、チャネルch−2の信号が入力されるPD3及びチャネルch−4の信号が入力されるPD4が含まれている。PD1及びPD2は互いに直列接続されており、PD1のカソード及びPD2のアノードの電位が入力されるAD変換部51が設けられている。また、PD3及びPD4は互いに直列接続されており、PD3のカソード及びPD4のアノードの電位が入力されるAD変換部52が設けられている。更に、AD変換部51及び52が出力したデジタル信号を処理するデジタル演算回路53が設けられている。
【0068】
このように構成された第4の実施形態は、コヒーレント光受信機(光半導体装置)として機能し得る。つまり、一方の入力導波路21に入力されるQPSK信号光に時間的に同期したLO信号を他方の入力導波路21に入力すると、QPSK信号光とLO光との相対位相差Δφに応じて異なる信号が出力導波路22に出力される。そして、本実施形態では、同相及び直交の位相関係を有するチャネルの信号が、夫々、直列接続されたBPD1及びBPD2に入力される。相対位相差Δφが、(a)0、(b)π、(c)−π/2及び(d)+π/2の場合、90度ハイブリッドの出力強度比は、夫々、(a)0:2:1:1、(b)2:0:1:1、(c)1:1:2:0及び(d)1:1:0:2となる。従って、BPD1及びBPD2への入力状態も相違する。BPD1では、PD1又はPD2のみへ光信号が入力されると、1又は−1に相当する電流が流れ、PD1及びPD2の両方に光信号が入力されると、電流が流れない。BPD2では、PD3又はPD4のみへ光信号が入力されると、1又は−1に相当する電流が流れ、PD3及びPD4の両方に光信号が入力されると、電流が流れない。従って、第4の実施形態では、QPSK信号光における位相情報が識別でき、電気信号へ変換することができる。そして、光電変換されたアナログ信号はAD変換部51及び52によりデジタル信号に変換され、デジタル演算回路53がこのデジタル信号の処理を行う。このようにして、第4の実施形態は、コヒーレント光受信機として機能する。
【0069】
コヒーレント光受信機では、光導波路を漏洩モードとして伝搬する高次横モードの影響が大きい場合、90度ハイブリッドの出力強度比が乱れ、クロストークが発生し、受信感度及び動作帯域幅が大幅に低下する。本実施形態では、このような高次横モードを減衰することができるため、相対位相差Δφに応じた出力強度比を一定に保つことができ、良好な受信感度及び動作帯域幅を得ることができる。
【0070】
なお、これらの実施形態に含まれるカプラ23に代えて、N:N MMIカプラ(Nは自然数)が用いられてもよい。例えば、1:N MMIカプラ、又は2:N MMIカプラ等が用いられてもよい。また、カプラとして、方向性結合器、Y分岐カプラ又はモード変換型カプラ等が用いられてもよい。これらによっても、カプラ23を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0071】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0072】
(付記1)
光の伝搬方向の第1の領域に位置する第1の下部クラッド層と、
前記光の伝搬方向の第2の領域に位置する第2の下部クラッド層と、
前記第1の下部クラッド層上方に形成された第1のコア層と、
前記第2の下部クラッド層上方に形成された第2のコア層と、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層上方に形成された上部クラッド層と、
を有し、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層は、前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第1の領域には、前記第1のコア層の側面を露出する第1の突起部が形成され、
前記第2の領域には、前記第2のコア層の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成され、
前記第1の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも下方に位置し、
前記第2の突起部の底部は、前記第1の突起部の底部よりも上方に位置することを特徴とする光半導体素子。
【0073】
(付記2)
前記第2の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも上方に位置していることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
【0074】
(付記3)
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記第2のコア層と前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第3の領域には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0075】
(付記4)
前記第1及び第2の領域を備えた1以上の入力導波路と、
前記1以上の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記1以上の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0076】
(付記5)
前記1以上の入力導波路は、前記多モード干渉導波路に近づくほど幅が広くなる部分を有することを特徴とする付記4に記載の光半導体素子。
【0077】
(付記6)
光分岐・結合素子として機能することを特徴とする付記4又は5に記載の光半導体素子。
【0078】
(付記7)
前記第1及び第2の領域を備えた2個の入力導波路と、
前記2個の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
前記多モード干渉導波路に接続された4個の出力導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記2個の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置し、
前記2個の入力導波路は、前記多モード干渉導波路の幅方向の中心位置を基準にして非対称に位置していることを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0079】
(付記8)
前記2個の入力導波路の一方に、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光が入力され、
前記多モード干渉導波路は、前記四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を同相関係及び直交関係にある一対の光信号に変換することを特徴とする付記7に記載の光半導体素子。
【0080】
(付記9)
付記7又は8に記載の光半導体素子と、
前記光半導体素子から出力される光信号をアナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードから出力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記アナログ−デジタル変換部から出力されたデジタル電気信号の演算を行う演算部と、
を有することを特徴とする光受信機。
【0081】
(付記10)
第1の化合物半導体層上に第2の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第2の化合物半導体層上に第3の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第3の化合物半導体層上にハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクを用いて前記第3の化合物半導体層、前記第2の化合物半導体層及び前記第1の化合物半導体層のドライエッチングを行う工程と、
を有し、
前記ハードマスクは、
平面形状が線状の第1の被覆部と、
前記第1の被覆部の両側に、前記第1の被覆部から離間して位置する第2の被覆部と、
を有し、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部からの距離が相違する少なくとも2個の領域を有することを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【0082】
(付記11)
前記第1の被覆部を、光導波路を形成する予定の領域に位置させることを特徴とする付記10に記載の光半導体素子の製造方法。
【0083】
(付記12)
前記第1の被覆部と前記第2の被覆部との距離が最も短い領域では、前記ドライエッチングの速度はそれ以外の領域よりも遅いことを特徴とする付記10又は11に記載の光半導体素子の製造方法。
【0084】
(付記13)
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部からの距離が変化する領域を有することを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
【0085】
(付記14)
前記第1の化合物半導体層として下部クラッド層を形成し、
前記第2の化合物半導体層としてコア層を形成し、
前記第3の化合物半導体層として上部クラッド層を形成することを特徴とする付記10乃至13のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
【符号の説明】
【0086】
1:入力導波路部
2:直線導波路部
3:出力導波路部
6、16、41:下部クラッド層
7、17、42:コア層
8、18、43:上部クラッド層
11、31、33、34、35、37:第1のメサ領域
12、32、36:第2のメサ領域
19:マスクパターン
19a:メサ形成部
19b:メサ高調整部
21:入力導波路
22:出力導波路
23:カプラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一モード導波路を含むパッシブ光半導体素子は、光通信システム内で、光信号の伝送だけでなく、合分岐及び合分波等の光信号処理も行う。
【0003】
その一方で、近年、光通信システムにおける伝送容量の増大のために、光信号の伝送方法及び光変調方法に関する研究開発が活発に行われている。光信号の伝送方法としては、波長多重分割を採用したものが挙げられる。また、光変調方法としては、四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase shift keying)又は差分四位相偏移変調(DQPSK:differential quadrature phase shift keying)を採用したものが挙げられる。このような状況下において、パッシブ光半導体素子には、小型化及び高密度化が要請されている。
【0004】
パッシブ光半導体素子に含まれる導波路の構造としてハイメサ構造が挙げられる。しかし、ハイメサ構造の導波路では、高さ方向に比べて幅方向の屈折率の差が大きい。このため、高次横モードが励振されやすい。更に、小型化及び高密度化に伴って曲げ導波路の曲率半径が小さくなっているため、モードシフトによる高次横モードが励振しやすくなっている。パッシブ光半導体素子の導波路で高次横モードが励振すると、光機能素子、特に、光分岐・結合素子、及び干渉計を用いた素子の特性が大幅に低下するおそれがある。また、パッシブ光半導体素子が小さくなるほど、励振した高次横モードが漏洩モードとして伝搬しても、特性が低下しやすくなる。
【0005】
このため、ハイメサ構造の導波路を含むパッシブ光半導体素子では、高次横モードの影響を排除することが重要である。そこで、ハイメサ構造の導波路における高次横モードの影響を排除するための種々の検討がなされている。
【0006】
しかしながら、これまでのところ、有効な技術が確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−67047号公報
【特許文献2】特開平2−198401号公報
【特許文献3】特開2003−258368号公報
【特許文献4】特開2003−207665号公報
【特許文献5】特開2000−221345号公報
【特許文献6】特表平8−508351号公報
【特許文献7】特開平4−213407号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE Journal of Lightwave Technology, Vol(22) No(2) pp499-508 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特性の低下を回避しながら高次横モードの励振を抑制することができる光半導体素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光半導体素子の一態様には、光の伝搬方向の第1の領域に位置する第1の下部クラッド層と、前記光の伝搬方向の第2の領域に位置する第2の下部クラッド層と、前記第1の下部クラッド層上方に形成された第1のコア層と、前記第2の下部クラッド層上方に形成された第2のコア層と、前記第1のコア層及び前記第2のコア層上方に形成された上部クラッド層と、が設けられている。前記第1のコア層及び前記第2のコア層は、前記光の伝搬方向に連続して延びている。前記第1の領域には、前記第1のコア層の側面を露出する第1の突起部が形成され、前記第2の領域には、前記第2のコア層の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成されている。前記第1の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも下方に位置し、前記第2の突起部の底部は、前記第1の突起部の底部よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0011】
上記の光半導体素子等によれば、第1の領域及び第2の領域の相互作用により、素子の特性の低下を回避しながら高次横モードの励振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】調査対象である光半導体導波路の構造を示す図である。
【図2】シミュレーションの結果を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光半導体素子を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図5】図3(d)に示す平面形状の光半導体素子を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図6】マスクパターン19の平面形状を示す図である。
【図7】シミュレーションの結果を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【図9】種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における伝搬特性を示す図である。
【図10】種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における波長とトランスミッタンスとの関係のシミュレーションの結果を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係る光半導体装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
(メサ高と伝搬特性との関係)
本願発明者は、メサ構造の光半導体導波路のメサ高(メサ部の高さ)と伝搬特性との関係を調査した。この調査について説明する。この調査では、図1に示すように、入力導波路部1、直線導波路部2及び出力導波路部3がこの順で接続された光半導体導波路の伝搬特性をシミュレーションにより求めた。図1(a)は、調査対象である光半導体導波路の構造を示す平面図であり、図1(b)は、調査対象である光半導体導波路の構造を示す断面図である。
【0015】
平面形状に関し、図1(a)に示すように、入力導波路部1の光信号の入力部の幅は4.0μmであり、入力導波路部1の直線導波路部2との連結部の幅は1.6μmであり、入力導波路部1の長さは100μmである。入力導波路部1の幅は、直線導波路部2との連結部に向かって直線的に狭くなっている。直線導波路部2の幅は1.6μmであり、直線導波路部2の長さは100μmである。出力導波路部3の幅は1.6μmであり、出力導波路部3の長さは300μmである。
【0016】
一方、入力導波路部1、直線導波路部2及び出力導波路部3の断面形状は共通している。いずれにおいても、図1(b)に示すように、下部クラッド層6上にコア層7が形成され、コア層7上に上部クラッド層8が形成されている。コア層7は、発光波長λgが1.3μm、厚さが0.3μmのGaInAsP層である。また、上部クラッド層8の厚さは2.0μmである。また、メサ高Tmesaは、3.1μm、2.6μm又は2.3μmである。つまり、下部クラッド層6の突出部の高さTlcを0.8μm、0.3μm又は0μmとした。このような構造の光半導体導波路は単一モード条件を満たす。
【0017】
一方、光半導体導波路に複数のモードが励振した場合、光半導体導波路の形状及び入力光のフィールド分布に応じて、励振モードの分布が異なり、モード振幅係数Cν(νはモード番号)は数1で表わされる。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、Ψ(y)は入力フィールド分布を示し、φν(y)は光半導体導波路におけるそれぞれの励振モード分布を示す。
【0020】
そして、このシミュレーションでは、入力モード及び光半導体導波路の励振モードが、それぞれGaussian分布及び正弦波分布を有すると仮定し、典型的なモード振幅係数Cνを算出した(C0=0.6、C1=0.3、C2=0.1)。また、このような3つの入力モードを励振させ、3次元ビーム伝搬法(BPM:beam propagation method)により伝搬特性を計算した。
【0021】
このシミュレーションの結果を図2に示す。図2(a)は、高さTlcが0.8μmの場合の伝搬特性を示し、図2(b)は、高さTlcが0.3μmの場合の伝搬特性を示し、図2(c)は、高さTlcが0μmの場合の伝搬特性を示す。
【0022】
高さTlcが0.8μmである場合、図2(a)に示すように、数百μmにわたり、光波が蛇行しながら伝搬する。つまり、高次横モードが漏洩モードとして伝搬する。
【0023】
一方、高さTlcが0.3μmである場合、図2(b)に示すように、光の蛇行が緩和され、光が400μm程度伝搬すれば、分布は0次モードになる。これは、高さTlcが低いため、高次横モードの減衰率が増大したためである。
【0024】
さらに、高さTlcが0μmである場合、図2(c)に示すように、高次漏洩モードの減衰が更に顕著になり、光が100μm程度伝搬すれば、高次横モードはほぼ放射する。
【0025】
このようなシミュレーションの結果から、メサ構造の光半導体導波路における下部クラッド層6の突出部の高さTlcが低いほど、漏洩モードとして伝搬する高次横モードの影響を抑制することができるといえる。
【0026】
なお、メサ構造には、ハイメサ構造、リッジ構造及びリブ構造が含まれる。図1(b)に示す例では、メサ高さTmesaが2.3μmより大きい場合にハイメサ構造となり、メサ高さTmesaが2.0μmより大きく2.3μm以下の場合にリッジ構造となり、メサ高さTmesaが2.0μm以下の場合にリブ構造となる。つまり、コア層7の全体がメサ部に含まれているか、コア層7の一部がメサ部に含まれているか、コア層7がメサ部に含まれていないかに応じてメサ構造を分別することができる。上記のシミュレーションは、ハイメサ構造を対象したものであるが、ハイメサ構造における傾向を考慮すると、リッジ構造では漏洩モードとして伝搬する高次横モードの減衰がより一層顕著になり、このような高次横モードの抑制に極めて有効であるといえる。
【0027】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態について説明する。図3は、第1の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。
【0028】
第1の実施形態に係る光半導体素子には、図3(a)に示すように、平面視で、メサ部の幅が例えば1.6μmの第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12が設けられており、これらが互いに接続されている。図3(b)は、図3(a)中のI−I線に沿った断面図であり、図3(c)は、図3(a)中のII−II線に沿った断面図である。第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12のいずれにおいても、図3(b)及び図3(c)に示すように、下部クラッド層16上にコア層17が形成され、コア層17上に上部クラッド層18が形成されている。第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12の間で、下部クラッド層16、コア層17及び上部クラッド層18の組成及び厚さは共通しており、コア層17の下面及び上面の位置も第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12の間で共通している。
【0029】
第1のメサ領域11の構造はハイメサ構造であり、第2のメサ領域12の構造はリッジ構造である。つまり、第1のメサ領域11では、メサ部に、上部クラッド層18、コア層17、及び下部クラッド層16の一部が含まれているのに対し、第2のメサ領域12では、メサ部に、上部クラッド層18、及びコア層17の一部が含まれているが、下部クラッド層16は含まれていない。
【0030】
下部クラッド層16は、例えば、n型のInP基板又はアンドープのInP基板である。コア層17は、例えば、アンドープのGaInAsPコア層であり、その発光波長は1.3μm、その厚さは0.3μmである。上部クラッド層18は、例えばp型のInP層又はアンドープのInP層であり、その厚さは2.0μmである。そして、第1のメサ領域11内のメサ部の高さは、例えば2.7μm〜3.2μmであり、第2のメサ領域12内のメサ部の高さは、例えば2.0μm〜2.5μmである。
【0031】
なお、これらの厚さ、幅及び発光波長は特に限定されないが、単一モード条件が満たされていることが好ましい。
【0032】
このように構成された光半導体素子では、第1のメサ領域11から第2のメサ領域12に向かって光信号が伝搬する場合には、第1のメサ領域11又はその前段で高次横モードが発生したとしても、第2のメサ領域12において高次横モードが減衰する。逆に、第2のメサ領域12から第1のメサ領域11に光信号が向かって伝搬する場合には、第2のメサ領域12に高次横モードが励振した光信号が入力されても、第1のメサ領域11に伝搬する光信号は高次横モードが減衰したものとなる。このように、第1の実施形態によれば、高次横モードの光信号を減衰することができる。
【0033】
更に、このような第1の実施形態を応用すれば、曲率半径の制限及び光分岐・結合素子の特性劣化を回避することができる。
【0034】
なお、図3(d)に示すように、2個の第1のメサ領域11の間に第2のメサ領域12が接続されていてもよい。第2のメサ領域12の長さは、例えば100μmである。この場合、一方の第1のメサ領域11で高次横モードが生じたとしても、他方の第1のメサ領域11に伝搬するまでの間に、第2のメサ領域12により当該高次横モードを減衰させることができる。
【0035】
次に、図3(d)に示す平面形状の光半導体素子を製造する方法について説明する。図4及び図5は、図3(d)に示す平面形状の光半導体素子を製造する方法を工程順に示す断面図である。なお、図4は、第1のメサ領域11を形成する部分を示し、図5は、第2のメサ領域12を形成する部分を示す。
【0036】
先ず、図4(a)及び図5(a)に示すように、基板を兼ねる下部クラッド層16上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE:metal organic vapor phase epitaxy)法によってコア層17及び上部クラッド層18をこの順で形成する。つまり、コア層17及び上部クラッド層18をエピタキシャル成長させる。
【0037】
次いで、図4(b)及び図5(b)に示すように、上部クラッド層18上に、ハードマスクのマスクパターン19を形成する。図6(a)に、マスクパターン19の平面形状を示す。マスクパターン19には、メサ部を形成する部分に相当するメサ形成部19a、及びメサ高の調整のためにメサ形成部19aから離間して位置するメサ高調整部19bが設けられている。メサ形成部19aの幅は、例えば1.6μmであり、第1のメサ領域11及び第2のメサ領域12の間で共通している。一方、メサ高調整部19bとメサ形成部19aとの間隔は、第2のメサ領域12を形成する部分において、第1のメサ領域11を形成する部分よりも狭くなっている。例えば、第2のメサ領域12を形成する部分での間隔は、0.5μm〜1.5μm(例えば1.0μm)であり、第1のメサ領域11を形成する部分での間隔は、5.0μm〜15.0μm(例えば9.0μm)である。このようなマスクパターン19は、次のようにして形成することができる。即ち、上部クラッド層18上に、例えばシリコン酸化膜等の無機膜を蒸着法等により形成し、その上にフォトレジストを形成し、このフォトレジストを、光露光プロセスによってパターニングする。次いで、パターニング後のフォトレジスト、即ちレジストパターンをマスクとして用いて無機膜を加工する。このようにして、ハードマスクのマスクパターン19を形成することができる。
【0038】
マスクパターン19の形成後には、図4(c)及び図5(c)に示すように、マスクパターン19をマスクとして用いて上部クラッド層18、コア層17及び下部クラッド層16の加工を行う。この加工では、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)反応性イオンエッチング等のドライエッチングを行う。
【0039】
このとき、第2のメサ領域12を形成する部分では、メサ高調整部19bとメサ形成部19aとの間隔が狭いため、マイクロローディング効果によって、第1のメサ領域11を形成する部分と比較してエッチング速度が低い。従って、第2のメサ領域12を形成する部分の溝がコア層17に達したころには、第1のメサ領域11を形成する部分の溝は下部クラッド層16まで達している。実際に、本願発明者が、第2のメサ領域12を形成する部分での間隔を1.0μm、第1のメサ領域11を形成する部分での間隔を9.0μmとして、上記と同様の積層体のICP反応性ドライエッチングを行ったところ、第2のメサ領域12を形成する部分の溝の深さ(メサ高)が2.5μmのとき、第1のメサ領域11を形成する部分の溝の深さ(メサ高)は3.2μmとなっていた。つまり、マイクロローディング効果によって約0.7μmの差が生じていた。
【0040】
上部クラッド層18、コア層17及び下部クラッド層16の加工後には、マスクパターン19を除去する。このようにして光半導体素子を製造することができる。
【0041】
なお、マイクロローディング効果を利用したドライエッチングでは、エッチング量を厳密に制御することは困難である。つまり、第2のメサ領域12内のメサ部の高さを厳密に制御することは困難である。しかし、本実施形態では、第2のメサ領域12内のメサ部の高さを厳密に制御する必要はないため、このことは問題につながらない。つまり、特性に影響を及ぼしやすい実効屈折率は第1のメサ領域11でほぼ決定されるため、第2のメサ領域12は高次横モードの励振を減衰させることできればよく、実効屈折率が第2のメサ領域12で多少変動しても特性の低下は極めて小さい。
【0042】
ここで、第1の実施形態に関して本願発明者が行ったシミュレーションについて説明する。このシミュレーションでは、第1のメサ領域11のメサ高を3.2μmに固定した場合の、第2のメサ領域12のメサ高Tmesaと光半導体素子全体の実効屈折率との関係を調査した。また、第2のメサ領域12のメサ高Tmesaと、第1のメサ領域11と第2のメサ領域12との界面における反射率との関係も調査した。これらの結果を図7(a)及び(b)に示す。
【0043】
図7(a)に示すように、第2のメサ領域12のメサ部がリブ構造(0<Tmesa≦2.0)又はリッジ構造(2.0<Tmesa≦2.3)の場合、メサ高Tmesaが高くなるほど、実効屈折率が低くなるが、光半導体素子全体の実効屈折率の変化は大きくても0.03である。
【0044】
また、図7(b)に示すように、メサ高Tmesaが低くなるほど、第1のメサ領域と第2のメサ領域との界面における反射率が大きくなるが、第2のメサ領域12のメサ部がリッジ構造(2.0<Tmesa≦2.3)の場合には、10-5未満である。
【0045】
これらの結果からも、第2のメサ領域12におけるメサ高Tmesaが多少変動したとしても実効屈折率及び反射率への影響は小さいといえる。そして、更に図1及び図2に示すシミュレーションの結果を考慮すると、第2のメサ領域12におけるメサ高Tmesaの許容範囲の大きさは0.8μm以上であるといえる。このため、既存のドライエッチング技術の精度からすれば、高い歩留まりを得ることができるといえる。
【0046】
なお、図4及び図5に示す製造方法では、第1のメサ領域11を形成する部分にもメサ高調整部19bを設けているが、この部分にはメサ高調整部19bを設けなくてもよい。マイクロローディング効果によってドライエッチングの速度を低下させる必要はないからである。
【0047】
また、図6(b)に示すように、マスクパターン19のメサ高調整部19bに、第2のメサ領域12を形成する部分の端部から徐々に離間していく部分が設けられていてもよい。このような部分の長さは、第2のメサ領域12の長さが100μm程度であれば、例えば50μm〜100μmとすればよい。この場合でも、マイクロローディング効果によって、第2のメサ領域12のメサ高を低くすることができる。また、図6(a)に示すマスクパターン19を用いた場合と比較して、メサ高の変化が緩やかになるため、第1のメサ領域11と第2のメサ領域12との界面の反射率を低減することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。なお、図8(b)は、図8(a)中のI−I線に沿った断面図であり、図8(c)は、図8(a)中のII−II線に沿った断面図であり、図8(d)は、図8(a)中のIII−III線に沿った断面図である。
【0049】
第2の実施形態は、4:4多モード干渉型(MMI:multimode interference)のカプラ23を備えた光分岐・結合素子である。このカプラ23入力側には4本の入力導波路21が接続され、出力側には4本の出力導波路22が接続されている。各入力導波路21には、第1のメサ領域31、第2のメサ領域32及び第1のメサ領域33が含まれている。第2のメサ領域32は、第1のメサ領域31及び第1のメサ領域33の間に位置している。カプラ23には、第1のメサ領域34が含まれている。各出力導波路22には、第1のメサ領域35、第2のメサ領域36及び第1のメサ領域37が含まれている。
【0050】
図8(b)、(c)及び(d)に示すように、第1のメサ領域31、第2のメサ領域32及び第1のメサ領域34のいずれにおいても、基板を兼ねる下部クラッド層41上にコア層42及び上部クラッド層43が形成されている。これらの領域間で、下部クラッド層41、コア層42及び上部クラッド層43の組成及び厚さは共通しており、コア層42の下面及び上面の位置もこれらの領域間で共通している。また、第1のメサ領域31のメサ高及び第1のメサ領域34のメサ高は互いに一致しているが、第2のメサ領域32のメサ高は、これらよりも低い。
【0051】
第1のメサ領域31では、図8(b)に示すように、入力導波路21の間にメサ部が存在しないが、第2のメサ領域32では、図8(c)に示すように、入力導波路21の間に、エッチング残部24が存在する。このエッチング残部24は、上記のマイクロローディング効果を利用したドライエッチングの制御のために残存したものであるが、ここに光信号が入出力されることはない。また、カプラ23には、図8(d)に示すように、入力導波路21よりも広い分岐結合部25が設けられている。
【0052】
なお、第1のメサ領域33、35及び37のメサ部の断面構造は、第1のメサ領域31のメサ部の断面構造と同様である。また、第2のメサ領域36のメサ部の断面構造は、第2のメサ領域32のメサ部の断面構造と同様である。また、第1のメサ領域31及び37に、曲げ導波路が含まれている。
【0053】
このように構成された第2の実施形態では、入力導波路21を伝搬する光信号に高次横モードが含まれていたとしても、第2のメサ領域32において高次横モードが減衰する。従って、カプラ23では適切な光結合及び光分岐が行われる。また、カプラ23等において高次横モードが発生したとしても、第2のメサ領域36において高次横モードが減衰する。
【0054】
更に、本実施形態では、カプラ23の分岐結合部25が第1のメサ領域34に相当し、このメサ高が第1のメサ領域31、33、35及び37のメサ高と同等であり、第2のメサ領域32及び36のメサ高よりも高い。このため、光結合及び光分岐の特性が良好に維持される。
【0055】
また、分岐・結合特性の波長依存性及び偏光依存性を低減するために、分岐結合部25に接続される入力導波路21(アクセス導波路)に幅テーパが設けられていてもよい。つまり、図1(a)に示すように、入力導波路21に、入力側から出力側にかけて幅が徐々に狭まる部分が含まれていてもよい。更に、入力導波路21に、入力側から出力側にかけて幅が徐々に広がる部分が含まれていてもよい。従来の構造では、幅テーパが設けられていると、導波路の幅が広くなるにつれて、高次横モードが励振する可能性が高くなり、素子特性が著しく劣化しやすくなるが、本実施形態では、このような高次横モードが励振しても、第2のメサ領域32において減衰する。
【0056】
図9は、種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における伝搬特性のシミュレーションの結果を示す図である。図9(a)は、従来の光分岐・結合素子に0次モード(C0=0.333)の光信号を入力した場合の伝搬特性を示す。図9(b)は、従来の光分岐・結合素子にマルチモード(0次モード(C0=0.333)、1次モード(C1=0.333)及び2次モード(C2=0.333))の光信号を入力した場合の伝搬特性を示す。図9(c)は、第2の実施形態に係る光分岐・結合素子にマルチモード(0次モード(C0=0.333)、1次モード(C1=0.333)及び2次モード(C2=0.333))の光信号を入力した場合の伝搬特性を示す。なお、これらの光分岐・結合素子では、4:4MMIカプラに接続される入力導波路には、2個の幅テーパ部が設けられており、これらの間に幅が一定の直線部が設けられている。入力側の幅テーパ部の長さは100μmであり、幅が4.0μmから1.6μmに直線的に狭くなっている。直線部の長さは100μmであり、幅は1.6μmである。出力側(4:4MMIカプラ側)の幅テーパ部の長さは100μmであり、幅が1.6μmから4.0μmに直線的に広くなっている。そして、出力側の幅テーパ部が4:4MMIカプラの入力ポートに接続されている。また、各4:4MMIカプラの4か所の入力ポート同士の間隔は2.0μm程度、4:4MMIカプラの導波路の長さは1.2mm程度である。
【0057】
図9(a)に示すように、0次モードの光信号のみが入力された場合には、従来の光分岐・結合素子でも、高次横モードの励振が生じることはなく、4等分岐されている。しかしながら、従来の光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されると、入力導波路において高次横モードが漏洩モードとして伝搬するため(図2(a)参照)、図9(b)に示すように、光信号が4等分岐されない。つまり、4:4MMIカプラ内でのモード干渉作用が相違し、高次横モードが励振し続けてしまう。従って、分岐・結合特性が低下している。これに対し、第2の実施形態に係る光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されても、入力導波路において高次横モードが減衰し(図2(b)及び(c)参照)、4:4MMIカプラに入力される光信号は、ほぼ0次モードの光信号のみとなる。このため、図9(c)に示すように、光信号が4等分岐される。このように、第2の実施形態によれば、漏洩モードとして伝搬する高次横モードを減衰させて、適切に光信号の分岐を行うことができる。
【0058】
図10は、種々の4:4MMIカプラを含む光分岐・結合素子における波長とトランスミッタンスとの関係のシミュレーションの結果を示す図である。図10は、分岐特性における波長依存性を示している。図10(a)、(b)及び(c)に示すシミュレーションに用いた4:4MMIカプラの構造及び入力光信号は、夫々、図9(a)、(b)及び(c)のものと同一である。
【0059】
図10(a)に示すように、0次モードの光信号のみが入力された場合には、高次横モードの影響がないため、従来の光分岐・結合素子でも、Cバンド帯域内での波長依存性は0.9dB程度である。なお、入力導波路に幅テーパ部が設けられていない場合には、Cバンド帯域内での波長依存性は2.3dB程度となる。しかしながら、従来の光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されると、Cバンド帯域内での波長依存性が2.0dB程度と大きくなる。また、波長スペクトルもいびつな形状になる。更に、チャネル(Ch−1、Ch−2、Ch−3、Ch−4)間の偏差も顕著になる。高次横モードによる分岐特性の低下の程度はモード振幅係数Cνに依存し、高次横モードのモード振幅係数Cνが更に大きくなれば、波長依存性及びチャネル間の偏差が更に大きくなる。これに対し、第2の実施形態に係る光分岐・結合素子では、マルチモードの光信号が入力されても、波長スペクトル特性は、図10(a)と同等になる。
【0060】
このように、第2の実施形態によれば、高次横モードのモード振幅係数Cνに拘わらず、光分岐・結合素子の波長依存性及びチャネル間の偏差を一定に保つことができる。また、第1の実施形態と同様に製造することができるため、第2のメサ領域32及び36のメサ高の許容範囲を広く確保することができる。従って、高い歩留まりで製造することができる。なお、第2の実施形態において、第2のメサ領域32及び36の断面構造がリッジ構造となっていてもよい。また、第1の実施形態において、第2のメサ領域12のメサ高が第1のメサ領域11のメサ高よりも低ければ、第2のメサ領域12がハイメサ構造となっていてもよい。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図11は、第3の実施形態に係る光半導体素子の構造を示す図である。なお、図11(b)は、図11(a)中のIV−IV線に沿った断面図であり、図11(c)は、図11(a)中のV−V線に沿った断面図である。
【0062】
第3の実施形態は、入力導波路21が2本であり、これらがカプラ23の入力ポートに非対称に接続されている点で、第2の実施形態と相違している。他の構成は第2の実施形態と同様である。つまり、2本の入力導波路21が、カプラ23の幅方向の中心位置を基準にして非対称に位置する入力ポートに接続されている。入力ポートの数は特に限定されないが、例えば4個であり、そのうちの2個のみに入力導波路21が接続されている。
【0063】
このように構成された第3の実施形態は、90度ハイブリッド光回路として機能し得る。つまり、一方の入力導波路21に四位相偏移変調(QPSK)信号光を入力し、他方の入力導波路21に局発(LO:local oscillator)光を入力し、かつ、これらの入力を時間的に同期させることにより、QPSK信号光とLO光との相対位相差Δφに応じて異なる信号を出力させることができる。なお、チャネルch−1の信号(S+L)の位相を0とすると、チャネルch−2の信号(S+jL)の位相は−π/2であり、チャネルch−3の信号(S−jL)の位相は+π/2であり、チャネルch−4の信号(S−L)の位相はπである。
【0064】
第3の実施形態でも、第2の実施形態と同様に、漏洩モードとして伝搬する高次横モードの影響を排除することができる。従って、90度ハイブリッド動作における動作帯域幅(波長依存性)及び位相ずれ特性を向上することができる。また、メサ高の制御も容易であるため、高い歩留まりで製造することができる。
【0065】
なお、QPSK信号光に代えて、差分四位相偏移変調信号(DQPSK)光を用いてもよい。
【0066】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図12は、第4の実施形態に係る光半導体装置の構造を示す図である。
【0067】
第4の実施形態には、第3の実施形態の光半導体素子(90度ハイブリッド光回路)、LO光源、差動型フォトダイオード(BPD:balanced photodiode)、AD(アナログ−デジタル)変換部及びデジタル信号処理回路が含まれている。つまり、第3の実施形態の90度ハイブリッド光回路の入力側に、入力導波路21の一方にLO光を入射するLO光源50が設けられている。また、第3の実施形態の90度ハイブリッド光回路の入力側に、同相(In-phase)の位相関係を有するチャネルの信号が入力されるBPD1、及び直交(Quadrature)の位相関係を有するチャネルの信号が入力されるBPD2が設けられている。BPD1には、チャネルch−1の信号が入力されるPD1、及びチャネルch−4の信号が入力されるPD2が含まれ、BPD2には、チャネルch−2の信号が入力されるPD3及びチャネルch−4の信号が入力されるPD4が含まれている。PD1及びPD2は互いに直列接続されており、PD1のカソード及びPD2のアノードの電位が入力されるAD変換部51が設けられている。また、PD3及びPD4は互いに直列接続されており、PD3のカソード及びPD4のアノードの電位が入力されるAD変換部52が設けられている。更に、AD変換部51及び52が出力したデジタル信号を処理するデジタル演算回路53が設けられている。
【0068】
このように構成された第4の実施形態は、コヒーレント光受信機(光半導体装置)として機能し得る。つまり、一方の入力導波路21に入力されるQPSK信号光に時間的に同期したLO信号を他方の入力導波路21に入力すると、QPSK信号光とLO光との相対位相差Δφに応じて異なる信号が出力導波路22に出力される。そして、本実施形態では、同相及び直交の位相関係を有するチャネルの信号が、夫々、直列接続されたBPD1及びBPD2に入力される。相対位相差Δφが、(a)0、(b)π、(c)−π/2及び(d)+π/2の場合、90度ハイブリッドの出力強度比は、夫々、(a)0:2:1:1、(b)2:0:1:1、(c)1:1:2:0及び(d)1:1:0:2となる。従って、BPD1及びBPD2への入力状態も相違する。BPD1では、PD1又はPD2のみへ光信号が入力されると、1又は−1に相当する電流が流れ、PD1及びPD2の両方に光信号が入力されると、電流が流れない。BPD2では、PD3又はPD4のみへ光信号が入力されると、1又は−1に相当する電流が流れ、PD3及びPD4の両方に光信号が入力されると、電流が流れない。従って、第4の実施形態では、QPSK信号光における位相情報が識別でき、電気信号へ変換することができる。そして、光電変換されたアナログ信号はAD変換部51及び52によりデジタル信号に変換され、デジタル演算回路53がこのデジタル信号の処理を行う。このようにして、第4の実施形態は、コヒーレント光受信機として機能する。
【0069】
コヒーレント光受信機では、光導波路を漏洩モードとして伝搬する高次横モードの影響が大きい場合、90度ハイブリッドの出力強度比が乱れ、クロストークが発生し、受信感度及び動作帯域幅が大幅に低下する。本実施形態では、このような高次横モードを減衰することができるため、相対位相差Δφに応じた出力強度比を一定に保つことができ、良好な受信感度及び動作帯域幅を得ることができる。
【0070】
なお、これらの実施形態に含まれるカプラ23に代えて、N:N MMIカプラ(Nは自然数)が用いられてもよい。例えば、1:N MMIカプラ、又は2:N MMIカプラ等が用いられてもよい。また、カプラとして、方向性結合器、Y分岐カプラ又はモード変換型カプラ等が用いられてもよい。これらによっても、カプラ23を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0071】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0072】
(付記1)
光の伝搬方向の第1の領域に位置する第1の下部クラッド層と、
前記光の伝搬方向の第2の領域に位置する第2の下部クラッド層と、
前記第1の下部クラッド層上方に形成された第1のコア層と、
前記第2の下部クラッド層上方に形成された第2のコア層と、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層上方に形成された上部クラッド層と、
を有し、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層は、前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第1の領域には、前記第1のコア層の側面を露出する第1の突起部が形成され、
前記第2の領域には、前記第2のコア層の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成され、
前記第1の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも下方に位置し、
前記第2の突起部の底部は、前記第1の突起部の底部よりも上方に位置することを特徴とする光半導体素子。
【0073】
(付記2)
前記第2の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも上方に位置していることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
【0074】
(付記3)
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記第2のコア層と前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第3の領域には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0075】
(付記4)
前記第1及び第2の領域を備えた1以上の入力導波路と、
前記1以上の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記1以上の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0076】
(付記5)
前記1以上の入力導波路は、前記多モード干渉導波路に近づくほど幅が広くなる部分を有することを特徴とする付記4に記載の光半導体素子。
【0077】
(付記6)
光分岐・結合素子として機能することを特徴とする付記4又は5に記載の光半導体素子。
【0078】
(付記7)
前記第1及び第2の領域を備えた2個の入力導波路と、
前記2個の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
前記多モード干渉導波路に接続された4個の出力導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記2個の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置し、
前記2個の入力導波路は、前記多モード干渉導波路の幅方向の中心位置を基準にして非対称に位置していることを特徴とする付記1又は2に記載の光半導体素子。
【0079】
(付記8)
前記2個の入力導波路の一方に、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光が入力され、
前記多モード干渉導波路は、前記四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を同相関係及び直交関係にある一対の光信号に変換することを特徴とする付記7に記載の光半導体素子。
【0080】
(付記9)
付記7又は8に記載の光半導体素子と、
前記光半導体素子から出力される光信号をアナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードから出力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記アナログ−デジタル変換部から出力されたデジタル電気信号の演算を行う演算部と、
を有することを特徴とする光受信機。
【0081】
(付記10)
第1の化合物半導体層上に第2の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第2の化合物半導体層上に第3の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第3の化合物半導体層上にハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクを用いて前記第3の化合物半導体層、前記第2の化合物半導体層及び前記第1の化合物半導体層のドライエッチングを行う工程と、
を有し、
前記ハードマスクは、
平面形状が線状の第1の被覆部と、
前記第1の被覆部の両側に、前記第1の被覆部から離間して位置する第2の被覆部と、
を有し、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部からの距離が相違する少なくとも2個の領域を有することを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【0082】
(付記11)
前記第1の被覆部を、光導波路を形成する予定の領域に位置させることを特徴とする付記10に記載の光半導体素子の製造方法。
【0083】
(付記12)
前記第1の被覆部と前記第2の被覆部との距離が最も短い領域では、前記ドライエッチングの速度はそれ以外の領域よりも遅いことを特徴とする付記10又は11に記載の光半導体素子の製造方法。
【0084】
(付記13)
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部からの距離が変化する領域を有することを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
【0085】
(付記14)
前記第1の化合物半導体層として下部クラッド層を形成し、
前記第2の化合物半導体層としてコア層を形成し、
前記第3の化合物半導体層として上部クラッド層を形成することを特徴とする付記10乃至13のいずれか1項に記載の光半導体素子の製造方法。
【符号の説明】
【0086】
1:入力導波路部
2:直線導波路部
3:出力導波路部
6、16、41:下部クラッド層
7、17、42:コア層
8、18、43:上部クラッド層
11、31、33、34、35、37:第1のメサ領域
12、32、36:第2のメサ領域
19:マスクパターン
19a:メサ形成部
19b:メサ高調整部
21:入力導波路
22:出力導波路
23:カプラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の伝搬方向の第1の領域に位置する第1の下部クラッド層と、
前記光の伝搬方向の第2の領域に位置する第2の下部クラッド層と、
前記第1の下部クラッド層上方に形成された第1のコア層と、
前記第2の下部クラッド層上方に形成された第2のコア層と、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層上方に形成された上部クラッド層と、
を有し、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層は、前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第1の領域には、前記第1のコア層の側面を露出する第1の突起部が形成され、
前記第2の領域には、前記第2のコア層の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成され、
前記第1の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも下方に位置し、
前記第2の突起部の底部は、前記第1の突起部の底部よりも上方に位置することを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記第2の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記第2のコア層と前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第3の領域には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の領域を備えた1以上の入力導波路と、
前記1以上の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記1以上の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記1以上の入力導波路は、前記多モード干渉導波路に近づくほど幅が広くなる部分を有することを特徴とする請求項4に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第1及び第2の領域を備えた2個の入力導波路と、
前記2個の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
前記多モード干渉導波路に接続された4個の出力導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記2個の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置し、
前記2個の入力導波路は、前記多モード干渉導波路の幅方向の中心位置を基準にして非対称に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記2個の入力導波路の一方に、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光が入力され、
前記多モード干渉導波路は、前記四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を同相関係及び直交関係にある一対の光信号に変換することを特徴とする請求項6に記載の光半導体素子。
【請求項8】
第1の化合物半導体層上に第2の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第2の化合物半導体層上に第3の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第3の化合物半導体層上にハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクを用いて前記第3の化合物半導体層、前記第2の化合物半導体層及び前記第1の化合物半導体層のドライエッチングを行う工程と、
を有し、
前記ハードマスクは、
平面形状が線状の第1の被覆部と、
前記第1の被覆部の両側に、前記第1の被覆部から離間して位置する第2の被覆部と、
を有し、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部からの距離が相違する少なくとも2個の領域を有することを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の被覆部を、光導波路を形成する予定の領域に位置させることを特徴とする請求項8に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項1】
光の伝搬方向の第1の領域に位置する第1の下部クラッド層と、
前記光の伝搬方向の第2の領域に位置する第2の下部クラッド層と、
前記第1の下部クラッド層上方に形成された第1のコア層と、
前記第2の下部クラッド層上方に形成された第2のコア層と、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層上方に形成された上部クラッド層と、
を有し、
前記第1のコア層及び前記第2のコア層は、前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第1の領域には、前記第1のコア層の側面を露出する第1の突起部が形成され、
前記第2の領域には、前記第2のコア層の側面の少なくとも一部を露出する第2の突起部が形成され、
前記第1の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも下方に位置し、
前記第2の突起部の底部は、前記第1の突起部の底部よりも上方に位置することを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記第2の突起部の底部は、前記第1及び第2のコア層の下面よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記第2のコア層と前記光の伝搬方向に連続して延びており、
前記第3の領域には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の領域を備えた1以上の入力導波路と、
前記1以上の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記1以上の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記1以上の入力導波路は、前記多モード干渉導波路に近づくほど幅が広くなる部分を有することを特徴とする請求項4に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第1及び第2の領域を備えた2個の入力導波路と、
前記2個の入力導波路が接続された多モード干渉導波路と、
前記多モード干渉導波路に接続された4個の出力導波路と、
を有し、
前記多モード干渉導波路は、
前記光の伝搬方向の前記第1の領域との間で前記第2の領域を挟む第3の領域に位置する第3の下部クラッド層と、
前記第3の下部クラッド層上方に形成された第3のコア層と、
を有し、
前記上部クラッド層は、前記第3のコア層上方にも形成されており、
前記第3のコア層は、前記2個の入力導波路に含まれる全ての第2のコア層を結合し、
前記多モード干渉導波路には、前記第3のコア層の側面を露出する第3の突起部が形成され、
前記第3の突起部の底部は、前記第2の突起部の底部よりも下方に位置し、
前記2個の入力導波路は、前記多モード干渉導波路の幅方向の中心位置を基準にして非対称に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記2個の入力導波路の一方に、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光が入力され、
前記多モード干渉導波路は、前記四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を同相関係及び直交関係にある一対の光信号に変換することを特徴とする請求項6に記載の光半導体素子。
【請求項8】
第1の化合物半導体層上に第2の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第2の化合物半導体層上に第3の化合物半導体層を形成する工程と、
前記第3の化合物半導体層上にハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクを用いて前記第3の化合物半導体層、前記第2の化合物半導体層及び前記第1の化合物半導体層のドライエッチングを行う工程と、
を有し、
前記ハードマスクは、
平面形状が線状の第1の被覆部と、
前記第1の被覆部の両側に、前記第1の被覆部から離間して位置する第2の被覆部と、
を有し、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部からの距離が相違する少なくとも2個の領域を有することを特徴とする光半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の被覆部を、光導波路を形成する予定の領域に位置させることを特徴とする請求項8に記載の光半導体素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64793(P2011−64793A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213388(P2009−213388)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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