説明

光半導体装置

【課題】受光素子間のクロストーク(漏れ電流)を十分に低減し、小型且つ簡易な光半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る半導体装置よると、裏面電極が鏡面状の薄膜となったことにより、隣接する受光素子へのクロストークを容易に抑圧することが出来、光半導体装置の光強度検出時における誤差を少なくすることが出来る。また、パターン化した裏面電極もしくは絶縁膜の底部にオーミック電極を裏面全体に設置することにより、裏面における接触抵抗を低減することが出来る。また、2次元配列の光半導体素子を用いることおよび裏面電極を鏡面状の薄膜とすることによりクロストークを改善することが出来る。また、高い気密性を有した状態で筺体に収納することにより、光半導体素子は、外部環境から保護されて、耐湿性に優れ、高い信頼性を確保することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として光ファイバ通信に適用される光半導体装置に関し、具体的には多チャネル化に対応した受光素子(フォトダイオード:PD)のような光半導体受光素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の波長多重通信等、光ファイバ通信技術の発展に伴い、より多チャネルの光を検出する受光素子が必要とされている。一方、多チャネル化に伴う装置の大型化を防ぐため、装置の小型集積化も同時に求められている。これらの要求に対し、アレイ状の受光素子が形成された光半導体装置は、多チャネルの受光が可能でありかつ小型であることから広く用いられている。
【0003】
図1(a)は、特許文献1に記載された、従来の光半導体装置の外観図である。また図1(b)は、受光部を含む断面図である。図1(a)では、4素子の受光部を有する光半導体素子アレイを例示するが、素子数は用途に応じて増減して使用される。
【0004】
図1に示す光半導体装置は、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。ここで光吸収層112は絶縁性を有する。また斯かる構成では、光吸収層112の直上に導電性半導体層114が設けられ、拡散領域120は導電性半導体層114に形成される。また半導体基板110には裏面電極118が蒸着等により形成され、導電性半導体層114には絶縁膜116および表面電極119が形成される。ここでは、光半導体素子100を裏面電極118において金属半田130を用いて固定し、また表面電極119をボンディングワイヤ132を用いて、電気配線板134上に形成した電気配線136と接続して実装している。
【0005】
光半導体素子100を構成するための材料として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)等が用いられる。以下の説明では、長距離の光ファイバ通信に広く用いられるInP系の材料を用いて説明する。
【0006】
導電性半導体基板110はn型InP(キャリア濃度は1×1018cm−3)、光吸収層112は絶縁型(n型)インジウムガリウム砒素(InGaAs、キャリア濃度は1×1014cm−3)、導電性半導体層114はn型InP(キャリア濃度は1×1017cm−3)、導電性半導体層114に形成された拡散領域120はZnドープされたp型のInP(キャリア濃度は1×1018cm−3)である。導電性半導体層114上に形成された絶縁膜116は窒化シリコン(SiN)が用いられている。この絶縁膜116は半導体接合のパッシベーション機能、および光入射時の無反射コーティングを兼用する。
【0007】
受光部140の受光径は80μmで、受光素子の間隔は250μmである。また導電性半導体基板110の厚さは約200μmである。
【0008】
ここで裏面電極118は受光素子アレイの共通カソードとして有効に機能させるため、オーミック電極を設置することが一般的である。すなわち、InP基板110と金属半田130界面でのショットキー障壁を低減するための合金が挿入される。本従来例はn型基板であるから、ゲルマニウムを含む金、ニッケルの合金が使用される。合金は蒸着によりInP基板に堆積した後、熱処理により金やゲルマニウムがInPに拡散し、ショットキー障壁を下げて界面のオーミック化を行う。なお図1には記載しないが、オーミック電極118の底部に、さらにチタン、白金、金などを用いた電極が付加される場合もある。
【0009】
図1で示した光半導体装置の動作について説明する。まず表面電極119と裏面電極118間には逆バイアス電圧が印加される。図1(b)のように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光150は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換され、電子171−正孔172の両キャリアとなる。ここで、逆バイアス電圧により空乏化した光吸収層112(絶縁型InGaAs)では、エネルギーバンドの傾斜が生じる。そのため、光吸収層112で発生した電子171、正孔172の各キャリアはそれぞれ、半導体基板110(n型InP)およびp型拡散領域120(p型InP)にドリフトにより移動し、最終的には表面、裏面に形成された電極より外部に出力される。
【0010】
ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となる。基板内透過光152は裏面電極118で反射し、一部は再び光吸収層112に入力されることもあるが、図1(b)の破線矢印154で示すように、隣接素子162に到達する光も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−266251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図1に示した従来の光半導体装置では、前述したように裏面電極118で反射された基板内透過光152の一部が隣接素子162およびその付近の光吸収層112に到達すると、隣接素子162においてクロストーク(漏れ電流)170が発生するという問題があった。漏れ電流170が発生することにより、光ファイバ通信における光強度監視において、光強度の検出誤差が生じてしまうという問題があった。
【0013】
我々は、斯かるクロストークの要因を分析し、次の3つの現象が主要な要因であると推定した。すなわち、(1)基板裏面での乱反射によって隣接素子に到達する光クロストーク、(2)隣接素子付近の吸収層に到達する光によって発生したキャリア(電子および正孔)の拡散による電気クロストーク、(3)入力素子の光吸収層で完全に光電変換できなかった基板内透過光が及ぼす、(1)および(2)の現象を含む、何らかの現象によるクロストーク、である。
【0014】
ここで、従来の文献においては、(2)および(3)の現象に対する対策が開示されている。
【0015】
まず(2)の現象については、特許文献1において、受光素子間において第2の半導体接合層を設ける構造を有している。そのため、隣接素子付近の吸収層で発生したキャリアをドリフトにより抽出することが出来、クロストークの改善を得ている。
【0016】
次に(3)の現象については、光吸収層を厚くすることや、複数の光吸収層を設けるなどの手法により、基板内透過光を低減することが出来、クロストークを改善することが出来る。しかしながら、基板内透過光を完全に抑制することは出来ない。よって、現象(1)における裏面での乱反射によるクロストークを削減することは重要な課題であった。
【0017】
しかしながら、従来文献において現象(1)における裏面での乱反射そのものを低減する技術は開示されていない。
【0018】
ここで図1(b)を用いて、乱反射が発生する原因を説明する。導電性半導体基板110の底部には裏面電極118としてオーミック電極が設置されている。斯かるオーミック電極は、前述したように、熱処理によって金やゲルマニウムがInP内に拡散する。そのため、InPとオーミック合金の境界が粗い状態になる。図1(b)には、裏面電極118とInPの界面が粗くなった様子が模式的に図示されている。この裏面の荒れが乱反射の要因となり、隣接素子へのクロストークが発生するという問題を生じていた。本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、受光素子間の漏れ電流を十分に低減し、小型且つ簡易な光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、導電性半導体基板と、導電性半導体基板上に形成された光吸収層と、光吸収層上に形成された導電性半導体層とを備えた光半導体装置であって、導電性半導体層が、導電性半導体基板と逆の導電型の拡散領域を複数備えることにより、光半導体装置には、アレイ状の受光素子が形成されており、導電性半導体基板の底部に鏡面状の薄膜を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、バリアメタルを含む裏面電極を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、パターン化されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、パターン化されており、光半導体装置は、鏡面状の薄膜の底部にオーミック電極である第2の裏面電極が形成されたことを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、絶縁膜を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、絶縁膜と前述絶縁膜の底部の裏面電極とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、絶縁膜と前述絶縁膜の底部の裏面電極とを備え、パターン化されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の一実施形態において、鏡面状の薄膜は、絶縁膜と前述絶縁膜の底部の第1の裏面電極とを備え、パターン化されており、半導体装置は、鏡面状の薄膜の底部にオーミック電極である第2の裏面電極が形成されたことを特徴とする。
【0027】
本発明の一実施形態において、光半導体装置は、筐体に収納されたことを特徴とする。
【0028】
本発明の一実施形態において、受光素子が2次元に配置された構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る半導体装置よると、裏面電極が鏡面状の薄膜となったことにより、隣接する受光素子への漏れ電流を容易に抑圧することが出来、光半導体装置の光強度検出時における誤差を少なくすることが出来る。
【0030】
また、パターン化した裏面電極もしくは絶縁膜の底部にオーミック電極を裏面全体に設置することにより、裏面における接触抵抗を低減することが出来る。
【0031】
また、2次元配列の光半導体素子を用いることおよび裏面電極を鏡面状の薄膜とすることによりクロストークを改善することが出来る。
【0032】
また、高い気密性を有した状態で筺体に収納することにより、光半導体素子は、外部環境から保護されて、耐湿性に優れ、高い信頼性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は外観図であり、(b)は断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は裏面構造の詳細図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光半導体素子を筐体に収納したときの構造を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体素子の評価結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の別形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の別形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態の別形態に係る光半導体装置の構造を説明するための断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態の別形態に係る光半導体装置の構造を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図14】本発明の第6の実施形態の別形態に係る光半導体装置の構造を説明するための図であり、(a)は断面図であり、(b)は底面図である。
【図15】本発明の第7の実施形態に係る光半導体装置の構造を説明するための斜視図である。
【図16】本発明の第7の実施形態7に係る光半導体素子を筐体に収納したときの構造を説明するための図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る半導体素子の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の光半導体装置における、第1の実施形態について図2から図4を用いて説明する。図2は光半導体装置の構成図であり、図2(a)は受光部を含む断面図、図2(b)は裏面構造の詳細図である。図2(a)では、複数の受光部を有する光半導体素子アレイを例示するが、素子数は用途に応じて増減して使用して構わない。
【0035】
図2に示す光半導体装置は、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。ここで光吸収層112は絶縁性を有する。またこの構成では、光吸収層112の直上に導電性半導体層114が設けられ、拡散領域120は導電性半導体層114に形成される。また半導体基板110には裏面電極118が蒸着等により形成され、導電性半導体層114には絶縁膜116および表面電極119が形成される。
【0036】
光半導体素子を構成するための材料として、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)等が用いられる。ここでは、従来例と同様、長距離の光ファイバ通信に広く用いられるInP系の材料を用いて説明する。
【0037】
導電性半導体基板110はn型InP(キャリア濃度は1×1018cm−3)、光吸収層112は絶縁型(n型)インジウムガリウム砒素(InGaAs、キャリア濃度は1×1014cm−3)、導電性半導体層114はn型InP(キャリア濃度は1×1017cm−3)、導電性半導体層114に形成された拡散領域120はZnドープされたp型のInP(キャリア濃度は1×1018cm−3)である。導電性半導体層114上に形成された絶縁膜116は窒化シリコン(SiN)が用いられている。この絶縁膜116は半導体接合のパッシベーション機能、および光入射時の無反射コーティングを兼用する。
【0038】
受光部140の受光径は80μmで、受光素子の間隔は250μmである。また導電性半導体基板110の厚さは約200μmである。
【0039】
ここで図1(b)に示した従来の例の断面図と構造上異なる点は、裏面電極118の構造である。すなわち、本発明においては、半導体基板110の裏面に、裏面電極118の組成として合金によるオーミック金属を用いるのではなく、鏡面状の薄膜を設置することである。その材料は金属、絶縁膜を含めて多様に取りうる。本実施形態においては、バリアメタルを含む金属を使用する。バリアメタルは、材料間の相互拡散を防止するために、拡散しやすい材料間に挿入される金属である。本実施形態では金配線、および金錫半田を使用することから、金とInPの拡散を防止するための白金をバリアメタルとして使用する。
【0040】
図2(b)を用いて、裏面構造の詳細を説明する。導電性半導体基板110であるところのn型InPの底部には、まずInPと密着性のよいチタン1182を蒸着により設置する。次にチタン1182の底部にバリアメタルである白金1184を蒸着により設置する。さらに白金1184の底部に金1186を蒸着により設置する。それぞれの層厚は約500Åである。斯かる構造により、InPと金が、バリアメタルを介することにより、加熱工程等によっても相互拡散が生じにくくなる。そのため、InPと裏面金属の境界が平滑な状態となり、良好な鏡面状の薄膜が形成されたことをSEM顕微鏡により確認した。
【0041】
本実施形態における光半導体装置の動作について説明する。まず表面電極119と裏面電極118間には逆バイアス電圧が印加される。図2(a)のように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光150は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換され、電子-正孔の両キャリアとなる。ここで、逆バイアス電圧により空乏化した光吸収層112(絶縁型InGaAs)では、エネルギーバンドの傾斜が生じる。そのため、光吸収層112で発生した電子、正孔の各キャリアはそれぞれ、半導体基板110(n型InP)およびp型拡散領域120(p型InP)にドリフトにより移動し、最終的には表面、裏面に形成された電極より外部に出力される。
【0042】
ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となる。基板内透過光152は裏面電極118で反射する。ここで裏面電極118が鏡面状の薄膜となっており、裏面では乱反射ではなく鏡面反射様の反射動作を示す。そのため、従来の例のような裏面での乱反射による隣接素子に到達する光が削減され、クロストークの改善が期待できる。
【0043】
図2に示した光半導体素子は、図3に示すような筐体182、および窓蓋184に収納することが出来る。光半導体素子100は、セラミックからなる箱型の筺体182内に収納され、この筺体182と、受光部140への光入力を可能にするサファイア等からなる窓蓋184とによって気密封止されている。図示していないが、筺体182と窓蓋184とは、金属半田130により接合されているため、高い気密性を有した中で、光半導体素子100は、外部環境から保護されて、耐湿性に優れ、高い信頼性を確保することが可能である。光半導体素子100は、受光部140を窓蓋184に対向させた状態で、裏面電極118と筺体182とが金属半田130等により固定しており、また表面電極119はボンディングワイヤ132により筺体内の電気配線136と接続している。筺体内の電気配線136は、筺体182を貫通して筺体182の表面にまで延長されており(図示せず)、外部に接続される電気配線ボード類への電気的接続を可能にしている。
【0044】
図4に、光ファイバから光を入力した時のクロストーク量を評価した結果を示す。この評価は、光半導体素子100を図3に示す筐体182に搭載し、窓蓋184による封止を行わない状態で、光ファイバを用いて受光部140に光入力することにより実施した。ここで入力光の波長は1.55μmとし、室温環境で測定を行った。縦軸に示すクロストークの値は、入力素子における受光電流と隣接素子における受光電流の比をとったものである。測定に際し、受光部と光ファイバ端面の距離(z)を変化させて、クロストークの変化を観測した。
【0045】
上記実験の結果より、従来品における隣接クロストークが、z<600μmの領域で−35dB〜−42dBであったのに対し、本発明の素子を用いた場合は−45dB〜−52dB程度と、10dBのクロストーク改善が確認できた。
【0046】
本実施形態においては、裏面電極118にオーミック電極を用いないため、InP基板110と裏面電極118間がショットキー接触となる。そのため接触抵抗が懸念される。しかしながら、コモン電極である裏面電極118の接着面積が広いため、通常の動作条件においては、その接触抵抗の増加は品質上、問題ない場合が多い。例えば、1Ω程度の抵抗が増加した場合、負荷抵抗50Ωの伝送経路においては、帯域の劣化は50/51程度と微小である。また、接触抵抗による電圧降下についても、1mAの受光電流では電圧降下は1mV程度と無視出来る程度である。
【0047】
なお、本実施形態においては導電性半導体基板110をn型としたが、逆の導電型のp型にした場合でも同様の改善効果を有する。その場合は、導電性半導体基板110はp型、光吸収層112はp型、導電性半導体層114はp型、導電性半導体層114に形成された拡散領域120はn型である。
【0048】
また、本実施形態においては裏面で鏡面反射様の反射動作を示すため、基板内透過光152が入力素子160の光吸収層112に入力される量が増加する。よって、入力素子160の受光感度が増加するという効果も奏する。
【0049】
本発明の光半導体装置における、第2の実施形態について図5を用いて説明する。図5は光半導体装置の構成図であり、図5(a)は受光部を含む断面図、図5(b)は金属半田を付ける前の底面図である。
【0050】
斯かる光半導体装置は、第1の実施形態同様、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。その他キャリア濃度、電極等の構成は第1の実施形態と同等のため説明を省略する。
【0051】
本実施形態が第1の実施形態と構造上異なる点は、裏面電極118を全面電極ではなくパターン化したことである。パターン化は、導電性半導体基板110の底部に有機レジストを塗布、露光することによるリフトオフ工程によって作製する。パターン化する位置は、受光素子表面上の各受光部140と、InP基板110を介した反対側に設置される。すなわち、裏面のパターンは、受光部を通る光軸が中央に来るように設置される。本実施形態では、図5(b)に示すように、電極のパターンは円形とし、その直径はφ=200μmとした。パターンの無い領域は、導電性半導体基板110が剥き出した状態となっている。
【0052】
裏面電極の組成は、第1の実施形態と同様、合金によるオーミック金属を用いるのではなく、鏡面状の薄膜を設置することによって行う。本実施形態においては、第1の実施形態と同様、バリアメタルを含む金属を使用する。本実施形態では金配線、および金錫半田を使用することから、金とInPの拡散を防止するための白金をバリアメタルとして使用する。導電性半導体基板110であるところのn型InPの底部に、チタン、白金、金の順番で蒸着により設置する。それぞれの層厚は約500Åである。
【0053】
斯かる構造により、第1の実施形態と同様、InPと金の相互拡散が抑圧され、良好な鏡面状の薄膜が形成された。さらに本実施形態においては、裏面電極が全面に配置されていないため、熱変化による応力が発生しやすい白金の面積を低減することが出来る。よって、熱によっても鏡面状態を保持し、剥離が生じにくい薄膜を形成することが出来た。
【0054】
本実施形態に係る光半導体装置の動作について説明する。第1の実施形態同様、まず表面電極119と裏面電極118間には逆バイアス電圧が印加される。図5(a)に示すように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光150は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換される。ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となり、裏面電極118で反射する。ここで裏面電極118が鏡面状の薄膜となっており、裏面では乱反射ではなく鏡面反射様の反射動作を示す。そのため、従来の例のような裏面での乱反射による隣接素子に到達する光が削減され、クロストークが改善した。
【0055】
本実施形態においては、裏面電極118にオーミック電極を用いないため、InP基板110と裏面電極118間がショットキー接触となる。さらに、裏面電極118をパターン化しているため、第1の実施形態よりも接触抵抗の増加が懸念される。しかしながら、第1の実施形態同様、コモン電極である裏面電極118の接着面積が広いため、通常の動作条件においては、その接触抵抗の増加は品質上、問題ない場合が多い。
【0056】
次に、第2の実施形態の別形態について図6を用いて説明する。図6は半導体装置の構成図であり、図6(a)は受光部を含む断面図、図6(b)は底面図である。
【0057】
本構造において、図5に示した実施形態と異なるのは、裏面のパターン形状である。本形態では、受光部を通る光軸が中央に来るように設置されるパターン(直径は200μm)に加えて、その周辺部に小径(直径は約50μm)の裏面電極を追加した。
【0058】
斯かる構造により、図5で示した実施形態における発明の効果に加え、小径の裏面電極と金属半田の密着により、光半導体素子と金属半田間の接着強度が向上し、電気配線や筐体への強固な搭載が可能となる。また、裏面電極の面積が増加したことにより、接触抵抗を低減することが出来た。
【0059】
本発明の光半導体装置における、第3の実施形態について図7を用いて説明する。図7は光半導体装置の構成図であり、図7(a)は受光部を含む断面図、図7(b)は底面図である。
【0060】
斯かる光半導体装置は、前述の実施形態同様、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。その他キャリア濃度、電極等の構成は前述の実施形態と同等のため説明を省略する。
【0061】
本実施形態が前述の実施形態と構造上異なる点は、バリアメタルを含む電極を第1の裏面電極1187として裏面に設置した後、さらに第2の裏面電極1188としてオーミック電極を設置する点である。本実施形態では、第1の裏面電極1187を全面電極ではなくパターン化した構造とし、さらにその底部に、裏面全体にオーミック電極を第2の裏面電極1188として設置した。パターン化の方向および構造は、第2の実施形態と同様である。すなわち、リフトオフ工程によって作製し、その位置は、受光素子表面上の各受光部140と、InP基板110を介した反対側に設置される。図7(b)に示すように、第1の裏面電極1187のパターンは円形とし、その直径はφ=200μmとした。本実施形態では、さらに第2の裏面電極1188としてオーミック電極が設置されるため、底面は一見、全面がオーミック電極であるように見える。
【0062】
第1の裏面電極1187の組成は、前述の実施形態と同様、バリアメタルを含む金属を使用する。導電性半導体基板110であるn型InPの底部に、チタン、白金、金の順番で蒸着により設置する。それぞれの層厚は約500Åである。一方、第二の裏面電極1188は、ゲルマニウムを含む金、ニッケルの合金が使用される。合金は蒸着によりInP基板110に堆積した後、熱処理を行い、InPと接する金やゲルマニウムがInPに拡散し、ショットキー障壁を下げて界面のオーミック化を行う。
【0063】
斯かる構造により、前述の実施形態と同様、InPと金の相互拡散が抑圧され、良好な鏡面状の薄膜が形成された。また、第1の裏面電極1187が全面に配置されていないため、熱変化による応力が発生しやすい白金の面積を低減することが出来、熱によっても鏡面状態を保持し、剥離が生じにくい薄膜を形成することが出来る。さらに本構造では、第一の裏面電極が配置されていない領域にオーミック接触が形成されているため、接触抵抗を低減することが出来る。
【0064】
本実施形態に係る光半導体装置の動作について説明する。まず表面電極119と裏面電極1187間には逆バイアス電圧が印加される。図7(a)に示すように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光150は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換される。ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となり、第1の裏面電極1187で反射する。ここで第1の裏面電極1187は鏡面状の薄膜となっており、裏面では乱反射ではなく鏡面反射様の反射動作を示す。そのため、従来の例のような裏面での乱反射による隣接素子162に到達する光が削減され、クロストークが改善した。
【0065】
なお第1の裏面電極1187が設置されていない裏面はオーミック処理によりInPとの界面が粗くなる。しかしながら、その領域に到達する基板内透過光152はほとんど無いため、散乱の影響は無視できる。
【0066】
本実施形態においては、前述の実施形態と比較して、第1の裏面電極1187が配置されていない領域にオーミック接触が形成されているため、接触抵抗を低減することが出来る。作製した素子の電流−電圧特性より、接触抵抗の増加は1Ω以内と、良好な特性であることを確認した。
【0067】
次に、第3の実施形態の別形態について図8を用いて説明する。図8は半導体装置の構成図であり、図8(a)は受光部を含む断面図、図8(b)は底面図である。
【0068】
本構造において、図7に示した実施形態と異なるのは、裏面のパターン形状である。本実施形態では、受光部140を通る光軸が中央に来るように設置されるパターン(直径は200μm)に加えて、その周辺部に小径(直径は約50μm)の裏面電極を追加した。
【0069】
斯かる構造により、図7で示した実施形態における発明の効果に加え、小径の裏面電極と金属半田の密着により、光半導体素子と金属半田間の接着強度が向上し、電気配線や筐体への強固な搭載が可能となる。作製した光半導体素子の剥離試験(ダイシェア試験)を行った結果、3サンプルの試験で、短辺から押し圧を加えた時、平均2kgfの強度であることがわかった。これは、従来の例と同等のダイシェア強度である。
【0070】
本発明の光半導体装置における、第4の実施形態について図9を用いて説明する。図9は光半導体装置の受光部を含む断面図である。
【0071】
斯かる光半導体装置は、前述の実施形態同様、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。その他キャリア濃度、電極等の構成は前述の実施例と同等のため説明を省略する。
【0072】
本実施形態が前述の実施形態と構造上異なる点は、鏡面状の薄膜として、絶縁膜190を配置したことである。本実施形態では、裏面全面に窒化シリコンを用いた絶縁膜190を気相成長法により堆積した。
【0073】
本実施形態に係る光半導体装置の動作について説明する。まず表面電極119と金属半田130間には逆バイアス電圧が印加される。図9に示すように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光150は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換される。ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となり、絶縁膜190を透過し、その底部の金属半田130で反射する。ここで絶縁膜190と金属半田130は相互拡散等の影響が少ないため、金属半田130が鏡面状の薄膜となっており、裏面では乱反射ではなく鏡面反射様の反射動作を示す。そのため、従来の例のような裏面での乱反射による隣接素子162に到達する光が削減され、クロストークが改善した。
【0074】
なお、裏面の絶縁膜190と金属半田130との間は電気的に絶縁されている。よって導電性半導体基板110と金属半田130の導通は、導電性半導体基板110の側面に金属半田130が回りこみ接触することによって行う。よって、InP基板110と金属半田130間がショットキー接触となるため、接触抵抗の増加が懸念される。しかしながら、金属半田130の量を増やすなどして側面との接触面積を確保することにより、通常の動作条件においては、その接触抵抗の増加は品質上、問題ない場合が多い。
【0075】
次に、第4の実施形態の別形態について図10を用いて説明する。図10は光半導体装置の受光部を含む断面図である。
【0076】
本構造において、図9に示した実施形態と異なるのは、裏面に設置された絶縁膜190のさらに底部に、裏面電極118を設置することである。また、絶縁膜190の厚みを約0.2μmとし、入力光に対する高反射率条件を満たすようにしたことである。なお裏面電極118は、絶縁膜190を介しているためInPとの相互拡散が生じないことから、バリアメタルを使用しない金属、たとえばチタンと金のみの組成でも良い。
【0077】
斯かる構造により、図9で示した実施形態における発明の効果に加え、裏面電極が存在することにより、金属半田による薄膜よりも、安定した鏡面状薄膜の形成が可能である。また、絶縁膜が高反射率条件を満たすため、図9で示した実施形態よりさらに反射率が向上し、クロストークの改善、および受光感度の向上が得られた。また、裏面電極にバリアメタルを使用しない場合は、熱変化による応力が発生しないことから、熱によっても鏡面状態を保持し、剥離が生じにくい薄膜を形成することが出来た。
【0078】
本発明の光半導体装置における、第5の実施形態について図11を用いて説明する。図11は光半導体装置の構成図であり、図11(a)は受光部を含む断面図、図11(b)は金属半田を付ける前の底面図である。
【0079】
斯かる光半導体装置は、前述の実施形態同様、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。その他キャリア濃度、電極等の構成は前述の実施例と同等のため説明を省略する。
【0080】
本実施形態が前述の実施形態と構造上異なる点は、鏡面状の薄膜として、絶縁膜190を配置し、さらに絶縁膜190を全面配置ではなくパターン化したことである。パターン化は、絶縁膜190上にパターン化されたメタルをリフトオフ工程によって作製し、そのメタルをマスクとしてエッチングを行い作製する。
【0081】
パターン化する位置は、受光素子表面上の各受光部と、InP基板を介した反対側に設置される。すなわち、裏面のパターンは、受光部を通る光軸が中央に来るように設置される。本実施形態では、図11(b)に示すように、電極のパターンは円形とし、その直径はφ=200μmとした。パターンの無い領域は、導電性半導体基板110が剥き出した状態となっている。
【0082】
本実施形態における光半導体装置の動作について説明する。前述の実施形態同様、まず表面電極119と金属半田130間には逆バイアス電圧が印加される。図11(a)に示すように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光150は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換される。ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となり、絶縁膜190を透過し、その底部の金属半田130で反射する。ここで絶縁膜190と金属半田130とは相互拡散等の影響が少ないため、金属半田130が鏡面状の薄膜となっており、裏面では乱反射ではなく鏡面反射様の反射動作を示す。そのため、従来の例のような裏面での乱反射による隣接素子162に到達する光が削減され、クロストークが改善した。
【0083】
なお、裏面の絶縁膜190と金属半田130との間は電気的に絶縁されている。よって、導電性半導体基板110と金属半田130の導通は、導電性半導体基板110が剥き出した領域と金属半田130が接触することおよび導電性半導体基板110の側面に金属半田130が回りこみ接触することによって行う。これにより、InP基板110と金属半田130間がショットキー接触となるため、接触抵抗の増加が懸念される。しかしながら、導電性半導体基板110が剥き出した領域と金属半田130の接触面積を広くすること、あるいは金属半田130の量を増やすなどして側面との接触面積を確保することにより、通常の動作条件においては、その接触抵抗の増加は品質上、問題ない場合が多い。
【0084】
次に、第5の実施形態の別形態について図12を用いて説明する。図12は光半導体装置の受光部を含む断面図である。
【0085】
本構造において、図11に示した実施形態と異なるのは、裏面に設置された絶縁膜190のさらに底部に、裏面電極118を設置することである。また、絶縁膜190の厚みを約0.2μmとし、入力光に対する高反射率条件を満たすようにしたことである。なお裏面電極118は、絶縁膜190を介しているためInPとの相互拡散が生じないことから、バリアメタルを使用しない金属、たとえばチタンと金のみの組成でも良い。
【0086】
さらに本構造においては、図11に示した実施形態と裏面のパターン形状が異なる。本形態では、受光部を通る光軸が中央に来るように設置されるパターン(直径は200μm)に加えて、その周辺部に小径(直径は約50μm)の裏面電極を複数追加した。
【0087】
斯かる構造により、図10で示した実施形態における発明の効果に加え、小径の裏面電極と金属半田との密着により、光半導体素子と金属半田との間の接着強度が向上し、電気配線や筐体への強固な搭載が可能となる。なお、裏面電極118と導電性半導体基板110との間は絶縁膜190を介して電気的に絶縁されているため、裏面電極の面積が増加したことにより、接触抵抗の増加が懸念されるが、導電性半導体基板110が剥き出された領域と金属半田130の接触面積を広くすること、あるいは金属半田130の量を増やすなどして側面との接触面積を確保することにより、通常の動作条件においては、その接触抵抗の増加は品質上、問題ない場合が多い。また、裏面電極にバリアメタルを使用しない場合は、熱変化による応力が発生しないことから、熱によっても鏡面状態を保持し、剥離が生じにくい薄膜を形成することが出来た。
【0088】
本発明の光半導体装置における、第6の実施形態について図13を用いて説明する。図13は光半導体装置の構成図であり、図13(a)は受光部を含む断面図、図13(b)は底面図である。
【0089】
斯かる光半導体装置は、前述の実施形態同様、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。その他キャリア濃度、電極等の構成は前述の実施例と同等のため説明を省略する。
【0090】
本実施形態が前述の実施形態と構造上異なる点は、鏡面状の薄膜として、絶縁膜190を配置し、さらにその底部に、裏面全体にオーミック電極を裏面電極118として設置した。本実施形態では、絶縁膜190を全面ではなくパターン化した構造とし、さらにその底部に、裏面全体にオーミック電極を裏面電極118として設置した。パターン化の方向および構造は、第5の実施形態と同様である。すなわち、リフトオフ工程によって作製されたメタルマスクを用いてエッチングによりパターン化し、その位置は、受光素子表面上の各受光部と、InP基板を介した反対側に設置される。図13(b)に示すように、絶縁膜190のパターンは円形とし、その直径はφ=200μmとした。本実施形態では、さらにオーミック電極が設置されるため、底面は一見、全面がオーミック電極であるように見える。
【0091】
オーミック処理を行う裏面電極118は、ゲルマニウムを含む金、ニッケルの合金が使用される。合金は蒸着によりInP基板110に堆積した後、熱処理を行い、InPと接する金やゲルマニウムがInPに拡散し、ショットキー障壁を下げて界面のオーミック化を行う。
【0092】
本実施形態に係る光半導体装置の動作について説明する。まず表面電極119と裏面電極118間には逆バイアス電圧が印加される。図13に示すように、表面より絶縁膜116を介して受光部140に入力された入射光は、そのほとんどが光吸収層112において光電変換される。ここで光吸収層112に入力した入射光150の一部は、光吸収層112で完全に光電変換しきれず、基板内透過光152となり、絶縁膜190を透過し、その底部の裏面電極118で反射する。ここで絶縁膜190と裏面電極118は相互拡散等の影響が少ないため、裏面電極118が鏡面状の薄膜となっており、裏面では乱反射ではなく鏡面反射様の反射動作を示す。そのため、従来の例のような裏面での乱反射による隣接素子162に到達する光が削減され、クロストークが改善した。さらに、絶縁膜190が配置されていない領域にオーミック接触が形成されているため、接触抵抗を低減することが出来た。
【0093】
なお絶縁膜190が設置されていない裏面はオーミック処理によりInPとの界面が粗くなる。しかしながら、その領域に到達する基板内透過光152はほとんど無いため、散乱の影響は無視できる。
【0094】
次に、第6の実施形態の別形態について図14を用いて説明する。図14は半導体装置の構成図であり、図14(a)は受光部を含む断面図、図14(b)は底面図である。
【0095】
本構造において、図13に示した実施形態と異なるのは、裏面に設置された絶縁膜190のさらに底部に、第1の裏面電極1187を設置し、さらに第二の裏面電極1188としてオーミック電極を設置することである。また、絶縁膜190の厚みを0.2μmとし、入力光に対する高反射率条件を満たすようにしたことである。なお第1の裏面電極1187は、絶縁膜190を介しているためInPとの相互拡散が生じないことから、バリアメタルを使用しない金属、たとえばチタンと金のみの組成でも良い。
【0096】
さらに本構造においては、図13に示した実施形態と裏面のパターン形状が異なる。本形態では、受光部を通る光軸が中央に来るように設置されるパターン(直径は200μm)に加えて、その周辺部に小径(直径は約50μm)の裏面電極を複数追加した。
【0097】
斯かる構造により、図13で示した実施形態における発明の効果に加え、小径の裏面電極と金属半田との密着により、光半導体素子と金属半田との間の接着強度が向上し、電気配線や筐体への強固な搭載が可能となる。また、裏面電極にバリアメタルを使用しない場合は、熱変化による応力が発生しないことから、熱によっても鏡面状態を保持し、剥離が生じにくい薄膜を形成することが出来た。
【0098】
本発明の光半導体装置における、第7の実施形態について図15から図17を用いて説明する。本実施形態では、前述の実施形態を用いてクロストークの改善を行った光半導体素子を2次元上に配置する。
【0099】
図15は、受光素子を4行×3列に配置した12チャネルの光半導体素子アレイを例示するが、素子数は用途に応じて増減して使用することが可能である。
【0100】
斯かる光半導体装置は、前述の実施形態同様、導電性半導体基板110上に形成された光吸収層112を有し、かつ導電性半導体基板110と逆の導電性の拡散領域120を複数持つことにより形成される。その他キャリア濃度、電極等の構成は前述の実施例と同等のため説明を省略する。
【0101】
本実施例では、鏡面状の薄膜として、第1の実施形態と同様、バリアメタルを含む金属を裏面電極118として裏面全体に配置した。
【0102】
図16に示す構成では、2列に配置した光半導体素子アレイを、図に示すように筐体182に収納した。光半導体素子100は、セラミックからなる箱型の筺体182内に収納される。図示しないが、この筺体182と、受光部140への光入力を可能にする窓蓋が、金属半田により接合されているため、高い気密性を有した中で、光半導体素子100は、外部環境から保護されて、耐湿性に優れ、高い信頼性を確保することが可能である。光半導体素子100は、受光部140を窓蓋に対向させた状態で、裏面電極と筺体182とが金属半田130等により固定されており、また表面電極119はボンディングワイヤ132により筺体内の電気配線136と接続している。
【0103】
筺体内の電気配線136は、この筺体182を貫通して筺体の表面にまで延長されており(図示せず)、筐体182に固定されたリードピン138を介して外部に接続される電気配線ボード類への電気的接続を可能にしている。
【0104】
図17に、光ファイバから光を入力した時のクロストーク量を評価した結果を示す。この評価は、光半導体素子100を図16に示す筐体182に搭載し、窓蓋による封止を行わない状態で、光ファイバを用いて受光部140に光入力することにより実施した。ここで入力光の波長は1.55μmとし、室温環境で測定を行った。縦軸に示すクロストークの値は、入力素子における受光電流と隣接素子における受光電流の比をとったものである。測定に際し、受光部と光ファイバ端面の距離(z)を変化させて、クロストークの変化を観測した。
【0105】
上記実験の結果より、従来品における隣接クロストークが、z<600μmの領域で−35dB〜−42dBであったのに対し、本発明の素子を用いた場合は−45dB〜−52dB程度と、10dBのクロストーク改善が確認できたことは前述のとおりであるが(図4を参照)、さらに、2次元方向のクロストークについても本発明の隣接クロストークとほぼ同等な値であり、良好なクロストーク改善効果を確認することが出来た。
【符号の説明】
【0106】
100 光半導体素子
110 導電性半導体基板
112 光吸収層
114 導電性半導体層
116 絶縁膜
118 裏面電極
1182 チタン
1184 白金
1186 金
1187 第1の裏面電極
1188 第2の裏面電極
119 表面電極
120 拡散領域
130 金属半田
132 ボンディングワイヤ
134 電気配線板
136 電気配線
138 リードピン
140 受光部
150 入射光
152 基板内透過光
154 散乱光
156 全反射光
160 入力素子
162 隣接素子
170 クロストーク
171 電子
172 正孔
180 光モジュール
182 筐体
184 窓蓋
190 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性半導体基板と、
前記導電性半導体基板上に形成された光吸収層と、
前記光吸収層上に形成された導電性半導体層と
を備えた光半導体装置であって、
前記導電性半導体層が、前記導電性半導体基板と逆の導電型の拡散領域を複数備えることにより、前記光半導体装置には、アレイ状の受光素子が形成されており、
前記導電性半導体基板の底部に鏡面状の薄膜を備えたことを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、バリアメタルを含む裏面電極を備えることを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、パターン化されていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、パターン化されており、前記光半導体装置は、前記鏡面状の薄膜の底部にオーミック電極である第2の裏面電極が形成されたことを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、絶縁膜を備えることを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、前記絶縁膜と該絶縁膜の底部の裏面電極とを備えることを特徴とする光半導体装置。
【請求項7】
請求項5に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、前記絶縁膜と該絶縁膜の底部の裏面電極とを備え、パターン化されていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項8】
請求項5に記載の光半導体装置において、前記鏡面状の薄膜は、前記絶縁膜と該絶縁膜の底部の第1の裏面電極とを備え、パターン化されており、前記半導体装置は、前記鏡面状の薄膜の底部にオーミック電極である第2の裏面電極が形成されたことを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の光半導体装置が筐体に収納されたことを特徴とする光半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の光半導体装置において、前記受光素子が2次元に配置された構造を有することを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−156391(P2012−156391A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15580(P2011−15580)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】