説明

光反射性成形品及びその製造方法

【課題】
大型液晶表示装置等のバックライトユニットの薄型化、軽量化、光漏れ現象の防止、部材コストと組立コストの削減、生産性の向上に最適な成形品、すなわち、フィルム又はシートから得られた光反射板の周縁部に、外枠を一体成形してなる光反射性成形品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
光線反射率95%以上、光線透過率1.0%以下を有する熱可塑性樹脂フィルム又はシートから得られた光反射板、及び、該光反射板表裏の周縁部に射出成形により一体成形された熱可塑性樹脂外枠を有することを特徴とする大型液晶表示装置用光反射性成形品及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム又はシートの周縁部に外枠を形成してなる光反射性成形品及びその製造方法に関し、詳しくは、光線反射率95%以上、光線透過率1.0%以下のフィルム又はシートから得られた光反射板を金型キャビティ内に挟持し、次いで該金型キャビティ内へ熱可塑性樹脂を射出し、該光反射板表裏の周縁部に外枠を一体成形してなる光反射性成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂は、軽量性、成形加工性、耐熱性、機械的強度等に優れているので、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野をはじめ工業的に広く利用されている。例えば、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂に酸化チタン等の白色顔料を添加した樹脂組成物は、TFTを初めとするコンピュータの表示装置又はテレビ等の液晶表示装置のバックライト、照光式プッシュスイッチ、光電スイッチの反射板等の、高度の光線反射率が要求される表示装置に使用される光線反射板の材料として使用されている。尚、液晶の市場においては、パソコンやTVを中心に液晶表示装置の大型化が進むと同時に、薄型化、軽量化、輝度ムラの解消、部材コストと組立コストの低減、生産性の向上が強く求められている。
【0003】
このような要求に対応するため、製造工程を簡素化し、光の漏れ現象を防止できる液晶表示装置のバックライトアセンブリとして、四角状のモールドフレームと、前記モールドフレームの一側の角部に内設され、光を放出するランプと、前記ランプの一部を囲むようにモールドフレームの一側の角部に設けられた金属反射板と、前記ランプと並んでモールドフレームに設けられる導光板と、前記導光板の下部に位置する反射シートと、前記導光板の上部に載せられる複数個の拡散シート及びプリズムシートの上側に載せられる液晶パネルの全面に光を放出するように構成されたバックライトアセンブリにおいて、前記拡散シートとプリズムシートはそれぞれの縁部分が前記金属反射板及びモールドフレームの上端面の上側に延長して設けられるバックライトアセンブリが提案(特許文献1)されているが、製造工程の簡素化は不十分であった。また、液晶表示装置のバックライト又はフロントライト用の小型、軽量の照明装置として、面状導光板とこの導光板を保持するためのフレームとが樹脂で一体に形成され、面状導光板の光入射側面以外の外郭に相当する位置には、フレームと区画するための区画層が設けられ、光源からの光を光入射面から入射させ面状導光板の光出射面より出射させる面光源装置も提案(特許文献2)されているが、パソコンやTVの大型面光源装置としては光の減衰の影響を受けやすい点で不適で、反射板とフレームの一体成形に関する記載はなかった。
【特許文献1】特開2003−075837号公報
【特許文献2】特開2004−253306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる現状に鑑みなされたものであって、その目的は、大型液晶表示装置等のバックライトユニットの薄型化、軽量化、光漏れ現象の防止、部材コストと組立コストの削減、生産性の向上に最適な成形品、すなわち、フィルム又はシートから得られた反射板の周縁部に、外枠を形成してなる光反射性成形品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、光線反射率95%以上、光線透過率1.0%以下の熱可塑性樹脂フィルム又はシートから得られた反射板を金型キャビティ内に挟持し、次いで該金型キャビティ内へ外枠形成用熱可塑性樹脂溶融物を射出し、該反射板表裏の周縁部に外枠を一体成形することにより、バックライトユニットの薄型化、軽量化、光漏れ現象の防止、部材コストと組立コストの削減、生産性の向上に寄与できる光反射特性に優れた成形品及びその製造方法を見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によって製造された、光反射板及びその表裏の周縁部に一体成形してなる外枠を有する、光反射性成形品は、大型液晶表示装置等のバックライトユニットの薄型化、軽量化、光漏れ現象の防止、輝度ムラの解消、部材コストと組立コストの低減、生産性の向上に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
熱可塑性樹脂フィルム又はシート
先ず、本発明において光反射板の材料である熱可塑性樹脂フィルム又はシート(以下、単に「シート」と略記することがある。)は、光線反射率95%以上かつ光線透過率1.0%以下のものであれば特に限定されないが、液晶表示装置等のバックライトユニットの大型化、薄肉化にともなってシートの使用環境温度が高くなっているので、耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂が好ましい。
【0008】
ポリカーボネート樹脂
本発明においてシートの原料となるポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステル等と反応させることによって得られる、燃焼時の滴下防止の目的では分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体である。ポリカーボネートの製造方法については、限定されるものではなく、公知の方法、例えばホスゲン法(界面重合法)又は溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。更に、溶融法で製造された、末端のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
【0009】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。また、難燃性をさらに高める目的では、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0010】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン)−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物、又は3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等を、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部に代えて用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0011】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、芳香族モノヒドロキシ化合物を用いればよく、具体的には、m−又はp−メチルフェノール、m−又はp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。難燃性をさらに高める目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることもできる。また、芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2種以上の樹脂を混合して用いることもできる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、16,000〜30,000が好ましく、より好ましくは17,000〜23,000である。
【0012】
ポリエステル樹脂
本発明においてシートの原料となるポリエステル樹脂は、ジオールとジカルボン酸を縮重合反応させて得られるポリマーであり、ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が好ましく用いられ、またジオールとは、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等が好ましく用いられる。これらの中、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが特に好ましい。また、これらポリエステルはホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオールが挙げられ、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸が挙げられる。
【0013】
ポリエステル樹脂の分子量は、テトラクロロエタン/フェノール=5/5の混合溶媒中30℃で測定された極限粘度として、通常0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.4〜1.5dl/g、更に好ましくは0.5〜1.4dl/gである。
【0014】
光反射板
本発明において光反射板の厚みは、0.2〜3.0mmが好ましい。光反射板の厚みが0.2mm未満であると十分な剛性がなく、光反射板を金型キャビティ内に挟持し、次いで熱可塑性樹脂を光反射板表裏の周縁部に射出し一体成形する際、光反射板が変形し易く取り扱いが難しくなる。また、光反射板の厚みが3.0mmを超えると、バックライトユニットの薄型化、軽量化に反し、コスト的にも不利になる。
【0015】
本発明において、この光反射板の材料となるシートの光線反射率は95%以上であることが必要である。光線反射率が95%未満であると、光線反射用途において十分な輝度が得られない。また、シートの光線透過率は1.0%以下であることが必要である。光線透過率が1.0%を超えると光線反射用途において十分な輝度が得られにくい。
しかして、本発明において、「光線反射率」について解説するに、光源からの光が、物質に当たると、入射光は法線を中心に対称な角度で反射する場合と、いろいろな方向に拡散反射される場合があり、前者を鏡面反射(または正反射)、後者を拡散反射という。なお、これらの反射光の光量の入射光量に対する比率を反射率という。分光光度計での評価では、各波長ごとの反射率が測定されるが、本発明では可視光領域の500nmでの拡散反射率を光線反射率とする。光線透過率は、入射光量に対する透過光量の比を光線透過率とする。分光光度計での評価では、各波長ごとの透過率が測定されるが、本発明では800nmでの透過率を光線透過率とする。測定は、いずれも23℃で実施する。
【0016】
酸化チタン
上記のような光線反射率と光線透過率を有するシートを製造するためには、シートの原料となる熱可塑性樹脂中に、酸化チタンを3〜50重量%含有するように配合することが好ましい。熱可塑性樹脂中の酸化チタンが3重量%未満では、光線透過率が1.0%以上になり、十分な輝度が得られにくい。また、酸化チタンが50重量%を超えると、シート製造時の溶融粘度が高くなりすぎてシートの表面平滑性が劣り、光線反射率も低下し、さらに、機械的強度も低下する。
配合される酸化チタンは、塩素法で製造された酸化チタンが好ましい。塩素法で製造された酸化チタンは、硫酸法で製造された酸化チタンに比べて、白度等の点で優れている。酸化チタンの結晶形態としては、ルチル型の酸化チタンが好ましく、アナターゼ型の酸化チタンに比べ、白度、光線反射率及び耐候性の点で優れている。
【0017】
配合される酸化チタンの粒径は、0.05〜0.5μmのものが好ましく用いられる。粒子径が0.05μm未満であると遮光性及び光反射率が劣る傾向があり、0.5μmを超えると、遮光性及び光反射率が劣ると共に成形品表面に肌荒れを起こしたり、衝撃強度の低下を生じやすくなる。酸化チタンの粒子径は、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、最も好ましくは0.15〜0.35μmである。
【0018】
酸化チタンは、熱安定性の目的では、好ましくは、無機処理剤の量を低減するか又は、無機処理をしない酸化チタンを使用する。無機処理剤の量は酸化チタンに対し、2〜0重量%、好ましくは0%(無機処理無し)である。無機処理剤としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、これらの混合物等が用いられるが、シリカは吸水性が高く、水分の影響を受けやすいので、無機処理をする場合には、アルミナ、ジルコニアが好ましく、シリカを併用する場合はシリカの量が低いことが望ましい。
【0019】
酸化チタンは、有機化合物による表面処理をしたものであることが、熱安定性の点で好ましい。特に、無機処理をしない酸化チタンは、有機化合物による表面処理は必須である。表面処理剤としては、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基若しくはSi−H結合を有する有機シラン化合物又は有機シリコーン化合物等が挙げられる。特に好ましいのは、Si−H結合を有する有機シリコーン化合物である。この処理に使用する有機化合物の量は、酸化チタンに対して1〜5重量%、より好ましくは1.5〜3重量%である。
【0020】
難燃剤
本発明においてシートを構成する熱可塑性樹脂組成物には、難燃性を有するのに必要量の非ハロゲン系難燃剤を配合することが好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、非ハロゲン系燐化合物、シリコーン系化合物、有機スルホン酸金属塩等が挙げられる。
配合される燐系難燃剤は、分子中にリンを含む化合物であり、好ましくは、下記の一般式で表される燐系化合物が挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、r及びsは、それぞれ0又は1であり、mは1〜5の整数であり、Xはアリーレン基を示す。)
上記一般式で表される燐系化合物は、mが1〜5の縮合燐酸エステルであり、mが異なる縮合燐酸エステルの混合物として使用する場合については、mの値はそれらの混合物の平均値とする。Xはアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される基である。上記一般式で表される燐系化合物の具体例としては、XがビスフェノールAから誘導されたものである場合は、フェニル・ビスフェノール・ポリホスフェート、クレジル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・ビスフェノール・ポリホスフェート、キシリル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル−p−t−ブチルフェニル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ビスフェノールポリホスフェート、クレジル・キシリル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・ビスフェノールポリホスフェート等が挙げられる。特に好ましくは、フェニル・ビスフェノールポリホスフェートが挙げられる。
【0023】
シート中の燐系難燃剤の含有率は、2〜20重量%である。燐系難燃剤の含有率が2重量%未満であると難燃性が不十分であり、20重量%を超えると機械的物性が低下しやすい。シート中の燐系難燃剤の含有率は、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。
【0024】
配合されるシリコーン系化合物としては、種々のシリコーン、又はシリコーン含有化合物が含まれる。具体的には、シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーン、主鎖が分岐構造を有し、珪素に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物、芳香族基含有環状オルガノシロキサン及び直鎖状オルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物等が好ましく使用される。
【0025】
シート中のシリコーン系化合物の含有率は、0.1〜10重量%の範囲から選ばれる。シリコーン系化合物の含有率が0.1重量%未満であると、シートの難燃性、機械的強度、耐熱性が不十分となり易く、10重量%を超えるとシートの耐衝撃性やシートの成形加工性が不十分となり易く、難燃性も低下する傾向があり、いずれも好ましくない。シート中のシリコーン系化合物の好ましい含有率は、0.2〜8重量%であり、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0026】
配合される有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の塩を混合して使用することもできる。本発明は以下の理論に拘束されることはないが、これら有機スルホン酸金属塩は、芳香族ポリカーボネート樹脂の燃焼時に不燃ガス(二酸化炭素)を発生し、同時に分解・ゲル化による炭化層の生成を促進すると考えられる。
【0027】
脂肪族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ土類金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩等が挙げられる。
【0029】
シート中の有機スルホン酸金属塩含有率は、0.01〜5重量%である。有機スルホン酸金属塩の含有率が0.01重量%未満であると充分な難燃性が得られにくく、5重量%を超えると熱安定性が低下しやすい。有機スルホン酸金属塩の含有率は、好ましくは0.02〜3重量%であり、より好ましくは0.03〜2重量%である。
【0030】
ポリテトラフルオロエチレン
本発明において難燃性の付与されたシートは、熱可塑性樹脂に容易に分散し、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを含有することが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、種々市販されており、容易に入手することができる。例えば、三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロン等が市販されている。ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液の市販品としては、三井デュポンフロロケミカル(株)のテフロン30J、ダイキン化学工業(株)のフルオンD−1等が挙げられる。さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するポリテトラフルオロエチレン重合体も使用される。代表例として、三菱レイヨン(株)のメタブレンA−3800が挙げられる。
【0031】
シート中のポリテトラフルオロエチレンの含有率は、0.01〜1重量%である。ポリテトラフルオロエチレンの含有率が0.01重量%未満であると難燃性が不十分であり、1重量%を超えると成形品外観が低下しやすい。ポリテトラフルオロエチレンの含有率は、好ましくは0.02〜0.8重量%であり、より好ましくは0.05〜0.6重量%である。
【0032】
シート用の配合
本発明においてシートの原料である熱可塑性樹脂組成物には、上記の酸化チタン、難燃剤以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で衝撃改良剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク等の強化材又はチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。特に、本発明におけるシートの用途である光反射板用途には、要求される光反射特性を一層改善する為、蛍光増白剤を配合することが好ましい。
【0033】
本発明においてシート用に配合される蛍光増白剤は、シートを明るく見せるため、シート用樹脂組成物に加えられる顔料又は染料であり、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させる添加剤である。この点では、ブルーイング剤と似ているが、ブルーイング剤が黄色光を除去するのに対して、蛍光増白剤は紫外線を吸収し、そのエネルギーを可視部青紫色の光線に変えて放射する点で異なっている。一般的にはクマリン系、ナフトトリアゾリルスチルベン系、ベンズオキサゾール系、ベンズイミダゾール系、ジアミノスチルベンジスルホネート系等の蛍光増白剤が使用される。市販品としては、ハッコールケミカル(株)のハッコール PSR、ヘキストAGのHOSTALUX KCB、住友化学(株)のWHITEFLOUR PSN CONC等が使用される。シート中の蛍光増白剤の含有率は、0.005〜0.2重量%の範囲が好ましい。
【0034】
本発明においてシート用樹脂組成物は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤を含有することが好ましい。特に、5%減量温度が300℃以上である紫外線吸収剤を配合することによりシートの押出成形時の不良現象、たとえばモールドデポジット、シルバーストリーック、ロール汚れ等を抑制し、成形品の使用時の耐光性を向上させることができる。
【0035】
シートの製造
本発明において、光反射板の材料となる熱可塑性樹脂フィルム又はシートの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の種々の方法が採用できる。例えば、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂を1軸又は2軸の押出機で加熱、可塑化してスクリューで押し出しながらシート成形用のダイスへ供給し賦形するTダイキャスト法、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、加熱ロールで樹脂組成物を加熱溶融し、ロールとロールの隙間から平面状にしたシートを取り出すカレンダーロール法等が利用可能である。得られたシートはそのままで十分使用可能であるが、低収縮や低ソリの目的で必要があれば、1軸又は2軸に延伸したシートとすることも可能である。シートの平面性、成形の容易さ、工程の簡略さから、Tダイを用いたTダイキャスト法が特に好ましいシートの製造方法である。
【0036】
光反射板
このようにして製造されたシート、特にポリカーボネート樹脂シート及びポリエステル樹脂シートは優れた熱成形性を有し、特定の熱成形条件により光源の本数、形状に合わせた反射面を有する光反射板を製造することができる。
また、本発明において熱成形法は特に限定されない。例えば、プレス成形、真空成形、真空圧空成形、熱板成形、波板成形等を用いることができる。また一般的に真空成形と総称される成形法においても、ドレープホーミング法、マッチドダイ法、プレッシャーバブルプラグアシスト真空成形法、プラグアシスト法、真空スナップバック法、エアースリップホーミング、トラッップドシート接触加熱−プレッシャーホーミング法、単純圧空成形法等が挙げられる。この真空成形の圧力は1MPa 以下で適宜行えばよい。
ここで、熱成形時のシート加熱温度は、シート表面温度で160〜200℃、好ましくは170〜200℃であり、押出機ダイ出口でのシート幅に対するロールプレス後のシート幅の比で表した平均展開倍率は1.2〜2倍、好ましくは1.2〜1.8倍である。シート加熱温度が160℃未満であると熱成形が困難であり、200℃を超えるとシート表面に不均質な肌荒れが生じ易くなる。また平均展開倍率が1.2倍未満であると光源の形状に合わせた反射板の設計が難しくなり、2倍を超えると熱成形品である光反射板の厚みむらが大きくなって、反射率のむらが生じやすい。
なお、上記熱成形に用いるシートは、予備乾燥をして用いることが好ましく、吸湿による発泡現象を防ぐことができる。この際の乾燥条件は、乾燥機温度で120〜140℃、2〜10時間の乾燥が適当である。
【0037】
本発明においては、上記のシート製造条件及び/又は熱成形条件を適宜調整することにより、また場合によっては、シート原料樹脂組成物の組成を調整することにより、得られる光反射板の厚みむらが0.2mm以下である成形品を得ることが好ましい。ここで、反射板の厚みむらとは厚みの最大値と最小値の差のことであり、押出成形の場合はシートの幅方向の位置によって差が生じることが多く、厚み計によって測定される。この値が0.2mmを超えると均一な面反射特性が得られない。
また、光反射板の光反射面の形状は、光源の形状、個数及び特性に合わせ適宜選定すればよい。例えば、直下型液晶バックライト用の光反射板の場合は、特開2000−260213号公報、特開2000−356959号公報、特開2001−297613号公報及び特開2002−32029号公報、特開2002−156512号公報、特開2004−102119号公報等に提案されているような形状から選択することもできる。すなわち、添付の図4(a)、(b)、(c)に示されるような、規則的な凹凸を有する光反射面の形状であってもよい。
【0038】
本発明において、光反射板は、光線反射率95%以上を有する熱可塑性樹脂フィルム又はシート及びその熱成形品だけでなく、上記のシートの製造又は熱成形の際に、使用目的に応じその反射特性を阻害しない範囲で、該シート又はその熱成形品の表面に、他の機能性層を積層して設けたものであることができる。
例えば、光反射面(該シート又はその熱成形品の表面のうち、光源に近い面)に、帯電防止剤及び/又は耐光剤を含む、透明なポリカーボネート樹脂層や、アクリル樹脂層を積層したものであることができる。この際積層される樹脂層の厚みは、500μm以下が好ましく、該樹脂層の100μm厚み相当での全光線透過率は85%以上が好ましい。
また、光反射面の反対面に、光遮蔽材、構造補強のための層を積層したものであることもできる。ここで光遮蔽材とは薄肉のアルミ等の金属層、塗料等が挙げられ、構造補強層としてはポリカーボネート系樹脂層が挙げられる。さらに、熱拡散のために、アルミ箔等の金属層を積層してもよい。これら機能性層の積層は、塗布、蒸着、押出ラミネーション、ドライラミネーション、共押出、その他任意の方法によることができる。
【0039】
熱可塑性樹脂外枠
本発明において、外枠形成用熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できるが、耐候性、耐熱性、機械的強度等の点からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。外枠形成用熱可塑性樹脂として使用されるポリカーボネート樹脂に、上記シートに使用されるポリカーボネート樹脂と同種のものを使用し、シートが含有していると同種の難燃剤や酸化チタンを配合することにより、外枠にも、難燃性を賦与し、光線反射率が95%以上で光線透過率が1.0%以下の光反射特性を付与することができるので好ましい。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、衝撃改良剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、その他難燃剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク等の強化材又はチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することもできる。特に、本発明において、外枠形成用熱可塑性樹脂組成物に要求される光反射特性を付与する目的には、蛍光増白剤を酸化チタンと共に配合することが好ましい。
【0040】
光反射性成形品及びその使用
次に、上記シートから得られた光反射板表裏の周縁部に外枠を一体成形してなる大型液晶表示装置用光反射性成形品(以下、単に「本発明の成形品」と略記することがある。)の製造方法を、添付の図面に従って説明する。
図1は、本発明の成形品の製造に使用する金型の模式的縦断面図であり、図2は、本発明の成形品の模式的縦断面図であり、図3は、本発明の成形品の使用態様を示す模式的縦断面図である。図中、1は光反射板、2はキャビティ、3はランナー、4は反射板固定板、5は耐熱性弾性体、6は反射枠、10は金型可動側、11は金型固定側、12は光源、13はバックライトモジュール用各種シートを示す。
図1は、便宜上、金型キャビティ内に光反射板(1)を装着し、金型(10、11)を閉じた、溶融樹脂射出前の状態で示した。従って、この金型を使用して本発明の成形品を製造する際には、先ず、光反射板(1)を、図1の模式的縦断面図が図示するように、外枠成形用金型キャビティ内の所定位置に装着することが必要である。
この所定位置への装着を確実にするために、一対の反射板固定板(4)が金型の可動側(10)と固定側(11)に装備されている。金型を閉じた状態で、この一対の反射板固定板(4)が、光反射板(1)を挟持して溶融樹脂射出の際に所定位置からズレないように固定できるよう、該固定板(4)の先端面は充分な接触面積を有し、また、該一対の固定板の先端面間の距離が、該光反射板(1)の挟持される周縁部の厚みよりやや小さくなるように、微調整可能に装備される。
また、図示の反射板固定板(4)は、上記の光反射板(1)を挟持し所定位置に固定する機能だけでなく、その側面が所望の反射枠(6)内縁部の形状を形成する金型の一部として機能するように設計されている。すなわち、図1の金型を用いて製造される本発明の成形品は、図2に示すように、平面状の光反射板(1)とその周縁に一体成形された反射枠(6)からなり、光反射板(1)の上下には、後記する他の部材を収納、設置するための、空間部も形成されなければならない。この目的には、反射板固定板(4)の外側面が用いられ、溶融樹脂の射出されるキャビティ(2)が区画、分離される。
一方、このようにして分離された空間部には、光反射板(1)を金型の可動側(10)の反射板固定板(4)上に載置する前に、該光反射板(1)の表面を保護する目的で、図示のように、シリコンゴム等から成る耐熱性弾性体(5)を挿嵌し、金型を閉じたとき両者の表面が密着するようにするのが好ましい。これにより、射出成形では達成できない形状の成形品においても、シート化とインサート成形を組み合わせることで達成することができる。
金型を閉じた後には、反射枠(6)を形成するキャビティ(2)にランナー(3)から、溶融樹脂を射出し、本発明の成形品を成形する。なお、外枠形成のために溶融した熱可塑性樹脂を射出する際、射出圧力をできるだけ低圧にすることが、光反射板(1)の変形防止の観点から望ましい。そのために、外枠成形用金型のゲート径又はランナー(3)の径を大きくすることも好ましい。また、射出成形に際し、溶融樹脂が流動性を失う前に、該キャビティ内に圧力2〜50MPaの加圧ガス体を注入して、反射枠(6)に中空構造を形成してもよい。加圧ガス体としては、常温常圧で気体の物質であり、射出充填された溶融樹脂に対して不活性であれば、特に制限はないが、安全性及び経済性を考慮すると、窒素ガスが好ましい。加圧ガス体の圧力が、2MPa未満では、所望の中空構造が形成できず、表面にヒケを生じる場合がある。一方、50MPaを超えると、金型からの成形品の離型が問題となったり、加圧ガス体が光反射板(1)の挟持部から漏れ出すことが問題となる。好ましい加圧ガス体の圧力は、4〜40MPaである。
【0041】
上記の方法で製造された本発明の成形品の反射枠(6)部分には、突起、穴、段差、溝等を射出成形時又は後に設けることにより、次のような利点が生じる。例えば、本発明の光反射性成形品が大型液晶表示(ディスプレイ)装置の反射板として使用される場合、図3に示すように、冷陰極管やLED等の光源(12)だけでなく、プリズムシート、偏光分離シート、拡散シート、EMI(電磁波シールド)シート、拡散板等のバックライトモジュール用各種シート(13)等の他の部材を収容した、いわゆるバックライトモジュール(14)を構成することができる。このバックライトモジュールを組立てる際に、諸部材の位置決めや固定枠としての機能を有する。さらに、好ましくは、本発明の成形品の外枠部分にも、前述のように、光線反射率が95%以上で光線透過率が1.0%以下のリフレクターの機能を持たせた、反射枠(6)とすることにより、光漏れ現象の防止による輝度の向上、薄型化、軽量化、部材コストと組立コストの削減、生産性の向上が可能となる。
さらには、大型液晶表示(ディスプレイ)装置を構成するために、偏光板、ガラス基板、カラーフィルター、液晶層、配向膜、透明電極等の部材からなる液晶モジュール(図示せず)との組合せ使用に際しても、同様な利点が期待できる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
以下の例では、下記1)〜9)の材料を使用した。
1) 芳香族ポリカーボネート樹脂 ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンS−3000、粘度平均分子量21000(以下、PCと略称する。)
2) 酸化チタン1 塩素法で製造された平均粒子径0.21μmの酸化チタンにハイドロジェンシロキサンを2.5重量%配合し、攪拌しながら温度を120℃まで上昇させ、1時間保持後、温度を下げて取り出した。
3) 酸化チタン2 塩素法で製造された平均粒子径0.21μmの酸化チタンに対してアルミナ2重量%とシリカ1.5重量%を用いて処理した。この酸化チタン処理物に、ハイドロジェンシロキサンを2.5重量%配合し、攪拌しながら温度を120℃まで上昇させ、1時間保持後、温度を下げて取り出した。
4) 難燃剤
a)シリコーン 60000cStの粘度を有するポリジメチルシロキサンをシリカに担持した粉末 東レダウコーニング(株)製、トレフィルF202、ポリジメチルシロキサン量60重量%
b)金属塩 パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩 三菱マテリアル(株)製、KFBS
5) 滴下防止剤 ポリテトラフルオロエチレン ダイキン(株)製、ポリフロンF201L(以下、PTFEと略称する。)
6) 蛍光増白剤 3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン ハッコールケミカル(株)製、ハッコール PSR
7) 紫外線吸収剤 2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール) 旭電化(株)製、アデカスタブ LA−31、 5%減量温度369℃(以下、UV剤と略称する。)
8) 安定剤
a)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト 旭電化(株)製、アデカスタブ PEP−36(以下、PEP−36と略称する。)
b)ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)) チバスペシャリティケミカルズ(株)製、Irganox1010(以下、IR−1010と略称する。)
9)離型剤
a)ステアリン酸 日本油脂(株)製、NAA180(以下、NAA180と略称する。)
b)ペンタエリスリトールジステアレート 日本油脂(株)製、H−476D(以下、H−476Dと略称する。)
【0043】
[ペレットの製造]
<製造例1〜4及び参考例1〜3>
芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、それぞれ、表−1に示す種類及び量の、酸化チタン、安定剤(PEP−36及びIR−1010)、難燃剤(シリコーン又は金属塩)、蛍光増白剤、UV剤、PTFEを添加し、タンブラーにて20分混合後、30mm二軸押出機にて、シリンダー温度280℃で溶融、混練、押し出してペレットとした。
その際、参考例1においては、製造例1の酸化チタン1に代えて酸化チタン2を使用した以外は、製造例1と同様の方法でペレットとした。
【0044】
[シートの製造]
シートの製造には、スクリュー径65mmでスクリューのL/D35のベント付単軸押出機を用い、シリンダー温度280℃とした。上記の製造例又は参考例で製造した所定のペレットは、この押出機で溶融混練され、押出機先端のTダイを通過し、鏡面仕上げされた3本のポリッシングロール(1番ロール温度110℃、2番ロール温度130℃、3番ロール温度180℃に設定)に導かれた。最初に流入する1番ロール間隔にて、バンクを形成した後、2番、3番ロールを通過させてシート化した。引き取り速度は1.2m/分、引き取り用ピンチロール速度1.6m/分として、1.0mm厚のシートを製造した。
製造したシートについて、光線透過率、光線反射率及び外観を評価し、その結果を表−1に示した。
【0045】
[評価基準1]
「光線透過率」は日本電色工業(株)SE−2000を使用して波長800nmの光線の透過率を、「光線反射率」は島津製作所(株)UV−3100PCを使用して波長500nmの光線の反射面における反射率を測定した。測定温度は、いずれも23℃とした。また、「外観」は、目視により、次の基準で3段階に判定した。
良好:○、 やや不良:△、 不良:×。
【0046】
[成形品の製造]
<実施例1>
上記製造例1のペレットから上記シートの製造に従って得られたシート1と、上記製造例2のペレットとを使用して、成形を実施した。
すなわち、図1に示す構造の金型(10,11)を取り付けた350Ton(34.3GPa)の成形機に、製造例1のペレットから得られたシート1より切り出した、20cm×30cmのシートを光反射板(1)として金型の可動側(10)の反射板固定板(4)上に載置し、金型を閉じ、反射枠を形成するキャビティ(2)にランナー(3)から、280℃のシリンダー温度にて、製造例2のペレットを溶融、射出成形した。金型を閉じた際、一対の反射板固定板(4)は、光反射板(1)を挟持して溶融樹脂射出の際に所定位置からズレないように固定し、また、所望の反射枠(6)内縁部の形状を形成する金型の一部として機能するように設計された。また、光反射板(1)を金型の可動側(10)の反射板固定板(4)上に載置する前に、該反射板固定板(4)が区画する空間内には、該光反射板(1)の表面を保護する目的で、耐熱性弾性体(5)を挿嵌し金型を閉じたとき両者の表面が密着するようにした。
射出成形後、金型から離型し、取り出された成形品は、図2に示すように、光反射板(1)表裏の周縁部に一体成形された樹脂製反射枠(6)を有する光反射性成形品となった。得られた成形品について、外観、密着性、厚みむら、難燃性及び光漏れの評価を行った結果も、併せて表−1に示した。
【0047】
[評価基準2]
a)光線透過率及び光線反射率:
上記評価基準1と同様の手順で測定評価したが、外枠の測定試料は、外枠用の樹脂組成物を使用し、30mm×30mm×2mm(厚さ)の試験片を成形し、その成形品について、透過率及び反射率を測定した。
b)外観:
目視にて成形品の外観を観察し、上記評価基準1と同様の基準で判定した。
c)密着性:
成形品における反射板と外枠との密着性を、目視で観察し、外枠との融合部位に少しでも反射板のハガレが認められれば不良と評価し、全くハガレが認められなければ良好と評価した。
d)反射板の厚みむら:
反射板上の無作為に選んだ10ヶ所において、厚み計により厚みを測定し、最大厚みと最小厚みの差を求めた。
e)難燃性:
樹脂組成物を用いて、射出成形機により1.6mm厚のUL所定試験片を成形し、UL−94の20mm垂直燃焼試験に準じて難燃性を評価した。
f)光漏れ:
成形品に、反射板の反射面に鉛直な方向から、冷陰極管(管径4mm、6mmA)の光をあて、裏面から光の漏れの有無を観察した。
【0048】
<実施例2>
上記実施例1において、製造例2のペレットに代えて製造例4のペレットを使用した以外は、実施例1と同様にして、光反射性成形品を得た。得られた成形品についての評価結果も、併せて表−1に示した。
【0049】
<実施例3>
上記実施例1において、製造例1のペレットから得られたシート1に代えて製造例3のペレットから得られたシート2を使用し、かつ、製造例2のペレットに代えて製造例4のペレットを使用した以外は、実施例1と同様にして、光反射性成形品を得た。得られた成形品についての評価結果も、併せて表−1に示した。
【0050】
<比較例1>
上記実施例1において、製造例1のペレットから得られたシート1に代えて参考例1のペレットから得られたシート3を使用した以外は、実施例1と同様にして、光反射性成形品を得た。得られた成形品についての評価結果も、併せて表−1に示した。
【0051】
<比較例2>
上記実施例1において、製造例1のペレットから得られたシート1に代えて参考例2のペレットから得られたシート4を使用した以外は、実施例1と同様にして、光反射性成形品を得た。得られた成形品についての評価結果も、併せて表−1に示した。
【0052】
<比較例3>
上記実施例1において、製造例2のペレットに代えて参考例3のペレットを使用した以外は、実施例1と同様にして、光反射性成形品を得た。得られた成形品についての評価結果も、併せて表−1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
上記の表−1から、以下のことが判明する。
a)酸化チタン1を用いた実施例1〜3においては、すべて反射板の光線反射率が十分であり、成形品の外観、密着性が良好であり、厚みむらも少ないのに対して、酸化チタン2を用いた比較例1は反射率が低く、外観、密着性が不良であり、厚みむらも増加傾向にある。なお、酸化チタン1の使用量を下限以下の少量とした比較例2は、反射率が減少し、透過率が増大し、輝度が低下して、反射特性の低下が著しく、光漏れが防止できない。
b)外枠1,2では、光線透過率を大きく低減した配合を用いているので、光漏れを完全に防止することができた。バックライトモジュール化した場合に輝度の向上が期待できる。外枠3では、酸化チタン1の使用量を下限以下の少量とした結果、比較例3では、反射率が減少し、透過率が増大し、反射シート周辺部輝度が低下し、光漏れが防止できない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光反射性成形品は、光反射特性に優れており、バックライトユニットの部品点数の低減ができるので、特に大型TV等の反射板材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の成形品の製造に使用する金型の模式的縦断面図
【図2】本発明の成形品の模式的縦断面図
【図3】本発明の成形品の使用態様を示す模式的縦断面図
【図4】光反射板の別例を示す模式的縦断面図
【符号の説明】
【0057】
1 光反射板
2 キャビティ
3 ランナー
4 反射板固定板
5 耐熱性弾性体
6 反射枠
10 金型可動側
11 金型固定側
12 光源
13 バックライトモジュール用各種シート
14 バックライトモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線反射率が95%以上、光線透過率が1.0%以下である熱可塑性樹脂フィルム又はシートから得られた光反射板、及び、該光反射板表裏の周縁部に射出成形により一体成形された熱可塑性樹脂外枠を有することを特徴とする大型液晶表示装置用光反射性成形品。
【請求項2】
上記フィルム又はシートを構成する熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂又はポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
光反射板の厚みが0.2〜3.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形品。
【請求項4】
上記フィルム又はシートが、酸化チタン3〜50%を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項5】
上記フィルム又はシートを構成する熱可塑性樹脂が、難燃性を有するのに必要量の難燃剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項6】
外枠を構成する熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項7】
外枠の光線反射率が95%以上、光線透過率が1.0%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項8】
外枠が、難燃性を有するのに必要量の難燃剤を含有する熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項9】
光線反射率95%以上、光線透過率が1.0%以下である熱可塑性樹脂フィルム又はシートから得られた光反射板を金型キャビティ内に挟持し、次いで該金型キャビティ内へ外枠形成用熱可塑性樹脂溶融物を射出し、該光反射板表裏の周縁部に外枠を一体成形することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光反射性成形品の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−220820(P2006−220820A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32972(P2005−32972)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】