説明

光反射性異方性導電接着剤及び発光装置

【課題】発光ダイオード(LED)素子等の発光素子を配線板に異方性導電接着剤を用いてフリップチップ実装して発光装置を製造する際に、製造コストの増大を招くような光反射層をLED素子に設けなくても、発光効率を改善でき、しかも初期ダイシェア強度が高く、発光装置の長期使用によりダイシェア強度やLED全光束量が大きく低下することのない異方性導電接着剤を提供する。
【解決手段】発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤100は、シリコーン樹脂と硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物11、導電粒子10及び光反射性絶縁粒子を含有する。光反射性絶縁粒子は、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子である。シリコーン樹脂は、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤、その接着剤を用いて発光素子を配線板に実装してなる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)素子を使用した発光装置が広く使用されており、旧タイプの発光装置の構造は、図3に示すように、基板31上にダイボンド接着剤32でLED素子33を接合し、その上面のp電極34とn電極35とを、基板31の接続端子36に金ワイヤ37でワイヤボンディングし、LED素子33全体を透明モールド樹脂38で封止したものとなっている。ところが、図3の発光装置の場合、LED素子33が発する光のうち、上面側に出射する400〜500nmの波長の光を金ワイヤ37が吸収し、また、下面側に出射した光の一部がダイボンド接着剤32により吸収されてしまい、LED素子33の発光効率が低下するという問題がある。
【0003】
このため、図4に示すように、LED素子33をフリップチップ実装することが提案されている(特許文献1)。このフリップチップ実装技術においては、p電極34とn電極35とにバンプ39がそれぞれ形成されており、更に、LED素子33のバンプ形成面には、p電極34とn電極35と絶縁されるように光反射層40が設けられている。そして、LED素子33と基板31とは、異方性導電ペースト41や異方性導電フィルム(図示せず)を用い、それらを硬化させて接続固定される。このため、図4の発光装置においては、LED素子33の上方へ出射した光は金ワイヤで吸収されず、下方へ出射した光の殆どは光反射層40で反射して上方に出射するので、発光効率(光取り出し効率)が低下しない。
【0004】
また、LEDを基板へ異方性導電接続するための異方性導電ペーストや異方性導電フィルムに配合するバインダー樹脂として、比較的良好な耐熱性、耐光性及び接続信頼性を有するエポキシ樹脂(特許文献2)が広く使用されてきたが、エポキシ樹脂は、その分子構造上、図5Aのように近紫外線波長域から近赤外領域にまで亘って光吸収が生じ、また、熱や光が長期に亘り印加(例えば、120℃でUV連続照射)されると、分子鎖の切断や酸化が生じ、図5Bの矢印に示すように、光透過率スペクトルが大きく変化し、発光装置の長期使用により光反射率とLED全光束量とが大きく低下するという問題があった。この傾向は、近年のLED素子の高出力化・短波長化の進行に伴い、顕著となっている。
【0005】
このため、近年ではそのような欠点の少ないシリコーン樹脂の使用が試みられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−168235号公報
【特許文献2】特開2010−24301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術ではLED素子33に光反射層40を、p電極34とn電極35と絶縁するように金属蒸着法などにより設けなければならず、製造上、コストアップが避けられないという問題があった。
【0008】
他方、光反射層40を設けない場合には、硬化した異方性導電ペーストや異方性導電フィルム中の金、ニッケルあるいは銅で被覆された導電粒子の表面は茶色乃至は暗茶色を呈し、また、導電粒子を分散させているエポキシ樹脂バインダー自体も、その硬化のために常用されるイミダゾール系潜在性硬化剤のために茶色を呈しており、発光素子が発した光の発光効率(光取り出し効率)を向上させることが困難であるという問題もあった。
【0009】
また、異方性導電ペーストや異方性導電フィルムの熱硬化性樹脂として使用するシリコーン樹脂は、発光装置の長期使用により、光反射率やLED全光束量やダイシェア強度が大きく低下することはないが、異方性導電接続直後の初期ダイシェア強度自体がそもそも低いという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、発光ダイオード(LED)素子等の発光素子を配線板に異方性導電接着剤を用いてフリップチップ実装して発光装置を製造する際に、製造コストの増大を招くような光反射層をLED素子に設けなくても、発光効率を改善でき、しかも初期ダイシェア強度が高く、発光装置の長期使用によりダイシェア強度やLED全光束量が大きく低下することのない異方性導電接着剤、その接着剤を使用して発光素子を配線板にフリップチップ実装してなる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、異方性導電接着剤そのものに光反射機能を持たせれば、発光効率を低下させないようにできるとの仮定の下、異方性導電接着剤に、光反射性絶縁粒子を配合することにより、発光素子の発光効率を低下させないようにできること、また、異方性導電接着剤に配合するシリコーン樹脂として、アルケニルグルシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンで変性したものを使用することにより、初期ダイシェア強度が高く、発光装置を長期使用しても光反射率やLED全光束量やダイシェア強度を大きく低下させないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤であって、シリコーン樹脂と硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有し、該シリコーン樹脂が、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンである光反射性異方性導電接着剤を提供する。
【0013】
また、本発明は、この光反射性異方性導電接着剤の特に好ましい態様として、(a)導電粒子が、金属材料により被覆されているコア粒子と、その表面に酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ケイ素粒子又は酸化アルミニウム粒子から選択された少なくとも一種の無機粒子から形成された光反射層とからなる光反射性導電粒子である光反射性異方性導電接着剤、及び(b)グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンが、アルキルハイドロジェンポリシロキサンに対し、アルケニルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンとをハイドロシリレーションさせて得られたものであり、硬化剤が酸無水物系硬化剤である光反射性異方性導電接着剤を提供する。
【0014】
また、本発明は、上述の光反射性異方性導電接着剤を介して、発光素子がフリップチップ方式で配線板に実装されてなる発光装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する本発明の光反射性異方性導電接着剤は、光反射性絶縁粒子を含有する。従って、この光反射性異方性導電接着剤は光を反射することができる。特に、光反射性絶縁粒子が、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子、又は鱗片状もしくは球状金属粒子の表面を絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆金属粒子である場合には、粒子自体がほぼ白色であるため、可視光に対する光反射特性の波長依存性が小さく、従って、発光効率を向上させることができ、しかも発光素子の発光色をそのままの色で反射させることができる。
【0016】
また、更に、導電粒子として、金属材料で被覆されているコア粒子と、その表面に酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ケイ素粒子又は酸化アルミニウム粒子から形成された白色〜灰色の光反射層とから構成されている光反射性導電粒子を使用した場合、この光反射性導電粒子自体が白色〜灰色を呈しているため、可視光に対する光反射特性の波長依存性が小さく、従って、発光効率を更に向上させることができ、しかも発光素子の発光色をそのままの色で反射させることができる。
【0017】
また、本発明の光反射性異方性導電接着剤は、シリコーン樹脂としてグリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンを使用する。このため、初期ダイシェア強度が高く、発光装置の長期使用により光反射率やLED全光束量やダイシェア強度が大きく低下することはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、本発明の光反射性異方性導電接着剤に使用する光反射性導電粒子の断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の光反射性異方性導電接着剤に使用する光反射性導電粒子の断面図である。
【図2】図2は、本発明の発光装置の断面図である。
【図3】図3は、従来の発光装置の断面図である。
【図4】図4は、従来の発光装置の断面図である。
【図5A】図5Aは、異方性導電接着剤に使用するエポキシ樹脂硬化物の光波長に対する光透過率を示すチャートである。
【図5B】図5Bは、異方性導電接着剤に使用するエポキシ樹脂硬化物の加熱UV照射後の光波長に対する光透過率を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光反射性異方性導電接着剤は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用するものであり、少なくともシリコーン樹脂と硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子から構成されており、その特徴は、光反射性絶縁粒子を含有すること、並びにシリコーン樹脂として、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンを使用することである。まず、光反射性絶縁粒子について説明する。
【0020】
本発明において、光反射性絶縁粒子は異方性導電接着剤に入射した光を外部に反射するためのものである。
【0021】
なお、光反射性を有する粒子には、金属粒子、金属粒子を樹脂被覆した粒子、自然光の下で灰色から白色である金属酸化物、金属窒素化物、金属硫化物等の無機粒子、樹脂コア粒子を無機粒子で被覆した粒子、粒子の材質によらず、その表面に凹凸がある粒子が含まれる。しかし、これらの粒子の中で、本発明で使用できる光反射性絶縁粒子には、絶縁性を示すことが求められている関係上、金属粒子は含まれない。また、金属酸化物粒子のうち、ITOのように導電性を有するものは使用できない。また、光反射性且つ絶縁性を示す無機粒子であっても、その屈折率が使用する熱硬化性樹脂組成物の屈折率よりも低いものは使用できない。
【0022】
このような光反射性絶縁粒子の好ましい具体例としては、酸化チタン(TiO)、窒化ホウ素(BN)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子が挙げられる。中でも、高屈折率の点からTiOを使用することが好ましい。
【0023】
光反射性絶縁粒子の形状としては、球状、鱗片状、不定形状、針状等でもよいが、光反射効率を考慮すると、球状、鱗片状が好ましい。また、その粒径としては、球状である場合、小さすぎると光反射率が低くなり、大きすぎると導電粒子による異方性接続を阻害する傾向があるので、好ましくは0.02〜20μm、より好ましくは0.2〜1μmであり、鱗片状である場合には、長径が好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜50μm、短径が好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、厚さが好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0024】
無機粒子からなる光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きいことが好ましく、少なくとも0.02程度大きいことがより好ましい。これは、屈折率差が小さいとそれらの界面での光反射効率が低下するからである。
【0025】
光反射性絶縁粒子としては、以上説明した無機粒子を使用してもよいが、鱗片状又は球状金属粒子の表面を透明な絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆金属粒子を使用してもよい。金属粒子としては、ニッケル、銀、アルミニウム等を挙げることができる。粒子の形状としては、無定型、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。特に、好ましいものは、光の反射率の点から鱗片状銀粒子である。
【0026】
光反射性絶縁粒子としての樹脂被覆金属粒子の大きさは、形状によっても異なるが、一般に大きすぎると、導電粒子による異方性接続を阻害するおそれがあり、小さすぎると光を反射しにくくなるので、好ましくは球状の場合には粒径0.1〜30μm、より好ましくは0.2〜10μmであり、鱗片状の場合には、長径が好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜50μmで厚みが好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。ここで、光反射性絶縁粒子の大きさは、絶縁被覆されている場合には、その絶縁被覆も含めた大きさである。
【0027】
このような樹脂被覆金属粒子における当該樹脂としては、種々の絶縁性樹脂を使用することができる。機械的強度や透明性等の点からアクリル系樹脂の硬化物を好ましく利用することができる。より好ましくは、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物などのラジカル重合開始剤の存在下で、メタクリル酸メチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとをラジカル共重合させたアクリル系樹脂を挙げることができる。この場合、2,4−トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤で架橋されていることが更に好ましい。また、樹脂被覆金属粒子を構成する金属粒子としては、予めシランカップリング剤でγ−グリシドキシ基やビニル基等を金属表面に導入しておくことが好ましい。
【0028】
このような樹脂被覆金属粒子は、例えば、トルエンなどの溶媒中に金属粒子とシランカップリング剤とを投入し、室温で約1時間攪拌した後、ラジカルモノマーとラジカル重合開始剤と、必要に応じて架橋剤とを投入し、ラジカル重合開始温度に加温しながら撹拌することにより製造することができる。
【0029】
以上説明した光反射性絶縁粒子の、光反射性異方性導電接着剤中の配合量は、少なすぎると十分な光反射を実現することができず、また多すぎると、併用している導電粒子に基づく接続が阻害されるので、熱硬化性樹脂組成物に対し、好ましくは1〜50体積%、より好ましくは2〜25体積%である。
【0030】
本発明の光反射性異方性導電接着剤を構成する導電粒子としては、異方性導電接続用の従来の導電粒子において用いられている金属の粒子を利用することができる。例えば、金、ニッケル、銅、銀、半田、パラジウム、アルミニウム、それらの合金、それらの多層化物(例えば、ニッケルメッキ/金フラッシュメッキ物)等を挙げることができる。中でも、金、ニッケル、銅は、導電粒子を茶色としてしまうことから、本発明の効果を他の金属材料よりも享受することができる。このような金属粒子の好ましい大きさ・形状としては、0.2〜5μmの球状粒子、あるいは0.2〜0.4μm厚で直径1〜10μmのフレーク状粒子が挙げられる。
【0031】
また、導電粒子として、樹脂粒子を金属材料で被覆した金属被覆樹脂粒子を使用することができる。このような金属被覆樹脂粒子を構成する樹脂粒子としては、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが挙げられる。樹脂粒子を金属材料で被覆する方法としても従来公知の方法を採用することができ、無電解メッキ法、電解メッキ法等を利用することができる。また、被覆する金属材料の層厚は、良好な接続信頼性を確保するに足る厚さであり、樹脂粒子の粒径や金属の種類にもよるが、通常、0.1〜3μmである。
【0032】
また、金属被覆樹脂粒子の粒径は、小さすぎると導通不良が生じ、大きすぎるとパターン間ショートが生じる傾向があるので、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μm、特に好ましくは3〜5μmである。この場合、金属被覆樹脂粒子の形状としては球状が好ましいが、フレーク状、ラクビーボール状であってもよい。
【0033】
特に、本発明においては、上述したような導電粒子に対し光反射性を付与し、光反射性導電粒子とすることが好ましい。図1A、図1Bは、このような光反射性導電粒子10、20の断面図である。まず、図1Aの光反射性導電粒子から説明する。
【0034】
光反射性導電粒子10は、金属材料で被覆されているコア粒子1と、その表面に酸化チタン(TiO)、窒化ホウ素(BN)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子2から形成された光反射層3とから構成される。酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子は、太陽光の下では白色を呈する無機粒子である。従って、それらから形成された光反射層3は白色〜灰色を呈する。白色〜灰色を呈しているということは、可視光に対する光反射特性の波長依存性が小さく、且つ可視光を反射しやすいことを意味する。
【0035】
なお、酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子のうち、硬化した光反射性異方性導電接着剤の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の光劣化が懸念される場合には、光劣化に対して触媒性がなく、屈折率も高い酸化亜鉛粒子を好ましく使用することができる。
【0036】
コア粒子1は、異方性導電接続に共されるものであるので、その表面が金属材料で構成されている。ここで、表面が金属材料で被覆されている態様としては、前述したように、コア粒子1そのものが金属材料である態様、もしくは樹脂粒子の表面が金属材料で被覆された態様が挙げられる。
【0037】
無機粒子2から形成された光反射層3の層厚は、コア粒子1の粒径との相対的大きさの観点からみると、コア粒子1の粒径に対し、小さすぎると光反射率の低下が著しくなり、大きすぎると導通不良が生ずるので、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは1〜25%である。
【0038】
また、光反射性導電粒子10において、光反射層3を構成する無機粒子2の粒径は、小さすぎると光反射現象が生じ難くなり、大きすぎると光反射層の形成が困難となる傾向があるので、好ましくは0.02〜4μm、より好ましくは0.1〜1μm、特に好ましくは0.2〜0.5μmである。この場合、光反射させる光の波長の観点からみると、無機粒子2の粒径は、反射させるべき光(即ち、発光素子が発する光)が透過してしまわないように、その光の波長の50%以上であることが好ましい。この場合、無機粒子2の形状としては無定型、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。
【0039】
図1Aの光反射性導電粒子10は、大小の粉末同士を物理的に衝突させることにより大粒径粒子の表面に小粒径粒子からなる膜を形成させる公知の成膜技術(いわゆるメカノフュージョン法)により製造することができる。この場合、無機粒子2は、コア粒子1の表面の金属材料に食い込むように固定され、他方、無機粒子2同士が融着固定されにくいから、無機粒子2のモノレイヤーが光反射層3を構成する。従って、図1Aの場合、光反射層3の層厚は、無機粒子2の粒径と同等乃至はわずかに薄くなると考えられる。
【0040】
次に、図1Bの光反射性導電粒子20について説明する。この光反射性導電粒子20においては、光反射層3が接着剤として機能する熱可塑性樹脂4を含有し、この熱可塑性樹脂4により無機粒子2同士も固定され、無機粒子2が多層化(例えば2層あるいは3層に多層化)している点で、図1Aの光反射性導電粒子10と相違する。このような熱可塑性樹脂4を含有することにより、光反射層3の機械的強度が向上し、無機粒子2の剥落などが生じにくくなる。
【0041】
熱可塑性樹脂4としては、環境低負荷を意図してハロゲンフリーの熱可塑性樹脂を好ましく使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリスチレン、アクリル樹脂等を好ましく使用することができる。
【0042】
このような光反射性導電粒子20も、メカノフュージョン法により製造することができる。メカノフュージョン法に適用する熱可塑性樹脂4の粒子径は、小さすぎると接着機能が低下し、大きすぎるとコア粒子1に付着しにくくなるので、好ましくは0.02〜4μm、より好ましくは0.1〜1μmである。また、このような熱可塑性樹脂4の配合量は、少なすぎると接着機能が低下し、多すぎると粒子の凝集体が形成されるので、無機粒子2の100質量部に対し、好ましくは0.2〜500質量部、より好ましくは4〜25質量部である。
【0043】
本発明の光反射性異方性導電接着剤に使用する熱硬化性樹脂組成物としては、なるべく無色透明なものを使用することが好ましい。光反射性異方性導電接着剤中の光反射性導電粒子の光反射効率を低下させず、しかも入射光の光色を代えずに反射させるためである。ここで、無色透明とは、熱硬化性樹脂組成物の硬化物が、波長380〜780nmの可視光に対して光路長1cmの光透過率(JIS K7105)が80%以上、好ましくは90%以上となることを意味する。
【0044】
本発明の光反射性異方性導電接着剤において、熱硬化性樹脂組成物に対する光反射性導電粒子等の導電粒子の配合量(体積%)は、少なすぎると導通不良が生じ、多すぎるとパターン間ショートが生ずる傾向があるので、好ましくは5〜30体積%、より好ましくは10〜20体積%である。
【0045】
本発明の光反射性異方性導電接着剤の光反射特性は、発光素子の発光効率を向上させるために、光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmの光に対する反射率(JIS K7105)が、少なくとも30%であることが望ましい。このような光反射率とするためには、使用する光反射性導電粒子の光反射特性や配合量、熱硬化性樹脂組成物の配合組成などを適宜調整すればよい。通常、光反射特性の良好な光反射性導電粒子の配合量を増量すれば、光反射率も増大する傾向がある。
【0046】
また、光反射性異方性導電接着剤の光反射特性は屈折率という観点から評価することもできる。即ち、その硬化物の屈折率が、導電粒子と光反射性絶縁粒子とを除いた熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率よりも大きいと、光反射性絶縁粒子とそれを取り巻く熱硬化性樹脂組成物の硬化物との界面での光反射量が増大するからである。具体的には、光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)を差し引いた差が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.2以上であることが望まれる。なお、通常、シリコーン樹脂を主体とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率は約1.40〜1.55である。
【0047】
本発明の光反射性異方性導電接着剤を構成する熱硬化性樹脂組成物は、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンを含有する。このようなグリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンは、アルキルハイドロジェンポリシロキサンに対し、アルケニルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンとをハイドロシリレーションさせて得られたものである。
【0048】
アルキルハイドロジェンポリシロキサンは、ハイドロシリレーションによりポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入するための化合物であり、エポキシ基の導入により、ポリシロキサンはその分子表面に極性基が存在することになるので、光反射性異方性導電接着剤の被着体に対する接着力を向上させることができる。また、酸無水物系硬化剤で熱硬化させることができる。
【0049】
アルキルハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量は、ハンドリング性を考慮して好ましくは70000以下である。下限は、製造上の制約から300以上となる。
【0050】
アルキルハイドロジェンポリシロキサンの好ましい具体例としては、アルキル基がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。このようなアルキルハイドロジェンポリシロキサンの中でも、メチル基であるものが好ましい。このようなメチルハイドロジェンポリシロキサンの化学構造を式(1)に示す。
【0051】
【化1】

【0052】
式(1)中、mの数字は小さすぎるとハイドロジェンシリル基が不足して十分な架橋を実現することができず、ダイシェア強度が低くなる傾向があり、大きすぎるとハイドロジェンシリル基が過剰となり、完全なハイドロシリレーションが困難となり、余剰ハイドロジェンシリル基が発生する傾向があるので、好ましくはmは3〜40、より好ましくは8〜35、特に好ましくは10〜30の数である。また、nの数字は、後述するmとnとの関係からわかるように、小さすぎると相対的にmの値も小さくなり、ハイドロジェンシリル基が不足する傾向があり、大きすぎると相対的にmの値も大きくなり、ハイドロジェンシリル基が過剰となる傾向があるので、好ましくはnは3〜40、より好ましくは10〜35、特に好ましくは15〜28の数である。
【0053】
式(1)におけるmとnとの関係は、好ましくはm<nであり、より好ましくは2m<nである。これは、メチルハイドロジェンシリル基がジメチルシリル基よりも多くなると、アルケニルグリシジルエーテルがハイドロジェンシリル基にハイドロシリレーションする際に、グリシジルオキシアルキル基に隣接するハイドロジェンシリル基には立体障害のためにハイドロシリレーションが困難となるからである。従って、メチルハイドロジェンシリル基が2以上連続しないことが望ましい。
【0054】
アルケニルグリシジルエーテルは、ハイドロシリレーションによりポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を有するグリシジルオキシアルキル基を導入するための化合物であり、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等を挙げることができる。中でも高反応性を有する点からアリル基が好ましい。
【0055】
また、アルケニルシクロアルカンは、ハイドロシリレーションによりポリシロキサンの側鎖にアリサイクリックアルキル基を導入するための化合物であり、熱硬化性樹脂組成物に良好な透明性を付与するものである。また、シクロアルカンの種類や存在量を調整することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬度を調整することが可能になる。なお、その硬度が柔らかすぎると、発光装置の製造工程中又はアセンブリ後の使用中に、樹脂の変形により発光素子に応力が印加され、発光装置の故障が生ずることが懸念される。
【0056】
アルケニルシクロアルカンのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等を挙げることができる。中でも、高反応性を有する点からビニル基が好ましい。他方、シクロアルカンとしては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等を挙げることができる。中でも、耐熱光性の骨格を有する点からシクロヘキサンが好ましい。
【0057】
ハイドロシリレーションにおけるアルケニルグリシジルエーテル好ましくはアリルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカン好ましくはビニルシクロヘキサンとの使用量は、前者が多すぎるとその未反応物が光反射性異方性導電接着剤中に遊離状態で存在することにより、光反射性異方性導電接着剤の耐熱光特性が低下する傾向があり、前者が少なすぎると光反射性異方性導電接着剤の硬化物のダイシェア強度や硬度などの特性が低下する傾向があるので、アルケニルグリシジルエーテル1モルに対し、アルケニルシクロアルカンを好ましくは0.3〜2モル、より好ましくは0.5〜1.2モルである。
【0058】
また、ハイドロシリレーションにおけるアルキルハイドロジェンポリシロキサンに対するアルケニルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンとの合計使用量は、前者が少なすぎると未反応物がACF中に遊離状態で存在するので耐熱特性低下となり、多すぎると硬化物のダイシェア強度など特性低下となる傾向があるので、アルキルハイドロジェンポリシロキサン1当量(ハイドロジェンシリル基基準)に対し、アルケニルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンの合計が好ましくは0.7〜1.3当量、より好ましくは0.9〜1.1当量である。
【0059】
ハイドロシリレーションは、従来公知のハイドロシリレーションの反応条件を適用することができる。例えば、ハイドロシリレーション触媒としては、ヘキサクロロ白金、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金ジビニルシロキサン、白金環状ビニルメチルシロキサン、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金、塩化白金酸、ビス(エチレン)テトラクロロ二白金、シクロオクタジエンジクロロ白金、ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ジクロロ白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、白金カーボン等の中から適宜選択して使用することができる。
【0060】
本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物は、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンを硬化させるための硬化剤を含有する。このような硬化剤としては、エポキシ樹脂硬化用の酸無水物系硬化剤、イミダゾール化合物、ジシアンなどを挙げることができる。特に、硬化物を変色させ難い酸無水物系硬化剤、特に、分子内に二重結合が存在しないものが好ましい。具体的にはメチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドフタル酸無水物等を挙げることができる。
【0061】
硬化剤の熱硬化性樹脂組成物中の配合量は、硬化機構により異なるが、酸無水物系硬化剤を使用する付加反応機構の場合、少なすぎても多すぎても硬化物の熱光特性やダイシェア強度などの特性が低下する傾向があるので、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサン100質量部に対し、好ましくは50〜140質量部、より好ましくは80〜120質量部である。
【0062】
本発明の光反射性異方性導電接着剤を構成する熱硬化性樹脂組成物は、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、ヒドロパーオキサイド、金属不活性剤、紫外線遮断剤等の各種老化防止剤を含有してもよい。
【0063】
本発明の光反射性異方性導電接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂を配合することができる。例えば、シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ化合物、複素環系エポキシ化合物、水素添加エポキシ化合物などを挙げることができる。
【0064】
脂環式エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。具体的には、グリシジルヘキサヒドロビスフェノールA、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等を挙げることができる。中でも、硬化物にLED素子の実装等に適した光透過性を確保でき、速硬化性にも優れている点から、環内にエポキシ基が存在する3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを好ましく使用することができる。
【0065】
複素環系エポキシ化合物としては、トリアジン環を有するエポキシ化合物を挙げることができ、特に好ましくは1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンを挙げることができる。
【0066】
水素添加エポキシ化合物としては、先述の脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物の水素添加物や、その他公知の水素添加エポキシ樹脂を使用することできる。
【0067】
脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物は、単独で使用してもよいが、2種以上を併用することができる。また、これらのエポキシ化合物に加えて本発明の効果を損なわない限り、他のエポキシ化合物を併用してもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、ジアリールビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル; グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル; p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル; フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル; アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル; アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル; アニリン、トルイジン、トリブロモアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン; エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。
【0068】
本発明の光反射性異方性導電接着剤は、光反射性絶縁粒子と導電粒子と熱硬化性樹脂組成物とを均一に混合することにより製造することができる。また、光反射性異方性導電フィルムとする場合には、それらをトルエン等の溶媒とともに分散混合し、剥離処理したPETフィルムに所期の厚さとなるように塗布し、約80℃程度の温度で乾燥すればよい。
【0069】
次に、本発明の発光装置について図2を参照しながら説明する。発光装置200は、基板21上の接続端子22と、発光素子としてLED素子23のn電極24とp電極25とのそれぞれに形成された接続用のバンプ26との間に、前述の本発明の光反射性異方性導電接着剤を塗布し、基板21とLED素子23とがフリップチップ方式で実装されている発光装置である。ここで、光反射性異方性導電接着剤の硬化物100は、光反射性導電粒子10が熱硬化性樹脂組成物の硬化物11中に分散してなるものである。なお、必要に応じて、LED素子23の全体を覆うように透明モールド樹脂で封止してもよい。また、LED素子23に従来と同様に光反射層を設けてもよい。
【0070】
このように構成されている発光装置200においては、LED素子23が発した光のうち、基板21側に向かって発した光は、光反射性異方性導電接着剤の硬化物100中の光反射性導電粒子10で反射し、LED素子23の上面から出射する。従って、発光効率の低下を防止することができる。
【0071】
本発明の発光装置200における光反射性異方性導電接着剤以外の構成(LED素子23、バンプ26、基板21、接続端子22等)は、従来の発光装置の構成と同様とすることができる。また、本発明の発光装置200は、本発明の光反射性異方性導電接着剤を使用すること以外は、従来の異方性導電接続技術を利用して製造することができる。なお、発光素子としては、LED素子の他、本発明の効果を損なわない範囲で公知の発光素子を適用することができる。
【実施例】
【0072】
参考例(グリシジルオキシプロピル・シクロヘキシルエチル変性メチルポリシロキサン(以下、単にエポキシ変性ポリシロキサンと称する場合がある)の調製)
アリルグリシジルエーテル(アリルグリシジルエーテル−S、四日市合成(株))1gと、ビニルシクロヘキサン(Acros社)1gとを採取し、トルエン3gに投入して溶解させた。このトルエン溶液に、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー(HMS−082、Gelect社)を、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー/アリルグリシジルエーテル/ビニルシクロヘキサンの当量比が1/0.5/0.5となるように滴下し、反応溶液を得た。
【0073】
この反応溶液3gに、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体0.0742gをイソプロピルアルコール1.804gに溶解して得た触媒溶液の1滴(0.0145g)を投入し、混合し、60℃のジャーミルで3時間撹拌した。撹拌終了後、ロータリーエバポレーターでトルエンを除去することにより、グリシジルオキシプロピル・シクロヘキシルエチル変性メチルポリシロキサンを得た。
【0074】
得られたエポキシ変性ポリシロキサンについてFT−IR測定を行ったところ、2200cm−1付近のSi−H伸縮ピークが消失していることが確認できた。
【0075】
実施例1〜7、比較例1〜4
導電粒子と光反射性絶縁粒子とを除く表1に示す配合量(質量部)の成分を、一般的な卓上型撹拌機を用いて均一に混合することにより熱硬化性樹脂組成物を調製した。この熱硬化性樹脂組成物に、Au粒子10phr[parts per hundred resin]と、光反射性絶縁粒子30phrとを添加し、卓上型攪拌機を用いて均一に混合することにより外観が白色の光反射性異方性導電接着剤を得た。
【0076】
なお、実施例6は、光反射性絶縁粒子として以下に説明するように調製した酸化チタン被覆銀粒子を使用した例であり、実施例7は、光反射性導電粒子として酸化チタン被覆金粒子を使用した例である。また、比較例1は、シリコーン樹脂を用いずに脂環式エポキシ樹脂を使用した光反射性異方性導電接着剤の例であり、比較例2、3は、市販の未変性シリコーン樹脂を使用した光反射性異方性導電接着剤の例である。比較例4は、光反射性絶縁粒子を使用しない例である。
【0077】
(実施例6で使用した酸化チタン被覆銀粒子(光反射性絶縁粒子))
攪拌機つきフラスコに粒状銀粒子(平均粒径1.0μm)5gとトルエン50mlとを投入し、攪拌しながらフラスコにシランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)0.25gを投入し、25℃で60分間攪拌した。次に、この混合物に、メタクリル酸メチル2gとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル2gとベンゾイルパーオキサイド0.04gと2,4−トリレンジイソシアネート1gとを投入し、80℃で12時間攪拌することにより、光反射性絶縁粒子として絶縁被覆銀粒子を得た。絶縁被覆を含めた光反射性絶縁粒子の平均粒径は5.0μmであった。
【0078】
(実施例7で使用した酸化チタン被覆金粒子(光反射性導電粒子))
平均粒子径0.5μmの酸化チタン粉末と、外観色が茶色の平均粒径5μmのAu被覆樹脂導電粒子(平均粒径4.6μmの球状アクリル樹脂粒子に0.2μm厚の無電解金メッキを施した粒子)とを、メカノフュージョン装置に投入し、導電粒子の表面に酸化チタン粒子からなる約0.5μm厚の光反射層を成膜することにより、光反射性導電粒子を得た。この光反射性導電粒子の外観色は灰色であった。
【0079】
<評価>
得られた光反射性異方性導電接着剤について、以下に説明するように光反射率測定、全光束量測定、ダイシェア強度測定、導通発光確認試験をそれぞれ行った。
【0080】
1)光反射率測定
光反射性異方性導電接着剤をセラミック製の白色板に塗布し、200℃で30秒間加熱することにより厚さ1mmの硬化物を得た。この硬化物を1cm角に切り出し、光反射率測定用サンプルとした。このサンプルを150℃のオーブン内に1000時間放置した。この放置前(初期)と放置後(エージング後)のサンプルについて、分光光度計(U3300、日立製作所(株))を用いて、波長450nmの光に対する反射率(JIS K7150)を測定した。得られた結果を表1に示す。光反射率は、実用上30%以上であり、また、エージング前後の光反射率の減少率が20%以下であることが望まれる。
【0081】
2)全光束量測定
100μmピッチの銅配線にNi/Au(5.0μm厚/0.3μm厚)メッキ処理した配線を有するガラスエポキシ基板に、バンプボンダー(FB700、(株)カイジョー)を用いて15μm高の金バンプを形成した。この金バンプ付きガラスエポキシ基板に、光反射性異方性導電接着剤を用いて、青色LED(Vf=3.2(If=20mA))を200℃、30秒、100gf/チップという条件でフィリップチップ実装し、テスト用LEDモジュールを得た。このテスト用LEDモジュールを85℃、85%RHの環境下で1000時間発光させ、発光の初期及び1000時間発光後(エージング後)におけるその全光束量を、全光束測定システム(積分全球)(LE−2100、大塚電子株式会社)を用いて測定した(測定条件 If=20mA(定電流制御))。得られた結果を表1に示す。全光束量は、実用上、初期において250mlm以上であることが望まれる。また、エージング前後の全光束量の減少率が15%以下であることが望まれる。
【0082】
3)ダイシェア強度測定
全光束量測定で作成したものと同じテスト用LEDモジュールを新たに作成し、それを85℃、85%RHの環境下で1000時間発光(If=20mA(定電流制御))させ、発光の初期及び1000時間発光後(エージング後)における光反射性異方性導電接着剤のダイシェア強度を、ダイシェア強度測定機(PTR−1100、RHESCA社)を用いて20μm/secという剪断速度で測定した。得られた結果を表1に示す。ダイシェア強度は、実用上70N/chip以上であることが望まれる。また、エージング前後のダイシェア強度の減少率が10%以下であることが望まれる。
【0083】
4)導通発光確認試験
全光束量測定で作成したものと同じテスト用LEDモジュールを新たに作成し、それを85℃、85%RHの環境下で3000時間発光(If=20mA(定電流制御))させ、発光の初期及び3000時間発光後(エージング後)において異常(導通不良等)の発生の有無を目視確認した。異常が発生しない場合を“OK”と評価し、発生した場合を“NG”と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1からわかるように、光反射性絶縁粒子を含有する実施例1〜7の光反射性異方性導電接着剤の場合、光反射率がいずれも30%以上あり、エージング前後のその減少率が20%以下であり、450nmの光の青色がそのままの色で反射していた。しかも全光束量も初期において250mlm以上であり、エージング前後のその減少率が15%以下であった。また、ダイシェア強度は、いずれも70N/chip以上であり、エージング前後のその減少率が10%以下であった。しかも、導通発光確認試験においても異常は認められなかった。
【0086】
それに対し、未変性の通常の脂環式エポキシ樹脂を使用した比較例1の場合、光反射率及び全光束量のエージング前後での低下が著しく、エージング後の導通発光確認試験結果もNG評価であり、実用的でないことがわかった。一般的なシリコーン樹脂を使用した比較例2、3の場合、ダイシェア強度が著しく低く、エージング後の導通発光確認試験結果もNG評価であり、実用的でないことがわかった。光反射性絶縁粒子を使用しない比較例4の異方性導電接着剤の場合、全光束量及び光反射率のそれぞれの初期の結果がそもそも実用レベルではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の光反射性異方性導電接着剤は、発光ダイオード(LED)素子等の発光素子を配線板に異方性導電接着剤を用いてフリップチップ方式で実装して発光装置を製造する際に、製造コストの増大を招くような光反射層を発光素子に設けなくても、発光効率を低下させないようにすることができる。しかも、熱硬化性樹脂組成物の硬化成分としてグリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンを使用するので、初期ダイシェア強度が高く、発光装置の長期使用によりダイシェア強度やLED全光束量が大きく低下することのないものである。よって、本発明の光反射性異方性導電接着剤は、LED素子をフリップチップ実装する際に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 コア粒子
2 無機粒子
3 光反射層
4 熱可塑性樹脂
10、20 光反射性導電粒子
11 熱硬化性樹脂組成物の硬化物
21 基板
22 接続端子
23 LED素子
24 n電極
25 p電極
26 バンプ
100 光反射性異方性導電接着剤の硬化物
200 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤であって、シリコーン樹脂と硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有し、該シリコーン樹脂が、グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンである光反射性異方性導電接着剤。
【請求項2】
光反射性絶縁粒子が、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子である請求項1記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項3】
光反射性絶縁粒子が、酸化チタン粒子である請求項2記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項4】
光反射性絶縁粒子の形状が、球状又は鱗片状である請求項1〜3のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項5】
光反射性絶縁粒子の形状が球状である場合、その粒径が0.02〜20μmである請求項1〜4のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項6】
光反射性絶縁粒子の形状が鱗片状である場合、その長径が0.1〜100μmであり、短径が0.01〜10μmであり、厚みが0.01〜10μmである請求項1〜4のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項7】
光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きい請求項1〜6のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項8】
光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも少なくとも0.02程度大きい請求項7記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項9】
光反射性絶縁粒子が、鱗片状又は球状金属粒子の表面を絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆金属粒子である請求項1記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項10】
光反射性絶縁粒子が、鱗片状銀粒子の表面を絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆銀粒子である請求項9記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項11】
光反射性絶縁粒子の形状が球状である場合、その粒径が0.02〜20μmである請求項9記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項12】
光反射性絶縁粒子の形状が鱗片状である場合、その長径が0.1〜100μmであり、短径が0.01〜10μmであり、厚みが0.01〜10μmである請求項9又は10記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項13】
光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きい請求項9〜12のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項14】
光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも少なくとも0.02程度大きい請求項13記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項15】
絶縁性樹脂が、イソシアネート系架橋剤で架橋されたアクリル系樹脂である請求項9〜14のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項16】
アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとをラジカル共重合させたものである請求項15に記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項17】
熱硬化性樹脂組成物に対する光反射性絶縁粒子の配合量が、1〜50体積%である請求項1〜16のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項18】
該グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンが、アルキルハイドロジェンポリシロキサンに対し、アルケニルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンとをハイドロシリレーションさせて得られたものであり、該硬化剤が酸無水物系硬化剤である請求項1〜17のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項19】
該グリシジルオキシアルキル・アリサイクリックアルキル変性オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量300以上70000以下のアルキルハイドロジェンポリシロキサン1当量に対し、合計で0.7〜1.3当量のアルケニルグリシジルエーテルとアルケニルシクロアルカンとを、アルケニルグリシジルエーテル1モルに対しアルケニルシクロアルカンが0.3〜2モルとなるようにハイドロシリレーションさせて得られたものである請求項18記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項20】
アルキルハイドロジェンポリシロキサンがメチルハイドロジェンポリシロキサンであり、アルケニルグリシジルエーテルがアリルグリシジルエーテルであり、アルケニルシクロアルカンがビニルシクロヘキサンである請求項18又は19記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項21】
導電粒子が、金属材料で被覆されているコア粒子と、その表面に酸化チタン、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムから選択された少なくとも一種の無機粒子から形成された光反射層とからなる光反射性導電粒子である請求項1〜20のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項22】
コア粒子の粒径に対する光反射層の厚みが0.5〜50%である請求項21記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項23】
光反射層を構成する無機粒子の粒径が、0.02〜4μmである請求項21又は22記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項24】
熱硬化性樹脂組成物に対する光反射性導電粒子の配合量が、5〜30体積%である請求項21記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤を介して、発光素子がフリップチップ方式で配線板に実装されている発光装置。
【請求項26】
発光素子が、発光ダイオードである請求項25記載の発光装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−207216(P2012−207216A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56858(P2012−56858)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】