説明

光反射板用重合性組成物、及び光反射板

【課題】光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れた光反射板を与えることができ、かつ、該光反射板を優れた生産効率で生産することができる光反射板用重合性組成物、及びこれを用いて得られる光反射板を提供すること。
【解決手段】シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、無機充填剤、及び白色顔料を含有してなる光反射板用重合性組成物、及び該光反射板用重合性組成物を塊状重合してなり、波長450nmにおける光反射率が80%以上である光反射板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射板用重合性組成物、及び光反射板に関し、さらに詳しくは、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れた光反射板を与えることができ、かつ、該光反射板を優れた生産効率で生産することができる光反射板用重合性組成物、及びこれを用いて得られる光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライトや、照明器具の光源として、低電力で発光するLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)などの発光素子を備えた発光装置が用いられている。このような発光装置は、発光素子を基板上に実装し、発光素子からの光を反射するための光反射板を発光素子の周囲に配置するとともに、発光素子を樹脂封止することで構成される。
【0003】
このような発光装置には光反射板として、従来、セラミック材料が用いられているが、セラミック材料は生産性に劣るという問題や、高価であるという問題があった。これに対して、このような発光装置に用いられる光反射板を構成する材料として、セラミック材料に代えて、各種樹脂材料が検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1では、LED装置に用いられる光反射板用の樹脂材料として、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒、無機充填剤、白色顔料、及びカップリング剤を含有し、熱硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上であり、かつ熱伝導率が1〜10W/mKの範囲であり、熱硬化前には室温において加圧成形可能な熱硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、LED装置に用いられる光反射板用の樹脂材料として、テレフタル酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位と、からなるポリアミド樹脂、該ポリアミド樹脂100質量部に対して、酸化チタンを5〜100質量部、水酸化マグネシウムを0.5〜30質量部、及び繊維状充填剤及び針状充填剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の強化剤を20〜100質量部、含有するポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【特許文献2】特開2006−257314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて得られる光反射板は、光反射率が高く、高い熱伝導性を有するものの、吸水率が高く、そのため、長期間使用した場合における安定性に劣るという問題があった。また、上記特許文献1では、熱硬化性エポキシ樹脂組成物を所望の形状に成形し、硬化して、光反射板とする際、成形及び硬化に長時間を要するという問題もあった。さらに、上記特許文献2のポリアミド樹脂組成物により得られる光反射板は、光反射率が高いものの、耐ハンダリフロー性に劣るとともに、吸水率が高く、そのため、長期間使用した場合における安定性に劣るという問題があった。
【0008】
本発明は、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れた光反射板を与えることができ、かつ、該光反射板を優れた生産効率で生産することができる光反射板用重合性組成物、及びこれを用いて得られる光反射板を提供することを目的とする。また、本発明は、この光反射板を用いて得られる発光素子搭載用基板及び発光装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、無機充填剤、及び白色顔料を含有してなる重合性組成物が、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れた光反射板を与えることができ、しかも、該重合性組成物を用いた場合には、該光反射板を、優れた生産効率で生産することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、無機充填剤、及び白色顔料を含有してなる光反射板用重合性組成物、
〔2〕上記〔1〕に記載の光反射板用重合性組成物を塊状重合してなり、波長450nmにおける光反射率が80%以上である光反射板、
〔3〕発光素子を搭載するための配線を備える基材上に、上記〔2〕に記載の光反射板を備えてなる発光素子搭載用基板、ならびに、
〔4〕基板と、前記基板に実装された発光素子と、前記発光素子を周囲する光反射板と、前記発光素子を封止する封止剤とを備え、前記光反射板が、上記〔2〕に記載の光反射板である発光装置、
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れた光反射板を与えることができ、かつ、該光反射板を優れた生産効率で生産することができる光反射板用重合性組成物、及びこれを用いて得られる光反射板が提供される。本発明の光反射板は、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れているため、発光素子搭載用基板及び発光装置に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光反射板用重合性組成物は、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、無機充填剤、及び白色顔料を含有してなる重合性組成物であって、光反射板を製造するために用いられる重合性組成物である。
【0013】
(シクロオレフィンモノマー)
本発明で用いるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される脂環構造を有し、かつ、該脂環構造中に開環重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物であればよく、特に限定されないが、ノルボルネン環構造を有するノルボルネン化合物が好ましい。
【0014】
シクロオレフィンモノマーとしては、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等を挙げることができる。
これらのシクロオレフィンモノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;等の置換基を有していてもよい。
更に、これらのシクロオレフィンモノマーは、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、オキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有していてもよい。
【0015】
シクロオレフィンモノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)等が挙げられる。
【0016】
これらのシクロオレフィンモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記シクロオレフィンモノマーのうち、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる重合体の耐熱性が向上することから、三環体、四環体又は五環体のシクロオレフィンモノマーが好ましい。
【0017】
また、生成する重合体が熱硬化型となることが好ましく、そのためには、上記シクロオレフィンモノマーの中でも、対称性のシクロペンタジエン三量体等の、反応性の二重結合を二個以上有する架橋性モノマーを少なくとも含めて用いることが好ましい。全シクロオレフィンモノマー中の架橋性モノマーの割合は、2〜30重量%であることが好ましい。
【0018】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、シクロオレフィンモノマーと開環共重合し得るシクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィン等を、コモノマーとして用いてもよい。
【0019】
(重合触媒)
本発明において重合触媒としてはメタセシス重合触媒が用いられる。本発明の光反射板用重合性組成物は、後述の光反射板の製造において、直接塊状重合に供して用いるのが好適であり、メタセシス重合触媒は、その用に適する。
【0020】
メタセシス重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能である、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物などが結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、第5族、第6族及び第8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。これら遷移金属原子の中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、本発明の光反射板用重合性組成物を塊状重合に供して光反射板を得る場合、得られる光反射板には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な光反射板が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
【0021】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【化1】

【0022】
上記一般式(1)及び一般式(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0023】
1及びX2は、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0024】
1及びL2はそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又は当該化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
【0025】
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)又は一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【化2】

【0026】
式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R〜Rは任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0027】
中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類などが挙げられ、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0028】
なお、上記式(1)及び(2)において、RとRは互いに結合して環を形成してもよく、さらに、R、R、X1、X2、L1及びL2は、任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0029】
本発明においては、メタセシス重合触媒としてヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を用いることが、光反射板の生産効率を高める観点から、好ましい。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、O原子、N原子等が挙げられ、好ましくはN原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン構造やイミダゾリジン構造が好ましい。
【0030】
このようなヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒としては、上記一般式(1)又は(2)で表され、L1又はL2としてヘテロ原子含有カルベン化合物からなる配位子を有するルテニウム触媒を好適に用いることができる。このようなヘテロ原子含有カルベン化合物の具体例としては、例えば、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0031】
また、ヘテロ原子含有カルベン化合物からなる配位子を有するルテニウム触媒の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子としてヘテロ原子含有カルベン化合物と該化合物以外の中性電子供与性化合物とが結合したルテニウム錯体化合物が挙げられる。
【0032】
本発明において、メタセシス重合触媒の使用量は、反応に使用するモノマー1モルに対し、通常、0.01ミリモル以上、好ましくは0.1ミリモル以上、且つ、50ミリモル以下、好ましくは20ミリモル以下である。メタセシス重合触媒の使用量が少なすぎると重合活性が低すぎて反応に時間が掛かるため生産効率が悪く、使用量が多すぎると反応が激しすぎるため成形不充分な状態で硬化したり、触媒が析出したりし易くなり、均質に保存することが困難になる傾向がある。
【0033】
メタセシス重合触媒は必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。このような溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
【0034】
(無機充填剤)
本発明に使用される無機充填剤は特に限定されないが、得られる光反射板の熱伝導率を高める観点から、通常、30W/m・K以上の熱伝導率を有する無機充填剤が好適に用いられる。かかる無機充填剤としては、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、及び酸化ベリリウムなどの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び窒化ケイ素などの無機窒化物;炭化ケイ素などの無機炭化物;銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、及びチタンなどの金属又は合金;ダイヤモンド、炭素繊維、カーボンブラックなどの炭素系化合物;石英や石英ガラス;ガラス繊維;などが挙げられる。これらの中でも、熱伝導率が高く、そのため、得られる光反射板の熱伝導率をより高いものとすることができるという観点から、無機酸化物、無機窒化物、及び無機炭化物からなる群より選択される少なくとも1種を用いるのが好ましく、無機酸化物及び無機窒化物からなる群より選択される少なくとも1種を用いるのがより好ましい。無機酸化物としてはアルミナ(熱伝導率:30W/m・K)が、無機窒化物としては窒化アルミニウム(熱伝導率:70〜270W/m・K)及び窒化ホウ素(熱伝導率:110W/m・K)が、特に好ましい。無機充填剤の熱伝導率は、化合物の結晶状態や方向などにより多少変動する。無機充填剤の熱伝導率は、例えば、ホットディスク法により測定することができる。
【0035】
なお、シクロオレフィンモノマーを重合してなる重合体との親和性を高める観点から、無機充填剤は公知の脂肪酸、油脂、界面活性剤、高分子、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、及びシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されたものであってもよい。好ましくは、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、及びシランカップリング剤が、シクロオレフィンモノマーを重合してなる重合体との接着性や親和性の点でよい。これらの表面処理剤の使用量は、通常、無機充填剤100重量部に対し、5重量部以下である。
【0036】
無機充填剤の粒子径(平均粒子径)は、所望により適宜選択すればよいが、粒子を三次元的にみたときの長手方向と短手方向の長さの平均値が、通常、0.1〜200μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μmの範囲である。
【0037】
また、無機充填剤の配合量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、好ましくは1〜2000重量部、より好ましくは10〜1500重量部、さらに好ましくは50〜1000重量部の範囲であり、本発明の重合性組成物における体積分率では、通常、1〜95体積%、より好ましくは5〜85体積%、さらに好ましくは10〜80体積%である。本発明の光反射板用重合性組成物は、樹脂成分を形成する単量体として、比較的低粘度なシクロオレフィンモノマーを用いるものであり、そのため、無機充填剤の配合量を容易に増やすことができる。従って、無機充填剤として、熱伝導率が高い無機充填剤を用い、その配合割合を高く(好ましくは、体積分率で30〜85体積%)することにより、得られる光反射板の熱伝導率を容易により高いものとすることができる。
【0038】
(白色顔料)
本発明に用いる白色顔料としては、工業的に使用される公知の白色顔料であれば特に限定されない。かかる白色顔料は、通常、30W/m・K未満の熱伝導率を有する。白色顔料の熱伝導率は、無機充填剤と同様にして測定することができる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、塩基性炭酸塩、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、窒化チタン、フッ化セリウム、及び酸化セリウムなどが挙げられる。例えば、酸化亜鉛の熱伝導率は25.2W/m・Kであり、酸化ジルコンの熱伝導率は22.7W/m・Kである。これらの中でも、屈折率が高く、得られる光反射板の光反射率を高めることができるという観点より、ルチル型酸化チタンが好ましい。より好ましくは、耐熱性に優れるため、硫酸法又は塩素法、特に塩素法で製造されたものがよい。具体的には、富士チタン工業株式会社製TR−600、TR−700、TR−750、及びTR−840;石原産業株式会社製R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、及びCR−90;チタン工業株式会社製KR−270、KR−310、及びKR−380;等を使用することができる。白色顔料として、酸化チタンを用いる場合、用いる白色顔料中の酸化チタンの含有量としては、通常、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0039】
白色顔料の粒子径(平均粒子径)は、所望により適宜選択すればよいが、通常、0.01〜20μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜3μmの範囲である。当該粒子径は、無機充填剤の粒子径と同様に定義される。白色顔料の粒子径が小さすぎると、粒子が凝集しやすく、分散性が低下してしまい、得られる光反射板の光反射率が低くなるおそれがある。一方、白色顔料の粒子径が大きすぎても、白色顔料の光反射特性が低下してしまい、得られる光反射板の光反射率が低くなるおそれがある。
これらの白色顔料は、通常の高分子、シリコーン、ジルコニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びシリコーン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤で処理されることで、本発明の重合性組成物への分散性やシクロオレフィンモノマーとの親和性が改善される。これらの表面処理剤の使用量は、白色顔料100重量部に対し、通常、5重量部以下である。
【0040】
また、光反射板用重合性組成物中における、白色顔料の配合量は、上述したシクロオレフィンモノマー100重量部に対して、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部の範囲である。白色顔料の配合量が少なすぎると、得られる光反射板の光反射率が低くなるおそれがあり、一方、多すぎても、白色顔料の分散性が低下してしまい、得られる光反射板の光反射率が低くなるおそれがある。
【0041】
(光反射板用重合性組成物)
本発明の光反射板用重合性組成物は、上述したシクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、無機充填剤、及び白色顔料を含有してなるものである。また、本発明の光反射板用重合性組成物には、所望により、重合調整剤、重合反応遅延剤、老化防止剤、及びその他の配合剤などを添加することができる。
【0042】
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものである。重合調整剤としては、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の配合量は、モル比(重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、好ましくは1:0.05〜1:100、より好ましくは1:0.2〜1:20、さらに好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0043】
重合反応遅延剤は、本発明の光反射板用重合性組成物の重合反応の進行に起因する粘度増加を抑制し得るものである。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。重合反応遅延剤を用いる場合における、重合反応遅延剤の配合量は、所望により適宜調整すればよい。
【0044】
老化防止剤としては、たとえば、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤、及びイオウ系老化防止剤などが挙げられ、これらの老化防止剤を配合することにより、得られる光反射板の耐熱性を高度に向上させることができる。これらの中でも、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤がより好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤を使用する場合における、老化防止剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、好ましくは0.0001〜10重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0045】
また、本発明の光反射板用重合性組成物には、上記した配合剤以外のその他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、架橋剤、連鎖移動剤、分散剤、光安定剤、及び発泡剤などを用いることができる。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0046】
本発明の光反射板用重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、メタセシス重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマー、無機充填剤、白色顔料、及び所望によりその他の配合剤を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に該触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0047】
(光反射板)
本発明の光反射板は、上述した本発明の光反射板用重合性組成物を塊状重合することによって得られる。光反射板用重合性組成物を塊状重合する方法としては、(a)光反射板用重合性組成物を支持体に塗布し、塊状重合する方法、(b)光反射板用重合性組成物を型内に注ぎこみ、塊状重合する方法などが挙げられる。
【0048】
上記(a)の方法に用いる支持体としては、特に限定されないが、金属箔、樹脂フィルム、又は金属若しくは樹脂の板が好ましい。金属箔や金属板を構成する材料としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、及び銀などが挙げられる。また、樹脂フィルムや樹脂板を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、及びナイロンなどが挙げられる。これらの支持体の表面は、例えば、銀、銅、及びニッケルなどによりめっきされていてもよい。支持体として、金属箔または樹脂フィルムを用いる場合における、これらの厚さは、作業性などの観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは3〜75μmである。これらの支持体の表面は平滑であることが好ましい。金属板または樹脂板を用いる場合は、強度の関係から好ましくは50μm〜5mm、より好ましくは100〜3mm、さらに好ましくは200μm〜2mmである。これらの金属板または樹脂板は、所望の形状を有するように、打ち抜き加工などで加工されたものであってもよい。また、光反射板用重合性組成物を支持体に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の塗布方法を採用できる。光反射板用重合性組成物を支持体上に塗布した後、光反射板用重合性組成物を加熱して塊状重合することで、支持体と一体化してなる光反射板が得られる。
【0049】
また、上記(b)の方法で用いる型としては、従来公知の成形型を用いることができる。例えば、それらの空隙部(キャビティー)に光反射板用重合性組成物を注入した後、光反射板用重合性組成物を加熱して塊状重合させることにより、光反射板を得る。なお、成形型の形状、材質、及び大きさなどは特に制限されない。またこの際、例えば、アルミや銅などの金属板などを、所望により、打ち抜き加工などにより予め所望の形状に加工して、金型内に設置した後、光反射板用重合性組成物を注入し、塊状重合することで、かかる金属板などと一体化してなる光反射板を得ることができる。あるいは、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に光反射板用重合性組成物を注入し、光反射板用重合性組成物を加熱して塊状重合させることにより、光反射板を得てもよい。
【0050】
このようにして得られる本発明の光反射板は、上述した本発明の光反射板用重合性組成物を塊状重合することにより得られるものであるため、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れるものである。特に、本発明の光反射板は、波長450nmにおける光反射率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上と高い反射率を有するものである。また、本発明の光反射板としては、その熱伝導率が、通常、0.5W/m・K以上、好ましくは0.8W/m・K以上、より好ましくは1.0W/m・K以上と高いものが好適である。熱伝導率の上限は特に限定されないが、通常、50W/m・K程度である。そのような熱伝導率を有する光反射板は放熱特性に優れる。かかる所望の特性を有する光反射板は、例えば、本明細書に記載の配合に従って調製される本発明の重合性組成物を用いて効率よく製造することができる。
【0051】
加えて、本発明の光反射板は、上述した本発明の光反射板用重合性組成物を塊状重合することにより生産されるものであるため、優れた生産効率で生産することができるものである。すなわち、塊状重合における硬化温度が200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下と比較的低い温度で、かつ、硬化時間が30分以下、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下と比較的短い時間で、塊状重合を行なうことができ、しかも、得られる重合体を、高いコンバージョン(重合転化率)を有するものとすることができる。具体的には、得られる重合体の残留モノマー含有量(40℃から260℃まで加熱した際の加熱減量)を、好ましくは2重量%、より好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下と低く抑えることができる。このように、得られる重合体を、高いコンバージョンを有するものとすることができ、得られる重合体の残留モノマー含有量を低減できることにより、ハンダリフロー中の膨れを防止することができ、さらには、本発明の光反射板を、後述する発光素子搭載用基板及び発光装置に用いた場合に、封止剤との接着界面を良好なものとすることができる。なお、前記硬化温度の下限としては、通常、50℃程度であり、前記硬化時間の下限としては、通常、10秒程度である。
特に、本発明においては、光反射板のサイズを、通常、厚さ、長さ、及び幅の合計長(以下、合計長という。)が2.5cm以下(例えば、厚さ0.5cm×長さ1cm×幅1cmの光反射板)、好ましくは合計長が2cm以下(例えば、厚さ0.3cm×長さ0.8cm×幅0.8cmの光反射板)、より好ましくは合計長が1.5cm以下(例えば、厚さ0.1cm×長さ0.6cm×幅0.6cmの光反射板)、という非常に小さなものとした場合でも、前記硬化温度及び硬化時間にて、本発明の重合性組成物を塊状重合することができ、得られる重合体を、高いコンバージョン(重合転化率)を有するものとすることができるため、発光装置の小型化に適切に対応することができる。このように前記条件にて非常に小さなスケールで塊状重合を行って高いコンバージョンが得られるのは、本発明の重合性組成物に特有の性質であると思われ、従来の塊状重合の様式からは予想外の性質である。
【0052】
(発光素子搭載用基板、発光装置)
本発明の発光素子搭載用基板は、発光素子を搭載するための配線を備える基材上に、上記した本発明の光反射板を備えてなるものである。前記基材とは、プリント配線板を構成しうる絶縁性の基材である。その材質は特に限定されないが、例えば、ガラスエポキシ、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シアネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、及びポリシクロオレフィンなどが挙げられる。
本発明の発光素子搭載用基板においては、発光素子による光を効率的に反射するために、光反射板は、発光素子を搭載するための領域を周囲するように配置されていることが好ましい。本発明の発光素子搭載用基板は、例えば、金属箔からの打ち抜きやエッチング等の方法により、基材上に金属配線を形成し、この金属配線上に、発光素子を搭載するための領域を周囲するように、1又は複数の光反射板を形成することにより製造することができる。なお、金属配線上に光反射板を形成する方法としては、例えば、基材上の金属配線を所望の形状の金型(発光素子を搭載するための領域を周囲するように、光反射板を形成可能な形状を有する金型)内に配置し、該金型内に、上述した本発明の光反射板用重合性組成物を充填し、これを塊状重合する方法などが挙げられる。
【0053】
また、本発明の発光装置は、基板上に、発光素子を実装し、実装した発光素子を周囲するように、上記した本発明の光反射板を配置するとともに、実装した発光素子を封止剤にて封止することにより、形成される。本発明の発光装置は、例えば、上述した発光素子搭載用基板上に、発光素子を実装し、次いで、実装した発光素子を封止剤にて封止することにより製造することができる。
【0054】
発光素子としては、特に限定されないが、ZnSeやGaNなど種々の半導体を用いたものが挙げられる。なかでも、蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものが好ましい。また、この窒化物半導体には、任意に、ボロンやリンを含有させてもよい。
【0055】
また、封止剤としては、特に限定されず、各種樹脂材料を含有する樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂材料としては、通常、シリコーン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性、耐候性、低収縮性及び耐変色性の観点から、エポキシ樹脂、及びシリコーンが特に好ましい。また、これらの成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、封止剤には、蛍光物質、反応抑制剤、酸化防止剤、光安定剤、及び変色防止剤等を含有しさせてもよい。
特に、エポキシ樹脂としては、芳香環を持たない脂環式エポキシが好ましい。また、シリコーンとしては、ゴム及び樹脂のいずれでもよい。また、樹脂組成物としては、付加反応硬化型、縮合反応硬化型、及びUV硬化型等のいずれでもよいが、速やかに硬化させることができる点で、付加反応硬化型樹脂組成物が好ましく、なかでも、室温硬化型又は加熱硬化型の組成物が好ましい。付加反応硬化型樹脂組成物としては、シリコーンと、該シリコーンを硬化させる硬化剤と、必要に応じて、硬化触媒等を配合した組成物であることが好ましい。この組成物は、通常、ビニル基等の官能基を有するシリコーンと、分子中にS i − H 結合を有する重合体(例えば、LPS-5547、KJR-9022、LPS-3419A、及びLPS-3419B、いずれも信越化学社製)と、硬化触媒(白金系触媒、パラジウム系触媒等;例えば、C-5547やC-9022、共に信越化学社製)とからなる組成物である。
【0056】
本発明の発光素子搭載用基板及び発光装置は、光反射率が高く、低吸水率であり、耐ハンダリフロー性に優れた本発明の光反射板を用いてなるものであるため、発光輝度が高く、さらには、長期間使用した場合における安定性に優れるものである。そのため、本発明の発光素子搭載用基板及び発光装置は、複数の発光装置が配列されて構成される発光モジュールや、このような発光モジュールを備える照明装置に好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における各特性は、以下の方法に従い測定し、評価した。
【0058】
(1)光反射率
光反射板サンプルについて、色差計(Spectrophotometer SE2000、日本電色工業株式会社製)を用いて、波長450nmにおける光反射率を測定した。
【0059】
(2)加熱減量
示差熱天秤(TG−DTA、EXSTER TG/DTA7200、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、光反射板サンプルを、40℃から260℃まで加熱した際における加熱減量を求めた。なお、加熱減量は、下記式に従って求めた。
加熱減量(%)={(加熱前のサンプルの重量−加熱後のサンプルの重量)/加熱前のサンプルの重量}×100
【0060】
(3)ハンダリフロー試験
光反射板サンプルを、260℃で10秒間の条件で、ハンダリフロー装置(HAS−6116H、日本アントム社製)内に入れる操作を3回繰り返すことにより、ハンダリフロー試験を行った。そして、ハンダリフロー試験を行った後の光反射板を目視にて観察することで、耐ハンダリフロー性を、下記の基準で評価した。
○:膨れが全く発生しなかった。
×:膨れが発生した。
【0061】
(4)熱伝導率
光反射板サンプルを用いて、迅速熱伝導率計(QTM−500、京都電子工業株式会社製)により、熱伝導率(単位:W/m・K)の測定を行なった。なお、熱伝導率の測定は、非定常熱線比較法により行なった。
【0062】
(5)吸水率
光反射板サンプルを、厚さ1mm×長さ5cm×幅5cmの大きさに加工することにより、試験片を得た。そして、得られた試験片を、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に240時間入れ、恒温恒湿槽に入れる前後の試験片の重量変化率から、下記式に従って、吸水率を求めた。
吸水率(%)={(恒温恒湿槽に入れた後の試験片の重量−恒温恒湿槽に入れる前の試験片の重量)/恒温恒湿槽に入れる前の試験片の重量}×100
【0063】
実施例1
ガラス製フラスコ中で、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させることにより、触媒液を調製した。
【0064】
また、上記とは別に、ヘンシェルミキサー内に、平均粒子径1.06μmのアルミナ(Al−47−1、昭和電工株式会社製)1000部を入れて、攪拌しながら、シランカップリング剤としてのノルボルニルトリエトキシシラン(S−5080、信越化学工業株式会社製)10部を噴霧し、次いで、120℃で15分間攪拌することで、シランカップリング剤で表面処理したアルミナ(表面処理アルミナ)を得た。
【0065】
さらに、上記とは別に、反応容器内に、シクロオレフィンモノマー〔ジシクロペンタジエン:ジシクロペンタジエン三量体=90:10(重量比)〕100部、及び上記にて得られた表面処理アルミナ300部を入れ、これに白色顔料としての塩素法ルチル型酸化チタン〔平均粒子径0.25μm、酸化チタン含有量90%;タイペーク(登録商標)CR−90、石原産業株式会社製〕15部、分散剤としてのアルミネート系カップリング剤〔プレンアクト(登録商標)AL−M、味の素ファインテクノ株式会社製〕0.5部を加えて、ホモジナイザーにより、9000rpmで15分間攪拌することにより、モノマー液を得た。
【0066】
そして、上記にて得られたモノマー液に、上記にて得られた触媒液を、モノマー液100g当たり0.12mLの割合で加えて、攪拌することにより、光反射板用重合性組成物を得た。なお、得られた光反射板用重合性組成物におけるアルミナの体積分率は43体積%であった。体積分率は、各成分の比重と量比から求めた。
【0067】
得られた光反射板用重合性組成物を、厚さ1mm×長さ100mm×幅100mmの平板成形用の金型(一対のヒーター付きクロームメッキ鉄板に、コの字型スペーサーを挟んでなる金型)に流し込み、金型温度として製品面側温度160℃及び裏面側温度160℃の条件で、5分間加熱成形することで、光反射板サンプルを作製した。そして、得られた光反射板サンプルを用いて、上記(1)〜(5)にしたがい、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
実施例2
モノマー液を調製する際における、無機充填剤としての表面処理アルミナの配合量を300部から、700部に変更した以外は、実施例1と同様にして、光反射板用重合性組成物及び光反射板サンプルを作製し、各評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた光反射板用重合性組成物におけるアルミナの体積分率は64体積%であった。
【0069】
実施例3
平均粒子径1.06μmのアルミナ(Al−47−1、昭和電工株式会社製)の代わりに、平均粒子径35μmのアルミナ(AS−10、昭和電工株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無機充填剤としての表面処理アルミナを得るとともに、モノマー液を調製する際における、無機充填剤としての表面処理アルミナの配合量を300部から、600部に変更した以外は、実施例1と同様にして、光反射板用重合性組成物及び光反射板サンプルを作製し、各評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られた光反射板用重合性組成物におけるアルミナの体積分率は60体積%であった。
【0070】
実施例4
モノマー液を調製する際における、白色顔料としての塩素法ルチル型酸化チタンの配合量を15部から、25部に変更した以外は、実施例1と同様にして、光反射板用重合性組成物及び光反射板サンプルを作製し、実施例1と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
実施例5
平均粒子径1.06μmのアルミナの代わりに、ガラス繊維(MF06JB1−20、長軸の長さ100μm 旭グラストファイバー社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無機充填剤としての表面処理ガラス繊維を得るとともに、得られた表面処理ガラス繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして、光反射板用重合性組成物及び光反射板サンプルを作製し、各評価を行った。実施例5では、表面処理ガラス繊維の配合量は50部とした。結果を表1に示す。なお、得られた光反射板用重合性組成物におけるガラス繊維の体積分率は17体積%であった。
【0072】
比較例1
モノマー液を調製する際に、白色顔料としての塩素法ルチル型酸化チタンを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物及び光反射板サンプルを作製し、実施例1と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
比較例2
シランカップリング剤として、ノルボルニルシランの代わりに、トリメトキシエポキシシランン(KBM−403、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無機充填剤としての表面処理アルミナを得た。
次いで、反応容器内に、ビスフェノールエポキシ樹脂〔エピコート(登録商標)827、ジャパンエポキシレジン株式会社製〕100部、上記にて得られた表面処理アルミナ300部、硬化剤としてのヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬工業株式会社製)140部、及び、硬化促進剤としてのテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート(PX−4ET、日本化学工業株式会社製)0.4部を入れ、3本ロールで混練することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂組成物を、実施例1と同様の金型を用い、実施例1と同様の条件で加熱成形することにより、光反射板サンプルを作製し、実施例1と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
比較例3
加熱成形する際の加熱成形時間を5分から120分に変更した以外は、比較例2と同様にして、光反射板サンプルを作製し、実施例1と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
比較例4
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を2290.9g(13.79モル)、イソフタル酸を981.8g(5.91モル)、ジアミン成分として1,6−ヘキサンジアミンを2324.2g(20.00モル)、安息香酸73.27g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(原料に対して0.1%)および蒸留水6リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは2.16MPa(22kgf/cm)まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.16MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を0.98MPa(10kgf/cm)まで下げ、更に1時間反応させて、極限粘度[η]が0.25dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.13×10−4MPa(0.1mmHg)下にて、10時間固相重合し、融点が302℃、極限粘度[η]が1.00dl/g、末端の封止率が86%である白色のポリアミドを得た。
【0076】
また、シランカップリング剤として、ノルボルニルシランの代わりに、トリメトキシエポキシシランン(KBM−403、信越化学工業株式会社製)を用いるとともに、平均粒子径1.06μmのアルミナの代わりに、ガラス繊維(MF06JB1−20、長軸の長さ100μm 旭グラストファイバー社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面処理ガラス繊維を得た。
【0077】
そして、上記にて得られたポリアミドを、120℃で24時間乾燥し、乾燥したポリアミド100部に対し、上記にて得られた表面処理ガラス繊維30部、及び塩素法ルチル型酸化チタン(タイペークCR−90、石原産業株式会社製)15部をブレンドし、2軸押出機で、溶融混練(シリンダー温度350℃、金型温度150℃)することで、ペレット化した。得られたペレット化樹脂を、シリンダー温度350℃で金型温度150℃にて金型内に射出成形した。金型内に樹脂を射出してから脱型まで1分間の時間で行い、厚さ1mmの光反射板サンプルを作製し、実施例1と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1より、実施例1〜5で得られた光反射板サンプルは、光反射率がいずれも高く、しかも吸水率が低いことがわかる。また、実施例1〜5で得られた光反射板サンプルは、塊状重合による硬化条件を160℃で5分間と短時間とした場合でも、加熱減量が低く抑えられており、高コンバージョンであり、耐ハンダリフロー性に優れるものであった。
【0080】
一方、白色顔料としての塩素法ルチル型酸化チタンを配合しなかった比較例1では、光反射率が劣る結果となった。また、シクロオレフィンモノマーの代わりに、ビスフェノール樹脂を用いた比較例2,3では、吸水率に劣る結果となった。特に、ビスフェノール樹脂を用いた場合において、成形時間を実施例1〜5と同様に、5分間とした場合には、加熱減量が高くなる結果であった(比較例2)。
さらに、シクロオレフィンモノマーの代わりに、ポリアミドを使用した比較例4においては、吸水率及び耐ハンダリフロー性に劣る結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、無機充填剤、及び白色顔料を含有してなる光反射板用重合性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光反射板用重合性組成物を塊状重合してなり、波長450nmにおける光反射率が80%以上である光反射板。
【請求項3】
発光素子を搭載するための配線を備える基材上に、請求項2に記載の光反射板を備えてなる発光素子搭載用基板。
【請求項4】
基板と、前記基板に実装された発光素子と、前記発光素子を周囲する光反射板と、前記発光素子を封止する封止剤とを備え、前記光反射板が、請求項2に記載の光反射板である発光装置。

【公開番号】特開2012−63430(P2012−63430A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205735(P2010−205735)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】