説明

光回路アセンブリ

【課題】光回路にプリント配線板を精度良く、簡易に実装できる光回路アセンブリを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による光回路アセンブリは、導波路型光回路と、プリント配線板とから構成される。導波路型光回路は、平面基板上に形成された光導波路と、光導波路上に形成された抵抗発熱体と、抵抗発熱体と電気的に接続された電極とを有する。プリント配線板は、配線と、電極と、開口窓とを有する。導波路型光回路の電極とプリント配線板の電極とが電気的に接続されるようにプリント配線板の開口窓を設けることにより、光回路にプリント配線板を精度良く、簡易に実装することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導波路型光回路とプリント配線板からなる光回路アセンブリに関し、より詳細には、光回路アセンブリの小型化、プリント配線板の高精度実装、導波路型光回路の放熱性向上を実現した光回路アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来の光回路アセンブリの一例を示す(特許文献1を参照)。図1に示すよう、平面基板912上に光導波路901、902と、光導波路901、902上に抵抗発熱体931、932とが形成され、抵抗発熱体931、932の両端は、それぞれ電気配線951〜954によって、平面基板の端面近傍に設けられた電極端子961〜964に電気接続されている。
【0003】
この平面基板912の端面近傍に、電気コネクタ915と、配線991〜994と、電極981〜984とからなるプリント基板916が設置され、プリント基板916の電極981〜984と、平面基板912の電極端子961〜964とが、ボンディングワイヤ971〜974で電気的に接続されている。電気コネクタ915には、外部より電気ケーブルが装着でき、外部電源に接続することができる。このように、パッケージ917の外部より、プリント基板916を通して、平面基板912の電極端子961〜964に給電でき、抵抗発熱体931、932を駆動することができる。
【0004】
しかし、従来は、平面基板上の抵抗発熱体に給電するため、この導波路型光回路とは別に、プリント基板を設置する必要があり、パッケージが大きくなるという問題があった。特に、近年は光回路アセンブリの小型化が要求されており、導波路型光回路の小型化は進んでいる一方で、電気配線に必要な領域はそれほど変わらないため、給電用プリント基板の占める割合が年々大きくなっている。
【0005】
そこで、電気配線の問題を解消するための方法が検討されてきた。
【0006】
図2に、従来の光回路アセンブリの一例を示す(特許文献2を参照)。図2(a)に示すように、平面基板912上に光導波路901、902と、光導波路901、902上に抵抗発熱体931、932とが形成され、抵抗発熱体931、932の両端は、それぞれ電気配線951〜954によって、平面基板912の端面以外の位置に並べて設置された電極端子961〜964に電気接続されている。
【0007】
そして、この平面基板912上には、図2(b)に示すように、配線991〜994と、電極981〜984とが形成されたプリント配線板918が、図2(c)に示すように、実装されている。ここで、プリント配線板918の電極981〜984は、プリント配線板の裏面に形成されており、平面基板912上の導波路型光回路の電極端子961〜964と、プリント配線板918の電極981〜984とが、異方性導電膜によって、電気的に接続されている。ここで、異方性導電膜とは、熱硬化性樹脂内に導電粒子を含有させたもので、電極の間に挟んで加熱・加圧することにより、接着剤樹脂が流動し、垂直方向のみに導電性を示す性質を持つ材料である。
【0008】
このように、導波路型光回路が形成された平面基板にプリント配線板を実装することで、外部から直接給電することができ、給電用プリント基板が不要となる。そのため、光回路アセンブリを小型にすることができる。
【0009】
例えば、本手法は、光分岐部と、光結合部と、これら光分岐部と光結合部に挟まれた複数の光導波路からなる光路長差付与部と、光路長差付与部の光導波路上に形成された抵抗発熱体とからなるマッハツェンダ干渉計を基本素子としたマトリクススイッチ(非特許文献1)に適用されている。また、1×Nスイッチ(非特許文献2、3)や、多連スイッチ(非特許文献4)など、その他の任意の導波路型光回路に適用することで、小型な光回路アセンブリを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−004014号公報
【特許文献2】特開2004−233737号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S. Sohma et al., “Silica-based PLC Type 32 x 32 Optical Matrix Switch,” ECOC2006, Sept. 2006.
【非特許文献2】T. Watanabe et al., “Silica-based PLC 1×128 thermo-optic switch,” ECOC2001, Oct. 2001.
【非特許文献3】K. Suzuki et al., “High-Speed Optical 1 × 4 Switch Based on Generalized Mach Zehnder Interferometer With Hybrid Configuration of Silica-Based PLC and Lithium Niobate Phase-Shifter Array,” Photonics Technology Letters Vol. 19, no. 9, pp. 674-676, May. 2007.
【非特許文献4】T. Goh et al., “Port Scalable PLC-Based Wavelength Selective Switch with Low Extension Loss for Multi-Degree ROADM/WXC,” OFC2008, Feb. 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の光回路アセンブリでは、平面基板に直接プリント配線板を実装することで、給電用プリント基板が不要となり、モジュールを小さくできるが、プリント配線板の実装誤差による接続不良、製造工程の負担増、抵抗発熱体の熱による温度上昇という、新たな問題が生じた。
【0013】
異方性導電膜を用いてプリント配線板の電極と平面基板上の電極端子を電気的に接続する方法では、プリント配線板にはポリイミドなどの柔軟な材料が一般的に用いられる。ところが柔軟な材質のため、平面基板上のアライメントマーカを目印にプリント配線板の縦横方向を高精度に合わせるのは難しく、プリント配線板の電極と平面基板上の電極端子の位置がずれ、接続不良が生じることがある。
【0014】
また、プリント配線板は、熱膨張・収縮しやすいので、周囲の温度変化により、プリント配線板の電極の位置ずれが生じやすかった。特に光回路アセンブリを小型にするには、電極端子を密集させる必要があり、位置ずれや、実装工程の負担が大きな問題となる。プリント配線板を複数枚に分け、それぞれを個別に実装すれば、位置合わせ精度の問題を解消できるかもしれないが、部品点数の増加によるコスト増や、実装スペースの増大、平面基板上の電気配線の引き回しによる回路サイズの増大という問題がある。
【0015】
さらに、抵抗発熱体は発熱するので、光回路アセンブリをプリント配線板で覆うと、放熱しにくくなる。そして、温度上昇により、光回路アセンブリ上の導波路型光回路の光学特性変化や、プリント配線板のさらなる位置ずれなどの問題が生じることがある。
【0016】
本発明の目的とするところは、導波路型光回路の電極端子にプリント配線板を直接接続することで小型な光回路アセンブリを実現することにある。また、プリント配線板を高精度に実装し、接続不良を低減し、抵抗発熱体からの熱を放熱した光回路アセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、平面基板上に形成された光導波路と、前記光導波路上に形成された抵抗発熱体と、前記抵抗発熱体と電気的に接続された電極とを有する導波路型光回路と、配線と電極とを有するプリント配線板とを備えた光回路アセンブリであって、前記プリント配線板は、前記導波路型光回路の電極と前記プリント配線板の電極とが電気的に接続されるようにする開口窓を有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光回路アセンブリであって、前記開口窓は、前記プリント配線板の電極の近傍に設けられ、前記導波路型光回路の電極の近傍に配置されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光回路アセンブリであって、前記プリント配線板の電極は、プリント配線板の裏面に形成され、前記導波路型光回路の電極と前記プリント配線板の電極とは、異方性導電膜によって電気的に接続されることを特徴とする。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光回路アセンブリであって、前記プリント配線板の電極は、プリント配線板の上面に形成され、前記導波路型光回路の電極と前記プリント配線板の電極とは、ボンディングワイヤによって電気的に接続されることを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、前記プリント配線板は、前記抵抗発熱体の上に配置される開口窓をさらに有することを特徴とする。
【0022】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、前記導波路型光回路は、列状に並べられた複数のペアの電極を有し、前記開口窓は、前記導波路型光回路の電極ごとに設けられたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2から5のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、前記導波路型光回路は、列状に並べられた複数のペアの電極を有し、前記開口窓は、前記導波路型光回路の複数の電極ごとに設けられたことを特徴とする。
【0024】
また、請求項8に記載の発明は、請求項2から5のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、前記導波路型光回路は、列状に並べられた複数のペアの電極を有し、前記開口窓は、前記列状に並べられた複数のペアの電極に対応して列状に設けられたことを特徴とする。
【0025】
また、請求項9に記載の発明は、請求項6から8のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、前記導波路型光回路は、平面基板上に多連に形成された複数のマッハツェンダ干渉計を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、前記導波路型光回路は、複数の平面基板から構成され、前記プリント配線板は、単一の板から構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明を適用することにより、平面基板にプリント配線板を精度良く、位置ずれもなく、簡易に実装でき、小型な光回路アセンブリを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の光回路アセンブリの一例を示す図である。
【図2】従来の光回路アセンブリの別の一例を示す図であり、図2(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図2(b)は、プリント配線板の裏面を示し、図2(c)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示している。
【図3】本発明の第1実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図であり、図3(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図3(b)は、プリント配線板の裏面を示し、図3(c)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示している。
【図4】本発明の第2実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図であり、図4(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図4(b)は、プリント配線板の裏面を示し、図4(c)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示している。
【図5】本発明の第3実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図であり、図5(a)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示し、図5(b)は、線分A−Aの断面図を示し、図5(c)は、線分B−Bの断面図を示している。
【図6】本発明の第4実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図であり、図6(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図6(b)は、プリント配線板の上面を示している。
【図7】図6においてプリント配線板が実装された光回路アセンブリを示し、図7(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリの線分A−Aの断面図を示し、図7(b)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリの線分A−Aの断面図を示している。
【図8】本発明の第5実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図であり、図8(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図8(b)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示している。
【図9】本発明の第6実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図であり、図9(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図9(b)は、プリント配線板の裏面を示し、図9(c)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示している。
【図10】本発明の第6実施形態における光回路アセンブリの別の一例を示す図であり、図10(a)は、プリント配線板が実装される前の光回路アセンブリを示し、図9(b)は、プリント配線板が実装された光回路アセンブリを示している。
【図11】本発明の第6実施形態における光回路アセンブリのさらに別の一例を示す図である。
【図12】本発明の第6実施形態における光回路アセンブリのさらに別の一例を示す図である。
【図13】本発明の第7実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図である。
【図14】本発明の第7実施形態における光回路アセンブリの別の一例を示す図である。
【図15】本発明の第8実施形態における光回路アセンブリの一例を示す図である。
【図16】本発明の平面基板上に形成された導波路型光回路の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を具体的に説明する。
(第1の実施形態)
図3に、本発明の第1実施形態における光回路アセンブリを示す。
図3(a)に示すように、この光回路アセンブリは、平面基板131上に、光導波路121、122と、光導波路121、122上に形成された抵抗発熱体201、202と、抵抗発熱体201、202の両端から電気配線501〜504を通して設けられた電極端子601〜604とからなる導波路型光回路を備えている。また、平面基板上には、配線板の外枠の位置合わせを行うためのアライメントマーカ401、402や、配線板の内側の位置合わせを行うためのアライメントマーカ403、404が形成されている。
【0030】
図3(b)に、平面基板上に設置するプリント配線板151の裏面の構成を示す。基材上に配線551〜554と、電極651〜654とが形成されている。ここで、プリント配線板151の面内に、開口窓301、302が設けられている。
【0031】
図3cに、平面基板131にプリント配線板151を設置した光回路アセンブリを示す。まず、プリント配線板151の外枠が、平面基板上に形成されたアライメントマーカ401、402に概ね合うよう設置する。次に、プリント配線板151に形成した開口窓301、302が、平面基板上に形成されたアライメントマーカ403、404に合うよう、プリント配線板151の角度と、縦横方向の位置を微調整する。
【0032】
具体的な数値例を示す。平面基板131上の光導波路121、122のコア幅は4.5μm、コア厚は4.5μmとした。抵抗発熱体201、202の幅は0.1mm、長さは1mmとした。電極端子601〜604は長さ1mm、幅0.5mmとし、光導波路121、122から1mm離れた位置に形成して、幅0.3mmの電気配線で抵抗発熱体と電気的に接続した。平面基板131上のアライメントマーカ401、402は、幅0.1mmの光導波路で描き、基板端面から2mm離れた位置に配置した。平面基板131上のアライメントマーカ403、404は、幅0.1mm、長さ0.5mmの光導波路を縦横方向に描くことで形成した。プリント配線板151の電極651〜654は長さ1mm、幅0.4mm、配線551〜554は幅0.2mmとした。開口窓301、302は、幅0.2mm、長さ0.6mmの長方形を縦と横に重ねた十字型の形状で形成した。
【0033】
なお、本実施形態では、プリント配線板151の外枠の位置を合わせるためのアライメントマーカ401、402も使用したが、これらのマーカがなくても、精度良く位置を合わせることができる。また、開口窓の形状として、単純な正方形ではなく、十字型にすることで、縦横の両軸を合わせられるようにしたが、三角形、円形、楕円形、長方形、文字形状、縦線と横線の組み合わせなど、任意の形状の開口窓を用いることができる。また、平面基板とプリント配線板で、形状が違っていても良い。
【0034】
このように、プリント配線板151の内側に開口窓を設け、平面基板上に形成されたアライメントマーカと合わせることで、プリント配線板151と平面基板131の縦横方向の位置を高精度で合わせることができた。
【0035】
以上、本実施形態を適用することにより、電極端子の接続不良が解消され、製造工程の負担が軽減された。
【0036】
(第2の実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態における光回路アセンブリを示す。
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、プリント配線板151の面内の開口窓301〜304を、平面基板131上に形成された電極端子601〜604の近傍に設けた。開口窓を、平面基板上の電極端子とプリント配線板の電極の近傍に設け、平面基板上に形成された電極端子と合わせることで、アライメントマーカを介することなく、両者の面内位置を直接高精度で合わせられるようになる。
【0037】
具体的な数値例を示す。平面基板131上の光導波路121、122のコア幅は9μm、コア厚は9μmとした。抵抗発熱体201、202の幅は0.05mm、長さは2mmとした。電極端子601〜604は長さ2mm、幅0.5mmとし、光導波路121、122から3mm離れた位置に形成して、幅0.1mmの電気配線で抵抗発熱体と電気的に接続した。平面基板131上のアライメントマーカ401、402は、幅0.2mmの電気配線で描き、基板端面から3mm離れた位置に配置した。プリント配線板151の電極651〜654は長さ1.9mm、幅0.3mm、配線551〜554は幅0.1mmとした。開口窓301〜304は、幅0.25mm、長さ0.4mmの長方形の形状に形成した。上記数値は一例であり、その他の寸法を用いることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3実施形態における光回路アセンブリを示す。
本実施形態では、図5(a)に示すように、電極が裏面に形成されたプリント配線板が平面基板上に設置され、プリント配線板の電極と平面基板の電極端子とが、異方性導電膜によって電気的に接続されている。
【0039】
図5(b)に線分A−Aの切断面、図5(c)に線分B−Bの切断面を示す。基板181上にクラッド182と、コア183とが形成され、クラッド182の上面には、電極端子185と、電極端子185以外を覆う絶縁膜184とが形成されている。なお、ここでは、電気配線と電極端子は同じ材質で形成しているが、そのうち絶縁膜184で覆った部分を電気配線とし、絶縁膜184で覆わず、上面を電気的に接続できる部分を電極端子としている。プリント配線板は、基材191、カバー192、および配線193または電極194から構成されており、電極194以外の部分はカバー192で覆われている。また、プリント配線板は、電極端子185と電極194の近傍に開口窓195を有する。平面基板とプリント配線板の間には、熱硬化性樹脂186に導電粒子187を含有させた異方性導電膜が挟まれ、プリント配線板の上面から加熱・加圧することにより、接着剤樹脂が流動し、垂直方向のみに導通して、電極端子185と電極194が電気的に接続される。
【0040】
具体的な数値例を示す。プリント配線板として、フレキシブル配線板を用い、基材191とカバー192は厚さ25μmの薄膜を、電極194は厚さ10μmの薄膜で形成した。導電膜として、熱硬化性接着剤樹脂に平均粒子径3μmの金属粒子を含有させた異方性導電膜を用いた。基板として、シリコン基板を用い、石英系光導波路を形成した後、厚さ3μmの電気配線、厚さ3μmの電極端子、厚さ6μmの絶縁膜を装荷した。上記数値は一例であり、任意の材質や寸法を用いることができる。
【0041】
(第4の実施形態)
図6に、本発明の第4実施形態における光回路アセンブリを示す。
図6(a)に示すように、この光回路アセンブリは、平面基板131上に、光導波路121、122と、光導波路121、122上に形成された抵抗発熱体201、202と、抵抗発熱体201、202の両端から電気配線501〜504を通して設けられた電極端子601〜604とからなる導波路型光回路を備えている。
【0042】
図6(b)に示すように、プリント配線板151の上面には、配線551〜554と、電極651〜654とが形成されている。また、プリント配線板151の面内に、開口窓301〜304が形成されている。第3の実施形態と大きく異なるのは、配線や電極がプリント配線板の上面に形成されている点にある。また、第1〜3の実施形態と違って、開口窓301〜304は電極651〜654全体を平行移動させた位置に形成され、開口窓301〜304は平面基板の電極端子と同程度の大きさであることを特徴とする。
【0043】
図7に、平面基板にプリント配線板を設置した光回路アセンブリを示す。平面基板131にプリント配線板を設置する際に、図7(a)に示すように、プリント配線板151に形成した開口窓301〜304が、平面基板上に形成された電極端子601〜604に合うよう、プリント配線板151の角度と、縦横方向の位置を微調整する。なお、平面基板上に、プリント配線板151の外枠に沿ったアライメントマーカ401、402も形成したが、本実施形態では、これらのマーカは使用しなくてもよい。
【0044】
図7(b)に、平面基板131にプリント配線板151を実装する前の線分A−Aの切断面を示し、図7(c)に、平面基板131にプリント配線板151を設置し、ボンディングワイヤ188で、電極端子185と電極194を電気的に接続した後の線分A−Aの切断面を示す。
【0045】
第3の実施形態と異なり、本実施形態では、平面基板上の電極端子185と、プリント配線板上の電極194が異なる面上に形成されているので、たとえ位置ずれが生じたとしても、両者の接触不良を防ぐことができる。
【0046】
具体的な数値例を示す。平面基板131上の光導波路121、122のコア幅は7μm、コア厚は7μmとした。抵抗発熱体201、202の幅は0.07mm、長さは3mmとした。電極端子601〜604は長さ1mm、幅0.25mmとし、光導波路121、122から5mm離れた位置に形成して、幅0.2mmの電気配線で抵抗発熱体と電気的に接続した。平面基板131上のアライメントマーカ401、402は、幅0.05mmの電極端子で描き、基板端面から1mm離れた位置に配置した。プリント配線板151の電極651〜654は長さ1mm、幅0.25mm、配線551〜554は幅0.2mmとした。電極651〜654は、横方向位置は電極端子601〜604と同じにし、縦方向位置は、電極端子601〜604から、0.5mm離れた位置に配置した。開口窓301〜304は、幅0.27mm、長さ1.02mmの長方形の形状に形成した。ボンディングワイヤ188、電極端子185、電極194の材質としてAuを用いたが、その他の材料を用いても良い。上記数値は一例であり、その他の寸法を用いることができる。
【0047】
以上、本実施形態を適用することにより、プリント配線板を平面基板上に精度良く実装でき、また、電極端子の接続不良を予防することができる。
【0048】
(第5の実施形態)
図8に、本発明の第5実施形態における光回路アセンブリを示す。
本実施形態のプリント配線板は、第2実施形態と似ているが、平面基板上に形成された抵抗発熱体の位置に、放熱用の開口窓が設けられた点が異なる。
【0049】
図8(a)に示すように、プリント配線板151の上面に、放熱用の開口窓305、306が設けられている。図8(b)に、このプリント配線板151を平面基板131上に実装した様子を示す。抵抗発熱体201と202の上部に開口窓305と306が設けられ、抵抗発熱体を駆動しても放熱できるので、温度上昇を防ぐことができる。それにより、光回路アセンブリ上の導波路型光回路の光学特性変化や、プリント配線板のさらなる位置ずれなどの問題を解消することができる。
【0050】
具体的な数値例を示す。平面基板上に形成された導波路型光回路は、第2実施形態と同じものを用い、新たに追加した開口窓305、306は、幅0.07mm、長さ2.22mmの長方形の形状に形成した。もちろん、その他の寸法にしても良い。
【0051】
(第6の実施形態)
図9に、本発明の第6実施形態における光回路アセンブリを示す。
図9(a)に示すように、この光回路アセンブリは、平面基板131上に、光導波路121〜124と、光導波路121〜124上に形成された抵抗発熱体201〜204と、抵抗発熱体201〜204の両端から電気配線501〜508を通して設けられた電極端子601〜608とからなる導波路型光回路を備えている。これらの導波路型光回路の電極端子601〜604と、電極端子605〜608とは、それぞれ列状に並べられている。すなわち、図9においては、導波路型光回路と電極端子が、共に列状に並べられている。
【0052】
図9(b)に、本実施形態の平面基板上に設置するプリント配線板151の裏面の構成を示す。基材上に配線551〜558と、電極651〜658とが形成されており、プリント配線板151の面内に、開口窓301〜312が設けられている。ここで、開口窓301〜308は、電極端子601〜608ごとに設けられている。また、開口窓309〜312は、抵抗発熱体201〜204の位置に設けられている。開口窓309〜312は本実施形態に必須ではないが、第5実施形態の放熱効果も取り入れたい場合は、設けても良い。
【0053】
図9(c)に、平面基板131にプリント配線板151を設置した光回路アセンブリを示す。
【0054】
本実施形態の特徴は、複数の導波路型光回路を有する光回路アセンブリにおいて、平面基板上の電極端子が列状に並べられていることにある。このように、電極端子を列状に並べることで、プリント配線板を平面基板上に設置する際に、まとめて電気的に接続できるので、実装工程を簡素化できる。また、個々の電極端子ごとにプリント配線板に開口窓を開けることで、いずれの電極端子も精度良く、プリント配線板の電極と接続することができる。
【0055】
なお、図9(b)に示したプリント配線板151を真中で分断し、電極651〜654側と、電極655〜658側の2枚のプリント配線板をそれぞれ従来のように貼り付けることも考えられる。そうすれば、平面基板上の電極端子とプリント配線板の電極を精度良く接続できるし、抵抗発熱体を避ければ放熱の問題もない。しかし、プリント配線板が複数ではなく、1枚であれば、プリント配線板の他方に接続される電気コネクタが1つで良く、部品点数を抑えられるし、2枚よりも1枚の方が、実装に必要なスペースが小さくて済み、光回路アセンブリを小型にできる。また、1枚の方が実装作業をしやすい。
【0056】
具体的な数値例を示す。平面基板131上に、光導波路121〜124を1mmピッチで配置し、コア幅は3μm、コア厚は3μmとした。抵抗発熱体201〜204の幅は0.02mm、長さは1mmとした。電極端子601〜608は長さ0.5mm、幅0.2mmとし、光導波路121〜124から0.5mm離れた位置に形成して、幅0.05mmの電気配線で抵抗発熱体と電気的に接続した。このとき、電極端子601〜604は、隣り合う電極端子との縦方向の距離が1mmであり、電極端子605〜608は、隣り合う電極端子との縦方向の距離が1mmである。プリント配線板151の電極651〜658は長さ0.4mm、幅0.2mm、配線551〜558は幅0.05mmとした。開口窓301〜308は、幅0.2mm、長さ0.3mmの長方形の形状に形成した。開口窓309〜312は、幅0.04mm、長さ1.12mmの長方形の形状に形成した。
【0057】
上記数値は一例であり、その他の寸法を用いることができる。
【0058】
また、図9に示したように、プリント配線板を、導波路型光回路の光が伝搬する方向に対し、垂直方向に設置したが、図10に示したように、プリント配線板を、導波路型光回路の光が伝搬するのと同じ方向に設置してももちろん良い。
【0059】
さらに、図11に示すように、平面基板上に形成された複数の電極端子ごとに、プリント配線板の開口窓が開けるようにしてもよい。このように、複数の電極端子を束にし、開口窓を束ごとに開けることで、まとめて位置合わせができ、図10の場合よりも素早く位置合わせができる。
【0060】
図12に示すように、平面基板上に形成された列状の電極端子に対応して、プリント配線板の開口窓が列状に開けるようにしてもよい。このように、開口窓を列状に開けることで、列ごとにまとめて位置合わせができ、図9の場合よりも素早く位置合わせが可能となる。
【0061】
(第7の実施形態)
図13に、本発明の第7実施形態における導波路型光回路を示す。
この導波路型光回路は、光カプラ143、144と、これら光カプラに挟まれた光導波路141、142からなる光路長差付与部と、光カプラ143に接続された入力ポートと、光カプラ144に接続された出力ポートとで構成されている。また、光路長差付与部の光導波路141、142上には、それぞれ抵抗発熱体201、202が形成されている。
【0062】
このような干渉計型の導波路型光回路では、光路長差付与部付近に応力がかかると、その光学特性が変化しやすいので、抵抗発熱体201、202に直接電極端子を接続するのではなく、電気配線501〜504を通して、光導波路141、142から離した位置に電極端子を形成する。もちろん、電極端子を形成したことによる光学特性への影響を加味して、抵抗発熱体201、202に電極端子を直接接続しても良く、そうした方がより小型にできるが、本実施形態では、電気配線を通して、電極端子を離した位置に形成している。このような導波路型光回路は、マッハツェンダ干渉計と呼ばれ、導波路型光回路の基本素子として用いられている。
【0063】
図14に、図13のマッハツェンダ干渉計素子を平面基板上に多連に形成した回路例を示す。2分岐MZI素子701に、2分岐MZI素子702、703が接続され、4分岐791が構成されている。4分岐791の4つの出力には、それぞれゲートMZI素子711、731、751、771が接続され、ゲートMZI素子711、731、751、771の一方の出力に、2段目のゲートMZI素子712、732、752、772が接続され、ゲートMZI素子711、731、751、771の他方の出力に、ゲートMZI素子721、741、761、781と、それに続く、2段目のゲートMZI素子722、742、762、782が接続されている。ここで、2分岐MZI素子は、一つの入力を二つの出力に切り替える素子で、ゲートMZI素子は、光を透過するか遮断するか切り替える素子である。そして、ゲートMZI素子に関しては、入力と同じ側から出力する場合、光は通過するだけなので、段数としてはカウントしていない。
【0064】
上記導波路型光回路は、一例であり、本発明は任意の導波路型光回路に適用することができる。
【0065】
(第8の実施形態)
図15に、本発明の第8実施形態における導波路型光回路を示す。
図15に示すように、導波路型光回路が形成された複数の平面基板131〜133が相互に接続され、そのうちの平面基板131及び132に、プリント配線板151が実装され、電気的に接続されている。平面基板131〜133には光ファイバ174が接続され、パッケージ177におさめられている。
【0066】
第1〜第7実施形態では、1枚の平面基板のみを扱ったが、本実施形態のように、複数の平面基板をプリント配線板で電気的に接続しても良い。また、それぞれの平面基板が異なる素材のものであっても良い。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明による導波路型回路の作製例を示す。ここでは、シリコン基板上に形成された石英系平面型光回路で作製するものとする。図16にその製造工程を示す。平面基板161上に火炎堆積法でSiO2を主体にした下部クラッドガラススート162、SiO2にGeO2を添加したコアガラススート163を堆積する(図16(a))。その後、1000℃以上の高温でガラス透明化を行う。このとき、下部クラッドガラス層164、コアガラス165は設計した厚さとなるように、ガラスの堆積を行う(図16(b))。引き続き、フォトリソグラフィ技術を用いてコアガラス165上にエッチングマスク166を形成し(図16(c))、反応性イオンエッチングによってコアガラス165のパターン化を行う(図16(d))。エッチングマスク166を除去した後、上部クラッドガラス167を再度火炎堆積法で形成する。上部クラッドガラス167にはB23やP25などのドーパントを添加してガラス転移温度を下げ、それぞれのコアガラス165とコアガラス165の狭い隙間にも上部クラッドガラス167が入り込むようにする(図16(e))。上記工程の後、必要に応じて、抵抗発熱体や断熱溝を形成しても良い。
【0068】
上記で述べた平面型光回路は、主にシリコン基板上の石英系ガラス導波路を用いた例を示したが、その導波路材料がポリイミド、シリコン、半導体、LiNbO3などであってもよい。また、例えばその製造方法が、スピンコート法、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法、イオン拡散法、イオンビーム直接描画法などであっても本発明は適用可能である。また、基板もシリコンに限定するものではなく、石英などその他の材料を用いても良い。また、駆動手段として、抵抗発熱体を用いた熱光学効果を利用したが、電気光学効果、磁気光学効果など、その他の手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0069】
101〜104 入力/出力ポート
121〜124 光導波路
131〜133 平面基板
141、142 アーム導波路
143、144 光カプラ
151 プリント配線板
161 平面基板
162 下部クラッドガラススート
163 コアガラススート
164 下部クラッドガラス
165 コアガラス
166 エッチングマスク
167 上部クラッドガラス
174 光ファイバ
177 パッケージ
181 基板
182 クラッド
183 コア
184 絶縁膜
185 抵抗発熱体
186 熱硬化性樹脂
187 導電粒子
188 ボンディングワイヤ
191 基材
192 カバー
193 配線
194 電極
195 開口窓
201〜204 抵抗発熱体
301〜312 開口窓
401〜404 アライメントマーカ
501〜508 電気配線
551〜558 配線
601〜608 電極端子
651〜658 電極
701〜703 2分岐MZI素子
711、712、721、722、731、732、741、742、751、752、761、762、771、772、781、782 ゲートMZI素子
791 4分岐
901、902 光導波路
912 平面基板
914 光ファイバ
915 電気コネクタ
916 プリント基板
917 パッケージ
918 プリント配線板
931、932 抵抗発熱体
941、942 アライメントマーカ
951〜954 電気配線
961〜964 電極端子
971〜974 ボンディングワイヤ
981〜984 電極
991〜994 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面基板上に形成された光導波路と、前記光導波路上に形成された抵抗発熱体と、前記抵抗発熱体と電気的に接続された電極とを有する導波路型光回路と、
配線と電極とを有するプリント配線板と
を備えた光回路アセンブリであって、前記プリント配線板は、前記導波路型光回路の電極と前記プリント配線板の電極とが電気的に接続されるようにする開口窓を有することを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の光回路アセンブリであって、
前記開口窓は、前記プリント配線板の電極の近傍に設けられ、前記導波路型光回路の電極の近傍に配置されることを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載の光回路アセンブリであって、
前記プリント配線板の電極は、プリント配線板の裏面に形成され、
前記導波路型光回路の電極と前記プリント配線板の電極とは、異方性導電膜によって電気的に接続されることを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項4】
請求項2に記載の光回路アセンブリであって、
前記プリント配線板の電極は、プリント配線板の上面に形成され、
前記導波路型光回路の電極と前記プリント配線板の電極とは、ボンディングワイヤによって電気的に接続されることを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、
前記プリント配線板は、前記抵抗発熱体の上に配置される開口窓をさらに有することを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、
前記導波路型光回路は、列状に並べられた複数のペアの電極を有し、前記開口窓は、前記導波路型光回路の電極ごとに設けられたことを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項7】
請求項2から5のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、
前記導波路型光回路は、列状に並べられた複数のペアの電極を有し、前記開口窓は、前記導波路型光回路の複数の電極ごとに設けられたことを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項8】
請求項2から5のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、
前記導波路型光回路は、列状に並べられた複数のペアの電極を有し、前記開口窓は、前記列状に並べられた複数のペアの電極に対応して列状に設けられたことを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、
前記導波路型光回路は、平面基板上に多連に形成された複数のマッハツェンダ干渉計を備えたことを特徴とする光回路アセンブリ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の光回路アセンブリであって、
前記導波路型光回路は、複数の平面基板から構成され、前記プリント配線板は、単一の板から構成されたことを特徴とする光回路アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−69925(P2011−69925A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219681(P2009−219681)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】