光変換可能な光学標識を用いる光学顕微鏡法
【課題】光変換可能な光学標識を用いる光学顕微鏡法を提供する。
【解決手段】第1の活性化放射線を、光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料601に供給し、試料中のPTOLの第1サブセットを活性化させる。第1の励起放射線を、試料中のPTOLの第1サブセットに供給して少なくともいくつかの活性化されたPTOLを励起させ、PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子606で検出する。第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが撮像用光学素子606の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれよりも大きくなるように第1の活性化放射線が制御される。
【解決手段】第1の活性化放射線を、光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料601に供給し、試料中のPTOLの第1サブセットを活性化させる。第1の励起放射線を、試料中のPTOLの第1サブセットに供給して少なくともいくつかの活性化されたPTOLを励起させ、PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子606で検出する。第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが撮像用光学素子606の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれよりも大きくなるように第1の活性化放射線が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2005年5月23日に提出された「光変換可能な光学標識を用いる光学顕微鏡法(OPTICAL MICROSCOPY WITH PHOTOTRANSFORMABLE OPTICAL LABELS)」という表題の米国特許仮出願第60/683337号明細書、及び2006年3月10日に提出された「分子分解能に近い細胞内蛍光タンパク質の撮像(IMAGING INTRACELLULAR FLUORESCENT PROTEINS AT NEAR-MOLECULAR RESOLUTION)」という表題の米国特許仮出願第60/780968号明細書に優先権を主張するものであり、これらの両方がすべての目的で引用により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
すべての目的で引用により本願明細書に引用により組み込まれる発明者のうちの1人E.Betzigによる論文Opt.Lett.20,237(1995)は、個別放射体(例えば蛍光分子)の稠密集合を含む試料の画像でm次元の空間分解能を向上させるための方法を記載しており、該方法は最初にm空間次元とn個の追加的な独立した光学特性(例えば励起又は発光の偏光、又は照射光の波長、蛍光分子の蛍光の寿命など)によって規定される(m+n)次元空間内の各々の個別放射体を単離する工程による。単離の後、各々の放射体のm空間座標は、撮像装置の信号対ノイズ比(SNR)によって決まるが、撮像用光学素子のm次元の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)によって規定される元来の空間分解能よりもはるかに優れた精度で判定されることが可能である。次いで、すべての放射体に関してこの方式で判定されたすべての空間座標のマップがm次元位置空間にある試料の超高分解能画像を生み出す。
【0003】
この手法による各々の放射体の成功的単離には、(m+n)次元の点広がり関数PSFよりも大きいm+n空間内の放射体当たりの平均ボリュームを必要とする。したがって、試料内の放射体(例えば蛍光分子)の高い分子密度は、撮像用光学素子による高い(m+n)次元の分解能を必要とする。Betzigによる1995年の論文において、1立方ナノメートル(nm)当たり約1分子の分子密度を有する放射線分子は、十分に不均質なスペクトルの広がりを導入したマトリックス内にこれらの分子が置かれた場合に、低温(例えば77K)での近接場顕微鏡法/分光法で単離され得ることが推定された。しかしながら、従来式の光学顕微鏡法及び環境条件下にある広い分子スペクトルを用いると、殆どの標的分子種の密度には、アプローチが使用されるには高過ぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光変換可能な光学標識を用いる光学顕微鏡法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
第1の一般的態様において、方法は、第1の活性化放射線を、光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に供給し、該試料中のPTOLの第1サブセットを活性化させることを含む。第1の励起放射線をPTOLの第1サブセットに供給して少なくともいくつかの活性化されたPTOLを励起させ、PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線は撮像用光学素子で検出される。第1の活性化放射線は、第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれを上回るように制御される。
【0006】
別の一般的態様において、回折限界分解能ボリュームで特徴付けられる光学系による撮像の方法が開示される。該光学系の回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度を有する試料の少なくとも一部の中に分布した複数のPTOLを含む試料中で、該試料の該当部分にあるPTOLの第1サブセットが活性化され、それにより、第1サブセット内のPTOLの密度は回折限界分解能ボリュームの逆数よりも小さくなる。PTOLの第1サブセット内のPTOLの一部が励起され、PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が撮像用光学素子で検出される。PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの位置は、活性化及び励起されたPTOLから放たれて検出された放射線に基づいて回折限界以下の精度で判定される。
【0007】
別の一般的態様において、方法は、活性化放射線を、光変換可能な光学標識PTOLを含む試料に供給し、該試料中のPTOLの第1サブセットを活性化させることを含む。リセット用放射線の実質的に最小値に位置するPTOLの第2サブセットが活性化を維持すると同時に、該最小値の外側のリセット用放射線に曝された活性化PTOLは不活性形態へと実質的に変換されるように、強度最小値を含む空間的に構造化された放射線フィールドを有する不活化放射線を、活性化されたPTOLを不活性状態に変換するために試料に供給する。励起放射線を試料に供給して、該試料中の活性化PTOLの少なくとも一部を励起させ、活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出する。第1サブセット内の活性化PTOL当たりの平均ボリュームが撮像用光学素子のDLRVにほぼ等しいかそれを上回るように第1の活性化放射線の強度を制御し、且つ不活性化放射線の強度及び空間構造のうちの少なくとも一方を制御する。
【0008】
別の一般的態様において、装置は、検出器上の位置の関数として放射線の強度を検出するために採用された位置感知検出器;回折限界分解能ボリュームによって特徴付けられ、かつ試料中の複数の活性化及び励起された光変換可能な光学標識(「PTOL」)から放たれた光を位置感知検出器上に結像させるように採用された光学系;を含む。PTOLは、この光学系の回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度で試料の少なくとも一部の中に配分される。この装置はまた:第1の活性化放射線を試料に供給して、該試料の一部の中のPTOLの第1サブセットを活性化させるために採用された第1の光源;第1の活性化放射線を試料に供給して、該試料の第1サブセット中のPTOLの一部を活性化させるために採用された第2の光源;及び、活性化されたPTOLの第1サブセット内のPTOLの密度が回折限界分解能ボリュームの逆数よりも小さくなるように、試料に供給される活性化放射線を制御するために採用された制御器;も含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】光と蛍光染料との間、及び光とPTOLの間との相互作用を示す概略図である。
【図2】一つの蛍光放射体又は複数の蛍光放射体がどのように回折限界画像を作り出し得るかを具体的に示す光学撮像システム、例えば顕微鏡を示す概略図である。
【図3】どのようにして活性化されたPTOLの疎なサブセットが、1つの空間次元において、近隣のPTOLからの妨害発光を伴なわずに撮像されて回折よりも精緻な精度に場所特定されることが可能となるかを具体的に示す概略図である。図3の下半分は、どのように第2又はそれに続く活性化が残りのPTOLの疎なサブセットを画像化し、これが順次回折限界精度よりも良好に場所特定可能であるかを具体的に示す。この手順の繰り返しの適用は多数の個々のPTOLを解像することを可能にし、そうでなければこれらは従来の蛍光によって解像されるには密であり過ぎる。
【図4】どのようにして活性化されたPTOLの疎なサブセットが、2つの空間次元で近隣のPTOLからの妨害発光を伴なわずに撮像されて回折よりも精緻な精度に場所特定されることが可能となるかを具体的に示す概略図である。疎な回折限界のスポットの画像が図4の左側にあり、これらのスポットの場所特定された中心は、対応する画像として図4の右側に表示されている。右側のそのような画像の累積は、右下隅の超高分解能画像を与える。
【図5】異なるPTOL種で標識された異なるタイプのタンパク質がどのように共局在することが可能であるか、並びにどの程度各々の標識タイプのDRLV内の相対的距離及び位置が抽出されることが可能であるかを具体的に示す概略図である。潜在的用途は、タンパク質の共局在試験、又は例えば合成薬剤設計のための親和性試験若しくは親和性マッピングである。
【図6】PTOLの位置を、たとえそれらの間隔がDRLV未満であっても、より良好な解折分解能に場所特定することが可能な装置の概略図である。該構成要素は、PTOLで標識された試料、PTOLのための活性化サブシステム、PTOLのための励起システム、放射線される光のための画像化/検出システム、及びこれらの仕事を順序付けかつデータを取得するための制御システムを含む。
【図7】試料中のPTOLが繰り返し活性化され、励起され、検出対象の放射線を放つ過程を概説するフローチャートである。
【図8A】レンズの焦点面近傍のPTOLによって放たれる放射線の検出のための広視野型顕微鏡法の使用を図解する概略図である。
【図8B】レンズに相対して試料を平行移動させることにより、検出用レンズの焦点深度に比べて大きい領域全体にわたって、PTOLにより放たれる放射線の広視野型検出を図解する概略図である。
【図8C】選択的に励起させた後、多数の平面内のPTOLから放たれる放射線を検出するための広視野型システムにおける用途構造化された励起の使用を図解する概略図である。
【図8D】異なる平面にあるPTOLから生じる広視野型システムの検出器での異なるパターンを図解する概略図である。
【図9A】例示的な超高分解能顕微鏡の概略図であり、試料への全内部反射を介して励起及び活性化放射線を供給するために使用されるサブシステムを示している。
【図9B】図9Aの典型的な超高分解能顕微鏡内でPTOLにより放たれる放射線を検出するために使用されるサブシステムの概略図である。
【図10A】個々のPTOLについて向上した場所特定精度を提供するための、レンズの焦点面に平行の平面内で構造化された励起放射線の使用を図解する概略図である。
【図10B】個々のPTOLを場所特定するのに有用な検出に基づいた点広がり関数と定在波励起に基づいた点広がり関数とを比較する図である。
【図10C】撮像用対物レンズを通過する2つの逆方向に伝搬するコヒーレントビームを使用することによる、試料と基板との間の全内部反射界面での定在波の発生を図解する図である。
【図11A】細胞内のいくつかのリソソームを通る薄い断面の従来型の全内部反射画像であり、PTOLで標識されたリソソーム特異性の膜貫通型タンパク質からの蛍光によって可視化される。
【図11B】個々のPTOLの単離及び精密な場所特定によって得られた、同じ断面の同じ領域の超高分解能画像である。
【図12A】基板に固定された全細胞の付着点の従来型の全内部反射画像であり、付着タンパク質ビンキュリンのPTOL標識バージョンからの蛍光によって可視化される。
【図12B】個々のPTOLの単離及び精密な場所特定によって得られた、固定された全細胞の同じ領域の超高分解能画像である。
【図13A】所定のPTOL種のための活性化波長での活性化用光学格子のプロットである。
【図13B】所定のPTOL種のための励起波長での励起用光学格子のプロットである。
【図13C】図13A及びBそれぞれの活性化用及び励起用格子の重複に基づいた実効全体信号形成用格子を示す図である。
【図13D】図13Aの活性化用格子の中の単一の強度最大のプロットである。
【図13E】図13Bの励起用格子の中の単一の強度最大のプロットである。
【図13F】図13Cの全体信号形成用格子の中の単一の実効全体信号発生領域のプロットである。
【図14A】所定のPTOL種に関する活性化波長での活性化用光学格子のプロットである。
【図14B】所定のPTOL種に関する不活化波長での不活化用光学格子のプロットであって、各々の格子点に中心ノードを備えた不活化強度殻から成る。
【図14C】所定のPTOL種に関する励起波長での励起用格子のプロットである。
【図14D】図14A-Cそれぞれの活性化用、不活化用、及び励起用格子の重複に基づく実効全体信号形成用減衰格子を示す図である。
【図14E】図14Dの減衰格子によって得られた3D試験対象物の仮想画像である。
【図14F】従来型の共焦点顕微鏡法によって得られた同じ3D試験対象物の仮想画像である。
【図15】どのようにしてPTOLを使用して回折よりも精緻な内在画像が表示されることが可能になるかを示す概略図である。この例では、PTOLは化学的に増幅されるレジスト内に埋め込まれている。パターン形成用ビームへのレジストの領域の一部の曝露が、その領域内の酸を解放することを可能にする。そのような酸は順次、近隣のPTOLの光学特性を変えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
(1.概説)
(a.変換可能な標識の単離及び場所特定を介した超高分解能)
例えば、光で活性化される又は光で切り換えられる蛍光タンパク質(「FP」)などの光で活性化される又は光で切り換えられる光学標識の出現は、撮像装置内で検出され、且つ分子の単離と場所特定のこの処理によってFPを含む試料の画像を作り出すために使用される信号に寄与する活性化分子の密度を制御するために用いる可変制御パラメータ(口語表現では「ノブ」)を提供する。したがって、該信号に寄与するFPの密度を、撮像用光学素子のPSFに合わせて、任意の所定の時間に必要とされる低い分子密度での画像を供給することができる。
さらに一般的に述べると、試料は、変換可能な標識とそれらの環境との相互作用の理由により、不活性状態(ここでは標識は励起されたときに顕著な検出可能な放射線を作り出さない)から活性状態(ここでは標識は励起されると放射線を放つことができる)へと変換可能な多くの光学標識を含むことがあり得る。少なくとも1つの活性化環境パラメータ全体にわたる十分な制御でもって、制御可能で希薄な標識サブセットを活性化させることが可能である。次いで、これらの活性化された標識を、該標識が、光学系によって撮像されることが可能な蛍光放射線を放つことができる状態から励起状態へと励起させることができる。活性化環境及び励起放射線を制御することによって、放射線を放つ活性化及び励起された標識当たりの平均ボリュームは光学系のDLRV特性よりも大きくなることが可能である。発光標識のそのような希薄なサブセットからの放射線を検出することによって、活性化及び励起されたPTOLの位置を超高分解能の精度で判定することが可能である。次いで、活性化された標識を不活化することが可能であり、試料中で統計学的に違う位置に局在する傾向を有する変換可能標識の別のサブセットを、少なくとも1つの活性化環境パラメータを制御することによって活性化させることが可能であり、、かつ活性化された標識の第2サブセットからの蛍光を撮像することが可能であり、及びそれらの位置を超高分解能の精度で判定することが可能である。試料中のさらに多くの変換可能な標識の位置を超高分解能の精度で判定するために、この処理を繰り返すこともあり得る。異なる画像から得られるすべての変換可能な標識の測定された位置を重ね合わせ、試料の超高分解能画像を構築することが可能である。
【0011】
光で活性化可能、又は光で切り換え可能な蛍光タンパク質の特定のケースにおいて、標識は光で変換され、それゆえこれらの標識は光変換可能な光学標識(「PTOL」)のうちの1つの分類を表わす。このとき活性化環境パラメータは、標識を活性状態へと変換することが可能な活性化波長の活性化放射線であり、活性化放射線の強度又は持続時間のうちの少なくとも一方を調整し、試料中のこれらのPTOLのうちの希薄サブセットのみを活性化することが可能である。しかしながら、電磁気的パラメータ又は他の環境パラメータ以外のエネルギーの他の形態を使用して、他のタイプの変換可能な標識の制御可能な活性化を達成してもよい。
【0012】
(b.重複して空間的に構造化された活性化及び励起を介して強化された分解能)
別の例において、試料は多数のPTOLを含むことができ、空間的に構造化された活性化放射線で試料が照射されるときに、制御された位置に局在するPTOLサブセットが活性化され得る。その後、活性化されたPTOLを、空間的に構造化された励起放射線で励起させることができる。活性化放射線の構造と励起放射線の構造との重複は、DLRVに匹敵するか又はそれよりも小さい蛍光発光PTOLの少なくとも1つの重複領域が作り出され得るように制御される。その後、活性化及び励起されたPTOLサブセットからの蛍光を、検出して記録することが可能である。次いで活性化されたPTOLを不活化させ、PTOLの第2サブセットを、空間的に構造化された活性化放射線で活性化させ、かつ空間的に構造化された励起放射線で励起させることで、第1の重複領域と異なる位置での第2サブセット内の蛍光発光PTOLの少なくとも1つの重複領域を作り出し、並びに該第2の重複領域からの蛍光を検出して記録することが可能である。この処理を試料中の複数の位置で繰り返し、試料の超高分解能の画像を構築することが可能である。
【0013】
(c.空間的に構造化された部分的不活化を介した超高分解能)
さらなる例において、試料は多数のPTOLを含んでもよく、該PTOLを空間的に構造化された活性化放射線で活性化することができる。その後、1つ以上のノードを有する空間的に構造化された不活化放射線フィールドを、活性化されたPTOLのうちの1つ以上の領域と重複する不活化放射線のノードを有する、活性化されたPTOLに適用することができる。不活化放射線は、各々のノード付近の活性化PTOL以外の実質的にすべての活性化PTOLが不活化されるように制御される。したがって、残りの活性化PTOLは、DLRVよりも実質的に小さい1つ以上の領域に限定される。不活化放射線格子の適用の後に残る活性化PTOLを励起放射線フィールドによって励起させ、かつ励起されたPTOLからの蛍光を検出して記録することが可能である。その後、残りの活性化PTOLが別の不活化フィールドで不活化される。この処理を繰り返して試料の超高分解能画像を構築することが可能である。
【0014】
(d.光変換可能な光学標識の特性)
図1は、光が蛍光染料及びPTOLとどのように相互作用するかを具体的に示す概略図である。蛍光分子101は、励起放射線102によって基底状態から励起状態103へと刺激されることが可能であり、これが励起状態のエネルギーの一部を蛍光放射線フォトン104へと放つ。励起放射線の波長は基底状態と励起状態との間のエネルギー差に一致し得る。次いで分子101は基底状態105に戻る。放射線102及び、蛍光放射線104の放射による分子101の励起のこのサイクルは多数回繰り返される106ことが可能であり、かつ蛍光放射線を顕微鏡カメラ又は検出器によって蓄積することが可能である。回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)の中に多数のそのような蛍光分子101がある場合、1つの分子の蛍光放射線を他の分子から区別することは困難であるかもしれない。
【0015】
光変換可能な光学標識(「PTOL」)又は放射体111のケースにおいて、励起放射線を吸収し、したがって蛍光放射線を放つPTOLの能力は、活性化処理によってオンに切り換えることが可能であり、あるケースでは不活化信号によってオフに切り換えることが可能である。不活性状態では、PTOL111は特徴的な波長を有する励起放射線112に曝されてもよいが、PTOL111は仮にあっても活性化及び励起されたPTOLの波長特徴での蛍光放射線を殆ど放射線しないであろう。しかしながら、PTOL121が活性化放射線122で照射されると、PTOL121は、励起可能な状態123へと変換されることが可能である。活性化放射線122は励起放射線の波長と異なる波長をしばしば有するが、いくつかのPTOLについては活性化放射線及び励起放射線は同じ波長を有しており、それらの強度で区別される。PTOLが励起可能な状態123へと変換された後、活性化放射線122の波長と異なる波長を一般的に有する励起放射線124による活性化PTOL123の次なる照射は、励起放射線124の波長と異なる波長を有する蛍光放射線126の検出可能な発光という結果を一般的にもたらす。PTOLが最終的にブリーチされるか又は不活性になり、この時点でPTOL129がもはや励起されて蛍光放射線を放つことができなくなるまで、励起及び発光のこの過程は、活性化PTOL127に関して多数回繰り返される128ことが可能である。
【0016】
このようにして、PTOL121は、活性化波長を有することによってPTOLを活性状態123へと変換する活性化放射線122で照射されてもよい。活性化PTOL123を、活性化放射線122の波長とは一般的に異なる励起波長を有する励起放射線124で照射して、励起波長124の波長よりも一般的に長い発光波長でPTOL125が放射線126を放つことができる状態から励起状態125へとPTOLを励起するたことができる。いくつかの種のPTOLに関しては、不活性状態への自然発生的な衰退又は不活化放射線の適用のどちらかを通じて、PTOLが、活性状態123から不活性状態121へと戻って変換されることが可能である。
【0017】
超高分解能顕微鏡法にとって有用ないくつかの光活性化可能な蛍光タンパク質を以下に記載する。FPは、特定の種類の光変換可能な光学標識(「PTOL」)又は物質であり、その光学特性は光によって変えられることが可能であり、かつ該特性を使用して試料の一部分を標識して光学的に画像化することが可能である。本願明細書で使用される「蛍光」及び「蛍光性の」はPTOLの光学的応答を一般的に示す。蛍光の共通の理解(例えば、より高エネルギーのフォトンによる励起に応答した物質からのフォトンの放出)に加えて、出願人らはPTOLを特徴付けることが可能な他の特性を含める。例えば、出願人らは多重フォトン励起に応答したフォトンの放出、又は活性化若しくは不活化されることが可能な大きい弾性光学断面積を含める。
【0018】
あるタイプのPTOLは、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victria)の光活性化された緑色蛍光タンパク質(「PA-GFP」)の変異種であり、該異変種は、(すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるG.H.Patterson 及び J.Lippincott-Schwartzらの論文,Science 297,1873(2002)に記載されているように、クラゲのAequorea属から由来する遺伝子組換えによるタンパク質の遺伝子組み換えによる変異種である)。この変異種は、野生型GFPの203位(T203)でのイソロイシン突然変異(例えば203位でのヒスチジン置換)を含むことが可能であり、結果として、不活性状態における400nm付近の一次吸収ピーク及び490nm付近を中心とする約100倍弱い吸収ピークを伴なう二次発光ピークを有する分子をもたらす。放射線は、励起されたGFPから、約509nmの波長の付近を中心とするスペクトルで放たれる。約400nmの波長を有する放射線を伴なうPA-GFPの強い照射の後、400nmの吸収ピークは約3倍減少すると同時に、約490nmの吸収ピークは約100倍増大する。したがって、蛍光放射線を作り出すための490nmの励起放射線を伴なうPA-GFPの励起は、強い400nmの光による前段の照射で局所的に活性化されていたPA-GFP分子のみを優先的に示すであろう。光活性化可能なGFPの他の形態も使用可能である。
【0019】
すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるD.M.Chudakovらの論文,Nature Biotechnol.22,1435(2004)に記載されているように、光で切り換え可能なシアンブルーの蛍光タンパク質(「PS-CFP」)は、PS-CFPについてはPS-CFPが不活性状態にあるときに、約400nmの波長を有する放射線による弱い照射が極めて明るい約470nmの発光を生じる(これは初期の設定及び標的化が容易に実施されることを可能にする)ことが可能であることを除いて、PA-GFPと同様な特徴を有する。約400nmの同じ波長でのPS-CFPの強い励起は、約490nmでの励起放射線の吸収スペクトルのピーク及び約511nmでの発光ピークを有するバージョンへのタンパク質の光切り換えを引き起こす。したがって、約490nmの励起放射線で試料を励起すること、及び約510nmの蛍光放射線を検出することによる試料中のPS-CFP標識の撮像は、先行する約400nmの励起で活性化されていたPS-CFP分子のみを優先的に画像化するであろう。PS-CFPの発光は、その低い量子収率に起因してPA-GFPの発光よりも弱いが、PA-GFPに関する発光ピークでの約100倍の増加と比較して、約510nmでの蛍光発光は、約400nmの放射線での活性化の後に約300倍増加する。
【0020】
すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるR.Ando,H.Hama,M.Yamamoto-Hino,H.Mizuno,及び A.Miyawakiの論文,Pro.Natl.Acad.Sci.USA 99,12651(2002)に記載されているように、Kaedeは、活性化されるとその発光帯域をシフトするという点でPS-GFPに類似している。しかしながらPS-GFPと違って、活性化は不活性状態におけるピーク吸収波長(508nm)と異なる波長(350-400nm)で起こり、それにより、該不活性タンパク質は活性状態への光変換を引き起こさない長さで観察することが可能である。不活性状態における蛍光発光スペクトルは約518nmにピークを示し、その一方で活性状態では(励起放射線の)吸収スペクトル及び(蛍光発光の)発光スペクトルはそれぞれ約572nm及び約582nmでピークを示す。それゆえにKaedeでは、活性ピーク又は不活性ピークのいずれかでの励起は反対の状態にある分子の意図されない励起を引き起こす可能性がある。不活性/活性発光ピークに同等の大きな広がりを備えた同等に明るいタンパク質は、Kikume Red-Greenとして市場入手可能であり、及びすべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるV.Verkhusha 及び A.Sorkinの論文,Chemistry and Biology 12,279(2005)に記載されているように、モノマータイプのPA-mRFP1もやはり開発されている。これらのタンパク質の活性状態における長波長の励起/発光は、単一分子の検出に関するバックグラウンドを減らすのに役立つことが可能性がある。
【0021】
すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるD.M.Chudakovらの論文,Nature Biotechnol.21,191(2003)に記載されているようなキンドリング蛍光タンパク質(「KFP」)は、上述されている他のFPに比較していくつかの際立った特色を有する。第1に、KFPに関して、活性化はさらに長波長(525-570nm)で起こり、該波長は試料に一層少ない損傷を与えることを可能にし、且つ発生させることを一層容易にすることができる。第2に、低強度の照射下での活性化は、約50秒の半減期で自然に逆戻りする。第3に、低強度下での活性化は、青色光を用いた照射下で可逆性である。第4に、525-570nmにおける高強度下での活性化は、たとえ青色光の照射下でも不可逆性である。したがって、分子は「オンに切り換えられる」のみでなく「オフに切り換えられる」ことも可能であり、或いは永久に「オン」に設定されることも可能である。しかしながら、KFP1は現在のところ比較的低い量子収率を有し、且つ4量体である。
【0022】
ドロンパは、すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるR.Ando,H.Mizuno,及び A.Miyawakiの論文,Science 306,1370(2004)に記載されている、明るいモノマーの蛍光タンパク質であり、多くのサイクルにわたって活性化/不活化されることが可能である。ドロンパの活性化は約400nmで起こり、約490nmの吸収ピーク、及び約510nmの発光ピークを有する活性化型分子を伴う。該分子は、約490nm励起への連続的な曝露で不活性状態へと戻る。活性化/不活化のこのサイクルは、そのようなサイクル中の合計の蛍光において相対的に低い損失のみを伴なって、少なくとも約100回繰り返されることが可能である。しかしながらそのようなサイクルの間における活性化された分子の観察は、場合によっては該分子の不活化が望まれる前に、それらの不活化をもたらし得る。
【0023】
多様な活性化、励起、及び発光波長並びに時定数を有するPTOL種の多様性を前提として、PTOLの各々の種に関して別個の画像を構築することが可能である。したがって、試料のうちの異なる成分を区別可能な標識でタグ付けすることが可能であり、次いで各々の標識化対象物を本願明細書に開示されるように構築可能な超高分解能の画像中で独立して識別することが可能である。
【0024】
関心対象の特定の試料特徴をPTOLで標識することが可能であり、そのようにして、PTOL、及びそれゆえ特定の試料特徴を撮像することが可能である。遺伝子的に発現可能なPTOL(例えば光活性化可能な蛍光タンパク質)に関しては、蛍光タンパク質PTOLが関心対象の特定のタンパク質と融合して作り出されるようにDNAプラスミドを作成し、一過的なトランスフェクションによって細胞中に挿入することが可能である。同様に、そのような細胞が蛍光タンパク質PTOLを作り出すことができるように細胞系の遺伝的構成を永久的に変える安定的トランスフェクション体を作成することが可能である。免疫標識技術、又はビオチンリガーゼなどの高い特異性の小分子受容体-リガンド結合系を使用して、PTOLを特定の細胞特徴にタグ化することも可能である。
【0025】
(2.光変換可能な光学標識の単離と場所特定を介した超高分解能)
(a.一般的概念)
分子又は放射体から出る放射線は、放射線分子又は放射体が単離されて撮像用光学素子の回折限界長の規模よりもさらに互いに離れているときに、PTOLの微細な回折局在に使用可能である。例えば図2に示されるように、励起放射線201は、単離された放射体202を励起状態203へと励起することが可能である。励起された放射体203から放たれる外向放射線204は、顕微鏡光学素子205によって集められて回折限界スポット207上に再集束206されることが可能である。このスポットのプロファイルは、像平面208において発光強度209に対して位置軸208上に描画されて示される。像及び対象平面は倍率Mで規模拡大される。像平面208において、このスポットの最小空間幅は顕微鏡の分解能の基本的限界によって特徴付けられ、かつアッベ基準(Abbe criteria)
【数1】
(式中、λは発光放射線204の波長であり、NAは対物レンズ205の開口数である)で与えられる。CCDカメラなどの検出器で放射線の分布を測定することによって、放射体を微細な回折精度に位置させるために単離された放射体のこの拡大された画像を使用することが可能である。次いでこのデータを適合させるか又は加工して、検出信号の中心を見つけることができる。例えば、PTOLから放たれて検出器上で検出された光の放射線強度プロフィールは、個別のデータセット{ni,}によって特徴付けられることが可能であり、ここでniは位置xiに位置する検出器のi番目の画素内で検出されたフォトンの数である。このデータをピーク型関数に適合させ、PTOLの位置を決定することができる。例えば、ガウス関数
【数2】
を使用して、該適合を実施することができる。ピーク型関数へのデータの最小二乗適合は、例えば、ピークの中心位置xcに関して値を見出すことが可能である。付け加えると、例えば、検出されたフォトンの合計数N、及びピーク幅σ(これは一般的にΔxのオーダーであり得る)などの他のパラメータも、この適合から推定することが可能である。niにおける誤差は値δniで表現することができ、同様に、中心位置xcの不確実性はパラメータδxを通じて表現することができる。特に、システムノイズが検出信号から生じるフォトン発射ノイズの統計学によって限定され(δni=sqrt(ni)を意味する)、且つNが検出されたフォトンの数であるとき、この中心が場所特定可能である確度はδx=Δx/sqrt(N)で与えられる。Nが1よりもはるかに大きくなる量まで、場所特定の確度210は回折限界221よりもはるかに優れている可能性がある。該データをガウス関数以外の関数に適合させ、PTOLの中心位置及び幅を決定することもできる。
【0026】
しかしながら、互いのΔxの中にあるほど密に集合した間隔にある連続的に放射線する蛍光分子212のセットにこの技術を応用することは困難であり得る。このケースにおいて、回折スポットは高度に重複しており、それにより、分子の画像を適合させて超高分解能の精度で分子の位置を得ることは困難である。したがって、この状況では、解像限界は標準的なアッベ基準221、即ち回折限界スポットの幅で一般的に与えられる。
【0027】
しかしながら、PTOLの高密度セット中のPTOLサブセットを選択的に活性化及び不活化することによって、たとえ光学標識が密な間隔にあるときでさえ、この場所特定の概念が使用されることが可能になる。図3に示すように、弱強度の活性化放射線301が密な間隔のPTOL302に浴びせられてもよい。小さな、すべてのPTOLの統計学的にサンプリングされた画分303は、活性化放射線を吸収し、状態303へと変換され、これが励起放射線304によって励起されることが可能である。発光放射線305、この活性化及び励起されたサブセットからの発光放射線305、307が、前に図2に例示したような微細回折分解能309にその中心が局在し得る単離された回折限界スポット308のセットへと集束させられる。活性化及び励起されたサブセットのメンバーであるPTOLの十分に解像された画像を作り出すのに十分なフォトンが集められた後に、活性化されたPTOLは、(ドロンパ又はKFPの場合のように)活性化可能な状態302に戻るために不活化されるか又はこれらを系から効果的に除外するために暗形態313へと永久に光学的にブリーチされる。次いで、弱強度の活性化放射線311の別のサイクルを適用し、残りの活性化可能なPTOL312の新たなサブセット316を活性化する。この第2サブセット内のPTOLが順次励起315によって励起状態317に置かれてもよい。放射線光318、320は、顕微鏡レンズ319によって十分に分離された回折分解能限界スポット321上に顕微鏡レンズ319によって再集束させられる。ここでも再び、各々のピークの適合処理は、第2サブセット内のPTOLの微細な回折の位置322を規定することが可能である。さらなるサイクルがPTOL画像の位置323などの他のPTOLの微細な回折の位置を抽出するであろう。
【0028】
図4に示されるように、試料中の個々のPTOLの2つの空間次元x及びy内の多数の微細な回折分解能の画像が作り出されることが可能であり、次いで、該多数の画像が組み合わせて、該試料の回折限界分解能の画像を作り出すことが可能である。図4に示された画像は、本願明細書に記載するようなシステムで取られた実験データから作り出された。撮像用光学素子によって撮像される波長で発光する数少ない個々のPTOLの初期の画像をフレーム401に示している。撮像される放射線の波長と異なる形態の活性化波長を有する放射線の活性化パルスでPTOLサブセットが活性化された後に、フレーム402に示されるように、さらに多くのPTOLが検出される。これら初期に活性化されたPTOLの多くがブリーチされてフレーム403に示されるようにこれ以上放射線できなくなるまで、いくつかのそのようなフレームが記録される。この時点で、新たな活性化パルスがPTOLの新たなサブセットを活性状態に変換可能であり、かつPTOLのこの新たなサブセットは、新たに活性化されたPTOLが励起されるときに撮像波長で放射線を放つことが可能であり、これが結果としてフレーム404の画像をもたらす。このサイクルを繰り返して、数百又は数千のそのような画像フレームを作り出すことができ、これは水平平面上の座標x及びy、及び垂直軸の時間tを備えたPTOL画像の3Dデータ積層405を表わすとみなすことができる。次いで、該データ積層内のこれら個々の画像フレームすべてを合計し、フレーム406に示されるように、顕微鏡からの回折限界画像の長時間曝露に同等な総合画像を作り出すことができる。
【0029】
しかしながら、活性化されるPTOLが試料中で十分に希薄であれば、フレーム407に示されるような各々の活性化されたからPTOLの未加工の信号(例えばCCD検出器の個々の画素上の信号の強度)が近似点広がり関数(例えばガウス関数)と適合させられることでフレーム408に示されるような平滑化されて適合処理された信号を作り出し、かつPTOLの中心のx,y座標を測定することが可能である。次いでPTOLの位置が、この位置が既知である不確実性によって規定される幅を有して、測定された局在位置に中心を置くガウス分布として新たな画像に与えることができる。この不確実性は、(典型的には、NがPTOLの画像を作り出すために検出されるフォトンの数である場合のsqrt(N)の近似因数による)元来の回折限界PTOL画像407の元来の半径よりも大幅に小さいと見込まれる。例えば、PTOLの画像スポットの画素内に400個のフォトンがあった場合、適合処理された中心の位置の不確実性は、該PTOLの元来の回折限界画像のサイズの1/20であると見込まれる。
【0030】
この処理をフレーム401、402、403、及び404内のすべての活性化されたPTOLの画像に適用することは、フレーム410、411、412、及び413内の対応する狭い描画ピークをもたらす。これらの描画ピークの幅は、それらの局在の不確実性によって与えられる。データ積層405のすべてのフレーム内のすべての活性化されたPTOLに適用すると、この場所特定処理は結果として試料中の多くのPTOLに関する座標のリストをもたらす。場合によっては、描画ピークを累積(合計)し、PTOLの高密度セットの超高分解能画像414を与えることができる。いずれかの活性化されたPTOLの発光が、それがブリーチされるか又は別の方法で不活化されるまで、いくつかのフレームにわたって存続することもあり得る。そのようなケースに関すると、この累積の実施態様は、共通のPTOLである可能性の高いもののいくつかのフレームにわたって座標を識別することである。座標のこのセットを平均化又は削減し、該PTOLの単一でさらに正確に場所特定された座標ベクトルを得ることができる。回折限界画像406と超高分解能画像414との比較は、この処理によって達成可能なさらに高い分解能を具体的に示す。
【0031】
異なる単離PTOLサブセットの直列的な活性化のこの処理は、PTOLの高密度のセットの位置を場所特定する有効な手段を可能にし、それにより、下記でさらに詳細に記載するように、1、2、又は3空間次元の超高分解能画像が作り出されることが可能になる。さらに、この処理は、異なる活性化、励起、及び/又は発光の波長を有する試料中の異なる種のPTOLについて独立して繰り返すことも可能である。次いで、別々又は組み合わされた超高分解能画像は、各々のPTOL種を使用して抽出することが可能である。2つの異なる結合タンパク質を標識する2つ以上の異なるPTOLの抽出された位置情報は、共通又は密接に結び付いた標的上の共局在及び相対的な結合位置を描写することが可能である。これはタンパク質が互いに関係していることを判定するために有用であり得る。
【0032】
分子結合(例えば共局在)の情報及び分子構造情報を提供するためにどのように多数のPTOL種が使用され得るかの例を、図5に具体的に示す。例えば、PTOL種501が選択的にタンパク質503に結合し、かつPTOL種502がタンパク質504に選択的に結合するとき、例えば2つの異なるPTOL種501と502が2つの異なる分子タンパク質503と504を標識することができる。これら2つのタンパク質503と504が互いに結合して分子複合体506を形成する場合、それから2つのPTOL501及び502は互いに短い距離505に位置し、したがって互いに密に近接して放射線する。そのような共局在分子(例えばタンパク質503と504)間の距離505は、分子複合体506のサイズよりも小さい。該PTOL種は撮像可能であり、且つこれらの位置は本願明細書に記載されている方法及びシステムを用いて独立に測定されるので、PTOL501及び502は、たとえこれらの位置が回折限界内であると判定されるときでも見分けられることが可能である。実際に、距離505が本願明細書に記載されるシステムの局在分解能よりも大きければ、PTOL501と502の間の距離505の定量的値はこれらのタンパク質503と504がどのように互いに結合しているか及びその場所についての追加的情報を提供することが可能である。さらに、各々のPTOL501と502の空間的配向を本願明細書に記載している方法によって(例えばPTOLから放たれる双極子放射線の偏光を観察することによって)推定することが可能であり、これが今度はタンパク質503と504の間の相対的結合の位置及び配向データを供給することが可能である。一実施態様において、試料中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が偏光フィルタを通されることで、放たれた放射線の偏光に基づいて放たれた放射線を選別することが可能である。放たれた放射線の偏光は、放射線が放たれるPTOLの双極子の配向の指標であるので、検出器で検出される偏光感度を有する信号は発光PTOLの配向についての情報を提供する。この方法は様々なPTOL種507、508、509、及び510のより大きな多様性に拡張することが可能である。共局在実験は、PTOL種507、508、509、及び510が互いに又は他の標的511に結合するかを判定することが可能である。標的513に結合するPTOL507、508、509、及び510の間の相対距離512は、本願明細書に記載の場所特定方法から導き出すことが可能であり、512を使用して標的513上の結合部位のタイプ及び位置をマップ化することが可能である。
【0033】
親和性識別及び共局在測定のこれらの原理の一実施態様は創薬である。特に合成薬剤の設計に関すると、より小さな分子のライブラリが標的の表面の様々な部分のどこにどのくらい強力に結合できるかをマップ化することに関心がある。そのような低親和性断片の収集物を同定してつなぎとめておくことができれば、これらは群として標的に高親和性を有するであろう。ライブラリからそのような薬剤断片を識別する過程に、企業によって利用されるいくつかの技術がある。そのような構造活性の関係及び近接性の感知はいくつかの技術、例えばNMR、X線結晶学、質量分析法を伴なう化学的ライゲーション、又は表面プラズモン共鳴によって識別されることが可能である。
【0034】
同様の取り組みは、多数のPTOL標識した薬剤断片を使用して構造的活性関連性を同定し、かつ本願明細書に記載の光変換可能な光学的場所特定の手法でそれらを識別及び場所特定することが可能である。例えば、様々なPTOL種は、多様な分子(例えば薬剤断片)507、508、509、及び510のライブラリを標識することができる。分子507、508、509、又は510の標的514との共存は、本願明細書に記載の方法を使用して、標的514への薬剤断片の結合を確認し、かつ標的514の表面の結合親和性をマップ化することを可能にした。結果として得られる任意の双極性情報を伴う共局在及び位置情報を使用して、511などの標的に高結合親和性を有するであろう合成薬剤514を設計することが可能である。
【0035】
(b.一般的なハードウェアとソフトウェアの必要条件)
図6はPTOL顕微鏡の概略図である。PTOLで標識された試料601が放射線を放ち、これが撮像用レンズ(例えば顕微鏡の対物レンズ)602で集められ、1つ以上のフィルタ604でフィルタ処理されてもよい。現在活性化されたPTOLの画像は検出器606で形成され、一実施態様では単一フォトンを検出することができる活性化放射線を試料に供給するための光学素子は、光源607、シャッタ608、レンズ609、及びフィルタ610を含み得る。光源607(例えば1つ以上のレーザ、発光ダイオード、又は広帯域光源)は、PTOLが不活性状態から活性状態へと変換される原因となる活性化波長で放射線を放つことが可能である。光源607は直接調整することができ、又はシャッタ608を介して調整することもできる。シャッタ608を操作して、活性化放射線が光源607から試料601へと通過するのを許容又は阻止することが可能である。一実施態様において、該シャッタは、ビーム経路を選択的に遮断するように動く機械的シャッタであってもよい。別の実施態様において、該シャッタは光が通過するのを許容又は阻止するために、或いは光源607からのビーム経路を変えるために、電気的又は音響的に変更されることが可能な材料であり得る。フィルタ610は、ある波長の放射線を遮断すると同時に他の波長を通過させることが可能である。例えば、試料601がいくつかの種のPTOLを含み、これらの各々が異なる活性化波長を有する場合、該光源は各々の活性化波長で光を放つことが可能であるが、様々なフィルタ610を光源607と試料601との間のビーム経路に挿入して、いくつかの活性化波長を遮断すると同時に他の波長を通すことができ、それにより、1つのみ(又は選択されたいくつか)の種のPTOLが励起される。光源607から出る放射線は部分反射器603(例えばビームスプリッタ、2色性ミラー、斑点のあるミラー、又は回折性構造)によって偏向され、撮像用レンズ602を通して試料603上に向けられてもよい。同様に、活性化されたPTOLが脱励起状態から励起状態へと変換される原因となる励起放射線も、励起光源611からシャッタ612、レンズ613、及びフィルタ614を通ることができ、且つ試料601へと部分反射器603を外れて通過することもできる。制御器615(例えば汎用又は特定用途向けのコンピュータ若しくはプロセッサ)は、画像収集手順の間に、活性化及び励起パルスのパラメータ(例えば、試料601に到達する様々な放射線ビームの波長、強度、偏光、及びパルス持続時間;並びに活性化放射線パルスと励起放射線パルスのタイミング)を制御することが可能である。もちろん、光学素子607-614が他の構成で配列されることもあり得る。例えば、活性化光学素子607-610及び/又は励起光学素子611-614が、モジュール616にあるように配置し、放射線をレンズ602の外側から試料601へと向けることができ、又は励起放射線が活性化放射線などと異なる部分反射器から試料上に向けることができる。さらに、異なる種のPTOLが並列又は別々に連続的収集で撮像されることも可能になるように部品の多重度があってもよい。例えば、異なるPTOL種の特徴に付随する異なる波長の追加的なカメラ、フィルタ、シャッタ、活性化源、又は励起源があってもよい。検出器606に形成される画像から得られるデータは、保存及び処理のために制御器615に伝えられる。例えば、制御器615は、異なる画像フレームに関する検出器上の位置の関数として強度データを記録又は保存するためのメモリを有してもよい。制御器615は、例えば個々のPTOLの画像用に記録されたデータを適合させてPTOLの位置を回折限界よりも精緻な分解能に対して測定するための、又は超高分解能の精度で測定された多数のPTOLの位置に関するデータを組み合わせて、超高分解能の精度で位置づけられた多数のPTOLの位置に基づいて試料の画像を作り出すための、データ処理用プロセッサ(例えば汎用又は特定用途向けのコンピュータ若しくはプロセッサ)を含むことも可能である。
【0036】
図7は、多数の比較的高密度に位置するPTOLを含む試料の画像を作り出すための処理700のフローチャートである。活性化波長を有する放射線の活性化パルスが、試料中のPTOLサブセットを不活性状態から活性状態へと変換するために試料上に向けられる(工程702)。励起放射線を励起波長で試料中の活性化されたPTOLに適用し、活性化及び励起されたPTOLから放たれて撮像及び検出用光学素子に入射する放射線が取得されて保存される(工程703)。活性化されたPTOLのセットの画像は、多数回取得されて保存されてもよい。例えば、制御器はN個の画像が未だ取得されていなかった(工程704)場合に画像取得(工程703)が繰り返されるように、活性化されたPTOLのセットのN個の画像が取得されることを要求してもよい。励起放射線は継続的に試料に適用することができ、又は画像の取得の間ではオフに切り換えることができる。
【0037】
活性化されたPTOLサブセットのN個の画像が取得された後、さらに多くの画像が試料から得られるべきであれば(工程705)、PTOLの別のセットを活性化するために別の活性化パルスが試料に適用できる(工程702)。励起放射線が活性化されたPTOLのこの他のセットに適用され、活性化及び励起されたPTOLから放たれた放射線が取得されて保存される(工程703)。PTOLの多数のセットが活性化されてもよい。例えば、制御器は、Mセットが未だ活性化されていなかった(工程705)場合に別の活性化パルスが加えられる(工程703)ように、MセットのPTOLが活性化されることを要求することができる。このようにして、PTOLのセットを活性化し、活性化されたセット中のPTOLを励起し、活性化及び励起されたPTOLから画像を取得する処理を多数回、例えば利用可能なPTOLの合計プールが尽きるまで、又は空間領域若しくは容積の中の異なるPTOLの画像の所望数が達成されるまで繰り返することができる。
【0038】
活性化及び励起放射線を適用する間、活性化及び励起放射線の強度と共に活性化パルスの間の反復の数Nは、個々の画像内の撮像されたPTOL当たりの平均ボリュームが個々のPTOLを検出して場所特定するために使用される光学撮像システムのDLRVよりも一般的に多くなるように制御されてもよい。放射線を放つことができる活性化されたPTOLの密度は、活性化パルス直後に取得された画像で一般的に最も高く、かつN個の画像フレームの収集の間により多くのPTOLは光退色するにつれて一般的に低下する。さらに、処理700が進行して活性化パルスの数が1からMへと増すにつれて、試料中のPTOLが光退色する可能性が高く、それにより、試料中のますます少ないPTOLが活性化、励起、及び撮像に利用可能になる。したがって、一実施態様において、個々の活性化パルスの強度及び時間の長さ、並びに励起放射線の強度及び時間の長さは、処理が進行するときの活性化されるPTOLの密度の変化を小さくするために制御し得る。例えば、より少ない励起放射線(できれば活性化パルスの間のさらに少ないフレームN個を伴なって)を使用することは、活性化パルス後の第一フレームから次の活性化パルス直前のN番目のフレームまでの撮像されるPTOLの減少を小さくすることができる。別の例において、1番目からM番目の活性化パルスへと処理700が進むにつれて、個々の活性化パルスの強度を上げることができる。これは1番目の活性化パルス直後の最初の取得フレーム内に撮像されるPTOLの数に比較したM番目の活性化パルス後の最初の取得フレーム内に撮像されるPTOLの数の減少を小さくすることが可能であり、それにより、活性化と画像取得の手順が進行するときの活性化可能なPTOLの数の減少を補償する。このようにして最初の例では、励起手順の間の活性化及び励起されるPTOLの変化を減少させ、第2の例では活性化手順の間の活性化及び励起されるPTOLの変化を減少させる。活性化及び励起されるPTOLの減少化された変化は、さらに多くのPTOLが単位時間当たりに場所特定されることを可能にすると同時に、DLRV当たり1つ以上の撮像PTOLの密度基準を超えない操作を可能にする。
【0039】
一実施態様において、試料中の多種のPTOLを活性化、励起、及び撮像することができる。例えば、活性化パルスを加える工程(702)及び励起して撮像する工程(703)は、異なるPTOL種の異なる活性化及び励起波長に対応する波長を有する活性化放射線と励起放射線のパルスをそれぞれ適用する工程を含み得る。多様なPTOL種から放たれる多様な波長の放射線を撮像するために、検出器及び/又はフィルタの多重度を撮像工程703で使用することも可能である。この方式で、多数の独立した画像のデータセットを取得することが可能である。これらの独立したデータセットを順次、試料中の各々のPTOL種の対応する超高分解能画像へと小さくすることができる。
【0040】
(c.例示的励起及び検出幾何学)
試料中のPTOLサブセットを活性化し、これらの活性化PTOLのうちのいくつか又は全部を励起し、活性化及び励起されたPTOLを撮像する処理は、任意の光学的撮像モード、例えば広視野型顕微鏡法、全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、及び多焦点の格子型顕微鏡法で適用可能である。
【0041】
図8a、8b、8c、及び8dに示すように、広視野型顕微鏡法は、平面801内のこれらPTOLの分離がレンズ802によって規定される回折限界の2D分解能よりも一般的に大きくなるのに十分に低い密度でPTOLが活性化されるときに、レンズ802の焦点面801付近にある試料810中の多くの個々のPTOL800が、同時に共局在していることを容認する。撮像用光学素子(例えばレンズ802を含む)の倍率は、PTOL800を撮像する検出器804(例えば電子増倍電荷結合素子(EMCCD)カメラ)内の個別画素803のサイズに比較して選択され、それにより、各々のPTOLから得られる画像805は、各々のPTOLに関して場所特定精度を最適化するためにいくつかの画素にわたって分散される。もちろん、特定のPTOLから放たれた放射線が1つの画素のみで検出された場合、回折限界よりも精緻な精度でPTOLの位置を測定することは困難であろうが、しかしPTOLから出る放射線が多数の画素に入れる場合、これら多様な画素から得られる信号は適合可能であり、それにより、PTOLが回折限界よりも精緻な精度で場所特定することが可能になる。しかしながら、特定のPTOLから出る放射線が極めて多数の画素に入れば、これはその後別のPTOLから出る放射線と重複する可能性があるか、又は含まれるさらに多数の画素から出るバックグラウンドノイズが高められる可能性がある。どちらのケースでも、それによって場所特定精度が相対的に低くなるであろう。したがって、多過ぎる画素又は少な過ぎる画素に入るPTOLの画像を有することの間での妥協点が得られ得る。
【0042】
広視野型顕微鏡法は、薄い試料(即ちレンズの開口数及びPTOLから放たれる蛍光光の波長で特徴付けられる焦点深度806に匹敵するか又はそれよりも小さい厚さを有する試料)内のPTOLの2D場所特定を達成するために、本願明細書に記載される処理に容易に使用される。そのような薄い試料への適用は、a)焦点面806から離れた領域における自己蛍光又は未分解PTOLからのバックグラウンド信号を制限し(なぜならば、そのようなバックグラウンドはPTOLが場所特定される精度を低下させるからである)、b)2D PSFの中の潜在的に光活性化可能な分子の数を減少させ、c)撮像用レンズを通して活性化エネルギーが供給されるとき、活性化されるPTOLが一般的にレンズの焦点面の中にあることを保証し、それにより検出器に最小サイズのスポット及びこれに対応する最適の場所特定をもたらすことが可能である。
【0043】
そのような薄い切片の一例は培養細胞の板状偽足領域である。広視野型検出に適した薄い試料の別の部類は、透過型電子顕微鏡法に共通するミクロトーム技術を使用して、より大きな試料から切り出された薄い切片(樹脂包埋された細胞又は組織の凍結切片若しくは切片)である。そのような個体の切断切片は、PTOLが正確な場所特定のために不動であり続けることを保証し、かつオリジナルのより厚い試料で広視野型顕微鏡法によって同じ特徴を撮像することを試みるときに潜在的に存在する面外自己蛍光、収差、及び光散乱の問題を伴なうことなく、深部に埋まった試料特徴が撮像されることを可能にする。
【0044】
図8bに示すように、PTOLの広視野型検出が、レンズの焦点深度に比べて厚い試料に適用されることが可能な場合において、3DでのPTOLの場所特定は、試料の多数の平面の2D画像を作り出すために撮像されるPTOLの各々の活性化されたサブセットについて焦点面をレンズの光軸807に沿って平行移動させることによって(例えばレンズと試料との間の分離を変えることによって)実施することが可能である。これら多数の2D画像をデジタルで組み合わせて画像の積層808を構築することが可能であり、それにより、試料中の各々の撮像されたPTOLの3D画像が得られる。次いで、上記2Dのケースに直接類似して、各々のPTOLの3D画像を適合させ、3DのPTOL位置の回折限界よりも精緻な位置を得ることが可能である。それによって、完全な3Dの超高分解能画像は、場所特定されたPTOLの多数サブセットから構築され得る。
【0045】
レンズの軸807によって規定される方向でPTOLに関する位置情報を提供する別の取り組み方は、主にこの方向に沿って、且つ実質的に焦点面に対して一様な平行で空間的に構造化される形態で励起光を当てることである(それにより、2Dでの同時検出の利点が保持される)。次いで、該空間的に構造化されたフィールドは、個々に解像可能な活性化PTOLの各々サブセットについて軸方向に走査することができ、それにより、軸方向励起のPSFが各々で測定されることを可能にする。次いで、軸方向に構造化された励起の既知PSFをこのデータに適合させ、軸方向のPTOLの相対的な場所をナノメートルの精度で見つけることが可能になる。次いでデータを焦点面内の同じPTOLの場所特定座標と組み合わせ、かつ活性化されたPTOLの他サブセットから得られた同様の結果とさらに組み合わせることで高密度の超高分解能3D画像を構築することが可能である。
【0046】
図8cに示されるように、そのような軸方向に構造化された励起フィールドは、検出平面に対してミラーイメージである方向から、2つのコヒーレントビーム811と812で試料810に励起光を当てることによって作り出すことも可能である。試料810中のビーム811及び812は軸方向807に定在波(「SW」)の強度プロファイル813を作り出す。レンズ802と同じ焦点面の側から試料に近付くビーム811は、所望であればレンズを通過可能である。最大強度の単一のSW平面814のみが試料810の中に存在するような十分に薄い試料については、上記の最大強度平面を軸方向に走査させることによって、検出と場所特定を進行させることが可能である。中程度の厚さの試料については、p=λsin(θ)/2(式中、pは周期であり、λは励起放射線の波長であり、かつθは各々のビームが焦点面と作る角度である)で表わされることが可能であるSWの周期815が、最大強度の単一でより広いSW平面のみが試料810に交差するまで角度θを減少させることによって増大させられ得る。場合によっては、図8dに示されるように、いくつかのSW最大部が試料810の中にある場合、異なる強度最大部816、817、及び818に対応する平面内で励起されるPTOL800は、レンズ802の焦点面に平行の多様な平面内に存在する2D検出の点広がり関数の違いに起因して、異なるパターンのスポット(例えば最大部816由来のスポット819及び820、最大部817由来のスポット821、並びに最大部818由来のスポット822及び823)を検出器に作り出すことが可能である。例えば、撮像用光学素子の焦点面でのPTOLから出る発光に起因する検出器上のPTOLの画像は、焦点面に対応しない平面からのPTOLから出る発光に起因するPTOLの画像よりも小さいであろう。この情報を使用して、所定のPTOLが由来するSW最大部を見分けることが可能である。また、検出された光は、M個の定在波最大部が試料の中にある場合にM個の検出器間で分割可能であり、かつ補正用光学素子(例えば位相マスク)がレンズ802と各々の検出器との間に置かれてもよく、それにより、各々の検出器に関する各々の焦点面が異なるSW最大部と一致する。その後、所定の検出器に焦点の合ったこれらのPTOLをその検出器に記録された情報を使用して2D又は3Dのどちらかで場所特定することが可能である。
【0047】
全内部反射(「TIRF」)幾何学形状は、平面内の多数の光活性化されたPTOLの同時検出及び2Dの場所特定も可能にする。TIRF顕微鏡法において、試料を照射する励起放射線の強度は試料/基板界面からの距離が増すにつれて指数関数的に減少する。試料/基板界面からの距離の関数としての励起放射線の指数関数的な減少のために、特に厚い標本を撮像するときに、z方向に高度に局在する励起は、比較的わずかな自己蛍光を伴なって達成することが可能である。またTIRF顕微鏡法では、比較的少数のPTOL(活性型と不活性型の両方)が所定の分子密度について同時に励起され、それゆえに標的分子のより大きい密度が試料中で初期に調製され得る。さらに、複数の角度でのエバネセント照射を使用して、z方向でも同様に、高い精度でPTOLを場所特定することが可能である。付け加えると、活性化放射線の波長並びに励起放射線の波長をエバネセントフィールドを介して適用し、z方向で活性化され、励起されるPTOLの量をさらに減少させることも可能である。
【0048】
TIRF顕微鏡法の励起放射線及び活性化放射線は、基板に光学的に連結されるプリズムを使用して、対物レンズの外部試料/基板界面に供給することが可能である。場合によっては、励起及び活性化放射線は、エピ構造内の試料/基板界面に適用可能であり、励起放射線は、レンズの開口数(「NA」)が全内部反射(「TIR」)の臨界角よりも大きい最大照射角度θmax>sin-1(NA/nsub)(ここで/nsubは基板の屈折率である)を生じる限り試料中のPTOLから放たれる蛍光放射線を集めるために使用される同じ対物レンズの後部の瞳に入り、且つ励起放射線は励起放射線のTIRを支える外側環状領域でこの後部の瞳に入る。
【0049】
図9a及び9bは、活性化、励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像し、試料の中の個別PTOLの多数サブセットの光変換、単離、及び場所特定を介して試料の超高分解能画像を作り出すことができるような、対物レンズ経由のTIRF励起放射線を使用して試料中に希薄に存在する活性化PTOLを励起させることができるシステムの概略図である。活性化されたPTOLの連続的励起のために、10mWのダイオードポンピング型固体レーザ(Lasos GmbH,Jena社,Germanyから入手可能)から放射される561nmの波長を有する光は励起用コリメータ900へとファイバ共役され、かつ60倍、1.45NAの全内部反射蛍光(「TIRF」)油浸対物レンズ902(ニューヨーク州メルヴィルのオリンパスアメリカ社から入手可能)の内部後部瞳平面に焦点集束させられることが可能である励起入力ビーム901を供給する。狭帯域幅のレーザラインフィルタ903(ニューヨーク州ロチェスターのセムロック社から入手可能)を使用してレーザ、及び対物レンズ902の前の光学経路で発生する自己蛍光からの放射線ノイズを排斥する。PTOLのパルス化された活性化のために、約405nmの活性化波長λactで50mWの出力を生じることができる第2のダイオードレーザ(カリフォルニア州サンタクララのコヒーレント社から入手可能)を、中間のガルバノメータに基づくスイッチ(図示せず)を通して活性化用コリメータ904へとファイバ共役させて、2色性ミラー907(セムロック社から入手可能)で励起用入力ビーム901と組み合わされる前にバンドパスフィルタ906(カリフォルニア州コビーナのCVIオプティカル社から入手可能)によって同様にフィルタ処理される、焦点集束した活性化用入力ビーム905を作り出すことが可能であり、次いで、この組み合わされた入力ビーム908は、特注のパターンでアルミニウムメッキされたミラー909(カリフォルニア州サンクレメンテのレイナード社から入手可能)上の楕円形のスポットから対物レンズ902へと反射され得る。組み合わされたビーム908が対物レンズ902に入る半径ρは、
【数3】
となるように制御されてもよく、それにより、結果として生じる反射光線は低い自己蛍光の浸漬油(例えばペンシルバニア州ウェストチェスターのストラクチャープローブ社から入手可能なCargilleタイプFF)を横切り、かつ全内部反射(「TIR」)が起こるために、
【数4】
より大きい臨界角で試料とカバースリップ913(例えばニューハンプシャー州ハンプトンのフィッシャーサイエンティフィック社から入手可能な#2厚さのカバースリップ)との間の界面に入射する。それにより、エバネセントフィールドが試料の中に確立されることが可能であり、エバネセントフィールドの短い減衰長の中の分子のみを励起する。しかしながら、励起及び活性化ビームの入射エネルギーの実質的な比率を界面に反射させ、対物レンズ902から現れた後にミラー909上の第1の楕円形スポットと対角線上で反対にあるミラー909上の第2の楕円形スポットから反射される組み合わされた出力ビーム910を生じさせることが可能である。次いでこのビーム910は2色性ミラー907から、励起用出力ビーム911及び別個の活性化用出力ビーム912へと分割され、これらは最終的にそれぞれのビームダンプへと向けられる。
【0050】
通常の分子断面積(例えば約10-16cm2)に関すると、反射される励起ビームエネルギーは、図9bに示されるような対物レンズ902から現れるPTOLの信号ビーム914よりも1015倍強いと見込まれる。したがって、この対物レンズTIRFの幾何学形状を通す試みは、界面で反射される励起ビームとその後に遭遇する光学素子のビームにおいて発生する全ての自己蛍光の両方からの分子信号の単離である。楕円形で反射防止コーティングを施された透過性の開口部を有し、該開口部は対物レンズ軸に直交する投影が後部瞳の8.7mm径に合致し、したがって信号ビーム914を高い効率で検出用光学素子へと通過させるので、ミラー909は該単離を手助けする。また、スポットでの反射ビームのガウス幅よりもD倍大きい楕円形の反射スポットに関しては、励起エネルギーの約erfc(D)のみが検出用光学素子上へと通されるか、又はD=3若しくは4のそれぞれについて〜2×10-5から〜2×10-8が通される。さらに、該スポットは後部瞳の周縁部の小さい画分のみを塞ぐので、実質的に検出用開口数を低下させない。したがって、PTOLの回折限界よりも精緻な場所特定の要素であるPSFの標準偏差は実質的に悪化しない。さらに、ミラー909は波長に左右されず、したがって交換することなく異なる励起レーザ及び異なるPTOLで使用されることが可能である。ミラー909は複数の角度、複数の極性、及び/又は定在波のTIRF励起をサポートするために複数のスポットを有してもよい。
【0051】
特別誂えのスポット化ミラー909を通過後に、無限遠補正対物レンズ902から現れる大幅に平行化された信号ビーム914は、(図9bに示されるように)第1のミラー915によって反射されることで検出用光学素子の軸に沿って進むことができる。実質的にこの軸に沿って進む全ての残留励起光(並びに残留活性化光の多く)は、ラマンエッジフィルタ916(セムロック社から入手可能)によって除去可能である。しかしながら、このフィルタ916の光学密度は垂直入射からの逸脱の増大と共に急速に低下するので、バッフル917を該フィルターのいずれかの側に置き、システム内のいずれか他の場所で発生した高い入射角度の散乱光を取り除くことができる。フィルタで処理された信号ビームを、アクロマティックチューブレンズ919(ニュージャージー州バーリントンのエドムンドオプティック社から入手可能)を用いて背面照射され(例えば-50℃に)電子冷却された電子増倍CCDカメラ920(コネチカット州サウスウィンザーのアンドールサイエンティフィック社から入手可能)の面上で集束ビーム918へと集束させ、単離された単一分子の所望の画像を作り出すことが可能である。活性化ビームが当てられるときにカメラ920が飽和しないことをさらに保証するために、405nmのノッチフィルタ921(セムロック社から入手可能)が含ませることもあり得る。
【0052】
TIRF構成内の試料/基板界面の平面内で場所特定の精度をさらに高めるために、基板を導波路として使用することで、2つ以上の交差する励起ビームの伝搬をサポートすることが可能である。次いで、これらのビームはこの平面内の構造化された励起フィールドを形成することが可能であり、該平面は界面に対して直角のエバネセントである。例えば、図10aに示されるように、2つのそのような励起ビーム1000及び1001は、試料1004及び基板1005との間の界面に平行の1つの軸1003に沿う定在波(「SW」)の強度プロファイル1002を作り出すことが可能である。次いでこのSWをこの軸に沿って1周期(例えば位相Δ=0°(フレーム1006に図解される)、Δ=120°(フレーム1007に図解される)、Δ=240°(フレーム1008に図解される))走査させ、かつ各々のSW位置で活性化されたPTOLの画像(例えばフレーム1009、1010、及び1011に示される)を捕捉することは、図10bに示されるように、幅〜λexc/(4nsub)(式中、λexcは励起放射線の波長であり、nsubは基板の屈折率であってCCDにある幅〜λems/(2NA)を有する検出PSF1013よりも低く、ここでλemsはPTOLから放たれる信号放射線の波長である。)を有する。実効励起PSF1012に基づいてPTOLが場所特定されることを可能にする。高いnsubの基板が使用されるとPSFは特に改善される。次いで、第1に対して直角の第2のSWを作り出し、活性化されたPTOLの同じサブセット全体にわたって走査させることで、これらを平面内の他方の軸に沿って場所特定することが可能である。
界面の平面内に構造化されたTIRF励起フィールドを形成するビーム1000及び1001もTIRF能力のある信号収集対物レンズ(図10cに示される)を通るか又は界面の反対側の基板側の光学素子(例えばプリズム)を用いて界面に送られることが可能である。
【0053】
広視野型の分子場所特定は、(焦点面外蛍光を削減するための)薄い試料によく適しており、TIRF分子場所特定はエバネセントフィールドによって、試料/基板界面近傍の試料の部分に適している。他方で、共焦点顕微鏡法は全細胞といった厚い試料において3DでPTOLを場所特定するために使用されることが可能である。励起PSF(励起の焦点集束によって決定される)と3Dの検出PSF(共焦点ピンホールと検出用対物レンズの開口数によって規定される)の積によって規定される3Dの共焦点全体のPSFは、薄い試料の広視野型又はTIRFのケースよりも容量分析で大きいという可能性がある。したがって、そのような場合においては自己蛍光はさらに大きい可能性があり、これは場所特定精度を下げ得るか、又はさらに高い内因性輝度を有するPTOLの使用を示唆し得る。
【0054】
しかしながら、共焦点顕微鏡の焦点集束円錐に入って出て行く焦点面外の活性化及び励起エネルギーは、時期尚早にPTOLを活性化した後、光退色させる可能性があり、焦点外バックグラウンドを付与し、正確に場所特定されることができるPTOL(即ち焦点面近傍のPTOL)の集団を減少させる。光切り換え可能なFP(例えば、PA-GFP及びKaede)の多くは、紫外光又は近紫外光によって活性化されるので、この問題は分子を活性化するためのマルチフォトン励起を使用することによって低減することが可能であり、これはこの非線形の処理が一般的に、実効マルチフォトン焦点深度外側で低いPTOL活性化をもたらすからである。マルチフォトン集束は、共焦点励起集束が走査容積を通過中にこれに先行してもよく、又は現在の焦点面を横断する分子が、個々に解像可能な活性化分子の所望の密度が達成されるまで、マルチフォトン集束の2D走査によって最初に活性化され得るときにこれに先行してもよく、そのように活性化された分子を検出及び場所特定するための共焦点集束の同様の2D走査がこれに続く。また、多焦点の活性化が使用されるとき、標本に対する活性化ビームの短波長からの損傷は大幅に削減される可能性が高い。
【0055】
共焦点の分子場所特定は直列の処理であり、したがって比較的遅い。例えば、共焦点の分子場所特定は:活性化とそれに続く現在活性化されている分子すべてがブリーチされるまで多数の直列に走査された3D画像の取得;並びにそれに続く再びの活性化及び多数の3D走査によって引き継がれ、所望の密度の分子位置の3Dマップが得られるまで何度も繰り返されるので三重の直列処理である。これは広視野型又はTIRF型の分子場所特定による2D撮像よりも明らかに低速の提案である。ニプコー円板技術を利用する多焦点顕微鏡法を使用して、ある程度処理のスピードを上げることは可能であるが、該方法は単一平面のみに多数の焦点を作り出し、顕著な焦点外励起をさらに発生させてピンホールフィルタ処理したものでさえも標的分子の時期尚早のブリーチ及び増大した自己蛍光誘導バックグラウンドをもたらす。他方で、3D格子励起は、本願明細書に引用により組み込まれる「光学格子顕微鏡法」という表題の2005年11月23日のPCT特許出願PCT/US2005/042686号明細書に記載されているような、多数の励起最大部を同時に3Dで供給することが可能であり、主にこれらの最大部単独に対する励起の改善された制限によって意図されない光退色及び付随するバックグラウンドが大幅に削減される。さらに、格子が単一の顕微鏡対物レンズで対象範囲に入れられるよりも大きい立体角全体にわたって広がる成分ビームで作り出されれば、(例えば半分のピーク強度における全量によって規定されるような)各々の格子最大での励起の制限は、単一焦点又は従来式の多焦点顕微鏡法におけるよりも大きくされることが可能であり、さらにバックグラウンド信号を大幅に削減し、さらに厳密な初期PSFに起因して各々のPTOLのさらに正確な場所特定を可能にする。もちろん、最大限に対称性の複合格子のすべてのビームが使用されるときには、最適なSNR及び初期PSFが期待される。共焦点のケースのように、マルチフォトン活性化は局所的に適用可能であり、例えばマルチフォトン格子で蛍光励起格子に先行して走査されるか、又は活性化されたPTOLの一連の平行平面を、蛍光励起格子によるこれらの平面の同時走査に先行して作り出すように走査される。
【0056】
(d.PTOLの特性)
単離されたPTOLの場所特定を介した超高分解能にとって有用なPTOLは以下の際立った特徴、即ち比較的高い輝度(その励起断面積と量子効率によって規定される);不活性状態で作り出される発光に対する活性状態で作り出される発光の間の比較的高いコントラスト比(これは励起波長と検出用フィルタのセットの慎重な選択を通じて改善されることが可能である);励起に曝される他の細胞物質からの自己蛍光を削減する励起波長;大部分の自己蛍光が起こるスペクトル範囲と十分に異なる発光波長;及び不可逆的なブリーチの前に所望の場所特定精度を達成するのに十分な数のフォトンが各々のPTOLから集められるほど十分に大きい光安定性;のうちの1つ以上を一般的に有し、その上、不活化状態に切り換え復帰できるキンドリングタンパク質及びドロンパ以外のPTOLについてはそれでもなお有限であり、それにより、現在のセットが大幅にブリーチされた後に個々に解像可能な活性化PTOLの新たな集団が作り出されることが可能である。実際に、不可逆的光退色に関連する可能的光毒性を削減するために、理想的なPTOLは他の手段(例えば別個の不活化波長での照射)を使用する選択によって不活化されるまで活性状態を保つであろう。
【0057】
場所特定を介した超高分解能を、テトラマーのPTOLであるKaede及びKikume、並びにモノマー、ダイマー、及びEosFPのタンデムのダイマー形態で明示されてきた。これらのPTOLは、不活性化された吸収と活性化された吸収との間の大きな波長の広がり、並びに発光最大、高輝度、及びより長波長の発光という共通の利点を有し、ここで自己蛍光は通常さらに低い。モノマーのEosFPはテトラマーのKaede又はKikumeよりも小さい物理的サイズという追加の利点を有し、したがって細胞の構造及び機能に与える影響が少ないと見込まれる。実施に際しては、所定の用途に関する最適化のためのユーザの判定基準に基づいていくつかの多様なFPから特定のFPが選択されてもよい。
【0058】
(e.バックグラウンドの削減)
活性型PTOLと不活性型PTOLとの間のコントラスト比が、標的PTOLの所定の初期密度で所望のSNR及び結果として得られる場所特定精度を達成するのに低過ぎる場合、効果的な分子密度及び結果として得られるSNRが所望の通りになるまで標的PTOLの一部を不可逆的にブリーチすることによってコントラスト比を改善することが可能である。試料中の他の自己蛍光物質も、不活化されたPTOLの大部分に影響を与えることのない励起光を使用して、予めブリーチされることが可能である。バックグラウンドに関するさらなる区別は、適切なスペクトルフィルタによる処理、蛍光寿命の測定、或いは偏光励起及び/又は偏光分析検出を介して得ることが可能である。
【0059】
広視野型顕微鏡法において、(例えば軸方向の定在波から)焦点面近傍に集中した空間的に構造化された活性化エネルギーを使用して、この平面から離れた活性化された焦点外のPTOLから生じるバックグラウンドを減少させることが可能である。共焦点又は格子顕微鏡法において、これらの方法で従来から適用された3D制限された焦点よりむしろ定在波又は平面状で軸方向に構造化された活性化の他の手段で、同様のバックグラウンド削減を達成することが可能である。
【0060】
(f.偏光励起/検出)
試料中に置かれて電気的双極子モーメントを有するPTOLから出る光は、本願明細書に記載の技術を使用して検出及び撮像され得る。そのようなPTOLが試料中で一定の空間的配向を有するとき、これらのPTOLは偏光光で選択的に活性化、励起、及び/又は撮像されることが可能である。そのようなPTOLから放たれる光の偏光を分析することによって(例えば、光を検出する前に偏光フィルタを通して試料中のそのようなPTOLから放たれる光を通過させ、それにより、所望の偏光を有する光のみが検出されることによって)、これらのPTOLの双極子の配向が判定されることを可能にする。試料中で無秩序に配向している複数の一定の双極子PTOLに関すると、単一の励起偏光を有する活性化及び/又は励起放射線を使用することから結果として得られるであろう不均等な重み付けではなく、3つの直交する方向すべてで偏光にされた活性化及び/又は励起放射線を使用することによって、これらのPTOLが等しい確率で活性化及び/又は励起され得る。偏光にされた光の電界はその伝搬方向に直角の平面内にあるので、3方向すべてでの偏光励起は少なくとも2つの独立した励起ビームを必要とする。例えば、とりわけ図9に関して、本願明細書に記載の対物レンズ経由のTIRFシステムは、4つの励起用コリメータ900を使用することによって試料/基板界面の平面内で90°の間隔の4つの独立したビームを供給することが可能であり、ミラー909上の4つのスポットで反射されて対物レンズ902の後部瞳の中へと送られる4つの入力ビームを作り出す。後部瞳に関してビームを0°及び90°で半径方向に偏光させ、同様にビームを方位角180°及び270°で偏光させることは、結果として、界面の平面内で互いに対して直角に偏光した2つの干渉波、及び界面に対して直角に偏光した2つの干渉波をもたらす。これらのビームは、順次又は同時にオンに切り換えられ得るが、後者のケースでは、共通の偏光ベクトルを有するビームが互いに干渉するであろう。実際に、図10に示されるように、同様の偏光を備えた対でビームをオンに切り換えることによって、定在波を形成して、該定在波の急峻な励起PSFに起因する場所特定精度の増大を供給することが可能である。したがって、正確な場所特定、双極子の測定、及び一定の双極子の等しい励起確率の特性が組み合わされることが可能である。
【0061】
(g.例示的超高分解能画像)
図11は、COS7細胞内のリソソーム構造の回折限界画像(図11a)と、同じCOS7細胞内の同じリソソーム構造の超高分解能画像(図11b)とを比較しており、これらは本願明細書に記載されているTIRF単離/場所特定の装置と技術を使用して得られた。COS7細胞を含む試料を、リソソームの膜貫通型タンパク質CD63に融合した光活性化可能なタンパク質Kaedeの発現のために設計されたプラスミドを用いた一過的トランスフェクションによって調製した。透過型電子顕微鏡に共通の技術を使用して細胞をペレット化し、次いでミクロトーム化することで約80nmの厚さの切片を作出し、これを撮像した。20フレーム毎の後に短いパルスを適用して活性化された分子の数はより高く回復された活性化エネルギーで20,000フレームの単一分子の画像を撮ったが、それでも個々に解像可能なレベルであった。図11bに示される超高分解能画像は51,000を超える単離分子から形成され、各々の分子は24nm以下の不確実性で場所特定され、位置の不確実性に等しい標準偏差を備えたガウス分布によって与えられる強度の画像プロファイルを有するスポットとして図11bに再描画された。各々の分子に関するスポットのプロファイルを正規化し、各々の分子に関して同じ積分強度を与えた。このようにして、さらに高度に場所特定された分子が明るくはっきりとしたドットとして見え、良好に場所特定されていない分子は広くて薄暗く見える。回折限界画像は、単離された分子の同じセットの回折限界画像を合計することによって形成され、かつ従来のTIRF画像と区別できないことが確認された。
【0062】
図12は、リン酸バッファ生理食塩水中の固定されたキツネ肺線維芽細胞全体とガラスのカバースリップとの界面で得られた回折限界画像(図12a)と、同じキツネ肺線維芽細胞の超高分解能画像(図12b)を比較している。細胞は、細胞付着性タンパク質ビンキュリンに融合した光活性化可能なタンパク質dEosFPを発現するように一過的にトランスフェクトされた。画像は、図11と結び付けて述べられたのと同じ方式で作り出された。回折限界画像は、細胞周縁の単一の限局的付着領域を強調しており、PTOL局在による超高分解能画像は図12aの四角形の中の構造の拡大図を示している。
【0063】
(3.重複して空間的に構造化された活性化及び励起を介して強化された分解能)
光学顕微鏡法(例えば広視野型、TIRF型、共焦点型、又は格子型)のいずれの全体的PSFも通常では励起PSFと検出PSFのそれとの積(即ちPSFoverall=PSFexcitation×PSFdetection)で与えられる。広視野型顕微鏡法は分解能に励起の寄与を提供せず、従来のTIRF型顕微鏡法は極めて高いz軸の励起分解能を提供するがx及びy軸で提供せず、かつ共焦点型と格子型の両方の顕微鏡法は単一の焦点又は強度最大の格子への励起フィールドの集中によって励起分解能に寄与する。
【0064】
PTOLは、励起エネルギー自体を制限するために使用されるのに類似した方式で場所特定された領域への活性化照射を制限することによって、第3の成分を全体的PSFに与える方法を提供する(即ちPSFoverall=PSFactivation×PSFexcitation×PSFdetection)。したがって、例えば、集束した活性化ビームが共焦点顕微鏡の焦点に一時的に適用した後に活性化されたPTOLの励起波長での集束ビームに適用することができ、結果として生じる発光が空間的に場所特定される方式で共焦点で検出される。次いで、完全な超高分解能3D画像を作り出すためにこの処理が多数のボクセル(即ち3D画素)全体にわたって繰り返されてもよい。1つの警告は、焦点容積内の活性化PTOLの数は、(不可逆的な光退色か又は不活性状態への復帰によって)活性化と励起が直ぐ隣りのボクセルに加えられる前に、大幅に減少すべきであるか、そうでなければ実効活性化PSFは重複することで隣接する活性化焦点によって規定されるより大きな領域の反映となり、それによって実効全体的PSFを低下させるであろう。活性化された分子は励起の処理によって不活性状態へと戻され、それにより、活性化された集合を減らすと同時に次のボクセルへと走査が進むべきときを判定するための自然な手段を提供するので、ドロンパはこの超高分解能の方法にとって特に優れた候補であるように見える。不活化が過度に速く起これば、次の位置に進む前に多数回の活性化/(不活化及び測定)サイクルが同じ位置で実行されることが可能である。この処理でPTOLとしてドロンパを使用することは、約100回以上そのようなサイクルが各々の位置で実行されることを可能にする。
【0065】
ドロンパについては、活性化波長が通常では短い(例えば400nm)ので、活性化PSFは全体的PSFにおける大部分の分解能利得を提供することが可能である。波長のこの短さに由来する細胞の損傷が懸案事項であれば、線形の(即ち単一フォトンによる)活性化で可能であるよりもわずかに多くの活性化PSFの代償で、マルチフォトンによる活性化が使用可能である。付け加えると、発光分子の密度はPSFactivation×PSFexcitationで与えられるので、発光分子は少なくとも従来の2フォトン励起と同じくらい狭い焦点領域に限定され、それにより、たとえ線形で共焦点の励起を使用しても大幅に減少した面外光退色とバックグラウンドをもたらすであろう。もちろん、同じ若しくは相応の周期の疎な複合格子が(図13a、及び図13dに示された図13aの拡大図に示されるような)活性化放射線と(図13b、及び図13eにある図13bの拡大図に示されるような)励起放射線の両方に関して使用されれば、PTOLの活性化と励起を達成して且つ活性化及び励起放射線に関する格子内の最大よりもくっきりした最大(図13fに示される)を有する全体的格子(図13cに示される)をもたらし、さらなる利得が空間的及び時間的分解能の両方で可能である。点広がり関数の工学、及び活性化と励起のPSFの相対的移動を使用することで、それらの実効重複の領域を減少させることによって分解能をさらに高めることが可能である。全体的分解能に対して検出PSFの寄与が無視できる程度であれば、集められる信号を最大にするために(マルチフォトン顕微鏡法の殆どの実施態様のように)ピンホールフィルタ処理を単純に除外することが有利であると見込まれる。最後に、潜在的にさらに多数の分子が(活性化と励起のために共焦点放射線が使用されるときには)各々の焦点から、又は(格子にパターン化された放射線が活性化と励起のために使用されるときには)励起最大から所定の時間でフォトンを放出するであろうから、発明者らは、この超高分解能の方法が生細胞における動的な超高分解能撮像によく適していることを指摘する。
【0066】
(4.飽和不活化を介した超高分解能)
PTOLの一部が前もって活性化された回折限界焦点容積の小部分全体にわたってPTOLの不活化の飽和を活用することによって、回折限界よりも精緻な領域から発光を集め、次いで多数の場所で繰り返すことで回折限界よりも精緻な画像を作り出すことが可能である。この概念は、光学格子による活性化、不活化、及び励起に関して図14に記載しているが、しかし他の手段(例えば単一の集束ビーム)が使用されることも可能である。
【0067】
図14aに記載のように、制限された最大強度の格子をPTOLの活性化波長で最初に作り出し、活性化されたPTOLの場所特定された領域のアレイを作り出すことができる。次に、各々の格子点に配置された高強度の骨組み中の中央の低強度のノードを有する(図14bに示されるような)減衰格子は、各々のノードの外側のPTOLを不活性状態に戻す波長で適用可能である。次に、(図14cに示されるような)励起格子は活性化されたPTOLの励起波長で適用可能であり、それにより、減衰格子の各々のノード近傍のPTOLの小さい(例えば、発光放射線の波長よりも小さくなり得る寸法を有する)量が励起された後に、フォトンを放出し、結果として(図14dに示されるような)超高分解能の所望の格子を生じる。次に、残りの活性化PTOLが、例えばそれらの大部分の画分が光退色するまでそれらを励起することによって、又はそれらの大部分の画分が不活性状態に戻されるまで不活化放射線を当てることによって不活化される。次いで、活性化、ノードパターンによる部分的不活化、励起、及び殆ど完全な不活化のこの処理を異なるポイントで繰り返し、第1のポイントからずれた超高分解能焦点の格子を作り出すことができる。格子の各々の基本セル全体にわたる多数のポイントでこの処理をさらに繰り返すことによって、及び別々の検出素子(例えばCCD検出器の画素)での活性化/ノードの不活化/励起/完全な不活化の所定のサイクル内の個々の超高分解能焦点からの発光放射線を検出することによって、例えば(図14eに示されるような)従来の共焦点顕微鏡法によって可能であるよりも大幅に高い分解能で(図14fに示されるような)完全な3D画像を構築することが可能である。3つの格子すべて(即ち活性化放射線、減衰放射線、及び励起放射線の格子)は、それらの絶対的周期性の比が単純な整数の分数(即ちi/j)を形成するように、又は理想的には同じ絶対的周期性を有する(i/j=1)ように波長で正規化された周期性で選択することができ、それにより、活性化最大、不活化減衰殻、及び励起最大の多くが重複する。完全に不活化する放射線は、格子の形態で、又は実質的に一様な不活化フィールドとしても適用可能である。
【0068】
ここで再びさらに一般的な放射線パターンを考えると、ノードの不活化放射線パターンのみが(特に、少なくとも1つの低強度ノードで)空間的に構造化される必要があること、及び同等に一様な活性化、励起、又は完全な不活化の放射線フィールドが適用され得ることを指摘することは重要である。しかしながら、別の場所の望ましくない残りの活性化PTOLに相対する不活化後のノード近傍の望まれる残りの活性化PTOLの間のコントラストを高めるため、及び繰り返される活性化と不活性化のサイクルによる可逆的PTOLへの潜在的損傷を減少させるために、活性化と励起のフィールドのどちらか、又は両方を同様に空間的に構造化することが有利であると見込まれる。ノード近傍のさらに完全な最終的不活化は、完全な不活化放射線を同様に空間的に構造化することによって、これらの残りの活性化のポイントに集中させることでも達成可能である。不活化フィールドがノードでゼロ強度に近く、且つノード近傍の不活化強度の減少率が高ければ、不活化エネルギーの適用後に残る活性化PTOLの密度及び空間的制限が改善されることもやはり指摘する。
【0069】
特定の光活性化可能なFPがこの技術に使用されることもあり得る。例えば、KFP1及びドロンパなどのキンドリングタンパク質は両方共に不活性状態へと光切り換えで復帰させられることが可能であるので、これらは使用され得る。KFP1は、該分子が不可逆的に活性化されないことを保証するための低強度の活性化を必要とし、比較的低い量子効率を有し、かつKFP1の不活化は励起と異なる波長で起こる。ドロンパは高い輝度を示し、多数回のサイクルにわたって確実に切り換え可能であるが、検出信号の時間ゲート制御が必要とされる。なぜならば該減衰波長は励起波長と同じであり、それゆえに活性状態の減衰時に発生する蛍光が排斥されるか、又は減衰ノード近傍での後の発光から分離して集められなければならないからである。他方で減衰中にさらに多くの分子が発光に寄与するであろうから、減衰中に集められる発光を使用して、高いSNRの回折限界画像を作り出すことが可能である。
【0070】
(5.下げられた温度でのPTOL撮像)
PTOLで標識された生きた生物試料、又は室温は、この場所特定顕微鏡法にとって特有の課題を提起する。PTOL標識は、比較的長い多数フレーム取得時間中に場所特定の精度の域を越えて拡散するか又は輸送される可能性がある。付け加えると、PTOLの配向などの他の特性がこの取得期間中に変化し、結果として潜在的に有用な顕微鏡情報の損失をもたらし得る。したがって、試料を室温よりも下に冷却することは、撮像される間の試料の移動量を小さくし得る。
【0071】
付け加えると、下げられた温度では、ある種のPTOLの輝度及びスペクトル線幅が向上し、それにより、さらに良好に解像された場所特定画像用より多くのフォトンがさらに迅速に獲得されることが可能になり、かつ自己蛍光バックグラウンドに相対したPTOLのコントラストが減少させることが可能である。本明細書に含まれるものは、試料又は試料と顕微鏡の一部が凍結温度よりも下に冷却されることでこれらの制約が緩和される実施態様である。特に、急速凍結は潜在的に損傷を生じない氷晶を試料の中に形成するので、ガラス状態の試料を調製することが可能である。
【0072】
(6.潜在的画像のPTOL顕微鏡法)
リソグラフィでは、ナノメートル規模のパターンが、フォトン、電子、イオン、又は原子ビームで記述されることが可能である。通常、該パターンは、レジストなどのビーム感受性材料の上に記述される。光ビーム又は電子ビームのケースでは、フォトレジスト又は電子ビームレジストが使用されることが可能である。最適のリソグラフィ性能に関して、後工程の処理が露光されたレジストパターンを他の材料上に転写する前の早い段階でのビーム及び露光パターンの正確な形状を特徴付けることが有用である。したがって、レジストは、PTOLを含むか、又はレジスト層の上面又は底面をPTOLで標識されることもあり得る。このケースにおいて、コントラストは数種類の露光ビームによる露光用のビームによって与えられ、かつ該露光ビームはレジスト内のPTOLに検出可能な影響を有することが可能であり、それにより、露光後のPTOLの画像化がレジスト内の露光ビームのパターンを示し得る。例えば、そのような露光ビームは:PTOLの放射線する能力を(例えば電子ビームによるイオン化、又はUV誘導型の結合切断などによって)破壊すること;PTOLの発光波長を(例えば活性化放射線に起因するKaedeの波長シフトに類似した方式で)シフトさせること;又は化学的に活性化されるレジストのケースでは通例であるようなレジスト内の酸の放出を触媒すること;が可能であり、その後これが露光されたPTOLの光物理的性質を変える。このようにして、図15aに示されるように、taレジストはいくつかのPTOLを含むことができる。図15bに示されるように、レジストの一部分1502がリソグラフィ処理の中で露光放射線に曝露されると、フォトリソグラフィで活性化された酸1503がレジストのさらなる分裂又は重合を触媒することが可能である。付け加えると、酸1503は(例えばPTOL1501としてEosが使用されるときに)PTOLの発光波長をシフトさせることも可能であり、ここでは酸1503の存在下でPTOL1506の活性化状態は、PTOL1501が酸1503の存在下にない場合と異なる波長でより強く発光することが可能である。PTOL顕微鏡は、酸で変換されたPTOL1506又は未変換のPTOL1501をレジスト上の内在画像として画像化することが可能であった。これを順次、他方でPTOL場所特定長さ規模の分解能での露光特性及びプロファイルの指標を供給することが可能であった。
【0073】
別途規定されない限り、本願明細書に使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本願明細書に記載のすべての出版物、特許明細書、特許、及び他の参考資料は、それらの全体が引用により組み込まれる。論争がある場合には、定義を含む本願明細書が統制するであろう。付け加えると、材料、方法、及び実例は具体的な例示に過ぎず、限定ではない。
いくつかの実施態様を記載している。それでもなお、様々な変更がなされ得ることは理解されるであろう。したがって、他の実施態様も添付の特許請求項の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2005年5月23日に提出された「光変換可能な光学標識を用いる光学顕微鏡法(OPTICAL MICROSCOPY WITH PHOTOTRANSFORMABLE OPTICAL LABELS)」という表題の米国特許仮出願第60/683337号明細書、及び2006年3月10日に提出された「分子分解能に近い細胞内蛍光タンパク質の撮像(IMAGING INTRACELLULAR FLUORESCENT PROTEINS AT NEAR-MOLECULAR RESOLUTION)」という表題の米国特許仮出願第60/780968号明細書に優先権を主張するものであり、これらの両方がすべての目的で引用により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
すべての目的で引用により本願明細書に引用により組み込まれる発明者のうちの1人E.Betzigによる論文Opt.Lett.20,237(1995)は、個別放射体(例えば蛍光分子)の稠密集合を含む試料の画像でm次元の空間分解能を向上させるための方法を記載しており、該方法は最初にm空間次元とn個の追加的な独立した光学特性(例えば励起又は発光の偏光、又は照射光の波長、蛍光分子の蛍光の寿命など)によって規定される(m+n)次元空間内の各々の個別放射体を単離する工程による。単離の後、各々の放射体のm空間座標は、撮像装置の信号対ノイズ比(SNR)によって決まるが、撮像用光学素子のm次元の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)によって規定される元来の空間分解能よりもはるかに優れた精度で判定されることが可能である。次いで、すべての放射体に関してこの方式で判定されたすべての空間座標のマップがm次元位置空間にある試料の超高分解能画像を生み出す。
【0003】
この手法による各々の放射体の成功的単離には、(m+n)次元の点広がり関数PSFよりも大きいm+n空間内の放射体当たりの平均ボリュームを必要とする。したがって、試料内の放射体(例えば蛍光分子)の高い分子密度は、撮像用光学素子による高い(m+n)次元の分解能を必要とする。Betzigによる1995年の論文において、1立方ナノメートル(nm)当たり約1分子の分子密度を有する放射線分子は、十分に不均質なスペクトルの広がりを導入したマトリックス内にこれらの分子が置かれた場合に、低温(例えば77K)での近接場顕微鏡法/分光法で単離され得ることが推定された。しかしながら、従来式の光学顕微鏡法及び環境条件下にある広い分子スペクトルを用いると、殆どの標的分子種の密度には、アプローチが使用されるには高過ぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光変換可能な光学標識を用いる光学顕微鏡法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
第1の一般的態様において、方法は、第1の活性化放射線を、光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に供給し、該試料中のPTOLの第1サブセットを活性化させることを含む。第1の励起放射線をPTOLの第1サブセットに供給して少なくともいくつかの活性化されたPTOLを励起させ、PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線は撮像用光学素子で検出される。第1の活性化放射線は、第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれを上回るように制御される。
【0006】
別の一般的態様において、回折限界分解能ボリュームで特徴付けられる光学系による撮像の方法が開示される。該光学系の回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度を有する試料の少なくとも一部の中に分布した複数のPTOLを含む試料中で、該試料の該当部分にあるPTOLの第1サブセットが活性化され、それにより、第1サブセット内のPTOLの密度は回折限界分解能ボリュームの逆数よりも小さくなる。PTOLの第1サブセット内のPTOLの一部が励起され、PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が撮像用光学素子で検出される。PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの位置は、活性化及び励起されたPTOLから放たれて検出された放射線に基づいて回折限界以下の精度で判定される。
【0007】
別の一般的態様において、方法は、活性化放射線を、光変換可能な光学標識PTOLを含む試料に供給し、該試料中のPTOLの第1サブセットを活性化させることを含む。リセット用放射線の実質的に最小値に位置するPTOLの第2サブセットが活性化を維持すると同時に、該最小値の外側のリセット用放射線に曝された活性化PTOLは不活性形態へと実質的に変換されるように、強度最小値を含む空間的に構造化された放射線フィールドを有する不活化放射線を、活性化されたPTOLを不活性状態に変換するために試料に供給する。励起放射線を試料に供給して、該試料中の活性化PTOLの少なくとも一部を励起させ、活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出する。第1サブセット内の活性化PTOL当たりの平均ボリュームが撮像用光学素子のDLRVにほぼ等しいかそれを上回るように第1の活性化放射線の強度を制御し、且つ不活性化放射線の強度及び空間構造のうちの少なくとも一方を制御する。
【0008】
別の一般的態様において、装置は、検出器上の位置の関数として放射線の強度を検出するために採用された位置感知検出器;回折限界分解能ボリュームによって特徴付けられ、かつ試料中の複数の活性化及び励起された光変換可能な光学標識(「PTOL」)から放たれた光を位置感知検出器上に結像させるように採用された光学系;を含む。PTOLは、この光学系の回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度で試料の少なくとも一部の中に配分される。この装置はまた:第1の活性化放射線を試料に供給して、該試料の一部の中のPTOLの第1サブセットを活性化させるために採用された第1の光源;第1の活性化放射線を試料に供給して、該試料の第1サブセット中のPTOLの一部を活性化させるために採用された第2の光源;及び、活性化されたPTOLの第1サブセット内のPTOLの密度が回折限界分解能ボリュームの逆数よりも小さくなるように、試料に供給される活性化放射線を制御するために採用された制御器;も含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】光と蛍光染料との間、及び光とPTOLの間との相互作用を示す概略図である。
【図2】一つの蛍光放射体又は複数の蛍光放射体がどのように回折限界画像を作り出し得るかを具体的に示す光学撮像システム、例えば顕微鏡を示す概略図である。
【図3】どのようにして活性化されたPTOLの疎なサブセットが、1つの空間次元において、近隣のPTOLからの妨害発光を伴なわずに撮像されて回折よりも精緻な精度に場所特定されることが可能となるかを具体的に示す概略図である。図3の下半分は、どのように第2又はそれに続く活性化が残りのPTOLの疎なサブセットを画像化し、これが順次回折限界精度よりも良好に場所特定可能であるかを具体的に示す。この手順の繰り返しの適用は多数の個々のPTOLを解像することを可能にし、そうでなければこれらは従来の蛍光によって解像されるには密であり過ぎる。
【図4】どのようにして活性化されたPTOLの疎なサブセットが、2つの空間次元で近隣のPTOLからの妨害発光を伴なわずに撮像されて回折よりも精緻な精度に場所特定されることが可能となるかを具体的に示す概略図である。疎な回折限界のスポットの画像が図4の左側にあり、これらのスポットの場所特定された中心は、対応する画像として図4の右側に表示されている。右側のそのような画像の累積は、右下隅の超高分解能画像を与える。
【図5】異なるPTOL種で標識された異なるタイプのタンパク質がどのように共局在することが可能であるか、並びにどの程度各々の標識タイプのDRLV内の相対的距離及び位置が抽出されることが可能であるかを具体的に示す概略図である。潜在的用途は、タンパク質の共局在試験、又は例えば合成薬剤設計のための親和性試験若しくは親和性マッピングである。
【図6】PTOLの位置を、たとえそれらの間隔がDRLV未満であっても、より良好な解折分解能に場所特定することが可能な装置の概略図である。該構成要素は、PTOLで標識された試料、PTOLのための活性化サブシステム、PTOLのための励起システム、放射線される光のための画像化/検出システム、及びこれらの仕事を順序付けかつデータを取得するための制御システムを含む。
【図7】試料中のPTOLが繰り返し活性化され、励起され、検出対象の放射線を放つ過程を概説するフローチャートである。
【図8A】レンズの焦点面近傍のPTOLによって放たれる放射線の検出のための広視野型顕微鏡法の使用を図解する概略図である。
【図8B】レンズに相対して試料を平行移動させることにより、検出用レンズの焦点深度に比べて大きい領域全体にわたって、PTOLにより放たれる放射線の広視野型検出を図解する概略図である。
【図8C】選択的に励起させた後、多数の平面内のPTOLから放たれる放射線を検出するための広視野型システムにおける用途構造化された励起の使用を図解する概略図である。
【図8D】異なる平面にあるPTOLから生じる広視野型システムの検出器での異なるパターンを図解する概略図である。
【図9A】例示的な超高分解能顕微鏡の概略図であり、試料への全内部反射を介して励起及び活性化放射線を供給するために使用されるサブシステムを示している。
【図9B】図9Aの典型的な超高分解能顕微鏡内でPTOLにより放たれる放射線を検出するために使用されるサブシステムの概略図である。
【図10A】個々のPTOLについて向上した場所特定精度を提供するための、レンズの焦点面に平行の平面内で構造化された励起放射線の使用を図解する概略図である。
【図10B】個々のPTOLを場所特定するのに有用な検出に基づいた点広がり関数と定在波励起に基づいた点広がり関数とを比較する図である。
【図10C】撮像用対物レンズを通過する2つの逆方向に伝搬するコヒーレントビームを使用することによる、試料と基板との間の全内部反射界面での定在波の発生を図解する図である。
【図11A】細胞内のいくつかのリソソームを通る薄い断面の従来型の全内部反射画像であり、PTOLで標識されたリソソーム特異性の膜貫通型タンパク質からの蛍光によって可視化される。
【図11B】個々のPTOLの単離及び精密な場所特定によって得られた、同じ断面の同じ領域の超高分解能画像である。
【図12A】基板に固定された全細胞の付着点の従来型の全内部反射画像であり、付着タンパク質ビンキュリンのPTOL標識バージョンからの蛍光によって可視化される。
【図12B】個々のPTOLの単離及び精密な場所特定によって得られた、固定された全細胞の同じ領域の超高分解能画像である。
【図13A】所定のPTOL種のための活性化波長での活性化用光学格子のプロットである。
【図13B】所定のPTOL種のための励起波長での励起用光学格子のプロットである。
【図13C】図13A及びBそれぞれの活性化用及び励起用格子の重複に基づいた実効全体信号形成用格子を示す図である。
【図13D】図13Aの活性化用格子の中の単一の強度最大のプロットである。
【図13E】図13Bの励起用格子の中の単一の強度最大のプロットである。
【図13F】図13Cの全体信号形成用格子の中の単一の実効全体信号発生領域のプロットである。
【図14A】所定のPTOL種に関する活性化波長での活性化用光学格子のプロットである。
【図14B】所定のPTOL種に関する不活化波長での不活化用光学格子のプロットであって、各々の格子点に中心ノードを備えた不活化強度殻から成る。
【図14C】所定のPTOL種に関する励起波長での励起用格子のプロットである。
【図14D】図14A-Cそれぞれの活性化用、不活化用、及び励起用格子の重複に基づく実効全体信号形成用減衰格子を示す図である。
【図14E】図14Dの減衰格子によって得られた3D試験対象物の仮想画像である。
【図14F】従来型の共焦点顕微鏡法によって得られた同じ3D試験対象物の仮想画像である。
【図15】どのようにしてPTOLを使用して回折よりも精緻な内在画像が表示されることが可能になるかを示す概略図である。この例では、PTOLは化学的に増幅されるレジスト内に埋め込まれている。パターン形成用ビームへのレジストの領域の一部の曝露が、その領域内の酸を解放することを可能にする。そのような酸は順次、近隣のPTOLの光学特性を変えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
(1.概説)
(a.変換可能な標識の単離及び場所特定を介した超高分解能)
例えば、光で活性化される又は光で切り換えられる蛍光タンパク質(「FP」)などの光で活性化される又は光で切り換えられる光学標識の出現は、撮像装置内で検出され、且つ分子の単離と場所特定のこの処理によってFPを含む試料の画像を作り出すために使用される信号に寄与する活性化分子の密度を制御するために用いる可変制御パラメータ(口語表現では「ノブ」)を提供する。したがって、該信号に寄与するFPの密度を、撮像用光学素子のPSFに合わせて、任意の所定の時間に必要とされる低い分子密度での画像を供給することができる。
さらに一般的に述べると、試料は、変換可能な標識とそれらの環境との相互作用の理由により、不活性状態(ここでは標識は励起されたときに顕著な検出可能な放射線を作り出さない)から活性状態(ここでは標識は励起されると放射線を放つことができる)へと変換可能な多くの光学標識を含むことがあり得る。少なくとも1つの活性化環境パラメータ全体にわたる十分な制御でもって、制御可能で希薄な標識サブセットを活性化させることが可能である。次いで、これらの活性化された標識を、該標識が、光学系によって撮像されることが可能な蛍光放射線を放つことができる状態から励起状態へと励起させることができる。活性化環境及び励起放射線を制御することによって、放射線を放つ活性化及び励起された標識当たりの平均ボリュームは光学系のDLRV特性よりも大きくなることが可能である。発光標識のそのような希薄なサブセットからの放射線を検出することによって、活性化及び励起されたPTOLの位置を超高分解能の精度で判定することが可能である。次いで、活性化された標識を不活化することが可能であり、試料中で統計学的に違う位置に局在する傾向を有する変換可能標識の別のサブセットを、少なくとも1つの活性化環境パラメータを制御することによって活性化させることが可能であり、、かつ活性化された標識の第2サブセットからの蛍光を撮像することが可能であり、及びそれらの位置を超高分解能の精度で判定することが可能である。試料中のさらに多くの変換可能な標識の位置を超高分解能の精度で判定するために、この処理を繰り返すこともあり得る。異なる画像から得られるすべての変換可能な標識の測定された位置を重ね合わせ、試料の超高分解能画像を構築することが可能である。
【0011】
光で活性化可能、又は光で切り換え可能な蛍光タンパク質の特定のケースにおいて、標識は光で変換され、それゆえこれらの標識は光変換可能な光学標識(「PTOL」)のうちの1つの分類を表わす。このとき活性化環境パラメータは、標識を活性状態へと変換することが可能な活性化波長の活性化放射線であり、活性化放射線の強度又は持続時間のうちの少なくとも一方を調整し、試料中のこれらのPTOLのうちの希薄サブセットのみを活性化することが可能である。しかしながら、電磁気的パラメータ又は他の環境パラメータ以外のエネルギーの他の形態を使用して、他のタイプの変換可能な標識の制御可能な活性化を達成してもよい。
【0012】
(b.重複して空間的に構造化された活性化及び励起を介して強化された分解能)
別の例において、試料は多数のPTOLを含むことができ、空間的に構造化された活性化放射線で試料が照射されるときに、制御された位置に局在するPTOLサブセットが活性化され得る。その後、活性化されたPTOLを、空間的に構造化された励起放射線で励起させることができる。活性化放射線の構造と励起放射線の構造との重複は、DLRVに匹敵するか又はそれよりも小さい蛍光発光PTOLの少なくとも1つの重複領域が作り出され得るように制御される。その後、活性化及び励起されたPTOLサブセットからの蛍光を、検出して記録することが可能である。次いで活性化されたPTOLを不活化させ、PTOLの第2サブセットを、空間的に構造化された活性化放射線で活性化させ、かつ空間的に構造化された励起放射線で励起させることで、第1の重複領域と異なる位置での第2サブセット内の蛍光発光PTOLの少なくとも1つの重複領域を作り出し、並びに該第2の重複領域からの蛍光を検出して記録することが可能である。この処理を試料中の複数の位置で繰り返し、試料の超高分解能の画像を構築することが可能である。
【0013】
(c.空間的に構造化された部分的不活化を介した超高分解能)
さらなる例において、試料は多数のPTOLを含んでもよく、該PTOLを空間的に構造化された活性化放射線で活性化することができる。その後、1つ以上のノードを有する空間的に構造化された不活化放射線フィールドを、活性化されたPTOLのうちの1つ以上の領域と重複する不活化放射線のノードを有する、活性化されたPTOLに適用することができる。不活化放射線は、各々のノード付近の活性化PTOL以外の実質的にすべての活性化PTOLが不活化されるように制御される。したがって、残りの活性化PTOLは、DLRVよりも実質的に小さい1つ以上の領域に限定される。不活化放射線格子の適用の後に残る活性化PTOLを励起放射線フィールドによって励起させ、かつ励起されたPTOLからの蛍光を検出して記録することが可能である。その後、残りの活性化PTOLが別の不活化フィールドで不活化される。この処理を繰り返して試料の超高分解能画像を構築することが可能である。
【0014】
(d.光変換可能な光学標識の特性)
図1は、光が蛍光染料及びPTOLとどのように相互作用するかを具体的に示す概略図である。蛍光分子101は、励起放射線102によって基底状態から励起状態103へと刺激されることが可能であり、これが励起状態のエネルギーの一部を蛍光放射線フォトン104へと放つ。励起放射線の波長は基底状態と励起状態との間のエネルギー差に一致し得る。次いで分子101は基底状態105に戻る。放射線102及び、蛍光放射線104の放射による分子101の励起のこのサイクルは多数回繰り返される106ことが可能であり、かつ蛍光放射線を顕微鏡カメラ又は検出器によって蓄積することが可能である。回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)の中に多数のそのような蛍光分子101がある場合、1つの分子の蛍光放射線を他の分子から区別することは困難であるかもしれない。
【0015】
光変換可能な光学標識(「PTOL」)又は放射体111のケースにおいて、励起放射線を吸収し、したがって蛍光放射線を放つPTOLの能力は、活性化処理によってオンに切り換えることが可能であり、あるケースでは不活化信号によってオフに切り換えることが可能である。不活性状態では、PTOL111は特徴的な波長を有する励起放射線112に曝されてもよいが、PTOL111は仮にあっても活性化及び励起されたPTOLの波長特徴での蛍光放射線を殆ど放射線しないであろう。しかしながら、PTOL121が活性化放射線122で照射されると、PTOL121は、励起可能な状態123へと変換されることが可能である。活性化放射線122は励起放射線の波長と異なる波長をしばしば有するが、いくつかのPTOLについては活性化放射線及び励起放射線は同じ波長を有しており、それらの強度で区別される。PTOLが励起可能な状態123へと変換された後、活性化放射線122の波長と異なる波長を一般的に有する励起放射線124による活性化PTOL123の次なる照射は、励起放射線124の波長と異なる波長を有する蛍光放射線126の検出可能な発光という結果を一般的にもたらす。PTOLが最終的にブリーチされるか又は不活性になり、この時点でPTOL129がもはや励起されて蛍光放射線を放つことができなくなるまで、励起及び発光のこの過程は、活性化PTOL127に関して多数回繰り返される128ことが可能である。
【0016】
このようにして、PTOL121は、活性化波長を有することによってPTOLを活性状態123へと変換する活性化放射線122で照射されてもよい。活性化PTOL123を、活性化放射線122の波長とは一般的に異なる励起波長を有する励起放射線124で照射して、励起波長124の波長よりも一般的に長い発光波長でPTOL125が放射線126を放つことができる状態から励起状態125へとPTOLを励起するたことができる。いくつかの種のPTOLに関しては、不活性状態への自然発生的な衰退又は不活化放射線の適用のどちらかを通じて、PTOLが、活性状態123から不活性状態121へと戻って変換されることが可能である。
【0017】
超高分解能顕微鏡法にとって有用ないくつかの光活性化可能な蛍光タンパク質を以下に記載する。FPは、特定の種類の光変換可能な光学標識(「PTOL」)又は物質であり、その光学特性は光によって変えられることが可能であり、かつ該特性を使用して試料の一部分を標識して光学的に画像化することが可能である。本願明細書で使用される「蛍光」及び「蛍光性の」はPTOLの光学的応答を一般的に示す。蛍光の共通の理解(例えば、より高エネルギーのフォトンによる励起に応答した物質からのフォトンの放出)に加えて、出願人らはPTOLを特徴付けることが可能な他の特性を含める。例えば、出願人らは多重フォトン励起に応答したフォトンの放出、又は活性化若しくは不活化されることが可能な大きい弾性光学断面積を含める。
【0018】
あるタイプのPTOLは、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victria)の光活性化された緑色蛍光タンパク質(「PA-GFP」)の変異種であり、該異変種は、(すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるG.H.Patterson 及び J.Lippincott-Schwartzらの論文,Science 297,1873(2002)に記載されているように、クラゲのAequorea属から由来する遺伝子組換えによるタンパク質の遺伝子組み換えによる変異種である)。この変異種は、野生型GFPの203位(T203)でのイソロイシン突然変異(例えば203位でのヒスチジン置換)を含むことが可能であり、結果として、不活性状態における400nm付近の一次吸収ピーク及び490nm付近を中心とする約100倍弱い吸収ピークを伴なう二次発光ピークを有する分子をもたらす。放射線は、励起されたGFPから、約509nmの波長の付近を中心とするスペクトルで放たれる。約400nmの波長を有する放射線を伴なうPA-GFPの強い照射の後、400nmの吸収ピークは約3倍減少すると同時に、約490nmの吸収ピークは約100倍増大する。したがって、蛍光放射線を作り出すための490nmの励起放射線を伴なうPA-GFPの励起は、強い400nmの光による前段の照射で局所的に活性化されていたPA-GFP分子のみを優先的に示すであろう。光活性化可能なGFPの他の形態も使用可能である。
【0019】
すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるD.M.Chudakovらの論文,Nature Biotechnol.22,1435(2004)に記載されているように、光で切り換え可能なシアンブルーの蛍光タンパク質(「PS-CFP」)は、PS-CFPについてはPS-CFPが不活性状態にあるときに、約400nmの波長を有する放射線による弱い照射が極めて明るい約470nmの発光を生じる(これは初期の設定及び標的化が容易に実施されることを可能にする)ことが可能であることを除いて、PA-GFPと同様な特徴を有する。約400nmの同じ波長でのPS-CFPの強い励起は、約490nmでの励起放射線の吸収スペクトルのピーク及び約511nmでの発光ピークを有するバージョンへのタンパク質の光切り換えを引き起こす。したがって、約490nmの励起放射線で試料を励起すること、及び約510nmの蛍光放射線を検出することによる試料中のPS-CFP標識の撮像は、先行する約400nmの励起で活性化されていたPS-CFP分子のみを優先的に画像化するであろう。PS-CFPの発光は、その低い量子収率に起因してPA-GFPの発光よりも弱いが、PA-GFPに関する発光ピークでの約100倍の増加と比較して、約510nmでの蛍光発光は、約400nmの放射線での活性化の後に約300倍増加する。
【0020】
すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるR.Ando,H.Hama,M.Yamamoto-Hino,H.Mizuno,及び A.Miyawakiの論文,Pro.Natl.Acad.Sci.USA 99,12651(2002)に記載されているように、Kaedeは、活性化されるとその発光帯域をシフトするという点でPS-GFPに類似している。しかしながらPS-GFPと違って、活性化は不活性状態におけるピーク吸収波長(508nm)と異なる波長(350-400nm)で起こり、それにより、該不活性タンパク質は活性状態への光変換を引き起こさない長さで観察することが可能である。不活性状態における蛍光発光スペクトルは約518nmにピークを示し、その一方で活性状態では(励起放射線の)吸収スペクトル及び(蛍光発光の)発光スペクトルはそれぞれ約572nm及び約582nmでピークを示す。それゆえにKaedeでは、活性ピーク又は不活性ピークのいずれかでの励起は反対の状態にある分子の意図されない励起を引き起こす可能性がある。不活性/活性発光ピークに同等の大きな広がりを備えた同等に明るいタンパク質は、Kikume Red-Greenとして市場入手可能であり、及びすべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるV.Verkhusha 及び A.Sorkinの論文,Chemistry and Biology 12,279(2005)に記載されているように、モノマータイプのPA-mRFP1もやはり開発されている。これらのタンパク質の活性状態における長波長の励起/発光は、単一分子の検出に関するバックグラウンドを減らすのに役立つことが可能性がある。
【0021】
すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるD.M.Chudakovらの論文,Nature Biotechnol.21,191(2003)に記載されているようなキンドリング蛍光タンパク質(「KFP」)は、上述されている他のFPに比較していくつかの際立った特色を有する。第1に、KFPに関して、活性化はさらに長波長(525-570nm)で起こり、該波長は試料に一層少ない損傷を与えることを可能にし、且つ発生させることを一層容易にすることができる。第2に、低強度の照射下での活性化は、約50秒の半減期で自然に逆戻りする。第3に、低強度下での活性化は、青色光を用いた照射下で可逆性である。第4に、525-570nmにおける高強度下での活性化は、たとえ青色光の照射下でも不可逆性である。したがって、分子は「オンに切り換えられる」のみでなく「オフに切り換えられる」ことも可能であり、或いは永久に「オン」に設定されることも可能である。しかしながら、KFP1は現在のところ比較的低い量子収率を有し、且つ4量体である。
【0022】
ドロンパは、すべての目的で本願明細書に引用により組み込まれるR.Ando,H.Mizuno,及び A.Miyawakiの論文,Science 306,1370(2004)に記載されている、明るいモノマーの蛍光タンパク質であり、多くのサイクルにわたって活性化/不活化されることが可能である。ドロンパの活性化は約400nmで起こり、約490nmの吸収ピーク、及び約510nmの発光ピークを有する活性化型分子を伴う。該分子は、約490nm励起への連続的な曝露で不活性状態へと戻る。活性化/不活化のこのサイクルは、そのようなサイクル中の合計の蛍光において相対的に低い損失のみを伴なって、少なくとも約100回繰り返されることが可能である。しかしながらそのようなサイクルの間における活性化された分子の観察は、場合によっては該分子の不活化が望まれる前に、それらの不活化をもたらし得る。
【0023】
多様な活性化、励起、及び発光波長並びに時定数を有するPTOL種の多様性を前提として、PTOLの各々の種に関して別個の画像を構築することが可能である。したがって、試料のうちの異なる成分を区別可能な標識でタグ付けすることが可能であり、次いで各々の標識化対象物を本願明細書に開示されるように構築可能な超高分解能の画像中で独立して識別することが可能である。
【0024】
関心対象の特定の試料特徴をPTOLで標識することが可能であり、そのようにして、PTOL、及びそれゆえ特定の試料特徴を撮像することが可能である。遺伝子的に発現可能なPTOL(例えば光活性化可能な蛍光タンパク質)に関しては、蛍光タンパク質PTOLが関心対象の特定のタンパク質と融合して作り出されるようにDNAプラスミドを作成し、一過的なトランスフェクションによって細胞中に挿入することが可能である。同様に、そのような細胞が蛍光タンパク質PTOLを作り出すことができるように細胞系の遺伝的構成を永久的に変える安定的トランスフェクション体を作成することが可能である。免疫標識技術、又はビオチンリガーゼなどの高い特異性の小分子受容体-リガンド結合系を使用して、PTOLを特定の細胞特徴にタグ化することも可能である。
【0025】
(2.光変換可能な光学標識の単離と場所特定を介した超高分解能)
(a.一般的概念)
分子又は放射体から出る放射線は、放射線分子又は放射体が単離されて撮像用光学素子の回折限界長の規模よりもさらに互いに離れているときに、PTOLの微細な回折局在に使用可能である。例えば図2に示されるように、励起放射線201は、単離された放射体202を励起状態203へと励起することが可能である。励起された放射体203から放たれる外向放射線204は、顕微鏡光学素子205によって集められて回折限界スポット207上に再集束206されることが可能である。このスポットのプロファイルは、像平面208において発光強度209に対して位置軸208上に描画されて示される。像及び対象平面は倍率Mで規模拡大される。像平面208において、このスポットの最小空間幅は顕微鏡の分解能の基本的限界によって特徴付けられ、かつアッベ基準(Abbe criteria)
【数1】
(式中、λは発光放射線204の波長であり、NAは対物レンズ205の開口数である)で与えられる。CCDカメラなどの検出器で放射線の分布を測定することによって、放射体を微細な回折精度に位置させるために単離された放射体のこの拡大された画像を使用することが可能である。次いでこのデータを適合させるか又は加工して、検出信号の中心を見つけることができる。例えば、PTOLから放たれて検出器上で検出された光の放射線強度プロフィールは、個別のデータセット{ni,}によって特徴付けられることが可能であり、ここでniは位置xiに位置する検出器のi番目の画素内で検出されたフォトンの数である。このデータをピーク型関数に適合させ、PTOLの位置を決定することができる。例えば、ガウス関数
【数2】
を使用して、該適合を実施することができる。ピーク型関数へのデータの最小二乗適合は、例えば、ピークの中心位置xcに関して値を見出すことが可能である。付け加えると、例えば、検出されたフォトンの合計数N、及びピーク幅σ(これは一般的にΔxのオーダーであり得る)などの他のパラメータも、この適合から推定することが可能である。niにおける誤差は値δniで表現することができ、同様に、中心位置xcの不確実性はパラメータδxを通じて表現することができる。特に、システムノイズが検出信号から生じるフォトン発射ノイズの統計学によって限定され(δni=sqrt(ni)を意味する)、且つNが検出されたフォトンの数であるとき、この中心が場所特定可能である確度はδx=Δx/sqrt(N)で与えられる。Nが1よりもはるかに大きくなる量まで、場所特定の確度210は回折限界221よりもはるかに優れている可能性がある。該データをガウス関数以外の関数に適合させ、PTOLの中心位置及び幅を決定することもできる。
【0026】
しかしながら、互いのΔxの中にあるほど密に集合した間隔にある連続的に放射線する蛍光分子212のセットにこの技術を応用することは困難であり得る。このケースにおいて、回折スポットは高度に重複しており、それにより、分子の画像を適合させて超高分解能の精度で分子の位置を得ることは困難である。したがって、この状況では、解像限界は標準的なアッベ基準221、即ち回折限界スポットの幅で一般的に与えられる。
【0027】
しかしながら、PTOLの高密度セット中のPTOLサブセットを選択的に活性化及び不活化することによって、たとえ光学標識が密な間隔にあるときでさえ、この場所特定の概念が使用されることが可能になる。図3に示すように、弱強度の活性化放射線301が密な間隔のPTOL302に浴びせられてもよい。小さな、すべてのPTOLの統計学的にサンプリングされた画分303は、活性化放射線を吸収し、状態303へと変換され、これが励起放射線304によって励起されることが可能である。発光放射線305、この活性化及び励起されたサブセットからの発光放射線305、307が、前に図2に例示したような微細回折分解能309にその中心が局在し得る単離された回折限界スポット308のセットへと集束させられる。活性化及び励起されたサブセットのメンバーであるPTOLの十分に解像された画像を作り出すのに十分なフォトンが集められた後に、活性化されたPTOLは、(ドロンパ又はKFPの場合のように)活性化可能な状態302に戻るために不活化されるか又はこれらを系から効果的に除外するために暗形態313へと永久に光学的にブリーチされる。次いで、弱強度の活性化放射線311の別のサイクルを適用し、残りの活性化可能なPTOL312の新たなサブセット316を活性化する。この第2サブセット内のPTOLが順次励起315によって励起状態317に置かれてもよい。放射線光318、320は、顕微鏡レンズ319によって十分に分離された回折分解能限界スポット321上に顕微鏡レンズ319によって再集束させられる。ここでも再び、各々のピークの適合処理は、第2サブセット内のPTOLの微細な回折の位置322を規定することが可能である。さらなるサイクルがPTOL画像の位置323などの他のPTOLの微細な回折の位置を抽出するであろう。
【0028】
図4に示されるように、試料中の個々のPTOLの2つの空間次元x及びy内の多数の微細な回折分解能の画像が作り出されることが可能であり、次いで、該多数の画像が組み合わせて、該試料の回折限界分解能の画像を作り出すことが可能である。図4に示された画像は、本願明細書に記載するようなシステムで取られた実験データから作り出された。撮像用光学素子によって撮像される波長で発光する数少ない個々のPTOLの初期の画像をフレーム401に示している。撮像される放射線の波長と異なる形態の活性化波長を有する放射線の活性化パルスでPTOLサブセットが活性化された後に、フレーム402に示されるように、さらに多くのPTOLが検出される。これら初期に活性化されたPTOLの多くがブリーチされてフレーム403に示されるようにこれ以上放射線できなくなるまで、いくつかのそのようなフレームが記録される。この時点で、新たな活性化パルスがPTOLの新たなサブセットを活性状態に変換可能であり、かつPTOLのこの新たなサブセットは、新たに活性化されたPTOLが励起されるときに撮像波長で放射線を放つことが可能であり、これが結果としてフレーム404の画像をもたらす。このサイクルを繰り返して、数百又は数千のそのような画像フレームを作り出すことができ、これは水平平面上の座標x及びy、及び垂直軸の時間tを備えたPTOL画像の3Dデータ積層405を表わすとみなすことができる。次いで、該データ積層内のこれら個々の画像フレームすべてを合計し、フレーム406に示されるように、顕微鏡からの回折限界画像の長時間曝露に同等な総合画像を作り出すことができる。
【0029】
しかしながら、活性化されるPTOLが試料中で十分に希薄であれば、フレーム407に示されるような各々の活性化されたからPTOLの未加工の信号(例えばCCD検出器の個々の画素上の信号の強度)が近似点広がり関数(例えばガウス関数)と適合させられることでフレーム408に示されるような平滑化されて適合処理された信号を作り出し、かつPTOLの中心のx,y座標を測定することが可能である。次いでPTOLの位置が、この位置が既知である不確実性によって規定される幅を有して、測定された局在位置に中心を置くガウス分布として新たな画像に与えることができる。この不確実性は、(典型的には、NがPTOLの画像を作り出すために検出されるフォトンの数である場合のsqrt(N)の近似因数による)元来の回折限界PTOL画像407の元来の半径よりも大幅に小さいと見込まれる。例えば、PTOLの画像スポットの画素内に400個のフォトンがあった場合、適合処理された中心の位置の不確実性は、該PTOLの元来の回折限界画像のサイズの1/20であると見込まれる。
【0030】
この処理をフレーム401、402、403、及び404内のすべての活性化されたPTOLの画像に適用することは、フレーム410、411、412、及び413内の対応する狭い描画ピークをもたらす。これらの描画ピークの幅は、それらの局在の不確実性によって与えられる。データ積層405のすべてのフレーム内のすべての活性化されたPTOLに適用すると、この場所特定処理は結果として試料中の多くのPTOLに関する座標のリストをもたらす。場合によっては、描画ピークを累積(合計)し、PTOLの高密度セットの超高分解能画像414を与えることができる。いずれかの活性化されたPTOLの発光が、それがブリーチされるか又は別の方法で不活化されるまで、いくつかのフレームにわたって存続することもあり得る。そのようなケースに関すると、この累積の実施態様は、共通のPTOLである可能性の高いもののいくつかのフレームにわたって座標を識別することである。座標のこのセットを平均化又は削減し、該PTOLの単一でさらに正確に場所特定された座標ベクトルを得ることができる。回折限界画像406と超高分解能画像414との比較は、この処理によって達成可能なさらに高い分解能を具体的に示す。
【0031】
異なる単離PTOLサブセットの直列的な活性化のこの処理は、PTOLの高密度のセットの位置を場所特定する有効な手段を可能にし、それにより、下記でさらに詳細に記載するように、1、2、又は3空間次元の超高分解能画像が作り出されることが可能になる。さらに、この処理は、異なる活性化、励起、及び/又は発光の波長を有する試料中の異なる種のPTOLについて独立して繰り返すことも可能である。次いで、別々又は組み合わされた超高分解能画像は、各々のPTOL種を使用して抽出することが可能である。2つの異なる結合タンパク質を標識する2つ以上の異なるPTOLの抽出された位置情報は、共通又は密接に結び付いた標的上の共局在及び相対的な結合位置を描写することが可能である。これはタンパク質が互いに関係していることを判定するために有用であり得る。
【0032】
分子結合(例えば共局在)の情報及び分子構造情報を提供するためにどのように多数のPTOL種が使用され得るかの例を、図5に具体的に示す。例えば、PTOL種501が選択的にタンパク質503に結合し、かつPTOL種502がタンパク質504に選択的に結合するとき、例えば2つの異なるPTOL種501と502が2つの異なる分子タンパク質503と504を標識することができる。これら2つのタンパク質503と504が互いに結合して分子複合体506を形成する場合、それから2つのPTOL501及び502は互いに短い距離505に位置し、したがって互いに密に近接して放射線する。そのような共局在分子(例えばタンパク質503と504)間の距離505は、分子複合体506のサイズよりも小さい。該PTOL種は撮像可能であり、且つこれらの位置は本願明細書に記載されている方法及びシステムを用いて独立に測定されるので、PTOL501及び502は、たとえこれらの位置が回折限界内であると判定されるときでも見分けられることが可能である。実際に、距離505が本願明細書に記載されるシステムの局在分解能よりも大きければ、PTOL501と502の間の距離505の定量的値はこれらのタンパク質503と504がどのように互いに結合しているか及びその場所についての追加的情報を提供することが可能である。さらに、各々のPTOL501と502の空間的配向を本願明細書に記載している方法によって(例えばPTOLから放たれる双極子放射線の偏光を観察することによって)推定することが可能であり、これが今度はタンパク質503と504の間の相対的結合の位置及び配向データを供給することが可能である。一実施態様において、試料中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が偏光フィルタを通されることで、放たれた放射線の偏光に基づいて放たれた放射線を選別することが可能である。放たれた放射線の偏光は、放射線が放たれるPTOLの双極子の配向の指標であるので、検出器で検出される偏光感度を有する信号は発光PTOLの配向についての情報を提供する。この方法は様々なPTOL種507、508、509、及び510のより大きな多様性に拡張することが可能である。共局在実験は、PTOL種507、508、509、及び510が互いに又は他の標的511に結合するかを判定することが可能である。標的513に結合するPTOL507、508、509、及び510の間の相対距離512は、本願明細書に記載の場所特定方法から導き出すことが可能であり、512を使用して標的513上の結合部位のタイプ及び位置をマップ化することが可能である。
【0033】
親和性識別及び共局在測定のこれらの原理の一実施態様は創薬である。特に合成薬剤の設計に関すると、より小さな分子のライブラリが標的の表面の様々な部分のどこにどのくらい強力に結合できるかをマップ化することに関心がある。そのような低親和性断片の収集物を同定してつなぎとめておくことができれば、これらは群として標的に高親和性を有するであろう。ライブラリからそのような薬剤断片を識別する過程に、企業によって利用されるいくつかの技術がある。そのような構造活性の関係及び近接性の感知はいくつかの技術、例えばNMR、X線結晶学、質量分析法を伴なう化学的ライゲーション、又は表面プラズモン共鳴によって識別されることが可能である。
【0034】
同様の取り組みは、多数のPTOL標識した薬剤断片を使用して構造的活性関連性を同定し、かつ本願明細書に記載の光変換可能な光学的場所特定の手法でそれらを識別及び場所特定することが可能である。例えば、様々なPTOL種は、多様な分子(例えば薬剤断片)507、508、509、及び510のライブラリを標識することができる。分子507、508、509、又は510の標的514との共存は、本願明細書に記載の方法を使用して、標的514への薬剤断片の結合を確認し、かつ標的514の表面の結合親和性をマップ化することを可能にした。結果として得られる任意の双極性情報を伴う共局在及び位置情報を使用して、511などの標的に高結合親和性を有するであろう合成薬剤514を設計することが可能である。
【0035】
(b.一般的なハードウェアとソフトウェアの必要条件)
図6はPTOL顕微鏡の概略図である。PTOLで標識された試料601が放射線を放ち、これが撮像用レンズ(例えば顕微鏡の対物レンズ)602で集められ、1つ以上のフィルタ604でフィルタ処理されてもよい。現在活性化されたPTOLの画像は検出器606で形成され、一実施態様では単一フォトンを検出することができる活性化放射線を試料に供給するための光学素子は、光源607、シャッタ608、レンズ609、及びフィルタ610を含み得る。光源607(例えば1つ以上のレーザ、発光ダイオード、又は広帯域光源)は、PTOLが不活性状態から活性状態へと変換される原因となる活性化波長で放射線を放つことが可能である。光源607は直接調整することができ、又はシャッタ608を介して調整することもできる。シャッタ608を操作して、活性化放射線が光源607から試料601へと通過するのを許容又は阻止することが可能である。一実施態様において、該シャッタは、ビーム経路を選択的に遮断するように動く機械的シャッタであってもよい。別の実施態様において、該シャッタは光が通過するのを許容又は阻止するために、或いは光源607からのビーム経路を変えるために、電気的又は音響的に変更されることが可能な材料であり得る。フィルタ610は、ある波長の放射線を遮断すると同時に他の波長を通過させることが可能である。例えば、試料601がいくつかの種のPTOLを含み、これらの各々が異なる活性化波長を有する場合、該光源は各々の活性化波長で光を放つことが可能であるが、様々なフィルタ610を光源607と試料601との間のビーム経路に挿入して、いくつかの活性化波長を遮断すると同時に他の波長を通すことができ、それにより、1つのみ(又は選択されたいくつか)の種のPTOLが励起される。光源607から出る放射線は部分反射器603(例えばビームスプリッタ、2色性ミラー、斑点のあるミラー、又は回折性構造)によって偏向され、撮像用レンズ602を通して試料603上に向けられてもよい。同様に、活性化されたPTOLが脱励起状態から励起状態へと変換される原因となる励起放射線も、励起光源611からシャッタ612、レンズ613、及びフィルタ614を通ることができ、且つ試料601へと部分反射器603を外れて通過することもできる。制御器615(例えば汎用又は特定用途向けのコンピュータ若しくはプロセッサ)は、画像収集手順の間に、活性化及び励起パルスのパラメータ(例えば、試料601に到達する様々な放射線ビームの波長、強度、偏光、及びパルス持続時間;並びに活性化放射線パルスと励起放射線パルスのタイミング)を制御することが可能である。もちろん、光学素子607-614が他の構成で配列されることもあり得る。例えば、活性化光学素子607-610及び/又は励起光学素子611-614が、モジュール616にあるように配置し、放射線をレンズ602の外側から試料601へと向けることができ、又は励起放射線が活性化放射線などと異なる部分反射器から試料上に向けることができる。さらに、異なる種のPTOLが並列又は別々に連続的収集で撮像されることも可能になるように部品の多重度があってもよい。例えば、異なるPTOL種の特徴に付随する異なる波長の追加的なカメラ、フィルタ、シャッタ、活性化源、又は励起源があってもよい。検出器606に形成される画像から得られるデータは、保存及び処理のために制御器615に伝えられる。例えば、制御器615は、異なる画像フレームに関する検出器上の位置の関数として強度データを記録又は保存するためのメモリを有してもよい。制御器615は、例えば個々のPTOLの画像用に記録されたデータを適合させてPTOLの位置を回折限界よりも精緻な分解能に対して測定するための、又は超高分解能の精度で測定された多数のPTOLの位置に関するデータを組み合わせて、超高分解能の精度で位置づけられた多数のPTOLの位置に基づいて試料の画像を作り出すための、データ処理用プロセッサ(例えば汎用又は特定用途向けのコンピュータ若しくはプロセッサ)を含むことも可能である。
【0036】
図7は、多数の比較的高密度に位置するPTOLを含む試料の画像を作り出すための処理700のフローチャートである。活性化波長を有する放射線の活性化パルスが、試料中のPTOLサブセットを不活性状態から活性状態へと変換するために試料上に向けられる(工程702)。励起放射線を励起波長で試料中の活性化されたPTOLに適用し、活性化及び励起されたPTOLから放たれて撮像及び検出用光学素子に入射する放射線が取得されて保存される(工程703)。活性化されたPTOLのセットの画像は、多数回取得されて保存されてもよい。例えば、制御器はN個の画像が未だ取得されていなかった(工程704)場合に画像取得(工程703)が繰り返されるように、活性化されたPTOLのセットのN個の画像が取得されることを要求してもよい。励起放射線は継続的に試料に適用することができ、又は画像の取得の間ではオフに切り換えることができる。
【0037】
活性化されたPTOLサブセットのN個の画像が取得された後、さらに多くの画像が試料から得られるべきであれば(工程705)、PTOLの別のセットを活性化するために別の活性化パルスが試料に適用できる(工程702)。励起放射線が活性化されたPTOLのこの他のセットに適用され、活性化及び励起されたPTOLから放たれた放射線が取得されて保存される(工程703)。PTOLの多数のセットが活性化されてもよい。例えば、制御器は、Mセットが未だ活性化されていなかった(工程705)場合に別の活性化パルスが加えられる(工程703)ように、MセットのPTOLが活性化されることを要求することができる。このようにして、PTOLのセットを活性化し、活性化されたセット中のPTOLを励起し、活性化及び励起されたPTOLから画像を取得する処理を多数回、例えば利用可能なPTOLの合計プールが尽きるまで、又は空間領域若しくは容積の中の異なるPTOLの画像の所望数が達成されるまで繰り返することができる。
【0038】
活性化及び励起放射線を適用する間、活性化及び励起放射線の強度と共に活性化パルスの間の反復の数Nは、個々の画像内の撮像されたPTOL当たりの平均ボリュームが個々のPTOLを検出して場所特定するために使用される光学撮像システムのDLRVよりも一般的に多くなるように制御されてもよい。放射線を放つことができる活性化されたPTOLの密度は、活性化パルス直後に取得された画像で一般的に最も高く、かつN個の画像フレームの収集の間により多くのPTOLは光退色するにつれて一般的に低下する。さらに、処理700が進行して活性化パルスの数が1からMへと増すにつれて、試料中のPTOLが光退色する可能性が高く、それにより、試料中のますます少ないPTOLが活性化、励起、及び撮像に利用可能になる。したがって、一実施態様において、個々の活性化パルスの強度及び時間の長さ、並びに励起放射線の強度及び時間の長さは、処理が進行するときの活性化されるPTOLの密度の変化を小さくするために制御し得る。例えば、より少ない励起放射線(できれば活性化パルスの間のさらに少ないフレームN個を伴なって)を使用することは、活性化パルス後の第一フレームから次の活性化パルス直前のN番目のフレームまでの撮像されるPTOLの減少を小さくすることができる。別の例において、1番目からM番目の活性化パルスへと処理700が進むにつれて、個々の活性化パルスの強度を上げることができる。これは1番目の活性化パルス直後の最初の取得フレーム内に撮像されるPTOLの数に比較したM番目の活性化パルス後の最初の取得フレーム内に撮像されるPTOLの数の減少を小さくすることが可能であり、それにより、活性化と画像取得の手順が進行するときの活性化可能なPTOLの数の減少を補償する。このようにして最初の例では、励起手順の間の活性化及び励起されるPTOLの変化を減少させ、第2の例では活性化手順の間の活性化及び励起されるPTOLの変化を減少させる。活性化及び励起されるPTOLの減少化された変化は、さらに多くのPTOLが単位時間当たりに場所特定されることを可能にすると同時に、DLRV当たり1つ以上の撮像PTOLの密度基準を超えない操作を可能にする。
【0039】
一実施態様において、試料中の多種のPTOLを活性化、励起、及び撮像することができる。例えば、活性化パルスを加える工程(702)及び励起して撮像する工程(703)は、異なるPTOL種の異なる活性化及び励起波長に対応する波長を有する活性化放射線と励起放射線のパルスをそれぞれ適用する工程を含み得る。多様なPTOL種から放たれる多様な波長の放射線を撮像するために、検出器及び/又はフィルタの多重度を撮像工程703で使用することも可能である。この方式で、多数の独立した画像のデータセットを取得することが可能である。これらの独立したデータセットを順次、試料中の各々のPTOL種の対応する超高分解能画像へと小さくすることができる。
【0040】
(c.例示的励起及び検出幾何学)
試料中のPTOLサブセットを活性化し、これらの活性化PTOLのうちのいくつか又は全部を励起し、活性化及び励起されたPTOLを撮像する処理は、任意の光学的撮像モード、例えば広視野型顕微鏡法、全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、及び多焦点の格子型顕微鏡法で適用可能である。
【0041】
図8a、8b、8c、及び8dに示すように、広視野型顕微鏡法は、平面801内のこれらPTOLの分離がレンズ802によって規定される回折限界の2D分解能よりも一般的に大きくなるのに十分に低い密度でPTOLが活性化されるときに、レンズ802の焦点面801付近にある試料810中の多くの個々のPTOL800が、同時に共局在していることを容認する。撮像用光学素子(例えばレンズ802を含む)の倍率は、PTOL800を撮像する検出器804(例えば電子増倍電荷結合素子(EMCCD)カメラ)内の個別画素803のサイズに比較して選択され、それにより、各々のPTOLから得られる画像805は、各々のPTOLに関して場所特定精度を最適化するためにいくつかの画素にわたって分散される。もちろん、特定のPTOLから放たれた放射線が1つの画素のみで検出された場合、回折限界よりも精緻な精度でPTOLの位置を測定することは困難であろうが、しかしPTOLから出る放射線が多数の画素に入れる場合、これら多様な画素から得られる信号は適合可能であり、それにより、PTOLが回折限界よりも精緻な精度で場所特定することが可能になる。しかしながら、特定のPTOLから出る放射線が極めて多数の画素に入れば、これはその後別のPTOLから出る放射線と重複する可能性があるか、又は含まれるさらに多数の画素から出るバックグラウンドノイズが高められる可能性がある。どちらのケースでも、それによって場所特定精度が相対的に低くなるであろう。したがって、多過ぎる画素又は少な過ぎる画素に入るPTOLの画像を有することの間での妥協点が得られ得る。
【0042】
広視野型顕微鏡法は、薄い試料(即ちレンズの開口数及びPTOLから放たれる蛍光光の波長で特徴付けられる焦点深度806に匹敵するか又はそれよりも小さい厚さを有する試料)内のPTOLの2D場所特定を達成するために、本願明細書に記載される処理に容易に使用される。そのような薄い試料への適用は、a)焦点面806から離れた領域における自己蛍光又は未分解PTOLからのバックグラウンド信号を制限し(なぜならば、そのようなバックグラウンドはPTOLが場所特定される精度を低下させるからである)、b)2D PSFの中の潜在的に光活性化可能な分子の数を減少させ、c)撮像用レンズを通して活性化エネルギーが供給されるとき、活性化されるPTOLが一般的にレンズの焦点面の中にあることを保証し、それにより検出器に最小サイズのスポット及びこれに対応する最適の場所特定をもたらすことが可能である。
【0043】
そのような薄い切片の一例は培養細胞の板状偽足領域である。広視野型検出に適した薄い試料の別の部類は、透過型電子顕微鏡法に共通するミクロトーム技術を使用して、より大きな試料から切り出された薄い切片(樹脂包埋された細胞又は組織の凍結切片若しくは切片)である。そのような個体の切断切片は、PTOLが正確な場所特定のために不動であり続けることを保証し、かつオリジナルのより厚い試料で広視野型顕微鏡法によって同じ特徴を撮像することを試みるときに潜在的に存在する面外自己蛍光、収差、及び光散乱の問題を伴なうことなく、深部に埋まった試料特徴が撮像されることを可能にする。
【0044】
図8bに示すように、PTOLの広視野型検出が、レンズの焦点深度に比べて厚い試料に適用されることが可能な場合において、3DでのPTOLの場所特定は、試料の多数の平面の2D画像を作り出すために撮像されるPTOLの各々の活性化されたサブセットについて焦点面をレンズの光軸807に沿って平行移動させることによって(例えばレンズと試料との間の分離を変えることによって)実施することが可能である。これら多数の2D画像をデジタルで組み合わせて画像の積層808を構築することが可能であり、それにより、試料中の各々の撮像されたPTOLの3D画像が得られる。次いで、上記2Dのケースに直接類似して、各々のPTOLの3D画像を適合させ、3DのPTOL位置の回折限界よりも精緻な位置を得ることが可能である。それによって、完全な3Dの超高分解能画像は、場所特定されたPTOLの多数サブセットから構築され得る。
【0045】
レンズの軸807によって規定される方向でPTOLに関する位置情報を提供する別の取り組み方は、主にこの方向に沿って、且つ実質的に焦点面に対して一様な平行で空間的に構造化される形態で励起光を当てることである(それにより、2Dでの同時検出の利点が保持される)。次いで、該空間的に構造化されたフィールドは、個々に解像可能な活性化PTOLの各々サブセットについて軸方向に走査することができ、それにより、軸方向励起のPSFが各々で測定されることを可能にする。次いで、軸方向に構造化された励起の既知PSFをこのデータに適合させ、軸方向のPTOLの相対的な場所をナノメートルの精度で見つけることが可能になる。次いでデータを焦点面内の同じPTOLの場所特定座標と組み合わせ、かつ活性化されたPTOLの他サブセットから得られた同様の結果とさらに組み合わせることで高密度の超高分解能3D画像を構築することが可能である。
【0046】
図8cに示されるように、そのような軸方向に構造化された励起フィールドは、検出平面に対してミラーイメージである方向から、2つのコヒーレントビーム811と812で試料810に励起光を当てることによって作り出すことも可能である。試料810中のビーム811及び812は軸方向807に定在波(「SW」)の強度プロファイル813を作り出す。レンズ802と同じ焦点面の側から試料に近付くビーム811は、所望であればレンズを通過可能である。最大強度の単一のSW平面814のみが試料810の中に存在するような十分に薄い試料については、上記の最大強度平面を軸方向に走査させることによって、検出と場所特定を進行させることが可能である。中程度の厚さの試料については、p=λsin(θ)/2(式中、pは周期であり、λは励起放射線の波長であり、かつθは各々のビームが焦点面と作る角度である)で表わされることが可能であるSWの周期815が、最大強度の単一でより広いSW平面のみが試料810に交差するまで角度θを減少させることによって増大させられ得る。場合によっては、図8dに示されるように、いくつかのSW最大部が試料810の中にある場合、異なる強度最大部816、817、及び818に対応する平面内で励起されるPTOL800は、レンズ802の焦点面に平行の多様な平面内に存在する2D検出の点広がり関数の違いに起因して、異なるパターンのスポット(例えば最大部816由来のスポット819及び820、最大部817由来のスポット821、並びに最大部818由来のスポット822及び823)を検出器に作り出すことが可能である。例えば、撮像用光学素子の焦点面でのPTOLから出る発光に起因する検出器上のPTOLの画像は、焦点面に対応しない平面からのPTOLから出る発光に起因するPTOLの画像よりも小さいであろう。この情報を使用して、所定のPTOLが由来するSW最大部を見分けることが可能である。また、検出された光は、M個の定在波最大部が試料の中にある場合にM個の検出器間で分割可能であり、かつ補正用光学素子(例えば位相マスク)がレンズ802と各々の検出器との間に置かれてもよく、それにより、各々の検出器に関する各々の焦点面が異なるSW最大部と一致する。その後、所定の検出器に焦点の合ったこれらのPTOLをその検出器に記録された情報を使用して2D又は3Dのどちらかで場所特定することが可能である。
【0047】
全内部反射(「TIRF」)幾何学形状は、平面内の多数の光活性化されたPTOLの同時検出及び2Dの場所特定も可能にする。TIRF顕微鏡法において、試料を照射する励起放射線の強度は試料/基板界面からの距離が増すにつれて指数関数的に減少する。試料/基板界面からの距離の関数としての励起放射線の指数関数的な減少のために、特に厚い標本を撮像するときに、z方向に高度に局在する励起は、比較的わずかな自己蛍光を伴なって達成することが可能である。またTIRF顕微鏡法では、比較的少数のPTOL(活性型と不活性型の両方)が所定の分子密度について同時に励起され、それゆえに標的分子のより大きい密度が試料中で初期に調製され得る。さらに、複数の角度でのエバネセント照射を使用して、z方向でも同様に、高い精度でPTOLを場所特定することが可能である。付け加えると、活性化放射線の波長並びに励起放射線の波長をエバネセントフィールドを介して適用し、z方向で活性化され、励起されるPTOLの量をさらに減少させることも可能である。
【0048】
TIRF顕微鏡法の励起放射線及び活性化放射線は、基板に光学的に連結されるプリズムを使用して、対物レンズの外部試料/基板界面に供給することが可能である。場合によっては、励起及び活性化放射線は、エピ構造内の試料/基板界面に適用可能であり、励起放射線は、レンズの開口数(「NA」)が全内部反射(「TIR」)の臨界角よりも大きい最大照射角度θmax>sin-1(NA/nsub)(ここで/nsubは基板の屈折率である)を生じる限り試料中のPTOLから放たれる蛍光放射線を集めるために使用される同じ対物レンズの後部の瞳に入り、且つ励起放射線は励起放射線のTIRを支える外側環状領域でこの後部の瞳に入る。
【0049】
図9a及び9bは、活性化、励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像し、試料の中の個別PTOLの多数サブセットの光変換、単離、及び場所特定を介して試料の超高分解能画像を作り出すことができるような、対物レンズ経由のTIRF励起放射線を使用して試料中に希薄に存在する活性化PTOLを励起させることができるシステムの概略図である。活性化されたPTOLの連続的励起のために、10mWのダイオードポンピング型固体レーザ(Lasos GmbH,Jena社,Germanyから入手可能)から放射される561nmの波長を有する光は励起用コリメータ900へとファイバ共役され、かつ60倍、1.45NAの全内部反射蛍光(「TIRF」)油浸対物レンズ902(ニューヨーク州メルヴィルのオリンパスアメリカ社から入手可能)の内部後部瞳平面に焦点集束させられることが可能である励起入力ビーム901を供給する。狭帯域幅のレーザラインフィルタ903(ニューヨーク州ロチェスターのセムロック社から入手可能)を使用してレーザ、及び対物レンズ902の前の光学経路で発生する自己蛍光からの放射線ノイズを排斥する。PTOLのパルス化された活性化のために、約405nmの活性化波長λactで50mWの出力を生じることができる第2のダイオードレーザ(カリフォルニア州サンタクララのコヒーレント社から入手可能)を、中間のガルバノメータに基づくスイッチ(図示せず)を通して活性化用コリメータ904へとファイバ共役させて、2色性ミラー907(セムロック社から入手可能)で励起用入力ビーム901と組み合わされる前にバンドパスフィルタ906(カリフォルニア州コビーナのCVIオプティカル社から入手可能)によって同様にフィルタ処理される、焦点集束した活性化用入力ビーム905を作り出すことが可能であり、次いで、この組み合わされた入力ビーム908は、特注のパターンでアルミニウムメッキされたミラー909(カリフォルニア州サンクレメンテのレイナード社から入手可能)上の楕円形のスポットから対物レンズ902へと反射され得る。組み合わされたビーム908が対物レンズ902に入る半径ρは、
【数3】
となるように制御されてもよく、それにより、結果として生じる反射光線は低い自己蛍光の浸漬油(例えばペンシルバニア州ウェストチェスターのストラクチャープローブ社から入手可能なCargilleタイプFF)を横切り、かつ全内部反射(「TIR」)が起こるために、
【数4】
より大きい臨界角で試料とカバースリップ913(例えばニューハンプシャー州ハンプトンのフィッシャーサイエンティフィック社から入手可能な#2厚さのカバースリップ)との間の界面に入射する。それにより、エバネセントフィールドが試料の中に確立されることが可能であり、エバネセントフィールドの短い減衰長の中の分子のみを励起する。しかしながら、励起及び活性化ビームの入射エネルギーの実質的な比率を界面に反射させ、対物レンズ902から現れた後にミラー909上の第1の楕円形スポットと対角線上で反対にあるミラー909上の第2の楕円形スポットから反射される組み合わされた出力ビーム910を生じさせることが可能である。次いでこのビーム910は2色性ミラー907から、励起用出力ビーム911及び別個の活性化用出力ビーム912へと分割され、これらは最終的にそれぞれのビームダンプへと向けられる。
【0050】
通常の分子断面積(例えば約10-16cm2)に関すると、反射される励起ビームエネルギーは、図9bに示されるような対物レンズ902から現れるPTOLの信号ビーム914よりも1015倍強いと見込まれる。したがって、この対物レンズTIRFの幾何学形状を通す試みは、界面で反射される励起ビームとその後に遭遇する光学素子のビームにおいて発生する全ての自己蛍光の両方からの分子信号の単離である。楕円形で反射防止コーティングを施された透過性の開口部を有し、該開口部は対物レンズ軸に直交する投影が後部瞳の8.7mm径に合致し、したがって信号ビーム914を高い効率で検出用光学素子へと通過させるので、ミラー909は該単離を手助けする。また、スポットでの反射ビームのガウス幅よりもD倍大きい楕円形の反射スポットに関しては、励起エネルギーの約erfc(D)のみが検出用光学素子上へと通されるか、又はD=3若しくは4のそれぞれについて〜2×10-5から〜2×10-8が通される。さらに、該スポットは後部瞳の周縁部の小さい画分のみを塞ぐので、実質的に検出用開口数を低下させない。したがって、PTOLの回折限界よりも精緻な場所特定の要素であるPSFの標準偏差は実質的に悪化しない。さらに、ミラー909は波長に左右されず、したがって交換することなく異なる励起レーザ及び異なるPTOLで使用されることが可能である。ミラー909は複数の角度、複数の極性、及び/又は定在波のTIRF励起をサポートするために複数のスポットを有してもよい。
【0051】
特別誂えのスポット化ミラー909を通過後に、無限遠補正対物レンズ902から現れる大幅に平行化された信号ビーム914は、(図9bに示されるように)第1のミラー915によって反射されることで検出用光学素子の軸に沿って進むことができる。実質的にこの軸に沿って進む全ての残留励起光(並びに残留活性化光の多く)は、ラマンエッジフィルタ916(セムロック社から入手可能)によって除去可能である。しかしながら、このフィルタ916の光学密度は垂直入射からの逸脱の増大と共に急速に低下するので、バッフル917を該フィルターのいずれかの側に置き、システム内のいずれか他の場所で発生した高い入射角度の散乱光を取り除くことができる。フィルタで処理された信号ビームを、アクロマティックチューブレンズ919(ニュージャージー州バーリントンのエドムンドオプティック社から入手可能)を用いて背面照射され(例えば-50℃に)電子冷却された電子増倍CCDカメラ920(コネチカット州サウスウィンザーのアンドールサイエンティフィック社から入手可能)の面上で集束ビーム918へと集束させ、単離された単一分子の所望の画像を作り出すことが可能である。活性化ビームが当てられるときにカメラ920が飽和しないことをさらに保証するために、405nmのノッチフィルタ921(セムロック社から入手可能)が含ませることもあり得る。
【0052】
TIRF構成内の試料/基板界面の平面内で場所特定の精度をさらに高めるために、基板を導波路として使用することで、2つ以上の交差する励起ビームの伝搬をサポートすることが可能である。次いで、これらのビームはこの平面内の構造化された励起フィールドを形成することが可能であり、該平面は界面に対して直角のエバネセントである。例えば、図10aに示されるように、2つのそのような励起ビーム1000及び1001は、試料1004及び基板1005との間の界面に平行の1つの軸1003に沿う定在波(「SW」)の強度プロファイル1002を作り出すことが可能である。次いでこのSWをこの軸に沿って1周期(例えば位相Δ=0°(フレーム1006に図解される)、Δ=120°(フレーム1007に図解される)、Δ=240°(フレーム1008に図解される))走査させ、かつ各々のSW位置で活性化されたPTOLの画像(例えばフレーム1009、1010、及び1011に示される)を捕捉することは、図10bに示されるように、幅〜λexc/(4nsub)(式中、λexcは励起放射線の波長であり、nsubは基板の屈折率であってCCDにある幅〜λems/(2NA)を有する検出PSF1013よりも低く、ここでλemsはPTOLから放たれる信号放射線の波長である。)を有する。実効励起PSF1012に基づいてPTOLが場所特定されることを可能にする。高いnsubの基板が使用されるとPSFは特に改善される。次いで、第1に対して直角の第2のSWを作り出し、活性化されたPTOLの同じサブセット全体にわたって走査させることで、これらを平面内の他方の軸に沿って場所特定することが可能である。
界面の平面内に構造化されたTIRF励起フィールドを形成するビーム1000及び1001もTIRF能力のある信号収集対物レンズ(図10cに示される)を通るか又は界面の反対側の基板側の光学素子(例えばプリズム)を用いて界面に送られることが可能である。
【0053】
広視野型の分子場所特定は、(焦点面外蛍光を削減するための)薄い試料によく適しており、TIRF分子場所特定はエバネセントフィールドによって、試料/基板界面近傍の試料の部分に適している。他方で、共焦点顕微鏡法は全細胞といった厚い試料において3DでPTOLを場所特定するために使用されることが可能である。励起PSF(励起の焦点集束によって決定される)と3Dの検出PSF(共焦点ピンホールと検出用対物レンズの開口数によって規定される)の積によって規定される3Dの共焦点全体のPSFは、薄い試料の広視野型又はTIRFのケースよりも容量分析で大きいという可能性がある。したがって、そのような場合においては自己蛍光はさらに大きい可能性があり、これは場所特定精度を下げ得るか、又はさらに高い内因性輝度を有するPTOLの使用を示唆し得る。
【0054】
しかしながら、共焦点顕微鏡の焦点集束円錐に入って出て行く焦点面外の活性化及び励起エネルギーは、時期尚早にPTOLを活性化した後、光退色させる可能性があり、焦点外バックグラウンドを付与し、正確に場所特定されることができるPTOL(即ち焦点面近傍のPTOL)の集団を減少させる。光切り換え可能なFP(例えば、PA-GFP及びKaede)の多くは、紫外光又は近紫外光によって活性化されるので、この問題は分子を活性化するためのマルチフォトン励起を使用することによって低減することが可能であり、これはこの非線形の処理が一般的に、実効マルチフォトン焦点深度外側で低いPTOL活性化をもたらすからである。マルチフォトン集束は、共焦点励起集束が走査容積を通過中にこれに先行してもよく、又は現在の焦点面を横断する分子が、個々に解像可能な活性化分子の所望の密度が達成されるまで、マルチフォトン集束の2D走査によって最初に活性化され得るときにこれに先行してもよく、そのように活性化された分子を検出及び場所特定するための共焦点集束の同様の2D走査がこれに続く。また、多焦点の活性化が使用されるとき、標本に対する活性化ビームの短波長からの損傷は大幅に削減される可能性が高い。
【0055】
共焦点の分子場所特定は直列の処理であり、したがって比較的遅い。例えば、共焦点の分子場所特定は:活性化とそれに続く現在活性化されている分子すべてがブリーチされるまで多数の直列に走査された3D画像の取得;並びにそれに続く再びの活性化及び多数の3D走査によって引き継がれ、所望の密度の分子位置の3Dマップが得られるまで何度も繰り返されるので三重の直列処理である。これは広視野型又はTIRF型の分子場所特定による2D撮像よりも明らかに低速の提案である。ニプコー円板技術を利用する多焦点顕微鏡法を使用して、ある程度処理のスピードを上げることは可能であるが、該方法は単一平面のみに多数の焦点を作り出し、顕著な焦点外励起をさらに発生させてピンホールフィルタ処理したものでさえも標的分子の時期尚早のブリーチ及び増大した自己蛍光誘導バックグラウンドをもたらす。他方で、3D格子励起は、本願明細書に引用により組み込まれる「光学格子顕微鏡法」という表題の2005年11月23日のPCT特許出願PCT/US2005/042686号明細書に記載されているような、多数の励起最大部を同時に3Dで供給することが可能であり、主にこれらの最大部単独に対する励起の改善された制限によって意図されない光退色及び付随するバックグラウンドが大幅に削減される。さらに、格子が単一の顕微鏡対物レンズで対象範囲に入れられるよりも大きい立体角全体にわたって広がる成分ビームで作り出されれば、(例えば半分のピーク強度における全量によって規定されるような)各々の格子最大での励起の制限は、単一焦点又は従来式の多焦点顕微鏡法におけるよりも大きくされることが可能であり、さらにバックグラウンド信号を大幅に削減し、さらに厳密な初期PSFに起因して各々のPTOLのさらに正確な場所特定を可能にする。もちろん、最大限に対称性の複合格子のすべてのビームが使用されるときには、最適なSNR及び初期PSFが期待される。共焦点のケースのように、マルチフォトン活性化は局所的に適用可能であり、例えばマルチフォトン格子で蛍光励起格子に先行して走査されるか、又は活性化されたPTOLの一連の平行平面を、蛍光励起格子によるこれらの平面の同時走査に先行して作り出すように走査される。
【0056】
(d.PTOLの特性)
単離されたPTOLの場所特定を介した超高分解能にとって有用なPTOLは以下の際立った特徴、即ち比較的高い輝度(その励起断面積と量子効率によって規定される);不活性状態で作り出される発光に対する活性状態で作り出される発光の間の比較的高いコントラスト比(これは励起波長と検出用フィルタのセットの慎重な選択を通じて改善されることが可能である);励起に曝される他の細胞物質からの自己蛍光を削減する励起波長;大部分の自己蛍光が起こるスペクトル範囲と十分に異なる発光波長;及び不可逆的なブリーチの前に所望の場所特定精度を達成するのに十分な数のフォトンが各々のPTOLから集められるほど十分に大きい光安定性;のうちの1つ以上を一般的に有し、その上、不活化状態に切り換え復帰できるキンドリングタンパク質及びドロンパ以外のPTOLについてはそれでもなお有限であり、それにより、現在のセットが大幅にブリーチされた後に個々に解像可能な活性化PTOLの新たな集団が作り出されることが可能である。実際に、不可逆的光退色に関連する可能的光毒性を削減するために、理想的なPTOLは他の手段(例えば別個の不活化波長での照射)を使用する選択によって不活化されるまで活性状態を保つであろう。
【0057】
場所特定を介した超高分解能を、テトラマーのPTOLであるKaede及びKikume、並びにモノマー、ダイマー、及びEosFPのタンデムのダイマー形態で明示されてきた。これらのPTOLは、不活性化された吸収と活性化された吸収との間の大きな波長の広がり、並びに発光最大、高輝度、及びより長波長の発光という共通の利点を有し、ここで自己蛍光は通常さらに低い。モノマーのEosFPはテトラマーのKaede又はKikumeよりも小さい物理的サイズという追加の利点を有し、したがって細胞の構造及び機能に与える影響が少ないと見込まれる。実施に際しては、所定の用途に関する最適化のためのユーザの判定基準に基づいていくつかの多様なFPから特定のFPが選択されてもよい。
【0058】
(e.バックグラウンドの削減)
活性型PTOLと不活性型PTOLとの間のコントラスト比が、標的PTOLの所定の初期密度で所望のSNR及び結果として得られる場所特定精度を達成するのに低過ぎる場合、効果的な分子密度及び結果として得られるSNRが所望の通りになるまで標的PTOLの一部を不可逆的にブリーチすることによってコントラスト比を改善することが可能である。試料中の他の自己蛍光物質も、不活化されたPTOLの大部分に影響を与えることのない励起光を使用して、予めブリーチされることが可能である。バックグラウンドに関するさらなる区別は、適切なスペクトルフィルタによる処理、蛍光寿命の測定、或いは偏光励起及び/又は偏光分析検出を介して得ることが可能である。
【0059】
広視野型顕微鏡法において、(例えば軸方向の定在波から)焦点面近傍に集中した空間的に構造化された活性化エネルギーを使用して、この平面から離れた活性化された焦点外のPTOLから生じるバックグラウンドを減少させることが可能である。共焦点又は格子顕微鏡法において、これらの方法で従来から適用された3D制限された焦点よりむしろ定在波又は平面状で軸方向に構造化された活性化の他の手段で、同様のバックグラウンド削減を達成することが可能である。
【0060】
(f.偏光励起/検出)
試料中に置かれて電気的双極子モーメントを有するPTOLから出る光は、本願明細書に記載の技術を使用して検出及び撮像され得る。そのようなPTOLが試料中で一定の空間的配向を有するとき、これらのPTOLは偏光光で選択的に活性化、励起、及び/又は撮像されることが可能である。そのようなPTOLから放たれる光の偏光を分析することによって(例えば、光を検出する前に偏光フィルタを通して試料中のそのようなPTOLから放たれる光を通過させ、それにより、所望の偏光を有する光のみが検出されることによって)、これらのPTOLの双極子の配向が判定されることを可能にする。試料中で無秩序に配向している複数の一定の双極子PTOLに関すると、単一の励起偏光を有する活性化及び/又は励起放射線を使用することから結果として得られるであろう不均等な重み付けではなく、3つの直交する方向すべてで偏光にされた活性化及び/又は励起放射線を使用することによって、これらのPTOLが等しい確率で活性化及び/又は励起され得る。偏光にされた光の電界はその伝搬方向に直角の平面内にあるので、3方向すべてでの偏光励起は少なくとも2つの独立した励起ビームを必要とする。例えば、とりわけ図9に関して、本願明細書に記載の対物レンズ経由のTIRFシステムは、4つの励起用コリメータ900を使用することによって試料/基板界面の平面内で90°の間隔の4つの独立したビームを供給することが可能であり、ミラー909上の4つのスポットで反射されて対物レンズ902の後部瞳の中へと送られる4つの入力ビームを作り出す。後部瞳に関してビームを0°及び90°で半径方向に偏光させ、同様にビームを方位角180°及び270°で偏光させることは、結果として、界面の平面内で互いに対して直角に偏光した2つの干渉波、及び界面に対して直角に偏光した2つの干渉波をもたらす。これらのビームは、順次又は同時にオンに切り換えられ得るが、後者のケースでは、共通の偏光ベクトルを有するビームが互いに干渉するであろう。実際に、図10に示されるように、同様の偏光を備えた対でビームをオンに切り換えることによって、定在波を形成して、該定在波の急峻な励起PSFに起因する場所特定精度の増大を供給することが可能である。したがって、正確な場所特定、双極子の測定、及び一定の双極子の等しい励起確率の特性が組み合わされることが可能である。
【0061】
(g.例示的超高分解能画像)
図11は、COS7細胞内のリソソーム構造の回折限界画像(図11a)と、同じCOS7細胞内の同じリソソーム構造の超高分解能画像(図11b)とを比較しており、これらは本願明細書に記載されているTIRF単離/場所特定の装置と技術を使用して得られた。COS7細胞を含む試料を、リソソームの膜貫通型タンパク質CD63に融合した光活性化可能なタンパク質Kaedeの発現のために設計されたプラスミドを用いた一過的トランスフェクションによって調製した。透過型電子顕微鏡に共通の技術を使用して細胞をペレット化し、次いでミクロトーム化することで約80nmの厚さの切片を作出し、これを撮像した。20フレーム毎の後に短いパルスを適用して活性化された分子の数はより高く回復された活性化エネルギーで20,000フレームの単一分子の画像を撮ったが、それでも個々に解像可能なレベルであった。図11bに示される超高分解能画像は51,000を超える単離分子から形成され、各々の分子は24nm以下の不確実性で場所特定され、位置の不確実性に等しい標準偏差を備えたガウス分布によって与えられる強度の画像プロファイルを有するスポットとして図11bに再描画された。各々の分子に関するスポットのプロファイルを正規化し、各々の分子に関して同じ積分強度を与えた。このようにして、さらに高度に場所特定された分子が明るくはっきりとしたドットとして見え、良好に場所特定されていない分子は広くて薄暗く見える。回折限界画像は、単離された分子の同じセットの回折限界画像を合計することによって形成され、かつ従来のTIRF画像と区別できないことが確認された。
【0062】
図12は、リン酸バッファ生理食塩水中の固定されたキツネ肺線維芽細胞全体とガラスのカバースリップとの界面で得られた回折限界画像(図12a)と、同じキツネ肺線維芽細胞の超高分解能画像(図12b)を比較している。細胞は、細胞付着性タンパク質ビンキュリンに融合した光活性化可能なタンパク質dEosFPを発現するように一過的にトランスフェクトされた。画像は、図11と結び付けて述べられたのと同じ方式で作り出された。回折限界画像は、細胞周縁の単一の限局的付着領域を強調しており、PTOL局在による超高分解能画像は図12aの四角形の中の構造の拡大図を示している。
【0063】
(3.重複して空間的に構造化された活性化及び励起を介して強化された分解能)
光学顕微鏡法(例えば広視野型、TIRF型、共焦点型、又は格子型)のいずれの全体的PSFも通常では励起PSFと検出PSFのそれとの積(即ちPSFoverall=PSFexcitation×PSFdetection)で与えられる。広視野型顕微鏡法は分解能に励起の寄与を提供せず、従来のTIRF型顕微鏡法は極めて高いz軸の励起分解能を提供するがx及びy軸で提供せず、かつ共焦点型と格子型の両方の顕微鏡法は単一の焦点又は強度最大の格子への励起フィールドの集中によって励起分解能に寄与する。
【0064】
PTOLは、励起エネルギー自体を制限するために使用されるのに類似した方式で場所特定された領域への活性化照射を制限することによって、第3の成分を全体的PSFに与える方法を提供する(即ちPSFoverall=PSFactivation×PSFexcitation×PSFdetection)。したがって、例えば、集束した活性化ビームが共焦点顕微鏡の焦点に一時的に適用した後に活性化されたPTOLの励起波長での集束ビームに適用することができ、結果として生じる発光が空間的に場所特定される方式で共焦点で検出される。次いで、完全な超高分解能3D画像を作り出すためにこの処理が多数のボクセル(即ち3D画素)全体にわたって繰り返されてもよい。1つの警告は、焦点容積内の活性化PTOLの数は、(不可逆的な光退色か又は不活性状態への復帰によって)活性化と励起が直ぐ隣りのボクセルに加えられる前に、大幅に減少すべきであるか、そうでなければ実効活性化PSFは重複することで隣接する活性化焦点によって規定されるより大きな領域の反映となり、それによって実効全体的PSFを低下させるであろう。活性化された分子は励起の処理によって不活性状態へと戻され、それにより、活性化された集合を減らすと同時に次のボクセルへと走査が進むべきときを判定するための自然な手段を提供するので、ドロンパはこの超高分解能の方法にとって特に優れた候補であるように見える。不活化が過度に速く起これば、次の位置に進む前に多数回の活性化/(不活化及び測定)サイクルが同じ位置で実行されることが可能である。この処理でPTOLとしてドロンパを使用することは、約100回以上そのようなサイクルが各々の位置で実行されることを可能にする。
【0065】
ドロンパについては、活性化波長が通常では短い(例えば400nm)ので、活性化PSFは全体的PSFにおける大部分の分解能利得を提供することが可能である。波長のこの短さに由来する細胞の損傷が懸案事項であれば、線形の(即ち単一フォトンによる)活性化で可能であるよりもわずかに多くの活性化PSFの代償で、マルチフォトンによる活性化が使用可能である。付け加えると、発光分子の密度はPSFactivation×PSFexcitationで与えられるので、発光分子は少なくとも従来の2フォトン励起と同じくらい狭い焦点領域に限定され、それにより、たとえ線形で共焦点の励起を使用しても大幅に減少した面外光退色とバックグラウンドをもたらすであろう。もちろん、同じ若しくは相応の周期の疎な複合格子が(図13a、及び図13dに示された図13aの拡大図に示されるような)活性化放射線と(図13b、及び図13eにある図13bの拡大図に示されるような)励起放射線の両方に関して使用されれば、PTOLの活性化と励起を達成して且つ活性化及び励起放射線に関する格子内の最大よりもくっきりした最大(図13fに示される)を有する全体的格子(図13cに示される)をもたらし、さらなる利得が空間的及び時間的分解能の両方で可能である。点広がり関数の工学、及び活性化と励起のPSFの相対的移動を使用することで、それらの実効重複の領域を減少させることによって分解能をさらに高めることが可能である。全体的分解能に対して検出PSFの寄与が無視できる程度であれば、集められる信号を最大にするために(マルチフォトン顕微鏡法の殆どの実施態様のように)ピンホールフィルタ処理を単純に除外することが有利であると見込まれる。最後に、潜在的にさらに多数の分子が(活性化と励起のために共焦点放射線が使用されるときには)各々の焦点から、又は(格子にパターン化された放射線が活性化と励起のために使用されるときには)励起最大から所定の時間でフォトンを放出するであろうから、発明者らは、この超高分解能の方法が生細胞における動的な超高分解能撮像によく適していることを指摘する。
【0066】
(4.飽和不活化を介した超高分解能)
PTOLの一部が前もって活性化された回折限界焦点容積の小部分全体にわたってPTOLの不活化の飽和を活用することによって、回折限界よりも精緻な領域から発光を集め、次いで多数の場所で繰り返すことで回折限界よりも精緻な画像を作り出すことが可能である。この概念は、光学格子による活性化、不活化、及び励起に関して図14に記載しているが、しかし他の手段(例えば単一の集束ビーム)が使用されることも可能である。
【0067】
図14aに記載のように、制限された最大強度の格子をPTOLの活性化波長で最初に作り出し、活性化されたPTOLの場所特定された領域のアレイを作り出すことができる。次に、各々の格子点に配置された高強度の骨組み中の中央の低強度のノードを有する(図14bに示されるような)減衰格子は、各々のノードの外側のPTOLを不活性状態に戻す波長で適用可能である。次に、(図14cに示されるような)励起格子は活性化されたPTOLの励起波長で適用可能であり、それにより、減衰格子の各々のノード近傍のPTOLの小さい(例えば、発光放射線の波長よりも小さくなり得る寸法を有する)量が励起された後に、フォトンを放出し、結果として(図14dに示されるような)超高分解能の所望の格子を生じる。次に、残りの活性化PTOLが、例えばそれらの大部分の画分が光退色するまでそれらを励起することによって、又はそれらの大部分の画分が不活性状態に戻されるまで不活化放射線を当てることによって不活化される。次いで、活性化、ノードパターンによる部分的不活化、励起、及び殆ど完全な不活化のこの処理を異なるポイントで繰り返し、第1のポイントからずれた超高分解能焦点の格子を作り出すことができる。格子の各々の基本セル全体にわたる多数のポイントでこの処理をさらに繰り返すことによって、及び別々の検出素子(例えばCCD検出器の画素)での活性化/ノードの不活化/励起/完全な不活化の所定のサイクル内の個々の超高分解能焦点からの発光放射線を検出することによって、例えば(図14eに示されるような)従来の共焦点顕微鏡法によって可能であるよりも大幅に高い分解能で(図14fに示されるような)完全な3D画像を構築することが可能である。3つの格子すべて(即ち活性化放射線、減衰放射線、及び励起放射線の格子)は、それらの絶対的周期性の比が単純な整数の分数(即ちi/j)を形成するように、又は理想的には同じ絶対的周期性を有する(i/j=1)ように波長で正規化された周期性で選択することができ、それにより、活性化最大、不活化減衰殻、及び励起最大の多くが重複する。完全に不活化する放射線は、格子の形態で、又は実質的に一様な不活化フィールドとしても適用可能である。
【0068】
ここで再びさらに一般的な放射線パターンを考えると、ノードの不活化放射線パターンのみが(特に、少なくとも1つの低強度ノードで)空間的に構造化される必要があること、及び同等に一様な活性化、励起、又は完全な不活化の放射線フィールドが適用され得ることを指摘することは重要である。しかしながら、別の場所の望ましくない残りの活性化PTOLに相対する不活化後のノード近傍の望まれる残りの活性化PTOLの間のコントラストを高めるため、及び繰り返される活性化と不活性化のサイクルによる可逆的PTOLへの潜在的損傷を減少させるために、活性化と励起のフィールドのどちらか、又は両方を同様に空間的に構造化することが有利であると見込まれる。ノード近傍のさらに完全な最終的不活化は、完全な不活化放射線を同様に空間的に構造化することによって、これらの残りの活性化のポイントに集中させることでも達成可能である。不活化フィールドがノードでゼロ強度に近く、且つノード近傍の不活化強度の減少率が高ければ、不活化エネルギーの適用後に残る活性化PTOLの密度及び空間的制限が改善されることもやはり指摘する。
【0069】
特定の光活性化可能なFPがこの技術に使用されることもあり得る。例えば、KFP1及びドロンパなどのキンドリングタンパク質は両方共に不活性状態へと光切り換えで復帰させられることが可能であるので、これらは使用され得る。KFP1は、該分子が不可逆的に活性化されないことを保証するための低強度の活性化を必要とし、比較的低い量子効率を有し、かつKFP1の不活化は励起と異なる波長で起こる。ドロンパは高い輝度を示し、多数回のサイクルにわたって確実に切り換え可能であるが、検出信号の時間ゲート制御が必要とされる。なぜならば該減衰波長は励起波長と同じであり、それゆえに活性状態の減衰時に発生する蛍光が排斥されるか、又は減衰ノード近傍での後の発光から分離して集められなければならないからである。他方で減衰中にさらに多くの分子が発光に寄与するであろうから、減衰中に集められる発光を使用して、高いSNRの回折限界画像を作り出すことが可能である。
【0070】
(5.下げられた温度でのPTOL撮像)
PTOLで標識された生きた生物試料、又は室温は、この場所特定顕微鏡法にとって特有の課題を提起する。PTOL標識は、比較的長い多数フレーム取得時間中に場所特定の精度の域を越えて拡散するか又は輸送される可能性がある。付け加えると、PTOLの配向などの他の特性がこの取得期間中に変化し、結果として潜在的に有用な顕微鏡情報の損失をもたらし得る。したがって、試料を室温よりも下に冷却することは、撮像される間の試料の移動量を小さくし得る。
【0071】
付け加えると、下げられた温度では、ある種のPTOLの輝度及びスペクトル線幅が向上し、それにより、さらに良好に解像された場所特定画像用より多くのフォトンがさらに迅速に獲得されることが可能になり、かつ自己蛍光バックグラウンドに相対したPTOLのコントラストが減少させることが可能である。本明細書に含まれるものは、試料又は試料と顕微鏡の一部が凍結温度よりも下に冷却されることでこれらの制約が緩和される実施態様である。特に、急速凍結は潜在的に損傷を生じない氷晶を試料の中に形成するので、ガラス状態の試料を調製することが可能である。
【0072】
(6.潜在的画像のPTOL顕微鏡法)
リソグラフィでは、ナノメートル規模のパターンが、フォトン、電子、イオン、又は原子ビームで記述されることが可能である。通常、該パターンは、レジストなどのビーム感受性材料の上に記述される。光ビーム又は電子ビームのケースでは、フォトレジスト又は電子ビームレジストが使用されることが可能である。最適のリソグラフィ性能に関して、後工程の処理が露光されたレジストパターンを他の材料上に転写する前の早い段階でのビーム及び露光パターンの正確な形状を特徴付けることが有用である。したがって、レジストは、PTOLを含むか、又はレジスト層の上面又は底面をPTOLで標識されることもあり得る。このケースにおいて、コントラストは数種類の露光ビームによる露光用のビームによって与えられ、かつ該露光ビームはレジスト内のPTOLに検出可能な影響を有することが可能であり、それにより、露光後のPTOLの画像化がレジスト内の露光ビームのパターンを示し得る。例えば、そのような露光ビームは:PTOLの放射線する能力を(例えば電子ビームによるイオン化、又はUV誘導型の結合切断などによって)破壊すること;PTOLの発光波長を(例えば活性化放射線に起因するKaedeの波長シフトに類似した方式で)シフトさせること;又は化学的に活性化されるレジストのケースでは通例であるようなレジスト内の酸の放出を触媒すること;が可能であり、その後これが露光されたPTOLの光物理的性質を変える。このようにして、図15aに示されるように、taレジストはいくつかのPTOLを含むことができる。図15bに示されるように、レジストの一部分1502がリソグラフィ処理の中で露光放射線に曝露されると、フォトリソグラフィで活性化された酸1503がレジストのさらなる分裂又は重合を触媒することが可能である。付け加えると、酸1503は(例えばPTOL1501としてEosが使用されるときに)PTOLの発光波長をシフトさせることも可能であり、ここでは酸1503の存在下でPTOL1506の活性化状態は、PTOL1501が酸1503の存在下にない場合と異なる波長でより強く発光することが可能である。PTOL顕微鏡は、酸で変換されたPTOL1506又は未変換のPTOL1501をレジスト上の内在画像として画像化することが可能であった。これを順次、他方でPTOL場所特定長さ規模の分解能での露光特性及びプロファイルの指標を供給することが可能であった。
【0073】
別途規定されない限り、本願明細書に使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本願明細書に記載のすべての出版物、特許明細書、特許、及び他の参考資料は、それらの全体が引用により組み込まれる。論争がある場合には、定義を含む本願明細書が統制するであろう。付け加えると、材料、方法、及び実例は具体的な例示に過ぎず、限定ではない。
いくつかの実施態様を記載している。それでもなお、様々な変更がなされ得ることは理解されるであろう。したがって、他の実施態様も添付の特許請求項の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に第1の活性化放射線を供給して、前記試料中の前記PTOLの第1サブセットを活性化させること;
前記試料中の前記PTOLの第1サブセットに第1の励起放射線を供給して、前記活性化されたPTOLのうちの少なくともいくつかを励起させること;
前記PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれを上回るように前記第1の活性化放射線を制御すること;
を含む方法。
【請求項2】
2つ以上の活性化されたPTOLが1つのDLRVの中に位置する確率が約0.1未満である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記PTOLの第1サブセットから放たれた放射線を、放射線が放たれる前記PTOLの像平面に置かれた位置感知検出器で検出することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記PTOLの第1サブセット内の複数の個々のPTOLの場所を、前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記複数の個々のPTOLの前記判定された場所に基づいて前記試料の回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記試料に不活化放射線を供給して、前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを不活化させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記不活化放射線が、前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを光退色させるために十分な励起放射線を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記活性化放射線が活性化波長を有し、かつ前記励起放射線が、前記活性化波長より長い励起波長を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記PTOLが、クラゲのAequorea属から由来するタンパク質の遺伝子組換えによる変異種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
クラゲのAequorea属から由来するタンパク質の遺伝子組換えによる前記変異種がPA-GFPとPS-CFPから成る群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記PTOLが、ディスコソーマ・ストリアータ(Discosoma striata)、トラキフィリア・ジオフロイ(Trachyphyllia geoffroyi)、モンタストレア・カベルノサ(Montastraea cavernosa)、リコルデア・フロリダ(Ricordea florida)、ロボフィリア・ヘムプリチ(Lobophyllia hemprichii)、アネモニア・スルカータ(Anemonia sulcata)、及びファビア・ファブス(Favia favus)から成る群から選択されるいずれかのサンゴに由来するタンパク質の変異種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記サンゴのいずれかに由来するタンパク質の前記変異種が、Kaede、Kikume、EosFP、及びKFPから成る群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記PTOLが、サンゴ礁のウミバラ科に由来するタンパク質の遺伝子組換えによる変異種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
サンゴ礁のウミバラ科から由来するタンパク質の遺伝子組換えによる前記変異種がドロンパを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
試料/基板界面での前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つの全内部反射によって、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記基板が導波路を含み、かつ前記導波路を通じて前記試料/基板の界面に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記撮像用光学素子が対物レンズを含み、かつ前記対物レンズを通して前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを透過させることによって、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記対物レンズの近位後部開口の空間的範囲に比べて小さく、かつ前記対物レンズの遠位端部から出現する前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つが前記試料/基板の界面から全内部反射されるように前記対物レンズの光軸に相対して半径方向の位置に置かれる空間的範囲を有する領域から前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを反射させることによって、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記対物レンズの後部開口の空間的範囲に比べて小さい空間的範囲を有する反射又は吸収領域で、前記試料/基板界面からの反射後に前記対物レンズの近位後部開口から出現する前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを実質的に遮ることをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
光学格子の形態で、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つが基板/試料界面から全内部反射されるような角度で、前記界面の前記基板側から前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを当てることによって前記光学格子を作り出すことをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記試料が複数の格子平面に広がり、かつ異なる格子平面に位置するPTOLから放たれる放射線を選択的に検出することをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
広視野全体にわたって前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記試料の中の焦点位置に、前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを焦点集束させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記試料に前記第1の活性化放射線を供給することが、マルチフォトン吸収過程を通じて前記試料中の前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを活性化させる、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記試料に前記第1の励起放射線を供給することが、マルチフォトン吸収過程を通じて前記試料中の前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを励起させる、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記試料に供給される前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つの偏光を制御することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を検出することが、前記放たれる放射線の前記偏光に基づいて前記放たれる放射線を判別することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
放射線を放つ前記活性化及び励起されたPTOLのうちの少なくとも1つについて双極子の配向を判定することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を検出することが、前記放たれる放射線の前記偏光に基づいて前記放たれる放射線を判別することを含み、かつ:
前記PTOLの第1サブセット内の複数の個々のPTOLの場所を、前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
放射線を放つ前記複数の活性化及び励起されたPTOLの双極子の配向を判定すること;及び
前記複数の活性化及び励起されたPTOLについて位置及び配向データを記録すること;
をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記複数の活性化及び励起されたPTOLについて位置及び配向データを記録することに基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、より大きい材料のブロックからミクロトームで切り出された薄い切片を含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記切片が透過型電子顕微鏡で撮像されるのに十分に薄い、請求項32記載の方法。
【請求項34】
特定の試料特徴を際立たせるために、前記薄い切片の選択された部分にPTOLが連結される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記試料が透過型電子顕微鏡で撮像されるのに十分に薄い切片を含み、かつ:
前記PTOLの第1サブセット内の複数の個々のPTOLの位置を前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
前記複数の個々のPTOLの前記判定された場所に基づいて前記試料の回折限界よりも精緻な画像を作り出すこと;及び
前記試料の前記回折限界よりも精緻な画像を、透過型電子顕微鏡法によって得られる同じ切片の画像と比較すること;
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記試料の少なくとも一部分を、前記部分が実質的に凍結されるまで冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記部分がガラス状態に凍結されるように前記部分を冷却することをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記第1サブセット内の少なくともいくつかの前記PTOLの量子効率が約2倍以上増加するような十分に低い温度に前記試料の少なくとも一部分を冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
前記試料の少なくとも一部分を、前記PTOLの第1サブセット内の少なくともいくつかの前記PTOLを光退色させる確率を約2倍減少させるのに十分な低い温度に冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項40】
回折限界分解能ボリュームによって特徴付けられる光学系で撮像する方法であって:
試料中に、前記光学系の前記回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度で前記試料の少なくとも一部分に配分された複数の光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含み、前記第1サブセット内のPTOLの前記密度が前記回折限界分解能ボリュームの逆数よりも小さい、前記試料の前記部分内の前記PTOLの第1サブセットを活性化させること;
前記PTOLの第1サブセット内の前記PTOLの一部分を励起させること;
前記PTOLの第1サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を、前記活性化及び励起されたPTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
を含む、前記方法。
【請求項41】
前記PTOLの第1サブセットを活性化することが、前記第1サブセット内の前記PTOLに十分なエネルギーを供給して、前記PTOLを不活性状態から活性状態に変換させることを含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記第1サブセット内の前記PTOLにエネルギーを供給することが、前記試料に活性化放射線を供給することを含み、ここで前記活性化放射線は、前記PTOLを前記不活性状態から前記活性状態に変換するように選択された波長を有する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記PTOLの第1サブセットの一部分を励起することが、前記PTOLを基底状態から励起状態へと励起するために十分なエネルギーを前記第1サブセット内の前記PTOLに供給することを含む、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記PTOLにエネルギーを供給することが前記試料に励起放射線を供給することを含み、ここで前記励起放射線が、前記PTOLを前記基底状態から前記励起状態に変換するように選択された波長を有する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記PTOLの第1サブセット内の前記PTOLの前記判定された場所に基づいて画像を作り出すことをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項46】
前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを不活化すること;
前記試料の前記部分内の前記PTOLの第2サブセットを活性化すること(ここで前記第2サブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さい); 前記PTOLの第2サブセット内の前記PTOLの一部分を励起させること;
前記PTOLの第2サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を前記撮像用光学素子で検出すること;及び
前記PTOLの第2サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を、前記PTOLの第2サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項47】
前記第1及び第2サブセットが、前記試料の前記部分で統計学的にサンプリングされる前記PTOLサブセットである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記試料に十分な励起放射線を供給して、前記第1サブセット内の活性化されたPTOLを光退色させることを含む、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記第1サブセット内の前記PTOLにリセット用放射線を供給することを含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記第1サブセット内の前記PTOLが不活性状態へと減衰する時間経過を可能にすることを含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記PTOLの前記第2サブセットを活性化することよりも前に起こる、請求項46記載の方法。
【請求項52】
前記第1サブセット内のPTOLから放たれる放射線の第1の強度信号を検出場所の関数として記録すること;
前記第1サブセット内の前記PTOLの場所を回折限界よりも精緻な精度で判定するために前記第1の強度信号を分析すること;
前記第2サブセット内のPTOLから放たれる放射線の第2の強度信号を検出場所の関数として記録すること;及び
前記第2サブセット内の前記PTOLの場所を回折限界よりも精緻な精度に判定するために前記第2の強度信号を分析すること;
をさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項53】
前記第1及び第2サブセット内のPTOLの前記判定された場所に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項54】
前記PTOLの第2サブセットを活性化することが、前記第2サブセット内の前記PTOLに十分なエネルギーを供給して、前記PTOLを不活性状態から活性状態に変換することを含む、請求項46記載の方法。
【請求項55】
前記PTOLにエネルギーを供給することが、前記試料に活性化放射線を供給することを含み、ここで前記活性化放射線が、前記PTOLを前記不活性状態から前記活性状態に変換させるために選択された波長を有する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記PTOLの前記第2サブセットの一部分を励起することが、前記第2サブセット内の前記PTOLに十分なエネルギーを供給して、前記PTOLを基底状態から励起状態へと励起させることを含む、請求項46記載の方法。
【請求項57】
前記第2サブセット内の前記PTOLにエネルギーを供給することが、前記試料に励起放射線を供給することを含み、ここで前記励起放射線が、前記PTOLを前記基底状態から前記励起状態に変換させるために選択された波長を有する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記試料の前記部分内の前記PTOLのN番目サブセットを活性化する工程であって、前記N番目サブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さい、前記工程;
PTOLの前記N番目サブセット内の前記PTOLの一部分を励起する工程;
PTOLの前記N番目サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を前記撮像用光学素子で検出する工程;
PTOLの前記N番目サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を、PTOLの前記N番目サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定する工程;及び
PTOLの前記N番目サブセット内のPTOLを不活化する工程;
を少なくとも20回繰り返す工程をさらに含み、
前記工程中、Nは1から20に及ぶ整数である、
請求項46記載の方法。
【請求項59】
比較的高い強度領域と比較的低い強度領域を有する空間的に構造化された活性化放射線を光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に供給することで、前記空間的に構造化された活性化放射線の比較的高い強度領域に主に位置する前記試料中の前記PTOLサブセットを活性化すること;
前記試料中の活性化されたPTOLの前記サブセットに空間的に構造化された励起放射線を供給することであって、前記励起放射線の1つ以上の比較的高い強度領域が前記活性化放射線の1つ以上の比較的高い強度領域に少なくとも部分的に重複するように前記励起放射線を構造化すること;
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記試料中のPTOLから放たれる放射線が、前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)に匹敵するか又はそれよりも小さい少なくとも1つのボリュームから実質的に放たれるように前記活性化放射線及び前記励起放射線の強度及び空間的構造を制御すること;
を含む方法。
【請求項60】
前記空間的に構造化された活性化放射線の少なくとも1つの第1最大が前記空間的に構造化された励起放射線の少なくとも1つの第1最大と実質的に一致する第1領域から放たれる放射線を検出することをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記空間的に構造化された活性化放射線の第2最大が前記空間的に構造化された励起放射線の第2最大と実質的に一致する第2の領域から放たれる放射線を検出することをさらに含み、ここで前記第1領域及び前記第2領域から放たれる放射線が別々に検出される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
PTOLの前記サブセット内の活性化されたPTOLを不活化するために前記試料に不活化放射線を供給することをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項63】
前記不活化放射線が、前記活性化されたPTOLを光退色させる励起放射線を含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記不活化放射線が、PTOLを活性状態から、不活性であり活性化可能な状態に変換するための放射線を含み、かつ前記励起波長の波長と異なる波長を有する放射線を含む、請求項62記載の方法。
【請求項65】
前記空間的に構造化された活性化放射線を供給して、前記空間的に構造化された活性化放射線の比較的高い強度領域に主に位置する前記試料中の前記PTOLサブセットを活性化すること;
前記空間的に構造化された励起放射線を前記試料中の活性化されたPTOLの前記サブセットに供給することであって、ここで前記励起放射線の1つ以上の比較的高い強度領域が前記活性化放射線の1つ以上の比較的高い強度領域に少なくとも部分的に重複するように、前記励起放射線が構造化されること;
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
重複する前記励起放射線の前記1つ以上の比較的高い強度領域及び前記活性化放射線の前記1つ以上の比較的高い強度領域を前記試料の中の新たな場所に再配置すること;
をさらに繰り返し含む、請求項62記載の方法。
【請求項66】
重複の領域が複数の新たな位置にあるときに検出された前記放射線に基づいて画像を作り出すことをさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記画像が回折限界よりも精緻な分解能を有する、請求項66記載の方法。
【請求項68】
比較的高い強度の活性化放射線及び比較的高い励起放射線の重複領域のうちの少なくとも1つにある活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が、前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)に匹敵するか又はそれよりも小さくなるように、前記活性化放射線及び前記励起放射線の強度と空間的構造を制御することをさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項69】
2つ以上の活性化及び励起されたPTOLが、1つのDLRVの中に置かれる確率が約0.1未満である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
複数の活性化及び励起されたPTOLの場所を、前記検出された放たれた放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度に判定することをさらに含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
前記複数の活性化及び励起されたPTOLの前記判定された場所に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記複数の活性化及び励起されたPTOLの前記判定された場所及び前記検出された強度に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項70記載の方法。
【請求項73】
前記空間的に構造化された活性化放射線が、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項69記載の方法。
【請求項74】
前記空間的に構造化された励起放射線が、基板/試料界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項69記載の方法。
【請求項75】
前記光学格子の多数の平面内に位置するPTOLから放たれる放射線を検出すること;及び
前記多数の画像平面内に位置するPTOLから放たれた前記検出されたデータに基づいて3D画像を作り出すこと;
をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項76】
活性化及び励起されたPTOLから放たれた放射線を、前記放たれた放射線の検出の前に、少なくとも1つで空間的にフィルタ処理することをさらに含む、請求項69記載の方法。
【請求項77】
光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に活性化放射線を供給することで前記試料中の前記PTOLの第1サブセットを活性化すること;
活性化されたPTOLを不活性状態に変換するために前記試料に不活化放射線を供給することであって、ここで前記不活化放射線が強度最小部を含む空間的に構造化された放射線のフィールドを有し、それにより、リセット用放射線の前記最小部に実質的に位置するPTOLの第2サブセットが活性化されて保たれると同時に、前記最小部の外側でリセット用放射線に曝される活性化PTOLが不活性形態に実質的に変換されること;
前記試料中の前記活性化されたPTOLの少なくとも一部分を励起するために前記試料に励起放射線を供給すること;
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれを上回るように、前記第1活性化放射線の強度を制御し、且つ前記不活化放射線の強度と空間的構造のうちの少なくとも1つを制御すること;
を含む方法。
【請求項78】
前記試料中の2つ以上の回折限界よりも精緻な領域から放たれる放射線を別々に検出することをさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記空間的に構造化された不活化放射線のフィールドの前記強度最小部にある活性化されたPTOLを不活性状態に変換することをさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項80】
前記活性化されたPTOLが、前記強度最小部にある前記活性化されたPTOLを光退色させるのに十分な励起放射線を前記試料に供給することによって不活性状態に変換される、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記活性化されたPTOLが、不活化放射線を前記PTOLに供給することによって不活性状態に変換される、請求項79記載の方法。
【請求項82】
前記活性化されたPTOLが、前記PTOLが不活性状態へと減衰する時間経過を可能にするによって前記不活性状態に変換される、請求項79記載の方法。
【請求項83】
活性化放射線を前記試料に供給して、前記試料中の前記PTOLの前記第1サブセットを活性化する工程;
活性化されたPTOLを不活性状態に変換するために前記試料に空間的に構造化された不活化放射線のフィールドを供給する工程であって、それにより、前記不活化放射線の前記最小部に実質的に位置するPTOLの第2サブセットが活性化されて保たれるのと同時に前記最小部の外側で前記不活化放射線に曝される活性化PTOLが不活性形態に実質的に変換される、前記工程;
前記活性化されたPTOLの少なくとも一部分を励起するために前記試料に励起放射線を供給する工程;及び
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出する工程;
を繰り返す工程をさらに含み、
前記工程中、前記不活化放射線フィールドの前記最小部は前記工程の異なる繰り返しの間、前記試料中の異なる位置にある、請求項77記載の方法。
【請求項84】
前記試料の中の複数の場所から検出される前記放たれた放射線に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
残りの活性化及び励起の少なくとも1つの領域内で活性化及び励起されるPTOLの平均ボリュームが撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)に匹敵するか又はそれよりも小さい、請求項83記載の方法。
【請求項86】
2つ以上の活性化及び励起されたPTOLが1つのDLRVの中に置かれる確率が約0.1未満である、請求項83記載の方法。
【請求項87】
個々のPTOLの場所を、前記PTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度に判定することをさらに含む、請求項83記載の方法。
【請求項88】
場所特定されたPTOLの複数の領域の前記判定された場所に基づいて回折限界分解能よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
場所特定されたPTOLの複数の領域の前記判定された場所に基づいて、及び前記複数の活性化及び励起されたPTOLの前記検出された強度に基づいて、回折限界分解能よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項87記載の方法。
【請求項90】
前記活性化放射線が周期的構造を有し、かつ前記不活化放射線のフィールドが前記活性化のフィールドと周期的に重複する強度最小部を含む、請求項77記載の方法。
【請求項91】
前記励起放射線が、前記不活化放射線のフィールドの前記強度最小部と釣り合いのとれた空間的構造を有する、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記活性化放射線が、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項77記載の方法。
【請求項93】
前記空間的に構造化された不活化放射線のフィールドが、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項77記載の方法。
【請求項94】
前記励起放射線が、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項77記載の方法。
【請求項95】
活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を、前記活性化放射線の空間的構造、前記不活化放射線のフィールド、及び励起放射線のフィールドを規定するために顕微鏡の焦点を使用する共焦点顕微鏡又は4π顕微鏡で集めることをさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項96】
放射線の強度を検出器の位置の関数として検出するために適合化された位置感知検出器;
回折限界分解能ボリュームによって特徴付けられ、試料中の複数の活性化及び励起された光変換可能な光学標識(「PTOL」)から放たれる光を前記位置感知検出器上に画像化するために適合化された光学系であって、前記PTOLが前記光学系の前記回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度で前記試料の少なくとも一部分に配分される、前記光学系;
前記試料の前記部分内の前記PTOLの第1サブセットを活性化するために第1の活性化放射線を前記試料に供給するために適合化された第1光源;
前記PTOLの前記第1サブセット内の前記PTOLの一部分を励起するために第1の励起放射線を前記試料に供給するために適合化された第2光源;及び
活性化された前記PTOLの第1サブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さくなるように前記試料に、供給される活性化放射線を制御するために適合化された制御器;
を含む装置。
【請求項97】
前記検出器によって供給される前記PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線についての位置依存性強度データを処理して、前記PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を回折限界よりも精緻な精度で判定するためのプロセッサをさらに含む、請求項96記載の装置。
【請求項98】
前記PTOLの第1サブセット内のPTOLについて回折限界よりも精緻な位置情報を保存するように適合化されたメモリをさらに含む、請求項97記載の装置。
【請求項99】
前記PTOLの第1サブセット内の前記PTOLについての前記回折限界よりも精緻な位置情報に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すように適合化されたプロセッサをさらに含む、請求項98記載の装置。
【請求項100】
前記制御器が、前記第1サブセット内のPTOLが前記励起放射線による光退色を通じて不活化されるように前記試料に供給される前記励起放射線を制御するようにさらに適合化されている、請求項96記載の装置。
【請求項101】
前記制御器が、前記試料に供給される前記活性化放射線及び前記励起放射線を制御するようにさらに適合化されており、
活性化されるPTOLの最初サブセット内のPTOLの密度が、前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さくなるように活性化放射線の最初のパルスが前記試料に供給され、
前記最初サブセット内の活性化されたPTOLを励起するように励起放射線が前記試料に供給され、
PTOLの前記最初サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれた放射線が前記検出器によって検出され、かつ
前記最初サブセット内のPTOLが不活化された後に、次の活性化放射線のパルスが、次の活性化PTOLサブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さくなるように前記試料に供給され、
前記次のサブセット内の活性化されたPTOLを励起するために励起放射線が前記試料に供給され、
PTOLの前記次のサブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が前記検出器によって検出される、
請求項96記載の装置。
【請求項102】
前記試料の前記部分内のPTOLの第2サブセットを活性化するために第2の活性化放射線を前記試料に供給するように適合化された第3光源をさらに含み、ここで前記第2の活性化放射線が前記第1の活性化放射線の波長と異なる波長を有し、かつ前記第1及び第2サブセット内のPTOLが異なる種のPTOLであり、且つ異なる波長を有する放射線を放つ、請求項96記載の装置。
【請求項103】
前記検出器が、前記異なる種のPTOLから放たれる放射線を別々に検出するように適合化されている、請求項102記載の装置。
【請求項104】
前記試料と前記検出器との間に放たれる放射線の特定の波長を選別するためのフィルタをさらに含む、請求項96記載の装置。
【請求項105】
撮像用システムが対物レンズを含み、かつここで前記第1の活性化放射線が前記対物レンズを通じて前記試料に供給される、請求項96記載の装置。
【請求項106】
前記試料が第1の種及び第2の種のPTOLを含み;
前記第1及び第2の種の発光特性、並びに前記第1及び第2の種の励起特性のうちの少なくとも1つに基づいて前記第2の種から前記第1の種を区別すること;及び
前記第1及び第2の種に関して、前記第1の活性化されたサブセット内の活性化されたPTOLの場所を互いに相対して回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項107】
前記試料が第1の種及び第2の種のPTOLを含み、さらに、
前記第1及び第2の種の発光特性並びに前記第1及び第2の種の励起特性のうちの少なくとも1つに基づいて前記第2の種から前記第1の種を区別することであって、
前記試料中の各々の種のPTOLの密度が前記撮像用光学素子のDLRVの前記逆数よりも大きく、かつ
この種の活性化された前記PTOLの第1サブセット内の密度が前記回折限界分解能ボリュームよりも小さい、
請求項1記載の方法。
【請求項108】
前記試料がPTOLを埋め込んだレジストを含み、ここで前記埋め込まれたPTOLが空間的に構造化されたビームへの曝露の対象となっており、それにより、前記PTOL特性が測定できる程度にそのような曝露によって変えられる、請求項1記載の方法。
【請求項109】
前記検出されたPTOLの前記判定された場所から前記レジスト用の曝露プロファイルを作り出すことをさらに含む、請求項108記載の方法。
【請求項110】
前記試料がPTOLを埋め込んだレジストを含み、ここで前記埋め込まれたPTOLが空間的に構造化されたビームへの曝露の対象となっており、それにより、前記PTOL特性が測定できる程度にそのような曝露によって変えられ、かつ前記検出されたPTOLの前記判定された場所から前記レジスト用の曝露プロファイルを作り出すことをさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項1】
光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に第1の活性化放射線を供給して、前記試料中の前記PTOLの第1サブセットを活性化させること;
前記試料中の前記PTOLの第1サブセットに第1の励起放射線を供給して、前記活性化されたPTOLのうちの少なくともいくつかを励起させること;
前記PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれを上回るように前記第1の活性化放射線を制御すること;
を含む方法。
【請求項2】
2つ以上の活性化されたPTOLが1つのDLRVの中に位置する確率が約0.1未満である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記PTOLの第1サブセットから放たれた放射線を、放射線が放たれる前記PTOLの像平面に置かれた位置感知検出器で検出することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記PTOLの第1サブセット内の複数の個々のPTOLの場所を、前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記複数の個々のPTOLの前記判定された場所に基づいて前記試料の回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記試料に不活化放射線を供給して、前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを不活化させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記不活化放射線が、前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを光退色させるために十分な励起放射線を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記活性化放射線が活性化波長を有し、かつ前記励起放射線が、前記活性化波長より長い励起波長を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記PTOLが、クラゲのAequorea属から由来するタンパク質の遺伝子組換えによる変異種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
クラゲのAequorea属から由来するタンパク質の遺伝子組換えによる前記変異種がPA-GFPとPS-CFPから成る群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記PTOLが、ディスコソーマ・ストリアータ(Discosoma striata)、トラキフィリア・ジオフロイ(Trachyphyllia geoffroyi)、モンタストレア・カベルノサ(Montastraea cavernosa)、リコルデア・フロリダ(Ricordea florida)、ロボフィリア・ヘムプリチ(Lobophyllia hemprichii)、アネモニア・スルカータ(Anemonia sulcata)、及びファビア・ファブス(Favia favus)から成る群から選択されるいずれかのサンゴに由来するタンパク質の変異種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記サンゴのいずれかに由来するタンパク質の前記変異種が、Kaede、Kikume、EosFP、及びKFPから成る群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記PTOLが、サンゴ礁のウミバラ科に由来するタンパク質の遺伝子組換えによる変異種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
サンゴ礁のウミバラ科から由来するタンパク質の遺伝子組換えによる前記変異種がドロンパを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
試料/基板界面での前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つの全内部反射によって、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記基板が導波路を含み、かつ前記導波路を通じて前記試料/基板の界面に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記撮像用光学素子が対物レンズを含み、かつ前記対物レンズを通して前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを透過させることによって、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記対物レンズの近位後部開口の空間的範囲に比べて小さく、かつ前記対物レンズの遠位端部から出現する前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つが前記試料/基板の界面から全内部反射されるように前記対物レンズの光軸に相対して半径方向の位置に置かれる空間的範囲を有する領域から前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを反射させることによって、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記対物レンズの後部開口の空間的範囲に比べて小さい空間的範囲を有する反射又は吸収領域で、前記試料/基板界面からの反射後に前記対物レンズの近位後部開口から出現する前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを実質的に遮ることをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
光学格子の形態で、前記試料に前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つが基板/試料界面から全内部反射されるような角度で、前記界面の前記基板側から前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを当てることによって前記光学格子を作り出すことをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記試料が複数の格子平面に広がり、かつ異なる格子平面に位置するPTOLから放たれる放射線を選択的に検出することをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
広視野全体にわたって前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを供給することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記試料の中の焦点位置に、前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つを焦点集束させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記試料に前記第1の活性化放射線を供給することが、マルチフォトン吸収過程を通じて前記試料中の前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを活性化させる、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記試料に前記第1の励起放射線を供給することが、マルチフォトン吸収過程を通じて前記試料中の前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを励起させる、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記試料に供給される前記活性化放射線と前記励起放射線のうちの少なくとも1つの偏光を制御することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を検出することが、前記放たれる放射線の前記偏光に基づいて前記放たれる放射線を判別することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
放射線を放つ前記活性化及び励起されたPTOLのうちの少なくとも1つについて双極子の配向を判定することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記PTOLの第1サブセットの中の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を検出することが、前記放たれる放射線の前記偏光に基づいて前記放たれる放射線を判別することを含み、かつ:
前記PTOLの第1サブセット内の複数の個々のPTOLの場所を、前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
放射線を放つ前記複数の活性化及び励起されたPTOLの双極子の配向を判定すること;及び
前記複数の活性化及び励起されたPTOLについて位置及び配向データを記録すること;
をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記複数の活性化及び励起されたPTOLについて位置及び配向データを記録することに基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、より大きい材料のブロックからミクロトームで切り出された薄い切片を含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記切片が透過型電子顕微鏡で撮像されるのに十分に薄い、請求項32記載の方法。
【請求項34】
特定の試料特徴を際立たせるために、前記薄い切片の選択された部分にPTOLが連結される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記試料が透過型電子顕微鏡で撮像されるのに十分に薄い切片を含み、かつ:
前記PTOLの第1サブセット内の複数の個々のPTOLの位置を前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
前記複数の個々のPTOLの前記判定された場所に基づいて前記試料の回折限界よりも精緻な画像を作り出すこと;及び
前記試料の前記回折限界よりも精緻な画像を、透過型電子顕微鏡法によって得られる同じ切片の画像と比較すること;
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記試料の少なくとも一部分を、前記部分が実質的に凍結されるまで冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記部分がガラス状態に凍結されるように前記部分を冷却することをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記第1サブセット内の少なくともいくつかの前記PTOLの量子効率が約2倍以上増加するような十分に低い温度に前記試料の少なくとも一部分を冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
前記試料の少なくとも一部分を、前記PTOLの第1サブセット内の少なくともいくつかの前記PTOLを光退色させる確率を約2倍減少させるのに十分な低い温度に冷却することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項40】
回折限界分解能ボリュームによって特徴付けられる光学系で撮像する方法であって:
試料中に、前記光学系の前記回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度で前記試料の少なくとも一部分に配分された複数の光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含み、前記第1サブセット内のPTOLの前記密度が前記回折限界分解能ボリュームの逆数よりも小さい、前記試料の前記部分内の前記PTOLの第1サブセットを活性化させること;
前記PTOLの第1サブセット内の前記PTOLの一部分を励起させること;
前記PTOLの第1サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を、前記活性化及び励起されたPTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
を含む、前記方法。
【請求項41】
前記PTOLの第1サブセットを活性化することが、前記第1サブセット内の前記PTOLに十分なエネルギーを供給して、前記PTOLを不活性状態から活性状態に変換させることを含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記第1サブセット内の前記PTOLにエネルギーを供給することが、前記試料に活性化放射線を供給することを含み、ここで前記活性化放射線は、前記PTOLを前記不活性状態から前記活性状態に変換するように選択された波長を有する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記PTOLの第1サブセットの一部分を励起することが、前記PTOLを基底状態から励起状態へと励起するために十分なエネルギーを前記第1サブセット内の前記PTOLに供給することを含む、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記PTOLにエネルギーを供給することが前記試料に励起放射線を供給することを含み、ここで前記励起放射線が、前記PTOLを前記基底状態から前記励起状態に変換するように選択された波長を有する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記PTOLの第1サブセット内の前記PTOLの前記判定された場所に基づいて画像を作り出すことをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項46】
前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを不活化すること;
前記試料の前記部分内の前記PTOLの第2サブセットを活性化すること(ここで前記第2サブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さい); 前記PTOLの第2サブセット内の前記PTOLの一部分を励起させること;
前記PTOLの第2サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を前記撮像用光学素子で検出すること;及び
前記PTOLの第2サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を、前記PTOLの第2サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項47】
前記第1及び第2サブセットが、前記試料の前記部分で統計学的にサンプリングされる前記PTOLサブセットである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記試料に十分な励起放射線を供給して、前記第1サブセット内の活性化されたPTOLを光退色させることを含む、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記第1サブセット内の前記PTOLにリセット用放射線を供給することを含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記第1サブセット内の前記PTOLが不活性状態へと減衰する時間経過を可能にすることを含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記PTOLの第1サブセット内のPTOLを不活化することが、前記PTOLの前記第2サブセットを活性化することよりも前に起こる、請求項46記載の方法。
【請求項52】
前記第1サブセット内のPTOLから放たれる放射線の第1の強度信号を検出場所の関数として記録すること;
前記第1サブセット内の前記PTOLの場所を回折限界よりも精緻な精度で判定するために前記第1の強度信号を分析すること;
前記第2サブセット内のPTOLから放たれる放射線の第2の強度信号を検出場所の関数として記録すること;及び
前記第2サブセット内の前記PTOLの場所を回折限界よりも精緻な精度に判定するために前記第2の強度信号を分析すること;
をさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項53】
前記第1及び第2サブセット内のPTOLの前記判定された場所に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項54】
前記PTOLの第2サブセットを活性化することが、前記第2サブセット内の前記PTOLに十分なエネルギーを供給して、前記PTOLを不活性状態から活性状態に変換することを含む、請求項46記載の方法。
【請求項55】
前記PTOLにエネルギーを供給することが、前記試料に活性化放射線を供給することを含み、ここで前記活性化放射線が、前記PTOLを前記不活性状態から前記活性状態に変換させるために選択された波長を有する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記PTOLの前記第2サブセットの一部分を励起することが、前記第2サブセット内の前記PTOLに十分なエネルギーを供給して、前記PTOLを基底状態から励起状態へと励起させることを含む、請求項46記載の方法。
【請求項57】
前記第2サブセット内の前記PTOLにエネルギーを供給することが、前記試料に励起放射線を供給することを含み、ここで前記励起放射線が、前記PTOLを前記基底状態から前記励起状態に変換させるために選択された波長を有する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記試料の前記部分内の前記PTOLのN番目サブセットを活性化する工程であって、前記N番目サブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さい、前記工程;
PTOLの前記N番目サブセット内の前記PTOLの一部分を励起する工程;
PTOLの前記N番目サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を前記撮像用光学素子で検出する工程;
PTOLの前記N番目サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を、PTOLの前記N番目サブセット内の前記活性化及び励起されたPTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度で判定する工程;及び
PTOLの前記N番目サブセット内のPTOLを不活化する工程;
を少なくとも20回繰り返す工程をさらに含み、
前記工程中、Nは1から20に及ぶ整数である、
請求項46記載の方法。
【請求項59】
比較的高い強度領域と比較的低い強度領域を有する空間的に構造化された活性化放射線を光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に供給することで、前記空間的に構造化された活性化放射線の比較的高い強度領域に主に位置する前記試料中の前記PTOLサブセットを活性化すること;
前記試料中の活性化されたPTOLの前記サブセットに空間的に構造化された励起放射線を供給することであって、前記励起放射線の1つ以上の比較的高い強度領域が前記活性化放射線の1つ以上の比較的高い強度領域に少なくとも部分的に重複するように前記励起放射線を構造化すること;
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記試料中のPTOLから放たれる放射線が、前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)に匹敵するか又はそれよりも小さい少なくとも1つのボリュームから実質的に放たれるように前記活性化放射線及び前記励起放射線の強度及び空間的構造を制御すること;
を含む方法。
【請求項60】
前記空間的に構造化された活性化放射線の少なくとも1つの第1最大が前記空間的に構造化された励起放射線の少なくとも1つの第1最大と実質的に一致する第1領域から放たれる放射線を検出することをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記空間的に構造化された活性化放射線の第2最大が前記空間的に構造化された励起放射線の第2最大と実質的に一致する第2の領域から放たれる放射線を検出することをさらに含み、ここで前記第1領域及び前記第2領域から放たれる放射線が別々に検出される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
PTOLの前記サブセット内の活性化されたPTOLを不活化するために前記試料に不活化放射線を供給することをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項63】
前記不活化放射線が、前記活性化されたPTOLを光退色させる励起放射線を含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記不活化放射線が、PTOLを活性状態から、不活性であり活性化可能な状態に変換するための放射線を含み、かつ前記励起波長の波長と異なる波長を有する放射線を含む、請求項62記載の方法。
【請求項65】
前記空間的に構造化された活性化放射線を供給して、前記空間的に構造化された活性化放射線の比較的高い強度領域に主に位置する前記試料中の前記PTOLサブセットを活性化すること;
前記空間的に構造化された励起放射線を前記試料中の活性化されたPTOLの前記サブセットに供給することであって、ここで前記励起放射線の1つ以上の比較的高い強度領域が前記活性化放射線の1つ以上の比較的高い強度領域に少なくとも部分的に重複するように、前記励起放射線が構造化されること;
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
重複する前記励起放射線の前記1つ以上の比較的高い強度領域及び前記活性化放射線の前記1つ以上の比較的高い強度領域を前記試料の中の新たな場所に再配置すること;
をさらに繰り返し含む、請求項62記載の方法。
【請求項66】
重複の領域が複数の新たな位置にあるときに検出された前記放射線に基づいて画像を作り出すことをさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記画像が回折限界よりも精緻な分解能を有する、請求項66記載の方法。
【請求項68】
比較的高い強度の活性化放射線及び比較的高い励起放射線の重複領域のうちの少なくとも1つにある活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が、前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)に匹敵するか又はそれよりも小さくなるように、前記活性化放射線及び前記励起放射線の強度と空間的構造を制御することをさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項69】
2つ以上の活性化及び励起されたPTOLが、1つのDLRVの中に置かれる確率が約0.1未満である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
複数の活性化及び励起されたPTOLの場所を、前記検出された放たれた放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度に判定することをさらに含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
前記複数の活性化及び励起されたPTOLの前記判定された場所に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記複数の活性化及び励起されたPTOLの前記判定された場所及び前記検出された強度に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項70記載の方法。
【請求項73】
前記空間的に構造化された活性化放射線が、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項69記載の方法。
【請求項74】
前記空間的に構造化された励起放射線が、基板/試料界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項69記載の方法。
【請求項75】
前記光学格子の多数の平面内に位置するPTOLから放たれる放射線を検出すること;及び
前記多数の画像平面内に位置するPTOLから放たれた前記検出されたデータに基づいて3D画像を作り出すこと;
をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項76】
活性化及び励起されたPTOLから放たれた放射線を、前記放たれた放射線の検出の前に、少なくとも1つで空間的にフィルタ処理することをさらに含む、請求項69記載の方法。
【請求項77】
光変換可能な光学標識(「PTOL」)を含む試料に活性化放射線を供給することで前記試料中の前記PTOLの第1サブセットを活性化すること;
活性化されたPTOLを不活性状態に変換するために前記試料に不活化放射線を供給することであって、ここで前記不活化放射線が強度最小部を含む空間的に構造化された放射線のフィールドを有し、それにより、リセット用放射線の前記最小部に実質的に位置するPTOLの第2サブセットが活性化されて保たれると同時に、前記最小部の外側でリセット用放射線に曝される活性化PTOLが不活性形態に実質的に変換されること;
前記試料中の前記活性化されたPTOLの少なくとも一部分を励起するために前記試料に励起放射線を供給すること;
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出すること;及び
前記第1サブセット内の活性化されたPTOL当たりの平均ボリュームが前記撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)にほぼ等しいか又はそれを上回るように、前記第1活性化放射線の強度を制御し、且つ前記不活化放射線の強度と空間的構造のうちの少なくとも1つを制御すること;
を含む方法。
【請求項78】
前記試料中の2つ以上の回折限界よりも精緻な領域から放たれる放射線を別々に検出することをさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記空間的に構造化された不活化放射線のフィールドの前記強度最小部にある活性化されたPTOLを不活性状態に変換することをさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項80】
前記活性化されたPTOLが、前記強度最小部にある前記活性化されたPTOLを光退色させるのに十分な励起放射線を前記試料に供給することによって不活性状態に変換される、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記活性化されたPTOLが、不活化放射線を前記PTOLに供給することによって不活性状態に変換される、請求項79記載の方法。
【請求項82】
前記活性化されたPTOLが、前記PTOLが不活性状態へと減衰する時間経過を可能にするによって前記不活性状態に変換される、請求項79記載の方法。
【請求項83】
活性化放射線を前記試料に供給して、前記試料中の前記PTOLの前記第1サブセットを活性化する工程;
活性化されたPTOLを不活性状態に変換するために前記試料に空間的に構造化された不活化放射線のフィールドを供給する工程であって、それにより、前記不活化放射線の前記最小部に実質的に位置するPTOLの第2サブセットが活性化されて保たれるのと同時に前記最小部の外側で前記不活化放射線に曝される活性化PTOLが不活性形態に実質的に変換される、前記工程;
前記活性化されたPTOLの少なくとも一部分を励起するために前記試料に励起放射線を供給する工程;及び
前記活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を撮像用光学素子で検出する工程;
を繰り返す工程をさらに含み、
前記工程中、前記不活化放射線フィールドの前記最小部は前記工程の異なる繰り返しの間、前記試料中の異なる位置にある、請求項77記載の方法。
【請求項84】
前記試料の中の複数の場所から検出される前記放たれた放射線に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
残りの活性化及び励起の少なくとも1つの領域内で活性化及び励起されるPTOLの平均ボリュームが撮像用光学素子の回折限界分解能ボリューム(「DLRV」)に匹敵するか又はそれよりも小さい、請求項83記載の方法。
【請求項86】
2つ以上の活性化及び励起されたPTOLが1つのDLRVの中に置かれる確率が約0.1未満である、請求項83記載の方法。
【請求項87】
個々のPTOLの場所を、前記PTOLから放たれた前記検出された放射線に基づいて回折限界よりも精緻な精度に判定することをさらに含む、請求項83記載の方法。
【請求項88】
場所特定されたPTOLの複数の領域の前記判定された場所に基づいて回折限界分解能よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
場所特定されたPTOLの複数の領域の前記判定された場所に基づいて、及び前記複数の活性化及び励起されたPTOLの前記検出された強度に基づいて、回折限界分解能よりも精緻な画像を作り出すことをさらに含む、請求項87記載の方法。
【請求項90】
前記活性化放射線が周期的構造を有し、かつ前記不活化放射線のフィールドが前記活性化のフィールドと周期的に重複する強度最小部を含む、請求項77記載の方法。
【請求項91】
前記励起放射線が、前記不活化放射線のフィールドの前記強度最小部と釣り合いのとれた空間的構造を有する、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記活性化放射線が、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項77記載の方法。
【請求項93】
前記空間的に構造化された不活化放射線のフィールドが、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項77記載の方法。
【請求項94】
前記励起放射線が、前記試料と基板との間の界面で全内部反射される光学格子を含む、請求項77記載の方法。
【請求項95】
活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線を、前記活性化放射線の空間的構造、前記不活化放射線のフィールド、及び励起放射線のフィールドを規定するために顕微鏡の焦点を使用する共焦点顕微鏡又は4π顕微鏡で集めることをさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項96】
放射線の強度を検出器の位置の関数として検出するために適合化された位置感知検出器;
回折限界分解能ボリュームによって特徴付けられ、試料中の複数の活性化及び励起された光変換可能な光学標識(「PTOL」)から放たれる光を前記位置感知検出器上に画像化するために適合化された光学系であって、前記PTOLが前記光学系の前記回折限界分解能ボリュームの逆数よりも大きい密度で前記試料の少なくとも一部分に配分される、前記光学系;
前記試料の前記部分内の前記PTOLの第1サブセットを活性化するために第1の活性化放射線を前記試料に供給するために適合化された第1光源;
前記PTOLの前記第1サブセット内の前記PTOLの一部分を励起するために第1の励起放射線を前記試料に供給するために適合化された第2光源;及び
活性化された前記PTOLの第1サブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さくなるように前記試料に、供給される活性化放射線を制御するために適合化された制御器;
を含む装置。
【請求項97】
前記検出器によって供給される前記PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線についての位置依存性強度データを処理して、前記PTOLの第1サブセット内の活性化及び励起されたPTOLの場所を回折限界よりも精緻な精度で判定するためのプロセッサをさらに含む、請求項96記載の装置。
【請求項98】
前記PTOLの第1サブセット内のPTOLについて回折限界よりも精緻な位置情報を保存するように適合化されたメモリをさらに含む、請求項97記載の装置。
【請求項99】
前記PTOLの第1サブセット内の前記PTOLについての前記回折限界よりも精緻な位置情報に基づいて回折限界よりも精緻な画像を作り出すように適合化されたプロセッサをさらに含む、請求項98記載の装置。
【請求項100】
前記制御器が、前記第1サブセット内のPTOLが前記励起放射線による光退色を通じて不活化されるように前記試料に供給される前記励起放射線を制御するようにさらに適合化されている、請求項96記載の装置。
【請求項101】
前記制御器が、前記試料に供給される前記活性化放射線及び前記励起放射線を制御するようにさらに適合化されており、
活性化されるPTOLの最初サブセット内のPTOLの密度が、前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さくなるように活性化放射線の最初のパルスが前記試料に供給され、
前記最初サブセット内の活性化されたPTOLを励起するように励起放射線が前記試料に供給され、
PTOLの前記最初サブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれた放射線が前記検出器によって検出され、かつ
前記最初サブセット内のPTOLが不活化された後に、次の活性化放射線のパルスが、次の活性化PTOLサブセット内のPTOLの密度が前記回折限界分解能ボリュームの前記逆数よりも小さくなるように前記試料に供給され、
前記次のサブセット内の活性化されたPTOLを励起するために励起放射線が前記試料に供給され、
PTOLの前記次のサブセット内の活性化及び励起されたPTOLから放たれる放射線が前記検出器によって検出される、
請求項96記載の装置。
【請求項102】
前記試料の前記部分内のPTOLの第2サブセットを活性化するために第2の活性化放射線を前記試料に供給するように適合化された第3光源をさらに含み、ここで前記第2の活性化放射線が前記第1の活性化放射線の波長と異なる波長を有し、かつ前記第1及び第2サブセット内のPTOLが異なる種のPTOLであり、且つ異なる波長を有する放射線を放つ、請求項96記載の装置。
【請求項103】
前記検出器が、前記異なる種のPTOLから放たれる放射線を別々に検出するように適合化されている、請求項102記載の装置。
【請求項104】
前記試料と前記検出器との間に放たれる放射線の特定の波長を選別するためのフィルタをさらに含む、請求項96記載の装置。
【請求項105】
撮像用システムが対物レンズを含み、かつここで前記第1の活性化放射線が前記対物レンズを通じて前記試料に供給される、請求項96記載の装置。
【請求項106】
前記試料が第1の種及び第2の種のPTOLを含み;
前記第1及び第2の種の発光特性、並びに前記第1及び第2の種の励起特性のうちの少なくとも1つに基づいて前記第2の種から前記第1の種を区別すること;及び
前記第1及び第2の種に関して、前記第1の活性化されたサブセット内の活性化されたPTOLの場所を互いに相対して回折限界よりも精緻な精度で判定すること;
をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項107】
前記試料が第1の種及び第2の種のPTOLを含み、さらに、
前記第1及び第2の種の発光特性並びに前記第1及び第2の種の励起特性のうちの少なくとも1つに基づいて前記第2の種から前記第1の種を区別することであって、
前記試料中の各々の種のPTOLの密度が前記撮像用光学素子のDLRVの前記逆数よりも大きく、かつ
この種の活性化された前記PTOLの第1サブセット内の密度が前記回折限界分解能ボリュームよりも小さい、
請求項1記載の方法。
【請求項108】
前記試料がPTOLを埋め込んだレジストを含み、ここで前記埋め込まれたPTOLが空間的に構造化されたビームへの曝露の対象となっており、それにより、前記PTOL特性が測定できる程度にそのような曝露によって変えられる、請求項1記載の方法。
【請求項109】
前記検出されたPTOLの前記判定された場所から前記レジスト用の曝露プロファイルを作り出すことをさらに含む、請求項108記載の方法。
【請求項110】
前記試料がPTOLを埋め込んだレジストを含み、ここで前記埋め込まれたPTOLが空間的に構造化されたビームへの曝露の対象となっており、それにより、前記PTOL特性が測定できる程度にそのような曝露によって変えられ、かつ前記検出されたPTOLの前記判定された場所から前記レジスト用の曝露プロファイルを作り出すことをさらに含む、請求項46記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b−c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b−c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−39065(P2011−39065A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189163(P2010−189163)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2008−513618(P2008−513618)の分割
【原出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(507387251)
【出願人】(507387147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2008−513618(P2008−513618)の分割
【原出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(507387251)
【出願人】(507387147)
【Fターム(参考)】
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