説明

光学シート、光学シートロール、光学シートの製造方法、及び映像表示装置

【課題】光吸収部を構成する材料を一定供給しながら光吸収部を形成可能な構成の光学シート、該光学シートをロール状に巻回してなる光学シートロール、該光学シートの製造方法、及び映像表示装置を提供する。
【解決手段】一方の面側から入射した光を制御して他方の面側に出射する、複数の層を有する光学シートであって、基材層、及び、該基材層の一方の面側に形成された光学機能シート層を備えており、光学機能シート層が、光を透過可能に形成された光透過部と、光を吸収可能に形成された光吸収部とを有し、光透過部がシート面に沿って所定の間隔で並列され、光吸収部が光透過部間の溝に形成されており、光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に光吸収部が形成されていない光透過部間の溝を有することを特徴とする光学シート、該光学シートをロール状に巻回してなる光学シートロール、該光学シートの製造方法、及び映像表示装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、光学シートロール、光学シートの製造方法、及び映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像を観察者に出射する映像表示装置には、映像源と、該映像源からの映像光の質を高めて観察者に出射するための各種機能を有する層を具備する光学シートとが備えられている。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネルは、観察者側が明るい場合はコントラストが不十分となり画像品質が低下する。よって、コントラストを向上させるための層として、光を透過可能な光透過部と光を吸収可能な光吸収部とを有し、外光を適切に遮蔽する光学機能シート層が設けられることがある。また、液晶パネルにも、視野角の拡大などを目的として、光を透過可能な光透過部と光を吸収可能な光吸収部とを有する光学機能シート層が設けられることがある。
【0004】
上記光学機能シート層は、特許文献1に開示されているように、基材層上に形成される。該基材層の光学機能シート層が備えられていない側には粘着剤層が形成されており、他の層と積層することができる。また、特許文献2には、このような粘着剤層の設け方に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−80153号公報
【特許文献2】特許第4208187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、光学機能シート層は、基材層上に形成される。基材層上に光学機能シート層を形成するには、まず基材層上に光透過部を形成し、その後、光透過部間に光吸収部を形成する。光吸収部を形成するとき、光吸収部を構成する材料を光透過部上に供給し、ドクターブレードなどで該材料を光透過部間の溝に供給しつつ、該材料の余剰分を掻き落とす工程が含まれる。従来の構成の光学機能シート層では、上記のようにして光吸収部を形成する際に、光透過部上に供給された材料が幅方向に均一に広がり難いという問題や、該材料が基材層の端部から流れ落ちるなどの問題があった。
【0007】
そこで本発明は、光吸収部を構成する材料を一定量で供給しながら光吸収部を形成可能な構成の光学シートを提供することを課題とする。また、該光学シートをロール状に巻回してなる光学シートロール、該光学シートの製造方法、及び該光学シートを備える映像表示装置を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
請求項1に記載の発明は、一方の面側から入射した光を制御して他方の面側に出射する、複数の層を有する光学シート(10)であって、基材層(11)、及び、該基材層の一方の面側に形成された光学機能シート層(12)を備えており、該光学機能シート層が、光を透過可能に形成された光透過部(13)と、光を吸収可能に形成された光吸収部(14)とを有し、光透過部がシート面に沿って所定の間隔で並列され、光吸収部が光透過部間の溝に形成されており、光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に光吸収部が形成されていない光透過部間の溝(14’)を有することを特徴とする光学シートにより前記課題を解決する。
【0010】
本発明において「光学シートの長手方向」とは、光学シートを生産するときに、製造ラインの流れ方向と同じになる方向を意味する。また、「幅方向」とは、シート面において長手方向に直交する方向を意味する。さらに、「光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に光吸収部が形成されていない光透過部間の溝を有する」とは、光学機能シート層が有する光透過部間の溝のうち、光吸収部が形成されていない部分が存在することを意味する。光学機能シート層は、光透過部間の溝のうち光吸収部が形成されていない部分も含む。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学シート(10)において、基材層(11)の光学機能シート層(12)が備えられる側とは反対側に粘着剤層(21)が備えられ、光学シートの長手方向に直交する断面において、粘着剤層の幅方向の端が、基材層の幅方向の端より内側にあることを特徴とする。かかる形態とすることによって、後に詳述するように、光学シートの加工時や輸送時などに粘着剤層を構成する粘着剤が光学シートの端部からはみ出すことを防止できる。
【0012】
本発明において「幅方向の端より内側」とは、光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の一方の端に接するとともに光学シートのシート面に垂直な線と、幅方向の他方の端に接するとともに光学シートのシート面に垂直な線との間を意味する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学シート(10)において、該光学シートの長手方向に直交する断面において、光学機能シート層(12)の幅方向の端が、粘着剤層の幅方向の端より内側にあることを特徴とする。かかる形態とすることによって、後に詳述するように、光学機能シート層(光透過部)を形成するときに、基材層にヨレやシワが生じることを防止するとともに、そのヨレやシワによってニップロールや型ロールが傷むことを防止できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の光学シート(10)において、光学機能シート層(12)の基材層(11)が備えられる側とは反対側に保護フィルム層(20)が備えられ、光学シートの長手方向に直交する断面において、保護フィルム層の幅方向の端が、光吸収部が形成されている部分の幅方向の端に対して同一、または内側にあることを特徴とする。かかる形態とすることによって、後に詳述するように、保護フィルムの無駄な使用を減らすことができる。
【0015】
なお、本発明において、「光吸収部が形成されている部分」とは、複数形成されている光吸収部のうち、幅方向において最も端にある光吸収部同士の間の部分を意味する。また、「保護フィルム層の幅方向の端が、光吸収部が形成されている部分の幅方向の端に対して同一」とは、光学シートの長手方向に直交する断面において、保護フィルム層の幅方向の端に接するとともに光学シートのシート面に垂直な線と、光吸収部が形成されている部分の幅方向の端に接するとともに光学シートのシート面に垂直な線とが重なることを意味する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の光学シート(10)をロール状に巻回してなる光学シートロールにより前記課題を解決する。光学シートをロール状に巻回して光学シートロールとすることにより、光学シートの使用時に、他の層と積層することや適当な大きさに切り出すことが容易になる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、基材層(11)、及び、該基材層の一方の面側に形成された光学機能シート層(12)を備え、光学機能シート層が、光を透過可能に形成された光透過部(13)と、光を吸収可能に形成された光吸収部(14)とを有する光学シートの製造方法であって、基材層上に、シート面に沿って所定の間隔で並列して光透過部を形成する光透過部形成工程と、光透過部間の溝に光吸収部を形成する光吸収部形成工程と、を備え、光吸収部形成工程が、光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に光吸収部が形成されない光透過部間の溝を残すようにして光吸収部を形成する工程である、光学シートの製造方法により前記課題を解決する。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光学シート(10)の製造方法において、光吸収部形成工程より前に、基材層(11)の光学機能シート層(12)が形成される側とは反対側の面に粘着剤層(21)を形成する、粘着剤層形成工程を備えており、粘着剤層形成工程が、光学シートの長手方向に直交する断面において、粘着剤層の幅方向の端が、基材層の幅方向の端より内側になるように粘着剤層を形成する工程であることを特徴とする。かかる形態とすることによって、加工時や輸送時などに粘着剤層を構成する粘着剤が光学シートの端からはみ出すことを防止できる光学シートを得られる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光学シート(10)の製造方法において、光透過部形成工程が、光学シートの長手方向に直交する断面において、粘着剤層(21)の幅方向の端より内側に光透過部(13)を形成する工程であることを特徴とする。かかる形態とすることによって、光透過部を形成するときに、基材層にヨレやシワが生じることを防止するとともに、そのヨレやシワによってニップロールや型ロールが傷むことを防止できる光学シートを得られる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれかに記載の光学シート(10)の製造方法において、光学機能シート層(12)の基材層(11)が備えられる側とは反対側に保護フィルム層(20)を形成する保護フィルム層形成工程を備え、保護フィルム層形成工程が、光学シートの長手方向に直交する断面において、保護フィルム層の幅方向の端が、光吸収部が形成されている部分の幅方向の端に対して同一、または内側になるように保護フィルム層を形成する工程であることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の光学シートを適切な大きさに切断したシートと映像源とを備えた、映像表示装置により前記課題を解決する。ここで「適切な大きさに切断」とは、映像源の大きさに合う適切な大きさに切断することを意味する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光吸収部が形成される部分を限定することによって、光吸収部を構成する材料を一定量で供給しながら光吸収部を形成可能な構成の光学シートを提供することができる。また、該光学シートをロール状に巻回してなる光学シートロール、該光学シートの製造方法、及び該光学シートを備える映像表示装置を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】1つの実施形態にかかる本発明の光学シートの端部の断面を概略的に示した図である。
【図2】図1に示した光学機能シート層の一部を拡大して示した図である。
【図3】光透過部の形成方法の一例を説明する図である。
【図4】光透過部の形成方法の他の例を説明する図である。
【図5】光吸収部の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<光学シート>
図1は1つの実施形態にかかる本発明の光学シート10の端部の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図1において、紙面奥/手前方向が、光学シート10の長手方向である。なお、図1は、光学シート10の幅方向の一方の端部に着目して示しているが、光学シート10は、幅方向の他方の端部についても同様の形状を有している。
【0026】
光学シート10は、ここに入射した映像源側からの光を観察者にとって適切な映像光として透過させ、出射させるシート状の部材である。光学シート10は、基材層11、光学機能シート層12、保護フィルム層20、粘着剤層21、及び離型シート層22を備えている。以下に各層について説明する。
【0027】
(基材層11)
基材層11は、後で詳しく説明する光学機能シート層12を形成するための基材層としての層で、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とすることができる。基材層11がPETを主成分とする場合、他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
【0028】
基材層11の主成分は、必ずしもPETであることは必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
本実施形態では、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からPETを主成分とする樹脂を好ましい材料であるとして説明した。
【0029】
(光学機能シート層12)
光学機能シート層12は、映像光源側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学機能シート層12は、図1に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備える。すなわち、図1に表れる断面において断面が略台形である光透過部13、13、…と、該光透過部13、13、…の間に配置される光吸収部14、14、…とを備えている。図2に、図1に示した光学シート10のうち、光学機能シート層12の1つの光吸収部14とこれに隣接する光透過部13、13を拡大して示した。図1、図2及び適宜示す図を参照しつつ光学機能シート層12についてさらに説明する。
【0030】
光透過部13、13、…は、光透過部として機能する部位で、略台形断面における短い上底及び長い下底が光学シート10のシート面に沿う方向に配置されている。そして、略台形断面における長い下底が基材層11側に面する向きである。また、光透過部13、13、…は、屈折率がNpであり、光透過性を有する。このような光透過部13、13、…は、以下に説明する光透過部構成組成物を硬化させることによって構成することができる。なお、屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0031】
光透過部構成組成物は、光硬化型樹脂と光重合開始剤とを含んでいる。このような光透過部構成組成物としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0032】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0033】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0034】
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち光透過部13、13、…の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
【0035】
なお、上記光重合開始剤(S1)は、光透過部構成組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下含まれていることが好ましい。
【0036】
また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型からの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。
【0037】
光透過部13、13、…は、上記光透過部構成組成物を用いて、以下に説明するようにして形成する。まず、所定のピッチで所定の開口幅及び所定の深さを有する溝を形成し得る型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に基材層11となるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、光透過部構成組成物を型ロールと基材層11との間に供給装置から供給する。その後、基材層11上に供給された光透過部構成組成物が型ロールの溝に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光透過部構成組成物を押圧する。このとき、型ロールの溝の深さより厚くなるように光透過部構成組成物を基材層11上供給しておくことによって、後に光透過部13、13、…となる部分が連通して形成される。すなわち、図1に示すように、後に光吸収部14、14、…となる溝(型ロールの溝間の凸部に対応する部分)の下(基材層11側)には光透過部構成組成物によって所定の厚さの連通部13zが形成され、該連通部13zによって、光透過部13、13は連通する。上記のようにして基材層11と型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した後、光を照射して該光透過部構成組成物を硬化させることによって光透過部13、13、…を形成することができる。
【0038】
なお、光透過部13、13、…は、基材層11の長手方向に対して平行に形成されても良く、基材層11の長手方向に対して所定の角度を持って形成されても良い。図3は、基材層11の長手方向に対して平行に光透過部13x、13x、…が形成される場合を示している。図4は、基材層11の長手方向に対して所定の角度θを持って光透過部13y、13y、…が形成される場合を示している。図3及び図4を参照しつつ、光透過部13、13、…の形成方法を説明する。
【0039】
まず、図3を参照しつつ、基材層11の長手方向に対して平行に光透過部13x、13x、…が形成される場合について説明する。図3に示した型ロール50は、形成したい光透過部13x、13x、…と同形状の凹部51、51、…が円周方向対して平行に外周面に形成されている。型ロール50を用いて光透過部13x、13x、…を形成する場合、型ロール50と矢印IIIの方向に供給される基材層11との間に、光透過部13x、13x、…を構成する樹脂を供給しつつ、該基材層11上で型ロール50を回転させ、該樹脂を硬化させる。そうすることによって、該基材層11上に、凹部51、51、…の形状に対応した形の光透過部13x、13x、…、及び凹部51、51、…の間に形成されている凹部52、52、…の形状に対応した形の溝14x、14x、…を有する帯状のシートを得ることができる。このとき、凹部51、51、…及び凸部52、52、…は、型ロール50の円周方向に対して平行に外周面に形成されているため、光透過部13x、13x、…、及び溝14x、14x、…は、基材11の長手方向に対して平行に形成される。
【0040】
次に、図4を参照しつつ、基材層11の長手方向に対して所定の角度θを持って光透過部13y、13y、…が形成される場合について説明する。図4に示した型ロール60は、形成したい光透過部13y、13y、…と同形状の凹部61、61、…が円周方向対して所定の角度θを持って傾いて外周面に形成されている。型ロール60を用いて光透過部13y、13y、…を形成する場合、型ロール60と矢印IVの方向に供給される基材層11との間に、光透過部13y、13y、…を構成する樹脂を供給しつつ、該基材層11上で型ロール60を回転させ、該樹脂を硬化させる。そうすることによって、該基材層11上に、凹部61、61、…の形状に対応した形の光透過部13y、13y、…、及び凹部61、61、…の間に形成されている凹部62、62、…の形状に対応した形の溝14y、14y、…を有する帯状のシートを得ることができる。このとき、凹部61、61、…及び凸部62、62、…は、型ロール60の円周方向に対して所定の角度θを持って傾いて外周面に形成されているため、光透過部13y、13y、…、及び溝14y、14y、…は、基材11の長手方向に対して所定の角度θを持って傾いて形成される。
【0041】
上記のようにして光透過部13、13、…を形成する際、光学シート10の長手方向に直交する断面において、光透過部13、13、…が形成される部分の幅方向の端が、後に詳述する粘着剤層21の幅方向の端より内側にあることが好ましい。すなわち、図1に示した距離D3が所定の長さを有していることが好ましい。D3の長さはとくに限定されないが、5mm以上、500mm以下であることが好ましく、5mm以上、100mm以下であることがより好ましい。
【0042】
光透過部13、13、…が形成される部分の幅方向の端が粘着剤層21の幅方向の端より外側にある場合、光透過部構成組成物が型ロールとニップロールの接触で加圧されるときに光透過部13、13、…となる光透過部構成組成物の厚みにより生じる段差によって、基材層11がヨレたり、基材層11にシワが入ったりして外観上問題になる。また、そのヨレ(シワ)が発生した状態で押圧された場合、シワ混入部が局所的に強く押圧されて、ニップロールが凹んだり、型ロールに傷が発生したりする問題が生じる。光透過部13、13、…が形成される部分の幅方向の端が、粘着剤層21の幅方向の端より内側になるように光透過部13、13、…を形成することによって、粘着剤層21が緩衝材として機能し、基材層11にヨレやシワが生じることを防止するとともに、ニップロールや型ロールが痛むことを防止できる。
【0043】
次に、光吸収部14、14、…について説明する。光吸収部14、14、…は、光透過部13、13、…の間に配置され、図1、図2に表れる断面において略三角形断面を有する要素である。当該三角形断面の底辺に相当する面が光透過部13、13、…の上底間に並列されている。これにより光吸収部14、14、…の底辺、及び光透過部13、13、…の上底により光学機能シート層12の一方の面が形成されている。ここで、このとき当該三角形断面における斜辺は、光学機能シート層12のシート面の法線方向に対して0度以上10度以下の角度をなしていることが好ましい。なお、斜辺の角度が0度に近い場合は、実質三角形ではなく、矩形となる。
【0044】
なお、光吸収部の断面形状は三角形に限定されない。また、光吸収部の上記斜辺の傾きは必ずしも一定である必要はなく折れ線状であってもよいし、曲線状であってもよい。図5に光学機能シート層の変形例である光学機能シート層12a、12b、12cのうち、光吸収部14a、14b、14cの断面を示した。図5において、(a)は光吸収部の断面形状が略台形の例、(b)は光吸収部の上記斜辺が折れ線状とされた例、(c)は光吸収部の上記斜辺が曲線状とされた例である。
【0045】
図5(a)に示した場合には、光吸収部14aの断面形状が略台形となっている。詳しくは、光吸収部14aの断面形状が平行な上底及び下底と、上底及び下底を結ぶ2つの斜辺とを有する略等脚台形である。当該斜辺は光学シート10のシート出光面の法線に対して角度θ1をなしている。θ1は0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。
【0046】
図5(b)に示した場合には、光吸収部14bの斜辺(光透過部13b、13bの斜辺)は、1つの辺からではなく、2つの辺から構成されている。すなわち断面において折れ線状の斜辺を有している。詳しくは、底辺側の斜辺は光学機能シート層12bのシート面の法線方向に対して角度θ2をなしている。一方、頂点側(基材層11側に配置される斜辺は光学機能シート層12bのシート面の法線方向に対して角度θ3をなしている。この角度は、θ2>θ3の関係であるとともに、いずれも0度以上10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。また、当該2つの斜辺は、図5(b)に示したように、光学機能シート層12bの厚さ方向(紙面上下方向)には、それぞれT1とT2の大きさを有している。T1とT2とは同じ大きさであることが好ましい。
また、図5(b)の例は2つの斜辺により構成されている例であるが、さらに多くの辺で折れ線状が構成されてもよい。
【0047】
図5(c)に示した場合には、光吸収部14cの斜面(光透過部13c、13c、…の斜辺)は曲線状で構成されている。このように光吸収部における断面形状略三角形である斜辺が曲線状であってよい。この場合でも、当該曲線と光学機能シート層12bのシート面の法線方向とのなす角は、光吸収部の底辺側より基材層11側の方が小さいことが好ましい。さらにその角度もいずれの部分でも0度より大きく10度以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましい角度は0度より大きく6度以下である。ここで、曲線のある部分が光学機能シート層12bのシート面の法線方向との成す角は、曲線を10等分し、各端部同士を結ぶ線と、光学機能シート層12bのシート面の法線方向との成す角により定義される。
【0048】
その他、光吸収部の形状は本実施形態のものに限定されるものではなく、外光を適切に吸収することが可能であれば適宜変更することが可能である。
【0049】
また、光吸収部14、14、…は、光透過部13、13、…の屈折率Npと同じ、又は小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成されている。このように光透過部13、13…の屈折率Npと光吸収部14、14、…の屈折率NbとをNp≧Nbとすることにより、所定の条件で光透過部13、13、…に入射した光源からの映像光を光吸収部14、14、…と光透過部13、13、…との界面で適切に反射させるとともに吸収することができる。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0以上0.06以下であることが好ましい。
また、本実施形態では上記のようにNp≧Nbの関係が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、光透過部の屈折率を光吸収部の屈折率よりも小さく形成することも可能である。
【0050】
加えて、本実施形態における光吸収部14、14、…は、光吸収粒子16、16、…とバインダー15とを含む光吸収部構成組成物が当該光吸収部14、14、…に充填されることにより構成されている。すなわち、バインダー(バインダー部)15の中に光吸収粒子16、16、…が分散されている。これにより、光吸収部14、14、…において、光透過部13、13、…と、光吸収部14、14、…との界面で反射せずに光吸収部14、14、…の内側に入射した映像光を光吸収粒子16、16、…で吸収することができる。さらには所定の角度で入射した観察者側からの外光を適切に吸収することができ、コントラストを向上させることも可能となる。
このときバインダー部15のバインダーが上記の屈折率Nbである材料により構成される。当該バインダーとして用いられるものは特に限定されないが、例えば、光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0051】
上記光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0052】
また、上記反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0053】
また、上記光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。本発明において光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S2)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上10.0質量%以下含まれていることが好ましい。
【0054】
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)は、それぞれ、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマーおよび反応性希釈モノマー)を、屈折率、粘度、あるいは光学機能シート層12の性能への影響等を考慮し、任意に配合して用いることができる。
【0056】
なお、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤および溶剤等を光硬化型樹脂組成物に添加してもよい。
【0057】
光吸収粒子16、16、…は、光吸収部構成組成物中に含まれ、光吸収部14、14、…を構成したとき、迷光や外光を吸収するように作用する。
【0058】
光吸収粒子16、16、…としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられ、より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光硬化型樹脂組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。平均粒子径は1.0μm以上20μm以下の着色粒子が用いられる。平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、以下に説明するようにして光吸収部14、14、…を形成する際に、着色粒子がドクターブレードによって掻き落とされずに、光透過部の上底部分の上に残留することを防止できる。
【0059】
なお、光を吸収させるための手段は本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、顔料や染料により光吸収部全体を着色することを挙げることができる。
【0060】
光吸収部14、14、…は、上記光吸収部構成組成物を用いて、以下に説明するようにして形成する。まず、上記のようにして形成された光透過部13、13、…上にバンクが形成されるようにして光吸収部構成組成物を供給する。その後、ドクターブレードによって光吸収部構成組成物を光透過部13、13、…間の溝に充填しつつ、余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とし、光透過部13、13、…間の溝に残った光吸収部構成組成物に光を照射して硬化させることにより、光吸収部14、14、…を形成することができる。
【0061】
このようにして光吸収部14、14、…を形成する際、光学シート10の長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に光吸収部光吸収部14、14、…が形成されない光透過部13、13、…間の溝14’を残すようにして、光吸収部構成組成物を供給する。すなわち、図1に示した距離D2が所定の長さを有するようにして、光吸収部14、14、…を形成する。D2の長さはとくに限定されないが、5mm以上、200mm以下であることが好ましい。
【0062】
上記のように光吸収部14、14、…が形成される部分を限定して光吸収部14、14、…を形成する方法の具体例としては、光透過部13、13、…上に供給された光吸収部構成組成物が所定の位置よりも幅方向に広がらないように堰を設けて光吸収部構成組成物を供給し、該堰を設けた状態で光吸収部構成組成物をドクターブレードで掻き落とす方法が考えられる。
【0063】
光吸収部構成組成物が供給される部分の幅が、光透過部13、13、…が形成されている部分の幅より広い場合、光吸収部構成組成物の一部(光吸収部構成組成物バンクの端部)が、直接基材層11と接触することになり、光吸収部構成組成物が幅方向に広がり易くなり、基材層11の端から漏れたりする不具合が生じる。上記のように、光吸収部構成組成物が所定の位置よりも幅方向に広がらないように、光吸収部構成組成物を光透過部13、13、…上に供給することによって、光透過部13、13、…間の溝に光吸収部構成組成物が充填されていく為、光吸収部構成組成物が急激に広がることはなく、光吸収部構成組成物を一定供給することで安定してバンクを形成しながら光吸収部14、14、…を形成することができる。
【0064】
(粘着剤層21)
次に、図1に戻って粘着剤層21について説明する。粘着剤層21は、粘着剤が配置される層である。該粘着剤としては、公知のもの用いることができる。本発明に用いることができる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤を挙げることができる。ただし、必要な光透過性、粘着性、耐候性を得ることができれば粘着剤はこれに限定されるものではない。また、粘着剤にはUV吸収剤、近赤外線吸収剤、ネオン線吸収剤、および調色色素などを含める場合もある。
【0065】
粘着剤層21は、光学機能シート層12よりも先に、基材層11の一方の面側に形成される。粘着剤層21の形成方法は特に限定されず、例えば、上記粘着剤を基材層11の一方の面側に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。
【0066】
光学シート10の長手方向に直交する断面において、粘着剤層21の幅方向の端が基材層11の幅方向の端と同一、または外側にあれば、光学シート10の加工時や輸送時などに何らかの物体(例えば、ガイドロールや梱包部材など。)に光学シート10が触れることによって、粘着剤層21を構成する粘着剤が光学シート10の端からはみ出し、製造ラインを汚染したり、製品の糊欠け(粘着剤のはみ出し)が生じたりする虞がある。よって、光学シート10の長手方向に直交する断面において、粘着剤層21の幅方向の端が、基材層11の幅方向の端より内側にあることが好ましい。すなわち、図1に示した距離D5が所定の長さを有していることが好ましい。D5の長さはとくに限定されないが、3mm以上、100mm以下であることが好ましい。
【0067】
(離型フィルム層22)
次に、離型フィルム層22について説明する。離型フィルム層22は、光学シート10の加工時や輸送時などに粘着剤層21に異物が付着することや、粘着剤層21が他のものと接触することを防止するために設けられる層である。離型フィルム層22は、粘着剤層21が形成された後に設けられてもよく、粘着剤層21を構成する粘着剤を基材層11の一方の面側に塗布した後、該粘着剤を乾燥する前に設けてもよい。離型フィルム層22を構成する離型フィルムとしては、公知の離型フィルムを用いることができる。
【0068】
上記の離型フィルム層22を設ける目的を達成する観点から、離型フィルム層22は、粘着剤層21を覆うことができる大きさで備えられることが好ましい。すなわち、図1に示した距離D4が0mm以上であることが好ましく、3mm以上、100mm以下であることがより好ましい。ただし、離型フィルム層22の幅方向の端は、基材層11の幅方向の端より内側にあることが好ましい。すなわち、図1に示した距離D6が0mm以上であることが好ましい。光学シート10を作製した後、該光学シート10を適当な大きさに切断する際に、該光学シート10の幅方向の端の位置を搬送ライン上で正確に認識する必要がある。このとき基材層11の幅方向の端が光学シート10の幅方向の端となっている(基材層11の幅が他の層よりも広くなっている)ことによって、光学シート10の幅方向の端の位置を安定して認識することが容易になる。また、離型フィルム層22には、通常、薄いフィルムを使用するため、離型フィルム層22の幅方向の端が、基材層11の幅方向の端より外側にあると、離型フィルム層22の端が折れ曲がるなどして、光学シート10の幅方向の端の位置を安定して認識することが難しくなる。よって、D6は0mm以上であることが好ましい。
【0069】
(保護フィルム層20)
次に、保護フィルム層20について説明する。保護フィルム層20は、光学シート10の加工時や輸送時などに光学機能シート層12が傷むことを防止するために設けられる層である。保護フィルム層20を構成するフィルムとしては、公知の離型フィルムを用いることができる。
【0070】
光学シート10の長手方向に直交する断面において、保護フィルム層20の幅方向の端は、光吸収部14、14、…が形成されている部分の幅方向の端に対して同一、または内側にあることが好ましい。保護フィルム層20は、光学機能シート層12のうち、映像表示装置などの最終製品に組み込まれる部分の表面を保護できればよいからである。光学シート10から適当な大きさのシートを切り出す際に切り捨てられる部分まで保護フィルム層20で覆えば、保護フィルムを無駄に使用することになる。図1に示した距離D1が0mm以上であることが好ましく、3mm以上、100mm以下であることがより好ましい。
【0071】
(その他の層)
これまでの本発明の説明では、基材層11、光学機能シート層12、保護フィルム層20、粘着剤層21、及び離型フィルム層22を備えた光学シート10について説明したが、本発明の光学シートは、上記基材層及び該基材層上に形成された光学機能シート層を有していればよく、用途に応じてこれまでに説明した層以外の様々な機能を有する層も備えさせることができる。本発明の光学シートに備えられ得るその他の層としては、従来の光学シートに用いられていたものを特に限定することなく用いることができる。具体的には、電磁波シールド層、防眩層、反射防止層、ハードコート層、波長フィルタ層などを、粘着剤層を用いて貼合することで構成することができる。また、粘着剤層を構成する粘着剤にはUV吸収剤、近赤外線吸収剤、ネオン線吸収剤、および調色色素などを含める場合もある。これらの層の積層順、及び積層数は、光学シートの用途に応じて適宜決定される。以下、これらの層の機能などについて説明する。
【0072】
電磁波シールド層は、その名称が示す通り、電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えばエッチング方式、印刷方式、蒸着方式、スパッタ方式で形成されるものを挙げることができ、遮断すべき電磁波により適宜設計される。
【0073】
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。このような防眩層としては市販のものを用いることができる。
【0074】
反射防止層は最も観察者側に配置されて外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が光学シートの観察者側面で反射して観察者側へ戻って、いわゆる映り込みが生じて映像が見え難くなることを抑制することができる。このような反射防止層は、市販の反射防止フィルムを用いる等して構成することが可能である。
【0075】
ハードコート層は、HC層とも呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与することができる機能を有するフィルムが配置された層である。
【0076】
波長フィルタ層は、所定の波長の光の透過を抑制する機能を有する層である。透過を抑制されるべき波長は必要に応じて適宜選択することができるが、波長フィルタ層の具体例としては、ネオン線を吸収したり、赤外線、近赤外線や紫外線を吸収したりする層、色調を調整する層等を挙げることができる。
【0077】
<光学シートロール>
次に、本発明の光学シートロールについて説明する。本発明の光学シートロールは、本発明の光学シートを、長手方向が巻回方向となるようにしてロール状に巻回してなる。なお、光学シートを巻回するとき、光学機能シート層と基材層のどちらが外側になるよう巻回してもよい。ただし、光透過部(光学機能シート層)を外側にして巻回することが好ましい。光透過部の硬化収縮が抑えられる方向に巻回することとなり、光学シートロールから光学シートを切り出して他のシート(層)と積層する際に、該光学シートのカールが抑えられることになるからである。
【0078】
本発明の光学シートロールによれば、光学シートの使用時に、他の層と積層することや適当な大きさに切り出すことが容易になる。よって、光学シートの無駄を省き、コストの削減を図ることができる。
【0079】
<映像表示装置>
本発明の映像表示装置は、上記本発明の光学シートを適切な大きさに切断したシートと映像源とを備えている。例えば、映像源としてPDPを用い、適切な大きさに切断した本発明の光学シートを該PDPに重ねることによって、プラズマディスプレイとすることができる。
【0080】
本発明の光学シートを適切な大きさに切断する際には、映像源の大きさに合わせて切断するとともに、端部を切除して光学シートに備えられる各層の幅を揃える。なお、上記保護フィルム層は、光学シートの加工時や輸送時などに光学機能シート層が傷むことを防止するために設けられる層であり、上記離型フィルム層は、光学シートの加工時や輸送時などに粘着剤層に異物が付着することや、粘着剤層が他のものと接触することを防止するために設けられる層であるため、光学シートを映像表示装置に用いる際には、これらの層は除去されている。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。
【0082】
以下に説明する実施例1、比較例1、及び参考例1、2にかかる光学シートを作製し、それらの作製過程において、粘着剤層が製造ライン全体に与える不具合、光透過部形成工程での不具合、及び光吸収部形成工程での不具合の有無を評価した。実施例1、比較例1、及び参考例1、2にかかる光学シートについて、光学シートを構成する各層の幅の関係(各層の幅の関係)、粘着剤層が製造ライン全体に与える不具合の有無(製造ライン全体)、光透過部形成工程での不具合の有無(光透過部形成工程)、光吸収部形成工程での不具合の有無(光吸収部形成工程)、及び総合判断を表1に示した。総合判断は、いずれの項目においても不具合がなかったものを「○」とし、いずれかの項目においても不具合があったものを「×」とした。なお、各層の幅の関係において、Aは基材層の幅、Bは粘着剤層の幅、Cは光透過部形成部の幅(光学機能シート層の幅)、Dは光吸収部が形成されている部分の幅を意味する。
<実施例1>
(1)粘着剤層形成工程及び離型フィルム層形成工程
(メタ)アクリル系樹脂粘着剤(綜研化学株式会社製、SKダイン2094)100質量部に対して、硬化剤(綜研化学株式会社製、E−5XM)0.25質量部、溶剤MIBK30質量部を各々添加し、充分分散させて粘着剤組成物を調製した。当該粘着剤組成物を、厚みが25μm、幅方向に1370mmとなるように基材層(PETフィルム、厚み:100μm、幅:1400mm)上に塗工し、80℃で3分乾燥した。乾燥後に、得られた塗膜上に更に、離型処理PETフィルム(離型フィルム、厚み:38μm、幅1380mm)を被覆して、基材層の片側に粘着剤層及び離型フィルム層を形成した。
【0083】
(2)光透過部構成組成物の調整
ポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートからなるウレタンアクリレート15質量部、ビスフェノールA−エトキシ付加物とキシリレンジイソシアネートからなるウレタンアクリレート55質量部、フェノキシエチルアクリレート20質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4質量部、ビスフェノールAジグリシジルエーテル4質量部、テトラデカノール−エトキシ付加物のリン酸エステル2質量部の混合物に対して、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド1質量部を添加して均一化した。
【0084】
(3)光透過部形成工程
ピッチが51μmで開口幅(図2に示した幅x参照)が10μmで深さが69μmの溝を形成し得る型ロールを準備した。この型ロールとニップロールとの間に、上記のようにして一方の面側に粘着剤層が形成された基材層を送り込んだ。この基材層の送り込みに合わせ、上で得られた光透過部構成組成物を型ロールと基材層との間に供給した。このとき、基材層上において、光透過部構成組成物のバンクの幅が1330mmとなるよう供給装置から光透過部構成組成物を供給し、該光透過部構成組成物が型ロールの溝に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光透過部構成組成物を押圧した。その際、基材層と離型フィルム層との間で、粘着剤層を構成する粘着剤のはみ出しは確認できなかった。その後、基材層側から高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を特にシワなどの不具合なく硬化させ、光透過部を形成することができた。以上によって、光透過部を含む厚さが189±20μmであり、光透過部形成部の幅が1330mmである、光吸収部が形成される前の光学機能シート層を得た。
【0085】
(4)光吸収部構成組成物の調整
ウレタンアクリレート33.6質量部とエポキシアクリレート14.4質量部とが混合されたプレポリマーに、反応性希釈モノマーとしてトリプロピレングリコールジアクリレート28質量部、およびメトキシトリエチレングリコールアクリレート4質量部を加え調整した組成物に、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド3質量部、および着色粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラック含有アクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)16質量部を混合して均一化した。
【0086】
(5)光吸収部形成工程
上で得られた光吸収部構成組成物を供給装置から上で得られた光透過部上に供給した。このとき、光透過部上において、光吸収部構成組成物のバンクの幅が1260mmとなるよう供給装置から光吸収部構成組成物を供給した。次に、ドクターブレードを用いて光吸収部構成組成物を光透過部間の溝に供給するとともに、余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とした。このとき、光吸収部構成組成物が基材層の端から漏れることはなかった。その後、基材層が備えられる側とは反対側から紫外線を照射して光吸収部構成組成物を硬化させ、硬化した光吸収部構成組成物によって、光吸収部を形成した。光吸収部が形成されている部分の幅は、幅1260mmのであった。以上のようにして、基材層、光透過部と光吸収部とからなる光学機能シート層、粘着剤層、及び離型フィルム層を備えた光学シートを得た。
【0087】
<比較例1>
実施例1と同様にして粘着剤層、離型フィルム層、光透過部を形成した。次に、光吸収部が形成される部分の幅を1350mmとする以外は実施例1と同様にして光吸収部を形成しようとした。しかしながら、ドクターブレードを用いて光透過部材上に供給された光吸収部構成組成物を掻き落とす際に、幅方向の端部のバンクが安定せず、光吸収部構成組成物が漏れ出すこととなり、光学シート製造することは不可能であった。
【0088】
<参考例1>
粘着剤層の幅を1400mmとした以外は実施例1と同様にして、粘着剤層、離型フィルム層、及び光学機能シート層を形成しようとした。しかしながら、光透過部を形成する際に、型ロールおよびニップロール間の押圧力により、粘着剤層が押しつぶされ、基材層の端から粘着剤層を構成する粘着剤組成物がはみ出し、型ロール、ニップロールを該粘着剤組成物で汚染してしまい、光学シートを製造できなかった。
【0089】
<参考例2>
粘着剤層の幅を1300mmとした以外は実施例1と同様にして、粘着剤層と離型フィルム層とを形成した。次に、光透過部形成部の幅を1330mmとする以外は実施例1と同様にして、基材層上に光透過部を形成しようとした。その際、基材層と離型フィルム層との間で、粘着剤層を構成する粘着剤のはみ出しは確認できなかった。しかしながら、基材層側から高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させる際、シワが発生した。また、当条件で作製した光透過部を目視で確認したところ、金型のキズによる転写跡が確認できた為、当条件で光学シートを製造することは不可能であった。
【0090】
【表1】

【0091】
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光学シート、光学シートロール、光学シートの製造方法、及び映像表示装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0092】
10 光学シート
11 基材層
12 光学機能シート層
13 光透過部
14 光吸収部
15 バインダー部
16 光吸収粒子
20 保護フィルム層
21 粘着剤層
22 離型フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側から入射した光を制御して他方の面側に出射する、複数の層を有する光学シートであって、
基材層、及び、該基材層の一方の面側に形成された光学機能シート層を備えており、
前記光学機能シート層が、光を透過可能に形成された光透過部と、光を吸収可能に形成された光吸収部とを有し、
前記光透過部がシート面に沿って所定の間隔で並列され、
前記光吸収部が前記光透過部間の溝に形成されており、
前記光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に前記光吸収部が形成されていない前記光透過部間の溝を有することを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記基材層の前記光学機能シート層が備えられる側とは反対側に粘着剤層が備えられ、
前記光学シートの長手方向に直交する断面において、前記粘着剤層の幅方向の端が、前記基材層の幅方向の端より内側にある、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記光学シートの長手方向に直交する断面において、前記光学機能シート層の幅方向の端が、前記粘着剤層の幅方向の端より内側にある、請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記光学機能シート層の前記基材層が備えられる側とは反対側に保護フィルム層が備えられ、
前記光学シートの長手方向に直交する断面において、前記保護フィルム層の幅方向の端が、前記光吸収部が形成されている部分の幅方向の端に対して同一、または内側にある、請求項1〜3のいずれかに記載の光学シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学シートをロール状に巻回してなる光学シートロール。
【請求項6】
基材層、及び、該基材層の一方の面側に形成された光学機能シート層を備え、前記光学機能シート層が、光を透過可能に形成された光透過部と、光を吸収可能に形成された光吸収部とを有する光学シートの製造方法であって、
前記基材層上に、シート面に沿って所定の間隔で並列して光透過部を形成する光透過部形成工程と、
前記光透過部間の溝に光吸収部を形成する光吸収部形成工程と、を備え、
前記光吸収部形成工程が、前記光学シートの長手方向に直交する断面において、幅方向の両端側に前記光吸収部が形成されない前記光透過部間の溝を残すようにして前記光吸収部を形成する工程である、光学シートの製造方法。
【請求項7】
前記光吸収部形成工程より前に、前記基材層の前記光学機能シート層が形成される側とは反対側の面に粘着剤層を形成する、粘着剤層形成工程を備えており、
前記粘着剤層形成工程が、前記光学シートの長手方向に直交する断面において、前記粘着剤層の幅方向の端が、前記基材層の幅方向の端より内側になるように前記粘着剤層を形成する工程である、請求項6に記載の光学シートの製造方法。
【請求項8】
前記光透過部形成工程が、前記光学シートの長手方向に直交する断面において、前記粘着剤層の幅方向の端より内側に前記光透過部を形成する工程である、請求項7に記載の光学シートの製造方法。
【請求項9】
前記光学機能シート層の前記基材層が備えられる側とは反対側に保護フィルム層を形成する保護フィルム層形成工程を備え、
前記保護フィルム層形成工程が、前記光学シートの長手方向に直交する断面において、前記保護フィルム層の幅方向の端が、前記光吸収部が形成されている部分の幅方向の端に対して同一、または内側になるように前記保護フィルム層を形成する工程である、請求項6〜8のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学シートを適切な大きさに切断したシートと映像源とを備えた、映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−8320(P2012−8320A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143769(P2010−143769)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】