説明

光学シートの製造装置及びその製造方法

【課題】各面に対して立体構造を高精度に形成することができる光学シートの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る光学シートの製造装置は、加熱ローラ12と冷却ローラ13との間に架け渡される第1のベルト11と、加熱ローラ22と冷却ローラ23との間に架け渡される第2のベルト21とを備える。樹脂シートFの第1の面Faに第1の立体構造11aを転写した後、当該第1の面を冷却しながら樹脂シートの第2の面Fbに第2の立体構造21aを転写することで、第1の面に対する十分な冷却操作を確保しつつ、第2の面に対する高精度な形状転写が可能となる。また、第1の面の冷却処理と第2の面の冷却処理とが相互に異なる位置で実施されるので、各面に対して十分な冷却効果を確保でき、第1及び第2の原盤に対する安定した剥離操作を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有し、両面に立体構造を有する光学シートの製造装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置の薄型化が進められている。液晶表示装置の薄型化を図る上で、液晶パネルを照明するバックライトユニットの薄型化が必須となる。このため、このバックライトユニットを構成する種々の光学シートの薄膜化のほか、異種光学シートの複合化が検討されている。
【0003】
異種光学シートの複合化は、一枚の光学シートで複数の光学機能をもたせることができるため、光学シートの必要枚数を削減しバックライトユニットを効率的に薄型化できる。このような光学シートとして、例えば、表面と裏面に異種の形状を有する光学シートが挙げられる。また、このような光学シートの製造方法として、エンボス形状が各々形成された一対のエンドレスベルトを用いる方法が知られている(下記特許文献1参照)。一対のエンドレスベルトによって樹脂シートを挟持した状態で加熱・転写工程と冷却・剥離工程との間を搬送することで、樹脂シートの両面に対するエンボス形状の形成を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260268号公報(段落[0066]、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の光学シートの製造方法においては、一対のエンドレスベルトによって樹脂シートの両面に形状を付与した後、これらエンドレスベルトを同時に冷却して樹脂シートから剥離するようにしている。このため、加熱部と冷却部との間での熱膨張差に起因するエンドレスベルトのうねりが生じることで、樹脂シートに対する十分な冷却とエンドレスベルトからの安定した剥離操作が行えなくなる。したがって、上記特許文献1に記載の製法では、形状精度に優れた立体形状を樹脂シートの両面に安定して形成することができず、各面で形状が異なる立体構造を高精度に形成することが困難となる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、各面に対して立体構造を高精度に形成することができる光学シートの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学シートの製造装置は、第1の原盤と、第2の原盤と、第1の処理部と、第2の処理部と、第3の処理部と、第1の搬送機構と、第2の搬送機構とを具備する。
上記第1の原盤は、第1の立体構造を有する。
上記第2の原盤は、第2の立体構造を有する。
上記第1の処理部は、樹脂シートの第1の面を第1の温度に加熱し、上記加熱された第1の面に上記第1の立体構造を転写する。
上記第2の処理部は、上記第1の面を上記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却する一方、上記樹脂シートの上記第1の面とは反対側の第2の面を上記第2の温度よりも高い第3の温度に加熱し、上記加熱された第2の面に上記第2の立体構造を転写する。
上記第3の処理部は、上記第2の面を上記第3の温度よりも低い第4の温度に冷却する。
上記第1の搬送機構は、上記第1の処理部から上記第2の処理部へ上記第1の原盤及び上記樹脂シートを搬送する。
上記第2の搬送機構は、上記第2の処理部から上記第3の処理部へ上記第2の原盤及び上記樹脂シートを搬送する。
【0008】
第1の原盤は、第1の処理部で樹脂シートの第1の面に第1の立体構造を転写した後、第1の面から剥離されることなく第2の処理部へ搬送される。そして、第2の処理部において第1の面が冷却されている間に、樹脂シートの第2の面に第2の立体構造が転写される。一方、第2の原盤は、第2の処理部で樹脂シートの第2の面に第2の立体構造を転写した後、第2の面から剥離されることなく第3の処理部へ搬送される。
【0009】
上記製造装置によれば、樹脂シートの第1の面に立体構造を転写した後、当該第1の面を冷却しながら樹脂シートの第2の面に立体構造を転写するので、第1の面に対する十分な冷却操作を確保しつつ、第2の面に対する高精度な形状転写が可能となる。また、第1の面の冷却処理と第2の面の冷却処理とが相互に異なる位置で実施されるので、各面に対して十分な冷却効果を確保でき、第1及び第2の原盤に対する安定した剥離操作を実現することができる。
一方、第1の面から第1の原盤を剥離しない状態で第2の面へ第2の立体構造を転写することで、第1の面に転写された第1の立体構造の形状を高精度に維持することができる。また、第2の処理部において、第1の原盤と第2の原盤との間に温度差をもたせることができるため、低温側である第1の原盤から高温側である第2の原盤への樹脂シートの乗り移りが容易となる。これにより、第2の面に対して第2の立体構造を高精度に転写することが可能となる。
以上のように、上記製造装置によれば、形状精度に優れた立体構造を樹脂シートの各面に安定して形成できるため、所望の光学特性を有する光学シートを高精度に製造することが可能となる。
【0010】
上記第1の処理部は、第1の加熱ローラと、第1のニップローラとを有してもよい。上記第1の加熱ローラは、上記第1の加熱温度に加熱されることが可能である。上記第1のニップローラは、上記第1の原盤を挟んで上記第1の加熱ローラと対向し、上記第1の原盤との間で上記樹脂シートを挟持可能である。
この場合、上記第2の処理部は、第1の冷却ローラと、第2の加熱ローラとを有してもよい。上記第1の冷却ローラは、上記第2の温度に冷却されることが可能である。上記第2の加熱ローラは、上記第3の温度に加熱されることが可能であり、上記第1の原盤及び上記第2の原盤を挟んで上記第1の冷却ローラと対向し、上記第1の原盤と上記第2の原盤との間で上記樹脂シートを挟持可能である。
【0011】
上記製造装置は、第1及び第2の加熱ローラと第1の冷却ローラとを組み合わせることで上記第1及び第2の処理部を構成することができる。これにより、第1及び第2の原盤をこれら加熱ローラ及び冷却ローラとの間で搬送することで、両面に高精度な立体構造を有する光学シートを容易に製造することができる。
【0012】
上記第1の原盤は、上記第1の立体構造を外周面に有する、上記第1の加熱ローラと上記第1の冷却ローラとの間に架け渡された第1のエンドレスベルトで構成することができる。この場合、上記第1の搬送機構は、上記第1の加熱ローラ及び上記第1の冷却ローラの少なくとも一方を回転駆動する第1の駆動源を含む。
【0013】
上記製造装置によれば、第1の駆動源により第1のエンドレスベルトを第1の加熱ローラと第1の冷却ローラとの間で循環させることができる。これにより、樹脂シートを第1の加熱ローラと第1の冷却ローラとの間で連続的に搬送することができる。
【0014】
上記第2の処理部は、上記第1の冷却ローラと上記第2の加熱ローラとの間で上記樹脂シートを挟持した後、上記第1のエンドレスベルトから上記樹脂シートを剥離することができる。
これにより、樹脂シートの第1の面に形成した立体構造の形状を高精度に維持しながら、第1のエンドレスベルトから上記第2の原盤へ樹脂シートを容易に乗せ替えることが可能となる。
【0015】
上記第2の処理部は、上記第1の冷却ローラに上記樹脂シートを接触させた後、上記第1の冷却ローラと上記第2の加熱ローラとの間で上記樹脂シートを挟持してもよい。
これにより、第1の冷却ローラ上での樹脂シートの冷却時間を確保でき、第1のエンドレスベルトからの樹脂シートの剥離性を高めることができる。
このとき、上記第2の加熱ローラの回転中心は、上記第1の加熱ローラの回転中心と上記第1の冷却ローラの回転中心とを結ぶ直線の延長線上に位置してもよいし、上記延長線上からずれた位置にあってもよい。
【0016】
上記第3の処理部は、第2の冷却ローラと、第2のニップローラとを有してもよい。上記第2の冷却ローラは、上記第4の温度に冷却されることが可能である。上記第2のニップローラは、上記第2の原盤を挟んで上記第2の冷却ローラと対向し、上記第2の原盤との間で上記樹脂シートを挟持可能である。
これにより、第2の原盤からの樹脂シートの剥離性を高めることができる。
【0017】
上記第2の原盤は、上記第2の立体構造を外周面に有する、上記第2の加熱ローラと上記第2の冷却ローラとの間に架け渡された第2のエンドレスベルトで構成することができる。この場合、上記第2の搬送機構は、上記第2の加熱ローラ及び上記第2の冷却ローラの少なくとも一方を回転駆動する第2の駆動源を含む。
【0018】
上記製造装置によれば、第2の駆動源により第2のエンドレスベルトを第2の加熱ローラと第2の冷却ローラとの間で循環させることができる。これにより、樹脂シートを第2の加熱ローラと第2の冷却ローラとの間で連続的に搬送することができる。
【0019】
上記第1の構造体及び上記第2の構造体の少なくともいずれかは、プリズム形状を有してもよい。
これにより、少なくとも一方の面にプリズム状の立体構造を有する光学シートを製造することが可能となる。
【0020】
上記第1の立体構造及び上記第2の立体構造の少なくともいずれかは、曲面形状を有してもよい。
これにより、少なくとも一方の面に曲面形状の立体構造を有する光学シートを製造することができる。
【0021】
上記第1及び第3の温度は、上記樹脂シートのガラス転移点より高い温度とすることができる。また、上記第2及び第4の温度は、上記樹脂シートのガラス転移点より低い温度とすることができる。
これにより、樹脂シートの第1及び第2の面に立体構造を高精度に転写することができると共に、上記第1及び第2の面から第1及び第2の原盤を適正に剥離することができる。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学シートの製造方法は、樹脂シートの第1の面に、第1の温度に加熱された第1の原盤を用いて第1の立体構造を形成することを含む。上記第1の面は、上記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却されながら、上記樹脂シートの上記第1の面とは反対側の第2の面に、上記第2の温度よりも高い第3の温度に加熱された第2の原盤を用いて第2の立体構造が形成される。上記第2の面は、上記第3の温度よりも低い第4の温度に冷却される。
【0023】
上記製造方法によれば、樹脂シートの第1の面に立体構造を転写した後、当該第1の面を冷却しながら樹脂シートの第2の面に立体構造を転写するので、第1の面に対する十分な冷却操作を確保しつつ、第2の面に対する高精度な形状転写が可能となる。また、第1の面の冷却処理と第2の面の冷却処理とが相互に異なる位置で実施されるので、各面に対して十分な冷却効果を確保でき、第1及び第2の原盤に対する安定した剥離操作を実現することができる。
【0024】
上記第2の面に上記第2の立体構造を形成した後、上記第1の面から上記第1の原盤を剥離することで、第1の面に転写された第1の立体構造の形状を高精度に維持することができる。また、この場合、第1の原盤と第2の原盤との間に温度差をもたせることができるため、低温側である第1の原盤から高温側である第2の原盤への樹脂シートの乗り移りが容易となる。これにより、第2の面に対して第2の立体構造を高精度に転写することが可能となる。したがって、上記製造方法によれば、形状精度に優れた立体構造を樹脂シートの各面に安定して形成できるため、所望の光学特性を有する光学シートを高精度に製造することが可能となる。
【0025】
上記第1の原盤として、表面に上記第1の立体構造に対応する形状が形成され、上記第1の温度に加熱されることが可能な第1の加熱ローラと上記第2の温度に冷却されることが可能な第1の冷却ローラとの間に架け渡された第1のエンドレスベルトを用いることができる。また、上記第2の原盤として、表面に上記第2の立体構造に対応する形状が形成され、上記第3の温度に加熱されることが可能な第2の加熱ローラと上記第4の温度に冷却されることが可能な第2の冷却ローラとの間に架け渡された第2のエンドレスベルトを用いることができる。
これにより、第1のエンドレスベルトを第1の加熱ローラと第1の冷却ローラとの間で循環させることができるので、樹脂シートを第1の加熱ローラと第1の冷却ローラとの間で連続的に搬送することができる。また、第2のエンドレスベルトを第2の加熱ローラと第2の冷却ローラとの間で循環させることができるので、樹脂シートを第2の加熱ローラと第2の冷却ローラとの間で連続的に搬送することができる。
【0026】
上記樹脂シートとして、透明な熱可塑性樹脂を用いることができる。
上記製造方法によれば、光学シートとして要求される透明性を維持しつつ、所望の立体構造を各面に有する光学シートを高精度に製造することができる。
【0027】
上記樹脂シートとして、結晶性樹脂を用いてもよい。
上記製造方法によれば、樹脂シートに対する加熱処理に伴う結晶化を抑えることができるので、白化や複屈折の増加を効果的に阻止し、光学特性に優れた光学シートを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、形状精度に優れた立体構造を樹脂シートの各面に安定して形成できるため、所望の光学特性を有する光学シートを高精度に製造することが可能となる。
また、本発明によれば、形状精度に優れた立体構造を各面に有する光学シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学シートの製造装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る光学シートの製造装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光学シートを示す要部の概略斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る光学シートを示す要部の概略斜視図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る光学シートを示す要部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る光学シートの製造装置(以下、シート製造装置という。)を示す概略図である。以下、このシート製造装置の全体構成について説明する。
【0031】
(シート製造装置)
シート製造装置1は、第1の立体構造11aを有する第1のベルト11(第1の原盤)と、第2の立体構造21aを有する第2のベルト21(第2の原盤)とを備えている。シート製造装置1は、第1及び第2のベルト21、21によって樹脂シートFを搬送しながら、樹脂シートFの第1の面(図において下面)Faとその反対側の第2の面(図において上面)Fbとに上記第1及び第2の立体構造11a、21aを順次転写する。
【0032】
第1のベルト11は、所定間隔をおいて配置された第1の加熱ローラ12と第1の冷却ローラ13との間に架け渡されている。第1の加熱ローラ12及び第1の冷却ローラ13の少なくとも一方は、図示しないモータ等の駆動源を含む駆動力伝達機構(第1の搬送機構)により回転駆動されることで、第1のベルト11を一定方向に搬送する。
【0033】
第1の加熱ローラ12は、樹脂シートFのガラス転移点(Tg)よりも高い温度(第1の温度)に加熱されることが可能であり、第1のベルト11は第1の加熱ローラ12を通過時に当該温度に加熱される。第2の冷却ローラ13は、樹脂シートFのガラス転移点よりも低い温度(第2の温度)に冷却されることが可能であり、第1のベルト11は第1の冷却ローラ13を通過時に当該温度に冷却される。
【0034】
第2のベルト21は、所定間隔をおいて配置された第2の加熱ローラ22と第2の冷却ローラ23との間に架け渡されている。第2の加熱ローラ22及び第2の冷却ローラ23の少なくとも一方は、図示しないモータ等の駆動源を含む駆動力伝達機構(第2の搬送機構)により回転駆動されることで、第2のベルト21を一定方向に搬送する。
【0035】
第2の加熱ローラ22は、樹脂シートFのガラス転移点よりも高い温度(第3の温度)に加熱されることが可能であり、第2のベルト21は第2の加熱ローラ22を通過時に当該温度に加熱される。第2の冷却ローラ23は、樹脂シートFのガラス転移点よりも低い温度(第4の温度)に冷却されることが可能であり、第2のベルト21は第2の冷却ローラ23を通過時に当該温度に冷却される。
【0036】
第1のベルト11と第2のベルト21は、樹脂シートFを矢印A1及びA2で示す水平方向に直線的に搬送可能なように設置される。このとき、図1に示すように、第1の冷却ローラ13及び第2の加熱ローラ22は、第1及び第2のベルト11、21との間で樹脂シートFを挟持することができるように、相互に対向配置されている。第1及び第2のベルト11、12は互いに同期して搬送されるように、各ベルト11、12の搬送速度が上記各駆動源により制御される。
【0037】
また、シート製造装置1は、第1のニップローラ14と、第2のニップローラ24とをさらに備える。第1のニップローラ14は、第1のベルト11を挟んで第1の加熱ローラ12と対向して配置され、第1のベルト11との間で樹脂シートFを挟持した状態で回転することが可能である。第2のニップローラ24は、第2のベルト21を挟んで第2の冷却ローラ23と対向して配置され、第2のベルト21との間で樹脂シートFを挟持した状態で回転することが可能である。
【0038】
以上のように構成される本実施形態のシート製造装置1は、樹脂シートFの第1の面Faを加工する第1の処理部S1と、樹脂シートFの第1の面Faを冷却しながら第2の面Fbを加工する第2の処理部S2と、樹脂シートFの第2の面Fbを冷却する第3の処理部S3とを有する。第1の加熱ローラ12及び第1のニップローラ14は第1の処理部S1に属し、第1の冷却ローラ13及び第2の加熱ローラ22は第2の処理部S2に属する。そして、第2の冷却ローラ23及び第2のニップローラ24は第3の処理部に属する。第1のベルト11は、樹脂シートFと共に、第1の処理部S1と第2の処理部S2との間を搬送される。第2のベルト21は、樹脂シートFと共に、第2の処理部S2と第3の処理部S3との間を搬送される。
【0039】
本実施形態において、第1及び第2のベルト11、21は、熱伝導性に優れた金属製エンドレスベルトで構成されている。第1及び第2の立体構造11a、21aは、第1のベルト11の外周面及び第2のベルト21の外周面にそれぞれ形成されている。このような構成のベルト11、12の作製方法としては、例えば、エンボス形状を内面側に有する円筒状の樹脂原盤にニッケル鋼を電鋳する方法、円筒状のロールに巻装したベルトの外周面に直接切削加工する方法などが挙げられる。
【0040】
ベルト11、12が架け渡されるローラ群は、加熱ローラ12、22及び冷却ローラ13、23だけに限られない。例えば、ベルト11、12の張力を制御するテンションローラやベルト11、12のテンションを領域間で固定するピンチローラ等を配備してもよい。また、各ベルト11、12に架け渡される加熱ローラ及び冷却ローラは、必要に応じてその数を増加させてもよい。
【0041】
樹脂シートFの各面Fa、Fbに立体構造を転写する原盤は、上述したようなエンドレスベルトに限られない。例えば、上記立体構造に対応する形状を有する板状の原盤を各処理部間で往復移動させてもよい。あるいは、一対の原盤を樹脂シートFの両面を接触させた状態で、樹脂シートと共に第1〜第3の処理部を通過させてもよい。
【0042】
第1及び第2の立体構造11a、21aは、要求される樹脂シートの表面形状に応じて適宜の幾何学形状(エンボス形状)に設定される。例えば、断面三角形状や曲面形状のプリズムあるいはレンズ形状、直線的なテーパ形状、円形又は矩形のドットパターン等が挙げられる。立体構造11a、21aの大きさは特に限定されず、微細形状であってもよい。立体構造11a、21aの形状、大きさは、相互に同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、立体構造11a、21aは、同一面に2種以上の立体構造を形成できるような複合的な構造であってもよい。例えば、直線的なテーパ部と三角形状のプリズム部とが一定ピッチで配置されるように上記立体構造を構成することができる。上記幾何学形状に限られず、立体構造11a、21aとしては、樹脂シートの表面上に形成されるランダムな凹凸模様(シボ)も含まれる。
【0043】
例えば、立体構造11a、21aとしては、一定方向に稜線を有するプリズムアレイ、レンズアレイ等の周期構造が採用可能である。この場合、稜線方向は、樹脂シートFの幅方向(TD(Transverse Direction)方向)とされるが、これに限らず、樹脂シートFの走行方向(MD(Machine Direction)方向)でもよい。また、ベルト11、21からの樹脂シートFとの剥離性を高めるために、ベルト11、12の表面に剥離剤を塗布してもよい。剥離剤としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂等を用いることができる。
【0044】
第1及び第2の加熱ローラ12、22は、ヒータ、温媒の循環経路等の加熱源を内蔵している。これら加熱ローラ12、22の表面温度は、樹脂シートFの軟化温度、すなわち、樹脂シートFのガラス転移点よりも高い温度(第1の温度、第3の温度)に設定されている。したがって、ベルト11、12の加熱ローラ12、22との接触領域も上記温度に加熱され、この位置で樹脂シートFに対する加熱処理を行うことが可能となる。
【0045】
上記第1及び第3の温度は特に限定されず、例えば、Tg+60℃以上、Tg+90℃以下とすることができる。加熱ローラ12、22の表面温度が低いと、樹脂シートFに対するエンボス形状の良好な転写精度を得ることができない。逆に、加熱ローラ12、22の表面温度が高すぎると、アモルファス状態の維持が困難な結晶性樹脂で樹脂シートFが構成されている場合、樹脂シートFの結晶化が過度に促進し、白化による透明性の低下が顕著となる。上記第1及び第3の温度は、相互に同一の温度に設定されてもよいし、相互に異なる温度に設定されてもよい。
【0046】
第1及び第2の冷却ローラ13、23は、例えば、冷媒の循環経路等の冷却源を内蔵している。これら冷却ローラ13、23の表面温度は、樹脂シートFのガラス転移点よりも低い温度(第2の温度、第4の温度)に設定されている。したがって、ベルト11、12の冷却ローラ13、23との接触領域も上記温度に冷却され、この位置で樹脂シートFに対する冷却処理を行うことが可能となる。
【0047】
上記第2及び第4の温度は特に限定されず、ベルト11、21から樹脂シートFを適正に剥離することができる程度の低温に設定される。上記第2及び第4の温度は、例えば、30℃以下とすることができる。上記第2及び第4の温度は、相互に同一の温度に設定されてもよいし、相互に異なる温度に設定されてもよい。
【0048】
樹脂シートFとしては、透明な熱可塑性樹脂が用いられる。樹脂シートFは、結晶性樹脂でもよいし、非結晶性樹脂でもよい。結晶性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PET−PEN共重合体などが挙げられる。結晶性樹脂には、アモルファス状態も含まれる。非結晶性樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、メタクリル樹脂(PMMA)などが挙げられる。本実施形態では、樹脂シートFを長尺の帯状に形成し、これをシート製造装置1へ連続的に供給する方法が採用される。これ以外にも、樹脂シートFを所定サイズにカットした枚葉シートとして形成し、これをシート製造装置1へ順次供給する方法が採用可能である。
【0049】
ここで、樹脂シートに結晶性樹脂を用いた場合、エンボス形状の加工前後において樹脂シートFが白化するおそれがある。これは、樹脂シートのランダム結晶化が原因である。樹脂シートが白化すると、光線透過率が極端に低下し、光学シートとしての使用に耐えられなくなる。樹脂シートの白化を抑えるためには、エンボス加工後、樹脂シートを急冷することが効果的である。樹脂シートの冷却速度は、例えば、加熱ローラと冷却ローラとの間の距離、樹脂シートの搬送速度(ラインスピード)、樹脂シートの厚み等で調整することができる。樹脂シートの冷却速度は、例えば、5℃/秒以上40℃/秒以下とすることができる。
【0050】
また、樹脂シートFとしては、固有複屈折が比較的高い透明な樹脂材料を用いてもよい。このような樹脂材料を用いても、本実施形態のシート製造装置1によって、製造後の光学シートの複屈折を比較的小さく抑えることが可能である。例えば、固有複屈折が0.05以上の材料を用いて、複屈折が0.01以下の透明シートを製造することができる。この種の樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。これにより、比較的安価な樹脂材料を用いて、各面に立体構造を有する、光学的等方性に優れた透明樹脂シートを得ることができる。
【0051】
(シート製造方法)
次に、以上のように構成されるシート製造装置1を用いた本実施形態の光学シートの製造方法について説明する。
【0052】
樹脂シートFは、第1のベルト11と第1のニップローラ14との間に矢印A1で示す方向に供給される。第1の処理部S1において、樹脂シートFは、第1の加熱ローラ12上でガラス転移点より高い第1の温度に加熱されると共に、第1のベルト11と第1のニップロール14との間で挟圧される。これにより、樹脂シートFの第1の面Faに、第1の立体構造11aが転写される。第1の立体構造11aが転写された樹脂シートFは、第1のベルト11に固着され、第1のベルト11と共に、第1の処理部S1から第2の処理部S2へ搬送される。
【0053】
続いて、第2の処理部S2において、樹脂シートFは、第1の冷却ローラ13上でベルト11と共に、ガラス転移点よりも低い第2の温度に冷却される。同時に、樹脂シートFは、第2の加熱ローラ22上でベルト21とガラス転移点よりも高い第3の温度に加熱されると共に、第1のベルト11と第2のベルト21との間で挟圧される。これにより、樹脂シートFの第2の面Fbに、第2の立体構造21aが転写される。第2の立体構造21aが転写された樹脂シートFは、第2のベルト21に固着された状態で、第1のベルト11から剥離され、その後、第2のベルト21と共に、第2の処理部S2から第3の処理部S3へ搬送される。
【0054】
次に、第3の処理部S3において、樹脂シートFは、第2の冷却ローラ23上でベルト21と共に、ガラス転移点よりも低い第4の温度に冷却される。そして、樹脂シートFは、第2のベルト21から剥離して、第2の冷却ローラ23と第2のニップローラ24との間から矢印A2で示す方向に排出される。
【0055】
シート製造装置1を通過した樹脂シートFは、後工程において、所定サイズに裁断される。これにより、両面に立体構造を有する光学シートが作製される。
【0056】
上述のように、第1のベルト11は、第1の処理部S1で樹脂シートFの第1の面Faに第1の立体構造11aを転写した後、第1の面Faから剥離されることなく第2の処理部S2へ搬送される。そして、第2の処理部S2において第1の面Faが冷却されている間に、樹脂シートFの第2の面Fbに第2の立体構造21aが転写される。一方、第2のベルト21は、第2の処理部S2で樹脂シートFの第2の面Fbに第2の立体構造21aを転写した後、第2の面Fbから剥離されることなく第3の処理部S3へ搬送される。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、樹脂シートFの第1の面Faに立体構造を転写した後、当該第1の面Faを冷却しながら樹脂シートFの第2の面Fbに立体構造を転写するので、第1の面Faに対する十分な冷却操作を確保しつつ、第2の面Fbに対する高精度な形状転写が可能となる。また、第1の面Faの冷却処理と第2の面Fbの冷却処理とが相互に異なる位置で実施されるので、各面に対して十分な冷却効果を確保でき、第1及び第2のベルト11、21に対する安定した剥離操作を実現することができる。
【0058】
一方、第1の面Faから第1のベルト11を剥離しない状態で第2の面Fbへ第2の立体構造21aを転写することで、第1の面Faに転写された第1の立体構造11aの形状を高精度に維持することができる。また、第2の処理部S2において、第1のベルト11と第2のベルト21との間に温度差をもたせることができるため、低温側である第1のベルト11から高温側である第2のベルト21への樹脂シートの乗り移りが容易となる。これにより、第2の面Fbに対して第2の立体構造21aを高精度に転写することが可能となる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、形状精度に優れた立体構造を樹脂シートの各面に安定して形成できるため、所望の光学特性を有する光学シートを高精度に製造することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態においては、第1の加熱ローラ12と第1のニップローラ14とで第1の処理部S1が構成され、第2の加熱ローラ22と第2の冷却ローラ13とで第2の処理部S2が構成される。そして、第2の冷却ローラ23と第2のニップローラ24とで第3の処理部S3が構成される。したがって、第1及び第2のベルト11、21をこれら各ローラ間に架け渡すことで、樹脂シートFを第1の処理部S1から第2及び第3の処理部S2、S3へ搬送する搬送系を容易に構成することができる。
【0061】
特に、第1及び第2のベルト11、12がエンドレスベルトで構成されているため、各ベルト11、12を加熱ローラ12、22と冷却ローラ13、23との間で循環させることができる。これにより、樹脂シートFを各ローラ間で連続的に搬送することができる。
【0062】
<第2の実施形態>
図2は本発明の他の実施形態に係る光学シートの製造装置(以下、シート製造装置という。)を示す概略図である。図において、上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
【0063】
本実施形態のシート製造装置2は、第1及び第2の加熱ローラ12、22と、第1及び第2の冷却ローラ13、23との配置のレイアウトが第1の実施形態に係るシート製造装置1と異なる。すなわち、本実施形態のシート製造装置2においては、第1の加熱ローラ12の回転中心と第1の冷却ローラ13の回転中心とを結ぶ直線の延長線上に、第2の加熱ローラ22の回転中心が位置している。
【0064】
第1のベルト11は、第1の加熱ローラ12と第1の冷却ローラ13との間に架け渡されており、第2のベルト21は、第2の加熱ローラ22と第2の冷却ローラ23との間に架け渡されている。第1の処理部S1は、第1の加熱ローラ12と第1のニップローラ14とにより構成され、第2の処理部S2は、第1の冷却ローラ13と第2の加熱ローラ22とにより構成されている。そして、第3の処理部S3は、第2の冷却ローラ23と第2のニップローラ24とにより構成されている。これらの構成は、上述の第1の実施形態に係るシート製造装置1と共通する。
【0065】
樹脂シートFは、第1の処理部S1に対して、矢印B1方向(y軸方向)に供給される。第1の処理部S1において、樹脂シートFの第1の面Faは第1の加熱ローラ12上で上記第1の温度に加熱され、第1のベルト11に形成された第1の立体構造11aが転写される。
【0066】
樹脂シートFは、第1のベルト11と共に第2の処理部S2へ搬送され、第1の冷却ローラ13上で上記第2の温度に冷却される。また、樹脂シートFの第2の面Fbは、第2の加熱ローラ22上で上記第3の温度に加熱され、第2のベルト21に形成された第2の立体構造21aが転写される。樹脂シートFは、第1のベルト11から剥離し、第2のベルト21と共に第3の処理部S3へ搬送される。
【0067】
樹脂シートFは、第3の処理部S3において、第2の冷却ローラ23上で上記第4の温度に冷却された後、第2のベルト21から剥離し、矢印B2方向(x軸方向)に排出される。
【0068】
以上のようにして、樹脂シートFの各面Fa、Fbに第1及び第2の立体構造11a、21aがそれぞれ転写された光学シートが作製される。本実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
特に本実施形態においては、第2の加熱ローラ22を上述のように配置することにより、第2の処理部S2において樹脂シートFの搬送方向をy軸方向からx軸方向へ変換する。このとき、樹脂シートFは、第1の冷却ローラ13に接触した後、第1の冷却ローラ13と第2の加熱ローラ22との間で挟持される。したがって、第1の冷却ローラ13に対する樹脂シートFの抱き量が大きくなるので、第1の冷却ローラ13による樹脂シートFの冷却効率を高めることができる。また、樹脂シートFの第1の面Faが十分に冷却された後、第2のベルト21による第2の面Fbに対する形状転写が行われるため、第1の面Faに対する十分な冷却時間を確保でき、第1のベルト11からの樹脂シートFの剥離性を高めることができる。
【0070】
なお、第2の加熱ローラ22の回転中心の位置は、上記延長線上に配置する例に限られない。すなわち、第2の加熱ローラ22の回転中心と第2の冷却ローラ23の回転中心とを結ぶ直線が、第1の加熱ローラ12の回転中心と第1の冷却ローラ13の回転中心と交差するように各ローラを配置することで、上述と同様の効果を得ることができる。
【0071】
<第3の実施形態>
次に、図3〜5を参照して、本発明の一実施形態に係る光学シートについて説明する。
【0072】
図3に示す光学シート51は、上面側である第1の表面61aと下面側である第2の表面61bとを有するシート本体60と、第1の表面61aに形成された第1の立体構造62aと、第2の表面に形成された第2の立体構造62bとを備える。光学シート51は、単一層の透明な樹脂材料で構成されている。したがって、第1及び第2の立体構造62a、62bはいずれもシート本体60の一部を構成し、かつ、シート本体60と空気層との界面を構成する。
【0073】
本実施形態の光学シート51は、上述したシート製造装置1又はシート製造装置2によって形状加工を施された樹脂シートFを所定のサイズに裁断することで構成される。第1の立体構造62aは、例えば、上記第2のベルト21上に形成された第2の立体構造21aを第1の表面61a(第2の面Fb)に転写することで形成される。第2の立体構造62bは、例えば、上記第1のベルト11上に形成された第1の立体構造11aを第2の表面61b(第1の面Fa)に転写することで形成される。
【0074】
第1の立体構造62aと第2の立体構造62bは同一の形態で構成されてもよいが、本実施形態では相互に異なる形態を有する。上記シート製造装置によれば、各面で形状が異なる光学シートを高精度に形成することができる。本実施形態の光学シート51は、第1の立体構造62a及び第2の立体構造62bはいずれも、断面三角形状のプリズムエレメントが一定方向に配列された形状を有するが、その配列ピッチ(隣接する稜線間の距離)と高さ(シート厚み方向に沿ったプリズムの頂部と谷部との間の距離)がそれぞれ異なっている。すなわち、第1の立体構造62aの断面形状は、略直角三角形であるのに対し、第2の立体構造62bの断面形状は、頂角が鈍角である二等辺三角形に形成されている。
【0075】
本実施形態の光学シート51は、第1の立体構造62aの高さをX1、第2の立体構造62bの高さをY1、シート本体60の厚みからX1とY1の和を差し引いた厚みをZ1としたとき、X1、Y1及びZ1は、以下の関係を満たすように構成されている。
0.1≦X1/Z1≦3 …(1)
0.01≦Y1/Z1≦3 …(2)
(X1+Y1)/Z1≦4 …(3)
【0076】
X1/Z1、及びY1/Z1の各値が3を越えると、立体構造62a、62bの形成時にベルト11、12から受ける転写圧力を樹脂シートFが十分に吸収することができない場合があり、その結果、立体構造62a、62bの形状精度が損なわれるおそれがある。また、(X1+Y1)/Z1の値が4を越えると、光学シートとしての強度を確保することができない場合がある。
【0077】
光学シート51(シート本体60)の厚みは、10μm以上2000μm以下とすることができる。上述したシート製造装置1、2によれば、当該厚みの範囲において上記(1)〜(3)式の関係を満たす立体構造を備えた光学シートを高精度に作製することができる。
【0078】
シート本体60を構成する樹脂材料は特に限定されず、上述した各種の樹脂材料を用いることができる。本実施形態では、樹脂材料として、固有複屈折が0.05以上である樹脂材料が用いられる。ここでいう固有複屈折とは、当該樹脂材料が有し得る最大の複屈折を意味し、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が該当する。本実施形態によれば、上記シート製造装置1、2を用いることで、立体構造の形成時における樹脂シートの結晶化を抑制できるため、この種の材料を用いたとしても複屈折の値が0.01以下の光学的等方性に優れた樹脂シートを作製することができる。
【0079】
本実施形態の光学シート51は、液晶表示装置用のバックライトユニットを構成する光学シートの一部として使用することができる。この場合、光学シート51は、第2の表面61b側を光入射面側、第1の表面61a側を光出射面側としてバックライトユニットに組み込まれる。各面に形成された立体構造62b、62aはそれぞれ断面三角形状を有しているので、各面において集光機能を含む一定の光の偏向作用を発揮する。これにより、一枚の光学シートに2種類の光学シートの機能をもたせることが可能となるため、バックライトユニット及び液晶表示装置の薄型化に貢献することが可能となる。
【0080】
<第4の実施形態>
第1及び第2の立体構造62a、62bは、上述したような異種プリズム形状の組み合わせに限られず、他の幾何学的形状の組み合わせを採用することも可能である。例えば図4に示す光学シート52は、第1の表面61aに形成される立体構造として、断面三角形状の立体構造63aが形成されており、第2の表面61bに形成される立体構造として、断面曲面形状の立体構造63bが形成されている。第2の立体構造63bは、第1の立体構造63aと同一方向に稜線を有する柱状に形成されてもよいし、第2の表面61bの面内に2次元的にドット状に形成されてもよい。また、この立体構造63bとして、第2の表面61bに突状に形成された例に限られず、第2の表面61bに凹状に形成されていてもよい。
【0081】
本実施形態の光学シート52は、第1の立体構造62aの高さをX2、第2の立体構造63bの高さをY2、シート本体60の厚みからX2とY2の和を差し引いた厚みをZ2としたとき、X2、Y2及びZ2は、以下の関係を満たすように構成されている。
0.1≦X2/Z2≦3 …(4)
0.01≦Y2/Z2≦3 …(5)
(X2+Y2)/Z2≦4 …(6)
【0082】
光学シート52(シート本体60)の厚みは、10μm以上2000μm以下とすることができる。上述したシート製造装置1、2によれば、当該厚みの範囲において上記(4)〜(6)式の関係を満たす立体構造を備えた光学シートを高精度に作製することができる。
【0083】
このような形状を有する立体構造63bは、第2の表面61bに所定のレンズ機能をもたせることが可能となる。また、立体構造63bを微細に形成することによって、第2の表面61bに対して反射防止機能をもたせることが可能となる。これにより、第2の表面61bを光入射面とすることにより、光の反射損失の少ない光学シートを構成することが可能となる。本実施形態の光学シート52もまた、液晶表示装置用のバックライトユニットに組み込まれる光学シートとして使用することができる。
【0084】
<第5の実施形態>
図5は、本発明の他の実施形態に係る光学シート53の構成を示す概略斜視図である。本実施形態の光学シート53は、シート本体60の第1の表面61aに第1の立体構造64aが形成され、第2の表面61bに第2の立体構造64bが形成されている。
【0085】
本実施形態では、第1の立体構造64aは、テーパ部と平坦部との組み合わせからなる段形状部分64a1とプリズム形状部分64a2とを含んでいる。上記平坦部には面内に所定の幾何学形状が含まれていてもよい。すなわち、本実施形態に係る第1の立体構造64aは、2種類以上の異なる形状を有している。これにより、要求される形態と所望の光学的特性を兼ね備えた光学シートを提供することができる。
【0086】
一方、本実施形態に係る第2の立体構造64bは、第2の表面61b上に所定の分布で形成された、断面略矩形状の複数の突部で構成されているが、これに限られず、半球状の突部でもよい。図示の例では、シート本体60の一方の側面61cから対向する他方の側面(図示略)に向かって、上記突部はその配置間隔が短くなるように(形成密度が高くなるように)形成されている。当該突部は、第2の表面61bにおいてドット状(点状)に形成されるが、これに限らず、プリズム形状64a2の稜線方向と直交する方向に延びる直線的な形状であってもよい。また、第2の立体構造64bは、第2の表面61bに対して凸状に形成される場合に限らず、凹状に形成されてもよい。
【0087】
本実施形態の光学シート53は、第1の立体構造64aの高さをX3、第2の立体構造64bの高さをY3、シート本体60の厚みからX3とY3の和を差し引いた厚みをZ3としたとき、X3、Y3及びZ3は、以下の関係を満たすように構成されている。なお、第1の立体構造64aの高さX3は、最大高さを形成する段形状部分の高さである。
0.1≦X3/Z3≦3 …(7)
0.01≦Y3/Z3≦3 …(8)
(X3+Y3)/Z3≦4 …(9)
【0088】
光学シート53(シート本体60)の厚みは、10μm以上2000μm以下とすることができる。上述したシート製造装置1、2によれば、当該厚みの範囲において上記(7)〜(9)式の関係を満たす立体構造を備えた光学シートを高精度に作製することができる。
【0089】
本実施形態の光学シート53もまた、上述したシート製造装置1又はシート製造装置2を用いて作製される。当該シート製造装置によれば、各面で形状が異なる樹脂シートを高精度に形成することができる。特に、本実施形態の光学シート53は、エッジライト型の導光板として用いることができる。側面61cは、発光ダイオードや蛍光管などの光源が配置される光入射面として構成することができる。これにより、従来の射出成形体で作製される導光板よりも厚みの小さい導光板を得ることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0091】
例えば以上の実施形態では、光学シートとして、液晶表示装置用のバックライトユニットに組み込まれる各種光学シートあるいは導光板を例に挙げて説明した。これに代えて、液晶プロジェクタ装置や立体画像表示装置等の他の画像表示装置に用いられる各種の光学シートに関しても本発明は適用可能である。
【0092】
また、以上の実施形態では、樹脂シートを転写温度に加熱する手段として、加熱ローラ12、22を採用したが、これに限らず、赤外線加熱などの他の加熱方式を採用してもよい。また、樹脂シートの急冷効果を高めるために、冷却ローラ13、23を複数段で構成することも可能である。
【0093】
さらに、以上の第2の実施形態では、第1の加熱ローラ12の回転中心と第1の冷却ローラ13の回転中心とを結ぶ直線の延長線上に、第2の加熱ローラ22の回転中心を配置させたが、例えば樹脂シートの剥離特性に応じて、その位置を適宜変更することが可能である。すなわち、第2の加熱ローラ22の位置は特に限定されず、上記延長線上からずれた位置に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1、2…シート製造装置
11…第1のベルト
11a…第1の立体構造
12…第1の加熱ローラ
13…第1の冷却ローラ
14…第1のニップローラ
21…第2のベルト
21a…第2の立体構造
22…第2の加熱ローラ
23…第2の冷却ローラ
24…第2のニップローラ
51、52、53…光学シート
60…シート本体
61a…第1の表面
61b…第2の表面
62a、63a、64a…第1の立体構造
62b、63b、64b…第2の立体構造
F…樹脂シート
Fa…第1の面
Fb…第2の面
S1…第1の処理部
S2…第2の処理部
S3…第3の処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の立体構造を有する第1の原盤と、
第2の立体構造を有する第2の原盤と、
樹脂シートの第1の面を第1の温度に加熱し、前記加熱された第1の面に前記第1の立体構造を転写する第1の処理部と、
前記第1の面を前記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却する一方、前記樹脂シートの前記第1の面とは反対側の第2の面を前記第2の温度よりも高い第3の温度に加熱し、前記加熱された第2の面に前記第2の立体構造を転写する第2の処理部と、
前記第2の面を前記第3の温度よりも低い第4の温度に冷却する第3の処理部と、
前記第1の処理部から前記第2の処理部へ前記第1の原盤及び前記樹脂シートを搬送する第1の搬送機構と、
前記第2の処理部から前記第3の処理部へ前記第2の原盤及び前記樹脂シートを搬送する第2の搬送機構と
を具備する光学シートの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第1の処理部は、
前記第1の温度に加熱されることが可能な第1の加熱ローラと、
前記第1の原盤を挟んで前記第1の加熱ローラと対向し、前記第1の原盤との間で前記樹脂シートを挟持可能な第1のニップローラとを有し、
前記第2の処理部は、
前記第2の温度に冷却されることが可能な第1の冷却ローラと、
前記第3の温度に加熱されることが可能であり、前記第1の原盤及び前記第2の原盤を挟んで前記第1の冷却ローラと対向し、前記第1の原盤と前記第2の原盤との間で前記樹脂シートを挟持可能な第2の加熱ローラとを有する
光学シートの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第1の原盤は、前記第1の立体構造を外周面に有する、前記第1の加熱ローラと前記第1の冷却ローラとの間に架け渡された第1のエンドレスベルトからなり、
前記第1の搬送機構は、前記第1の加熱ローラ及び前記第1の冷却ローラの少なくとも一方を回転駆動する第1の駆動源を含む
光学シートの製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第2の処理部は、前記第1の冷却ローラと前記第2の加熱ローラとの間で前記樹脂シートを挟持した後、前記第1のエンドレスベルトから前記樹脂シートを剥離する
光学シートの製造装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第2の処理部は、前記第1の冷却ローラに前記樹脂シートを接触させた後、前記第1の冷却ローラと前記第2の加熱ローラとの間で前記樹脂シートを挟持する
光学シートの製造装置。
【請求項6】
請求項3に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第3の処理部は、
前記第4の温度に冷却されることが可能な第2の冷却ローラと、
前記第2の原盤を挟んで前記第2の冷却ローラと対向し、前記第2の原盤との間で前記樹脂シートを挟持可能な第2のニップローラとを有する
光学シートの製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第2の原盤は、前記第2の立体構造を外周面に有する、前記第2の加熱ローラと前記第2の冷却ローラとの間に架け渡された第2のエンドレスベルトからなり、
前記第2の搬送機構は、前記第2の加熱ローラ及び前記第2の冷却ローラの少なくとも一方を回転駆動する第2の駆動源を含む
光学シートの製造装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第1の構造体及び前記第2の構造体の少なくともいずれかは、プリズム形状を有する
光学シートの製造装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第1の立体構造及び前記第2の立体構造の少なくともいずれかは、曲面形状を有する
光学シートの製造装置。
【請求項10】
請求項1に記載の光学シートの製造装置であって、
前記第1及び第3の温度は、前記樹脂シートのガラス転移点より高い温度であり、
前記第2及び第4の温度は、前記樹脂シートのガラス転移点より低い温度である
光学シートの製造装置。
【請求項11】
樹脂シートの第1の面に、第1の温度に加熱された第1の原盤を用いて第1の立体構造を形成し、
前記第1の面を前記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却しながら、前記樹脂シートの前記第1の面とは反対側の第2の面に、前記第2の温度よりも高い第3の温度に加熱された第2の原盤を用いて第2の立体構造を形成し、
前記第2の面を前記第3の温度よりも低い第4の温度に冷却する
光学シートの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の光学シートの製造方法であって、
前記第2の面に前記第2の立体構造を形成した後、前記第1の面から前記第1の原盤を剥離する
光学シートの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の光学シートの製造方法であって、
前記第1の原盤として、表面に前記第1の立体構造に対応する形状が形成され、前記第1の温度に加熱されることが可能な第1の加熱ローラと前記第2の温度に冷却されることが可能な第1の冷却ローラとの間に架け渡された第1のエンドレスベルトを用い、
前記第2の原盤として、表面に前記第2の立体構造に対向する形状が形成され、前記第3の温度に加熱されることが可能な第2の加熱ローラと前記第4の温度に冷却されることが可能な第2の冷却ローラとの間に架け渡された第2のエンドレスベルトを用いる
光学シートの製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の光学シートの製造方法であって、
前記樹脂シートは、透明な熱可塑性樹脂からなる
光学シートの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の光学シートの製造方法であって、
前記樹脂シートは、結晶性樹脂からなる
光学シートの製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68007(P2011−68007A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220438(P2009−220438)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】