説明

光学データ記録用光学層におけるスクアリン酸色素の使用

本発明は、光学データ記録用の、好ましくは450nmまでの波長のレーザーを使用する光学データ記録用の光学層におけるスクアリン酸の使用に関する。本発明はさらに、光学層にスクアリン酸をベースとした色素を使用した、ブルーレーザーの照射によって情報を記録再生できるライトオンリーリードメニー(WORM)型光学データ記録媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学データ記録用の、好ましくは450nmまでの波長のレーザーを使用する光学データ記録用の光学層におけるスクアリン酸色素の使用に関する。本発明はさらに、光学層にスクアリン酸色素を使用した、ブルーレーザーの照射によって情報を記録再生できるライトワンスリードメニー(WORM)型光学記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機色素はダイオード−レーザー光学記録の分野においてかなりの注目を集めている。市販の追記型コンパクトディスク(CD−R)及び追記型デジタル多用途ディスク(DVD−R)は、記録層として、フタロシアニン、ヘミシアニン、シアニン及び金属アゾ構造をベースにした数多くの色素を含有することができる。これらの色素は、レーザー波長基準を用いるそれぞれの分野において適している。色素媒体のその他の一般的な必要条件は、強い吸収、高い反射、高い記録感度、低い熱伝導性並びに光及び熱に対する安定性、記録耐久性若しくは非毒性である。
【0003】
産業上の適用のために、これらの色素は薄いフィルムを調製するスピンコーティング工程に適していなくてはならず、すなわち、スピンコーティング工程において一般的に適用される有機溶媒に十分に溶解しなければならない。
【0004】
WORM(ライトワンスリードメニー)型及び消去可能光学記録媒体は、物理的変形によって、光学特性の変更によって、並びに記録前後の記録層の相特性及び磁気特性によって引き起こされた反射の変動を検出することによって情報を再生する。追記型コンパクトディスク(CD−R)は、WORM型光学記録媒体として広く知られている。最近、情報保存容量が4.7GBまで増大したデジタル多用途ディスク(DVD)が商品化された。このDVD−R技術は、光源として波長630〜670nmの赤色ダイオードレーザーを採用している。これによって、ピットサイズ及びトラック間隔を減少させることができ、情報保存容量をCD−Rと比較して6〜8倍まで増加させることができる。
【0005】
ブルーレイ(登録商標)ディスク(ブルーレイ(登録商標)ディスクは、株式会社日立製作所、LGエレクトロニクス社、松下電器産業株式会社、パイオニア株式会社、ロイヤルフィリップスエレクトロニクス、サムソン電子、シャープ株式会社、ソニー株式会社、トムソン・マルチメディアによって開発された規格である。)は、光学記録技術において今後の画期的な出来事となるだろう。この新たな規格では、直径12cmのディスクで、データ記録が記録層当たり27GBまで増加する。波長405nmの青色ダイオードレーザー(GaN又はSHGレーザーダイオード)を採用することによって、ピットサイズ及びトラック間隔をさらに減少させることができ、保存容量を甚だしく増加させることもできる。
【0006】
光学データ記録媒体の構成は当業界では公知である。光学データ記録媒体は一般的に、基板及び記録層、光学層を含む。通常有機ポリマー材料のディスク又はwaverを基板として使用する。好ましい基板はポリカーボナート(PC)又はポリメチルメタクリラート(PMMA)である。この基板は高い光学品質の平らで均質な表面を提供しなければならない。この光学層に光学品質の高い、厚さの限定された薄い均質なフィルムを沈着させる。最終的に、反射層、たとえば、アルミニウム、金又は銅をこの光学層に沈着させる。
【0007】
高度な光学データ記録媒体は、保護層、接着層又は追加的光学層などの他の層を含んでよい。
【0008】
薄くて均質なフィルムの光学層を形成するために、スピンコーティング、真空留去、ジェットコーティング、ローリングコーティング又は浸漬によって材料を通常沈着させる。工場における好ましい方法は、厚さ約70nmから250nmまでの光学層を形成するスピンコーティングである。スピンコーティング方法を適用するために、光学層の材料は有機溶媒に対する溶解性が高くなければならない。
【0009】
国際公開第03/079339号A1(Bayer AG)は、光学データ担体の情報層中における光吸収化合物としてのスクアリリウム色素について開示している。特に、国際公開第03/079339号A1は、赤色レーザー光(635〜660nm)で作用する、DVD−Rディスク中の光学記録に有用な以下の一般構造の二置換スクアリリウムを開示している。
【0010】
【化3】

【0011】
特開第2001322356号(Ricoh KK)は、波長600から720nmでの光学記録のために少なくとも1種のアゾ金属キレート化合物を含む混合物中における二置換スクアリリウム化合物を開示している。
【0012】
特開第06184109号(Mitsubushi Chem.Ind.)は、ポリマーの着色材料として、液晶用2色色素として、電子写真印刷機用の光感受性物質として、光学ディスク用の記録物質として、非線形光学物質として、及び半導体レーザー適用の分野における近赤外線カットフィルター用物質として有用な以下の一般式の二置換スクアリリウム化合物を開示している。
【0013】
【化4】

【0014】
特開第06184134号(Mitshbishi Chem.Ind.)は、ポリマー着色材料、液晶用の2色顔料、電子写真印刷機などの電子写真用の光感受性物質、光学ディスク用、及び近赤外線カットフィルター物質などの半導体レーザー適用のための記録物質として、色素分野で有用な以下の一般式の二置換スクアリリウム化合物を開示している。
【0015】
【化5】

【0016】
独国特許第4040906号(BASF AG)は、以下の一般式の非対称アズレンスクアリン酸色素及び前記色素を含む光学記録媒体を開示している。記録用に使用するレーザー波長は、750〜900nmである。
【0017】
【化6】

【0018】
独国特許第1152001号B1(Kyowa Hakko Kogyo Co.)は、以下の一般式のピラゾール及びインドリン単位を有する非対称スクアリリウム化合物及び前記スクアリリウム化合物を含む光学記録媒体を開示している。このスクアリリウム化合物の最大吸収波長は550〜600nmである。
【0019】
【化7】

【0020】
欧州特許第1334998号A1(Kyowa Hakko Kogyo Co.)は、以下の一般式のピラゾール及びインドリン単位を有する非対称スクアリリウム金属複合体及び前記スクアリリウム複合体を含む光学記録媒体を開示している。このスクアリリウム化合物の最大吸収波長は550〜600nmである。
【0021】
【化8】

【0022】
Matsui他(Dyes and Pigments 58、2003、219〜226)は、TiO太陽電池用の増感剤として、3−アリール−4−ヒドロキシシクロブト−3−エン−1,2−ジオン、すなわち、1置換スクアリリウム化合物を開示している。
【0023】
1996年の独国特許第1670364号(Chemische Werke Huls AG)は、1−フェニル−2,3−ジアルキル−4−[2’−ヒドロキシ−3’,4’−ジオキソ−シクロ−ブテン−(1’)−イル]−ピラゾール−5−オン、すなわち、1置換スクアリリウム化合物及びその調製方法を開示している。
【0024】
米国特許第5106997号(Fuji Xerox Co.)は、一般式
【0025】
【化9】

のスクアリリウム誘導体を開示ししており、式中、X及びZは、非線形光学素子で使用するために、明細書に定義される。
【0026】
驚くべきことに今日では、前述の1置換スクアリン酸誘導体は、光学データ記録用光学層の色素化合物として有用であることが発見された。
【0027】
したがって、本発明は以下に説明するような1置換スクアリン酸化合物を含む光学データ記録用光学層及び光学データ記録媒体のための前記光学層の使用に関する。より具体的には、本発明は、光学層において1置換スクアリン酸色素を使用した、好ましくは405nmのブルーレーザーの照射によって情報を記録再生できるライトワンスリードメニー(WORM)型光学データ記録媒体に関する。
【0028】
本発明は、少なくとも1種の式(I)の色素化合物を含む光学データ記録用光学層を対象とし、
【0029】
【化10】

【0030】
式中、Xがヒドロキシ(−OH)又はチオール(−SH);
が、非置換であるか、若しくはヒドロキシ(−OH)、C6〜12アリール、ハロゲン、−NR’R”(R’及びR”は独立して水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アリールである)によって置換されたフェニル、ベンジル若しくはC1〜12アルキルから選択されたOR若しくはSR
アルカリ陽イオン若しくはアルカリ土類陽イオンなどの無機陽イオン又はピリジニウム若しくはキノリニウム若しくはイソキノリニウム若しくはアンモニウム(−NR)(RからRは独立して水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アリールから選択される)などの有機陽イオンから選択された陽イオン対イオンを有するO又はS
及びRが独立して水素、C1〜12アルキルベンジル若しくはC6〜12アリールである−NRを表し、
は部分(1)から(5)の1つを表し、
【0031】
【化11】

【0032】
式中、R33及びR34は互いに独立して水素、C1〜12アルキル、ベンジル又はC6〜12アリールを表し、NR3334はピロリジニル、ピペリジル又はモルホリルを表し、
からR13、R15からR18、及び
22からR26は互いに独立して、水素、C1〜12アルコキシ、C1〜12アルキル(非置換であるか、若しくはヒドロキシ(−OH)、C6〜12アリール、ハロゲン、−NR’R”であり、R’及びR”は独立して水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アリールである。)、ヒドロキシ(−OH)、ハロゲン、Xが塩素若しくはフッ素であるCX、ニトロ(−NO)、シアノ(CN)、C6〜12アリール又は−NR’R”(R’及びR”は独立して水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アリールである。)を表し、
14及び
19からR21は互いに独立して、水素又はC1〜12アルキルであり、
27からR28は互いに独立して、水素、ベンジル、C6〜12アリール又は非置換若しくはヒドロキシ、C6〜12アリール、ハロゲン若しくは−NR’R”によって置換されたC1〜12アルキルを表し、R’及びR”は独立して水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アリールである。
【0033】
好ましい態様では、本発明は少なくとも1種の式(I)の色素化合物を含む光学データ記録用光学層を対象とし、
式中、Xはヒドロキシ(−OH)、
がベンジル若しくはC1〜12アルキルから選択されたOR、又は
及びRが独立して水素若しくはC1〜12アルキルであるNRを表し、
は部分(1)を表し、
式中、R26は、水素、C1〜12アルコキシ、C1〜12アルキル、ヒドロキシ(−OH)、ハロゲン、Xがフッ素であるCX、ニトロ(−NO)、シアノ(CN)、C6〜12又はNR’R”(R’及びR”が独立して水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アルキルである)を表し、
27及びR28は互いに独立して、水素、ベンジル、C6〜12アリール又はC1〜12アルキルを表す。
【0034】
より好ましい態様では、本発明は少なくとも1種の式(I)の色素化合物を含む光学データ記録用光学層を対象とし、
Xはヒドロキシ(−OH)を表し、
は部分(1)を表し、
式中、R26は、水素又はC1〜12アルキルを表し、
27及びR28は互いに独立して、C6〜12アリール又はC1〜12アルキルを表す。
【0035】
最も好ましい実施形態では、本発明は少なくとも1種の式(I)の色素化合物を含む光学データ記録用光学層を対象とし、
Xはヒドロキシ(−OH)を表し、
は部分(1)を表し、
式中、R26及びR27は、メチルを表し、
28はフェニルを表す。
【0036】
本発明による光学データ記録用光学層はまた、前記で定義した式(I)の色素化合物の2種類以上、好ましくは2種類の混合物を含んでよい。
【0037】
さらに、本発明は以下の段階、
(a)基板を用意する段階、
(b)式(I)の色素化合物を有機溶媒に溶解し、溶液を形成する段階、
(c)基板(a)に溶液(b)をコーティングする段階、
(d)溶媒を蒸発させて色素層(光学層)を形成する段階を含む光学データ記録用光学層の製造方法に関する。
【0038】
好ましい基板はポリカーボナート(PC)又はポリメチルメタクリラート(PMMA)である。
【0039】
有機溶媒は、C1〜8アルコール、ハロゲン置換C1〜8アルコール、C1〜8ケトン、C1〜8エーテル、ハロゲン置換C1〜4アルカン又はアミドから選択される。好ましいC1〜8アルコール又はハロゲン置換C1〜8アルコールは、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコール(DAA)、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、トリクロロエタノール、2−クロロエタノール、オクタフルロペンタノール又はヘキサフルオロブタノールである。
【0040】
好ましいC1〜8ケトンは、たとえば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン又は3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノンである。
【0041】
好ましいハロゲン置換C1〜4アルカンは、たとえば、クロロホルム、ジクロロメタン又は1−クロロブタンである。好ましいアミドは、たとえば、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドである。
【0042】
得られた光学層(色素層)の厚さは70から250nmであることが好ましい。
【0043】
好ましい態様では、本発明は、350〜450nm、好ましくは約405nmのレーザー波長範囲において、たとえば、WORMディスク様式の高密度記録物質に適した光学データ記録用光学層を提供する。
【0044】
式(I)の色素化合物は、必要な光学特性(たとえば、高い吸光率、高い記録感受性など)、有機溶媒での優れた溶解度、優れた光安定性及び200〜350℃の分解温度を有する。
【0045】
高密度光学データ記録媒体の調製
高密度光学データ記録媒体/高密度光学ディスクの調製は従来、以下の段階、
(a)第1の基板を用意する段階、
(b)有機溶媒に色素を溶解して溶液を形成する段階、
(c)第1の溶液を第1の基板にコーティングする段階、
(d)この溶液を乾燥して色素層を形成する段階、及び
(e)この色素層に反射層を沈着する段階、及び
(f)第2の基板をこの反射層に沈着する段階を含む。
【0046】
段階(f)では、第2の基板を第1の基板に貼合せて高密度光学ディスク記録媒体を形成することが好ましい。従来の貼合せ(bonding)技術は、印刷、接着(glueing)又は融解である。
【0047】
本発明によるスクアリン酸色素の調製
式(I)のスクアリン酸色素化合物(特にRが部分(2)から(5)である化合物)は、有機溶媒中において、場合によっては酸性若しくは塩基性補助物とともに、反応化合物(B−1)、(B−2)、(B−3)(B−4)又は(B−5)と化合物(A)とを1:1の比で縮合させることによって得られる。X又はYがヒドロキシを表さないならば、その後、プロトン性極性溶媒中で加水分解段階を行うことができる。
【0048】
【化12】

【0049】
式中、X及びYは互いに独立して、ヒドロキシ、塩素、臭素、メトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシであり、R33、R34及びRからR28は前記のように定義される。
【0050】
実施例
【実施例1】
【0051】
1フェニル−2,3−ジメチルピラゾール−5−オン30部及び3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン18部を、ブタノール400部及びトルエン150部の混合物中で、ディーンスタークトラップによって16時間還流する。生成物を濾過して、ブタノールで洗浄する。
【0052】
【化13】

【0053】
収率:67%、分解点(TGA):259℃、UV−Vis(EtOH)λmax:343nm;ε(λmax):24700l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):285(M+1)
【実施例2】
【0054】
a)3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン200部をチオニルクロリド455部及びジメチルホルムアミド7部とともに75℃で8時間撹拌する。粗生成物をヘキサンから再結晶化し、乾燥して3,4−ジクロロ−シクロブト−3−エン−1,2−ジオン182部を得る。
【0055】
b)ジクロロメタン80部に溶かしたN,N−ジエチルアニリン9.8部をジクロロメタン160部に溶かした既に得られた化合物10部の溶液に滴下し、室温で4時間撹拌する。溶媒を蒸留によって除去し、残渣を酢酸160部及び水40部の混合物中で4時間還流する。この溶媒150部を蒸留して、水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって残存する溶液を中和する。この反応混合物を濾過して、アセトンから圧縮塊を再結晶化して、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−ヒドロキシ−シクロブト−3−エン−1,2−ジオン6部を得る。
【0056】
【化14】

【0057】
収率:39%;分解点(TGA)326℃;UV−Vis(DMSO)λmax:381nm;ε(λmax):39000;MS(ポジティブモード):246(M+1)
【実施例3】
【0058】
実施例2で説明した方法によって、この色素を合成するが、N,N−ジエチルアニリンの代わりにN−ベンジル−N−エチル−アニリンを使用する。
【0059】
【化15】

【0060】
収率:30%、分解点(TGA):199℃、UV−Vis(CHCl)λmax:401nm;ε(λmax):42000l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):308(M+1)
【実施例4】
【0061】
実施例2で説明した方法によって、この色素を合成するが、N,N−ジエチルアニリンの代わりにN,N−ジフェニルメチルアミンを使用する。
【0062】
【化16】

【0063】
収率:57%、分解点(TGA):238℃、UV−Vis(DMSO)λmax:387nm;ε(λmax):19900l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):280(M+1)
【実施例5】
【0064】
ジクロロメタン650部に溶かした3,4−ジクロロ−シクロブト−3−エン−1,2−ジオン36部及び2,6−ジ(tert−ブチル)フェノール49部の混合物をジクロロメタン650部に溶かした塩化アルミニウム(III)32部に滴下する。混合物を還流温度で2時間撹拌する。過剰な塩化アルミニウム(III)を氷500部で加水分解する。有機層を分離し、留去して、得られた残渣を酢酸600部及び水200部中で4時間還流する。その後、この溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって中和し、生成物を濾過して、乾燥する。
【0065】
【化17】

【0066】
収率:25%、分解点(TGA):318℃、UV−Vis(HO)λmax:340nm;ε(λmax):25600l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):303(M+1)
【実施例6】
【0067】
a)3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブタン−1,2−ジオン10部をエタノール250部中で還流する。3時間後、この溶媒を蒸留によって除去し、新鮮なエタノールによって置換し、1時間還流する。この方法をさらに2回繰り返す。溶媒を蒸留後、残渣をヘキサンで抽出する。ヘキサン相から、留去によって3,4−ジエトキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン6部を得る。
【0068】
b)エタノール500部に溶かした2−メチレン−1,3,3−トリメチルインドリン58部の溶液に、トリエチルアミン33部、及びエタノール600部に溶かした既に得られた化合物55部を添加する。室温で2時間撹拌した後、この溶媒を蒸留して、飽和水酸化ナトリウム水溶液40部を含有するエタノール500部中で残渣を5分間還流する。この混合物を希釈塩酸で中和し、生成物が沈殿するまで留去する。この生成物を濾過して、乾燥する。
【0069】
【化18】

収率:56%、分解点(TGA):286℃、UV−Vis(EtOH)λmax:418nm;ε(λmax):18600l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):270(M+1)
【実施例7】
【0070】
この色素を実施例1で説明した方法によって合成するが、N,N−ジエチルアニリンの代わりにN−(3−メトキシフェニル)−N−ジメチルアミンを使用する。
【0071】
【化19】

【0072】
収率:43%、分解点(TGA):243℃、UV−Vis(CHCl)λmax:396nm;ε(λmax):38600l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):248(M+1)
【実施例8】
【0073】
この色素を実施例1で説明した方法によって合成するが、N,N−ジエチルアニリンの代わりにN−フェニルモルフォリンを使用する。
【0074】
【化20】

【0075】
収率:18%、分解点(TGA):254℃、UV−Vis(CHCl)λmax:372nm;ε(λmax):38100l.mol−1.cm−1;MS(ポジティブモード):260(M+1)
【0076】
適用例
1置換スクアリン酸色素化合物の光学及び熱特性を研究した。この色素は、所望する波長で高い吸収を示す。さらに、ディスク反射性及び明瞭なマークエッジの形成に依然として重要である吸収スペクトルの形状は、350から500nm、好ましくは350から400nmの範囲内に含まれる1つの主要なバンドを構成する。より精密には、反射指数のn値が1.7と2.7との間で求められる。光安定性は、光学データ記録で使用する消光剤で通常安定化される市販の色素と匹敵することが発見された。必要な温度範囲内での熱分解の鋭い閾値は、光学データ記録用光学層での適用に望ましいと考えられる新規1置換スクアリン酸色素の特徴である。結論として、1置換スクアリン酸色素化合物は、光学データ記録、特にブルーレーザー範囲の次世代光学データ記録媒体(ブルーレイ(登録商標)ディスク)における色素の使用のために、産業界から第1に必要とされている規格に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の式(I)の色素化合物を含む光学データ記録用光学層。
【化1】

(式中、Xは、ヒドロキシ(−OH)又はチオール(−SH);
OR又はSR(Rは、非置換であるか、又はヒドロキシ(−OH)、C6〜12アリール、ハロゲン、−NR’R”(R’及びR”は、独立して、水素、C1〜12アルキル又はC6〜12アリールである。)によって置換された、フェニル、ベンジル又はC1〜12アルキルから選択される。);
アルカリ陽イオン若しくはアルカリ土類陽イオンなどの無機陽イオン又はピリジニウム若しくはキノリニウム若しくはイソキノリニウム若しくはアンモニウム(−NR)(RからRは、独立して、水素、C1〜12アルキル若しくはC6〜12アリールから選択される。)などの有機陽イオンから選択された陽イオン対イオンを有するO又はS
−NR(R及びRは、独立して、水素、C1〜12アルキルベンジル若しくはC6〜12アリールである。)を表し、
は、部分(1)から(5)の1つを表し、
【化2】

式中、R33及びR34は、互いに独立して、水素、C1〜12アルキル、ベンジル若しくはC6〜12アリールを表すか、又はNR3334はピロリジル、ピペリジル又はモルホリルを表し、
からR13、R15からR18、及び
22からR26は、互いに独立して、水素、C1〜12アルコキシ、C1〜12アルキル(非置換であるか、又はヒドロキシ(−OH)、C6〜12アリール、ハロゲン、−NR’R”(R’及びR”は、独立して、水素、C1〜12アルキル又はC6〜12アリールである。)、ヒドロキシ(−OH)、ハロゲン、CX(Xは、塩素又はフッ素である。)、ニトロ(−NO)、シアノ(CN)、C6〜12アリール又は−NR’R”(R’及びR”は、独立して、水素、C1〜12アルキル又はC6〜12アリールである。)を表し、
14及び
19からR21は、互いに独立して、水素又はC1〜12アルキルを表し、
27からR28は、互いに独立して、水素、ベンジル、C6〜12アリール又は非置換若しくはヒドロキシ(−OH)、C6〜12アリール、ハロゲン、−NR’R”(R’及びR”は、独立して、水素、C1〜12アルキル又はC6〜12アリールである。)によって置換されたC1〜12アルキルを表す。)を表す。)
【請求項2】
Xがヒドロキシ(−OH)、
がベンジル若しくはC1〜12アルキルから選択されたOR、又は
及びRが独立して水素若しくはC1〜12アルキルであるNRを表し、
が部分(1)を表し、
式中、R26は、水素、C1〜12アルコキシ、C1〜12アルキル、ヒドロキシ(−OH)、ハロゲン、Xがフッ素であるCX、ニトロ(−NO)、シアノ(CN)、C6〜12アリール又はNR’R”(R’及びR”が独立して水素、C1〜12アルキル又はC6〜12アリールである。)を表し、
27及びR28が、互いに独立して、水素、ベンジル、C6〜12アリール又はC1〜12アルキルを表す、請求項1に記載の光学データ記録用光学層。
【請求項3】
Xがヒドロキシ(−OH)を表し、
が部分(1)を表し、
式中、R26が、水素又はC1〜12アルキルを表し、
27からR28が、互いに独立して、C6〜12アリール又はC1〜12アルキルを表す、請求項1に記載の光学データ記録用光学層。
【請求項4】
Xがヒドロキシ(−OH)を表し、
が部分(1)を表し、
式中、R26及びR27がメチルを表し、
28がフェニルを表す、
請求項1に記載の光学データ記録用光学層。
【請求項5】
(a)基板を用意する段階、
(b)溶液を形成するために、請求項1から4で定義されている式(I)の色素化合物を有機溶媒に溶解する段階、
(c)基板(a)上に溶液(b)をコーティングする段階、
(d)溶媒を蒸発させて色素層(光学層)を形成する段階、
を含む、請求項1から4に記載の光学データ記録用光学層の製造方法。
【請求項6】
前記基板がポリカーボナート(PC)又はポリメチルメタクリラート(PMMA)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、C1〜8アルコール、ハロゲン置換されたC1〜8アルコール、C1〜8ケトン、C1〜8エーテル、ハロゲン置換されたC1〜4アルカン又はアミドから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記C1〜8アルコール又はハロゲン置換されたC1〜8アルコールがメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコール(DAA)、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、トリクロロエタノール、2−クロロエタノール、オクタフルオロペンタノール又はヘキサフルオロブタノールから選択され、
前記C1〜8ケトンがアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン又は3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノンから選択され、
前記ハロゲン置換されたC1〜4アルカンがクロロホルム、ジクロロメタン又は1−クロロブタンから選択され、及び
前記アミドがジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドから選択される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から4に記載の光学データ記録用光学層を含む光学記録媒体。
【請求項10】
請求項1から4に記載の光学データ記録用光学層を含む、約405nmのブルーレーザーの照射で情報を記録及び再生することができる光学記録媒体。

【公表番号】特表2008−501548(P2008−501548A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514208(P2007−514208)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001694
【国際公開番号】WO2005/119671
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(596081005)クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド (27)
【Fターム(参考)】