説明

光学フィルタの製造方法と光学フィルタの判別方法および有機EL表示装置

【課題】表示装置への使用が可能な光学フィルタの製造方法と、表示装置への使用が可能な光学フィルタであるか否かを確実に判別する方法と、信頼性が高い有機EL表示装置とを提供する。
【解決手段】光学フィルタの製造方法を、透明基材上にカラーフィルタ層を形成し、その後、脱ガス処理を施すものとし、光学フィルタの判別方法は、光学フィルタの透明基材上の積層体を10mg削り取り、この積層体を窒素雰囲気下にて220℃で3時間加熱し、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]が1%以下の場合に、有機EL表示装置用として良品であると判別するものとし、有機EL表示装置は、本発明の製造方法で製造した光学フィルタの透明基材と反対側に、電極間に少なくとも発光層を有する有機EL素子を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタ、特に表示装置用の光学フィルタの製造方法と判別方法、および有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた有機EL表示装置は、自発光により視認性が高いこと、液晶表示装置と異なり全固体表示装置であること、温度変化の影響をあまり受けないこと、視野角が大きいこと等の利点をもっており、近年、フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の有機発光表示装置として実用化が進んでいる。
有機EL表示装置としては、例えば、(1)三原色の有機EL素子を各発光色毎に所定のパターンで配列する方式、(2)白色発光の有機EL素子を使用し、三原色のカラーフィルタ層を介して表示する方式、(3)青色発光の有機EL素子を使用し、蛍光色素を利用した色変換蛍光体層(CCM層)を設置して、青色光を緑色蛍光や赤色蛍光に変換して三原色表示をするCCM方式等が提案されている。
【0003】
このような有機EL表示装置では、有機EL素子から出た光が、例えば、カラーフィルタ層や色変換蛍光体層等を備えた光学フィルタを透過して、観察者に表示光として認識される。しかし、有機EL素子は、光学フィルタを構成するカラーフィルタ層や色変換蛍光体層等から発生する水蒸気、酸素、有機モノマー、低分子成分等のガスにより劣化して、ダークエリア、ダークスポット、シュリンク等の欠陥を生じるという問題があった。
このような問題を解消するために、光学フィルタと有機EL素子との間にパッシベーション膜(バリア層)を介在させた有機EL表示装置が開発されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−276446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光学フィルタに透明バリア層を形成することにより、有機EL表示装置の製造工程が煩雑となり、製造コストの低減に支障を来たすという問題があった。
一方、光学フィルタに透明バリア層を形成しない場合には、光学フィルタに有機EL素子を形成した後に、光学フィルタが不良品であり、表示装置全体が欠陥品となることが避けられなかった。これを防止するために、ガス発生に関して光学フィルタの良否の判別が必要であるが、従来は確実な判別方法がなかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、表示装置への使用が可能な光学フィルタの製造方法と、表示装置への使用が可能な光学フィルタであるか否かを確実に判別する方法と、信頼性が高い有機EL表示装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の光学フィルタの製造方法は、透明基材上にカラーフィルタ層を形成し、その後、脱ガス処理を施すような構成とした。
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理は、低酸素濃度下での加熱処理であるような構成とした。さらに、この低酸素濃度下での加熱処理は、不活性ガス雰囲気下での加熱処理、および、真空中での加熱処理の少なくとも1種であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理は、熱風ブロー処理、マイクロ波照射処理、および、遠赤外線照射処理の少なくとも1種であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理は、シリコンオイル中での煮沸処理、有機溶剤中での煮沸処理、および、有機溶剤中での超音波洗浄処理の少なくとも1種であるような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理は、凍結乾燥処理であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記カラーフィルタ層を被覆するように平坦化層を積層形成し、その後、前記脱ガス処理を施すような構成とした。
本発明の他の態様として、前記カラーフィルタ層上に色変換蛍光体層を形成し、これを被覆するように平坦化層を積層形成し、その後、前記脱ガス処理を施すような構成とした。
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理を施した後、透明バリア層を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理を施した後、無機アンカー層を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記脱ガス処理を施した後、透明バリア層を形成し、更に無機アンカー層を形成するような構成とした。
【0007】
本発明の光学フィルタの判別方法は、光学フィルタの透明基材上の積層体を10mg削り取り、該積層体を窒素雰囲気下にて220℃で3時間加熱し、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]が1%以下の場合に、有機EL表示装置用として良品であると判別するような構成とした。
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の光学フィルタの製造方法により製造された光学フィルタと、該光学フィルタの透明基材と反対側に、電極間に少なくとも発光層を有する有機EL素子を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光層は三原色の各発光層が所望のパターンで配列されたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光層は白色の発光層であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光層は青色の発光層であるような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記有機EL素子がアクティブマトリックス駆動方式のものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記アクティブマトリックス駆動方式を構成する対向した電極のうち、駆動素子を備えた電極側に前記光学フィルタが位置するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記アクティブマトリックス駆動方式を構成する対向した電極のうち、駆動素子を備えていない電極側に前記光学フィルタが位置するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記有機EL素子がパッシブマトリックス駆動方式のものであるような構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学フィルタの製造方法では、ダークエリア、ダークスポット、シュリンク等の欠陥発生が抑制された有機EL装置を可能とする光学フィルタを製造することができ、これにより、有機EL装置の製造工程での透明バリア層の形成を不要とすることができ、また、本発明において脱ガス処理後に更に透明バリア層を形成する場合には、より高品質の光学フィルタの製造が可能となる。
また、本発明の判別方法では、ガス発生が極めて少なく有機EL表示装置に使用可能な光学フィルタであるか否かを確実に判別することができ、有機EL素子の形成工程後の欠陥品発生を防止することができる。
さらに、本発明の有機EL表示装置は、構成部材から発生するガスによる有機EL素子の劣化が防止され、信頼性が高く、明瞭な表示が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[光学フィルタの製造方法]
本発明の光学フィルタの製造方法は、透明基材上にカラーフィルタ層を形成し、その後、脱ガス処理を施すものである。
脱ガス処理としては、低酸素濃度下での加熱処理とすることができ、この場合、例えば、不活性ガス雰囲気下での加熱処理、および、真空中での加熱処理を挙げることができる。尚、本発明において低酸素濃度とは、酸素濃度の上限が5%であり、酸素濃度0%を含むものである。
また、脱ガス処理として、熱風ブロー処理、マイクロ波照射処理、および、遠赤外線照射処理を挙げることができる。
また、脱ガス処理として、シリコンオイル中での煮沸処理、有機溶剤中での煮沸処理、および、有機溶剤中での超音波洗浄処理を挙げることができる。
さらに、脱ガス処理として、凍結乾燥処理を挙げることができる。
【0011】
上述の処理方法は、いずれかを単独で行ってもよく、2種以上の処理方法を組み合わせてもよい。このような脱ガス処理を施すことにより、本発明で製造される光学フィルタは、水蒸気、酸素、有機モノマー、低分子成分等のガス発生が極めて少なく、ダークエリア、ダークスポット、シュリンク等の欠陥発生が抑制された有機EL装置の製造を可能とする。
図1は、このような本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。図1に示される光学フィルタ1は、透明基材2と、この透明基材2の一方の面に、三原色の着色層3R,3G,3Bからなるカラーフィルタ層3と、着色層3R,3G,3Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス4を備えている。
本発明に使用可能な透明基材2としては、ガラス材料、樹脂材料、または、これらの複合材料からなるもの、例えば、ガラス板に保護プラスチックフィルムもしくは保護プラスチック層を設けたもの等が用いられる。
【0012】
上記の樹脂材料、保護プラスチック材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、例えば、有機EL表示装置用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。
また、透明基材2の厚さは、通常、50μm〜2.0mm程度とすることができる。
【0013】
このような透明基材2は、有機EL表示装置用の光学フィルタを製造する場合には、水蒸気や酸素等のガスバリア性の良好なものであれば更に好ましい。また、透明基材2に、水蒸気や酸素等のガスバリア層を形成してもよい。このようなガスバリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものであってよい。
本発明で形成するカラーフィルタ層3は、入射光を色補正したり、色純度を高めるものであるり、光学フィルタを使用する表示装置に応じて適宜設定することができ、上述の例では、三原色の着色層3R,3G,3Bからなるものであるが、これに限定されるものではない。また、カラーフィルタ層の形成に使用する材料は、特に限定されず、例えば、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、反応性化合物および溶媒を含有する顔料分散組成物で形成することができる。さらに、カラーフィルタ層3の厚みは、使用する材料、入射光の光学特性等に応じて適宜設定することができ、例えば、0.5〜10μm程度の範囲で設定することができる。
また、本発明の光学フィルタの製造方法では、カラーフィルタ層を被覆するように平坦化層を積層形成し、その後、上述のような脱ガス処理を施してもよい。
【0014】
図2は、このような本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。図2に示される光学フィルタ11は、透明基材12と、この透明基材12の一方の面に、三原色の着色層13R,13G,13Bからなるカラーフィルタ層13と、着色層13R,13G,13Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス14と、カラーフィルタ層13を被覆する平坦化層15を備えている。
【0015】
平坦化層15の形成は、樹脂材料をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布し、硬化させることにより行うことができる。平坦化層の材料としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、4−メチルペンテン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレナフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂等の透明樹脂材が挙げられる。さらには、ポリシロキサンオリゴマー等からなるゾルゲル材料もしくはポリシロキサンオリゴマー等と有機ポリマー等とからなる有機−無機ハイブリッド材料を挙げることもできる。
【0016】
尚、光学フィルタ11における透明基材12は、上述の透明基材2と同様とすることができ、カラーフィルタ層13の形成、平坦化層15形成後の脱ガス処理は、上述の光学フィルタ1の作製と同様に行うことができる。
また、本発明の光学フィルタの製造方法では、カラーフィルタ層上に色変換蛍光体層を形成し、これを被覆するように平坦化層を積層形成し、その後、上述のような脱ガス処理を施してもよい。
【0017】
図3は、このような本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。図3に示される光学フィルタ21は、透明基材22と、この透明基材22の一方の面に、三原色の着色層23R,23G,23Bからなるカラーフィルタ層23と、着色層23R,23G,23Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス24と、カラーフィルタ層23上に配設された色変換蛍光体層26と、この色変換蛍光体層26を被覆する平坦化層25を備えている。
色変換蛍光体層26は、入射光を所望の色の蛍光に変換するための層であり、図示例では、有機EL素子で発光された青色光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層26R、青色光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層26G、青色光をそのまま透過する青色変換ダミー層26Bからなっている。そして、赤色変換蛍光体層26R、緑色変換蛍光体層26G、青色変換ダミー層26Bが、カラーフィルタ層23の三原色の着色層23R,23G,23Rに対応した位置に形成されている。
【0018】
色変換蛍光体層26の形成は、例えば、蛍光色素を単体で使用し、所望のパターンマスクを介して真空蒸着法、スパッタリング法により帯状に形成することができる。また、例えば、蛍光色素と樹脂とを分散、または可溶化させた塗布液をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、上記の塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により、樹脂中に蛍光色素を含有した層として形成することができる。
【0019】
上記の青色発光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層26Rに使用する蛍光色素としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート等のピリジン色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等が挙げられる。また、青色発光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層26Gに使用する蛍光色素としては、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素系染料、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド色素等が挙げられる。さらに、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の各種染料も蛍光性があれば使用することができる。上述のような蛍光色素は単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。赤色変換蛍光体層および緑色変換蛍光体層が樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、蛍光色素の含有量は、使用する蛍光色素、色変換蛍光体層の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、使用する樹脂100重量部に対し0.1〜1重量部程度とすることができる。
【0020】
また、青色変換ダミー層26Bは、有機EL素子で発光された青色光をそのまま透過するものであり、赤色変換蛍光体層26R、緑色変換蛍光体層26Gとほぼ同じ厚みの透明樹脂層とすることができる。
赤色変換蛍光体層および緑色変換蛍光体層が樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等の透明(可視光透過率50%以上)樹脂を使用することができる。また、色変換蛍光体層のパターン形成をフォトリソグラフィー法により行う場合、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト樹脂を使用することができる。さらに、これらの樹脂は、上述の青色変換ダミー層に使用することができる。
【0021】
このような色変換蛍光体層26の厚みは、例えば、10〜20μm程度とすることができ、各色の色変換蛍光体層間で厚みが異なるように形成してもよい。
尚、光学フィルタ21における透明基材22は、上述の透明基材2と同様とすることができ、カラーフィルタ層23の形成、平坦化層25の形成、および、脱ガス処理は、上述の光学フィルタ1,11の作製と同様に行うことができる。
上述のような本発明の光学フィルタの製造方法では、水蒸気、酸素、有機モノマー、低分子成分等のガス発生が極めて少ない光学フィルタの製造が可能であるが、ガス発生防止の効果を更に高めるために、脱ガス処理を施した後、透明バリア層を形成してもよい。また、本発明の光学フィルタの製造方法では、脱ガス処理を施した後、あるいは、上記の透明バリア層を形成した後に、無機アンカー層を形成してもよい。
【0022】
図4は、このような本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。図4に示される光学フィルタ31は、透明基材32と、この透明基材32の一方の面に、三原色の着色層33R,33G,33Bからなるカラーフィルタ層33と、着色層33R,33G,33Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス34と、カラーフィルタ層33を被覆する平坦化層35、透明バリア層37、無機アンカー層38を備えている。
透明バリア層37としては、電気絶縁性の無機酸化物膜を設けることが好ましく、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム等の1種あるいは2種以上の酸化物を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜方式により形成することができる。形成する透明バリア層の厚みは、バリア性と透明性とを考慮して0.01〜1μmの範囲で適宜設定することができる。このような透明バリア層は、上記のような無機酸化物膜からなる2層以上の多層構成であってもよく、また、窒化珪素等の窒化物を副成分として含有したものであってもよい。
【0023】
また、無機アンカー層38は、本発明により製造された光学フィルタ上に、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の透明導電膜を成膜する場合において、透明導電膜の密着性を向上させる作用をなす。このような無機アンカー層としては、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、酸窒化珪素、窒化珪素等の1種あるいは2種以上を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜方式により形成することができる。形成する無機アンカー層の厚みは、透明性を考慮して0.005〜1μmの範囲で適宜設定することができる。
【0024】
尚、光学フィルタ31における透明基材32は、上述の透明基材2と同様とすることができ、カラーフィルタ層33の形成、平坦化層35の形成、および、脱ガス処理は、上述の光学フィルタ1,11の作製と同様に行うことができる。
本発明の光学フィルタの製造方法は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブラックマトリックス4,14,24,34を形成しないものであってもよい。
【0025】
[光学フィルタの判別方法]
本発明の光学フィルタの判別方法は、光学フィルタが有機EL表示装置に使用可能な程度にガス発生が抑制されたものであるか否かを判別するものである。
このような本発明の光学フィルタの判別方法は、光学フィルタの透明基材上の積層体を10mg削り取り、この積層体を窒素雰囲気下にて220℃で3時間加熱し、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]が1%以下の場合に、有機EL表示装置用として良品であると判別するものである。
【0026】
加熱条件が220℃未満、あるいは、3時間未満であると、重量減少率が正確に測定されず、確実な良品の判別が困難となる。また、上記の加熱条件よりも厳しい条件では、重量減少が過大に測定され、本来良品と判別されるべきものが不良とされ好ましくない。
尚、上述のような本発明の光学フィルタの製造方法においては、本発明の判別方法による判別の時期は、脱ガス処理が終了した後であり、例えば、無機アンカー層や透明バリア層を形成する場合には、これらの形成工程前に行う。
上述のような本発明の判別方法は、有機EL表示装置に使用可能な光学フィルタであるか否かを確実に判別することができ、有機EL素子の形成工程後の欠陥品発生を防止することができる。
【0027】
[有機EL表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、本発明の光学フィルタの製造方法により製造された光学フィルタと、この光学フィルタの透明基材と反対側に、電極間に少なくとも発光層を有する有機EL素子を備えるものである。
図5は、本発明の有機EL表示装置の一実施形態を示す概略構成図である。図5に示される有機EL表示装置41は、本発明の光学フィルタの製造方法により製造された光学フィルタ11と、有機EL素子42とを備えている。
光学フィルタ11は、上述の図2に示されるものと同様の構成であり、透明基材12と、この透明基材12の一方の面に、三原色の着色層13R,13G,13Bからなるカラーフィルタ層13と、着色層13R,13G,13Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス14と、カラーフィルタ層13を被覆する平坦化層15を備えている。
【0028】
有機EL素子42は、光学フィルタ11の透明基材12と反対側に配設されたものであり、その駆動方式がパッシブマトリックス駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式のいずれであってもよい。図示例では、有機EL素子42は、1対の第1電極層44、第2電極層45と、この第1電極層44、第2電極層45間に挟持された有機EL発光層43を備えたパッシブマトリックス駆動方式である。また、有機EL素子42がアクティブマトリックス駆動方式である場合には、第1電極層44を共通電極とし、第2電極層45を画素電極とし、この画素電極が信号線、走査線、駆動素子であるTFT(薄膜トランジスタ)とともに、電極配線パターンを構成するようにする。尚、第1電極層44を画素電極とし、第2電極層45を共通電極としてもよい。
【0029】
有機EL素子42を構成する有機EL発光層43は、三原色の有機EL発光層43R,43G,43Bが所定のパターンで配列したものである。これらの有機EL発光層43R,43G,43Bの位置は、カラーフィルタ層13の三原色の着色層13R,13G,13Rに対応したものとなっている。
尚、本発明では、有機EL発光層43を構成する三原色の有機EL発光層43R,43G,43Bの各パターン、および、第2電極層45の各パターンが、隔壁46(図5に鎖線で示す)により離間されているものであってもよい。このような隔壁46を設けることにより、製造工程にて隔壁46をパターニング手段として利用して有機EL発光層43R,43G,43Bと第2電極層45とを形成することができる。
図6は、本発明の有機EL表示装置の他の実施形態を示す概略構成図である。図6に示される有機EL表示装置51は、本発明の光学フィルタの製造方法により製造された光学フィルタ11と、有機EL素子52とを備えている。
【0030】
光学フィルタ11は、上述の図2に示されるものと同様の構成であり、透明基材12と、この透明基材12の一方の面に、三原色の着色層13R,13G,13Bからなるカラーフィルタ層13と、着色層13R,13G,13Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス14と、カラーフィルタ層13を被覆する平坦化層15を備えている。
有機EL素子52は、光学フィルタ11の透明基材12と反対側に配設されたものであり、有機EL表示52を構成する有機EL発光層53は白色発光である。この有機EL素子52は、図示例では、1対の第1電極層54、第2電極層55と、この第1電極層54、第2電極層55間に挟持された有機EL発光層53を備えたパッシブマトリックス駆動方式である。しかし、有機EL素子52は、上述の有機EL素子42と同様に、その駆動方式がパッシブマトリックス駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式のいずれであってもよい。
【0031】
図7は、本発明の有機EL表示装置の他の実施形態を示す概略構成図である。図7に示される有機EL表示装置61は、本発明の光学フィルタの製造方法により製造された光学フィルタ21と、有機EL素子62とを備えている。
光学フィルタ21は、上述の図3に示されるものと同様の構成であり、透明基材22と、この透明基材22の一方の面に、三原色の着色層23R,23G,23Bからなるカラーフィルタ層23と、着色層23R,23G,23Bの境界部位に対応したパターン形状のブラックマトリックス24と、カラーフィルタ層23上に配設された色変換蛍光体層26、平坦化層25を備えている。色変換蛍光体層26は、有機EL素子62で発光された青色光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層26R、青色光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層26G、青色光をそのまま透過する青色変換ダミー層26Bからなるものであり、これらがカラーフィルタ層23の三原色の着色層23R,23G,23Rに対応した位置に形成されている。
【0032】
有機EL素子62は、光学フィルタ21の透明基材22と反対側に配設されたものであり、有機EL表示62を構成する有機EL発光層63は青色発光である。この有機EL素子62は、図示例では、1対の第1電極層64、第2電極層65と、この第1電極層64、第2電極層65間に挟持された有機EL発光層63を備えたパッシブマトリックス駆動方式である。しかし、有機EL素子62は、上述の有機EL素子42と同様に、その駆動方式がパッシブマトリックス駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式のいずれであってもよい。
本発明の有機EL表示装置は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、有機EL表示装置41,51において、光学フィルタ11の代わりに上述の光学フィルタ1,31を使用するものであってもよい。また、有機EL表示装置61において、光学フィルタ21が、透明バリア層、無機アンカー層を有するものであってもよい。
【0033】
次に、本発明の有機EL表示装置の各構成部材について説明する。
上述の有機EL表示装置41,51,61を構成する光学フィルタ11,21は、上述の本発明の製造方法において説明したので、ここでの説明は省略する。
本発明の有機EL表示装置を構成する有機EL素子42,52,62は、上述のように、1対の電極層と、この電極層間に位置する発光層とを少なくとも有し、その駆動方式は、パッシブマトリックス、アクティブマトリックスのいずれであってもよい。
第1電極層44,54,64は透明電極層であり、その材料としては、通常の有機EL表示装置に使用されるものであれば特に限定されず、上述の電極層32と同様に、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料を挙げることができる。この第1電極層44,54,64が正孔を注入するための電極である場合、正孔が注入し易いように、仕事関数の大きい(4eV以上)透明、または半透明材料であるITO、IZO、酸化インジウム、金が好ましい。また、第1電極層44,54,64は、シート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、その厚みは、例えば、0.005〜1μm程度とすることができる。
【0034】
第2電極層45,55,65は、有機EL発光層43,53,63を介して第1電極層44,54,64に直交するように配設されたものであり、その材料としては、通常の有機EL表示装置に使用されるものであれば特に限定されず、上述の第1電極層44,54,64と同様に、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料、さらに、マグネシウム合金(例えば、MgAg等)、アルミニウムまたはその合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、銀等を挙げることができる。この第2電極層45,55,65が電子を注入するための電極である場合、電子が注入し易いように仕事関数の小さい(4eV以下)マグネシウム合金、アルミニウム、銀等が好ましい。このような第2電極層45,55,65はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、第2電極層45,55,65の厚みは、例えば、0.005〜0.5μm程度とすることができる。
【0035】
尚、有機EL素子42,52,62がアクティブマトリックス駆動方式である場合には、第1電極層44と第2電極層45の一方、第1電極層54と第2電極層55の一方、第1電極層64と第2電極層65の一方を画素電極とし、他方を共通電極とする。そして、画素電極が信号線、走査線、駆動素子であるTFT(薄膜トランジスタ)とともに、電極配線パターンを構成するようにする。
有機EL素子42,52,62を構成する有機EL発光層43,53,63は、例えば、電極層44,54,64側から正孔注入層、発光層、および電子注入層が積層された構造、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0036】
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
有機EL発光層43,53,63を構成する発光層は、上述の図5に示す実施形態では、赤色発光、緑色発光、青色発光の三原色であるが、有機EL表示装置の使用目的等に応じて、所望の発光色(例えば、黄色、水色、オレンジ色)である発光層を単独で、また、赤色発光、緑色発光、青色発光以外の他の複数の発光色の所望の組み合わせ等、いずれであってもよい。また、図6に示す有機EL発光層53では白色発光、図7に示される有機EL発光層63では青色発光とする。
【0037】
有機EL発光層43,53,63を構成する発光層に用いる有機発光材料としては、例えば、下記のような色素系、金属錯体系、高分子系のものを挙げることができる。
(1)色素系発光材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0038】
(2)金属錯体系発光材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
【0039】
(3)高分子系発光材料
ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
特に、図7に示される有機EL素子62において、有機EL発光層63に使用する青色発光である有機発光材料としては、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
【0040】
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
【0041】
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
【0042】
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
【0043】
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0044】
有機EL発光層43,53,63を構成する各層に用いるドーピング材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。有機EL発光層43,53,63を構成する各層の厚みは特に制限はなく、例えば、10〜1000nm程度とすることができる。
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0045】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
【0046】
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
【0047】
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
(正孔注入材料)
フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0048】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
【0049】
(電子注入材料)
カルシウム、バリウム、アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
有機EL発光層43,53,63を構成する各層の形成は、グラビアオフセット印刷やスクリーン印刷法等の印刷方法、フォトマスクを介した真空蒸着法等により成膜して形成することができる。
上述の本発明の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
<光学フィルタの作製>
透明基材として、370mm×470mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製)を準備した。
(ブラックマトリックスの形成)
上記の透明基材上に、スパッタリング法により酸化窒化複合クロムの薄膜(厚み0.2μm)を形成した。この酸化窒化複合クロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像を行ってレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして酸化窒化複合クロムをエッチングして、80μm×280μmの長方形状の開口部が、短辺方向に100μmピッチ、長辺方向に300μmピッチでマトリックス状に配列したブラックマトリックスを形成した。
【0051】
(カラーフィルタ層の形成)
まず、赤色、緑色、青色の3種の着色層用感光性塗料を調製した。すなわち、赤色着色剤として縮合アゾ系顔料(チバガイギー社製 クロモフタルレッドBRN)、緑色着色剤としてフタロシアニン系顔料緑色顔料(東洋インキ(株)製 リオノールグリーン2Y−301)、および、青色着色剤としてアントラキノン系顔料(チバガイギー社製 クロモフタルブルーA3R)を準備した。これらの着色剤を用い、バインダー樹脂としてポリビニルアルコール(10%水溶液)を用い、ポリビニルアルコール水溶液10重量部に対し、各着色剤を1重量部の割合で配合して、十分に混合分散させ、得られた溶液100重量部に1重量部の重クロム酸アンモニウムを架橋剤として添加し、赤色、緑色、青色の3種の着色層用感光性塗料を得た。
【0052】
次に、上記の3種の着色層用感光性塗料を用いて各色の着色層を成膜してカラーフィルタ層を形成した。すなわち、上記のブラックマトリックスを形成した透明基材全面に、赤色着色層用の感光性塗料をスピンコート法により塗布し、プリベーク(100℃、3分間)を行った。その後、所定の着色層用フォトマスクを用いて露光した。次いで、現像液(0.05%KOH水溶液)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(230℃、30分間)を行って、帯状(幅85μm)の赤色着色層(厚み1.5μm)を、その幅方向がブラックマトリックスの短辺方向となり、ブラックマトリックスの開口配列上となるように、300μmピッチで形成した。
【0053】
同様に、緑色着色層の感光性塗料を用いて、帯状(幅85μm)の緑色着色層(厚み1.5μm)を、上記の赤色着色層の延設方向と平行にブラックマトリックスの開口配列上となるように、それぞれ300μmピッチで形成した。隣接する赤色着色層と緑色着色層のピッチは100μmとした。さらに、青色着色層の感光性塗料を用いて、帯状(幅85μm)の青色着色層(厚み1.5μm)を、上記の赤色着色層の延設方向と平行に赤色着色層と緑色着色層の中間領域(ブラックマトリックスの開口配列上)に、それぞれ300μmピッチで形成した。これにより、着色層の延設方向と直角方向の300μm幅内に、帯状(幅85μm)の赤色着色層、緑色着色層、青色着色層が100μmピッチで配設され、この300μm単位が繰り返えされてなる着色層が形成された。
【0054】
(平坦化層の形成)
アクリレート系光硬化性樹脂(JSR(株)製 JUPC)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈して平坦化層用塗布液を調製した。この平坦化層用塗布液を、スピンコート法によりカラーフィルタ層上に塗布し、プリベーク(120℃、3分間)を行った。その後、所定のフォトマスクを用いて露光、現像を行い、次いで、ポストベーク(230℃、30分間)を行って、カラーフィルタ層を被覆する平坦化層(厚み2μm)を形成した。
【0055】
(脱ガス処理)
上述のように平坦化層の形成までを行った透明基材に対して、アルゴン雰囲気下にて240℃で48時間の脱ガス処理を施した。
上記の脱ガス処理が終了した光学フィルタについて、透明基材上に上述のように形成した積層体を10mg削り取り、理学電気(株)製 熱分析装置Thermo Plus2を用いて、窒素雰囲気下にて220℃で3時間加熱し、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]を測定した。その結果、重量減少は0.76%であり、本発明の判別方法により、有機EL表示装置用の光学フィルタとして良品であると判別された。
尚、上記の脱ガス処理が終了した光学フィルタを1mm×1mmの寸法に切り出し、これを電子科学(株)製 高精度昇温脱離ガス分析装置を用いて、真空中で室温から230℃まで昇温(昇温速度60℃/分)加熱し、230℃で30分間保持した際の脱離したH2O分子を定量した。その結果、脱離したH2O分子数は6.27E+16であった。
【0056】
(無機アンカー層の形成)
次に、上記の光学フィルタの平坦化層上にスパッタリング法により、酸化シリコン膜を成膜して、無機アンカー層(厚み150Å)を形成した。
【0057】
<有機EL表示装置の作製>
(第1電極層の形成)
上記の光学フィルタの無機アンカー層上に、イオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、第1電極層である透明電極層を形成した。この透明電極層は、カラーフィルタ層の各着色層と平行に形成された幅80μmの帯状パターンであり、各着色層上に位置するものであった。
【0058】
(補助電極の形成)
次に、上記の第1電極層を覆うように無機アンカー層上の全面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み0.2μm)を形成し、このクロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、クロム薄膜のエッチングを行って、補助電極を形成した。この補助電極は、透明基材上からカラーフィルタ層上に乗り上げるように第1電極層上に形成されたストライプ状のパターンであり、幅15μmのうち5μmが第1電極層上に位置し、幅方向の残りの部位は無機アンカー層上に位置するものであり、透明基材周縁部の端子部では幅が60μmのものとした。
【0059】
(絶縁層と隔壁の形成)
アクリル系樹脂(新日鐵化学(株)製 V−259PA)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈して透明絶縁層用塗布液を調製し、この塗布液をスピンコート法により第1電極層(透明電極層)を覆うように無機アンカー層上に塗布し、プリベーク(100℃、3分間)を行った。次いで、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行った後、ポストベーク(200℃、30分間)を行って絶縁層(厚み1μm)を形成した。この絶縁層は、第1電極層(透明電極層)と直角に交差する帯状パターン(幅20μm)であり、ブラックマトリックスの遮光部上に位置するものであった。
次に、隔壁用塗料(日本ゼオン(株)製フォトレジスト ZPN1100)をスピンコート法により絶縁層を覆うように全面に塗布し、プリベーク(70℃、30分間)を行った。その後、所定の隔壁用フォトマスクを用いて露光し、現像液(日本ゼオン(株)製ZTMA−100)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(200℃、30分間)を行った。これにより、絶縁層上に隔壁を形成した。この隔壁は、高さ10μm、下部(絶縁層側)の幅15μm、上部の幅26μmである形状を有するものであった。
【0060】
(白色有機EL素子層の形成)
次いで、上記の隔壁をマスクとして、真空蒸着法により正孔注入層、発光層、電子注入層からなる白色有機EL素子層を形成した。すなわち、まず、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスクを介して200nm厚まで蒸着して成膜し、その後、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを20nm厚まで蒸着して成膜することによって、隔壁がマスクパターンとなり、各隔壁間のみを正孔注入層材料が通過して透明電極層上に正孔注入層が形成された。
【0061】
次に、上記と同様に、隔壁をマスクとして、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルを50nmまで蒸着して成膜することにより発光層を形成した。このとき、同時に、ルブレン(アルドリッチ(株)製)を少量含有させた。
次いで、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを20nm厚まで蒸着して成膜することにより電子注入層とした。
このようにして形成された白色有機EL素子層は、幅約280μmの帯状パターンとして各隔壁間に存在するものであり、隔壁の上部表面にも同様の層構成でダミー有機EL素子層が形成された。
【0062】
(第2電極層の形成)
次に、画像表示領域よりも広い所定の開口部を備えたマスクを介して、上記の隔壁が形成されている領域に、真空蒸着法によりマグネシウムと銀を同時に蒸着(マグネシウムの蒸着速度=1.3〜1.4nm/秒、銀の蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜した。
これにより、隔壁がマスクとなって、マグネシウム/銀混合物からなる厚み200nmの第2電極層(背面電極層)が白色有機EL素子層上に形成された。この背面電極層は、幅280μmの帯状パターンとして白色有機EL素子層上に存在するものであり、隔壁の上部表面にもダミーの背面電極層が形成された。
その後、第2電極層を形成した面側に、紫外線硬化型接着剤を介して封止板を貼り合わせて有機EL素子を封止し、有機EL表示装置を得た。
【0063】
<有機EL表示装置の評価>
上記の有機EL表示装置の第1電極層(透明電極層)と第2電極層(背面電極層)に直流8.5Vの電圧を10mA/cm2の一定電流密度で印加して連続駆動させることにより、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の白色有機EL発光層を発光させた。
この発光部の任意の5mm×5mm領域を光学顕微鏡にて観察したところ、10μm以上の大きさの非発光部位は観察されず、ダークエリア、ダークスポットによる不良発生がなく、また、シュリンクの発生もなく、高品質の三原色画像表示が可能であることが確認された。
【0064】
[実施例2]
<光学フィルタの作製>
脱ガス処理の条件を、真空中(1.0×10-1Torr)で220℃、48時間とした他は、実施例と同様にして、光学フィルタを作製した。
この光学フィルタについて、実施例1と同様にして、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]を測定した。その結果、重量減少は0.89%であり、本発明の判別方法により、有機EL表示装置用の光学フィルタとして不良品であると判別された。
尚、上記の脱ガス処理が終了した光学フィルタについて、実施例1と同様にして、脱離したH2O分子を定量した結果、脱離H2O分子数は6.81E+16であった。
次に、上記の光学フィルタの平坦化層上にスパッタリング法により、酸化シリコン膜を成膜して、無機アンカー層(厚み150Å)を形成した。
【0065】
<有機EL表示装置の作製>
上記の光学フィルタを用いて、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を作製した。
<有機EL表示装置の評価>
上記の有機EL表示装置について、実施例1と同様の条件で、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の白色有機EL発光層を発光させた。そして、実施例1と同様に発光部を観察したところ、10μm以上の大きさの非発光部位は観察されず、ダークエリア、ダークスポットによる不良発生がなく、また、シュリンクの発生もなく、高品質の三原色画像表示が可能であることが確認された。
【0066】
[比較例1]
<光学フィルタの作製>
脱ガス処理を施さない他は、実施例1と同様にして、光学フィルタを作製した。
この光学フィルタについて、実施例1と同様にして、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]を測定した。その結果、重量減少は1.70%であり、本発明の判別方法により、有機EL表示装置用の光学フィルタとして不良品であると判別された。
尚、上記の脱ガス処理が終了した光学フィルタについて、実施例1と同様にして、脱離したH2O分子を定量した結果、脱離H2O分子数は1.27E+17であった。
次に、上記の光学フィルタの平坦化層上にスパッタリング法により、酸化シリコン膜を成膜して、無機アンカー層(厚み150Å)を形成した。
【0067】
<有機EL表示装置の作製>
上記の光学フィルタを用いて、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を作製した。
<有機EL表示装置の評価>
上記の有機EL表示装置について、実施例1と同様の条件で、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の白色有機EL発光層を発光させた。そして、実施例1と同様に発光部を観察したところ、画素内に非発光部の成長が観察された。
【0068】
[比較例2]
<光学フィルタの作製>
脱ガス処理の条件を、大気中で200℃、48時間とした他は、実施例1と同様にして、光学フィルタを作製した。
この光学フィルタについて、実施例1と同様にして、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]を測定した。その結果、重量減少は1.26%であり、本発明の判別方法により、有機EL表示装置用の光学フィルタとして不良品であると判別された。
尚、上記の脱ガス処理が終了した光学フィルタについて、実施例1と同様にして、脱離したH2O分子を定量した結果、脱離H2O分子数は1.19E+17であった。
次に、上記の光学フィルタの平坦化層上にスパッタリング法により、酸化シリコン膜を成膜して、無機アンカー層(厚み150Å)を形成した。
【0069】
<有機EL表示装置の作製>
上記の光学フィルタを用いて、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を作製した。
<有機EL表示装置の評価>
上記の有機EL表示装置について、実施例1と同様の条件で、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の白色有機EL発光層を発光させた。そして、実施例1と同様に発光部を観察したところ、画素内に非発光部の成長が観察された。
【0070】
[比較例3]
<光学フィルタの作製>
脱ガス処理の条件を、大気中で240℃、48時間とした他は、実施例1と同様にして、光学フィルタを作製した。
しかし、この光学フィルタは、平坦化層に黄変が生じており、実用に供し得ないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の種々の有機発光表示装置を含む表示装置の製造において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の製造方法により製造された光学フィルタの一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0073】
1,11,21,31…光学フィルタ
2,12,22,32…透明基材
3,13,23,33…カラーフィルタ層
15,25,35…平坦化層
26…色変換蛍光体層
37…透明バリア層
38…無機アンカー層
41,51,61…有機EL表示装置
42,52,62…有機EL素子
43,53,63…有機EL発光層
44,54,64…第1電極層
45,55,65…第2電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上にカラーフィルタ層を形成し、その後、脱ガス処理を施すことを特徴とする光学フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記脱ガス処理は、低酸素濃度下での加熱処理であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項3】
低酸素濃度下での加熱処理は、不活性ガス雰囲気下での加熱処理、および、真空中での加熱処理の少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項4】
前記脱ガス処理は、熱風ブロー処理、マイクロ波照射処理、および、遠赤外線照射処理の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記脱ガス処理は、シリコンオイル中での煮沸処理、有機溶剤中での煮沸処理、および、有機溶剤中での超音波洗浄処理の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項6】
前記脱ガス処理は、凍結乾燥処理であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記カラーフィルタ層を被覆するように平坦化層を積層形成し、その後、前記脱ガス処理を施すことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記カラーフィルタ層上に色変換蛍光体層を形成し、これを被覆するように平坦化層を積層形成し、その後、前記脱ガス処理を施すことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記脱ガス処理を施した後、透明バリア層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記脱ガス処理を施した後、無機アンカー層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項11】
前記脱ガス処理を施した後、透明バリア層を形成し、更に無機アンカー層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項12】
光学フィルタの透明基材上の積層体を10mg削り取り、該積層体を窒素雰囲気下にて220℃で3時間加熱し、重量減少率[(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量×100]が1%以下の場合に、有機EL表示装置用として良品であると判別することを特徴とする光学フィルタの判別方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の光学フィルタの製造方法により製造された光学フィルタと、該光学フィルタの透明基材と反対側に、電極間に少なくとも発光層を有する有機EL素子を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項14】
前記発光層は三原色の各発光層が所望のパターンで配列されたものであることを特徴とする請求項13に記載の有機EL表示装置。
【請求項15】
前記発光層は白色の発光層であることを特徴とする請求項13に記載の有機EL表示装置。
【請求項16】
前記発光層は青色の発光層であることを特徴とする請求項13に記載の有機EL表示装置。
【請求項17】
前記有機EL素子がアクティブマトリックス駆動方式のものであることを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項18】
前記アクティブマトリックス駆動方式を構成する対向した電極のうち、駆動素子を備えた電極側に前記光学フィルタが位置することを特徴とする請求項17に記載の有機EL表示装置。
【請求項19】
前記アクティブマトリックス駆動方式を構成する対向した電極のうち、駆動素子を備えていない電極側に前記光学フィルタが位置することを特徴とする請求項17に記載の有機EL表示装置。
【請求項20】
前記有機EL素子がパッシブマトリックス駆動方式のものであることを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれかに記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−316500(P2007−316500A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148138(P2006−148138)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】