説明

光学ユニット及び投射型表示装置

【課題】小型化、明るさの向上、高画質化、及び部品の組立て精度の向上を図った投射型映像表示装置を提供する。
【解決手段】投写型の映像表示装置の第一、第二のアレイレンズにおいて、レンズセル寸法を液晶表示素子寸法の略1/4.5以上とする。または、該レンズセルの対角寸法を略0.18″以下とする。または、該レンズセルの総数を略240以上とする。また、偏光ビームスプリッター光学系において、第二のアレイレンズに遮光部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルあるいは反射式映像表示素子などのライトバルブ素子を使用して、スクリーン上に映像を投影する投射装置、例えば、液晶プロジェクタ装置や、反射式映像表示プロジェクタ装置、液晶テレビジョン、投写型ディスプレイ装置等の映像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等のライトバルブ素子に、電球などの光源からの光を当てて、液晶パネル上の画像を拡大投射する液晶プロジェクタ等の投写型映像表示装置が知られている。
【0003】
この種の映像表示装置は、光源からの光をライトバルブ素子で画素毎の濃淡に変えて調節し、スクリーンなどに投射するものである。例えば、液晶表示素子の代表例であるツイステッド・ネマティック(TN)型液晶表示素子は、透明な電極被膜をもつ一対の透明基板間に液晶を注入して成る液晶セルの前後に、各々の偏光方向が互いに90°異なるように2枚の偏光板を配置したものであり、液晶の電気光学効果により偏光面を回転させる作用と、偏光板の偏光成分の選択作用とを組み合わせることにより、入射光の透過光量を制御して画像情報を表示するようになっている。近年、こうした透過型あるいは反射型の映像表示素子では、素子自体の小型化が進むとともに、解像度等の性能も急速に向上している。
【0004】
このため、該映像表示素子を用いた表示装置の小型高性能化も進み、単に従来のようにビデオ信号等による映像表示を行うだけでなく、パーソナルコンピュータの画像出力装置としての投射型映像表示装置も新たに提案されている。この種の投射型映像表示装置には、特に、小型であることと、画面の隅々まで明るい画像が得られることが要求される。しかし、従来の投射型映像表示装置は、大型であったり、また最終的に得られた画像の明るさ、画質等の性能が不十分であるといった問題があった。
【0005】
例えば、液晶表示装置全体の小型化には、ライトバルブすなわち液晶表示素子自体の小型化が有効であるが、液晶表示素子を小型化すると液晶手段による被照射面積が小さくなるため光源が放射する全ての光束量に対する液晶表示素子を小型化すると照明手段による被照射面積が小さくなるため光源が放射する全ての光束量に対する液晶表示素子上の光束量の比率(以下、これを光利用効率という)が低くなり、また、画面周辺部が暗い等の問題が生じる。さらに、液晶表示素子は一方向の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源からの光の約半分は利用されない。
【0006】
画面周辺部で明るい画像を得る手段としては、例えば、特許文献1に記載されているような、2枚のアレイレンズを用いたインテグレータ光学系がある。インテグレータ光学系は、光源からの光を第一のアレイレンズを構成している複数の矩形開口形状の集光レンズによって分割して、各矩形開口形状の出射光を各矩形開口形状の集光レンズに対応した集光レンズ群により構成した第二のアレイレンズにより照射面(液晶表示素子)に重畳結像させるものである。この光学系では液晶表示素子を照射する光の強度分布をほぼ均一にすることができる。
【0007】
一方、光源からのランダムな偏光光を一方向の偏光方向に揃えて液晶表示素子に照射する光学系としては、特許文献2に開示されているような偏光ビームスプリッターを利用して、光源から出射するランダムな偏光光をP偏光光とS偏光光に分離してプリズムを用いて合成するものがある。
【0008】
しかし、従来のインテグレータ光学系においては、アレイレンズの1つのレンズセルの矩形対角サイズが0.25″(インチ)以上であるため、マイクロレンズ付の液晶表示素子等を用いて明るさおよび画質の均一性を向上しようとすると、照明系のF値を概略2から3近くに設定しなければならなくなり、第一のアレイレンズと第二のアレイレンズ間の31mm以上の距離となって長くなり、光学系の小型化が達成できなかった。したがって、従来の投射型液晶表示装置では、A4ファイルサイズに小型化することが困難であった。
【0009】
また、偏光ビームスプリッターを利用する光学系においても、アレイレンズとの精度上の整合性が困難であり、小型化することが困難であった。その結果、装置全体の小型化と明るさ等の性能向上を同時に実現することが困難であった。さらに、投射型液晶表示装置の場合には上記照明手段以外に投射レンズの光学的特性、また液晶表示素子の光学的特性等のさまざまな要素が画質性能に影響するため、照明手段のみを改善しても小型で画質性能の良い表示装置を得ることは困難であった。また、第二の発明である遮光膜付けをアレイレンズ側に設けることにより、隣接するS偏光光路に入射した光を遮光することができ、従来、映像表示素子近傍の偏光板の温度上昇を引き起こしていた不要光を抑えることができる。
【0010】
以上より、液晶表示装置の明るさおよび画質の向上と、小型化という2つの観点からの対応が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3ー111806号公報
【特許文献2】特開平4−63318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上の従来技術での課題事項をまとめると、映像表示装置の明るさおよび画質上の性能確保と小型化を両立する方法が課題であり、明るさおよび画質向上に関する事項と、光学ユニットの大きさを構成上小型化するための対応技術に関する事項が、それぞれ課題となっている。さらに、明るさ確保のために、境界面を少なくするための光学部品同士の貼り合せ精度の向上が課題となっている。
【0013】
また、偏光合成手段の主要光路に隣接するS偏光光路に入射した光を遮光し、映像表示素子近傍の偏光板の温度上昇を引き起こしていた不要光を抑えることが課題となっている。
【0014】
本発明では、上記した従来技術での課題事項に関して、明るさおよび画質確保とともに高精度小型化できる投写型映像表示技術の提供が目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明において、複数の集光レンズセルにて構成されたアレイレンズにおいて、1つのレンズセルの対角寸法を略0.18″以下とする。
【0016】
これにより、アレイレンズの厚さの増大化を抑えることが可能で、アレイレンズの重さを軽くでき、硝材の量も減少するので、製造コストも安価になる。
【0017】
また、光源ユニットの出射光から映像信号に応じた光学像を形成するライトバルブ手段の映像表示素子と、この映像表示素子の上に光を照射させる照明光学系と、出射した光を投射する投射手段とを有する光学ユニットにおいて、
前記照明光学系は、
反射面鏡を有する光源ユニットと、この反射面鏡の出射開口と略同等サイズ内に設けられた複数の集光レンズにより構成され、この光源ユニットから出射した光を集光して、複数の2次光源像を形成する第一のアレイレンズと、複数の集光レンズにより構成され、前記複数の2次光源像が形成される近傍に配置され、映像表示素子に第一のアレイレンズの個々のレンズ像を結像させる第二のアレイレンズとを有し、前記映像表示素子の映像表示部の対角寸法が0.7″(インチ)あるいは0.9″あるいは1.3″の場合に、少なくとも、前記第一のアレイレンズの1つのレンズセルの対角寸法を略0.18″以下とする。この構成により、光学ユニットの全長を短縮でき、小型、軽量化できる。
【0018】
また、本発明においては、出射開口を持つ反射面鏡を有し、かつ反射面鏡内でランプ電極の片側に設置された径が略0.6mm以内の電極ワイヤを有する光源からの出射光を被照射面上に照射させる照明光学系と、映像表示素子から出射した光をスクリーンに投射する投射手段とを有する投射型の光学ユニットまたは映像表示装置において、
前記照明光学系は、少なくとも1つの反射面鏡と、この反射面鏡の出射開口と略同等サイズの枠に設けられた複数の集光レンズにより構成され、光源ユニットから出射した光を集光して、複数の2次光源像を形成するための第一のアレイレンズと、複数の集光レンズにより構成され、前記複数の2次光源像が形成される近傍に配置され、映像表示素子に第一のアレイレンズの個々のレンズ像を結像させる第二のアレイレンズと、前記第一のアレイレンズあるいは前記第二のアレイレンズからの光をP偏光光とS偏光光とに分離する偏光ビームスプリッターと、該偏光ビームスプリッターの出射光であるP偏光光とS偏光光のいずれかの偏光方向を回転するためのλ/2位相差板と、該P偏光光とS偏光光のいずれかの偏光光を反射させるための反射部から構成される偏光合成手段とを有し、
この偏光合成手段は、前記第一のアレイレンズおよび、または前記第二のアレイレンズの各々のレンズ光軸の縦配列方向あるいは横配列方向のいずれかのピッチに偏光ビームスプリッターの各配列の中心軸を適合させて複数個の偏光合成手段を配列し、かつ前記第一のアレイレンズおよび、または第二のアレイレンズの各々のレンズ光軸のピッチの中心に位置するS偏光光の反射プリズムの光軸入射面、すなわち前記第二のアレイレンズの偏光合成手段側の面に、遮光部材を付加した第二のアレイレンズを、前記光源と映像表示素子の間に介在させた構成とする。
【0019】
かかる構成により、従来、膜付け温度の工程上、偏光合成手段に設けることが困難であった遮光膜付けをアレイレンズ側に設けることにより、遮光膜付けが可能となった。これにより、隣接するS偏光光路に入射した光を遮光することができ、従来、映像表示素子近傍の偏光板の温度上昇を引き起こしていた不要光を抑えることができる。
【0020】
また、投射型の映像表示装置において、少なくとも第一のアレイレンズまたは第二のアレイレンズのいずれかにおける1つのレンズセルの、対角寸法、縦寸法、横寸法の少なくともいずれかの寸法が、前記映像表示素子の、対応する、対角寸法、縦寸法、または横寸法に対し、略1/4.5以上である構成とする。
【0021】
または、前記映像表示素子の映像表示部の対角寸法が0.7″あるいは0.9″あるいは1.3″の場合に、前記第一のアレイレンズ、第二のアレイレンズのいずれか一方または両方における1つのレンズセルの矩形対角寸法が略0.18″以下である構成とする。
【0022】
または、前記第一のアレイレンズ、第二のアレイレンズのいずれか一方または両方における1つのレンズセルの対角寸法が、略0.18″以下である構成とする。
【0023】
または、前記第一のアレイレンズ、第二のアレイレンズのいずれか一方または両方において、レンズセルの総数が略240以上である構成とする。
【0024】
または、前記第一のアレイレンズと第二のアレイレンズの1つのレンズセルのレンズ焦点距離が30mm以内である構成とする。
【0025】
かかる構成により、アレイレンズのレンズセルの大きさを微細化し、第一のアレイレンズと第二のアレイレンズの間隔を短小化でき、なおかつ小型な映像表示素子を用いて表示装置全体を小型化できるとともに、明るく、画面全体にわたって画質がより均一な映像表示装置を実現できる。
【0026】
また、本構成により、アレイレンズの1つのレンズセルの矩形対角サイズが略0.18″(インチ)以下であるため、マイクロレンズ付の液晶表示素子等を用いて明るさおよび画質の均一性の向上のための、照明系のF値を概略2から3近くに設定した場合に、第一のアレイレンズと第二のアレイレンズ間を30mm以下の距離に短縮でき、光学系の小型化が達成できる。
【0027】
したがって、投射型液晶表示装置では、A4ファイルサイズに小型化することできる。また、偏光ビームスプリッターを利用する光学系においても、貼付けにより、アレイレンズとの精度上の位置合わせが可能となり、装置全体の小型化と明るさ等の性能向上を同時に実現することができる。
【0028】
さらに、セルサイズが略0.18″以下であると7個から8個のセルを電極ワイヤの影が横切ると液晶表示素子上で均一化させることが可能で、この場合、光軸中心の左右の片側に電極ワイヤが存在するので、アレイレンズの横配列あるいは縦配列が最低12から14列必要となる。したがって、セル数が略240セル以上となるため略0.6mm以内の電極ワイヤの影が液晶表示素子に映りこむことを防ぐことができ、均一な画質が得られ、上記課題を容易に解決できる。
【0029】
また、映像表示装置を略A4ファイルサイズ以下とすることにより、アタッシュケース等の中に収納でき、携帯に適した小形高画質高輝度の映像表示装置にできる。
【発明の効果】
【0030】
以上、説明したように本発明の投写型の映像表示装置は、小型化の光学系を達成でき、装置全体をA4ファイルサイズ以下にまで小型化できる効果がある。また、偏光ビームスプリッターを利用する光学系においても、アレイレンズとの精度上の位置合わせが可能となり、装置全体の小型化と併せ、明るさ等の性能向上も同時に実現することができる。
【0031】
さらに、セルサイズ略0.18″以下でセル数が略240セル以上である場合は、電極ワイヤの影が液晶表示素子に映りこむことを防ぐことができ、均一な画質が得られる。
【0032】
また、遮光部材を設ける構成では、これにより不要光がカットされ、発熱を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1番目の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第1番目の一実施形態を示す投射型液晶表示装置の構成図である。
【図3】本発明の第1番目の一実施形態の効果を示す図である。
【図4】本発明の第2番目の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明による第1番目の投写型の液晶表示装置の一実施形態を示す図である。
図1において、投射型液晶表示装置には、光源1があり、光源1は、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ等の白色ランプである。光源1は、円形ないし多角形の出射開口を持つ少なくとも1つの反射面鏡5と、反射面鏡内でランプ電極の片側に設置された径が0.6mm以内の電極ワイヤ28を有し、この光源1から出される光はライトバルブ素子である液晶表示素子2を通過して投射レンズ3に向かい、スクリーン4へ投影される。
【0036】
光源1の電球から放射される光は楕円面または放物面または非球面のリフレクタ5にて集光され、第一のアレイレンズ6に入射する。光は第一のアレイレンズ6を通過後、第二のアレイレンズ7を通過し、偏光ビームスプリッター8に入射する。この入射光は偏光ビームスプリッター8により透過光はP偏光光、反射光はS偏光光に分離され、該P偏光光は偏光ビームスプリッター8の出射側面に配置されたλ/2位相差板9により偏光方向が90°回転し、S偏光光となり、コンデンサレンズ10に入射する。また、前記S偏光光は反射を繰り返し、隣接する偏光ビームスプリター8の出射面から出射され、コンデンサレンズ10に入射する。コンデンサレンズ10は、少なくとも1枚以上の構成であり、正の屈折力を有し、このS偏光光をさらに集光させる作用を持ち、このコンデンサレンズ10を通過した光は液晶表示素子2を照射する。液晶表示素子2の入射側にはS偏光光を透過する入射偏光板11を配置する。
【0037】
従来の投射型液晶表示装置では入射偏光板11と液晶表示素子2と出射側偏光板12の組合せにより、一方向の偏光光しか透過しないため透過光量が約半分になっていた。しかし、本実施例では偏光ビームスプリッター8を用いるため、光源1から出射するランダムな偏光光の偏光方向を揃えて液晶表示素子2に入射するため、理想的には従来の投射型液晶表示装置の2倍の明るさが得られる。
【0038】
また、本実施例では、本発明の第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7は、同じ形状のものを使用しており、1つのレンズセルの横寸法が、液晶表示素子2の横寸法の略々1/5.3の比率であり、例えば液晶表示素子2の映像表示部の矩形対角寸法が0.9″の場合に、1つのレンズセルの矩形対角寸法が、概略0.17"の寸法であり、さらに第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7を構成するレンズセルの総数が略240セル以上あり、この1つのレンズセルのレンズ焦点距離が30mm以内である構成となっており、光学系の小型化が達成できる。また、略240セル以上の個々の像が液晶表示素子2に重なり、従来の装置よりも均一な画質が得られる。さらに、セルサイズ0.17″であるから、セルを電極ワイヤ28の影が横切る場合でも、略240セル(略16×15セル)以上であるので、画質を均一化させることが可能である。したがって、投射型液晶表示装置では、装置全体の小型化と明るさ等の性能向上を同時に実現することができる。
【0039】
また、本発明の偏光ビームスプリッター8は、第二のアレイレンズ7よりも光軸方向で薄い構成であり、光学全長を短縮するとともに、光学ユニットの軽量化さらには、照明系のF値を大きくする効果がある。これにより、小型、軽量、さらに投射レンズ3のF値を照明系にリンクして大きくすることができるので、投射レンズ3の小型軽量にも効果がある。
【0040】
この液晶表示素子2を通過した光は、例えばズームレンズであるような投射手段3を通過し、スクリーン4に到達する。前記投射手段3により、液晶表示素子2に形成された画像は、スクリーン上に拡大投影され表示装置として機能するものである。
【0041】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
図2は、本発明における投射型液晶表示装置の一実施例の構成図である。図2の実施例は、液晶ライトバルブとして透過型液晶表示素子2をいわゆる色の3原色のR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に対応して合計3枚用いた3板式投射型表示装置を示している。本実施例において、光源である例えば超高圧水銀ランプのようなランプ13より出射した光は、放物反射面鏡リフレクタ5に反射された後、この放物反射面鏡リフレクタ5の出射開口と略同等サイズの矩形枠に設けられた複数の集光レンズにより構成され、ランプユニット14から出射した光を集光して、複数の2次光源像を形成するための第一のアレイレンズ6に入射し、さらに複数の集光レンズにより構成され、前述の複数の2次光源像が形成される近傍に配置され、かつ液晶表示素子2に第一のアレイレンズ6の個々のレンズ像を結像させる第二のアレイレンズ7を通過する。この出射光は第二のアレイレンズ7の各々のレンズ光軸の横方向のピッチに適合するように配置された各々のレンズ幅の略1/2サイズの菱形プリズムの列へ入射する。このプリズム面には偏光ビームスプリッター8の膜付けが施されており、入射光は、この偏光ビームスプリッター8にてP偏光光とS偏光光に分離される。P偏光光は、そのまま偏光ビームスプリッタ−8内を直行し、このプリズムの出射面に設けられたλ/2位相差板9により、偏光方向が90°回転され、S偏光光に変換され出射される。一方、S偏光光は、偏光ビームスプリッター8により反射され、隣接する菱形プリズム内で本来の光軸方向にもう一度反射してからS偏光光として出射される。その後、コンデンサレンズ10により、液晶表示素子2に集光される。この途中で偏光ビームスプリッター8の出射光は、全反射ミラー15によりその光路を90°折り曲げられ、光軸に対して45°の角度に配置されたB(青色),G(緑色)反射ダイクロイックミラー16により、R(赤色)の光は透過し、B,Gの光は反射する。透過したR光線は、R用全反射ミラー17によりその光路を90°折り曲げられて、液晶表示素子前コンデンサレンズ18及び入射偏光板11を通過し、対向電極、液晶等で構成された液晶表示素子2に入射され、液晶表示素子2の光の出射側に設けられた出射偏光板12を通過する。
【0042】
液晶表示素子2には、表示する画素に対応する(例えば横800画素縦600画素各3色など)数の液晶表示部が設けてある。そして、外部より駆動される信号に従って、液晶表示素子2の各画素の偏光角度が変わり、最終的に出射偏光板12の偏光方向と一致する方向になった光が出射され、直交方向になった光が出射偏光板12で吸収される。この途中の角度の偏光を持った光は、出射偏光板12の偏光角度との関係で偏光板を通る光の量と偏光板に吸収される量とが決まる。このようにして、外部より入力する信号に従った画像を投影する。
出射偏光板12を出射したR光線は、R光線を反射させる作用を有するダイクロイックプリズム19にて反射され、例えばズームレンズのような投射手段3に入射し、スクリーンに投射される。
【0043】
一方、B,G透過ダイクロイックプリズム19を透過したB光線とG光線は、G反射ダイクロイックミラー20に入射し、このミラーによりG光線は反射し、液晶表示素子前コンデンサレンズ18及び入射偏光板11を通過し、液晶表示素子2に入射し、液晶表示素子2の光の出射側に設けられた出射偏光板12を通過する。出射偏光板12を出射したG光線は、G光線を透過する作用を有するダイクロイックプリズム19を透過し、投射レンズ3に入射し、スクリーンに投射される。
また、G反射ダイクロイックミラー20を透過したB光線は、リレーレンズ21を透過し、全反射ミラー22によりその光路を90°折り曲げられてリレーレンズ21を透過後、全反射ミラー23によりその光路を90°折り曲げられて液晶表示素子前コンデンサレンズ18及び入射偏光板11を通過し、液晶表示素子2に入射され、液晶表示素子2の光の出射側に設けられた出射偏光板12を通過する。出射偏光板12を出射したB光線は、B光線を反射させる作用を有するダイクロイックプリズム19にて反射後、投射レンズ3に入射し、スクリーンに投射される。
【0044】
以上より、R,G,Bそれぞれに対応した光線が色分離手段及び色合成手段により分離、合成され、投射レンズ3によりR,G,Bそれぞれに対応した液晶表示素子2上の画像を拡大し、スクリーン上に各色の画像を合成し拡大した実像を得るものである。同図において、電源回路24、映像信号回路25のように配置し、また、吹き出しファン26により光源1で発生する熱を外部に導く作用を有する。また、本実施例では偏光合成手段によりランダムな光源からの出射光を一方向に揃えるため、入射偏光板の熱の発生が少ない。
【0045】
また、前記光源と前記投射手段は、それぞれの光軸が互いに直交になるように配置し、さらに、前記色分離手段と前記液晶表示素子及び前記色合成手段とからなる色分離合成ユニットを介して電源回路24及び映像信号回路25を同図に示すように配置することにより、装置全体を小型化することができる。
また、本実施例では、本発明の第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7は、同じ形状のものを使用しており、1つのレンズセルの横寸法が、液晶表示素子2の横寸法の略1/5.3の比率であり、例えば液晶表示素子2の映像表示部の矩形対角寸法が0.9″の場合に、第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7の1つのレンズセルの矩形対角寸法が、概略0.17″の寸法であり、第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7を構成するレンズセルの総数が、略240セル以上あり、第一のアレイレンズ6と第二のアレイレンズ7の1つのレンズセルのレンズ焦点距離が30mm以内である構成となっており、光学系の小型化が達成できる。また、略240セル以上の個々の像が液晶表示素子2に重なり、従来の装置よりも均一な画質が得られる。また、セルサイズ0.17″であるからセルを電極ワイヤ28の影が横切る場合でも、略240セル(略16×15セル)以上であれば、画質を均一化させることが可能である。したがって、投射型液晶表示装置では、装置全体の小型化と明るさ等の性能向上を同時に実現することができる。
【0046】
また、マイクロレンズ付の液晶表示素子等を用いて明るさおよび画質の均一性を向上しようとすると、照明系のF値を概略2から3近くに設定しなければならなくなり、この場合でも、本発明の第一のアレイレンズと第二のアレイレンズ間隔が30mm以下の距離に短縮でき、光学系の小型化が達成できる。
【0047】
さらに、本発明においては、偏光合成手段を組み合わせており、偏光合成手段である偏光ビームスプリッター8の厚さを第二のアレイレンズ7より薄くしている、(すなわち第二のアレイレンズ7が2.5±0.5mm程度である場合、偏光ビームスプリッター8は2mm以下とする)、ことにより光路長さが短縮でき、かつ全反射ミラー15を接近させて配置でき、セットの小型化が可能となる。
【0048】
図2に示す本発明の実施例において、照明光学系は、ランプユニット14、第一のアレイレンズ6、第二のアレイレンズ7、偏光ビームスプリッター8、λ/2位相差板9、コンデンサレンズ10、全反射ミラー15等を備えており、ランプ13からの光をR、G、Bの光に分離する前までの光路を云う。また、光学ユニットとしては、照明光学系を含み、さらに照明光学系からの光をB(青色),G(緑色)反射ダイクロイックミラー16、G反射ダイクロイックミラー20等を用いてそれぞれR、G、Bの光に分離するまでを指す場合と、この分離したR、G、Bの光をそれぞれの液晶表示素子2に入射し、Rの光、Bの光を反射し、Gの光を透過するダイクロイックプリズム19を介して投射手段3に至る光路までを指す場合とがある。
【0049】
図3は、本発明による第1番目の一実施形態の一部効果を示す図である。図3は、投射型液晶表示装置の照明光学系を示しており、光源1は、円形の反射面鏡5を有し、かつ反射面鏡5内でランプ電極の片側に設置された径が略0.6mm以内の電極ワイヤ28を有する。
光源1の電球から放射される光は楕円面または放物面または非球面のリフレクタ5にて集光され、第一のアレイレンズ6に入射する。光は第一のアレイレンズ6を通過後、第二のアレイレンズ7を通過し、偏光ビームスプリッター8に入射する。この入射光は偏光ビームスプリッター8により透過光はP偏光光、反射光はS偏光光に分離され、このP偏光光は偏光ビームスプリッター8の出射側面に配置されたλ/2位相差板9により偏光方向が90°回転し、S偏光光となり、コンデンサレンズ10に入射する。また、前記S偏光光は反射を繰り返し、隣接する偏光ビームスプリター8の出射面から出射され、コンデンサレンズ10に入射する。コンデンサレンズ10は、少なくとも1枚以上の構成であり、正の屈折力を有し、該S偏光光をさらに集光させる作用を持ち、該コンデンサレンズ10を通過した光は液晶表示素子2を照射する。
【0050】
図3において、本実施例では、本発明の第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7は、同じ形状のものを使用しており、1つのレンズセルの横寸法が、液晶表示素子2の横寸法の略々1/5.3の比率であり、例えば液晶表示素子2の映像表示部の矩形対角寸法が0.9″の場合に、第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7の1つのレンズセルの矩形対角寸法が、概略0.17″の寸法であり、第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7を構成するレンズセルの総数が、240セル以上あり、(図3は概略図)第一のアレイレンズ6と第二のアレイレンズ7の1つのレンズセルのレンズ焦点距離が30mm以内である構成となっているため、光学系の小型化が達成できる。また、図3の点線ように、240セル以上の個々の像が液晶表示素子2に重なり、従来の装置よりも均一な画質が得られる。また、セルサイズ0.17″であるからセルを電極ワイヤ28の影が横切る場合でも、略240セル(略16×15セル)以上であれば片側7から8列となり、0.17″セルサイズならば略0.6mm幅の帯状の影が6本並ぶと1つのセルサイズとなるので、セルは片側で最低6列以上あれば、液晶表示素子上で電極ワイヤ28による影に起因する明るさの明暗がなくなり、これによる色ムラを無くし、画質を均一化させることが可能である。この場合、光軸中心の左右の片側に電極ワイヤが存在するので、アレイレンズの横配列あるいは縦配列が余裕分を1から2列以上とると、最低14から16列以上必要となる。したがって、セル数が略240セル以上となれば、略0.6mm以内の電極ワイヤの影が液晶表示素子に映り込みを図の斜線のように均一化し、明暗が均一で、色ムラのない画質が得られる。
したがって、投射型液晶表示装置では、装置全体の小型化と明るさ等の性能向上を同時に実現することができる。さらに、第一のアレイレンズ6および第二のアレイレンズ7を同一形状としたことにより、型が一種類ですみ、コスト低減も図れる。
【実施例2】
【0051】
図4は、本発明による第2番目の一実施形態を示す図である。
図4の偏光ビームスプリッター8はガラス板材に光のP偏光光とS偏光光を分離する偏光ビームスプリッター膜を付けており、これを積層に接着した後、45°にスライスした構成となっている。このため図4のように、縦長の菱形プリズムが数個配列された平板状の構成になっている。この膜付けは一面おきにアルミあるいは銀等のミラー蒸着を施しても良い。但し、このミラー部はS偏光光を反射する役割となっているため、このプリズム光路には光線を入射させない工夫が必要である。
【0052】
このため、本発明の偏光ビームスプリッター8は、第二のアレイレンズ7の各々のレンズ光軸のピッチの中心に位置するS偏光光の反射プリズムの光軸入射面、すなわち第二のアレイレンズ7側の面に、遮光部材27を付加し、不要光がカットされ、入射偏光板11によって吸収カットされる時に、光から熱にエネルギー変換され発生する発熱を防止すること効果がある。この遮光部材27は、銀やアルミ蒸着膜付けによる一列おきのスリット状の反射膜、あるいは、スリガラス状の発散膜、あるいは遮光用の金属シール、あるいは耐熱シール、あるいはスリットを入れた金属板、あるいは金属メッキ等で構成される。
【0053】
以上のような、数個の偏光ビームスプリッター8が配列された平板状の構成では、一列おきにλ/2位相差板9を貼り合せており、分離したP偏光光をS偏光光へ変換し、偏光ビームスプリッター8から出射する光をS偏光光に揃えたり、あるいは、分離したS偏光光が入射したプリズムの隣接するプリズムから反射して出射された後、λ/2位相差板9にて、偏光ビームスプリッター8の出射光をP偏光光で揃えることも可能である。
【0054】
以上のような平板状の偏光ビームスプリッター8の各々の菱形プリズムを第二のアレイレンズ7の各々のレンズ光軸の横配列方向のピッチに適合させて複数個を配列し、かつ第二のアレイレンズ7の中央部に隙間、例えば光軸ピッチの1/2幅の隙間h、をあけて、第二のアレイレンズ7の左右あるいは上下半分づつに分割して、中央部を境に左右対称状態にて、偏光ビームスプリッター8と、同じ偏光ビームスプリッター8のもう一枚を光軸を中心にして180°反転した状態で貼り合せれば、第二のアレイレンズ7に設けた遮光部材27と偏光ビームスプリッタ−8の横配列方向のピッチに高精度で適合させることが可能となり、製造上困難であった、第二のアレイレンズ7および遮光部材27と偏光ビームスプリッター8を高精度貼り合わせを実現できる。
【0055】
従来は、図4(b)のように左右対称型の平板状の偏光ビームスプリッター8をメーカにて作成し、この偏光ビームスプリッター8と第二のアレイレンズ7の光学部品同士の界面が空気層であると、反射防止膜を界面に施しても、光の透過効率が低下するので、この偏光ビームスプリッター8と第二のアレイレンズ7とを、各々のレンズ光軸と偏光ビームスプリッター8の横配列方向のピッチを適合させて貼り合せる構成となっていた。この時、不要光をカットするスリット状の遮光板を第二のアレイレンズ7の前、すなわち光源側に配置し、偏光ビームスプリッター8に入射する前に不要光成分、図中の斜線部分、を遮光する構成となっていた。しかし、この場合は、遮光部材27は、スリットを設けた金属板などの構造部材であり、光軸に対して独立して、この遮光部材を支持しなければならなかった。
このため、遮光部材27の部品精度誤差や組み立て精度誤差により、必要な光まで遮光してしまうことが生じ、かつ、組み立て時にも部品点数が増えるので、加工行程費用がかかる構成であった。
【0056】
しかし、本発明では、遮光部材27を設けた第二のアレイレンズ7に偏光ビームスプリッター8を中央を境にして左右対称型にて貼り合せ、蒸着膜等で遮光部材を形成するため、S光路のプリズムの入射面をほとんど誤差無く遮光でき、かつ部品点数も少なく組み立て性が向上する。
さらに、本発明により、従来のような左右対称型の平板状の偏光ビームスプリッター8をメーカにて作成してから、第二のアレイレンズ7に貼り合せる2段階の加工行程はせず、2個の偏光ビームスプリッター8を1段階の加工行程で第二のアレイレンズ7に貼り合せるので、加工コストの低減が図れる。
【0057】
また、従来の偏光ビームスプリッター8は、左右一体なので、貼り合せ精度が、左端から右端まで積み重なり、第二のアレイレンズ7に貼り合せる時に、中央振り分けとなり、どうしても左右の貼り合せ精度誤差、例えば±0.25が左右両側に出てしまう。
しかし、本発明により、左右別体の遮光部材27を設けた第二のアレイレンズ7に偏光ビームスプリッター8を貼り合せるので、中央からの精度誤差を積み上げることにはならず、左の偏光ビームスプリッター8は左側の中心または光量の大きな第二のアレイレンズ7上の左半分の中のレンズ光軸を精度振り分けの中心とすることが可能なため、上述の数値でいえば、±0.125の貼り合せ精度誤差に抑えられる。また同様に右側の偏光ビームスプリッター8を第二のアレイレンズ7に貼り合せる場合も、上述の左側同様に貼り合せ精度誤差を半減できる効果もある。これにより、第二レンズアレイ7のレンズ光軸ピッチの1/2幅の偏光ビームスプリッター8の貼り合せ誤差による光軸の位置ズレが少なくなり、第二のアレイレンズ7からの入射光が偏光ビームスプリッター8によってケラレる光量が減少する。これにより光の透過効率が向上し、明るさの性能向上が実現可能となった。
【符号の説明】
【0058】
1…光源、2…映像表示素子、3…投射レンズ、5…リフレクタ、6…第一のアレイレンズ、7…第二のアレイレンズ、8…偏光ビームスプリッター、9…λ/2位相差板、10…コンデンサレンズ、11…入射偏光板、12…出射偏光板、27…遮光部材、28…電極ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射する光源と、該光源の出射光を映像信号に応じた光学像が形成されるライトバルブ手段である映像表示素子と、該映像表示素子の上に照射させる作用を有する照明光学系と、該映像表示素子から出射した光を投射する投射手段とで構成される光学ユニットであって、
矩形ないし円形ないし多角形の出射開口を持つ少なくとも1つの反射面鏡と、
該反射面鏡内でランプ電極に設置された電極ワイヤを有する光源と、
前記出射開口と略同等サイズ内に設けられた複数の集光レンズと、
前記光源から出射した光を集光して複数の2次光源像を形成するための第一のアレイレンズと、
前記複数の2次光源像が形成される近傍に配置されて映像表示素子に第一のアレイレンズの個々のレンズ像を結像させる第二のアレイレンズとを有し、
電極ワイヤの直径幅をa、前記第一のアレイレンズの1つのセルの縦幅と横幅の何れかのサイズ幅をbとしたとき、前記第一のアレイレンズのセルを(2b/a)列以上の横配列あるいは縦配列とすることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
光を放射する光源と、該光源の出射光を映像信号に応じた光学像が形成されるライトバルブ手段である映像表示素子と、該映像表示素子の上に照射させる作用を有する照明光学系と、該映像表示素子から出射した光を投射する投射手段と、該投射手段からの投射光を表示する表示手段とで構成される投射型表示装置であって、
矩形ないし円形ないし多角形の出射開口を持つ少なくとも1つの反射面鏡と、
該反射面鏡内でランプ電極に設置された電極ワイヤを有する光源と、
前記出射開口と略同等サイズ内に設けられた複数の集光レンズと、
前記光源から出射した光を集光して複数の2次光源像を形成するための第一のアレイレンズと、前記複数の2次光源像が形成される近傍に配置されて映像表示素子に第一のアレイレンズの個々のレンズ像を結像させる第二のアレイレンズとを有し、
電極ワイヤの直径幅をa、前記第一のアレイレンズの1つのセルの縦幅と横幅の何れかのサイズ幅をbとしたとき、前記第一のアレイレンズのセルを(2b/a)列以上の横配列あるいは縦配列とすることを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−250326(P2010−250326A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107859(P2010−107859)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2003−206640(P2003−206640)の分割
【原出願日】平成10年9月29日(1998.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】