説明

光学式タッチシステムと位置判定方法

【課題】異なるスクリーンサイズに対応可能にする。
【解決手段】立体視覚理論に基づいた光学式タッチシステムと位置判定方法を提供する。好適例となる光学式タッチシステムには、イメージ情報を取得するためのリニアイメージセンサが少なくとも2つ設けられている。イメージセンサの位置を調整することにより、様々なサイズのタッチスクリーンに適応することができ、センサの数を増やさなくても、検出エリアが全スクリーンをカバーできる。また、該光学式タッチシステムのための位置判定方法では、イメージセンサに対応する波長範囲を発光するタッチペンにより、複雑な画像処理プロセスを必要とせずに、タッチ応答の速度と正確さを向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式タッチシステムに関し、より具体的には、調整可能な位置判定方法が適用された光学式タッチシステム及び該位置判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、光学方式など、様々な方式のタッチスクリーンが知られている。抵抗膜方式のタッチスクリーンは、複数の絶縁スペーサにより互いに隔てられているITO(Indium−Tin−Oxide)フィルムとITOガラスシートを有する。タッチ部材(例えばタッチペン)がITOフィルムをタッチして押圧すると、局部的に凹部が形成されることにより、該局部においてITOフィルムとITOグラスとが接触する。その結果、電圧の変化が検知される。この電圧は、アナログ信号からデジタル信号に変換され、タッチポイントの位置の算出と判定を担うマイクロプロセッサに供される。対して、静電容量方式のタッチスクリーンは、配列された透明電極と人体との間に生じる静電結合がもたらす静電容量の変化に基づいて、タッチポイントの位置座標を判定する。超音波方式のタッチスクリーンは、予め、電気信号を超音波に変換してタッチスクリーンの表面に直接送出する。そして、ユーザがスクリーンをタッチすると、超音波は吸収され、減衰する。そのため、タッチ前後における超音波の減衰量に基づいて正確なタッチ位置の判定ができる。
【0003】
抵抗膜方式と静電容量方式のタッチパネルは常に市場の主流である。その一方、大サイズのタッチスクリーンのニーズが高まり、メーカに対するコストダウンの要求もますます厳しくなっている背景において、光学方式のタッチスクリーン技術は、徐々に台頭しつつある。通常の光学方式のタッチスクリーンは、概して、赤外線タイプ、CMOS/CCDタイプ、内蔵タイプ、投影タイプに分けることができる。通常、光学方式のタッチスクリーンは、遮光効果により陰影を生成し、感光部材(例えばイメージセンサ)により陰影の変化を検出して、タッチ位置を判定する。イメージセンサは、光電技術を基に開発され、光学像を1次元の時間シーケンス信号に変換する。真空管イメージセンサは、典型的な例として、電子ビームカメラ管や、画像増強管、画像変換器などが知られており、半導体集積イメージセンサとしては、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)センサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)センサ、スキャンタイプイメージセンサが知られている。電子ビームカメラ管のような真空管イメージセンサは、徐々に、CCDやCMOSなどの半導体集積イメージセンサに取って代えられつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特開CN1674042号公報
【特許文献2】中国特開CN101520700号公報
【特許文献3】中国実用新案CN201426149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光学方式のタッチスクリーンは、異なる検知範囲に適用できるように、スクリーンに用いられるセンサの数をタッチスクリーンのサイズに応じて増減させる必要があるという共通した短所を持っている。また、既存のタッチスクリーンは、メーカにとって負担の大きい受注生産がメインである。従って、センサの位置を調整するだけで様々なスペックのタッチスクリーンに適用可能な技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光学式タッチシステムと位置判定方法を提供する。
【0007】
本発明の1つの態様は、光学式タッチシステムである。該光学式タッチシステムは、被検知エリアと検知ユニットを備える。前記検知ユニットは、少なくとも2つのイメージセンサを有する。これらのイメージセンサは、位置の調整が可能であり、検知範囲が互いに交差して交差エリアを形成する。また、該交差エリアは、前記被検知エリアをカバーする。
【0008】
本発明の別の態様は、光学式タッチシステムにおける位置判定方法である。該方法は、少なくとも2つのイメージセンサを同時に駆動するステップと、前記少なくとも2つのイメージセンサにより被検知エリアのイメージ情報を夫々取得するステップと、前記イメージ情報を分析して、過飽和の応答をする部位の有無を判定するステップと、前記被検知エリアに対応する、前記過飽和の応答をする部位に対応する位置の情報を算出するステップと、過飽和の素子により構成された前記部位の中心点を算出することにより、前記被検知エリアにおけるタッチ位置の情報を取得するステップとを有する位置判定方法。
【0009】
上記光学式タッチシステムと位置判定方法は、立体視覚理論に基づく。上記位置判定方法は、少なくとも2つの、調整可能な、イメージ情報を取得するイメージセンサの適用により、これらのイメージセンサの位置を調整するだけで、異なるサイズのタッチスクリーンに適応可能である。さらに、センサの数を増やさなくても、該タッチシステムの検知エリアは、スクリーン全体をカバーできる。また、該位置判定方法は、タッチペンによりイメージセンサに対応する波長範囲の発光をすることにより、タッチレスポンス時間の短縮とタッチ位置の判定精度の向上を図るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光学式タッチシステムのための立体視覚理論を説明するための第1の概略図である。
【図2】光学式タッチシステムのための立体視覚理論を説明するための第2の概略図である。
【図3】タッチペンを含む光学式タッチシステムの構成の概略図である。
【図4】調整可能なタッチシステムの構成の概略図である。
【図5】図4に示す調整可能なタッチシステムに対する相互間隔の調整を説明するための概略図である。
【図6】内蔵式のタッチシステムの構成の概略図である。
【図7】外付けタイプのタッチシステムの構成の概略図である。
【図8】図7に示すタッチシステムの接続態様の断面図である。
【図9】赤外線LEDを含むタッチペンの構成の概略図である。
【図10】光学式タッチシステムにおける位置判定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の技術的特徴をより明確にするために、以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0012】
一実施の形態にかかる光学式タッチシステムは、立体視覚理論に基づく。人間が立体視覚を有する原因の1つは、左目と右目の視角が互いにかなり異なり、左目が見た物体が左側に偏り、右目が見た物体が右側に偏ることにある。また、夫々の目が見た像は、1つの視神経を介して人間の脳に伝わる。最終的に、この2つの像は、脳によって、1つの立体画像に合成される。該実施の形態の光学式タッチシステムは、写真撮影の原理と立体視覚理論の組合せに基づいたものであり、人間の左目と右目に夫々該当する2つのイメージセンサの適用により、タッチ位置の正確な判定を図る。
【0013】
写真撮影の主な原理は、三次元空間のデータを二次元空間の媒体に記録するためのものである。従来のカメラの場合では、媒体がネガフィルムであり、デジタルカメラの場合では、媒体がCMOSセンサ上の各画像素子である。三次元空間の情報を二次元空間の媒体に記録する際に、幾何学的な確かな対応関係が存在する。例えば、図1に示すように、三次元空間にある点Pは、その座標値が、カメラの中心に対して(Xc,Yc,Zc)である。写真撮影のプロセスを経て該点を像面に投影した後、該点の対応する座標値は、(Xi,Yi)になる。像面に投影される前後において、点Pについての幾何学的な対応関係が下記のようになる。
【数1】

【数2】

【0014】
図1を参照すると分かるように、「f」は、カメラの中心と像面の中心との間の距離であり、その数値は知られている。従って、三次元空間における点Pの座標値が分かれば、上記式(1)と式(2)に基づいて、該点の像面上における相対応する座標値を決定することができる。一方、像面上のPの座標値Piが分かっていても、点Pの位置を逆推定することができない。
【0015】
一実施の形態として、図2に示すように、同一の基準線に位置し、相互間の距離がLである2つのカメラを用いて同時に点Pの情報を記録する場合を考える。該撮影システムの全体に対して、ターゲット点の座標値は(Xc,Yc,Zc)である。左のカメラに対して、座標値が(Xcl,Ycl,Zcl)であり、左像面上の相対応する点の座標値が(Xil,Yil)である。同様に、右のカメラに対して、座標値が(Xcr,Ycr,Zcr)であり、右像面上の相対応する点の座標値が(Xir,Yir)である。図2に示す幾何学的な対応関係に基づいて、これらの座標値間の関係は、下記のようになる:
【数3】

【0016】
従って、該実施の形態において、式(3)に基づくと、PilとPirの座標情報が分かれば、式(3)からZcをすぐに算出することができる。同様に、下記の2つの式によれば、XcとYcも算出でき、すなわち点Pの正確な場所の座標値(Xc,Yc,Zc)を算出することができる。
【数4】

【数5】

【0017】
上述した理論の基礎は、立体視覚理論または双眼視覚理論と呼ばれる。
【0018】
図3に示すように、該実施の形態の光学式タッチシステム30は、少なくとも第1のイメージセンサ31第2のイメージセンサ32を備える。上述した立体視覚理論に基づくと、第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32は、図2において、同一の基準線に設けられた2つのカメラに該当する。但し、該実施の形態が、タッチパネルに関するため、「Yc=Yil=Yir=固定値」の関係が成り立つと共に、上記固定値は、0になるようにセットすることができる。そのため、二次元のイメージセンサの代わりに、該実施の形態における第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32としては、リニアCMOSセンサまたはリニアCCDセンサを用いることができる。また、第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32間の距離Lも固定である。上記式(3)、(4)、(5)が示す幾何学的な対応関係に基づけば、タッチ位置の決定が可能となる。
【0019】
図3を参照する。少なくとも第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32を備える光学式タッチシステム30とディスプレイパネル10を組み合わせると、既存の非タッチ式ディスプレイスクリーンをタッチスクリーンにアップグレードすることができる。タッチペンや、指、または他の物がディスプレイパネル10をタッチすると、第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32は、夫々、タッチ位置の情報を含む画像を取得する。システムにより2つのグループのイメージ情報が合成された後に、正確なタッチ位置の情報が算出されて、ディスプレイパネル10にフィードバックされる。これにより、ディスプレイパネル10は、フィードバックされた情報に応じた動作をする。
【0020】
図4を参照する。光学式タッチシステムの検知範囲は、調整可能である。第1のイメージセンサ31の検知範囲と第2のイメージセンサ32の検知範囲は、互いに交差して、交差エリアを形成する。一実施の形態において、第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32の位置を調整し、上記交差エリアが全被検知エリアをカバーするようにすることができる。例えば、調整機構35により、第1のイメージセンサ31と第2のイメージセンサ32間の間隔を調整するようにすることができる。図5に示すように、様々なスクリーンサイズに適応するために、イメージセンサに広角レンズを設け、検知範囲を広げるようにしてもよい。さらに、被検知エリアは、上述したディスプレイパネル以外に、投影スクリーンなどの他のスクリーンであってもよい。スクリーンのサイズが変わると、ユーザは、イメージセンサの位置を調整すると共に、システムに新しいLを入力する更新プログラムを実行させることができ、その結果、該システムが新しいタッチシステムに適応する。
【0021】
図6と図7を参照する。光学式タッチシステム30は、ディスプレイパネル10との接続に関しては、内蔵タイプまたは外付けタイプのいずれであってもよい。図6に示すように、内蔵タイプの場合、光学式タッチシステム30は、ディスプレイパネル10の外枠20に設けられるようにすることができる。一方、図7に示すように、外付けタイプの場合、光学式タッチシステム30は、第1のイメージセンサ31と、第2のイメージセンサ32と、筺体(housing)33を少なくとも備えると共に、図8に示すように、光学式タッチシステム30の筺体33と、ディスプレイパネル10の外枠20とは、固定用レジ34により接続される。ディスプレイスクリーンが投影スクリーンなどの他の任意のスクリーンである場合においても、光学式タッチシステム30は、スクリーンの外の周辺位置に設置することができる。
【0022】
タッチ応答時間の短縮と、タッチ位置の判定の精度向上のために、光学式タッチシステムが、イメージセンサに対応する波長範囲(spectra)を放出するタッチペン40を含むようにしてもよい。例えば、イメージセンサとしてCMOSセンサが用いられている場合には、タッチペン40に赤外線光源を設けることができる。CMOSセンサは、異なる波長範囲に対して異なる応答をし、特に赤外線に対して高感度な応答をする。そのため、CMOSセンサがタッチ位置の情報を取得する際に、CMOSセンサ上の対応する位置の画像素子は、赤外線に刺激され、タッチ位置の情報を取得する上に有用な過飽和応答の状態を呈する。
【0023】
図9を参照する。タッチペン40は、少なくとも、オン/オフ・スイッチ42と赤外線LED41を備える。赤外線LED41の波長範囲は、例えば890nm−980nmである。オン/オフ・スイッチ42がオンすると、タッチペン40は、情報をインプットする動作をし、CMOSセンサが赤外線LEDの画像を取得するときに、センサ上の相対応するエリアの画像素子は、同時に赤外線により刺激され、過飽和応答の状態に到達する。そして、過飽和の画像素子により構成された部位の中心点の位置が算出され、タッチ位置が得られる。この手法は、冗長、複雑な画像処理プロセスを必要とせずに、タッチ応答の速度と正確さを向上させることができる。
【0024】
図10を参照する。光学式タッチシステムの位置判定方法は、下記のステップを含む。
ステップS100:2つのイメージセンサを同時に駆動する。
ステップS200:2つのイメージセンサの夫々を介して被検知エリアのイメージ情報を取得する。
ステップS300:イメージ情報を解析して、過飽和応答の部位の有無を判定する。過飽和応答の部位があれば、次のステップに進み、過飽和応答の部位が無ければ、ステップS100に戻る。
ステップS400:被検知エリアにおける、過飽和応答の部位に対応する位置の情報を算出する。
ステップS500:過飽和の画像素子により構成された上記部位の中心点の位置を算出し、被検知エリアにおけるタッチ位置の情報を得る。
【0025】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述実施の形態に対して、さまざまな変更、増減を加えてもよい。これらの変更、増減が加えられた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また、本発明は、図示の構成に限定されることもない。
【符号の説明】
【0026】
10 ディスプレイパネル
20 外枠
30 光学式タッチシステム
31 第1のイメージセンサ
32 第2のイメージセンサ
33 筺体
34 固定用レジ
35 調整機構
40 タッチペン
41 赤外線LED
42 オン/オフ・スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知エリアと、
少なくとも2つのイメージセンサを有する検知ユニットとを有し、
前記少なくとも2つのイメージセンサは、位置が調整可能であると共に、検知範囲が互いに交差して交差エリアを形成し、
前記交差エリアは、前記被検知エリアをカバーする、
光学式タッチシステム。
【請求項2】
前記イメージセンサは、リニアセンサである、
請求項1に記載の光学式タッチシステム
【請求項3】
前記イメージセンサは、CMOSセンサまたはCCDセンサである、
請求項1に記載の光学式タッチシステム。
【請求項4】
前記被検知エリアは、ディスプレイパネルまたは映写幕である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光学式タッチシステム。
【請求項5】
前記ディスプレイパネルまたは前記映写幕に前記検出ユニットが内蔵される内蔵タイプ、または、前記ディスプレイパネルまたは前記映写幕の外部から前記検出ユニットが接続される外付けタイプである、
請求項4に記載の光学式タッチシステム。
【請求項6】
前記少なくとも2つのイメージセンサ上に、広角レンズが設けられている、
請求項1に記載の光学式タッチシステム。
【請求項7】
タッチペンをさらに備え、
前記タッチペンが発光する波長範囲は、前記少なくとも2つのイメージセンサに対応する、
請求項1に記載の光学式タッチシステム。
【請求項8】
前記タッチペンの内部に赤外線LEDが設けられており、
前記少なくとも2つのイメージセンサは、CMOSセンサである、
請求項7に記載の光学式タッチシステム。
【請求項9】
前記赤外線LEDの発光波長範囲は、890nm−980nmである、
請求項8に記載の光学式タッチシステム。
【請求項10】
光学式タッチシステムにおける位置判定方法において、
少なくとも2つのイメージセンサを駆動するステップと、
前記少なくとも2つのイメージセンサにより、被検知エリアのイメージ情報を夫々取得するステップと、
前記イメージ情報を分析して、過飽和の応答をする部位の有無を判定するステップと、
前記被検知エリアにおける、前記過飽和の応答をする部位に対応する位置の情報を算出するステップと、
過飽和の画像素子により構成された前記部位の中心点を算出することにより、前記被検知エリアにおけるタッチ位置の情報を取得するステップとを有する位置判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−45449(P2013−45449A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138513(P2012−138513)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(504272327)宸鴻光電科技股▲分▼有限公司 (30)
【氏名又は名称原語表記】TPK TOUCH SOLUTIONS INC.
【住所又は居所原語表記】6F,NO.13−18,Sec.6, Min Quan E.Rd.,Neihu Dist.,Taipei,Taiwan.
【Fターム(参考)】