説明

光学式情報読取装置

【課題】単純な構成で小型化が可能な光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】光学的情報読取装置1Aは、光を出射する発光部2と、発光部2から出射された光を反射するミラー3が設けられた可動子40Aを有し、可動子40Aを回転駆動するミラー駆動部4Aと、一方の端部に可動子40Aが固定され、可動子40Aを回転可能に支持する板状ねじり棒バネ30a,30bを備える。ミラー駆動部4Aは、一方の板状ねじり棒バネ30aが、ミラー3と垂直な向きに配置される共に、他方の板状ねじり棒バネ30bが、ミラー3と平行な向きに配置され、2本の板状ねじり棒バネ30a,30bが直角に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードや2次元コード等の光反射率が異なるパターンで構成される読取対象を光走査し、読取対象からの反射光を受光して光電変換した信号から情報を読み取る光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学式情報読取装置として、商品の品名や価格等の情報を示すバーコードを読み取るバーコードリーダが、流通業界や小売業界で広く使用されている。このようなバーコードリーダは、携帯型と定置型に大別され、携帯型のバーコードリーダでは、小型化、駆動電圧の低電圧化、高耐久性が求められる。
【0003】
携帯型のバーコードリーダの中で、光ビーム走査方式と称されるバーコードリーダは、レーザダイオード等の光源によって出射されるレーザ光をビーム状にし、この光ビームを反射するミラーを回転あるいは振動させることで光ビームを偏向し、バーコードを走査する。そして、バーコードからの反射光を集光し、受光センサで受光して電気信号に変換する。この得られた電気信号をA/D変換してコード化し、バーコード読取情報として出力する。
【0004】
このように、ミラーを回転または振動させて光を走査する機構としては、ミラーを板バネで支持する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、シャフトをミラーの回転軸とした構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。更に、ミラーや板バネ、駆動部を含めて半導体の製造プロセスを用いて製造したMEMS型と称される機構が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−315245号公報
【特許文献2】WO03/019463
【特許文献3】特開平10−123449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、板バネによるミラーの支持機構では、ミラーの回転動作の中心と光線の走査原点が遠くになってしまい、ミラー面精度の要求が高くなり作成が困難となる。また、板バネによる支持機構では、回転軸と光線の走査原点が遠いことで、装置が大型化する。
【0007】
シャフトによるミラーの支持機構では、軸と軸受が必要であり、軸と軸受けの摩擦や成形上発生するわずかな寸法の違い(公差)による衝突で走査時に音が発生する。寸法精度の要求を高くすると、音の発生は抑えられるが製作が困難になる。
【0008】
MEMS型では、ミラーの面に対して垂直な方向に積層して構成要素を形成するため、ミラーの面に対して垂直な方向には薄型化が可能となる。一方、ミラーの面に沿った方向には小型化が困難で、バーコードリーダに適用する場合、配置に制約が多い。また、共振周波数が数kHzと非常に大きいので、読み取った信号の高速信号処理が必要となり、信号処理部のコストが高くなる。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、単純な構成で小型化が可能な光学的情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、光を出射する発光部と、発光部から出射された光を反射するミラーが設けられた可動子を有し、可動子を回転駆動するミラー駆動部と、一方の端部に可動子が固定され、可動子を回転可能に支持するねじり棒バネを備え、ミラー駆動部は、2本以上のねじり棒バネが、可動子が回転するときに変位するねじれ方向以外への変位を阻害する配置で設けられる光学的情報読取装置である。
【0011】
本発明の光学的情報読取装置では、発光部から出射されてミラーで反射される光を、ミラーを回転動作することで偏向して、バーコードや2次元コード等の光の反射率の異なるパターンで構成される読取対象を走査する。
【0012】
ミラーが設けられた可動子は、ねじり棒バネの一方の端部に固定され、片持ち支持される構成である。一方、可動子を2本以上のねじり棒バネで支持する構成とし、かつ2本以上のねじり棒バネを、可動子が回転するときに変位するねじれ方向以外への変位を阻害する配置とすることで、ミラーが回転する方向以外への変位が抑えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学的情報読取装置によれば、ミラーが設けられた可動子をねじり棒バネで回転可能に支持することで、ミラーの回転動作の中心と光線の走査原点が近づけられる。また、ねじり棒バネの一方の端部に可動子を固定して片持ち支持構成とすることで、ねじり棒バネの両端側を固定端とするための支持機構が不要である。よって、装置の小型化が可能である。
【0014】
また、ねじり棒バネのねじれ方向への変位で回転軸を形成するので、回転動作のためのしゅう動部分が不要で、摩擦による音の発生の問題が生じない。
【0015】
更に、可動子をねじり棒バネで片持ち支持する構成とすることで、ミラーを回転させて振動させるときの共振周波数(固有振動数)を低く抑えることが可能となり、読み取りに適した速度でミラーを回転駆動することができる。
【0016】
また、可動子を2本以上のねじり棒バネで支持する構成とし、かつ、2本以上のねじり棒バネを、可動子が回転するときに変位するねじれ方向以外への変位を阻害する配置とすることで、ミラーが回転する方向以外への変位が抑えられ、読取対象を確実に走査可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す平面図である。
【図2】第1の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の平面図である。
【図5】第1の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の側面図である。
【図6】第1の実施の形態における板状ねじり棒バネの一例を示す構成図である。
【図7】2本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の実施例を示す構成図である。
【図8】x方向に荷重を加えたときのミラー駆動部の応力解析結果を示す説明図である。
【図9】x方向とy方向に荷重を加えたときのミラー駆動部の応力解析結果を示す説明図である。
【図10】ミラーの倒れ角度及びz方向変位を示す説明図である。
【図11】第2の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す平面図である。
【図12】第2の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の斜視図である。
【図13】第3の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す平面図である。
【図14】第3の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の斜視図である。
【図15】第3の実施の形態の光学的情報読取装置の変形例を示すミラー駆動部の平面図である。
【図16】第3の実施の形態の光学的情報読取装置の変形例を示すミラー駆動部の平面図である。
【図17】3本の棒状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第1の実施例を示す構成図である。
【図18】3本の棒状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第2の実施例を示す構成図である。
【図19】3本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第1の実施例を示す構成図である。
【図20】3本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第2の実施例を示す構成図である。
【図21】3本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第3の実施例を示す構成図である。
【図22】板状ねじり棒バネの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の光学的情報読取装置の実施の形態について説明する。
【0019】
<第1の実施の形態の光学的情報読取装置の構成例>
図1は、第1の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す平面図、図2は、第1の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す斜視図である。また、図3は、第1の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の斜視図、図4は、第1の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の平面図、図5は、第1の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の側面図である。
【0020】
第1の実施の形態の光学的情報読取装置1Aは、例えば、表示部11a及び操作部11b等を備えた携帯型のバーコードリーダ11に実装され、発光部2から出射された光を反射するミラー3の角度を変えるミラー駆動部4Aを備える。ミラー駆動部4Aは、可動子40Aと固定子41Aを備え、ミラー3が取り付けられた可動子40Aが、2本の板状ねじり棒バネ30a,30bで回転可能に支持される構成である。
【0021】
光学的情報読取装置1Aは、発光部2から出射されてミラー3で反射される光を、ミラー3を回転動作させることで偏向して、バーコードBや2次元コード等の光の反射率の異なるパターンで構成される読取対象を走査する。
【0022】
また、光学的情報読取装置1Aは、読取対象を走査した光の反射光を受光部5で受光して、光電変換した信号から情報を読み取る。
【0023】
発光部2は、半導体レーザ(LD)等で構成される光源20と、光源20から所定の放射角で放射された光を集光するレンズ21と、レンズ21で集光された光を絞るアパーチャ22が筐体10に取り付けられ、光源20から放射された光を集光または平行光化したビーム光を出射する。
【0024】
受光部5は、読取対象を走査した光の反射光で、ミラー3で反射された光を反射する反射ミラー50と、反射ミラー50で反射された光を受光し、光電変換して出力するフォトダイオード(PD)51を備える。
【0025】
ミラー駆動部4Aは、上述したミラー3と、ミラー3が取り付けられたフレーム42Aと、フレーム42Aに取り付けられた永久磁石43Aを備えて、可動子40Aが構成される。また、ミラー駆動部4Aは、ボビン44Aに巻かれるコイル45Aを備えて、固定子41Aが構成される。
【0026】
ミラー3は、本例ではガラスで構成される。なお、ミラー3は、金属または樹脂等で構成しても良い。フレーム42Aは、本例では金属で構成され、平板状の支持部420aの一方の端部に、支持部420aに対して垂直な方向に突出するミラー取付部420bが一体に形成される。また、フレーム42Aは、支持部420aの他方の端部に、支持部420aに対して垂直で、ミラー取付部420bと同じ方向に突出するマグネット取付部420cが一体に形成される。可動子40Aは、フレーム42Aの前面側となるミラー取付部420bにミラー3が固着され、背面側となるマグネット取付部420cに永久磁石43Aが固着される。
【0027】
図6は、第1の実施の形態における板状ねじり棒バネの一例を示す構成図で、図6(a)は、板状ねじり棒バネの正面図、図6(b)は、板状ねじり棒バネのA−A断面図である。板状ねじり棒バネ30a,30bは、金属材料または樹脂材料の板バネで構成され、長さL方向の一方の端部が、図5等に示すようにフレーム42Aの支持部420aに固着され、他方の端部が筐体10に固着される。これにより、可動子40Aは、板状ねじり棒バネ30a,30bにより筐体10に片持ち支持される。板状ねじり棒バネ30a,30bの両端は、固定の強度を増すため、幅Wを拡げた構成とすると共に、応力集中を防ぐため、幅Wを拡げる部位を円形としている。
【0028】
板状ねじり棒バネ30a,30bは、例えば、体心立方構造をもつβ型チタン合金で、例えば、Ti3(Nb,Ta,V)+(Zr,Hf)+Oと表示される組成を有する合金である。なお、板状ねじり棒バネ30a,30bとフレーム42Aは接着により固定されるが、接着の強度を増すため、板状ねじり棒バネ30a,30bとフレーム42は、同じ材質で構成することが望ましい。板状ねじり棒バネ30a,30bは、金属材料であれば、SUS304等のステンレス鋼、りん青銅、高強度銅合金KA1025等で構成しても良い。また、樹脂材料であれば、一般の樹脂材料に比べて弾性変形の許容幅が大きい超弾性プラスチック等で構成しても良い。
【0029】
2本の板状ねじり棒バネ30a,30bは、ミラー3の反射面に対して垂直な方向に沿って並列される。ミラー3側に配置される一方の板状ねじり棒バネ30aは、幅W方向の面が、ミラー3の反射面に対して垂直な向きに固定され、永久磁石43A側に配置される他方の板状ねじり棒バネ30bは、幅W方向の面が、ミラー3の反射面に対して平行な向きに固定される。これにより、2本の板状ねじり棒バネ30a,30bは、直角に配置される。なお、上述した2本の板状ねじり棒バネ30a,30bの配置は一例であり、板状ねじり棒バネ30a,30bを、ミラー3の反射面に対して垂直または平行以外の向きとした配置でも良い。また、2本の板状ねじり棒バネ30a,30bを、直角以外の例えばV型に配置しても良い。
【0030】
1本の板状のねじり棒バネで可動子を片持ち支持する構造では、ねじり棒バネのねじれと曲げの2つの振動モードがあるため、ミラーで反射された光が2次元方向にぶれる欠点がある。また、2本の板状のねじり棒バネで可動子を片持ち支持する構成でも、2本のねじり棒バネを平行に配置した構成では、ねじれと曲げの2つの振動モードがあるため、ミラーで反射された光が2次元方向にぶれる欠点がある。
【0031】
このため、板状のねじり棒バネで可動子を支持する構成では、ねじり棒バネが2本以上必要で、かつ、2本以上のねじり棒バネを、直角やY型等、平行な方向以外で配置する必要がある。
【0032】
すなわち、2本の板状ねじり棒バネ30a,30bを直角に配置することで、ミラー3に対して垂直な向きに配置される板状ねじり棒バネ30aは、ミラー3の面に対して平行な方向に比較して、垂直な方向には撓みにくく、ミラー3の面に対して垂直な方向への変形が規制される。一方、ミラー3に対して平行な向きに配置される板状ねじり棒バネ30bは、ミラー3の面に対して垂直な方向に比較して、平行な方向には撓みにくく、ミラー3の面に対して平行な方向への変形が規制される。
【0033】
従って、例えば2本の板状ねじり棒バネを直角に配置すると、回転方向であるねじれ方向の剛性は小さく、かつ、他の曲げ方向の剛性を大きく、ねじれ方向以外への変形を阻害することができる。これにより、2本の板状ねじり棒バネ30aと板状ねじり棒バネ30bの間に回転軸Oが形成され、コイル45Aに通電することで、可動子40Aは、回転軸Oを中心に回転動作を行う。
【実施例1】
【0034】
図7は、2本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の実施例を示す構成図で、図7(a)は、ミラー駆動部の平面図、図7(b)は、ミラー駆動部の要部平面図、図7(c)は、ミラー駆動部の平面図、図7(d)は、ミラー駆動部の側面図である。以下に、共振周波数の目標値を50Hz前後に設定したミラー駆動部の実施例について説明する。以下の説明では、ミラー3の幅方向をx軸、ミラー3の面に垂直な方向をy軸、ミラー3の高さ方向をz軸と称す。
【0035】
板状ねじり棒バネ30a,30bは、図6に示す形状で、長さL=2.7mmとした。板状ねじり棒バネ30a,30bの断面形状は長方形で、幅W=0.2mm、厚さT=0.03mmとした。材質は、本実施例では、Ti3(Nb,Ta,V)+(Zr,Hf)+Oと表示される組成を有する合金とした。
【0036】
また、ミラー3は、長さ9.3mm、高さ2.6mm、厚さ0.55mmとし、比重2.55g/cm3、質量0.034gである。永久磁石43Aは、長さ1.0mm、高さ2.0mm、厚さ1.8mmとし、比重7.5g/cm3、質量0.077gである。コイル45Aは、長さ3mm、高さ2mm、厚さ0.6mmとした。フレーム42Aの材質は、ねじり棒バネ30a,30bとの接着を考慮して、板状ねじり棒バネ30a,30bと同じ材質とした。可動子40Aの質量は、可動子40Aの体積と、永久磁石43Aの密度(7.5g/cm3)と、ねじり棒バネ30a,30b及びフレーム42を構成する材質の密度(5.6g/cm3)から算出すると、0.089gであった。
【0037】
以上の条件で、応力解析のためにある起磁力における静推力を求めると、起磁力NI=56.2Aのとき、x方向における静推力は、最小でFx=3.5mNであった。また、y方向における静推力は、最大でFy=1.47mNであった。以上のことから、応力解析での荷重の目安は、x方向でFx=3.5mN、y方向でFy=1.47mNとした。
【0038】
図8は、x方向に荷重を加えたときのミラー駆動部の応力解析結果を示す説明図で、図8(a)は、応力特性を示す側面図、図8(b)は、たわみ特性を示す平面図である。図8では、x方向に荷重を加え、重力Gの向きを−z方向としたときのミラー駆動部4Aにおける応力解析結果を示す。ここで、図8(a)では、応力の大小をグラデーションで模式的に表しており、グラデーションの濃い部分が応力の高い部分である。また、図8(b)では、たわみ量の大小をグラデーションで模式的に表しており、グラデーションの濃い部分がたわみ量の大きい部分である。
【0039】
本実施例では、重力Gは−z方向にかかっており、可動子40Aの重心gが回転軸O上にあるように設計した。荷重は、永久磁石43Aの上部0.1×0.1mmの部分に、x方向に3.9mNを加えた。
【0040】
以上の条件では、最大応力は141.3N/mm2で、板状ねじり棒バネ30a,30bの固定端P1に発生した。板状ねじり棒バネ30a,30bを構成する材質の耐力は、本例では900N/mm2であり、安全率を求めると6.4である。また、ミラー3の最大たわみはδm=0.81mmであり、ミラー3の走査角を求めると10.03°であった。
【0041】
図8では、x方向の荷重のみを考慮したが、上述したように、可動子40Aが10°傾いたときにy方向の推力が−1.47mN発生するという結果が得られており、y方向の荷重を考慮する必要がある。また、光学的情報読取装置1Aがあらゆる方向となっても、バーコードを読み取ることができることが望まれる。そこで、x方向の荷重に加えて、y方向に荷重を−1.47mN加え、更に、重力の向きを変化させて応力解析を行った。
【0042】
図9は、x方向とy方向に荷重を加えたときのミラー駆動部の応力解析結果を示す説明図で、図9(a)は、応力特性を示す側面図、図9(b)は、たわみ特性を示す平面図である。図9では、x方向とy方向に荷重を加え、重力Gの向きを−y方向としたときのミラー駆動部4Aにおける応力解析結果を示す。
【0043】
荷重は、永久磁石43Aの上部0.1×0.1mmの部分に、x方向に3.1mN、y方向に−1.47mNを加えた。
【0044】
最大応力は147.6N/mm2で、板状ねじり棒バネ30a,30bの固定端P1に発生した。この値は、x方向にのみ荷重を加え、重力Gの向きを−z方向とした場合と比較して4.5%大きくなった。安全率を求めると6.1である。また、ミラー3の最大たわみはδm=0.8091mmであり、ミラー3の走査角を求めると10.02°であった。
【0045】
板状ねじり棒バネ30a,30bを用いたミラー駆動部4Aの応力解析結果を、以下の表1に示す。図10は、ミラーの倒れ角度及びz方向変位を示す説明図である。ここで、ミラー駆動部4Aの運動方程式は、以下の(1)式で表される。また、(1)式より、固有振動数は、以下の(2)式で表される。ここに、T:トルク(N・m)、J:慣性モーメント(kg・m2)、C:減衰定数(N・s・m/rad)、K:ねじりバネ定数(N・m/rad)である。
【0046】
【表1】

【0047】
【数1】

【0048】
y方向の推力を考慮すると、x方向の推力は、x方向にだけ荷重を加えた場合と比較して小さな推力でミラー3を半角で約10°走査することが可能である。
【0049】
また、y方向の推力を考慮することで、荷重を加えたとき、ミラー3のz方向への変位、ミラー3の倒れ角度が大きくなる傾向にある。しかし、ミラー3の倒れ角度は非常に小さく、読取対象までの距離を30cmと仮定しても、最大で0.07mm程度のずれしか生じないので、ミラーのz方向への変位及び倒れ角度は許容範囲に収めることができる。また、重力の向きを変えても、ミラー3を±10°走査させるのに必要な推力及び固有振動数は大きく変化しないことがわかる。
【0050】
以上の応力解析結果から、2本の板状ねじり棒バネ30a,30bを直角に配置し、かつ、可動子40Aを片持ち支持とした構成では、共振周波数(固有振動数)を目標とする50Hzに近づけることができた。したがって、板状ねじり棒バネ30a,30bのバネ定数と、可動子40Aの慣性モーメントから決定される共振周波数で駆動することが可能となり、低消費電力化を実現することができる。
【0051】
なお、板状ねじり棒バネ30a,30b及び可動子40A等の寸法及び質量等は、上述した実施例1に限定されるものではないが、実施例1を目安とすることで、ミラー駆動部4Aの小型化及び軽量化が可能である。例えば、実施例1に基づくミラー駆動部では、外形寸法を約10×7×3mm程度とすることができた。ミラー駆動部を小型化できれば、発光部や受光部を含めた光学的情報読取装置全体の小型化が可能で、また、光学的情報読取装置を備えたバーコードリーダの小型化が可能となる。
【0052】
<第2の実施の形態の光学的情報読取装置の構成例>
図11は、第2の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す平面図、図12は、第2の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の斜視図である。
【0053】
第2の実施の形態の光学的情報読取装置1Bは、発光部2から出射された光を反射するミラー3の角度を変えるミラー駆動部4Bを備える。ミラー駆動部4Bは、可動子40Bと固定子41Bを備え、ミラー3が取り付けられた可動子40Bが、3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cで回転可能に支持される構成である。
【0054】
ミラー駆動部4Bは、上述したミラー3と、ミラー3が取り付けられたフレーム42Bと、フレーム42Bに取り付けられた永久磁石43Bを備えて、可動子40Bが構成される。また、ミラー駆動部4Bは、ボビン44Bに巻かれるコイル45Bを備えて、固定子41Bが構成される。
【0055】
フレーム42Bは、本例ではプラスチックで構成され、可動子40Bは、フレーム42Bの前面側にミラー3が固着され、背面側に永久磁石43Bが固着される。
【0056】
棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cは、金属材料または樹脂材料の棒状の部材で構成され、長さ方向の一方の端部がフレーム42Bに固着され、他方の端部が筐体10に固着される。これにより、可動子40Bは、棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cにより筐体10に片持ち支持される。
【0057】
棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cは、金属材料であれば、上述したように、Ti3(Nb,Ta,V)+(Zr,Hf)+Oと表示される組成を有する体心立方構造をもつβ型チタン合金、SUS304等のステンレス鋼、りん青銅、高強度銅合金KA1025等で構成すると良い。また、樹脂材料であれば、超弾性プラスチック等で構成すると良い。
【0058】
3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cは、1本の棒状ねじり棒バネ31aをミラー3側に配置すると共に、2本の棒状ねじり棒バネ31b,31cを永久磁石43B側に配置し、かつ、棒状ねじり棒バネ31b,31cを、ミラー3の反射面に対して平行な方向に沿って並列して、3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cが、三角形の頂点上に配置される。
【0059】
1本のねじり棒バネで可動子を片持ち支持する構造では、ねじり棒バネのねじれと曲げの2つの振動モードがあるため、ミラーで反射された光が2次元方向にぶれる欠点がある。また、2本以上のねじり棒バネで可動子を片持ち支持する構成でも、複数本のねじり棒バネを直線上に配置した構成では、ねじれと曲げの2つの振動モードがあるため、ミラーで反射された光が2次元方向にぶれる欠点がある。
【0060】
このため、複数本のねじり棒バネで可動子を支持する構成では、ねじり棒バネが3本以上必要で、かつ、少なくとも3本のねじり棒バネは、同一直線上以外で配置する必要がある。
【0061】
すなわち、3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cを三角形の頂点上に配置することで、ミラー3の面に対して平行及び垂直な方向には撓みにくくなる。
【0062】
従って、3本の棒状ねじり棒バネを三角形の頂点上に配置すると、回転方向であるねじれ方向の剛性は小さく、かつ、他の曲げ方向の剛性を大きく、ねじれ方向以外への変形を阻害することができる。これにより、3本の棒状ねじり棒バネ31aと棒状ねじり棒バネ31bと棒状ねじり棒バネ31cの間に回転軸Oが形成され、コイル45Bに通電することで、可動子40Bは、回転軸Oを中心に回転動作を行う。なお、棒状ねじり棒バネの本数は3本に限るものではなく、3本以上であっても良い。
【0063】
<第3の実施の形態の光学的情報読取装置の構成例>
図13は、第3の実施の形態の光学的情報読取装置の全体構成例を示す平面図、図14は、第3の実施の形態の光学情報読取装置の要部構成例を示すミラー駆動部の斜視図である。
【0064】
第3の実施の形態の光学的情報読取装置1Cは、発光部2から出射された光を反射するミラー3の角度を変えるミラー駆動部4Cを備える。ミラー駆動部4Cは、可動子40Cと固定子41Cを備え、ミラー3が取り付けられた可動子40Cが、3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cで回転可能に支持される構成である。
【0065】
ミラー駆動部4Cは、上述したミラー3と、ミラー3が取り付けられたフレーム42Cと、フレーム42Cに取り付けられた永久磁石43Cを備えて、可動子40Cが構成される。また、ミラー駆動部4Cは、ボビン44Cに巻かれるコイル45Cを備えて、固定子41Cが構成される。
【0066】
フレーム42Cは、本例ではプラスチックで構成され、可動子40Cは、フレーム42Cの前面側にミラー3が固着され、背面側に永久磁石43Cが固着される。
【0067】
板状ねじり棒バネ32a,32b,32cは、金属材料または樹脂材料の板バネで構成され、長さ方向の一方の端部がフレーム42Cに固着され、他方の端部が筐体10に固着される。これにより、可動子40Cは、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cにより筐体10に片持ち支持される。
【0068】
板状ねじり棒バネ32a,32b,32cは、金属材料であれば、上述したように、Ti3(Nb,Ta,V)+(Zr,Hf)+Oと表示される組成を有する体心立方構造をもつβ型チタン合金、SUS304等のステンレス鋼、りん青銅、高強度銅合金KA1025等で構成すると良い。また、樹脂材料であれば、超弾性プラスチック等で構成すると良い。
【0069】
3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cは、1本の板状ねじり棒バネ32aをミラー3側に配置すると共に、2本の板状ねじり棒バネ32b,32cを永久磁石43C側に配置し、かつ、板状ねじり棒バネ32b,32cを、ミラー3の反射面に対して平行な方向に沿って並列して、3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cが、三角形の頂点上に配置される。更に、板状ねじり棒バネ32aに対して、板状ねじり棒バネ32b,32cが平行な向きに配置される。
【0070】
図15及び図16は、第3の実施の形態の光学的情報読取装置の変形例を示すミラー駆動部の平面図である。3本の板状ねじり棒バネを用いたミラー駆動部の変形例としては、図15に示すように、3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cをY型に配置しても良い。また、図16に示すように、3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cを三角形状に配置しても良い。
【0071】
何れの構成であっても、回転方向であるねじれ方向の剛性は小さく、かつ、他の曲げ方向の剛性を大きく、ねじれ方向以外への変形を阻害することができる。これにより、3本の板状ねじり棒バネ32aと板状ねじり棒バネ32bと板状ねじり棒バネ32cの間に回転軸Oが形成され、コイル45Cに通電することで、可動子40Cは、回転軸Oを中心に回転動作を行う。なお、板状ねじり棒バネの本数は3本に限るものではなく、3本以上であっても良い。
【実施例2】
【0072】
図17は、3本の棒状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第1の実施例を示す構成図で、図17(a)は、ミラー駆動部の平面図、図17(b)は、ミラー駆動部の要部平面図、図17(c)は、ミラー駆動部の平面図、図17(d)は、ミラー駆動部の側面図である。
【0073】
棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cは、長さL=2.7mmとした、棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cの断面形状は、直径d=0.085mmの円である。
【0074】
ミラー3側に配置される棒状ねじり棒バネ31aは、ミラー3の裏面から0.075mmの位置に配置し、3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cの配置は、1辺の長さが0.4mmの正三角形の各頂点が、棒状ねじり棒バネの断面の中心となるように設計した。
【0075】
また、3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cで支持される可動子40Bは、ミラー3は、長さ9.3mm、高さ2.6mm、厚さ0.55mmとし、質量0.034gである。永久磁石43Bは、長さ1.8mm、高さ2.6mm、厚さ1.8mmとし、質量0.077gである。フレーム42Bは、長さ0.5mm、幅2.0mm、厚さ0.3mmとした。
【0076】
図18は、3本の棒状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第2の実施例を示す構成図で、図18(a)は、ミラー駆動部の平面図、図18(b)は、ミラー駆動部の要部平面図、図18(c)は、ミラー駆動部の平面図、図18(d)は、ミラー駆動部の側面図である。
【0077】
棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cは、長さL=2.7mmとした、棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cの断面形状は、直径d=0.085mmの円である。
【0078】
ミラー3側に配置される棒状ねじり棒バネ31aは、ミラー3の裏面から0.2065mmの位置に配置し、3本の棒状ねじり棒バネ31a,31b,31cの配置は、1辺の長さが0.1mmの正三角形の各頂点が、棒状ねじり棒バネの断面の中心となるように設計した。
【0079】
図19は、3本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第1の実施例を示す構成図で、図19(a)は、ミラー駆動部の平面図、図19(b)は、ミラー駆動部の要部平面図、図19(c)は、ミラー駆動部の平面図、図19(d)は、ミラー駆動部の側面図である。
【0080】
板状ねじり棒バネ32a,32b,32cは、長さL=2.7mmとした、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cの断面形状は長方形で、幅0.085mm、厚さ0.035mmとした。
【0081】
ミラー3側に配置される板状ねじり棒バネ32aは、ミラー3の裏面から0.189mmの位置に配置し、3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cの配置は、1辺の長さが0.1mmの正三角形の各頂点が、板状ねじり棒バネの断面の中心となるように設計し、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cが平行になるように配置した。
【0082】
図20は、3本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第2の実施例を示す構成図で、図20(a)は、ミラー駆動部の平面図、図20(b)は、ミラー駆動部の要部平面図、図20(c)は、ミラー駆動部の平面図、図20(d)は、ミラー駆動部の側面図である。
【0083】
板状ねじり棒バネ32a,32b,32cは、長さL=2.7mmとした、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cの断面形状は長方形で、幅0.085mm、厚さ0.035mmとした。
【0084】
3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cの配置は、1辺の長さが0.1mmの正三角形の各頂点が、板状ねじり棒バネの断面の中心となるように設計し、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cがY型になるように配置した。
【0085】
図21は、3本の板状ねじり棒バネを備えたミラー駆動部の第3の実施例を示す構成図で、図21(a)は、ミラー駆動部の平面図、図21(b)は、ミラー駆動部の要部平面図、図21(c)は、ミラー駆動部の平面図、図21(d)は、ミラー駆動部の側面図である。
【0086】
板状ねじり棒バネ32a,32b,32cは、長さL=2.7mmとした、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cの断面形状は長方形で、幅0.085mm、厚さ0.035mmとした。
【0087】
ミラー3側に配置される板状ねじり棒バネ32aは、ミラー3の裏面から0.189mmの位置に配置し、3本の板状ねじり棒バネ32a,32b,32cの配置は、1辺の長さが0.1mmの正三角形の各頂点が、板状ねじり棒バネの断面の中心となるように設計し、板状ねじり棒バネ32a,32b,32cが三角形になるように配置した。
【0088】
なお、棒状または板状ねじり棒バネ及び可動子等の寸法及び質量等は、上述した実施例2に限定されるものではないが、実施例2を目安とすることで、ミラー駆動部4B,4Cの小型化及び軽量化が可能である。例えば、実施例2に基づくミラー駆動部では、外形寸法を上述した実施例1と同等程度とすることができる。
【0089】
<板状ねじり棒バネの変形例>
図22は、板状ねじり棒バネの変形例を示す正面図である。板状ねじり棒バネ33として、一直線状ではなく、屈曲した形状としても良い。図24に示すような形状の板状ねじり棒バネ33では、直線状の板バネと比較して、回転(ねじれ)方向の剛性が小さくなるので、走査に必要な推力やバネに発生する応力を低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明による光学的情報読取装置は、バーコードリーダや二次元コードリーダ等に利用することができ、装置の小型化を実現できる。
【符号の説明】
【0091】
1A〜1C・・・光学的情報読取装置、2・・・発光部、3・・・ミラー、4A〜4C・・・ミラー駆動部、5・・・受光部、30a,30b・・・板状ねじり棒バネ、31a〜31c・・・棒状ねじり棒バネ、32a〜32c・・・板状ねじり棒バネ、40A〜40C・・・可動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光部と、
前記発光部から出射された光を反射するミラーが設けられた可動子を有し、前記可動子を回転駆動するミラー駆動部と、
一方の端部に前記可動子が固定され、前記可動子を回転可能に支持するねじり棒バネを備え、
前記ミラー駆動部は、2本以上の前記ねじり棒バネが、前記可動子が回転するときに変位するねじれ方向以外への変位を阻害する配置で設けられる
ことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記ミラー駆動部は、2本の板状のねじり棒バネが、互いが平行以外の向きで配置される
ことを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記ミラー駆動部は、2本の板状のねじり棒バネの一方が、前記ミラーと平行または垂直な向き、あるいは平行と垂直以外の向きで配置されると共に、他方の板状のねじり棒バネが、一方の前記板状のねじり棒バネに対して直角に配置される
ことを特徴とする請求項2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記ミラー駆動部は、3本以上の棒状のねじり棒バネが、同一直線上以外に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記ミラー駆動部は、3本以上の板状のねじり棒バネが、同一直線上以外に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−170429(P2010−170429A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13560(P2009−13560)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(391062872)株式会社オプトエレクトロニクス (70)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】