説明

光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法及び光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法、並びに光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法

【課題】医農薬品等の生理活性物質等として有用な光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールを高純度、高収率で得る方法を提供すること。
【解決手段】カルボニルのα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物と、カルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物とのうちの少なくとも1種を、光学活性な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体からなる遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、光学活性な含フッ素アルコール類(式[10])を得る、光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば医薬や農薬等の生理活性物質として有用な光学活性な2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステル又は3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルからなる光学活性な含フッ素β−ヒドロキシエステルの製造方法、光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法及び光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法、並びに光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、機能性や生理活性を有する既知化合物から、その水素原子をフッ素原子に置き換えることによって得られる化合物は、そのフッ素原子の特異的な電子効果によって、その機能や生理活性が強化されたり、或いは新しい機能や生理活性を発揮することが知られている。
【0003】
そのため、既知化合物の原料と類似の構造を持つ含フッ素ビルディングブロックが設計されている(「90年代のフッ素生理活性物質」石川延男監修CMC社刊(1991))、「フッ素系材料の最新動向」山辺正顕、松尾仁編集CMC社刊(1994))。
【0004】
従来、光学活性な2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステルの製造方法は、酵母などの微生物を用いた合成法(特開平6−253889:Tetrahedron(1996) 52,157)、純化学的な不斉合成法(Tetrahedron (1997) 53,10271:Synthesis (1996),1070:Liebigs Ann. (1995) 1447:特願平11−339332:日本薬学会第25回「反応と合成の進歩シンポジウム」講演要旨集,pp.210-212 (1999))などが知られている。また、3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルにおいても酵母などの微生物を用いた合成法(Helv. Chim. Acta (1984),67,1843)が報告されている。
【0005】
また、従来から光学活性な含フッ素アルコールの合成方法は非常に困難であり、これらを得るためには、ラセミ体を合成した後に光学分割を行う方法(北爪智哉、伊藤恵美造、特開平3−31238号)、酵素を用いて合成した光学活性なトリフルオロプロペンオキサイドから誘導する方法(Tetraheron Lett. (1990) 31,7031)、或いは他の光学活性な化合物から誘導する方法(Chem. Ber. (1994) 127,565)、また量論的エナンチオ選択的な還元反応(J. Org. Chem. (1995) 60,41)を用いなければならなかった。
【0006】
しかしながら、上記のような合成方法は、ラセミ体を合成した後に光学分割する際に生じる副生成物、不十分な光学純度及び高価な試薬の大量使用などの問題があった。
【0007】
最近では、触媒的エナンチオ選択的な合成法(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (1996) 35,448;Chem. Lett. (1996) 861;特開平7−252174号、特開平7−118188号)が報告されているが、低い触媒活性や不十分な光学純度などの問題が未だ残っている。
【0008】
また、本出願人は、特願平11−281044号においてパーフルオロアルキル置換エノールエステルをルテニウム触媒を用いて不斉水素化し、加水分解することによって98%ee以上の光学純度が得られることを提起しているが、この反応は、パーフルオロアルキルケトンを一度パーフルオロアルキル置換エノールエステルに変換する必要があるため、工程数が多くなり、またα位に水素がないケトンはエノールエステルに変換できないため、基質の一般性に欠けるという問題点がある。
【0009】
一方、従来、光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドは光学活性な含フッ素2−ヒドロキシカルボン酸エステルからアミド化反応を行うことにより合成されており(特開平9−59222号)、その光学活性な含フッ素2−ヒドロキシカルボン酸の合成方法は光学活性なトリフルオロプロペンオキサイドを酸化する方法(特開平5−78277号)、分割剤を用いてラセミ体を光学分割する方法(Chem. Ber. (1992),125,2795、日本化学会誌(1989),9,1576)などが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来公知の合成方法では、得られる光学活性な生成物の光学純度が低く、また用いる試薬が高価なため、大量合成には必ずしも適していない。
【0011】
また、上記従来公知の方法は、例えば特開平5−78277号によると、合成過程に微生物を用いるため、一方の異性体しか合成することができず、また酸化反応は、大量生産には不向きである。また光学分割法の場合、反応に用いる分割剤が高価であり、工程が長く更に1当量以上必要とするため経済的に問題がある上、収率は50%を超えない。
【0012】
本出願人は、触媒的不斉水素化反応を用いることにより光学活性な含フッ素2−ヒドロキシカルボン酸を合成できることを特願2000−038923号において提起している。しかしながら、この方法は工程数が長くなり、コストが高くなるという問題点がある。
【0013】
本発明は、従来技術が有する上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、医薬や農薬等の生理活性物質及び液晶材料等の中間体として有用な光学活性な2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステル及び3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルを高純度、高収率で得る方法を提供することにあり、また、光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法及び光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法、並びに光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、下記一般式[1]で表される2,2−ジフルオロ−3−ケトエステルを、下記一般式[2]で表される光学活性(キラル)な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体等の遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、下記一般式[3]で表される光学活性な2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステルを得ることを特徴とする、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステルの製造方法に係るものである(以下、本発明の第1の発明と称する。)。
【0015】
【化1】

【化2】

【化3】

(但し、前記一般式[1]、[2]及び[3]において、R1及びR2は互いに同一の若しくは異なる基であって、互いに共同して環状の基を形成してもよい脂肪族又は脂環式炭化水素基、アリール基又はアラルキル基を示し、また、R3、R4、R5及びR6は互いに同一の若しくは異なる基であって、互いに共同して環状の基を形成してもよい脂肪族炭化水素基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
【0016】
また、本発明は、下記一般式[5]で表される3−パーフルオロアルキル−3−ケトエステルを、下記一般式[2]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体等の遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、下記一般式[6]で表される光学活性な3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルを得ることを特徴とする、3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルの製造方法に係るものである(以下、本発明の第2の発明と称する。)。
【0017】
【化4】

【化5】

【化6】

(但し、前記一般式[5]、[2]及び[6]において、Rfはパーフルオロアルキル基、R2は脂肪族炭化水素基、アリール基又はアラルキル基を示し、またR3、R4、R5及びR6は互いに同一の若しくは異なる基であって、互いに共同して環状の基を形成してもよい脂肪族炭化水素基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
【0018】
本発明によれば、前記一般式[1]で表される2,2−ジフルオロ−3−ケトエステルを、前記一般式[2]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体等の遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、光学活性に富む前記一般式[3]で表される2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステルを、従来技術による場合に比べて、高い光学純度及び収率で製造することができる。
【0019】
さらに本発明によれば、前記一般式[5]で表される3−パーフルオロアルキル−3−ケトエステルを、上記と同様の前記一般式[2]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体等の遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、光学活性に富む前記一般式[6]で表される3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルを、従来技術による場合に比べて、高い光学純度及び収率で製造することができる。
【0020】
また、本発明は、下記一般式[7]で表わされるカルボニルのα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物と、下記一般式[8]で表されるカルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物とのうちの少なくとも1種を、下記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、下記一般式[10]で表わされる光学活性な含フッ素アルコール類を得る、光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法の製造方法に係るものである(以下、本発明の第3の発明と称する。)。
【0021】
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

(但し、前記一般式[7]、[8]及び[10]において、R7がフッ素原子若しくはパーフルオロアルキル基である場合、R8は置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノカルボニル基、オキシカルボニル基又はカルボキシル基を示す。前記置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、シアノ基又はリン酸エステル基などを示す。また、前記一般式[7]、[8]及び[10]において、R7がオキシカルボニル基の場合、R8は置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、前記一般式[9]において、R10及びR11は、R12とR13が異なるとき以外は必ず異なっており、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択され、R12及びR13は水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択される。また、R9とR10又はR9とR11は互いに共同して環状の基を形成してもよい。また、R14、R15、R16及びR17は互いに同一の若しくは異なる基であって、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基又はアラルキル基であり、R14とR15及びR16とR17は互いに共同して環状の基を形成してもよい。)
【0022】
また、本発明は、下記一般式[11]で表される2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミドと、下記一般式[12]で表わされる2−ケトパーフルオロアルカンアミドと、下記一般式[13]で表される含フッ素ケトンとのうちの少なくとも一種を、下記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、下記一般式[14]で表わされる光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドと、下記一般式[15]で表される光学活性な含フッ素アルコールとの少なくとも一種を得る、光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法に係るものである(以下、本発明の第4の発明と称する。)。
【0023】
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

(但し、前記一般式[11]、[12]及び[14]において、R18及びR19は互いに同一の若しくは異なる基であって、互いに共同して環状の基を形成してもよく、水素、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。また前記一般式[13]及び[15]において、R20はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、前記一般式[9]において、R10及びR11は、R12とR13が異なるとき以外は必ず異なっており、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択され、R12及びR13は水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択される。また、R9とR10又はR9とR11は互いに共同して環状の基を形成してもよい。また、R14、R15、R16、R17は互いに同一の若しくは異なる基であって、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基又はアラルキル基であり、R14とR15及びR16とR17は互いに共同して環状の基を形成してもよい。また、Rfはパーフルオロアルキル基を示す。)
【0024】
また、本発明は、上記製造方法によって得られた下記一般式[14]で表される光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドを加水分解する工程を経て、下記一般式[16]で表される光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体を得る、光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法に係るものである(以下、本発明の第5の発明と称する。)。
【0025】
【化17】


【化18】

(但し、前記一般式[14]において、R18及びR19は互いに同一の若しくは異なる基であって、互いに共同して環状の基を形成してもよく、水素、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。また、Rfはパーフルオロアルキル基を示す。)
【0026】
本発明によれば、上記一般式[7]で表わされるカルボニルのα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物又は上記一般式[8]で表されるカルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物を上記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、上記一般式[10]で表わされる光学活性な含フッ素アルコール類を高光学純度、高収率で製造することができる。
【0027】
また、本発明によれば、上記一般式[11]で表される2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミドと、上記一般式[12]で表される2−ケトパーフルオロアルカンアミドと、上記一般式[13]で表される含フッ素ケトンとの少なくとも一種を、上記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、上記一般式[14]で表される光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び上記一般式[15]で表される光学活性な含フッ素アルコールを、従来技術による場合に比べて、短い工程、高光学純度、高収率及び低コストで大量に製造することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、上記製造方法で得られた上記一般式[14]で表される光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドを加水分解する工程を経て、上記一般式[16]で表される光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体を、高い光学純度及び収率で製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上に明らかなように、本発明によれば、前記一般式[1]で表される2,2−ジフルオロ−3−ケトエステル又は前記一般式[5]で表される3−パーフルオロアルキル−3−ケトエステルを、前記一般式[2]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、例えば医薬や農薬等の生理活性物質として有用な光学活性な含フッ素β−ヒドロキシエステルを、高い光学純度及び収率で製造することができる。
【0030】
また、本発明によれば、上記一般式[7]で表わされるカルボニルのα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物又は上記一般式[8]で表されるカルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物を上記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、上記一般式[10]で表わされる光学活性な含フッ素アルコール類を高光学純度、高収率で製造することができる。
【0031】
また、本発明によれば、上記一般式[11]で表される2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミドと、上記一般式[12]で表される2−ケトパーフルオロアルカンアミドと、上記一般式[13]で表される含フッ素ケトンとの少なくとも一種を、上記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有する遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させるので、上記一般式[14]で表される光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び上記一般式[15]で表される光学活性な含フッ素アルコールを、短い工程、高光学純度、高収率及び低コストで大量に製造することができる。
【0032】
さらに本発明によれば、上記製造方法で得られた上記一般式[14]で表される光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドを加水分解する工程を経て、上記一般式[16]で表される光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体を、高い光学純度及び収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施の形態に基づいて更に具体的に説明する。
【0034】
本発明において、前記一般式[1]、[2]、[3]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、[13]、[14]及び[15]で示される脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いはアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状構造を持ち、その内部にハロゲン原子又はヘテロ原子などの置換基を有してもよい炭素数1〜30の、枝分かれがあってもよいメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、またはこれと同等の炭素数からなっていてよいシクロヘキシル基等のシクロパラフィン基であってよい。
【0035】
また、前記各一般式中に示されるアリール基は、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基や、ヘテロ原子を有する複素環芳香族基等が例示できる。その置換基としては、枝分かれがあってもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等を例示できる。
【0036】
アラルキル基としては、ベンジル基、p−メチルベンジル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、α−フェネチル基等を例示できる。
【0037】
アルコキシ基としては、直鎖状、分枝鎖状又は環状構造を持つ炭素鎖で、その内部にハロゲン原子又はヘテロ原子などの置換基を有してもよい炭素数1〜30の、枝分かれがあってもよいメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基であってよい。
【0038】
本発明における、前記一般式[5]、[6]、[7]、[8]、[10]、[11]、[12]、[13]、[14]、[15]及び[16]中に示されるRf(パーフルオロアルキル基)の炭素数は1〜10が好ましく、直鎖状又は分枝鎖状等の構造であってよく、例えばCF3、C25、C37などがあるが、特にCF3が好ましい。ここで、本発明の第5の発明において、上記Rfがトリフルオロメチル基の場合、光学活性な3,3,3−トリフルオロ乳酸を得ることができる。
【0039】
本発明における前記遷移金属触媒は、活性が高く、不斉合成の選択性も高い触媒であって、下記一般式[4]で表される遷移金属錯体を用いることが好ましい。
一般式[4]:
(MLX)n
[但し、前記一般式[4]において、Mは周期表の第VIII族金属を表わし、Lは前記一般式[2]で表わされる光学活性な配位子を表わし、Xはハロゲン、RfCO2-(Rfはパーフルオロアルキル基である。)、ClO4-、BF4-、BPh4-、PF6-などの陰イオンを表わし、nは1又は2である。]
【0040】
前記遷移金属触媒として、ロジウム錯体を用いるのがよく、特に、下記一般式[4']で表されるロジウム錯体を用いるのがよい。
一般式[4']:
(RhLX)n
(但し、前記一般式[4']において、Rhはロジウム原子、Lは光学活性なAMPP配位子を表わし、X及びnは前記したものと同じである。)
【0041】
ここで、前記遷移金属触媒を、本発明の第1の発明の原料である前記2,2−ジフルオロ−3−ケトエステル、本発明の第2の発明の原料である前記3−パーフルオロアルキル−3−ケトエステル、本発明の第3の発明の原料である上記一般式[7]で表わされるカルボニル基のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物又は上記一般式[8]で表されるカルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物、又は本発明の第4の発明の原料である前記2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミド、前記2−ケトパーフルオロアルカンアミド及び/又は前記含フッ素ケトンに対して、0.00001〜10モル%使用するのが好ましく、0.01〜1モル%が更に好ましい。
【0042】
本発明の第1又は2の製造方法によって、前記一般式[3]の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシエステル又は前記一般式[6]の3−パーフルオロアルキル−3−ヒドロキシプロピオン酸エステルを少ない触媒使用量でも大量合成が可能となり、光学活性な含フッ素β−ヒドロキシエステルを高選択的に得ることができる。
【0043】
また、本発明の第3の製造方法によって、前記一般式[10]で表わされる光学活性な含フッ素アルコール類を、或いは本発明の第4の製造方法によって、前記一般式[14]又は[15]で表される前記光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は前記光学活性な含フッ素アルコールを少ない触媒使用量でも大量合成が可能となり、高い選択性で得ることができる。一般式[11]〜[13]の化合物を併用すれば、一般式[14]と[15]の化合物を同時に得ることもできる。
【0044】
本発明の各製造方法において使用する溶媒は特に限定されるべきものではないが、好ましくはトルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒である。
【0045】
反応温度については、反応基質やその他の反応条件によって温度範囲を適宜選択することができるが、好ましくは、−100℃〜200℃、更に20℃〜100℃の範囲が特に好ましい。
【0046】
また、本発明の各不斉水素化反応における水素の圧力は、約1〜150kgf/cm2であってよいが、約5〜50kgf/cm2が特に好ましい。
【0047】
なお、本発明の第1又は2の製造方法によって得られる各前記含フッ素β−ヒドロキシエステルは、医薬、農薬等の合成中間体として有用である。
【0048】
即ち、例えば一般式[3]で表される次の化合物:
【化19】

が医薬品の中間体として使用できることは、米国特許第4,857,507号において次のような類似の化合物がRenin inhibitorとして活性のあるものとして報告されていることから、十分に支持されるものである。
【化20】

【0049】
本発明の第1の発明である前記含フッ素β−ヒドロキシエステルの製造方法で用いる原料化合物である2,2−ジフルオロ−3−ケトエステルは、公知の化合物であり、例えば、日本薬学会第25回「反応と合成の進歩シンポジウム」講演要旨集,pp.210−212(1999)や、本出願人が既に提出した特願平11−339332号又は特願2000−062046などに示された方法を用いることにより、容易に合成することができる。例えば、日本薬学会第25回「反応と合成の進歩シンポジウム」講演要旨集,pp.210−212(1999)による、2,2−ジフルオロ−3−ケトエステルの合成方法では、以下に記す方法が報告されている。
【0050】
ジフルオロケテンシリルアセタールと酸ハライドをトリエチルアミンのような塩基存在下反応させることにより、2,2−ジフルオロ−3−ケトエステルを合成する方法。
【化21】

【0051】
また、本発明における前記一般式[2]で表わされる光学活性な配位子(AMPP配位子)は、例えば、Organometallics (1996), 15, 2440-2449、Tetrahedron (1997), 8, 1083-1099、特公平7−78070号公報などに記載の方法を用いることにより合成できる。
【0052】
本発明の第4の発明である上記光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドの製造方法で用いる、原料化合物である上記一般式[11]で表わされる2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミド及び上記一般式[12]で表わされる2−ケトパーフルオロアルカンアミドは、公知の化合物であり、例えば、下記のようにヘキサフルオロエポキシプロパン(以下、6FOと称する。)を出発原料として容易に合成することが可能である(J.Org.Chem.31,1988,2312)。
【化22】

【0053】
上記一般式[12]で表わされる化合物は少量の水が存在すると、上記一般式[11]で表わされる化合物になることがあるため、出発原料は取り扱い易さの点からは上記一般式[11]の化合物がより好ましい。しかしながら、上記一般式[11]で表わされる化合物のみを用いて不斉水素化反応を行う場合は、より高温で反応を行う必要があるため、得られた化合物の光学純度が若干低下することがある。
【0054】
また、本発明の第5の発明における上記光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドを加水分解する工程を経て、上記一般式[16]の光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体を得る工程において、上記加水分解反応は、塩酸、硫酸などの酸を用いて行う方法がある。
【0055】
なお、前記した光学活性な含フッ素乳酸はアルコール類等で更にエステル化して、エステル誘導体に導くことも可能である。
【0056】
下記に示すように、本発明の第4の発明の上記光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドの製造方法で用いる原料化合物である上記一般式[11]で表わされる2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミド及び上記一般式[12]で表わされる2−ケトパーフルオロアルカンアミドに代わり、α−ケトエステルを不斉水素化しても、本発明の目的物質としての上記光学活性の含フッ素乳酸を更にエステル化した化合物である上記エステル誘導体を得ることができるが、この場合、本発明と同様の触媒で不斉水素化反応を行っても、反応に用いる基質が異なるので、光学収率は13%eeと非常に選択性は悪い。
【化23】

【0057】
なお、本発明の第4及び5の製造方法によって得られる上記光学活性な含フッ素アルコール及び上記光学活性の含フッ素乳酸は、医薬や農薬等の生理活性物質及び液晶材料の中間体として有用である。
【0058】
即ち、例えば上記一般式[16]で表される光学活性な含フッ素乳酸のRf(パーフルオロアルキル基)がトリフルオロメチル基(−CF3)の場合としての下記一般式[17]で表される光学活性な3,3,3−トリフルオロ乳酸:
【化24】

が医薬品の中間体として使用できることは、特開平6−206857号において次のような化合物がHIVプロテアーゼインヒビターとして活性があるものとして報告されていることから、十分に支持されるものである。
【化25】

【0059】
また、液晶材料の中間体として特開平3−145444及び特開平6−239797において次のような化合物が有用であることが報告されており、十分に有用性が支持されるものである。
【化26】

【化27】

【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0061】
実施例1 (2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシドデカン酸エチルの合成)
グローブボックス中、窒素雰囲気下、下記構造式(1)に示す(S)−AMPP(Cy)(5.6mg、0.011mmol)と[Rh(COD)OCOCF3]2(3.2mg、0.005mmol)を精秤し、脱気したトルエン(0.5ml)を加え室温で15分攪拌した。
【0062】
この溶液を、アルゴンもしくは窒素雰囲気下、100ml容量のステンレス製オートクレーブに加え、脱気した2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチル(556mg、2.0mmol)のトルエン(2.5ml)溶液を加えた(但し、Rh−AMPP(Cy)は基質に対し0.5mol%)。次いで、水素圧20kgf/cm2、反応温度30℃で20時間攪拌した。
【0063】
得られた反応液の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)で精製し、目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシドデカン酸エチル(556mg、収率99.6%)を得た。Daicel Chiralcel OD-Hカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより、光学純度を測定したところ、97%eeであった。
【0064】
【化28】

【0065】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.81-0.94(m,3H),1.12-2.04(m,17H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),
3.90-4.12(m,1H),4.36(q,J=7.1Hz,2H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-115.45(dd,J=264.1,7.5Hz,1F),
-123.01(dd,J=264.1,15.0Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3466,2926,1760,1316,1094.
【0066】
実施例2 (3−シクロヘキシル−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに3−シクロヘキシル−2,2−ジフルオロ−3−オキソプロピオン酸エチルを用いたこと、及び反応温度を30℃から70℃に変更したことを除いて、前記実施例1と同様にして目的化合物:3−シクロヘキシル−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルを得た(382mg、収率81%、光学純度94%ee)。
【0067】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.01-2.08(m,12H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),
3.71-3.91(m,1H),4.36(q,J=7.1Hz,2H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-111.98(dd,J=263.0,8.1Hz,1F),
-120.75(dd,J=263.0,17.7Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3480,2929,1760,1317,1096.
【0068】
実施例3(4−ベンジルオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの合成)
2,2−ジフロオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに4−ベンジルオキシ−2,2−ジフルオロ−3−オキソブタン酸エチルを用いたことを除いて、前記実施例1と同様にして目的化合物:4−ベンジルオキシ−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得た(520mg、収率95%、光学純度95%ee)。
【0069】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.29(t,J=7.2Hz,3H),2.84(brs,1H),3.73(d,J=5.9Hz,1H),
3.74(d,J=5.5Hz,1H),4.26(q,J=7.2Hz,2H),
4.18-4.37(m,1H),4.56(s,2H),7.29-7.42(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-112.83(dd,J=262.0,8.6Hz,1F),
-120.60(dd,J=262.0,18.0Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3473,2876,1760,1314,1096.
【0070】
実施例4(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに2,2−ジフルオロ−3−オキソ−5−フェニルペンタン酸エチルを用いたことを除いて、前記実施例1と同様にして目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸エチルを得た(515mg、収率99.6%、光学純度96%ee)。
【0071】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.34(t,J=7.2Hz,3H),1.72-2.18(m,3H),2.16-3.02(m,2H),
3.90-4.12(m,1H),4.34(q,J=7.2Hz,2H),
7.15-7.37(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-115.14(dd,J=266.0,7.9Hz,1F),
-122.56(dd,J=266.0,13.0Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3466,2940,1759,1317,1094.
【0072】
実施例5(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニルブタン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに2,2−ジフルオロ−3−オキソ−4−フェニルブタン酸エチルを用いたことを除いて、前記実施例1と同様にして目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニルブタン酸エチルを得た(307mg、収率63%、光学純度94%ee)。
【0073】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.36(t,J=7.2Hz,3H),2.17(brs,1H),
2.83(dd,J=14.2,10.1Hz,1H),3.08(dd,J=14.2,2.9Hz,1H),
4.18-4.40(m,1H),4.35(q,J=7.2Hz,2H),
7.21-7.40(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-123.21(dd,J=264.5,15.2Hz,1F),
-114.52(dd,J=264.5,7.0Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3497,2986,1759,1323,1085.
【0074】
実施例6(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに2,2−ジフルオロ−3−オキソ−5−メチルヘキサン酸エチルを用いたこと、及び反応温度を30℃から70℃に変更したことを除いて、前記実施例1と同様にして目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸エチルを得た(399mg、収率95%、光学純度92%ee)。
【0075】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.81-0.94(m,3H),1.12-2.04(m,17H),
1.37(t,J=7.1Hz,3H),3.90-4.12(m,1H),
4.36(q,J=7.1Hz,2H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-115.45(dd,J=264.1,7.5Hz,1F),
-123.01(dd,J=264.1,15.0Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3466,2926,1760,1316,1094.
【0076】
実施例7(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸エチルを用いたことを除いて、前記実施例1と同様にして下記構造式(2)の目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸エチルを得た(446mg、収率97%、光学純度はR体84%ee)。
【化29】

【0077】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.29(t,J=7.0Hz,3H),1.58(brs,1H),
4.31(q,J=7.0Hz,2H),5.10-5.23(m,1H),
7.35-7.50(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-114.47(dd,J=261.7,7.9Hz,1F),
-120.88(dd,J=261.7,15.6Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3494,2987,1759,1320,1097.
【0078】
実施例8(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに2,2−ジフルオロ−3−オキソブタン酸エチルを用いたことを除いて、前記実施例1と同様にして目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルを得た(312mg、収率93%、光学純度96%ee)。
【0079】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.36(t,J=7.1Hz,3H),2.66(brs,1H),4.09-4.35(m,1H),
4.36(q,J=7.1Hz,2H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-124.45(dd,J=264.1,14.9Hz,1F),
-115.88(dd,J=264.1,7.1Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3436,2992,1760,1316,1107.
【0080】
実施例9(4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチルの代わりに4,4,4−トリフルオロ−3−オキソ酪酸エチルを用いたことを除いて、前記実施例1と同様にして下記構造式(3)の目的化合物:4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル(3−トリフルオロメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸エチル)を得た(341mg、収率92%)。得られた目的化合物をα−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニル酢酸エステル(MTPA ester)に変換し、ガスクロマトグラフィーにより、光学純度を測定したところ、R体91%eeであった。
【化30】

【0081】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.30(t,J=7.2Hz,3H),2.70(dd,J=16.8,9.0Hz,1H),
2.71(dd,J=13.3,9.0Hz,1H),3.45(d,J=5.4Hz,1H),
4.22(q,J=7.2Hz,2H),4.33-4.55(m,1H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-80.16(d,J=6.7Hz,3F).
IR(neat)cm-1:3468,2990,1726,1278,1171,1131.
【0082】
実施例10 (3−シクロヘキシル−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルの合成)
グローブボックス中、窒素雰囲気下、下記構造式(4)に示す(S)−AMPP(Cp)(5.6mg、0.012mmol)と[Rh(COD)OCOCF3]2(3.2mg、0.005mmol)を精秤し、脱気したトルエン(0.5ml)を加え室温で15分攪拌した。
【0083】
この溶液を、アルゴンもしくは窒素雰囲気下、100ml容量のステンレス製オートクレーブに加え、脱気した2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3−シクロヘキシルプロピオン酸エチル(472mg、2.1mmol)のトルエン(2.5ml)溶液を加えた(但し、Rh−AMPP(Cp)は基質に対し0.5mol%)。次いで、水素圧20kgf/cm2、反応温度70℃で20時間攪拌した。
【0084】
得られた反応液の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)で精製し、目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルプロピオン酸エチル(458mg、収率97%)を得た。Daicel Chiralcel OD-Hカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより、光学純度を測定したところ、94%eeであった。
【化31】

【0085】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.01-2.08(m,12H),1.37(t,J=7.1Hz,3H),
3.71-3.91(m,1H),4.36(q,J=7.1Hz,2H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-111.98(dd,J=263.0,8.1Hz,1F),
-120.75(dd,J=263.0,17.7Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3480,2929,1760,1317,1096.
【0086】
比較例1(2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシドデカン酸エチルの合成)
2,2−ジフルオロ−3−オキソドデカン酸エチル278mg(1mmol)、RuBr2[(R)−BINAP]10mg(0.01mmol)および脱気エタノール(3ml)を入れ、水素を導入し(100atm)、100℃で24時間攪拌した。反応容器を冷やした後、水素を開放し、反応液を取り出した。
【0087】
溶媒留去後、シリカゲルクロマトグラフィーで単離精製し(酢酸エチル:ヘキサン=1:7)、目的化合物:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシドデカン酸エチルを得た(280mg、収率100%)。ダイセルOD−Hカラムにより、光学純度を測定したところ(エタノール:ヘキサン=1:100)、78%eeであった。
【0088】
この生成物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.81-0.94(m,3H),1.12-2.04(m,17H),
1.37(t,J=7.1Hz,3H),3.90-4.12(m,1H),
4.36(q,J=7.1Hz,2H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-115.45(dd,J=264.1,7.5Hz,1F),
-123.01(dd,J=264.1,15.0Hz,1F).
IR(neat)cm-1:3466,2926,1760,1316,1094.
【0089】
上記実施例1〜10より得られたデータを反応スキームと共に、下記表1にまとめて示す。
【化32】

【0090】
【表1】

【0091】
上記の結果から明らかなように、本発明に基づく方法により、目的とする光学活性な含フッ素β−ヒドロキシエステルを良好な転化率及び非常に高い光学純度で得ることができる。
【0092】
実施例11 ((S)−N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドの合成)
グローブボックス中、窒素雰囲気下、下記構造式(1)に示す(R)−AMPP(Cy)(1.68mg、0.0033mmol)と[Rh(COD)OCOCF32(0.98mg、0.0015mmol)を精秤し、脱気したトルエン(0.15ml)を加え室温で15分攪拌した。
【0093】
この液を、アルゴンもしくは窒素雰囲気下、N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジヒドロキシプロパンアミド(705mg、3.0mmol)と脱気したトルエン(3ml)の入った100ml容量のステンレス製オートクレーブに加え、水素圧10kgf/cm2、反応温度70℃で20時間攪拌した。
【0094】
得られた反応液の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、目的化合物:(S)−N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミド(570mg、収率87%)を得た。Daicel Chiralcel ASカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより、光学純度を測定したところ、75%eeであった。
【0095】
【化33】

【0096】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
白色結晶
1H NMR(THF-d8)δ(ppm):4.52(q,J=7.4Hz,1H),
6.98-7.70(m,5H),9.20-9.45(brs,1H).
19F NMR(THF-d8)δ(ppm):-76.22(d,J=7.4Hz,3F).
【0097】
また、得られた(S)−N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドはトルエンもしくは酢酸エチル−ヘキサンを用いて再結晶することにより光学純度が98%eeまで向上した。
【0098】
実施例12
(R)−AMPP(Cy)の代わりに下記構造式(2)に示す(R)−AMPP(iPr)を用いたことを除いて、前記実施例11と同様にして反応を行い、目的化合物:(S)−N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドを得た(570mg、収率87%、光学純度72%ee)。
【0099】
【化34】

【0100】
実施例13
(R)−AMPP(Cy)の代わりに下記構造式(3)に示す(R)−AMPP(C7)を用いたことを除いて、前記実施例11と同様にして反応を行い、目的化合物:(S)−N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドを得た(565mg、収率86%、光学純度69%ee)。
【化35】

【0101】
実施例14 (N−ベンジル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドの合成)
N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジヒドロキシプロパンアミドの代わりにN−ベンジル−3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジヒドロキシプロパンアミド(249mg、1.0mmol)を用い、前記触媒量を0.5mol%、水素圧20kgf/cm2に変更したこと以外は、前記実施例11と同様にして目的化合物:N−ベンジル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドを得た(227mg、収率97%、光学純度67%ee)。
【0102】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):4.31-4.55(m,4H),6.51-6.83(brs,1H),
7.20-7.42(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-76.60(d,J=7.2Hz,3F).
【0103】
実施例15
N−ベンジル−3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジヒドロキシプロパンアミドの代わりにN−ベンジル−3,3,3−トリフルオロ−2−オキソプロパンアミド(231mg、1.0mmol)を用い、反応温度を30℃に変更した以外は実施例2と同様にして目的化合物:N−ベンジル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミドを得た(168mg、収率72%、光学純度77%ee)。
【0104】
実施例16 ((S)−トリフルオロ乳酸の合成)
実施例1で得られた光学純度75%eeの(S)−N−フェニル−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシプロパンアミド(150mg、0.685mmol)に12N塩酸(1.0ml)を加え80℃で20時間攪拌した後、反応液を室温にもどし、エーテルで抽出した。その乾燥溶媒留去後、吸湿性の白色結晶(目的化合物:(S)−トリフルオロ乳酸)を得た(83mg、収率84%)。この白色結晶の光学純度を測定したところ75%eeであった。
【0105】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CD3OD)δ(ppm):4.65(q,J=7.6Hz,1H).
19F NMR(CD3OD)δ(ppm):-75.83(d,J=7.6Hz,3F).
【0106】
実施例17 ((R)−1,1,1−トリフルオロ−2−デカノールの合成)
グローブボックス中、窒素雰囲気下、上記構造式(1)に示す(S)−AMPP(Cy)(5.6mg、0.022mmol)と[Rh(COD)OCOCF32(3.2mg、0.01mmol)を精秤し、脱気したトルエン(0.5ml)を加え室温で15分攪拌した。
【0107】
この液を、アルゴンもしくは窒素雰囲気下、1,1,1−トリフルオロ−2−デカノン(420mg、2.0mmol)と脱気したトルエン(3ml)の入った100ml容量のステンレス製オートクレーブに加え、水素圧20kgf/cm2、反応温度30℃で20時間攪拌した。
【0108】
得られた反応液の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、目的化合物:(R)−1,1,1−トリフルオロ−2−デカノール(420mg、収率99%)を得た。上記得られた化合物を一度アセチル化した後、光学分割ガスクロマトグラフ(WCOT FUSED SILICA 50M X0.25MM COATED WITH CP-CYCLODEX B 236M DF=0.25UM)を用いて光学収率を測定したところ、97%eeであった。
【0109】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.88(t,J=6.8,3H),1.12-1.80(m,14H),
2.11(d,J=6.2,1H),3.79-4.01(m,1H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-80.58(d,J=6.8,3F).
【0110】
実施例18 ((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−シクロヘキシルエタノールの合成)
1,1,1−トリフルオロ−2−デカノンの代わりにトリフルオロメチルシクロヘキシルケトンを用いたこと以外は前記実施例17と同様にして目的化合物:(R)−2,2,2−トリフルオロ−1−シクロヘキシルエタノールを得た(327mg、収率90%、光学純度97%ee)。
【0111】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.10-2.20(m,12H),3.62-3.81(m,1H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-76.14(d,J=7.8,3F).
【0112】
実施例19 ((R)−1,1,1−トリフルオロ−2−オクタノールの合成)
1,1,1−トリフルオロー2−デカノンの代わりに1,1,1−トリフルオロ−2−オクタノンを用いたこと以外は前記実施例17と同様にして目的化合物:(R)−1,1,1−トリフルオロ−2−オクタノールを得た(360mg、収率98%、光学純度97%ee)。
【0113】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.90(t,J=7.0,3H),1.20-2.10(m,11H),3.82-4.00(m,1H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-80.61(d,J=6.2,3F).
【0114】
実施例20 (1−シクロヘキシル−3,3,3−トリフルオロ−2−プロパノールの合成)
1,1,1−トリフルオロー2−デカノンの代わりに1−シクロヘキシル−3,3,3−トリフルオロ−2−プロパノンを用いたこと以外は前記実施例17と同様にして目的化合物:1−シクロヘキシル−3,3,3−トリフルオロ−2−プロパノールを得た(380mg、収率97%、光学純度98%ee)。
【0115】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.75-2.12(m,14H),3.90-4.12(m,1H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-80.78(d,J=6.6,3F).
【0116】
実施例21 (3−フェニル−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノールの合成)
1,1,1−トリフルオロー2−デカノンの代わりに3−フェニル−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノンを用いたこと以外は前記実施例11と同様にして目的化合物:3−フェニル−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノールを得た(370mg、収率97%、光学純度97%ee)。
【0117】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):2.05-2.30(brs,1H),2.85(dd,J=10.1,14.3,1H),
3.07(dd,J=3.1,14.3,1H),4.15(ddq,J=3.1,6.5,10.1,1H),
7.20-7.42(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-80.12(d,J=6.5,3F).
【0118】
実施例22 (1,1,1−トリフルオロ−4−フェニル−2−ブタノールの合成)
1,1,1−トリフルオロ−2−デカノンの代わりに1,1,1−トリフルオロ−4−フェニル−2−ブタノンを用いたこと以外は前記実施例11と同様にして目的化合物:1,1,1−トリフルオロ−4−フェニル−2−ブタノールを得た(402mg、収率99%、光学純度96%ee)。
【0119】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):1.85-2.15(m,2H),2.12-2.25(brs,1H),
2.68-3.02(m,2H),3.80-4.01(m,1H),7.19-7.39(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-80.44(d,J=6.3,3F).
【0120】
実施例23 ((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノールの合成。)
1,1,1−トリフルオロ−2−デカノンの代わりに1,1,1−トリフルオロアセトフェノンを用いたこと以外は前記実施例17と同様にして目的化合物:(R)−2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノールを得た(325mg、収率93%、光学純度73%ee)。
【0121】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):2.74(d,J=4.6,1H),5.03(dq,J=4.6,6.6,1H),
7.35-7.52(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-78.83(d,J=6.6,3F).
【0122】
実施例24 (1−(ベンジルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−プロパノールの合成。)
1,1,1−トリフルオロ−2−デカノンの代わりに1−(ベンジルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−プロパノンを用いたこと以外は前記実施例17と同様にして目的化合物:1−(ベンジルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−プロパノールを得た(440mg、収率100%、光学純度86%ee)。
【0123】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):2.90-3.02(brs,1H),3.62-3.79(m,2H),
4.01-4.27(m,1H),4.61(s,2H),7.29-7.42(m,5H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-77.76(d,J=7.0,3F).
【0124】
実施例25 ((R)−1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3−ドデカノールの合成。)
1,1,1−トリフルオロ−2−デカノンの代わりに1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3−ドデカノンを用いたこと以外は前記実施例17と同様にして目的化合物:(R)−1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3−ドデカノールを得た(550mg、収率100%、光学純度97%ee)。
【0125】
この目的化合物の分析データを下記に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm):0.89(t,J=7.1,3H),1.11-1.98(m,17H),
3.91-4.02(m,1H).
19F NMR(CDCl3)δ(ppm):-82.00(s,3F),-124.57(dd,J=6.6,276.2,1F),
-131.01(dd,J=15.5,276.2,1F).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[7]で表わされるカルボニルのα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物と、下記一般式[8]で表されるカルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物とのうちの少なくとも1種を、下記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体からなる遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、下記一般式[10]で表わされる光学活性な含フッ素アルコール類を得る、光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(但し、前記一般式[7]、[8]及び[10]において、R7がフッ素原子若しくはパーフルオロアルキル基である場合、R8は置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノカルボニル基、オキシカルボニル基又はカルボキシル基を示す。前記置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、シアノ基又はリン酸エステル基などを示す。また、前記一般式[7]、[8]及び[10]において、R7がオキシカルボニル基の場合、R8は置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、前記一般式[9]において、R10及びR11は、R12とR13が異なるとき以外は必ず異なっており、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択され、R12及びR13は水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択される。また、R9とR10又はR9とR11は互いに共同して環状の基を形成してもよい。また、R14、R15、R16及びR17は互いに同一の若しくは異なる基であって、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基又はアラルキル基であり、R14とR15及びR16とR17は互いに共同して環状の基を形成してもよい。)
【請求項2】
前記ロジウム錯体として下記一般式[4']で表されるロジウム錯体を用いる、請求項1に記載した光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法。
一般式[4']:
(RhLX)n
[但し、前記一般式[4']において、Rhはロジウム原子、Lは光学活性なAMPP配位子を表し、Xはハロゲン原子、RfCO2-(Rfはパーフルオロアルキル基である。)、ClO4-、BF4-、BPh4-、PF6-などの陰イオンを表し、nは1又は2である。]
【請求項3】
前記遷移金属触媒を前記一般式[7]で表わされるカルボニル基のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物又は前記一般式[8]で表されるカルボニル水和物のα位に少なくともフッ素原子を2個有する化合物に対して、0.00001〜10モル%使用する、請求項1に記載した光学活性な含フッ素アルコール類の製造方法。
【請求項4】
下記一般式[11]で表される2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミドと、下記一般式[12]で表わされる2−ケトパーフルオロアルカンアミドと、下記一般式[13]で表される含フッ素ケトンとのうちの少なくとも一種を、下記一般式[9]で表される光学活性な配位子(AMPP配位子)を有するロジウム錯体からなる遷移金属触媒を用いて不斉水素化反応させることにより、下記一般式[14]で表わされる光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドと、下記一般式[15]で表される光学活性な含フッ素アルコールとの少なくとも一種を得る、光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

(但し、前記一般式[11]、[12]及び[14]において、R18及びR19は互いに同一の若しくは異なる基であって、互いに共同して環状の基を形成してもよく、水素、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。また前記一般式[13]及び[15]において、R20はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、前記一般式[9]において、R10及びR11は、R12とR13が異なるとき以外は必ず異なっており、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択され、R12及びR13は水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基から選択される。また、R9とR10又はR9とR11は互いに共同して環状の基を形成してもよい。また、R14、R15、R16、R17は互いに同一の若しくは異なる基であって、アルキル基、シクロパラフィン基、アリール基又はアラルキル基であり、R14とR15及びR16とR17は互いに共同して環状の基を形成してもよい。また、Rfはパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項5】
前記ロジウム錯体として下記一般式[4']で表されるロジウム錯体を用いる、請求項4に記載した光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法。
一般式[4']:
(RhLX)n
[但し、前記一般式[4']において、Rhはロジウム原子、Lは光学活性なAMPP配位子を表し、Xはハロゲン原子、RfCO2-(Rfはパーフルオロアルキル基である。)、ClO4-、BF4-、BPh4-、PF6-などの陰イオンを表し、nは1又は2である。]
【請求項6】
前記遷移金属触媒を前記2,2−ジヒドロキシパーフルオロアルカンアミド、2−ケトパーフルオロアルカンアミド及び/又は含フッ素ケトンに対して、0.00001〜10モル%使用する、請求項4に記載した光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミド又は/及び光学活性な含フッ素アルコールの製造方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載した製造方法によって得られた下記一般式[14]で表される光学活性な含フッ素2−ヒドロキシアルカンアミドを加水分解する工程を経て、下記一般式[16]で表される光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体を得る、光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法。
【化11】

【化12】

(但し、前記一般式[14]及び[16]において、R18、R19及びRfは請求項4に記載したものと同じである。)
【請求項8】
前記Rfをトリフルオロメチル基として、光学活性な3,3,3−トリフルオロ乳酸を得る、請求項7に記載した光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記光学活性な含フッ素乳酸を更にエステル化する、請求項7に記載した光学活性な含フッ素乳酸又はその誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2011−42661(P2011−42661A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220184(P2010−220184)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【分割の表示】特願2000−291458(P2000−291458)の分割
【原出願日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】