説明

光学活性イミダゾリジン化合物とそのポリマー固定化複合体並びに不斉合成触媒

【課題】 有機塩基性触媒としてのキラル化合物についての合成製品との分離、そして触媒としての精製再利用をさらに簡便に、かつ効率的に行うことができ、しかも高い触媒活性を保持することのできる新しい技術手段を提供する。
【解決手段】 次式(1)
【化1】


(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rbおよび及びRcは各々置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0は、これに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、香料、化粧品等のための化成品の不斉合成等に有用な光学活性イミダゾリジン化合物とそのポリマー固定化複合体並びにこれらを用いた不斉合成触媒等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬、農薬、香料、化粧品等のための各種化成品の合成として不斉合成が注目されており、この不斉合成のための光学活性な化合物とこれを触媒とする方法について様々な検討が進められてきている。
【0003】
従来の合成反応における塩基性触媒についてはそのほとんどが金属を含むことから、合成製品への金属の残存性や、合成製品との分離、そして精製と再利用等の点についての負担が大きく、経済性の点においても難点があった。このような背景において、本発明者らは、金属を含有しない有機塩基性触媒とこれを不斉合成触媒とすることについて鋭意検討を進めてきた。その過程において、本発明者らは、新しい有機塩基性触媒としてキラルグアニジン化合物を開発した(非特許文献1−5、特許文献1−5)。
【0004】
これらのキラルグアニジン化合物は不斉触媒としての活性の高いものであり、しかも金属を含有しない有機塩基触媒としての特徴を有している。
【0005】
ただ、本発明者らの検討によれば、これらキラル化合物触媒においては、合成製品との分離、そして精製再利用をさらに簡便に、かつさらに効率の高いものにすることが望まれてもいた。
【非特許文献1】J. Org. Chem., 2000, 65, 7770-7773
【非特許文献2】J. Org. Chem., 2000, 65, 7774-7778
【非特許文献3】J. Org. Chem., 2000, 65, 7779-7785
【非特許文献4】Chem. Eur. J., 2002, 8, 552-557
【非特許文献5】有機合成化学協会誌 2003, 61, 60, 68
【特許文献1】特開平9−157260号公報
【特許文献2】特開平9−176130号公報
【特許文献3】特開平9−208514号公報
【特許文献4】特開平9−269178号公報
【特許文献5】特開平10−291980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のとおりの背景から、本発明者らのこれまでの検討を踏まえて、有機塩基性触媒としてのキラル化合物についての合成製品との分離、そして触媒としての精製再利用をさらに簡便に、かつ効率的に行うことができ、しかも高い触媒活性を保持することのできる新しい技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するための手段として以下のことを特徴としている。
【0008】
第1:次式(1)
【0009】
【化1】

(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、RbおよびRcは各々置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0は、これに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体。
【0010】
第2:次式(2)
【0011】
【化2】

(式中のXは、酸素原子または硫黄原子を示し、Raは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rbは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0はこれに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体。
【0012】
第3:R0は、−(CH2)n−、または
−(CH2)(OCH2CH2)m(CH2)l
(式中のnおよびmは、正の整数を、lは、0または正の整数を示す。)
で表わされる上記の光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体。
【0013】
第4:次式(3)
【0014】
【化3】

(式中のZは、O、SまたはN−Rcを示し、Raは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、RbおよびRcは各々置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Reは、水素原子または、次式
fO−Rg−、
fCO−O−Rg−、
HO−Rg
(Rfは置換基を有していてもよい炭化水素基を、Rgは炭化水素鎖または含酸素炭化水素鎖を示す)のいずれであることを示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物。
【0015】
第5:次式(1)
【0016】
【化4】

(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、RbおよびRcは各々置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0はこれに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固体化複合体の製造方法であって、
次式(2)
【0017】
【化5】

(式中のRa、Rb、Rdは前記のものを示し、Xは、酸素原子または硫黄原子を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体を、塩素化反応剤と反応させ、次いでRc−NH2(Rcは前記のものを示す)で表わされるアミン化合物と反応させるポリマー固定化複合体の製造方法。
【0018】
第6:次式(1)(2)
【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rbおよび及びRcは各々置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0は、これに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
のいずれかで表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体の製造方法であって、
次式(3)
【0021】
【化8】

(式中のZは、O、SまたはN−Rcを示し、Ra、Rb、Rcは前記のものを示し、Reは、水素原子または、次式
fO−Rg−、
fCO−O−Rg−、
HO−Rg
(Rfは置換基を有していてもよい炭化水素基を、Rgは炭化水素鎖または含酸素炭化水素鎖を示す)
のいずれかであることを示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物をポリマーと反応させるポリマー固定化複合体の製造方法。
【0022】
第7:上記第1のポリマー複合体を少くともその構成の一部としている不斉合成触媒。
【0023】
第8:マイケル反応、エポキシ化反応、シリル化反応用の不斉合成触媒。
【0024】
第9:上記の触媒による不斉合成反応方法。
【発明の効果】
【0025】
上記のとおり第1の発明のポリマー固定化キラルグアニジン型化合物においては、これを固相の不斉合成触媒とする場合、抽出操作を必要とすることなくろ過操作だけで触媒と反応生成物(合成製品)とを簡便に分離することが可能であって、しかも回収した固相触媒は再利用(リサイクル)できるという経済性、操作性に優れ、高い触媒活性を有するものとして使用可能となる。
【0026】
そして、第2から第6の発明によれば、上記のとおりの不斉合成触媒として有用なポリマー固定化複合体の合成中間体並びにこれらを用いた効率的な調製方法が実現される。
【0027】
第7から第9の発明では固相触媒によって不斉合成が可能とされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は上記のとおりの特徴を有するものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0029】
本発明における前記の式(1)(2)として表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体では、Ra、Rb、Rcとしての置換基を有していてもよい炭化水素基は、脂肪続、脂環族、芳香族、そして芳香脂肪族等の各種の飽和または不飽和の炭化水素基であってよく、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アリールアルケニル基等が例示される。これらは、置換基として、炭化水素基をはじめ、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、エステル基等の含酸素置換基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、カーバメート基、ウレア基、その他各種の不斉合成触媒として望ましい、あるいは許容される置換基や、合成上許容される限りの置換基を有していてもよい。
【0030】
dはPol−R0として表わされ、固体状ポリマーを示すPolは固相触媒によく用いられているポリスチレンをはじめとして、スチレンブタジエン共重合体、スチレンアクリル共重合体等の各種のものであってよい。R0の炭化水素鎖または含酸素炭化水素鎖はスペーサー分子鎖としての性格を有し、たとえば前記のとおりの−(CH2)n−、あるいは−(CH2)(OCH2CH2)m(CH2)l−のようなものが好適に考慮される。この場合のn、mについては、正の整数で、たとえば、n=1〜10、m=2〜20、あるいは50〜85のようにすることも考慮される。
【0031】
また、式(3)で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物については、Reは水素原子であってもよいし、あるいは、RfO−Rg−、RfCO−O−Rg−、HO−Rg−であって、Rfは前記同様の置換基を有していてもよい炭化水素基を、Rgは前記同様の炭化水素鎖、もしくは含酸素炭化水素鎖とすることができる。
【0032】
本発明の次(1)(2)で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物については、前記のとおりの方法によって製造することができるが、たとえばより具体的に例示すると、次式の反応スキームとして示すことができる。
【0033】
【化9】

この反応スキームにおいては、化合物5までは、たとえば公知の方法(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1991, 64, 1425)によって導くことができる。
【0034】
そこで以下に合成に係わる実施例を以下に説明する。実施例中での化合物の番号は上記の反応スキーム中の番号に対応している。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0035】
(4R,5R)−1−(2−Benzyloxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−one(6)
Urea5(0.35g,1.39mmol)にtetrabutylammonium iodide(50mg,0.14mmol,0.1Meq)、toluene(3ml)及びNaH(60% in mineral oil,80mg,2.00mmol.1.4Meq.)を加えoil bath 80℃にて30min攪拌。このものにbenzyl2−bromoethyl ether(0.25ml,d=1.360,1.58mmol,1.1Meq.)を加えoil bath 80℃にて1h攪拌。反応終了後5% HCl aq.を加えAcOEtで抽出。AcOEt層はsat.NaHCO3 aq.,H2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しyellow oil(0.70g)を得た。このものをカラムクロマトグラフィー(SiO2:5g,hexane:AcOEt=30:1→5:2)にて精製し、6をcolorless oil(0.54g,quant.)として得た。
【0036】
【表1】

(4R,5R)−1−(2−Hydroxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−one(7)
Benzyloxyurea6(0.72g,1.85mmol)をAcOEt(6ml)に溶解したものにconc.HCl aq.(1drop)及び20%Pd(OH)2/C(0.10g,0.14mmol as Pd,0.08Meq.)を加え、H2置換後20h接触還元。反応終了後、反応液をCHCl3で希釈後セライトろ過し、セライト層は更にCHCl3で洗浄する。濾洗液をsat.NaHCO3aq.,H2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しyellow oil(0.65g)を得た。このものをカラムクロマトグラフィー(SiO2:3.5g,CHCl3:MeOH=20:1)にて精製し、7をcolorless oil(0.55g,quant.)、mp107−109℃、として得た。
【0037】
【表2】

(4R,5R)−1−(2−Benzoyloxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−one(8)
Hydroxyurea7(0.44g,1.48mmol)にDMAP(cat.),pyridine(2.5ml)及びBzCl(0.2ml,d=1.211,1.72mmol,1.2Meq.)を加え室温にて2h攪拌。反応終了後、反応液をAcOEtで希釈し10% HCl aq.,sat.NaHCO3 aq.,H2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しyellow oil(0.98g)を得た。このものをカラムクロマトグラフィー(SiO2:4g,hexane:AcOEt=16:1→3:1)にて精製し、8をcolorless oil(0.61g,quant.)、として得た。
【0038】
【表3】

(4R,5R)−1−(2−Acetyloxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−one(9)
Hydroxyurea7(1.40g,4.71mmol)にDMAP(cat.),pyridine(10ml)及びAc2O(0.6ml,d=1.080,6.35mmol,1.3Meq.)を加え室温にて5h攪拌。反応終了後、反応液をAcOEtで希釈し10% HCl aq.,sat.NaHCO3 aq.,H2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しyellow oil(1.56g)を得た。このものをカラムクロマトグラフィー(SiO2:10g,hexane:AcOEt=5:2)にて精製し、9をcolorless oil(1.48g,92.6%)として得た。
【0039】
【表4】

(4R,5R)−2−〔(S)−1−Benzyl−2−hydroxyethylimino〕−1−(2−hydroxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin(13)
Acetoxyurea9(0.99g,2.93mmol)にxylene(3.0ml)及びPOCl3(2.5ml,d=1.645,26.82mmol,8.8Meq.)を加えoil bath 120℃にて20h攪拌。反応液をoil bath 60−70℃にて減圧留去することによりbrown hard oilを得た。このものを、CH2Cl2(60ml)に溶解させ、氷冷下(S)−phenylalaninol(1.03g,6.81mmol,2.3Meq.)、Et3N(2.0ml,d=0.726,14.35mmol.4.9Meq.)及びCH2Cl2(4.0ml)の混合物下に滴下し、室温にて2.5h攪拌する。反応終了後、10% HCl aq.を加えCHCl3で抽出。CHCl3層はsat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しbrown oilを得た。このbrown oilはMeOH(8ml)に溶解させた後に20% NaOH aq.(12ml)を加えて室温にて攪拌。2h後反応液をtolueneで抽出。Toluene層はH2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後K2CO3で乾燥。溶媒を減圧留去しpale brown oilを得た。このものをカラムクロマトグラフィー(Al23:10g,AcOEt:acetone=100:1→AcOEt:MeOH=2:1)にて精製し、pale brown oil(0.39g,30.8%)を得た。このものの一部をhexane−AcOEtより再結晶することで13をcolorless powder、mp144−145℃、として得た。
【0040】
【表5】

(4R,5R)−1−(2−Benzoyloxyethyl)−2−〔(S)−1−Benzyl−(2−hydroxyethyl)imino〕−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin(10)
Benzoyloxyurea8(0.19g,0.47mmol)にxylene(1.5ml)及びPOCl3(0.2ml,d=1.645,2.15mmol,4.6Meq.)を加えoil bath 120℃にて20h攪拌。反応液をoil bath 60−70℃にて減圧留去することによりbrown hard oilを得た。このものを、CH2Cl2(3.0ml)に溶解させ、氷冷下(S)−phenylalaninol(80mg,0.538mmol,1.1Meq.)、Et3N(0.3ml,d=0.726,2.15mmol.4.6Meq.)及びCH2Cl2(2.0ml)の混合物下に滴下し、室温にて1h攪拌する。反応終了後、10% HCl aq.を加えCHCl3で抽出。CHCl3層はsat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しbrown oilを得た。このbrown oilは氷冷下20% NaOH aq.を加えてtolueneで抽出。Toluene層はH2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後Na2SO4で乾燥。溶媒を減圧留去し、pale brown oilを得た。このものをカラムクロマトグラフィー(Al23:10g,hexane:AcOEt=3:2→AcOEt→AcOEt:MeOH=4:1)にて精製し、10をpale brown oil(0.11g,43.1%)として得た。
【0041】
【表6】

(4R,5R)−2−〔(S)−1−Benzyl−(2−tert-butyldimethylsilyloxyethyl)imino〕−1−(2−hydroxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin(12)
Benzoyl-prptected guanidine10(0.60g,1.12mmol)、imidazole(0.10g,1.47mmol,1.3Meq.)、DMAP(26mg,0.21mmol,0.2Meq.)及びCH2Cl2(2ml)の混合物にTBSCl(0.26g,1.73mmol,1.5Meq.)のCH2Cl2(4ml)溶液を加え室温にて16h攪拌。反応終了後、10%クエン酸 aq.を加えCHCl3で抽出。CHCl3層はsat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しbrown oilを得た。このものに20% NaOH aq.を加えてtolueneで抽出。Toluene層はH2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後Na2SO4で乾燥。溶媒を減圧留去し、crude oilを得た。このcrude oilをTHF(4ml)、MeOH(1ml)に溶解させ氷冷下NaH(60% in mineral oil, ca. 100mg,2.5mmol,2.2Meq.)を加え、その後室温にて2h攪拌。反応終了後、20% NaOH aq.を加えてtolueneで抽出。Toluene層はH2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後Na2SO4で乾燥。溶媒を減圧留去し、brown oilを得た。このものをカラムクロマトグラフィー(Al23:8g,hexane:AcOEt=4:1→AcOEt→AcOEt:MeOH=4:1)にて精製し、12をpale brown oil(0.27g,44.2%)として得た。
【0042】
【表7】

(4R,5R)−3−Methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−thione(16)
Urea5(1.03g,4.09mmol)にLawesson's reagent(2.15g,5.28mmol,1.3Meq)およびtoluene(14ml)を加え14h加熱還流。反応終了後MeOH(5ml)、10% HCl aq.(10ml)を加え室温にて1d攪拌。このものにH2Oを加えtolueneで抽出。Toluene層はsat.NaHCO3aq.H2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しbrown oil(1.23g)を得た。このものをAcOEt−hexaneにて再結晶し、16をcolorless prisms(0.89g,81.3%)、mp177−178℃、として得た。
【0043】
【表8】

(4R,5R)−1−(2−tert-butyldimethylsilyloxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−thione(17)
Thiourea16(0.12g,0.44mmol)にDMF(0.8mg)及びCs2CO3(0.28g,0.87mmol,2.0Meq)を加え、室温にて30min攪拌。ここに、(2−tert-butyldimethylsilyloxye)bromoethane(0.1ml,d=1.115,0.47mmol,1.1Meq.)を加え、室温にて更に16h攪拌。反応終了後H2Oを加えAcOEtで抽出。AcOEt層はH2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しbrown oil(0.24g)を得た。このものをカラムクロマトグラフィー(SiO2:2.5g,hexane:AcOEt=40:1→20:1)にて精製し、colorless prisms(0.80g,42.8%)、mp78−81℃、を得た。このものの一部をhexane−Et2Oにて再結晶し、17をcolorless prisms、mp77−78℃、として得た。
【0044】
【表9】

(4R,5R)−1−(2−Hydroxyethyl)−3−methyl−4,5−diphenylimidazolidin−2−thione(18)
TBS−protected urea17(0.58g,1.37mmol)にTHF(4ml)及びTBAF(1.0M solution in THF,1.5ml,1.50mmol,1.1Meq.)を加え、室温にて18h攪拌。反応終了後10% HCl aq.を加えAcOEtで抽出。AcOEt層はsat.NaHCO aq.,H2O,sat.NaCl aq.にて洗浄後MgSO4で乾燥。溶媒を減圧留去しyellow oil(0.52g)を得た。このものをカラムクロマトグラフィー(SiO2:4.0g,hexane:AcOEt=20:1→4:1)にて精製し、colorless prisms(0.41g,95.7%)、mp108−111℃、を得た。このものの一部をhexane−AcOEtにて再結晶し、18をcolorless prisms、mp120−121℃、として得た。
【0045】
【表10】

The resin(HypoGel(R))−bound cyclic thiourea(19:n=5)
Thiourea18(0.70g,2.24mmol)をDMF(8ml)に溶解したものにNaH(60% in mineral oil,0.13g,3.25mmol)を加え室温にて3h攪拌。このものにHypoGel(R)200−Br(loading:0.8mmol of Br/g,0.80g,ca.0.65mmol)を加え2d超音波照射する。反応終了後、10% HCl aq.を加え、グラスフィルター(G−3)で濾過。残渣はH2O(×4)、MeOH(×4)、AcOEt(×4)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、19をyellow powder(0.82g)、mp>300℃、として得た。
【0046】
【表11】

The resin(HypoGel(R))−bound TBS−protected guanidine(14)
TBS−protected guanidine12(0.17g,0.31mmol)をtoluene(4ml)に溶解したものにNaH(60% in mineral oil,45mg,1.14mmol)を加えoil bath 80℃にて1h攪拌。このものにHypoGel(R)200−Br(loading:0.8mmol of Br/g,0.24g,ca.0.19mmol)を加え1d攪拌する。反応終了後、H2Oを加え、グラスフィルター(G−2)で濾過。残渣はH2O(×4)、MeOH(×4)、10% HCl aq.(×2)、20% NaOH aq.(×2)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、yellow powder(0.18g)、mp>300℃、を得た。
【0047】
【表12】

The resin(HypoGel(R))−bound cyclic guanidine(15:n=5)
1.Dihydroxyguanidine13を直接ポリマーに結合させる方法
Dihydroxyguanidine13(0.64g,1.49mmol)をtoluene(5ml)に溶解したものにNaH(60% in mineral oil,0.11mg,2.75mmol)を加えoil bath 80℃にて1h攪拌。このものにHypoGel(R)200−Br(loading:0.8mmol of Br/g,0.49g,ca.0.39mmol)を加え1d攪拌する。反応終了後、H2Oを加え、グラスフィルター(G−2)で濾過。残渣はH2O(×4)、MeOH(×4)、10% HCl aq.(×2)、20% NaOH aq.(×2)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、15(n=5)をyellow powder(0.50g)、mp>300℃、として得た。
【0048】
【表13】

2.Resin−bound TBS−protected guanidine14の脱保護による方法
Resin−bound TBS−protected guanidine(0.15g)をTHF(0.8ml)に懸濁させたものにTBAF(1.0M solution in THF,0.2ml,0.2mmol)を加え1d攪拌する。反応終了後、H2Oを加え、グラスフィルター(G−2)で濾過。残渣はH2O(×4)、MeOH(×4)、10% HCl aq.(×2)、20% NaOH aq.(×2)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、15(n=5)をyellow powder(0.13g)、mp>300℃、として得た。
【0049】
【表14】

3.Resin−bound thiourea(19:n=5)のグアニジル化による方法
Resin−bound thiourea(19:n=5)(0.20g)に(COCl)2(0.5ml,d=1.455,5.73mmol)を加え、20h加熱還流。反応混合物から減圧下(COCl)2を留去後、残渣をCH2Cl2(0.5ml)に懸濁させる。このものに氷冷下(S)−phenylalaninol(0.13mg,0.86mmol)及びEt3N(0.5ml,d=0.726,3.59mmol)のCH2Cl2(1.0ml)溶液を加え1d超音波照射する。反応終了後H2Oを加え、グラスフィルター(G−3)で濾過。残渣は10% HCl aq.(×2)、20% NaOH aq.(×2)、H2O(×4)、MeOH(×4)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、15(n=5)をbrown powder(0.22g)、mp>300℃、として得た。
【0050】
【表15】

The resin(TentaGel(R))−bound cyclic thiourea(19:n=60−80)
Thiourea18(0.62g,1.99mmol)をDMF(7ml)に溶解したものにNaH(60% in mineral oil,0.15mg,3.75mmol)を加え室温にて3h攪拌。このものにTentaGel(R)200−Br(loading:0.125mmol of Br/g,1.53g,ca.0.37mmol)を加え3d超音波照射する。反応終了後、10% HCl aq.を加え、グラスフィルター(G−3)で濾過。残渣はH2O(×4)、MeOH(×4)、AcOEt(×4)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、19(n=60−80)をyellow powder(1.45g)、mp>300℃、として得た。
【0051】
【表16】

The resin(TentaGel(R))−bound cyclic guanidine(15:n=60−80)
Resin−bound thiourea19(n=60−80)(0.22g)に(COCl)2(0.8ml,d=1.455,9.17mmol)を加え、20h加熱還流。反応混合物から減圧下(COCl)2を留去後、残渣をCH2Cl2(1.0ml)に懸濁させる。このものに氷冷下(S)−phenylalaninol(85mg,0.56mmol)及びEt3N(0.3ml,d=0.726,2.15mmol)のCH2Cl2(1.5ml)溶液を加え1d超音波照射する。反応終了後H2Oを加え、グラスフィルター(G−3)で濾過。残渣は10% HCl aq.(×2)、20% NaOH aq.(×2)、H2O(×4)、MeOH(×4)、CH2Cl2(×8)、MeOH(×8)にて洗浄後、減圧乾燥し、brown powder(0.18g)、mp>300℃、を得た。
【0052】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(1)
【化1】

(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、RbおよびRcは各々置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0は、これに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体。
【請求項2】
次式(2)
【化2】

(式中のXは、酸素原子または硫黄原子を示し、Raは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rb置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0はこれに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体。
【請求項3】
0は、−(CH2)n−、または
−(CH2)(OCH2CH2)m(CH2)l
(式中のnおよびmは、正の整数を、lは、0または正の整数を示す。)
で表わされる請求項1または2記載の光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体。
【請求項4】
次式(3)
【化3】

(式中のZは、O、SまたはN−Rcを示し、Raは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、RbおよびRcは各々置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Reは、水素原子または、次式
fO−Rg−、
fCO−O−Rg−、
HO−Rg
(Rfは置換基を有していてもよい炭化水素基を、Rgは炭化水素鎖または含酸素炭化水素鎖を示す)のいずれであることを示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物。
【請求項5】
次式(1)
【化4】

(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、RbおよびRcは各々置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0はこれに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固体化複合体の製造方法であって、
次式(2)
【化5】

(式中のRa、Rb、Rdは前記のものを示し、Xは、酸素原子または硫黄原子を示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体を、塩素化反応剤と反応させ、次いで、Rc−NH2(Rcは前記のものを示す)で表わされるアミン化合物と反応させることを特徴とするポリマー固定化複合体の製造方法。
【請求項6】
次式(1)(2)
【化6】

【化7】

(式中のRaは同一または別異に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Rbおよび及びRcは各々置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Rdは、Pol−R0−であって、Polは固体状ポリマーを、R0は、これに結合する炭化水素鎖もしくは含酸素炭化水素鎖を示す。)
のいずれかで表わされる光学活性イミダゾリジン化合物のポリマー固定化複合体の製造方法であって、
次式(3)
【化8】

(式中のZは、O、SまたはN−Rcを示し、Ra、Rb、Rcは前記のものを示し、Reは、水素原子または、次式
fO−Rg−、
fCO−O−Rg−、
HO−Rg
(Rfは置換基を有していてもよい炭化水素基を、Rgは炭化水素鎖または含酸素炭化水素鎖を示す)
のいずれかであることを示す。)
で表わされる光学活性イミダゾリジン化合物をポリマーと反応させることを特徴とするポリマー固定化複合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載のポリマー複合体を少くともその構成の一部としていることを特徴とする不斉合成触媒。
【請求項8】
マイケル反応、エポキシ化反応、シリル化反応用の請求項7記載の不斉合成触媒。
【請求項9】
請求項7または8記載の触媒によることを特徴とする不斉合成反応方法。

【公開番号】特開2007−302852(P2007−302852A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135801(P2006−135801)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】