説明

光学活性2−メチルエピハロヒドリン等の製造法

【課題】医薬、農薬の中間体として有用な2−メチルエピハロヒドリン等の効率的製法。
【解決手段】3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの1級水酸基をスルホニル化することにより、3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール(3)を得、塩基で処理することにより、2−メチルエピハロヒドリンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬の中間体として重要な2−メチルエピハロヒドリン等の製造法、特にそれらの光学活性体の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−メチルエピハロヒドリンの従来公知の製造法に関しては、2−メチルエピクロロヒドリンに集約され、以下に示す代表的な例が報告されている。
(i)タングステン酸、リン酸、および4級アンモニウム塩で形成されるヘテロポリ酸塩からなる触媒と、沸点が125℃以上の有機溶媒の存在下に、2−メタリルクロリドと過酸化水素を反応させて得られる生成液を蒸留して得る方法(特許文献1)。
(ii)塩素水中にメタリルクロリド、蒸留水を滴下し、得られたクロロヒドリン溶液を精留にて精製後、48%水酸化ナトリウム水溶液にて環化させ、蒸留、液々層分離、精留により得る方法(特許文献2)。
(iii)チタン−シリケート触媒存在下、メタリルクロリドを30%過酸化水素水にてエポキド化して得る方法(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これらの製造法では、いずれの場合もラセミ体のみしか製造できない。医薬、農薬の中間体として用いる場合、光学活性体が必要となりうるが、化学的、生物化学的にも光学活性な2−メチルエピクロロヒドリンの製造法に関しては今までに報告がなされていない。
後記本発明によれば、安価で入手可能な光学活性3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを出発原料とし、僅か2工程で所望の光学活性2−メチルハロヒドリンを製造することができる。
【0004】
また、4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリルの製造法に関しては、シアン化カリウムを触媒として用い、2−メチルエピハロヒドリンと青酸とを反応させる方法(非特許文献2参照)等が知られている。
しかしながら、上記の製造法には工業的な実用化を考慮すると次のような問題点がある。すなわち、(i)密封容器を使用しているものの毒性の高い青酸ガスが常に発生した状態で反応を行っており危険性が高いこと、(ii)長い反応時間を要すること、および(iii)収率が低いこと、等の問題がある。
後記本発明によれば、安全に、短時間で、かつ高収率で4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリルおよびその誘導体を製造することができる。
【0005】
更には、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドンの製造法に関しては、3−クロロ−2−メチル−1−プロペンとクロロスルホニルイソシアネートとを縮合した後、炭酸ナトリウム水処理して4−クロロメチル−4−メチル−アゼチジノンを得、次いでこれを水酸化カリウム水処理して環拡大させる方法(非特許文献3)等が知られている。
しかしながら、上記の製造法は、工程数が多く煩雑であり、また副生成物が多く、収率も高くない。
後記本発明によれば、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドンを効率よく簡単に製造することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−154340号公報
【特許文献2】国際公開第2004/029126号パンフレット
【非特許文献1】J. Mol. Cat. A, Chemical, 229(1-2), 207(2005)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 73, 917 (1951)
【非特許文献3】Tetrahedron Lett., 14, 1271 (1974)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、まず下記式(1)
【化1】

[式中Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを有機塩基存在下、スルホニルハライドにて1級水酸基をスルホニル化することにより、下記式(2)
【化2】

[式中Xは前掲と同じものを意味し、Rは置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を意味する。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノールを得、ついで無機塩基で処理することにより、下記式(3)
【化3】

[式中Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される2−メチルエピハロヒドリンの新規製造法に関する。
【0008】
本発明は、また、硫酸、リン酸、または硝酸を添加して弱塩基性を保ちながら、上記式(3)で表される2−メチルエピハロヒドリンと青酸塩とを反応させることを特徴とする下記式(4)
【化4】

[式中Xは前掲と同じものを意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリルの新規製造法にも関し、次いで、4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)にアルコール溶媒中、塩酸ガスと反応させて下記式(5)
【化5】

[式中Xは前掲と同じものを意味し、Rはアルキル基を意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルの製造法にも関する。
【0009】
本発明は、また、上記式(5)で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルに、アルカリ金属アジド塩またはアルカリ土類金属アジド塩を溶媒中で反応させ、下記式(6)
【化6】

[式中Rは前掲と同じものを意味する。]
で表される4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルを得、これに触媒の存在下、水素を添加してアジド基を還元するとともに閉環反応させることを特徴とする下記式(7)
【化7】

で表される4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドンの新規製造法に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の上記式(3)の2−メチルエピハロヒドリンの製造法につき以下に詳細に説明する。
出発原料である上記式(1)のXの具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、好ましくは塩素原子、または臭素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
【0011】
上記式(1)のXが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール、特にその光学活性体は、特開昭63−150234または特願2005−000116に記載の方法に従って製造することができる。
上記式(1)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの1級水酸基のスルホニル化反応に用いるスルホニルハライドとしては、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、α−トルエンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、3−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、2−ニトロ−α−トルエンスルホニルクロリド、4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリド、4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド、4−ブロモベンゼンスルホニルクロリド、4−ヨードベンゼンスルホニルクロリド、1−ナフタレンスルホニルクロリド、2−ナフタレンスルホニルクロリド、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロリド、2,5−ジクロロベンゼンスルホニルクロリドおよび2−メシチレンスルホニルクロリドなどを挙げることができるが、好ましくはベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、3−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、2−ニトロ−α−トルエンスルホニルクロリドであり、特に好ましくはp−トルエンスルホニルクロリド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロリドである。
【0012】
スルホニル化反応の際に用いるスルホニルハライドの使用量は、式(1)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに対して1.0から1.5当量の範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは1.0から1.2当量の範囲である。
【0013】
スルホニル化の際に使用する有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン類;トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン類;ピリジン;ピリジン誘導体が挙げられる。そのピリジン誘導体としては、2位と6位に置換基を有するものが好ましく、同置換基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル等の直鎖状又は分枝状の炭素原子数1〜6のアルキル基が例示される。このようなピリジン誘導体としては、2,4,6−コリジン、2,6−ルチジン、2,6−ジフェニルピリジン、2,6−ジ−p−トリルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ジクロロピリジン、2,6−ジブロモピリジン、2−メチルピリジン、2−プロピルピリジン、6−クロロ−2−ピコリン等が挙げられ、好ましくは2,4,6−コリジンおよび2,6−ルチジンである。
【0014】
上記有機塩基のなかで、特に好ましいものはトリエチルアミンおよび2,6−ルチジンである。
【0015】
上記有機塩基の添加量は、特に限定されないが、式(1)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに対して1.0当量以上添加することが好ましい。溶媒を兼ねさせてもよく、その場合は3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)に対して3倍量から10倍量の範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは4倍量から8倍量の範囲である。
【0016】
スルホニル化反応に使用する溶媒は、特に限定されないが、一般的な溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トリグリム等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、酢酸エチル等のケトンないしはエステル系溶媒;ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。また、塩基として用いる上記ピリジン誘導体を反応溶媒として兼ねさせてよい。好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、または無溶媒であり、特に好ましくは1,2−ジクロロエタンである。
【0017】
その溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(1)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに対して2から10倍量で使用することが好ましく、特に好ましくは3から5倍量の範囲である。
【0018】
スルホニル化反応は、−10℃から25℃の温度範囲で行うことができるが、好ましくは0℃から20℃の範囲で行うのがよい。
スルホニル化反応の終了後は、通常の精製方法、例えば反応剤過剰分および溶媒の減圧留去、残渣の抽出処理、抽出液の水洗浄、抽出液の濃縮乾固、得られた粗生成物の減圧蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の適宜な組み合わせにより、目的とする3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール(2)が得られる。
【0019】
エポキシ化の際に用いる無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられるが、好ましくは水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物であり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。これら塩基は粒状のまま用いても、水溶液として用いてもよい。
【0020】
エポキシ化反応の際に用いる無機塩基の添加量は、式(2)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノールに対して1.0当量から2.0当量の範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは1.05当量から1.2当量の範囲である。
【0021】
エポキシ化反応の際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられるが、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、または無溶媒であり、特に好ましくはジクロロメタンである。
【0022】
エポキシ化反応の際に使用する溶媒の使用量は、式(2)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノールに対して1倍量から10倍量範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは、3倍量から5倍量の範囲である。
【0023】
エポキシ化反応は、触媒無しでも円滑に進行するが、第4級アンモニウム塩、例えば塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化n−オクチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム、ヨウ化β−メチルコリン、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどを添加してもよく、式(2)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノールに対して、0.005〜0.1当量の範囲で用いることができる。
【0024】
エポキシ化反応は、0℃から40℃の温度範囲で行うことができるが、好ましくは、0℃から25℃の範囲である。
エポキシ化反応の終了後は、特に限定されないが、例えば抽出処理、抽出液の水洗浄、抽出液の濃縮、得られた粗生成物の減圧蒸留等の適宜な組み合わせにより、目的とする2−メチルハロヒドリン(3)が得られる。
出発原料に光学活性な3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)を用いると、光学活性な2−メチルハロヒドリン(3)が得られる。この場合、反応中顕著なラセミ化は起こらない。
本発明のこの製造法により、医薬、農薬の重要中間体と有用な2−メチルエピハロヒドリン(3)、特にその光学活性体が、安価で操作性よく、高収率、高光学純度で得られる。
【0025】
次に、本発明の下記式(4)
【化8】

[式中Xは前掲と同じものを意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリルの製造法につき説明する。
2−メチルエピハロヒドリン(3)への青酸の付加反応おいては反応液のpHの調整が目的生成物の収率に大きく関係するため、弱塩基性であるpH8.0〜10.0で行うことが好ましい。この範囲外のpHでは副反応のために収率が低下し、またpH7.0以下では青酸ガス発生の危険性がある。pH値をこの範囲内に保つために用いる酸は、陰イオンの求核性の低い無機酸であって、具体的には硫酸、硝酸、リン酸が挙げられるが、より好ましいのは硫酸である。なお、これらの酸水溶液の濃度については特に制限はないが、濃度が低い場合は釜効率が低く工業的に不利である。また、pHを上記範囲に保つため、反応系に青酸塩の水溶液とこれらの酸の水溶液を同時に滴下していくことが好ましい。
【0026】
使用できる青酸塩としてはシアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のアルカリ金属の青酸塩、シアン化マグネシウム、シアン化カルシウム等のアルカリ土類金属の青酸塩が挙げられるが、好ましくはシアン化ナトリウム、シアン化カリウムである。青酸塩の使用量は原料である光学活性2−メチルエピハロヒドリン(3)1モルに対し、好ましくは1.0〜3.0モルであり、より好ましくは1.1〜1.5モルである。
この反応は無溶媒で行うことも可能であるが、副生物の生成を最小限に抑えて収率を高めるためには溶媒中で行うことが好ましい。反応溶媒として好ましいのは水、もしくは水とアルコールの混合溶媒、より好ましくは水である。
【0027】
反応温度は0℃から溶媒の還流温度までで、好ましくは5〜40℃である。5℃未満では反応の進行は極めて遅く、40℃を超えると副反応が顕著になり収率が低下する。また、反応圧力は通常は常圧であるが、加圧下で反応を行うことも可能である。なお、反応時間は、温度、圧力等の関係で適宜決められる。
反応終了後は、不溶物をろ去後、ろ液中の溶媒を減圧下に留去し、残渣を蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理をすることにより、簡便に目的とする4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)が得られる。
出発原料に光学活性な2−メチルエピハロヒドリン(3)を用いると、光学活性な4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)が得られる。この場合、反応中顕著なラセミ化は起こらない。
本発明によれば、反応は常温、常圧で行うことができ、青酸の様な取扱いの困難なものを使用せず、短時間で簡単な操作により副生成物も少なく高収率で4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)が得られる。そしてその光学活性体は高光学純度を維持した状態で得られる。
【0028】
4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)から4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)への変換反応は、4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)をアルコールに溶解して塩化水素ガスを通じるか、あるいは予め塩化水素ガスで飽和したアルコール中に前記(4)の化合物を加えることによって実施される。
使用できるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、1−メチルブチルアルコール、3−メチルブチルアルコール、1,2−ジメチルプロピルアルコール、2,2−ジメチルプロピルアルコール、1−エチルプロピルアルコール等の炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキルアルコールが挙げられ、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコールである。
【0029】
本反応温度については特に限定はないが、通常は室温から100℃が好ましい。また、反応圧力は通常は常圧であるが、加圧下で反応を行うことも可能である。なお、反応時間は、温度、圧力等の関係で適宜決められる。
反応終了後は、反応液中の溶媒を減圧下に留去し、残渣を蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理をすることにより、簡便に目的とする4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)が得られる。
出発原料に光学活性な2−メチルエピハロヒドリン(3)を用いると、光学活性な4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)が得られる。この場合、反応中顕著なラセミ化は起こらない。
【0030】
ついで、本発明の下記式(7)
【化9】

で表される4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドンの製造法について、以下に説明する。
原料である4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)において、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、好ましくは、塩素、臭素である。また、エステルとしてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル等のアルキルエステルが挙げられ、好ましくは、メチルおよびエチルエステルである。
【0031】
上記式(5)で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルを溶媒中でアルカリ金属のアジド塩またはアルカリ土類金属のアジド塩を作用させることによって、4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(6)を得ることができる。
使用できる溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルホスホルアミドなどの非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒ならびにこれらの混合溶媒などが挙げられる。
使用できるアルカリ金属のアジド塩またはアルカリ土類金属のアジド塩としては、アジ化リチウム、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カルシウム、アジ化バリウム等が挙げられる。入手がしやすい点から、好ましくはアジ化ナトリウムである。使用量は4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)に対して1〜5当量、好ましくは1〜2当量である。
この反応は無触媒でも進行するが、N,N−ジメチルアミノピリジンや、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化物、臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭化物、テトラアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、18−クラウン−6等のクラウンエーテル、から選ばれる反応促進剤を添加すると反応が加速されるため好ましい。これらの反応促進剤の添加量は、4−ハロゲノ−3−ヒドロキシブタン酸エステル(5)に対して0.01〜0.5当量が好ましい。
【0032】
反応温度は室温から溶媒の還流温度までである。また、反応圧力は通常は常圧であるが、加圧下で反応を行うことも可能である。なお、反応時間は、温度、圧力等の関係で適宜決められる。
反応終了後は、反応液中の溶媒を減圧下に留去後、残渣を有機溶媒にて抽出、有機層中の溶媒を減圧下に留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理をすることにより、簡便に4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(6)が得られる。また、溶媒留去後の残渣を、特に精製することなく次の反応に使用することもできる。
【0033】
上記で得られた4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(6)に、触媒存在下、水素を添加することにより、アジド基が還元されるとともに閉環反応が進行し、一挙に目的とする4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン(7)が得られる。
溶媒としては酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒、水媒体ならびにこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0034】
触媒としては、アジド化合物の還元反応に使用される触媒ならばなんら限定されないが、特にパラジウム、白金、ニッケル等の、金属系触媒がよい。また、これらの触媒は、金属単体でも活性炭等に担持されているものでもよい。好ましくは、5%〜10%パラジウム−炭素触媒、3%〜5%白金−炭素触媒であるが、収率および経済性を考慮すると5%〜10%パラジウム−炭素触媒が、より好ましい。
反応温度は室温から溶媒の還流温度までである。また、反応圧力は通常は常圧であるが、加圧下で反応を行うことも可能である。なお、反応時間は、温度、圧力等の関係で適宜決められる。
反応終了後は、不溶物をろ去後、ろ液中の溶媒を減圧下に留去し、残渣を再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理をすることにより、簡便に目的とする4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン(7)が得られる。
【0035】
原料として4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)の光学活性体を用いた場合は、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン(7)の光学活性体を合成することができる。また、この場合、反応中顕著なラセミ化反応は起らず高光学純度の4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン(7)を合成することができる。
本発明によれば、高収率で、光学活性体の場合は、高光学純度を維持した状態で所望の化合物(7)を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例(1−1)
(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノールの製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール7.0g(56.2mmol、光学純度99%ee)と2,6−ルチジン35mLの混合物に、氷冷下p−トルエンスルホニルクロリド10.7g(56.2mmol)を加え、全体を25℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下で2,6−ルチジンを留去し、残渣に水を加えて酢酸エチルで抽出した後、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、酢酸エチル層を減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール13.4g(48.1mmol、収率85.5%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。
【化10】

1H-NMR (CDCl3, 270MHz): δ 1.28 (3H, s), 2.46 (3H, s), 3.51 (2H, d, J=1.1Hz), 3.96 (2H, s), 7.37 (2H, d, J=7.8Hz), 7.80 (2H, dt, J=8.1, 1.6Hz).
【0037】
実施例(1−2)
(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノールの製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール7.0g(56.2mmol、光学純度99%ee)、2,6−ルチジン7.2g(56.2mmol)、及び1,2−ジクロロエタン35mLの混合物に、氷冷下p−トルエンスルホニルクロリド10.7g(56.2mmol)を加え、全体を25℃で12時間撹拌した。反応終了後、水を加えて有機層を抽出した後、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、1,2−ジクロロエタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール13.0g(46.6mmol、収率83.0%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。H−NMRによる分析の結果、実施例(1−1)のチャートと同様の結果であった。
【0038】
実施例(1−3)
(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノールの製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール3.0g(24.1mmol、光学純度99%ee)、トリエチルアミン2.9g(24.1mmol)、及び1,2−ジクロロエタン15mLの混合物に、氷冷下p−トルエンスルホニルクロリド4.6g(24.1mmol)を加え、全体を25℃で6時間撹拌した。反応終了後、水を加えて有機層を抽出した後、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、1,2−ジクロロエタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール5.5g(19.8mmol、収率82.2%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。1H−NMRによる分析の結果、実施例(1−1)のチャートと同様の結果であった。
【0039】
実施例(1−4)
(R)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノールの製造
(R)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール7.0g(56.2mmol、光学純度99%ee)、2,6−ルチジン7.2g(56.2mmol)、及び1,2−ジクロロエタン35mLの混合物に、氷冷下p−トルエンスルホニルクロリド10.7g(56.2mmol)を加え、全体を25℃で12時間撹拌した。反応終了後、水を加えて有機層を抽出した後、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、1,2−ジクロロエタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール13.3g(47.9mmol、収率85.2%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。
【化11】

1H-NMR (CDCl3, 270MHz): δ 1.28 (3H, s), 2.46 (3H, s), 3.52 (2H, d, J=1.1Hz), 3.97 (2H, s), 7.38 (2H, d, J=7.8Hz), 7.81 (2H, dt, J=8.1, 1.9Hz).
【0040】
実施例(1−5)
(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−ニトロベンゼンスルオニルオキシ)−2−プロパノールの製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール7.0g(56.2mmol、光学純度99%ee)、2,6−ルチジン7.2g(67.4mmol)、及び1,2−ジクロロエタン35mLの混合物に、氷冷下4−ニトロベンゼンスルホニルクロリドド12.5g(56.2mmol)を加え、全体を25℃で12時間撹拌した。反応終了後、水を加えて有機層を抽出した後、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、1,2−ジクロロエタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−ニトロベンゼンスルオニルオキシ)−2−プロパノール15.2g(49.0mmol、収率87.2%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。
【化12】

1H-NMR (CDCl3, 270MHz): δ 1.30 (3H, s), 3.57 (2H, d, J=1.0Hz), 3.98 (2H, s), 8.20 (2H, dt, J=8.9, 2.4Hz), 8.53 (2H, dt, J=9.2, 2.4Hz).
【0041】
実施例(1−6)
(S)−2−メチルエピクロロヒドリンの製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール6.4g(23.0mmol、光学純度99%ee)とジクロロメタン12.8mLの混合物に、24%水酸化ナトリウム水溶液4.2g(25.4mmol)を滴下し、全体を25℃で5時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン層を抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、ジクロロメタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物を減圧蒸留にて精製して目的物である(S)−2−メチルエピクロロヒドリン2.20g(20.6mmol、収率89.6%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。
【化13】

1H-NMR (CDCl3, 270MHz): δ 1.47 (3H, s), 2.77 (2H, dd, J=14.9, 4.6Hz), 3.52 (1H, d, J=1.9Hz).
【0042】
実施例(1−7)
(S)−2−メチルエピクロロヒドリンの製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−ニトロベンゼンスルホニルオキシ)−2−プロパノール5.0g(16.1mmol、光学純度99%ee)とジクロロメタン10mLの混合物に、24%水酸化ナトリウム水溶液3.0g(17.8mmol)を滴下し、全体を25℃で5時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン層を抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、ジクロロメタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物を減圧蒸留にて精製して目的物である(S)−2−メチルエピクロロヒドリン1.5g(14.3mmol、収率88.3%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。H−NMRによる分析の結果、実施例(1−6)のチャートと同様の結果であった。
【0043】
実施例(1−8)
(R)−2−メチルエピクロロヒドリンの製造
(R)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール6.80g(24.4mmol、光学純度99%ee)とジクロロメタン13.6mLの混合物に、24%水酸化ナトリウム水溶液4.47g(26.8mmol)を滴下し、全体を25℃で5時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン層を抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、ジクロロメタン層を減圧下濃縮した。残った粗生成物を減圧蒸留にて精製して目的物である(R)−2−メチルエピクロロヒドリン2.14g(20.1mmol、収率82.3%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。
【化14】

1H-NMR (CDCl3, 270MHz): δ 1.47 (3H, s), 2.77 (2H, dd, J=14.9, 4.6Hz), 3.52 (1H, d, J=1.9Hz).
【0044】
実施例(2−1)
(S)−2−メチルエピクロロヒドリン(50.0g,0.469mol,光学純度99%ee)と水(100ml)の混合物を20〜25℃で撹拌しながら、シアン化カリウム(45.8g,0.704mol)の水溶液(水200ml)と65%硫酸(46ml)を2時間かけて同時に滴下した。その際、液性をpH8.0〜10.0、温度20〜25℃に保った。滴下終了後8時間撹拌し、析出した硫酸カリウムを吸引ろ過にて除いた後、ろ液、及び硫酸カリウムを酢酸エチルで抽出(200ml×3回)し溶媒を留去した。残渣を減圧蒸留し、127〜129℃/17mmHgの無色油状留分として(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル50.7gを得た(収率80.9%、光学純度99%ee)。
【0045】
実施例(2−2)
実施例(2−1)において、65%硫酸の代わりに50%リン酸(45ml)を用いる以外はすべて同様に合成を行った。滴下終了後8時間撹拌し、実施例(2−1)と同様の後処理を行い、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル50.6gを得た(収率80.7%、光学純度99%ee)。
【0046】
実施例(2−3)
実施例(2−1)において、65%硫酸の代わりに85%硝酸(46ml)を用いる以外はすべて同様に合成を行った。滴下終了後9時間撹拌し、実施例(2−1)と同様の後処理を行い、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル51.0gを得た(収率81.4%、光学純度99%ee)。
【0047】
実施例(2−4)
(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(10.0g、74.9mmol、光学純度99%ee)、メタノール(50mL)の混合物に撹拌下、5℃で塩化水素ガスを飽和になるまで通じた後25℃で16時間撹拌した。続いて過剰の塩化水素ガスとメタノールを減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチルエステル10.8g(収率86.6%、光学純度99%ee)を得た。
【0048】
実施例(3−1)
(R)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチルエステル10.0g(60.0mmol,光学純度99%ee)、N,N−ジメチルホルムアミド100mLの混合物に、アジ化ナトリウム7.80g(120mmol)を加え、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を、水、飽和食塩水にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧下、溶媒を留去して、(R)−4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチルエステルの粗生成物10.7gを得た。
次いで、この粗生成物を、メタノール100mLに溶解し、5%パラジウム−炭素500mgを加え、水素ガス気流下、室温で12時間撹拌した。反応終了後、混合物よりパラジウム−炭素を濾別し、減圧下、溶媒を留去した。得られた粗生成物を酢酸エチル−ヘキサンより再結晶し、白色結晶の(R)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン5.87g(通算収率85%,光学純度99%ee)を得た。
【0049】
実施例(3−2)
(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸エチルエステル10.0g(55.4mmol,光学純度99%ee)、N,N−ジメチルホルムアミド100mLの混合物に、アジ化ナトリウム7.20g(111mmol)を加え、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を、水、飽和食塩水にて順次洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧下、溶媒を留去して、(S)−4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチルエステルの粗生成物11.2gを得た。
次いで、この粗生成物を、メタノール100mLに溶解し、5%パラジウム−炭素500mgを加え、水素ガス気流下、室温で15時間撹拌した。反応終了後、混合物よりパラジウム−炭素を濾別し、減圧下、溶媒を留去した。得られた粗生成物を酢酸エチル−ヘキサンより再結晶し、白色結晶の(S)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン5.48g(通算収率86%,光学純度99%ee)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により得られる2−メチルエピハロヒドリン、4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル、4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン、特にそれらの光学活性体は、医薬品、または農薬の原料として用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを有機塩基存在下、スルホニルハライドにて1級水酸基をスルホニル化し、下記式(2)
【化2】

[式中Xは前掲と同じ基を意味し、Rは置換基を有していてもよいアラルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を意味する。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノールを得、ついで無機塩基で処理し、エポキシ化することを特徴とする下記式(3)
【化3】

[式中Xは前掲と同じ基を意味する。]
で表される2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項2】
有機塩基がトリアルキルアミン類、トリアリールアミン類、ピリジン、およびピリジン誘導体からなる群より選択される塩基である請求項1に記載の2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項3】
ピリジン誘導体がピリジンの少なくとも2位と6位に置換基を有する化合物である請求項2に記載の2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項4】
ピリジン誘導体が2,6−ルチジンまたは2,4,6−コリジンである請求項3に記載の2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項5】
トリアルキルアミン類がトリエチルアミンである請求項2に記載の2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項6】
無機塩基がアルカリ金属の水酸化物である請求項1〜5のいずれかに記載の2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項7】
光学活性な3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)を用いて、光学活性な2−メチルエピハロヒドリン(3)を得ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の2−メチルエピハロヒドリンの製造法。
【請求項8】
硫酸、リン酸、または硝酸を添加して弱塩基性を保ちながら、下記式(3)
【化4】

[式中Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される2−メチルエピハロヒドリンと青酸塩とを反応させることを特徴とする下記式(4)
【化5】

[式中Xは前掲と同じものを意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリルの製造法。
【請求項9】
硫酸、リン酸、または硝酸を添加して弱塩基性を保ちながら、下記式(3)
【化6】

[式中Xは前掲と同じ基を意味する。]
で表される2−メチルエピハロヒドリンと青酸塩とを反応させ、下記式(4)
【化7】

[式中Xは前掲と同じものを意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリルを得、次いでアルコール溶媒中、塩酸ガスと反応させることを特徴とする下記式(5)
【化8】

[式中Xは前掲と同じものを意味し、Rはアルキル基を意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルの製造法。
【請求項10】
弱塩基性条件がpH8.0〜10.0である請求項8または9に記載の化合物の製造法。
【請求項11】
青酸塩がシアン化ナトリウム、シアン化カリウム、またはこれらの混合物である請求項9または10に記載の化合物の製造法。
【請求項12】
光学活性な2−メチルエピハロヒドリン(3)を用い、光学活性な4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブチロニトリル(4)または4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステル(5)を得ることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の化合物の製造法。
【請求項13】
下記式(5)
【化9】

[式中Xはハロゲン原子を意味し、Rはアルキル基を意味する。]
で表される4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルに、アルカリ金属アジド塩またはアルカリ土類金属アジド塩を溶媒中で反応させ、下記式(6)
【化10】

[式中Rは前掲と同じものを意味する。]
で表される4−アジド−3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸アルキルエステルを得、これに触媒の存在下、水素を添加してアジド基を還元するとともに閉環反応させることを特徴とする下記式(7)
【化11】

で表される4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドンの製造法。
【請求項14】
反応溶媒が非プロトン性極性溶媒である請求項13に記載の化合物の製造法。
【請求項15】
非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである請求項14に記載の化合物の製造法。
【請求項16】
光学活性な4−ハロゲノ−3−ヒドロキシブタン酸アルキルエステル(5)を用い、光学活性な4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピロリドン(7)を得ることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の化合物の製造法。

【公開番号】特開2007−291010(P2007−291010A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120352(P2006−120352)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】