説明

光学測定システムおよび試料の光学特性管理方法

【課題】製品や物品などの試料が多種にわたって不規則に入り混じって流れてくるような場合においても、合否判定を容易に且つ確実・迅速に行うこと。
【課題を解決するための手段】試料の光学特性値を測定する測色計5、試料に個別に取り付けられた識別票SBの属性識別情報を読みバーコードリーダ4、試料に関する光学特性管理情報を各試料の属性識別情報と対応付けて記憶する記憶部22、制御部21を備え、制御部21は、試料から読み取った属性識別情報に対応する光学特性管理情報を記憶部22から読み出し、それと当該試料について測定した光学特性値とを比較し、それらが許容される範囲内であるか否かを判定してその判定結果を出力するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定システムおよび試料の光学特性管理方法に関し、部品や製品の生産などにおいてその光学特性値を管理するために利用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の工場においては種々の製品または部品などが生産されており、それらは製品検査または出荷検査などが行われた後で出荷される。また、製品を入荷した工場または営業所などにおいては、製品に対する入荷検査または受入れ検査が行われた後で、組立て工程に送られ、または倉庫などで保管される。
【0003】
さて、近年において、特に、塗装、成形、印刷、繊維などの分野において、製品の色彩管理についての重要性が認識されてきており、検査工程において製品の光学特性値を測定することがしばしば行われている。
【0004】
すなわち、製造部門や品質管理部門において、分光測色計、色彩色差計、または光沢計を用い、製品の色彩や光沢についての光学特性値を測定し、測定によって得られた測定データを用いて製品検査における合否判定を行っている。
【0005】
このような製品検査における色彩管理では、各種の製品に対して基準製品が設定されている場合が多い。その場合に、各製品について、それぞれに設定された基準製品の基準データを記録しておき、検査用のファイルとして保管しておく。検査工程においては、作業者が、ラインを流れてきた製品を見て、その製品の光学特性値を実際に測定するとともに、その製品についての基準データをファイルの中から探し出し、探し出した基準データと測定データとを比較して合否の判断を行う。
【0006】
また、基準データを設定する方法に関して、複数個のカラーセンサーを用いて基準品の色彩値を測色してその測色値を基準色値として登録する手段と、既に登録された基準色データを検索する手段とを有し、これらのどちらかにより基準色のデータ設定を行うことが提案されている(特許文献1)
【特許文献1】特開平6−41864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来において、ラインを流れる製品が同じ種類のものである場合や、ラインを流れる製品の種類が少ない場合には、それらの製品についての基準データを予め手元に準備しておけばよいので、測定データと基準データとを比較して合否の判断を行うことは容易である。
【0008】
しかし、多数の種類の製品を取り扱うラインでは、一般的には多種多様な製品が数量的にもタイミング的にも不規則に流れてくることが多い。このような場合に、流れてくる製品ごとにそれに対応する基準データを膨大な数にのぼる基準データの中から探し出すための労力と時間は大変なものとなり、作業効率が大幅に低下してしまう。
【0009】
また、同一種類の製品であっても仕向け先によって色のバラツキの許容範囲が異なる場合がある。そのため、基準データとして単純な測色データのみでは合否の判断が行えない場合もある。
【0010】
さらにまた、色彩の評価の対象となる製品は、その形状や表面状態が多様であるため、一口に測色値といっても測定の条件は固定的ではなく、その製品の属性に応じた固有の測定条件によって測定を行わなければならない場合もある。
【0011】
例えば、観察視野条件(2°視野/10°視野)、観察光源(D65/A/C などの光源)、正反射光の影響の有無(SCI/SCE)、蛍光色の評価(励起光の有無)、製品の測定部位、測定回数(単発測定または複数回測定)など、測定条件は多様である。
【0012】
したがって、このような色彩管理では、測定やそのための設定の操作、つまり測色計への測定条件設定、校正、測定方法の設定、表示内容の設定などの操作が多種多様に存在し、操作を誤る可能性がないとはいえない。
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、製品や物品などの試料が多種にわたって不規則に入り混じって流れてくるような場合においても、個々の試料とそれに対応する基準データまたは測定条件を容易に且つ迅速に対応付けることができ、合否判定を容易に且つ迅速に行うことのできる光学測定システムおよび試料の光学特性管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るシステムは、試料の光学特性が所定の管理範囲内であるかを管理するための光学測定システムであって、前記試料の光学特性値を測定する測定手段と、前記試料に個別に取り付けられた識別票の属性識別情報を読み取る読取り手段と、複数種類の試料に関する光学特性管理情報を各試料の属性識別情報と対応付けて記憶する記憶手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記読取り手段により読み取った試料についての属性識別情報に対応する光学特性管理情報を前記記憶手段から読み出し、読み出した光学特性管理情報と当該試料について前記測定手段によって測定した光学特性値とを比較し、当該光学特性値が当該光学特性管理情報で許容される範囲内であるか否かを判定してその判定結果を出力するように制御する。
【0015】
好ましい一例では、前記試料に取り付けられた識別票は、読み書き可能な記録媒体であり、前記制御手段は、前記判定結果をその判定に係る前記試料に取り付けられた記録媒体に書き込むように制御する。
【0016】
また、前記光学特性管理情報は、前記測定手段の測定条件と、判定のための光学特性管理値とを含み、前記制御手段は、前記記憶手段から読み出した測定条件に基づいて測定条件を設定し、設定された測定条件に対応した光学特性管理値を用いて判定を行うように制御する。
【0017】
また、前記属性識別情報には試料の物流情報が含まれており、前記制御手段は、前記物流情報に対応した光学特性管理情報を用いて判定を行うように制御する。
【0018】
また、前記読取り手段は、前記測定手段の測定ヘッドの近傍に設けられている。
【0019】
また、前記試料に取り付けられた識別票は、読み書き可能な記録媒体であり、前記読取り手段は、前記記録媒体への読み書きが可能であって且つ前記測定手段の測定ヘッドの近傍に設けられており、前記制御手段は、前記測定手段による光学特性値の測定を行うときに、前記読取り手段によって前記記録媒体からの前記属性識別情報の読み取りと前記記録媒体への前記判定結果の書き込みとを行うように制御する。
【0020】
また、前記記憶手段は、前記光学特性管理情報を試料の仕向け先ごとに記憶する複数の仕向け先ファイルを有する。
【0021】
本発明に係る方法は、試料の光学特性が所定の管理範囲内であるかを管理するための光学特性管理方法であって、前記試料ごとにそれぞれの属性識別情報が記録された識別票を取り付けておき、複数種類の試料に関する光学特性管理情報を各試料の属性識別情報と対応付けて記憶手段に記憶しておき、読取り手段によって試料に取り付けられた識別票から属性識別情報を読み取り、読み取った属性識別情報に対応する光学特性管理情報を前記記憶手段から読み出し、前記試料の光学特性値を測定手段によって測定し、読み出した光学特性管理情報と測定した光学特性値とを比較して当該光学特性値が当該光学特性管理情報で許容される範囲内であるか否かを判定し、判定結果を出力する。
【0022】
判定結果の出力方法として、内部または外部のメモリなどに書き込む、ICタグに書き込む、ディスプレイの表示面に表示する、プリンタによって印刷する、通信回線を介して他の機器へ送信することなどが含まれる。試料には、製品、部品、試作品、試験用の物品など、種々のものが含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、製品や物品などの試料が多種にわたって不規則に入り混じって流れてくるような場合においても、個々の試料とそれに対応する基準データまたは測定条件を容易に且つ迅速に対応付けることができ、合否判定を容易に且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る光学測定システム1の概略の構成を示す図、図2は光学測定システム1の機能的な構成を示すブロック図、図3は製品に貼付されるバーコードの構成を示す図、図4は仕向け先データベースDB1の概略の構成を示す図、図5は仕向け先ファイルFLの例を示す図、図6は表示面に表示される検査画面HG1の例を示す図、図7は表示面に表示される操作画面HG2の例を示す図である。
【0025】
本実施形態では、工場で生産された製品SHを検査する工程に本発明を適用した例を示す。したがって、対象となる試料をここでは「製品」という。
【0026】
図1において、光学測定システム1は、コンピュータシステム3、バーコードリーダ4、および測色計5から構成されている。
【0027】
コンピュータシステム3は、メインユニット11、キーボード12およびマウス13などの入力装置、ディスプレイ14、並びに、プリンタ15などからなる。このようなコンピュータシステム3として、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどを用いることが可能である。
【0028】
メインユニット11には、CPU、ROMやRAMなどのメモリ、ハードディスク装置、各種ドライブ装置、通信インタフェース、種々の周辺回路、制御回路などが実装されている。ハードディスク装置には、多数の製品SHについての光学特性管理情報をその属性識別情報とともに記憶した仕向け先データベース、製品SHの測定データや検査結果などを記憶する検査データベースなどが記憶される。それらのデータベースは、ハードディスク装置とメモリとの間で転送やコピーなどが行われ、その結果、メモリに形成される後述の記憶部22にも同じ内容のデータベースが作成される。また、同じくハードディスク装置には、製品の光学測定や光学特性管理のためのソフトウェア(色彩管理ソフトウェア)がインストールされており、適宜、メモリに読み込まれ、CPUにより実行される。メモリには、また、種々のパラメータおよび演算式などが必要に応じて記憶される。これらの機能によって、メインユニット11には、制御部21および記憶部22が形成される。また、ネットワークインタフェース23によって外部のネットワークと接続され、種々のプログラムやデータの送信および受信が可能である。また、図示しない可搬型の記録メディアが接続可能であり、記録メディアによって、CD−ROM、光磁気ディスク、メモリチップ、またはメモリカードなどの記録媒体へのアクセスが可能である。なお、光学特性管理情報には、光学特性管理値、測定条件、その他の情報が含まれる。
【0029】
キーボード12およびマウス13は、ディスプレイ14の表示面HGに表示された画面においてユーザが種々の指示や指令を与えるために用いられる他、メインユニット11に種々のデータを入力しまたは指令を与えるために用いられる。ディスプレイ14の表示面HGには、後述する検査画面や操作画面が表示される他、種々のデータ、文字、または画像が表示される。
【0030】
図1に示されるように、光学測定システム1は、工場の製品検査ラインKLに近接して設置されている。製品検査ラインKLにおいては、種々の多数の製品SHが流れてくる。各製品SHには、各製品SHの属性識別情報を記録した識別票SBが取り付けられている。つまり、製品SHと識別票SBとは1対1で対応しており、各製品SHは個別の識別票SBによって管理されている。
【0031】
第1の実施形態において、識別票SBはバーコードである。各製品SHは、製品検査ラインKLにおいて、バーコードリーダ4によって識別票SBが読み取られ、測色計5によって光学特性値が測定される。その際に、制御部21によって、検査対象となっている製品SHの属性識別情報に対応する光学特性管理情報を記憶部22から読み出し、読み出した光学特性管理情報と当該製品SHについて測色計5によって測定した光学特性値とを比較し、その光学特性値が光学特性管理情報の中の光学特性管理値で許容される範囲内であるか否かを判定する。判定結果は、ディスプレイ14の表示面HGに表示され、検査データベースに記憶され、またネットワークインタフェース23を介して外部に出力される。また、回転警告灯やブザーなどを設けておき、判定結果が「不合格」であった場合に回転警告灯を点灯させブザーを鳴らすようにしてもよい。
【0032】
製品SHの検査結果が「不合格」であった場合に、作業者の手作業により、またはロボットのアームによって自動的に、当該製品SHが不合格棚HTに移し替えられる。不合格棚HTとして、単なる台や箱であってもよいが、種々のコンベアを用いることも可能である。
【0033】
図2に示すように、メインユニット11におけるプログラムの実行によって、制御部21には、測定制御部31、バーコード制御部32、データ制御部33、表示制御部34、および判定部35などが設けられる。また、記憶部22には、上に述べた仕向け先データベースDB1、検査データベースDB2が設けられる。
【0034】
測定制御部31は、対象となっている製品SHの属性識別情報に対応して記憶部22から読み出した光学特性管理情報に基づいて、測色計5の測定条件を設定する。また、測色計5から出力される測定データ(光学特性値)D1を読み込んで一旦記憶する。
【0035】
バーコード制御部32は、バーコードリーダ4を制御し、対象となっている製品SHに貼付された識別票SBを読み取ったバーコードリーダ4から読み取りデータ(属性識別情報)DZを読み込んで一旦記憶する。
【0036】
データ制御部33は、仕向け先データベースDB1および検査データベースDB2を制御し、それらデータベースへのデータの書き込みやデータまたはファイルの読み出しを行う。表示制御部34は、ディスプレイ14の表示面HGに種々の画面を表示するためにデータを編集し、これによって画面の更新などを行う。判定部35は、対象となっている製品SHについて、仕向け先データベースDB1から読み出した光学特性管理値と測色計5によって測定した光学特性値とを比較し、製品SHの合否の判定を行う。
【0037】
図4において、仕向け先データベースDB1は、各仕向け先SKごとに作成された仕向け先ファイルFL1,2,3…の集合である。仕向け先SKとは、当該工場で生産された製品SHを納品する宛て先である。仕向け先SKごとに、製品SHについての光学特性管理値が定められ、仕向け先ファイルFLとして記録されている。
【0038】
図5には、ある特定の仕向け先である「A社」についての仕向け先ファイルFLが示されている。仕向け先ファイルFLは、通し番号TB、基準型番KK、基準色彩値KS、および管理幅KHなどの項目からなる。
【0039】
基準型番KKは、同一の光学特性管理情報を有した製品SHの集まりである。つまり、同一種類の製品SHであれば光学特性管理情報は同じであることは当然であるが、種類の異なる製品SHであっても、基準型番KKが同じであれば、同じ光学特性管理情報によって管理される。一方、同じ種類の製品SHであっても、その用途やそれが使用される箇所が異なる場合に、それぞれの使用条件に応じて異なる基準型番KKが設定され、異なる光学特性管理情報によって管理されるのである。この意味で、仕向け先ファイルFLは、各仕向け先SKごとまたは用途ごとの仕様を記述したものともいえる。
【0040】
基準色彩値KSは、各基準型番KKで示される製品SHについて、色彩の基準値を示す。基準色彩値KSは、L* a * b * 表色系(以降において「Lab表色系」と記載することがある)の各データL* 、a * 、b * について設定されている。なお、基準色彩値KSを、L* * * などの他の表色系、または分光反射率や分光透過率で表してもよい。なお、光学特性値は、光沢値、光学濃度値、屈折率などであってもよい。
【0041】
管理幅KHは、基準色彩値KSからの許容される範囲を示す。管理幅KHは、各データL* 、a * 、b * 、および総合評価値Eについて、それぞれの許容限界値ΔL* 、Δa * 、Δb * 、ΔEが設定されている。
【0042】
また、図示は省略したが、仕向け先ファイルFLには、それぞれの基準型番KKに対して、測色計5に設定すべき測定条件SJが設定されている。測定条件SJとしては、例えば、測定回数、測定方法(製品SHへのヘッドの当て方、当てる箇所、当てる面積または範囲など)、使用光源、光沢のあるものを含むか否かなどである。また、測定条件SJとして測色計5以外の測定装置を用いる場合に、その測定装置の種類または機種名、その場合の測定方法などが設定される。このような測定条件SJのうち、測色計5の内部条件として必要なものは測定時において自動的に設定され、作業者に対する案内となるものは、適時、案内画面として表示される。案内画面において、例えば測定方法として、製品SHの画像とともに、その画像上においてヘッドを当てる箇所、当てる面積または範囲などがCGによって表示される。
【0043】
図3に示すように、識別票SBに表示されたバーコードは、最初の3桁が仕向け先SKを示し、次の4桁が基準型番KKを示し、その次の4桁がロット番号を示す。バーコードの構成それ自体は、種々の規格によって定められた公知のものである。
【0044】
識別票SBはそれぞれの製品SHに貼り付けられている。本実施形態では、製品SHは携帯電話の外装ケーシングである。しかし、製品SHとして、種々の製品または部品、また、金属製品、合成樹脂製品、シート状体など、種々のものに適用可能である。
【0045】
次に、光学測定システム1による製品SHの検査方法および光学測定システム1の動作について説明する。
【0046】
光学測定システム1を立ち上げることによって、ディスプレイ14の表示面HGには、図6に示す検査画面HG1および図7に示す操作画面HG2が表示される。但し、この時点では、検査画面HG1は、測定データD1や判定結果HKは未表示であるか、以前に行われた検査で残っているデータが表示される。なお、操作画面HG2は検査画面HG1の右横に同時に表示される。しかしこれらを互いに異なるウインドウで表示することも可能である。
【0047】
まず、図7に示す操作画面HG2において、校正ボタンBT1をクリックする。これによって、ゼロ校正および白色校正などが行われる。
【0048】
そして、製品検査ラインKLにおいて、作業者は、流れてきた製品SHの1つ1つについて、光学測定システム1を用いて検査を行う。まず、バーコードリーダ4を用いて、製品SHに貼り付けられた識別票SBを読み取る。その際に、識別票SBの読み取りのタイミングを指定するために、バーコードリーダ4に設けられた入力ボタンを操作してもよい。また、キーボード12から製品SHの名称などを入力してもよい。
【0049】
識別票SBから読み取られたデータ(属性識別情報)DZは、制御部21のバーコード制御部32に入力される。これによって、属性識別情報DZにより示される基準型番「1401」とロット番号「7205」が、操作画面HG2のエディットボックスである「サンプル名」の欄に表示される。
【0050】
そこで、測色計5を製品SHに当てて、操作画面HG2の測定ボタンBT2をクリックする。そうすると、データ制御部33は、仕向け先データベースDB1にアクセスし、属性識別情報DZで示される仕向け先の仕向け先ファイルFLを検索し、検索した仕向け先ファイルFLを読みだしてオープンする。表示制御部34は、その仕向け先ファイルFLの内容に応じた画面を表示する。また、測定制御部31は、その仕向け先ファイルFLに示された測定条件SJの内容を測色計5に設定する。
【0051】
仕向け先ファイルFLをオープンすることによって、表示面HGが図6に示す画面HG1に更新され、実際に測定が行われることによって測定データD1などが表示される。
【0052】
図6において、画面HG1の左上方には、種々の基準型番KKが表示されており、現在対象となっている製品SHについての基準型番KKである「1401」が選択され強調表示されている。その右方には、選択された基準型番「1401」について、基準色彩値KSが表示されている。またその下の行には、対象となっている製品SHの基準型番とロット番号で示されるデータ名(サンプル名)「14017205」、およびその測定データD1などが表示されている。
【0053】
中央左方には、対象となっている製品SHの基準型番「1401」およびロット番号が示される。中央右方には、基準色彩値KSの内容が表示され、その右横に測色計5で測定された実際の測定データD1が表示される。この例では、基準色彩値KSは、L* 、a * 、b * のそれぞれについて、「27.41」「20.05」「15.18」が表示され、測定データD1として、「27.22」「10.37」「3.63」が表示されている。
【0054】
さらにその下方には、L* 、a * 、b * 、および総合評価値Eについて、基準色彩値KSと測定データD1との差である色差値STが表示されている。それぞれの色差値STは次の式で示される。
【0055】
ΔL* =LD −LK
Δa * =aD −aK
Δb * =bD −bK
ΔE =〔(ΔL* 2 +(Δa * 2 +(Δb * 2 1 /2
但し、LD 、aD 、bD は、L* 、a * 、b * のそれぞれの測定データD1であり、LK 、aK 、bK は、L* 、a * 、b * のそれぞれの基準色彩値KSである。
【0056】
その下方には、対象となっている製品SHの合否の判定結果HKが表示される。合否の判定は、上に述べたΔL* 、Δa * 、Δb * 、およびΔEが、いずれも仕向け先ファイルFLに設定された管理幅KHに入っているか否かによって行われる。この例では、判定結果HKは「合格」となっている。
【0057】
なお、検査画面HG1の左下方に、色差値STがグラフGFによって表示されている。すなわち、ΔL* は、左端の上下方向に沿った軸線上で該当する位置に二重丸でプロットされ、Δa * およびΔb * は、その右横のΔa * Δb * 平面上で該当する位置に二重丸でプロットされている。
【0058】
このように、測定ボタンBT2をクリックすることによって、製品SHの色差値STの測定が自動的に行われ、測定データD1が取り込まれるとともに、測定データD1と基準色彩値KSとが比較され、管理幅KHに基づいて判定が自動的に行われる。
【0059】
なお、1つの製品SHについて複数回の測定を行う場合には、測色計5の測定位置を変えて測定ボタンBT2をクリックする。その度ごとに、最新の測定データD1が検査画面HG1に表示されるとともに、グラフGF上にそれら複数の色差値STがプロットされる。これによって、作業者は色差値STの状態を直感的に把握することが可能である。
【0060】
そして、操作画面HG2において、保存ボタンBT3をクリックすることによって、当該製品SHについての測定データD1および判定結果HKが仕向け先ファイルFLに保存される。
【0061】
判定結果HKが「合格」である場合に、その製品SHをそのまま製品検査ラインKLに流せばよい。その際に、合格シールを貼り付けてもよい。判定結果HKが「不合格」である場合には、その製品SHを不合格棚HTに移す。
【0062】
次の検査対象の製品SHについて、同様の手順で検査を行う。検査画面HG1は1つの製品SHの検査ごとに更新される。
【0063】
次に、光学測定システム1の動作手順をフローチャートに基づいて説明する。
【0064】
図8は概略の手順を示すフローチャート、図9は図8のステップ#12〜14を詳しく示すフローチャートである。
【0065】
図8において、まず校正を行い(#11)、バーコードを入力する(#12)。そして、製品SHの測定を行い(#13)、合否の判定を行い(#14)、検査結果を仕向け先ファイルFLに保存する(#15)。この操作および動作を、多数の製品SHについて終わるまで繰り返して行う(#16)。
【0066】
図9において、バーコードを入力し(#21)、入力されたバーコードが正常でない場合には(#22でノー)、再度、入力を行う。例えば、入力されたにも係わらず実際のデータが存在しない場合、データがシステムの扱えないフォーマットである場合などは、異常とされる。
【0067】
測定ボタンBT2がクリックされると(#23)、入力されたバーコードの中から、仕向け先を示す文字列を抽出する(#24)。仕向け先に基づいて、仕向け先ファイルFLをオープンする(#25)。バーコードの中から、基準型番KKを示す文字列を抽出する(#26)。検査画面HG1を、基準型番KKの基準色彩値KSに対応して切り替える(#27)。測定条件を設定する(#28)。製品SHに対する測定を行う(#29)。検査画面HG1に測定データD1を表示する(#30)。合否判定を行い(#31)、その判定結果を表示する(#32)。
【0068】
上に述べた光学測定システム1によると、製品SHが多種にわたって不規則に入り混じって流れてくるような場合においても、製品SHに付された識別票SBをバーコードリーダ4で読み取ることによって、制御部21において個々の製品SHとそれに対応する基準色彩値KSが容易に且つ高速で対応付けられ、且つ合否判定も自動的に簡単高速に行われる。また、製品SHの測定条件SJが仕向け先ファイルFLから自動的に読み出され、測色計5に自動的に設定されるので、作業者が製品SHごとに手動で測定条件を設定する必要がなくなり、作業の効率が大幅に向上する。
【0069】
仕向け先データベースDB1には、仕向け先ごとにファイルが作成されているので、識別票SBから読み取った属性識別情報DZから仕向け先を抽出し、仕向け先に基づいて仕向け先ファイルFLを読み出すことにより、基準型番KKに対応する基準色彩値KSを簡単且つ高速に取得することが可能である。
【0070】
また、仕向け先ごとに仕向け先ファイルFLが作成されているので、仕向け先ごとに異なる基準色彩値KSや測定条件SJなどを容易に整理することができ、作業者にとっても製品SHと基準色彩値KSとの関係が分かり易い。
【0071】
識別票SBの属性識別情報DZの中に仕向け先を識別するための情報、つまり物流情報が含まれるので、製品SHの仕向け先を光学測定システム1によって管理することができ、また、製品SHのその後の物流における管理が容易である。また、仕向け先に応じて、合否判定のための管理幅KHを設定し、修正し、または管理することが容易である。
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態の光学測定システム1Bについて説明する。
【0072】
光学測定システム1Bでは、識別票SBとして、バーコードに代えてICタグを用いる。そのため、バーコードリーダ4に代えて、ICタグとの間でデータの送信および受信を行うことが可能な読書き装置4Bを用いる。ICタグには、バーコードの場合と同様に、属性識別情報DZが予め記録されているが、測定データD1や判定結果HKなどを、当該製品のICタグに記録することができる点が、バーコードと異なる。このような相違点の他は、第1の実施形態の光学測定システム1と同じであるので、それについては上に述べた第1の実施形態の説明および図を適用することにして、ここでの説明は省略する。以下、相違点についてのみ説明する。
【0073】
図10は本発明の第2の実施形態に係る光学測定システム1Bの概略の構成を示す図、図11は第2の実施形態において用いられる読書き装置4Bおよび測色計5Bを示す斜視図、図12は第2の実施形態における概略の手順を示すフローチャートである。
【0074】
図10および図11に示すように、読書き装置4Bは、測色計5Bの測定ヘッドHDに設けられている。読書き装置4Bは、ICタグSBBとの間で無線によるデータの送受を行うことが可能である。そのような読書き装置4Bおよびそこで用いるインタフェースとして、公知の種々のものを用いることができる。読書き装置4Bおよび測色計5Bから出力される信号およびそれらに入力される信号は、束ねられたケーブルCBによってメインユニット11との間で授受が行われる。
【0075】
このように、読書き装置4Bが測色計5Bの測定ヘッドHDに設けられているので、製品SHBの測定のために測色計5Bの測定ヘッドHDを近づけることによって、読書き装置4BがICタグSBBの情報を読み出しまたは書き込むことができ、操作が極めて容易である。
【0076】
例えば、測色計5Bによる光学特性値の測定を行うときに、読書き装置4BによってICタグSBBからの属性識別情報DZの読み取りを行うとともに、それとほぼ同時に、合否の判定を行い、その後にリアルタイムでICタグSBBへの判定結果HKの書き込みを行うことも可能である。そうすることにより、操作または処理が極めて簡単且つ容易である。また、読書き装置4BによるICタグSBBへのアクセスおよび測色計5Bによる測定を自動化することも容易である。
【0077】
図10および図11に示す製品SHBは、例えば携帯電話の外装ケーシングであり、製品SHBには、製品SHBの属性識別情報DZを記録したICタグSBBが埋め込まれている。ICタグSBBは外から見えないようにすることができるので、ICタグSBBの存在を知られないようにすることが可能であり、ICタグSBBの情報を悪用される可能性も少なくなる。
【0078】
ICタグSBBには、属性識別情報DZとして、上に述べた仕向け先、基準型番KK、ロット番号に加えて、製品の名称、製品色の名称、用いる測定器、基準値名、表色系、製造者、製造年月日などが記録可能である。さらには、基準色彩値KS、管理幅KH、測定条件SJなど、仕向け先ファイルFLに記録されるデータを記録しておいてもよい。また、検査つまり測定が行われた後には、検査年月日、測定データD1、判定結果HK、測定データD1の有効期間などが書き込まれる。
【0079】
また、ICタグSBBに、製品SHBの履歴情報として、検査証明書、トレーサビリティ体系、校正(修理)履歴などを記録してもよい。基準製品や校正用製品においては、基準となる値の他、検査証明書、トレーサビリティ体系、値付け履歴などの情報を持たせることで、ISOなどの要望に適合させることが可能となる。
【0080】
図12において、まず校正を行い(#41)、ICタグSBBに記録された識別データを読み込む(#42)。そして、製品SHBの測定を行い(#43)、合否の判定を行い(#44)、検査結果を仕向け先ファイルFLに保存するとともに、読書き装置4Bを介してICタグSBBに書き込む(#45)。
【0081】
このように、ICタグSBBに測定データD1や判定結果HKを記録することによって、その製品SHBについての測定データD1や判定結果HKが製品SHBと一体となって保持されることとなり、従来のように紙やフレキシブルディスクなどの種々のメディアに記録した場合と比較して、その管理が極めて容易となる。また、それらのデータまたは情報を後でICタグSBBから読み出して確認することも容易であるなど、記録したデータを後工程において活用することが容易である。
【0082】
例えば、ICタグSBBに記録された測定データD1などを後工程で読み出し、各製品SHBの測定データD1に応じて予め決められた処理を実行するように構成することが可能である。そのような後工程として、検査工程に連続する工程であってもよく、また検査工程とは連続しない全く独立別個の工程であってもよい。
【0083】
ここで、識別票SBとしてICタグSBBを用いた場合の応用例について述べる。
(1) 製品SHBの測定時に、ICタグSBBから情報を読み出し、合否判定を行うとともに、測定データD1や判定結果HKをICタグSBBにリアルタイムで書き込む。
(2) 製品SHBの組み立て生産工程で色味(shade)の揃った製品同士を組み合わせるため、製品SHBを色味ごとに分類やランク分けを行い、製品ごとの色の差を抑えることにより、製品SHBの色品質の向上を図る。また、色の違いによる不良が発生しにくいので、色の管理幅を広くとることが可能となり、製品SHBの歩留りが向上し、不良製品の削減に有効である。
(3) 製品SHBの出荷検査または受入れ検査を行う段階において、ICタグSBBの情報を読み取り、検査基準に合格しているか否か、基準色彩値KSからどの程度の誤差を有しているかなどを容易に確認することができる。
【0084】
上に述べた光学測定システム1,1Bの全体または各部の構成、構造、形状、処理内容、処理方法、処理のタイミングなどは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、部品や製品の生産などにおいてその光学特性値を管理するために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態の光学測定システムの概略の構成を示す図である。
【図2】光学測定システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】製品に貼付されるバーコードの構成を示す図である。
【図4】仕向け先データベースの概略の構成を示す図である。
【図5】仕向け先ファイルの例を示す図である。
【図6】表示面に表示される検査画面の例を示す図である。
【図7】表示面に表示される操作画面の例を示す図である。
【図8】概略の手順を示すフローチャートである。
【図9】図8の一部を詳しく示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態の光学測定システムの概略の構成を示す図である。
【図11】第2の実施形態の読書き装置および測色計を示す斜視図である。
【図12】第2の実施形態における概略の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1,1B 光学測定システム
4 バーコードリーダ(読取り手段)
4B 読書き装置(読取り手段)
5 測色計(測定手段)
5B 測色計(測定手段)
21 制御部(制御手段)
22 記憶部(記憶手段)
35 判定部
DB1 仕向け先データベース
DB2 検査データベース
FL 仕向け先ファイル
SH,SHB 製品(試料)
D1 測定データ
DZ 属性識別情報
SB 識別票
SBB ICタグ(識別票、読み書き可能な記録媒体)
SK 仕向け先(物流情報)
HD 測定ヘッド
KK 基準型番
KS 基準色彩値
KH 管理幅
HG1 検査画面
HG2 操作画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の光学特性が所定の管理範囲内であるかを管理するための光学測定システムであって、
前記試料の光学特性値を測定する測定手段と、
前記試料に個別に取り付けられた識別票の属性識別情報を読み取る読取り手段と、
複数種類の試料に関する光学特性管理情報を各試料の属性識別情報と対応付けて記憶する記憶手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記読取り手段により読み取った試料についての属性識別情報に対応する光学特性管理情報を前記記憶手段から読み出し、読み出した光学特性管理情報と当該試料について前記測定手段によって測定した光学特性値とを比較し、当該光学特性値が当該光学特性管理情報で許容される範囲内であるか否かを判定してその判定結果を出力するように制御する、
ことを特徴とする光学測定システム。
【請求項2】
前記試料に取り付けられた識別票は、読み書き可能な記録媒体であり、
前記制御手段は、前記判定結果をその判定に係る前記試料に取り付けられた記録媒体に書き込むように制御する、
請求項1記載の光学測定システム。
【請求項3】
前記光学特性管理情報は、前記測定手段の測定条件と、判定のための光学特性管理値とを含み、前記制御手段は、前記記憶手段から読み出した測定条件に基づいて測定条件を設定し、設定された測定条件に対応した光学特性管理値を用いて判定を行うように制御する、
請求項1または2記載の光学測定システム。
【請求項4】
前記属性識別情報には試料の物流情報が含まれており、
前記制御手段は、前記物流情報に対応した光学特性管理情報を用いて判定を行うように制御する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の光学測定システム。
【請求項5】
前記読取り手段は、前記測定手段の測定ヘッドの近傍に設けられている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の光学測定システム。
【請求項6】
前記試料に取り付けられた識別票は、読み書き可能な記録媒体であり、
前記読取り手段は、前記記録媒体への読み書きが可能であって且つ前記測定手段の測定ヘッドの近傍に設けられており、
前記制御手段は、前記測定手段による光学特性値の測定を行うときに、前記読取り手段によって前記記録媒体からの前記属性識別情報の読み取りと前記記録媒体への前記判定結果の書き込みとを行うように制御する、
請求項1記載の光学測定システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記光学特性管理情報を試料の仕向け先ごとに記憶する複数の仕向け先ファイルを有する、
請求項1ないし7のいずれかに記載の光学測定システム。
【請求項8】
試料の光学特性が所定の管理範囲内であるかを管理するための光学特性管理方法であって、
前記試料ごとにそれぞれの属性識別情報が記録された識別票を取り付けておき、
複数種類の試料に関する光学特性管理情報を各試料の属性識別情報と対応付けて記憶手段に記憶しておき、
読取り手段によって試料に取り付けられた識別票から属性識別情報を読み取り、
読み取った属性識別情報に対応する光学特性管理情報を前記記憶手段から読み出し、
前記試料の光学特性値を測定手段によって測定し、
読み出した光学特性管理情報と測定した光学特性値とを比較して当該光学特性値が当該光学特性管理情報で許容される範囲内であるか否かを判定し、
判定結果を出力する、
ことを特徴とする試料の光学特性管理方法。
【請求項9】
前記試料に取り付けられた識別票は、読み書き可能な記録媒体であり、
前記判定結果を当該試料に取り付けられた記録媒体に書き込む、
請求項8記載の試料の光学特性管理方法。
【請求項10】
前記記憶手段から読み出した光学特性管理情報に基づいて前記測定手段を設定し、
設定された測定条件に対応した光学特性管理値を用いて判定を行う、
請求項8または9記載の試料の光学特性管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−10562(P2006−10562A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189687(P2004−189687)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】