説明

光学物品、およびそれを備えた撮像機器、電子機器、ならびに計時機器

【課題】撥水防汚層が形成されるとともに被装着部と水密的に接合することが可能なレン
ズカバーなどの光学物品を提供する。
【解決手段】光学物品としてのカバー部材20は、光透過性を有する基板11、反射防止
層12、撥水防汚層13、および光透過防止層14によって構成されている。基板11の
表面11aには反射防止層12が形成されている。反射防止層12の上面には、撥水防汚
層13が形成されている。基板11の表面11aと表裏の関係をなす装着面11bには、
中央部に略円形の貫通孔18が設けられた光透過防止層14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性を有する基板面に撥水防汚層が形成された光学物品、およびそれを
備えた撮像機器、電子機器、ならびに計時機器に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズなどの光学物品を使用するに際し、手垢、指紋、汗、化粧料等の付着による汚れ
が目立ちやすく、またその汚れが取れ難い。そこで、汚れ難く、あるいは汚れを拭き取り
やすくするために、その表裏面に撥水、防汚などの機能膜を撥水防汚層として設けること
が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、特に屋外にて使用されることの多いデジタルスチールカメラ、防犯カメラなどは
、光学系レンズなどへの雨滴などが付着すると、撮影された画像に雨滴が写り込んでしま
うという不具合の生じる恐れがあった。この雨滴の付着を防止するため、撥水防汚層が表
面に形成されたレンズカバーなどの光学物品が外表面となるように水密的に装着された構
成が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−126782号公報
【特許文献2】特開2003−238577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のレンズカバーの装着に用いられる接着剤などの接合剤は、レンズ
カバーの表裏面に撥水防汚層が形成されていると、その撥水防汚層にはじかれてしまうた
め水密的に接合し装着することが困難であるという問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、撥水防汚層が形成されるとともに
被装着部と水密的に接合することが可能なレンズカバーなどの光学物品を提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学物品は、光透過性を有する基板と、前記基板の一面に形成された撥水防汚
層と、前記一面と表裏の関係をなす前記基板の他面に防曇層を有していることを特徴とす
る。
【0007】
本発明の光学物品によれば、光透過性を有する基板の一面に形成された撥水防汚層によ
って、付着した水や水滴などが除去され、さらに、基板の他面に形成された防曇層により
基板の曇りを防止することが可能となる。これらにより、水や水滴或いは曇りなどによる
光の透過の阻害を防止することが可能となる。
【0008】
また、前記撥水防汚層が前記一面の全面に形成され、前記防曇層が前記他面の一部に形
成されていることが望ましい。
【0009】
このようにすれば、防曇層が前記他面の一部に形成されていることから、防曇層の形成
されていない部分で光学物品を装着することが可能となる。これにより、光学物品が装着
される被装着部との接合が確実に行われ、高い水密性を得ることが可能となる。
【0010】
また、前記基板の光透過部分を囲むように前記他面に形成された光透過防止層を有して
いることが望ましい。
【0011】
このようにすれば、基板の光透過部分を囲むように装着面に光透過防止層が形成されて
いるため、光学物品の装着部が表面から視認できないため、見栄えを向上させることが可
能となる。
【0012】
また、前記撥水防汚層は、含フッ素シラン化合物を含有する被膜であることが望ましい

【0013】
また、前記含フッ素シラン化合物が、下記一般式(1)で表されることとしてもよい。
【0014】
【化1】

(但し、式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、
Xはヨウ素または水素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロ
メチル基、R1は加水分解可能な基、R2は水素または不活性な一価の有機基、a、b、c
、dは0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の
整数を表す。)
【0015】
これらのようにすれば、従来より撥水防汚性を著しく向上させた防汚性光学物品の製造
が可能となる。
【0016】
また、前記撥水防汚層の下層に反射防止層が形成されていることとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、季節変動、気候変動などによる雰囲気の湿度変化の影響を受けずに
、安定した性能で、かつ、耐久性を大きく向上させた撥水防汚層の形成が可能となる。
【0018】
また、本発明の撮像機器は、構成された光学系に前述の光学物品が搭載されていること
を特徴とする。
【0019】
本発明の撮像機器によれば、搭載された光学物品によって、高い撥水防汚性により付着
した水や水滴などが除去されるため、水や水滴などの写り込みを防止すると共にレンズな
どの光学系への水密性も確保できた撮像機器を提供することができる。
【0020】
また、本発明の電子機器は、表示部に前述の光学物品が搭載されていることを特徴とす
る。
【0021】
本発明の電子機器によれば、搭載された光学物品によって、高い撥水防汚性により付着
した水や水滴などが除去されるため、水や水滴などに邪魔されず表示部の画像を視認する
ことが可能となると共に表示部の水密性も確保できた電子機器を提供することができる。
【0022】
また、本発明の計時機器は、計時表示部に前述の光学物品が搭載されていることを特徴
とする。
【0023】
本発明の計時機器によれば、搭載された光学物品によって、高い撥水防汚性により付着
した水や水滴などが除去されるため、水や水滴などに邪魔されず計時表示部を視認するこ
とが可能となると共に計時表示部の水密性も確保できた計時機器を提供することができる

【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明による光学物品の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態で
は、レンズなどの光学系、視認部、或いは計時部などを保護するカバー部材を、本発明の
光学物品の一例として用いて説明する。図1は、カバー部材の第一実施形態の概略構造を
示す正断面図である。図2は、カバー部材の第二実施形態の概略構造を示す図であり、(
a)は正断面図、(b)は底面図である。図3は、カバー部材の第三実施形態の概略構造
を示す正断面図である。
(第一実施形態)
【0025】
図1に示すように、第一実施形態としてのカバー部材10は、光透過性を有する基板1
1、反射防止層12、撥水防汚層13によって構成されている。
【0026】
基板11は、光を透過することができるように形成された無機ガラスが用いられている
。なお、基板11としては、光を透過することができるプラスチックでも差し支えない。
プラスチックとしては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)樹
脂、ポリウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等を挙
げることができる。基板11としてプラスチックを採用した場合は、傷防止のため、ハー
ドコート膜があってもよい。
【0027】
基板11の表面11aには反射防止層12が形成されている。ここで、反射防止層12
の詳細を説明する。反射防止層12は、無機被膜、有機被膜の単層または多層で構成され
ている。無機被膜の材質としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2
3、Ti25、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、W
3等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができ
る。なお、基板11がプラスチック基板の場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO2、Z
rO2、TiO2、Ta25が好ましい。また、多層膜構成とした場合は、最外層はSiO
2とすることが好ましい。
【0028】
無機被膜の多層膜としては、基板側からZrO2層とSiO2層の合計光学膜厚がλ/4
,ZrO2層の光学的膜厚がλ/4、最上層のSiO2層の光学的膜厚がλ/4の4層構造
を例示することができる。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。
【0029】
無機被膜の成膜方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング
法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる

【0030】
有機被膜の材質は、ガラス基板やプラスチック基板とハードコート膜の屈折率を考慮し
て選定され、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた
塗布方法で成膜することができる。
【0031】
反射防止層12の上面には、撥水防汚層13が形成されている。撥水防汚層13の形成
は、次の一般式(1)で表される含フッ素シラン化合物を用いることが好ましい。
【0032】
【化2】

一般式(1)中のRfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基
であるが、好ましくはCF3−,C25−,C37−である。R1は加水分解可能な基であ
り、例えばハロゲン、−OR3、−OCOR3、−OC(R3)=C(R42、−ON=C
(R32、−ON=CR5が好ましい。さらに好ましくは、塩素、−OCH3、−OC25
である。ここで、R3は脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基、R4は水素または低級
脂肪族炭化水素基、R5は炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基である。R2は水素また
は不活性な一価の有機基であるが、好ましくは、炭素数1〜4の一価の炭化水素基である
。a、b、c、dは0〜200の整数であるが、好ましくは1〜50であり、eは0また
は1である。mおよびnは0〜2の整数であるが、好ましくは0である。pは1以上の整
数であり、好ましくは1〜10の整数である。また、分子量は5×102〜1×105であ
るが、好ましくは5×102〜1×104である。
【0033】
また、上記一般式(1)で示される含フッ素シラン化合物の好ましい構造のものとして
、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【0034】
【化3】

上記式中、Yは水素または低級アルキル基、R1は加水分解可能な基、qは1〜50の
整数を、mは0〜2の整数、rは1〜10の整数を表す。
【0035】
上記含フッ素シラン化合物を用いて基板11上に撥水防汚層13を形成するには、上記
含フッ素シラン化合物を有機溶剤に溶解し、光学物品表面に塗布する方法を採用すること
ができる。塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、フロー法
、ドクターブレード法、ロールコート塗装、グラビアコート塗装、カーテンフロー塗装、
刷毛塗り等が用いられる。有機溶剤としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシク
ロブタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロメチルシクロヘキ
サン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
また、基板11上への撥水防汚層13の形成には、真空蒸着法を用いて成膜することも
できる。
【0036】
有機溶剤で希釈するときの濃度は、0.03〜1wt%の範囲が好ましい。濃度が低す
ぎると十分な厚さの防汚層の形成が困難であり、十分な防汚効果が得られない場合があり
、一方、濃すぎると防汚層が厚くなり過ぎるおそれがあり、塗布後塗りむらをなくすため
のリンス作業の負担が増すおそれがある。
【0037】
撥水防汚層13の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜0.5μmが好ましい。
なお好ましくは0.001〜0.03μmである。撥水防汚層13の膜厚が薄すぎると撥
水防汚効果が乏しくなり、厚すぎると表面がべたつくので好ましくない。また、撥水防汚
層13を反射防止層12の表面に設けた場合には、撥水防汚層13の厚さが0.03μm
より厚くなると反射防止効果が低下するため好ましくない。
【0038】
カバー部材10は、基板11の装着面11bが図中の想像線(二点鎖線)で示す被装着
部15に接着剤16などを用いて行われる接続によって装着される。なお、この装着面1
1bは、基板の表面11aと表裏の関係をなしている。この接続によって接着剤16の平
面視内側に形成される空間は、水密性が確保される。
【0039】
上述の第一実施形態のカバー部材10によれば、基板11の表面11a側に形成された
撥水防汚層13によって付着した水や水滴などが撥水されるため、水や水滴による光の透
過が阻害されることを防止することが可能となる。さらに、装着面11bには、撥水防汚
層13が形成されていないためカバー部材10が装着される被装着部15との接合が確実
に行われ、高い水密性を得ることが可能となる。
(第二実施形態)
【0040】
本発明の光学物品としてのカバー部材の第二実施形態を図2に沿って説明する。なお、
前述の第一実施形態と同じ構成部分については、図2でも同じ符号を用い詳細な説明を省
略する。
【0041】
図2に示すように、第二実施形態としてのカバー部材20は、光透過性を有する基板1
1、反射防止層12、撥水防汚層13、および光透過防止層14によって構成されている

【0042】
基板11は、光を透過することができるように形成された無機ガラスが用いられている
。基板11の表面11aには反射防止層12が形成されている。反射防止層12の上面に
は、撥水防汚層13が形成されている。基板11の表面11aと表裏の関係をなす装着面
11bには、中央部に略円形の貫通孔18が設けられた光透過防止層14が形成されてい
る。光透過防止層14は、光の透過を防止するために用いられる。つまり、表面11a側
から基板11を視認した時、貫通孔18の部分は先方まで視認可能であるが、光透過防止
層14が形成された部分は、この光透過防止層14によって遮られて先方を視認すること
ができない。
【0043】
光透過防止層14は、黒色インクなどの樹脂をマスク印刷法を用い塗布した後乾燥固化
することによって形成する。光透過防止層14の厚さは、光が透過しない厚さを有してい
ればよい。なお、光透過防止層14は、例えば、アルミ、ニッケル、クロムなど光を透過
しない金属薄膜を真空蒸着法などによって形成することも可能である。
【0044】
カバー部材20は、基板11の装着面11bに形成された光透過防止層14が図中の想
像線(二点鎖線)で示す被装着部15に接着剤16などを用いて行われる接続によって装
着される。なお、この装着面11bは、基板の表面11aと表裏の関係をなしている。こ
の接着剤16は、光透過防止層14の外周付近を周状となるように塗布されており、この
接続によって接着剤16の平面視内側に形成される空間は、水密性が確保される。
【0045】
上述の第二実施形態のカバー部材20によれば、基板11の表面11a側に形成された
撥水防汚層13によって付着した水や水滴などが撥水されるため、水や水滴による光の透
過が阻害されることを防止することが可能となる。さらに、装着面11bには、撥水防汚
層13が形成されていないためカバー部材20が装着される被装着部15との接合が確実
に行われ、高い水密性を得ることが可能となる。加えて、基板11の光透過部分を囲むよ
うに装着面11bに光透過防止層14が形成されているため、カバー部材20の装着部に
おける接着剤16の固化形状などのばらつきが表面11a側から視認できないため、見栄
えを向上させることが可能となる。
(第三実施形態)
【0046】
本発明の光学物品としてのカバー部材の第三実施形態を図3に沿って説明する。なお、
前述の第一実施形態と同じ構成部分については、図3でも同じ符号を用い詳細な説明を省
略する。
【0047】
図3に示すように、第三実施形態としてのカバー部材25は、光透過性を有する基板1
1、反射防止層12、撥水防汚層13、光透過防止層14、および防曇層17によって構
成されている。
【0048】
基板11は、光を透過することができるように形成された無機ガラスが用いられている
。基板11の表面11aには反射防止層12が形成されている。この反射防止層12の上
面には、撥水防汚層13が形成されている。基板11の表面11aと表裏の関係をなす装
着面11bには、中央部に略円形の貫通孔18が設けられた光透過防止層14が形成され
ている。貫通孔18の内側となる装着面11bには、防曇層17が形成されている。この
防曇層17は、カバー部材25が被装着部(図示せず)に装着された際、水分の浸入など
によって生じる装着面11bの露出部分の結露、曇りを防止するための、所謂防曇処理層
である。
【0049】
上述の第三実施形態のカバー部材25によれば、基板11の装着面11bが露出してい
る部分に防曇処理層としての防曇層17が設けられている。これにより、前述の第一実施
形態および第二実施形態の効果に加えて、カバー部材25が被装着部(図示せず)に装着
された際に、温度変化などによって装着面11bの露出部分に生じる結露現象、いわゆる
曇りを防止することが可能となる。従って、常に光の透過が適切に行われ、視認する像、
或いは撮像画像の歪み、乱れなどの不具合の発生を防止することが可能となる。
【0050】
なお、前述の第一実施形態から第三実施形態の説明では、基板11と撥水防汚層13と
の間に反射防止層12を設ける構成で説明したが、反射防止層12を設けない構成でもよ
い。基板11の表面11aに直接撥水防汚層13を形成しても同様な効果を有している。
【0051】
次に、前述の第一実施形態から第三実施形態で説明したカバー部材を用いた種々の機器
の構成例について図4、図5、図6を用いて説明する。
【0052】
先ず、図4を用い、カバー部材が装着された撮像機器の一例としての静止画の撮影を行
うデジタルスチールカメラの構成について説明する。図4は、デジタルスチールカメラを
模式的に示し、(a)は斜視図、(b)はレンズなどを含む光学系部分の断面図である。
【0053】
図4に示すように、デジタルスチールカメラ30の光学系31の最外部にカバー部材3
2が設けられている。光学系31には、レンズ38、レンズを保持するレンズホルダ39
およびカバー部材32の被装着部としての筐体36などが含まれる。カバー部材32は、
光透過性を有する基板33の外側に露出する側の表面に撥水防汚層34が形成されており
、その表面と表裏の関係の装着面に光透過防止層35が形成され、この光透過防止層35
面上で筐体36に接着剤37などの接合材で接続されている。この接着剤37は、光の透
過する部分を囲むように周状に設けられており、それにより、レンズ38の表面、カバー
部材32の装着面などを含む空間の水密性が確保されることになる。
【0054】
本事例のデジタルスチールカメラ30によれば、レンズ38などの光学系31にカバー
部材32が装着されている。このカバー部材32に形成された撥水防汚層34による高い
撥水防汚性により、カバー部材32に付着した水や水滴などが除去されるため、水や水滴
などの写り込みを防止することができる。
また、カバー部材32の接続が、撥水防汚層34の形成されていない光透過防止層35
面上で筐体36と行われているため確実強固に接続され、より高い水密性を得ることが可
能となる。従って、レンズ38などの光学系31への結露などを防止することが可能とな
る。
また、光透過防止層35が形成されているため、接着剤37の付着部分を使用者が視認
できない。接着剤37の塗布は、その性質上均一に行うことが難しく、ばらつきを生じる
ことが多いため、この部分を不可視とすることで好適な見栄えを得ることができる。
本事例によれば、上述の効果を有するデジタルスチールカメラ30を提供することが可
能である。
【0055】
なお、前述では撮像機器の一例としてデジタルスチールカメラを用いて説明したが、こ
れに限らない。例えば、防犯カメラ、ビデオカメラ、望遠鏡、双眼鏡などでもよく、特に
雨水の付着する頻度の高い屋外使用機器では、付着した雨水などがカバー部材32に形成
された撥水防汚層34によって弾かれてしまうため水や水滴の写り込み防止により顕著な
効果を有している。
【0056】
次に、図5を用い、カバー部材が装着された電子機器の一例としての携帯電話の構成に
ついて説明する。図5は、携帯電話を模式的に示し、(a)は斜視図、(b)は表示部の
断面図である。
【0057】
図5に示すように、携帯電話50は、その表示部57の外表面に露出するカバー部材5
1が設けられている。
カバー部材51は、光透過性を有する基板52の外側に露出する側の表面に撥水防汚層
53が形成されており、その表面と表裏の関係の装着面に光透過防止層54が形成され、
この光透過防止層54面上で被装着部であるケース体56に接着剤55などの接合材で接
続されている。
この接着剤55は、表示部57の外周(ケース体56の窓開け部)を囲むように周状に
設けられており、それにより、表示部57の表面、カバー部材51の装着面などを含む空
間の水密性が確保されることになる。
【0058】
本事例の携帯電話50によれば、表示部57にカバー部材51が装着されている。この
カバー部材51に形成された撥水防汚層53による高い撥水防汚性により、カバー部材5
1に付着した水や水滴などが除去されるため、水や水滴などによる画像の歪みなどを防止
し、好適な画像の視認性を提供することが可能となる。
また、カバー部材51の接続が、撥水防汚層53の形成されていない光透過防止層54
面上でケース体56と行われているため確実強固に接続され、より高い水密性を得ること
が可能となる。従って、表示部57などへの結露などを防止することが可能となる。
また、光透過防止層54が形成されているため、接着剤55の付着部分を使用者が視認
できない。接着剤55の塗布は、均一に行うことが難しくばらつきを生じることが多いた
め、この部分を不可視とすることで好適な見栄えを得ることができる。
本事例によれば、上述の効果を有する電子機器としての携帯電話50を提供することが
可能である。
【0059】
なお、前述では電子機器の一例として携帯電話を用いて説明したが、これに限らない。
例えば、ナビゲーション、ゲーム機器、音響機器などの表示部に用いてもよく、特に雨水
の付着する頻度の高い携帯機器では、付着した雨水などがカバー部材51に形成された撥
水防汚層53によって弾かれてしまうため、水や水滴による画像の視認歪みなどの防止に
、より顕著な効果を有している。
【0060】
次に、図6を用い、カバー部材が装着された計時機器の一例としての腕時計の構成につ
いて説明する。図6は、腕時計を模式的に示し、(a)は正面図、(b)は計時表示部の
断面図である。図6に示すように、腕時計70は、針67などを有する計時表示部68の
外表面に露出するカバー部材61が設けられている。カバー部材61は、光透過性を有す
る基板62の外側に露出する側の表面に撥水防汚層63が形成されており、その表面と表
裏の関係の装着面に光透過防止層64が形成され、この光透過防止層64面上で被装着部
であるケース66に接着剤65などの接合材で接続されている。この接着剤65は、計時
表示部68の外周を囲むように周状に設けられており、それにより、計時表示部68の表
面、カバー部材61の装着面などを含む空間の水密性が確保されることになる。
【0061】
本事例の腕時計70によれば、計時表示部68にカバー部材61が装着されている。こ
のカバー部材61に形成された撥水防汚層63による高い撥水防汚性により、カバー部材
61に付着した水や水滴などが除去されるため、水や水滴などによる画像の歪みなどを防
止し、好適な計時表示の視認性を得ることができる。
また、撥水防汚層63の形成されていない光透過防止層64面上で、カバー部材61の
接続がケース66と行われているため確実強固に接続され、より高い水密性を得ることが
可能となる。従って、計時表示部68、基板62の装着面などへの結露などを防止するこ
とが可能となる。
また、光透過防止層64が形成されているため、接着剤65の付着部分を使用者が視認
できない。接着剤65の塗布は、均一に行うことが難しくばらつきを生じることが多いた
め、この部分を不可視とすることで好適な見栄えを得ることができる。
本事例によれば、上述の効果を有する計時機器としての腕時計70を提供することが可
能である。
【0062】
なお、前述では計時機器の一例として腕時計70を用いて説明したが、これに限らない
。例えば、海水中で使用し海水の付着する頻度の高いダイバーウォッチ、屋外での使用に
より雨水などの水や水滴の付着の多いストップウォッチなどでもよく、水や水滴による計
時表示の歪みなどを防止し、好適な計時表示の視認性を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のカバー部材の第一実施形態の概略構造を示す正断面図。
【図2】本発明のカバー部材の第二実施形態の概略構造を示す図であり、(a)は正断面図、(b)は底面図。
【図3】本発明のカバー部材の第三実施形態の概略構造を示す正断面図。
【図4】本発明のカバー部材が装着された撮像機器の一例としてのデジタルスチールカメラの構成を模式的に示し、(a)は斜視図、(b)はレンズなどを含む光学系部分の断面図。
【図5】本発明のカバー部材が装着された電子機器の一例としての携帯電話の構成を模式的に示し、(a)は斜視図、(b)は表示部の断面図。
【図6】本発明のカバー部材が装着された計時機器の一例としての腕時計の構成を模式的に示し、(a)は正面図、(b)は計時表示部の断面図。
【符号の説明】
【0064】
10,20,25,32,51,61…光学物品としてのカバー部材、11,33,5
2,62…基板、11a…表面、11b…装着面、12…反射防止層、13,34,53
,63…撥水防汚層、14,35,54,64…光透過防止層、15…被装着部、16,
37,55,65…接着剤、17…防曇層、18…貫通孔、30…撮像機器としてのデジ
タルスチールカメラ、31…光学系、36…被装着部としての筐体、38…レンズ、39
…レンズホルダ、50…電子機器としての携帯電話、56…被装着部としてのケース体、
57…表示部、66…被装着部としてのケース、67…針、70…計時機器としての腕時
計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基板と、
前記基板の一面に形成された撥水防汚層と、
前記一面と表裏の関係をなす前記基板の他面に防曇層を有していることを特徴とする光
学物品。
【請求項2】
請求項1に記載の光学物品において、
前記撥水防汚層が前記一面の全面に形成され、前記防曇層が前記他面の一部に形成され
ていることを特徴とする光学物品。
【請求項3】
請求項1に記載の光学物品において、
前記基板の光透過部分を囲むように前記他面に形成された光透過防止層を有しているこ
とを特徴とする光学物品。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の光学物品において、
前記撥水防汚層は、含フッ素シラン化合物を含有する被膜であることを特徴とする光学
物品。
【請求項5】
請求項4に記載の光学物品において、
前記含フッ素シラン化合物が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする光学物品

【化1】

(但し、式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、
Xはヨウ素または水素、Yは水素または低級アルキル基、Zはフッ素またはトリフルオロ
メチル基、R1は加水分解可能な基、R2は水素または不活性な一価の有機基、a、b、c
、dは0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の
整数を表す。)
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光学物品において、
前記撥水防汚層の下層に反射防止層が形成されていることを特徴とする光学物品。
【請求項7】
構成された光学系に請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学物品が搭載さ
れていることを特徴とする撮像機器。
【請求項8】
表示部に請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学物品が搭載されているこ
とを特徴とする電子機器。
【請求項9】
計時表示部に請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学物品が搭載されてい
ることを特徴とする計時機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−44133(P2008−44133A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219336(P2006−219336)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】