説明

光学用フィルムの製造方法

【課題】ダイラインやギアマーク等の厚みむらがなく均一な厚みであり、かつ微細な形状を有する光学用フィルムを安価で生産性よく製造する製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂10と、第1の離型フィルム12と、第2の離型フィルム14とを、冷却ロール2bと圧着ロール2aとの間で挟圧したのち、熱可塑性樹脂10から第1、第2の離型フィルム12、14を剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムFを得る。冷却ロール2b内部の2つの温度設定部は、回転せずに静止した状態で設けられ、冷却ロール2bの周方向に分割されそれぞれが独立して温度設定可能で冷却ロール2bの周面の領域を加温または冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置や有機EL照明、太陽電池用バックシートなどの光学用フィルムの製造方法に関し、更に詳しくは、厚みむらが少なく、優れた平滑性を持ち、全面に亘り均一な光学特性を有する光学用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TVや携帯、パソコン用モニターなどの液晶表示装置には光源であるバックライトの光を効率良く均一に広げるための光学フィルム又はシート(以後、光学用フィルムと総称)が多用されているが更に近年急激に普及してきている有機EL照明では発光される光源を効率良く部屋全面に均一広げる役割、太陽電池では受光される太陽光を効率良く受光させるためのバックシートなどの役割として光学用フィルムが用いられてきている。
【0003】
特に前記液晶表示装置用の各種光学用フィルムにおいては急激な市場価格低下、合理化、軽量薄型化、大型化、品質向上が強く求められているが、業務用は元より一般家庭用においても30インチ以上の液晶TVが主流なってきており、また2010年度アナログ放送から地上波デジタル放送への以降にともなり画質がより鮮明になり大画面の中で今まで問題視していなかった外観上のムラや歪みが顕在化してきている。
これに搭載されている光学用フィルムはその画質や外観上のムラや歪みに大きな役割を果たしている性質上よりその影響を受け易いため改善が求められている。
【0004】
液晶表示装置は数種類の異なる性能を有する光学用フィルムを数枚重ね合わせ使用することにより光学性能を維持しているが近年の急激な市場価格の低下に伴い、光学用フィルムのコストダウン、枚数減らしなどの合理化が強く求められている。
正確な液晶表示を得るための光学用フィルムには様々な製造方法や構成が提案提供されているが、以下に代表的な二つの製造方法が挙げられる。
(1)表面にエンボス加工された回転する金属ロールと圧着させるゴムロールの間に透明な基材を挟み込みエンボス加工された金属ロールと透明な基材の間に電離放射線硬化樹脂を流し込み圧着回転後電離放射線により硬化剥離することによりそのエンボスロールの形状を透明な基材上に形成する方法。
(2)ペレット、粒子などの固形の熱可塑性樹脂を押出し機を用いて溶融させダイより均一な膜状の樹脂層を押出し、冷却ロールにて冷却固化させることにより任意の光学用フィルムを作成する方法。
【0005】
上記(1)の製造方法の場合、使用される透明な基材は限定され安価材料を提供できないこと、高エネルギーである電離放射線により硬化されるため硬化時の熱収縮により光学シートの歪みや反りが発生しやすくまた、加工速度も極端に遅いことから生産性が悪くランニングコストが高くなる。
【0006】
(2)の製造方法の場合、(1)の製造方法とは異なり単一の樹脂にて押出し成形されるため反りは生じにくい。また樹脂の溶融冷却速度の関係から加工速度は速くすることが可能であり生産性が良好である。
製法上複数の冷却ロールに接触することに溶融状態にある樹脂を固化製膜させるが、最初に接触する冷却ロール表面を任意の形状を有したエンボスロールにすることによりエンボス部に溶融された樹脂が充填されその状態を維持したまま剥離され以降の冷却ロールにて冷却固化されることにより表面に狙った形状をもった光学用フィルムを作製することができる。
しかしこの方法の場合エンボス部に樹脂を十分に充填させる必要があるがエンボス部の形状が深く鋭利な形状の様な場合十分に充填されず成形後に狙った形状を有する光学用フィルムを作製することができない。
【0007】
これを改善する方法としてはエンボスロールとゴムロール間の狭圧力を強くする、樹脂の溶融粘度を下げる、速度を下げるなどによりエンボス部への樹脂の充填は改善するがその反面ダイラインやギアマーク等の厚みムラや歪み、反りが発生し完全ではない。
またこの改善のために、無端金属ベルトを上下に設置し、その間に溶融樹脂を挟圧する方法が提案されている。
しかし、この方法でも挟圧の個所が金属ベルトを挟圧するロール間の挟圧のみであり、金属ベルトと樹脂との接着性が不足したり、温度勾配が取れなくなり、均一なフィルムが得られ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−118213号公報
【特許文献2】特開平4−166319号公報
【特許文献3】特開平4−301415号公報
【特許文献4】特開2004−306549号公報
【特許文献5】特開2005−161801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の有する問題点を解消し、ダイラインやギアマーク等の厚みむらがなく均一な厚みであり、かつ微細な形状を有する光学用フィルムを安価で生産性よく製造することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するべく押出ダイよりフィルム状に溶融押出した熱可塑性樹脂を光学機能を有する三次元立体模様を表面に有する連続した離型性シートとともに金属又はセラミックからなる冷却ロールとゴムロールとで挟圧した後、離型性シートを剥離分離することにより光学用フィルムを製造するに際し、冷却ロールが円周方向に分割されておりそれぞれを独立して温度設定することにより最適な押出し成型方法を見出した。
【0011】
即ち本発明の請求項1に係る発明は、押出ダイからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂と、第1の離型フィルムと、第2の離型フィルムとを、冷却ロールと該冷却ロールに圧着して回転する圧着ロールとの間で、前記第1の離型フィルムを前記圧着ロールと前記熱可塑性樹脂との間に介在させかつ前記第2の離型フィルムを前記冷却ロールと前記熱可塑性樹脂との間に介在させた状態で挟圧したのち、前記熱可塑性樹脂から前記第1、第2の離型フィルムを剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムを製造する方法であって、前記冷却ロールの内部に回転せずに静止した状態で設けられ、前記冷却ロールの周方向に分割されそれぞれが独立して温度設定可能で前記冷却ロールの周面の領域を加温または冷却する複数の温度設定部を含んで構成されている光学用フィルムの製造方法である。
請求項2に係る発明は、押出ダイからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂と、離型フィルムとを、冷却ロールと該冷却ロールに圧着して回転する圧着ロールとの間で、前記離型フィルムを前記圧着ロールと前記熱可塑性樹脂との間に介在させた状態で挟圧したのち、前記熱可塑性樹脂から前記離型フィルムを剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムを製造する方法であって、前記冷却ロールの内部に回転せずに静止した状態で設けられ、前記冷却ロールの周方向に分割されそれぞれが独立して温度設定可能で前記冷却ロールの周面の領域を加温または冷却する複数の温度設定部を含んで構成されている光学用フィルムの製造方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記温度設定部は2つ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法である。
請求項4に係る発明は、前記温度設定部の温度範囲は20℃〜170℃であり、隣り合う前記温度設定部の温度差が30℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法である。
請求項5に係る発明は、前記複数の温度設定部による前記冷却ロールの周面の領域の温度設定は、前記熱可塑性樹脂のうち前記圧着ロールと前記冷却ロールで挟圧される挟圧部に対応する前記周面の領域の温度が、前記熱可塑性樹脂のうち前記挟圧部の下流側に位置し前記冷却ロールから剥離される剥離部に対応する前記周面の領域の温度よりも高温となるようになされる請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法である。
請求項6に係る発明は、前記第1、第2の離型フィルムの少なくとも一方は、熱可塑性樹脂、あるいは、透明な基材の一方の面に電離放射線硬化型樹脂が形成された硬化性樹脂フィルム、あるいは、透明な基材の一方の面に熱硬化性樹脂が形成された熱硬化性樹脂フィルムで構成されている請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法である。
請求項7に係る発明は、前記離型フィルムは、熱可塑性樹脂、あるいは、透明な基材の一方の面に電離放射線硬化型樹脂が形成された硬化性樹脂フィルム、あるいは、透明な基材の一方の面に熱硬化性樹脂が形成された熱硬化性樹脂フィルムで構成されている請求項2に記載の光学用フィルムの製造方法である。
請求項8に係る発明は、前記第1の離型フィルムが前記熱可塑性樹脂に圧着される面と、前記第2の離型フィルムが前記熱可塑性樹脂に圧着される面との一方または双方に、前記熱可塑性樹脂の表面に前記光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状が設けられている請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法である。
請求項9に係る発明は、前記離型フィルムが前記熱可塑性樹脂に圧着される面と、前記圧着ロールが前記熱可塑性樹脂に圧着される周面との一方または双方に、前記熱可塑性樹脂の表面に前記光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状が設けられている請求項2に記載の光学用フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、剥離マークやダイラインなどの外観不良を発生することなく良好な光学用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一般的な押出プロセスの概略図である。
【図2】本発明の表裏両面に離型フィルムを使用したプロセスの概略図である。
【図3】本発明の片面に離型フィルムを、他面にエンボスされた冷却ロールを使用したプロセスの概略図である。
【図4】本発明のロール内部が2つに分割された冷却ロールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般的な押出し成型方法は図1に示す様に熱可塑性樹脂10を押出ダイ1dより、金属又はセラミックからなる冷却ロール1bと、ゴムロール(圧着ロール)1aとの間隙に溶融押出し、挟圧して光学用フィルムFを製造する方法であり、符号1cは冷却ロール1bの下流に配置された冷却ロールを示している。
この場合、押出しダイ1dの温度を300℃に設定すると、押出しダイ1dから吐出される熱可塑性樹脂10はダイ出口部で280℃程度、冷却ロール1bとゴムロール1aとで狭圧される挟圧部1eでは150℃程度まで低下する。
また冷却ロール1bの設定温度は樹脂のガラス転移温度近くに設定することが理想とされているが、通常の押出成型に使用される熱可塑性樹脂10のガラス転移温度は100℃〜160℃である。ガラス転移温度が150℃である樹脂を使用した場合、冷却ロール1bの温度は150℃に設定されるが、この時狭圧部分の温度は約150℃であり、また、冷却ロール1bから剥離する剥離部1fの樹脂温度も約150℃となる。
【0016】
しかしながら樹脂ガラス転移温度近くで剥離する場合、熱可塑性樹脂10によっては冷却ロール1bとの密着が強いため、剥離部1fにおいて、スムーズに剥離せず押出流れ方向に垂直に発生する剥離マークと呼ばれるスジムラや押出し幅方向で歪みや反りが発生する。
この問題を改善するためには冷却ロール1bの温度を低下させる必要があるが、この場合、挟圧部1eの樹脂温度も同時に低下するため、今度は押出しダイ1dから発生しているスジ(いわゆるダイライン)がそのままレベリング(平滑化)されずに残ってしまう。
【0017】
また、図2に示す様に、本発明に用いられる凹凸模様の冷却ロール2b、三次元立体模様を有する離型フィルム12、14を用いて熱可塑性樹脂10を押出した場合、樹脂温度の低下により熱可塑性樹脂10の粘度が上昇するため凹凸模様や三次元立体模様に十分に熱可塑性樹脂10が充填しないため光学用フィルムFの微細なパターンの形状が崩れてしまい光学用フィルムFとしての性能を十分に発揮できない。
このため本発明は図2や図3に用いる冷却ロール2b、3bを図4の様な構造にすることにより上記狭圧部と剥離部の相反する適正樹脂温度の問題を同時に解決する手段とした。
【0018】
図2もしくは図3に使用される第1の離型フィルム12及び第2の離型フィルム14あるいは離型フィルム16は熱可塑性樹脂やUV硬化性樹脂フィルム、熱硬化性樹脂フィルムいずれの材料により作製されたものでもかまわないが、光学用フィルムFとの十分な離型性を有している必要がある。
【0019】
このような熱可塑性樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン、ポリイミド、PMMA、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、芳香族ポリエステル、環状ポリオレフィン等が上げられる。耐熱性や離型性を考慮した場合環状ポリオレフィンが特に好ましい。
【0020】
またUV硬化性樹脂フィルムは通常ポリエチレンテレフタレートなどの透明なフィルムの片面にUV硬化樹脂(放射線硬化型樹脂)をパターン形成するが、使用されるUV硬化性樹脂の主剤としてはエポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シリコン系樹脂が挙げられるが汎用性、硬化性、基材との密着性を考慮した場合アクリル系が特に好ましい。
【0021】
熱硬化性樹脂フィルムは通常ポリエチレンテレフタレートなどの透明なフィルムの片面に熱硬化性樹脂をパターン形成するが、使用される熱硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系及びシリコン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、等が挙げられるが硬化性や硬化後の押出樹脂との離型性を考慮した場合、ウレタン樹脂が好ましい。
【0022】
冷却ロール2b、3bや第1、第2の離型フィルム12、14の表面に形成される凹凸模様や3次元立体模様はシリンドリカルレンチキュラー形状、プリズム形状、マイクロレンズ形状が単体もしくは前記形状の複合により形成されるものいずれに限定されないが良好な光学特性を有するプリズムとマイクロレンズが複合された形状が特に好ましい。
言い換えると、図2の場合は、第1の離型フィルム12が熱可塑性樹脂に圧着される面と、圧着ロール2aが熱可塑性樹脂10に圧着される周面との一方または双方に、熱可塑性樹脂10の表面に光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状が設けられている。
【0023】
すなわち、本明細書において熱可塑性樹脂10の表面に光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状とは、冷却ロール2b、3bや第1、第2の離型フィルム12、14の表面に形成される凹凸模様や3次元立体模様であり、言い換えると、シリンドリカルレンチキュラー形状、プリズム形状、マイクロレンズ形状が単体もしくは前記形状の複合により形成されるものである。
【0024】
また、本発明に係る光学用フィルムFを例えば液晶表示装置に用いた場合、光学用フィルムFと液晶表示装置内の他の部材との間で生じる光の干渉によるモアレを抑制し、また、効率的な透過性を実現するために、凹凸模様や3次元立体模様(熱可塑性樹脂10の表面に光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状)の大きさは0.05〜0.2mm、高さは0.25〜0.1mmが好ましい。
【0025】
図2の様に、押出ダイ2dからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂10と、第1の離型フィルム12と、第2の離型フィルム14とを、冷却ロール2bと該冷却ロール2bに圧着して回転する圧着ロール2aとの間で、第1の離型フィルム12を圧着ロール2aと熱可塑性樹脂10との間に介在させかつ第2の離型フィルム14を冷却ロール2aと熱可塑性樹脂10との間に介在させた状態で挟圧したのち、熱可塑性樹脂10から第1、第2の離型フィルム12、14を剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムFが得られる。
図2において符号2cは冷却ロール2bの下流側に位置する別の冷却ロールを示す。
【0026】
この場合、第1の離型フィルム12が熱可塑性樹脂10に圧着される面と、第2の離型フィルム14が熱可塑性樹脂10に圧着される面との双方に、熱可塑性樹脂10の表面に光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状を設けると、光学用フィルムF両面にそれぞれの立体模様を転写させて光機能を持たせることが出来る。
第1の離型フィルム12および第2の離型フィルム14の前記立体形状(立体模様)は同種の組合せでも異種の組合せでもよい。
また、異種の組み合わせの場合、第1、第2の離型フィルム12、14のうちのいずれかは立体模様を有しない平滑な状態のものでもよい。
第1、第2の離型フィルム12、14を使用する場合は、少なくとも一方の離型フィルムは硬化性樹脂による離型フィルムであって、他方の離型フィルムは熱可塑性樹脂による離型フィルム等他のものでもよい。
【0027】
圧着ロール2aは冷却ロール2bと第1、第2の離型フィルム12、14と押出ダイ2dから吐出される熱可塑性樹脂10とを狭圧せしめる役割があるが幅方向に均一に狭圧させ、更に凹凸部に樹脂を充填させるためには狭圧時に変形しやすいゴムロールもしくは金属ロールの表層の厚みが薄く狭圧時にゴムロール同様に変形するロールが好ましい。
【0028】
光学用フィルムFを形成する押出可能な熱可塑性樹脂10としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン、ポリイミド、PMMA、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、芳香族ポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、本発明に係る光学用フィルムFを例えば液晶表示装置に用いた場合、光学用フィルムFが液晶表示装置内部で他フィルムと積層されるため、熱可塑性樹脂10としては、熱挙動安安定性、透明性、断裁打ち抜き性、薄膜化を考慮した場合ポリカーボネートが好ましい。
【0029】
本発明で大きな役割を持っている冷却ロール2bであるが図4の様に冷却ロール2b内部が円周方向に対して分割されておりそれぞれのゾーンが独立して温度設定できるものである。
冷却ロール2b内部の分割数は任意選択できるがロール構造の簡素化、円周方向への熱傾斜安定性を考慮した場合2つ以上に分割されることが好ましく、本実施の形態では、2つに分割されている。
【0030】
冷却ロール2bについて具体的に説明する。
図4に示すように、冷却ロール2bの回転軸20は不図示のフレームによって回転可能に支持されている。
冷却ロール2bの内部には、冷却ロール2bの回転軸を中心として180度の位相をおいた2箇所に駆動用ゴムローラ22a、22bが配置されている。
2つの駆動用ゴムローラ20a、20bはそれらの外周面を冷却ロール2bの内周面に圧接した状態で互いに逆方向に回転駆動され、これにより、冷却ロール2bは回転軸20を中心に回転駆動される。
【0031】
冷却ロール2bの内部には、前記複数のゾーンに対応して複数の温度設定部が設けられ、本実施の形態では、2つの温度設定部24a、24bが設けられている。
2つの温度設定部24a、24bは、回転せずに静止した状態で設けられ、冷却ロール2bの周方向に分割されそれぞれが独立して温度設定可能で冷却ロール2bの周面の領域を加温または冷却するものである。
このような温度設定部24a、24bとしては、従来公知のさまざまな構造のものが使用可能である。
2つの温度設定部24a、24bによる冷却ロール2bの周面の領域の温度設定は、熱可塑性樹脂10のうち圧着ロール2aと冷却ロール2bで挟圧される挟圧部2eに対応する周面の領域の温度が、熱可塑性樹脂10のうち挟圧部2eの下流側に位置し冷却ロール2bから剥離される剥離部2fに対応する周面の領域の温度よりも高温となるようになされる。
各温度設定部24a、24bの温度範囲は20℃〜170℃に設定することが好ましいが、連続運転で押出する場合、冷却ロール2bの周面の領域(ゾーン)での温度差を安定させる場合各領域の温度差は30℃以上あることが特に好ましい。
【実施例】
【0032】
本発明は上記狭圧部と剥離部の相反する適正樹脂温度の問題を同時に解決できる方法であるが以下の様に実施を行い確認を行った。
(実施例1)
図2の様な押出成型形態において以下の材料と成型条件にて実施を行った。
(第1の離型フィルム12の作製)
周面がプリズム状にエンボス加工された円筒状のロールと反対側にエンボスロールと同一の周期で回転するゴムロールが設置され圧着回転する構造の機械において125μ厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム(以後PETと記載)を上記エンボスロールとゴムロールの間に通紙接触させ、PETフィルムとエンボスロールの間に紫外線硬化樹脂を流し込み、ロール間を圧着した状態でPETフィルム側よりI線に吸収ピークをもつ高圧水銀灯により120Wの照射強度により硬化した後、エンボスロールよりPETフィルムを剥離することにPETフィルムの片面にプリズム形状を有する第1の離型フィルム12を作製した。
【0033】
(第2の離型フィルム14の作製)
表面にランダムに配置された凹状の微細な半球を有するシリンダーが設置されたグラビア印刷機を使用した。
溶剤に溶解された熱硬化性樹脂(ウレタン樹脂メーカー:DIC株式会社 製品:P−895)を前記グラビア印刷機を使用して印刷速度50m/minにて125μのPETに塗布、180℃のオーブンにて乾燥硬化後、ロール状に巻き取り作製した。
すなわち、実施例1では、第1の離型フィルム12が熱可塑性樹脂10に圧着される面と、第2の離型フィルム14が熱可塑性樹脂10に圧着される面との双方に、熱可塑性樹脂10の表面に光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状を設けた。
【0034】
第1の離型フィルム12と第2の離型フィルム14を図2の様に冷却ロール2bと圧着ロール2aの間に圧着搬送させその間にTダイ(押出ダイ)2d内部で300℃に溶解された熱可塑性樹脂10としてのポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製ポリカーボネート「パンライトL1225ZE(商品名)」)をフィルム状に溶融押出し4m/minの速度で引き取り、第1、第2離型フィルム12、14とポリカーボネート樹脂を剥離し成型製品としての光学用フィルムFを得た。
【0035】
言い換えると、押出ダイ2dからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂10と、第1の離型フィルム12と、第2の離型フィルム14とを、冷却ロール2bと圧着ロール2aとの間で、第1の離型フィルム12を圧着ロール2aと熱可塑性樹脂10との間に介在させかつ第2の離型フィルム14を冷却ロール2aと熱可塑性樹脂10との間に介在させた状態で挟圧したのち、熱可塑性樹脂10から第1、第2の離型フィルム12、14を剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムFを得た。
【0036】
この場合、2つの温度設定部24a、24bによる冷却ロール2bの周面の領域の温度設定は、熱可塑性樹脂10のうち圧着ロール2aと冷却ロール2bで挟圧される挟圧部2eに対応する周面の領域の温度を160℃、熱可塑性樹脂10のうち挟圧部2eの下流側に位置し冷却ロール2bから剥離される剥離部2fに対応する周面の領域の温度を100℃とした。
得られた結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例2)
図3の様な押出成型形態において以下の材料と成型条件にて実施を行った。
(離型フィルム16の作製)
実施例2では、離型フィルムとして1種類の離型フィルム16を用い、この離型フィルム16を実施例1の第2の離型フィルム14と同様に作製した。
(冷却ロール3bの作製)
金属がメッキされた円筒状のロールの表面を高速で回転させながら先端に幅0.1mmの大きさのプリズム形状をもったダイヤモンドの刃を押し付け金属表面をロール幅方向に全面切削し作製した。
すなわち、実施例2では、離型フィルム16が熱可塑性樹脂10に圧着される面と、圧着ロール3bが熱可塑性樹脂10に圧着される周面との双方に熱可塑性樹脂10の表面に光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状を設けた。
【0039】
離型フィルム16とエンボス加工された冷却ロール3bを図3の様に圧着ロール3aの間に圧着搬送させたその間にTダイ(押出ダイ)3d内部で300℃に溶解された熱可塑性樹脂10としてのポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製ポリカーボネート「パンライトL1225ZE(商品名)」)をフィルム状に溶融押出し4m/minの速度で引き取り、第1の離型フィルム12とポリカーボネート樹脂を剥離し成型製品としての光学用フィルムFを得た。
【0040】
言い換えると、押出ダイ3dからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂10と、離型フィルム16とを、冷却ロール3bと該冷却ロール3bに圧着して回転する圧着ロール3aとの間で、離型フィルム16を圧着ロール3bと熱可塑性樹脂10との間に介在させた状態で挟圧したのち、熱可塑性樹脂10から離型フィルム16を剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムFを得た。
【0041】
この場合、2つの温度設定部24a、24bによる冷却ロール2bの周面の領域の温度設定は、熱可塑性樹脂10のうち圧着ロール2aと冷却ロール2bで挟圧される挟圧部2eに対応する周面の領域の温度を160℃、熱可塑性樹脂10のうち挟圧部2eの下流側に位置し冷却ロール2bから剥離される剥離部2fに対応する周面の領域の温度を100℃とした。
得られた結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1−1)
(離型フィルム16の作製)
実施例2と同様の離型フィルム16を作製した。
離型フィルム16とエンボス加工された冷却ロール3bを図3の様に圧着ロール3aの間に圧着搬送させたその間にTダイ3d内部で300℃に溶解されたポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製ポリカーボネート「パンライトL1225ZE(商品名)」)を押出し4m/minの速度で引き取り離型フィルム16とポリカーボネート樹脂を剥離し成型製品としての光学用フィルムFを得た。
この場合、冷却ロール3bは内部が一体型の剛体金属ロールを使用した。
得られた結果を表1に示した。
【0043】
(比較例1−2)
比較例1−1と同様の離型フィルム16を作製した。
離型フィルム16とエンボス加工された冷却ロール3bを図3の様に圧着ロール3aの間に圧着搬送させたその間にTダイ3d内部で270℃に溶解されたポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製ポリカーボネート「パンライトL1225ZE(商品名)」)を押出し4m/minの速度で引き取り離型フィルム16とポリカーボネート樹脂を剥離し成型製品としての光学用フィルムFを得た。
この場合、冷却ロール3bは内部が一体型の剛体金属ロールを使用した。
得られた結果を表1に示した。
【0044】
表1から次のことが確認された。
第1、第2実施例では、2つのゾーンに分割された冷却ロール2b、3bの温度をそれぞれ60℃の差が出るように設定、狭圧部2e,3eの温度を樹脂ガラス転移温度に近い温度に維持した状態で剥離部2f、3fの温度を下げたところ剥離マークやダイラインが発生せずエンボスロール(冷却ロール3b)や凹凸のある離型フィルムの凹凸部に樹脂を十分に充填することができた。
これに対して比較例1−1、1−2では、冷却ロール3bとして内部が一体型の剛体金属ロールを使用したため、剥離マークやダイラインが発生した。また、エンボスロールや凹凸のある離型フィルムの凹凸部に樹脂を十分に充填する上で不利であった。
【0045】
以上説明したように、本発明の光学用フィルムの製造方法によれば、ダイラインやギアマーク等の厚みむらがなく均一な厚みであり、かつ微細な形状を有する光学用フィルムを安価で生産性よく製造する上で有利となる。
また、本発明の光学用フィルムの製造方法により、液晶表示装置や有機EL照明、太陽電池用バックシートなどの光学用フィルム用の材料として従来は使用できなかった材料を使用し製造することが可能にったため今後更に光学特性の良好な光学用フィルムを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
2a,3a……圧着ロール、2b、3b……冷却ロール、2d、3d……Tダイ、2e,3e……狭圧部、2f、3f……剥離部、10……熱可塑性樹脂、12……第1の離型フィルム、14……第2の離型フィルム、16……離型フィルム、24a、24b……温度設定部、F……光学用フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出ダイからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂と、第1の離型フィルムと、第2の離型フィルムとを、冷却ロールと該冷却ロールに圧着して回転する圧着ロールとの間で、前記第1の離型フィルムを前記圧着ロールと前記熱可塑性樹脂との間に介在させかつ前記第2の離型フィルムを前記冷却ロールと前記熱可塑性樹脂との間に介在させた状態で挟圧したのち、前記熱可塑性樹脂から前記第1、第2の離型フィルムを剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムを製造する方法であって、
前記冷却ロールの内部に回転せずに静止した状態で設けられ、前記冷却ロールの周方向に分割されそれぞれが独立して温度設定可能で前記冷却ロールの周面の領域を加温または冷却する複数の温度設定部を含んで構成されている、
光学用フィルムの製造方法。
【請求項2】
押出ダイからフィルム状に溶融押し出された熱可塑性樹脂と、離型フィルムとを、冷却ロールと該冷却ロールに圧着して回転する圧着ロールとの間で、前記離型フィルムを前記圧着ロールと前記熱可塑性樹脂との間に介在させた状態で挟圧したのち、前記熱可塑性樹脂から前記第1の離型フィルムを剥離することにより表面に光学的機能を奏する形状が形成された光学用フィルムを製造する方法であって、
前記冷却ロールの内部に回転せずに静止した状態で設けられ、前記冷却ロールの周方向に分割されそれぞれが独立して温度設定可能で前記冷却ロールの周面の領域を加温または冷却する複数の温度設定部を含んで構成されている、
光学用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記温度設定部は2つ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記温度設定部の温度範囲は20℃〜170℃であり、隣り合う前記温度設定部の温度差が30℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記複数の温度設定部による前記冷却ロールの周面の領域の温度設定は、前記熱可塑性樹脂のうち前記圧着ロールと前記冷却ロールで挟圧される挟圧部に対応する前記周面の領域の温度が、前記熱可塑性樹脂のうち前記挟圧部の下流側に位置し前記冷却ロールから剥離される剥離部に対応する前記周面の領域の温度よりも高温となるようになされる請求項1または2に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1、第2の離型フィルムの少なくとも一方は、熱可塑性樹脂、あるいは、透明な基材の一方の面に電離放射線硬化型樹脂が形成された硬化性樹脂フィルム、あるいは、透明な基材の一方の面に熱硬化性樹脂が形成された熱硬化性樹脂フィルムで構成されている請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記離型フィルムは、熱可塑性樹脂、あるいは、透明な基材の一方の面に電離放射線硬化型樹脂が形成された硬化性樹脂フィルム、あるいは、透明な基材の一方の面に熱硬化性樹脂が形成された熱硬化性樹脂フィルムで構成されている請求項2に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1の離型フィルムが前記熱可塑性樹脂に圧着される面と、前記第2の離型フィルムが前記熱可塑性樹脂に圧着される面との一方または双方に、前記熱可塑性樹脂の表面に前記光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状が設けられている請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記離型フィルムが前記熱可塑性樹脂に圧着される面と、前記圧着ロールが前記熱可塑性樹脂に圧着される周面との一方または双方に、前記熱可塑性樹脂の表面に前記光学的機能を奏する形状を形成するための立体形状が設けられている請求項2に記載の光学用フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−73389(P2011−73389A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229289(P2009−229289)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】