説明

光学用二軸延伸フィルム

【課題】 触媒としてアンチモン(Sb)やゲルマニウム(Ge)を使用しないにもかかわらず、良好な色相を呈し、フィルム中の微細粒子量が非常に少ない光学用二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 比重5.0以上の金属元素を実質的に含有しない芳香族ポリエステルからなり、透過光測定によるカラーb値が−0.5〜2.0、暗視野顕微鏡法により測定されるフィルム中に存在する触媒に起因する粒径1〜10μmの微細粒子が195個/mm以下であることを特徴とする、光学用二軸延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用二軸延伸フィルムに関し、詳しくは、ポリエステルからなり、優れた色相を呈する二軸延伸された光学用二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、フィルムに広く利用されている。近年、地球環境の保全が重要な課題となり、環境負荷の少ないフィルムが求められている。ポリエステルについても、環境負荷の低減の観点から、SbやGe元素を含有しないフィルムが望ましい。
【0003】
【特許文献1】特公昭48−2229号公報
【特許文献2】特公昭47−26597号公報
【特許文献3】国際公開第01/00706号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/008479号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/027166号パンフレット
【特許文献6】特開平11−158257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、触媒としてアンチモン(Sb)やゲルマニウム(Ge)を使用しないポリエステルを原料として用いると、通常は色相の悪いフィルムしか得られない。本発明は、触媒としてSbやGeを使用しないにもかかわらず、良好な色相を呈し、フィルム中の微細粒子量が非常に少ない光学用二軸延伸フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は比重5.0以上の金属元素を実質的に含有しない芳香族ポリエステルからなり、透過光測定によるカラーb値が−0.5〜2.0、暗視野顕微鏡法により測定されるフィルム中に存在する触媒に起因する粒径1〜10μmの微細粒子が195個/mm以下であることを特徴とする、光学用二軸延伸フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、触媒としてアンチモン(Sb)やゲルマニウム(Ge)を使用しないにもかかわらず、良好な色相を呈し、フィルム中の微細粒子量が非常に少ない光学用二軸延伸フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳しく説明する。
[芳香族ポリエステル]
本発明における芳香族ポリエステルとは、テレフタル酸やナフタレンジカルボン酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体に代表される芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分を重縮合反応せしめて得られるポリエステルのことである。このポリエステルは、共重合ポリエステルであってもよく、共重合成分として、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分以外の成分、例えば脂肪族ジカルボン酸成分、芳香族ジヒドロキシ化合物、オキシカルボン酸成分が共重合されていても良い。
【0008】
芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートよりなる群から少なくとも1種選ばれるポリエステルであることが好ましく、これらの中でも特にポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルであることが好ましい。なお「主たる構成成分」とはポリエステルの全繰り返し単位の80モル%以上が芳香族ポリエステルであることを示す。
【0009】
[比重5.0以上の金属元素]
本発明における比重5.0以上の金属元素は、ポリエステル中に含有される触媒や金属系の整色剤、艶消剤等に含有されている金属化合物に由来する金属元素である。具体的には、例えばアンチモン、ゲルマニウム、マンガン、コバルト、セリウム、錫、亜鉛、鉛、カドミウムが該当する。これらに対し、例えばチタン、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムは、ここでいう比重5.0以上の金属には該当しない。
【0010】
本発明において、金属元素を実質的に含有しないとは、金属元素の含有量が10ppm以下、好ましくは7重量ppm以下、さらに好ましくは5重量ppm以下であることをいう。10ppmを超えると製膜をする上での取り扱い性、環境負荷が大きい点で不都合がある。例えばアンチモン元素の場合は10ppmを超えると、製糸や製膜時に異物となって口金やダイ周辺に付着し、長期間の連続成形性に悪影響を与える。鉛や錫、カドミウム元素の場合、10ppmを超えると金属元素そのものに毒性があり、環境負荷が大きくなる。ゲルマニウムの場合は、それ自体が高価なため、含有量が10ppmより多くなると得られるポリエステル組成物の価格が上昇してしまい好ましくない。
【0011】
[色相]
本発明の光学用二軸延伸フィルムは、透過光測定によるカラーb値が−0.5〜2.0の範囲にある。カラーb値が−0.5未満であると表示機器等の画像の青みが強すぎる傾向があり、2.0を超えると表示機器等の画像が黄色味の色調になる傾向がある。なお、色相は、L表色系における数値である。
【0012】
本発明においては上記の色相を得るために、ポリエステルは整色剤をフィルム重量あたり好ましくは0.1〜10ppm、さらに好ましくは0.3ppm〜9ppm、特に好ましくは0.5〜8ppm含有する。この整色剤は、整色剤濃度20mg/L、光路長1cmでのクロロホルム溶液の状態で測定される波長380〜780nmでの最大吸収波長が540〜600nm、好ましくは545〜595nm、さらに好ましくは550〜590nmであり、最大吸収波長での吸光度に対する各波長での吸光度の割合が下記式(1)〜(4)を全て満たす整色剤である。
0.00≦A400/Amax≦0.20 (1)
0.10≦A500/Amax≦0.70 (2)
0.55≦A600/Amax≦1.00 (3)
0.00≦A700/Amax≦0.05 (4)
(式中、A400、A500、A600、A700、はそれぞれ400nm、500nm、600nm、700nmでの可視光吸収スペクトルにおける吸光度、Amaxは最大吸収波長での可視光吸収スペクトルにおける吸光度を表す。)
【0013】
この整色剤は、さらに下記式(6)〜(9)のいずれかまたは全てを満たすことが好ましい。
0.00≦A400/Amax≦0.15 (6)
0.30≦A500/Amax≦0.60 (7)
0.60≦A600/Amax≦0.95 (8)
0.00≦A700/Amax≦0.03 (9)
【0014】
整色剤が0.1ppm未満であると得られるフィルムの黄色味が強くなり好ましくなく、10ppmを超えると明度が弱くなり見た目に黒味が強くなり光学用二軸延伸フィルムとして好ましくない。
【0015】
整色剤濃度20mg/L、光路長1cmでのクロロホルム溶液の状態で測定される380〜780nmでの最大吸収波長が540nm未満であるとフィルムの赤味が強くなり、600nmを超えるとフィルムの青味が強くなり光学用二軸延伸フィルムとして好ましくなく、式(1)〜(4)の条件をいずれか一つでも満たさないと、フィルムの着色が大きく好ましくない。
【0016】
なお、整色剤は、有機の多芳香族環系染料または顔料である。具体的には、後述のように青色系整色剤、紫系整色剤、赤色系整色剤、橙色系整色剤を例示することができる。これらは単一種で用いても複数種を併用して用いても良い。
【0017】
整色剤は、好ましくは青色系整色剤と紫色系整色剤を併用する。このときの青色系整色剤と紫色系整色剤との重量比は、好ましくは90:10〜40:60の範囲、80:20〜50:50の範囲である。青色系整色剤の重量比が90を超えると得られるフィルムのカラーa値が小さくなり緑色を呈し、青色整色剤の重量比が40未満であるとカラーa値が大きくなり赤色を呈して好ましくない。
【0018】
青色系整色剤は、一般に市販されている整色剤の中で「Blue」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光スペクトルにおける最大吸収波長が580〜620nm程度にあるものである。青色系整色剤として、C.I.Solvent Blue 11、C.I.Solvent Blue 25、C.I.SolventBlue 35、C.I.Solvent Blue 36、C.I.SolventBlue 45 (Telasol Blue RLS)、C.I.SolventBlue 55、C.I.Solvent Blue 63、C.I.SolventBlue 78、C.I.Solvent Blue 83、C.I.SolventBlue 87、C.I.Solvent Blue 94が例示される。
【0019】
紫色系整色剤は、市販されている整色剤の中で「Violet」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が560〜580nm程度にあるものである。紫色系整色剤として、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Solvent Violet 13、C.I.SolventViolet 14、C.I.Solvent Violet 21、C.I.SolventViolet 27、C.I.Solvent Violet 28、C.I.SolventViolet 36が例示される。
【0020】
赤色系整色剤は、市販されている整色剤の中で「Red」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が480〜520nm程度にあるものである。赤色系整色剤として、C.I.Solvent Red 24、C.I.Solvent Red 25、C.I.SolventRed 27、C.I.Solvent Red 30、C.I.SolventRed 49、C.I.Solvent Red 52、C.I.SolventRed 100、C.I.Solvent Red 109、C.I.SolventRed 111、C.I.Solvent Red 121、C.I.SolventRed 135、C.I.Solvent Red 168、C.I.SolventRed 179が例示される。
【0021】
橙色系系整色剤は、市販されている整色剤の中で「Orange」と表記されているものである。橙色系整色剤として、C.I.Solvent Orange 60が例示される。
【0022】
[微細粒子]
本発明の光学用二軸延伸フィルムは、暗視野顕微鏡法により測定されるフィルム中に存在する触媒に起因する粒径1〜10μmの微細粒子が195個/mm以下である。この微細粒子が195個/mmを超えると、粒子による光の散乱等によりフィルムの透明性が悪化し、光学用二軸延伸フィルムに用いたとき画像がぼやける。
【0023】
本発明においては、ポリエステル中に存在するチタン金属元素が、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して、好ましくは2〜15ミリモル%、さらに好ましくはチタン金属元素は3〜10ミリモル%とする。チタン金属元素が2ミリモル%未満であるとポリエステルの重縮合反応が十分に進行せず、15ミリモル%を超えると得られるフィルムの色相が黄色味を帯び、耐熱性が低下し好ましくない。
【0024】
そして、チタン金属元素とリン元素のモル比率が下記数式(5)を満たすことが好ましい。
1≦P/Ti≦15 (5)
(式中、Pはポリエステル中に含有されるリン元素の濃度(ミリモル%)を、Tiはポリエステル中に含有されるポリエステルに可溶なチタン金属元素の濃度(ミリモル%)を表す。)
【0025】
P/Tiが1未満であると得られるフィルムの色相が黄色味を帯び、15を超えるとポリエステルの重縮合反応が遅くなるため好ましくない。P/Tiの範囲は、さらに好ましくは2〜10である。
【0026】
ポリマーに可溶性のチタン金属元素とは、酸化チタンのような無機のチタン化合物は含まれず、通常触媒として用いられている有機のチタン化合物や艶消し剤として使用される酸化チタンに不純物として含有されている有機チタン化合物を指す。
【0027】
ポリエステルの固有粘度は、好ましくは0.40〜1.00である。固有粘度は、溶媒としてオルトクロロフェノールを用い、測定温度35℃で測定された数値から算出される値である。
【0028】
[ポリエステルの製造方法]
本発明における芳香族ポリエステルは、通常知られている製造方法により製造することができる。例えば、まずテレフタル酸の如きジカルボン酸成分とエチレングリコールの如きグリコール成分とを直接エステル化反応させる、若しくはテレフタル酸ジメチルの如きジカルボン酸成分の低級アルキルエステルとエチレングリコールの如きグリコール成分とをエステル交換反応させ、ジカルボン酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって目的とする芳香族ポリエステルが製造される。
【0029】
芳香族ポリエステルを製造する際において用いる重合触媒は、好ましくはチタン化合物および/またはアルミニウム化合物である。チタン化合物としては、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば、酢酸チタンやテトラ−n−ブトキシチタンを用いることができるが、好ましくは、下記一般式(I)で表わされる化合物を用い、または下記一般式(I)で表わされる化合物と下記一般式(II)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくはその無水物とを反応させた生成物を用い、または下記一般式(III)で表される化合物を用いる。
【0030】
【化1】

(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ同一若しくは異なって、アルキル基またはフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3または4の場合、2個、3個または4個のRおよびRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。)
【0031】
【化2】

(式中、qは2〜4の整数を表わす。)
【0032】
【化3】

(式中、Xは炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基である。)
【0033】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムアセチルアセトネートが安定で取扱いが容易な点において優れているので好ましい。また、これらチタン化合物とアルミニウム化合物は単独で用いても、2種以上を併用しても良いが、チタン化合物を単独で用いるのが特に好ましい。
【0034】
なかでも最も好ましいのが上記一般式(I)で表わされる化合物を用いる態様、一般式(I)で表わされる化合物と上記一般式(II)で表わされる芳香族多価カルボン酸若しくはその無水物とを反応させた生成物を用いる態様、または上記一般式(III)で表される化合物を単独で用いる態様である。
【0035】
一般式(I)で表わされるテトラアルコキサイドチタンおよび/またはテトラフェノキサイドチタンとしては、Rがアルキル基および/またはフェニル基であればよい。テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタンが例示される。
【0036】
また、かかるチタン化合物と反応させる一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸またはこれらの無水物が例示される。
【0037】
上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させればよい。
【0038】
なお、一般式(III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物とモノアルキルホスホン酸、モノアリールホスホン酸、モノアルキルホスフェート、モノアリールホスフェートを70〜150℃の範囲で反応させることによって得ることができる。
【0039】
上述したように、ポリエステルに可溶なチタン金属元素とリン元素を好ましいモル比率に保つためにはポリエステル組成物中にリン化合物を添加する。リン化合物としては、好ましくはリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、あるいはこれらのアルキル、アリールエステル、ホスホノアセテート系化合物を用いる。
【0040】
リン化合物のポリエステル組成物中への添加方法は、エステル交換反応またはエステル化反応が実質的に終了した後であればいつでもよいが、通常はエステル化反応、若しくはエステル交換反応が終了した後すぐに添加し、その後重縮合反応せしめることが好ましい。
【0041】
整色剤は、芳香族ポリエステル製造工程の任意の段階で添加することができ、好ましくは重合反応が終了するまでの時期に、特に好ましくはエステル化反応もしくはエステル交換反応が終了した後に添加する。
【0042】
[フィルムの製造方法]
本発明の光学用二軸延伸フィルムは、従来公知の溶融製膜方法を用いて製造することができる。
例えば乾燥したポリエステル組成物を270℃〜300℃の範囲で溶融してシート状に押し出し、冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムを得る。次いで該未延伸フィルムを二軸方向に延伸し、熱固定し、必要であれば熱弛緩処理することによって製造することができる。その際、フィルムの表面特性、密度、熱収縮率の性質は、延伸条件その他の製造条件により変わるので、必要に応じて適宜条件を選択して製膜する。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の数値は以下の方法により測定した。
(ア)固有粘度
フィルムサンプルを100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
【0044】
(イ)ジエチレングリコール含有量
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてフィルムサンプルを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィ−(ヒューレットパッカード社製「HP6850」)を用いて測定した。
【0045】
(ウ)フィルムの透過光測定によるカラーb
JIS―Z8722と8729規格に準じ、カラーメーター(日本電色工業社製、SZ−Σ90)を用いて、フィルムの透過光のカラーb*値を測定した。
【0046】
(エ)比重5.0以上の金属元素含有量
フィルムサンプルを、硫酸アンモニウム、硫酸、硝酸、過塩素酸とともに混合して約300℃で9時間湿式分解後、蒸留水で希釈し、理学製ICP発光分析装置(JY170 ULTRACE)を用いて定性分析し、比重5.0以上の金属元素の存在の有無を確認した。1重量ppm以上の存在が確認された金属元素について、その元素含有量を示した。
【0047】
(オ)ポリエステルに可溶性のチタン、アルミニウム、アンチモン、マンガン、リン含有量
ポリマー中のポリエステルに可溶性のチタン元素量、アルミニウム元素量、アンチモン元素量、マンガン元素量、リン元素量は粒状のポリマーサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。ただし、艶消剤として酸化チタンを添加したポリエステル組成物中のチタン元素量については、サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−8100形原子吸光光度計を用いて定量を行った。ここで0.5規定塩酸抽出後の抽出液中に酸化チタンの分散が確認された場合は遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させ、傾斜法により上澄み液のみを回収して、同様の操作を行った。これらの操作によりポリエステル組成物中に酸化チタンを含有していてもポリエステルに可溶性のチタン元素の定量が可能となる。
【0048】
(カ)ヘーズ
溶融押出機から回転冷却ドラム上にシート状に溶融押出し、急冷固化して厚さ500μmの未延伸フィルム(シート)を作成し、日本電色工業社製濁度計(HDH−1001DP)にて測定した。
【0049】
(キ)微細粒子
フィルムの表面を、メチルエチルケトンで処理して、易滑層を除去したのち、顕微鏡(Nikon Microphoto―FX)を使用して、透過暗視野測定法にて、光源10目盛、100倍で、撮影した。得られた写真を、画像解析装置にて、直径が1〜10μmに観察される粒子の個数をカウントした。
【0050】
(ク)触媒および整色剤の調製)
(1)チタン触媒Aの合成
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2重量%)にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめた。その後常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させた。析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。これをチタン触媒Aとする。
【0051】
(2)整色剤の可視光吸収スペクトル測定、整色剤調製
表1に示す整色剤を室温で濃度20mg/Lのクロロホルム溶液とし、光路長1cmの石英セルに充填し、対照セルにはクロロホルムのみを充填して、日立分光光度計U−3010を用いて、380〜780nmの可視光領域での可視光吸収スペクトルを測定した。整色剤2種を混合する場合は合計で濃度20mg/Lとなるようにした。最大吸収波長とその波長における吸光度に対する、400、500、600、700nmの各波長での吸光度の割合を測定した。更に粉末の整色剤の熱重量減少開始温度を測定した。結果を表1に示す。尚、実施例、比較例でこれら整色剤をポリエステル製造工程で添加する場合は、100℃の温度で、原料として用いるグリコール溶液に対し、濃度0.1重量%となるように溶解または分散させて調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
[実施例1]
・ポリエステル組成物チップの製造
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物に、参考例1で調製したチタン触媒A 0.016部を加圧反応が可能なSUS製容器に仕込んだ。0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、トリエチルホスホノアセテート0.023部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0054】
その後反応生成物に表1に示す整色剤Aの0.1重量%エチレングリコール溶液0.2部を添加して重合容器に移し、290℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.63、ジエチレングリコール含有量が1.3重量%であるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。結果を表2に示す。
【0055】
・易滑用塗布液の調整
下記のポリエステル樹脂(イ)を65重量%、架橋剤(ロ)を20%、球状粒子(ハ)を10重量%、濡れ剤(ニ)を5重量%の割合で、混合に分散処理して、これらの成分の合計濃度が8%の水系塗布液を調整した。
【0056】
(イ)ポリエステル樹脂:
酸成分が、2、6−ナフタレンジカルボン酸 70モル%/イソフタル酸 25モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸 5モル%、グリコール成分が、エチレングリコール 90モル%/ジエチレングリコール 10モル%のポリエステル樹脂。
(ロ)架橋剤:
メチルメタアクリレート 25モル%、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン 30モル%、ポリエチレンオキシドメタクリレート 10モル%/アクリルアミド 35%で構成。
(ハ)球状粒子:
球状架橋アクリル粒子(粒径 100nm)。
(ニ)濡れ剤:
ポリオキシエチレンラウリルエーテル。
【0057】
・ポリエステルフィルムの製膜
ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを、140℃で、6時間減圧乾燥した後、押し出し機に供給し、約285℃で、溶融したポリエステル樹脂を回転冷却ドラム上に、静電印荷法、エアーナイフ法等手段で、シート状に押し出し、極力厚み斑のない未延伸シートとした。続いて、得られたシートを、100℃に加熱して、縦方向(長手方向)に、3.2倍延伸し、1軸配向フィルムを得た。その後、前記の塗布液を、リバースローラー法により、1軸配向フィルムの両面に塗付した。さらに、160℃に加熱されたゾーンで、横方向(幅方向)に3.8倍延伸した後、230℃の熱処理ゾーンで熱処理を実施して、厚さ125μmの2軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。フィルムの両面に形成された易滑層の厚みは、それぞれ、80nmであった。結果を表3に示す。
【0058】
[比較例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部との混合物に、酢酸マンガン四水和物0.032重量部を撹拌機、精留塔およびメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、リン酸トリメチル0.02重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。次いで、得られた反応生成物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、三酸化二アンチモン0.045重量部を添加して290℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行って、ポリエステル組成物を得た。実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表3に示す。
【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の光学用二軸延伸フィルムは、反射防止フィルム、タッチスクリーン、拡散板の基材用フィルムとして用いることができ、LCD、CRT、PDP、ELといった表示機器の構成部品として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重5.0以上の金属元素を実質的に含有しない芳香族ポリエステルからなり、透過光測定によるカラーb値が−0.5〜2.0、暗視野顕微鏡法により測定されるフィルム中に存在する触媒に起因する粒径1〜10μmの微細粒子が195個/mm以下であることを特徴とする、光学用二軸延伸フィルム。
【請求項2】
整色剤濃度20mg/L、光路長1cmでのクロロホルム溶液の状態で測定される波長380〜780nmでの最大吸収波長が540〜600nm、最大吸収波長での吸光度に対する各波長での吸光度の割合が下記式(1)〜(4)を全て満たす整色剤をフィルム重量あたり0.1〜10ppm含有する、請求項1記載の光学用二軸延伸フィルム。
0.00≦A400/Amax≦0.20 (1)
0.10≦A500/Amax≦0.70 (2)
0.55≦A600/Amax≦1.00 (3)
0.00≦A700/Amax≦0.05 (4)
(式中、A400、A500、A600、A700、はそれぞれ400nm、500nm、600nm、700nmでの可視光吸収スペクトルにおける吸光度、Amaxは最大吸収波長での可視光吸収スペクトルにおける吸光度を表す。)
【請求項3】
ポリエステル中に存在するチタン金属元素が、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して2〜15ミリモル%の範囲にあり、かつチタン金属元素とリン元素のモル比率が下記数式(5)を満たす、請求項1記載の光学用二軸延伸フィルム。
1≦P/Ti≦15 (5)
(式中、Pはポリエステル中に含有されるリン元素の濃度(ミリモル%)を、Tiはポリエステル中に含有されるポリエステルに可溶なチタン金属元素の濃度(ミリモル%)を表す。)
【請求項4】
整色剤として青色系整色剤と紫色系整色剤を重量比90:10〜40:60範囲で併用する、請求項2記載の光学用二軸延伸フィルム。

【公開番号】特開2006−188577(P2006−188577A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−537(P2005−537)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】