説明

光学用保護フィルム

【課題】帯電防止性、汚染物易洗浄性および傷付き防止機能が具備された光学用保護フィルムの提供。
【解決手段】基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層が、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)とイオン性導電剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレーに使用される偏光板などの製造時に使用される光学用保護フィルムに関する。さらに詳しくは、帯電防止性、汚染物易洗浄性および傷付き防止機能が具備された光学用保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な光学用保護フィルムは、表面保護層/耐水層/帯電防止層/基材フィルム/帯電防止層/粘着層/セパレートフィルム層の構成であり、基材フィルムの一方の面(セパレートフィルム層側)は偏光板に貼り合わせる側であり、セパレートフィルム層、粘着層および帯電防止層からなっており、粘着層には糊残りの少ない粘着剤が使用され、帯電防止層は帯電防止機能が付与されている。光学用保護フィルムの他方の面は、帯電防止層、耐水層および表面保護層からなっており、帯電防止層は前記の通りであり、耐水層は帯電防止層を外部環境(湿度)からの影響を最小限にする機能があり、表面保護層には多くの機能が付与されている。
【0003】
液晶ディスプレーなどに使用される偏光板の製造時には、偏光板表面に光学用保護フィルムを貼り合わせて、偏光板の汚れや傷が付かないようにし、使用時には光学用保護フィルムを偏光板から剥離するものである。
【0004】
光学用保護フィルムの粘着層側に帯電防止機能を付与させる理由は、偏光板を製造する過程で発生する静電気によるごみや偏光板から剥離する際に発生する静電気で不良品が生起することがあるので、それを防止するためである。
【0005】
また、光学用保護フィルムの粘着層とは異なる他の面の外側の表面保護層には、帯電防止性、傷付き防止性および汚染物易洗浄性などが付与されている。それぞれを付与する必要性は次の通りである。帯電防止機能については前記の通りであり、傷付き防止機能については、偏光板を製造する過程で発生する傷付きを防止することを目的とし、特に、偏光板と光学用保護フィルムをロールで貼り合わせる時、偏光板としての必要スペックに合わせ裁断し、積層して保管している時、或いは保管中に抜き取りをする時などに傷付きが発生し易いので、これらに対応するためのものである。
【0006】
汚染物易洗浄性については、偏光板と光学用保護フィルムとを貼り合わせる際に保護層に付着する粘着剤、或いは偏光板としての必要スペックに合わせ裁断し、積層して保管している時に付着する粘着剤などが光学用保護フィルムの表面を汚染して外観検査で不良品扱いとなって問題化するので、容易に拭きとれるようにするためである。光学用保護フィルムに付着した粘着剤の除去法としては、例えば、乾拭き或いはアルコールや酢酸エチルなどの有機溶剤をしみ込ませた布などによる拭取りを行う方法などがある。このような拭き取り時に易洗浄性が求められるとともに、拭き取った部分の帯電防止性能が低下してはならない。
【0007】
前記機能を付与した光学用保護フィルムの製造例としては、基材フィルムの一方の面にアクリル粘着剤を、他方の面には、帯電防止処理が施された基材フィルムの上にシリコーンアクリレートを塗布し、光学用保護フィルムの粘着剤のはみ出しによる積み重ね時のフィルムのブロッキング防止と汚染物易洗浄性の機能を付与した例(特許文献1参照)や、表面保護層にポリビニルアルコールやポリエチレンイミンを長鎖アルキル化した共重合体などを塗布し、裁断面からはみ出した粘着剤が光学用保護フィルムの表面に付着するのを防止する機能を付与した例(特許文献2および3参照)が提案されている。
【0008】
光学用保護フィルムの表面保護層には、前記した帯電防止性、傷付き防止および汚染物易洗浄性の他に、印刷適性(工程管理する際に使用するプリンターインキ適性)、フィルム基材との密着性、耐スクラッチ性および適度な滑り性なども求められている。
【特許文献1】特開2001−305346公報
【特許文献2】特開平11−256115号公報
【特許文献3】特開平11−256116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記の提案技術では、前記した全ての機能を満足しているわけではない。そのうえ、従来よりもさらに高性能である光学用保護フィルムの表面保護層形成材料が要望されている。現行の表面保護層の構成システムである3コートシステム(表面保護層/耐水層/帯電防止層/基材フィルム)から2コートシステム(表面保護層/帯電防止層/基材フィルム)へ、さらには製法の簡略化を目的として(帯電防止性表面保護層/基材フィルム)という1コートシステムへの構成システムの変更についても要望されている。
【0010】
従って、本発明の目的は、帯電防止性、傷付き防止性、汚染物易洗浄性(有機溶剤で洗浄することもあるため耐溶剤性も必要となる)、印刷適性(工程管理する際に使用するプリンターインキ適性)、基材フィルムとの密着性、透明性および適度な滑り性などを有する光学用保護フィルムを提供することである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、表面保護層の構成として帯電防止性表面保護層/基材フィルムという1コートシステムが可能な光学用保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の構成の本発明によって達成される。
1.基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層が、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)とイオン性導電剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用保護フィルム。
【0013】
2.分子内に活性水素基を有する樹脂(A)が、水酸基、カルボキシル基、チオール基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1つの基を主鎖および/または側鎖に有する樹脂である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0014】
3.ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)が、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサン化合物と、ポリイソシアネートと、ポリオールまたはポリアミンとを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、その重量平均分子量が5,000〜500,000である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0015】
4.イオン性導電剤(D)が、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機カチオン成分と、BF4-、PF6-、CF3CO2-、(CF3SO22-、CF3SO2-などのフッ素系イオン化合物やCH3CO2-、NO3-などの無機または有機アニオンとからなる塩である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0016】
5.表面保護層の表面抵抗値が、105〜1012Ω/cm2である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0017】
6.表面保護層のヘイズ値が、0〜1.0%以下である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0018】
7.表面保護層の動摩擦係数が、0.15〜0.30である前記1に記載の光学用保護フィルム。
【0019】
8.分子内に活性水素基を有する樹脂(A)と、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とイオン性導電剤(D)とを有機溶剤に溶解または分散してなることを特徴とする表面保護層形成用塗料。
【0020】
9.樹脂(A)が、樹脂(A)と樹脂(B)とイオン性導電剤(D)の合計量(100質量%)のうちの15〜95質量%であり、樹脂(B)が60〜5質量%であり、イオン性導電剤(D)が25〜0.1質量%である前記8に記載の塗料。
【0021】
10.さらに使用前にポリイソシアネートを添加するか、或いは安定化ポリイソシアネートを含有している前記8に記載の塗料。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光学用保護フィルムの表面保護層の構成システムが帯電防止性表面保護層/基材フィルムといった1コートシステムからなり、帯電防止性、傷付き防止性、汚染物易洗浄性、印刷適性、基材フィルムとの密着性、透明性および適度な滑り性などに優れた光学用保護フィルムが得られる。
【0023】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層を、分子内に活性水素基を有する樹脂とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂とポリイソシアネートとイオン性導電剤とを被膜形成成分として形成することで、優れた機能を有する光学用保護フィルムが得られることを見出した。
【0024】
分子内に活性水素基を有する樹脂とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂とポリイソシアネートとで易洗浄性や傷付き防止性の表面特性を引き出し、イオン性導電剤で帯電防止特性を発現しブリードアウトが少なく耐久帯電防止性に優れているものである。通常使用されているイオン伝導性を示す4級カチオンポリマー、リチウムイオンなど、電子伝導性を示す導電ポリマーは酢酸エチルなどの溶剤で汚染除去する際に拭き取ると、その部分の帯電防止性能が低下するものがある。また、電子伝導性を示す導電フィラーは不透明や毒性の問題、ケッチェンブラック(カーボンブラック)などは脱離して汚染する問題があるが、本発明ではこのような問題が解決されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に述べる。
本発明の光学用保護フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなっている。すなわち、光学用保護フィルムの表面保護層側の構成は、帯電防止性表面保護層/基材フィルムといった1コートシステムの構成からなることを特徴としており、従来の3コートシステムの構成(表面保護層/耐水層/帯電防止層/基材フィルム)或いは2コートシステムの構成(表面保護層/帯電防止層/基材フィルム)の製法をより簡略化したものである。すなわち、製造時のコート回数が削減されコストパフォーマンスに優れた表面保護層となっている。
【0026】
次に帯電防止性表面保護層(以下単に「表面保護層」という)について詳しく説明する。表面保護層は分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)とイオン性導電剤(D)とを被膜形成成分として形成されているものであり、これらの材料を溶剤などに溶解・分散させて或いは無溶剤で表面保護層形成用塗料として基材フィルムの上に塗布および乾燥して表面保護層とするのが好ましい。この場合の表面保護層形成用塗料は、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とイオン性導電剤(D)とを含んでおり、該塗料の使用に際してはポリイソシアネート(C)を添加するか、あるいは安定化ポリイソシアネート(C)を用いる場合は、該安定化ポリイソシアネート(C)を予め塗料中に添加しておいてもよい。
【0027】
分子内に活性水素基を有する樹脂(A)としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、セルロース類、キトサンおよびウレタン樹脂などが挙げられる。さらには、これらの中から選ばれた少なくとも1種が好適に使用される。この中で特に好ましいのは、エチレン−ビニルアルコール共重合体、部分けん化ポリビニルアルコールおよびフェノキシ樹脂である。さらに、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ブチラール基変性ポリビニルアルコールなどをフッ素変性シリコーン基または長鎖アルキル基で変性した樹脂も使用できる。
【0028】
分子内に活性水素基を有する樹脂(A)中の活性水素基としては、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NR(R:炭化水素基)H、−NH2など)、チオール基(−SH)およびエポキシ基(グリシジル基)などであり、これらの中では水酸基が好ましく使用される。前記樹脂がその分子内に活性水素基を有している場合は、そのまま前記樹脂(A)として使用できるが、前記樹脂がその分子内に活性水素基を有していない場合は変性などの処理を行って活性水素基を付与して使用することができる。
【0029】
以上列記した活性水素基を有する樹脂は、本発明において使用する好ましい樹脂であるが、本発明はこれらの例示の樹脂に限定されるものではない。従って上述の例示の樹脂のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る樹脂はいずれも本発明において好ましく使用することができる。
【0030】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)について以下に説明する。ポリシロキサン基は、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)中にポリシロキサンセグメントとして含有されているものであり、ポリウレタン樹脂の主鎖中に含有或いは分岐した状態で含有されている。すなわち、原料となるポリシロキサンが両末端反応型であればポリウレタン樹脂の主鎖である幹部分に、片末端或いは分岐反応型であればポリウレタン樹脂の主鎖から分岐した状態で含有されることとなる。
【0031】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)は、次のものが好ましく使用される。分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物と、ポリイソシアネートと、ポリオールまたはポリアミンとを反応させて得られるポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂であり、その好ましい重量平均分子量は5,000〜500,000である。
【0032】
本発明で使用する前記ポリシロキサン基となる原料成分について説明する。
本発明において使用される活性水素基を少なくとも1個有するポリシロキサン化合物としては、例えば、以下のような化合物を用いることが好ましい(この中には活性水素基を利用して変性されたエポキシ変性ポリシロキサン化合物も含んでいるが、イソシアネート基と反応してポリウレタン樹脂中に含有されることとなるので含めている)。
【0033】
(1)アミノ変性ポリシロキサン化合物

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】
(2)エポキシ変性ポリシロキサン化合物

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

上記のエポキシ化合物はポリオール、ポリアミド、ポリカルボン酸などと反応させ末端活性水素を有するようにして使用することができる。
【0045】
(3)アルコール変性ポリシロキサン化合物

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】
(4)メルカプト変性ポリシロキサン化合物

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】
以上列記した活性水素基を有するポリシロキサン化合物は本発明において使用する好ましい化合物であるが、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物はいずれも本発明において好ましく使用することができる。本発明において特に好ましい化合物は2個の水酸基またはアミノ基を有するポリシロキサン化合物である。
【0057】
これらの他にもポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン(ポリエステル)−ポリシロキサン化合物およびエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドで変性したポリエチレンオキサイド−ポリシロキサン化合物やポリプロピレンオキサイド−ポリシロキサン化合物なども好ましく使用される。特に好ましくは分子内に1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン−ポリシロキサン化合物および分子内に1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどでエーテル変性したポリエーテル−ポリシロキサン化合物である。
【0058】
ここで使用する好ましいラクトンは、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクタノリド、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンおよびδ−カプロラクトンなどである。
【0059】
また、オキシアルキレン重合体の分子鎖を得るにはアルキレンオキサイド類、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイドなどが挙げられ、種々の触媒の存在下に開環重合させることによって得られる。
【0060】
また、本発明において前記ポリラクトン−ポリシロキサン化合物、すなわち、分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン−ポリシロキサン化合物は、分子中に1個または2個以上の活性水素基、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などを有するシロキサン化合物を、その活性水素原子団によりラクトンを開環重合させた後、減圧処理することによって得られる。
【0061】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)に使用されるポリオールとしては、好ましくはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジオール、多価アルコール系化合物および高分子ポリオールなどの従来公知のものが、また、ポリアミンとしてはポリウレタンの製造に従来から使用されている短鎖ジアミンなどが使用できるが、これらは特に限定されない。以下に使用するそれぞれの化合物について説明する。
【0062】
前記短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。また、多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
前記高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなど、
【0064】
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなど、
【0065】
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカプロラクトントリオールおよびポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなど、
【0066】
(4)ポリカーボネートジオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなど、
【0067】
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物など、
【0068】
(6)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0069】
これらのポリオールの構造および分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜4,000程度でエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなどのポリエーテル系ポリオールが好ましい。また、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
前記ポリアミンとして好ましいポリアミンは、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン、長鎖ジアミン類およびヒドラジン類などが挙げられる。短鎖ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。長鎖ジアミンとしては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレンジアミン、ポリプロピレンジアミンなどが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールおよびポリアミンとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなどのポリエーテル系のジオール化合物およびジアミン化合物が好ましい。
【0071】
前記ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)の合成に使用するポリイソシアネート化合物としては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネート化合物として好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDIおよび水素添加XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0072】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)において、上記の原料を用いたポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂の製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、少なくとも1個の活性水素基とポリシロキサンセグメントが同一分子内に共存する化合物と、ポリオールおよび/またはポリアミンと、ポリイソシアネートと、必要に応じて低分子ジオールもしくは低分子ジアミンを鎖伸長剤とし、イソシアネート基と活性水素含有官能基との当量比が、通常、1.0となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、イソシアネート基が殆どなくなるまで反応させることでポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0073】
なお、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂については、無溶剤で合成しても、有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましいのは、例えば、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびシクロヘキサノンなどが挙げられる。また、アセトン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテートおよびN−メチル−2−ピロリドンなども使用することができる。
【0074】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂を製造する場合には、それぞれ前記の、同一分子内に少なくとも1個の活性水素基を含有するポリシロキサン化合物を0.01〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、ポリオールおよび/またはポリアミン20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%、鎖伸長剤は40〜1質量%、好ましくは20〜2質量%(これらの成分の合計は100質量%である。)の割合で使用し、ポリイソシアネートの比は、NCO/OH≒1.0で合成される。なお、ポリシロキサン化合物が多いと(30質量%を超えると)光学用保護フィルム同士が滑りすぎて裁断保管時に積上げが不可能であることや未反応ポリシロキサン成分により品質工程管理に使用するインキをはじく現象が起きたりするので好ましくない。一方、ポリシロキサン化合物が少ないと(0.01質量%未満であると)光学用保護フィルム同士の滑り不足、汚染性能の不備、耐溶剤性および外気の湿度制御が不可能となり好ましくない。
【0075】
本発明で使用するポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)の分子量は、重量平均分子量(GPCで測定、標準ポリスチレン換算)で5,000〜500,000の範囲が好ましい。
【0076】
本発明において表面保護層の形成に使用するポリイソシアネート(C)としては、従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネートおよびポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0077】
これらのうち、芳香族系或いは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】

【0084】

【0085】
これらのポリイソシアネート(C)の使用量は、前記の(A)、(B)および(D)合わせて100質量部に対して5〜80質量部、好ましくは5〜60質量部である。80質量部を超えると塗料の可使時間の低下などが起きるので好ましくなく、5質量部未満では表面保護層の架橋密度が低下するので好ましくない。
【0086】
本発明で使用する基材フィルムの粘着層と異なる他の面に設けた表面保護層に使用する好ましいイオン性導電剤(D)について説明する。イオン性導電剤を構成するカチオン成分としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)に代表されるアルキルイミダゾリウムカチオン、アルキルピリジニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオン、アルキルスルホニウムカチオンなどの化合物が使用できる。
【0087】
イオン性導電剤を構成するアニオン成分としては、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオンおよび硝酸アニオンや酢酸アニオンのようなアニオン化合物が挙げられ、これらのアニオン化合物を用いてイオン性導電剤を形成する。本発明で使用するイオン性導電剤は特に限定されるものではなく、公知のいかなるイオン性導電剤でもよいが、通常、複雑な合成による不純物の精製が困難なため、アニオン化合物およびカチオン化合物のいずれもが有機性のものを選定することが望ましい。
【0088】
以下に本発明で帯電防止剤として用いるイオン性導電剤の具体例を示す。
<アルキルイミダゾリウムカチオン系>

【0089】

(式中のR1およびR2は同一または異なる基であり、水素原子または置換基を有してもよい炭素数が1〜10のアルキル基(該基中にO、S、またはNの原子を有してもよい)である。X-はアニオン成分;例えば、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO22-、CF3SO3-、BF4-、PF6-)および硝酸アニオンや酢酸アニオンである。)
【0090】
<脂肪族アルキルアンモニウムカチオン>

(式中のR1、R2、R3およびR4は同一または異なる基であり、水素原子または置換基を有してもよい炭素数が1〜10のアルキル基(該基中にO、S、またはNの原子を有してもよい)である。X-はアニオン成分;例えば、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO22-、CF3SO3-、BF4-、PF6-)および硝酸アニオンや酢酸アニオンである。)
【0091】
<脂環族アルキルアンモニウムカチオン>

(式中のR1およびR2は同一または異なる基であり、水素原子または置換基を有してもよい炭素数が1〜10のアルキル基(該基中にO、S、またはNの原子を有してもよい)である。X-はアニオン成分;例えば、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO22-、CF3SO3-、BF4-、PF6-)および硝酸アニオンや酢酸アニオンである。)
【0092】
<アルキルピリジニウムカチオン>

(式中のR1は同一または異なる基であり、水素原子または置換基を有してもよい炭素数が1〜10のアルキル基(該基中にO、S、またはNの原子を有してもよい)である。X-はアニオン成分;例えば、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO22-、CF3SO3-、BF4-、PF6-)および硝酸アニオンや酢酸アニオンである。)
【0093】
<アルキルスルホニウムカチオン>

(式中のR1、R2およびR3は同一または異なる基であり、水素原子または置換基を有してもよい炭素数が1〜10のアルキル基(該基中にO、S、またはNの原子を有してもよい)である。X-はアニオン成分;例えば、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO22-、CF3SO3-、BF4-、PF6-)および硝酸アニオンや酢酸アニオンである。)
【0094】
<アルキルホスホニウムカチオン>

(式中のR1、R2、R3およびR4は同一または異なる基であり、水素原子または置換基を有してもよい炭素数が1〜10のアルキル基(該基中にO、S、またはNの原子を有してもよい)である。X-はアニオン成分;例えば、AlCl4-アニオン、含フッ素アニオン(例えば、N(CF3SO22-、CF3SO3-、BF4-、PF6-)および硝酸アニオンや酢酸アニオンである。)
【0095】
好ましい有機カチオン成分としては、アルキルイミダゾリウムカチオン、アルキルピリジニウムカチオン、アルキルアンモニウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオンおよびアルキルスルホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0096】
アンモニウムカチオンを具体的に例示すると、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、アンモニウムカチオン、トリメチルアンモニウムカチオン、エチルジメチルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオンおよびテトラメチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0097】
アルキルイミダゾリウムカチオンの具体例としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
【0098】
ホスホニウムカチオンとしては、テトラエチルホスホニウムなどの鎖状ホスホニウムカチオン類および環状ホスホニウムカチオン類などが挙げられる。スルホニウムカチオンとしてはトリエチルスルホニウムなどの鎖状スルホニウムカチオン類および環状スルホニウムカチオン類などが挙げられる。
【0099】
上記のカチオン成分と造塩させるアニオン成分としては、例えば、AlCl4-、NO3-、NO2-、I-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、NbF6-、TaF6-、CH3CO2-、CF3CO2-、CH3SO2-、CF3SO2-、(CF3SO23-、C37CO2-、C49SO3-、(CF3SO22-、(C25SO22-および(C25SO2)(CF3CO)N-などが挙げられるが、代表的にはBF4-、PF6-および(CF3SO22-が好ましく使用される。本発明は、これらのアニオン成分に限定されるものでなく、その他一般に市販されているアミドアニオン化合物、メチドアニオン化合物、ボレートアニオン化合物、ホスフェートアニオン化合物、スルホネートアニオン化合物およびカルボキシレートアニオン化合物なども使用できる。
【0100】
前記樹脂(A)、前記樹脂(B)および前記イオン性導電剤(D)の使用量は、(A)、(B)および(D)の合計量(100質量%)のうち、(A)が15〜95質量%、(B)が60〜5質量%および(D)が25〜0.1質量%である。(A)の使用量が95質量%を超えると塗料の可使時間および表面保護層の基材フィルムへの密着性が低下するので好ましくなく、一方、(A)の使用量が15質量%未満では表面保護層の架橋密度および耐溶剤性が低下するので好ましくない。(B)の使用量が60質量%を超えると光学用保護フィルム同士が滑り過ぎたり、インキ適性不良や耐溶剤性の低下を招くので好ましくなく、5質量%未満では光学用保護フィルム同士の滑り性低下や環境湿度の影響を受け易くなるので好ましくない。一方、(D)の使用量が25質量%を超えると表面保護層の耐溶剤性やスクラッチ性が低下したり、用いる塗料が不安定になるので好ましくなく、0.1質量%未満では帯電性能が低下するので好ましくない。
【0101】
なお、本発明の表面保護層を形成する場合には、前記の分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とイオン性導電剤(D)とを含有している表面保護層形成用塗料を使用する。この塗料の使用に際してはその使用前に前記のポリイソシアネートを添加するか、或いは安定化ポリイソシアネートを予め添加しておくことが好ましい。該塗料は、無溶剤で調製したものでもよいし、有機溶剤を用いて調製したものでもよい。有機溶剤として好ましいのは、例えば、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどが挙げられる。また、アセトン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブおよびセロソルブアセテートなどが挙げられる。有機溶剤を用いて調製した塗料の固形分は、特に限定されないが、3〜95質量%程度が好ましい。
【0102】
表面保護層形成用塗料には、必要に応じて、さらに硬化触媒、反応抑制剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。硬化触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラ−n−ブチルチタネートおよびビスマスなどの金属と有機または無機酸の塩および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミンおよびジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。反応抑制剤としては、例えば、燐酸、酢酸、酒石酸、フタル酸およびギ酸エステルなどが挙げられる。
【0103】
さらに滑り性付与や耐水化を目的として、例えば、シリコーンオイルおよび/または変性シリコーンオイル(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンおよびアラルキル変性ポリジメチルシロキサンなど)、各種ワックス、アクリル系ポリマー、長鎖アルキル変性ポリマー、フッ素変性ポリマーおよびシロキサン変性ポリマーなどの添加剤を加えることができる。
【0104】
さらに他の帯電防止剤を併用できる。他の帯電防止剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アルカリ金属塩含有ポリエーテル、アルカリ金属塩含有シロキサン変性ポリエーテル、アルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン、ポリアミン、4級カチオン塩含有アクリル系樹脂、特殊変性ポリエステル、特殊カチオン系樹脂、セルロース誘導体、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびスルホン化ポリアニリンなどの有機導電性材料、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、酸化スズ、酸化亜鉛および酸化チタンなどの金属酸化物および各種金属アルコキシドおよびITO粉末などの導電性フィラー含有高分子などの添加剤を加えることができる。
【0105】
前記化合物のうち、アルカリ金属塩含有ポリエーテル、アルカリ金属塩含有シロキサン変性ポリエーテルおよびアルカリ金属塩含有エーテル系ポリウレタン中のアルカリ金属塩としては、例えば、過塩素酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム、リチウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウムおよびカリウムビストリフルオロメタンスルホンイミドなどを挙げることができる。
【0106】
本発明で用いる基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを成分とするフィルムが挙げられる。特に好ましいのは、二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムであり、光学用保護フィルムに適合した適正かつ必要な強度を有している。基材フィルムの膜厚は、好ましくは20〜100μmであり、より好ましくは、25〜40μmである。これらの基材フィルムは、必要に応じて、コロナ処理、帯電防止処理、易接着処理などを施してもよい。
【0107】
本発明の光学用保護フィルムは、前記の表面保護層形成用塗料を用い、従来公知の方法で製造することができ、製造方法自体は特に限定されない。また、基材フィルム、粘着層形成材料などの表面保護層形成用材料以外の材料は、いずれも公知の材料が使用でき、特に限定されない。本発明の光学用保護フィルムの表面保護層の形成に際しては、本発明の表面保護層形成用塗料を、従来公知の方法によって、基材フィルムの表面(裏面は粘着層)に、乾燥厚さが0.01〜1μm程度となるよう塗布して被膜を形成させる。
【0108】
このようにして得られた表面保護層は、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)中のポリシロキサン基との表面エネルギーの相違により、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)の活性水素基は親水性のため基材フィルム表面に配向して表面保護層の基材フィルムに対する密着性を向上させる。一方、表面エネルギーの低いポリシロキサン基を含有する成分は基材フィルムの反対側(空気側)に配向することで、汚染防止性および適度な滑り性が付与される。
【0109】
表面保護層を形成する前記ポリイソシアネート(C)は、表面保護層形成用材料内の成分を架橋するので、表面保護層の汚染除去に耐え得る耐溶剤性および耐スクラッチ性(表面硬度アップ)をさらに向上させることができる。帯電防止機能については、表面保護層形成用塗料中にイオン性導電剤(D)を含有させることでその機能は保たれている。
【実施例】
【0110】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
[合成例1〜3]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を具備した反応器に、窒素ガスで置換した後、表1に記載したラクトン化合物およびシロキサン化合物を所定の濃度まで投入し窒素気流下、100℃にて均一になるまで攪拌した。続いて所定のテトラ−n−ブチルチタネートを投入し、窒素気流下180℃の温度下で10時間反応させた。反応の進行とともに反応物の粘度が上昇してくる。その後、180℃で5mmHgの減圧下で1時間反応を続け、反応を完了させるとともに、原料のシロキサン化合物に含まれていた非反応性シロキサン化合物および未反応物を完全に除去した。得られたポリカプロラクトン変性ポリシロキサン化合物の組成および性状を表1に示す。
【0111】

【0112】
表1中のシロキサン化合物(a)は下記の構造を有する。

【0113】

【0114】

【0115】
[合成例4〜7]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、前記合成例で得られた水酸基を有するポリカプロラクトン変性ポリシロキサン化合物、ポリオール化合物、鎖伸長剤化合物および溶剤を所定量加え、均一に溶解させ、溶液濃度を30%に調節した。続いてジイソシアネート化合物を所定量(活性水素基1モルに対して等モル)加えて80℃で反応を行い、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が認められなくなるまで反応を行った。得られたシロキサン含有ポリウレタン樹脂の原料組成、性状および物性を表2に示す。
【0116】

【0117】

・PEG:ポリエチレンオキサイドジオール(東邦化学工業社製、商品名PEG−2000、平均分子量2,000)
・1,3−BD:1,3−ブタンジオール
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
・MEK:メチルエチルケトン
【0118】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
本発明および比較例の表面保護層形成用塗料(固形分5%)を表3および表4の組成により作製した。
【0119】

【0120】

【0121】
・EVOH;エチレンビニルアルコール、商品名:F104(エチレン共重合比率=32mol%、メルトインデックス=4.5g/min.;190℃、2,160g、(株)クラレ製)
・PVA;部分けん化ポリビニルアルコール、商品名:PVA−217(けん化度=87〜89、重合度=1,700、(株)クラレ製)
・YP−50S;フェノキシ樹脂、商品名:フェノトートYP−50S、(重量平均分子量=40,000、東都化成工業(株)製)
・BL−S;ブチラール基・アセチル基含有ポリビニルアルコール共重合体、商品名:BL−S(水酸基=22mol%、アセチル基=3〜5mol%、ブチラール化度=70mol%以下、積水化学工業(株)製)
・PHDI;HDIのビウレット型、商品名:デュラネート24A−100(旭化成ケミカルズ(株)製)
・イオン性導電剤;IL(カチオン成分;N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メタオキシエチレン)アンモニウム、アニオン成分;(CF3SO22-
・L;過塩素酸リチウム
・アノン:シクロヘキサノン
【0122】
本発明の光学用保護フィルムの製造に使用する前記塗料は、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とイオン性導電剤(D)を有機溶剤に溶解または分散した後、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)と混合して作製した。各成分の溶解または分散方法としては、公知のいずれの方法を使用してもよく、特に限定されない。
【0123】
各実施例および比較例で得られた各塗料を用い、グラビア印刷により、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製)の表面に、乾燥後の厚みが0.5μmになるように塗布した後、乾燥機中で表中に記載の条件で溶剤を乾燥させた。実施例1〜4および比較例1、2、4の塗料を用いた場合は塗布および乾燥後、40℃のオーブンにて48時間熟成させて表面保護層を形成させた。比較例3はPHDIを使用していないので熟成を行わずに溶剤を乾燥した。これらの光学用保護フィルムについて下記の試験を行なった。
【0124】
次に、下記の配合処方で粘着剤組成物を作製した。上記の表面保護層を形成した各PETフィルムの裏面にグラビアロールにより乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布して粘着層を形成し、実施例および比較例の光学用保護フィルムを得た。
【0125】
〔粘着剤組成物〕
・SKセイカダイン1491H(綜研化学(株)製) 100部
・硬化剤L−45(綜研化学(株)製) 0.9部
【0126】
[試験例]
上記で得られた実施例および比較例の表面保護層の塗膜および光学用保護フィルムの性能を以下の項目について試験し、表5の結果を得た。
<表面抵抗値>
三菱化学(株)製のMCP−HT450を使用して光学用保護フィルムの帯電防止性の測定を行う。測定条件は、温度:23℃、湿度65%RH、印加電圧100V、30秒で行った(オリジナルフィルムと酢酸エチルラビング試験(5kg/cm2、5回)後)。帯電防止効果を発揮するには、表面抵抗値が1×1010Ω/cm2以下が望ましい。
【0127】
<透明性>
スガ試験機(株)製直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを使用し、光学用保護フィルムのヘイズ値を測定した。
ヘイズ値=測定値−基材のヘイズ値
ヘイズ値は1.0%未満であれば透過性が高く、光学用保護フィルムに適する。
【0128】
<耐酢酸エチル性>
光学用保護フィルム表面に1gの酢酸エチルを垂らし、荷重50g/cm2でラビングした際の表面保護層の塗膜の外観を観察した。
○:表面保護層の塗膜外観の変化がない
△:表面保護層の塗膜外観がやや変化している
×:表面保護層の塗膜外観が変化している
【0129】
<汚染易洗浄性>
1gの粘着剤組成物(SKセイカダイン1491H(綜研化学(株)製)/硬化剤L−45(綜研化学(株)製)=100/0.9)を表面保護層の塗膜に擦り付け、キムワイプ(登録商標)(乾拭きまたは酢酸エチルを用いて)にて拭取り時の易洗浄性を確認した。
○:粘着剤付着物が容易に洗浄できる(乾拭き)
△:粘着剤付着物が洗浄できる(酢酸エチル使用)
×:粘着剤付着物が洗浄できない
【0130】
<耐傷付き性>
光学用保護フィルムの表面保護層の塗膜を約10g/cm2の荷重にてスコッチブライト(住友スリーエム(株)製)で擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○:確認できる傷が0本以上5本未満
△:確認できる傷が5本以上10本未満
×:確認できる傷が10本以上
【0131】
<密着性>
光学用保護フィルムの表面保護層の塗膜と基材PETフィルムとの接着性を碁盤目試験(セロハンテープ剥離クロスカット法)にて行った。
【0132】
<滑り性>
新東科学(株)製のHEIDON−14DRを使用して光学用保護フィルムの動摩擦係数の測定を行う。測定条件は、温度:23℃、湿度:65%RH、測定数5回の平均値で行った。動摩擦係数は、0.18〜0.28の範囲が望ましい。
【0133】
<印刷適性>
寺西化学工業(株)製マジックインキNo.500を使用して表面保護層の塗膜面に記載し、インキの筆記状況を観察した。
○:マジックインキの筆記状況が良好である
△:ややインキのハジキがあるが問題ないレベルである
×:インキがはじき筆記できない
【0134】

【0135】

【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本発明によれば、帯電防止性、傷付き防止(スクラッチ性)および汚染物易洗浄性(有機溶剤で洗浄するため耐溶剤性が必要となる)の他、印刷適性(工程管理する際に使用するプリンターインキの適性)、基材との密着性、透明性および適度な滑り性などを有する光学用保護フィルムが得られる。表面保護機能と帯電防止機能が備わった1コートシステムが可能な光学用保護フィルムが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けた粘着層と、該基材フィルムの他の面に設けた帯電防止性表面保護層とからなる光学用保護フィルムにおいて、上記表面保護層が、分子内に活性水素基を有する樹脂(A)とポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とポリイソシアネート(C)とイオン性導電剤(D)とを被膜形成成分として形成されていることを特徴とする光学用保護フィルム。
【請求項2】
分子内に活性水素基を有する樹脂(A)が、水酸基、カルボキシル基、チオール基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1つの基を主鎖および/または側鎖に有する樹脂である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項3】
ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)が、分子内に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサン化合物と、ポリイソシアネートと、ポリオールまたはポリアミンとを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、その重量平均分子量が5,000〜500,000である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項4】
イオン性導電剤(D)が、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機カチオン成分と、BF4-、PF6-、CF3CO2-、(CF3SO22-、CF3SO2-などのフッ素系イオン化合物やCH3CO2-、NO3-などの無機または有機アニオンとからなる塩である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項5】
表面保護層の表面抵抗値が、105〜1012Ω/cm2である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項6】
表面保護層のヘイズ値が、0〜1.0%以下である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項7】
表面保護層の動摩擦係数が、0.15〜0.30である請求項1に記載の光学用保護フィルム。
【請求項8】
分子内に活性水素基を有する樹脂(A)と、ポリシロキサン基を含有するポリウレタン樹脂(B)とイオン性導電剤(D)とを有機溶剤に溶解または分散してなることを特徴とする表面保護層形成用塗料。
【請求項9】
樹脂(A)が、樹脂(A)と樹脂(B)とイオン性導電剤(D)の合計量(100質量%)のうちの15〜95質量%であり、樹脂(B)が60〜5質量%であり、イオン性導電剤(D)が25〜0.1質量%である請求項8に記載の塗料。
【請求項10】
さらに使用前にポリイソシアネートを添加するか、或いは安定化ポリイソシアネートを含有している請求項8に記載の塗料。

【公開番号】特開2007−17640(P2007−17640A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198131(P2005−198131)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】