説明

光学用成形型物の成形方法

【課題】光学的用途に要求される光学歪のレベルや凹凸形状の寸法精度・転写率など、達成困難な透明性熱可塑性樹脂の成形型物を射出成形により製造する方法を提供する。
【解決手段】金型キャビティ内に透明熱可塑性樹脂を射出して成形を行う光学用成形型物の成形方法において、 透明熱可塑性樹脂を、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射出することを特徴とする光学用成形型物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性熱可塑性樹脂の成形型物を射出成形により製造する方法に関するものである。さらに詳しくは、光学歪が極めて少なく、光ディスクや導光板のように、金型表面の繊細なシボ模様を忠実に転写することが可能な成形型物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用ディスクやMOディスクなどの光学用記録媒体は、通常透明な熱可塑性樹脂からなる透過層と該透過層表面に設けられた有機色素などから記録層、アルミニウム等の金属から構成される反射層、保護層などから構成される。
【0003】
ところで、近年、記録媒体の大容量化に伴い、そのピット形状は繊細化され、されており、光ディスク用の基板には、繊細ピットを忠実に転写されることが望まれている。レーザー光で読み取る際に、ディスクノイズの少ないものが望まれており、このために、成形時に極めて光学歪の少ない成形法の出現が望まれていた。
【0004】
また、導光板とは、液晶ディスプレイ(以下LCDと略す)内で、光を液晶に導くバックラ
イトユニットの中に組み込まれる導光体であり、電卓や腕時計、ノートパソコンやLCDテ
レビに使用されている。導光板には表面にV溝が設けられているが、輝度ムラを少なくす
るとともに、高輝度および面輝度を均一にするため、射出成形時の導光板へのV溝の転写
性の向上が望まれていた。さらに、光学歪による複屈折も表示ムラの問題となることがあった。
【0005】
従来、光ディスクや導光板などの光学用途で複屈折などの光学特性と表面の微細な凹凸形状の転写性の両方が求められる成形品の製造方法は、射出成形樹脂温度や金型温度をかなり高くすることで転写性を向上させ光学歪を低減する方法や、射出圧縮成形法を用い転写性を向上させる方法が取られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来の方法では、光学用途に要求される光学歪のレベルや凹凸形状の寸法精度・転写率などが達成困難な領域になってきており、その問題点を解決する技術の出現が望まれている。
【0007】
射出成形法における金型の転写とは溶融樹脂流動過程において、溶融先端の樹脂が金型表面に接したときの樹脂と金型の温度、圧力、その時点での樹脂粘度などにより決まる。一般の射出成形法では、ほとんどの場合金型に接した一瞬で転写の良否が決まるといって良い。
【0008】
このため、従来は、転写性を向上させるためには金型温度や樹脂の温度を高めに設定することでその要求を満たしてきた。特に転写性や光学歪低減には金型温度の影響が大きい。
【0009】
しかしながら、一般の射出成形法においては金型温度の設定の上限は成形される樹脂の熱変形温度によって制限され、一般的にはその樹脂の熱変形温度より15℃以上低い温度に設定しないと成形品に突出しピン痕や変形などの不具合が起きやすく、また成形サイクルも長くなり生産性の低下にもつながりかねない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、すなわち、成形樹脂の射出に先立ち、金型表面温度を当該樹脂の熱変形温度またはガラス転移温度以上に高めた上で射出し、射出完了後当該金型を急冷するという、特定の加熱冷却サイクルを採用することで、生産性の低下を最小限にできるとともに、転写性に優れ、光学歪の少ない成形品を効率よく生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)すなわち、本発明に係る光学用成形型物の製造方法は、
金型キャビティ内に透明熱可塑性樹脂を射出して成形を行う光学用成形型物の成形方法において、
透明熱可塑性樹脂を、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射
出することを特徴とする。
(2)光学用成形型物が光ディスク基板であり、
金型表面に、幅が1μm以下であり、深さが40nm以上である溝、ランドおよびピットを設けるためのシボ模様が設けられ、
該シボ模様が光ディスク基板に精密転写される。
(3)光学用成形型物が導光板であり、
金型表面に、ピッチ幅が50μm以下のV溝を設けるためのシボ模様が設けられ、
該シボ模様が導光板に精密転写される。
(4)金型表面にスタンパーが設置され、該スタンパーにシボ模様が設けられている。
(5)前記方法で製造された光学用成形型物。
【0011】
このような高いレベルの外観を有する熱可塑性樹脂成形品の製造方法として、
上記成形法はすでに、本出願人により、たとえば、特開平9-314628号公報、特開平10-100156号公報、特開平10-100216号公報、および特開2001-150506号公報にて、ウエルドの
解消や外観光沢の向上をするための成形法として使われている。本発明者は、この成形法に着目し、転写性の高くかつ光学歪の少ない成形品、たとえば高密度記録光ディスクや導光板などの用途に採用すれば、従来の製造方法では転写させることが困難であった、今よりさらに細かい凹凸の形状を転写可能にし、さらにそれらの用途に要求される光学歪も低く抑えることが可能になることを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学歪が極めて少なく、金型表面の微細な模様を忠実に転写された成形型物の製造することができる。得られた成形型物の光学歪は従来品と比べてもかなり低く、さらにその低歪の影響で耐薬品性も向上している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る光学用成形型物の製造方法は、
金型キャビティ内に透明熱可塑性樹脂を射出して成形を行う光学用成形型物の成形方法において、
透明熱可塑性樹脂を、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射
出する。
【0014】
熱可塑性樹脂
本発明の成形方法で使用される熱可塑性樹脂としては、透明性が高く、光学用途として、周知のものを特に制限なく使用することが可能である。
【0015】
具体的には、ポリカーボネート、特開平8−183842号公報に提案されたコポリカーボネート、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイポリマー、ポリカーボネート−ポリスチレンのアロイポリマー、ポリカーボネート−ポリエステルのアロイポリマー、ポリカーボネート−ポリアミドのアロイポリマー、ポリスチレン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂およびそのポリスチレンとの混合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィンのようなポリオレフィン、各種の液晶ポリマー、ポリアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。さらに、特開2001−11122号公報に開示された、置換または無置換の有橋環式炭化水素基を介してカルボキシエステル基が結合した、ポリ(メタ)メタクレート樹脂、特開2004−51928号公報に開示された不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、(ii)グルタル酸無水物単位を有する共重合体など、さらには、特開平7−3094号公報に開示された芳香族ポリエステル部とスチレン系重合物部を有する樹脂、特開2003−176401号公報に記載された脂環族ポリエステル(ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート)なども使用することが可能である。
【0016】
このうち、本発明の方法は、特にポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどの樹脂に好適である。
また、透明性樹脂には、透明性を損なわない範囲で有効量の添加剤を配合しても良い。添加剤としては、具体的に、使用目的に応じて一般的に添加される添加剤を広く挙げることができ、リン系安定剤、難燃剤、耐熱安定剤、エポキシ化合物、紫外線吸収剤、衝撃改質剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、滑剤等防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤などを挙げられる。
【0017】
また、ポリスチレン樹脂やポリカーボネート樹脂などの樹脂材料は、材料自身が異方性を有しているために、屈折率の波長依存性(分散)や複屈折性が大きく、たとえば光ディスクなどの情報記録媒体に該材料を用いた場合、レーザ光による読み取りエラーが多くなるという問題がある。しかしながら、本発明の製造方法によれば、このような波長依存性や複屈折が解消されるので、優れた光学特性を有する成形型物を得ることができる。
【0018】
成形方法
本発明では、上記透明樹脂を、金型キャビティ内に透明熱可塑性樹脂を射出して成形を行う光学用成形型物の成形方法において、製品形状を形成する金型の金型温度を1サイクル内で、本発明にかかる製造方法では、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100低くなるように設定されている(ただしTh>Tc)。
【0019】
このようなヒート・クールサイクルとなるように金型温度を調整すると、出来上がった成形品の表面にスワールマークと呼ばれるシリンダー模様を生じることもなく、また金型表面に転写性も高く、金型表面の凹凸が忠実に、成形型物表面に転写されるとともに、表面性状が高品質であり、金型から離型することも容易である。
【0020】
金型としては後述するように、表面に微細なシボ模様が設けられている。このシボ模様は、金型表面に直接に設けられていても、あるいはこのシボ模様が設けられたスタンパーが金型表面に設置されていてもよい。またシボ模様は、金型全面に設けられていても、あるいは一部に設けられていても良い。
【0021】
通常、製品に合わせて金型を交換するよりも、スタンパーを交換する方が、金型交換の手間がなく、仮に製造にスタンパーが破損しても、別のものと交換すればよいだけなので、スタンパーを設けることが一般的である。
【0022】
加熱時には使用する金型の温度を熱変形温度よりも0〜100℃、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは20〜70℃高く設定し、冷却時には、熱変形温度より0〜100℃、好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは30〜60℃低くなるように設定されている(ただしTh>Tc)。
【0023】
加熱時の温度設定は、冷水、冷却油を止めて、熱水、加熱蒸気、加熱油を通液するか、あるいは金型内に埋設された電気加熱体に通電して熱を発生させるか、これらを併用することで可能になる。
【0024】
また、冷却時には、熱水、加熱蒸気、加熱油あるいは電熱ヒーターの通電を止め、冷水、冷却油を同一の金型温調用管路あるいは別々の金型温調用管路に回すことで可能になる。
【0025】
この際、昇温に使用する熱水、加熱蒸気、加熱油の温度は高い程、降温に使用する冷水、冷却油の温度は低い程、また、その流量は多いほど成形サイクルの短縮が可能になる。電熱ヒーターについては、電力密度が高い程良い。
【0026】
かかる金型温度は射出開始から完了までの少なくとも一部の期間保持され、冷却する間前記温度となるように設定される。
金型温調用管路について、金型強度上問題の無い範囲で数多く設ける程、効率は良くなりサイクルの短縮ができる。
【0027】
された熱可塑性樹脂を金型内部に射出する際に5〜100°C/分、好ましくは10〜
95°C/分、より好ましくは15〜90°C/分の温度勾配で急加熱および/または急冷させてもよく、このようにすれば成形サイクルタイムを短縮することができ。
【0028】
また、加熱媒体/冷熱媒体を金型内管路に循環せしめる方法により急速な加熱および/または冷却を行うためには、加熱/冷却管内を循環する媒体の流量を、毎分3リットル以上、好ましくは毎分5リットル以上、より好ましくは毎分7リットル以上とすることが望ましい。さらに、金型内に埋設されている電気加熱体を併用することにより、より迅速な加熱が可能となる。これは、加熱・冷熱媒体のバルブ切り替え等に基づく時間遅れを、加熱タイミングが独立して制御可能な電気加熱体によって補償することができるためである。
【0029】
また、本発明にかかる方法は通常の射出成形に限られず、射出圧縮成形に適用することも可能である。すなわち、金型内部に溶融樹脂を射出完了しまたは射出しながら該金型を高い圧力で閉じ、樹脂を圧縮流動させる成形法にも適用することができる。
【0030】
本発明によれば、溶融樹脂の射出時に金型温度を熱変形温度よりも高くすることにより、溶融樹脂は急激に冷却されること無く十分な溶融状態のまま充填させ、圧縮あるいは、プレスすることができる。また樹脂の流動性も良くなるので、圧縮あるいはプレス力を低くすることもできる。
【0031】
このように十分な溶融状態のまま充填することにより、ジェッティングやウエルドラインの発生を抑制することができ、また、溶融状態のまま圧縮あるいは、プレスすることでヘジテイションマークを解消することができる。
【0032】
なお、金型の表面温度が所定温度に達したか否かは、金型内に埋め込まれた温度センサーもしくはあらかじめ設定されたタイマーによって感知される。
さらに、キャビティ内に充填された樹脂は、その後の工程によって取出しが可能となる温度まで冷却され、軽量かつ高外観を有した成形品が得られる。なお、この工程に移る時間はあらかじめ設定されたタイマーによって制御される。
【0033】
さらに、このような成形方法によれば、金型の転写率も飛躍的に良くなり、従来困難であった微細なビットやグルーブ、V溝も転写が可能となる。このため、金型の転写率も飛
躍的に良くなり、金型表面の微細なシボ模様も忠実に転写されるので、不良率が低下して、光ディスク成形品などでは製品歩留まりが向上するので、生産性を向上させることができる。
【0034】
金型温度制御を効率良く行うために、金型の外型を形成する主型と、製品形状を形成する金型キャビティとを入れ駒方式にしてもよい。また入れ駒と、入れ駒を入れる主型との間に断熱層を設けてもよく、断熱層を設けることで、金型内での成形型物の冷却・加熱をスムーズに行うことができるとともに、熱効率を高めることができる。断熱層としては、公知のものを特に制限なく設けることが可能である。好適には、熱伝導率30W/m・K以下の金属材料と断熱板の二重構造からなる断熱層を設置し、なおかつ主型と断熱層の接触面、入れ駒と断熱板の接触面に金型強度上問題のない範囲で空隙を設けることが望ましい。
【0035】
この際、入れ駒を形成する金属は熱伝導率60W/m・K以上の材料、例えば亜鉛、Be-Cu(ベリリウム−銅)、アルミニウム及びこれらを主成分とする合金、プリハードン鋼で
作成することが望ましい。また、金型温調管路は入れ駒部に直接設け入れ駒部のみ温度制御を行えばよい。
【0036】
図1は本発明にかかる成形品の成形法を実施するに適する金型温度制御系の概略構成を示すブロック図である。
この金型温度制御系は、熱水用温調機1と冷却水用チラー2を配設し、切替えユニット3に接続してある。切替え制御ユニット3には、金型4に冷水、温水を供給するための出口5と回収するための戻り口6がある。所望の金型温度を達成するために、装置内の各切替えバルブVIN,VRが適宣状態となるように切替え制御ユニット3の制御を行う。
【0037】
金型
図2は、金型の断面図である。この金型は、固定側7と可動側8との合せ面にキャビティ9が形成されている。
【0038】
金型には、前記したようにスタンパー10として、微細な模様が設けられている。かかる模様(溝)がCDやDVDなどの音声、画像の記録信号や導光板のピッチとなる。これらの本
発明では、この微細な模様が忠実に光学用成形型物に転写される。本発明によれば従来困難であった、nm単位の細い溝を精密に転写することができる。なお、スタンパー9は、可動型、固定型のいずれに取り付けても良い。
【0039】
光ディスクは、記録層の有無及びその種類により、
(1)再生専用タイプ(CD、LD、CD-ROM、photo-CD、DVD-ROM、再生専用型MD等)
(2)一度だけ記録可能なライトワンスタイプ(Write-once type:CD-R、DVD-R、DVD-WOなど)
(3)記録した後、消去することができ、何度でも書き替え可能な(re-writable)タイ
プ(光磁気ディスクmagneto-optical disk、相変化(phase-change)型ディスク、MD、CD-E、DVD-RAM、DVD-RWなど)に分類され、
これらに応じて微細な模様が、金型またはスタンパーに設けられている。
【0040】
光ディスク基板の場合、基板表面に細かな凹凸が設けられ、凹凸の種類には、情報単位を表すピット(pit)や記録ヘッド(ピックアップ)のトラッキングのためのガイド溝(guide groove)がある。ピットや溝は、円形の基板上に同心円状または渦巻き状に設けら
れる。成形基板を半径方向に見たとき、溝と溝との間はランド(land)と呼ばれる。
【0041】
溝、ランドおよびピットの幅は、密度記録の向上に伴い、例えば、1μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下と段々狭くなってきている。
【0042】
溝、ランドおよびピットの深さも、高密度記録化に伴い、例えば、40nm以上、50nm以上、80nm以上、100nm以上、120nm以上、130nm以上、150nm以上、180nm以上、200nm以上、220nm以上、250nm以上と段々深くなってきている。
【0043】
本発明によれば、金型またはスタンパー表面に、幅が1μm以下であり、深さが40nm以上である溝、ランドおよびピットを形成しうるシボ模様が形成されており、かかるシボ模様が光ディスク基板に精密に転写されて、溝、ランドおよびピットが形成される。
【0044】
また、導光板の場合、ミクロンオーダーのピッチで、V溝を形成しうるシボ模様が均一
に金型またはスタンパーに形成されている。本発明によれば、従来の成形方法では困難であった、ピッチ幅が50μm以下の均一なV溝を設けることも可能となる。また、このと
きにピッチ深さは、ピッチ間隔およびV字溝の溝部または頂部の角度によって適宜選択さ
れるが、本発明によれば、25μm以下の深さで均一なV字溝を設けることも可能である

【0045】
固定側7にはキャビティ9内に溶融樹脂を充填させるためのスプルー11が設けられている。
本発明によれば、光ディスク基板、または、導光板に好適な光学用成形型物が得られる。
【0046】
このような本発明の方法によれば、微細凹凸を忠実に転写することが可能であるとともに、ヒケ、ソリを生じることもなくさらに、成形品内部応力歪みも小さい。さらに、特定のヒート・クールサイクルを使用しているので成形品外部と内部の冷却固化速度の差により生じる光学歪も少なく抑ええることが可能となる。
【0047】
このような成形方法は、CD、CD-R、CD-RW、DVD、DVD-Rなどの各種光ディスク、高画質
液晶表示テレビなどの導光板の成形に極めて有用である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例では、ポリカーボネートLEXANE LS2(日本ジーイープラスチックス製)を用いた。
【0049】
実施例
成形は、ポリカーボネートを、金型キャビティ内に、射出して成形を行った。製品形状を形成する金型の金型温度を1サイクル内で、加熱時の金型温度(Th)を140℃、冷却時の金型温度(Tc)が70℃と設定した。
【0050】
比較例
実施例の効果を確認するため、同じ金型を使用して通常のガスアシスト成形時に用いら
れる金型温度にて成形を行い、比較を行った。
【0051】
成形時には、金型として以下のものを使用し、以下の評価を行った。
1.転写性の比較
金型として平均表面粗さRa5μmのシボを持つものを使用した。得られた成形品の表面粗さを表面粗度計で評価するとともに、外部にかざして目視で転写性を対比した。
【0052】
表面粗さのチャートおよび外部にかざしたときの写真を図1に示す。図3(a)が実施例
、図3(b)が比較例を示す。
図3より、実施例の成形型物は表面にミクロな凹凸が形成されていることが明らかであった。これに対して比較例1は充分にシボ模様が転写されず、見かけ上は表面がツルツルした成形型物が得られ、すなわちミクロな凹凸は転写されていなかった。
【0053】
2.光学歪の比較
金型として上記と同じものを使用した。得られた成形品の光学歪を、成形型物上部に偏光板を載せ、蛍光灯の光を照射して、観察評価した。
【0054】
また、成形品について四塩化炭素に浸漬し、耐薬品性をクラックの発生から観察した。(なお、比較例では、成形温度を60℃および90℃として、2水準で評価した。
光学歪の発生状況を図4に示す。
【0055】
図4より、実施例のものは光学歪が小さく、これに対し、比較例では光学歪が大きいことが判明した。
また、耐薬品性の評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、実施例のものは耐薬品性に優れていることが判明した。これに対して、従来の製造方法の比較例では、いずれもクラックが発生しており、耐薬品性が低い。
すなわち、両者の比較からも明らかなように、本発明による成形品の光学歪は従来品と比べてもかなり低く、さらにその低歪の影響で耐薬品性も向上していることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明にかかる成形法を実施するに適した金型温度制御系の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明で使用される金型の概略構成図を示す。
【図3】図3は、実施例および比較例の表面粗さの違いを示すチャートおよび写真を示す。
【図4】図4は、実施例および比較例の光学歪の相違を示す写真を示す。
【符号の説明】
【0059】
1・・・熱水温調機
2・・・冷水用チラー
3・・・切り替えユニット
4・・・金型
5・・・金型への熱冷水供給口
6・・・金型からの熱冷水戻り口
7・・・固定金型
8・・・可動金型
9・・・キャビティ
10・・・スタンパー
11・・・スプルー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティ内に透明熱可塑性樹脂を射出して成形を行う光学用成形型物の成形方法において、
透明熱可塑性樹脂を、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射
出することを特徴とする光学用成形型物の製造方法。
【請求項2】
光学用成形型物が光ディスク基板であり、
金型表面に、幅が1μm以下であり、深さが40nm以上である溝、ランドおよびピットを設けるためのシボ模様が設けられ、
該シボ模様が光ディスク基板に精密転写されることを特徴とする請求項1に記載の光学用成形型物の製造方法。
【請求項3】
光学用成形型物が導光板であり、
金型表面に、ピッチ幅が50μm以下のV溝を設けるためのシボ模様が設けられ、
該シボ模様が導光板に精密転写されることを特徴とする請求項1に記載の光学用成形型物の製造方法。
【請求項4】
金型表面に、スタンパーが設置され、該スタンパーにシボ模様が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用成形型物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法で製造された光学用成形型物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−35601(P2006−35601A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217815(P2004−217815)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(390000103)日本ジーイープラスチックス株式会社 (36)
【Fターム(参考)】