説明

光学的立体造形用樹脂組成物

【課題】光硬化感度が高く、低粘度で造形時の取扱性に優れ、解像度が高く、硬化時の体積収縮率が小さく、しかも熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、機械的強度が高く且つ靭性に優れ、さらには透明性および色相にも優れる立体造形物を与える光学的立体造形用樹脂組成物の提供。
【解決手段】カチオン重合性有機化合物、ラジカル重合性有機化合物、カチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤を含有し、カチオン重合性有機化合物として、下記の式で表されるトリエポキシ化合物を、5〜50質量%含有する光学的立体造形用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱変形温度を有していて耐熱性に優れ、しかも引張強度および曲げ強度が大きくて機械的強度に優れると共に適度な伸度を有していて靭性に優れ、更に透明性に優れ、黄変などの変色が小さくて色相に優れていて、高温に曝されても前記した優れた透明性と色相を維持する光学的立体造形物を、速い光硬化速度および高い造形精度で円滑に且つ生産性良く製造することのできる光学的立体造形用樹脂組成物並びに当該光学的立体造形用樹脂組成物を用いる光学的立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて液状の光硬化性樹脂組成物を立体的に光学造形する方法が、金型などを作製することなく目的とする立体造形物を良好な寸法精度で製造し得ることから、広く採用されるようになっている。
光学的立体造形法の代表的な例としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂の液面に所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーを選択的に照射して所定厚みを硬化させ、ついで該硬化層の上に1層分の液状樹脂を供給し、同様に紫外線レーザーで前記と同様に照射硬化させ、連続した硬化層を得る積層操作を繰り返すことによって最終的に立体造形物を得る方法を挙げることができる。この光学的立体造形方法は、形状のかなり複雑な造形物をも容易に且つ比較的短時間に得ることが出来る。
【0003】
光学的立体造形に用いる樹脂または樹脂組成物については、活性エネルギー線による硬化感度が高くて短縮された造形時間で立体造形物を製造できること、低粘度で造形時の取り扱い性に優れること、経時的に水分や湿気の吸収が少なく硬化感度の低下がないこと、造形物の解像度が高く造形精度に優れていること、硬化時の体積収縮率が小さいことなどが必要とされている。それと共に、近年、光学的立体造形物を高温下で使用したり、外力のかかる条件下で使用することが多くなっており、それに伴って熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、しかも機械的強度や靭性が高くて破損しにくく耐久性に優れる立体造形物を製造できる光学的立体造形用樹脂組成物が求められるようになっている。
しかしながら、光学的立体造形物における靭性の向上と、熱変形温度の向上とは通常二律背反の関係にあり、立体造形物の柔軟性を高めて靭性を向上させようとすると、立体造形物の熱変形温度が低下して耐熱性が低下するというのが一般的である。
さらに、光学的立体造形物の用途などに応じて、透明性に優れ、黄変などの変色が少なくて色相に優れ、しかも高温に曝されても優れた透明性および色相を維持する光学的立体造形物を与える光学的立体造形用樹脂組成物が強く求められている。
【0004】
光学的立体造形用の樹脂組成物としては、従来、アクリレート系光硬化性樹脂組成物、ウレタンアクリレート系光硬化性樹脂組成物、エポキシ系光硬化性樹脂組成物、エポキシアクリレート系光硬化性樹脂組成物、ビニルエーテル系光硬化性樹脂組成物が提案されて用いられてきた。これらの中で、エポキシ系光硬化性樹脂組成物は寸法精度に優れる造形物を形成することができる。
しかし、エポキシ系光硬化性樹脂組成物は光照射により生成するカチオンで反応が進むため、反応速度が遅く、造形に時間がかかりすぎることが指摘されている。
そこで、反応速度の向上による造形時間の短縮などを目的として、エポキシ化合物などのカチオン重合性有機化合物と共にラジカル重合性有機化合物を含む光学的立体造形用樹脂組成物が用いられるようになっている(例えば特許文献1、2など多数)。
【0005】
しかしながら、カチオン重合性有機化合物およびラジカル重合性有機化合物を含有する、特許文献1および2などに記載されているような従来の光学的立体造形用樹脂組成物から得られる立体造形物は、一般に、熱変形温度が低くて耐熱性が十分であるとはいえず、また力学的強度や靭性などの点においても十分に満足のゆくものではなく、さらに高温に曝されると透明性が大幅に低下したり、黄変などの変色が著しくなることが多い。
特に、特許文献2の技術は、光学的立体造形用樹脂組成物から不透明な光学的立体造形物を得ることを目的としており、透明な立体造形物を得たいという要望に対しては合致しないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−23250号公報
【特許文献2】特開2007−2073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、活性エネルギー線による硬化感度が高くて、短縮された活性エネルギー線照射時間で立体造形物を生産性良く製造することができ、低粘度で造形時の取り扱い性に優れ、造形物の解像度が高く造形精度に優れ、硬化時の体積収縮率が小さいという優れた特性と共に、熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、しかも力学的強度および靭性に優れていて破損しにくく、その上透明性に優れ、黄変などの変色が小さくて色相に優れ、当該優れた透明性および色相を高温に曝されても維持している立体造形物を製造することのできる光学的立体造形用樹脂組成物を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記した光学的立体造形用樹脂組成物を用いて立体造形物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、本発明者らは、カチオン重合性有機化合物、ラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有する光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物として、特定の芳香族トリエポキシ化合物を所定の割合で含有させると、当該光学的立体造形用樹脂組成物から得られる立体造形物は、熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、引張強度や曲げ強度などの力学的強度が大きく且つ適度な伸度を有していて靭性に優れ、しかも透明性に優れ、黄変などの変色が小さくて色相に優れ、当該優れた透明性および色相が高温に曝された後でも維持されていることを見出した。
【0009】
さらに、本発明者らは、カチオン重合性有機化合物、ラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有し、更にカチオン重合性有機化合物として特定の芳香族トリエポキシ化合物を含有する上記した光学的立体造形用樹脂組成物中に、ナノサイズの平均粒径を有するナノシリカ粒子を所定の割合で更に含有させると、良好な機械的特性、優れた透明性および黄変などの変色の少ない優れた色相を維持しながら、熱変形温度が一層高くて耐熱性に一層優れる光学的立体造形物が得られることを見出した。
【0010】
また、本発明者らは、当該光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物の一部として特定の芳香族ジエポキシ化合物のうちの少なくとも1種を所定の量で含有させると、透明性および耐黄変性を良好に維持しながら、耐熱性により優れる光学的立体造形物が得られることを見出した。
【0011】
更に、本発明者らは、カチオン重合性有機化合物として前記特定の芳香族トリエポキシ化合物を所定の割合で含有する前記した光学的立体造形用樹脂組成物において、カチオン重合性有機化合物の一部として、シクロアルケンオキシド構造を分子中に有するカチオン重合性有機化合物を所定の量で更に含有させると、光造形して得られる立体造形物の吸湿伸びが小さくなり且つ耐熱性がより向上することを見出した。
【0012】
さらに、本発明者らは、カチオン重合性有機化合物として前記特定の芳香族トリエポキシ化合物を所定の割合で含有する前記した光学的立体造形用樹脂組成物において、カチオン重合性有機化合物の一部として、オキセタン化合物を所定の量で更に含有させると、活性エネルギー線による硬化感度が高くて、短縮された活性エネルギー線照射時間で造形物を生産性よく製造でき、低粘度で造形時の取り扱い性に優れ、造形物の解像度が高く造形精度に優れ、硬化時の体積収縮率が小さいという優れた諸特性を有する立体造形物を与える光学的立体造形用樹脂組成物が得られることを見出した。
【0013】
また、本発明者らは、カチオン重合性有機化合物、ラジカル重合性有機化合物、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有し、更にカチオン重合性有機化合物として特定の芳香族トリエポキシ化合物を所定の割合で含有する上記した光学的立体造形用樹脂組成物において、ラジカル重合性有機化合物として、(メタ)アクリル基を1個以上有するアクリル化合物を、所定の量で含有させると、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化感度が高くなって短縮された活性エネルギー線照射時間で造形物を生産性よく製造することができ、しかも造形精度に優れることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)(i) カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を含有する光学的立体造形用樹脂組成物であって;
(ii) カチオン重合性有機化合物(A)として、下記の化学式(A−1);
【0015】
【化1】


で表されるトリエポキシ化合物(A−1)を、光学的立体造形用樹脂組成物の質量に基づいて5〜50質量%の割合で含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物である。
【0016】
また、本発明は、
(2) 光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて、カチオン重合性有機化合物(A)を30〜85質量%、ラジカル重合性有機化合物(B)を10〜60質量%、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)を0.1〜10質量%および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を0.1〜10質量%の割合で含有する前記(1)の光学的立体造形用樹脂組成物である。
【0017】
そして本発明は、
(3) 平均粒径1〜200nmのナノシリカ粒子(E)を、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて1〜50質量%の割合で更に含有する前記(1)または(2)の記載の光学的立体造形用樹脂組成物である。
さらに、本発明は、
(4) カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、下記の一般式(A−2);
【0018】
【化2】


(式中、mは0〜10の整数を示す。)
で表されるジエポキシ化合物(A−2)を、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて20質量%以下の割合で含有する前記(1)〜(3)のいずれかの光学的立体造形用樹脂組成物である。
【0019】
また、本発明は、
(5) カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、シクロアルケンオキシド構造を分子中に有するエポキシ化合物(A−3)を、カチオン重合性有機化合物(A)の質量に基づいて80質量%以下の割合で更に含有する前記(1)〜(4)のいずれかの光学的立体造形用樹脂組成物;
(6) カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、オキセタン基を1個または2個以上有するオキセタン化合物(A−4)を、カチオン重合性有機化合物(A)の質量に基づいて5〜50質量%の量で更に含有する前記(1)〜(5)のいずれかの光学的立体造形用樹脂組成物;および、
(7) ラジカル重合性有機化合物(B)として、(メタ)アクリル基を1個以上有するアクリル系化合物(B−1)をラジカル重合性有機化合物(B)の質量に基づいて50質量%以上の量で含有する前記(1)〜(6)のいずれかの光学的立体造形用樹脂組成物;
である。
そして、本発明は、
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかの光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うことを特徴とする立体造形物の製造方法;および、
(9) 前記(1)〜(7)のいずれかの光学的立体造形物を用いて光学的立体造形を行って立体造形物をつくり、当該立体造形物に紫外線照射処理および/または熱処理を施すことを特徴とする立体造形物の製造方法;
である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を含有する光学的立体造形用樹脂組成物中に、上記の化学式(A−1)で表されるトリエポキシ化合物(A−1)を、光学的立体造形用樹脂組成物の質量に基づいて、5〜50質量%の割合で含有していることにより、熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、しかも引張強度や曲げ強度などの力学的強度が大きく且つ適度な伸度を有していて靭性に優れると共に、透明性に優れ、黄変などの変色が小さくて色相に優れ、当該優れた透明性および色相が高温に曝されても維持される光学的立体造形物を製造することができる。
【0021】
カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を含有し、カチオン重合性有機化合物(A)としてトリエポキシ化合物(A−1)を含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、ナノメートルサイズの平均粒径を有するナノシリカ粒子(E)を本発明で規定する割合で更に含有させた本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、引張強度や曲げ強度などの力学的強度、優れた透明性および優れた色相(高い耐黄変性など)などの特性を良好に維持しながら、熱変形温度が一層高くで耐熱性に一層優れる光学的立体造形物を与える。
【0022】
カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を含有し、カチオン重合性有機化合物(A)としてトリエポキシ化合物(A−1)を含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物、またはトリエポキシ化合物(A−1)とナノシリカ粒子(E)を含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、カチオン重合性有機化合物の一部としてジエポキシ化合物(A−2)を本発明で規定する量で含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物からは、上記した優れた力学的強度、透明性および色相を備え、且つ熱変形温度がより高くて耐熱性により優れる立体造形物を得ることができる。
【0023】
上記した本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、カチオン重合性有機化合物(A)の一部としてシクロアルケンオキシド構造を分子中に有するエポキシ化合物(A−3)を本発明で規定する所定の割合で含有させた光学的立体造形用樹脂組成物は、耐熱性に一層優れ、しかも吸湿伸びの小さな光学的立体造形物を与える。
【0024】
上記した本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、カチオン重合性有機化合物(A)の一部としてオキセタン化合物(A−4)を本発明で規定する所定の割合で含有する光学的立体造形用樹脂組成物は、上記した優れた諸特性と併せて、活性エネルギー線による硬化感度が高くて、短縮された活性エネルギー線照射時間で造形物を生産性よく製造でき、低粘度で造形時の取り扱い性に優れ、造形物の解像度が高く造形精度に優れ、硬化時の体積収縮率が小さいという優れた効果を発揮する。
【0025】
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、ラジカル重合性有機化合物(B)として、(メタ)アクリル基を1個以上有するアクリル系化合物(B−1)を本発明で規定する所定の割合で含有する光学的立体造形用樹脂組成物は、硬化感度が高くて短縮された活性エネルギー線照射時間で造形物を生産性よく製造することができ、しかも造形精度が向上するという優れた特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施例1、実施例5および比較例1で得られた立体造形物の全光線透過率の測定結果をグラフにした図である。
【図2】図2は、実施例1、実施例5および比較例1で得られた立体造形物の黄色度の測定結果をグラフにした図である。
【図3】図3は、実施例1、実施例5および比較例1で得られた立体造形物を紫外線で後硬化した後の写真およびそれを更に加熱処理した後の写真であり、図3の(a)は実施例1の立体造形物の写真であって、上段は室温下に紫外線で後硬化した立体造形物の写真、下段はその後に更に120℃で2時間加熱処理した立体造形物の写真であり、図3の(b)は実施例5の立体造形物の写真であって、上段は室温下に紫外線で後硬化した立体造形物の写真、下段はその後に更に140℃で2時間加熱処理した立体造形物の写真であり、図3の(c)は比較例1の立体造形物の写真であって、上段は室温下に紫外線で後硬化した立体造形物の写真、下段はその後に更に120℃で2時間加熱処理した立体造形物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光学的立体造形用樹脂組成物を硬化させ得る活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線、放射線、高周波など)を照射して三次元の立体造形物を製造するのに用いられる樹脂組成物である。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射によって重合する活性エネルギー線重合性化合物として、カチオン重合性有機化合物(A)およびラジカル重合性有機化合物(B)を含有する。
【0028】
本発明で用いるカチオン重合性有機化合物(A)は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる化合物であり、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、カチオン重合性有機化合物(A)の少なくとも一部として、下記の化学式(A−1);
【0029】
【化3】


で表されるトリエポキシ化合物(A−1)を含有することが必要である。
【0030】
上記の化学式(A−1)で表されるトリエポキシ化合物(A−1)は、化合物名を『2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン』または『2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン』とする芳香族トリエポキシ化合物(芳香族トリグリシジルオキシ化合物)であり、例えば「テクモアVG3101L」(商品名)(株式会社プリンテック製)などとして販売されている。
【0031】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、カチオン重合性有機化合物(A)としてトリエポキシ化合物(A−1)を含有していることにより、熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、引張強度や曲げ強度などの力学的強度が大きく且つ適度な伸度を有していて靭性に優れると共に、透明性に優れ、黄変などの変色が小さくて色相に優れ、しかもその優れた透明性および色相が高温に曝されても維持される光学的立体造形物が得られる。
【0032】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物におけるトリエポキシ化合物(A−1)の含有割合は、熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、引張強度や曲げ強度などの力学的強度に優れ、靭性に優れ、しかも透明性および色相に優れ且つ当該優れた透明性および色相が高温に曝されても維持される立体造形物を得るという観点から、光学的立体造形用樹脂組成物の質量(全質量)に基づいて、5〜50質量%であり、5〜40質量%であることが好ましく、8〜35質量%であることがより好ましい。
トリエポキシ化合物(A−1)の含有割合が少なすぎると、光学的立体造形物の熱変形温度が低くなり、しかも引張強度や曲げ強度などの力学的強度、靭性などが低下する。一方、トリエポキシ化合物(A−1)の含有割合が多すぎると、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度が高くなって取り扱い性に劣るようになったり、光学的立体造形用樹脂組成物中にトリエポキシ化合物(A−1)を溶解するのが困難になるなどの問題を生ずる。
【0033】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物では、当該組成物中に含まれるカチオン重合性有機化合物(A)の全量がトリエポキシ化合物(A−1)からなっていてもよいし、またはカチオン重合性有機化合物(A)のうちの一部としてトリエポキシ化合物(A−1)を含有していてもよい。そのうちでも、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、カチオン重合性有機化合物(A)として、トリエポキシ化合物(A−1)と共に他のカチオン重合性有機化合物を含有していることが、光学的立体造形用樹脂組成物の光造形時の取り扱い性、光硬化感度、造形精度、得られる立体造形物の耐水性、耐湿性、寸法精度などが向上するので好ましい。
その際の他のカチオン重合性有機化合物としては、光学的立体造形用樹脂組成物で用いられているカチオン重合性有機化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、トリエポキシ化合物(A−1)以外のエポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では他のカチオン重合性有機化合物として、前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種または2種以上を含有することができる。
【0034】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物が含有し得る他のカチオン重合性有機化合物の具体例としては、
(1)トリエポキシ化合物(A−1)以外の芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などのエポキシ化合物;
(2)トリメチレンオキシド、オキセタン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランのようなオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンのような環状エーテルまたは環状アセタール化合物;
(3)β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物;
(4)エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリンなどのチイラン化合物;
(5)1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなどのようなチエタン化合物;
(6)エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物;
(7)エポキシ化合物とラクトンの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物;
などを挙げることができる。
【0035】
そのうちでも、本発明では、他のカチオン重合性有機化合物として、トリエポキシ化合物(A−1)以外のエポキシ化合物およびオキセタン化合物が好ましく用いられる。トリエポキシ化合物(A−1)以外のエポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物がより好ましく用いられ、またオキセタン化合物としてはオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物およびオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物の一方または両方が好ましく用いられる。
【0036】
他のカチオン重合性有機化合物として用い得る、上記(1)で挙げたトリエポキシ化合物(A−1)以外の芳香族エポキシ化合物としては、例えば、少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルなどを挙げることができ、具体的には、例えばビスフェノールAやビスフェノールFまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、下記の一般式(A−2)で表されるジエポキシ化合物(A−2)などを挙げることができる。
【0037】
【化4】


(式中、mは0〜10の整数を示す。)
【0038】
上記の一般式(A−2)で表されるジエポキシ化合物(A−2)は、フルオレン骨格を有するジエポキシ化合物である。
上記の一般式(A−2)において、mは0〜10の整数であり、光学的立体造形用樹脂組成物から得られる立体造形物の耐熱性がより優れたものになる点からは、mが0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0039】
上記の一般式(A−2)において、mが0であるジエポキシ化合物は、下記の化学式(A−2a)で表され、一般に「ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル」と称されており、例えば、「オグソールPG−100」(商品名)(大阪ガスケミカル株式会社製)などとして販売されている。
また、一般式(A−2)において、mが1以上であるジエポキシ化合物は、下記の化学式(A−2b)で表され、一般に「ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル」と称されており、例えば、「オンコートEX−1020」(商品名)(大阪ガス株式会社製)などとして販売されている。
【0040】
【化5】

【0041】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、ジエポキシ化合物(A−2)を含有させる場合は、ジエポキシ化合物(A−2)の含有割合は、光学的立体造形用樹脂組成物の質量に基づいて、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、トリエポキシ化合物(A−1)と共に、ジエポキシ化合物(A−2)を前記した20質量%以下の割合で含有させると、光学的立体造形により得られる光学的立体造形物の透明性、色相、力学的特性を良好に維持しながら、光学的立体造形物の熱変形温度がより高くなって、耐熱性がより向上する。
ジエポキシ化合物(A−2)の含有割合が前記よりも多くなると、光学的立体造形物の透明性が低下し、また黄変などの変色が大きくなる。
【0042】
他のカチオン重合性有機化合物として用い得る、上記(1)で挙げた脂環族エポキシ化合物としては、シクロヘキセンまたはシクロペンテン環含有化合物などのようなシクロアルケン構造を有する化合物を過酸化水素、過酸などの適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルケンオキシド構造を有するエポキシ化合物や、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
ここで、本明細書でいう、「シクロアルケンオキシド構造」とは、「シクロアルケン環中の不飽和2重結合部分がオキシド化(エポキシ化)している構造」をいう。
【0043】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、トリエポキシ化合物(A−1)と共に他のカチオン重合性有機化合物を含有させる場合は、他のカチオン重合性有機化合物として、シクロアルケンオキシド構造を分子中に有するエポキシ化合物[以下「シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)」という]が好ましく用いられ、特にシクロアルケンオキシド構造に基づくエポキシ基を1分子中に2個以上有するエポキシ化合物が好ましく用いられる。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(A)の一部としてシクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)」を含有させると、光学的立体造形用樹脂組成物の光硬化感度が向上する。
【0044】
シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)の代表例としては、シクロブテンオキシド構造、シクロペンテンオキシド構造、シクロヘキセンオキシド構造、シクロヘプテンオキシド構造、シクロオクテンオキシド構造、シクロデセンオキシド構造、シクロドデセンオキシド構造などのような炭素数4〜12のシクロアルケンオキシド構造のうちの1つまたは2つ以上を分子中に有するエポキシ化合物を挙げることができる。その際に、シクロアルケンオキシド構造におけるシクロアルカン環を形成している炭素原子は置換されていなくてもよいし、シクロアルカン環を形成している炭素原子のうちの1個または2個以上が置換されていてもよいし、またシクロアルカン環を形成している炭素原子が有する結合手が、有機化合物中の他の基に結合したり、他の構造部分と結合して縮合環を形成していてもよい。
さらに、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)では、「シクロアルケンオキシド構造」の存在箇所(結合位置)、存在個数(結合数)は特に制限されない。
【0045】
限定されるものではないが、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、カチオン重合性有機化合物(A)の一部として好ましく用いられるシクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、下記の化学式(A−3a)〜(A−3h)で表されるエポキシ化合物などを挙げることができる。
【0046】
【化6】


[上記の式(A−3h)中、R1は、水素原子または炭素数1〜3のメチル基、エチル基、n−プロピル基またはイソプロピル基を示す。]
【0047】
本発明では、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)として上記で例示した化合物の1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、本発明では、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−4)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが、入手が容易で、しかも光造形して得られる立体造形物の耐熱性の向上に大きく寄与する点から好ましく用いられる。
【0048】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(A)の一部としてシクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)を含有させる場合は、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)の含有量は、カチオン重合性有機化合物(A)の質量[光学的立体造形用樹脂組成物中に含まれる全カチオン重合性有機化合物(A)の合計質量]に基づいて、80質量%以下であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。
シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)」の含有量が多くなり過ぎると、光造形して得られる立体造形物の吸湿伸びが大きくなり、寸法安定性が低下する。
【0049】
また、他のカチオン重合性有機化合物として用い得る、上記した「少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル」の具体例としては、下記の一般式で表される水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0050】
【化7】


(式中、R2は水素原子またはメチル基を示す。)
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(A)の一部として水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルを含有させた場合には、光学的立体造形用樹脂組成物を高湿度下においても水分や湿分の吸収が少なくて高い硬化感度が維持されると共に、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性、可撓性などが良好になり、更に光造形して得られる立体造形物の体積収縮率を低くすることができる。
【0051】
水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルとしては、具体的には、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールFジグリシジルエーテルおよび水素添加ビスフェノールZジグリシジルエーテルを挙げることができる。本発明では、水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルとして、前記したジグリシジルエーテルの1種のみを用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。そのうちでも、水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルとしては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテルが、入手性や立体造形物の耐吸湿性などの点から好ましく用いられる。
【0052】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(A)の一部として水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルを含有させる場合は、水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルの含有量は、カチオン重合性有機化合物(A)の質量[光学的立体造形用樹脂組成物中に含まれる全カチオン重合性有機化合物(A)の合計質量]に基づいて、5〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
また、他のカチオン重合性有機化合物として用い得る、上記(1)で挙げた脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。
【0054】
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、トリエポキシ化合物(A−1)と共に他のカチオン重合性有機化合物を含有させる場合は、他のカチオン重合性有機化合物として、上記(2)で挙げたオキセタン化合物[以下「オキセタン化合物(A−4)」という]が好ましく用いられる。オキセタン化合物(A−4)としては、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物および分子中にオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物のいずれもが使用できる。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中にオキセタン化合物(A−4)を含有させることによって、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度が低くなって光造形作業が行い易くなり、光学的立体造形用樹脂組成物の光硬化感度が高くなって立体造形物を製造する際の光造形時間が短縮でき、しかも光学的立体造形用樹脂組成物の高い光硬化感度を長期にわたって高く維持すると共に光学的立体造形用樹脂組成物から形成される立体造形物の耐熱性を一層向上させることができる。
【0055】
その際に、モノオキセタン化合物としては、1分子中にオキセタン基を1個有する化合物であればいずれも使用できるが、特に1分子中にオキセタン基を1個有し且つアルコール性水酸基を1個有するモノオキセタンモノアルコール化合物が好ましく用いられる。
そのような、モノオキセタンモノアルコール化合物のうちでも、下記の一般式(A−4a1)で表されるモノオキセタンモノアルコール化合物(A−4a1)および下記の一般式(A−4a2)で表されるモノオキセタンモノアルコール化合物(A−4a2)のうちの少なくとも1種が、入手の容易性、高反応性、粘度が低いなどの点から、モノオキセタン化合物としてより好ましく用いられる。
【0056】
【化8】


(式中、R3およびR4は炭素数1〜5のアルキル基、R5はエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基を示す。)
【0057】
上記の一般式(A−4a1)において、R3の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
モノオキセタンアルコール(A−4a1)の具体例としては、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、入手の容易性、反応性などの点から、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンがより好ましく用いられる。
【0058】
上記の一般式(A−4a2)において、R4の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
また、上記の一般式(A−4a2)において、R5は炭素数2〜10のアルキレン基であれば、鎖状のアルキレン基または分岐したアルキレン基のいずれであってもよく、或いはアルキレン基(アルキレン鎖)の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する炭素数2〜10の鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよい。R5の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、3−オキシペンチレン基などを挙げることができる。そのうちでも、R5はトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基またはヘプタメチレン基であることが、合成の容易性、化合物が常温で液体であり取り扱い易いなどの点から好ましい。
【0059】
ポリオキセタン化合物としては、分子中にオキセタン基を2個有する化合物、オキセタン基を3個以上有する化合物、オキセタン基を4個以上有する化合物のいずれもが使用でき、そのうちでもオキセタン基を2個有するジオキセタン化合物が好ましく用いられる。ジオキセタン化合物としては、下記の一般式(A−4b);
【0060】
【化9】


(式中、2個のR6は互いに同じかまたは異なる炭素数1〜5のアルキル基、R7は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基、nは0または1を示す。)
で表されるジオキセタン化合物(A−4b)が、入手性、反応性、低吸湿性、硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられる。
上記の一般式(A−4b)において、R6の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、R7の例としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、フェニレン基、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
【0061】
ジオキセタン化合物(A−4b)の具体例としては、下記の式(A−4b1)または式(A−4b2)で表されるジオキセタン化合物を挙げることができる。
【0062】
【化10】


(式中、2個のR6は互いに同じかまたは異なる炭素数1〜5のアルキル基、R7は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基を示す。)
【0063】
上記の式(A−4b1)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、ビス(3−メチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−プロピル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−ブチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを挙げることができる。
また、上記の式(A−4b2)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、上記の式(A−4b2)において2個のR6が共にメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基で、R7がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、フェニレン基、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基であるジオキセタン化合物を挙げることができる。
【0064】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、オキセタン化合物(A−4)としてモノオキセタン化合物のみを含有していてもよいし、ジオキセタン化合物などのポリオキセタン化合物のみを含有していてもよいし、またはモノオキセタン化合物とポリオキセタン化合物の両方を含有していてもよく、モノオキセタン化合物とポリオキセタン化合物(特にジオキセタン化合物)の両方を含有していることが、耐熱性、光硬化性の点から好ましい。
【0065】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中にカチオン重合性有機化合物(A)の一部としてオキセタン化合物(A−4)を含有させる場合は、オキセタン化合物(A−4)の含有量は、カチオン重合性有機化合物(A)の質量[光学的立体造形用樹脂組成物中に含まれる全カチオン重合性有機化合物(A)の合計質量]に基づいて、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
オキセタン化合物(A−4)の含有量が多くなり過ぎると、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化感度は通常向上するが、立体造形物の弾性率、強度などが低下して形状保持性を失うことがある。
【0066】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、トリエポキシ化合物(A−1)と共に、カチオン重合性有機化合物(A)として、ジエポキシ化合物(A−2)、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)、水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルおよびオキセタン化合物(A−4)のうちの1種を含有していてもよいし、2種を含有していてもよいし[すなわち、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)と水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルの2種、シクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)とオキセタン化合物(A−4)の2種または水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルとオキセタン化合物(A−4)の2種を含有していてもよいし]、或いはシクロアルケンオキシド構造含有エポキシ化合物(A−3)、水素添加ビスフェノール系ジグリシジルエーテルとオキセタン化合物(A−4)の3種を含有していてもよい。
【0067】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物が、カチオン重合性有機化合物(A)として、トリエポキシ化合物(A−1)と共に、それ以外の他のカチオン重合性有機化合物を含有する場合は、他のカチオン重合性有機化合物の含有量は、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に対しては、75質量%以下であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、25〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0068】
本発明で用いるラジカル重合性有機化合物(B)は、活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)[以下単に「ラジカル重合開始剤(D)」ということがある]の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる化合物である。
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、ラジカル重合性有機化合物(B)を含有していることにより、粘度が低くて取り扱い性に優れ、しかも光硬化感度が高くて立体造形物を短縮した光造形時間で円滑に製造することができ、更に得られる立体造形物の寸法精度、力学的特性、表面の平滑性、硬度などが良好なものとなる。
【0069】
ラジカル重合性有機化合物(B)としては、光学的立体造形用樹脂組成物において従来から用いられているラジカル重合性有機化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、(メタ)アクリレート系化合物、不飽和ポリエステル化合物、アリルウレタン系化合物などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、ラジカル重合性有機化合物(B)としては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアクリル系化合物(B−1)が好ましく用いられる。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、アクリル系化合物(B−1)を、ラジカル重合性有機化合物(B)の質量[光学的立体造形用樹脂組成物に含まれる全ラジカル重合性有機化合物(B)の合計質量]に基づいて、50質量%以上の割合で含有していることが好ましく、80質量%以上の割合で含有していることがより好ましく、90〜100質量%の割合で含有していることが更に好ましい。
アクリル系化合物(B−1)の具体例としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0070】
ラジカル重合性有機化合物(B)として用い得る上記したエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物および/または脂肪族エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート系反応生成物を挙げることができる。具体例としては、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール系化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリンなどのエポキシ化剤との反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート系反応生成物などの芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート系反応生成物などを挙げることができる。
【0071】
また、ラジカル重合性有機化合物(B)として用い得る上記したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に少なくとも1個の水酸基をもつ芳香族アルコール、脂肪族アルコール、脂環族アルコールおよび/またはそれらのアルキレンオキサイド付加体と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。
より具体的には、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートやその他のジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオールなどの多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートなどを挙げることができる。
そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応により得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート、例えばジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。
また、前記した(メタ)アクリレート化合物のうちで、メタクリレート化合物よりも、アクリレート化合物が重合速度の点から好ましく用いられる。
【0072】
さらに、ラジカル重合性有機化合物(B)として用い得る上記したポリエステル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、上記したポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
【0073】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物では、ラジカル重合性有機化合物(B)として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどのジペンタエリスリトールポリアクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートなどのアルキレンオキシド変性多価アルコール(アルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールやトリメチロールプロパンなど)のポリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート(例えば、昭和高分子社製「VR−77」)、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレートなどのうちの1種または2種以上が、反応性、立体造形物の力学的特性などの点から好ましく用いられる。耐熱性に優れる立体造形物を得るためには、光学的立体造形用樹脂組成物中に、(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物を、ラジカル重合性有機化合物(B)の質量に基づいて、50質量%以上の割合で含有させることが好ましく、60質量%以上の割合で含有させることが好ましい。
【0074】
本発明では、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)[以下単に「カチオン重合開始剤(C)」ということがある]として、活性エネルギー線を照射したときにカチオン重合性有機化合物(A)のカチオン重合を開始させ得る重合開始剤のいずれもが使用できる。
そのうちでも、カチオン重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線を照射したときにルイス酸を放出するオニウム塩が好ましく用いられる。そのようなオニウム塩の例としては、第VIIa族元素の芳香族スルホニウム塩、VIa族元素の芳香族オニウム塩、第Va族元素の芳香族オニウム塩などを挙げることができる。具体的には、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジ4’−ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウムなどを挙げることができる。
本発明では、上記したようなカチオン重合開始剤のうちの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、本発明では芳香族スルホニウム塩がより好ましく用いられる。
また、本発明では、反応速度を向上させる目的で、カチオン重合開始剤(C)と共に必要に応じて光増感剤、例えばベンゾフェノン、アルコキシアントラセン、ジアルコキシアントラセン、チオキサントンなどを用いてもよい。
【0075】
本発明では、活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)[以下単に「ラジカル重合開始剤(D)」ということがある]として、活性エネルギー線を照射したときにラジカル重合性有機化合物(B)のラジカル重合を開始させ得る重合開始剤のいずれもが使用でき、例えば、ベンジルまたはそのジアルキルアセタール系化合物、フェニルケトン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインまたはそのアルキルエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などを挙げることができる。
【0076】
具体的には、ベンジルまたはそのジアルキルアセタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールなどを挙げることができる。
フェニルケトン系化合物としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
また、アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4′−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノンなどを挙げることができる。
【0077】
そして、ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどを挙げることができる。
また、ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノンなどを挙げることができる。
また、チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。
【0078】
本発明では、1種または2種以上のラジカル重合開始剤(D)を所望の性能に応じて配合して使用することができる。
そのうちでも、本発明ではラジカル重合開始剤(D)として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが、得られる立体造形物の黄色度が小さくて色相に優れる点から好ましく用いられる。
【0079】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、組成物の粘度、反応速度、造形速度、得られる立体造形物の熱変形温度(耐熱性)、機械的強度、靭性、耐久性、寸法精度などの点から、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて、カチオン重合性有機化合物(A)[光学的立体造形用樹脂組成物中に含まれる全てのカチオン重合性有機化合物(A)の合計]を30〜85質量%、更には40〜80質量%、特に50〜78質量%で含有し、ラジカル重合性有機化合物(B)[光学的立体造形用樹脂組成物中に含まれる全てのラジカル重合性有機化合物(B)の合計]を10〜60質量%、更には10〜50質量%、特に15〜40質量%で含有し、カチオン重合開始剤(C)を0.1〜10質量%、更には1〜8質量%、特に1〜5質量%で含有し、ラジカル重合開始剤(D)を0.1〜10質量%、更には1〜8質量%、特に1〜7質量%の割合で含有することが好ましい。
【0080】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、顔料や染料などの着色剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤(架橋ポリマー粒子、シリカ、ガラス粉、セラミックス粉、金属粉など)、改質用樹脂などの1種または2種以上を適量含有していてもよい。
【0081】
特に、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中に、ナノメートルサイズの平均粒径を有するナノシリカ粒子を更に含有させた光学的立体造形用樹脂組成物は、良好な機械的特性、優れた透明性および黄変などの変色の少ない優れた色相を維持しながら熱変形温度が一層高くて耐熱性に一層優れる光学的立体造形物を得ることができ、当該光学的立体造形物は例えば140℃という極めて高い温度に曝されても透明性を維持し、しかも黄変度の上昇が極めて小さい。
ナノシリカ粒子としては、光学的立体造形用樹脂組成物中での分散性、入手容易性、得られる光学的立体造形物の透明性、耐熱性などの点から、平均粒径が1〜200nmのものが好ましく、1〜100nmのものがより好ましく、2〜50nmのものがさらに好ましく、5〜30nmのものが特に好ましい。
ここで、本明細書におけるナノシリカ粒子の平均粒径は、中性子小角散乱法(SANS)によって測定される平均粒径をいい、その具体的な測定方法は以下の実施例に記載するとおりである。
【0082】
ナノシリカ粒子(E)としては、ナノシリカ粒子間の凝集を生ずることなく、個々のナノシリカ粒子が単分散状態で光学的立体造形用樹脂組成物中に均一に分散し得るナノシリカ粒子またはナノシリカ粒子含有物のいずれもが使用でき、ナノシリカ粒子(E)の調製方法などは特に制限されない。
限定されるものではないが、本発明で好ましく用い得るナノシリカ粒子(E)(ナノシリカ粒子分散物)としては、例えば、ナノシリカ粒子同士の凝集が生じないように表面処理を施したナノシリカ粒子、当該ナノシリカ粒子をカチオン重合性有機化合物やラジカル重合性有機化合物中に分散含有させたナノシリカ粒子分散物などを挙げることができる。
【0083】
本発明で好ましく用いられるナノシリカ粒子(E)の具体例としては、いずれもナノレジン社(ドイツ)の製品である、
(a)「Nanopox A 610」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子が脂環式枝ポリマー中に分散しているナノシリカ粒子の分散物、ナノシリカ粒子の含有量=40質量%);
(b)「Nanopox A 660」[平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子が3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン(反応性希釈剤)中に分散しているナノシリカ粒子の分散物、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%]
(c)「Nanopox E 470」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がビスフェノールAジグリシジルエーテル中に分散しているナノシリカ粒子の分散物、ナノシリカ粒子の含有量=40質量%)
(d)「Nanocryl A 370」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がヒドロキシメチルメタクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(e)「Nanocryl A 200」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がトリメチロールプロパンホルマールアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(f)「Nanocryl A 210」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がヘキサンジオールジアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(g)「Nanocryl A 215」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がトリプロピレングリコールジアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(h)「Nanocryl A 216」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(i)「Nanocryl A 220」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がトリメチロールプロパントリアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(j)「Nanocryl A 223」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(k)「Nanocryl A 225」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がプロポキシ化グリセリントリアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
(l)「Nanocryl A 235」(平均粒径が約20nmのナノシリカ粒子がアルコキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート中に分散しているナノシリカ粒子の分散液、ナノシリカ粒子の含有量=50質量%);
などを挙げることができる。
上記したナノレジン社製のナノシリカ粒子(ナノシリカ粒子の分散液)では、ナノシリカ粒子は凝集しないように表面修飾されている。
【0084】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中にナノシリカ粒子(E)を含有させる場合は、ナノシリカ粒子(E)自体の含有量は、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
ナノシリカ粒子(E)の含有量が多くなり過ぎると、光学的立体造形して得られる立体造形物の可撓性が低下したり、光透過性が低下し易くなる。
【0085】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の調製法は特に制限されず、カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、カチオン重合開始剤(C)、ラジカル重合開始剤(D)および必要に応じて用いられるナノシリカ粒子(E)やその他の成分が均一に混合した組成物が得られる方法であれば、いずれの方法で調製してもよい。
そのうちでも、本発明で用いるトリエポキシ化合物(A−1)は、常温で固体状を呈し、そのままでは他の成分と混ざりにくいので、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の調製に当っては、以下の方法が好ましく採用される。
すなわち、トリエポキシ化合物(A−1)を含めて、全てのカチオン重合性有機化合物(A)を加熱下で液状にして混合した後(加熱温度約90〜110℃程度)、その混合物を常温に戻して、常温下で当該混合物にラジカル重合性有機化合物(B)、カチオン重合開始剤(C)、ラジカル重合開始剤(D)および必要に応じて他の成分を混合して、常温で液状を呈する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を調製する方法が好ましく採用される。
【0086】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物中にナノシリカ粒子(E)を含有させる場合は、ナノシリカ粒子(E)を光学的立体造形用樹脂組成物中に均一に混合・分散させ得る方法であればいずれの方法で混合してもよく、例えば、ナノシリカ粒子(E)またはナノシリカ粒子(E)を含有する分散物は、カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、カチオン重合開始剤(C)およびラジカル重合開始剤(D)を混合して調製した光学的立体造形用樹脂組成物中にナノシリカ粒子(E)またはナノシリカ粒子(E)分散物を後から混合する方法、カチオン重合性有機化合物(A)およびラジカル重合性有機化合物(B)のうちの一方または両方にナノシリカ粒子(E)またはナノシリカ粒子(E)分散物を予め混合した後に、他の成分を混合する方法などを挙げることができる。カチオン重合性有機化合物中にナノシリカ粒子(E)が分散した分散物を用いてナノシリカ粒子を含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を調製する場合は、当該ナノシリカ粒子(E)の分散物を、カチオン重合性有機化合物(A)中に予め混合しておいてから、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を調製すると、ナノシリカ粒子(E)が均一に分散した光学的立体造形用樹脂組成物を得ることができる。
【0087】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的に立体造形を行うに当たっては、従来既知の光学的立体造形方法および装置のいずれもが使用できる。好ましく採用され得る光学的立体造形法の代表例としては、液状をなす本発明の光学的造形用樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成し、次いでこの硬化層に未硬化の液状光学的造形用樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。
その際の活性エネルギー線としては、上述のように、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などを挙げることができる。そのうちでも、300〜400nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられ、その際の光源としては、紫外線レーザー(例えば半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)、紫外線蛍光灯などを使用することができる。
【0088】
光学的立体造形用樹脂組成物よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた活性エネルギー線を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよいし、または液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッター(DMD)などのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
【0089】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる立体造形物は、後硬化処理や熱処理を行わずにそのまま使用してもよいが、紫外線を照射して後硬化処理を行うかおよび/または熱処理を施してから用いることが好ましい。その際に、紫外線の照射による後硬化処理は、光学的立体造形の分野において従来から採用されているのと同様の方法および条件を採用して行うことができる。また、熱処理も、光学的立体造形の分野において従来から採用されているのと同様の方法および条件を採用して行うことができ、特にステップ加熱方式を採用して熱処理を行うと、歪みや変形のない、外観および物性に優れる立体造形物を得ることができる。ステップ加熱方式としては、限定されるものではないが、例えば、80℃まで徐々に加熱して80℃に到達した後に同温度で所定時間加熱し、次いで100℃まで更に徐々に加熱して100℃に到達した後に同温度で所定時間加熱し、続いて120℃まで更に徐々に加熱して120℃に到達した後に同温度で所定時間加熱する方法などを挙げることができる。
【0090】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光学的立体造形分野に幅広く用いることができ、何ら限定されるものではないが、代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するための形状確認モデル、部品の機能性をチェックするための機能試験モデル、鋳型を制作するためのマスターモデル、金型を制作するためのマスターモデル、試作金型用の直接型などを挙げることできる。特に、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、精密な部品などの形状確認モデルや機能試験モデルの作製に威力を発揮する。より具体的には、例えば、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物などのモデル、母型、加工用などの用途に有効に用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。以下の例中、「部」は質量部を意味する。
また、以下の例中、ナノシリカ粒子の平均粒径、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度、比重、光造形して得られた立体造形物の力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率)、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)]、熱変形温度、全光線透過率および黄色度の測定または算出は、次のようにして行なった。
【0092】
(1)ナノシリカ粒子の平均粒径:
中性子小角散乱法(SANS)により測定した。中性子小角散乱法(SANS)とは、電子顕微鏡やX線小角散乱法では測定困難なナノスケールの物質の構造などを、透過力の大きな中性子の小角散乱を利用して測定する方法である。
【0093】
(2)光学的立体造形用樹脂組成物の粘度:
光学的立体造形用樹脂組成物を25℃の恒温槽に入れて、光学的立体造形用樹脂組成物の温度を25℃に調節した後、B型粘度計(株式会社東機産業製)を使用して回転速度20rpmで測定した。
【0094】
(3)光学的立体造形用樹脂組成物の比重:
ゲーリュサック型比重ビン(東京硝子器械社製、50mL)を使用して、電子天秤にて測定した(測定温度25℃)。
【0095】
(4)立体造形物の引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率):
以下の実施例または比較例で光学的立体造形して得られた立体造形物(JIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片)(後硬化処理前の立体造形物)に高圧水銀灯を用いて室温下(25℃)で紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した後、60℃で2時間加熱して更に加熱後硬化したものを用いるか(実施例1〜5および比較例1〜3)、または120℃で2時間加熱して更に加熱後硬化したものを用いて(実施例5)、JIS K−7113にしたがって、試験片の引張破断強度(引張強度)、引張破断伸度(引張伸度)および引張弾性率を測定した。
【0096】
(5)立体造形物の曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率):
以下の実施例または比較例で光学的立体造形して得られた立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)(後硬化処理前の立体造形物)に室温下(25℃)で高圧水銀灯を用いて紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した後、60℃で2時間加熱して更に加熱後硬化したものを用いるか(実施例1〜5および比較例1〜3)、または120℃で2時間加熱して更に加熱後硬化したものを用いて(実施例5)、JIS K−7171にしたがって、試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
【0097】
(6)立体造形物の熱変形温度:
以下の実施例または比較例で光学的立体造形して得られた立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)(後硬化処理前の立体造形物)に室温下(25℃)で高圧水銀灯を用いて紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した後、60℃で2時間加熱して更に加熱後硬化したものを用いるか(実施例1〜6および比較例1〜3)、または120℃で2時間加熱して更に加熱後硬化したものを用いて(実施例5)、東洋精機社製「HDTテスタ6M−2」を使用して、試験片に1.81MPaの荷重を加えるJIS K−7207(A法)(高荷重)および試験片に0.45MPaの荷重を加えるJIS K−7207(B法)(低荷重)に準拠して、試験片の熱変形温度を測定した。
【0098】
(7)立体造形物の全光線透過率:
以下の実施例または比較例で光造形して得られた立体造形物(長さ×幅×厚さ=45mm×20mm×5mm)(後硬化処理前の立体造形物)に室温下(25℃)で高圧水銀灯を用いて紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した後、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で2時間または120℃で2時間の熱処理条件を採用して加熱処理し(なお、実施例1と実施例5では140℃で2時間の加熱処理試験も実施)、各加熱処理後の立体造形物の厚さ方向での全光線透過率(%)を測定した。
なお、全光線透過率は、日立ハイテクノロジー社製の紫外可視分光光度計「UV−39001」を使用して、ダブルビーム標準イルミナントD65 分光透過率を測定して求めた。
【0099】
(8)立体造形物の黄色度:
以下の実施例または比較例で作製した立体造形物(長さ×幅×厚さ=45mm×20mm×5mm)(後硬化処理前の立体造形物)に室温下(25℃)で高圧水銀灯を用いて紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した後、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で2時間または120℃で2時間の熱処理条件を採用して加熱処理し(なお、実施例1と実施例5では140℃で2時間の加熱処理試験も実施)、各加熱処理後の立体造形物の厚さ方向での黄色度を測定した。
なお、黄色度の測定は、日立ハイテクノロジー社製の紫外可視分光光度計「UV−39001」を使用して、色彩分析により、JIS K7373に規定されたイエローインデックス(YI)を求めることにより行った。
【0100】
《実施例1》
(1) トリエポキシ化合物(A−1)[2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン](株式会社プリンテック製「テクモアVG3101L」)20部、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「HBE−100」)35部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダウケミカル社製「UVR−6105」)2部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製「OXT−221」)15部および3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成株式会社製「OXT−101」)5部を約100℃で加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(新中村化学工業株式会社製「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ社製「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度632mPa・s(25℃)および比重1.083であった。
【0101】
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、半導体レーザー(定格出力1000mW;波長355nm;スペクトラフィジックス社製「半導体励起固体レーザーBL6型)で、液面100mW、液面照射エネルギー80mJ/cm2の条件下に、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間2分で光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表1に示す。
また、この実施例1で得られた立体造形物の全光線透過率および黄色度の測定結果をグラフにすると、図1(全光線透過率のグラフ)および図2(黄色度のグラフ)に示すとおりであった。
さらに、図3の(a)に、この実施例1の(2)で得られた立体造形物を室温下(25℃)で紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した立体造形物を撮影した写真[図3の(a)の上段の写真]、およびその後に更に120℃で2時間加熱処理した立体造形物を撮影した写真[図3の(a)の下段の写真]を示す。
【0102】
《実施例2》
(1) トリエポキシ化合物(A−1)[2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン](「テクモアVG3101L」)10部、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル[化学式(A−2a)で表されるジエポキシ化合物](大阪ガスケミカル株式会社製「オグソールPG−100」)10部、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「HBE−100」)35部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部および3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部を約100℃に加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度680mPa・s(25℃)および比重1.099であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0103】
《実施例3》
(1) トリエポキシ化合物(A−1)[2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン](「テクモアVG3101L」)30部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)27部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部および3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部を約100℃に加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度588mPa・s(25℃)および比重1.119であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0104】
《実施例4》
(1) トリエポキシ化合物(A−1)[2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン](「テクモアVG3101L」)20部、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「HBE−100」)15部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部およびナノシリカ粒子の分散物(ナノレジン社製「Nanopox A 610」、平均粒径約20nmのナノシリカ粒子が環状脂肪族エポキシ樹脂中に分散した分散物、ナノシリカ粒子の含有量40質量%)20部を約100℃で加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した(光学的立体造形用樹脂組成物中のナノシリカ粒子の含有量8質量%)。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度656mPa・s(25℃)および比重1.143であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0105】
《実施例5》
(1) トリエポキシ化合物(A−1)[2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン](「テクモアVG3101L」)20部、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「HBE−100」)5部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部およびナノシリカ粒子の分散物(ナノレジン社製「Nanopox A 610」、平均粒径約20nmのナノシリカ粒子が環状脂肪族エポキシ樹脂中に分散した分散物、ナノシリカ粒子の含有量40質量%)30部を約100℃で加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した(光学的立体造形用樹脂組成物中のナノシリカ粒子の含有量12質量%)。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度680mPa・s(25℃)および比重1.175であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表1に示す。
また、この実施例5で得られた立体造形物の全光線透過率および黄色度の測定結果をグラフにすると、図1(全光線透過率のグラフ)および図2(黄色度のグラフ)に示すとおりであった。
さらに、図3の(b)に、この実施例5の(2)で得られた立体造形物を室温下(25℃)で紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した立体造形物を撮影した写真[図3の(b)の上段の写真]、およびその後に更に140℃で2時間加熱処理した立体造形物を撮影した写真[図3の(b)の下段の写真]を示す。
【0106】
《比較例1》
(1) 水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「HBE−100」)55部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)を室温下でよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度204mPa・s(25℃)および比重1.071であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表2に示す。
また、この比較例1で得られた立体造形物の全光線透過率および黄色度の測定結果をグラフにすると、図1(全光線透過率のグラフ)および図2(黄色度のグラフ)に示すとおりであった。
さらに、図3の(c)に、この比較例1の(2)で得られた立体造形物を室温下(25℃)で紫外線を照射(3mW/cm2で20分間照射)して後硬化した立体造形物を撮影した写真[図3の(c)の上段の写真]、およびその後に更に120℃で2時間加熱処理した立体造形物を撮影した写真[図3の(c)の下段の写真]を示す。
【0107】
《比較例2》
(1) 水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「HBE−100」)35部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(アデカ社製「EP−4100E」)20部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部および3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部を約100℃に加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度276mPa・s(25℃)および比重1.089であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0108】
《比較例3》
(1) 水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「HBE−100」)35部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、オルソクレゾールノボラック型エポキシ(DIC株式会社製「N−673」)20部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部および3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部を約100℃に加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)を室温下でよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した。この光造形用樹脂組成物の粘度および比重を上記した方法で測定したところ、粘度780mPa・s(25℃)および比重1.096であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片、JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片、全光線透過率の測定用の立体造形物および黄色度の測定用の立体造形物を作製し、その物性を上記した方法で測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
上記の表1および表2にみるように、実施例1〜5の光学的立体造形用樹脂組成物は、カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を含有する光学的立体造形用樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(A)として、トリエポキシ化合物(A−1)を、光学的立体造形用樹脂組成物の質量に基づいて5〜40質量%の範囲内の割合で含有していることにより、高い熱変形温度を有していて耐熱性に優れており、しかも引張破断強度および曲げ強度が大きくて機械的強度に優れると共に適度な伸度を有していて靭性に優れると共に、全光線透過率が高くて透明性に優れ、更に黄色度が小さくて色相に優れており、しかも高温に曝されても全光線透過率が高く維持され且つ黄色度が小さく維持されている。
特に、トリエポキシ化合物(A−1)と共に更にナノシリカ粒子を含有している実施例4および5の光学的立体造形用樹脂組成物は、優れた透明性および黄変の小さい優れた色相と共に、熱変形温度が一層高くて耐熱性に優れ、更に140℃で2時間という極めて高い温度に曝された場合にも、全光線透過率の低下が小さくて高い透明性を維持しており、さらに黄色度の増加が小さくて黄変の小さい優れた色相を維持しており、かかる点からも耐熱性に優れている。
【0112】
それに対して、トリエポキシ化合物(A−1)を含有しない比較例1〜3の光学的立体造形用樹脂組成物から得られた立体造形物は、実施例1〜5の光学的立体造形用樹脂組成物から得られた立体造形物に比べて、熱変形温度が低くて耐熱性に劣っており、しかも引張破断強度および曲げ強度が低くて機械的強度にも劣っている。
その上、比較例1〜3の光学的立体造形用樹脂組成物から得られた立体造形物、特に比較例1および2の光学的立体造形用樹脂組成物から得られた立体造形物は、60℃で2時間加熱した後の全光線透過率は高いが、120℃で2時間加熱した後では全光線透過率が大幅に低下している。
さらに、比較例1〜3の光学的立体造形用樹脂組成物から得られた立体造形物、特に比較例1および2の光学的立体造形用樹脂組成物から得られた立体造形物では、120℃で2時間加熱した後の黄色度が高く、高温加熱によって色相が大幅に低下している。
表1および表2における上記した実施例1〜5および比較例1〜3の結果は、図1および図2のグラフ、並びに図3の写真からも裏付けられる。
【0113】
《実施例6》
(1) トリエポキシ化合物(A−1)[2−(4−グリシジルオキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン](「テクモアVG3101L」)20部、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「EP−4100E」)5部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「UVR−6105」)2部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(「OXT−221」)15部、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(「OXT−101」)5部およびナノシリカ粒子の分散物(ナノレジン社製「Nanopox E 470」、平均粒径約20nmのナノシリカ粒子がビスフェノールAジグリシジルエーテル中に分散した分散物、ナノシリカ粒子の含有量40質量%)30部を約100℃で加熱して混合した後、室温(25℃)に冷却し、その混合物に、室温下で、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(「NK−A9550」)10部、ラウリルアクリレート(「NK−LA」)6部、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(「CPI−101A」)4部(カチオン重合開始剤)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア184」)(ラジカル重合開始剤)3部(全部の合計100部)をよく混合して光学的立体造形用樹脂組成物を調製した(光学的立体造形用樹脂組成物中のナノシリカ粒子の含有量15質量%)。この光造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、粘度750mPa・s(25℃)であった。
(2) 上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして光学的立体造形を行って、物性測定用のJIS K−7171に準拠したバー形状の試験片を作製し、その熱変形温度を測定したところ、A法(荷重1.81MPa)による熱変形温度は70℃、B法(荷重0.45MPa)による熱変形温度は85℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
トリエポキシ化合物(A−1)のうちの少なくとも1種を本発明で規定する範囲内の量で含有する本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、活性エネルギー線による硬化感度が高く、低粘度で造形時の取り扱い性に優れ、造形物の解像度が高く造形精度に優れ、硬化時の体積収縮率が小さいという優れた諸特性を有するだけでなく、熱変形温度が高くて耐熱性に優れ、しかも高い引張強度および曲げ強度を有していて力学的強度に優れると共に適度な伸度を有していて靭性に優れると共に、透明性および色相にも優れる立体造形物を与える。そのため、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデル、複雑な熱媒回路の設計用の部品、複雑な構造の熱媒挙動の解析企画用の部品、その他の複雑な形状や構造を有する諸物性に優れる各種の立体造形物を、高い造形速度および寸法精度で円滑に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) カチオン重合性有機化合物(A)、ラジカル重合性有機化合物(B)、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を含有する光学的立体造形用樹脂組成物であって;
(ii) カチオン重合性有機化合物(A)として、下記の化学式(A−1);
【化1】


で表されるトリエポキシ化合物(A−1)を、光学的立体造形用樹脂組成物の質量に基づいて5〜50質量%の割合で含有することを特徴とする光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて、カチオン重合性有機化合物(A)を30〜85質量%、ラジカル重合性有機化合物(B)を10〜60質量%、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(C)を0.1〜10質量%および活性エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(D)を0.1〜10質量%の割合で含有する請求項1に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項3】
平均粒径1〜200nmのナノシリカ粒子(E)を、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて1〜50質量%の割合で更に含有する請求項1または2に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項4】
カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、下記の一般式(A−2);
【化2】


(式中、mは0〜10の整数を示す。)
で表されるジエポキシ化合物(A−2)を、光学的立体造形用樹脂組成物の全質量に基づいて20質量%以下の割合で含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項5】
カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、シクロアルケンオキシド構造を分子中に有するエポキシ化合物(A−3)を、カチオン重合性有機化合物(A)の質量に基づいて80質量%以下の割合で更に含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項6】
カチオン重合性有機化合物(A)の一部として、オキセタン基を1個または2個以上有するオキセタン化合物(A−4)を、カチオン重合性有機化合物(A)の質量に基づいて5〜50質量%の量で更に含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項7】
ラジカル重合性有機化合物(B)として、(メタ)アクリル基を1個以上有するアクリル系化合物(B−1)を、ラジカル重合性有機化合物(B)の質量に基づいて50質量%以上の量で含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学的立体造形物を用いて光学的立体造形を行って立体造形物をつくり、当該立体造形物に紫外線照射処理および/または熱処理を施すことを特徴とする立体造形物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−265408(P2010−265408A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118717(P2009−118717)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(391064429)シーメット株式会社 (38)
【Fターム(参考)】