説明

光学積層シート

【課題】光を外部に取り出す効率が高く、線膨張係数が小さく、寸法安定性および水蒸気バリア性に優れる光学積層シートを提供すること。
【解決手段】透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に少なくとも1層以上の有機物層、無機物層および低屈折率層を有する光学積層シートであって、前記透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数が40ppm以下であり、前記低屈折率層の屈折率が前記透明基材の透明樹脂及び繊維状フィラーの屈折率より小さいことを特徴とする光学積層シートであり、好ましくは、各層が透明基材、有機物層、無機物層、低屈折率層の順から成る光学積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を外部に取り出す効率が高く、線膨張係数が小さく、寸法安定性および水蒸気バリア性に優れる光学積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い、各種の表示素子が開発されている。その中で、エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、自発光型であるため視野角が広く、応答速度が速く、またバックライト、偏光板などが不要であることから薄型が可能であり、完全固体素子であるため衝撃性も高いなどの特長を有していることから、薄型表示装置として注目されている。他の薄型ディスプレーと比較しても薄型、軽量、低消費電力である。有機EL発光装置の一般的な構成としては、透明基板上に、透明電極(例えばITO)、正孔注入層、低分子あるいは高分子からなる発光層、電極(例えばMg)が順に積層されてなり、さらにその上層に保護カバーが配置される。また、トップエミッション型と呼ばれるタイプのように、発光層が積層される基板とは別の透明基板(透明シールと呼ばれることもある。)から光が透過し、出射する場合もある。
【0003】
有機EL発光装置の透明基板には、重くて割れやすいガラスに替わり、軽くて割れにくいプラスチックの採用が検討されている。しかしながら、プラスチックを透明基板として有機EL素子に用いた場合、水蒸気バリア性が不足し、有機EL素子の発光材料は水分により劣化しやすいため、表示欠陥となり表示品位が低下する。また、プラスチックを透明基板として表示素子に用いた場合、ガラス基板よりも熱線膨張係数が大きいため、表示画素を加工する寸法精度が確保できず、高精細な表示を得ることが難しい。
【0004】
また、上記のような有機EL発光装置の構成においては、基板に例えば屈折率が1.5〜1.6程度の材料を用いた場合、約20%しか光を取り出せず、残りの約80%は素子の界面で生じる全反射により導波光として失われ、明るさが不足していた。一方、液晶素子等においても光の取り出し効率を上げることによって、バックライトの消費電力を低減することができ、連続使用時間の延長、省エネルギーといった効果を期待できることから、表示素子全般に、光を外部に取り出す効率を上げることが課題となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光を外部に取り出す効率が高く、線膨張係数が小さく、寸法安定性および水蒸気バリア性に優れる光学積層シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
(1)透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に少なくとも1層以上の有機物層、無機物層および低屈折率層を有する光学積層シートであって、前記透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数が40ppm以下であり、前記低屈折率層の屈折率が前記透明基材の透明樹脂及び繊維状フィラーの屈折率より小さいことを特徴とする光学積層シート。
(2)前記各層が透明基材、有機物層、無機物層、低屈折率層の順から成る(1)記載の光学積層シート。
(3)前記低屈折率層の屈折率が1.0〜1.3である(1)又は(2)記載の光学積層シート。
(4)前記低屈折率層が、孔径が可視光の波長よりも小さい多孔質体を主成分とする(1)〜(3)何れか記載の光学積層シート。
(5)前記透明樹脂がカチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物を硬化させて得られるものであり、前記カチオン重合可能な成分が1種又は2種以上のエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基を有する化合物を含む(1)〜(4)何れか記載の透明樹脂シート。
(6)前記透明樹脂が化学式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂を主成分として含む樹脂組成物を硬化させて得られるものである(1)〜(5)何れか記載の光学積層シート。
【化2】


(7)前記透明樹脂と前記繊維状フィラーとの屈折率差が0.01以下である(1)〜(6)何れか記載の光学積層シート。
(8)前記繊維状フィラーがガラス繊維布である(1)〜(7)何れか記載の光学積層シート。
(9)前記低屈折率層が、表示素子の透明電極層と接するように配置された(1)〜(8)何れか記載の光学積層シート。
(10)前記低屈折率層が、エレクトロルミネッセンス素子の透明電極層と接するように配置された(1)〜(8)何れか記載の光学積層シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学積層シートは、光を外部に取り出す効率が高く、線膨張係数が小さく、寸法安定性および水蒸気バリア性に優れるので、本発明のシートを有機EL発光素子等に適用すれば、軽くて割れにくく、高精細な表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に少なくとも1層以上の有機物層、無機物層および低屈折率層を有する光学積層シートである。
発光した光は一旦、屈折率が1.0の層中に入射されると、屈折率が1.0よりもはるかに大きい透明層を通過しても、導波光を生じない。そのため、入射光の全量を空気中に取り出すことができる。例えば有機EL発光素子等の表示素子において、基板と透明電極層の間に屈折率が小さい層を設け、導波光を低減することにより、発光した光を外部に取り出す効率を高くすることができる。
本発明の光学積層シートに使用する透明基材に用いる透明樹脂としては、各種の樹脂を使用することが可能であり特に限定されるものではないが、カチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物が硬化させて得られるものが好ましく、カチオン重合可能な成分としては、例えばエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基等が挙げられる。
【0009】
エポキシ基を有する化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂としては例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3‘、4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,8,9、ジエポキシリモネン、ジシクロペンタジエンジオキサイド、シクロオクテンジオキサイド、アセタールジエポキシサイド、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4―エポキシシクロヘキシルカルボン酸がエステル結合したもの、エポキシ化されたヘキサヒドロベンジルアルコール等、脂環式多官能エポキシ樹脂、水添ビフェニル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
またオキセタニル基を有する化合物としては1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(アロンオキセタンOXT−121(XDO))、ジ[2−(3−オキセタニル)ブチル]エーテル(アロンオキセタンOXT−221(DOX))、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(HQOX)、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(RSOX)、1,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(CTOX)、4,4’−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル(4,4’−BPOX)、2,2’−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ビフェニル(2,2’−BPOX)、3,3’,5,5’−テトラメチル〔4,4’−ビス(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル(TM−BPOX)、2,7−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ナフタレン(2,7−NpDOX)、1,6−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン(OFH−DOX)、3(4),8(9)−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、1,2−ビス[2−{(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}エチルチオ]エタン、4,4’−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]チオジベンゼンチオエーテル、2,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ノルボルナン(NDMOX)、2−エチル−2−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]−1,3−O−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール(TMPTOX)、2,2−ジメチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール(NPGOX)、2−ブチル−2−エチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、1,4−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−ブタン−1,4−ジオール、2,4,6−O−トリス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]シアヌル酸、ビスフェノールAと3−エチル−3−クロロメチルオキセタン(OXCと略す)のエーテル化物(BisAOX)、ビスフェノールFとOXCのエーテル化物(BisFOX)、フェノールノボラックとOXCのエーテル化物(PNOX)、クレゾールノボラックとOXCのエーテル化物(CNOX)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのシリコンアルコキサイド(OX−SC)3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(アロンオキセタンOXT−212(EHOX))、3−エチル−3−(ドデシロキシメチル)オキセタン(OXR−12)、3−エチル−3−(オクタデシロキシメチル)オキセタン(OXR−18)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(アロンオキセタンOXT−211(POX))、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタン(CHOX)等が上げられる。ここで前記の括弧内は東亞合成株式会社 の製品名又は略称である。
【0011】
ビニルエーテル基を有する化合物としては特に限定されないが、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールものビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ペンタエリスリトール型テトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0012】
これらの内、特に化学式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂を主成分として主成分として含む樹脂組成物を硬化させて得られるものであることが好ましい。化学式(1)を適用した硬化物の線膨張係数(αm)は小さいため、繊維状フィラーと複合化した場合の線膨張係数も小さくできるからである。
【0013】
【化2】

【0014】
また、これらの樹脂及び化合物を硬化させるには、単独で硬化させる場合においてはカチオン触媒、またはアニオン触媒を用いて硬化させることができ、種々の硬化剤を用いて硬化させることも可能である。例えばエポキシ樹脂の場合、酸無水物や脂肪族アミンを用いて硬化させることができる。
【0015】
前記カチオン系硬化触媒としては、例えば加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出するもの(例えばオニウム塩系カチオン系熱カチオン系硬化触媒またはアルミニウムキレート系カチオン系硬化触媒)や、活性エネルギー線によってカチオン重合を開始させる物質を放出させるもの(例えばオニウム塩系カチオン系硬化触媒等)が挙げられる。これらの中でも、熱カチオン系硬化触媒が好ましい。これにより、より耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0016】
前記熱カチオン系硬化触媒としては、例えば芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。具体的には、芳香族スルホニウム塩として三新化学工業製のSI-60L、SI-80L、SI-100L、旭電化工業製のSP-66やSP-77等のヘキサフルオロアンチモネート塩挙げられ、アルミニウムキレートとしてはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられ、三フッ化ホウ素アミン錯体としては、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体等が挙げられる。
【0017】
前記カチオン系触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば前記式(1)で示されるエポキシ樹脂を使用する場合は、該エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましく、特に0.5〜1.5重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化性が低下する場合があり、前記上限値を超えると透明基材が脆くなる場合がある。必要に応じて硬化反応を促進させるため増感剤、および酸増殖剤等もあわせて用いることが可能である。
【0018】
透明基材には繊維状フィラーと樹脂との屈折率をあわせて透明性を向上させるため、透明樹脂中には樹脂、有機微粒子、無機微粒子などの屈折率調整成分を添加することができる。屈折率調整成分は、主成分の樹脂の屈折率が使用する繊維状フィラーの屈折率よりも高い場合は、繊維状フィラーの屈折率よりも低い成分を添加することができ、逆に主成分の屈折率が使用する繊維状フィラーよりも低い場合は、繊維状フィラーの屈折率よりも高い成分を添加することができる。
【0019】
屈折率調整成分として樹脂を添加する場合には、主成分樹脂と架橋反応する官能基を有する化合物であるカチオン重合可能な成分を添加することが好ましい。前記カチオン重合可能な成分としては、1種又は2種以上のエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基を有する化合物であることが好ましい。
【0020】
例えば、シルセスキ骨格を有する脂環式エポキシモノマー、シルセスキ骨格を有するオキセタンモノマー、シリケート構造を有するオリゴマー(小西化学製:PSQレジン、東亜合成製:オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート)、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のカップリング剤が挙げられる。特に化学式(2)で示されるオキセタニルシリケートであることが好ましい。
【化3】

nは1〜5の整数
【0021】
屈折率調整成分として無機微粒子を添加する場合はたとえばナノ粒子、ガラスビーズ等が挙げられ、平均分散粒子径が100nm以下となるような粒子が好ましい。
具体的にはシリケート構造を有するシリカ微粒子、または酸化チタン微粒子、酸化ジルコニア微粒子、アルミナ微粒子等が挙げられる。これらの粒子は屈折率の調整のために適宜用いることができる。
【0022】
例えば主成分である樹脂の屈折率が繊維状フィラーの屈折率よりも高い場合には、繊維状フィラーより屈折率の低いシリカ微粒子が好ましい。これにより耐熱性、線膨張係数等の硬化物の物性を低下させずに高い透明性を得ることができる。
また同じシリカ微粒子の中でも表面処理が施されているシリカ微粒子がより好ましい。なぜなら微粒子表面にはカチオン重合を促進する活性水素(シラノール基)が存在し、表面処理がない場合、硬化反応が進行し保存安定性が低いからである。
【0023】
本発明に用いるの繊維状フィラーの屈折率は、特に限定されないが、1.4〜1.6が好ましく、特に1.5〜1.55が好ましい。透明樹脂のアッベ数と繊維状フィラーのアッベ数が近いほど広い波長領域で屈折率が一致し、広範囲で高い光線透過率が得られるからである。
【0024】
本発明に用いる繊維状フィラーとしては、ガラス繊維、ガラスクロスやガラス不織布などのガラス繊維布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラスなどがあげられ、中でも線膨張係数の低減効果が高いことからガラスクロス、ガラス不織布等のガラス繊維布が好ましく、さらにガラスクロスが最も好ましい。
【0025】
ガラスの種類としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Tガラス、Dガラス、NEガラス、クオーツ、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが上げられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物が少なく入手の容易なEガラス、Sガラス、TガラスNEガラスが好ましい。
【0026】
繊維状フィラーの配合量は透明基材に対して1〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。繊維状フィラーの配合量がこの範囲であれば成形が容易で、複合化による線膨張の低下の効果が認められる。
【0027】
本発明に用いる透明基材の厚さは、好ましくは50〜2000μmであり、より好ましくは50〜1000μm、最も好ましくは50〜200μmである。
【0028】
本発明に用いる透明基材は、30℃〜150℃における平均線膨張係数が40ppm以下であることが好ましく、より好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
【0029】
本発明の光学積層シートに使用する透明基材の生産方法には制限はなく、例えば未硬化の樹脂組成物と繊維状フィラーとを直接混合し、必要な方に注型した後に架橋させてシートとする方法、未硬化の樹脂組成物を溶剤に溶解し繊維状フィラーを分散させてキャストした後、架橋させてシートとする方法、未硬化の樹脂組成物または樹脂組成物を溶剤に溶解させたワニスを織布フィラーや不織布フィラーに含浸させた後架橋させてシートなどとする方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の光学積層シートは、表示素子用に要求される水蒸気バリア性を満たすために、透明基材には少なくとも1層以上の有機物層、無機物層が積層される。本発明に用いられる無機物層としては、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce等の1種以上を含む酸化物、窒化物、酸化窒化物等が挙げることができるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明に用いられる有機物層としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができるが、熱またはUV光により硬化する硬化性樹脂が好ましい。
【0032】
有機物層に用いる硬化性樹脂としてはエポキシ基、アクリル基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等の官能基を有する硬化性モノマー、若しくはオリゴマー等が挙げられ、これらの樹脂を適宜単独で、又は混合し用いることが出来る。特に脂環式エポキシ基を有するエポキシ樹脂を主成分として用いることが好ましく、脂環式エポキシ樹脂としては特にビスフェノールA型骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、又は水添ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
本発明の有機物層に用いる硬化性樹脂組成物の硬化は、カチオン系硬化触媒を用いて硬化することが好ましい。カチオン系硬化触媒としては、例えば加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出するもの(例えばオニウム塩系カチオン硬化触媒、またはアルミニウムキレート系カチオン硬化触媒)や、活性エネルギー線によってカチオン重合を開始させる物質を放出させるもの(例えばオニウム塩系カチオン系硬化触媒等)が挙げられる。これらの中でも、光カチオン系硬化触媒を用いて、紫外線等の照射により光硬化させることが好ましい。これにより、より体積変化率の小さい硬化物を得ることができる。
光カチオン系硬化触媒としては旭電化工業製のSP170等が挙げられる。
【0034】
本発明の有機物層に用いる硬化性樹脂組成物には、硬化後の樹脂の線膨張をさらに低下させるため透明性を損なわない範囲で無機フィラーを添加するのが好ましい。
【0035】
添加する無機フィラーとしては、たとえばナノ粒子、ナノ繊維、ガラスビーズ等が挙げられ、平均分散粒子径が100nm以下となるような粒子が好ましい。何故ならば粒子径が上限値を超えると粒子と樹脂との屈折率が異なる場合、界面での散乱が大きくなるからである。
ただし、平均分散粒子系が100nmを超える場合であっても透明樹脂層の透明樹脂の屈折率を無機フィラーの屈折率に合わせれば使用することが可能である。この場合透明樹脂と無機フィラーとの屈折率差は、0.01以下が好ましい。
特に無機フィラーとしては、ナノシリカを用いることが好ましい。
【0036】
本発明の有機物層には特性を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のオリゴマーやモノマーを併用してもよい。これらのオリゴマーやモノマーを使用する場合は全体の屈折率がガラスフィラーの屈折率に合うように組成比を調整する必要がある。また、必要に応じて、透明性、耐溶剤性などの特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含んでいてもよい。
【0037】
本発明の光学積層シートにおいて、透明基材、無機物層、有機物層の配置に関しては、特に限定はしないが、層間の密着性、水蒸気バリア性を良好にするため、透明基材、有機物層、無機物層の順であるものが好ましい。さらに透明基材のバリア性を良好にするため、無機物層側に、有機物層または無機物層の繰り返しを更に積層してもよい。また、低屈折率層の位置に関しても、特に限定はしないが、本発明の表示素子用積層フィルムをEL素子等の表示素子に使用する場合、低屈折率層は、EL素子の透明電極層と接するように配置することが好ましい。こうすることによって、光は水蒸気バリア層等の無機物層と透明電極との界面での反射が起こる前に低屈折率層に入射するため、出射効率をより高めることができる。したがって、各層の構成に関しては、透明基材、有機物層、無機物層、低屈折率層の順が最も好ましい。
【0038】
本発明に用いられる低屈折率層としては、透明基材の透明樹脂及び繊維状フィラーの屈折率より小さければ、特に限定されないが、屈折率が1.0〜1.3であることが好ましく、その値は、屈折率が1.0に近いほど好ましい。屈折率が1.3より大きくなると、光を外部に取り出す効率を高くする効果が得られないおそれがある。
【0039】
上記の屈折率を満たす低屈折率層としては、多孔質体を主成分とする層が好ましく、多孔質体しては、有機物または無機物の多孔質体、すなわち、シリカエアロゲル、アルミナエアロゲル、ポリイミド空孔体等が挙げられる。上記多孔質体は、可視光の波長よりも小さい孔径を有するものが好ましく、0.1μm以下の孔径を有するものがさらに好ましい。
【0040】
孔径が可視光の波長よりも小さい多孔質体を主成分とする層の作製方法は特に限定されないが、例えば、フォトマスクを用いたパターニング法、透明基材よりも屈折率の小さい膜を作製した後、やすり等の適当な材料で擦る方法、二成分のうち一成分を揮発または分解させる方法などが挙げられる。
【0041】
低屈折率層の凹凸等により生じる表示欠陥発生を防ぐため、低屈折率層は平坦であることが好ましく、平均粗さ(Ra)が5nm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、何ら下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
Tガラス系ガラスクロス(厚さ90μm、屈折率1.523、日東紡製)に化学式(1)の構造を有する水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業性、E−BP)100重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(三新化学製SI−100L)1重量部を混合した樹脂組成物を含浸させ脱泡した。この樹脂含浸ガラスクロスを離型処理したガラス基板に挟み込んで80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚さ100μmの透明基材を得た。得られた透明基材の片面にE−BPを100重量部、光カチオン系重合触媒(旭電化性SP−170)3重量部、メチルエチルケトンを100重量部からなる均一な混合溶液をバーコーターで塗布し、60℃10分加熱乾燥後さらに500mJ/cmのUV照射で硬化させた後、250℃の窒素雰囲気下でさらに加熱し、厚さ4μmの有機物層を形成した。
つぎに、スパッタ装置の真空槽内に前記有機物層を形成した透明基材をセットして、10−4Pa台まで真空引きし、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.04Pa導入、反応ガスとして酸素を分圧で0.04Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSiターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを介しした。プロセスが安定したところでシャッターを開き積層体へのSiOx無機物層の形成を開始した。100nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。その後、真空槽内に大気を導入しSiOx無機物層の形成された積層体を取り出した。さらに、該積層体のSiOx無機膜堆積面に、E−BPを100重量部、光カチオン系重合触媒(旭電化性SP−170)3重量部、メチルエチルケトンを300重量部からなる均一な混合溶液をバーコーターで塗布し、60℃10分加熱乾燥後さらに500mJ/cmのUV照射で硬化させ、厚さ2μmの有機物層を形成した。再び該積層体をスパッタ装置の真空槽内にセットし、10−4Pa台まで真空引きし、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.04Pa導入、反応ガスとして酸素を分圧で0.04Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSiターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開き積層体へのSiOx無機膜の形成を開始した。100nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。その後、真空槽内に大気を導入しSiOx無機物層の形成されたバリア付透明基材を取り出した。
このバリア付透明基材に低屈折率層として、シリカエアロゲル膜(屈折率1.01、孔径約0.05μm、厚み2μm)をSiOx無機膜側に設けた。この積層シートの低屈折率層側に透明電極層(ITO)、発光層(TPD/Alq3)、陰極(Mg/Agの共蒸着)を設け、金属キャップで封止して、有機EL素子を作製し、輝度、水蒸気透過度を測定した。正面輝度は425cd/m2、水蒸気透過度は0.1g/m2/day未満(信頼限界未満)であった。
【0043】
(実施例2)
NEガラス系ガラスクロス(厚さ90μm、屈折率1.510、日東紡製)に水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業性、E−BP)70重量部、オキセタニルシリケート(東亞合成製、OXT−101)30重量部、芳香族スルホニウム系熱カチオン触媒(三新化学製SI−100L)1重量部を混合した樹脂組成物を含浸脱泡した。この樹脂含浸ガラスクロスを離型処理したガラス基板に挟み込んで80℃で2時間加熱後、250℃で更に2時間加熱し厚さ100μmの透明基材を得た。得られた透明基材の片面に実施例1と同様な方法にて4μmの有機物層/100nmのSiOx膜/2μmの有機物層/100nmのSiOx膜を形成し、バリア付透明基材を作製した。
この基材に低屈折率層として、ポリイミド空孔体(屈折率1.20、孔径約0.01μm、厚み2μm)をSiOx無機膜側に設けた積層シートを作製した。この積層シートの低屈折率層側に透明電極層(ITO)、発光層(TPD/Alq3)、陰極(Mg/Agの共蒸着)を設け、金属キャップで封止して、有機EL素子を作製し、実施例1と同様の測定を行った。輝度は370cd/m、水蒸気透過度は0.1g/m2/day未満(信頼限界未満)であった。
【0044】
(比較例1)
実施例1において、低屈折率層を設けていない有機EL素子を作成し、実施例1と同様の測定を行った。輝度は268cd/m2、水蒸気透過度は0.1g/m2/day未満(信頼限界未満)であった。
【0045】
実施例、比較例の配合及び評価結果を表1に示す。評価方法は以下の通りである。
(a)平均線膨張係数
SEIKO電子(株)製TMA/SS6000型熱応力歪み測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で昇温させて測定した。荷重を5gにし引っ張りモードで測定を行い、30℃から150℃における平均線膨張係数を算出した。
(b)屈折率
透明基材に用いた樹脂組成物のみを、透明基材と同様の硬化条件で硬化させ、アッベ屈折率計で波長598nmにおける屈折率を測定した。
(c)輝度
積分球付き輝度計で直流電圧印加時の輝度を暗所で測定した。
(d)水蒸気バリア性
各フィルムの水蒸気透過度をJISK7129B法にて測定した。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂及び繊維状フィラーからなる透明基材の片面に少なくとも1層以上の有機物層、無機物層および低屈折率層を有する光学積層シートであって、前記透明基材の30〜150℃での平均線膨張係数が40ppm以下であり、前記低屈折率層の屈折率が前記透明基材の透明樹脂及び繊維状フィラーの屈折率より小さいことを特徴とする光学積層シート。
【請求項2】
前記各層が透明基材、有機物層、無機物層、低屈折率層の順から成る請求項1記載の光学積層シート。
【請求項3】
前記低屈折率層の屈折率が1.0〜1.3である請求項1又は2記載の光学積層シート。
【請求項4】
前記低屈折率層が、孔径が可視光の波長よりも小さい多孔質体を主成分とする請求項1〜3何れか記載の光学積層シート。
【請求項5】
前記透明樹脂がカチオン重合可能な成分を含む樹脂組成物を硬化させて得られるものであり、前記カチオン重合可能な成分が1種又は2種以上のエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、又はビニルエーテル基を有する化合物を含む請求項1〜4何れか記載の光学積層シート。
【請求項6】
前記透明樹脂が化学式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂を主成分として含む樹脂組成物を硬化させて得られるものである請求項1〜5何れか記載の光学積層シート。
【化1】

【請求項7】
前記透明樹脂と前記繊維状フィラーとの屈折率差が0.01以下である請求項1〜6何れか記載の光学積層シート。
【請求項8】
前記繊維状フィラーがガラス繊維布である請求項1〜7何れか記載の光学積層シート。
【請求項9】
前記低屈折率層が、表示素子の透明電極層と接するように配置された請求項1〜8何れか記載の光学積層シート。
【請求項10】
前記低屈折率層が、エレクトロルミネッセンス素子の透明電極層と接するように配置された請求項1〜8何れか記載の光学積層シート。

【公開番号】特開2008−226629(P2008−226629A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62786(P2007−62786)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】