説明

光学素子の製造方法、光学素子及び光ピックアップ装置

【課題】確実に耐光性を向上させることのできる光学素子の製造方法及び光学素子を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂のペレットをフッ素ガス雰囲気中に曝すことにより、ペレットに対してフッ素化処理を施す。これにより、ペレットの表面から内部に向かって徐々に分子内でのフッ素の導入(C−H結合からC−F結合への置換)が起こり、材料のフッ素含有率が増加する。対物レンズ37の製造方法は、フッ素化処理工程と、フッ素化処理されたペレットを溶融混練して成形する成形工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法、光学素子及び光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子の材料としては、成形性やコストの観点から樹脂材料を用いることが多く、このような光学素子においては、耐光性を高くしたいという要望が強い。
【0003】
ここで、一般に、耐光劣化の要因はC−H結合の解離から始まるラジカル反応とされており、C−H結合が切れなければラジカルは発生しない。そのため、本発明者等が鋭意研究したところ、C−H結合よりもC−F結合の方が結合エネルギーが高く、このC−F結合を光学素子内で増加させれば、ラジカルの発生を抑え、耐光性を向上させられることが判明した。
【0004】
ところで、反射防止膜の技術分野においては、無機材料からなる反射防止膜を設ける代わりに、樹脂製の基材(成形品)をフッ素ガス中に曝して表面をフッ素化処理することでC−H結合をC−F結合に置換し、屈折率を制御する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−274748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フッ素ガスが効果を及ぼす範囲は成型品の表面近傍部分のみに限られるため、成形品に対してフッ素化処理を行ったのでは、内部がフッ素置換されずにC−H結合のままとなってしまい、特に405nm等の短波長光を透過させるような光学素子では、依然として耐光性を向上させることができない。
【0006】
本発明の課題は、確実に耐光性を向上させることのできる光学素子の製造方法及び光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、樹脂製の成形部を有する光学素子の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を含有するペレットに対してフッ素化処理を行うフッ素化工程と、
フッ素化処理された前記ペレットを溶融混練して前記成形部を成形する成形工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の光学素子の製造方法においては、
前記熱可塑性樹脂は、脂環式ポリオレフィンであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の光学素子の製造方法においては、
前記光学素子としてブルー用光ピックアップ装置に用いられる対物レンズを製造することが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様によれば、光学素子であって、
本発明の光学素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様によれば、光ピックアップ装置であって、
ブルー光を出射する光源と、
本発明の光学素子とを備え、
前記光学素子が対物レンズとして使用されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を含有するペレットに対してフッ素化処理を行い、フッ素化処理されたペレットを溶融混練して成形を行うので、光学素子の表面及び内部が均一にフッ素化処理された状態となる。従って、光学素子の表面にフッ素化処理する場合と比較して、確実に耐光性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0014】
図1に示す通り、光ピックアップ装置30には、光源としての半導体レーザー発振器32が具備されている。半導体レーザー発振器32は、BD(Blu-ray Disc)用として波長380〜420nmの特定波長(例えば405nm)のブルーレーザー(青紫色レーザー)を出射するようになっている。半導体レーザー発振器32から出射される青紫色光の光軸上には、半導体レーザー発振器32から離間する方向に向かって、コリメータ33、ビームスプリッタ34、1/4波長板35、絞り36、対物レンズ37が順次配設されている。
【0015】
ビームスプリッタ34と近接した位置であって、上述した青紫色光の光軸と直交する方向には、2組のレンズからなるセンサーレンズ群38、センサー39が順次配設されている。
【0016】
対物レンズ37は、高密度な光ディスクD(BD用光ディスク)に対向した位置に配置されており、半導体レーザー発振器32から出射された青紫色光を光ディスクDの一面上に集光するようになっている。対物レンズ37は像側開口数NAが0.7以上となっている。対物レンズ37には、2次元アクチュエータ40が具備されており、2次元アクチュエータ40の動作により、対物レンズ37は光軸上を移動自在となっている。
【0017】
図1中の拡大図に示す通り、対物レンズ37は主には成形部50で構成されており、その表面37a上に反射防止膜60が形成されている。
【0018】
このうち、成形部50はレンズ形状に成形されており、集光機能などの本質的な光学機能を発揮するようになっている。この成形部50は熱可塑性樹脂を含有する樹脂材料で構成されており、そのような熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂であることが好ましく、環状オレフィンであることが特に好ましい。具体例として、特開2003−73559号公報に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を下記表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
なお、上述した熱可塑性樹脂は、光学材料としての寸法安定性の観点から、吸湿率が0.2%以下であることが望ましいため、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF:デュポン社製)、脂環式ポリオレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂)(日本ゼオン製:ZEONEX、三井化学製:APEL、JSR製:アートン、チコナ製:TOPAS)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好適に用いられる。
【0021】
また、成形部50とは、熱可塑性樹脂の構成元素が炭素と水素から成る重合体で、上記の例のほかにも、炭素と水素からなる重合体であるならば、特に、限定されるものではない。
【0022】
また、成形部50に添加される酸化防止剤や紫外線吸収剤、可塑剤のような、全重量に対して添加量が5%以下である添加剤の構成元素は、炭素と水素以外でも構わない。
【0023】
また、成形部50を製造する際に使用される触媒や反応停止剤のような重合副資材が残留している場合でも、全重量に対して残留量が1%未満であれば、その構成元素が炭素と水素に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態において、成形部50としては、特に上記条件が満たされていれば限定されないが、高透明性、高耐熱性、低吸水性、高純度、低複屈折性を加味すると、環状オレフィン重合体であることがより好ましい。
【0025】
反射防止膜60は基本的には2層構造を有している。成形部50の表面37aに対し直に第1層61が形成されており、その上に第2層62が形成されている。
【0026】
第1層61は屈折率1.7以上の高屈折率材料から構成された層であり、好ましくはTa,TaとTiOとの混合物,ZrO,ZrOとTiOとの混合物のいずれかで構成されている。第1層61はTiO,Nb,HfOで構成されてもよい。第2層62は屈折率1.7未満の低屈折率材料から構成された層であり、好ましくはSiO,MgFから構成されている。
【0027】
対物レンズ37では、第1層61,第2層62の上にさらに第1層61,第2層62を交互に積層し、反射防止膜60を全体で2〜7層構造としてもよい。この場合、成形部50の表面37aに直に接触する層は成形部50の種類に応じて、高屈折率材料の層(第1の層61)としてもよいし、低屈折率材料の層(第2の層62)としてもよい。本実施形態では成形部50の表面37aに直に接触する層が高屈折率材料の層となっている。
【0028】
なお、対物レンズ37では、表面37aに対して反射防止膜60が形成されているのと同様に、裏面37bにも反射防止膜60が形成されており、表面37aと裏面37bとの両面に対し反射防止膜60が形成されている。但し、対物レンズ37は反射防止膜60を有していなくても良い。
【0029】
続いて、成形部50の成形装置について説明する。
図2は、対物レンズ37の成形部50を射出成形するための成形装置1の概略構成を示す概念図である。
【0030】
この図に示すように、成形装置1は、樹脂材料の搬送方向における上流側から下流側に向かって、ホッパ11と、シリンダ12と、ノズル13と、射出成形型10等とを備えている。
【0031】
ホッパ11は、成形部50の主成分となる熱可塑性樹脂のペレットや、その他の添加材料からなる樹脂材料が供給される部分であり、シリンダ12に連結されている。シリンダ12は、内部にスクリュー120を備えるとともに、先端部でノズル13に連結されており、ホッパ11から供給された樹脂材料をスクリュー120によって混練しつつノズル13側に押し出すようになっている。また、このシリンダ12の側面には、シリンダ12内部の樹脂材料を溶融させるためのヒータ121が設けられている。
【0032】
ノズル13は、シリンダ12から押し出された樹脂材料を射出成形型10に射出する部分であり、後述する射出成形型10のスプルー103に連通している。
【0033】
射出成形型10は、ノズル13に対して固定された固定型101と、当該固定型101に対してX方向に接離可能に設けられた可動型102とを有しており、これら固定型101及び可動型102が当接することによって樹脂材料の流路としてのスプルー103、ランナー104及びゲート105と、樹脂材料を成形部50の形状に成形するためのキャビティ106とを形成するようになっている。
【0034】
ここで、固定型101は成形部50の一方の面を成形するものであり、可動型102は他方の面を成形するものである。
このうち、可動型102は、成形部50の外周側部分を成形する環状の型本体102Aと、型本体102Aに嵌合されて中央側部分を成形する突き出し型102Bとを有している。この突き出し型102Bは、型本体102Aに嵌合した状態でX方向に摺動可能となっており、突き出し部材102Cに押圧されて固定型101側に突出することにより、成形後の成形部50を射出成形型10から離型させるようになっている。
【0035】
続いて、対物レンズ37の製造方法について説明する。
【0036】
まず、熱可塑性樹脂のペレットをフッ素ガス雰囲気中に曝すことにより、ペレットに対してフッ素化処理を施す(フッ素化処理工程)。これにより、ペレットの表面から内部に向かって徐々に分子内でのフッ素の導入(C−H結合からC−F結合への置換)が起こり、材料のフッ素含有率が増加する結果、ペレットの耐光性が向上する。
【0037】
ここで、フッ素ガス雰囲気とは、フッ素ガスを含む気体に覆われていることを意味し、フッ素ガスと窒素,アルゴン等の不活性ガスとの混合ガスに覆われていることも含まれる。
【0038】
また、ペレットとは、樹脂を固めた粒状物であり、例えば5mm角程度の大きさを有している。ペレット粒が大きくなるとフッ素化処理部分が少なくなってしまうが、一般的な大きさであれば特に問題はない。このペレットには、熱可塑性樹脂以外の添加剤が混合されていても良い。
【0039】
このフッ素化処理工程において、材料表面からのフッ素の浸透深さ、フッ素化処理後の材料中のフッ素含有率はフッ素ガス雰囲気中のフッ素ガスの濃度、フッ素化処理温度、フッ素化処理時間に依存して変化することとなり、具体的には、フッ素濃度が高い場合、処理時間が長い場合、処理温度が高い場合に、フッ素の浸透深さが深くなり、またフッ素化処理後の高分子材料のフッ素含有率が高くなる。そのため、これらの条件を適宜選択することにより、ペレットのフッ素化層厚およびフッ素化率を任意に制御することが出来る。そして、フッ素含有率の増加に伴ってペレットの耐光性が向上するので、フッ素濃度、処理温度、処理時間を適宜選択すれば、所望の耐光性のペレットを形成することが可能である。ただし、極端にフッ素濃度を高くしたり、極端な高温長時間にしたりしてフッ素化処理を行うと分子が劣化するため、通常のフッ素化処理条件としてはフッ素濃度が1ppm〜25%、処理温度が0〜100℃、処理時間が0.1秒〜120分が好適である。
【0040】
次に、フッ素化処理されたペレットを成形装置1に用いて成形部50を成形する(成形工程)。
【0041】
具体的には、ペレットをホッパ11に入れ、ヒータ121で溶融させつつスクリュー120によって混練し、ノズル13の方向に搬送する。これにより、ペレット表面側でフッ素化処理されていた樹脂部分と、ペレット内部側でフッ素化処理されていなかった樹脂部分とが均一に混ざり合う。なお、このとき、必要に応じて種々の材料をホッパ11に投入しても良い。
【0042】
次に、融けた樹脂材料をノズル13から射出成形型10のスプルー103、ランナー104、ゲート105、キャビティ106に注入し、キャビティ106内で加圧成形する。これにより、樹脂材料が固化して成形部50が形成される。
【0043】
次に、可動型102を固定型101から離間させて成形部50を可動型102側に残した後、突き出し部材102Cによって突き出し型102Bを型本体102Aから突出させて、型本体102Aから成形部50を押し出す。
【0044】
次に、成形部50上に反射防止膜60を形成する。詳しくは、第1層61を構成する蒸着源を用いて第1層61を形成する。例えば、第1層61として(Ta+5%TiO)膜を形成する場合には、蒸発源としてオプトラン社製OA600を用い、電子銃加熱により当該蒸着源を蒸発させればよい。蒸着中は、真空蒸着装置内部の圧力が1.0×10−2PaまでOガスを導入し、蒸着速度を5Å/secの条件にコントロールしながら成膜するのがよい。そして成膜温度(蒸着装置内の温度)を適切な温度範囲内で保持する。
【0045】
次に、成形部50の反対面にも第1層61を形成するため、蒸着装置内部の反転機構により成形部50を反転させ、上記と同様にしてその反対面にも第1層61を形成する(第2層62の裏面への成膜についても同様である。)。
【0046】
そして、第1層61の上に続けて、第2層62を構成する蒸着源を用いて第2層62を形成する。例えば、第2層62としてSiO膜を形成する場合には、真空蒸着装置内部の圧力が1.0×10−2PaまでOガスを導入し、蒸着速度を5Å/secの条件にコントロールしながら成膜するのがよい。そして成膜温度(蒸着装置内の温度)を適切な温度範囲内で保持する。
【0047】
以上の工程により、対物レンズ37が製造される。
【0048】
続いて、光ピックアップ装置30の動作について説明する。
【0049】
光ディスクDへの情報の記録動作時や光ディスクDに記録された情報の再生動作時に、半導体レーザー発振器32から青紫色光が出射される。出射された青紫色光は、コリメータ33を透過して無限平行光にコリメートされた後、ビームスプリッタ34を透過して、1/4波長板35を透過する。さらに、当該青紫色光は絞り36及び対物レンズ37を透過した後、光ディスクDの保護基板Dを介して情報記録面Dに集光スポットを形成する。
【0050】
集光スポットを形成した青紫色光は、光ディスクDの情報記録面Dで情報ビットによって変調され、情報記録面Dによって反射される。そして、この反射光は、対物レンズ37及び絞り36を順次透過した後、1/4波長板35によって偏光方向が変更され、ビームスプリッタ34で反射する。その後、当該反射光は、センサーレンズ群38を透過して非点収差が与えられ、センサー39で受光されて、最終的には、センサー39によって光電変換されることによって電気的な信号となる。
【0051】
以後、このような動作が繰り返し行われ、光ディスクDに対する情報の記録動作や、光ディスクDに記録された情報の再生動作が完了する。
【0052】
以上の本実施形態によれば、熱可塑性樹脂を含有するペレットに対してフッ素化処理を行い、フッ素化処理されたペレットを溶融混練して成形を行うので、成形部50(対物レンズ37)の表面及び内部が均一にフッ素化処理された状態となる。従って、成形部50の表面にフッ素化処理する場合と比較して、確実に耐光性を向上させることができる。
【0053】
なお、上記の実施形態においては、本発明に係る光学素子を対物レンズ37として説明したが、他の種類・用途の光学素子としても良い。
また、フッ素化処理されたペレットで成形された成形部50の表面37aに反射防止膜60を形成することして説明したが、成形部50の表面を更にフッ素化処理した後、反射防止膜60を形成することとしても良い。この場合には、さらに耐光性を高めることが出来る。
【実施例1】
【0054】
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明に係る光学素子をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例・比較例においては、対物レンズには上述の反射防止膜60を設けていない。
【0055】
(1)サンプルの作製
本発明の実施例,比較例として、以下の表2に示すようなサンプルを作製した。以下、各サンプルについて具体的に説明する。
【0056】
【表2】

【0057】
(1.1)実施例1
攪拌装置を備えたステンレス製反応器内を十分に乾燥、窒素置換した。その後、この反応器に対し脱水シクロヘキサン300質量部、スチレン60質量部及びジブチルエーテル0.38質量部を仕込み、これらを60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)0.36質量部を添加して重合反応を開始させた。
【0058】
1時間重合反応を行い、その後、反応溶液中に、スチレン8質量部、イソプレン12質量部及び1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジリメタクリレート0.8質量部からなる混合モノマーを添加し、さらに1時間重合反応を行い、その後、反応溶液にイソプロピルアルコール0.2質量部を添加して反応を停止させた。
【0059】
次に、上記重合反応溶液300質量部を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、シリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(日揮科学工業社製:E22U,ニッケル担持型量60%)10質量部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換して、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度を160℃に設定し、その後圧力4.5MPaにて8時間水素化反応を行った。
【0060】
反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去し、シクロヘキサン800質量部を加えて希釈し、その後当該反応溶液を3500質量部のイソプロパノール中に注いで共重合体を析出させた。その後、この共重合体をろ過し取り出し、80℃にて48時間減圧乾燥させて「樹脂材料1」を得た。
【0061】
この「樹脂材料1」を3mm角程度にペレット化し、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で30分間フッ素化処理を行った。得られたペレットを射出成形してNA0.85の対物レンズを成形し、「実施例1」のサンプルとした。
【0062】
(1.2)実施例2
実施例1の対物レンズに対し、更に、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で10分間のフッ素化処理を行い、得られた対物レンズを「実施例2」のサンプルとした。
【0063】
(1.3)実施例3
エチレン及びビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エンのランダム共重合体100質量部と、界面活性剤としてのペンタエリスリトールジステアレート0.5質量部と、安定剤としてのペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3質量部と、HALS剤(ヒンダードアミン系耐光安定剤)としてのビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート1質量部とを、二軸混練機にて混練し「樹脂材料2」を得た。
【0064】
この「樹脂材料2」を3mm角程度にペレット化し、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で30分間フッ素化処理を行った。得られたペレットを射出成形してNA0.85の対物レンズを成形し、「実施例3」のサンプルとした。
【0065】
(1.4)実施例4
メタクリル酸メチル100質量部およびアクリル酸メチル1質量部に、アゾビスイソブチロニトリル0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.008質量部を添加して攪拌し、均一溶液とした。次に、この均一溶液を、水300質量部にポリメタクリル酸ナトリウム0.003質量部を添加した溶液の入った50Lジャケット付重合槽内に投入して攪拌した。そしてジャケットに温水を通して加熱し、80℃で3時間重合反応を行った。得られた重合体を水洗、乾燥し、メタクリル酸メチルを主成分とする「樹脂材料3」を得た。
【0066】
この「樹脂材料3」を3mm角程度にペレット化し、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で30分間フッ素化処理を行った。得られたペレットを射出成形してNA0.85の対物レンズを成形し、「実施例4」のサンプルとした。
【0067】
(1.5)比較例1
実施例1の「樹脂材料1」を射出成形してNA0.85の対物レンズを成形し、その後、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で30分間フッ素化処理を行い、得られた対物レンズを「比較例1」のサンプルとした。
【0068】
(1.6)比較例2
実施例3の「樹脂材料2」を射出成形してNA0.85の対物レンズを成形し、その後、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で30分間フッ素化処理を行い、得られた対物レンズを「比較例2」のサンプルとした。
【0069】
(1.7)比較例3
実施例4の「樹脂材料3」を射出成形してNA0.85の対物レンズを成形し、その後、1.1気圧、常温、Fガス濃度5%の条件下で30分間フッ素化処理を行い、得られた対物レンズを「比較例3」のサンプルとした。
【0070】
(2)サンプルの評価
作製した各サンプルに対し75℃で20mWレーザーを3000h照射し、以下の基準に従って耐光性を評価したところ、上述の表2に示す通りとなった。
【0071】
◎:レーザー照射前後で全く変化がない。
○:レーザー照射後、わずかな白濁が生じたが性能上問題ない。
△:レーザー照射後、性能にわずかな変化が生じたが実用上問題ない。
×:レーザー照射により照射白濁又は形状変化が発生した。
【0072】
(3)まとめ
表2の結果から、実施例1〜4のサンプルでは、レーザー照射後にも形状や光学性能に問題となる程の変化が無く、特に短波長の光を使用する場合において耐光性を向上させるのに有用であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される光ピックアップ装置の概略構成を示す図面である。
【図2】対物レンズを射出成形するための成形装置の概略構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0074】
1 成形装置
30 光ピックアップ装置
32 半導体レーザー発振器
33 コリメータ
34 ビームスプリッタ
35 1/4波長板
36 絞り
37 対物レンズ
37a 表面
37b 裏面
38 センサーレンズ群
39 センサー
40 2次元アクチュエータ
50 成形部
60 反射防止膜
61 第1層
62 第2層
D 光ディスク
保護基板
情報記録面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の成形部を有する光学素子の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を含有するペレットに対してフッ素化処理を行うフッ素化工程と、
フッ素化処理された前記ペレットを溶融混練して前記成形部を成形する成形工程とを備えることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子の製造方法において、
前記熱可塑性樹脂は、脂環式ポリオレフィンであることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学素子の製造方法において、
前記光学素子としてブルー用光ピックアップ装置に用いられる対物レンズを製造することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学素子。
【請求項5】
ブルー光を出射する光源と、
請求項4記載の光学素子とを備え、
前記光学素子が対物レンズとして使用されていることを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−42517(P2010−42517A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205972(P2008−205972)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】