説明

光学素子調整機構、液晶表示装置、および投写型表示装置

【課題】垂直配向用光学補償板を垂直配向素子の入射面に対して最適な傾きに調整することが可能であり、かつその状態で保持、固定できる光学素子調整機構を提供する。
【解決手段】垂直配向用光学補償板11を保持する光学補償板保持部20の中心を通る対角線と保持枠21との交点の近傍に対角線を中心軸とする第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とを設け、光学エンジンベース30に設けられた保持部支持枠31には両回転突起部22、23と回転可能に係合する挿入溝を設け、その保持部支持枠31に取り付けられた光学補償板保持部20の保持枠21に設けられた固定用アーム28のスライド面と、光学エンジンベース30に取り付けたブラケット40のすべり面とを滑合させることによって光学補償板11の回転角度を調整し、固定ねじ37で固定用アーム28をブラケット40に保持して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子調整機構、液晶表示装置、および投写型表示装置に関し、特に垂直配向型の液晶素子を用いた液晶表示装置において、コントラスト、色むらを向上させる構造を有する光学素子調整機構と、その光学素子調整機構を備えた液晶表示装置と、その液晶表示装置を備えた投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶素子を用いた液晶表示装置や投射型表示装置において、液晶素子の視野角特性とリタデーション(位相遅れ)による、コントラストの低下と、色むらの発生とはよく知られている。これらは表示装置の性能を劣化させる現象であり、それらを補正するための光学素子である光学補償板についても知られている。
【0003】
水平配向型の液晶素子を用いる液晶表示装置において、光学補償板は、液晶表示基板と平行に配置されている。しかし、この光学補償板の光学軸と、液晶表示素子のプレチルトの方向とを一致させないと光学的な補償ができない。従って、光学補償板をその面内で回転させて、最適な位置に調整して固定することが必要となる。
【0004】
一方、偏光板をその面内で回転させて偏光板の偏光軸と直線偏光の偏光方向とを一致させる技術が、例えば特許文献1(特開2000−259093号公報)や特許文献2(特開2000−338478号公報)に開示されている。これらの技術は、光学補償板を面内で回転させるために用いることができる。
【0005】
特許文献1に開示された技術では、入射側偏光板を保持する第2の枠体の隅部の穴が本体に固定された第1の枠体の隅部の凸部に回転可能に係合し、反対側の隅部に設けられたねじの回転により入射側偏光板の液晶パネルに対する水平方向の角度が調整可能になっている。
【0006】
特許文献2に開示された技術では、偏光板を貼着したガラス板を保持するホルダを固定側部材で回転動作可能に保持し、ホルダを回転させることで入射側偏光板の液晶パネルに対する角度が調整可能になっている。
【0007】
ところで、従来のTN(ツイスティッド・ネマチック)タイプの水平配向型の液晶素子による水平配向型の液晶パネルを用いた液晶表示装置に加えて、垂直配向型の液晶素子(垂直配向素子)による垂直配向型の液晶パネルを用いた透過型の液晶表示装置(垂直配向型液晶表示装置)も存在する。
【0008】
上記の垂直配向型液晶表示装置においては、その液晶配向が従来の水平配向型の液晶と異なっているので、液晶素子の持っている視野角特性、リタデーションがともに水平配向型の液晶表示装置とは全く異なる特性を示す。そのため、垂直配向型液晶表示装置では従来の水平配向型液晶表示装置に用いられていた光学補償板を水平方向に回転させてコントラストの低下と、色むらの発生を抑制する方法を用いることができない。
【0009】
そこで、垂直配向型液晶表示装置用の光学補償のために、負の一軸性位相差板である光学補償板(以下、垂直配向用光学補償板と称す)を用いてコントラストを改善する技術が特許文献3(特開2006−11298号公報)に開示されている。
【0010】
図12は、水平配向型の液晶パネルと垂直配向型の液晶パネルとに対応する光学補償板の調整法の違いを説明する原理図であり、(a)は水平配向型の液晶パネルの場合、(b)は垂直配向型の液晶パネルの場合である。
【0011】
水平配向型の液晶パネルでは、図12(a)に示すように、従来の光学補償板12の光学補償板の光学軸Aを同一平面内で調整方向Bに回転させて調整を行っていた。一方、垂直配向型の液晶パネルの場合には、図12(b)に示すように、垂直配向用光学補償板11が垂直配向素子の入射側の基板表面における液晶分子の配向方向Eから液晶分子のプレチルト方向に直交する方向となるように、液晶パネルと平行な面から液晶分子のプレチルトに対応する角度だけ調整方向Fに、垂直配向用光学補償板の光学軸Cを中心として回転させて配置する必要がある。
【特許文献1】特開2000−259093号公報
【特許文献2】特開2000−338478号公報
【特許文献3】特開2006−11298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、垂直配向用光学補償板は、垂直配向素子の入射面に対して面を傾けて配置する必要があるので、従来の水平配向用光学補償板の調整機構は適用できないという問題があった。また、特許文献3に開示されている調整方法は原理的な事項の説明が主体であり、調整手段の具体的な構成については十分開示されていない。
【0013】
本発明は、垂直配向用光学補償板に適した光学素子調整機構を提供することを目的とする。具体的には、垂直配向用光学補償板を垂直配向素子の入射面に対して最適な傾きに調整することが可能であり、かつその状態で保持、固定できる光学素子調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光学素子調整機構は、
光学素子を所定の軸を中心として回転可能に保持するための光学素子調整機構であって、光学素子を保持する保持枠と、所定の軸上でその保持枠より外部に向けて突出する第1および第2の回転突起部とを備える光学素子保持部と、第1および第2の回転突起部を回動可能に保持する保持部支持枠と、光学素子保持部の回転を固定する固定手段とを備えたことを特徴とする。所定の軸は、光学素子保持部の保持枠の対角線上に設けられていてもよい。
【0015】
保持部支持枠には、光学素子保持部を挿入するための開口部と、挿入された第1および第2の回転突起部と回転可能に係合する挿入溝が形成された支持部材とが設けられていてもよい。保持部支持枠は、光学素子保持部を挿入するための開口部と、その開口部の両側に設けられた第1の支持部材および第2の支持部材と、第1の支持部材の開口部と反対側の端部から第2の支持部材側に張り出す第1の張り出し部材と、第2の支持部材の開口部と反対側の端部から第1の支持部材側に張り出す第2の張り出し部材とで構成され、第1の張り出し部材の第1の支持部材近傍に、第1の回転突起部が回転可能に係合可能な第1の挿入溝が設けられ、第2の支持部材の開口部近傍に、第2の回転突起部が回転可能に係合可能で上部が開放された第2の挿入溝が設けられていてもよい。さらに、保持部支持枠の第2の張り出し部材の第2の支持部材近傍に、第1の回転突起部が回転可能に係合可能な第3の挿入溝が設けられ、第1の支持部材の開口部近傍に、第2の回転突起部が回転可能に係合可能で上部が開放された第4の挿入溝が設けられていてもよい。保持部支持枠は、垂直配向用光学補償板が搭載される光学エンジンベースに設けられていてもよい。
【0016】
固定手段は、保持枠に設けられ、スライド面とそのスライド面に設けられた長穴とを有する固定用アームと、垂直配向用光学補償板が搭載される光学エンジンベースに設けられていて、すべり面を有するブラケットと、光学エンジンベースに設けられた固定用雌ねじ部と、固定用ねじとから構成されていてもよい。固定用アームは、保持枠の所定の軸から最も離れた角部の一つに設けられてその保持枠の外側に延伸し、先端に延長面が所定の軸と垂直に交差するように設けられたスライド面と、所定の軸を中心とする円弧に沿ってそのスライド面に設けられた長穴とを有し、ブラケットは、固定アームのスライド面と摺動可能に係合可能なすべり面を有し、固定用ねじは、長穴に挿入されて、固定用アームを固定用雌ねじ部に固定してもよい。固定用雌ねじ部は、ブラケットに設けられており、そのブラケットを介して光学エンジンベースに固定されてもよい。
【0017】
本発明の液晶表示装置は、
垂直配向液晶パネルと、入射側偏光板と、垂直配向液晶パネルと入射側偏光板との間に設けられた上述の光学素子調整機構とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の投写型表示装置は、
ランプを備えた照明光学系と、照明光学系から出射した光束を入射して映像として出射する液晶表示装置と、映像を投射面に投射する投射光学系とを備え、液晶表示装置の垂直配向液晶パネルと入射側偏光板との間に上述の光学素子調整機構を有することを特徴とする。また、青色用、緑色用、および赤色用の3組の液晶表示装置を有してもよい。
【0019】
垂直配向用光学補償板を保持する光学素子保持部の保持枠の対角線上に設けられて、対角線を中心軸として回転可能な第1の回転突起部と第2の回転突起部とが設けられている。また、光学エンジンベースに設けられた保持部支持枠は、光学素子保持部を挿入するための開口部と、開口部の両側に設けられた第1の支持部材および第2の支持部材と、第1の支持部材の開口部と反対側の端部から第2の支持部材側に張り出す第1の張り出し部材と、第2の支持部材の開口部と反対側の端部から第1の支持部材側に張り出す第2の張り出し部材とで構成され、第1の張り出し部材の第1の支持部材近傍に、第1の回転突起部が回転可能に係合可能な第1の挿入溝が設けられ、第2の支持部材の開口部近傍に、第2の回転突起部が回転可能に係合可能で上部が開放された第2の挿入溝が設けられている。また、光学エンジンベースに角度調整用ブラケットが取り付けられている。上部の垂直方向の挿入溝は上部が開放されているので光学素子保持部は保持部支持枠に保持部支持枠の開放側から係合可能であり、係合後は第1の回転突起部と第2の回転突起部を結ぶ直線を中心とした回転が可能となる。
【0020】
一方、光学素子保持部と保持部支持枠とが係合した状態で、光学素子保持部の回転固定部材である固定アームのスライド面に対応する位置に、スライド面と滑合可能なすべり面を有するブラケットが光学エンジンベースに設けられているので、スライド面とすべり面とを滑合させることで、光学素子保持部を第1の回転突起部と第2の回転突起部を結ぶ直線を中心として回転させて所定の位置に調整することができる。調整後固定アームの長穴に挿入した固定用ねじを光学エンジン側の固定用雌ねじ部に螺合させることにより固定アームを光学エンジンベースに固定できる。このように、垂直配向用光学補償板を垂直配向素子の入射面に対して最適な傾きに調整することが可能であり、かつその状態で保持、固定できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、垂直配向用光学補償板を保持する光学素子保持部の中心を通る対角線と保持枠との交点の近傍に、対角線を中心軸として回転可能な第1の回転突起部と第2の回転突起部とが設けられ、光学エンジンベースに設けられた保持部支持枠の支持部材と張り出し部材とには両回転突起部と回転可能に係合する下部の挿入溝と上部の挿入溝とが設けられている。
【0022】
このため、保持部支持枠に取り付けられた光学素子保持部の保持枠に設けられた固定用アームのスライド面と、光学エンジンベースに取り付けたブラケットのすべり面とを滑合させることによって光学補償板の回転角度が調整できる。
【0023】
また、固定用アームを固定用ねじで光学エンジン側の固定用雌ねじ部に保持、固定するので、垂直配向用光学補償板を垂直配向素子の入射面に対して最適な傾きに調整することが可能であり、かつその状態で保持、固定できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明は、垂直配向型の液晶素子を用いた液晶表示装置において、コントラスト、色むらを向上させる光学素子調整機構の構造と、その光学素子調整機構を有する液晶表示装置と、その液晶表示装置を有する投写型表示装置に関する。
【0025】
本実施の形態の垂直配向型の液晶パネルに対応する垂直配向用光学補償板では、従来技術の図12(b)に示すように、負の一軸性位相差板である垂直配向用光学補償板11が、垂直配向素子である液晶分子の配向方向に直交する方向となるように、垂直配向用光学補償板11の光学軸Cを中心として、液晶パネルと平行な面から液晶分子のプレチルト方向と略同一の方向に、液晶分子のプレチルトに対応する角度だけ回転させて配置する必要がある。
【0026】
垂直配向用光学補償板11の光学軸Cは、垂直配向型液晶表示装置の垂直配向素子の入射側の基板表面における液晶分子の配向方向の投写線Eと直交しており、光学素子調整機構により垂直配向用光学補償板11の光学軸Cを回転軸として垂直配向用光学補償板11を調整方向Fに回転させることで傾斜角度を調整できる。実際には、垂直配向用光学補償板11を保持するための保持枠が必要であるので、その保持枠ごと垂直配向用光学補償板11を回転させる機構が必要になる。
【0027】
図1は垂直配向用光学補償板と光学補償板保持枠と回転突起部との関係を示す模式的上面図であり、(a)は標準的な形態、(b)は応用例の形態である。
【0028】
図1(a)の形態では、垂直配向用光学補償板11は光学補償板保持部20に取り付けられている。ここでは垂直配向用光学補償板10の光学軸Cが光学補償板保持部20の対角線と一致するように配置されている。
【0029】
光学補償板保持部20の保持枠21の対角線上の対向する角部に、垂直配向用光学補償板10の光学軸Cを中心線とする第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とが設けられ、この第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とを回転軸として光学補償板保持部20を回転できる構造となっている。
【0030】
また、全体の配置の関係から、垂直配向型液晶表示装置の垂直配向素子の入射側の基板表面における配向方向の投写線と垂直配向用光学補償板10の光学軸Cとを直交させた場合に、垂直配向用光学補償板10の光学軸Cを光学補償板保持部20の対角線と一致できない場合がある。この場合は第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とを必ずしも光学補償板保持枠21の角部に設ける必要はない。例えば、垂直配向型液晶表示装置の垂直配向素子の入射側の基板表面における配向方向の投写線と直交する垂直配向用光学補償板11上の直線を中心線として、図1(b)に示すように保持枠21との交点から第1の回転突起部22aと第2の回転突起部23aを設けてもよい。この場合も中心線は垂直配向用光学補償板11の中心点を通過しており、図1(a)の例を準用できる。
【0031】
しかし、この場合は回転突起部の保持機構が複雑になるので図1(a)の構成が望ましい。以後の説明は光学補償板保持部20の保持枠21の角部に第1の回転突起部22と第2の回転突起部23が設けられた図1(a)の状態を例として説明する。
【0032】
図2は本発明の実施の形態における光学補償板保持部の説明図であり(a)は光学補償板保持部の模式的斜視図、(b)は光学補償板保持部の正面図である。
【0033】
光学補償板保持部20は垂直配向用光学補償板11を保持して固定できる構造を持ち、垂直配向用光学補償板11の周囲を囲う枠状の保持枠21を有している。垂直配向用光学補償板11は、図2(a)の図における手前側から光学補償板保持部20の保持枠21に挿入され、光学補償板保持部20の左右にある第1の押し当て部24と第2の押し当て部25とに押し当てられ、上部固定爪26と下部固定爪27とで挟み込まれる。つまり、垂直配向用光学補償板11は、押し当て部24、25と、上部固定爪26および下部固定爪27とで光学補償板保持部20に固定される。
【0034】
光学補償板保持部20の保持枠21には、第1の押し当て部24の下側に第1の回転突起部22が設けられ、第2の押し当て部25の上側に第2の回転突起部23が設けられている。この第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とはその中心線が垂直配向用光学補償板11の中心点を通る保持枠21の対角線の延長線上にあり、この第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とを回転中心として保持枠21の回転が容易にできるように、回転突起部22、23は円筒形の形状を有している。
【0035】
光学補償板保持部20には、調整後の最適な位置で光学補償板保持部20が固定できるように、第1の回転突起部22側の保持枠21の第1の回転突起部22と反対側の端部に、スライド面28aと長穴28bとを有する固定用アーム28が設けられている。スライド面28aは第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とを結ぶ軸線と直交する平面と一致するように設けられており、長穴28bの中心線は第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とを結ぶ軸線を中心とする半径上に位置するように設けられている。
【0036】
次に本実施の形態の光学素子調整機構を備えた投写型表示装置1の構成と、光学補償板保持部20の投写型表示装置本体の液晶表示装置への取り付け方法とについて説明する。ここでは投写型表示装置を例として説明するが、投写型表示装置に限定されるものではなく、液晶表示装置を使用する装置に広く適用できる。
【0037】
図3は本実施の形態の投写型表示装置の照明光学系と色分離光学系と色合成光学系と投射光学系とを示す部分分解上面図であり、図4は図3の光学系の機能を説明するための模式的分解上面図であり、図5は色合成光学系の模式的分解上面図である。図6は光学エンジンベースの投写レンズ側から見た模式的斜視図であり、図7は図6を照明光学系側から見た模式的斜視図であり、図8は図6の光学エンジンベースの模式的上面図である。
【0038】
本実施の形態では、色別に液晶パネルに画像を表示して光学的に画像を合成する3板式投写型表示装置を例として説明するが、これに限定されるものではなく、液晶パネルに異なる色の画像を時分割で表示する単板式投写表示装置に対しても同様に適用できる。
【0039】
投写型表示装置1の光学系は、図3に示すように、照明光学系60、色分離光学系70、色合成光学系80、および投射光学系90の四つのブロックから構成されている。照明光学系60の一部と、色分離光学系70と、色合成光学系80とは、光学エンジンベース30に収納されている。
【0040】
照明光学系60は、図4に示すように、光源と楕円リフレクタとからなるランプ61と、凹レンズ62と、出射光を平行化するための第1のインテグレータ63および第2のインテグレータ64と、フラットPBS(偏光変換素子)65と、フィールドレンズ66とを有する。
【0041】
ランプ61から出射して第1のインテグレータ63、第2のインテグレータ64で均一化された無偏光光の光束はフラットPBS65で直線偏光光となって、色分離光学系70を経由してB垂直配向液晶パネル84B、G垂直配向液晶パネル84G、およびR垂直配向液晶パネル84Rに入射する。
【0042】
照明光学系60に続く色分離光学系70は、図4に示すように、照明光学系60からの全光束を赤(R)・緑(G)・青(B)からなる各色光束に分離し、対応するそれぞれの液晶パネルへ入射させるための第1のダイクロイックミラー71、第2のダイクロイックミラー72、第1の反射ミラー73、第2の反射ミラー75、第3の反射ミラー77、および第1のリレーレンズ74、第2のリレーレンズ76を有する。
【0043】
色分離光学系70に続く色合成光学系80は、図5に示すように、色分離光学系70から入射される各色光束を、与えられた画像情報に従って変調するB垂直配向液晶パネル84B、G垂直配向液晶パネル84G、R垂直配向液晶パネル84Rと、各液晶部に入射光を集光するB集光レンズ81B、G集光レンズ81G、R集光レンズ81Rと、B入射側偏光板82B、G入射側偏光板82G、R入射側偏光板82Rと、B光学補償板83B、G光学補償板83G、R光学補償板83Rと、B出射側偏光板85B、G出射側偏光板85G、R出射側偏光板85Rと、変調された各色光束を合成する色合成プリズム(XDP)87とを有する。
【0044】
色合成光学系80に続く投写光学系90は、投射レンズ91を有し、色合成プリズム87で合成されたB、G、Rの合成光を不図示のスクリーン上に投影する。
【0045】
光学エンジンベース30は図6〜図8に見られるようにバスタブ型であり、その上部から各種の光学部品を差し込んで配置できる構造になっている。これは組立時の生産性を向上するためである。
【0046】
本実施の形態の垂直配向用光学補償板11が取り付けられた光学補償板保持部20と光学エンジンベース30との間では、光学補償板保持部20が光学エンジンベース30に容易に組み込み可能な構造を有している。以下、その構造について詳細に説明する。
【0047】
垂直配向用光学補償板11は光学補償板保持部20にはめ込まれ、その光学補償板保持部20は光学エンジンベース30の保持部支持枠31にその上部から挿入される。保持部支持枠31は、垂直配向用光学補償板11が搭載される光学エンジンベース30に設けられていて、光学補償板保持部20を挿入するための開口部と、その開口部の両側に設けられた第1の支持部材31aおよび第2の支持部材31bと、第1の支持部材31aの開口部と反対側の端部から第2の支持部材31b側に張り出す第1の張り出し部材31cと、第2の支持部材31bの開口部と反対側の端部から第1の第1の支持部材31a側に張り出す第2の張り出し部材31dとで構成される
光学エンジンベース30の保持部支持枠31には、図6〜図8に示すように、第1の張り出し部材31cの第1の支持部材31a近傍に、第1の回転突起部22が回転可能に係合可能なU字型をした第1の挿入溝32aが設けられ、第2の支持部材31bの開口部近傍に、第2の回転突起部23が回転可能に係合可能でU字型をして上部が開放された第2の挿入溝32bが設けられている。
【0048】
さらに、光学エンジンベース30の保持部支持枠31には、U字型をした第3の挿入溝33aと、第4の挿入溝33bとが、第1の挿入溝32aと第2の挿入溝32bと対称となる位置に設けられている。
【0049】
図8に示すように、第1の挿入溝32a、第2の挿入溝32b、第3の挿入溝33a、および第4の挿入溝33bは、光学エンジンベース30を上部から見たときに、明確にその両方のU字型をした溝が見えるように作製されている。光学補償板保持部20が光学エンジンベース30の保持部支持枠31に上側から挿入されたとき、図2に示される光学補償板保持部20の第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とは、第1の挿入溝32aと第2の挿入溝32bとにそれぞれ挿入されて係合される。このとき、光学補償板保持部20を光学エンジンベース30の上方から、障害なく容易に挿入できるようにするために、第1の挿入溝32a、第2の挿入溝32b、第3の挿入溝33a、および第4の挿入溝33bは、鉛直上方向から見てそれぞれが重ならない位置に配置されている。言い換えると、これら4つの溝は、光学エンジンベース30の上方から見て4つとも明確に視認することができるようになっている。
【0050】
保持部支持枠31に挿入された光学補償板保持部20の第1の回転突起部22と第2の回転突起部23とは、第1の挿入溝32aと第2の挿入溝32bの中で自由に回転できる。この構造により、垂直配向用光学補償板11を第1の回転突起部22と第2の回転突起部23を回転軸として最適な角度になるように調整することが可能となる。
【0051】
この角度調整は、投写された画像のコントラストが最適になる、即ちコントラストが一番高くなるように調整される。調整されているとき、光学補償板保持部20の回転角度が変動してしまうと正しく角度を調整することができない。そこで、調整時に光学補償板保持部20の固定用アーム28を所定の位置に保持するためのブラケット40が光学エンジンベース30に設けられている。以下、この仕組みについて述べる。
【0052】
図9は光学補償板保持部を光学エンジンベースに固定するブラケットの模式的斜視図であり、図10は、本実施の形態における垂直配向用光学補償板の保持具を光学エンジンベースに組み込む動作を説明するための模式的斜視図であり、図11は本実施の形態における垂直配向用光学補償板の保持具を光学エンジンベースに組み込んだ状態を示す斜視図である。
【0053】
ブラケット40は、図9に示すように光学エンジンベース30に固定するための固定用穴44を持ち、図10、図12に示すように、光学エンジンベース30の上側カバー35に設けられた突起部34に対して固定用の穴44が固定ネジ36を用いて固定されている。
【0054】
このブラケット40の第1のすべり面41の上面に沿って保持部支持枠31に挿入された光学補償板保持部20のスライド面28aが摺動するようになっている。つまり、ブラケット40の第1のすべり面41の上面と光学補償板保持部20のスライド面28aとが面接触をしながら光学補償板保持部20のスライド面28aが移動するので、両者の相対的な角度は角度調整中も一定である。よって、光学補償板保持部20は、角度調整中もホルダ回転軸が一定になるので、光学補償板保持部20の角度を正確に調整することができるようになった。
【0055】
光学補償板保持部20の角度調整終了後は、光学補償板保持部20の固定アーム28の長穴28bとブラケット40に設けられた雌ねじ43とが、スライド面28aの長穴28bに挿入された固定ねじ37で固定される。固定ねじ37は、垂直配向用光学補償板11の光学軸に平行な方向に取り付けられる。雌ねじ43はブラケット40に設けられていることとしているが、光学エンジンベース30に直接設けられていてもよい。
【0056】
使用される垂直配向液晶素子の特性によって、これまでに説明した光学補償板保持部20と左右が反転した光学補償板保持部を使用する必要がある場合がある。その場合に備えて、光学エンジンベース30に、第3の挿入溝33aと第4の挿入溝33bとが設けられており、ブラケット40にも第1のすべり面41と対称な第2のすべり面42が設けられている。また、固定ねじ37の受けとなる雌ねじ43は、上述のように光学エンジンベース30もしくは上側カバー35に直接形成してもよいが、本実施の形態では別部品であるブラケット40に構成されている。
【0057】
上述の2種類の光学補償板保持部20に対応させるためには、2方向に固定用の雌ねじ43を設けることが必要となる。それらを光学エンジンベース30もしくは上側カバー35に直接構成すると、光学エンジンベース30もしくは上側カバー35の成型用の金型構造が複雑となるという問題があった。また、金型構造を複雑にすると、金型作成の費用負担が大きくなるのでこれも問題であった。この部分を別部品のブラケット40に設けることでこの問題が解決されている。
【0058】
このようにブラケット40には光学補償板保持部20のスライド面28aに接する第1のすべり面41および第1のすべり面41と対称な第2のすべり面42とが設けられており、第1のすべり面41、第2のすべり面42のそれぞれに雌ねじ43が設けられている。したがって光学補償板保持部20は調整後の最適な位置で、固定用の長穴28bが固定ねじ37でブラケット40の対応する雌ねじ43に固定される。これにより、2種類の調整後の光学補償板10を簡単な構造で最適な位置で固定することが可能となった。このように、ブラケット40を光学エンジンベース30や上側カバー35とは別部品とすることにより、工業上も有益な光学素子調整機構を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】垂直配向用光学補償板と光学補償板保持枠と回転突起部との関係を示す模式的上面図であり、(a)は標準的な形態、(b)は応用例の形態である。
【図2】本発明の実施の形態における光学補償板保持部の説明図であり(a)は光学補償板保持部の模式的斜視図、(b)は光学補償板保持部の正面図である。
【図3】本実施の形態の投写型表示装置の照明光学系と色分離光学系と色合成光学系と投射光学系とを示す部分分解上面図である。
【図4】図3の光学系の機能を説明するための模式的分解上面図である。
【図5】色合成光学系の模式的分解上面図である。
【図6】光学エンジンベースの投射レンズ側から見た模式的斜視図である。
【図7】図6を照明光学系側から見た模式的斜視図である。
【図8】図6の光学エンジンベースの模式的上面図である。
【図9】光学補償板保持部を光学エンジンベースに固定するブラケットの模式的斜視図である。
【図10】本実施の形態における垂直配向用光学補償板の保持具を光学エンジンベースに組み込む動作を説明するための模式的斜視図である。
【図11】本実施の形態における垂直配向用光学補償板の保持具を光学エンジンベースに組み込んだ状態を示す斜視図である。
【図12】水平配向型の液晶パネルと垂直配向型の液晶パネルとに対応する光学補償板の調整法の違いを説明する原理図であり、(a)は水平配向型の液晶パネルの場合、(b)は垂直配向型の液晶パネルの場合である。
【符号の説明】
【0060】
1 投写型表示装置
6 液晶表示装置
10 光学素子調整機構
11 垂直配向用光学補償板
12 従来の光学補償板
20、20a 光学補償板保持部
21 保持枠
22、22a 第1の回転突起部
23、23a 第2の回転突起部
24 第1の押し当て部
25 第2の押し当て部
26 上部固定爪
27 下部固定爪
28 固定用アーム
28a スライド面
28b 長穴
30 光学エンジンベース
31 保持部支持枠
31a 第1の支持部材
31b 第2の支持部材
31c 第1の張り出し部材
31d 第2の張り出し部材
32a 第1の挿入溝
32b 第2の挿入溝
33a 第3の挿入溝
33b 第4の挿入溝
34 突起部
35 上側カバー
36、37 固定ねじ
40 ブラケット
41 第1のすべり面
42 第2のすべり面
43 雌ねじ
44 固定用穴
60 照明光学系
61 ランプ
62 凹レンズ
63 第1のインテグレータ
64 第2のインテグレータ
65 フラットPBS(偏光変換素子)
66 フィールドレンズ
70 色分離光学系
71 第1のダイクロイックミラー
72 第2のダイクロイックミラー
73 第1の反射ミラー
74 第1のリレーレンズ
75 第2の反射ミラー
76 第2のリレーレンズ
77 第3の反射ミラー
80 色合成光学系
81B B集光レンズ
81G G集光レンズ
81R R集光レンズ
82B B入射側偏光板
82G G入射側偏光板
82R R入射側偏光板
83B B光学補償板
83G G光学補償板
83R R光学補償板
84 垂直配向液晶パネル
84B B垂直配向液晶パネル
84G G垂直配向液晶パネル
84R R垂直配向液晶パネル
85B B出射側偏光板
85G G出射側偏光板
85R R出射側偏光板
87 色合成プリズム
90 投写光学系
91 投射レンズ
A 従来の光学補償板の光学軸
B 従来の光学補償板の調整方向
C 垂直配向光学補償板の光学軸
D 偏光板の透過軸
E 垂直配向素子の入射側の基板表面における液晶分子の配向方向
F 垂直配向光学補償板の調整方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を所定の軸を中心として回転可能に保持するための光学素子調整機構であって、
前記光学素子を保持する保持枠と、前記所定の軸上で該保持枠より外部に向けて突出する第1および第2の回転突起部とを備える光学素子保持部と、
前記第1および第2の回転突起部を回動可能に保持する保持部支持枠と、
前記光学素子保持部の回転を固定する固定手段と、
を備えたことを特徴とする光学素子調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子調整機構において、
前記所定の軸は、前記光学素子保持部の前記保持枠の対角線上に設けられている、光学素子調整機構。
【請求項3】
請求項1に記載の光学素子調整機構において、
前記保持部支持枠には、前記光学素子保持部を挿入するための開口部と、挿入された前記第1および第2の回転突起部と回転可能に係合する挿入溝が形成された支持部材とが設けられている、光学素子調整機構。
【請求項4】
請求項3に記載の光学素子調整機構において、
前記保持部支持枠は、前記光学素子保持部を挿入するための開口部と、該開口部の両側に設けられた第1の支持部材および第2の支持部材と、前記第1の支持部材の前記開口部と反対側の端部から前記第2の支持部材側に張り出す第1の張り出し部材と、前記第2の支持部材の前記開口部と反対側の端部から前記第1の支持部材側に張り出す第2の張り出し部材とで構成され、
前記第1の張り出し部材の前記第1の支持部材近傍に、前記第1の回転突起部が回転可能に係合可能な第1の挿入溝が設けられ、前記第2の支持部材の前記開口部近傍に、前記第2の回転突起部が回転可能に係合可能で上部が開放された第2の挿入溝が設けられている、光学素子調整機構。
【請求項5】
請求項4に記載の光学素子調整機構において、
さらに、前記保持部支持枠の前記第2の張り出し部材の前記第2の支持部材近傍に、前記第1の回転突起部が回転可能に係合可能な第3の挿入溝が設けられ、前記第1の支持部材の前記開口部近傍に、前記第2の回転突起部が回転可能に係合可能で上部が開放された第4の挿入溝が設けられている、光学素子調整機構。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の光学素子調整機構において、
前記保持部支持枠は、前記光学素子が搭載される光学エンジンベースに設けられている、光学素子調整機構。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の光学素子調整機構において、
前記固定手段は、
前記保持枠に設けられ、スライド面と該スライド面に設けられた長穴とを有する固定用アームと、
前記光学素子が搭載される光学エンジンベースに設けられていて、すべり面を有するブラケットと、
前記光学エンジンベースに設けられた固定用雌ねじ部と、
固定用ねじとから構成される、光学素子調整機構。
【請求項8】
請求項7に記載の光学素子調整機構において、
前記固定用アームは、前記保持枠の前記所定の軸から最も離れた角部の一つに設けられて該保持枠の外側に延伸し、先端に延長面が前記所定の軸と垂直に交差するように設けられたスライド面と、前記所定の軸を中心とする円弧に沿って該スライド面に設けられた長穴とを有し、
前記ブラケットは、前記固定アームの前記スライド面と摺動可能に係合可能なすべり面を有し、
前記固定用ねじは、前記長穴に挿入されて、前記固定用アームを前記固定用雌ねじ部に固定する、光学素子調整機構。
【請求項9】
請求項7に記載の光学素子調整機構において、
前記固定用雌ねじ部は、前記ブラケットに設けられており、該ブラケットを介して前記光学エンジンベースに固定される、光学素子調整機構。
【請求項10】
垂直配向液晶パネルと、入射側偏光板と、前記垂直配向液晶パネルと前記入射側偏光板との間に設けられた請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光学素子調整機構とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
ランプを備えた照明光学系と、照明光学系から出射した光束を入射して映像として出射する液晶表示装置と、映像を投射面に投射する投射光学系とを備え、前記液晶表示装置の垂直配向液晶パネルと入射側偏光板との間に請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光学素子調整機構を有することを特徴とする投写型表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の投写型表示装置において、
青色用、緑色用、および赤色用の3組の前記液晶表示装置を備えた投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−151844(P2008−151844A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336957(P2006−336957)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】