説明

光学素子隔壁形成用感光性組成物、これを用いたブラックマトリックスおよびその製造方法、並びにカラーフィルタオンアレイの製造方法

【課題】高い遮光性と低い誘電特性の両方を兼ね備えたブラックマトリックスを形成することが可能な光学素子の隔壁形成用感光性組成物、これにより得られる高い遮光性と低い誘電特性の両方を兼ね備えたブラックマトリックスおよびその製造方法、並びにこのブラックマトリックスを有するカラーフィルタオンアレイの製造方法を提供する。
【解決手段】光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、黒色顔料(C)、および平均1次粒子径が20〜100nmの中空微粒子(D)を含み、前記中空微粒子(D)の含有量が組成物の全固形分に対して5〜30質量%であることを特徴とする光学素子の隔壁形成用感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の隔壁形成用感光性組成物、これを用いたブラックマトリックスおよびその製造方法、並びにこのブラックマトリックスを有するカラーフィルタオンアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、液晶表示装置の分野において、カラーフィルタ基板とTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレイ基板を一体化させたカラーフィルタオンアレイ(COA)を導入した液晶パネルが注目を浴びている。カラーフィルタオンアレイを用いれば、上記二つの基板を用いた場合に行われる精密な位置合わせが不要となるとともに、カラーフィルタの赤、青、緑の各画素を限界にまで微細化することができるため、液晶パネルの高精細化が可能となる。
【0003】
このようなカラーフィルタオンアレイ用の樹脂ブラックマトリックスについては、高い遮光性が必要とされるため、厚膜化が要求されている。しかし、樹脂ブラックマトリックスの膜厚が増大するにつれて、露光された部分での膜厚方向に対する架橋密度の差が拡大するため、高感度化を達成し良好な形状のブラックパターンを得ることが困難になる。また、高遮光化の手段として、遮光材を大量に使用することも試みられているが、遮光材としてカーボン等の導電性材料を使用した場合、ブラックマトリックスの比誘電率が高くなり体積抵抗が低下することにより、表示装置の信頼性を低下させるという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するために、特許文献1には特定の粒子径の粒状シリカを遮光性顔料に対して特定割合で含有するブラックレジスト用感光性樹脂組成物の技術が提案されているが、この組成物を用いて得られるブラックマトリックスは、比誘電率が十分に低く抑えられていない点で問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−304583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、高い遮光性と低い誘電特性の両方を兼ね備えたブラックマトリックスを形成することが可能な光学素子の隔壁形成用感光性組成物を提供することを目的とする。さらに、これにより得られる高い遮光性と低い誘電特性の両方を兼ね備えたブラックマトリックスおよびその製造方法、並びにこのブラックマトリックスを有するカラーフィルタオンアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子の隔壁形成用感光性組成物は、光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、黒色顔料(C)、および平均1次粒子径が20〜100nmの中空微粒子(D)を含み、前記中空微粒子(D)の含有量が組成物の全固形分に対して5〜30質量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記本発明の隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物からなるブラックマトリックスを提供する。
【0009】
また、本発明は、基材と、前記基材の主面上に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有する光学素子のブラックマトリックスの製造方法であって、上記本発明の隔壁形成用感光性組成物を前記基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜のブラックマトリックスとなる部分のみを露光し感光硬化させる露光工程と、前記感光硬化した部分以外の塗膜を除去し前記塗膜の感光硬化部分からなるブラックマトリックスを形成させる現像工程と、前記形成されたブラックマトリックスを加熱するポストベーク工程とを順に有することを特徴とするブラックマトリックスの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、TFTアレイを主面上に有する基材と、前記基材の主面上所定位置に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有するカラーフィルタオンアレイの製造方法であって、上記本発明の製造方法によってTFTアレイを主面上に有する基材上にブラックマトリックスを形成した後、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にインクジェット法またはフォトリソグラフィ法により前記画素を形成する工程を有することを特徴とするカラーフィルタオンアレイの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学素子の隔壁形成用感光性組成物を用いれば、高い遮光性と低い誘電特性の両方を兼ね備えたブラックマトリックスを形成することが可能である。また、これにより得られる本発明のブラックマトリックスを有するカラーフィルタオンアレイは、高精細化が求められる表示装置への適用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<1>本発明の隔壁形成用感光性組成物
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、黒色顔料(C)、および、組成物の全固形分に対して5〜30質量%の割合で平均1次粒子径が20〜100nmの中空微粒子(D)を含有する。
【0014】
(1)光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)(以下、単に「アルカリ可溶性樹脂(A)」という場合もある)
本発明の隔壁形成用感光性組成物が含有するアルカリ可溶性樹脂(A)は、1分子内に光硬化性のエチレン性不飽和二重結合、およびアルカリ可溶性の基、すなわち、酸性基を有する感光性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂(A)が光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有することにより、隔壁形成時、フォトリソグラフィにおける露光に際して、これを含む隔壁形成用感光性組成物塗膜の露光部は、後述の光重合開始剤(B)の作用によりラジカル重合し硬化が促進され、露光に次いで行われる現像に際しては、アルカリ現像液にて除去されずに塗膜面に残って、光学素子の隔壁を形成することができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A)がアルカリ可溶性の基、酸性基を有することにより、隔壁形成時、フォトリソグラフィにおける露光後の現像に際して、これを含む隔壁形成用感光性組成物塗膜の未露光部すなわち未硬化の部分はアルカリ現像液にて容易に除去することができる。なお、アルカリ可溶性樹脂(A)は実質的にペルフルオロアルキル基を含有しないことが好ましい。
【0015】
上記アルカリ可溶性樹脂(A)が有する光硬化性のエチレン性不飽和二重結合としては、これを有する基として、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基等の付加重合性の不飽和基や、これら付加重合性不飽和基の水素原子の一部またはすべてが、炭化水素基により置換されている基等が挙げられる。なお、前記炭化水素基としては、メチル基が好ましい。
【0016】
また、上記アルカリ可溶性樹脂(A)が有する酸性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびリン酸基からなる群から選ばれる1以上の酸性基が挙げられる。
【0017】
アルカリ可溶性樹脂(A)として、具体的には、酸性基を有する光硬化性のエチレン性不飽和単量体や反応性基と結合し得る官能基を有する光硬化性のエチレン性不飽和単量体等の共重合体であって、酸性基を有する側鎖と光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有する側鎖とを有する重合体(A1)、エポキシ樹脂に光硬化性のエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した樹脂(A2)等が挙げられる。
【0018】
上記重合体(A1)は、例えば、酸性基を有する光硬化性のエチレン性不飽和単量体や反応性基と結合し得る官能基を有する光硬化性のエチレン性不飽和単量体等を通常のラジカル重合法により合成したあと、反応性基と二重結合を有する化合物を反応させることにより、光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有する側鎖を形成することで得られる。
【0019】
上記樹脂(A2)としては、エポキシ樹脂と、カルボキシル基と光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との反応物に、さらに多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させて得られる化合物が好ましい。
【0020】
上記樹脂(A2)の製造に用いられるエポキシ樹脂として具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、下記式(B21)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(ただし、sは1〜50の整数を示し、2〜10が好ましい。)、下記式(B22)で表されるエポキシ樹脂(ただし、R、R8、R、R10は独立して水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なってもよい。tは0〜10の整数を示す。)等が挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
このようなエポキシ樹脂に、カルボキシル基と光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を反応させることにより、エポキシ樹脂に光硬化性のエチレン性不飽和二重結合が導入された化合物が得られる。ついで、この化合物に多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させて酸性基としてカルボキシル基を導入することで、上記樹脂(A2)が得られる。
【0023】
本発明においては、前記エポキシ樹脂に酸性基と光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を導入した樹脂(A2)として、市販品を用いることが可能である。市販品としては、KAYARAD PCR−1069、K−48C、CCR−1105、CCR−1115、CCR−1163H、CCR−1166H、CCR−1159H、TCR−1025、TCR−1064H、TCR−1286H、ZAR−1535H、ZFR−1122H、ZFR−1124H、ZFR−1185H、ZFR−1492H、ZCR−1571H、ZCR−1569H、ZCR−1580H、ZCR1581H、ZCR1588H(以上全て、商品名、日本化薬社製)等が挙げられる。
【0024】
本発明の隔壁形成用感光性組成物においてアルカリ可溶性樹脂(A)は、1分子内に3個以上の光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましく、1分子内に6個以上の光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有することがより好ましい。これにより、得られる感光性組成物の塗膜の露光部分と未露光部分とのアルカリ溶解度に差がつきやすく、より少ない露光量での微細なパターン形成が可能となる。
【0025】
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、その塗膜硬化物の架橋密度を増大させ、耐熱性を向上させるために、後述のように、アルカリ可溶性樹脂(A)と加熱処理、具体的には、現像後の加熱処理等により架橋反応する熱硬化性樹脂をさらに含む場合がある。その場合には、上記アルカリ可溶性樹脂(A)は、熱硬化性樹脂と架橋反応し得る基を有するように分子設計される。
【0026】
例えば、後述の通り本発明の隔壁形成用感光性組成物には、熱硬化性樹脂としてエポキシ基を有する樹脂が好ましく用いられるが、その場合には、上記アルカリ可溶性樹脂(A)は、エポキシ基と架橋反応し得る基、具体的には、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、リン酸基等を有するように分子設計される。この際、アルカリ可溶性樹脂(A)が酸性基としてカルボキシル基、フェノール性水酸基等を既に有する場合には、これらは前記架橋反応し得る基として作用するため特に新たな基の導入は必要とされないが、アルカリ可溶性樹脂(A)が酸性基としてスルホン酸基、リン酸基等のみを有する場合には、架橋反応し得る基として、カルボキシル基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基等のいずれか1個以上を導入する。
【0027】
アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価は、10〜300mgKOH/gが好ましく、30〜150mgKOH/gがより好ましい。当該範囲であると得られる感光性組成物の現像性が良好である。また、酸価とは、試料1g中の樹脂酸などを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいい、JIS K 0070の測定方法に準じて測定することができる値である。
【0028】
アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、500以上20,000未満が好ましく、2,000以上15,000未満がより好ましい。この範囲であると得られる感光性組成物のアルカリ溶解性、現像性が良好である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値をいう。以下、本明細書中に記載の重量平均分子量は、前記同様の測定方法により測定した値である。
【0029】
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)として、これに分類される化合物の1種を単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。また、本発明の隔壁形成用感光性組成物における上記アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は、該感光性組成物の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂(A)の割合として、5〜80質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。当該範囲であると感光性組成物の現像性が良好である。
【0030】
(2)光重合開始剤(B)
本発明の隔壁形成用感光性組成物が含有する光重合開始剤(B)は、光重合開始剤としての機能を有する化合物であれば特に制限されないが、光によりラジカルを発生する化合物からなることが好ましい。
【0031】
光重合開始剤(B)としては、例えば、ベンジル、ジアセチル、メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナンスレンキノン等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;アントラキノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物;アシルホスフィンオキシド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾイル−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類等が挙げられる。
【0032】
特に、上記ベンゾフェノン類、上記アミノ安息香酸類等は、その他のラジカル開始剤と共に用いられて、増感効果を発現することがある。また、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン類も同じくラジカル開始剤と共に用いられて、増感効果を発現することがある。
【0033】
さらに、上記以外にも、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,4−ブタノールビス(3−メルカプトブチレート)、トリス(2−メルカプトプロパノイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)などのチオール化合物も同じくラジカル開始剤と共に用いられて、増感効果を発現することがある。
【0034】
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、光重合開始剤(B)として、これに分類される化合物の1種を単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。また、本発明の隔壁形成用感光性組成物における光重合開始剤(B)の含有量は、該感光性組成物の全固形分に対する光重合開始剤(B)の割合として、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましい。当該範囲であると得られる感光性組成物の現像性が良好である。
【0035】
(3)黒色顔料(C)
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、黒色顔料(C)を含有する。これにより、本発明の隔壁形成用感光性組成物を用いて得られる光学素子の隔壁は黒色であるが、このような黒色隔壁を通常「ブラックマトリックス」と呼ぶ。ブラックマトリックスは、代表的には、液晶表示素子においてカラーフィルタのR(赤)、G(緑)、B(青)の三色の画素を囲む格子状の黒色部分として用いられている。
【0036】
本発明の隔壁形成用感光性組成物が含有する黒色顔料(C)として、具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、チタンブラックなどの金属酸化物の粒子、銀スズ合金などの合金の粒子、ペリレン系黒色顔料、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6、7、12、20、31等が挙げられる。また、本発明においては、黒色顔料(C)として、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料等の有機顔料や無機顔料およびこれらの混合物を用いることもできる。本発明の隔壁形成用感光性組成物には、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
このような各種顔料のうちでも、本発明に用いる黒色顔料(C)としては、価格、遮光性の大きさからカーボンブラックが好ましい。前記カーボンブラックは樹脂などで表面処理されていてもよく、また、色調を調整するために、前記カーボンブラックとともに青色顔料や紫色顔料を併用してもよい。
【0038】
本発明に用いるカーボンブラックとしては、ブラックマトリックスの形状の観点から、BET法による比表面積が50〜200m/gであるものが好ましい。用いるカーボンブラックの比表面積が50m/g未満では、ブラックマトリックス形状の劣化を引き起こすことがある。またカーボンブラックの比表面積が200m/gより大きいと、カーボンブラックに分散助剤が過度に吸着してしまい、諸物性を発現させるためには多量の分散助剤を配合する必要が生じることがある。
【0039】
また、本発明に用いるーボンブラックとしては、感度の点から、フタル酸ジブチルの吸油量が120cc/100g以下のものが好ましく、少ないものほどより好ましい。
【0040】
さらに、本発明に用いるカーボンブラックとしては、透過型電子顕微鏡観察による平均1次粒子径が、20〜50nmであるものが好ましい。平均1次粒子径が小さすぎると、高濃度に分散させることが困難になるおそれがあり、経時安定性の良好な感光性組成物が得られ難く、平均1次粒子径が大きすぎると、ブラックマトリックス形状の劣化を招くことがあるためである。カーボンブラックは、通常、適当な分散媒体に分散された分散液として用いられるが、分散液においてカーボンブラックの粒子は単分散体であっても凝集体であってもよい。分散液中におけるカーボンブラックの粒子径はレーザー回折散乱方式によって求めることができ、その平均粒子径は50〜100nmであることが好ましい。
【0041】
本発明の隔壁形成用感光性組成物における上記黒色顔料(C)の含有量は、該感光性組成物の全固形分に対する黒色顔料(C)の割合として、15〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。当該範囲であると得られる感光性組成物は感度が良好であり、また、形成される隔壁すなわちブラックマトリックスは遮光性に優れる。
【0042】
なお、ブラックマトリックスの遮光性を示す値として、OD(Optical Density)値が用いられるが、本発明の隔壁形成用感光性組成物は、これを用いて得られるブラックマトリックスのOD値が2.5以上になるように調製されることが好ましい。すなわち、ブラックマトリックスのOD値が上記好ましい範囲となるように、隔壁形成用感光性組成物に配合する黒色顔料(C)の種類、配合量等を上記のようにして適宜選択する。
【0043】
(4)中空微粒子(D)
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、平均1次粒子径が20〜100nmの中空微粒子(D)を、該感光性組成物の全固形分に対して、5〜30質量%の割合で含有する。
【0044】
本発明に用いる中空微粒子(D)の平均1次粒子径は、上記の通り20〜100nmであるが、好ましくは25〜90nmであり、より好ましくは、30〜80nmである。中空微粒子の平均1次粒子径が20nmより小さいと、塗膜の空隙率を高めることが難しくなり、ブラックマトリックスの比誘電率を下げる効果が小さくなるおそれがあり、100nmより大きいと塗膜表面の平滑性が損なわれるおそれがある。
【0045】
用いる中空微粒子(D)の形状は、特に制限されず、具体的には、球状、棒状、紡錘形状、柱状等の形状が挙げられる。本発明には、これらの形状の中空微粒子の混合物を用いることも可能であるが、球状の中空微粒子を単独で用いることが好ましい。なお、本明細書において「径」とは、中空微粒子の形状が球以外の場合には、長径と短径の平均値をいう。
【0046】
本発明に用いる中空微粒子(D)は、外殻(以下、「シェル」ということもある)と、外殻で囲まれた中空部(以下、単に「中空部」と記載することもある)からなるが、この外殻の厚さは0.5〜10nmであることが好ましく、1〜5nmであることがより好ましい。中空微粒子の外殻の厚さが0.5nmより小さいと、外殻が破損しやすくなり、塗膜における空隙を維持できないおそれがある。また、10nmより大きいと、塗膜の空隙率を大きくする寄与が小さくなり、ブラックマトリックスの比誘電率を下げる効果が小さくなるおそれがある。
【0047】
また、本発明に用いる中空微粒子(D)においては、中空微粒子の外殻の厚さ(t)に対する中空部の径(d)の比(d)/(t)が5〜40であることが好ましく、10〜30であることがより好ましい。上記中空微粒子の(d)/(t)が5より小さいと、塗膜の空隙率を上げることが難しく、ブラックマトリックスの比誘電率を下げる効果が小さくなることがあり、40より大きいと、塗膜表面の平滑性が損なわれたり、外殻が破損して空隙を維持できないことがある。
【0048】
ここで、本明細書において、中空微粒子(D)の平均1次粒子径、中空部の径および外殻の厚さとは、検体となる中空微粒子を透過型電子顕微鏡にて観察し、100個の中空微粒子を無作為に選び出し、その100個についてそれぞれ中空微粒子の粒子径(外径)と、中空部の径(内径)を測定し、外径と内径の差を2で除した値を外殻の厚さとして算出し、さらに、粒子径、中空部の径および外殻の厚さについてそれぞれ100個の中空微粒子の測定値、または算出値を平均した値をいう。なお、中空微粒子がほぼ真球の場合、外径は中空微粒子の直径を指し、内径は中空部の直径を指す。
【0049】
上記中空微粒子(D)の外殻を構成する材料としては、低比誘電率の材料であれば特に制限されないが、具体的には、シリカ、アルミナ等の金属酸化物が挙げられる。本発明に用いる中空微粒子の外殻構成材料としては、これらのなかでも、特に比誘電率が低い材料である、シリカが好ましい。
【0050】
本発明の隔壁形成用感光性組成物における上記中空微粒子(D)の含有量は、該感光性組成物の全固形分に対する中空微粒子(D)の割合として上記の通り5〜30質量%であるが、好ましくは8〜28質量%であり、より好ましくは、10〜25質量%である。本発明の組成物における上記中空微粒子(D)の含有量が、組成物全固形分に対して5質量%より小さいと、塗膜の空隙率を上昇させづらいため、ブラックマトリックスの比誘電率を下げる効果が小さくなることがあり、30質量%より大きいと、感光性組成物の保存安定性が低下するおそれがある。
【0051】
このような本発明に用いる中空微粒子(D)は、上記特性を有していれば製造方法は特に制限されないが、具体的には、以下の(I)工程〜(III)工程を有する製造方法により製造することができる。
(I)可溶性および/または分解性の材料からなるコア微粒子と、中空微粒子外殻材料の前駆体とを含む液状組成物を作製する工程
(II)前記液状組成物に必要に応じて加熱等の操作を行い前記コア微粒子の表面に外殻を形成させコア−シェル型微粒子を得る工程
(III)前記コア−シェル型微粒子からコア微粒子を溶解または分解により除去する工程
【0052】
上記(I)工程に用いる可溶性および/または分解性の材料からなるコア微粒子とは、熱、酸、光等によって溶解、または分解、昇華する材料からなるコア微粒子をいい、具体的には、用いるシェル材料にもよるが(III)工程においてコア−シェル型微粒子のシェルを溶解、分解することなくコア微粒子のみを溶解、分解する処理が可能な材料からなるコア微粒子である。
【0053】
このようなコア微粒子としては、例えば、界面活性剤ミセル、水溶性有機重合体、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の熱分解性有機重合体微粒子;アルミン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛等の酸溶解性無機微粒子;硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属カルコゲナイド半導体および酸化亜鉛等の光溶解性無機微粒子等より選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。また、(II)工程において後述の通りマイクロ波照射により前記液状組成物の加熱を行う場合には、上記可溶性および/または分解性を有することに加えて、マイクロ波を吸収しやすい点から比誘電率が10以上の誘電特性を有する材料からなるコア微粒子が好ましい。このような材料として、具体的には、硫化亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0054】
用いるコア微粒子の粒子形状は特に限定されるものではなく、上記中空微粒子(D)の形状として挙げたのと同様の形状が挙げられる。コア微粒子の平均1次粒子径(凝集していない状態での粒径)は、後のコア微粒子溶解/分解工程におけるコアの溶解/分解速度、および得られる中空微粒子の中空部の大きさを調整する観点から選択できる。上記の中空微粒子の平均1次粒子径を勘案すれば、コア微粒子の平均1次粒子径は、10〜100nmであること好ましく、20〜80nmであることがより好ましい。
【0055】
ここで、上記(I)工程で作製される液状組成物としては、通常は、コア微粒子が分散媒体に分散した状態の分散液に中空微粒子外殻材料の前駆体が配合された液状組成物が用いられる。コア微粒子の分散媒体としては、特に限定されるものではない。例えば、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などが挙げられる。コア微粒子の分散媒体としては、水を含有することは必須ではないが、例えば、中空微粒子外殻材料の前駆体を加水分解・重縮合して外殻を形成するというような場合には、この反応に分散媒体の水をそのまま使用することができることから、水単独または水と上記有機溶媒との混合溶媒を分散媒体とすることが好ましい。このような場合の分散媒体における水の含有割合としては、分散媒体100質量%中に含有する水の割合として、5〜100質量%の含有割合が挙げられる。
【0056】
また、上記(I)工程で作製される液状組成物は、上記コア微粒子、分散媒体、後述する中空微粒子外殻材料の前駆体の他に分散剤を含んでいてもよい。液状組成物における固形分濃度は、分散液の安定性を確保するため、50質量%以下、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以下1質量%以上の範囲である。また、コア微粒子は単分散体であっても凝集体であってもよい。
【0057】
上記(I)工程で作製される液状組成物が含有する中空微粒子外殻材料の前駆体としては、上記中空微粒子外殻材料として例示した金属酸化物の前駆体として、例えば、これら金属酸化物の金属、具体的には、Si、Al等の塩やアルコキシド等が挙げられる。これらのうちでも、本発明に好ましく用いられる中空シリカ微粒子を得るためには、緻密なシリカ外殻を形成する点から、アルコシキシランが好ましい。アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられ、反応速度が適正な点から、テトラエトキシシランが好ましい。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、これらの化合物の加水分解物または重合物を前駆体として用いることも可能である。
【0058】
上記液状組成物における、中空微粒子外殻材料の前駆体の含有量は、最終的に形成される外殻の厚さが0.5〜10nmとなる量が好ましく、外殻の厚さが1〜5nmとなる量がより好ましい。中空微粒子外殻材料の前駆体の量は、中空微粒子外殻材料の量に換算して、具体的には、コア微粒子100質量部に対して、0.1〜10000質量部が好ましい。
【0059】
ここで、本発明に好ましく用いられる中空シリカ微粒子を作製する場合に用いる液状組成物においては、上記各成分以外に酸やアルカリ等の加水分解触媒を含有することが好ましい。また、上記液状組成物のpHは9〜11が好ましい。シリカ外殻が短時間で形成でき、かつ生成されるシリカ自体の凝集が比較的生じ難いからである。さらに、上記液状組成物を製造する際に、イオン強度を高めることでシリカの前駆体からシリカ外殻を形成し易くすることを目的として、水酸化マグネシウム等の電解質を添加してもよく、これらの電解質を用いてpHを調整することができる。
【0060】
次いで、このようにして(I)工程で得られた液状組成物に必要に応じて加熱等の操作を行い前記コア微粒子の表面に外殻を形成させコア−シェル型微粒子を得る工程(II)を行う。
【0061】
コア微粒子の表面に外殻を形成させる方法としては、コア微粒子とその分散媒体、および中空微粒子外殻材料の前駆体を含む上記液状組成物を、この前駆体がコア微粒子の表面で反応して中空微粒子外殻材料を生成する反応条件下におくことで、具体的には、用いる中空微粒子外殻材料の前駆体にもよるが、加熱条件下で加水分解反応を行うことで、コア微粒子の表面に外殻材料を被覆する方法等が挙げられる。
【0062】
ここで、本発明に用いる中空微粒子において、例えば、外殻をシリカとする場合、上記本発明に用いる特性の中空シリカ微粒子を得るためには、加熱温度は20〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。上記加熱温度(上記液状組成物の温度)が20℃以上であれば、外殻を短時間で形成できる。上記加熱温度が100℃を越えると、コア微粒子表面以外で析出するシリカの量が増加するおそれがある。加熱時間は加熱温度に合わせて適宜調整される。その他の外殻材料を用いる場合に関しても、本発明に用いる中空微粒子として適する特性となるように、上記加熱温度、時間を適宜調整する。
【0063】
外殻を形成した後、分散液をさらに加熱することにより、外殻を緻密にすることが好ましい。この際の加熱の方法としては、本発明に用いる特性の中空微粒子が得られる方法であれば特に制限されず、例えば、オートクレーブによる直接加熱、マイクロ波照射による加熱等の方法を挙げることができ、マイクロ波照射による加熱が好ましい。このときの加熱温度(分散液の温度)は100〜500℃が好ましく、より好ましくは120〜300℃である。前記加熱温度が100℃以上であれば緻密な外殻を短時間で形成でき、500℃以下であれば温度制御が容易である。
【0064】
なお、マイクロ波とは、通常、周波数が1G〜100GHzの電磁波を指す。通常は、周波数が2.45GHzのマイクロ波が用いられる。マイクロ波の出力は、上記(I)工程で得られた液状組成物が、例えば、中空シリカ微粒子製造用の場合には、上記100〜500℃に加熱される出力が好ましく、液状組成物が120〜300℃に加熱される出力がより好ましい。マイクロ波の照射時間は、マイクロ波の出力(液状組成物の温度)に応じて、所望の厚さのシェルが形成される時間に調整すればよく、例えば、中空シリカ微粒子製造用の場合には、上記好ましいマイクロ波出力条件で、10秒間〜20分間である。
【0065】
次に、(II)工程で得られたコア−シェル型微粒子のコア微粒子を溶解除去または分解除去することによって中空微粒子を得る(III)工程を行う。
【0066】
(III)工程で行うコア微粒子の除去のための処理は、用いたコア微粒子の性質に合わせて行われる。例えば、熱分解性有機重合体微粒子を用いた場合には、そのコア微粒子が分解する条件で加熱を行うことで、コア微粒子の分解除去が可能である。酸溶解性無機微粒子を用いた場合には、各種無機酸(塩酸、硝酸、硫酸等)、有機酸(ギ酸、酢酸等)、酸性カチオン交換樹脂等の酸を添加することによって、コア微粒子の溶解除去が可能である。また光溶解性無機微粒子を用いた場合には、そのコア微粒子が分解する条件で光照射を行うことで、コア微粒子の溶解除去が可能である。
【0067】
なお、コア微粒子が除去されたことの確認は、得られた中空微粒子を透過型電子顕微鏡により観察する、または、分解あるいは溶解により反応液中に放出されたコア微粒子由来成分の量を蛍光X線等の測定機器を用いて測定することにより行うことができる。
【0068】
このような方法で本発明に用いる中空微粒子(D)が分散液のかたちで得られる。製造方法にもよるが、上記で得られる中空微粒子(D)の分散液には各種成分が含まれているので、通常は公知の方法で精製を行い、中空微粒子(D)を分離する。中空微粒子(D)は、このまま本発明の隔壁形成用感光性組成物に配合してもよいが、適当な分散媒体、例えば、上記製造方法(I)工程で用いたコア微粒子の分散媒体と同様の分散媒体に分散した分散液として本発明の隔壁形成用感光性組成物に配合することが好ましい。この場合、中空微粒子(D)は単分散体であっても凝集体であってもよいが、通常は、複数個の中空微粒子が凝集した凝集体であることが好ましい。なお、レーザー回折散乱法式によって求められる、分散液中における中空微粒子の平均粒子径は20〜150nmであることが好ましい。
【0069】
また、中空微粒子(D)が親水性材料、例えば、シリカ、アルミナ等で構成されている場合には、本発明の隔壁形成用感光性組成物が含有する他の成分との親和性を向上させるために、表面修飾剤例えば、シランカップリング剤等を用いて上記方法で得られた中空微粒子(D)の表面を公知の方法で疎水性に処理することが好ましい。表面処理後は、上記同様、必要に応じて中空微粒子(D)を分離精製し、好ましくは、分散媒体に分散させた分散液として、本発明の隔壁形成用感光性組成物に配合する。
【0070】
上記表面処理に用いるシランカップリング剤として、具体的には、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、へプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、ポリオキシアルキレン鎖含有トリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(5)任意成分
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、上記(A)〜(D)の成分を必須成分として含有するが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として以下に説明する各種成分を含有することができる。
【0072】
(5−1)フッ素原子および/またはケイ素原子を含む重合体
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、さらに、任意成分として、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基(ただし、該アルキル基は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)および/または下記式(1)で示される基を含む重合体を含有してもよい。
【0073】
【化2】

(式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を表す。nは1〜200の整数を示す。)
【0074】
上記側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含む重合体は界面活性剤として作用する。また、これを含む隔壁形成用感光性組成物を用いて隔壁を形成した際に、必要に応じて、隔壁の上部表面に撥インク性を付与する撥インク剤としての機能も有する。
【0075】
上記側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含む重合体を界面活性剤として用いる場合には、その重量平均分子量は、500以上20000未満が好ましく、1000以上10000未満がより好ましい。また、撥インク剤として用いる場合には、上記重合体の重量平均分子量は、500以上15000未満が好ましく、1000以上10000未満がより好ましい。この範囲であるとアルカリ溶解性、現像性が良好である。
【0076】
上記側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含む重合体を撥インク剤として用いる場合には、上記重合体のフッ素含有量は、撥インク性と隔壁成形性の観点から、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは12〜30質量%である。また、上記重合体がケイ素を含有する場合の重合体におけるケイ素含有量は、撥インク性と隔壁成形性の観点から、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0077】
また、上記重合体を撥インク剤として用いる場合には、重合体は側鎖に、好ましくは3〜100個/分子の割合で、より好ましくは6〜30個/分子の割合でエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有することにより上記重合体は、隔壁形成用感光性組成物中のアルカリ可溶性樹脂(A)にラジカル重合して隔壁上部に固定化されることが可能となる。
【0078】
さらに上記重合体は、酸性基、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基およびスルホン酸基の群から選ばれる少なくとも1つの酸性基を有することが好ましい。その理由は、アルカリ可溶性を有することで、基材上の隔壁で仕切られた領域(以下、「ドット」ということもある)内に上記撥インク性を有する重合体が残りにくく、インクを注入した際のインクの濡れ拡がり性が良好となるからである。このような観点から、重合体の酸価は10〜400mgKOH/gであることが好ましく、20〜300mgKOH/gがより好ましい。
【0079】
本発明の隔壁形成用感光性組成物における上記側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含む重合体の配合割合は、用いる光学素子の種類や用途にもよるが、界面活性剤として用いる場合には、組成物の全固形分に対して、0.05〜30質量%とすることが好ましく、0.15〜10質量%とすることがより好ましい。また、本発明の隔壁形成用感光性組成物に上記側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含む重合体を撥インク剤として配合する場合の配合割合は、用いる光学素子の種類や用途にもよるが、組成物の全固形分に対して、0.05〜30質量%とすることが好ましく、0.1〜10質量%とすることがより好ましい。このような範囲であると、ムラや外観上の欠点のない塗膜が得られる。
【0080】
(5−2)その他任意成分
本発明の隔壁形成用感光性組成物においては、さらに必要に応じて、上記以外の任意成分として、シランカップリング剤、熱硬化性樹脂、ラジカル架橋剤、硬化促進剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、紫外線吸収剤、フィラー等を含有することができる。
【0081】
[シランカップリング剤]
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、任意成分として、シランカップリング剤を含有できる。シランカップリング剤を配合することで、得られる隔壁形成用感光性組成物を用いて形成される隔壁の基材への密着性がより向上し、好ましい。
【0082】
このようなシランカップリング剤として、具体的には、上記中空微粒子(D)の表面処理用に例示したのと同様の化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
本発明の隔壁形成用感光性組成物においては、その全固形分におけるシランカップリング剤の割合は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。含有量が少なすぎると得られる感光性組成物から形成される隔壁の基材密着性向上の効果が少なく、含有量が多すぎると、感度が低下するため好ましくない。
【0084】
[熱硬化性樹脂/ラジカル架橋剤]
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、また、任意成分として、熱硬化性樹脂を含有してもよい。熱硬化性樹脂は、上記アルカリ可溶性樹脂(A)と、加熱処理、具体的には、現像後の加熱処理等により架橋反応する樹脂であり、隔壁を構成する樹脂の架橋密度を増大させ、耐熱性を向上させるために用いられる任意成分である。
【0085】
熱硬化性樹脂としては、上記架橋硬化するアルカリ可溶性樹脂(A)が有する架橋反応性の官能基の種類によるが、その種類に応じて、例えば、アミノ樹脂、2個以上のエポキシ基を有する化合物、2個以上のヒドラジノ基を有する化合物、ポリカルボジイミド化合物、2個以上のオキサゾリン基を有する化合物、2個以上のアジリジン基を有する化合物、多価金属類、2個以上のメルカプト基を有する化合物、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
これらのうちでも、本発明において隔壁形成用感光性組成物に添加する熱硬化性樹脂としては、2個以上のエポキシ基を有する化合物が耐溶剤性の点から好ましく用いられる。2個以上のエポキシ基を有する化合物として具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル類、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート等のグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン類、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0087】
本発明の隔壁形成用感光性組成物における上記熱硬化性樹脂の配合割合は、用いる光学素子の種類や用途にもよるが、組成物の全固形分に対して、1〜50質量%とすることが好ましく、5〜30質量%とすることがより好ましい。このような範囲であると、これを用いて得られる隔壁を構成する樹脂硬化物の架橋密度が増大し、耐熱性に優れる隔壁が得られる。
【0088】
また、本発明の隔壁形成用感光性組成物は、2個以上のエチレン性二重結合を有し、かつ酸性基を有しないラジカル架橋剤を含むことが好ましい。これにより、さらに感光性組成物の光硬化性が向上し、低露光量での光学素子用の隔壁の形成が促進される。
【0089】
ラジカル架橋剤の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ウレタンアクリレートも挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
本発明の隔壁形成用感光性組成物において、その全固形分に対するラジカル架橋剤の割合は、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。当該範囲であると得られる感光性組成物の現像性が良好となる。
【0091】
(6)隔壁形成用感光性組成物
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)および黒色顔料(C)のそれぞれ適宜選択された配合量と、中空微粒子(D)の組成物全固形分に対して5〜30質量%となる量を配合し、さらにその他の任意成分については任意に上記説明した適当量を秤量し、これらを適当な方法で適当な時間、具体的には、30〜120分間程度混合攪拌することにより調製することができる。
なお、本発明の隔壁形成用感光性組成物において、上記中空微粒子(D)は、(D)成分単独からなる凝集体として存在する場合もあれば、表面電位等の違いにより、たとえば、上記黒色顔料(C)とで構成される凝集体の状態で存在している場合もあると考えられる。このような凝集体のレーザー回折散乱方式によって求められる平均粒子径が50〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることが特に好ましい。
【0092】
本発明においては、このようにして得られる隔壁形成用感光性組成物をこのまま基材に塗布して塗膜形成を行うことも可能であるが、以下に説明する溶剤を添加してこれを含有する塗布液のかたちで塗膜形成に用いることが好ましい。なお、本明細書において、溶剤とは反応性でないものをいう。
【0093】
このような溶剤として、具体例には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類;メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、シクロヘキサノールアセテート、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、等が挙げられる。その他には、n−ブタン、n−ヘキサン等の鎖式炭化水素、シクロヘキサン等の環式飽和炭化水素、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
本発明の隔壁形成用感光性組成物に添加する溶剤の量としては、前記感光性組成物の組成、用途等にもよるが、その全固形分に対して1〜100質量%とすることが好ましい。
【0095】
溶剤の添加は、前記得られた隔壁形成用感光性組成物に対して行うことも可能であるが、前記調製において隔壁形成用感光性組成物の原料成分を混合攪拌する際に、溶剤を原料成分に添加して原料成分とともに混合攪拌する方法が効率的であり好ましい。
【0096】
<2>本発明のブラックマトリックスおよびその製造方法
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、通常のネガ型感光性組成物と同様にフォトリソグラフィ等の材料として用いられ、得られた黒色の塗膜硬化物は、通常の光学素子用の黒色隔壁、ブラックマトリックス、具体的には、基材と、前記基材の主面上に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有する光学素子のブラックマトリックスとして適用可能である。上記本発明の隔壁形成用感光性組成物を用いて形成される本発明のブラックマトリックスにおいては、高い遮光性を有しながら誘電特性を低く抑えることが可能であり、かつ厚膜化も可能であることから、本発明のブラックマトリックスは、カラーフィルタ基板とTFTアレイ基板とを一体化させたカラーフィルタオンアレイ用として好適である。
【0097】
なお、本発明のブラックマトリックスにおいては、膜厚が1.0〜4.5μmであることが、遮光性やフォトリソグラフィにおけるパターニング特性の点で好ましく、より好ましくは1.5〜4.5μmである。また、本発明のブラックマトリックスをカラーフィルタオンアレイに用いる場合には、特に、膜厚を2〜3.5μmとすることが好ましい。
【0098】
本発明はまた、上記本発明の隔壁形成用感光性組成物を使用した前記ブラックマトリックスの製造方法を提供するものである。以下に、本発明の隔壁形成用感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ工程による本発明のブラックマトリックスの製造方法について説明する。
【0099】
本発明のブラックマトリックスの製造方法は、基材と、前記基材の主面上に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有する光学素子のブラックマトリックスの製造方法であって、上記本発明の隔壁形成用感光性組成物を前記基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜のブラックマトリックスとなる部分のみを露光し感光硬化させる露光工程と、前記感光硬化した部分以外の塗膜を除去し前記塗膜の感光硬化部分からなるブラックマトリックスを形成させる現像工程と、前記形成されたブラックマトリックスを加熱するポストベーク工程とを順に有することを特徴とする。
【0100】
なお、本明細書において「本発明の隔壁形成用感光性組成物を基材上に塗布する」とは、本発明の隔壁形成用感光性組成物をそのまま塗布することに加え、例えば、隔壁形成用感光性組成物に溶剤が添加されたような隔壁形成用感光性組成物を含有する塗布液を塗布することも含むものである。したがって、以下に説明する露光工程以前の「塗膜」においては、「隔壁形成用感光性組成物からなる塗膜」は前記塗布液からなる塗膜を含むものである。
【0101】
図1は、本発明のブラックマトリックスの製造方法の実施の形態の一例を含む本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す図である。図1においては、(a)〜(c)までが本発明のブラックマトリックスの製造方法の実施の形態の一例を示す。以下、図1(a)〜(c)を用いて本発明のブラックマトリックスの製造方法の実施の形態について説明する。
【0102】
図1(a)は、基材1上に本発明の隔壁形成用感光性組成物からなる塗膜2が形成された状態の断面を示す図である。(b)は露光工程を模式的に示す図である。(c)は、現像工程後の基材1と基材上に形成された隔壁(ブラックマトリックス)6を示す断面図である。
【0103】
(塗膜形成工程)
ブラックマトリックスを製造するには、まず、図1(a)に断面を示すように、基材1上に上記本発明の隔壁形成用感光性組成物を塗布して隔壁形成用感光性組成物からなる塗膜2を形成する。
【0104】
本発明の製造方法に用いる基材1としては、その材質は特に限定されるものではないが、通常、光学素子用の基材に用いられる材質、例えば、各種ガラス板;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性プラスチックシート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性プラスチックシート等を挙げることができる。また、あらかじめ上記基材にシリコンナイトライドやポリイミドなどの絶縁膜を形成させた基板を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板、ポリイミド等の耐熱性プラスチックが好ましい。なお、基材1上に隔壁形成用感光性組成物の塗膜2を形成させる前に、基材1の隔壁形成用感光性組成物の塗布面をアルコール洗浄、UVオゾン洗浄等で洗浄することが好ましい。
【0105】
ここで、図1はカラーフィルタオンアレイの製造方法の一例を模式的に示すものであることから、基材1は主面上にTFTアレイ3を有するが、本発明のブラックマトリックスの製造方法に用いる基材はこれに限定されるものではない。なお、このTFTアレイ付き基材(TFTアレイ基材)は、特別な構造のものではなく、カラーフィルタオンアレイ用として通常用いられるTFTアレイ基板を本発明においても用いることが可能である。
【0106】
隔壁形成用感光性組成物塗膜2の形成方法としては、膜厚が均一な塗膜が形成される方法であれば特に制限されず、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法など通常の塗膜形成に用いられる方法が挙げられる。また、塗膜2の膜厚は最終的に得られる隔壁の高さを勘案して決められる。このような膜厚として概ね、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜30μm程度を挙げることができる。
【0107】
ブラッマトリックスの製造に際しては、上記塗膜形成工程後に行われる以下の露光工程の前に、必要に応じてプリベーク工程を設けてもよい。プリベーク工程では、前記塗膜形成工程で基材1上に形成された塗膜2を加熱する。この加熱によって、塗膜を構成する隔壁形成用感光性組成物に含まれる揮発成分、または、隔壁形成用感光性組成物に必要に応じて添加された溶剤が揮発し、粘着性のない塗膜が得られる。また、隔壁形成用感光性組成物が撥インク剤を含有する場合には、撥インク剤が塗膜表面近傍に移行する。加熱の方法としては、基材1とともに塗膜2をホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、好ましくは50〜120℃で10〜2000秒間程度加熱処理する方法が挙げられる。
【0108】
なお、前記塗膜形成工程において隔壁形成用感光性組成物に溶剤を添加した塗布液を用いた場合には、溶剤の除去が必要となる。上記のようにプリベーク工程の加熱によって溶剤を除去することも可能であるが、溶剤を除去するために加熱(乾燥)以外の真空乾燥等の乾燥工程をプリベーク工程の前に別に設けてもよい。また、塗膜外観のムラを発生させず、効率よく乾燥させるために、前記プリベーク工程による乾燥を兼ねた加熱と真空乾燥を併用することがより好ましい。真空乾燥の条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは500〜10Paで10〜300秒間程度の幅広い範囲で行うことができる。
【0109】
(露光工程)
塗膜形成工程に引き続き、図1(b)に模式図を示す露光工程を実行する。すなわち、基材1上の乾燥後の隔壁形成用感光性組成物の塗膜2に所定パターンのマスク4を介して光5を照射する。前記マスク4に切られた所定パターン部分のみを光5が透過し基材1上の隔壁形成用感光性組成物塗膜に到達しその部分のみが感光硬化する。したがって、隔壁(ブラックマトリックス)の形成を行う場合、前記所定パターンは隔壁(ブラックマトリックス)の形状に適合する形に設けられる。例えば、以下のポストベーク工程後に隔壁(ブラックマトリックス)の幅の平均が、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。
【0110】
また、図1に示すようにTFTアレイ3を有する基材1上にカラーフィルタオンアレイ用の隔壁(ブラックマトリックス)を形成する場合には、以下のポストベーク工程後に、TFTアレイ3上にTETアレイ3を抱合するかたちに隔壁(ブラックマトリックス)が形成されるようなパターンを有するマスクを用いることが好ましい。
【0111】
露光は前記塗膜の所望の部分に光を照射する工程であり、方法は特に限定されないが、図1(b)のように所定パターンのマスクを介して行うことが好ましい。図1(b)において、光が照射された塗膜の露光部分3は隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物からなり、一方、未露光部分は未硬化の隔壁形成用感光性組成物の塗膜2そのものが残存する状態である。
【0112】
照射する光5として、具体的には、可視光;紫外線;遠紫外線;KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、Krエキシマレーザー、KrArエキシマレーザー、Arエキシマレーザー等のエキシマレーザー;X線;電子線等が挙げられる。また、照射光5としては、波長100〜600nmの電磁波が好ましく、300〜500nmの範囲に分布を有する光線がより好ましく、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)が特に好ましい。
【0113】
照射装置(図示されていない)として、公知の超高圧水銀灯やディープUVランプ等を用いることができる。露光量は、好ましくは5〜1000mJ/cmの範囲であり、より好ましくは10〜200mJ/cmである。露光量が低すぎると、隔壁となる隔壁形成用感光性組成物の硬化が不十分で、その後の現像で溶解や基材1からの剥離が起こるおそれがある。露光量が高すぎると高い解像度が得られなくなる傾向にある。また、光照射(露光)時間として、露光量、隔壁形成用感光性組成物の組成、塗膜の厚さ等にもよるが、具体的には1〜60秒間、好ましくは5〜20秒間を挙げることができる。
【0114】
(現像工程)
露光工程の後、現像液を用いて現像を行い、図1(b)に示される基材1上の未露光部分2を除去する。これにより、図1(c)に断面図が示されるような、基材1と前記基材上に隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物により形成された隔壁(ブラックマトリックス)6の構成が得られる。また、隔壁(ブラックマトリックス)6と基材1で囲まれた部分は、インク注入等により画素が形成されるドット7と呼ばれる部分である。得られたブラックマトリックス付き基材は、後述のポストベーク工程を経て、インクジェット方式あるいはフォトリソグラフィ法での光学素子作製に用いることが可能な基板となる。
【0115】
現像に用いる現像液としては、例えば、無機アルカリ類、アミン類、アルコールアミン類、第4級アンモニウム塩等のアルカリ類を含むアルカリ水溶液を用いることができる。また現像液には、溶解性の向上や残渣除去のために、界面活性剤やアルコールなどの有機溶剤を添加することができる。
【0116】
現像時間(現像液に接触させる時間)は、5〜180秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー法などのいずれでもよい。現像後、高圧水洗や流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基材1および隔壁(ブラックマトリックス)6上の水分を除去できる。
【0117】
(ポストベーク工程)
続いて、基材1上の隔壁(ブラックマトリックス)6を加熱することが好ましい。加熱の方法としては、基材1とともに隔壁(ブラックマトリックス)6をホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、好ましくは150〜250℃で、5〜90分間加熱処理をする方法が挙げられる。この加熱処理により、基材1上の隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物からなる隔壁(ブラックマトリックス)6がさらに硬化し、隔壁(ブラックマトリックス)6と基材1で囲まれるドット7の形状もより固定化される。なお、前記加熱温度は180℃以上であることがより好ましい。加熱温度が低すぎると隔壁(ブラックマトリックス)6の硬化が不十分であるために、充分な耐薬品性が得られず、その後、例えばインクジェット塗布工程でドット7にインクを注入した場合に、そのインクに含まれる溶媒により隔壁(ブラックマトリックス)6が膨潤したり、インクが滲んでしまうおそれがある。一方、加熱温度が高すぎると、隔壁(ブラックマトリックス)6の熱分解が起こるおそれがある。
【0118】
本発明の隔壁形成用感光性組成物は、隔壁(ブラックマトリックス)の幅の平均が、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmのパターン形成に用いることができる。また、TFT素子と絵素電極とを接続させるためのコンタクトホールの幅の平均が20μm以下、より好ましくは10μm以下、のパターン形成に用いることができる。また、隔壁(ブラックマトリックス)の高さの平均が、好ましくは1.0〜4.5μm、より好ましくは1.5〜4μmのパターン形成に用いることができる。
【0119】
なお、TFTアレイ基板上にカラーフィルタオンアレイ用の隔壁(ブラックマトリックス)を製造する場合には、図1で示される実施の形態の一例のように、TFTアレイ上にTETアレイを抱合するかたちに隔壁(ブラックマトリックス)を形成する方法をとることもあるが、本発明のブラックマトリックスおよびその製造方法はこれに限定されるものではなく、隔壁(ブラックマトリックス)の形成される位置やブラックマトリックスの形状、膜厚等は、各種用途に応じて適宜選択することが可能である。
【0120】
<3>本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法
本発明はまた、TFTアレイを主面上に有する基材と、前記基材の主面上所定位置に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックス(上記本発明の方法で製造されるブラックマトリックス)と、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有するカラーフィルタオンアレイの製造方法を提供するものである。以下に、本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法について説明する。
【0121】
本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法は、TFTアレイを主面上に有する基材と、前記基材の主面上所定位置に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有するカラーフィルタオンアレイの製造に適用され、上記本発明の製造方法によって、TFTアレイを主面上に有する基材上にブラックマトリックスを形成した後、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にインクジェット法またはフォトリソグラフィ法により前記画素を形成する工程を有することを特徴とする。
【0122】
カラーフィルタオンアレイにおいては、形成される画素の形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知のいずれの配列とすることも可能であり、上記ブラックマトリックスは、この画素の形状とTFTアレイ基材上のTFTアレイの位置関係を考慮して設定された所定の位置に所定の形状で形成される。
【0123】
ここで、本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法においては、上記本発明の方法でTFTアレイ基材上にブラックマトリックスを形成した後、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域(ドット)内にインクを投入する前に、ドット内に露出した基材表面に、例えば、アルカリ水溶液による洗浄処理、UV洗浄処理、UVオゾン洗浄処理、エキシマ洗浄処理、コロナ放電処理、酸素プラズマ処理等の方法で親インク化処理を施してもよい。
【0124】
(インクジェット法による画素形成)
図1は、本発明のブラックマトリックスの製造方法の実施の形態の一例を含む本発明のカラーフィルタオンアレイの製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す図であり、図1(a)〜(c)を用いて本発明のブラックマトリックスの製造方法の実施の形態について上に説明した。図1(d)は、このようにして得られた、本発明のブラックマトリックスを有するTFTアレイ基材に、インクジェット法により画素形成を行う工程を模式的に示す図である。
【0125】
図1(d)に示すように、TFTアレイ3付き基材1上の、ブラックマトリックス6で仕切られた領域7にインクジェット法により画素を形成するには、まず、上記必要に応じて親インク化処理工程が行われた後のドット7にインクジェット法によりインク9を注入してインク層10を形成する。インクの注入は、インクジェット法に一般的に用いられるインクジェット装置(図示されず)のインク供給ノズル8を用いて通常の方法と同様に行うことができる。インクジェット装置は、通常ノズル毎に異なる色、具体的には、R(赤)、G(緑)、B(青)等に着色されたインクが所望のドットに注入可能なように設計されている。このようなインク注入に用いられるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いたインクジェット装置を用いることができる。
【0126】
なお、本明細書において「インク」とは、乾燥硬化した後に、例えば光学的、電気的に機能を有する液体を総称するものであり、従来から用いられている着色材料に限定されるものではない。また、前記インクを注入して形成される「画素」についても同様に、隔壁(ブラックマトリックス)で仕切られたそれぞれに光学的、電気的機能を有する区分を表すものとして用いられる。
【0127】
ここで、カラーフィルタオンアレイの画素の形成に用いられるインクは、カラーフィルタの画素形成に通常用いられるインクと同様なインクが用いられ、主に着色成分とバインダー樹脂成分と溶剤とを含むインクである。着色成分としては、耐熱性、耐光性などに優れた顔料および染料を用いることが好ましい。バインダー樹脂成分としては、透明で耐熱性に優れた樹脂が好ましく、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。水性のインクは、溶剤として水および必要に応じて水溶性有機溶媒を含み、バインダー樹脂成分として水溶性樹脂または水分散性樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。また、油性のインクは、溶剤として有機溶剤を含み、バインダー樹脂成分として有機溶剤に可溶な樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。
【0128】
なお、インクジェット法においては、上記インクジェット装置でドットにインクを注入した後、ドット内に形成されたインク層に対して、必要に応じて、乾燥、加熱硬化、紫外線硬化等の処理を行うことで画素が形成される。
【0129】
(フォトリソグラフィ法による画素形成)
TFTアレイ基材上のブラックマトリックスで仕切られた領域にフォトリソグラフィ法により画素を形成するには、まず、上記必要に応じて親インク化処理工程が行われた後の基板上に、R(赤)、G(緑)、B(青)等の所望の着色成分を有する感光性組成物を塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜の画素となる部分のみを露光し感光硬化させる露光工程と、前記感光硬化した部分以外の塗膜を除去し前記塗膜の感光硬化した部分からなる画素を形成する現像工程と、この画素を加熱するポストベーク工程と、を各色毎に繰り返すことによって画素が形成される。
インクとしては、カラーフィルタの画素形成に通常用いられるインクと同様なインクが用いられ、主に着色成分、バインダー樹脂成分、光重合開始剤、および溶剤を含むインクである。着色成分としては、耐熱性、耐光性などに優れた顔料および染料を用いることが好ましい。バインダー樹脂としては、透明で耐熱性に優れ、かつアルカリ水溶液による現像が可能な樹脂が好ましく、前記のアルカリ可溶性樹脂と同様の樹脂が使用できる。光重合開始剤も前記と同様のものを用いることができる。
【0130】
このようにして、TFTアレイ基材上のブラックマトリックスで仕切られた領域にインクジェット法またはフォトリソグラフィ法により画素を形成した後、必要に応じて、保護膜層を形成する。保護膜層は表面平坦性を上げる目的と隔壁や画素部のインクからの溶出物が液晶層に到達するのを遮断する目的で形成することが好ましい。保護膜層を形成する場合は、事前に隔壁の撥インク性を除去することが好ましい。撥インク性を除去しない場合、オーバーコート用塗布液をはじき、均一な膜厚が得られないため好ましくない。隔壁の撥インク性を除去する方法としては、プラズマアッシング処理や光アッシング処理等が挙げられる。
【0131】
さらに必要に応じて、カラーフィルタオンアレイを用いて製造される液晶パネルの高品位化のためにフォトスペーサーを隔壁で構成されるブラックマトリックス上に形成することが好ましい。また、必要に応じて、液晶パネルを構成するカラーフィルタオンアレイが通常有する配向層や電極、コンタクトホール等を形成することも可能である。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例に基づいて、本発明について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、各例に化合物の配合量として用いた「部」は、「質量部」を意味する。
【0133】
また、以下の各例に用いた化合物の略号を次に示す。
(i)撥インク剤の調製に用いた化合物
C6FMA:CH=C(CH)COOCHCH(CF
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
V−70:V−70(商品名、和光純薬社製、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル))
2−ME:2−メルカプトエタノール
MOI:カレンズMOI(商品名、昭和電工社製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
【0134】
(ii)感光性樹脂組成物塗布液の調製に用いた成分
OXE02:OXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製、エタノン 1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾイル−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)
ZCR1569:KAYARAD ZCR−1569H(商品名、日本化薬社製、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した樹脂の溶液;固形分70%、重量平均分子量4710)
DPHA:KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)
PGMEA:プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート
CB:カーボンブラック分散液(平均2次粒径120nm、分散媒PGMEA、カーボンブラック20%、アミン価が18mgKOH/gのポリウレタン系高分子分散剤5%)
D375:
中実シリカ微粒子分散液:中実シリカ微粒子分散液(平均1次粒子径:13nm、分散媒:PGMEA、固形分:30質量%)
157S70:157S70(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ノボラック型エポキシ樹脂)
KBM403:KBM−403(商品名、信越化学工業社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0135】
まず、本発明の隔壁形成用感光性組成物に配合する中空シリカ微粒子および撥インク剤の合成例について説明する。
【0136】
[合成例1]中空シリカ微粒子1の製造
容量200mlの石英製耐圧容器に、エタノール36.9g、酸化亜鉛(比誘電率:18)微粒子の水分散液(レーザー回折散乱方式による分散液中での平均粒子径:30nm、固形分濃度:20質量%)55.6g、テトラエトキシシラン(SiO換算固形分濃度:28.8質量%)6.9gを加えた後、28質量%のアンモニア水溶液0.6gを添加して、pH=10の原料液を調製した。
【0137】
耐圧容器を密封した後、マイクロ波加熱装置を用いて原料液に最大出力:1000W、周波数:2.45GHzのマイクロ波を3分間照射し、酸化亜鉛微粒子コアの表面にテトラエトキシシランが加水分解して生成したシリカによるシェルが形成されたコア−シェル型微粒子の分散液(固形分濃度:約13質量%)100gを得た。なお、マイクロ波照射中の反応液温度は180℃であった。
【0138】
得られたコア−シェル型微粒子の分散液100gに、強酸性カチオン交換樹脂(総交換容量2.0(meq/ml)以上)を100g加え、1時間撹拌してpH=4となった後、ろ過により強酸性カチオン交換樹脂を除去することで、中空シリカ微粒子の分散液98gを得た。
【0139】
ついで、得られた分散液を減圧濃縮後、メタノールで溶媒置換して中空シリカ微粒子のメタノール分散液(固形分濃度:約35質量%)を得た。このメタノール分散液40gに、ヘキサメチルジシロキサン0.6gをPGMEA100gに溶解した溶液を、撹拌しながら添加した。撹拌を続けながら加熱し、液温を60℃に保ったまま1時間熟成した。続いて、シリカ濃度が一定となるようにPGMEAを添加しながら常圧蒸留を行った。ゾルの分散媒において、PGMEAに対するメタノールの質量比が0.9となったところで蒸留を停止し、メタノールを含有する疎水性オルガノシリカゾルを得た。この分散液に、ヘキサメチルジシロキサン0.3gをPGMEA6gに溶解した溶液を添加した。撹拌しながら加熱し、液温60℃で1時間熟成した。続いて、PGMEAを添加しながら、圧力0.02MPaで減圧蒸留により溶媒置換を行い、中空シリカ微粒子1のPGMEA分散液(シリカ濃度:20質量%)を得た。この中空シリカ微粒子1は、ほぼ真球状の微粒子であった。
【0140】
上記で得られた中空シリカ微粒子1の分散液から一部を採取し、ロータリーエバポレータを用いて分散媒を除去し、粉末状の中空シリカ微粒子1を得た。得られた中空シリカ微粒子1を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、100個の中空微粒子を無作為に選び出し、1次粒子の100個についてそれぞれ中空微粒子の粒子径(外径)、中空部の径(内径)(d)を測定し、その測定値をもとに外殻の厚さ(t)、空隙率をそれぞれ以下の計算式で算出した。また、中空部の径(内径)(d)/外殻の厚さ(t)を算出した。それぞれについて100個の平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0141】
外殻の厚さ = (外径−内径)/2
空隙率 = 中空部の体積/中空微粒子の体積
【0142】
[合成例2]中空シリカ微粒子2の製造
容量200mlの石英製耐圧容器に、エタノール45.1g、酸化亜鉛(比誘電率:18)微粒子の水分散液(レーザー回折散乱方式による分散液中での平均粒子径:30nm、固形分濃度:20質量%)50.0g、テトラエトキシシラン(SiO換算固形分濃度:28.8質量%)4.5gを加えた後、28質量%のアンモニア水溶液0.4gを添加して、pH=10の原料液を調製した。合成例1と同様の操作を行い、中空シリカ微粒子の分散液98gを得た。引き続き、合成例1と同様の操作により、中空シリカ微粒子2のPGMEA分散液(シリカ濃度:20質量%)を得た。この中空シリカ微粒子2は、ほぼ真球状の微粒子であった。
【0143】
得られた中空シリカ微粒子2を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、1次粒子について、上記と同様にして中空微粒子の粒子径(外径)、中空部の径(内径)(d)を測定し、その測定値をもとに外殻の厚さ(t)、空隙率をそれぞれ上記の計算式で算出した。また、中空部の径(内径)(d)/外殻の厚さ(t)を算出した。それぞれについて100個の平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
[合成例3]撥インク剤の調製
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトン(556g)、C6FMA(96g)、MAA(4.8g)、2−HEMA(96g)、MMA(43.2g)、連鎖移動剤2−ME(6.2g)および重合開始剤V−70(4.5g)を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、重合体(1)の溶液を得た。得られた重合体(1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥し、重合体(1)の237gを得た。重合体(1)の重量平均分子量は5600であった。
【0146】
上記で得られた重合体(1)(100g)、MOI(47.7g)、DBTDL(0.19g)、BHT(2.4g)およびアセトン(100g)を、温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに仕込み、撹拌しながら、30℃で18時間重合させ、重合体(2)の溶液を得た。得られた重合体(2)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥し、重合体(2)の135gを得た。重量平均分子量は8800であった。得られた重合体(2)を撥インク剤として実施例の隔壁形成用感光性組成物の製造に用いた。
【0147】
[実施例1]
(隔壁形成用感光性組成物塗布液の調製)
アルカリ可溶性樹脂(A)を含むZCR1569(6.76g)、光重合開始剤(B)としてのOXE02(0.47g)、黒色顔料(C)の分散液としてのCB(6.76g)とD375(13.52g)、中空微粒子(D)として上記合成例1で得られた中空シリカ微粒子1の分散液(10.14g)、シランカップリング剤としてのKBM403(0.68g)、熱硬化性樹脂としての157S70(0.57g)、ラジカル架橋剤としてのDPHA(2.09g)、撥インク剤としての重合体(2)(0.05g)、溶媒としてのPGMEA(59.02g)を混合して、隔壁形成用感光性組成物(1)の塗布液を得た。表2に得られた隔壁形成用感光性組成物(1)(全固形分)中の各々の成分の割合(質量%)を示す。
【0148】
(ブラックマトリックスの製造)
スピンナーを用いて、基材となるガラス基板AN100(旭硝子製、100mm×100mm、0.7mm厚)上に、上記で調製した隔壁形成用感光性組成物(1)の塗布液を塗布した後、ホットプレート上で、100℃で2分間乾燥させ、3.7μmの隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜を形成した。
【0149】
上記で得られたガラス基板上の隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜に、超高圧水銀灯を用いて、露光量がi線(365nm)基準で100mJ/cmの光を、マスクを通して、2秒間照射し、露光した。なお、マスクは、遮光部が100μm×200μm、光透過部が20μmの格子状パターンであり、ガラス基板上に形成される隔壁で仕切られた領域すなわち開口部(ドット)の容積が40pLとなる設計であった。
【0150】
上記露光後のガラス基板を、無機アルカリタイプの現像液セミクリーンDL−A4(商品名、横浜油脂工業社製)の10倍希釈水溶液に浸漬して現像を行い、未露光部を水により洗い流し、乾燥させた。
【0151】
現像〜乾燥後のガラス基板を、ホットプレート上で、220℃で30分間加熱する(ポストベークする)ことにより、約3μmの膜厚の隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(1)を得た。このガラス基板(1)を用いて、以下に示すOD値、現像密着性、パターン直線性の評価を行った。結果を表2に示す。
(OD値)ポストベーク後の塗膜について、伊勢電子社製のODメーターを用いてOD値を測定した。結果は、膜厚1μmあたりのOD値として記載した。
(現像密着性)ブレイクタイム後、現像液中でさらに30秒間経過したのち、20μmのパターンが残っている場合を○、剥離した場合を×とした。
(パターン直線性)ポストベーク後の20μmのライン幅のパターンを顕微鏡で観察し、ギザツキが観測されない場合を○、観測された場合を×とした。
【0152】
また、基材としてシリコンウエハを用い、露光の際にマスクを用いずに全面露光すること以外は上記と同様にして隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたシリコンウエハ(1)を得た。このシリコンウエハ(1)について、SSM社製SSM−495を用い、水銀プローバーによるCV測定を行うことにより、隔壁(ブラックマトリックス)の1MHzの比誘電率を求めた。結果を表2に示す。
【0153】
[実施例2]
アルカリ可溶性樹脂(A)を含むZCR1569(6.47g)、光重合開始剤(B)としてのOXE02(0.45g)、黒色顔料(C)の分散液としてのCB(6.47g)とD375(12.94g)、中空微粒子(D)として上記合成例1で得られた中空シリカ微粒子1の分散液(12.94g)、シランカップリング剤としてのKBM403(0.65g)、熱硬化性樹脂としての157S70(0.55g)、ラジカル架橋剤としてのDPHA(1.94g)、撥インク剤としての重合体(2)(0.04g)、溶媒としてのPGMEA(57.55g)を混合して、隔壁形成用感光性組成物(2)の塗布液を得た。表2に得られた隔壁形成用感光性組成物(2)(全固形分)中の各々の成分の割合(質量%)を示す。
【0154】
この隔壁形成用感光性組成物(2)の塗布液を用いて、実施例1と同様にして約3μmの膜厚の隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(2)とシリコンウエハ(2)とを得た。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0155】
[実施例3]
実施例1において、中空微粒子(D)として、中空シリカ微粒子1の分散液30gのかわりに上記合成例2で得られた中空シリカ微粒子2の分散液40gを用い、黒色顔料(C)の分散液としてのCB(20g)とD375(40g)を、CB(15g)とD375(45g)に変更した以外は実施例1と同様にして隔壁形成用感光性組成物(3)の塗布液を得た。表2に得られた隔壁形成用感光性組成物(3)(全固形分)中の各々の成分の割合(質量%)を示す。
【0156】
この隔壁形成用感光性組成物(3)の塗布液を用いて、実施例1と同様にして約3μmの膜厚の隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(3)とシリコンウエハ(3)とを得た。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0157】
[比較例1]
実施例1において、中空微粒子(D)としての中空シリカ微粒子1の分散液30gのかわりに中実シリカ微粒子分散液の30gを用いた以外は実施例1と同様にして隔壁形成用感光性組成物(4)の塗布液を得た。表2に得られた隔壁形成用感光性組成物(4)(全固形分)中の各々の成分の割合(質量%)を示す。
【0158】
この隔壁形成用感光性組成物(4)の塗布液を用いて、実施例1と同様にして約3μmの膜厚の隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(4)とシリコンウエハ(4)とを得た。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0159】
[比較例2]
実施例1において、中空微粒子(D)を全く配合しない以外は実施例1と同様にして隔壁形成用感光性組成物(5)の塗布液を得た。表2に得られた隔壁形成用感光性組成物(5)(全固形分)中の各々の成分の割合(質量%)を示す。
【0160】
この隔壁形成用感光性組成物(5)の塗布液を用いて、実施例1と同様にして約3μmの膜厚の隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(5)とシリコンウエハ(5)とを得た。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】

【0162】
表2から、中空微粒子(D)を含有しない、または中空微粒子(D)のかわりに中実微粒子を含有する比較例の隔壁形成用感光性組成物から得られるブラックマトリックスの比誘電率に比べ、中空微粒子(D)を本発明の範囲で含有する実施例1〜3の隔壁形成用感光性組成物から得られるブラックマトリックスの比誘電率は十分に低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の隔壁形成用感光性組成物を用いて得られるブラックマトリックスは、高い遮光性を有しながら比誘電率は低く抑えられたものであり、その特性からカラーフィルタオンアレイ等のブラックマトリックスとして有用である。
【符号の説明】
【0164】
1…基材、2…隔壁形成用感光性組成物の層、3…TFTアレイ、4…マスク、5…光、6…隔壁(ブラックマトリックス)、7…ドット、8…インク供給ノズル、9…インク、10…インク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、黒色顔料(C)、および平均1次粒子径が20〜100nmの中空微粒子(D)を含み、
前記中空微粒子(D)の含有量が組成物の全固形分に対して5〜30質量%であることを特徴とする光学素子の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項2】
前記中空微粒子(D)の外殻の厚さが0.5〜10nmである請求項1記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項3】
前記中空微粒子(D)における外殻の厚さ(t)に対する中空部の径(d)の比(d)/(t)が5〜40である請求項1または2に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項4】
前記中空微粒子(D)が、可溶性および/または分解性の材料からなるコア微粒子と前記中空微粒子外殻材料の前駆体とを含む液状組成物にマイクロ波を照射して前記コア微粒子の表面に外殻を形成させた後、前記コア微粒子を溶解または分解除去して得られる中空微粒子(D)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項5】
前記中空微粒子(D)が中空シリカ微粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項6】
前記黒色顔料がカーボンブラック、チタンブラック、有機顔料、銀スズ合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項7】
さらに、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基(ただし、該アルキル基は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい)および/または下記式(1)で示される基を含む重合体を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【化1】

(式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基を表す。nは1〜200の整数を示す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物からなるブラックマトリックス。
【請求項9】
ブラックマトリックスの膜厚が1.0〜4.5μmである請求項8に記載のブラックマトリックス。
【請求項10】
基材と、前記基材の主面上に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有する光学素子のブラックマトリックスの製造方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物を前記基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記塗膜のブラックマトリックスとなる部分のみを露光し感光硬化させる露光工程と、前記感光硬化した部分以外の塗膜を除去し前記塗膜の感光硬化部分からなるブラックマトリックスを形成させる現像工程と、前記形成されたブラックマトリックスを加熱するポストベーク工程とを順に有することを特徴とするブラックマトリックスの製造方法。
【請求項11】
TFTアレイを主面上に有する基材と、前記基材の主面上所定位置に該主面を複数の区画に仕切るように形成されたブラックマトリックスと、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にそれぞれ形成された複数の画素とを有するカラーフィルタオンアレイの製造方法であって、請求項10に記載の製造方法によってTFTアレイを主面上に有する基材上にブラックマトリックスを形成した後、前記基材上の前記ブラックマトリックスで仕切られた領域にインクジェット法またはフォトリソグラフィ法により前記画素を形成する工程を有することを特徴とするカラーフィルタオンアレイの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−48195(P2011−48195A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197265(P2009−197265)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】