説明

光学補償シート及びその製造方法、偏光シート、並びに液晶表示装置

【課題】支持体上に液晶材料を塗布するための配向膜において、均一な配向性と、液晶層、支持体双方との良好な密着性とを両立させる光学補償シートの製造方法を提供し、その製造方法により得られる光学補償シートを提供し、さらに該光学補償シートを有する偏光シート、並びに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透明支持体11上に配向膜溶液L1を塗布、乾燥して乾燥膜12とした後に、該乾燥膜12の表面をラビング処理して配向膜とする工程と、前記配向膜表面に液晶化合物を含む組成物を塗布した後に該液晶化合物を配向処理し、この配向を維持しながら前記液晶化合物を硬化させて光学異方層を形成する工程とを有する光学補償シートの製造方法であって、前記配向膜溶液L1は、アルコキシシラン化合物の加水分解物C1、水酸基を有する高分子材料C2、架橋剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償シート及びその製造方法、前記光学補償シートを備える偏光シート、並びに前記偏光シートを用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶状態とは結晶と液体の中間の状態であり、結晶状態における分子の重心位置の三次元性を失った後も分子の配向が残っている状態である。分子の配向が残っていることから光の偏光状態を変える性質を有しており、液晶表示素子の液晶セル、光学補償シート、PS分離膜などの光学素子に使用されている。
【0003】
ここで、前記液晶分子の配向を促す下地層として配向膜が採用されている。この配向膜の配向方法として、配向材料を斜め真空蒸着させる方法、偏光紫外線照射による方法などが挙げられるが、コストや生産性のために毛足の長い布などで配向膜を一方向に擦る(Rubbingする)ラビング法が最も広く用いられている。
【0004】
また、ラビング処理に対応した配向膜材料として、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アルコキシシラン化合物、セルロース、金属錯体、ポリアミド、エポキシアクリラート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどが提案されている。
【0005】
ところで、従来の液晶材料は主に液晶表示素子の液晶セルへの応用に最も多くの検討がなされていた。そのため、ラビング法を用いた配向膜は液晶セルにとって最適なポリイミド系配向膜が使用されている。この場合、配向膜を塗布するベース基板はガラスやITOなどである。
【0006】
しかしながら、近年になり液晶ディスプレイの光学補償シートや、フレキシブルベース基板上での液晶ディスプレイなどに液晶材料を用いる応用例が注目されている。ここで光学補償シートとは光学異方層(液晶層)がレターデーション(位相差)を変化させることで、液晶ディスプレイの視野角・表示性能を改善させることを目的とするものである。このような応用例の場合では、支持体(ベース基板)をガラスやITOから可撓性のあるプラスチックにする必要がある。
【0007】
また、従来の液晶セルにおける配向膜の密着性は、ラビング処理で配向膜が支持体から剥離しない程度の強度があれば十分であったが、上記のような応用例の場合には、例えば光学補償シートと偏光板のリワーク粘着の際に、配向膜は液晶層と支持体との両方との密着性が必要である。また、例えばモバイル用途に光学素子を用いた場合には様々な物理的ショックにより、支持体−配向膜界面、及び配向膜−液晶層界面での剥離によっては光学素子としての性能を著しく損なってしまう。
【0008】
以上のように、プラスチックベースの支持体において液晶層を配向させ、なおかつ支持体及び液晶層との密着性がよい配向膜の開発が必要である。
上記の要件を満たす配向膜として、ポリビニルアルコール(以下、PVA)の一部に有機官能基を導入させて液晶との密着性を向上しつつ液晶を配向させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、上記変性PVAの合成方法はPVAと有機官能基の共溶媒にPVAを溶解させ、単官能有機基を導入し反応させ、得られた溶液をPVAの貧溶媒中に徐々に滴下し再結晶化させて得ている。このような変性PVAを用いる場合はPVA合成の生産性が悪い。しかも、PVA鎖の高々1〜2%の割合で官能基が導入されているだけである。さらに、この有意官能基の導入割合はPVA種と官能基種に依るが、元々PVAは水外の溶媒にはほとんど解けず、有機官能基との相性は悪いためPVA中に導入する有機官能基の種類と量が限定されてしまうという問題があった。
【0010】
また、アルコキシシラン化合物は一般に無機表面と有機表面との密着性を向上させるために用いられていることから、配向膜としてアルコキシシラン化合物を使用した場合にも液晶層との密着性向上が期待され、アルコキシシラン化合物を配向膜として使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献1】特開平9−152509号公報
【特許文献2】特開2001−55573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記技術によっても支持体と液晶層との十分な密着性が得られない場合があった。また、場合によって該液晶層に配向ムラが生じるという問題もあった。
【0013】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、支持体上に液晶材料を塗布するための配向膜において、均一な配向性と、液晶層、支持体双方との良好な密着性とを両立させる光学補償シートの製造方法を提供し、その製造方法により得られる光学補償シートを提供することを目的とるものであり、さらに該光学補償シートを有する偏光シート、並びに液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、有機官能基を分子中に多く含みかつ生産性に優れた配向膜材料としてアルコキシシラン化合物を適用し、均一な配向性と、液晶層、支持体双方との良好な密着性とを両立させるべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
【0015】
前記課題を解決するために提供する本発明は、透明支持体上に配向膜溶液を塗布、乾燥して乾燥膜とした後に、該乾燥膜の表面をラビング処理して配向膜とする工程と、前記配向膜表面に液晶化合物を含む組成物を塗布した後に該液晶化合物を配向処理し、この配向を維持しながら前記液晶化合物を硬化させて光学異方層を形成する工程とを有する光学補償シートの製造方法であって、前記配向膜溶液は、アルコキシシラン化合物の加水分解物、水酸基を有する高分子材料、架橋剤を含むことを特徴とする光学補償シートの製造方法である(請求項1)。
【0016】
ここで、前記水酸基を有する高分子材料は、ポリビニールアルコール、グルコース、ゼラチンのいずれかであることが好ましい。また、前記アルコキシシラン化合物と水酸基を有する高分子材料との重量比が0.33以上、3以下であることが好適である。
【0017】
また、前記配向膜表面に液晶化合物を含む組成物を塗布する前に、該配向膜を前記アルコキシシラン化合物の加水分解物の溶剤で洗浄処理することが好ましい。
【0018】
また、前記アルコキシシラン化合物の官能基は、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、エポキシ基、及びアミノ基のいずれかであることが好ましい。
また、前記透明支持体は、表面に水酸基を有するとよく、とくにケン化トリアセチルセルロースからなることが好適である。
【0019】
前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項1〜7のいずれか一に記載の光学補償シートの製造方法により得られてなり、透明支持体と、該透明支持体上に配向膜と、液晶化合物からなり前記配向膜により配向され固定化された光学異方層とを備えることを特徴とする光学補償シートである(請求項8)。
ここで、前記透明支持体は、可撓性のある高分子フィルムであることが好ましい。
【0020】
前記課題を解決するために提供する本発明は、偏光素子シートの両面に保護膜が設けられてなる偏光シートにおいて、前記保護膜の一方は、請求項8または9に記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光シートである(請求項10)。
【0021】
前記課題を解決するために提供する本発明は、偏光板と、請求項8または9に記載の光学補償シートとが貼り合わされてなることを特徴とする偏光シートである(請求項11)。
【0022】
前記課題を解決するために提供する本発明は、液晶パネルの少なくとも片面に、請求項10または11に記載の偏光シートを備えることを特徴とする液晶表示装置である(請求項12)。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液晶材料からなる光学異方層の配向性、密着性を損なわずにベース基板である支持体と密着性のよいアルコキシシラン化合物からなる配向膜を形成することができる。また、均一な配向性と、液晶層、支持体双方の良好な密着性とを両立させた光学補償シートを提供することができる。
さらに、前記光学補償シートを搭載した偏光シート、並びに液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1に、光学補償シートの製造工程のうち、従来の、アルコキシシラン化合物を含む配向膜溶液の調製からその配向膜溶液を用いて乾燥膜が形成されるまで手順をアルコキシシラン化合物の作用機構の観点から示す。ここでは、透明支持体11は、ケン化したトリアセチルセルロース(以下、TAC)のように表面にOH基を有するベース基板である。
【0025】
まず、アルコキシシラン化合物を加水分解して配向膜溶液L9を調製する(図1(a))。
ついで、前記配向膜溶液L9を透明支持体11上に塗布する(図1(b))。これにより、透明支持体11のOH基とアルコキシシラン化合物の加水分解物のOH基とが水素結合した状態となる(図1(c))。
【0026】
つぎに、透明支持体11上で塗布した配向膜溶液を乾燥させて乾燥膜92を形成する(図1(d))。ここで、透明支持体11のOH基とアルコキシシラン化合物の加水分解物のOH基とが水素結合した部分からの水の脱水縮合により、アルコキシシラン化合物の加水分解物と透明支持体11との密着性が確保された状態で乾燥膜92が形成される。
【0027】
この後、従来の製造方法であれば、乾燥膜92のラビング処理が行われて配向膜とされ、ついで該配向膜上に液晶層が形成されるが、その場合に透明支持体11と液晶層との密着性が十分ではなかった。発明者らは、その原因について詳細に調査したところ、前記乾燥膜92の状態に問題があることが判明した。
【0028】
すなわち、図2に示すように、乾燥膜92は上記のように透明支持体11と結合したアルコキシシラン化合物の加水分解物(A)と、そのアルコキシシラン化合物の加水分解物(A)の上に透明支持体11のOH基と結合していない未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)とからなっており、この乾燥膜92をラビング処理して得られる配向膜の上に液晶層を形成した場合には、アルコキシシラン化合物の加水分解物(A)とアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)との間で剥離する層間剥離が発生し、密着性不良の原因となっていた。
【0029】
そこで、発明者らは、未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)による密着性劣化を改善すべく鋭意検討を行い、本発明を完成させるに至った。
【0030】
以下に、本発明に係る光学補償シートの製造方法について説明する。
図3に、本発明の光学補償シートの製造方法における、配向膜溶液の調製からその配向膜溶液を用いて乾燥膜が形成されるまで手順を示す。ここでも、透明支持体11は、ケン化したトリアセチルセルロース(以下、TAC)のように表面にOH基を有するベース基板である。
【0031】
まず、アルコキシシラン化合物の加水分解物C1、水酸基を有する高分子材料C2、架橋剤を含む配向膜溶液L1を作製する(図3(a))。
【0032】
アルコキシシラン化合物としては、2又は3個、好ましくは3個のアルコキシ基、例えば無機表面に親和性を有するメトキシ基、エトキシ基を有するシラン化合物であって、シランカップリング剤として市販されているものを使用することができる。ここで、シランカップリング剤とは、有機物とケイ素とから構成される化合物であって、分子中に反応性の異なる2種類の置換基、すなわち無機質材料に親和性もしくは反応性を有する官能基を有するものである。アルコキシシラン化合物の構造式を以下に示す。
【0033】
【化1】

【0034】
上記構造式において、R基は液晶と重合することで液晶からなる光学異方層との密着性を得るものであり、液晶と共重合し得るものであればどのような官能基でもよい。例えば、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、エポキシ基、及びアミノ基などのいずれかでよい。また、R基は加水分解によりそのうちの少なくとも1つが置換され、透明支持体11との密着性を確保するためのOH基となる。
【0035】
アルコキシシラン化合物の加水分解物C1は、例えばアルコキシシラン化合物1重量部を、酢酸等の弱酸を0.2〜2.0wt%含有する酸性水25〜100重量部中に投入し、20度〜60度の雰囲気で攪拌しながら1時間〜24時間という条件で加水分解して得られる。
【0036】
水酸基を有する高分子材料C2は、ポリビニールアルコール、グルコース、ゼラチンのいずれかであることが好ましい。また、液晶化合物層の配向性を促すために長鎖の高分子材料であることがより好ましい。
【0037】
また、配向膜溶液L1における水酸基を有する高分子材料C2は、加水分解前のアルコキシシラン化合物との重量比が0.33以上、3以下となるように添加することが好ましい。これにより、液晶化合物からなる光学異方層の配向性、密着性を損なわずに未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)による密着性劣化を改善することが可能である。
【0038】
架橋剤は、透明支持体11とアルコキシシラン化合物の加水分解物C1それぞれのOH基同士の結合を促進するとともに、アルコキシシラン化合物の加水分解物C1と水酸基を有する高分子材料C2それぞれのOH基同士の結合を促進するために添加するものであり、熱架橋剤、UV硬化型架橋剤いずれの架橋剤でもよい。例えばアクリル系架橋剤、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。また、その添加量は、シラン化合物との重量比として0.04〜0.40であることが好ましい。
【0039】
ついで、前記配向膜溶液L1を透明支持体11上に塗布する(図2(b))。これは配向膜溶液L1を透明支持体11の表面に均一に付着させることができる種々の手法により実施することができる。例えば、前記配向膜溶液L1中に、透明支持体11を浸漬した後、該溶液中から引き上げる、あるいは配向膜溶液L1を透明支持体11表面にスプレーするなど行えばよい。
【0040】
ここで、透明支持体11は、光を透過し、アルコキシシラン化合物の加水分解物C1との密着性がよい水酸基(OH基)を有することが好ましい。とくに光透過率が80%以上を有する材料が好ましく、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタラート、ARTON(日本ゴム合成)、ゼオネックス(日本ゼオン製)などを用いることができ、このような材料を適宜表面処理することで得られる。また、その表面処理としてはケン化処理、コロナ処理、エキシマUV処理、プラズマ処理などを施せばよい。また、透明支持体11は、可撓性のある高分子フィルムであることが好ましい。
【0041】
これにより、透明支持体11のOH基とアルコキシシラン化合物の加水分解物C1のOH基とが水素結合した状態となる(図2(c))。
【0042】
配向膜溶液L1の透明支持体11への付着量は、加水分解前のアルコキシシラン化合物換算で、好ましくは0.01〜1.0g/m、より好ましくは0.05〜0.2g/mである。
【0043】
ついで、透明支持体11上で塗布した配向膜溶液L1を乾燥させて乾燥膜12を形成する(図2(d))。
これにより、透明支持体11のOH基とアルコキシシラン化合物の加水分解物C1のOH基とが水素結合した部分からの水の脱水縮合により、アルコキシシラン化合物の加水分解物C1と透明支持体11との密着性が確保される。
【0044】
同時に、アルコキシシラン化合物の加水分解物C1(透明支持体11に結合したアルコキシシラン化合物の加水分解物(A)及び未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B))と、水酸基を有する高分子材料C2それぞれのOH基同士で水の脱水縮合による結合反応が起こる。これにより、未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)は乾燥膜12中で遊離している状態ではなくなり、後述の液晶化合物層15(光学異方層16)と透明支持体11との間に介在する配向膜14としての密着性を改善することができる。
【0045】
図4に、乾燥膜12形成以降の光学補償シートの製造工程図を示す。
(S11)上述の通り、透明支持体11上に配向膜溶液L1を塗布、乾燥して乾燥膜12を形成する(図4(a))。
【0046】
(S12)つぎに、乾燥膜12の表面にラビング処理を施し、配向膜14とする(図4(b))。
ラビング処理方法としては、公知のラビング処理方法を採用することができ、例えばレーヨン、綿、ポリアミド等の素材からなるラビング布を金属ロール等に巻き付け、乾燥膜12に接した状態で前記ロールを回転、移動させる方法、前記ロールを固定したまま乾燥膜12側を移動させる方法等を挙げることができる。
【0047】
ここで、配向膜14について、アルコキシシラン化合物の加水分解物の溶剤で洗浄することが好ましい。乾燥膜12中に未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)が残存していたとしてもこの処理により除去され、以降の処理で搭載される液晶化合物層と透明支持体11との密着性をより改善することが可能である。さらに、ラビング処理工程で配向膜表面に発生した配向膜布等のゴミを洗浄除去することが可能である。
【0048】
前記アルコキシシラン化合物の加水分解物の溶剤としては、未反応のアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)を溶解させるものであればなんでもよい。例えば、水、エーテル類、アルコール類、ケトン類、グリコール類、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン、キシレンなどが挙げられるが、とくにアルコキシシラン化合物の加水分解物(B)の溶解度の大きい、エーテル類、アルコール類、ケトン類、グリコール類、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン、キシレンであることが好ましい。また、これらの溶剤を組み合わせてもよく、ある程度の割合で含んだ溶液でもよい。
また、前記溶剤による洗浄方法としては、対象物にスプレーして洗浄する方法、前記溶剤で満たした槽に対象物を浸漬して洗浄する方法などいずれの方法であってもよい。
【0049】
(S13)配向膜14上に液晶化合物含有組成物を塗布して液晶化合物層15を形成する(図4(c))。具体的には、重合性液晶化合物含有組成物をスピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法(ダイコート法)等の公知の塗布方法により配向膜14上に塗布すればよい。塗布後には、通常、常法により乾燥する。乾燥条件はとくに限定されず、塗膜が流動したり流れ落ちたりせずに、有機溶媒を除去できる条件を選択すればよい。例えば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹きつけなどを利用して有機溶媒を除去することができる。これにより、室温にて液晶相の構造を保ったままの固体結晶の状態の液晶化合物層15となる。
【0050】
重合性液晶化合物含有組成物に使用する重合性液晶化合物としては、重合性基、例えば、(メタ)アクリロイル基(アクロイル基とメタクロイル基の総称)、ビニル基、アリル基、エポキシ基、フタルイミド基、シンナモイル基等を有する、ホメオトロピック配向性の公知のディスコチック重合性液晶化合物や棒状のスメクチック重合性液晶化合物を使用することができ、例えばビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルクセン誘導体等の分子構造中に、ホメオトロピック配向性を付与できる基(例えば、末端に嵩高い置換基を有する芳香族基、長鎖アルキル基を有する芳香族基、フッ素原子を有する芳香族基を含有している光硬化型の重合性液晶化合物)を使用することができる。
【0051】
本発明で使用する重合性液晶化合物含有組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常は40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下の配合量で、重合性液晶化合物と共重合可能な非液晶性の重合性化合物を配合することができる。このような重合性化合物としては、例えば、多価アルコールと一塩基酸又は多塩基酸とのポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基をもつ化合物を反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェニールA型エポキシ樹脂、ビスフェニールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪酸又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物や組成物、またアクリル基やメタクリル基を有する光重合性化合物が挙げられる。
【0052】
また、本発明で使用する重合性液晶化合物含有組成物には、必要に応じて、光反応開始剤を適宜添加することができる。光反応開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンジル(別名:ビベンゾイル)、ベンゾイルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メイルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−ピロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0053】
光反応開始剤の添加量は、重合性液晶化合物100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0054】
また、重合性液晶化合物含有組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で増感剤を添加してもよい。
【0055】
また、重合性液晶化合物含有組成物には、必要に応じて有機溶媒を配合することができる。有機溶媒を使用することにより、重合性液晶化合物含有組成物の塗膜の形成を簡便に行うことができる。
このような有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセトン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレンセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類などが挙げられ、これらの中から透明支持体11の耐溶剤性等を考慮した上で選択される。
【0056】
重合性液晶化合物含有組成物中の有機溶媒の使用量としては、重合性液晶化合物の溶解度や液晶化合物層15の厚さにより異なるが、通常1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%である。
【0057】
また、重合性液晶化合物含有組成物には、塗工性を向上させるために界面活性剤等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えてもよい。
界面活性剤としては、例えばイミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラルリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボンサン塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0058】
かかる界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、重合性液晶化合物含有組成物の構成成分の組成比、有機溶媒の種類、透明支持体11の種類等により異なるが、重合性液晶化合物100重量部に対し、通常10ppm〜10%、好ましくは100ppm〜5%、さらに好ましくは0.1%〜1%の範囲である。
【0059】
(S14)液晶化合物層15について配向処理及び硬化処理を施し、光学異方層16を形成する(図4(d))。
【0060】
ここでは、配向処理として一般に行われているネマチック配向処理について説明する。ネマチック配向処理は、液晶化合物層15を加熱処理する方法が挙げられる。具体的には、液晶化合物層15を、その液晶化合物がネマチック液晶相を呈する温度まで加熱し、ネマチック配向を発現させる方法、前記液晶化合物がネマチック液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高い温度まで加熱して該化合物を等方性液体状態とし、しかる後、ネマチック液晶相を呈する温度範囲まで液晶化合物層15の温度を下げる方法、あるいは前記液晶化合物がネマチック液晶相を呈する温度範囲内の高温域まで加熱することにより液晶化合物層15中のネマチック配向を概ね完成させ、ついで温度を下げることにより配向の秩序度を向上させる方法等によりネマチック配向させればよい。実際の熱処理温度は、通常40〜220℃、熱処理時間は通常5秒〜2時間である。
【0061】
なお、重合性液晶化合物含有組成物の組成によっては、前述の塗膜の乾燥の際に、サーモトロピックに、あるいはライオトロピックにネマチック配向を完了していることがある。このような場合には、乾燥処理した塗膜は前述の加熱処理を経由させることなく、後述の硬化処理を施してもよいが、塗膜中の液晶分子の配向をより均一化させる目的で加熱処理を行っておくことが好ましい。
【0062】
硬化処理は、配向処理済みの液晶化合物層15に電磁波照射することにより行うことができる。硬化処理に用いる電磁波の波長はとくに限定されず、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)等から適宜選択できる。また、照射エネルギー、照射時温度、照射雰囲気、照射時間等についても、重合性液晶化合物含有組成物の配合成分等に応じて適宜決定すればよい。
【0063】
以上の工程により、透明支持体11と、該透明支持体11上に配向膜14と、液晶化合物からなり前記配向膜14により配向され固定化された光学異方層16とを備える光学補償シート10が完成する。
【0064】
本発明の光学補償シートの製造方法により得られる光学補償シートは、様々な光学分野で利用することができ、例えば液晶表示装置の視野角補償シートや位相差シートとして使用することができる。さらにこれらの光学補償シートを該液晶表示装置に用いられる偏光板と組み合わせて偏光シートとしてもよい。
【0065】
図5に、本発明の光学補償シート10を用いた偏光シートの構成例を示す。
偏光シートは通常偏光素子シートの両面に保護膜が設けられてなるものであるが、本発明の偏光シート20は、偏光素子シート21の一方の面に保護膜の機能を兼用させる形で前記光学補償シート10が形成され、他方の面に保護膜22が形成された構成となっている。
【0066】
ここで、偏光素子シート21は、液晶用偏光板を構成する偏光素子として一般的に使用されているものでよく、例えば延伸、染色したポリビニールアルコール(PVA)からなるものである。また、保護膜22も、液晶用偏光板を構成する保護膜として一般的に使用されているものでよく、例えばTACからなるものである。
【0067】
図6に、本発明の光学補償シート10を用いた偏光シートの別の構成例を示す。
本発明の偏光シート30は、従来公知の偏光素子シート31と、該偏光素子シート31の両面に保護膜が設けられてなる偏光板と、前記光学補償シート10とが粘着層あるいは接着層33を介して貼りあわされてなる構成となっている。
【0068】
このような本発明の偏光シート20,30を公知の液晶パネルの少なくとも片面に設けることにより、例えば視野角が改善された、あるいは高いコントラストの液晶表示装置を構成することができる。
【0069】
図7に、本発明の液晶表示装置の構成例を示す。
液晶表示装置100は、公知の液晶パネル101の一方の面に本発明の偏光シート20が、光学補償シート10が該液晶パネル101と接するように設けられ、液晶パネル101の他方の面に公知の偏光板102が設けられた構造を有する。
【0070】
図8に、本発明の液晶表示装置の別の構成例を示す。
液晶表示装置200は、公知の液晶パネル201の一方の面に本発明の偏光シート30が、光学補償シート10が該液晶パネル201と接するように設けられ、液晶パネル201の他方の面に公知の偏光板202が設けられた構造を有する。
【0071】
これらの液晶表示装置100,200において、偏光板102,202の外側に公知のバックライトを設ける。また、偏光シート20、30の外側に公知のハードコート層を設けてもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
以下の条件で本発明の光学補償シートを作製した。
(配向膜溶液の調製)
アルコキシシラン化合物として信越シリコーン社製KBM−5103を用い、メタノール:1%酢酸水溶液:KBM−5103=78:2:2の重量比で混合し、60℃で1.5時間攪拌してシラン化合物2%溶液を調製した。ここで、アルコキシシラン化合物(KBM−5103)の構造は(CHO)−Si−C−O−CO−C=Cである。
ついで、このシラン化合物2%溶液とPVA2%水溶液(クラレ製MP−203)と12.5%グルタルアルデヒド水溶液とを5:5:1の重量比で混合して配向膜溶液とした。
【0073】
(S21)透明支持体11としてケン化TACを用い、この透明支持体11上に前記配向膜溶液を1500rpmのスピンコートにて最終膜厚が1μmとなるように塗布した後、120℃、30分の乾燥を行い乾燥膜12を形成した。
(S22)乾燥膜12の表面にラビング処理を施し配向膜14とした。
(S23)配向膜14上に重合開始剤を含むアクリレート液晶化合物含有組成物を最終膜厚が2μmとなるように塗布して液晶化合物層15を形成した。
(S24)最後に、液晶化合物層15について液晶相温度まで加熱して液晶を配向させた後、紫外線照射してUV硬化させアクリレート液晶性高分子からなる光学異方層16を形成した。これにより、位相差を生じさせる光学異方層16を有する光学補償シート10のサンプルが完成した。
【0074】
以上の作製サンプルについて、配向性評価と密着性評価を行った。
配向性評価は、配向膜としてポリイミドを用いたときの位相差(レターデーション)を100としたときの比として算出した。
また、密着性評価は、JIS K5400に従い行った。すなわち、光学異方層16の10mm角の領域にカッターで縦横1mm間隔で切り目を入れて100個の区画に切り分け、その領域にニチバン製粘着テープを貼着した後、剥離させ、このテープ剥離により切り分けた100個の領域がいくつ剥がれるかで評価した。ここで、100個の領域の一つも剥がれない最も良好な結果の場合を100/100と表記する。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、前記シラン化合物2%溶液と前記PVA2%水溶液と12.5%グルタルアルデヒド水溶液とを7.5:2.5:1の重量比で混合して配向膜溶液とし、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シート10を作製した。
【0076】
(実施例3)
実施例1において、前記シラン化合物2%溶液と前記PVA2%水溶液と12.5%グルタルアルデヒド水溶液とを2.5:7.5:1の重量比で混合して配向膜溶液とし、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シート10を作製した。
【0077】
(実施例4)
実施例1において、前記シラン化合物2%溶液と前記PVA2%水溶液とUV硬化型架橋剤(新中村製ジアクリレートM215)2%イソプロピルアルコール溶液とを33:33:1の重量比で混合した溶液に反応開始剤を微量混ぜたものを配向膜溶液として、ステップS21の乾燥膜12にUV硬化型架橋剤を硬化させるために約1Jの紫外線を照射し、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シート10を作製した。
【0078】
(実施例5)
実施例1において、アルコキシシラン化合物として信越シリコーン社製KBM−1403を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シート10を作製した。なお、アルコキシシラン化合物(KBM−1403)の構造は(CHO)−Si−(C)−C=Cである。
【0079】
(比較例1)
透明支持体11としてケン化TACを用い、この透明支持体11上にポリイミドからなる配向膜を形成し、該配向膜上に実施例1におけるステップS23,S24の処理を行い、光学補償シートを作製した。
【0080】
(比較例2)
実施例1において、前記シラン化合物2%溶液と12.5%グルタルアルデヒド水溶液とを5:1の重量比で混合して配向膜溶液とし、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シートを作製した。
【0081】
(比較例3)
実施例1において、前記PVA2%水溶液と12.5%グルタルアルデヒド水溶液とを5:1の重量比で混合して配向膜溶液とし、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シートを作製した。
【0082】
(比較例4)
実施例1において、前記シラン化合物2%溶液と前記PVA2%水溶液とを1:1の重量比で混合して配向膜溶液とし、それ以外は実施例1と同じ条件で光学補償シートを作製した。
【0083】
以上の評価結果を表1に示す。
実施例では、未反応の残存シラン化合物に起因する剥離を解決することができた。
また、比較例2〜4の結果と合わせると、アルコキシシラン化合物の加水分解物とOH基を有する高分子材料と架橋剤とを組み合わせて用いないと良好な密着性が得られないことが分かった。なお、比較例2では配向膜と透明支持体との密着性が悪く、比較例3では配向膜と液晶化合物層との密着性が悪かった。
また、実施例の結果から、アルコキシシラン化合物とOH基を有する高分子材料との混合比は0.33〜3の範囲が望ましいことが分かった。
また、実施例1,4のように、架橋剤は熱架橋剤、UV硬化型架橋剤いずれでもよいことが分かった。
また、実施例1,5のように、シラン化合物も特定のものでなくてもよく、液晶との密着性がよい材料であればよいことが分かった。ここでは、特に二重結合やベンゼン環などの極性の高い分子構造を有しているものが好ましい。
【0084】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】従来の、アルコキシシラン化合物の作用機構の観点から乾燥膜が形成されるまで手順を示す図である。
【図2】従来の配向膜の問題点を示す概念図である。
【図3】本発明の、アルコキシシラン化合物の作用機構の観点から乾燥膜が形成されるまで手順を示す図である。
【図4】本発明に係る光学補償シートの製造工程図である。
【図5】本発明に係る偏光シートの構成例1である。
【図6】本発明に係る偏光シートの構成例2である。
【図7】本発明に係る液晶表示装置の構成例1である。
【図8】本発明に係る液晶表示装置の構成例2である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・光学補償シート、11・・・透明支持体、12,92・・・乾燥膜、14・・・配向膜、15・・・液晶化合物層、16・・・光学異方層、20,30・・・偏光シート、21,31・・・偏光素子シート、22,32・・・保護膜、33・・・粘着層(接着層)、100,200・・・液晶表示装置、101,201・・・液晶パネル、102,202・・・偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に配向膜溶液を塗布、乾燥して乾燥膜とした後に、該乾燥膜の表面をラビング処理して配向膜とする工程と、前記配向膜表面に液晶化合物を含む組成物を塗布した後に該液晶化合物を配向処理し、この配向を維持しながら前記液晶化合物を硬化させて光学異方層を形成する工程とを有する光学補償シートの製造方法であって、
前記配向膜溶液は、アルコキシシラン化合物の加水分解物、水酸基を有する高分子材料、架橋剤を含むことを特徴とする光学補償シートの製造方法。
【請求項2】
前記水酸基を有する高分子材料は、ポリビニールアルコール、グルコース、ゼラチンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項3】
前記アルコキシシラン化合物と水酸基を有する高分子材料との重量比が0.33以上、3以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項4】
前記配向膜表面に液晶化合物を含む組成物を塗布する前に、該配向膜を前記アルコキシシラン化合物の加水分解物の溶剤で洗浄処理することを特徴とする請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項5】
前記アルコキシシラン化合物の官能基は、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、エポキシ基、及びアミノ基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項6】
前記透明支持体は、表面に水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項7】
前記透明支持体は、ケン化トリアセチルセルロースからなることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一に記載の光学補償シートの製造方法により得られてなり、透明支持体と、該透明支持体上に配向膜と、液晶化合物からなり前記配向膜により配向され固定化された光学異方層とを備えることを特徴とする光学補償シート。
【請求項9】
前記透明支持体は、可撓性のある高分子フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の光学補償シート。
【請求項10】
偏光素子シートの両面に保護膜が設けられてなる偏光シートにおいて、
前記保護膜の一方は、請求項8または9に記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光シート。
【請求項11】
偏光板と、請求項8または9に記載の光学補償シートとが貼り合わされてなることを特徴とする偏光シート。
【請求項12】
液晶パネルの少なくとも片面に、請求項10または11に記載の偏光シートを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−308725(P2006−308725A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129154(P2005−129154)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】