説明

光学記録媒体及び光学記録方法

【課題】青色レーザーに対し高感受性の有機色素を用いた記録層を有する光学記録媒体を提供する。
【解決手段】基板上にレーザーによる情報の記録又は再生が可能な記録層を有する光学記録媒体において、該記録層が下記一般式[II]で表される化合物を有する光学記録媒体。


{式中、R1〜R4は水素原子、任意の置換基を表し、R1とR2、R3とR4の結合により炭化水素環または複素環構造を形成してもよい。Zは、−O−、−S−、−SO2−等を表す。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機色素を記録層に用いた追記型光学記録媒体に係わるものであり、詳しくは青色レーザー対応の新規化合物、追記型光学記録媒体及び光学記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW、MO等の各種光学記録媒体は、大容量の情報を記憶でき、ランダムアクセスが容易であるために、コンピュータのような情報処理装置における外部記憶装置として広く認知され普及している。これらの中で、CD−RやDVD−Rに代表される有機色素系光記録媒体は、低コストで且つ製造も容易であるという点で、優位性を有するものと考えられている。また、取り扱う情報量の増大により、媒体の記録密度を高めることが望まれている。近年、開発が著しい青色レーザー等の発振波長の短いレーザーを用いた高密度の記録再生可能な光学記録媒体が提唱されつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、CD−RやDVD−Rなどとして市販されている光学記録媒体の場合、例えば、CD−Rは波長780nm程度のレーザー光による記録・再生に適するように、またDVD−Rは波長600〜700nm程度のレーザー光による記録・再生に適するように設計されている。このような、比較的長波長のレーザー光を用いる光学的記録・再生用に適合する記録媒体では、より短波長のレーザーを用いて記録・再生すると、反射率が低く記録・再生ができないという問題を有している。本発明は、より短波長の青色レーザーによって記録・再生が可能な有機色素系光学記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは青色レーザーに高い感受性を有する有機色素について種々検討した結果、一般式[I]及び[II]で示される化合物を、青色レーザーに対応する光学記録媒体の記録層に使用し得ることを知得し本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、基板上にレーザーによる情報の記録又は再生が可能な記録層が設けられた光学記録媒体において、該記録層が下記一般式[I]で示される化合物を含有すること、或いは下記一般式[II]で示される化合物を含有することよりなる光学記録媒体、及び波長が350nm〜530nmのレーザー光を用い、該光記録媒体に対して情報の記録を行うことよりなる光学記録方法に存する。
【0005】
【化4】

{式中、R1〜R4は水素原子または任意の置換基を表し、R1とR2、R3とR4が各々結合して炭化水素環または複素環構造を形成しても良く、該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。X1は電子吸引性基を表し、X2は水素原子または−Q−Y(Qは直接結合、炭素数1または2のアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、Yは電子吸引性基を表す。該アルキレン基、該アリーレン基、および該ヘテロアリーレン基はY以外に任意の置換基を有していてもよい。)を表す。Zは−O−、−S−、−SO2−、または−NR5−[R5は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、−NR67で表されるアミノ基(R6、R7は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、若しくは−COR8〈R8は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。〉)、または−COR9(R9は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。)を表す。R5が炭化水素基の場合は、R2またはR4と結合して環状構造を形成していてもよい。]を表す。}
【0006】
【化5】

{式中、R1〜R4は水素原子または任意の置換基を表し、R1とR2、R3とR4が各々結合して炭化水素環または複素環構造を形成しても良く、該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。環AはC=Oと共に置換基を有していてもよい炭素環式ケトン環または複素環式ケトン環を表す。Zは、−O−、−S−、−SO2−、または−NR5−[R5は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、−NR67で表されるアミノ基(R6、R7は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、若しくは−COR8〈R8は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。〉)、または−COR9(R9は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。)を表す。R5が炭化水素基の場合は、R2またはR4と結合して環状構造を形成していてもよい。]を表す。}
【0007】
また本発明の他の要旨は、下記一般式[I’]で示されることを特徴とする新規化合物に存する。
【化6】

{式中、R1〜R4は水素原子または任意の置換基を表し、R1とR2、R3とR4が各々結合して炭化水素環または複素環構造を形成しても良く、該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。X1及びYは電子吸引性基を表し、X1及びYの一方がシアノ基を表し、他方が−COOR11(R11は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)又は−SO217(R17は置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)を表す。Zは−NR5−(X1及びYの一方が−COOR11である場合、R5は、置換されてもよい炭素数3〜18の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。X1及びYの一方が−SO217である場合、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。)を表す。}
【発明の効果】
【0008】
本発明化合物の含有溶液は、短波長のレーザー光による記録再生に適した吸収を有する塗布膜を形成することが出来、且つ成膜性にも優れ、さらに塗布膜の保存安定性にも優れているので、本発明化合物を用いた記録層を有する記録媒体は、短波長レーザーに対応する記録再生用光学記録媒体として有用である。従って、波長が350nm〜530nmの短波長レーザー光を用いて本光学記録媒体に対して情報の記録を行えば、より高密度に、かつ大容量の情報を記録・再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明につき詳細に説明する。本発明の記録層に使用される化合物は、350〜530nmの青色光領域に適度の吸収を有し、青色レーザーでの記録に適する色素化合物が好ましい。本発明ではかかる色素として、前記一般式[I]及び[II]によって示される色素化合物が使用される。以下に前記一般式[I]及び[II]で表される化合物について説明する。
【0010】
本発明に係る色素化合物を示す前記一般式[I]及び[II]において、R1〜R4は各々独立に水素原子及び任意の置換基を表し、任意の置換基は、更に置換されていてもよい。該任意の置換基の例としては、次のようなものが例示される。メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へプチル基等の置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の置換されてもよい炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルケニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の置換されてもよい複素環基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルコキシ基;プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の置換されてもよい炭素数3〜18の直鎖または分岐のアルケニルオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルチオ基が挙げられる。
【0011】
他の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアナト基;イソシアナト基;チオシアナト基;イソチオシアナト基;メルカプト基;ヒドロキシ基;ヒドロキシアミノ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;−COR20で表されるアシル基、−NR2122で表されるアミノ基、−NHCOR23で表されるアシルアミノ基、−NHCOOR24で表されるカーバメート基、−COOR25で表されるカルボン酸エステル基、−OCOR26で表されるアシルオキシ基、−CONR2728で表されるカルバモイル基、−SO229で表されるスルホニル基、−SO2NR3031で表されるスルファモイル基、−SO332で表されるスルホン酸エステル基、−NHSO233で表されるスルホンアミド基、−SOR34で表されるスルフィニル基が挙げられる。これらの置換基の位置は特に限定されず、置換基の数も1〜4個の範囲で可能である。複数の置換基を有する場合、同種でも異なってもよい。
【0012】
ここでR20、R23、R24、R25、R26、R29、R32、R33、R34は置換されてもよい炭化水素基、または置換されてもよい複素環基を表し、R21、R22、R27、R28、R30、R31は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基のいずれかを表す。このR20〜R34で表される炭化水素基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へプチル基等の炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18の環状アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18の環状アルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18アリール基を表す。これらの基のアルキル鎖部分及びアリール基部分は後述するR1〜R4のアルキル鎖部分が有し得る置換基で更に置換されていてもよい。
【0013】
またR20〜R34で表される複素環基は、4−ピペリジル基、モルホリノ基、2−モルホリニル基、ピペラジル基等の飽和複素環でも、2−フリル基、2−ピリジル基、2−チアゾリル基、2−キノリル基等の芳香族複素環でもよい。これらは複数のヘテロ原子を含んでいても、さらに置換基を有していてもよく、また結合位置も問わない。複素環として好ましい構造のものは、5〜6員環の飽和複素環、5〜6員環の単環及びその2縮合環の芳香族複素環である。
【0014】
具体的には、−COR20で表される置換されていてもよいアシル基;−NR2122で表される置換されていてもよいアミノ基;−NHCOR23で表される置換されていてもよいアシルアミノ基;−NHCOOR24で表される置換されていてもよいカーバメート基;−COOR25で表される置換されていてもよいカルボン酸エステル基;−OCOR26で表される置換されていてもよいアシルオキシ基;−CONR2728で表される置換されていてもよいカルバモイル基;−SO229で表される置換されていてもよいスルホニル基;−SO2NR3031で表される置換されていてもよいスルファモイル基;−SO332で表される置換されていてもよいスルホン酸エステル基;−NHSO233で表される置換されていてもよいスルホンアミド基;−SOR34で表される置換されてもよいスルフィニル基の各々の好ましい具体例を以下に示す。
【0015】
アシル基(−COR20
【化7】

【0016】
アミノ基(−NR2122
【化8】

【0017】
アシルアミノ基(−NHCOR23
【化9】

【0018】
カーバメート基(−NHCOOR24
【化10】

【0019】
カルボン酸エステル基(−COOR25
【化11】

【0020】
アシルオキシ基(−OCOR26
【化12】

【0021】
カルバモイル基(−CONR2728
【化13】

【0022】
スルホニル基(−SO229
【化14】

【0023】
スルファモイル基(−SO2NR3031
【化15】

【0024】
スルホン酸エステル基(−SO332
【化16】

【0025】
スルホンアミド基(−NHSO233
【化17】

【0026】
スルフィニル基(−SOR34
【化18】

【0027】
1〜R4が示す直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、直鎖または分岐のアルケニル基、環状アルケニル基、直鎖または分岐のアルコキシ基、直鎖または分岐のアルキルチオ基、及びR20〜R34が示すアルキル基のアルキル鎖部分は、更に置換基を有し得るが、その置換基としては、例えば以下のものが挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、メトキシブトキシ基等の炭素数2〜12のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、エトキシエトキシメトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の炭素数2〜12のアルケニルオキシ基等が例示される。
【0028】
更に、他の置換基として、2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の複素環基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;アミノ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の炭素数1〜10のアルキルアミノ基;メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
またR1とR2、R3とR4は互いに結合して、各々独立に縮合環を形成してもよい。これらが形成する縮合環は、飽和または不飽和の炭化水素環でも、ヘテロ原子を一つまたは複数個含む飽和または不飽和の複素環でもよい。環状構造の員数は特に制限されないが、炭化水素環、複素環共に好ましいのは5〜7員環で、特に好ましいのは5〜6員環である。これらが示す好ましい縮合環構造を下記に示す。
【0030】
【化19】

(上記縮合環構造において、D1〜D3は任意の置換基を表す。)またこれらの縮合環は前述したような置換または未置換のアルキル基で置換されていてもよい。このアルキル基が有し得る置換基としては、例えば、前記R1〜R4のアルキル鎖部分が有し得る置換基と同種のものが挙げられる。
【0031】
1〜R4で表される置換基として好ましいものは、置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜12の環状アルキル基、置換されてもよい炭素数2〜12の直鎖または分岐のアルケニル基、5〜6員環の飽和複素環基、5〜6員環の単環または2縮合環の複素芳香環基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、−COR20で表されるアシル基、−NR2122で表されるアミノ基、−NHCOR23で表されるアシルアミノ基、−NHCOOR24で表されるカーバメート基、−COOR25で表されるカルボン酸エステル基、−OCOR26で表されるアシルオキシ基、−CONR2728で表されるカルバモイル基、−NHSO233で表されるスルホンアミド基が挙げられ、R1とR2、R3とR4が縮合環を形成する場合は、置換されていてもよい5〜6員環の炭化水素環、あるいは置換されていてもよい5〜6員環の複素環が好ましい。
【0032】
中でもR1〜R4で表される置換基として特に好ましいものは、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3〜18の置換されてもよい環状アルキル基、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖または分岐のアルコキシ基、5〜6員環の飽和複素環基、5〜6員環の複素芳香環基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖または分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、−COR20で表されるアシル基、−OCOR26で表されるアシルオキシ基、−NR2122で表されるアミノ基、−COOR25で表されるカルボン酸エステル基、−CONR2728で表されるカルバモイル基、−NHSO233で表されるスルホン酸アミド基であり、R1とR2、R3とR4が縮合環を形成する場合は、どちらか一方がベンゼン環構造である場合である。
【0033】
前記一般式[I]及び[II]において、Zは−O−、−S−、−SO2−、−NR5−のいずれかを表す。ここでR5は、水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、−NR67、−COR9のいずれかを表す。
【0034】
5で表される置換されてもよい炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へプチル基等の炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18の環状アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18の環状アルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18アリール基を表す。これらの基のアルキル鎖部分及びアリール基部分は前述したR1〜R4のアルキル鎖部分が有し得る置換基で更に置換されていてもよい。
【0035】
5で表される置換されてもよい複素環基としては、4−ピペリジル基、モルホリノ基、2−モルホリニル基、ピペラジル基等の飽和複素環でも、2−フリル基、2−ピリジル基、2−チアゾリル基、2−キノリル基等の芳香族複素環でもよい。これらは複数のヘテロ原子を含んでいても、さらに置換基を有していてもよく、また結合位置も問わない。複素環として好ましい構造のものは、5〜6員環の飽和複素環、5〜6員環の単環及びその2縮合環の芳香族複素環である。これらの基は前述したR1〜R4のアルキル鎖部分が有し得る置換基で更に置換されていてもよい。
【0036】
5が置換されてもよい炭化水素基としてアルキル鎖を有する場合、R2またはR4と結合して、飽和または不飽和の炭化水素環や、飽和または不飽和の複素環構造を形成してもよい。環状構造の員数は特に制限されないが、炭化水素環、複素環共に好ましいのは5〜6員環である。これらの好ましい縮合環構造を下記に示す。
【0037】
【化20】

【0038】
5で表される−NR67のR6、R7は、各々独立に水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、−COR8のいずれかを表す。R6、R7としては、R5として例示した炭化水素基および複素環基と同様の基が挙げられるが、好ましくは、水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい複素環基である。R6、R7は互いに結合して縮合環を形成してもよい。これらが形成する縮合環は、飽和または不飽和の炭化水素環でも、ヘテロ原子を1つまたは複数個含む飽和または不飽和の複素環でもよい。環状構造の員数は特に制限されないが、炭化水素環、複素環共に好ましいのは5〜7員環で、特に好ましいのは5〜6員環である。
【0039】
上記−COR8のR8は、R5と同様の置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基のいずれかを表し、好ましくは炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基である。
【0040】
5で表される−COR9におけるR9は、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基のいずれかを表し、R8と同様に、炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基であるのが好ましい。R6〜R9の基のアルキル鎖部分及びアリール基部分は前述したR1〜R4のアルキル鎖部分が有し得る置換基で更に置換されていてもよい。
【0041】
Zとして好ましいものは、−O−,−S−、−SO2−、または−NR5−[R5が水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基、−NR67で表されるアミノ基(R6、R7は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい複素環基のいずれかを表す)]のいずれかを表すものである。
【0042】
より好ましくは、Zが−NR5−(R5は、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。)を表す。中でも好ましくは、R5が、置換されてもよい炭素数1〜18の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。最も好ましくは、R5が、置換されてもよい炭素数1〜12の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜8の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。
【0043】
以下に好ましい−NR5−の例を示す。
【化21】

【0044】
【化22】

【0045】
前記一般式[I]において、X1は電子吸引性基を表し、X2は水素原子、または−Q−Yを表す。ここでQは連結基を表し、炭素数1または2のアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基を表すか、これらの連結基を介さずに直接Yに結合する。YとX1とは独立に電子吸引性基を表す。
【0046】
1、Yが表す電子吸引性基としては、一般にハメット則においてシグマ定数σ(σm及びσp、特にσp)が正の値を持つものが挙げられる。これらの例としては、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、ホルミル基、アシル基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、トリアルキルアミノ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン置換アルキル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルフィニル基等が挙げられる。
【0047】
これらのX1、Yの表す電子吸引性基として好ましいものとしては、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基、−COR10で表されるアシル基、−COOR11で表されるカルボン酸エステル基、−CONR1213で表されるカルバモイル基、−SOR16で表されるスルフィニル基、−SO217で表されるスルホニル基、−SO2NR1819で表されるスルファモイル基である。特に好ましくは、シアノ基、−COOR11で表されるカルボン酸エステル基、または−SO217で表されるスルホニル基である。最も好ましくは、X1及びYの一方がシアノ基を表し、他方が−COOR11(R11は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)又は−SO217(R17は置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)を表す場合である。
【0048】
−COR10で表されるアシル基のR10は、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基のいずれかを表し、これらの中でR10として好ましいものは、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい5〜7員環の飽和複素環、置換されてもよい5〜6員環の単環及びその2縮合環の複素芳香環である。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、2−テノイル基、2−フロイル基、シクロヘキサノイル基等のアシル基が挙げられる。
【0049】
−COOR11で表されるカルボン酸エステル基のR11は置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表し、好ましくは、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、5〜7員環の飽和複素環、置換されてもよい5〜6員環の単環及びその2縮合環の複素芳香環である。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2−ピリジルオキシカルボニル基等のカルボン酸エステル基が挙げられる。
【0050】
−CONR1213で表されるカルバモイル基のR12、R13は各々独立に水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、置換されてもよいアミノ基、置換されてもよいアシルアミノ基、置換されてもよいカーバメート基、−COR14、−COOR15を表す。
ここでR14、R15は任意の置換基を表し、好ましい置換基としては、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよいアミノ基である。
【0051】
12、R13として好ましいものは、水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、5〜7員環の飽和複素環、置換されてもよい5〜6員環の単環及びその2縮合環の複素芳香環、置換されてもよいアミノ基、−COR14、−COOR15があげられる。
【0052】
以下に−CONR1213で表されるカルバモイル基の構造を示す。
【化23】

【0053】
−SOR16で表されるスルフィニル基のR16は、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表し、好ましいものとしては、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、5〜7員環の飽和複素環、置換されてもよい5〜6員環の単環及びその2縮合環の複素芳香環である。具体的には、以下に示すスルフィニル基等が挙げられる。
【0054】
【化24】

【0055】
−SO217で表されるスルホニル基のR17は、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表し、好ましいものとしては、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、5〜7員環の飽和複素環、置換されてもよい5〜6員環の単環及びその2縮合環の複素芳香環である。具体的には、以下に示すスルホニル基等が挙げられる。
【0056】
【化25】

【0057】
−SO2NR1819で表されるスルファモイル基のR18、R19は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表し、好ましいものとしては、水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、5〜7員環の飽和複素環、置換されてもよい5〜6員環の単環及びその2縮合環の複素芳香環である。具体的には、以下に示すスルファモイル基等が挙げられる。
【0058】
【化26】

【0059】
上記R10〜R19で表される置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基としては、具体的には前記R20〜R34におけると同様な基を挙げることができる。
【0060】
Qで表される連結基は、炭素数1〜2のアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基を表し、アルキレン基の場合、炭素原子は水素原子以外に前述のアルキル鎖が有し得る置換基を有していても、そこから分岐したアルキル鎖を有していてもよい。Qが6員環のアリーレン基、ヘテロアリーレン基を表す場合、電子吸引性基Yが結合部に対してオルト位かパラ位にあることが好ましく、5員環のヘテロアリーレン基である場合は、結合部と電子吸引性基が、2位と4位にあることが好ましい。またこれら連結基に結合するYは複数個でもよい。またYが結合している以外の箇所に置換基を有していてもよい。これらの連結基と電子吸引性基の好ましい結合を下記に図示する。
【0061】
【化27】

(図中G1〜G6は任意の置換基または置換されてもよいアルキル鎖を表し、X、Yは電子吸引性基を示す。)
【0062】
前記一般式[II]において、環Aは>C=Oと共に炭素環式ケトン構造または複素環式ケトン構造を表す。炭素環式ケトン、複素環式ケトンとは、不飽和または芳香環系の環内の−CH2−や=CH−が、>C=Oに置き換わったものである。また点線で示した環Aの環構造部にも、複数の>C=O、>C=Sや>C=NH等を有していてもよい。
環Aが形成する炭素環式ケトン構造や複素環式ケトン構造は、飽和でも不飽和でもよく、環の員数も特に問わない。また複素環においてはヘテロ原子の数も特に問わない。また環内の炭化水素基部や環を構成する−NH−の水素原子は、任意の置換基(特にアルキル基やアリール基が好ましい)で置換されていてもよい。
【0063】
これらの炭素環式ケトン構造や複素環式ケトン構造は、環の一部に更なる環が縮合して、縮合環構造を形成してもよい。該環式ケトン構造に縮合する環構造は、炭化水素環、複素環を問わないが、好ましくは、ベンゼン環または5〜6員環の複素芳香環である。以下に、該環式ケトンが示す構造を図示する。
【0064】
【化28】

【0065】
環Aが形成する炭素環式ケトン構造と複素環式ケトン構造の好ましい例としては、5〜6員環の飽和炭化水素環、5〜6員環の飽和または不飽和の複素環のものである。一般式[I]、[II]で表される化合物は、その分子量が、好ましくは1000以下、特に好ましくは700以下の化合物である。
【0066】
また、本発明者らは、レーザー光に対し感受性を有する従来知られていない新規な構造を持つ化合物について鋭意検討を行ったところ、記録材料として優れた性能を示す新規な化合物を見出した。即ち下記一般式[I’]で示される新規化合物である。
【0067】
【化29】

{式中、R1〜R4は水素原子または任意の置換基を表し、R1とR2、R3とR4が各々結合して炭化水素環または複素環構造を形成しても良く、該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。X1及びYは電子吸引性基を表し、X1及びYの一方がシアノ基を表し、他方が−COOR11(R11は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)又は−SO217(R17は置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)を表す。Zは−NR5−(X1及びYの一方が−COOR11である場合、R5は、置換されてもよい炭素数3〜18の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。X1及びYの一方が−SO217である場合、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。)を表す。}
【0068】
一般式[I’]で示される本発明化合物は、溶液に溶解するなどして塗布膜を形成する際の成膜性に優れ、かつその塗布膜は350〜530nmの短波長レーザー光による記録に適しているという利点がある。さらに塗布膜の保存安定性にも優れている。従って本化合物は、これを用いて短波長レーザーに対応する記録再生用光学記録媒体を作製することができ、記録材料として非常に有用である。また、本発明化合物のごとくZが窒素原子を有すると、Zが他の原子である場合(例えばZが酸素原子の場合など)に比べて、モル吸光係数(ε)が増加し、また溶液状態及び膜状態の吸収スペクトルがシャープになる傾向があるので、Zが上記のように−NR5−で示される構造をもつ本発明化合物は記録材料としてより優れた性能が期待される。
【0069】
一般に、記録材料として使用される化合物は、その化合物の溶液を基板上にスピンコート等で塗布し記録膜を形成した際に、基板上で結晶化しない性質を有することが特に重要である。結晶化を起こすと膜が白濁し、記録に適さない膜となってしまうためである。分子中に嵩高い置換基が導入された化合物では、このような結晶化を防ぐ効果や、溶媒に対する溶解性が向上する効果が見られるので、記録に適した記録膜を形成するためには化合物中に嵩高い置換基を有することが望ましい。
【0070】
本発明化合物においては、X1及びYに関し、例えば、X1及びYの一方がシアノ基であるときは、他方を−COOR11(R11は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)や−SO217(R17は置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基を表す)などの嵩高い基とすることで、結晶化し難くすることができる。より具体的には、後述の実施例に示す、シアノ基とエステル基(例えば、エチルエステル基)の組合せや、シアノ基とスルホニル基(例えば、p−トルエンスルホニル基)の組合せが挙げられる。なかでも、カルボン酸エステル基(−COO−)における炭素部分はsp2混成であって平面状であるのに対し、スルホニル基(−SO2−)の硫黄部分は四面体構造で平面状ではないため、スルホニル基のほうがより結晶化しにくい傾向がある。
【0071】
一般式[I’]において−NR5−で示されるR5は、X1及びYの置換基の種類に応じて、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基の中から選ばれる。上述のように嵩高い置換基が導入された化合物には、結晶化を防ぐ効果や、溶媒に対する溶解性が向上する効果が見られるので、R5についても、直鎖のアルキル鎖よりも、分岐のアルキル鎖や環状化合物(環状アルキル基や飽和複素環基)等のような嵩高な基を有していることが、塗布膜の結晶化を防ぎ溶媒への溶解性を上げるうえで好ましい。それ故、好ましくはR5は、置換されてもよい炭素数3〜18の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。
【0072】
以上を総合して、特に好ましい例は、X1及びYの一方が−COOR11である場合、R5は、置換されてもよい炭素数3〜18の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。また、X1及びYの一方が−SO217である場合、R5は、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。最も好ましくは、R5が、置換されてもよい炭素数3〜12の分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜8の環状アルキル基、または置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基を表す。
【0073】
一般式[I]、[II]で表される化合物の好ましい例として下記のものが挙げられる。なお、本明細書の構造式において、Etはエチルを、Buはブチルを、Phはフェニルを表す。
【0074】
【化30】

【0075】
【化31】

【0076】
【化32】

【0077】
【化33】

【0078】
【化34】

【0079】
【化35】

【0080】
【化36】

【0081】
【化37】

【0082】
【化38】

【0083】
【化39】

【0084】
【化40】

【0085】
これら本発明の上記一般式[I],[II]で示される化合物からなる色素は、例えば該色素を含む溶液から記録層の成膜を形成する際の、薄膜形成性に優れているので、光学記録媒体の記録層に使用する色素として極めて有用である。また本発明の色素は、該色素を含有する記録層がより短い波長(350nm〜500nm)領域にレーザー光による記録再生に適した強度の吸収を有しているため、短波長レーザーに対応する記録再生用光学記録媒体に使用する色素として、極めて有用である。
【0086】
なお、本発明の光学記録媒体の記録層に用いうる化合物としては、薄膜状に形成した際の最大吸収波長(λmax)が320nm〜420nm、特に320〜400nm程度の比較的短波長領域に存在するものが多いこと、吸収スペクトルのピーク形状が比較的シャープであること、モル吸光係数(ε)が15000以上であること等、青色半導体レーザーを用いて記録・再生を行なう上で優れた光学的特性を備えていることが好ましい。ここで、最大吸収波長とは、通常、波長300nm以上における最大吸収波長を言う。吸収スペクトルの形状によっては、最大吸収波長は2以上存在することもある。
【0087】
より好ましくは、化合物が、溶液状態での光学密度ODが80以上あること、一般的に用いられる無害且つ安価な溶媒(例えば、乳酸メチルや乳酸エチルなど)への溶解性が高いこと、薄膜を形成する際に良質な膜が形成されること(成膜時に結晶化しないこと)、溶液状態および薄膜状態での保存安定性や耐光性が良いこと、などを満たすことが望ましい。
また、本発明の光学記録媒体の記録層は、記録および再生光波長における消衰係数(複素屈折率の虚部)kが0〜0.20であることが好ましい。さらに、屈折率(複素屈折率の実部)nが1.8以上であることが好ましい。
【0088】
次に、本発明の光学記録媒体について説明する。本発明の光学記録媒体は少なくとも、基板と、前記一般式[I]、[II]で表される化合物を含有する記録層とから構成される。更に、必要に応じて下引き層、反射層、保護層等を設けても良い。好ましい層構成の一例としては、基板の上に記録層を設け、その上に更に反射層、保護層をこの順に積層した、高反射率の媒体が挙げられる。この場合、基板側からレーザー光を照射して、情報の記録・再生を行なうことになる(媒体構造例1)。以下、こうした構造の媒体(媒体構造例1)を例にとりながら、本発明の光学記録媒体について説明する。なお、以下の記載では、説明の便宜上、積層時に保護層が存在する側及び基板が存在する側を、それぞれ上方及び下方とみなし、これらの方向に対応する各層の各面を、それぞれ各層の上面及び下面と呼ぶことにする。
【0089】
本発明の光学記録媒体における基板は、基本的に記録光及び再生光の波長において透明な材質であれば、様々な材質を用いたものを使用することができる。具体的には、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂製の基板、ガラス製の基板、ガラス上に光硬化性樹脂等の放射線硬化性樹脂からなる樹脂層を設けた基板等が挙げられる。中でも、高生産性、コスト、耐吸湿性などの観点からは、射出成型ポリカーボネート製の基板が好ましい。また、耐薬品性、耐吸湿性などの観点からは、非晶質ポリオレフィン製の基板が好ましい。更に、高速応答などの観点からは、ガラス製の基板が好ましい。
【0090】
樹脂製の基板を使用した場合、又は、記録層と接する側(上側)に樹脂層を設けた基板を使用した場合には、その樹脂製基板又は樹脂層の上面に、記録再生光の案内溝やピットを形成してもよい。案内溝の形状としては、光学記録媒体の中心を基準とした同心円状の形状やスパイラル状の形状が挙げられる。スパイラル状の案内溝を形成する場合には、溝ピッチが0.2〜1.2μm程度であることが好ましい。
【0091】
基板の上側に直接、又は必要に応じて基板上に設けた下引き層等の上側に、前記一般式[I]、[II]で表される化合物を含む記録層を形成する。記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法(スピナー法)、浸漬法等、一般に行なわれている様々な薄膜形成法が挙げられる。量産性やコストの観点からは、スピンコート法が好ましく、均一な厚みの記録層が得られるという観点からは、塗布法よりも真空蒸着法等の方が好ましい。スピンコート法による成膜の場合、回転数は500〜15000rpmが好ましい。また、場合によっては、スピンコートの後に、加熱する、溶媒蒸気にあてる等の処理を施しても良い。
【0092】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布法により記録層を形成する場合に、前記一般式[I]、[II]で表される化合物を溶解させて基板に塗布するために使用する塗布溶媒は、基板を侵食しない溶媒であれば特に限定されない。具体的に挙げると、例えばジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【0093】
真空蒸着法を用いる場合には、例えば、前記一般式[I]、[II]で表される化合物と、必要に応じて他の色素や各種添加剤等の記録層成分とを、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、この真空容器内を適当な真空ポンプで10-2〜10-5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることによって、記録層を形成する。
【0094】
また、記録層には、前記一般式[I]、[II]で表される化合物に加えて、安定性や耐光性の向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等を含有させたり、記録感度の向上のために、金属系化合物等の記録感度向上剤を含有させたりしても良い。ここで、金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。なお、記録層には、必要に応じて、前記一般式[I]、[II]で表される化合物を複数種類併用しても良い。
【0095】
更に記録層には、前記一般式[I]、[II]で表される化合物に加え、必要に応じて他系統の色素を併用することもできる。他系統の色素としては、主として記録用レーザーの発振波長域に適度な吸収を有するものであればよく、特に制限されない。また、CD−R等に使用され、770〜830nmの波長帯域中に発振波長を有する近赤外レーザーを用いた記録・再生に適する色素や、DVD−R等に使用され、620〜690nmの波長帯域中に発振波長を有する赤色レーザーを用いた記録・再生に適する色素等を、前記一般式[I]、[II]で表される化合物と併用して記録層に含有させることにより、異なる波長帯域に属する複数種のレーザー光を用いた記録・再生に対応する光学記録媒体を製造することもできる。
【0096】
前記一般式[I]、[II]で表される化合物以外の他系統の色素としては、含金属アゾ系色素、ベンゾフェノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、含金属インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素等が挙げられる。更に、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0097】
記録層の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なる為、特に限定するものではないが、記録を可能とするためにはある程度の膜厚が必要とされるため、通常、少なくとも1nm以上であり、好ましくは5nm以上である。但し、あまり厚すぎても記録が良好に行えなくなるおそれがあり、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0098】
記録層の上には、反射層を形成する。その膜厚は、好ましくは50〜300nmである。反射層の材料としては、再生光の波長において十分高い反射率を有する材料、例えばAu、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を、単独あるいは合金にして用いることができる。これらの中でもAu、Al、Agは反射率が高く、反射層の材料として適している。また、これらの金属を主成分とした上で、加えて他の材料を含有させても良い。ここで主成分とは、含有率が50%以上のものをいう。主成分以外の他の材料としては、例えばMg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ta、Ti、Pt、Pd、Ndなどの金属及び半金属を挙げることができる。中でもAgを主成分とするものは、コストが安い点、高反射率が出やすい点、後述する印刷受容層を設けた場合に地色が白く美しいものが得られる点等から、特に好ましい。例えば、AgにAu、Pd、Pt、Cu、及びNdから選ばれる一種以上を0.1〜5原子%程度含有させた合金は、高反射率、高耐久性、高感度且つ低コストであり好ましい。具体的には、例えばAgPdCu合金、AgCuAu合金、AgCuAuNd合金、AgAuNd合金、AgCuNd合金等である。金属以外の材料としては、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、これを反射層として用いることも可能である。
【0099】
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、基板の上や反射層の下に、反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために、公知の無機系又は有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0100】
反射層の上に形成する保護層の材料は、反射層を外力から保護するものであれば、特に限定されない。有機物質の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2、SnO2等が挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いる場合は、適当な溶剤に溶解して調製した塗布液を反射層の上に塗布して乾燥させれば、保護層を形成することができる。UV硬化性樹脂を用いる場合は、そのまま反射層の上に塗布するか、又は適当な溶剤に溶解して調製した塗布液を反射層の上に塗布し、UV光を照射して硬化させることによって、保護層を形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は、単独で用いても、複数種を混合して用いても良い。また、保護層は、単層として形成しても、多層として形成してもよい。
【0101】
保護層の形成方法としては、記録層と同様に、スピンコート法やキャスト法等の塗布法や、スパッタリング法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、中でもスピンコート法が好ましい。保護層の膜厚は、その保護機能を果たすためにはある程度の厚みが必要とされるため、一般に0.1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。但しあまり厚すぎると、効果が変わらないだけでなく保護層の形成に時間がかかったりコストが高くなる虞があるので通常100μm以下であり、好ましくは30μm以下である。
【0102】
以上、光学記録媒体の層構造として、基板、記録層、反射層、保護層をこの順に積層して成る構造を例に採って説明したが、前述した如く、この他の層構造を採っても構わない。
例えば、反射層が無い構成でも記録光や再生光に対して十分な反射率が得られるならば、反射層は設けないほうが好ましい。反射層の材料及び成膜コストを削減できるメリットがある。これにより、スパッタ法を使用することなく、記録層と保護層をスピンコート法などの塗布法によって設けることで、媒体を安価に製造できるメリットがある。
また例えば、上例の層構造における保護層の上面に、又は上例の層構造から保護層を省略して反射層の上面に、更に別の基板を貼り合わせてもよい。この際の基板は、何ら層を設けていない基板そのものであってもよく、貼り合わせ面又はその反対面に反射層など任意の層を有するものでも良い。また、同じく上例の層構造を有する光記録媒体や、上例の層構造から保護層を省略した光学記録媒体を、それぞれの保護層及び/又は反射層の上面を相互に対向させて2枚貼り合わせてもよい。
【0103】
更に、本発明の好ましい光学記録媒体の層構成の一例としては、基板の上に反射層を設け、その上にさらに記録層、保護被膜をこの順に積層した媒体が挙げられる。この場合、保護被膜を通してレーザー光を照射して、情報の記録・再生を行うことになる(媒体構造例2)。この保護被膜は、フィルムまたはシート状のものを接着剤によって貼り合わせてもよいし、あるいは前述の保護層と同様の材料を用い、成膜用の塗液を塗布し硬化または乾燥することにより形成しても良い。保護被膜の厚みは、その保護機能を果たすためにはある程度の厚みが必要とされるため、一般に0.1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。但しあまり厚すぎると、効果が変わらないだけでなく保護層の形成に時間がかかったりコストが高くなる虞があるので通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0104】
このような層構成においても、記録層、反射層などの各層は通常、前述の媒体構造例1と同様のものが用い得る。但し、本層構成では基板は透明である必要はなく、従って、前述の材料以外にも、不透明な樹脂、セラミック、金属(合金を含む)などからなる基板が用い得る。このような層構成においても、上記各層間には、本発明の特性を損なわない限り、必要に応じて任意の層を有してよい。
【0105】
ところで、光学記録媒体の記録密度を上げるための一つの手段として、対物レンズの開口数を上げることがある。これにより情報記録面に集光される光スポットを微小化できる。しかしながら、対物レンズの開口数を上げると、記録・再生を行うためにレーザー光を照射した際に、光学記録媒体の反り等に起因する光スポットの収差が大きくなりやすいため、良好な記録再生信号が安定して得られない場合がある。
このような収差は、レーザー光が透過する透明基板や保護被膜の膜厚が厚いほど大きくなりやすいので、収差を小さくするためには基板や保護被膜をできるだけ薄くするのが好ましい。ただし、通常、基板は光学記録媒体の強度を確保するためにある程度の厚みを要するので、この場合、媒体構造例2(基板、反射層、記録層、薄い保護被膜なる基本的層構成の光学記録媒体)を採用するのが好ましい。媒体構造例1の基板を薄くするのに比べると、媒体構造例2の保護被膜は薄くしやすいため、好ましくは媒体構造例2を用いる。
【0106】
なお媒体構造例2においても、反射層が無い構成で記録光や再生光に対して十分な反射率が得られるならば、反射層は設けないほうが好ましい。反射層の材料及び成膜コストを削減できるメリットがある。これにより、スパッタ法を使用することなく、記録層と保護層をスピンコート法などの塗布法によって設けることで、媒体を安価に製造できるメリットがある。但し、媒体構造例1(透明基板、記録層、反射層、保護層なる基本的層構成の光学記録媒体)であっても、記録・再生用レーザー光が通過する透明基板の厚みを50〜300μm程度にまで薄くすることで、収差を小さくして使用できるようになる。
【0107】
また、他の各層の形成後に、記録・再生レーザー光の入射面(通常は基板の下面)に、表面の保護やゴミ等の付着防止の目的で、紫外線硬化樹脂層や無機系薄膜等を成膜形成してもよく、記録・再生レーザー光の入射面ではない面(通常は反射層や保護層の上面)に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、あるいは各種筆記具を用いて記入や印刷が可能な印刷受容層を設けてもよい。
【0108】
本発明の光学記録媒体において、情報の記録・再生のために使用するレーザー光は、高密度記録を実現する観点から波長が短いほど好ましいが、特に波長350〜530nmのレーザー光が好ましい。かかるレーザー光の代表例として、中心波長405nm、410nm、515nmのレーザー光が挙げられる。350〜530nmのレーザー光は、405nm、410nmの青色又は515nmの青緑色の高出力半導体レーザーを使用することによって得られるが、その他にも、例えば、(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー、及び(b)半導体レーザーによって励起される基本発振波長740〜960nmの連続発振可能な固体レーザーの何れかの発振レーザー光を、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによっても得られる。上記のSHGとしては、反転対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP、ADP、BNN、KN、LBO、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例として、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合には、その基本発振波長の倍波である430nm、また、半導体レーザー励起の固体レーザーの場合には、CrドープしたLiSrAlF6結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の430nmなどが挙げられる。
【0109】
本発明の光学記録媒体に対して情報の記録を行なう際には、記録層に対して(通常は基板側から基板を透過させ)、通常、0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射する。記録層のレーザー光が照射された部分は、レーザー光のエネルギーを吸収することによって分解、発熱、溶解等の熱的変形を起こすため、光学的特性が変化する。
記録された情報の再生を行なう際には、同じく記録層に対して(通常は記録時と同じ方向から)、よりエネルギーの低いレーザー光を照射する。記録層において、光学的特性の変化が起きた部分(すなわち、情報が記録された部分)の反射率と、変化が起きていない部分の反射率との差を読みとることにより、情報の再生が行なわれる。
【実施例】
【0110】
以下本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例によって限定されるものではない。
[合成例]
前記一般式[I]、[II]で示される化合物の合成法は特に限定されるものではないが、一般的な製法としては、J.O.C.,Vol.39,No.7(1974)p989やArch.der.Pharm.Nr.4(1960),p404に記載されているように、γ−ピロンやγ−チアピロン化合物を、活性メチレンを有する化合物と無水酢酸中で加熱することによって得られることが知られている。また生成したピロン化合物は、アンモニアや脂肪族一級アミン、芳香族アミン、ヒドラジン等と反応させることで、Z=−NR5−で表されるような化合物を合成することができる。またZ=−SO2−の化合物の合成法はJ.O.C.,Vol.60(1995)p1665などに詳しく記載されている。
【0111】
実施例1 [例示化合物(1)]
(a)製造例
【化41】

【0112】
上記構造式[1]で示されるフラボン0.67g(3mmol)と上記構造式[2]で示されるマロノニトリル0.6g(9mmol)を無水酢酸15mlに攪拌溶解させ、油浴中で32時間還流した。反応溶液は冷却後、氷水300ml中にあけて30分撹拌し、固体を析出させ、これを濾過して、固形物を濾別した。濾別した固体は、エタノール溶媒で再結晶させることにより精製し、例示化合物(1)で表される化合物0.23g(収率28.4%)が得られた。この化合物のクロロホルム中でのλmax=402.5nm、モル吸光係数は2.4×104であった。
【0113】
(b)記録媒体例
前述の例示化合物(1)を乳酸メチルに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、395.5nmであった。
[光学記録媒体の評価]
以上実施例1で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0114】
実施例2 [例示化合物(51)]
(a)製造例
【化42】

【0115】
上記構造式[3]で示される2,6−ジメチル−γ―ピロン1.24g(15mmol)と上記構造式[4]で示される1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン2.09g(12mmo)を無水酢酸40mlに撹拌、溶解させた。その後この溶液を油浴中、24時間還流し、冷却後、氷水400ml中にあけて30分撹拌し、析出した固体を濾別した。濾過物は水100ml中に懸濁させて30分撹拌した後に濾過をして、さらに同様にメタノール20ml中に懸濁、洗浄させて精製することにより例示化合物(51)で表される化合物0.34g(収率12%)を得た。この化合物のクロロホルム中でのλmax=357.5nm、モル吸光係数は2.8×104であった。
【0116】
(b)記録媒体例
前述の例示化合物(51)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、344nmであった。
[光学記録媒体の評価]
以上実施例2で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0117】
実施例3 [例示化合物(2)]
(a)製造例
【化43】

【0118】
前述の2,6−ジメチル−γ―ピロン1.86g(15mmol)と上記構造式[5]で示されるシアノ酢酸エチル2.04g(18mmol)を無水酢酸60mlに撹拌、溶解させた。その後この溶液を油浴中37時間還流し、冷却後、氷水600ml中にあけて30分撹拌し、析出した固体を濾別した。濾過物は水100ml中に懸濁させ、1時間撹拌した後、濾過して、濾過物を乾燥させることにより例示化合物(2)で表される化合物1.4g(収率42.7%)を得た。この化合物のクロロホルム中でのλmaxは351nm、モル吸光係数は2.5×104であった。
【0119】
(b)記録媒体例
前述の例示化合物(2)を3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノンに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、352.5nmであった。
[光学記録媒体の評価]
以上実施例3で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0120】
実施例4 [例示化合物(31)]
(a)製造例
【化44】

【0121】
前述の例示化合物(2)0.88g(4mmol)と上記化合物[6]で示されるsec−ブチルアミン8mlを撹拌下、油浴中63℃で2時間還流させた。その後反応液を冷却し、水40mlと酢酸エチル60mlを添加して撹拌した後、抽出を行い、有機層を分離し、溶媒を留去させて例示化合物(31)で示される化合物0.76g(収率77%)を得ることができた。この化合物のクロロホルム中でのλmaxは375.5nm、モル吸光係数は3.6×104であった。この化合物(31)のクロロホルム溶液中5mg/lの吸収スペクトルを図1に示す。
【0122】
(b)記録媒体例
前述の例示化合物(31)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、373.5nmであった。この塗布膜の吸収スペクトルを図2に示す。
【0123】
(c)評価用ディスクの作製例
前述の例示化合物(31)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、0.7wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液をトラックピッチ0.74μm、溝幅0.3μm、溝深さ90nmの溝を持つ直径120mm、厚さ0.6mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板に滴下し、スピナー法により塗布した。なお、塗布は、回転数600rpmから4900rpmへ25秒かけて回転数を上げ、4900rpmで5秒間保持して行った。更に100℃で30分間乾燥し、記録層とした。次いで、スパッタリング法にて銀を100nmの厚さで成膜し、反射層を形成した。その後、UV硬化性樹脂からなる保護コート剤をスピナー法により塗布し、UV光を照射して厚さ5μmの保護層を形成させた。更に、遅延硬化型接着剤を用いて、保護層のある面に、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を接着して、評価用ディスクを作成した。
【0124】
(d)記録例
前記評価用ディスクを線速度3.5m/secで回転させながら、波長405nm(対物レンズの開口数NA=0.65)のレーザー光で、8Tマーク/8Tスペースの単一周波数信号を溝上に記録した。なお、Tは、周波数26.2MHzに対応する基準クロック周期である。記録パルスストラテジーはDVD−RVer.2規格に準じ、分割パルス数はマーク長をnTとして(n−2)、先頭記録パルス幅2T、後続記録パルス幅0.6T、バイアスパワー0.2mW、再生パワー0.2mW、記録パワーを可変とした。その結果、記録パワー4mW以上で記録が可能となり、8mWで変調度25%の信号が記録できた。変調度は、パルスストラテジーなど記録条件の最適化によって、より大きくなると考えられる。
【0125】
実施例5〜9
以下、前記の合成法と同様の方法で、例示化合物(9)、(3)、(32)、(55)、(59)の各化合物を合成し、実施例と同様にして塗布膜を形成し、塗布膜の吸収スペクトルを測定した。これらの化合物の溶液中での最大吸収波長、モル吸光係数、塗布膜での最大吸収波長を、実施例1〜4の結果と併せて表−1に示す。
【0126】
また、実施例6にて合成した例示化合物(3)の色素の、クロロホルム溶液中5mg/lの吸収スペクトルを図3に、塗布膜の吸収スペクトルを図4に示す。実施例7にて合成した例示化合物(32)の色素の、クロロホルム溶液中5mg/lの吸収スペクトルを図5に、塗布膜での吸収スペクトルを図6に示す。
[光学記録媒体の評価]
以上実施例5〜9で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0127】
実施例10 [例示化合物(86)]
(a)製造例
【化45】

【0128】
上記[7]で示される4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロン18.9g(0.15mol)と[8]で示されるシクロヘキサンカルボニルクロライド25g(0.17mol)をトリフルオロ酢酸50ml溶液中に溶解させ、100℃で6.5時間加熱した。冷却後、反応液を水350ml中にあけて固体を析出させ、そのまま1時間撹拌し、固形物を濾別した。固形物は水500mlに懸濁させ、1時間撹拌した後、固体を濾別し、真空条件下で乾燥させて下記[9]で示される化合物28.9gを得た(収率81.5%)。
【0129】
【化46】

【0130】
この[9]で示される化合物15gを酢酸200mlと濃塩酸100mlとの混合液中に溶解させ、100℃で2.5時間加熱し、冷却後、水250ml中に入れ、撹拌条件下、アンモニアでpH7になるまで中和した。ここにトルエン500mlを加え、反応物を抽出分離し、トルエン層は水250mlで2回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え一晩静置した。その後トルエン層を濾過し、トルエンを留去して、下記化合物[10]が10.2g得られた(収率83.6%)。
【0131】
【化47】

【0132】
得られた上記[10]の化合物4.8g(25mmol)と前述[5]で表されるシアノ酢酸エチル3.39g(30mmol)を無水酢酸100ml中に溶解し、54時間還流した。冷却後反応液を氷水1000ml中にあけて、撹拌し、固体を析出させた。固体は濾別した後、水350mlに懸濁させ1時間撹拌し、濾過後固体をイソプロピルエーテル50ml、水350mlに順に懸濁させて精製し、乾燥後下記化合物[11]を2.15g(収率30%)を得た。
【0133】
【化48】

【0134】
得られた上記[11]の化合物0.4gをn−ブチルアミン6mlに溶解し、撹拌条件下、油浴中1.5時間還流した。冷却後、反応液に水25mlを添加し、30分撹拌して固体を析出させた。固体は濾別したのち水で十分洗浄し、乾燥することで例示化合物(86)で示される化合物0.36g(収率76%)を得た。この化合物のマススペクトルを測定したところ、目的化合物と一致するm/z342(M+)のピークが観測された。また、この化合物のクロロホルム中でのλmaxは375nm、モル吸光係数は4.2×104であった。
【0135】
(b)記録媒体例
例示化合物(86)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、374nm,360.5nmであった(ピークの頂点が2山になっているため)。
[光学記録媒体の評価]
上記実施例10で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0136】
実施例11 [例示化合物(69)]
(a)製造例
前述の例示化合物(2)1.5g(6.8mmol)とシクロペンチルアミン20mlを撹拌下、油浴中で1.5時間還流させた。その後反応液を冷却し、水250ml中に混合して撹拌した後、1晩静置して結晶を析出させて、これを濾別した。
濾過物を水250ml中で懸濁状で1時間撹拌した後に濾過し、次にジイソプロピルエーテル40ml中で同様に懸濁状で1時間撹拌して濾過を行った。濾過物は真空条件で乾燥し、例示化合物(69)0.92g(収率47%)を得ることができた。
【0137】
この化合物のマススペクトルを測定したところ、目的化合物と一致するm/z286(M+)のピークが観測された。また1H−NMR(CDCl3(δ=ppm)270MHz)を測定したところ、1.33(3H、t、−OCH2CH3)、1.79−2.20(8H、m、cyclopentyl−H)、2.52(6H、pyridone−2,6−CH3、d)、4.22(2H、q、−OCH2−)、4.92(1H、m、N−CH)、6.85(1H、d、pyridone−H)、8.22(1H、d、pyridone−H)のピークが得られた。この化合物のクロロホルム中での最大吸収波長(λmax)は376.5nm、モル吸光係数は4.0×104であった。
【0138】
(b)記録媒体例
例示化合物(69)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、376nm、362.5(s)nmであった。
【0139】
(c)評価用ディスクの作製例
前述の例示化合物(69)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、0.6wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液をトラックピッチ0.74μm、溝幅0.3μm、溝深さ90nmの溝を持つ直径120mm、厚さ0.6mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板に滴下し、スピナー法により塗布した。なお、塗布は、回転数600rpmから4900rpmへ25秒かけて回転数を上げ、4900rpmで5秒間保持して行った。更に100℃で30分間乾燥し、記録層とした。次いで、スパッタリング法にて銀を100nmの厚さで成膜し、反射層を形成した。その後、UV硬化性樹脂からなる保護コート剤をスピナー法により塗布し、UV光を照射して厚さ5μmの保護層を形成させた。更に、遅延硬化型接着剤を用いて、保護層のある面に、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を接着して、評価用ディスクを作成した。
【0140】
(d)記録例
前記評価用ディスクを線速度5.7m/secで回転させながら、波長405nm(対物レンズの開口数NA=0.65)のレーザー光で、8Tマーク/8Tスペースの単一周波数信号を溝上に記録した。なお、Tは、周波数66MHzに対応する基準クロック周期である。記録パルスストラテジーはDVD−R Ver.2規格に準じ、分割パルス数はマーク長をnTとして(n−2)、先頭記録パルス幅2T、後続記録パルス幅0.6T、バイアスパワー0.2mW、再生パワー0.2mW、記録パワーを可変とした。その結果、記録パワー3mW以上で記録が可能となり、8mWで変調度20%の信号が記録できた。変調度は、パルスストラテジーなど記録条件の最適化によって、より大きくなると考えられる。
【0141】
実施例12 [例示化合物(103)]
(a)製造例
【化49】

【0142】
2,6−ジメチル−γ−ピロン0.93g(7.5mmol)と上記化合物 [13]で表されるp−トルエンスルホニルアセトニトリル1.46g(7.5mmol)を無水酢酸30ml中に溶解し撹拌下、油浴中13.5時間還流した。反応液は冷却後、氷水250ml中に混合して撹拌し、固体を析出させた。その後固体を濾別し、水で十分洗浄したのち真空条件下で乾燥し、例示化合物(3)1.6g(収率70.8%)を得た。この化合物0.3gを4−アミノモルホリン6ml中に溶解し撹拌下、油浴中150℃で1時間半加熱した。反応液は冷却後、水30mlを添加して撹拌し、固体を析出させた。その後反応液から固体を濾別し、これを水、イソプロピルエーテルで十分洗浄し、例示化合物(103)を0.17g得ることが出来た(収率45.6%)。
【0143】
この化合物のマススペクトルを測定したところ、目的化合物と一致するm/z385(M+)のピークが観測された。また1H−NMR(CDCl3(δ=ppm)270MHz)を測定したところ、2.41(3H、s、Ph−CH3)、2.5(6H、d、pyridone−2,6−CH3)、3.32(4H、t、−NCH2−)、3.84(4H、t、−OCH2−)、6.61(1H、d、pyridone−H)、7.29(2H、d、Tol−3,5−H)、7.46(1H、d、pyridone−H)、7.85(2H、d、Tol−2,5−H)であった。この化合物のクロロホルム中でのλmaxは369.5nm、モル吸光係数は3.7×104であった。
【0144】
(b)記録媒体例
例示化合物(103)をオクタフルオロペンタノールに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布し、塗布後、100℃で30分間乾燥した。この塗布膜の最大吸収波長(λmax)は、357nm、372.5(s)nmであった。
[光学記録媒体の評価]
以上実施例12で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0145】
実施例13〜35
以下、前記の合成法と同様の方法で、例示化合物(68)、(70)〜(85)、(87)〜(92)の各化合物を合成し、実施例と同様にして塗布膜を形成し塗布膜の吸収スペクトルを測定した。これらの化合物の溶液中での最大吸収波長、モル吸光係数、塗布膜での最大吸収波長を表−1に示す。
[光学記録媒体の評価]
以上実施例13〜35で形成した塗布膜上に、必要に応じスパッタリング法等にてAgなどを成膜して反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂をスピンコート等にて塗布・UV照射により硬化させて保護層を形成し、光学記録媒体とすることができる。この光学記録媒体は、塗布膜のλmaxの値より、例えば中心波長405nmの半導体レーザーによる記録再生が可能であることが明らかである。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
比較例1
(a)製造例
【化50】

【0149】
4−ジメチルアミノベンズアルデヒド5mmolと前述のシアノ酢酸エチル5mmolを1,4−ジオキサン5mlに溶解し、そこにピペリジン0.1mlを滴下し、室温で2時間撹拌し、その後一晩静置して析出した結晶を濾別し、メタノールで洗浄することで上記化合物[12]を得た。この化合物のクロロホルム中でのλmaxは422nm、モル吸光係数は4.8×104であった。
(b)記録媒体例
前述の化合物[12]をオクタフルオロペンタノールに溶解し、1.0wt%に調整した。これをろ過してできた溶解液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成型ポリカーボネート樹脂基板上に滴下し、スピナー法により塗布したが、塗布終了後すぐにディスク表面で結晶化してしまい、良好な塗布膜が形成できなかった。
【0150】
実施例36
[塗布膜の保存安定性評価]
塗布膜の保存安定性を評価するために、前述の実施例1〜35で製造した化合物の中から例示化合物(31)、(86)、(69)、(71)、(78)、(82)(実施例4、10、11、15,22,26に相当する。)について、以下の保存安定性試験を行った。これら化合物は波長405nmの青色レーザーで記録するのに適すると思われるスペクトルを持つことから選択した。
【0151】
保存安定性試験
上記化合物を塗布した基板を、85℃、相対湿度85%の条件下、恒温恒湿漕内に200時間静置した。この保存安定性試験の後、塗布膜の吸収スペクトルを再度測定し、試験を行う前と吸収強度の比較を行った。なお、吸収強度の比較は、試験前の塗布膜のλmaxの波長にて行い、保存安定性(%)は[(試験後の吸収スペクトルにおける吸収強度)/(試験前の吸収スペクトルにおける吸収強度)]×100として求めた。
【0152】
結果を表−2に示す。これらの色素は、試験前に比して89%以上の吸収強度を保っており、吸収スペクトルの形状にも大きな変化がないことから、いずれも高い保存安定性を有する化合物であるといえる。この例示化合物(31)の保存安定性試験前後での塗布膜の吸収スペクトルを図7に示す。試験前が実線で、試験後が破線で表されている。
【0153】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】実施例4にて合成した例示化合物(31)の色素の、クロロホルム溶液中5mg/の吸収スペクトルである。
【図2】実施例4にて合成した例示化合物(31)の色素の、塗布膜の吸収スペクトルである。
【図3】実施例6にて合成した例示化合物(3)の色素の、クロロホルム溶液中5mg/の吸収スペクトルである。
【図4】実施例6にて合成した例示化合物(3)の色素の、塗布膜の吸収スペクトルである。
【図5】実施例7にて合成した例示化合物(32)の色素の、クロロホルム溶液中5mg/の吸収スペクトルである。
【図6】実施例7にて合成した例示化合物(32)の色素の、塗布膜の吸収スペクトルである。
【図7】実施例36における例示化合物(31)の色素の、保存安定性試験前後の吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にレーザーによる情報の記録又は再生が可能な記録層が設けられた光学記録媒体において、該記録層が下記一般式[II]で表される化合物を含有することを特徴とする光学記録媒体。
【化1】

{式中、R1〜R4は各々独立に水素原子または任意の置換基を表し、R1とR2、R3とR4が各々結合して炭化水素環または複素環構造を形成してもよく、該炭化水素環及び該複素環は、置換基を有していてもよい。但し、R2及び/又はR4のいずれかはアミノ基を共役結合を介して結合する基を含まない。環AはC=Oと共に、置換基を有していてもよい複素環式ケトン環またはアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい炭素環式ケトン環を表す。Zは、−O−、−S−、−SO2−、または−NR5−[R5は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、−NR67で表されるアミノ基(R6、R7は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基、若しくは−COR8〈R8は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。〉)、または−COR9(R9は置換されてもよい炭化水素基または置換されてもよい複素環基を表す。)を表す。R5が炭化水素基の場合は、R2またはR4と結合して環状構造を形成していてもよい。]を表す。}
【請求項2】
一般式[II]において、環Aがアルキル基またはアリール基で置換されてもよい5〜6員環の炭素環式ケトン環、または置換されていてもよい5〜6員環の複素環式ケトン環であることを特徴とする請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項3】
一般式[II]において、R1〜R4が各々独立に、水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、置換されてもよい炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルケニル基、置換されてもよい複素環基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜24のアラルキル基、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換されてもよい炭素数3〜18の直鎖または分岐のアルケニルオキシ基、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、メルカプト基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアミノ基、スルホン酸基、ホルミル基、カルボキシル基、−COR20で表されるアシル基、−NR2122で表されるアミノ基、−NHCOR23で表されるアシルアミノ基、−NHCOOR24で表されるカーバメート基、−COOR25で表されるカルボン酸エステル基、−OCOR26で表されるアシルオキシ基、−CONR2728で表されるカルバモイル基、−SO229で表されるスルホニル基、−SO2NR3031で表されるスルファモイル基、−SO332で表されるスルホン酸エステル基、−NHSO233で表されるスルホンアミド基、−SOR34で表されるスルフィニル基を表し(R20、R23、R24、R25、R26、R29、R32、R33、R34は置換されてもよい炭化水素基、または置換されてもよい複素環基を表し、R21、R22,R27,R28,R30,R31は水素原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい複素環基のいずれかを表す。)、R1とR2、R3とR4が各々独立に結合して置換されていてもよい5〜7員環の炭化水素環、あるいは置換されていてもよい5〜6員環の複素環を形成していてもよいことを特徴とする請求項1または2記載の光学記録媒体。
【請求項4】
一般式[II]において、R1〜R4が各々独立に、水素原子、置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜12の環状アルキル基、置換されてもよい炭素数2〜12の直鎖または分岐のアルケニル基、5〜6員環の飽和複素環基、5〜6員環の単環または2縮合環の複素芳香環基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換されてもよい炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキルチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、−COR20で表されるアシル基、−NR2122で表されるアミノ基、−NHCOR23で表されるアシルアミノ基、−NHCOOR24で表されるカーバメート基、−COOR25で表されるカルボン酸エステル基、−OCOR26で表されるアシルオキシ基、−CONR2728で表されるカルバモイル基、−NHSO233で表されるスルホンアミド基を表し(但し、R20、R23、R24、R25、R26、R33、R21、R22、R27、R28は請求項3におけると同義を表す。)、R1とR2、R3とR4が各々独立に結合して、置換されていてもよい5〜7員環の炭化水素環、あるいは置換されていてもよい5〜6員環の複素環を形成していてもよいことを特徴とする、請求項1または2記載の光学記録媒体。
【請求項5】
一般式[II]において、Zが−O−、−S−、−SO2−、または−NR5−[R5は水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数3〜18の環状アルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい5〜6員環の飽和複素環基、−NR67で表されるアミノ基(R6、R7は各々独立して水素原子、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、置換されてもよい炭素数6〜18のアリール基、置換されてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換されてもよい複素環基を表す。)を表す。]を表し、R5が水素原子、飽和複素環基及びアミノ基以外の場合、R2またはR4と結合して環状構造を形成してもよいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光学記録媒体。
【請求項6】
波長が350nm〜530nmのレーザー光を用い、請求項1〜5に記載の光学記録媒体に対して情報の記録を行うことを特徴とする光学記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−78548(P2009−78548A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214818(P2008−214818)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2002−351696(P2002−351696)の分割
【原出願日】平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】