説明

光導波路およびその製造方法

【課題】光導波路フィルムの無機基板に対する接着性に優れると共に、無機基板の種類に関係なく、有機材料を用いて同じ条件で製造することが可能な光導波路およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】光導波路は、シリコン基板を除く無機基板上に各々有機材料からなる下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層が順次形成されており、無機基板と下部クラッド層との間に酸化シリコンまたはスピンオングラスからなるバッファー層が設けられている。この光導波路は、シリコン基板を除く無機基板上に酸化シリコンまたはスピンオングラスからなるバッファー層を設けた後、各々有機材料からなる下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層を順次形成することより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの実用化に伴い、その基本構成としての光導波路に関する技術が注目を集めている。光導波路とは、代表的には、屈折率が高い光導波路コアを屈折率が低いクラッド層が取り囲んだ埋め込み型構造をなすか、あるいは、屈折率が低い下部クラッド層の上に屈折率が高い光導波路コアを形成し、上部クラッド層を空気層としたリッジ型構造をなし、光導波路コアに入射した光は該光導波路コアと該クラッド層との界面や該光導波路コアと該空気層との界面で反射しながら該光導波路コア中を伝播する。
【0003】
近年、超高速、大容量の情報伝達を実現するために、光導波路を利用した光集積回路が数多く提案されている。通常、光集積回路は、同一基板上に光導波路および受発光素子を形成したモノリシック光集積回路と、別々のプロセスで製造された光導波路および受発光素子を同一基板上に実装するハイブリッド光集積回路とに大別される。このうち、モノリシック光集積回路は、例えば、基板上に形成された発光素子を含む光源部から出射された光が該基板上に形成された光導波路に入射して、その光導波路コア中を伝播した後、該基板上に形成された受光素子を含む受光部に入射することにより、光信号の形で情報が伝達されるように構成されている。
【0004】
このような光集積回路では、受発光素子が無機材料を用いて半導体プロセスにより製造されることから、光導波路も無機材料を用いて半導体プロセスにより製造されてきた。例えば、特許文献1には、量子井戸構造の無秩序化を応用した集積化プロセスにより、半導体基板上に分布帰還型半導体レーザと半導体受光素子と光導波路とを形成したワンチップ干渉計測用ヘッドが開示されている。この光集積回路では、GaAs基板上に形成されたAl0.6Ga0.4Asクラッド層およびAl0.15Ga0.85Asガイド層(光導波路コア)からリブ型光導波路が構成されている。そして、この光集積回路は、分布帰還型半導体レーザから出射された光が光導波路に入射して二分され、一方は曲がり光導波路により半導体受光素子に直接向かい、他方は半導体基板から出射して出力レンズで平行にされ、プリズムで反射し、入力レンズで集光された後、半導体基板上の光導波路に再度入射して半導体受光素子に向い、両方の光が半導体素子の手前で結合されて半導体素子に入射することにより、両方の光の干渉信号が得られるというものである。
【0005】
上記のような無機材料だけを用いて製造された光導波路を含む光集積回路に対し、製造が容易で量産性に優れて低コスト化も期待できることから、有機材料を用いて光導波路を製造することが検討されてきた。例えば、特許文献2には、半導体基板上に半導体材料からなる発光素子および/または受光素子と有機材料からなる光導波路とが形成され、該発光素子および/または受光素子と該光導波路が光結合する光集積回路が開示されている。この光集積回路では、InP基板上に順次形成された、例えば、ポリイミド、ポリメチルメタクリレートまたはポリシロキサンなどの有機材料からなる下部クラッド層、コア層および上部クラッド層から光導波路が構成されている。そして、この光集積回路は、発光素子から出射された光を光導波路で合分波して出力したり、入力光を光導波路で合分波して受光素子により電気信号に変換したり、基板の一部に生じた電気信号を発光素子により光信号に変換して光導波路を経て出力したり、基板の一部に生じた電気信号を発光素子により光信号に変換して光導波路を経て基板上の他部に伝達し受光素子により再度電気信号に変換したりするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−313745号公報
【特許文献2】特開平7−128531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、半導体基板などの無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成しようとすると、無機基板と有機材料からなる光導波路フィルムとの間の接着性が乏しいので、光導波路フィルムが無機基板から容易に剥離するという問題点があった。
【0008】
また、光集積回路の用途などに応じて異なる種類の無機基板を用いることが要求されるが、半導体基板などの無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成する場合には、無機基板の種類に応じて光導波路の製造方法を最適化する必要があるという問題点があった。
【0009】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、光導波路フィルムの無機基板に対する接着性に優れると共に、無機基板の種類に関係なく、有機材料を用いて同じ条件で製造することが可能な光導波路およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々検討の結果、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成するにあたり、無機基板と光導波路の下部クラッド層との間に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を設ければ、有機材料からなる光導波路フィルムの無機基板に対する接着性が向上すると共に、無機基板の種類に関係なく、無機基板上に有機材料を用いて光導波路を同じ条件で製造することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、シリコン(Si)基板を除く無機基板(以下「無機基板」ということがある。)と、該無機基板上に形成された有機材料からなる下部クラッド層と、該下部クラッド層上に形成された有機材料からなる光導波路コアと、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上に形成された有機材料からなる上部クラッド層とを有する光導波路であって、該無機基板と該下部クラッド層との間に酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層が設けられていることを特徴とする光導波路を提供する。
【0012】
本発明の光導波路において、前記無機基板は、好ましくは、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造またはコランダム構造を有する無機基板であり、より好ましくは、ガリウムヒ素(GaAs)基板であり、前記有機材料は、好ましくは、ポリイミド系樹脂である。
【0013】
また、本発明は、上記のような光導波路を製造する方法であって、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を形成する工程と、該バッファー層上に有機材料からなる下部クラッド層を形成する工程と、該下部クラッド層上に有機材料からなる光導波路コアを形成する工程と、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上に有機材料からなる上部クラッド層を形成する工程とを包含することを特徴とする光導波路の製造方法を提供する。
【0014】
本発明による光導波路の製造方法において、前記光導波路コアは、好ましくは、前記下部クラッド層上に有機材料からなるコア層を形成し、該コア層上にマスク層を形成し、該マスク層を光導波路形状にパターニングした後、該パターニングしたマスク層で保護されていない該コア層を前記下部クラッド層が露出するまでエッチングし、該パターニングしたマスク層を除去することにより形成される。また、前記バッファー層上に前記下部クラッド層を形成する前に、前記バッファー層は、好ましくは、シランカップリング剤または機能性シラン化合物で表面処理される。さらに、前記無機基板は、好ましくは、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造またはコランダム構造を有する無機基板であり、より好ましくは、ガリウムヒ素(GaAs)基板であり、前記有機材料は、好ましくは、ポリイミド系樹脂である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成するにあたり、無機基板と光導波路の下部クラッド層との間に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を設けているので、有機材料からなる光導波路フィルムの無機基板に対する接着性が向上すると共に、無機基板の種類に関係なく、有機材料を用いて光導波路を同じ条件で製造することが可能である。また、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成しているので、製造が容易で量産性に優れて低コスト化も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光導波路の代表例の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図2】本発明による光導波路の製造方法の代表例における各工程を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪光導波路≫
本発明の光導波路は、シリコン(Si)基板を除く無機基板と、該無機基板上に形成された有機材料からなる下部クラッド層と、該下部クラッド層上に形成された有機材料からなる光導波路コアと、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上に形成された有機材料からなる上部クラッド層とを有する光導波路であって、該無機基板と該下部クラッド層との間に酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の光導波路は、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を介して、有機材料からなる光導波路フィルム(本明細書では、「光導波路」ということがある。)が形成されている。すなわち、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、バッファー層を構成する酸化シリコン(SiO)膜またはスピンオングラス(SOG)膜を介して、下部クラッド層を構成する有機材料フィルム、光導波路コアを構成する有機材料フィルム、および、上部クラッド層を構成する有機材料フィルムが順次形成されている。なお、本発明の光導波路は、必要に応じて、上部クラッド層の上側に、例えば、保護フィルム、剥離フィルムなどを有していてもよい。
【0019】
本発明の光導波路の代表例を図1に示す。この代表例は、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、バッファー層を介して、下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層を有する光導波路であるが、本発明の光導波路は、この代表例に限定されるものではなく、その構成を適宜変更することができる。なお、図1は、光の伝播方向から見た光導波路の部分断面図である。
【0020】
図1に示すように、シリコン(Si)基板を除く無機基板1上には、まず、バッファー層2が形成されている。バッファー層2は、好ましくは、カップリング剤または機能性シラン化合物で表面処理されている。次に、バッファー層2上には、下部クラッド層3が形成され、下部クラッド層3上には、矩形状の光導波路コア4が形成されている。下部クラッド層3は、接着剤層などを介在することなく、バッファー層2上に直接接着している。そして、光導波路コア4を埋め込むように、下部クラッド層3および光導波路コア4上には、上部クラッド層5が形成されている。光導波路コア4および上部クラッド層5は、接着剤層などを介在することなく、下部クラッド層3上に直接接着している。ここで、下部クラッド層3、光導波路コア4および上部クラッド層5は、各種の有機材料フィルムから構成されている。
【0021】
なお、図1において、光導波路コア4は、1個しか形成されていないが、光導波路の用途などに応じて、2個またはそれ以上形成されていてもよい。また、光導波路コア4は、紙面に対して垂直方向に伸びる直線状に形成されているが、光導波路の用途などに応じて、所定のパターン状に形成されていてもよい。
【0022】
<無機基板>
本発明の光導波路において、シリコン(Si)基板を除く無機基板としては、光導波路の用途などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造またはコランダム構造を有する無機基板が挙げられる。閃亜鉛鉱構造を有する無機基板としては、例えば、ガリウムヒ素(GaAs)基板、ガリウムリン(GaP)基板、インジウムリン(InP)基板などが挙げられる。ウルツ鉱構造を有する無機基板としては、例えば、窒化ガリウム(GaN)基板、炭化ケイ素(SiC)基板などが挙げられる。コランダム構造を有する無機基板としては、例えば、サファイヤ基板などが挙げられる。これらの無機基板のうち、ガリウムヒ素(GaAs)基板が好適である。無機基板の厚さは、光導波路の用途になど応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、100μm以上、5mm以下程度である。
【0023】
<バッファー層>
本発明の光導波路において、シリコン(Si)基板を除く無機基板上には、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層が設けられている。このうち、酸化シリコン(SiO)からなるバッファー層は、CVD法またはスパッタリング法などにより形成される。また、スピンオングラス(SOG)からなるバッファー層は、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、シラノールまたはシルセスキオキサンをアルコールなどの有機溶媒に溶解した溶液をスピンコーティング法などで塗布し、例えば、400〜450℃の温度で熱処理することにより形成される。ここで、シルセスキオキサンとしては、例えば、水素シルセスキオキサン;メチルシルセスキオキサンなどのアルキルシルセスキオキサン;フェニルシルセスキオキサンなどのアリールシルセスキオキサン;などが挙げられる。
【0024】
バッファー層の厚さは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下である。バッファー層の厚さが薄すぎると、光導波路フィルムの無機基板に対する接着性が向上しないことがある。逆に、バッファー層の厚さが厚すぎると、原料を必要以上に使用することになり、製造コストが上昇することがある。
【0025】
<光導波路フィルム>
本発明の光導波路において、シリコン(Si)基板を除く無機基板上には、バッファー層を介して、光導波路フィルムが形成されている。すなわち、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、バッファー層を介して、下部クラッド層を構成する有機材料フィルム、光導波路コアを構成する有機材料フィルム、および、上部クラッド層を構成する有機材料フィルムが順次形成されている。
【0026】
下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層を構成する有機材料フィルムは、隣接する有機材料フィルムに対する接着性を有する限り、特に限定されるものではない。具体的には、従来公知の光導波路用有機材料、例えば、ポリイミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、オキセタン系樹脂、シラン系樹脂、シリコーン系樹脂などから構成される樹脂フィルムを用いることができる。これらの樹脂フィルムのうち、耐熱性の観点からは、ポリイミド系樹脂から構成されるフィルム、すなわちポリイミド系樹脂フィルムが好適である。
【0027】
<下部クラッド層>
本発明の光導波路において、シリコン(Si)基板を除く無機基板上には、バッファー層を介して、下部クラッド層が形成されている。下部クラッド層を構成する有機材料フィルムは、好ましくはポリイミド系樹脂フィルム、より好ましくはフッ素化ポリイミド系樹脂フィルム、さらに好ましくは全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムである。
【0028】
下部クラッド層を構成する有機材料フィルムがポリイミド系樹脂フィルムである場合、このポリイミド系樹脂フィルムは、クラッド層用ポリアミド酸組成物を用いて形成することができる。より詳しくは、バッファー層上にクラッド層用ポリアミド酸組成物を適量塗布した後、焼成を行うことにより、組成物中のポリアミド酸が閉環して、ポリイミド系樹脂フィルムからなる下部クラッド層が形成される。
【0029】
下部クラッド層を構成する有機材料フィルムの厚さは、光導波路の用途や使用光の波長などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。下部クラッド層を構成する有機材料フィルムの屈折率は、光導波路コアを構成する有機材料フィルムの屈折率より低い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、クラッド層用ポリアミド酸組成物の組成(例えば、ポリアミド酸を調製する際に用いるジアミン化合物およびテトラカルボン酸類の種類や、ポリアミド酸がハロゲン原子を有する場合には、そのハロゲン原子の種類や数)により、任意に調節することができる。
【0030】
<光導波路コア>
本発明の光導波路において、シリコン(Si)基板を除く無機基板上には、バッファー層を介して、下部クラッド層が形成され、該下部クラッド層上には、光導波路コアが形成されている。光導波路コアを構成する有機材料フィルムは、好ましくはポリイミド系樹脂フィルム、より好ましくはフッ素化ポリイミド系樹脂フィルム、さらに好ましくは部分フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムである。
【0031】
光導波路コアを構成する有機材料フィルムがポリイミド系樹脂フィルムである場合、このポリイミド系樹脂フィルムは、コア層用ポリアミド酸組成物を用いて形成することができる。より詳しくは、下部クラッド層上に、コア層用ポリアミド酸組成物を適量塗布した後、焼成を行うことにより、組成物中のポリアミド酸が閉環して、ポリイミド系樹脂フィルムからなるコア層が形成され、次いで、コア層上にマスク層を形成し、マスク層を光導波路コア形状にパターニングした後、パターニングしたマスク層で保護されていないコア層を、例えば、反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法により、下部クラッド層が露出するまでエッチングし、パターニングしたマスク層を除去することにより、ポリイミド系樹脂フィルムからなる光導波路コアが形成される。
【0032】
光導波路コアを構成する有機材料フィルムの厚さは、光導波路の用途や使用光の波長などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下である。光導波路コアを構成する有機材料フィルムの屈折率は、下部クラッド層および上部クラッド層を構成する各有機材料フィルムの屈折率より高い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、コア層用ポリアミド酸組成物の組成(例えば、ポリアミド酸を調製する際に用いるジアミン化合物およびテトラカルボン酸類の種類や、ポリアミド酸がハロゲン原子を有する場合には、そのハロゲン原子の種類や数)により、任意に調節することができる。
【0033】
光導波路コアは、長手方向に対して垂直な断面形状が矩形であることが好ましく、正方形であることが最も好ましい。光導波路コアのアスペクト比(幅/厚さ)は、好ましくは1/2以上、より好ましくは2/3以上、さらに好ましくは5/6以上であり、また、好ましくは2/1以下、より好ましくは3/2以下、さらに好ましくは6/5以下である。最も好ましくは1/1である。
【0034】
<上部クラッド層>
本発明の光導波路において、シリコン(Si)基板を除く無機基板上には、バッファー層を介して、下部クラッド層が形成され、該下部クラッド層上には、光導波路コアが形成され、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上には、上部クラッド層が形成されている。上部クラッド層を構成する有機材料フィルムは、好ましくはポリイミド系樹脂フィルム、より好ましくはフッ素化ポリイミド系樹脂フィルム、さらに好ましくは全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムである。
【0035】
上部クラッド層を構成する有機材料フィルムがポリイミド系樹脂フィルムである場合、このポリイミド系樹脂フィルムは、クラッド層用ポリアミド酸組成物を用いて形成することができる。より詳しくは、下部クラッド層および光導波路コア上に、クラッド層用ポリアミド酸組成物を適量塗布した後、焼成を行うことにより、組成物中のポリアミド酸が閉環して、ポリイミド系樹脂フィルムからなる上部クラッド層が形成される。
【0036】
上部クラッド層を構成する有機材料フィルムの厚さは、光導波路の用途や使用光の波長などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、光導波路コアの上側を除いて、例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上部クラッド層を構成する有機材料フィルムの屈折率は、光導波路コアを構成する有機材料フィルムの屈折率より低い限り、特に限定されるものではないが、例えば、1.45〜1.65の範囲内で、クラッド層用ポリアミド酸組成物の組成(例えば、ポリアミド酸を調製する際に用いるジアミン化合物およびテトラカルボン酸類の種類や、ポリアミド酸がハロゲン原子を有する場合には、そのハロゲン原子の種類や数)により、任意に調節することができる。
【0037】
<光導波路の応用>
本発明の光導波路は、例えば、光導波路を含む光集積回路に応用することができる。一般に、光導波路を光集積回路に応用するためには、無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成する必要がある。それゆえ、本発明の光導波路のように、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を介して、有機材料からなる光導波路フィルムを形成すれば、光集積回路においても、有機材料からなる光導波路フィルムの無機基板に対する接着性が向上すると共に、無機基板の種類に関係なく、有機材料を用いて光導波路を同じ条件で製造することが可能である。
【0038】
≪光導波路の製造方法≫
本発明による光導波路の製造方法は、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を形成する工程と、該バッファー層上に有機材料からなる下部クラッド層を形成する工程と、該下部クラッド層上に有機材料からなる光導波路コアを形成する工程と、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上に有機材料からなる上部クラッド層を形成する工程とを包含することを特徴とする。
【0039】
本発明による光導波路の製造方法は、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に、各々有機材料からなる下部クラッド層、光導波路コアおよび上部クラッド層が順次形成された光導波路を製造するにあたり、無機基板と下部クラッド層との間に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を設けることにより、有機材料からなる光導波路フィルムの無機基板に対する接着性を向上させると共に、無機基板の種類に関係なく、有機材料を用いて光導波路を同じ条件で製造することを可能にしようというものである。
【0040】
以下、図2を参照しながら、本発明による光導波路の製造方法の代表例について詳しく説明する。この代表例は、図1に示す光導波路の製造方法であるが、本発明による光導波路の製造方法は、この代表例に限定されるものではなく、その構成を適宜変更することができる。なお、図2は、光の伝播方向から見た光導波路を製造する工程の部分断面図である。
【0041】
まず、図2(a)に示すように、シリコン(Si)基板を除く無機基板1上に、CVD法またはスパッタリング法などにより、酸化シリコン(SiO)からなるバッファー層2を形成するか、あるいは、シラノールまたはシルセスキオキサンをアルコールなどの有機溶媒に溶解した溶液をスピンコーティング法などで塗布し、例えば、400〜450℃の温度で熱処理することにより、スピンオングラス(SOG)からなるバッファー層2を形成する。
【0042】
次いで、バッファー層2を、好ましくは、シランカップリング剤または機能性シラン化合物で表面処理した後、表面処理されたバッファー層2上に、クラッド層用樹脂組成物を滴下し、スピンコーティング法などで製膜する。そして、この被膜を硬化して、図2(b)に示すように、有機材料からなる下部クラッド層3を形成する。
【0043】
ここで、「シランカップリング剤または機能性シラン化合物で表面処理」するとは、シランカップリング剤および機能性シラン化合物の少なくとも1種で表面処理することを意味する。シランカップリング剤および機能性シラン化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社の市販品を利用することができる。
【0044】
次いで、下部クラッド層3上に、コア層用樹脂組成物を滴下し、スピンコーティング法などで製膜する。そして、この被膜を硬化して、図2(c)に示すように、有機材料からなるコア層6を形成する。
【0045】
次いで、図2(d)に示すように、コア層6上に、CVD法やスパッタリング法などにより、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO)、酸化インジウムスズ(ITO)などからなるマスク層7を形成する。そして、マスク層7上にフォトレジストを塗布し、露光、現像などを行って、光導波路形状にパターニングしたレジスト層(図示せず)を形成した後、レジスト層で保護されていないマスク層7を、例えば、反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法またはウェットエッチング法により、コア層6が露出するまでエッチングして、マスク層7を光導波路形状にパターニングする。さらに、アセトンなどの剥離液を用いて、パターニングしたレジスト層を除去して、図2(e)に示すように、光導波路形状にパターニングしたマスク層8を形成する。
【0046】
次いで、パターニングしたマスク層8で保護されていないコア層6を、例えば、反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法により、下部クラッド層3が露出するまでエッチングして、図2(f)に示すように、光導波路コア4を形成する。
【0047】
なお、図2(f)において、光導波路コア4は、1個しか形成されていないが、光導波路の用途などに応じて、2個またはそれ以上形成されていてもよい。また、光導波路コア4は、紙面に対して垂直方向に伸びる直線状に形成されているが、光導波路の用途などに応じて、所定のパターン状に形成されていてもよい。
【0048】
次いで、塩酸(HCl)などを用いたウェットエッチング法により、パターニングしたマスク層8を除去した後、光導波路コア4を埋め込むように、下部クラッド層3および光導波路コア4上に、クラッド層用樹脂組成物を滴下し、スピンコーティング法などで製膜する。そして、この被膜を硬化して、図2(g)に示すように、有機材料からなる上部クラッド層5を形成する。
【0049】
かくして、シリコン(Si)基板を除く無機基板1上に、酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層2を介して、各々有機材料からなる下部クラッド層3、光導波路コア4および上部クラッド層5が順次形成された光導波路が得られる。なお、上記では、1個の光導波路を製造する方法について説明したが、無機基板上に複数個の光導波路を同時に製造することもできる。この場合、上部クラッド層を形成した段階で、例えば、ダイシングすることにより、個々のチップに切り出して、複数個の光導波路を得ればよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
まず、光導波路を製造する際に用いたクラッド層用ポリアミド酸組成物およびコア層用ポリアミド酸組成物の調製について説明する。
【0052】
≪クラッド層用ポリアミド酸組成物の調製≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノ−ベンゼン1.80g(10.0ミリモル)、下記式(1):
【0053】
【化1】

【0054】
で示される4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)(すなわち、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼンの酸二無水物)5.82g(10.0ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド12.4gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、固形分濃度38.0質量%のクラッド層用ポリアミド酸組成物を得た。
【0055】
≪コア層用ポリアミド酸組成物の調製≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン1.97g(10.0ミリモル)、上記式(1)で示される4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)(すなわち、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼンの酸二無水物)5.82g(10.0ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド15.8gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、固形分濃度33.0質量%のコア層用ポリアミド酸組成物を得た。
【0056】
次に、光導波路を実際に製造した実施例および比較例について説明する。
【0057】
≪光導波路の製造≫
<実施例1>
本実施例では、図1と同様に示されるような、シリコン(Si)基板を除く無機基板1としてのガリウムヒ素(GaAs)基板上に、酸化シリコン(SiO)からなるバッファー層2を介して、各々フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる下部クラッド層3、光導波路コア4および上部クラッド層5が順次形成された光導波路を製造した。以下では、参考として、図2を参照しながら、この光導波路の製造方法について詳しく説明する。なお、図1および図2は、本実施例で得られた光導波路と同様の構成を模式的に示す部分断面図であり、その各部の形状や寸法などは、本実施例で得られた光導波路の各部の実際の形状や寸法を厳密に表現したものではない。
【0058】
まず、図2(a)に示すように、シリコン(Si)基板を除く無機基板1として、直径2インチ(約5cm)、厚さ0.35mmのガリウムヒ素(GaAs)基板上に、CVD法により、酸化シリコン(SiO)からなる厚さ1μmのバッファー層2を形成した。
【0059】
次いで、バッファー層2を機能性シラン化合物であるテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBE−04」)で表面処理した後、表面処理されたバッファー層2上に、クラッド層用ポリアミド酸組成物を滴下し、焼成後の膜厚が8μmとなるようにスピンコーティング法で製膜した。そして、この被膜を、焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(窒素ガス流量40L/min)、300℃で1時間焼成して、図2(b)に示すように、全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる下部クラッド層3を形成した。プリズムカプラ(サイロン・テクノロジ・インコーポレイテッド製、商品名「SPA−4000」)を用いて、下部クラッド層3の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.5355であった。
【0060】
次いで、下部クラッド層3上に、コア層用ポリアミド酸組成物を滴下し、焼成後の膜厚が5μmとなるようにスピンコーティング法で製膜した。そして、この被膜を、焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(窒素ガス流量40L/min)、300℃で1時間焼成して、図2(c)に示すように、部分フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなるコア層6を形成した。プリズムカプラ(サイロン・テクノロジ・インコーポレイテッド製、商品名「SPA−4000」)を用いて、コア層6の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.5418であった。
【0061】
次いで、図2(d)に示すように、コア層6上に、スパッタリング法により、酸化亜鉛(ZnO)からなる厚さ250nmのマスク層7を形成した。そして、マスク層7上にフォトレジスト(AZ Electronic Materials製、商品名「AZ3100」)を塗布し、露光、現像などを行って、光導波路形状にパターニングしたレジスト層(図示せず)を形成した後、レジスト層で保護されていないマスク層7を、バッファードフッ酸(LL−BHF)を用いたウェットエッチング法により、コア層6が露出するまでエッチングして、マスク層7を光導波路形状にパターニングした。さらに、アセトンを用いて、パターニングしたレジスト層を除去して、図2(e)に示すように、光導波路形状にパターニングした幅5μmのマスク層8を形成した。
【0062】
次いで、パターニングしたマスク層8で保護されていないコア層6を、テトラフルオロメタン(CF)ガスを用いた反応性イオンエッチング法により、下部クラッド層3が露出するまでエッチングして、図2(f)に示すように、光導波路コア4を形成した。このとき、光導波路コア4の下端部にクラックが入らず、光導波路コア4の側面部が粗面化しなかった。
【0063】
次いで、塩酸(HCl)を用いたウェットエッチング法により、パターニングしたマスク層8を除去した後、光導波路コア4を埋め込むように、下部クラッド層3および光導波路コア4上に、クラッド層用ポリアミド酸組成物を滴下し、焼成後の膜厚が8μmとなるように、スピンコーティング法で製膜した。そして、この被膜を、焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(窒素ガス流量40L/min)、300℃で1時間焼成して、図2(g)に示すように、全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる上部クラッド層5を形成した。プリズムカプラ(サイロン・テクノロジ・インコーポレイテッド製、商品名「SPA−4000」)を用いて、上部クラッド層5の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.5355であった。
【0064】
かくして、ガリウムヒ素(GaAs)基板上に、酸化シリコン(SiO)からなるバッファー層を介して、全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる厚さ8μmの下部クラッド層、部分フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる5μm角の光導波路コア、および、全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる厚さ8μm(光導波路コアの上側は厚さ3μm)の上部クラッド層が順次形成された光導波路が得られた。
【0065】
そして、得られた光導波路を、ダイシングソー(株式会社ディスコ製、商品名「DAD321」)を用いて、チップ状に切り出して、導波損失を測定したところ、波長0.98μmでの損失値は0.7dB/cm、波長1.31μmでの損失値は0.2dB/cmであり、いずれも非常に小さい値であった。
【0066】
また、得られた光導波路は、ガリウムヒ素(GaAs)基板と、全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる下部クラッド層との間に、酸化シリコン(SiO)からなるバッファー層を設けているので、下部クラッド層を構成する全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムのガリウムヒ素(GaAs)基板に対する接着性が向上しており、製造工程の途中やダイシングの際に、光導波路フィルムがバッファー層から剥離することはなかった。
【0067】
<比較例1>
実施例1において、ガリウムヒ素(GaAs)基板上にバッファー層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ガリウムヒ素(GaAs)基板上にポリイミド系樹脂からなる光導波路フィルムが直接形成された光導波路を製造しようと試みたが、製造工程の途中で、ガリウムヒ素(GaAs)基板上に直接形成した全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる下部クラッド層が容易に剥離してしまい、光導波路を得ることはできなかった。
【0068】
≪評価≫
実施例1の光導波路は、ガリウムヒ素(GaAs)基板と光導波路の下部クラッド層との間に、酸化シリコン(SiO)からなるバッファー層が設けられているので、ガリウムヒ素(GaAs)基板と下部クラッド層を構成する全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムとの接着性に優れた信頼性の高い光導波路であった。
【0069】
これに対し、比較例1では、ガリウムヒ素(GaAs)基板上にポリイミド系樹脂からなる光導波路フィルムが直接形成された光導波路を製造しようと試みたが、下部クラッド層を構成する全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムのガリウムヒ素(GaAs)基板に対する接着性が劣るので、製造工程の途中で、ガリウムヒ素(GaAs)基板上に直接形成した全フッ素化ポリイミド系樹脂フィルムからなる下部クラッド層が容易に剥離してしまい、光導波路を得ることはできなかった。
【0070】
かくして、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成するにあたり、無機基板と光導波路の下部クラッド層との間に、酸化シリコン(SiO)または同様の組成を有するスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を設ければ、有機材料からなる光導波路フィルムの無機基板に対する接着性が向上すると共に、無機基板の種類に関係なく、無機基板上に有機材料を用いて光導波路を同じ条件で製造できることが可能であることがわかる。また、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に有機材料を用いて光導波路を形成しているので、製造が容易で量産性に優れて低コスト化も期待できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の光導波路は、光導波路フィルムの無機基板に対する接着性に優れると共に、無機基板の種類に関係なく、有機材料を用いて同じ条件で製造することが可能であるので、信頼性の高い光導波路を用途などに応じて異なる種類の無機基板上に組み込んだ様々な光集積回路を製造することを可能にする。本発明の製造方法は、無機基板上にバッファー層を介して有機材料からなる光導波路フィルムを形成するだけであるので、信頼性の高い光導波路を簡便に製造することができる。それゆえ、本発明は、光導波路や光集積回路の適用が期待される様々な光学関連分野や電子機器分野で多大の貢献をなすものである。
【符号の説明】
【0072】
1:シリコン(Si)基板を除く無機基板、2:バッファー層、3:下部クラッド層、4:光導波路コア、5:上部クラッド層、6:コア層、7:マスク層、8:パターニングしたマスク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)基板を除く無機基板と、該無機基板上に形成された有機材料からなる下部クラッド層と、該下部クラッド層上に形成された有機材料からなる光導波路コアと、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上に形成された有機材料からなる上部クラッド層とを有する光導波路であって、該無機基板と該下部クラッド層との間に酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層が設けられていることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記無機基板が閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造またはコランダム構造を有する無機基板である請求項1記載の光導波路。
【請求項3】
前記無機基板がガリウムヒ素(GaAs)基板である請求項1または2記載の光導波路。
【請求項4】
前記有機材料がポリイミド系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の光導波路。
【請求項5】
請求項1記載の光導波路を製造する方法であって、シリコン(Si)基板を除く無機基板上に酸化シリコン(SiO)またはスピンオングラス(SOG)からなるバッファー層を形成する工程と、該バッファー層上に有機材料からなる下部クラッド層を形成する工程と、該下部クラッド層上に有機材料からなる光導波路コアを形成する工程と、該光導波路コアを埋め込むように該下部クラッド層および該光導波路コア上に有機材料からなる上部クラッド層を形成する工程とを包含することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記光導波路コアが、前記下部クラッド層上に有機材料からなるコア層を形成し、該コア層上にマスク層を形成し、該マスク層を光導波路形状にパターニングした後、該パターニングしたマスク層で保護されていない該コア層を前記下部クラッド層が露出するまでエッチングし、該パターニングしたマスク層を除去することにより形成される請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記バッファー層上に前記下部クラッド層を形成する前に、前記バッファー層がシランカップリング剤または機能性シラン化合物で表面処理される請求項5または6記載の製造方法。
【請求項8】
前記無機基板が閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造またはコランダム構造を有する無機基板である請求項5〜7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記無機基板がガリウムヒ素(GaAs)基板である請求項5〜8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記有機材料がポリイミド系樹脂である請求項5〜9のいずれか1項記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−256430(P2010−256430A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103305(P2009−103305)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】