説明

光導波路の製造方法

【課題】感光性を有する樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を現像液で除去するフォトリソグラフィーにより光導波路のパターンを形成する光導波路の製造方法において、十分な光伝送能力及び十分に高いパターン形成精度を提供する。
【解決手段】下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層の表面上にコア材料からなるコア層を形成する工程と、前記コア層の表面上に上部クラッド層を形成する工程と、前記上部クラッド層の所定箇所に光照射した後に、現像液により光照射されていない箇所を除去して前記上部クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層及び前記下部クラッド層のパターンを形成して、下部クラッドと、前記下部クラッド上に形成されたコアと、前記コア上に形成された上部クラッドとを備える光導波路を得る工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に関し、より詳しくは、可撓性を有する光配線基板や光電気複合配線基板等において好適に用いることができる光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化や高機能化が急速に進んでいることに伴い、電子機器における伝送情報の大容量化や高速化が要求されており、電子機器内部の高集積化や信号の高周波化が進行している。一方、このように電子回路の高集積化や電気信号の高周波化が進行することにより、電気信号のクロストークやノイズが発生すること、特性インピーダンスが調整困難となること、高周波領域において損失が発生することといった問題が生じるが、これらの問題を電気信号による情報伝送に関する技術により改善することが困難であった。そこで、これらの問題を解決し得る情報伝送の手法として、光導波路を用いた光による情報伝送が検討されている。
【0003】
また、携帯用機器や小型機器といった電子機器においては、各種部品が密に配置されているので、部品間の狭い隙間を縫うようにして配線しなければならない。そのため、配線基板としては可撓性を有する配線基板が広く用いられており、このような可撓性を有する光配線基板や光電気複合配線基板等において好適に用いることができる光導波路が要求されている。
【0004】
このような光導波路として、例えば、国際公開第2008/007673号(特許文献1)には、光導波路の材料として特定のシロキサン変性ポリイミド樹脂を用いた光導波路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/007673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような光導波路においては、光導波路のパターンを形成するためにコア材料として感光性を有するものを用いる必要があった。そして、このような場合、不飽和結合を有するモノマーやその硬化物といった光硬化成分とコア材料中のシロキサン変性ポリイミド樹脂とが相分離構造を取ってしまい、形成されるコアの透明性が悪くなり、光導波路の光伝送能力が不十分となるという点で特許文献1に記載のような光導波路は未だ必ずしも十分なものではなかった。
【0007】
これらの問題を解決するために、例えば、未公開の先行出願である特願2009−0336862号には、感光性を有する樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を現像液で除去するフォトリソグラフィーにより光導波路のパターンを形成する光導波路の製造方法であって、
前記現像液に対する溶解性を有するコア材料からなるコア層を形成する工程と、
前記コア層の表面上に、感光性を有しており且つ光照射前において前記現像液に対する溶解性を有するクラッド材料からなるクラッド層を形成する工程と、
前記クラッド層の所定箇所に光照射した後に、前記現像液により光照射されていない箇所を除去して前記クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされたクラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層のパターンを形成して、コアと前記コア上に形成された上部クラッドとを備える光導波路を得る工程と、
を含む光導波路の製造方法が提案されている。そして、この提案によれば、十分な光伝送能力を有する光導波路を製造することが可能となることが記載されている。
【0008】
しかしながら、このような方法によれば、十分な光伝送能力を有する光導波路を製造することはできるものの、コア層のパターンを形成する際に生ずるサイドエッチング(エッチングの際にコア層に垂直な方向だけでなく、コア層の平面方向にもエッチングが進行する現象のことをいう)やアンダーカット(レジストマスクの下にエッチング液が回り込みエッチングが進行する現象のことをいう)の影響を受けやすくなるために、パターン形成されるテーパー形状のコアのテーパー角度(コアと下部クラッドとの境界面に対するコア側面の斜面の傾斜角度のことをいう)が小さくなり、光導波路のパターン形成精度を高くすることが困難な傾向にあることが分かった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な光伝送能力及び十分に高いパターン形成精度を有する光導波路を製造することが可能な光導波路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下部クラッド層の表面上にコア層及び上部クラッド層を形成し、その後、前記上部クラッド層の所定箇所に光照射した後に、前記現像液により光照射されていない箇所を除去して前記上記クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層及び前記下部クラッド層のパターンを形成することにより、コア材料として感光性を有さないものを用いた場合においてもコア層のパターンを形成することが可能となり、以下説明するように、十分な光伝送能力及び十分に高いパターン形成精度を有する光導波路を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の光導波路の製造方法は、感光性を有する樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を現像液で除去するフォトリソグラフィーにより光導波路のパターンを形成する光導波路の製造方法であって、
前記現像液に対する溶解性を有する第1のクラッド材料からなる下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層の表面上に、前記現像液に対する溶解性を有するコア材料からなるコア層を形成する工程と、
前記コア層の表面上に、感光性を有しており且つ光照射前において前記現像液に対する溶解性を有する第2のクラッド材料からなる上部クラッド層を形成する工程と、
前記上部クラッド層の所定箇所に光照射した後に、前記現像液により光照射されていない箇所を除去して前記上部クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層及び前記下部クラッド層のパターンを形成して、下部クラッドと、前記下部クラッド上に形成されたコアと、前記コア上に形成された上部クラッドとを備える光導波路を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0012】
また、本発明の光導波路の製造方法においては、前記第2のクラッド材料がシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体、不飽和結合を有するモノマー及び光重合開始剤を含有するものであるが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の光導波路の製造方法においては、前記コア材料がシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体を含有するものであることが好ましい。また、前記コア材料は光重合開始剤を実質的に含有しないものであることが好ましい。さらに、前記コア材料は不飽和結合を有するモノマーを含有するものであってもよいが、このような場合には、前記モノマーの含有量が前記シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して1〜30質量部の範囲内であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の光導波路の製造方法においては、前記現像液が炭酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の光導波路の製造方法においては、前記上部クラッド層の厚みが1〜40μmであり、且つ前記下部クラッド層の厚みが5〜40μmであることが好ましい。
【0016】
なお、本発明の光導波路の製造方法によれば、十分な光伝送能力及び十分に高いパターン形成精度を有する光導波路を製造することが可能となる。すなわち、本発明の光導波路の製造方法によれば、コア材料として感光性を有さないものを用いた場合においてもコア層のパターンを形成することが可能となるため、本発明に用いるコア材料は、感光性を付与するための不飽和結合を有するモノマーや光重合開始剤を含有する必要がない。そして、光硬化される前記不飽和結合を有するモノマーや前記光重合開始剤による重合物等とコア材料中のシロキサン変性ポリイミド樹脂とが相分離構造を取ることによってコアの透明性は悪化するが、本発明に用いるコア材料においては、前記不飽和結合を有するモノマーや前記光重合開始剤の含有量を従来の製造方法におけるコア材料と比較して飛躍的に少なくすることができる。そのため、本発明の光導波路の製造方法により得られる光導波路のコアは、透明性に優れ、十分な光伝送能力を有するものとなる。
【0017】
また、本発明の光導波路の製造方法においては、パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして現像液によりコア層のパターンだけでなく下部クラッド層のパターンを形成しており、コア層のパターンのみを形成する場合と比較して余剰のエッチング液が少なくなることから、レジストマスクの下に余剰のエッチング液が回り込むことにより生ずるアンダーカットを抑制することができる。また、コア層のパターンのみを形成する場合にはコアと下部クラッドとの境界面近傍はエッチングしにくい箇所であるためにコアのテーパー角度が小さくなる傾向にあるのに対し、本発明のようにコア層のパターンだけでなく下部クラッド層のパターンを形成する場合にはエッチングしにくくなる箇所が下部クラッドと基板との境界面近傍となるためにパターン形成がされるコアのテーパー角度への影響はない。このように本発明の光導波路の製造方法によれば、パターン形成されるテーパー形状のコアのテーパー角度を大きくできるため、本発明の光導波路の製造方法により得られる光導波路のコアは、十分に高いパターン形成精度を有するものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十分な光伝送能力及び十分に高いパターン形成精度を有する光導波路を製造することが可能な光導波路の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】基板上に下部クラッド層を形成した状態を示す模式図である。
【図2】図1に示す下部クラッド層上にコア層を形成した状態を示す模式図である。
【図3】図2に示すコア層上に上部クラッド層を形成した状態を示す模式図である。
【図4】図3に示す上部クラッド層の所定箇所に紫外線を光照射した状態を示す模式図である。
【図5】下部クラッドと、下部クラッドに形成されたコアと、コア上に形成された上部クラッドとを備える光導波路を示す模式図である。
【図6】図5に示す光導波路におけるコア近傍を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
本発明の光導波路の製造方法は、感光性を有する樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を現像液で除去するフォトリソグラフィーにより光導波路のパターンを形成する光導波路の製造方法であって、
前記現像液に対する溶解性を有する第1のクラッド材料からなる下部クラッド層を形成する工程(第1の工程)と、
前記下部クラッド層の表面上に、前記現像液に対する溶解性を有するコア材料からなるコア層を形成する工程(第2の工程)と、
前記コア層の表面上に、感光性を有しており且つ光照射前において前記現像液に対する溶解性を有する第2のクラッド材料からなる上部クラッド層を形成する工程(第3の工程)と、
前記上部クラッド層の所定箇所に光照射した後に、前記現像液により光照射されていない箇所を除去して前記上部クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層及び前記下部クラッド層のパターンを形成して、下部クラッドと、前記下部クラッド上に形成されたコアと、前記コア上に形成された上部クラッドとを備える光導波路を得る工程(第4の工程)と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0022】
先ず、本発明の光導波路の製造方法に用いる第1及び第2のクラッド材料並びにコア材料について説明する。
【0023】
本発明に用いる第2のクラッド材料は、感光性を有し、且つ光照射前において光導波路のパターンを形成する際に用いる現像液に対する溶解性を有するものである。なお、感光性とは、特定の光が照射されることにより反応を開始して光硬化する性質のことをいう。そして、前記第2のクラッド材料は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体、不飽和結合を有するモノマー及び光重合開始剤を含有するものであることが好ましい。
【0024】
本発明に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂は、下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を有するシロキサン変性ポリイミド樹脂であることが好ましい。また、本発明に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂の前駆体は、加熱処理又は脱水処理を施すことにより脱水閉環反応せしめることによって下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を有するシロキサン変性ポリイミド樹脂となる前駆体であることが好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
前記一般式(1)及び(2)において、Ar及びArはそれぞれ下記一般式(3)で表される4価の芳香族基を示し、Arは下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される2価の芳香族基を示す。また、Rは炭素数2〜6の2価の炭化水素基を示すが、好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。さらに、Rは炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示すが、好ましくはメチル基又はフェニル基である。また、mは1〜50(好ましくは5〜30)の整数を示す。mが1未満では低弾性率化(屈曲特性)が不十分であり、他方、50を超えるとテトラカルボン酸二無水物との反応性が低下し、重合物の分子量が低下するため、屈曲特性が低下する。ここで、一つの繰り返し単位中に複数のR、Rが存在する場合には、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。また、一分子中に複数の繰り返し単位が存在する場合、Ar、Ar、Ar、R〜Rは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
前記一般式(3)、(4)及び(5)において、X及びYは、それぞれ単結合、又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO及びCONHからなる群から選択される2価の基を示すが、Xは単結合、又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、COからなる群から選択される2価の基であることが好ましい。また、Yは単結合又はO、CO及びSOからなる群から選択される2価の基であることが好ましい。また、2価の炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキレン基(アルキリデン基を含む)、フェニレン基が挙げられる。さらに、Rは炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示すが、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基、ビニル基又はフェニル基であることがより好ましい。また、前記一般式(4)及び(5)において、nは0〜4の整数を示すが、nは0〜2であることが好ましく、0であることがより好ましい。上記のように前記一般式(1)においては、Arは前記一般式(4)で表される2価の芳香族基であっても、前記一般式(5)で表される2価の芳香族基であってもよく、一分子中又は複数の分子中にその両者を有してもよい。
【0032】
本発明に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂の製造方法は特に限定されないが、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸類とジアミンとの反応によって合成することができる。
【0033】
前記Ar及びArは前記一般式(3)で表される4価の基であるが、ポリイミド樹脂は通常、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸類とジアミンとの反応によって合成されるので、Ar及びArは芳香族テトラカルボン酸類の残基ということができる。また、前記一般式(1)において、Arで表される2価の芳香族基は、ジアミンの残基ということができる。さらに、前記一般式(2)で表される位置にRが形成されるシロキサン構造を含む2価の基は、ジアミンの残基ということができる。
【0034】
芳香族テトラカルボン酸類としては、合成によりAr又はArが形成される芳香族テトラカルボン酸類を用いることができる。このような芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、2,2’,3,3’−、2,3,3’,4’−又は3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’’,4,4’’−、2,3,3’’,4’’−又は2,2’’,3,3’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−又は3.4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物が挙げられる。
【0035】
本発明においては、合成によりAr又はArが形成される芳香族テトラカルボン酸類と共に、他のテトラカルボン酸類を使用することもできる。他のテトラカルボン酸類を使用する場合、その使用量は、使用する芳香族テトラカルボン酸類に対して50モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましい。
【0036】
このような他のテトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−又は2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−(又は1,4,5,8−)テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−(又は2,3,6,7−)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9−、3,4,9,10−、4,5,10,11−又は5,6,11,12−ペリレン−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、1,2,7,8−、1,2,6,7−又は1,2,9,10−フェナンスレン−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0037】
ジアミンとしては、合成により前記一般式(5)又は前記一般式(4)で表されるArが形成されるジアミン、並びに合成により前記一般式(2)で表される位置にRが形成されるシロキサン構造を含むジアミンを用いることができる。
【0038】
合成により前記一般式(5)で表されるArが形成されるジアミンとしては、例えば、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'−(4−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'−(3−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンが挙げられる。
【0039】
合成により前記一般式(4)で表されるArが形成されるジアミンとしては、例えば、4,4'−メチレンジ−o−トルイジン、4,4'−メチレンジ−2,6−キシリジン、4,4'−メチレン−2,6−ジエチルアニリン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエタン、3,3'−ジアミノジフェニルエタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシベンジジン、4,4''−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3''−ジアミノ−p−テルフェニル、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェノキシ)−9H−フルオレンが挙げられる。これらの中でも、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(DVDABP)、9,9−ビス(4-アミノフェノキシ)−9H−フルオレン(BAFL)を用いることが好ましい。
【0040】
合成により前記一般式(2)で表される位置にRが形成されるシロキサン構造を含むジアミンとしては、例えば、ω,ω'−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω'−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω'−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω'−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、ω,ω'−ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。このようなジアミンは市販されており、例えば、商品名F-8010(信越化学工業社製)が挙げられる。
【0041】
本発明においては、前記ジアミンと共に、他の芳香族ジアミンを使用することもできる。他の芳香族ジアミンを使用する場合、その使用量は、使用するジアミンに対して50モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましい。
【0042】
このような他の芳香族ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、ピペラジンが挙げられる。
【0043】
本発明に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂は、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を有するものであるが、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の全繰り返し単位に対するモル比qは0.01〜0.95であることが好ましく、0.1〜0.6であることがより好ましい。また、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の全繰り返し単位に対するモル比pは0.05〜0.99であることが好ましく、0.4〜0.9であることがより好ましい。このような繰り返し単位のモル比は、シロキサン変性ポリイミド樹脂が前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のみからなる場合であっても、他の繰り返し単位を有する場合であっても上記範囲内にあることが好ましい。なお、他の繰り返し単位を有する場合は、p+qの値は0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、p/(p+q)の値は0.4〜0.9の範囲内であることが好ましい。
【0044】
本発明に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂においては、その成形物の弾性率が0.2〜3.0GPaの範囲内であることが好ましく、0.3〜3.0GPaの範囲内であることがより好ましい。また、その成形物のガラス転移点(Tg)は80℃以上であることが好ましく、100〜300℃の範囲内であることがより好ましい。
【0045】
また、本発明に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂は、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を有するシロキサン変性ポリイミド樹脂となる前駆体を加熱処理又は脱水処理を施すことにより脱水閉環反応せしめることによって得られるものであることが好ましい。このような前駆体としては、下記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を有するシロキサン変性ポリアミック酸樹脂が挙げられる。
【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
前記一般式(6)及び(7)において、Ar、Ar、Ar、R、R、p及びqは、前記一般式(1)及び(2)におけるAr、Ar、Ar、R、R、p及びqと同様の意味を示す。前記一般式(6)及び(7)においては、シロキサン変性ポリアミック酸樹脂に光重合性を付与するという観点から、前記一般式(6)中のAr中のR又は前記一般式(7)中のRの一部がアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基としては、CH=CH−R−で表される基が挙げられる。Rは単結合、炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示すが、反応性の観点から、単結合であることがより好ましい。
【0049】
前記第2のクラッド材料に用いる不飽和結合を有するモノマーは特に限定されないが、反応性の観点からアクリレートモノマーであることが好ましい。このようなアクリレートモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、エトキシアクリレート、メトキシアクリレート、N,N'−ジメチルアミノエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタジエンエトキシアクリレート等のモノアクリレート;ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、ビス(アクリロキシエトキシ)テトラブロモビスフェノールA、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等の多官能アクリレートが挙げられる。これらのアクリレートモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
前記第2のクラッド材料に用いる前記不飽和結合を有するモノマーの含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、1〜55質量部の範囲となる量であることが好ましく、10〜50質量部の範囲となる量であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、上部クラッド層の感光性が不十分となることにより光導波路のパターンを形成しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、光硬化による収縮が大きくなるためにフィルムカールが大きくなる傾向にある。
【0051】
前記第2のクラッド材料に用いる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、チオキサソン、2−クロロチオキサソン、2−メチルチオキサソン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)](チバ・ジャパン社製の「IRGACURE OXE−01」)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−[o−アセチルオキシム](チバ・ジャパン社製の「IRGACURE OXE−02」)が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明に用いる第2のクラッド材料における前記光重合開始剤の含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、1〜20質量部の範囲となる量であることが好ましく、1〜10質量部の範囲となる量であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、上部クラッド層の感光性が不十分となることにより光導波路のパターンを形成しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、上部クラッド層の光透過性が悪化するために上部クラッド層底部に光が届きにくくなり、底部の光硬化が不十分となる傾向にある。
【0052】
本発明に用いる第2のクラッド材料は、前記シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体、前記不飽和結合を有するモノマー及び前記光重合開始剤の他に、増感剤を含有していてもよい。このような増感剤としてはベンゾフェノン等の種々の芳香族化合物が挙げられる。また、このような増感剤を使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲となる量であることが好ましく、0.05〜0.5質量部の範囲となる量であることがより好ましい。
【0053】
本発明に用いる第2のクラッド材料は、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の樹脂を含有していてもよい。エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を複数有するものであれば特に限定されるものではなく、市販されている液体エポキシ樹脂や固体エポキシ樹脂を適宜使用することができる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このようなエポキシ樹脂を使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、40質量部以下となる量であることが好ましく、20質量部以下となる量であることがより好ましい。
【0054】
本発明に用いる第2のクラッド材料には、必要に応じて、光伝送能力を阻害しない範囲でシリカ等の無機フィラーを含有していてもよい。
【0055】
本発明に用いるコア材料は、光導波路のパターンを形成する際に用いる現像液に対する溶解性を有するものである。そして、前記コア材料は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体を含有するものであることが好ましい。前記コア材料に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体としては、前記第2のクラッド材料に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体と同様のものを使用することができる。一方、本発明においてはコア材料に感光性が要求されないことから、前記コア材料は光重合開始剤を実質的に含有しないものであることが好ましい。なお、コア材料が光重合開始剤を実質的に含有しないとは、コア材料中に光重合開始剤を添加しないことをいい、不純物としては含有していてもよいが、その含有量はシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して0.01質量部以下であることをいう。
【0056】
本発明に用いるコア材料は、不飽和結合を有するモノマーを含有していてもよい。このような不飽和結合を有するモノマーとしては、前記第2のクラッド材料に用いる不飽和結合を有するモノマーと同様のものを使用することができる。また、このような不飽和結合を有するモノマーを使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、1〜30質量部の範囲となる量であることが好ましく、3〜10質量部の範囲となる量であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、現像時にコアを溶解させるのに必要な時間が長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる光導波路における光伝送能力が不足する傾向にある。
【0057】
本発明に用いるコア材料は、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の樹脂を含有していてもよい。前記エポキシ樹脂としては、前記第2のクラッド材料に用いるエポキシ樹脂と同様のものを使用することができる。また、このようなエポキシ樹脂を使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、40質量部以下となる量であることが好ましく、20質量部以下となる量であることがより好ましい。
【0058】
本発明に用いるコア材料は、必要に応じて、光伝送能力を阻害しない範囲で無機フィラーを含有していてもよい。前記無機フィラーとしては、前記第2のクラッド材料に用いる無機フィラーと同様のものを使用することができる。
【0059】
本発明に用いる第1のクラッド材料は、光導波路のパターンを形成する際に用いる現像液に対する溶解性を有するものである。そして、前記第1のクラッド材料は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体を含有するものであることが好ましい。前記第1のクラッド材料に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体としては、前記第2のクラッド材料に用いるシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体と同様のものを使用することができる。一方、本発明においては第1のクラッド材料に感光性が要求されないことから、前記第1のクラッド材料は光重合開始剤及び増感剤を含有しないものであってもよいが、前記第2のクラッド材料同様に光重合開始剤及び増感剤を含有するものであってもよい。前記光重合開始剤及び前記増感剤としては、前記第2のクラッド材料に用いる光重合開始剤及び増感剤と同様のものをそれぞれ使用することができる。また、前記光重合開始剤を使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、1〜20質量部の範囲となる量であることが好ましく、1〜10質量部の範囲となる量であることがより好ましい。さらに、前記増感剤を使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲となる量であることが好ましく、0.05〜0.5質量部の範囲となる量であることがより好ましい。
【0060】
本発明に用いる第1のクラッド材料は、必要に応じて、不飽和結合を有するモノマーを含有していてもよい。このような不飽和結合を有するモノマーとしては、前記第2のクラッド材料に用いる不飽和結合を有するモノマーと同様のものを使用することができる。また、このような不飽和結合を有するモノマーを使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、1〜55質量部の範囲となる量であることが好ましく、10〜50質量部の範囲となる量であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、現像時に下部クラッドを溶解させるのに必要な時間が長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、硬化による収縮が大きくなるためにフィルムカールが大きくなる傾向にある。
【0061】
本発明に用いる第1のクラッド材料は、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の樹脂を含有していてもよい。前記エポキシ樹脂としては、前記第2のクラッド材料に用いるエポキシ樹脂と同様のものを使用することができる。また、このようなエポキシ樹脂を使用する場合には、その含有量は、シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して、40質量部以下となる量であることが好ましく、20質量部以下となる量であることがより好ましい。
【0062】
本発明に用いる第1のクラッド材料は、必要に応じて、光伝送能力を阻害しない範囲で無機フィラーを含有していてもよい。前記無機フィラーとしては、前記第2のクラッド材料に用いる無機フィラーと同様のものを使用することができる。
【0063】
前記第1及び第2のクラッド材料並びに前記コア材料は、前記第1及び第2のクラッド材料並びに前記コア材料を固形分として含有する溶液として使用してもよい。このように溶液として使用する場合には、各種有機溶剤等により粘度等を調整することができる。このような有機溶剤としては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ペグミア)、乳酸エチルが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このように溶液として使用する場合、前記有機溶剤の使用量は、前記クラッド材料又は前記コア材料の固形分100質量部に対して、10〜400質量部の範囲となる量であることが好ましい。なお、本明細書において、有機溶剤を10質量部以上含み常温で液状を示す樹脂組成物の溶液のことをワニスという。また、前記クラッド材料及び前記コア材料をワニスとして使用する場合には、前記ワニスに、必要に応じて、チクソトロピー材、消泡剤等を添加してもよい。
【0064】
以上、本発明の光導波路の製造方法に用いる第1及び第2のクラッド材料並びにコア材料について説明したが、以下、図面を参照しながら、本発明の光導波路の製造方法について説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
第1の工程においては、前記第1のクラッド材料からなる下部クラッド層を形成する。図1は、基板上に下部クラッドを形成した状態を示す模式図である。図1に示すように、基板1の表面上に下部クラッド層2が形成されている。基板1としては、銅張り積層板、銅箔、SUS箔等の金属板;ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(OPP)フィルム等の樹脂フィルムを使用することができる。また、下部クラッド層2は、前記第1のクラッド材料を用いて基材1の表面上に形成することができる。下部クラッド層2の形成方法としては、(i)原料ワニスをキャストする方法、(ii)フィルム状態のものをラミネートする方法を採用することができる。原料ワニスをキャストする方法を採用する場合においては、乾燥温度を80〜140℃の範囲内とし、乾燥時間を5〜20分間の範囲内とすることが好ましい。また、下部クラッド層2の厚みは通常5〜40μmであり、5〜35μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。下部クラッド層2の厚みが前記下限未満では、得られる光導波路のパターン形成精度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる光導波路の総厚みが厚くなるために、得られる光導波路を用いた光配線基板の可撓性が低下する傾向にある。
【0066】
第2の工程においては、図2に示すように、下部クラッド層2の表面上に、前記コア材料からなるコア層3を形成する。図2は、下部クラッド層の表面上にコア層を形成した状態を示す模式図である。コア層3の形成方法としては、(i)原料ワニスをキャストする方法、(ii)フィルム状態のものをラミネートする方法を採用することができる。原料ワニスをキャストする方法を採用する場合においては、乾燥温度を80〜140℃の範囲内とし、乾燥時間を5〜20分間の範囲内とすることが好ましい。また、コア層3の厚みは10〜80μmの範囲内とすることが好ましく、45〜60μmでの範囲内とすることがより好ましい。コア層3の厚みが前記下限未満では、得られる光導波路における光伝送能力が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コア層のパターンを形成しにくくなる傾向にある。
【0067】
第3の工程においては、コア層3の表面上に、前記第2のクラッド材料からなる上部クラッド層4を形成する。図3は、図2に示すコア層上に上部クラッド層を形成した状態を示す模式図である。上部クラッド層4の形成方法としては、(i)原料ワニスをキャストする方法、(ii)フィルム状態のものをラミネートする方法を採用することができる。原料ワニスをキャストする方法を採用する場合においては、乾燥温度を80〜140℃の範囲内とし、乾燥時間を5〜20分間の範囲内とすることが好ましい。また、上部クラッド層4の厚みは1〜40μmの範囲内とすることが好ましく、1〜25μmの範囲内とすることがより好ましい。上部クラッド層4の厚みが前記下限未満では、現像液に対する耐性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コアのパターン形状が悪化する傾向にある。
【0068】
第4の工程においては、先ず、上部クラッド層4の所定箇所に光照射する。図4は、図3に示すクラッド層の所定箇所に紫外線を光照射した状態を示す模式図である。図4に示すように、フォトマスク5を用いて上部クラッド層4の所定箇所に紫外線を光照射することにより、上部クラッド層4の所定箇所が光により硬化して現像液に対して溶解性を有さない光硬化後のクラッド6となる。このように光照射をする方法としては、図4に示すようにフォトマスク5を用いて所定箇所に光照射する方法を採用してもよいが、所定箇所にレーザー光で直接照射する方法を採用してもよい。照射する光としては紫外線、電子線等が挙げられる。また、紫外線又は電子線を照射する装置としては、例えば、メタルハライド灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、パルス型キセノン灯が挙げられる。紫外線又は電子線の照射条件はランプの種類等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、照射露光量は通常50〜2000mJ/cmの範囲である。
【0069】
第4の工程においては、次に、現像液により前記上部クラッド層の光照射されていない箇所を除去して前記上部クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層及び前記下部クラッド層のパターンを形成する。図5は、下部クラッドと、下部クラッド上に形成されたコアと、コア上に形成された上部クラッドとが形成された光導波路を示す模式図である。第4の工程においては、上部クラッド層4のうち光照射されていない箇所は前記現像液により溶解し、一方、光照射により光硬化後のクラッド6となった箇所については前記現像液により溶解しないために、上部クラッド層4のパターンが形成されて上部クラッド11が形成される。そして、このように上部クラッド11がパターン形成されることによってコア層3の一部が露出し、その露出した箇所が前記現像液に溶解することによりコア層3及び下部クラッド層2のパターンが形成され、コア10及び下部クラッド12が形成される。前記現像液としては、前記コア材料及び前記第1のクラッド材料並びに光照射前の前記第2のクラッド材料を溶解せしめることができるものを使用する必要がある。前記現像液の成分としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ性化合物;トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、前記現像液中のアルカリ性化合物の濃度は0.5〜5質量%の範囲内とすることが好ましい。これらの現像液の中でも、作業性の観点から、炭酸ナトリウム1質量%水溶液を用いることが好ましい。現像の条件としては、上部及び下部クラッド層やコア層の厚み、現像液の種類等に応じて適宜設定することができる。このようにして光導波路のパターンを形成することにより、下部クラッド12と、下部クラッド12上に形成されたコア10と、コア10上に形成された上部クラッド11が形成された光導波路を得ることができる。なお、光導波路のパターンを形成した後に、例えば温度120〜220℃にて1〜120分間の熱処理を施してもよい。
【0070】
本発明の光導波路の製造方法は、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程及び前記第4の工程を含む方法である。本発明の光導波路の製造方法によれば、前述したように、コア材料として感光性を有さないものを用いた場合においてもコア層のパターンを形成することが可能である。そのため、コア材料中におけるコアの透明性が悪化する原因となる成分を減じることが可能となり、十分な光伝送能力を有する光導波路を製造することが可能となる。また、本発明の光導波路の製造方法においては、パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして現像液によりコア層のパターンだけでなく下部クラッド層のパターンを形成している。そのため、本発明の光導波路の製造方法によれば、前述したように、パターン形成されるテーパー形状のコアのテーパー角度を大きくでき、十分に高いパターン形成精度を達成することができる。
【0071】
また、本発明の光導波路の製造方法においては、パターンが形成された光導波路を覆うように、オーバークラッドを形成してもよい。このようなオーバークラッドは、適宜公知の光導波路に使用される材料を用いて形成することができる。また、このようなオーバークラッドの形成方法としては、(i)原料ワニスをキャストする方法、(ii)フィルム状態のものをラミネートする方法を採用することができる。また、オーバークラッドを形成する場合には、その厚みは15〜160μmの範囲とすることが好ましい。また、オーバークラッドを形成するための材料としては、フレキシブルな光導波路を形成するという観点から、前記第1のクラッド材料又は前記第2のクラッド材料を用いることが好ましい。さらに、本発明の光導波路の製造方法により得られる光導波路においては、コア(コア材)の屈折率及び上部クラッド、下部クラッド及びオーバークラッド(クラッド材)の屈折率がそれぞれ1.45〜1.65の範囲内であることが好ましい。また、コア材の屈折率とクラッド材の屈折率との差の絶対値は0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、光導波路におけるコアのパターン形成精度は以下の方法により評価した。また、実施例及び比較例においては、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、不飽和結合を有するモノマー、光重合開始剤、有機溶剤としてそれぞれ以下のものを用いた。
【0073】
(i)光導波路におけるコアのパターン形成精度の評価方法
光導波路におけるコアの断面形状を観察し、コアのエッチングファクターを測定することによりコアのパターン形成精度を評価した。すなわち、先ず、光導波路におけるコアの断面形状を観察した。図6は、図5に示す光導波路におけるコア近傍を示す拡大模式図である。そして、上部クラッドとコアとの境界面におけるコアの端部から下部クラッドとコアとの境界面におけるコアの端部までのコアの幅方向の距離X、並びにコアの厚みYを測定した(図6参照)。なお、測定はそれぞれ2以上の箇所について行い、その平均値を算出した。次いで、得られた測定値から下記関係式(F1):
(エッチングファクター)= Y/X ・・・(F1)
を用いて演算することによりコアのエッチングファクターを算出することができる。なお、コアのエッチングファクターの値が大きいほど、コアのパターン形成精度が高くなる。
【0074】
(ii)実施例及び比較例で用いた材料
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
BAFL:9,9−ビス(4−アミノフェノキシ)−9H−フルオレン
DVDABP:2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル
KF−8010:数平均分子量約850のポリジメチルシロキサンジアミン(信越化学工業社製、商品名「KF−8010」)
DMAc:ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(日本化薬社製、商品名「PET−30」)
OXE−01:光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名「IRGACURE OXE−01」)
OXE−02:光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名「IRGACURE OXE−02」)。
【0075】
(調製例1)
窒素注入管を装備した反応器中で49.8g(0.06mol)のKF−8010、6.99g(0.02mol)のBAFL及び4.73g(0.02mol)のDVDABPを、108gのNMP及び108gのジグライムの混合溶液に溶解させ、反応器を氷冷した。これに31.0g(0.1mol)のODPAを、窒素雰囲気下で20分かけて滴下した。滴下終了後、反応器内の温度を室温(25℃)に戻し、窒素雰囲気下で5時間攪拌することによってシロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液(溶媒:混合溶媒(質量比)NMP/ジグライム=1/1、樹脂濃度:30質量%)の25℃における粘度を、E型粘度計を用いて測定したところ2500cPa・sであった。さらに、得られたシロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液100質量部に対して、10質量部のPET−30を添加してコア材料(A−1)を得た。
【0076】
(調製例2)
シロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液100質量部に対して、45質量部のPET−30及び5質量部のOXE−01を添加した以外は調製例1と同様にしてコア材料(A−2)を得た。
【0077】
(調製例3)
窒素注入管を装備した反応器中で68.0g(0.08mol)のKF−8010及び4.73g(0.02mol)のDVDABPを、168gのNMP及び72gのジグライムの混合溶液に溶解させ、反応器を氷冷した。これに25.8g(0.02mol)のBPDA及び5.88g(0.08mol)のBTDAを、窒素雰囲気下で20分かけて滴下した。滴下終了後、反応器内の温度を室温(25℃)に戻し、窒素雰囲気下で5時間攪拌することによってシロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液(溶媒:混合溶媒(質量比:NMP/ジグライム=7/3)、樹脂濃度:30質量%)の25℃における粘度を、E型粘度計を用いて測定したところ4000cPa・sであった。さらに、得られたシロキサン変性ポリアミック酸樹脂溶液100質量部に対して、45質量部のPET−30及び5質量部のOXE−02を添加してクラッド材料(B−1)を得た。
【0078】
(作製例1)
PET基板の表面上に調製例1で得られたコア材料(A−1)をバーコーターにて塗布し、温度100℃にて10分間乾燥した後、露光機(ハイテック社製、ランプ:高圧水銀灯)を用いてフィルムに1000mJ/cmの紫外線を照射し、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させた後に、PET基板から剥離して厚みが20μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの波長850nmにおける屈折率を屈折率測定装置(メトリコン社製、商品名「モデル2010 プリズムカプラ」)を用いて測定したところ、1.545であった。また、得られたフィルムについて、引張試験機(島津製作所製、商品名「Autogragh AG−500A」)を用いて動的粘弾性測定を行い、得られたフィルムの弾性率及びTgを測定したところ、弾性率は0.35GPaであり、Tgは105℃であった。
【0079】
(作製例2)
コア材料(A−1)に代えてコア材料(A−2)を用いた以外は作製例1と同様にして厚みが20μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの波長850nmにおける屈折率、弾性率及びTgを作製例1と同様の方法で測定したところ、屈折率は1.545であり、弾性率は0.50GPaであり、Tgは115℃であった。
【0080】
(作製例3)
PET基板の表面上に調製例3で得られたクラッド材料(B−1)をバーコーターにて塗布し、温度100℃にて10分間乾燥した後、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させた後に、PET基板から剥離して厚みが20μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの波長850nmにおける屈折率、弾性率及びTgを作製例1と同様の方法で測定したところ、屈折率は1.520であり、弾性率は0.30GPaであり、Tgは130℃であった。
【0081】
(実施例1)
PET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥させて、PET基板上に厚みが20μmの下部クラッド層が形成された下部クラッド層付き基板を得た。
【0082】
次に、他のPET基板の表面上にコア材料(A−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からコア材料(A−1)フィルムを剥離して、そのフィルムを真空ラミネーターで下部クラッド層付き基板の下部クラッド層の表面上に積層してコア層付き基板を得た。その後、他のPET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からクラッド材料(B−1)フィルムを剥離して、そのフィルムを真空ラミネーターでコア層付き基板のコア層の表面上に積層して積層体(パターン形成前の光導波路)を得た。
【0083】
そして、得られた積層体に対し、所定のマスクパターンが形成されているフォトマスクを介し、露光機(ハイテック社製、ランプ:高圧水銀灯)を用いて、600mJ/cmの紫外線を照射し、その後、未露光部を1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、温度30℃にて150〜200秒間の現像を行うことにより除去し、さらに、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させて、パターン形成された光導波路を得た。得られた光導波路におけるコアの厚み及び幅はそれぞれ50μmであり、また、コアのエッチングファクターは1.99であってコアのパターン形成精度が十分に高いものであった。なお、前記コア材料及び前記クラッド材料はシロキサン変性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)であるが、上部クラッド、下部クラッド及びコアをパターニングし配線形成した後に加熱硬化することによりシロキサン変性ポリイミド樹脂となっている。
【0084】
次いで、他のPET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが70μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からクラッド材料(B−1)フィルムを剥離して、そのフィルムをパターン形成された光導波路の表面上に、真空ラミネーターにて積層し、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化してオーバークラッド付き光導波路を得た。また、得られたオーバークラッド付き光導波路における光伝送損失を測定したところ、光伝送損失は0.18dB/cmであり、十分な光伝送能力を有することが確認された。
【0085】
なお、光伝送損失はJIS C 6823の「光ファイバー損失試験方法」に記載のカットバック法に準拠した方法で、以下に示すようにして測定した。すなわち、光源として、波長850nm、照度1mW/cmのVCSELを用い、モードスクランブラーを通して口径φ50μmのGIファイバーにて光導波路に入射させ、出射光は口径φ200μmのPCSファイバーを用いて受光した。そして、検出は赤外線用フォトダイオードを用いて行なった。
【0086】
(比較例1)
PET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥した後、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させて、PET基板上に厚みが20μmの下部クラッド層が形成された下部クラッド層付き基板を得た。なお、前記クラッド材料はシロキサン変性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)であるが、このように加熱硬化することによりシロキサン変性ポリイミド樹脂となっている。
【0087】
次に、他のPET基板の表面上にコア材料(A−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からコア材料(A−1)フィルムを剥離して、そのフィルムを真空ラミネーターで下部クラッド層付き基板の下部クラッド層の表面上に積層してコア層付き基板を得た。その後、他のPET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からクラッド材料(B−1)フィルムを剥離して、そのフィルムを真空ラミネーターでコア層付き基板のコア層の表面上に積層して積層体(パターン形成前の光導波路)を得た。
【0088】
そして、得られた積層体に対し、所定のマスクパターンが形成されているフォトマスクを介し、露光機(ハイテック社製、ランプ:高圧水銀灯)を用いて、600mJ/cmの紫外線を照射し、その後、未露光部を1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、温度30℃にて150〜200秒間の現像を行うことにより除去し、さらに、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させて、パターン形成された光導波路を得た。得られた光導波路におけるコアの厚み及び幅はそれぞれ50μmであり、また、コアのエッチングファクターは0.89であった。なお、前記コア材料及び前記クラッド材料はシロキサン変性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)であるが、上部クラッド及びコアをパターニングし配線形成した後に加熱硬化することによりシロキサン変性ポリイミド樹脂となっている。
【0089】
次いで、他のPET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが70μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からクラッド材料(B−1)フィルムを剥離して、そのフィルムをパターン形成された光導波路の表面上に、真空ラミネーターにて積層し、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化してオーバークラッド付き光導波路を得た。また、得られたオーバークラッド付き光導波路における光伝送損失を実施例1と同様の方法で測定したところ、光伝送損失は0.20dB/cmであることが確認された。
【0090】
(比較例2)
PET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥した後、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させて、PET基板上に厚みが20μmの下部クラッド層を形成された下部クラッド層付き基板を得た。なお、前記クラッド材料はシロキサン変性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)であるが、このように加熱硬化することによりシロキサン変性ポリイミド樹脂となっている。
【0091】
次に、他のPET基板の表面上にコア材料(A−2)をバーコーターにて乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からコア材料(A−2)フィルムを剥離して、そのフィルムを真空ラミネーターで下部クラッド付き基板の下部クラッドの表面上に積層してコア層付き基板を得た。
【0092】
そして、得られたコア層付き基板に対し、所定のマスクパターンを形成されているフォトマスクを介し、露光機(ハイテック社製、ランプ:高圧水銀灯)を用いて、1000mJ/cmの紫外線を照射し、その後、未露光部を1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、温度30℃にて150〜200秒間の現像を行うことにより除去し、さらに、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化させて、パターン形成された光導波路を得た。得られた光導波路におけるコアの厚み及び幅はそれぞれ50μmであり、パターニング性は良好であった。なお、前記コア材料はシロキサン変性ポリイミド樹脂の前駆体(ポリアミック酸)であるが、コアをパターニングし配線形成した後に加熱硬化することによりシロキサン変性ポリイミド樹脂となっている。
【0093】
次いで、他のPET基板の表面上にクラッド材料(B−1)をバーコーターにて乾燥後の厚みが70μmとなるように塗布し、温度100℃にて10分間乾燥してフィルム状にした後に、PET基板からクラッド材料(B−1)フィルムを剥離して、そのフィルムをパターン形成された光導波路の表面上に、真空ラミネーターにて積層し、温度180℃にて1時間の熱処理により硬化してオーバークラッド付き光導波路を得た。また、得られたオーバークラッド付き光導波路における光伝送損失を実施例1と同様の方法で測定したところ、光伝送損失は1.00dB/cmであり、光伝送能力が不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、十分な光伝送能力及び十分に高いパターン形成精度を有する光導波路を製造することが可能な光導波路の製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1…基板、2…下部クラッド層、3…コア層、4…クラッド層、5…フォトマスク、6…光硬化後のクラッド、10…コア、11…上部クラッド、12…下部クラッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性を有する樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を現像液で除去するフォトリソグラフィーにより光導波路のパターンを形成する光導波路の製造方法であって、
前記現像液に対する溶解性を有する第1のクラッド材料からなる下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層の表面上に、前記現像液に対する溶解性を有するコア材料からなるコア層を形成する工程と、
前記コア層の表面上に、感光性を有しており且つ光照射前において前記現像液に対する溶解性を有する第2のクラッド材料からなる上部クラッド層を形成する工程と、
前記上部クラッド層の所定箇所に光照射した後に、前記現像液により光照射されていない箇所を除去して前記上部クラッド層のパターンを形成すると共に、該パターン形成がされた上部クラッド層をレジストマスクとして前記現像液により前記コア層及び前記下部クラッド層のパターンを形成して、下部クラッドと、前記下部クラッド上に形成されたコアと、前記コア上に形成された上部クラッドとを備える光導波路を得る工程と、
を含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記第2のクラッド材料がシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体、不飽和結合を有するモノマー及び光重合開始剤を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記コア材料がシロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体を含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記コア材料が光重合開始剤を実質的に含有しないものであることを特徴とする請求項3に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記コア材料が不飽和結合を有するモノマーを更に含有するものであり、且つ前記モノマーの含有量が前記シロキサン変性ポリイミド樹脂又はその前駆体100質量部に対して1〜30質量部の範囲内であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記現像液が炭酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記上部クラッド層の厚みが1〜40μmであり、且つ前記下部クラッド層の厚みが5〜40μmであることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の光導波路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−75762(P2011−75762A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226231(P2009−226231)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】