説明

光導波路を含む光システム及び光合分波器

【課題】 進行方向の漏れ光を低減させることが可能な光システム及び光合分波器を提供する。
【解決手段】 本発明による光システム(1)は、光をマルチモードで伝搬可能なマルチモード光導波路(2)と、マルチモード光導波路(2)の光の進行方向(2a)における一方の側(2b)に接続された第1の光導波路(4)と、マルチモード光導波路(2)の光の進行方向(2a)における他方の側(2C)に接続された第2の光導波路(6)及び第3の光導波路(8')とを有する。マルチモード光導波路(2)と第3の光導波路(8')との接続角度(α1)が、マルチモード光導波路(2)と第2の光導波路(6)との接続角度(α2)と異なっている。それにより、第1の光導波路(2)から第2の光導波路(4)に光が伝搬されるときの第1の光導波路(2)から第3の光導波路(8)への漏れ光を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を含む光システム及び光合分波器に関し、更に詳細には、マルチモード光導波路を含む光システム及び光合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速・大容量通信のための光波長多重(WDM)通信システムの研究が盛んになっている。かかる光波長多重通信システムに使用される光システムの一例が、光合分波器として特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された光合分波器は、光をマルチモードで伝搬可能なマルチモード光導波路と、マルチモード光導波路の光の進行方向における一方の側に接続された第1の光導波路と、第1の光導波路からマルチモード光導波路に入射された光が伝搬されるように、マルチモード光導波路の光の進行方向における他方の側に接続された第2の光導波路と、マルチモード光導波路の他方の側に接続された第3の光導波路と、光の進行方向に対して交差するようにマルチモード光導波路に設置され、第1の波長の光を透過することにより第1の光導波路と第2の光導波路との間の光の伝搬を可能にし且つ第2の波長の光を反射することにより第2の光導波路と第3の光導波路との間の光の伝搬を可能にする光フィルタとを有している (特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された光合分波器では、第1の光導波路からマルチモード光導波路に入射された第1の波長の光は、光フィルタを透過して、第2の光導波路に伝搬される。詳細には、マルチモード光導波路に入射された光は、多モード光に分解されると共に、分解された光が相互に干渉し、それにより、光の強度分布に対応した干渉縞をマルチモード光導波路内に生じさせる。光がマルチモード光導波路内を伝搬するにつれて、光の強度分布の山の位置は、光の進行方向に対して横方向に移動する。第2の光導波路は、第1の光導波路から入射された光の強度分布の山の位置でマルチモード光導波路に接続されている。その結果、第1の光導波路から入射された光が第2の光導波路に伝搬される。同様に、第2の光導波路からマルチモード光導波路に入射された第2の波長の光は、光フィルタで反射して、第3の光導波路に伝搬される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−6155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の光合分波器において、第1の光導波路から第2の光導波路に光を伝搬させるとき、第3の光導波路における第1の光導波路からの光の強度が完全に零にならないので、第1の光導波路からの光が第3の光導波路に進行方向の漏れ光として僅かに漏れる。この進行方向の漏れ光は、クロストークや雑音の原因となるので、より高性能の光通信を行うために、かかる漏れ光を低減する要望がある。特に、本願の技術分野における現状の第1の光導波路の光強度に対する第3の光導波路の光強度(損失)が−34dBであるので、それを−35dB以下にすることが望まれている。損失に関する現状と要望の差は、数値で1dBであるが、現在の光合分波器の許容基準値が一般に−35〜−38dB、この差は実用的に大きな意義がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、進行方向の漏れ光を低減させることが可能な光システム及び光合分波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、進行方向の漏れ光を低減させることについて鋭意努力した結果、マルチモード光導波路に対する第3の光導波路の接続角度を、マルチモード光導波路に対する第2の光導波路の接続角度と変えることによって、第1の光導波路から第3の光導波路への漏れ光を低減させることができることを見出した。
【0008】
即ち、上記第1の目的を達成するために、本発明による光システムは、光をマルチモードで伝搬可能なマルチモード光導波路と、マルチモード光導波路の光の進行方向における一方の側に接続された第1の光入出力手段と、マルチモード光導波路の光の進行方向における他方の側に接続された第2の光入出力手段及び第3の光入出力手段と、を有し、マルチモード光導波路と第3の光入出力手段との接続角度が、マルチモード光導波路と第2の光入出力手段との接続角度と異なることを特徴としている。
このように構成された本発明の光システムでは、例えば、第1の光入出力手段からマルチモード光導波路に入射された光が第2の光入出力手段に伝搬されるとき、マルチモード光導波路と第3の光入出力手段との接続角度が、マルチモード光導波路と第2の光入出力手段との接続角度と異なっているので、従来の光システムにおいて第1の光入出力手段から第3の光入出力手段に漏れていた漏れ光、即ち、光システムの進行方向の漏れ光を低減させることができるまた、偏波依存性も小さくすることができる。なお、第1〜第3の光入出力手段は、光導波路及び光ファイバーを含む。
本発明において、好ましくは、マルチモード光導波路と第2の光入出力手段との接続角度より大きい。更に好ましくは、マルチモード光導波路と第3の光入出力手段との接続箇所において、第3の光入出力手段の軸線は、進行方向に対して所定の鋭角の接続角度をなしている。
【0009】
本発明の実施形態において、好ましくは、更に、光の進行方向に対して交差するようにマルチモード光導波路に光フィルタを設置するための光フィルタ設置手段を有する。
このように構成された光システムでは、例えば、第1の光入出力手段からマルチモード光導波路に入射された第1の波長の光を透過させる光フィルタを光フィルタ設置手段に設置すると、上述した進行方向の漏れ光を低減させることができる。
この実施形態において、好ましくは、光フィルタ設置手段は、光の進行方向に対して交差してマルチモード光導波路に設けられた溝である。
【0010】
この実施形態において、好ましくは、前記マルチモード光導波路と前記第3の光入出力手段との接続角度は、0.14〜0.32度である。
このように構成された光システムでは、例えば、第1の光入出力手段からマルチモード光導波路に入射された光が第2の光入出力手段に伝搬されるとき、第1の光入出力手段の光強度に対する第3の光入出力手段の光強度を−36dB以下にすることができる。
【0011】
本発明の実施形態において、好ましくは、第1、第2、及び第3の光入出力手段が、シングルモード光導波路である。
また、本発明の実施形態において、好ましくは、第1の光入出力手段が光ファイバで、第2及び第3の光入出力手段がシングルモード光導波路である。
このように構成された光システムでは、光導波路の部分を一体に形成することができるので、進行方向の漏れ光を低減させた光システムを容易に形成することが可能である。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による光合分波器は、上述した光フィルタ設置手段を有する光システム実施形態において、光の進行方向に対して交差するように光フィルタ設置手段に設置された光フィルタを有する。
本発明の実施形態において、好ましくは、光フィルタは、第1の波長の光を透過することにより第1の光入出力手段から第2の光入出力手段への光の伝搬を可能にし、且つ第2の波長の光を反射することにより第2の光入出力手段から第3の光入出力手段への光の伝搬を可能にする。
また、本発明の実施形態において、更に好ましくは、光フィルタは、さらに第3の波長の光を透過することにより第2の光入出力手段から前記第1の光入出力手段への光の伝搬を可能にする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による光システム及び光合分波器により、進行方向の漏れ光を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明による光システムの実施形態を説明する。図1は、本発明による光システムの実施形態である3波WDM用の光合分波器の平面断面図である。図2は、本発明の実施形態である光合分波器の図1の線II−IIにおける断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明による光システムの実施形態である光合分波器1は、光をマルチモードで伝搬可能なマルチモード光導波路2と、マルチモード光導波路2の光の進行方向2aにおける一方の側2bに接続された第1の光入出力手段4と、マルチモード光導波路2の光の進行方向2aにおける他方の側2cに接続された第2の光入出力手段6及び第3の光入出力手段8’と、光の進行方向2aに対して交差するようにマルチモード光導波路2に設置された光フィルタ10とを有している。第2の光入出力手段は、第1の光入出力手段4からマルチモード光導波路2に入射された光が伝搬されるように配置されている。
本実施形態では、第1の光入出力手段4、第2の光入出力手段6、及び第3の光入出力手段8’はそれぞれ、第1の光導波路4、第2の光導波路6、及び第3の光導波路8’で形成され、いずれもシングルモードである。また、マルチモード光導波路2、第1の光導波路4、第2の光導波路6、及び第3の光導波路8’は、一体に形成されている。図2に示すように、マルチモード光導波路2、第1の光導波路4、第2の光導波路6、及び第3の光導波路8’は、一番下に配置された基板12と、その上に積層された下部クラッド14と、その上に積層された後に必要な部分だけ残されたコア16と、このコア16を覆うように積層された上部クラッド18とを有している。基板12は、例えば、Siで形成され、下部クラッド14、コア16、上部クラッド18は、例えば、ポリマーで形成されている。
【0016】
マルチモード光導波路2は、光フィルタ10を取付けるために光の進行方向2aに対して交差して設けられた光フィルター設置手段である溝22を有している。本実施形態では、溝22は、光の進行方向2a、即ち、中心軸線2dに対して垂直に設けられている。この溝22により、マルチモード光導波路2は、一方の側2bに配置されたの第4の光導波路24と、他方の側2cに配置された第5の光導波路26とに分離されている。第4の光導波路24及び第5の光導波路26は、平面断面において矩形である。また、第4の光導波路24及び第5の光導波路26は、マルチモード光導波路2の中心軸線2dに対して対称に形成されている。第4の光導波路24は、光フィルタ10と反対側に端面24aを有し、第5の光導波路26は、光フィルタ10と反対側に端面26aを有している。第4の光導波路24の横方向2eの幅W4は、第5の光導波路26の横方向2eの幅W5と等しく形成されている。また、第4の光導波路24の進行方向の長さL4は、第5の光導波路26の進行方向の長さL5よりも長く形成されている。
【0017】
第1の光導波路4のコア16は、マルチモード光導波路2(第4の光導波路24)の端面24aから進行方向2aに真直ぐに延びている。端面24aにおいて、第1の光導波路4のコア16とマルチモード光導波路2のコア16とは直接結合している。本実施形態では、第1の光導波路4とマルチモード光導波路2とが一体に形成されているので、両者のコア16の間に継ぎ目がない。
【0018】
第2の光導波路6のコア16は、マルチモード光導波路2(第5の光導波路26)の端面26aから延び、中心軸線2dから横方向2eに遠ざかるように湾曲した経路を有している。端面26aにおいて、第2の光導波路6のコア16とマルチモード光導波路2のコア16とは直接結合している。本実施形態では、第2の光導波路6とマルチモード光導波路2とが一体に形成されているので、両者のコア16の間に継ぎ目がない。第2の光導波路6のコア16の端面26aにおける接続角度α2、即ち、中心軸線2dと平行な線A0に対する第2の光導波路6のコア16の軸線A2の鋭角の角度は、ほぼ0度である。
【0019】
第3の光導波路8’のコア16は、マルチモード光導波路2(第5の光導波路26)の端面26aから延び、中心軸線2dから横方向2eに第2の光導波路6と逆向きに遠ざかるように湾曲した経路を有している。端面26aにおいて、第3の光導波路6のコア16とマルチモード光導波路2のコア16とは直接結合している。本実施形態では、第3の光導波路8’とマルチモード光導波路2とが一体に形成されているので、両者のコア16の間に継ぎ目がない。また、端面26aにおいて、第3の光導波路8’のコア16の軸線A3は、中心軸線2dと平行な線A0に対して接続角度α1をなしており、α1は第2の光導波路6の接続角度α2とは異なり、好ましくはα2より大きい角度であって、鋭角をなしている。
【0020】
マルチモード光導波路と第3の光入出力手段との接続角度の調整方法としては、特に限定はないが、たとえば、以下の方法により該接続角度を調整することができる。第3の光入出力手段の曲線に使用する関数式によって調整する方法や、第2の光入出力手段と第3の光入出力手段とを上下鏡面対称とした形状とし、第3の光入出力手段をマルチモード光導波路に入込ませるように移動する方法等がある。一般に、光導波路の設計は、シミュレーションソフトで光導波路パターンを作成し解析を行った後、シミュレーションソフトのCADからフォトマスク製図CADへ光導波路パターンデータをエクスポートしマスク用光導波路パターンを作図する手順で行う。その際、光導波路パターンの調整は、シミュレーションソフトのCADで作成するのが容易であり、かつ調整した形状を即解析することが可能である。この手順において、マルチモード光導波路と前記第3の光入出力手段との接続角度を調整する簡便かつ合理的な方法としては、シミュレーションソフトのCADを用いて、決められた第2の光入出力手段(光導波路)の上下鏡面対称とした形状を第3の光入出力手段(光導波路)の形状として採用し、マルチモード光導波路に入込ませるように移動する手段が有効である。例えば、図3に示す水平方向長さ2900μm、垂直方向の125μmのSine特殊曲線を第2の光入出力手段(光導波路)の形状として使用した場合、マルチモード光導波路(MMI)への入込み量と、マルチモード光導波路(MMI)と第3の光入出力手段(光導波路)との接続角度は、表1に示す関係になる。
【表1】

【0021】
光フィルタ10は、第1の波長の光を透過することにより第1の光導波路4と第2の光導波路6との間の光の伝搬を可能にし、第2の波長の光を反射することにより第2の光導波路6と第3の光導波路8’との間の光の伝搬を可能にする。従って、光フィルタ10は、第2の波長の光に対して反射体として機能する。光フィルタ10は、本実施形態では、ローパスフィルタであり、例えば、入射角0度の光に対して、波長1.31μm及び1.49μmの光を透過し、波長1.55μmの光を反射する。光フィルタ10は、好ましくは、誘電体多層膜光フィルタである。光フィルタの厚さは、例えば、25μmである。
【0022】
次に、上述した本発明による光システムの実施形態である光合分波器の製造方法の一例を説明する。
先ず、Si基板12を準備し、その上面にSiO2の膜を形成する。次に、クラッド用ポリマーをスピン塗布すること等により下部クラッド14の層を形成する。引続いて、下部クラッド14の上に、コア用ポリマーをスピン塗布すること等によりコア16の層を形成する。
次いで、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチング(RIE)などのプロセス加工等により、コア16の層のうち、第1〜第5の光導波路4、6、8、24及び26のコア16を残すように、その他の部分を除去する。次いで、クラッド用ポリマーをスピン塗布すること等により、コア16を覆うように上部クラッド18の層を形成する。
次いで、ダイシング加工等により、溝22を形成した後、溝22に光フィルタ10を設置する。
【0023】
ここに説明したように、第1〜第5の光導波路4、6、8’、24及び26及びを一連の工程で同時に形成することが可能である。従って、第3の光導波路8’のコアとマルチモード導波路2(第5の光導波路26)のコアの間隔をおくために、従来の光合分波器に対する追加の工程を必要としない。その結果、本発明の実施形態である光合分波器を容易に形成することができる。
【0024】
次に、本発明による光システムの実施形態である3波WDM用の光合分波器の動作を説明する。
先ず、第1の光導波路4(Oポート)から第2の光導波路6(Cポート)に第1の波長1.31μmの光を伝搬させる場合を説明する。第1の光導波路4(Oポート)からマルチモード光導波路2(第4の光導波路24)に入射された第1の波長1.31μmの光は、フィルタ10を透過して、第5の光導波路26を通して第2の光導波路6に伝搬される。詳細には、マルチモード光導波路2に入射された光は、多モード光に分解されると共に、分解された光が相互に干渉し、それにより、光の強度分布に対応した干渉縞をマルチモード光導波路2内に生じさせる。光がマルチモード光導波路2内を進行方向2aに伝搬するにつれて、光の強度分布の山の位置は、光の進行方向2aに対して横方向に移動する。第2の光導波路6は、第1の光導波路4から入射された光の強度分布の山の位置でマルチモード光導波路2(第5の光導波路26)に接続されている。その結果、第1の光導波路4から入射された光が第2の光導波路6に伝搬される。
【0025】
第1の光導波路4から第2の光導波路6(Cポート)に第1の波長1.31μmの光を伝搬させるときのマルチモード光導波路2から第3の光導波路8への漏れ光に関し、マルチモード光導波路と第3の光入出力手段との接続箇所において、第3の光入出力手段(第3の光導波路8)の軸線は、進行方向に対して接続角度α1をなしており、α1は第2の光導波路6の接続角度α2とは異なるので、マルチモード光導波路2から第3の光導波路8への漏れ光の損失が、従来の光合分波器よりも大きくなる。即ち、マルチモード光導波路2から第3の光導波路8に光が漏れ難くなっている。それにより、第1の光導波路4から第3の光導波路8への進行方向の漏れ光が低減される。
【0026】
次に、第2の光導波路6(Cポート)から第3の光導波路8’(Vポート)に第2の波長1.55μmの光を伝搬させる場合を説明する。第2の光導波路6からマルチモード光導波路2(第5の光導波路26)に入射された第2の波長1.55μmの光は、フィルタ10で反射して、マルチモード光導波路2を通して第3の光導波路8’に伝搬される。詳細には、マルチモード光導波路2に入射された光は、多モード光に分解されると共に、分解された光が相互に干渉し、それにより、光の強度分布に対応した干渉縞をマルチモード光導波路2内に生じさせる。光がマルチモード光導波路2内を進行方向2aに伝搬するにつれて、光の強度分布の山の位置は、光の進行方向2aに対して横方向に移動する。第3の光導波路8’は、第2の光導波路6から入射された光の強度分布の山の位置でマルチモード光導波路2(第5の光導波路26)に接続されている。その結果、第2の光導波路6から入射された光が第3の光導波路8’に伝搬される。なお、第3の光入出力手段の軸線は、進行方向に対して接続角度α1をなしているので、第2の光導波路6から第3の光導波路8’に伝搬される光に損失が生じるが、第3の光導波路8’に伝搬される光の強度が大きいので、かかる損失は、実用上無視でき、問題とならない。
【0027】
第2の光導波路6(Cポート)から第1の光導波路4(Oポート)に第3の波長1.49μmの光を伝搬させる場合は、光の進行方向が逆向きになること以外、第1の光導波路4(Oポート)から第2の光導波路6(Cポート)に第1の波長1.31μmの光を伝搬させる場合と同様である。
【0028】
次に、実験例を説明する。
【0029】
図4は、本発明の実施形態である光合分波器1の、第1の光導波路4の光強度に対する第3の光導波路8の光強度(Vポートの損失)を示す図であり、縦軸にVポートの損失、第3の光導波路8とマルチモード光導波路との接続角度を示す。デシベル値が小さいほど、即ち、デシベル値の絶対値が大きいほど、第1の光導波路4から第3の光導波路8への光の損失が大きくなり、漏れ光が低減される。実験例では、図1における第4の光導波路24の長さL4を445μm、幅W4を18.2μm、第5の光導波路26の長さL5を247μm、幅W4を18.2μmとした。接続角度α1を0度から増やしていくにつれて、漏れ光が低減されるが、ある値を過ぎると、逆に漏れ光が増大することが分かった。第3の光導波路8の光強度を−34dB以下にするには、接続角度α1の範囲は0.11〜0.34度であり、−36dB以下にするには、0.14〜0.32度であり、−37dB以下にするには、0.19〜0.29度であることが分かった。
【0030】
図5は、本発明の実施形態である光合分波器1の、第1の光導波路4の光強度に対する第3の光導波路8の光強度(Vポートの損失)を示す図であり、図4の横軸を、第3の光導波路8’のマルチモード光導波路2への入込み量に置き換えたものである。実験例では、図1における第2の光導波路6の形状を図3に示したSine特殊曲線形状とし、第3の光導波路8’はその上下鏡面対称の形状とした。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
上記実施形態では、光システムが光合分波器であるとして説明したが、それに限らず、第1の光入出力手段4から第2の光入出力手段6に光が伝搬され、第3の光入出力手段8’に光が漏れるものであれば、光合分波器でなくても良い。従って、上記実施形態では、光フィルタ10を有していたけれども、光フィルタ10及びその設置溝22を省略し且つ第4の光導波路24及び第5の光導波路26が一体になっていていても良い。また、光フィルタ10を省略し、設置溝22だけが設けられていても良い。
【0032】
上記実施形態では、第1の光入出力手段4、第2の光入出力手段6及び第3の光入出力手段8’は、光導波路であったが、任意の光導波路が光ファイバーで構成されていても良い。
【0033】
上記実施形態では、第1の光導波路から第2の光導波路への光の伝搬及び第2の光導波路から第3の光導波路への光の伝搬を説明したけれども、これに加えて、第3の波長(1.49μm)の光を第2の光導波路から第1の光導波路に伝搬させても良い。また、第1〜第3の波長の進行方向を逆にしても良い。
また、上記実施形態では、ローパス光フィルタを採用したけれども、ハイパス光フィルタを採用し、例えば、入射角0度の光に対して、波長1.31μm及び1.49μmの光を反射し、波長1.55μmの光を透過させても良い。その場合、波長1.55μmの光を第1の光導波路4と第2の導波路6との間で伝搬させ、波長1.31μm及び1.49μmの光を第2の導波路6と第3の導波路8との間で伝搬させるのが良い。
【0034】
上記実施形態における第4の光導波路24と第5の光導波路26の長さ等は、伝搬される光の波長等によって任意に定められるので、第4の光導波路24と第5の光導波路26の幅及び長さが同じであっても良い。
また、光フィルタ設置手段は、溝22に限らず、第4の光導波路24と第5の光導波路26を分離して形成したマルチモード光導波路2であっても良い。この場合、光フィルタ10を光合分波器として作用させるように第4の光導波路24と第5の光導波路26との間に挟んで、これらを接合すれば良い。
【0035】
第1の光導波路4は、マルチモード光導波路2(第4の光導波路24)の端面24aから進行方向2aに真直ぐに延びていても、円弧でも、sine特殊関数等の曲線の経路を有していても良いし、進行方向2aに対して斜めに延びる経路を有していても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態である光合分波器の平面断面図である。
【図2】本発明の実施形態である光合分波器の図1の線II−IIにおける断面図である。
【図3】第2の光入出力手段(光導波路)のモデル形状を示す図である。
【図4】第1の光導波路の光強度に対する第3の光導波路の光強度を示す図である。
【図5】第1の光導波路の光強度に対する第3の光導波路の光強度を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 光合分波器
2 マルチモード光導波路
2b 一方の側
2c 他方の側
4 第1の光導波路
6 第2の光導波路
8 第3の光導波路
10 光フィルタ
14 下部クラッド
16 コア
18 上部クラッド
22 溝
α1 接続角度
α2 接続角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光をマルチモードで伝搬可能なマルチモード光導波路と、
前記マルチモード光導波路の光の進行方向における一方の側に接続された第1の光入出力手段と、
前記マルチモード光導波路の光の進行方向における他方の側に接続された第2の光入出力手段及び第3の光入出力手段と、を有し、
前記マルチモード光導波路と前記第3の光入出力手段との接続角度が、前記マルチモード光導波路と前記第2の光入出力手段との接続角度と異なることを特徴とする光システム。
【請求項2】
前記マルチモード光導波路と前記第3の光入出力手段との接続角度が、前記マルチモード光導波路と前記第2の光入出力手段との接続角度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の光システム。
【請求項3】
前記マルチモード光導波路と前記第3の光入出力手段との接続箇所において、前記第3の光入出力手段の軸線は、進行方向に対して所定の鋭角の接続角度をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光システム。
【請求項4】
更に、光の進行方向に対して交差するように前記マルチモード光導波路に光フィルタを設置するための光フィルタ設置手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光システム。
【請求項5】
前記光フィルタ設置手段は、光の進行方向に対して交差して前記マルチモード光導波路に設けられた溝であることを特徴とする請求項4に記載の光システム。
【請求項6】
前記接続角度は、0.14〜0.32度であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の光システム。
【請求項7】
前記第1、第2、及び第3の光入出力手段が、シングルモード光導波路である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光システム。
【請求項8】
前記第1の光入出力手段が光ファイバで、第2及び第3の光入出力手段がシングルモード光導波路である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光システム。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の光システムにおいて、光の進行方向に対して交差するように前記光フィルタ設置手段に設置された光フィルタを有することを特徴とする光合分波器。
【請求項10】
前記光フィルタは、第1の波長の光を透過することにより前記第1の光入出力手段から前記第2の光入出力手段への光の伝搬を可能にし、且つ第2の波長の光を反射することにより前記第2の光入出力手段から前記第3の光入出力手段への光の伝搬を可能にすることを特徴とする請求項9に記載の光合分波器。
【請求項11】
前記光フィルタは、さらに第3の波長の光を透過することにより前記第2の光入出力手段から前記第1の光入出力手段への光の伝搬を可能にすることを特徴とする請求項9又は10に記載の光合分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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