説明

光導波路分岐デバイス

【課題】平面の光平面回路を回りの光回路と小さいスペースでかつ高結合効率で接続する。
【解決手段】平面上に1つの光導波路と該光導波路から軸対称に2分岐する2つの光導波路により3分岐点を形成し、前記軸対称に2分岐する2つの光導波路をそれぞれカプラーに接続して光平面回路を成し、該光平面回路上の3分岐点に光を放射または入射するための開口面を形成してマジックT分岐路を構成する立体的な4分岐構造として光導波路分岐デバイスを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光信号を伝送、分波する光導波路分岐デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいては、平面の導波構造の光平面回路は有力な多機能デバイスとなり得る。平面の導波構造の光回路は多機能な回路を構成できるが、光平面回路とファイバなど周辺のデバイスとのインターコネクションには制約が多い。接続は光平面回路を切断する構造としてその断面のコア部で行われる。光平面回路の断面中の導波路のコア断面とファイバを切断した断面のコア断面とでは光信号のモードが異なる。そのため、両者を接続するには両者のモードを合わせて整合させる必要があり、特殊な処理が必要となるが、その処理は一般に複雑で困難である。またそれに伴う、高度で安定な機械的な位置合わせや固定にも高度なノウハウが必要である。
【0003】
接続に必要な機械的精度は、光信号が伝わるコアの径よりも十分小さい値でなければならず、通常コアの大きさが10μm径程度あるいは10μm角程度であることから、これらに対して光軸ずれは1μm程度以下の値でなければならない。また光ファイバの直径あるいは光平面回路の厚みは約1mmであるので、許される光軸ズレは1μm以下とすると精度は0.1%以下となる。このため機械的な精度としては厳しい値となっている。
【0004】
また接続は平面光回路の切断面で行われるため、接続のための光軸方向は光平面回路の面と平行となる。このため、ファイバや結合レンズなどの接続部前後の光平面回路の周りにファイバや導波路の直線状のスペースが必要となり、より光平面回路の面積よりも広い面積が必要であり、3次元的な要素も含めると全体に必要な体積のスペースが大きくなっている。特に2次元のフォトニック結晶回路はまだ直接周りの光回路との接続ができず、2次元フォトニック結晶回路を一旦平面型の光導波路に変換して、その平面型の光導波路を介して周辺の光回路に接続している。
【0005】
一方、光学的な結合系として、レンズを用いた結合系もある。ファイバを出た光を一旦レンズを通してコリメート光とし、再び集光レンズで集光、結像して結合させて次のファイバに光信号を導く。結合レンズを用いた空間光学系は、一般的にはタイトな3次元的な機械的要素で構成され、必要とされる精度を維持するためには大きく重い装置となってしまう。
【0006】
本発明者はすでに、この問題点を解決する1手法として、光平面回路にマジックT分岐を構成した立体的な光接続回路を提案している。本発明は更にこのマジックT分岐の性質を利用して、光平面回路での光スイッチを構成し、容易に外部の光回路と接続できる光導波路分岐デバイスを提案する。
【非特許文献1】中島正光 マイクロ波工学 森北出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来は、光ファイバと光平面回路とを簡易な構造で接続することはできなかった。そこで、本発明は簡易な構造で上記接続を可能とし、小型で軽量の光導波路分岐デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光導波路分岐デバイスは、平面上に1つの光導波路と該光導波路から軸対称に2分岐する2つの光導波路により3分岐点を形成し、前記軸対称に2分岐する2つの光導波路をそれぞれカプラーに接続して光平面回路を成し、該光平面回路上の3分岐点に光を放射または入射するための開口面を形成してマジックT分岐路を構成する立体的な4分岐構造としたことを特徴とする。
【0009】
また、前記2分岐された光導波路の少なくとも一方とカプラーの間には、位相差を調整する移相器が具備されていることを特徴とし、さらに前記移相器で移相量を調整することで、前記分岐点での出力ポートを切り替えることを特徴とする。
【0010】
また、前記開口面は結合光学系の機能を包含していることを特徴とする。さらに、前記開口面から上記光平面回路に対して垂直方向に光を放射または入射するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平面上に1つの光導波路と該光導波路から軸対称に2分岐する2つの光導波路により3分岐点を形成し、前記軸対称に2分岐する2つの光導波路をそれぞれカプラーに接続して光平面回路を成し、該光平面回路上の3分岐点に光を放射または入射するための開口面を形成してマジックT分岐路を構成する立体的な4分岐構造とすることによって、光ファイバや光デバイスとの接続が光平面回路の上部空間で行うことができ、接続のためのスペースを少なくすることができる。
【0012】
また、前記2分岐された光導波路の少なくとも一方とカプラーの間には、位相差を調整する移相器を具備し、さらに前記移相器で移相量を調整して前記分岐点での出力ポートを切り替えることによって、平面型の光スイッチとして機能させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0014】
なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく以下、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更・改良を施すことは何ら差し支えない。
【0015】
図1に本発明の実施形態を示す。光平面回路の基板1に直線状の光導波路4が形成され、この光導波路4は分岐点5で軸対称に2分岐され、光導波路2と光導波路3に分かれる。さらに分岐点5上には開口面をなす結合開口部18を形成して、3つの光導波路と1つの開口面で4分岐のマジックTの構成となっている。
【0016】
分岐した光導波路3と光導波路4は再び結合してカプラー8を形成している。さらに分岐した一方の光導波路3上に移相器16が形成されている。光導波路2と光導波路4は光平面回路の基板1の端面でそれぞれ端面2aと端面4aとなっている。マジックTの結合開口部5からは光信号はビーム10に沿って出射され断面9を通過する。
【0017】
いま、端面2aから光信号17が入射されるものとする。入射された信号はカプラ8で同じ強度で2分岐されて光導波路2と光導波路3に導かれる。光導波路3に分岐された光信号は移相器16をで位相を調整されて、分岐点5において光導波路3と光導波路4の光信号がそれぞれ逆相となるようにする。このとき分岐点5に逆相で入力された光信号は分岐点5でマジックT構造のため光導波路4に対し高次の非伝達モードとなっており、このため光導波路4には光信号は進まず、端面4aからの光の出射は無い。一方、光導波路2、光導波路3からの光信号は同様にマジックT構造のため結合開口部18に対しては同相で強め合うモードとなっており、このため合波されて分岐点5の結合開口部18から放射される。
【0018】
分岐点5の結合開口部18は結合光学系の機能を包含しているため、合波されて出射される光信号はビーム10の形となり、面9を通過する。なお、結合開口部18は、例えば集光レンズを備えておくことによって、光導波路2、3から垂直方向に光信号の放射、入射を可能としている。
逆に、移相器16で位相を調整されて分岐点5において光導波路2と光導波路3の光信号が同相となっている場合は、マジックTの分岐点5において光信号は合波されて光導波路4に導かれ端面4aより出射される。この場合は結合開口部18からは光信号は出射されない。
【0019】
このように移相器16により通過する光信号の位相を調整することで光信号の出射ポートを切り替えることができ、光スイッチとすることができる。
【0020】
この移相器16は、熱による光路長の調整や、あるいはニオブ酸リチウムなどを用い、印加電圧を変化させて屈折率を変えることなどで実現できる。
【0021】
図2は図1の実施例の断面図を示す。この例では分波された光信号は分岐点5で合波され結合開口部18からビーム10に沿って出射され、面9を通過し結合レンズ11でコリメート光に変換される。
【0022】
ここで、マジックTの原理図を図3に示す。図3はマイクロ波、ミリ波帯の導波管の例の図であるが、光導波路でも同様の原理で動作する。図3(a)に4分岐のマジックTの構造例が示される。いま開口面14と開口面15から逆相のTE01モードの信号を入力すると分岐点では開口面13を持つ導波路に対しては高次のTMモードとなり遮断されて信号が伝わらないが、開口面12を持つ導波路に対してはTE01モードが保持されて信号が合波される形で伝送される。一方、開口面14と開口面15から同相のTE01モードの信号を入力すると図3(b)のように分岐点で開口面12を持つ導波管に対しては高次のTMモードとなり遮断されて信号が伝わらないが、開口面13を持つ導波管に対してはTE01モードが保持されて合波されるす形で伝送される。光の信号も分岐点で同様な関係となるモードで駆動することで同様な機能のデバイスとなる。
【0023】
図1から図2の実施形態では、通常の光導波路の形の実施例として示したが、同じ原理で2次元フォトニック結晶の導波路構造にも適用できる。ことに、2次元フォトニック結晶の光導波路は現状では光ファイバと直接接続することが困難であり、一旦通常の光平面回路の光導波路を介して接続するなど、無駄のある接続法しか知られていない。本発明によるこのマジックT構造の垂直方向の光導波路分岐デバイスを用いることで、小さいスペースで高結合効率で2次元フォトニック結晶と周りの光回路、光モジュールとの接続が可能となる。さらにフォトニック結晶を使ったカプラや位相器で光スイッチを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の光導波路分岐デバイスは、少ないスペースで、かつ高結合効率で通常の平面の光平面回路の光スイッチと外部の回路を接続できる。さらに他の機能の光平面回路とも組み合わせることができ、小型低価格で高性能なモジュール化への応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光導波路分岐デバイスを示す斜視図である。
【図2】本発明の光導波路分岐デバイスの具体的な実施例を示した図である。
【図3】マジックTの原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0026】
1、基板
2、3、4、光導波路
5、分岐点
6a、7a、光導波路断面
8、光カプラ
9、光束通過面
10、ビーム
11、結合光学レンズ
12、13、14、15 開口面
16、位相器
17、光信号
18、結合開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に1つの光導波路と該光導波路から軸対称に2分岐する2つの光導波路により3分岐点を形成し、前記軸対称に2分岐する2つの光導波路をそれぞれカプラーに接続して光平面回路を成し、該光平面回路上の3分岐点に光を放射または入射するための開口面を形成してマジックT分岐路を構成する立体的な4分岐構造としたことを特徴とする光導波路分岐デバイス。
【請求項2】
前記2分岐された光導波路の少なくとも一方とカプラーの間には、位相差を調整する移相器が具備されていることを特徴とする光導波路分岐デバイス。
【請求項3】
前記移相器で移相量を調整することで、前記分岐点での出力ポートを切り替えることを特徴とする請求項2記載の光導波路分岐デバイス。
【請求項4】
前記開口面は結合光学系の機能を包含していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光導波路分岐デバイス。
【請求項5】
前記開口面から上記光平面回路に対して垂直方向に光を放射または入射するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光導波路分岐デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−10977(P2006−10977A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186839(P2004−186839)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】