説明

光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路

【課題】光導波路の下部クラッド層の材料として用いることにより、光導波路の形成時に発生する収縮応力を緩和して、高温高湿等の条件下でも長期に亘って基材からの光導波路の剥離を防止することのできる光導波路用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ウレタン(メタ)アクリレート35〜69.98質量%、(B)エチレン性不飽和基を1つ含む化合物30〜64.98質量%、(C)アクリロイル基を2つ以上含む(メタ)アクリレート0〜20質量%、(D)ラジカル性光重合開始剤0.01〜10質量%および(E)酸化防止剤0.01〜3質量%を含有する感光性樹脂組成物。該感光性樹脂組成物2は、基板1上に塗布され、光導波路13を構成する第一の下部クラッド層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路用感光性樹脂組成物および該組成物を含む光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディア時代を迎え、光通信システムやコンピュータにおける情報処理の大容量化および高速化の要求から、光の伝送媒体として光導波路が注目されている。光導波路に望まれる性質として、伝送損失や偏波依存性等の光学特性が良好なこと、それらの特性が外部環境によって影響され難く、長期的安定性を有すること、微細かつ複雑な形状の光導波路を製造時に環境汚染物質を排出せずに低エネルギー消費で短時間に少ない工程数で歩留まり良く製造できること等が挙げられる。
従来の光導波路としては、石英系光導波路が代表的であった。しかし、石英系光導波路は、製造時に石英膜の堆積のために高温での長時間の処理が必要であるなど、製造時間が長いこと、光導波路のパターン形成には、光レジストを用いる工程と、危険性の高いガスを用いてエッチングする工程が含まれ、かつ、それらの工程に特殊な装置を必要とするなど、多数の複雑な工程および特殊な装置を要すること、歩留まりが低いこと等の問題がある。
これらの問題を改善するため、光導波路の工程数の削減、製造時間の短縮化、歩留まりの増大等の生産性の向上を目的に、コア部とクラッド層の材料として液状の硬化性組成物を用いるポリマー系光導波路が、近年幾つか提案されている(特許文献1〜3を参照)。
【0003】
ポリマー系光導波路においては、導波路損失が低いことに加えて、簡易な手法で作製できること、および長期信頼性に優れることが課題とされている。
このうち、導波路損失の低減化を達成する方法として、例えば、ポリマー中のC−Hのフッ素化(C−F)や重水素化(C−D)によって、使用波長域でのC−Hによる導波路損失の発生を防止することが行われている。
光導波路を簡易な手法で作製する方法として、例えば、直接露光法(特許文献4)、フォトブリーチング法(特許文献5)、モールド法(特許文献6)等が提案されている。
長期信頼性を向上させる方法として、例えば、基材に対して物理的処理(紫外線、オゾン処理等)や化学的処理(カップリング剤処理等)を施して、光導波路が基材から剥離することを防止し、導波路特性の長期的安定を図ることが提案されている。
【特許文献1】特開平06−109936号公報
【特許文献2】特開平10−254140号公報
【特許文献3】特開2000−180643号公報
【特許文献4】特開2001−4858号公報
【特許文献5】特開2002−311262号公報
【特許文献6】特開2003−172841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、ポリマー系光導波路は、導波路損失の低減化や、光導波路の作製の簡易化や、長期信頼性の向上等のために、種々の方法や材料が提案され、改良されつつある。
しかし、ヒートサイクル試験や高温高湿試験のような厳しい条件下においては、基板の表面に対して物理的処理や化学的処理を施した場合でも、光導波路が基材から剥離したり、光導波路にクラックが発生するなどの現象が起き、その結果、導波路損失の増大等が生じるという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みて、低い導波路損失および光導波路の作製の容易さに加えて、優れた長期信頼性、特にヒートサイクル、高温高湿等の過酷な環境下にてクラッド層が基材から剥離せずに、低い導波路損失等が長期間に亘って安定的に保持される性質を有する光導波路用感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前述の従来技術の問題を解決するために鋭意検討した結果、(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)エチレン性不飽和基を1つ含む化合物、(C)必要に応じて配合されるアクリロイル基を2つ以上含む(メタ)アクリレート、(D)ラジカル性光重合開始剤、および(E)酸化防止剤の各成分を特定の配合割合で含む感光性樹脂組成物を用いれば、低い導波路損失および光導波路の作製の容易さを確保しつつ、優れた長期信頼性を得ることができるとの知見を得て、本発明を完成した。
すなわち、本発明の光導波路用感光性樹脂組成物は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート35〜69.98質量%、(B)エチレン性不飽和基を1つ含む化合物30〜64.98質量%、(C)アクリロイル基を2つ以上含む(メタ)アクリレート0〜20質量%、(D)ラジカル性光重合開始剤0.01〜10質量%および(E)酸化防止剤0.01〜3質量%を含有することを特徴とする。
前記(A)成分は、例えば、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物である。
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物の好ましい一例は、前記(B)成分として、イソボルニルアクリレートを10質量%以上含有するものである。
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物は、硬化物の状態において、好ましくは100℃以下のガラス転移温度を有する。
本発明の光導波路は、基材上に形成するための下部クラッド層と、該下部クラッド層上の一部に形成されたコア部と、該コア部を被覆するように形成された上部クラッド層を含む光導波路であって、前記基材との接触面を含む前記下部クラッド層の少なくとも一部が、上述の光導波路用感光性樹脂組成物の硬化体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物は、光導波路の最下層(具体的には、基材との接触面を含む下部クラッド層の少なくとも一部)の材料として用いることによって、光導波路に対し、低い導波路損失、光導波路の作製の容易さ等の特長を保ちつつ、優れた長期信頼性、特にヒートサイクル、高温高湿等の過酷な環境下にてクラッド層を基材から剥離させずに、低い導波路損失等を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
[1.光導波路用感光性樹脂組成物]
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)エチレン性不飽和基を1つ含む化合物、(C)アクリロイル基を2つ以上含む(メタ)アクリレート、(D)ラジカル性光重合開始剤、および(E)酸化防止剤を含有するものである。なお、(C)成分は、必要に応じて配合される成分である。
[(A)成分]
(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートである。
(A)成分は、例えば、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物の水酸基と、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基の各々と反応する。
(A)成分は、以下の製法1〜製法4のいずれかの方法で製造される。
製法1:ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを一括して仕込んで反応させる方法。
製法2:ポリオール化合物およびポリイソシアネート化合物を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法。
製法3:ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオール化合物を反応させる方法。
製法4:ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオール化合物を反応させ、最後にまた水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法。
【0008】
[ポリオール化合物]
本発明の(A)成分の原料の一つであるポリオール化合物としては、芳香族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂環族ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
中でも、基板と光導波路との更なる接着性の向上を図るためには、アルキレンオキシ構造を含むポリエーテルポリオール化合物を用いることが好ましい。
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール等が挙げられる。市販品としては例えばユニオール,DA700,DA1000(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフラン、オキセタン、置換オキセタン、テトラヒドロピランおよびオキセバンから選ばれる少なくとも1種の化合物を開環(共)重合することにより得られるもの等を挙げることができる。これらの具体例としては、ポリエチレングリコール、1,2−ポリプロピレングリコール、1,3−ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコール、プロピレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体ポリオール、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドと1,2−ブチレンオキサイドの共重合体ポリオール等が挙げられる。
【0009】
脂環族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルポリオールおよび脂環族ポリエーテルポリオールの市販品としては、例えばユニセーフDC1100、ユニセーフDC1800、ユニセーフDCB1100、ユニセーフDCB1800(以上、日本油脂社製);PPTG4000、PPTG2000、PPTG1000、PTG2000、PTG3000、PTG650、PTGL2000、PTGL1000(以上、保土谷化学社製);EXENOL4020、EXENOL3020、EXENOL2020、EXENOL1020(以上、旭硝子社製);PBG3000、PBG2000、PBG1000、Z3001(以上、第一工業製薬社製);ACCLAIM 2200、3201、4200、6300、8200(以上、住化バイエルウレタン社製);NPML−2002、3002、4002、8002(以上、旭硝子社製)等が挙げられる。
【0010】
ポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000等(以上、クラレ社製)が入手できる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば1,6−ヘキサンポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン社製)、PLACCEL−CD205、CD−983、CD220(以上、ダイセル化学工業社製)、PC−8000(米国PPG社製)等が入手できる。
【0011】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンと、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられ、市販品としては、PLACCCEL205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業社製)等が入手できる。
その他本発明で使用しうるポリオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ひまし油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
前記のポリオール化合物のうち、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合ジオール、エチレンオキサイド/1,2−ブチレンオキサイド共重合ジオール、プロピレンオキサイド/テトラヒドロフラン共重合ジオールがより好ましく、エチレンオキサイド/1,2−ブチレンオキサイド共重合ジオールが特に好ましい。
ポリオール化合物の好ましい数平均分子量は、500〜10,000であり、さらに好ましくは1,000〜8,000であり、最も好ましくは1,500〜5,000である。該数平均分子量が500未満であると、硬化物の常温および低温におけるヤング率が上昇して、充分な接着性が得られ難くなる。一方、数平均分子量が10,000を超えると、組成物の粘度が上昇して、基材に組成物を被覆する際の塗工性が悪化することがある。
【0012】
[ポリイソシアネート化合物]
本発明の(A)成分の原料の一つであるポリイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
中でも、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましい。これらポリイソシアネート化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
[水酸基含有(メタ)アクリレート]
本発明の(A)成分の原料の一つである水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。
中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
本発明の(A)成分を構成する各原料の配合割合は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート1モルに対して、ポリオール化合物0.5〜2モル、ポリイソシアネート化合物1〜2.5モルである。
本発明の(A)成分(ウレタン(メタ)アクリレート)の数平均分子量は、10,000〜40,000である。ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が10,000未満であると、基材に対する光導波路の充分な接着力を得ることが困難となる。ウレタン(メタ)アクリレート化合物の数平均分子量が40,000を超えると、組成物の粘度が高くなり過ぎ、塗工性が悪化することがある。
本発明の組成物中の成分(A)の配合割合は、35〜69.98質量%、好ましくは35〜64.98質量%、より好ましくは35〜59.4質量%である。該配合割合が35質量%未満または69.98質量%を超えると、本発明の組成物を用いて作製された光導波路が、ヒートサイクル、高温高湿等の条件下で基材から剥離し易くなるなど、長期信頼性が劣る。
【0014】
[(B)成分]
本発明で使用される(B)成分は、エチレン性不飽和基を1つ含む化合物である。
エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
(B)成分の具体例としては、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジイソプロピルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、3−ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、2−アクリロイルシクロヘキシルコハク酸、フェノキシエチルアクリレート等を挙げることができる。
これらの中でも、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等は、接着性の向上の観点から好ましい。
また、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート等は、本発明の硬化物の耐水性を向上させる利点を有するため、好ましい。
特に、イソボルニルアクリレートは、硬化物の耐熱性に優れ、光導波路の長期信頼性を顕著に向上させることから好ましく用いられる。本発明の組成物中のイソボルニルアクリレートの配合割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。該配合割合の上限値は、後述の(B)成分の上限値(64.98質量%)と同じである。
【0015】
(B)成分の好ましい組み合わせは、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムから選ばれる1種以上と、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートおよびジシクロペンタニルオキシエチルアクリレートから選ばれる1種以上の組み合わせである。このように組み合わせることによって、組成物の硬化性、光導波路の長期信頼性等の物性をより一層高めることができる。
(B)成分の市販品としてはACMO、DMAA(以上、興人社製)、ニューフロンティアIBA(第一工業製薬社製);IBXA(大阪有機化学社製);FA511A、FA512A、FA513A(以上、日立化成社製);ライトエステルM、E、CH、TB、IB−X、IB−XA(以上、共栄社化学社製);アロニックス M150、M156、TO1315、TO1316(以上、東亞合成社製);FA544A、512M、512MT、513M(以上、日立化成社製)等が挙げられる。
【0016】
(B)成分は、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以上であることが好ましい。該温度が60℃未満では、光導波路の耐熱性が低下することがある。ここで、「ガラス転移温度」は、共振型動的粘弾性測定装置において振動周波数10Hzでの損失正接が最大値示す温度として定義される。
本発明の組成物中の成分(B)(エチレン性不飽和基を1つ含む化合物)の配合割合は、30〜64.98質量%、好ましくは35〜64.98質量%、より好ましくは40〜64.4質量%である。該配合割合が30質量%未満では、組成物の硬化物の耐久性が低下することがある。該配合割合が64.98質量%を超えると、組成物の硬化物の耐久性や耐水性が低下することがある。
【0017】
[成分(C)]
成分(C)は、アクリロイル基を2つ以上含む(メタ)アクリレートである。
成分(C)の具体例としては、例えば、エチレンオキシド付加ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、エチレンオキシド付加ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート等は、特に好ましく用いられる。
【0018】
成分(C)の市販品としては、例えば、ビスコート#700、#540(以上、大阪有機化学工業社製)、アロニックスM−208、M−210(以上、東亞合成社製)、NKエステルBPE−100、BPE−200、BPE−500、A−BPE−4(以上、新中村化学社製)、ライトエステルBP−4EA、BP−4PA、エポキシエステル3002M、3002A、3000M、3000A(以上、共栄社化学社製)、KAYARAD R−551、R−712(以上、日本化薬社製)、BPE−4、BPE−10、BR−42M(以上、第一工業製薬社製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90、SP−1506、SP−1506、SP−1507、SP−1509、SP−1563(以上、昭和高分子社製)、ネオポールV779、ネオポールV779MA(日本ユピカ社製)等が挙げられる。
本発明の組成物中の成分(C)の配合割合は、0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%である。成分(C)を配合することによって、耐熱性を向上させることができる。該配合割合が20質量%を超えると、得られる組成物の粘度が高くなり、スピンコート塗布において所望の膜厚が得られないことがある。
【0019】
[(D)成分]
(D)成分は、ラジカル性光重合開始剤である。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線によって硬化されるため、(D)成分であるラジカル性光重合開始剤を必要とする。
ラジカル性光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して、重合性化合物((A)成分〜(C)成分)の重合を開始し得るものであればよく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等は、重合速度、溶液安定性の観点から好ましく用いられる。
【0020】
(D)成分の市販品としては、例えば、Irgacure184、369、379、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur 1116、1173(以上、チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ社製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
本発明においては、ラジカル性光重合開始剤と共に光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。光増感剤の市販品としては、例えば、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明の組成物中の成分(D)の配合割合は、0.01〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%である。該配合割合が0.01質量%未満では、組成物中の重合反応の速度が小さく、光導波路の製造効率が低下する。該配合割合が10質量%を超えると、組成物の硬化物の硬化特性および力学特性が悪化することがある。
本発明の樹脂組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も併用することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0022】
[酸化防止剤]
本発明で使用する(E)成分は、酸化防止剤である。
本発明で用いる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
酸化防止剤を用いることによって、(A)〜(C)成分の劣化を防止し、本発明の組成物からなる光導波路の長期信頼性等を確実に良好なものとすることができる。
酸化防止剤の市販品としては、Sumilizer GA−80、NW、BBM−S、Antigen P、3C、FR(以上、住友化学社製)、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
本発明の組成物中の(E)成分の配合割合は、0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。該配合割合が0.01質量%未満では、組成物を長期間保存した場合等において、光導波路の優れた長期信頼性等を得られ難いことがある。該配合割合が3質量%を超えると、基材に対する光導波路の接着性が低下したり、光導波路の損失等が増加することがある。
【0023】
本発明の組成物には、前記の成分以外に、本発明の樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、各種添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等を必要に応じて配合することができる。
本発明の組成物のガラス転移温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは60℃以下である。該温度が100℃以下であると、本発明の組成物を光導波路のクラッド層として用いた場合に、光導波路の基材からの剥離やクラック等を効果的に抑制することができる。
【0024】
[2.光導波路]
1.光導波路の構造
本発明の光導波路は、基板上に形成するための下部クラッド層と、下部クラッド層上の一部に形成されたコア部と、コア部を被覆するように下部クラッド層上に形成された上部クラッド層とからなる。
このうち、下部クラッド層は、少なくとも、基板との接触面を含む部分が、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物からなるように形成される。下部クラッド層の具体的形態例としては、(a)本発明の組成物の硬化物のみから形成されるもの、(b)基板の上面に、本発明の組成物の硬化物からなる第一のクラッド層を積層し、さらに第一のクラッド層の上面に、本発明とは異なる光導波路用感光性樹脂組成物(例えば、従来の汎用のクラッド層形成用組成物)の硬化物からなる第二のクラッド層を積層してなるもの、等が挙げられる。
なお、上部クラッド層、コア部、および前記(b)の形態における第二のクラッド層を形成させるための樹脂組成物としては、例えば、ポリシロキサン系、アクリル系、エポキシ系等の感光性樹脂組成物や、熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
また、本発明の組成物を含む部分以外の光導波路の部分は、エチレン性不飽和基を有する化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化体により形成することが好ましい。これにより、得られる硬化体が十分な架橋密度を有することとなり、より好適な光導波路を作製することができる。
【0025】
下部クラッド層、コア部および上部クラッド層の材料および形状は、これらの硬化物の屈折率の関係が、光導波路に要求される条件を満足すること等を考慮して、選択される。例えば、コア部の幅および高さが5〜100μmで、コア部とクラッド層との屈折率の差が0.2〜10%となるように選ぶことができる。
屈折率の調整は、例えば、感光性樹脂組成物の構成原料の置換基の種類等を適宜選択することにより行うことができる。具体的には、屈折率の差が適宜の大きさとなるような2種以上の感光性樹脂組成物を選択した上で、最も屈折率の高い組成物をコア部の材料として用い、他の組成物をクラッド層(下部クラッド層および上部クラッド層)の材料として用いればよい。
クラッド層用の感光性樹脂組成物を調製する際に、その粘度を、100〜10,000cps(25℃)の範囲内の値とすることが好ましく、100〜8,000cps(25℃)の範囲内の値とすることがより好ましく、300〜3,000cps(25℃)の範囲内の値とすることが特に好ましい。該粘度が前記範囲外であると、感光性樹脂組成物の取り扱いが困難になったり、均一な厚みを有する塗膜を形成することが困難なことがある。
なお、感光性樹脂組成物の粘度は、反応性希釈剤や有機溶媒を適宜の量だけ配合することによって、調整することができる。
【0026】
2.光導波路の製造方法
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた湿式リソグラフィー法による光導波路の製造方法の一例を、いわゆるチャンネル型光導波路の例を用いて説明する。図1は、本発明の感光性樹脂組成物を用いた光導波路の製造方法の一例を示すフロー図である。
まず、図1中の(a)に示すように、基材として、平坦な上面を有する基板1を用意する。なお、基板1としては、シリコン基板、ガラス基板等が挙げられる。
図1中の(b)に示すように、基板1の上面に、本発明の光導波路用感光性樹脂組成物2を塗布し、必要に応じて乾燥またはプリベークして薄膜を形成させた後、図1中の(c)に示すように、紫外線(または適宜の波長の光)3を照射して硬化させ、第一のクラッド層4を形成する。
この際、樹脂組成物2の塗布方法は、第一のクラッド層(硬化膜)4の厚みが均一でかつ表面が平滑になるものであれば特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、インクジェット法等の方法を採用することができる。中でも、半導体業界で高精度の工業的塗布技術として用いられているスピンコート法が好ましい。
スピンコート法は、0℃〜100℃の温度下で10〜1,000回転/分で1〜60秒の条件下で実施される液状組成物を基板1に均一に塗布する第一の工程と、高速回転により一定の膜厚を形成する第二の工程とからなる。
なお、後述する樹脂組成物5,7,11の塗布方法も、樹脂組成物2と同様である。
【0027】
また、照射する光3としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等を用いることができ、特に限定されるものではないが、光源の工業的な汎用性の観点から、通常、200〜450nmの紫外〜可視領域の光、好ましくは波長365nmの紫外線を含む光が用いられる。照射条件の例としては、200〜450nmの波長の光を、照度が1〜1000mW/cm、照射量が0.01〜5000mJ/cm、好ましくは0.1〜1000mJ/cmとなるように照射して、露光することが挙げられる。
光の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等の広い面積を同時に照射するランプ光源や、パルス、連続発光のレーザー光源等の光源から、ミラー、レンズ、光ファイバーを用いて収束光を得るように構成した装置が用いられる。このような収束光を用いて光導波路を形成する場合、収束光もしくは被照射体を移動させることにより、光導波路の形状が得られるような露光を行うことができる。光の照射装置で用いられる光源の中でも、365nmの紫外線強度の高い光源が好ましい。例えば、ランプ光源としては高圧水銀ランプ、レーザー光源としてはアルゴンレーザーが好ましい。
なお、樹脂組成物2等の液状組成物を光照射して硬化する際には、液状組成物の薄膜の全面に光を照射し、薄膜の全体を硬化することが好ましい。
後述する樹脂組成物5,7,11に対する紫外線等の光3の照射方法も、樹脂組成物2と同様である。
【0028】
次いで、図1中の(d)に示すように、第一のクラッド層4の上面に、第二のクラッド層用の感光性樹脂組成物5(例えば、感光性アクリル樹脂組成物)を塗布し、乾燥またはプリベークして薄膜を形成させた後、図1中の(e)に示すように、紫外線等の光3を照射して硬化させ、第二のクラッド層6を形成する。第一のクラッド層4と第二のクラッド層6とからなる積層体が、下部クラッド層である。なお、本発明において、第二のクラッド層6は省略することもできる。
その後、図1中の(f)に示すように、第二のクラッド層6の上面に、コア部を形成するためのコア用感光性樹脂組成物7(例えば、クラッド層よりも屈折率の高い感光性樹脂組成物)を塗布した後、図1中の(g)に示すように、所定のラインパターンを有するフォトマスク8を通して紫外線等の光3を照射して露光し、コア用感光性樹脂組成物7の一部を硬化させる。
【0029】
なお、所定のパターンに従って光の照射を行う方法としては、光の透過部と非透過部とからなるフォトマスク8を用いる方法に限られず、例えば、以下に示すa〜cの方法を採用してもよい。
a.液晶表示装置と同様の原理を利用した、所定のパターンに従って光透過領域と不透過領域とからなるマスク像を電気光学的に形成する手段を利用する方法。
b.多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して光を照射する方法。
c.レーザー光、あるいはレンズ、ミラー等の集光性光学系により得られる収束光を走査させながら組成物に照射する方法。
【0030】
次いで、図1中の(h)に示すように、硬化部分と未硬化部分との溶解性の差異を利用して、現像液によって未露光部を除去し、露光部のみからなる成形体9を形成した後、必要に応じて乾燥またはプリベークさせ、さらに、図1中の(i)に示すように、紫外線等の光3を照射してポスト露光を行い、パターニングされた硬化膜からなる帯状のコア部10を形成する。なお、ポスト露光の後、露光部分の硬化を促進させるために、加熱処理(ポストベーク処理)を行ってもよい。
ここで、現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の塩基性物質を含むアルカリ水溶液や、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、アルコール等の有機溶媒が用いられる。なお、アルカリ現像液中の塩基性物質の濃度は、通常0.05〜25質量%、好ましくは0.1〜3.0質量%である。
【0031】
現像時間は、通常30〜600秒間である。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー現像法等の公知の方法を採用することができる。
現像液としてアセトン等の有機溶媒を含むものを用いた場合は、そのまま風乾することにより、また、アルカリ水溶液を用いた場合は、流水洗浄を例えば30〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素等で風乾させることによって、表面上の水分を除去する。これによって、パターン状の被膜(コア部10)が形成される。
【0032】
次に、図1中の(j)に示すように、上部クラッド層用の感光性樹脂組成物11を塗布し、乾燥またはプリベークさせた後、図1中の(k)に示すように、紫外線等の光3を照射して硬化させ、上部クラッド層12を形成する。上部クラッド層12は、硬度および耐熱性を向上させるために、さらにポストベークすることが好ましい。こうして図1中の(l)に示す光導波路13が完成する。
なお、図1中の感光性樹脂組成物5,7,11の代わりに、熱硬化性樹脂組成物を用いることもできる。この場合の加熱条件は、特に限定されないが、通常、50℃〜300℃で1分〜24時間加熱される。
【実施例】
【0033】
1.ウレタン(メタ)アクリレートの合成
攪拌機を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート17質量%、ジラウリル酸ジ-n−ブチル錫0.05質量%、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.01質量%を仕込み、5〜10℃に冷却した。攪拌しながら温度が30℃以下に保たれるように2−ヒドロキシエチルアクリレート8質量%を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。次に数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコールを75質量%(以上の合計量100質量%)加え、50〜70℃にて2時間反応を続けた。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。この手法により得られたウレタンアクリレートをウレタンアクリレート1とした。同様の手法で、表1に示す各成分割合にてウレタンアクリレートを合成し、それぞれウレタンアクリレート2、ウレタンアクリレート3を得た。
【表1】

【0034】
2.本発明の感光性樹脂組成物の調製
表2に示す各成分をフラスコに入れた後、60℃にて2時間攪拌しながら溶解させ、均一な透明の樹脂組成物(組成物1〜8)を得た。
【表2】

【0035】
3.光導波路の作製
[実施例1]
シリコンウエファ上に硬化膜厚が15μmとなるようにスピンコートにて前記の調製済みの組成物1を塗布し(図1中の(b))、その後、マスクアライナーにて照度30mW/cmの紫外線を50秒空気雰囲気下で照射し、第一のクラッド層4を形成した(図1中の(c))。
次に、第一のクラッド層の上面に、硬化膜厚が20μmとなるようにスピンコートにて感光性樹脂オプスターPJ3010(商品名;JSR社製)を塗布し、100℃で5分間乾燥させた後、マスクアライナーにて照度30mW/cmの紫外線を30秒空気雰囲気下で紫外線照射した。その後、150℃で1時間加熱することで、第二のクラッド層6を形成した。
その後、第一のクラッド層4と第二のクラッド層6とからなる下部クラッド層の上面に、硬化膜厚が50μmとなるようにスピンコートにて感光性樹脂オプスターPJ3009(商品名;JSR社製)を塗布した後、コア部の幅が50μmのパターンを有するマスクを通して、紫外線を照射した(図1中の(g))。次いで、1%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液からなる現像液によって未照射部を除去し、その後、150℃で1時間の加熱を行った(図1中の(i))。コア部10および第二のクラッド層6の上面に、コア部10の上面からの硬化膜厚が50μmとなるようにスピンコートにて感光性樹脂オプスターPJ3010(商品名;JSR社製)を塗布し、マスクアライナーにて照度30mW/cmの紫外線を30秒空気雰囲気下で紫外線照射し、150℃で1時間の加熱により上部クラッド層12を形成し、光導波路13を完成させた。
[実施例2〜5、比較例1〜4]
表2に示す樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、光導波路を作製した。
【0036】
4.樹脂組成物および光導波路の評価方法
[ガラス転移点]
アプリケーターを用いて、ガラス基板上に樹脂組成物(表2中の組成物1〜7)を100μm厚となるように塗布して、樹脂組成物層を形成させた後、窒素雰囲気下でコンベア式紫外線(UV)照射装置を用いて、1.0J/cmの紫外線を樹脂組成物層に照射し、硬化膜を得た。次いで、共振型動的粘弾性測定装置を用いて、振動周波数10Hzの振動を与えながら、この硬化膜の損失正接の温度依存性を測定した。得られた損失正接の最大値を示す温度をガラス転移温度とした。
[光学特性の測定用サンプルの作製]
実施例に記したように、4インチシリコンウェハの基板上に50μm×50μm角のコアを含む樹脂積層体を形成させてなる直線状の光導波路を用意した。続いて、ダイシングにより、光導波路長が10mmであるサンプルを作製した。
【0037】
[導波路損失]
波長850nmの光を導波路の一端から入射させたときに他端から出射する光量を、光量計(アンリツ社製MT9810A)のパワーメータにより測定し、カットバック法にて導波路損失(dB/cm)を求めた。導波路損失が1.0(dB/cm)を超えるものは×、1.0(dB/cm)以下のものは○とした。
[高温高湿試験における光学特性変化]
初期値の伝送損失を測定後、同一サンプルを温度85℃、相対湿度85%の高温高湿条件下にて1,000時間放置後に、直線状の光導波路の導波路損失を測定し、高温高湿試験の前後における伝送損失の変化量を測定した。伝送損失の変化量が1.0dBを超えるものは×、1.0dB以下のものは○とした。
[ヒートサイクル試験による光学特性変化]
初期値の伝送損失を測定後、同一サンプルを−40℃で30分放置後に、85℃で30分放置するというヒートサイクルを500サイクル繰り返す冷熱処理を行った後に、直線光導波路の伝送損失を測定し、冷熱処理の前後における導波路損失の変化量を測定した。伝送損失の変化量が1.0dBを超えるものは×、0.7dBを超え、1.0dB以下のものは○、0.7dB以下のものは◎とした。
以上の結果を表2、表3に示す。
【0038】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の光導波路用感光性樹脂組成物を用いた光導波路の製造方法の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0040】
1 基板
2 光導波路用感光性樹脂組成物
3 紫外線
4 第一のクラッド層
5 第二のクラッド層用の感光性樹脂組成物
6 第二のクラッド層
7 コア用感光性樹脂組成物
8 フォトマスク
9 成形体
10 コア部
11 上部クラッド層用の感光性樹脂組成物
12 上部クラッド層
13 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート35〜69.98質量%、
(B)エチレン性不飽和基を1つ含む化合物30〜64.98質量%、
(C)アクリロイル基を2つ以上含む(メタ)アクリレート0〜20質量%、
(D)ラジカル性光重合開始剤0.01〜10質量%および
(E)酸化防止剤0.01〜3質量%
を含有することを特徴とする光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物である請求項1に記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分であるイソボルニルアクリレートを10質量%以上含有する請求項1又は2に記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化物のガラス転移温度が100℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
コア部と、クラッド層とからなる光導波路であって、前記クラッド層の少なくとも一部が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路。
【請求項6】
前記クラッド層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物の硬化物からなる第一のクラッド層と、少なくとも該第一のクラッド層と前記コア部の間に介在する第二のクラッド層とからなる請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
基材と、該基材上に形成された下部クラッド層と、該下部クラッド層の上面の一部に形成されたコア部と、該コア部を埋設するように前記下部クラッド層上に形成された上部クラッド層とからなる光導波路であって、前記下部クラッド層が、前記基材上に形成された請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物の硬化物からなる第一のクラッド層と、少なくとも該第一のクラッド層と前記コア部の間に介在する、前記第一のクラッド層とは異なる材料からなる第二のクラッド層とを含むことを特徴とする光導波路。

【図1】
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【公開番号】特開2006−58831(P2006−58831A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283120(P2004−283120)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】