光情報記録方法
【課題】温度や記録パワー,経年変化などで記録波形が変化し,記録品質が劣化する問題を解決する。
【解決手段】記録時にレーザの部品などの影響を受けて変化する光波形に対し,波形の立上り/立下り時間やオーバーシュート量の制御機能のあるドライバを用いて,試し書き,もしくは,テーブルから波形制御レジスタ値を求めて,波形の立上り/立下り時間やオーバーシュート量を最適化する。
【解決手段】記録時にレーザの部品などの影響を受けて変化する光波形に対し,波形の立上り/立下り時間やオーバーシュート量の制御機能のあるドライバを用いて,試し書き,もしくは,テーブルから波形制御レジスタ値を求めて,波形の立上り/立下り時間やオーバーシュート量を最適化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調波形を駆動・制御して光情報記録媒体に情報記録を行う光情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では大容量化が進み、従来までの赤外レーザ(波長780nm)を用いたCDや、赤色レーザ(波長650nm)を用いたDVD、さらに青色レーザ(405nm)を用いたBlu-Ray Disc(BD)が製品化されている。
【0003】
例えば、DVD−RAMに利用されるライトストラテジ技術は、図17に示すように、3種類のパワーレベルを持つ複数のレーザーパルスを利用する。3種類のパワーレベルは、高いレベルから順に、ライトパワー(Pw)、ギャップパワー(Pg)、イレイズパワー(Pe)である。上記のライトパワーPwのレーザ光で光ディスクを照射すると、光ディスクの記録膜が溶融される。その後、急冷すると、光ディスクはアモルファス状態(非晶質状態)となり、光の反射率が低くなる。これが記録マークとして利用される。また、イレイズパワーPeのレーザ光で光ディスクを照射すると、光ディスクの記録膜は結晶状態にされる。レーザ光照射前に非晶質状態であった光ディスク部分は結晶状態になり、元々結晶状態であった光ディスク部分は、そのまま結晶状態に留まる。これにより記録マークを消去できる。
【0004】
ライトストラテジには、CD−R、DVD−R等で採用されている矩形状のモノパルス、CD−RW、DVD−RW、DVD−RAM等で採用されているくし型のマルチパルス(図17参照)、DVD系光ディスクの高倍速記録で採用されているキャッスル型(ノンマルチ型)(図18参照)等がある。
【0005】
図17や図18に示した記録波形のエッジタイミングを決める値や、Pw、Pg、Peのように記録パワーを決める値は、記録パラメータと呼ばれる。これらの記録パラメータは、最適な値が記録媒体ごとに予め決められて記録されている。例えばDVD−RAMでは、内周のLead in area に設けられたControl Data Zone内部のPhysical format information(PFI)エリアに記録されている。記録パラメータ群の最適値が、記録媒体の組成、材料等により異なるためである。
【0006】
即ち、記録マークを記録する場合には、記録波形のエッジタイミングを決める値とPw、Pgのように記録パワーを決める値、及びシフトテーブルの各値等の記録パラメータを記録媒体から読み出し、この読み出された記録パラメータを用いてレーザーパルスを制御することで、最適な記録マークを形成するようにしている。このような技術は、例えば特開2003−85753号公報に記載されている。
【0007】
この際、記録マークが良好に形成されないと、記録したデータを正しく再生することができなくなる可能性があるため、記録マークは良好に形成する必要がある。良好な記録マークを形成するために、レーザをパルス状に発光することで、光ディスク記録膜に照射した時の熱蓄積を制御することが行われている。一般的には、レーザを発光する半導体レーザダイオード(以下、LDと称す)に、パルス状の電流を供給することでLDがパルス状に発光する。
【0008】
LDにパルス状に電流を供給する装置は、レーザドライバ(LDD)である。レーザドライバが、LDにパルス状に電流を供給することで、LDは供給された電流のパルスタイミングに基づいた発光パターンで発光するため、パルス状にレーザを発光することができ、その結果、良好な記録マークを形成している。以下、本明細書では、レーザドライバがLDに供給するパルス状の電流のことを電流パルスと称し、レーザから出力される波形を発光パルスと称す。
【0009】
近年、光ディスクへの記録速度は年々高速化する傾向にある。もともと、レーザドライバからLDへ電流パルスを供給する過程において、LDとレーザドライバ間の電気回路的な負荷の影響が少なからず存在し、LDに供給する電流パルスに影響を与えていた。記録速度の高速化が進み電流パルスのパルス幅が細くなるにつれ、LDとレーザドライバ間の電気回路的な負荷が相対的に電流パルスに与える影響が大きくなり、所望の電流パルスをLDに供給することが困難となった。所望の電流パルスがLDに供給されないと、LDが発光した光波形も所望の波形ではなくなるため、その影響は、ディスク記録面に生成される記録マークに顕著に現れるようになり、記録品質の劣化に繋がる。以下、LDの抵抗負荷をLDの微分抵抗と称す(図19参照)。
【0010】
上記問題に対し、特開2006−48885号公報には、温度に応じてLDとレーザドライバ間の電気回路的な負荷が変動することに着目し、使用時の温度又は温度に応じて変化するLDの負荷に関わる情報を取得し、温度に応じた適切な電流パルスをレーザドライバで生成する方法が記載されている。温度に応じて生成した電流パルスをLDに供給することで、使用時の温度環境が変動した場合でも良好なレーザ発光ができるよう対応している。
【0011】
【特許文献1】特開2003−85753号公報
【特許文献2】特開2006−48885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開2006−48885号公報には、温度の影響でLDの微分抵抗が変化することについて記載されているが、経時的な劣化、あるいはLDが発光するパワーによってもLDの微分抵抗が変化することが本発明者の調査によりわかっている。さらには、上述したようなLDとレーザドライバとを備えた半導体レーザ発生装置を搭載した製品の量産時においては、量産したLDの微分抵抗がある程度の範囲でばらつくことも予想される。この経時変化、発光パワー、あるいは製品ばらつきによるLDの微分抵抗の変化に対しては、温度を監視してもその変動に追従することはできず、光波形を制御することはできない。さらには、一般的な光ディスクドライブの構成では、光ディスクドライブの使用中にLDの微分抵抗を測定する手段がない場合が多く、直接的にLDの微分抵抗を測定することはできない。
【0013】
本発明は以上の点を考慮し、LDやレーザドライバの温度特性、記録パワー、経年劣化などの影響の大きい要因に対して、それに変動があっても安定に記録できる光情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、図2に示す電流パルスの立上がり時間Tr、立下り時間Tfやオーバーシュート量OSに着目し、それらを制御し、最適化することで、LDから常に所望の光波形を発生できるようにする。そのためには、発光パルスの立上がり/立下り時間やオーバーシュートの制御機能を備えたレーザドライバを用い、搭載するLDの微分抵抗の変化に応じて、制御量を調整する必要がある(図3)。制御量の調整方法には、大きく二つが考えられる。
【0015】
一つめは、実際に制御量を変化させて記録し、それを実際に再生した結果から最適制御量を割り出す学習方式である。温度もしくはLDの微分抵抗変化を補償するため、実際のドライブでの記録発光波形の学習を行う。このとき、少なくとも1つの記録パターンを用いて試し書きを行う。その再生信号特性から最適な立上がり/立下り時間、オーバーシュートの制御量を求める。二つめは、予め温度ごと、LDの微分抵抗ごと、LDのパワーごとなどの条件に対して、それぞれの条件に応じた制御量を決めるテーブルを持つ方式である。
【0016】
本発明は、レーザ光源からパルス状のレーザ光を照射して記録媒体に記録マークを形成することによって情報を記録する光情報記録方法に関し、記録パワーの最適化を行う工程と、レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させながら記録媒体に試し書きを行う工程と、試し書きによって記録された情報を再生する工程と、波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程と、波形制御レジスタに求められた最適値を設定する工程と、レーザドライバで駆動されるレーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程とを有する。ここで、波形制御レジスタは、発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュート量の少なくとも1つを調整するものである。
【0017】
また、本発明の光情報記録方法は、温度、記録媒体の推奨記録パワー及び搭載されたレーザ光源の微分抵抗に関する情報を取得する工程と、温度、記録パワー、レーザ光源の微分抵抗の組み合わせと、レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定するレジスタ値とを対応付けて格納したテーブルを参照して、取得した情報に対応するレジスタ値を取得する工程と、取得したレジスタ値をレーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程と、レーザドライバによって駆動されるレーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程とを有する。
【0018】
この場合、取得したレジスタ値をレーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程の後に、記録パワーの最適化を行う工程、レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させながら記録媒体に試し書きを行う工程、試し書きによって記録された情報を再生する工程、波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程、波形制御レジスタに求められた最適値を設定する工程を実行してから、パルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録するようにしてもよい。
【0019】
本発明は、波形の立上がりや立下がりが問題となるような高速時や書き換え型ディスクにおいて大きな効果を発揮するものであり、特に毎秒100Mビット以上の転送速度の光ディスクストレージシステムに好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光ディスクドライブのレーザドライバの性能ばらつき、経年劣化や温度特性により劣化する光出力波形の形状を正確に補償して良好な記録マークを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
最初に、発光パルスの学習方法ついて説明する。図4、5は記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図である。本発明において、レーザドライバは、図4に示すように、単にレジスタ指令を受け、電流を出力する機能を有するものであっても、図5に示すように、その機能に加え、ストラテジ生成回路を含むものであってもよい。入力データは、符号化回路で符号化され、その符号化した信号をディスク上に書き込むためのストラテジを形成する信号にストラテジ生成回路で変換される。ゆえに、図4、5においてパワーレジスタはストラテジ生成回路にあるものとする。この信号がレーザドライバに入力される。図6は、レーザドライバが発生する駆動電流パルスと、LDから出力される発光パルスの関係を示す模式図である。図6に示すように、レーザドライバからの電流波形がレーザダイオードに伝送され、レーザ発光波形となる。
【0023】
記録の際には、記録パラメータを記録媒体と記録装置の間で最適化する必要があり、例えば記録媒体に記載されている媒体製造者より提供される記録パラメータを基に、媒体に記録を行って該記録領域を再生した際に、記録品質の指標となる再生波形のジッタ、もしくはエラー数が最小となるようにストラテジを最適化する等の動作(以下、「ストラテジ学習」という)が必要になる。本発明では、このストラテジ学習の前に波形制御学習を入れる。
【0024】
図1に示したフロー1を用いて説明する。この場合の制御シーケンスを説明すると、以下の(1)〜(4)のようになる。
(1)記録する準備として、レーザパワー調整によってレーザドライバの出力電流とレーザ発光の関係を取得する。
【0025】
(2)次にOPC(Optimum Power Control)と称される、記録するパワーの最適化を行う。
【0026】
(3)従来のフローでは、次にストラテジ最適化もしくはこのまま記録するが、本発明では、ここで波形の制御を行う。図7に波形制御学習の手順を示す。波形制御学習は、波形制御機能のあるレーザドライバの制御レジスタ値を変化させて複数のパターンを記録し、その後、記録したパターンを再生し、適当な指標に従って制御レジスタ値の最適値を抽出することで行う。
【0027】
図8は、制御レジスタを有するレーザドライバの一例を示す略図である。図示したレーザドライバは、発光パルスの立上がり時間を制御するTr制御レジスタ、立下がり時間を制御するTf制御レジスタ、及びオーバーシュート量を制御するOS制御レジスタを備える。図9は、発光パルスの立上り時間Tr、立下り時間Tf、及びオーバーシュート量OSの、制御レジスタ値依存性の一例を示す図である。波形制御機能のあるレーザドライバを用いると、図9に示すように、制御レジスタのレジスタ値を変えることにより、その制御レジスタに対応する波形パラメータを制御することができ、最適化できる。
【0028】
例えば、発光パルスの立上がり時間を最適化するには、Tr制御レジスタの設定値を変えて複数回のパターン記録を行う。このとき、図9(a)に示すように、Tr制御レジスタ値に応じて異なる立上がり時間Trを有する電流パルスが得られ、それらによって駆動されたLDから発生された光波形によって記録マークが形成される。次にそれを再生し、図10に示すように、Tr制御レジスタ値と記録品質の指標との関係を取得する。記録品質の指標には、再生波形のジッタあるいはエラーレートを使うことができる。こうしてTr制御レジスタの最適値が求まったら、Tr制御レジスタにその最適値を設定する。こうして発光パルスの立上がり時間Trが最適制御される。
【0029】
次に、別の制御レジスタ、例えばTf制御レジスタの値を変えて複数回のパターン記録を行い、それを再生したときの記録品質の指標を元にTf制御レジスタの最適値を求め、その最適値をTf制御レジスタに設定する。これによって発光パルスの立下がり時間Tfが最適制御される。さらに、同様の方法でオーバーシュート量OSを制御するOS制御レジスタの最適値を求め、求まった最適値をOS制御レジスタに設定する。これによって電流パルスのオーバーシュート量OSが最適制御される。
【0030】
こうして、一つ以上のレジスタの最適化を行う。なお、本実施例では、立上がり時間Tr、立下がり時間Tf及びオーバーシュート量OSについて最適化を行ったが、波形制御に利用できる制御レジスタの種類や数はレーザドライバに依存する。従って、それぞれのレーザドライバに備わっている波形制御用レジスタの最適値をそれぞれ学習によって求め、各制御レジスタに求まった最適値を設定すればよい。
【0031】
(4)波形制御学習によって最適化された波形によって、ストラテジの最適化もしくは、このまま記録動作へ進む。
【0032】
この学習方式による波形制御を用いれば、ドライブ内の温度変化に対するLDやドライバう回路などの部品特性の変化や、LDの微分抵抗のパワー依存性、部品の経年変化などに対応することができる。
【実施例2】
【0033】
第2の実施例を、図1のフロー2のシーケンスを用いて説明する。通常、半導体によって作製されるレーザドライバやレーザは、温度によって特性が変化する。この温度特性により、先に述べた立上り時間/立下り時間やオーバーシュート量が変化する。この温度変化による微分抵抗変化を予め測定しておき、温度に対応した最適レジスタ値を記憶した温度テーブルも用意しておく。図11に、温度の違いによる波形制御に関するテーブルの例を示す。典型的な温度、例えば0℃、25℃、50℃における波形制御パラメータとして、立上がり時間Tr、立下がり時間Tf、オーバーシュート量OSの最適値をテーブル化したものである。
【0034】
本実施例の制御シーケンスは、以下のようになる。
(1)実施例1と同様に、レーザパワー調整によってレーザドライバの出力電流とレーザ発光の関係を取得する。
(2)次に、実施例1とは異なり、OPCの前に発光パルスの制御を行う。このとき、最適記録パワーも決まっていないことから、記録して再生という学習方式はとれない。そこで、このとき温度センサ16で観測された温度で図11のようなテーブルを参照し、Tr、Tf、OSに対するレジスタを設定する。また温度だけでなく、レーザパワーやレーザの微分抵抗(Rd)によっても波形が変化する場合にはレーザパワーの大きさの規定や微分抵抗の大小によって、図12のようなテーブルを作成して参照する。
(3)次に、記録パワーの最適化であるOPCを行う。
(4)波形制御学習によって最適化された波形によって、ストラテジの最適化もしくは、このまま記録動作へ進む。
【0035】
また、このとき用いる補償テーブルの書き方の実施例を説明する。まずドライブ出荷前に、図13のように、例えば温度による立上り時間/立下り時間の変化、オーバーシュートの変化のデータを取得する。この変化の要因の多くはLDの微分抵抗だと考えられる。図14に略示するように、微分抵抗は温度、レーザパワー(記録パワー)、レーザの使用時間(経年変化)で変化する。これらの要因に対して、図13のように調整によって改善するパラメータ(レジスタ)の値を、条件ごとにテーブル化する(図11、図12参照)。経年変化に関しては、レーザの使用時間をドライブで管理し、微分抵抗値を予測するテーブルを別にもつことにより図12のRdの分類に反映させればよい。このように、システム設計の観点から、パラメータ数を決めてテーブルを作成する。
【実施例3】
【0036】
第3の実施例を、図15を用いて説明する。
実施例1、2を単独で行う場合、発光パルス制御として精度が出ない場合も考えられる。そこで、OPCの前に実施例2で述べたテーブル方式の発光パルス制御を行い、OPCの後に実施例1で述べた学習方式の発光パルス制御を行う。シーケンスは以下のようになる。
1.実施例1、2と同様に、レーザパワー調整によってレーザドライバの出力電流とレーザ発光の関係を取得する。
2.次に、実施例2と同じく、OPCの前に発光パルスの制御を行う。実施例2と同様に観測された温度やディスクの推奨記録パワーを参考にした記録パワー、またドライブに搭載されたLDの微分抵抗データから作成されたテーブルを参考に立上り/立下り時間やオーバーシュート(OS)を補正するレジスタ値をここで決める(図12参照)。
3.次に、記録パワーの最適化であるOPCを行う。
4.実施例2ではストラテジ最適化もしくはこのまま記録するが、ここでは、学習方式の波形制御を行う。図7及び図10を参照して実施例1で説明したように、波形制御学習は、制御するレジスタを変化させて記録し、その記録した場所を再生し、所望の指標でその制御レジスタの最適値を抽出する。ひとつのレジスタについて最適化を行ったあと、次に最適化するレジスタへ進み、同様に最適化処理を行う。このとき、一つ以上のレジスタの最適化を行う。
5.波形制御学習によって最適化された波形によって、ストラテジの最適化もしくは、このまま記録動作へ進む。
【0037】
本実施例によると、OPCの精度を高め、実施例1、2よりも記録品質を高めることができる場合もある。
【実施例4】
【0038】
本実施例では、記録中においても発光パルス制御を行う例について説明する。ドライブで記録動作中に、常にLDやドライブの温度を温度センサで観測しておき、波形調整を行った温度から一定以上の温度変化があった場合、一度記録を中断し、波形調整を行うため、ディスクのOPC領域(試し記録できる領域)に戻る。そして、図1もしくは図15に示したフローで波形制御を行う。このとき、テーブル方式、学習方式、テーブル方式+学習方式のいずれかを用いるが、どの方式を採用するかはシステムマージンや時間の制約から選択すればよい。また、温度センサによって検出された温度だけでなく、例えば記録中の記録品質を確認するシステムを構築し、記録中に記録品質の劣化を確認したら、同様に波形調整を行うようにしてもよい。
【0039】
このOPC領域での波形調整後、データ記録領域に戻り、調整後の波形で記録を再開する。また記録中の動作になるため、システム上時間の制約がある場合、テーブル方式のみを採用し、検出された温度をもとに、記録中に記録を中断せずに波形調整することも可能である。
【実施例5】
【0040】
本発明の発光パルス学習に用いる記録パターンとしては、図16(a)に示すようなランダムパターンが用いられる。図16(a)は、2T〜8Tのマーク/スペースのランダムパターンの一部を示している。図中、Mはマークを表し、Sはスペースを表す。ただし、波形学習の精度を高めるために、図16(b)に示すような特殊パターンを記録する場合も考えられる。図16(b)には、3Tと8Tのみのパターンを示している。
【0041】
例えば図17に示すマルチパルスストラテジの場合にはランダムパターンを記録して波形学習し、図18に示すキャスルストラテジの場合は特殊パターンを記録して波形学習する。また、光ディスクには一回記録型(BDではBD−R)と複数回記録型(BD−RE)があるが、光ディスクの種類によって記録パターンを変えて波形学習をする方が、波形学習の精度が高くなる場合には、その精度の高い記録パターンを用いればよい。またTr、Tf、OSの制御のそれぞれに応じて記録パターンを変えてもよい。さらに一つのパラメータ制御の最適値を求めるために、2種類以上の記録パターンを用いることもある。
【実施例6】
【0042】
CAV(Constant Angular Velocity)記録では、角速度一定で記録するので、内周から外周にかけて記録速度が変化する。その場合、複数の記録速度において、ストラテジや記録パワーなどの記録パラメータ必要となる。この場合の波形学習回数はストラテジの数や、試し記録の回数に応じて行うか、もしくは代表的な記録速度で最低1回は行う。例えば最内周2.4xで最外周6xのCAVでストラテジが2.4xと6xで定められている場合、2.4xと6xの2回波形学習を行うのでもよいし、6xのみ1回ですむ場合もある。これらは設計の範疇であり、設計者が選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による制御シーケンスの例を示す図。
【図2】発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュートの説明図。
【図3】波形制御適正量のLD微分抵抗依存性を示す図。
【図4】記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図(レーザドライバにストラテジ生成機能がない場合)。
【図5】記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図(レーザドライバにストラテジ生成機能がある場合)。
【図6】LD駆動電流パルスとLD発光パルスの関係を示す図。
【図7】波形制御学習の手順を示す図。
【図8】レーザドライバの一例を示す模式図。
【図9】発光パルスの立上り時間Tr、立下り時間Tf、オーバーシュートOSの各制御レジスタ値依存性を示す図。
【図10】波形制御レジスタ値の最適化の方法を示す図。
【図11】温度変化に対する波形制御パラメータ(レジスタ)の一例を示す図。
【図12】温度、LDパワー、微分抵抗に対する波形制御パラメータ(レジスタ)の一例を示す図。
【図13】温度に対する発光パルスの立上り/立下り時間、オーバーシュートの変化を示す図。
【図14】LDの微分抵抗の温度依存性、レーザパワー依存性、動作時間依存性を示す図。
【図15】本発明による波形制御をOPCの前後に行う場合のシーケンスを示す図。
【図16】ランダムパターンと特殊パターンの一例を示す図。
【図17】マルチパルスのライトストラテジの一例と、このストラテジによって形成される記録マークの説明図。
【図18】ノンマルチパルス(別名キャスルパルス)のライトストラテジの一例と、このストラテジによって形成される記録マークの説明図。
【図19】レーザドライバからレーザまでの回路モデルを示す図。
【符号の説明】
【0044】
LD…レーザダイオード
10…光ディスク
11…レーザダイオード
12…LDドライバ
13…ストラテジ生成回路
14…符号化回路
15…記録データ
16…温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調波形を駆動・制御して光情報記録媒体に情報記録を行う光情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では大容量化が進み、従来までの赤外レーザ(波長780nm)を用いたCDや、赤色レーザ(波長650nm)を用いたDVD、さらに青色レーザ(405nm)を用いたBlu-Ray Disc(BD)が製品化されている。
【0003】
例えば、DVD−RAMに利用されるライトストラテジ技術は、図17に示すように、3種類のパワーレベルを持つ複数のレーザーパルスを利用する。3種類のパワーレベルは、高いレベルから順に、ライトパワー(Pw)、ギャップパワー(Pg)、イレイズパワー(Pe)である。上記のライトパワーPwのレーザ光で光ディスクを照射すると、光ディスクの記録膜が溶融される。その後、急冷すると、光ディスクはアモルファス状態(非晶質状態)となり、光の反射率が低くなる。これが記録マークとして利用される。また、イレイズパワーPeのレーザ光で光ディスクを照射すると、光ディスクの記録膜は結晶状態にされる。レーザ光照射前に非晶質状態であった光ディスク部分は結晶状態になり、元々結晶状態であった光ディスク部分は、そのまま結晶状態に留まる。これにより記録マークを消去できる。
【0004】
ライトストラテジには、CD−R、DVD−R等で採用されている矩形状のモノパルス、CD−RW、DVD−RW、DVD−RAM等で採用されているくし型のマルチパルス(図17参照)、DVD系光ディスクの高倍速記録で採用されているキャッスル型(ノンマルチ型)(図18参照)等がある。
【0005】
図17や図18に示した記録波形のエッジタイミングを決める値や、Pw、Pg、Peのように記録パワーを決める値は、記録パラメータと呼ばれる。これらの記録パラメータは、最適な値が記録媒体ごとに予め決められて記録されている。例えばDVD−RAMでは、内周のLead in area に設けられたControl Data Zone内部のPhysical format information(PFI)エリアに記録されている。記録パラメータ群の最適値が、記録媒体の組成、材料等により異なるためである。
【0006】
即ち、記録マークを記録する場合には、記録波形のエッジタイミングを決める値とPw、Pgのように記録パワーを決める値、及びシフトテーブルの各値等の記録パラメータを記録媒体から読み出し、この読み出された記録パラメータを用いてレーザーパルスを制御することで、最適な記録マークを形成するようにしている。このような技術は、例えば特開2003−85753号公報に記載されている。
【0007】
この際、記録マークが良好に形成されないと、記録したデータを正しく再生することができなくなる可能性があるため、記録マークは良好に形成する必要がある。良好な記録マークを形成するために、レーザをパルス状に発光することで、光ディスク記録膜に照射した時の熱蓄積を制御することが行われている。一般的には、レーザを発光する半導体レーザダイオード(以下、LDと称す)に、パルス状の電流を供給することでLDがパルス状に発光する。
【0008】
LDにパルス状に電流を供給する装置は、レーザドライバ(LDD)である。レーザドライバが、LDにパルス状に電流を供給することで、LDは供給された電流のパルスタイミングに基づいた発光パターンで発光するため、パルス状にレーザを発光することができ、その結果、良好な記録マークを形成している。以下、本明細書では、レーザドライバがLDに供給するパルス状の電流のことを電流パルスと称し、レーザから出力される波形を発光パルスと称す。
【0009】
近年、光ディスクへの記録速度は年々高速化する傾向にある。もともと、レーザドライバからLDへ電流パルスを供給する過程において、LDとレーザドライバ間の電気回路的な負荷の影響が少なからず存在し、LDに供給する電流パルスに影響を与えていた。記録速度の高速化が進み電流パルスのパルス幅が細くなるにつれ、LDとレーザドライバ間の電気回路的な負荷が相対的に電流パルスに与える影響が大きくなり、所望の電流パルスをLDに供給することが困難となった。所望の電流パルスがLDに供給されないと、LDが発光した光波形も所望の波形ではなくなるため、その影響は、ディスク記録面に生成される記録マークに顕著に現れるようになり、記録品質の劣化に繋がる。以下、LDの抵抗負荷をLDの微分抵抗と称す(図19参照)。
【0010】
上記問題に対し、特開2006−48885号公報には、温度に応じてLDとレーザドライバ間の電気回路的な負荷が変動することに着目し、使用時の温度又は温度に応じて変化するLDの負荷に関わる情報を取得し、温度に応じた適切な電流パルスをレーザドライバで生成する方法が記載されている。温度に応じて生成した電流パルスをLDに供給することで、使用時の温度環境が変動した場合でも良好なレーザ発光ができるよう対応している。
【0011】
【特許文献1】特開2003−85753号公報
【特許文献2】特開2006−48885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開2006−48885号公報には、温度の影響でLDの微分抵抗が変化することについて記載されているが、経時的な劣化、あるいはLDが発光するパワーによってもLDの微分抵抗が変化することが本発明者の調査によりわかっている。さらには、上述したようなLDとレーザドライバとを備えた半導体レーザ発生装置を搭載した製品の量産時においては、量産したLDの微分抵抗がある程度の範囲でばらつくことも予想される。この経時変化、発光パワー、あるいは製品ばらつきによるLDの微分抵抗の変化に対しては、温度を監視してもその変動に追従することはできず、光波形を制御することはできない。さらには、一般的な光ディスクドライブの構成では、光ディスクドライブの使用中にLDの微分抵抗を測定する手段がない場合が多く、直接的にLDの微分抵抗を測定することはできない。
【0013】
本発明は以上の点を考慮し、LDやレーザドライバの温度特性、記録パワー、経年劣化などの影響の大きい要因に対して、それに変動があっても安定に記録できる光情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、図2に示す電流パルスの立上がり時間Tr、立下り時間Tfやオーバーシュート量OSに着目し、それらを制御し、最適化することで、LDから常に所望の光波形を発生できるようにする。そのためには、発光パルスの立上がり/立下り時間やオーバーシュートの制御機能を備えたレーザドライバを用い、搭載するLDの微分抵抗の変化に応じて、制御量を調整する必要がある(図3)。制御量の調整方法には、大きく二つが考えられる。
【0015】
一つめは、実際に制御量を変化させて記録し、それを実際に再生した結果から最適制御量を割り出す学習方式である。温度もしくはLDの微分抵抗変化を補償するため、実際のドライブでの記録発光波形の学習を行う。このとき、少なくとも1つの記録パターンを用いて試し書きを行う。その再生信号特性から最適な立上がり/立下り時間、オーバーシュートの制御量を求める。二つめは、予め温度ごと、LDの微分抵抗ごと、LDのパワーごとなどの条件に対して、それぞれの条件に応じた制御量を決めるテーブルを持つ方式である。
【0016】
本発明は、レーザ光源からパルス状のレーザ光を照射して記録媒体に記録マークを形成することによって情報を記録する光情報記録方法に関し、記録パワーの最適化を行う工程と、レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させながら記録媒体に試し書きを行う工程と、試し書きによって記録された情報を再生する工程と、波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程と、波形制御レジスタに求められた最適値を設定する工程と、レーザドライバで駆動されるレーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程とを有する。ここで、波形制御レジスタは、発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュート量の少なくとも1つを調整するものである。
【0017】
また、本発明の光情報記録方法は、温度、記録媒体の推奨記録パワー及び搭載されたレーザ光源の微分抵抗に関する情報を取得する工程と、温度、記録パワー、レーザ光源の微分抵抗の組み合わせと、レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定するレジスタ値とを対応付けて格納したテーブルを参照して、取得した情報に対応するレジスタ値を取得する工程と、取得したレジスタ値をレーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程と、レーザドライバによって駆動されるレーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程とを有する。
【0018】
この場合、取得したレジスタ値をレーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程の後に、記録パワーの最適化を行う工程、レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させながら記録媒体に試し書きを行う工程、試し書きによって記録された情報を再生する工程、波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程、波形制御レジスタに求められた最適値を設定する工程を実行してから、パルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録するようにしてもよい。
【0019】
本発明は、波形の立上がりや立下がりが問題となるような高速時や書き換え型ディスクにおいて大きな効果を発揮するものであり、特に毎秒100Mビット以上の転送速度の光ディスクストレージシステムに好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光ディスクドライブのレーザドライバの性能ばらつき、経年劣化や温度特性により劣化する光出力波形の形状を正確に補償して良好な記録マークを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
最初に、発光パルスの学習方法ついて説明する。図4、5は記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図である。本発明において、レーザドライバは、図4に示すように、単にレジスタ指令を受け、電流を出力する機能を有するものであっても、図5に示すように、その機能に加え、ストラテジ生成回路を含むものであってもよい。入力データは、符号化回路で符号化され、その符号化した信号をディスク上に書き込むためのストラテジを形成する信号にストラテジ生成回路で変換される。ゆえに、図4、5においてパワーレジスタはストラテジ生成回路にあるものとする。この信号がレーザドライバに入力される。図6は、レーザドライバが発生する駆動電流パルスと、LDから出力される発光パルスの関係を示す模式図である。図6に示すように、レーザドライバからの電流波形がレーザダイオードに伝送され、レーザ発光波形となる。
【0023】
記録の際には、記録パラメータを記録媒体と記録装置の間で最適化する必要があり、例えば記録媒体に記載されている媒体製造者より提供される記録パラメータを基に、媒体に記録を行って該記録領域を再生した際に、記録品質の指標となる再生波形のジッタ、もしくはエラー数が最小となるようにストラテジを最適化する等の動作(以下、「ストラテジ学習」という)が必要になる。本発明では、このストラテジ学習の前に波形制御学習を入れる。
【0024】
図1に示したフロー1を用いて説明する。この場合の制御シーケンスを説明すると、以下の(1)〜(4)のようになる。
(1)記録する準備として、レーザパワー調整によってレーザドライバの出力電流とレーザ発光の関係を取得する。
【0025】
(2)次にOPC(Optimum Power Control)と称される、記録するパワーの最適化を行う。
【0026】
(3)従来のフローでは、次にストラテジ最適化もしくはこのまま記録するが、本発明では、ここで波形の制御を行う。図7に波形制御学習の手順を示す。波形制御学習は、波形制御機能のあるレーザドライバの制御レジスタ値を変化させて複数のパターンを記録し、その後、記録したパターンを再生し、適当な指標に従って制御レジスタ値の最適値を抽出することで行う。
【0027】
図8は、制御レジスタを有するレーザドライバの一例を示す略図である。図示したレーザドライバは、発光パルスの立上がり時間を制御するTr制御レジスタ、立下がり時間を制御するTf制御レジスタ、及びオーバーシュート量を制御するOS制御レジスタを備える。図9は、発光パルスの立上り時間Tr、立下り時間Tf、及びオーバーシュート量OSの、制御レジスタ値依存性の一例を示す図である。波形制御機能のあるレーザドライバを用いると、図9に示すように、制御レジスタのレジスタ値を変えることにより、その制御レジスタに対応する波形パラメータを制御することができ、最適化できる。
【0028】
例えば、発光パルスの立上がり時間を最適化するには、Tr制御レジスタの設定値を変えて複数回のパターン記録を行う。このとき、図9(a)に示すように、Tr制御レジスタ値に応じて異なる立上がり時間Trを有する電流パルスが得られ、それらによって駆動されたLDから発生された光波形によって記録マークが形成される。次にそれを再生し、図10に示すように、Tr制御レジスタ値と記録品質の指標との関係を取得する。記録品質の指標には、再生波形のジッタあるいはエラーレートを使うことができる。こうしてTr制御レジスタの最適値が求まったら、Tr制御レジスタにその最適値を設定する。こうして発光パルスの立上がり時間Trが最適制御される。
【0029】
次に、別の制御レジスタ、例えばTf制御レジスタの値を変えて複数回のパターン記録を行い、それを再生したときの記録品質の指標を元にTf制御レジスタの最適値を求め、その最適値をTf制御レジスタに設定する。これによって発光パルスの立下がり時間Tfが最適制御される。さらに、同様の方法でオーバーシュート量OSを制御するOS制御レジスタの最適値を求め、求まった最適値をOS制御レジスタに設定する。これによって電流パルスのオーバーシュート量OSが最適制御される。
【0030】
こうして、一つ以上のレジスタの最適化を行う。なお、本実施例では、立上がり時間Tr、立下がり時間Tf及びオーバーシュート量OSについて最適化を行ったが、波形制御に利用できる制御レジスタの種類や数はレーザドライバに依存する。従って、それぞれのレーザドライバに備わっている波形制御用レジスタの最適値をそれぞれ学習によって求め、各制御レジスタに求まった最適値を設定すればよい。
【0031】
(4)波形制御学習によって最適化された波形によって、ストラテジの最適化もしくは、このまま記録動作へ進む。
【0032】
この学習方式による波形制御を用いれば、ドライブ内の温度変化に対するLDやドライバう回路などの部品特性の変化や、LDの微分抵抗のパワー依存性、部品の経年変化などに対応することができる。
【実施例2】
【0033】
第2の実施例を、図1のフロー2のシーケンスを用いて説明する。通常、半導体によって作製されるレーザドライバやレーザは、温度によって特性が変化する。この温度特性により、先に述べた立上り時間/立下り時間やオーバーシュート量が変化する。この温度変化による微分抵抗変化を予め測定しておき、温度に対応した最適レジスタ値を記憶した温度テーブルも用意しておく。図11に、温度の違いによる波形制御に関するテーブルの例を示す。典型的な温度、例えば0℃、25℃、50℃における波形制御パラメータとして、立上がり時間Tr、立下がり時間Tf、オーバーシュート量OSの最適値をテーブル化したものである。
【0034】
本実施例の制御シーケンスは、以下のようになる。
(1)実施例1と同様に、レーザパワー調整によってレーザドライバの出力電流とレーザ発光の関係を取得する。
(2)次に、実施例1とは異なり、OPCの前に発光パルスの制御を行う。このとき、最適記録パワーも決まっていないことから、記録して再生という学習方式はとれない。そこで、このとき温度センサ16で観測された温度で図11のようなテーブルを参照し、Tr、Tf、OSに対するレジスタを設定する。また温度だけでなく、レーザパワーやレーザの微分抵抗(Rd)によっても波形が変化する場合にはレーザパワーの大きさの規定や微分抵抗の大小によって、図12のようなテーブルを作成して参照する。
(3)次に、記録パワーの最適化であるOPCを行う。
(4)波形制御学習によって最適化された波形によって、ストラテジの最適化もしくは、このまま記録動作へ進む。
【0035】
また、このとき用いる補償テーブルの書き方の実施例を説明する。まずドライブ出荷前に、図13のように、例えば温度による立上り時間/立下り時間の変化、オーバーシュートの変化のデータを取得する。この変化の要因の多くはLDの微分抵抗だと考えられる。図14に略示するように、微分抵抗は温度、レーザパワー(記録パワー)、レーザの使用時間(経年変化)で変化する。これらの要因に対して、図13のように調整によって改善するパラメータ(レジスタ)の値を、条件ごとにテーブル化する(図11、図12参照)。経年変化に関しては、レーザの使用時間をドライブで管理し、微分抵抗値を予測するテーブルを別にもつことにより図12のRdの分類に反映させればよい。このように、システム設計の観点から、パラメータ数を決めてテーブルを作成する。
【実施例3】
【0036】
第3の実施例を、図15を用いて説明する。
実施例1、2を単独で行う場合、発光パルス制御として精度が出ない場合も考えられる。そこで、OPCの前に実施例2で述べたテーブル方式の発光パルス制御を行い、OPCの後に実施例1で述べた学習方式の発光パルス制御を行う。シーケンスは以下のようになる。
1.実施例1、2と同様に、レーザパワー調整によってレーザドライバの出力電流とレーザ発光の関係を取得する。
2.次に、実施例2と同じく、OPCの前に発光パルスの制御を行う。実施例2と同様に観測された温度やディスクの推奨記録パワーを参考にした記録パワー、またドライブに搭載されたLDの微分抵抗データから作成されたテーブルを参考に立上り/立下り時間やオーバーシュート(OS)を補正するレジスタ値をここで決める(図12参照)。
3.次に、記録パワーの最適化であるOPCを行う。
4.実施例2ではストラテジ最適化もしくはこのまま記録するが、ここでは、学習方式の波形制御を行う。図7及び図10を参照して実施例1で説明したように、波形制御学習は、制御するレジスタを変化させて記録し、その記録した場所を再生し、所望の指標でその制御レジスタの最適値を抽出する。ひとつのレジスタについて最適化を行ったあと、次に最適化するレジスタへ進み、同様に最適化処理を行う。このとき、一つ以上のレジスタの最適化を行う。
5.波形制御学習によって最適化された波形によって、ストラテジの最適化もしくは、このまま記録動作へ進む。
【0037】
本実施例によると、OPCの精度を高め、実施例1、2よりも記録品質を高めることができる場合もある。
【実施例4】
【0038】
本実施例では、記録中においても発光パルス制御を行う例について説明する。ドライブで記録動作中に、常にLDやドライブの温度を温度センサで観測しておき、波形調整を行った温度から一定以上の温度変化があった場合、一度記録を中断し、波形調整を行うため、ディスクのOPC領域(試し記録できる領域)に戻る。そして、図1もしくは図15に示したフローで波形制御を行う。このとき、テーブル方式、学習方式、テーブル方式+学習方式のいずれかを用いるが、どの方式を採用するかはシステムマージンや時間の制約から選択すればよい。また、温度センサによって検出された温度だけでなく、例えば記録中の記録品質を確認するシステムを構築し、記録中に記録品質の劣化を確認したら、同様に波形調整を行うようにしてもよい。
【0039】
このOPC領域での波形調整後、データ記録領域に戻り、調整後の波形で記録を再開する。また記録中の動作になるため、システム上時間の制約がある場合、テーブル方式のみを採用し、検出された温度をもとに、記録中に記録を中断せずに波形調整することも可能である。
【実施例5】
【0040】
本発明の発光パルス学習に用いる記録パターンとしては、図16(a)に示すようなランダムパターンが用いられる。図16(a)は、2T〜8Tのマーク/スペースのランダムパターンの一部を示している。図中、Mはマークを表し、Sはスペースを表す。ただし、波形学習の精度を高めるために、図16(b)に示すような特殊パターンを記録する場合も考えられる。図16(b)には、3Tと8Tのみのパターンを示している。
【0041】
例えば図17に示すマルチパルスストラテジの場合にはランダムパターンを記録して波形学習し、図18に示すキャスルストラテジの場合は特殊パターンを記録して波形学習する。また、光ディスクには一回記録型(BDではBD−R)と複数回記録型(BD−RE)があるが、光ディスクの種類によって記録パターンを変えて波形学習をする方が、波形学習の精度が高くなる場合には、その精度の高い記録パターンを用いればよい。またTr、Tf、OSの制御のそれぞれに応じて記録パターンを変えてもよい。さらに一つのパラメータ制御の最適値を求めるために、2種類以上の記録パターンを用いることもある。
【実施例6】
【0042】
CAV(Constant Angular Velocity)記録では、角速度一定で記録するので、内周から外周にかけて記録速度が変化する。その場合、複数の記録速度において、ストラテジや記録パワーなどの記録パラメータ必要となる。この場合の波形学習回数はストラテジの数や、試し記録の回数に応じて行うか、もしくは代表的な記録速度で最低1回は行う。例えば最内周2.4xで最外周6xのCAVでストラテジが2.4xと6xで定められている場合、2.4xと6xの2回波形学習を行うのでもよいし、6xのみ1回ですむ場合もある。これらは設計の範疇であり、設計者が選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による制御シーケンスの例を示す図。
【図2】発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュートの説明図。
【図3】波形制御適正量のLD微分抵抗依存性を示す図。
【図4】記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図(レーザドライバにストラテジ生成機能がない場合)。
【図5】記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図(レーザドライバにストラテジ生成機能がある場合)。
【図6】LD駆動電流パルスとLD発光パルスの関係を示す図。
【図7】波形制御学習の手順を示す図。
【図8】レーザドライバの一例を示す模式図。
【図9】発光パルスの立上り時間Tr、立下り時間Tf、オーバーシュートOSの各制御レジスタ値依存性を示す図。
【図10】波形制御レジスタ値の最適化の方法を示す図。
【図11】温度変化に対する波形制御パラメータ(レジスタ)の一例を示す図。
【図12】温度、LDパワー、微分抵抗に対する波形制御パラメータ(レジスタ)の一例を示す図。
【図13】温度に対する発光パルスの立上り/立下り時間、オーバーシュートの変化を示す図。
【図14】LDの微分抵抗の温度依存性、レーザパワー依存性、動作時間依存性を示す図。
【図15】本発明による波形制御をOPCの前後に行う場合のシーケンスを示す図。
【図16】ランダムパターンと特殊パターンの一例を示す図。
【図17】マルチパルスのライトストラテジの一例と、このストラテジによって形成される記録マークの説明図。
【図18】ノンマルチパルス(別名キャスルパルス)のライトストラテジの一例と、このストラテジによって形成される記録マークの説明図。
【図19】レーザドライバからレーザまでの回路モデルを示す図。
【符号の説明】
【0044】
LD…レーザダイオード
10…光ディスク
11…レーザダイオード
12…LDドライバ
13…ストラテジ生成回路
14…符号化回路
15…記録データ
16…温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源からパルス状のレーザ光を照射して記録媒体に記録マークを形成することによって情報を記録する光情報記録方法において、
記録パワーの最適化を行う工程と、
前記レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、前記レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させ、実質的に発光パルスを変化させながら前記記録媒体に試し書きを行う工程と、
前記試し書きによって記録された情報を再生する工程と、
前記波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに前記波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程と、
前記波形制御レジスタに前記最適値を設定する工程と、
前記レーザドライバで駆動される前記レーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程と
を有することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項2】
請求項1記載の光情報記録方法において、前記波形制御レジスタは、前記発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュート量の少なくとも1つを調整するものであることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項3】
請求項1記載の光情報記録方法において、前記試し書きによって記録するパターンがランダムパターンであることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項4】
請求項2記載の光情報記録方法において、前記波形制御レジスタで調整するパラメータにより、前記試し書きによって記録するパターンを変えるもしくは2種類以上のパターンを用いることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項5】
請求項1記載の光情報記録方法において、記録ストラテジによって、前記試し書きによって記録するパターンを変えることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項6】
レーザ光源からパルス状のレーザ光を照射して記録媒体に記録マークを形成することによって情報を記録する光情報記録方法において、
温度、前記記録媒体の推奨記録パワー及び搭載されたレーザ光源の微分抵抗に関する情報を取得する工程と、
温度、記録パワー、レーザ光源の微分抵抗の組み合わせと、前記レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定するレジスタ値とを対応付けて格納したテーブルを参照して、前記取得した情報に対応するレジスタ値を取得する工程と、
取得したレジスタ値を前記レーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程と、
前記レーザドライバによって駆動される前記レーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程と
を有することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項7】
請求項6記載の光情報記録方法において、前記取得したレジスタ値を前記レーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程と前記情報を記録する工程との間に、
記録パワーの最適化を行う工程と、
前記レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、前記レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させ、実質的に発光パルスを変化させながら前記記録媒体に試し書きを行う工程と、
前記試し書きによって記録された情報を再生する工程と、
前記波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに前記波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程と、
前記波形制御レジスタに前記最適値を設定する工程と
を有することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項8】
請求項1記載の光情報記録方法において、情報の記録方式がCAV方式であり、第1の記録速度と第2の記録速度に対して前記波形制御レジスタに設定する値の最適値を第1のレジスタ値と第2のレジスタ値として求めて記憶し、前記第1のレジスタ値と前記第2のレジスタ値とから、前記第1の記録速度と前記第2の記録速度の中間の第3の記録速度に対するレジスタ値を導出することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項1】
レーザ光源からパルス状のレーザ光を照射して記録媒体に記録マークを形成することによって情報を記録する光情報記録方法において、
記録パワーの最適化を行う工程と、
前記レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、前記レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させ、実質的に発光パルスを変化させながら前記記録媒体に試し書きを行う工程と、
前記試し書きによって記録された情報を再生する工程と、
前記波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに前記波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程と、
前記波形制御レジスタに前記最適値を設定する工程と、
前記レーザドライバで駆動される前記レーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程と
を有することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項2】
請求項1記載の光情報記録方法において、前記波形制御レジスタは、前記発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュート量の少なくとも1つを調整するものであることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項3】
請求項1記載の光情報記録方法において、前記試し書きによって記録するパターンがランダムパターンであることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項4】
請求項2記載の光情報記録方法において、前記波形制御レジスタで調整するパラメータにより、前記試し書きによって記録するパターンを変えるもしくは2種類以上のパターンを用いることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項5】
請求項1記載の光情報記録方法において、記録ストラテジによって、前記試し書きによって記録するパターンを変えることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項6】
レーザ光源からパルス状のレーザ光を照射して記録媒体に記録マークを形成することによって情報を記録する光情報記録方法において、
温度、前記記録媒体の推奨記録パワー及び搭載されたレーザ光源の微分抵抗に関する情報を取得する工程と、
温度、記録パワー、レーザ光源の微分抵抗の組み合わせと、前記レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定するレジスタ値とを対応付けて格納したテーブルを参照して、前記取得した情報に対応するレジスタ値を取得する工程と、
取得したレジスタ値を前記レーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程と、
前記レーザドライバによって駆動される前記レーザ光源から発生されるパルス状のレーザ光でストラテジを構成して情報を記録する工程と
を有することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項7】
請求項6記載の光情報記録方法において、前記取得したレジスタ値を前記レーザドライバの波形制御レジスタに設定する工程と前記情報を記録する工程との間に、
記録パワーの最適化を行う工程と、
前記レーザ光源を駆動するレーザドライバの波形制御レジスタに設定する値を変えて、前記レーザ光源を駆動する電流パルスの形状を変化させ、実質的に発光パルスを変化させながら前記記録媒体に試し書きを行う工程と、
前記試し書きによって記録された情報を再生する工程と、
前記波形制御レジスタの設定値と記録品質との関係をもとに前記波形制御レジスタに設定する値の最適値を求める工程と、
前記波形制御レジスタに前記最適値を設定する工程と
を有することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項8】
請求項1記載の光情報記録方法において、情報の記録方式がCAV方式であり、第1の記録速度と第2の記録速度に対して前記波形制御レジスタに設定する値の最適値を第1のレジスタ値と第2のレジスタ値として求めて記憶し、前記第1のレジスタ値と前記第2のレジスタ値とから、前記第1の記録速度と前記第2の記録速度の中間の第3の記録速度に対するレジスタ値を導出することを特徴とする光情報記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−67288(P2010−67288A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230127(P2008−230127)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
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