説明

光拡散フィルム用樹脂組成物

【課題】高輝度で、かつ、表面のスケ等の物性に優れた光拡散フィルムを安定的に製造することができる光拡散フィルム用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】微粒子と樹脂成分とを必須成分とする光拡散フィルム用樹脂組成物であって、該微粒子は、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含み、該微粒子のうち体積平均粒子径の大きい微粒子は、体積平均粒子径の小さい微粒子よりも該樹脂成分中における膨潤度が大きい光拡散フィルム用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルム用樹脂組成物並びにそれを用いた光拡散フィルム及びその製造方法に関する。より詳しくは、テレビ、コンピュータ用ディスプレイ等の液晶ディスプレイ等に使用される光拡散フィルムを製造するために好適に用いられる光拡散フィルム用樹脂組成物並びにそれを用いた光拡散フィルム、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散フィルムは、光源からの光を均一に拡散させる機能を有するフィルムであり、テレビ、コンピュータ用ディスプレイ、デジタルカメラ、携帯電話等に広く利用されている液晶表示装置を構成する部材としてなくてはならないものである。液晶表示装置は、液晶表示パネルとバックライトユニットとを有しており、液晶表示パネルの後方にバックライトユニットを配置し、バックライトユニットから供給される光が液晶表示パネルを透過することにより、画像を表示する。バックライトユニットは、基本的には液晶表示パネル側を前方、その反対側を後方とした場合に、後方から順に反射フィルム、光源、光拡散板、光拡散フィルム、プリズムシート及び輝度向上フィルムを有しており、光拡散フィルムは、光拡散板を通過した光を更に拡散するとともに、光を液晶表示パネル方向に集光して輝度を向上させる役割を果たしている。
【0003】
このような光拡散フィルムとしては、光拡散材である透明樹脂製ビーズと透明樹脂バインダーとからなる樹脂組成物を透明なフィルム基材の表面に塗布して光拡散層を形成したものが知られており、光拡散フィルムの一例として、アクリルウレタン樹脂微粒子を含有した光拡散材と、水酸基を持ったアクリルモノマーを共重合成分として含むアクリル樹脂をポリイソシアネートで架橋したものである樹脂バインダーとからなる光拡散層を有する光拡散フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、光拡散フィルムの性能の向上が種々の方法により試みられている。例えば、光透過率を低下させずに輝度の均一性を向上させることを目的として、光拡散材である光拡散剤粒子として平均粒子径の異なる2種以上の単分散粒子を用いる方法等が開示されている(例えば、特許文献2、3、4及び5参照)。
【0004】
これらの光拡散フィルム用樹脂組成物は、いずれも樹脂成分と溶媒とからなる樹脂溶液に樹脂微粒子を分散させたものである。光拡散フィルム用樹脂組成物において、粒径の異なる2種以上の樹脂微粒子を用いる場合、一般的には粒径の点でのみ異なる複数種の微粒子が用いられるために、粒径の大きい微粒子ほど沈降しやすく、粒径の小さい微粒子ほど沈降しにくいという状況が起こることになり、その結果、時間の経過と共に樹脂溶液内において樹脂微粒子の濃度ムラができることになる。
このような濃度ムラのできた樹脂溶液を用いて光拡散フィルムの塗布工程をおこなった場合には、樹脂溶液の上部を用いると比較的粒径の小さい微粒子を多く含む光拡散フィルムが得られるのに対して、樹脂溶液の底部を用いると粒径の大きい微粒子を多く含んだ光拡散フィルムが得られることとなる。粒径の小さい微粒子を多く含む光拡散フィルムは、微粒子が樹脂成分に埋もれてしまうために、レンズ効果が小さくなり輝度が上がらなくなってしまう。一方、粒径の大きい微粒子を多く含む光拡散フィルムは、樹脂成分に埋もれる微粒子が少ないために、レンズ効果は大きく輝度が上がるが、フィルムのうち微粒子に覆われない部分が広くなるために、表面のスケが不均一になってしまう。
このように、従来の光拡散フィルム用樹脂組成物では、樹脂微粒子の濃度ムラに起因して、得られる光拡散フィルムの物性にばらつきができるという問題があることから、濃度ムラができにくく、物性の均一な光拡散フィルムを安定的に製造することができる光拡散フィルム用樹脂組成物が求められている。
【特許文献1】特開2006−126822号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特表2004−533656号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開平9−127313号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開平10−160909号公報(第1−2頁)
【特許文献5】特開平9−113708号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高輝度で、かつ、表面のスケ等の物性に優れた光拡散フィルムを安定的に製造することができる光拡散フィルム用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、組成物中における微粒子の濃度ムラが抑えられ、物性の均一な光拡散フィルムを安定的に製造するために好適に用いることができる光拡散フィルム用樹脂組成物について種々検討し、微粒子の密度が沈降速度に影響する要因であることに着目した。そして、組成物中に含まれる微粒子のうち、体積平均粒子径の大きい微粒子の膨潤度を体積平均粒子径の小さい粒子の膨潤度よりも大きくすると、体積平均粒子径の大きい微粒子の密度が下がって、微粒子の沈降速度が遅くなる結果、体積平均粒子径の小さい微粒子との沈降速度の差が小さくなり、濃度のムラができにくくなることを見出した。光拡散の均一性等の光拡散フィルムに要求される性能を発揮するためには、光の屈折率が同程度の微粒子を使用することが必要となり、通常は複数の種類の微粒子を使用する場合でも、微粒子は同質の素材を用いることが多いが、膨潤度は、微粒子の架橋度を変えることで変化させることができるため、この方法によれば、同質の素材の微粒子を用いながら、膨潤度の異なる微粒子を製造することができ、光拡散フィルムに要求される性能を充分に発揮しながら、濃度ムラのできにくい組成物とすることができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、微粒子と樹脂成分とを必須成分とする光拡散フィルム用樹脂組成物であって、前記微粒子は体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含み、前記微粒子のうち体積平均粒子径の大きい微粒子は、体積平均粒子径の小さい微粒子よりも樹脂成分中における膨潤度が大きいものであることを特徴とする光拡散フィルム用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含むものである。ここで、少なくとも2種類の微粒子を含むとは、体積平均粒子径以外に微粒子の組成、物性等のいずれかの少なくとも1つで異なる微粒子を少なくとも2種類含むことを意味し、いずれか少なくとも1つの点で異なっていれば、それ以外の点において相違がない微粒子であってもよい。また、本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、少なくとも2種類の微粒子を含む限り、3種類以上の微粒子を含むものであってもよく、光拡散フィルムの光拡散性及び輝度を阻害しない限り、その他の成分を含んでいてもよい。
【0009】
上記微粒子は、様々な粒径をもつ個々の粒子の集合であるため、体積平均粒子径の大きい微粒子の中にも粒径の小さい粒子が含まれ、体積平均粒子径の小さい微粒子の中にも粒径の大きい粒子が含まれる。これら体積平均粒子径の大きい微粒子と体積平均粒子径の小さい微粒子の粒度分布は重複する範囲を含んでいる場合があるが、重複する範囲が小さいほうが好ましく、重複する範囲が光拡散フィルム用樹脂組成物に含まれる微粒子全体に対して20%以下であることが好ましい。より好ましくは、10%以下である。
微粒子の粒度分布が重複する範囲を含む場合、本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む微粒子全体を微粒子全体の体積平均粒子径よりも粒径が大きい微粒子と小さい微粒子とに分けた場合に、大きい微粒子に含まれる微粒子の膨潤度の平均が、小さい微粒子に含まれる微粒子の膨潤度の平均よりも大きければよい。このような、微粒子と樹脂成分とを必須成分とする光拡散フィルム用樹脂組成物であって、該微粒子は、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含み、該樹脂組成物に含まれる微粒子を微粒子全体の体積平均粒子径よりも粒径が大きい微粒子と小さい微粒子とに分けた場合に、大きい微粒子に含まれる微粒子の膨潤度の平均が、小さい微粒子に含まれる微粒子の膨潤度の平均よりも大きい光拡散フィルム用樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
微粒子の体積平均粒子径は、微粒子の粒度分布を測定することにより算出することができる。微粒子の粒度分布は、細孔電気抵抗法を用いた精密粒度分布測定装置により測定することができ、例えば、実施例において用いている方法が好適に用いられる。
また、ここで言う微粒子の膨潤度は、フィルムの塗工に用いる溶剤を用いた時の微粒子の膨潤度を表しており、微粒子の膨潤度の平均は、例えば、下記の方法により求めることができる。
膨潤度の平均の測定方法:富士理科工業株式会社製ガードナー粘度管(外径×内径×全長(mm)=11.9×10.7×114)に1g微粒子を入れ、酢酸ブチルをガードナー粘度管の下のラインまで入れる。その後、微粒子が溶剤に均一に分散されるまで手で振盪し、25℃にて1時間静置後の微粒子層の高さをXとする。さらに25℃にて24時間静置後の微粒子層の高さをYとする。微粒子につき、3回測定し、Y/Xの平均値を膨潤度の平均とする。
【0010】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、体積平均粒子径の大きい微粒子が体積平均粒子径の小さい微粒子よりも樹脂溶液中における膨潤度が高いものである。本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が体積平均粒子径の異なる3種類以上の微粒子を含む場合、それら微粒子から選択される2種類の微粒子の組み合わせのうち少なくとも1つについて、体積平均粒子径の大きい微粒子が体積平均粒子径の小さい微粒子よりも樹脂溶液中における膨潤度が高いものとなっていればよいが、より多くの組み合わせで体積平均粒子径の大きい微粒子が体積平均粒子径の小さい微粒子よりも樹脂溶液中における膨潤度が高いものとなっていることが好ましい。最も好ましくは、組成物が含む微粒子から選択される2種類の微粒子のいずれの組み合わせにおいても、体積平均粒子径の大きい微粒子が体積平均粒子径の小さい微粒子よりも樹脂溶液中における膨潤度が高いものとなっていること、すなわち、組成物に含まれる微粒子が、体積平均粒子径の大きいものほど膨潤度が大きくなっていることである。
なお、本願明細書中において、微粒子の体積平均粒子径の大小についての記述はいずれも、複数種類の微粒子間におけるそれらの体積平均粒子径の相対的な大小を表現したものである。
微粒子の膨潤度の測定方法としては、例えば、実施例において用いている方法が好適に用いられる。
【0011】
上記微粒子において、膨潤度は、種々の方法により変化させることができるが、微粒子の架橋度を調整することで変化させることが好ましい。架橋度を変化させることで膨潤度を変化させることとすると、2種類以上の微粒子を用いる場合に、同程度の屈折率を有する同質の素材の微粒子を用いながら膨潤度を変化させることが可能となるため、光拡散フィルムに要求される光拡散性や高輝度等の物性を低下させることなく、微粒子の膨潤度を変化させることが可能となる。
【0012】
上記微粒子は、体積平均粒子径の大きい微粒子の架橋度が1〜20質量%であって、体積平均粒子径の小さい微粒子の架橋度が15〜60質量%であることが好ましい。架橋度が低い微粒子は、樹脂組成物中の溶媒を吸って膨潤しやすくなる。体積平均粒子径の大きい微粒子、及び、体積平均粒子径の小さい微粒子の架橋度がこのような範囲であると、光拡散フィルムに要求される高輝度や表面のスケ等の物性と組成物の濃度ムラの抑制効果をより効果的に両立することが可能となる。より好ましくは、体積平均粒子径の大きい微粒子の架橋度が1〜15質量%であって、体積平均粒子径の小さい微粒子の架橋度が15〜55質量%であることであり、更に好ましくは、体積平均粒子径の大きい微粒子の架橋度が5〜15質量%であって、体積平均粒子径の小さい微粒子の架橋度が15〜50質量%である。
なお、本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む微粒子は、架橋構造を有する体積平均粒子径が異なる微粒子を少なくとも2種類含む限り、架橋構造を含まない微粒子を含んでいてもよい。
微粒子の架橋度は、高分子である微粒子を製造するための原料となる単量体成分全体に含まれる架橋性単量体の質量割合で定義される。
【0013】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む微粒子の体積平均粒子径は、いずれも0.5〜40μmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が0.5μm未満であると、レンズ効果が小さくなり輝度が低くなる。また、体積平均粒子径が40μmを超えると、微粒子を均一にコーティングすることが難しく、輝度が低くなる。より好ましくは、1〜30μmの範囲であることであり、更に好ましくは、2〜25μmの範囲であることである。
【0014】
上記微粒子は、体積平均粒子径の最も大きい微粒子と体積平均粒子径の最も小さい微粒子との体積平均粒子径比が1.05〜20であることが好ましい。体積平均粒子径比がこのような範囲にあると、表面のスケが小さくなり、輝度ムラが小さくなるとともに、輝度が高くなる。より好ましくは、体積平均粒子径比が1.1〜15であることであり、更に好ましくは、体積平均粒子径比が1.2〜10であることである。
体積平均粒子径比とは、体積平均粒子径の最も大きい微粒子の体積平均粒子径を体積平均粒子径の最も小さい微粒子の体積平均粒子径で除した値である。
【0015】
上記微粒子は、体積平均粒子径の大きい微粒子と体積平均粒子径の小さい微粒子との屈折率の差が0.1以下であることが好ましい。屈折率の差がこのようなものであると、光拡散性等の物性に優れたものとなる。より好ましくは、0.05以下である。
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が3種類以上の微粒子を含む場合、それらのうち少なくとも2種類の微粒子の間において、屈折率の差が0.1以下であればよいが、いずれの2種類の微粒子の間においてもこの屈折率の差が満たされることが好ましい。
微粒子の屈折率は、アッベ屈折率計によって測定することができる。
【0016】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、含まれる微粒子と樹脂成分との屈折率差の絶対値が0.1以下であることが好ましい。屈折率の差がこの範囲であると、反射や屈折による光線ロスが少なく輝度が高くなる。屈折率差の絶対値は、より好ましくは、0.07以下であり、更に好ましくは、0.05以下である。本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含むものであるが、これらの微粒子のうち、より多くのものについて、微粒子と樹脂成分との屈折率差の絶対値が上記範囲にあることが好ましく、全ての微粒子について、微粒子と樹脂成分との屈折率差の絶対値が上記範囲にあることが最も好ましい。
【0017】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含んでいる限り、含まれる微粒子の粒度分布は特に制限されないが、それらの微粒子のうち少なくとも1種類の微粒子が、単分散微粒子であることが好ましい。単分散微粒子としては、下記式で表される変動係数が、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。
粒子径の変動係数(%)=(σ/)×100
式中、σは粒子径の標準偏差を、は平均粒子径をそれぞれ表している。
単分散微粒子は、粒度分布のばらつきが少ない微粒子であることから、光拡散フィルム用樹脂組成物が単分散微粒子を含むものであると、バインダー中に埋もれる微粒子が少なくなり、レンズ効果が大きくなるため、輝度が上昇する。より好ましくは、光拡散フィルム用樹脂組成物に含まれる微粒子のうち、2種類以上の微粒子が、単分散微粒子であることであり、最も好ましくは、光拡散フィルム用樹脂組成物に含まれる微粒子の全てが単分散微粒子であることである。
【0018】
上記微粒子は、体積平均粒子径の異なる2種類の微粒子を含むことが好ましい。体積平均粒子径の異なる2種類の微粒子を含むものであると、膨潤度の差を設けて濃度のムラができないようにするとともに、組成物が光拡散フィルム用途に要求される物性を発揮できるものとなるように樹脂組成物を設計することが容易になる。また、使用する微粒子の種類が少なくなると、製造コストの面からも有利である。
【0019】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が体積平均粒子径の異なる2種類の微粒子を含むものである場合、体積平均粒子径の大きい微粒子と体積平均粒子径の小さい微粒子との質量比は、全微粒子の質量に対する体積平均粒子径の小さい微粒子の質量の比が0.005〜0.5であることが好ましい。質量比がこのような範囲にあると、樹脂組成物から得られる光拡散フィルムが優れた光拡散性能を発揮するものとなる。より好ましくは、0.01〜0.3であり、更に好ましくは0.03〜0.2である。
質量比とは、全微粒子の質量を体積平均粒子径の小さい微粒子の質量で除した値である。
【0020】
上記光拡散フィルム用樹脂組成物は、微粒子と樹脂成分の重量比(微粒子/樹脂成分)が0.5〜5であることが好ましい。樹脂組成物の構成成分の割合がこのような範囲であると、樹脂組成物の濃度ムラの発生を抑制する効果と樹脂組成物から得られる光拡散フィルムが優れた光拡散性等を発揮するものとなる効果の両方により優れたものとなる。
微粒子と樹脂成分の重量比(微粒子/樹脂成分)は、1〜4.5がより好ましく、更に好ましくは、1.5〜4である。
なお、ここでいう微粒子とは、樹脂組成物に含まれる微粒子全体のことである。
【0021】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む微粒子は、光を透過できるものである限り特に制限されないが、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、有機質無機質複合体、アミノ系ホルマリン架橋樹脂及び無機化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機質無機質複合体微粒子は、例えば、特開平8−81561号公報又は特開2003−183337号公報に記載された方法により製造されるものを用いることができる。
【0022】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系単量体を含む単量体成分を重合させて得られるものであれば、特に制限されない。重合させるアクリル系単量体としては、アクリル酸やメタクリル酸及びその誘導体等を用いることができ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が用いられることが好ましい。より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート及び/又はn−ブチル(メタ)アクリレートが用いられることである。
【0023】
上記アクリルウレタン系樹脂は、水酸基を有するアクリル系単量体と、水酸基を有さないアクリル系単量体と、イソシアネート系化合物とを反応させて得られたものであることが好ましい。より好ましくは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びイソブチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上と、変性ポリイソシアネート化合物とを反応させてなる樹脂である。変性ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースに三量化したイソシアヌレート型、ヘキサメチレンジイソシアネートに多価アルコールを付加した付加物が好ましい。
【0024】
上記スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を含む単量体を重合させてなるものであれば特に制限されないが、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、ブチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種が用いられることが好ましい。これらの単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、上記微粒子としては、上記アクリル系単量体とスチレン系単量体とを共重合させてなる樹脂を用いてもよい。
上記アミノ系ホルマリン架橋樹脂としては、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
【0025】
本発明における微粒子のうち、分子内に架橋構造を有する微粒子は、架橋構造を形成できる多官能不飽和単量体(架橋性単量体)を含む単量体成分を原料として微粒子を合成することで得ることができる。多官能不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が用いられることが好ましい。これらの架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記多官能不飽和単量体の含有量は、合成される体積平均粒子径の大きい微粒子及び体積平均粒子径の小さい微粒子の架橋度がそれぞれ上記の好ましい範囲となるように、適宜設定することができる。
【0026】
上記微粒子の合成方法は、特に制限されないが、単量体成分をラジカル重合させることによって合成することができる。ラジカル重合には、過酸化物系開始剤及びアゾ化合物系開始剤等の一般的なラジカル重合開始剤を用いることができる。
過酸化物系開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、イソブチリルパーオキサイド、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。アゾ化合物系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0027】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む微粒子として用いることができる無機化合物としては、シリカ、シリカアルミナ、シリコーン樹脂、ガラス粒子等のSi原子を含む化合物;チタニア等のTi原子を含む化合物;アルミナ等のAl原子を含む化合物;酸化亜鉛等のZn原子を含む化合物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これら化合物の中でも、Si原子を含む化合物が好ましく、シリカ及びシリコーン樹脂がより好ましい。
【0028】
上記シリコーン樹脂は、主鎖がシロキサン結合によって形成された高分子である限り、主鎖に結合する有機基等の基は限定されないが、オルガノシランの縮合体である事が好ましく、炭素−炭素二重結合を有するオルガノシラン化合物の縮合体である事が、有機成分としての二重結合を有するモノマー類を吸収させた後に重合させる事により有機成分と無機成分が化学結合によって一体化するために、更に好ましい。シリコーン樹脂の具体例として好ましくは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、ポリアルキルシルセスキオキサン又はこれらの変性物が用いられる。なお、ポリアルキルシルセスキオキサンとは、下記式(1);
【0029】
【化1】

【0030】
(上記式(1)中、Rは、アルキル基を表す。)の加水分解縮合物と表現することができ、
[RSiO3/2
(式中、Rは、アルキル基を表す。)で表される単位からなるシリコーン樹脂である。
シリカ微粒子としては、アモルファスシリカ、多孔質シリカ、中空シリカ等が挙げられる。
【0031】
上記シリコーン樹脂は、オルガノトリアルコキシシランを加水分解したのち縮合させることにより得られる。オルガノトリアルコキシシランとして、炭素−炭素二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが好適に用いられるが、他のトリアルコキシシランを用いてもよい。粒子状のシリコーン系樹脂は、例えば、特開2001−294670公報に記載された種々の方法により製造することができる。
【0032】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む微粒子の形状は、特に制限されず、球状、板状、楕円体状、椀型、円盤型、表面しわ状、中空状、破砕状等のいずれの形状のものであってもよいが、集光性の観点から球状であることが好ましい。なお、1種の形状を有する微粒子が用いられてもよいし、2種以上の形状を有する微粒子が用いられてもよい。
【0033】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物において、樹脂成分として用いられるバインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂や、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂等が挙げられる。樹脂成分は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。他の樹脂成分として、合成ゴムや天然ゴム等の有機系バインダー樹脂や、無機系結着剤等が挙げられる。合成ゴムの有機系バインダー樹脂として、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。無機系結着剤のバインダー樹脂として、シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド及びそれらの(加水分解)縮合物並びにリン酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも樹脂成分としては、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0034】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート等に由来する構成単位を含む樹脂が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート又はシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む樹脂が好ましい。
【0035】
上記バインダー樹脂は、官能基を有する単量体を含む単量体成分を重合して得られるものであってもよい。官能基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM」)等の活性水素をもつ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の窒素原子を有する不飽和単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の2個以上の重合性二重結合を有する不飽和単量体;塩化ビニル等のハロゲン原子を有する不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族不飽和単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記バインダー樹脂は、有機−無機複合超微粒子を含んでいてもよい。樹脂組成物が無機微粒子を含むものであると、樹脂組成物の耐熱性が向上する。有機−無機複合超微粒子としては、無機微粒子の表面に有機ポリマーが固定されてなる複合微粒子が好ましい。無機微粒子の表面に有機ポリマーが固定されたものであると、バインダー中における無機微粒子の分散性及びバインダーと無機微粒子との親和性が向上することに起因して、樹脂組成物から得られる光拡散フィルムの光線透過性が向上する。ここで、「固定」とは、単なる接着及び付着を意味するものではなく、有機ポリマーと無機微粒子の間で化学結合が生成していることを意味する。従って、無機微粒子を洗浄液で洗った場合に、洗浄液中に有機ポリマーが実質的に検出されない。なお、無機微粒子は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。これにより、無機微粒子のコアに適度な軟度及び靱性を付与することができる。
【0037】
上記有機−無機複合超微粒子に含まれる無機微粒子を構成する無機物は、特に限定されないが、無機酸化物であることが好ましい。ここで、「無機酸化物」とは、金属元素が主に酸素原子を介して3次元ネットワーク状に結合している含酸素金属化合物を意味する。また、本願においては、「金属元素」には、ケイ素が含まれる。無機酸化物を構成する金属元素としては、第2族〜第16族から選択される金属元素が好ましい。より好ましくは、第3族〜第5族から選択される金属元素である、更に好ましくは、Si、Al、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。最も好ましくは、金属元素がSiであるコロイダルシリカである。コロイダルシリカは、比較的容易に製造することができ、また、安価である。また、無機微粒子として市販されている無機微粒子を用いてもよい。
【0038】
上記有機−無機複合超微粒子に含まれる無機微粒子の形状は特に限定されず、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等のいずれであってもよい。また、2種以上の無機微粒子が併用されてもよく、その場合、無機微粒子の形状は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
上記有機−無機複合超微粒子に含まれる有機ポリマーとしては、有機成分から構成されるポリマーである限り、分子量、形状、組成、官能基の有無等は特に制限されない。有機ポリマーを構成する樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体等が挙げられる。これらの有機ポリマーは、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性されていてもよい。
【0040】
上記有機−無機複合超微粒子の体積平均粒子径は、5〜200nmであることが好ましい。より好ましくは、5〜100nmである。体積平均粒子径が小さすぎると、有機−無機複合超微粒子の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなる。逆に、この体積平均粒子径が大きすぎると、透明性が低下する。
【0041】
上記バインダー樹脂は、架橋されてもよいし、架橋されなくてもよいが、耐久性を向上させる観点から、架橋されているものが好ましい。架橋は、ポリマー自体が架橋してもよいし、架橋剤によりなされてもよい。樹脂は、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線又は電子線硬化型等のいずれの硬化条件で硬化されるものであってもよい。架橋剤(硬化剤)の使用量、添加及び分散方法等は特に限定されず、例えば、樹脂がポリオールである場合、ポリオールに通常用いられる使用量、添加及び分散方法を用いることができる。
【0042】
上記バインダー樹脂は、多官能イソシアネート等による硬化(架橋)を可能とする観点から、1分子中に2つ以上の水酸基を有するもの、すなわち、ポリオールであることが好ましく、水酸基を有する単量体成分を含む単量体を重合してなるものであることが好ましい。より好ましくは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂、すなわち、(メタ)アクリル系ポリオールであることである。この水酸基を有する不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM」)等が挙げられる。
【0043】
上記架橋剤(硬化剤)としては、樹脂がポリオールである場合、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物等の多官能イソシアネート、アミノプラスト樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物及び/又はブロックポリイソシアネート化合物を意味する。ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する化合物であれば特に制限されず、例えば、トリレンジイソシアネートキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロシジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等のポリイソシアネートの誘導体(変性物)等が挙げられる。
【0045】
上記ブロックポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものである。このブロックポリイソシアネート化合物により、加熱乾燥時にバインダー樹脂を架橋させることができるとともに、常温での貯蔵安定性が高まる。ブロック化剤としては特に限定されず、例えば、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、オキシム、アルコール等の化合物等が挙げられる。(ブロック)ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、スミジュールN3300、スミジュールBL3175、デスモジュールN3200、デスモジュールN3400、デスモジュールN3600及びデスモジュールVPLS2102(商品名、住化バイエルウレタン社製);コロネートHK、コロネートHL及びコロネートHX(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製);デュラネートE−402−90T(商品名、旭化成工業社製)等が挙げられる。また、バインダー樹脂の黄変を防止する観点から、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0046】
上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物の使用量としては特に限定されないが、樹脂中の水酸基1モルに対して、(ブロック)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が0.6〜1.4モルとなる量であることが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2モルとなる量である。バインダー樹脂中の水酸基1モルに対して、(ブロック)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が0.6モル未満であると、バインダー樹脂中に未反応の水酸基が多く残存するので、得られるバインダーの耐侯性が低下することがある。
1.4モルを超えると、未反応のイソシアネート基がバインダー中に多く残存し、これが空気中の水分と反応して、バインダー中において発泡や白化が起こることがある。
【0047】
上記バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は−80〜160℃であることが好ましい。より好ましくは−50〜130℃であり、更に好ましくは0〜110℃であり、特に好ましくは20〜100℃である。このようなガラス転移温度を有するバインダー樹脂を用いることで、樹脂組成物から得られる光拡散フィルムの耐光性を向上させることができる。
ガラス転移温度は、下記のFoxの式により計算することができる。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
式中、Wnは共重合体100質量%中に存在するモノマーnの質量%を表し、Tgnはモノマーnからなるホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)を表す。
【0048】
上記バインダー樹脂を構成する重合体の重量平均分子量は、1000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、2000〜80000であり、更に好ましくは、4000〜60000である。
重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
【0049】
上記バインダー樹脂を製造するための重合方法としては、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合等の重合方法を用いることができる。溶液重合を行う場合の溶媒としては特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒及びジメチルホルムアミド等からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。
溶媒の使用量は、重合条件やバインダー樹脂中の重合体の質量割合等により適宜設定することができる。
【0050】
上記バインダー樹脂の重合においては、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は特に制限されず、過酸化物系及びアゾ化合物系等の一般的なラジカル重合開始剤を用いることができる。過酸化物系開始剤、アゾ化合物系開始剤としては、上述した微粒子の合成に用いられるものと同様のものを用いることができる。
重合開始剤の使用量は、所望する重合体の特性値等から適宜設定すればよいが、単量体全体に対して0.01〜50質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜20質量%である。
【0051】
上記バインダー樹脂を製造する際の重合条件は、用いられる重合方法により適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重合温度としては、室温〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは、40〜140℃である。重合の反応時間は、単量体成分の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0052】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物が含む溶媒としては、上述したバインダー樹脂を製造するための重合反応において用いられるものを用いることができる。
上記樹脂組成物に含まれる溶媒の量としては、後述する該樹脂組成物を基材にコーティングするのに適した量を用いることができる。
【0053】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物の製造方法は特に制限されず、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を予め混合した後、混合して得られた微粒子をバインダー樹脂と混合することにより得られるものであってもよく、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を予め混合することなく、順にバインダー樹脂と混合することによって得られるものであってもよいが、好ましくは、微粒子を予め混合することなく、順にバインダー樹脂と混合する方法である。このような製造方法とすることにより、安価にかつ安定的に樹脂組成物を製造することができる。
【0054】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物を基材に塗布することにより、光拡散フィルムを形成することができる。このような、本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物をフィルム基材に塗布する工程を含む光拡散フィルムの製造方法もまた、本発明の1つである。更にこのような光拡散フィルムの製造方法によって製造される光拡散フィルムもまた、本発明の1つである。
本発明の光拡散フィルムは、上記フィルム基材に樹脂組成物を塗布・乾燥して製造されたものであり、樹脂組成物には本発明の体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子が含まれていることによって、充分な光拡散性と高輝度を有するものとなる。
【0055】
上記光拡散フィルムは、樹脂組成物からなる光拡散層の表面の三次元平均面粗さRaが、1μm〜5μmであることが好ましい。光拡散層の表面の三次元平均面粗さRaが1μm未満であると、レンズ効果があまり発揮されず、充分な輝度を得ることができなくなる。また、光拡散層の表面の三次元平均面粗さRaが5μmを超えると、光の均一性が弱まると共に、微粒子が光拡散層から脱落してしまうおそれがある。より好ましくは、Raが1.5μm〜4.5μmであり、更に好ましくは、Raが2μm〜4μmである。
なお、三次元平均面粗さRaは、JIS B0601−2001に則って、非接触式の表面粗さ計やレーザー共焦点顕微鏡を用いて測定することができる。
【0056】
上記フィルム基材の厚さは、10μm〜300μmであることが好ましい。フィルムの厚さが10μm未満では、基材として充分な強度を発揮することができず、また、厚さが300μm以上となると、可視光の透過が悪くなり、充分な正面輝度を得られなくなってしまう。
【0057】
上記フィルム基材は、光拡散フィルムの光学特性を阻害しない限り特に制限されず、一般に光学材として用いられている材を用いることができる。フィルム基材としては、例えば、ガラス;PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル;トリアセチルセルロース;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ポリスチレン;ポリカーボネート;ブラチール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が例示される。特に好ましい基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム及びラクトン環構造を有する(メタ)アクリレートフィルムが挙げられる。これらの中でも、表面の平滑性や機械的強度に優れることからPETフィルムが好適に用いられる。
【0058】
本発明の光拡散フィルムは、光拡散フィルム用樹脂組成物をフィルム基材に塗布する工程と、塗布した樹脂組成物を乾燥させる工程とを含む製造方法により製造される。
樹脂組成物をフィルム基材に塗布する方法としては、例えば、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、スプレーコーティング及びブレードコーティング等が挙げられる。また、塗布した樹脂組成物を乾燥させる方法は、公知の乾燥方法を用いることができ、特に制限はされない。
【0059】
上記光拡散フィルムの製造方法における樹脂組成物のフィルム基材への塗布量は、2〜20gの範囲であることが好ましい。塗布量が2g未満であると、製造される光拡散フィルムの厚さが薄くなりすぎるために充分な光拡散効果を発揮することができなくなる。一方、塗布量が20gを超えると、光拡散フィルムの光透過率が減少することとなり、充分な輝度を得ることができなくなる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の光拡散フィルム用樹脂組成物は、上述の構成よりなり、微粒子のうち体積平均粒子径の大きい微粒子の膨潤度を体積平均粒子径の小さい微粒子のそれよりも大きくすることにより、体積平均粒子径の異なる微粒子の樹脂溶液中での沈降速度の差を小さくすることができ、それによって樹脂組成物をフィルム基材に塗布する際の、樹脂組成物の組成の変化を抑制し、組成が均一で性能の安定した光拡散フィルムを製造することができる光拡散フィルム用樹脂組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に実施例を掲げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0062】
以下の実施例及び比較例において、微粒子、バインダー樹脂及び光拡散フィルムの各種物性等は次のように測定した。
<微粒子の分析>
[膨潤度]
富士理科工業株式会社製ガードナー粘度管(外径×内径×全長(mm)=11.9×10.7×114)に1g微粒子を入れ、酢酸ブチルをガードナー粘度管の下のラインまで入れた。その後、微粒子が溶剤に均一に分散されるまで手で振盪した。25℃にて1時間静置した時の微粒子層の高さをXとする。さらに25℃にて24時間静置した時の微粒子層の高さをYとする。微粒子につき、3回測定し、Y/Xの平均値を膨潤度とした。
[粒度分布]
無機質粒子および重合体粒子の平均粒子径、ならびに粒子径の変動係数は、下記測定方法により測定した。コールターマルチサイザー(べックマンコールター社製)により、30000個の粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を求めた。粒子径の変動係数は、下記式に従って求めた。
粒子径の変動係数(%)=(σ/)×100
式中、σは粒子径の標準偏差を、は平均粒子径を表している。
また、5μm微粒子比(5μm微粒子%)は5μm微粒子(微粒子b)の体積平均粒子径の体積%を微粒子全体の体積平均粒子径の体積%(微粒子a−1+微粒子b又は微粒子a−2+微粒子b)で除した値である。
アパーチャー径:30μm
測定レンジ:フルモード
測定方法:測定対象である粒子1gに、1%ハイテノールNF−08水溶液30gを加え、5分間超音波洗浄装置にかけて粒子を分散させ、得られた分散液を「コールターマルチサイザー」にて測定した。
【0063】
<バインダー樹脂の分析>
[固形分]
アルミの皿にバインダー樹脂溶液を1.0g採取し、酢酸エチル3.0gで希釈し、均一な溶液にした。この溶液を120℃で1時間乾燥させた後、質量を測定し、下記式に従って、固形分を求めた。
(固形分)=(乾燥後の樹脂の質量)/(バインダー樹脂溶液の質量)
[数平均分子量及び重量平均分子量]
数平均分子量及び重量平均分子量は、以下の測定条件で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)測定により求めた。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用。
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定した。
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度は、下記のFoxの式により算出した。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
式中、Wnは共重合体100質量%中に存在するモノマーnの質量%を表し、Tgnはモノマーnからなるホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)を表している。
【0064】
<光拡散フィルムの分析>
[輝度測定]
バックライトユニット及び光拡散板はシャープ(株)製液晶テレビAQUOS LC−37AD5を用いた。分光放射計((株)トプコン製 SR−3)を光拡散板から50cm離した位置に固定し、光拡散板上に作成した光拡散フィルムを置き、光拡散フィルムの輝度を測定した。
【0065】
<バインダー樹脂Aの合成>
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、溶媒として酢酸ブチル100部を入れ、還流温度まで昇温した。次いで、窒素ガスを導入しながら、単量体としてのシクロへキシルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート37.7部、ブチルアクリレート7.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13.9部、およびメタクリル酸1.1部、ならびに重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート(商品名、パーブチルO、日油(株)製)3.0部からなる単量体混合物を、3時間かけて滴下ロートから滴下した。さらに、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロへキサン(商品名パーへキサHC、日油(株)製)0.2部を30分間隔で3回添加し、還流温度で2時間保持した。その後、反応液を室温まで冷却して共重合体Aの溶液を得た。得られた共重合体の固形分は50.3%であった。共重合体Aの分子量は数平均分子量(Mn)/重量平均分子量(Mw)=5300/10500であった。Foxの計算式から算出した理論的なガラス転移温度は40℃であり、また、理論的な水酸基価は60であった。
【0066】
<微粒子(a−1)の合成>
冷却管、温度計、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、水250部と25%アンモニア水5部とを混合した溶液を入れ、攪拌しながらこの溶液にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40部とメタノール125部を混合した溶液を滴下口から添加して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合を行って無機質粒子を調整した。反応開始から1時間後、滴下口から水250部を添加し、無機質粒子分散液を希釈した。反応開始から2時間30分攪拌を継続した後、アニオン性乳化剤(LA−10、第一工業製薬製)1.5部、水150部、メチルメタクリレート135部、エチレングリコールジメタクリレート15部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名V−65)1部を、ホモジナイザーを用いて5分間乳化分散させてエマルションを調整し、これを滴下口より無機質粒子分散液に15秒で添加した。モノマーエマルション添加からさらに30分間攪拌をおこなった後、無機質粒子を顕微鏡で観察した結果、モノマーエマルション添加前から粒子径が増大しており、無機質粒子がモノマーを吸収している事を確認した。モノマーエマルション添加から1時間後、モノマーを吸収した無機質粒子分散液に水1kgを加え、さらに反応液を窒素雰囲気下75℃に昇温させて、75℃で30分間保持しラジカル重合を行った。
ラジカル重合後、得られた乳濁液を自然沈降(デカンテーション)により固液分離し、得られたケーキをメタノールで洗浄し、さらに120℃で2時間真空乾燥を行い重合体粒子(a−1)を得た。重合体粒子(a−1)の粒子径をコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10.8μm、変動係数は2.58%であった。
【0067】
<微粒子(a−2)の合成>
メチルメタクリレートを105部、エチレングリコールジメタクリレートを45部使用した以外は、微粒子(a−1)と同様に合成を行ったところ、体積平均粒子径が10.5μm、変動係数が2.38%の微粒子(a−2)が得られた。
【0068】
<微粒子(b)の合成>
25%アンモニア水を20部とした以外は、微粒子(a−2)と同様に合成を行ったところ、体積平均粒子径が5.2μm、変動係数が2.87%の微粒子(b)が得られた。
【0069】
微粒子(a−1)、(a−2)及び(b)の膨潤度を測定した結果は、下記表1のとおりであった。
【0070】
【表1】

【0071】
<実施例1>
共重合体A溶液100部に、微粒子(a−1)を120部、微粒子(b)を30部、酢酸ブチルを150部添加した。その後この混合物に多官能イソシアネート化合物(デスモジュールN3200、住化バイエルウレタン(株)製)をOH/NCO=1(等量比)となるだけ添加し、ディスパーにて混合・分散を行った。その後得られた組成物を110mlのスクリュー管((株)マルエム製 スクリュー管No.8)に高さ9cmになる量を移し、5分間静置した。この組成物の底部から8cm部分の液をスポイトにて採取し(これを上部とする)、バーコーターを用いて透明フィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA−4300、東洋紡績(株)製;厚さ100μm)上に塗布し、室温で3分放置した後、100℃で3分、80℃で2時間乾燥させ光拡散シートを得た。同様に底部から1cmの部分の液をスポイトにて採取し(これを下部とする)、光拡散シートを作成した。またこの時の組成物の上部と下部のサンプリングを行い、それぞれメンブランフィルター上でろ過を行い、アセトンで洗浄した上で、コールターカウンターにより粒度分布を測定した。
さらに分散から1時間後、同様にして底部から8cmの部分(上部)と、1cmの部分(下部)の液を採取し、光拡散シートを作成するとともに、コールターカウンターにより粒度分布を測定した。
なお、上記組成物溶液を入れたスクリュー管を模式的に表すと、図1のとおりである。
【0072】
<比較例1>
共重合体A溶液100部に、微粒子(a−2)を120部、微粒子(b)を30部、酢酸ブチルを150部添加した以外は実施例1と同様に操作を行った。
【0073】
実施例1及び比較例1で作成した光拡散シートの輝度を測定した結果は、下記表2のとおりであった。
【0074】
【表2】

【0075】
また、実施例1及び比較例1で調製した組成物の粒度分布を測定した結果は、下記表3のとおりであった。
【0076】
【表3】

【0077】
上記表1〜3より次のことがわかった。実施例1では粒径の大きな(a−1)粒子が膨潤するため、粒径の大きな(a−1)粒子(体積平均粒子径;10.8μm、10μm微粒子)と粒径の小さな(b)粒子(体積平均粒子径;5.2μm)がほぼ同じ速度で沈降する。よって分散後1時間経過しても、(a−1)粒子と(b)粒子のバランスが上部と下部で崩れない。輝度も分散後5分と1時間で、上部、下部とも輝度が変化しない。このように、実施例1では時間の経過や塗工液の場所に拠らず、安定した光拡散フィルムを作成することができた。
一方、比較例1では粒径の大きな(a−2)粒子(体積平均粒子径;10.5μm、10μm微粒子)が膨潤しないため、粒径の小さな(b)粒子よりも早く沈降する。よって上部では粒径の大きな(a−2)粒子の数が少なくなり、下部では(a−2)粒子が多くなる。その結果、1時間後のサンプルの輝度は、上部を用いた場合には粒径の大きな微粒子が比較的少なくなるため、レンズ効果が小さくなり、輝度が低下する。このように、比較例1では時間の経過により組成液の構成が変化するため、安定して光拡散シートを作成することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例1及び比較例1において、組成物を入れ、静置させているスクリュー管の模式図である。図中、丸印はサンプリングポイントを表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子と樹脂成分とを必須成分とする光拡散フィルム用樹脂組成物であって、
該微粒子は、体積平均粒子径の異なる少なくとも2種類の微粒子を含み、該微粒子のうち体積平均粒子径の大きい微粒子は、体積平均粒子径の小さい微粒子よりも該樹脂成分中における膨潤度が大きいものであることを特徴とする光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
前記微粒子は、体積平均粒子径の大きい微粒子の架橋度が1〜20質量%であって、
体積平均粒子径の小さい微粒子の架橋度が15〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
前記微粒子は、体積平均粒子径の最も大きい微粒子と体積平均粒子径の最も小さい微粒子との体積平均粒子径比が1.05〜20であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
前記微粒子は、少なくとも1種類の単分散微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項5】
前記微粒子は、体積平均粒子径の異なる2種類の微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、微粒子と樹脂成分の重量比(微粒子/樹脂成分)が0.5〜5であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルム用樹脂組成物をフィルム基材に塗布する工程を含むことを特徴とする光拡散フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする光拡散フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−150491(P2010−150491A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333229(P2008−333229)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】