説明

光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散板

【課題】ポリカーボネート系樹脂を用いて、大画面の光拡散板を成形しても、熱劣化による黄変がなく、良好な光拡散性を有する成形体が得られる光拡散性樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた光拡散板を提供すること。
【解決手段】下記式(I)及び(II)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体(A)を含有するポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、光拡散剤(B)0.01〜10質量部を配合してなる光拡散性樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いて光拡散板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレー分野における光拡散板等の光学素子、街路灯カバー、車両及び建材用合わせガラス等のガラス代替用途などに用いられる光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散板に関する。より詳しくは、特定の繰返し構成単位を有するポリカーボネート共重合体に、好ましくは該ポリカーボネート共重合体以外のポリカーボネート樹脂及び/又はアクリル系樹脂、並びに光拡散剤を配合した光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレー(LCD)の用途は、ノート型パソコン、モニターのみならず、テレビジョンセット(TV)にまでその用途を拡大してきている。特に明るさが求められるTVに搭載される直下型バックライト用の光拡散板はアクリル樹脂製が主流であるが、最近では、耐熱性、吸湿性の点でアクリル樹脂よりも優れるポリカーボネート樹脂が光拡散板のマトリックス樹脂として用いられ、その需要が拡大しつつある。
従来、ポリカーボネート樹脂製の光拡散板は、押出成形法によるシートが主流である。これは、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性が低いために、50cm(20インチ)を超えるような大面積のディスプレーを射出成形法で作製しようとすると、得られる成形体がポリカーボネート樹脂の熱劣化による色調不良、厚み精度不十分などの問題があった。
しかしながら、射出成形法による光拡散板は、押出成形法による光拡散板に比べて外形加工コストの低減が図れるというメリットが期待できる。
ところで、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(以下、ビスフェノールMということがある)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAということがある)とからなるポリカーボネート共重合体は知られている(例えば、特許文献1参照)。該共重合体は、低吸水性、低複屈折性であることから、その共重合体の用途として光学レンズ(例えば、特許文献2,3参照)、光ディスク基板(例えば、特許文献4参照)が知られている。しかしながら、優れた光拡散性能と成形性とを有する樹脂材料は、未だ技術的に確立されていないのが現状である。
また、ビスフェノールAから製造される芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、特定量のアクリル系樹脂及び光拡散剤を配合してなる光拡散性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて光拡散板を成形する場合、大画面化のためには十分な溶融流動性を得るために成形温度を高める必要があるが、用いるポリカーボネート樹脂の熱劣化により得られる光拡散板の色調が黄色味を帯びるため、満足する性能の光拡散板を得にくく、より大画面化でき、優れた光拡散性能を有する樹脂材料が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−89539号公報
【特許文献2】特開2003−192780公報
【特許文献3】特開2003−96179公報
【特許文献4】特開2002−348367公報
【特許文献5】特開2005−298710公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ポリカーボネート系樹脂を用いて、大画面の光拡散板を成形しても、熱劣化による黄変がなく、良好な光拡散性を有する成形体が得られる光拡散性樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた光拡散板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた。その結果、特定の繰返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体を含有するポリカーボネート系樹脂に、光拡散剤を配合した樹脂組成物又は該ポリカーボネー系樹脂に、該ポリカーボネート共重合体以外のポリカーボネート樹脂及び/もしくはアクリル系樹脂並びに光拡散剤を配合した光拡散性樹脂組成物が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)下記式(I)及び(II)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体(A)を含有するポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、光拡散剤(B)0.01〜10質量部を配合してなることを特徴とする光拡散性樹脂組成物、
【化1】

(2)ポリカーボネート共重合体(A)の粘度数が30〜70である上記(1)に記載の光拡散性樹脂組成物、
(3)上記式(I)で表される繰り返し構造単位と、上記式(II)で表される繰り返し構造単位のモル比が1:99〜99:1であるポリカーボネート共重合体(A)を用いる上記(1)又は(2)に記載の光拡散性樹脂組成物、
(4)上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、アクリル系樹脂(C)0.01〜1質量部を配合してなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(5)上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、リン系安定剤(D)0.001〜0.5質量部を配合してなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(6)上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更にオルガノポリシロキサン(E)0.01〜1質量部を配合してなる請求項上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(7)上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、脂環式エポキシ化合物(F)0.001〜1質量部を配合してなる上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(8)アクリル系樹脂(C)の粘度平均分子量が、1,000〜200,000である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(9)光拡散剤(B)が、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子、シリカ粒子、石英粒子、シリカ繊維、石英繊維、ガラス繊維から選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(10)光拡散剤(B)の平均粒子径が、1〜200μmである上記(1)〜(9)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(11)リン系安定剤(D)が、リン酸系化合物及び/又は芳香族ホスフィン化合物である上記(5)〜(10)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(12)更に、上記ポリカーボネート共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合してなる上記(1)〜(11)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(13)光拡散性樹脂組成物の粘度数が30〜70である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物、
(14)上記(1)〜(13)のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物を成形してなる、厚みが0.5〜3mmの光拡散板、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂を用いて、大画面の光拡散板を成形しても、熱劣化による黄変がなく、良好な光拡散性を有する成形体が得られる光拡散性樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた光拡散板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の光拡散性組成物等を詳細に説明する。
ポリカーボネート共重合体(A)
本発明の光拡散性組成物を構成するポリカーボネート共重合体(A)は、下記式(I)及び(II)
【0009】
【化2】

【0010】
で表される繰返し単位を有するものであって、慣用の製造方法、すなわち界面重合法又はエステル交換法と呼ばれる製造方法で製造することができる。
具体的には、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等や末端停止剤の存在下に、更に、必要により、分岐剤を添加し、上記式(III)
【化3】

【0011】
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという。)とホスゲンなどのカーボネート前駆体との反応により得られるポリカーボネートオリゴマーと、下記式(IV)
【0012】
【化4】

【0013】
で表される、α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(以下、ビスフェノールMという。)を反応させる界面重合法、あるいはジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とビスフェノールA及びビスフェノールMとのエステル交換反応による重合方法等によって製造できる。
【0014】
本発明で用いられるポリカーボネート共重合体(A)において、上記式(I)で表される繰り返し構造単位と、上記式(II)で表される繰り返し構造単位のモル比は、1:99〜99:1が好ましく、1:99〜30:70が特に好ましい。
ポリカーボネート共重合体(A)において、該モル比がこの範囲であれば、機械的物性と所望の溶融流動性を満足することができ、薄肉または大型の光拡散板を良好に成形することができる。
後述するポリカーボネート系樹脂においても同様のモル比であることが望ましい。
【0015】
本発明で用いられるポリカーボネート共重合体(A)の製造において、用いられるカルボニル源としては、一般的なポリカーボネートの界面重縮合で用いられるホスゲンを始め、トリホスゲン、ブロモホスゲン等を用いることができる。なお、エステル交換法の場合は、ジアリルカーボネート等が、酸化的カルボニル化法の場合は一酸化炭素等を用いることができる。
本発明で用いられるポリカーボネート共重合体(A)の製造において、用いられる末端停止剤としては、通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものなら、各種のものを用いることができる。一般には一価フェノール類を用いることができる。一価フェノール類としては、フェノール、直鎖または分岐状の(長鎖)アルキル基、脂肪族ポリエステル基、置換基に芳香族化合物を有するフェノール類が用いられる。具体的には、フェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−メトキシフェノール、p−フェニルフェノール、イソオクチルフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位、又はパラ位に有するモノアルキルフェノール、9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン、9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、及び4−(1−アダマンチル)フェノール等が挙げられる。なかでもp−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、フェノールが好ましい。
【0016】
本発明のポリカーボネート共重合体(A)の製造において用いられる分岐剤としては、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;4,4'−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール;α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α',α'−ビス(4"−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン;フロログリシン,トリメリト酸,イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることもできる。
【0017】
本発明で用いられるポリカーボネート共重合体(A)の粘度数は、30〜70、すなわち、粘度平均分子量(Mv)に換算して10,000〜28,000が好ましく、34〜62、すなわち、Mvに換算して12,000〜24,000がより好ましい。粘度数が30〜70であれば、大型の光拡散板を良好に成形することができる。
また、本発明で得られる光拡散性樹脂組成物においても同様の粘度数である30〜70、好ましくは34〜62であることが望ましい。
なお、粘度数は、ISO1628−4(1999)に準拠して測定した値である。
【0018】
本発明のポリカーボネート系樹脂は、使用する用途、成形品形状に応じて、物性バランスを向上させる観点から、上記のポリカーボネート共重合体(A)に、該ポリカーボネート共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合することができる。
該芳香族ポリカーボネート樹脂は、慣用された製造方法、すなわち、通常、二価フェノールと、ホスゲンまたは炭酸エステル化合物等のポリカーボネート前駆体とを反応させることにより製造したものを挙げることができる。具体的には、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や末端停止剤の存在下、更に、必要により分岐剤を添加し、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造されたものである。
【0019】
用いられる二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルネン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4'−ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4'−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタンなどのジヒドロキシジアリールアダマンタン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエン、α,ω−ビスヒドロキシフェニルポリジメチルシロキサン化合物などが挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。
末端停止剤としては、通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものなら、各種のものを用いることができる。
具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール,o−n−ブチルフェノール,m−n−ブチルフェノール,p−n−ブチルフェノール,o−イソブチルフェノール,m−イソブチルフェノール,p−イソブチルフェノール,o−t−ブチルフェノール,m−t−ブチルフェノール,p−t−ブチルフェノール,o−n−ペンチルフェノール,m−n−ペンチルフェノール,p−n−ペンチルフェノール,o−n−ヘキシルフェノール,m−n−ヘキシルフェノール,p−n−ヘキシルフェノール,p−t−オクチルフェノール,o−シクロヘキシルフェノール,m−シクロヘキシルフェノール,p−シクロヘキシルフェノール,o−フェニルフェノール,m−フェニルフェノール,p−フェニルフェノール,o−n−ノニルフェノール,m−ノニルフェノール,p−n−ノニルフェノール,o−クミルフェノール,m−クミルフェノール,p−クミルフェノール,o−ナフチルフェノール,m−ナフチルフェノール,p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール,ブロモフェノール,トリブロモフェノールなどが挙げられる。これらの一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール,p−クミルフェノール,p−t−オクチルフェノール,フェノールなどが好ましく用いられる。
その他、分岐剤としては、ポリカーボネート共重合体の分岐剤として前述したものを用いることができる。
【0021】
該芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常、粘度平均分子量が10,000〜100,000のものが好ましく、より好ましくは12,000〜40,000である。
また、本発明のポリカーボネート系樹脂におけるポリカーボネート共重合体(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂の配合割合は、質量比で100:0〜30:70が好ましく、100:0〜40:60がより好ましい。
【0022】
光拡散剤(B)
本発明で用いられる光拡散剤は、光学的に透明で、かつポリカーボネート系樹脂とは異なる屈折率を有するものである。
光拡散剤の具体例としては、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子、シリカ粒子、石英粒子、シリカ繊維、石英繊維及びガラス繊維等が挙げられ、なかでも、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子、シリカ粒子及び石英粒子を好適に用いることができる。
これらの光拡散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる光拡散剤は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜8質量部、より好ましくは0.1〜6質量部配合される。光拡散剤の配合量が0.01質量部以上であると、光拡散性が発現し、輝度が上昇する。また、配合量が10質量部以下であると、光拡散性が過剰とならず、輝度が低下することがない。
光拡散剤の平均粒径は、通常、1〜200μm、好ましくは1〜150μm、より好ましくは2〜100μmである。
【0023】
アクリル系樹脂(C)
本発明で用いられるアクリル系樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びそれらの誘導体のモノマー単位を繰り返し構造単位として含むポリマーをいい、単独重合体又はスチレン、ブタジエン等との共重合体がある。
具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル(PMMA),ポリアクリロニトリル、アクリル酸エチル−アクリル酸2−クロロエチル共重合体、アクリル酸n−ブチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。
なかでも、特に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を好適に用いることができる。
このポリメタクリル酸メチル(PMMA)は、公知のものでよく、通常、過酸化物、アゾ系の重合開始剤の存在下、メタクリル酸メチルモノマ−を塊状重合して製造される。
該アクリル系樹脂の粘度平均分子量は、通常、1,000〜200,000であり、好ましくは、20,000〜100,000である。粘度平均分子量がこの範囲内であると、マトリックスであるポリカーボネート系樹脂への相溶性が優れている。
該アクリル系樹脂は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対し、通常、0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.1〜0.3質量部配合される。アクリル系樹脂の配合量が0.01質量部以上であると、マトリックスであるポリカーボネート系樹脂の導光性が良好となり、結果として輝度が向上する。
また、配合量が1質量部以下であると、アクリル系樹脂成分の相分離が起こらず、白濁しないため、ママトリックスであるポリカーボネート系樹脂の導光性が低下せず、結果として輝度が向上する。
【0024】
本発明の光拡散性樹脂組成物には、更に以下の添加剤を必要に応じて配合することができる。
リン系安定剤(D)
本発明に用いられるリン系安定剤としては、リン酸系化合物及び/又は芳香族ホスフィン化合物が挙げられる。
リン酸系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましい。
【0025】
芳香族ホスフィン化合物としては、例えば、下記式(P)
P−(X)3 (P)
(式中、Xは炭化水素基であり、少なくともその1つは置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。)で表わされるアリールホスフィン化合物が挙げられる。
式(P)のアリールホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルオクタデシルホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィン、トリス−(p−ノニルフェニル)ホスフィン、トリス−(ナフチル)ホスフィン、ジフェニル−(ヒドロキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(アセトキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(β−エチルカルボキシエチル)−ホスフィン、トリス−(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリス−(p−フルオロフェニル)ホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、ジフェニル−β−シアノエチルホスフィン、ジフェニル−(p−ヒドロキシフェニル)−ホスフィン、ジフェニル−1,4−ジヒドロキシフェニル−2−ホスフィン、フェニルナフチルベンジルホスフィン等が挙げられる。なかでも、特にトリフェニルホスフィンを好適に用いることができる。
上記リン系安定剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明で用いられるリン系安定剤の配合量は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、通常0.001〜0.5質量部、好ましくは0.005〜0.3質量部、より好ましくは0.01〜0.1質量部である。リン系安定化剤の配合量がこの範囲内であると、成形時の熱安定性が向上する。
【0026】
オルガノポリシロキサン(E)
本発明に用いられるオルガノポリシロキサンは、フェニル基、ジフェニル基、ビニル基、アルコキシ基の中から選ばれる少なくとも一種の基を有し、例えば、シリコーン系化合物にフェニル基、ジフェニル基、ビニル基、アルコキシ基の中から選ばれる少なくとも一種の基を導入した反応性シリコーン系化合物等(オルガノシロキサン等)である。
好ましいオルガノポリシロキサンとしては、フェニル基及び/又はジフェニル基、ビニル基及び/又はアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
本発明に用いられるオルガノポリシロキサンは、ポリカーボネート系樹脂との屈折率の差が通常0.15以下、好ましくは0.13以下、より好ましくは0.1以下である。
本発明に用いられるオルガノポリシロキサンの配合量は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、通常、0.01〜1質量部、好ましくは0.02〜0.8質量部、より好ましくは0.03〜0.3質量部配合される。オルガノポリシロキサンの配合量がこの範囲内であると、成形時の熱安定性が向上する。
【0027】
脂環式エポキシ化合物(F
本発明に用いられる脂環式エポキシ化合物は、脂環式エポキシ基、即ち、脂肪族環内のエチレン結合に酸素1原子が付加したエポキシ基をもつ環状脂肪族化合物を意味し、具体的には下記式(V)〜(XIV)で表される化合物が好適に用いられる。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

(R:H又はCH3
【0030】
【化7】

(R:H又はCH3
【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

(a+b=1又は2)
【0033】
【化10】

(a+b+c+d=1〜3)
【0034】
【化11】

〔a+b+c=n(整数)、R:炭化水素基〕
【0035】
【化12】

(n:整数)
【0036】
【化13】

(R:炭化水素基)
【0037】
【化14】

(n:整数、R:炭化水素基)
【0038】
中でも、式(V)、式(X)又は式(XIV)で表される化合物が、ポリカーボネート系樹脂への相溶性に優れ、透明性を損なうことがない点で好ましい。
脂環式エポキシ化合物の配合量は、ポリカーボネート系樹脂100質量部に対し、0.001〜1質量部、好ましくは0.005〜0.8質量部、より好ましくは0.01〜0.5質量部配合される。配合量が0.01質量部以上であると、透明性及び耐スチーム性が向上する。また、1質量部以下では、相分離が起こることなく、透明性も良好である。
【0039】
各種添加剤
本発明の光拡散性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を配合してもよい。例えば、ヒンダードフェノール系、エステル系、アミン系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、マロン酸エステル系、オキサリルアニリド系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、脂肪族カルボン酸エステル系、パラフィン系、シリコンオイル、ポリエチレンワックスなどの内部潤滑剤、スチレンとアクリル系化合物の共重合体からなる流動性改質材、常用の難燃化剤、難燃助剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0040】
本発明の光拡散性樹脂組成物は、必要に応じて、上記の各成分を配合し、溶融混練することにより得ることができる。配合、溶融混練は通常の方法を採用することができ、例えばリボンブレンダー,ヘンシェルミキサー,バンバリーミキサー,ドラムタンブラー,単軸スクリュー押出機,二軸スクリュー押出機,コニーダ,多軸スクリュー押出機等により行うことができる。溶融混練に際しての加熱温度は通常250〜300℃が適当である。
この光拡散性樹脂組成物は、樹脂の溶融流動性が著しく向上し、かつ、射出成形機等での滞留安定性が向上しているので、光学成形品や光拡散板等の材料として好適である。
光学成形品としては、液晶ディスプレイ分野、光学部品の用途、ガラス代替用途の光拡散板、光学部品としては、例えば、光学レンズ、光拡散板等の光学素子などが挙げられ、ガラス代替用途としては、街路灯カバー、車両用及び建材用合わせガラスなどが挙げられる。
【0041】
光拡散板
本発明の光拡散性樹脂組成物は、光拡散板に好適である。本発明はまた、該光拡散性樹脂組成物を成形してなる光拡散板を提供するものであり、該光拡散板は、前記光拡散性樹脂組成物を、好ましくは、射出成形することにより作製される。射出成形する場合、射出成形機のシリンダー温度を、240〜400℃程度、好ましくは280〜380℃程度とし、金型温度を50〜130℃程度で行うのが好ましい。
光拡散板としての形状は、特に制限はなく、厚さ0.5〜3mmの平板、曲面板等を成形すればよい。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
なお、物性は、下記の方法に従って測定した。
(1)粘度数の測定
ISO1628−4(1999)に準拠して測定した。
(2)溶融流動性(Q値)の測定
高架式フローテスターを用い、JISK7210に準拠して、280℃、15.7MPaの圧力下で、直径1mm、長さ10mmのノズルより流出する溶融樹脂量(mL/秒)を測定した。
(3)透過率及びヘイズの測定
射出成形により縦35mm、横25mm、厚さ2.0mmの成形品を作製し、スガ試験機製直読ヘーズメーターHGM−20DPを用いてD65光源で測定した。
(4)YIの測定
射出成形により縦35mm、横25mm、厚さ2.0mmの成形品を作製し、日本電色製分光測色計Σ90で測定面積30φ、C2光源の反射法で測定した。
(5)耐光性試験
射出成形により縦35mm、横25mm、厚さ2.0mmの成形品を作製した。本サンプルを用い、アトラス社製耐光試験機「UVCON UC−1」を用い、蛍光UVランプを光源として、65℃の雰囲気下で24時間照射後の色調変化ΔEを評価した。
(6)滞留安定性
40t射出成形機にて滞留させない場合をリファエレンスとし、15分間滞留させた後に成形した試験片の色調変化(ΔE)を日本電色製分光測色計Σ90で測定面積30φ、C2光源の反射法で測定した。
(7)成形性
650t射出成形機にて32インチ、厚み2mmの光拡散板を成形し、外観に焼け、ガス見られず、厚み交差が±100μm以内の場合を○、それ以外の場合を×と評価した。
【0044】
製造例1
ポリカーボネートオリゴマーの合成工程
5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するビスフェノールA(以下、BPAということがある)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5質量%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40リットル/hr、塩化メチレンを15リットル/hrの流量で、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で、内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。用いた管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は、後退翼を備えた内容積40リットルのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8リットル/hr、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.07リットル/hr、水17リットル/hr、1質量%のトリエチルアミン水溶液を0.64リットル/hr添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度320g/リットル、クロロホーメート基の濃度は、0.75モル/リットルであった。
【0045】
重合工程
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた、内容積50リットル槽型反応器に上記オリゴマー溶液15リットル、塩化メチレン9.0リットル、p−tert−ブチルフェノール(以下、PTBPということがある)187g及びトリエチルアミン3.0ミリリットルを仕込み、攪拌下でここにビスフェノールM(以下、BPMということがある)の水酸化カリウム水溶液(KOH520gと亜二チオン酸ナトリウム1.9gを水5.5リットルに溶解した水溶液にビスフェノールM973gを溶解させたもの)を加え、10分間ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールMの反応を行った。
この重合液に、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH306gと亜二チオン酸ナトリウム1.0gを水4.5リットルに溶解した水溶液にBPA 513gを溶解させたもの)を添加し50分間重合反応を実施した。
希釈のための塩化メチレン10リットルを加え、10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
【0046】
こうして得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次15vol%の0.03モル/リットルのKOH水溶液、0.2モル/リットル塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下100℃で乾燥し、BPM共重合体(a)を得た。13C−NMRにより求めたBPM共重合体(a)のビスフェノールM由来の繰り返し構造単位とビスフェノールA由来の繰り返し構造単位とのモル比は12:88であった。
【0047】
製造例2
ビスフェノールMの水酸化カリウム水溶液の添加量を次のように変更し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液の添加を行わなかった以外は製造例1と同様にしてBPM共重合体(b)を得た。13C−NMRにより求めたビスフェノールM由来の繰り返し構造単位とビスフェノールA由来の繰り返し構造単位のモル比は22:78であった。
(ビスフェノールMの水酸化カリウム水溶液)
KOH957gと亜二チオン酸ナトリウム3.6gを水10.1リットルに溶解した水溶液に、ビスフェノールM1783gを溶解させたもの
【0048】
製造例3
PTBPの添加量を191gから160gに変更した以外は製造例2と同様にしてBPM共重合体(c)を得た。
13C−NMRにより求めたビスフェノールM由来の繰り返し構造単位とビスフェノールA由来の繰り返し構造単位のモル比は22:78であった。
【0049】
製造例4
ビスフェノールMの水酸化カリウム水溶液、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液、PTBPの添加量を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてBPM共重合体(d)を得た。13C−NMRにより求めたビスフェノールM由来の繰り返し構造単位とビスフェノールA由来の繰り返し構造単位のモル比は8:92であった。
(ビスフェノールMの水酸化カリウム水溶液)
KOH347gと亜二チオン酸ナトリウム1.3gを水3.7リットルに溶解した水溶液にビスフェノールM649gを溶解させたもの。
(ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液)
NaOH 432gと亜二チオン酸ナトリウム1.5gを水6.3リットルに溶解した水溶液にBPA 727gを溶解させたもの。
(PTBP)
200g。
【0050】
実施例1〜23、比較例1,2
表1に示す組成比で原料を配合し、ベント付き40mmφの単軸押出機によって樹脂温度280℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練押出しそれぞれのペレットを得た。使用したカーボネート系樹脂の種類、ビスフェノールMのモル%、粘度平均分子量及びQ値の測定を行い、その結果を表1に示した。また、得られた各ペレットを用いて、射出成形法により光拡散板を成形し、その成形性、透過率、ヘイズ、拡散光の色調、耐光性、滞留安定性をそれぞれ評価した。その結果を表2に示した。
なお、表1中、
(1)FN1500:芳香族ポリカーボネート樹脂(出光興産株式会社製,タフロンFN1500)、(2)PEP36:リン系安定剤(旭電化工業株式会社製,アデカスタブPEP36)、(3)KMP590:シリコーン樹脂粒子(信越化学工業株式会社製)、(4)X−52−1621:シリコーン系拡散微粒子(信越化学工業株式会社製)、(5):EXL−5136:メタクリル樹脂(ロームアンドハース株式会社製)、(6)MBX−20(積水化成品工業株式会社製)、(7)トスパール120:架橋シリコーン樹脂(東芝シリコーン株式会社製)、(8)BR83:アクリル系樹脂(三菱レイヨン株式会社製,ダイヤナールBR83)、(9)KR511:オルガノポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)、(10)SH556(東レ・ダウコーニング株式会社製)、(11)KF56(信越化学工業株式会社製)、(12)SH710(東レ・ダウコーニング株式会社製)、(13)DC3037(東レ・ダウコーニング株式会社製)、(14)2021P:脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学工業株式会社製,セロキサイド2021P)、(15)ケミソープ79:耐光剤(商標、ケミプロ化成株式会社製)、(16)HOSTAVIN B−CAP:耐光剤(商標、クラリアントジャパン株式会社製)、(17)HOSTAVIN VSU:耐光剤(商標、クラリアントジャパン株式会社製)、(18)PR25:耐光剤(クラリアントジャパン株式会社製)、(19)TP003:スチレン/フェニルメタクリレート共重合体(三菱レイヨン株式会社製)をそれぞれ表す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の光拡散性樹脂組成物を用いると、大画面の光拡散板を成形しても、熱劣化による黄変がなく、良好な光拡散性を有する成形体が得られ、液晶ディスプレー分野における光拡散板等の光学素子、街路灯カバー、車両及び建材用合わせガラス等のガラス代替用途などに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)及び(II)で表される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート共重合体(A)を含有するポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、光拡散剤(B)0.01〜10質量部を配合してなることを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
ポリカーボネート共重合体(A)の粘度数が30〜70である請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(I)で表される繰り返し構造単位と、上記式(II)で表される繰り返し構造単位のモル比が1:99〜99:1であるポリカーボネート共重合体(A)を用いる請求項1又は2に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項4】
上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、アクリル系樹脂(C)0.01〜1質量部を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項5】
上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、リン系安定剤(D)0.001〜0.5質量部を配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項6】
上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、オルガノポリシロキサン(E)0.01〜1質量部を配合してなる請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項7】
上記ポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、更に、脂環式エポキシ化合物(F)0.001〜1質量部を配合してなる請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項8】
アクリル系樹脂(C)の粘度平均分子量が、1,000〜200,000である請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項9】
光拡散剤(B)が、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子、シリカ粒子、石英粒子、シリカ繊維、石英繊維、ガラス繊維から選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項10】
光拡散剤(B)の平均粒子径が、1〜200μmである請求項1〜9のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項11】
リン系安定剤(D)が、リン酸系化合物及び/又は芳香族ホスフィン化合物である請求項5〜10のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項12】
更に、上記ポリカーボネート共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合してなる請求項1〜11のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項13】
上記光拡散性樹脂組成物の粘度数が30〜70である請求項1〜12のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物を成形してなる、厚みが0.5〜3mmの光拡散板。

【公開番号】特開2007−302793(P2007−302793A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132970(P2006−132970)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】