説明

光接続部材及び心線対照方法

【課題】光接続部材の接続を外すことなく光通信状態で光ファイバ心線の心線対照ができ、しかも、光ファイバ心線に物理的な曲げや歪を与えることなく心線対照を容易に行うことが可能な光接続部材と、この光接続部材を用いた心線対照方法を提供する。
【解決手段】光信号伝送に用いられる光ファイバ心線同士を着脱可能に接続する光接続部材20であって、光ファイバ心線内に入力された可視光を光接続状態で外部に導出させる光導出機構を備える。この光導出機構として、例えば、光ファイバ21が挿通されたフェルール22内に、可視光を反射させるフィルタ部材27を配設して、可視光を外部に放光させる。また、光ファイバ21が挿通されたフェルール部材を結晶化ガラスで形成し、光ファイバ接合端面及びその近傍における可視光の漏れ光を拡散透過させて、可視光を外部に放光させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線盤等で光ファイバ心線の相互接続に用いられる光接続部材と、この光接続部材を用いて心線の対照を行う心線対照方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムは、局と他局との間や局と加入者端末との間に、光ファイバ心線からなる光ケーブルを敷設して互いに光信号を伝送して通信するシステムである。多数の光ファイバ心線は、局内の光配線盤で光接続部材等を用いて他局や加入者宅と光接続されるが、新規敷設や接続変えに際しては、光ファイバ心線を特定するために心線対照が行われる。この心線対照には、例えば、特許文献1に開示されているように、光配線盤に接続された光ファイバ心線のそれぞれに光カプラーを設け、その光カプラーを選択して光ファイバ心線に可視光(又は対照光)を入光させ、該光ファイバ心線の端末側で端子に設けられた光コネクタキャップに可視光を拡散透過させることにより、心線対照を行う方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、光ファイバコード内に入光させた対照光(可視光ではない)を、光コネクタの一方を外した接続アダプタの蓋に、対照光を可視光に変えるIRフィルタのような光学素子を組込んで、これに対照光が当たると可視光に変換されて目視による心線対照ができる方法が開示されている。また、特許文献2には、光コネクタが外されていない状態の時には、光ファイバコードを曲げて屈曲点で漏れる対照光を検出する方法も開示されている。
【特許文献1】特開2000−88704号公報
【特許文献2】特許第3363383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術によれば、光ファイバ心線に光カプラーを介して直接対照光を入光し、端末側の光コネクタキャップに対照光を拡散透過させることで、目視による心線対照が容易に行えるとされている。しかしながら、高密度化された局内等の光配線設備で、多くの光ファイバ心線(又は光ファイバコード)及び光コネクタが密集し輻輳している。このため、ジャンパー線による配線変えや断線等の故障検出に際しては、光ファイバ心線にバーコード等の識別手段も付されてはいるが、もともと識別作業が困難なことに加え、光配線盤内の周辺が暗いこともあって、前記の心線対照作業を困難なものとしている。この結果、心線対照の作業対象となるポートの識別に時間を要する上に、通信中の他の光コネクタを誤挿抜することがある。
【0005】
また、上記の特許文献1,2における心線対照は、信号光がない非通信中の光ファイバ心線に対して行うもので、光コネクタの相手方光コネクタを外して、光コネクタにキャップを被せるなどの作業を必要とする。なお、上記特許文献2には、光コネクタを外さず光通信中の光ファイバ心線の心線対照を行う例も示されているが、光ファイバ心線に洩れ光が生じるような曲げを与えて検出するので、他の通信中の光ファイバ心線も曲げることとなり、定常の光通信に対して損失変動を与えて通信異常を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、光接続部材の接続を外すことなく光通信状態で光ファイバ心線の心線対照ができ、しかも、光ファイバ心線に物理的な曲げや歪を与えることなく心線対照を容易に行うことが可能な光接続部材と、この光接続部材を用いた心線対照方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光接続部材は、光信号伝送に用いられる光ファイバ心線同士を着脱可能に接続する光接続部材であって、光ファイバ心線内に入力された可視光を光接続状態で外部に導出させる光導出機構を備えている。この光導出機構として、例えば、光ファイバが挿通されたフェルール内に、可視光を反射させるフィルタ部材を配設して、可視光を外部に放光させる。また、光ファイバが挿通されたフェルール部材を結晶化ガラスで形成し、光ファイバ接合端面及びその近傍における可視光の漏れ光を拡散透過させて、可視光を外部に放光させるようにしてもよい。なお、前記の可視光には、赤色レーザ光を用いることができる。また、前記の光導出機構の機能を、光ファイバ心線が装着された光コネクタ、又は光コネクタ同士を接続する接続アダプタのいずれかに備えさせることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光コネクタ等の光接続部材の接続を外すことなく、接続状態を維持したままで光ファイバ心線の心線対照ができ、光コネクタの誤挿抜を生じることがなく作業性を向上させることができる。さらに、光ファイバ心線に物理的な曲げや歪を与えないので、光通信に影響することなく光通信中での心線対照を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係わる心線対照システムの一例を説明する図で、前記特許文献1に開示のシステムを一部利用するものである。図中、1は光伝送装置、2はスターカプラー架、3は光ケーブル成端架、4(4a〜4d)は光ケーブル(光ファイバ心線)、5(5a〜5d)は加入者端末、6(6a〜6d)は光ファイバ(分岐光ファイバ)、7a〜7dはジャンパー線、8,9は光接続部材(光コネクタ)、10a,10は光配線盤、11(11a〜11d)は光分岐モジュール(光カプラー)、12,13は分岐光ファイバ、14は光スイッチ、15は制御装置、16は可視光光源、17は光パルス試験器、18は損失試験用光源を示す。
【0010】
光伝送装置1は、加入者端末5のそれぞれに伝送すべき信号光を、光ファイバ6を介してスターカプラー架2に送出する。スターカプラー架2では、光伝送装置1から信号光を多数加入者端末に分配するために、光ファイバ6をスターカプラー2aにより分岐光ファイバ6a〜6dに多分岐(図では、4分岐の例で示している)し、それぞれに信号光が送出されるようにする。分岐光ファイバ6a〜6dの出力端は、光配線盤10aに高密度で配設された光接続部材8に接続される。なお、説明を簡略にするために、光ファイバの心線数を4本で示すが、実際は数十〜数百本の心線数で構成されている。
【0011】
スターカプラー架2からの信号光は、ジャンパー線7a〜7dを経て光ケーブル成端架3の光ファイバ心線に送出される。光ケーブル成端架3は、光配線盤10b、光分岐モジュール11、光スイッチ14を備える。光配線盤10bには、光伝送装置1からの信号光をジャンパー線7a〜7dにより受信する多数の光接続部材9が高密度で配設されている。この光接続部材9には、受信した信号光を加入者端末5側に送出するための光ファイアバ心線4a〜4dの入力端が接続される。光分岐モジュール11は、多数の光カプラー11a〜11dを有し、光ケーブル4の各光ファイバ心線4a〜4dのそれぞれの経路上に設けられる。光カプラー11a〜11dのそれぞれには、例えば、2本の分岐光ファイバ12,13を有していて、光スイッチ14によって接続が選択される構成となっている。
【0012】
例えば、光カプラー11aの分岐光ファイバ12に、心線対照用の可視光光源16から光が送出されると、光ファイバ心線4aを介して加入者端末5a側に向けて可視光が伝送される。一方、分岐光ファイバ13に、可視光光源16から光が送出されると、光ファイバ心線4aを介して光接続部材9側に向けて可視光が伝送される。分岐光ファイバ12,13の選択は、制御装置15により制御される光スイッチ10により行われる。また、この光スイッチ14は、心線対照用の可視光の送出選択を行う以外に、パルス光を送出する光パルス試験器17、伝送損失を試験するための損失試験用光源18の選択にも用いられる。
【0013】
可視光光源16は、可視光(400nm〜750nm)を送出する光源を用いることができる。なお、赤色の光は、光接続部材に対して比較的識別しやすいことから、赤色レーザ光源による600nm以上の赤色レーザ光を用いるのが望ましい。また、光ファイバ内を通る可視光は、情報伝送の信号光に使用される波長帯(1.31μm、1.55μm)より伝送損失が大きいので、局内の光配電盤(例えば、数十〜数百mの距離)で設置された光接続部材8,9側による心線対照に用いるのに適している。
【0014】
なお、加入者端末に対する光ケーブルの敷設工事等では、工事現場の近くまで試験装置を運ぶことで対応させることができる。また、心線対照の距離が長くなる場合は、光パワーの大きい可視光光源を用いることで対応することも可能である。光パルス試験器17は、パルス光を光ファイバ心線4a〜4dに送出して、これに伴う後方散乱光を検出してODTR試験を行う。また、損失試験用光源16には、例えば、1.65μm帯の光源を用い、加入者端末5に至るまでの光伝送路の損失試験を行う。
【0015】
上述した心線対照システムで、心線対照は、加入者端末にても行うことができるが、多数の光ファイバ心線とその光接続部材8,9が多数配設された光配線盤10a,10bで行うことが多い。心線対照に際しては、例えば、可視光光源16から送出された光(例えば、赤色レーザ光)を送出すべく、光スイッチ14で対照しようとする光ファイバ心線4aと、分岐光ファイバ13を選択したとする。この場合、可視光は、光カプラー11aの光ファイバ13に送出され、光カプラー11aから光ファイバ心線4a内に入光されて、入力端に設けられた光接続部材9に向けて送出される。
【0016】
ここで、従来の場合は、光接続部材9の信号光を送出するジャンパー線7a側の光コネクタを、光配線盤10bから外し、光配線盤上に残された光ファイバ心線4a側の光コネクタに対するようにキャップを被せる。そして、このキャップに可視光光源からの可視光が拡散透過されたのを視認して心線を対照することとなる。しかし、光配線盤10bの両面側とも、多数の光ファイバ心線と光コネクタが輻輳しているため、心線の識別作業が大変なうえに、一方の光コネクタを外す作業がある。この光コネクタを間違えて外すと、通信中の回線に通信遮断を生じさせて、大きな障害発生を招くことがある。
【0017】
本発明においては、光接続部材8又は9の部分で心線対照を行うことは、従来と同じであるが、光接続部材を外すことなく、通信状態のままで心線対照が行えるようにしている。具体的には、光接続部材8,9に、光ファイバ心線内に送出した可視光を外部に導出する光導出機構を設けて、この光導出機構から放光される可視光を目視して、心線の対照を行ようにしている。
【0018】
図2〜図5は、本発明による光接続部材を説明する図で、図2は光コネクタに光導出機構を設ける例を説明する図、図3は光コネクタのフェルールの構成について説明する図、図4は接続アダプタに光導出機構を設ける例を説明する図、図5は他の実施形態を説明する図である。
図2及び図3において、20は光コネクタ、21は光ファイバ心線、22はフェルール、23はフェルール押え、24はコネクタ筐体、25はスプリング、26は窓部、27は反射フィルタ、28はブーツ、29はスリットを示す。
【0019】
光コネクタ20は、図2(A)に示すように、形状としては一般的な光コネクタ構造と同じで、例えば、フェルール22内に、光ファイバ心線21の被覆を除去してガラスファイバ端部を挿入して接着一体化する。そして、フェルール22は、フェルール押え23により保持され、コネクタ筐体24にスプリング25等により軸方向に付勢された状態で装着して構成される。光ファイバ心線21の引出し部分は、ゴム等の弾力性のある材料で形成されたブーツ28で保護される。また、光コネクタの外観形状は、図2(B)に示すように、コネクタ筐体24に光コネクタ20の挿抜を操作するラッチレバー24a等が一体に設けられ、コネクタ筐体24先端からフェルール22が、僅かに突き出るように構成される。
【0020】
本発明の光接続部材(光コネクタ)は、光ファイバ内に送出された可視光を外部に導出させるために、フェルールに反射フィルタ27を挿入し、コネクタ筐体24には、反射フィルタ27の近傍に可視光の透過が可能な窓部26を形成している。光コネクタ20を、このように構成することにより、光ファイバ心線21内に光コネクタ20側に向って送出された可視光を、反射フィルタ27により光ファイバの外に反射させて、窓部26を通して光コネクタ外部に放光させることができる。
【0021】
窓部26を通して放光される可視光は、図2(B)に示すように、コネクタ筐体24の側面に設けた窓部26の出口部分を光らせ、外部からも視覚で容易に確認することができる。この結果、光ファイバ心線21に、可視光が送られていることを検知することができる。したがって、図1の光接続部材8,9の光コネクタに、図2の光コネクタ20を用いることで、一方の光コネクタを外すことなく、心線対照を行うことができる。
【0022】
反射フィルタ27には、誘電体多層膜フィルタが用いられる。この誘電体多層膜フィルタは、例えば、波長がλ1以下の光は透過させるが、波長λ2を超える光は反射ないしは吸収することができるように構成されるもので、λ1やλ2の波長は、そのフィルタの厚さや積層構成によって設定することができる。誘電体多層膜フィルタとしては、種々のものが知られているが、使用する可視光の波長(色)等によって、適宜選択して用いることができる。
【0023】
図3(A)(B)に示すように、この反射フィルタ27は、フェルール22に形成したスロット29に挿入して組込むことができる。スロット29は、フェルール22のファイバ孔に、光ファイバ被覆を除去したガラスファイバ21aを挿入して接着一体化した後、フェルールの軸に交叉するように、所定の角度θで切り込みを入れ、ガラスファイバ21aを分断するようにして形成される。スロット29の角度θは、2°以上、好ましくは4°〜8°位とするのが望ましい。この角度は、光ファイバ内を直進してきた可視光が光ファイバ内に戻らないようにする程度の角度で形成する。
【0024】
反射フィルタ27に用いる誘電体多層膜フィルタとしては、例えば、安価で取り扱い易く、広範囲の波長で使用可能な、ポリイミドをベースにしたポリイミドフィルタを用いるのが望ましい。図3(C)は、心線対照の可視光として赤色レーザ光を用いる場合で、赤色カットフィルタの透過損失の一例を示したものである。このフィルタ特性は、図3(C)に示すように、赤色の波長領域(650nm〜750nm)で大きな透過損失を有し、650nmの波長で50dB以上の透過損失である。また、通常の信号光と用いる1310±20nm、1550±20nm並びに試験光1650±20nmの波長に対しては、フィルタ挿入による挿入損失は、いずれも0.5dB以下であり、反射減衰量は37dB以上である。
【0025】
このような反射フィルタを光コネクタのフェルール部分に挿入することにより、可視光を光ファイバの外に反射放光させると共に、その一部を吸収して反射フィルタを透過しないようにすることができる。一方、この可視光とともに光ファイバ内を通る信号光に対しては、反射フィルタによる挿入損失が少なく、信号光の通信には実質的に影響を与えない。したがって、光コネクタが接続された状態で通信中の光ファイバ心線に対して、心線対照のための可視光を送出しても、光通信上では何の支障もなく通信を継続させることができる。そして、光ファイバ内に送出された可視光を光コネクタの側面から導出させて放光し、視覚により確認することで心線対照を行うことができる。
【0026】
図4は、接続アダプタを介して光コネクタを互いに接続する光接続部材を示す図で、図中、30は接続アダプタ、31はガラスファイバ、32はアダプタフェルール、33は保持スリーブ、34はアダプタ筐体、35a,35bはレセプタクル部、36はアダプタ窓部を示す。その他の符号は、図2で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0027】
この図4の例は、図2で説明した光コネクタ20に形成した光導出機構を、接続アダプタ3側に設けたものである。接続アダプタ30は、両端に光コネクタが挿着されるレセプタクル部35aと35bを有し、中央部にアダプタフェルール32が保持スリーブ33により保持されている。アダプタフェルール32は、内部にガラスファイバ31を有し、光ファイバ内に送出された可視光を外部に放光させるために、アダプタフェルール32に反射フィルタ37を挿入する。この構成は、形状として固定減衰器に近いものといえる。そして、アダプタ筐体34には、反射フィルタ37の近傍に光透過が可能な窓部36が形成される。なお、接続アダプタ30は、通常、アダプタ筐体34の中央部に、支持パネル等への取付けのためのフランジが設けられているので、窓孔36はこのフランジを有しない側面に形成する。
【0028】
反射フィルタ37は、図3で光コネクタ用のフェルールで説明したのと同様な方法でアダプタフェルール32内に組込まれる。また、反射フィルタ37として用いる誘電体多層膜フィルタについても、光コネクタのフェルールに用いたのと同じものを使用することができる。接続アダプタ30のレセプタクル部35aと35bには、光コネクタ20が挿着され、光コネクタ20のフェルール22とアダプタフェルール32の端面同士が突き合わされることで、光接続が形成される。なお、この場合、光コネクタ20には、光導出機構をもたない通常の光コネクタを使用することができる。
【0029】
光接続部材の接続アダプタを上記のように構成することにより、光ファイバ心線21から光コネクタ20内に送出された可視光を、アダプタフェルール32内に組込まれた反射フィルタ板37により反射させて、アダプタ筐体の窓部36を通して外部に放光させることができる。窓部36を通して放光される可視光は、アダプタ筐体24の側面に設けた窓部36で光って、外部からも視覚で容易に確認することができる。この結果、光ファイバ心線21に、可視光が送られていることを検知することができる。したがって、図1の光接続部材8,9の光接続部材に、図3の接続アダプタ30を用いることで、光コネクタを外すことなく、心線対照を行うことができる。
【0030】
図5は、図4と同様に接続アダプタを用いた光接続部材の例で、反射フィルタを用いない他の実施形態を説明する図である。図中、40は光コネクタ、42はフェルール、43はフェルール押え、44はコネクタ筐体、45はスプリング、46は窓部、47は突合せ端面、50は接続アダプタ、51はアダプタ筐体、52a,52bはレセプタクル部を示す。その他の符号は、図2で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0031】
図5の光接続部材は、接続アダプタ50のレセプタクル部52a,52bに光コネクタ40を挿着して、光ファイバ21同士を光接続する。光コネクタ40は、形状的には図2で説明したものと同様で、例えば、フェルール42内に、光ファイバ21の被覆を除去してガラスファイバ端部を挿入して接着一体化する。そして、フェルール42は、フェルール押え43により保持され、コネクタ筐体44にスプリング45等により軸方向に付勢された状態で装着して構成される。
【0032】
この他、図では省略しているが、図2の光コネクタと同様に、光ファイバ心線21の引出し部分は、ゴム等の弾力性のある材料で形成されたブーツで保護される。また、コネクタ筐体24に光コネクタ20の挿抜を操作するラッチレバー等が一体に設けられ、コネクタ筐体24の先端からフェルール22が、僅かに突き出るように構成される。
なお、接続アダプタ50は、1対の光コネクタ40を位置決めしてフェルール端面を突合せて、その接続保持するように形成されたハウジング筐体51からなる。
【0033】
図5に示す光接続部材は、光コネクタのフェルール42が、可視光(赤色レーザ光)を拡散透過させる結晶化ガラスで形成され、そして、コネクタ筐体44には、図2と同様に可視光の透過が可能な窓部46を設けた構成を特徴としている。光コネクタ40同士は、接続アダプタ50を用いて突合せ接続されるが、その突合せ端面47での光ファイバのコア軸は、多少ずれていることが多い。このため、コア内を通る可視光は、このフェルール42の突合せ端面47から洩れ、これがフェルール42内に拡散して発光する。また、結晶化ガラスからなるフェルールを用いた場合、光ファイバ内に送出された可視光は、ガラスファイバの側面からの漏れ光がフェルール42内に拡散透過して、図の点線で示すように、フェルール42が突合せ面47を中心に可視光による発光が生じる。なお、本例においても、図4と同様に接続アダプタ50側に可視光を外部に放光する窓部を設けて、接続アダプタで発光するようにしてもよい。
【0034】
上記のようにフェルール42内に拡散された可視光は、コネクタ筐体44の窓部46から外部に放光される。窓部46を通して放光される可視光は、図2(B)で説明したように、外部からも視覚で容易に確認することができる。この結果、光ファイバ心線21に、可視光が送られていることを検知することができる。したがって、図1の光接続部材8,9の光コネクタに、図5の光接続部材(光コネクタ30)を用いることで、光コネクタの接続を外すことなく、心線対照を行うことができる。
【0035】
しかし、図5の光接続部材は、光ファイバ心線内に送出した可視光は、光コネクタ40で減衰されるとしても、残りの可視光は光伝送装置側に送出されてしまう。このため、光伝送装置の出口に図3の光コネクタに用いた反射フィルタを配して、光伝送装置に可視光が入力されるのを防止する必要がある。
【0036】
また、図1の心線対照システムにおいて、光配線盤10bの光接続部材9に、図2〜図4の反射フィルタを用いた構成の光接続部材を用いると、この光接続部材9のところで可視光がカットされる。したがって、光配線盤10a側の光接続部材8には可視光が送出されなくなり、光配線盤10a側での心線対照が行えないこととなる。そこで、光配線盤10b側の光接続部材9に図5に示した実施形態の光接続部材を用い、光配線盤10a側の光接続部材8に図2〜図4に示した実施形態の光接続部材を用いる。これにより、光配線盤10b側で光コネクタを外すことなく心線対照を行うことができると共に、光配線盤10a側でも光コネクタを外すことなく心線対照を行うことができる。また、光配線盤10a側の光コネクタで可視光を遮断することができるので、光伝送装置に可視光の入力を防止する反射フィルタを設ける必要がなくなる。
【0037】
以上、本発明の実施形態として、可視光を伝送装置側から送出する例で説明したが、光ケーブル等の敷設工事において、加入者端末側から可視光を送出し、加入者端末から光ケーブル成端架の間の心線対照を行う際にも、本発明は有効である。
また、本発明の実施形態で、コネクタ筐体に窓部を設けて可視光をコネクタ外部から視認する例を示したが、窓部の代わりに透明な材質で形成されたコネクタ筐体を使用することで、同様の効果を得ることができる。
さらに、本発明の実施形態で、光コネクタから導出された可視光を視覚で確認する例を示したが、可視光の強度が低く、視認しづらい場合には光センサを併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係わる心線対照システムの一例を説明する図である。
【図2】本発明による光接続部材で、光コネクタに光導出機構を設ける例を示す図である。
【図3】本発明による光接続部材で、フェルールの構成について説明する図である。
【図4】本発明による光接続部材で、接続アダプタに光導出機構を設ける例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
1…光伝送装置、2…スターカプラー架、3…光ケーブル成端架、4(4a〜4d)…光ケーブル(光ファイバ心線)、5(5a〜5d)…加入者端末、6(6a〜6d)…光ファイバ(分岐光ファイバ)、7a〜7d…ジャンパー線、8,9…光接続部材(光コネクタ)、10a,10…光配線盤、11(11a〜11d)…光分岐モジュール(光カプラー)、12,13…分岐光ファイバ、14…光スイッチ、15…制御装置、16…可視光光源、17…光パルス試験器、18…損失試験用光源、20,40…光コネクタ、21…光ファイバ心線、22,42…フェルール、23,43…フェルール押え、24,44…コネクタ筐体、25,45…スプリング、26,46…窓部、27…反射フィルタ、28…ブーツ、29…スリット、30,50…接続アダプタ、31…ガラスファイバ、32…アダプタフェルール、33…保持スリーブ、34,51…アダプタ筐体、35a,35,52a,52b…レセプタクル部、36…アダプタ窓部、47…光突合せ端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号伝送に用いられる光ファイバ心線同士を着脱可能に接続する光接続部材であって、前記光ファイバ心線内に入力された可視光を光接続状態で外部に導出させる光導出機構を備えていることを特徴とする光接続部材。
【請求項2】
前記光導出機構は、光ファイバが挿通されるフェルール内に、前記可視光を反射させ信号光を透過させるフィルタ部材を配設して、前記可視光を外部に放光させる構成であることを特徴とする請求項1に記載の光接続部材。
【請求項3】
前記光導出機構は、光ファイバが挿通されるフェルールを結晶化ガラスで形成し、光ファイバ接合端面及びその近傍における可視光の漏れ光を拡散透過させて、前記可視光を外部に放光させる構成を特徴とする請求項1に記載の光接続部材。
【請求項4】
前記可視光に赤色レーザ光を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光接続部材。
【請求項5】
前記光導出機構を、光ファイバ心線が装着された光コネクタ側に備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光接続部材。
【請求項6】
前記光導出機構を、光コネクタ同士を接続する光接続アダプタ側に備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光接続部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光接続部材を用い、光ファイバ心線内に入力された可視光を光接続部材の側方に放光させて心線対照を行うことを特徴とする心線対照方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−83622(P2008−83622A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266454(P2006−266454)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000183130)住電オプコム株式会社 (9)
【Fターム(参考)】