説明

光断層撮影装置用の回転装置および回転装置付きの光断層撮影装置

【課題】物体を、予め設定された物体軸の周りを予め設定された精度で回転させることが可能な光断層撮影装置用回転装置を提供する。
【解決手段】回転装置(1)は、第1回転軸(10)の周りでの回転を引き起こすことが可能な回転モジュール(8)と、回転モジュール(8)に連結され、回転モジュール(8)を第1回転軸(10)に沿って位置決めすることが可能な第1位置決めモジュール(7)と、回転モジュール(8)に連結され、試料キャリア(4)を被検物体(5)と共に固定することが可能な第2位置決めモジュール(9)とを備え、回転モジュール(8)による回転の際に物体(5)が物体軸(6)の周りを回転するように、第2位置決めモジュール(9)により物体軸(6)を第1回転軸(10)に対して相対的に位置決めすることが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光断層撮影装置用の回転装置および回転装置付きの光断層撮影装置に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
例えば、ゲル棒に固定された物体の蛍光放射を様々な方向から捕捉する光断層撮影装置では、顕微鏡で観察すべき物体(例えば、ゲル棒に取り付けられた胚)を感知し、その物体を貫通する物体軸の周りを約0.2μmの精度で回転することが可能な回転装置が必要である。
【0003】
したがって、本発明の課題は、該物体を、予め設定された物体軸の周りを予め設定された精度で回転させることが可能な光断層撮影装置用回転装置を提供することにある。さらに、このような回転装置を備える光断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、被検物体を取り付けた試料キャリアが、予め設定された物体軸の周りを回転できるように構成された光断層撮影装置用回転装置によって解決される。この回転装置は、第1回転軸の周りでの回転を引き起こすことが可能な回転モジュールと、回転モジュールに連結され、この回転モジュールを第1回転軸に沿って位置決めすることが可能な第1位置決めモジュールと、回転モジュールに連結され、試料キャリアを被検物体と共にそれに固定することが可能な第2位置決めモジュールとを備え、この第2位置決めモジュールにより、回転モジュールによる回転の際に物体が物体軸の周りを回転するように、物体軸を第1回転軸に対して相対的に位置決めすることができる。
【0005】
この回転装置を用いると、予め設定された物体軸の周りを回転する際に比較的簡単な構造によって所要の精度を達成することができる。
特に、回転モジュールは、第1回転軸の周りを回転できるとともに、第2位置決めモジュールにより、物体軸を、第1回転軸と一致するように位置決めすることが可能となるような、第1回転テーブルを備えることができる。
【0006】
さらに、第2位置決めモジュールは、回転モジュールに回転不能に連結されたx−yテーブルを備えることができる。
また、第2位置決めモジュールが第2および第3の回転テーブルを備えることも可能であり、その場合、第2回転テーブルは第2回転軸の周りを回転できるように第1回転テーブルに固定され、第3回転テーブルは第3回転軸の周りを回転できるように第2回転テーブルに固定され、第1の回転軸は第2の回転軸と一致せず、第2の回転軸は第3の回転軸と一致していない。
【0007】
さらに、第2位置決めモジュールは、直線移動装置を介して第1回転テーブルに連結された第2テーブルを備えることができ、その場合、物体キャリアが第1回転テーブルに対して相対的に回転できる。
【0008】
物体キャリアをこのように回転可能にするために、例えば第2テーブルを第1回転テーブルに対して回転可能なように構成することができる。
さらに、回転モジュールは、第2位置決めモジュールが第1回転軸の周りを回転するように制御されるx−yテーブルを備えることもでき、その場合、第2位置決めモジュールは、回転モジュールのx−yテーブルに回転不能に連結された回転テーブルを備える。
【0009】
この課題は、さらに、上記の回転装置と、物体を照明するための照明装置と、物体の少なくとも1つの光学切断面を検出するための検出モジュールと、断層撮影装置を制御するための制御モジュールとを備える光断層撮影装置によって解決される。検出モジュールは、例えば物体からの蛍光放射を検出することができる。もちろん、照明を受けた物体から放出される他の各放射も検出することができ、特に、検出モジュールは、物体からの放射を共焦点で検出することができる。
【0010】
この光断層撮影装置は、特に、顕微鏡として、あるいはレーザ走査型顕微鏡としても形成することができる。
以下では、本発明を、添付の図面に基づき例によってさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1には、回転装置1と、照明モジュール2と、検出モジュール3と、制御モジュールSとを備える光断層撮影装置の概略図が示されている。照明モジュール2および検出モジュール3としては、それぞれ1枚のレンズだけが模式的に示されている。もちろん、照明モジュール2および検出モジュール3は、光断層撮影装置に必要な照明および検出を実施できるようにするための、当業者には周知のその他の素子も含んでいる。
【0012】
回転装置1には、被検物体5を取り付けた試料キャリア4(ここではゲル棒)が固定されている。より見やすくするために、回転装置1は、分解図の形式でゲル棒4に対して相対的に示されている。実際には、ゲル棒4は回転装置1によって保持されている。物体は、例えば、ゲル棒4内に埋め込まれた胚5である。
【0013】
物体5は照明モジュール2により、照明軸BAに沿って照明され、その際、照明モジュール2は(矢印P1で示されるように)直線状に集束された照明放射束を発するので、ゲル棒4内では、また埋め込まれた胚5内でも、y−z平面に平行な面が照明される。その際に胚内で生成された蛍光放射FSは検出モジュール3によって捕捉され、それにより胚5の光学切断面が検出される(検出軸はDAで示されている)。
【0014】
x方向で非常に高い解像度を得るために、検出は、特に共焦点で実施することができる。
回転装置1は、ゲル棒4が、物体5のゲル棒4内での位置に関わらず、物体5を貫通する物体軸6(z軸に平行)の周りを回転できるように、ゲル棒4を(z方向において)位置決めし、(z軸に平行な軸の周りを少なくとも±45°の回転角αだけ)回転させることができるように構成されている。この場合、物体軸6はゲル棒4の中心軸TOから平行移動している。したがって、光断層撮影装置を用いて、様々な回転位置における物体5の光学切断面を検出することができ、次いで、それから、周知のとおり、所望の物体の3次元像を生成することができる。物体5の位置決め、回転、照明、検出、および場合によっては測定データの評価および画像生成は、制御モジュールSの制御下で行われる。
【0015】
特に、検出モジュール3は物体を拡大して検出することができるので、光断層撮影装置は顕微鏡と呼ぶこともできる。
照明モジュール2および検出モジュール3は、それらが、回転テーブル、制御モジュール3、および場合によっては当業者に周知のその他のモジュールと共に、公知のようにして物体内の様々な深さにおける物体5の光学切断面を検出するレーザ走査型顕微鏡を形成するように構成することができる。回転装置1により、この光学的切断を、物体の様々な深さにおいてそれぞれ様々な回転位置で実施することができるので、物体5の高い解像度の3次元画像を作成することができる。
【0016】
図1に示した実施形態では、照明軸BAと検出軸DAとが90°の角度を成している。もちろん、別な角度も可能である。特に、照明軸BAと検出軸DAが一致してもよい。さらに、光断層撮影装置(または顕微鏡)は、照明モジュールが落射照明または透過照明を実現するように構成することもできる。
【0017】
レーザ走査型顕微鏡を構成する場合、照明放射束は物体5に対して直線状だけでなく、例えば点状に集束させることも可能である。さらに、照明モジュール2および検出モジュール3は、照明および/または検出が共焦点で行われるように形成することができる。
【0018】
回転角度は少なくとも±45°が望ましいが、所望の回転を物体軸6によって実現できるようにするために、回転装置1を例えば図2および3に示すように形成することができる。
【0019】
回転装置1は、第1位置決めモジュール7を含んでおり、その下面に(図2)第1回転テーブル8が固定されている。第1回転テーブル8の下面には、x−yテーブル9が第1回転テーブル8に回転不能に連結されている。x−yテーブル9には、ゲル棒4が回転不能に保持されている。
【0020】
第1位置決めモジュール7は、第1回転テーブル8をx−yテーブル9およびゲル棒4と共にz方向に沿って移動させることができ、それによって、物体5を照明モジュール2および検出モジュール3に対して所望のz位置に位置決めすることができるようにするために用いられる。x−yテーブル9は、x方向での位置決め用の第1キャリッジS1とy方向での位置決め用の第2キャリッジS2とを備え、物体軸6を、回転テーブル8の回転軸10と一直線に並ぶか、あるいは一致するように(例えば、図3の下面図で示唆されるように)位置決めするために用いられる。物体軸6が回転軸10と一致する場合、第1回転テーブル8の回転が(図3に矢印P2で示唆されるように)、物体軸6の周りでの物体5の回転をもたらす。
【0021】
したがって、簡単な手段によって、物体5の所望の位置決めおよび回転を所要の精度で達成することができる。
図4には、図2および3の回転装置の変形形態が示されている。回転装置1を下面図で示す図4の実施形態の場合、x−yテーブル9の代わりに第2及び第3の回転テーブル11、12が設けられている。第2回転テーブル11は、第2回転軸13の周りを回転できるように(矢印P3で示唆される)第1回転テーブル8に連結されている。第3回転テーブル12は、第3回転軸14の周りを回転できるように(矢印P4で示唆される)第2回転テーブル11に連結されている。第1および第2の回転軸10および13は互に位置がずれている。第2と第3の回転軸13および14についても同じことが当てはまり、やはり第2、第3の回転テーブル11、12によって、ゲル棒4(図4では、図を簡略にするためにゲル棒4は描き入れていない)の物体軸6を、第1回転テーブル8の第1回転軸10と一致するように位置決めすることができる。したがって、第1回転テーブル8の回転につれて物体5が物体軸6の周りを回転する。
【0022】
図5には、回転装置の別の実施形態が示されている。この実施形態では、回転装置は、第1位置決めモジュール7、この第1位置決めモジュール7の下面に連結されたx−yテーブル15、ならびにこのx−yテーブル15に回転不能に連結された回転テーブル16を含んでいる。回転テーブル16の下面にはゲル棒4が回転不能に保持されている。
【0023】
第1位置決めモジュール7は、図2から図4の実施形態の場合と同様に、物体をz方向で位置決めするために用いられる。
x−yテーブル15は、x方向でもy方向でも正弦波形の動きをするように制御される。その結果、回転テーブル16はその中央に配置された相応するゲル棒4と共に円形運動をする。しかし、ゲル棒4はまた同時に回転テーブル16によってその中心軸TOの周りを回転し、その際、x方向およびy方向での正弦波運動の1周期毎に、ゲル棒4が丸1回転する。それにより、ゲル棒4の中心軸TOに平行なゲル棒4内の任意の回転軸を、x−yテーブル15と回転テーブル16の組合せ運動の回転軸として定めることができ、したがって、物体軸5もゲル棒4内で自由に選択することができる。
【0024】
図6には回転装置の別の実施形態が示されている。この実施形態は図2および3の実施形態がベースになっているが、この場合はx−yテーブル9の代わりに、第1回転テーブル8に対し(双方矢印P5で示唆されるように)1方向への相対的移動しか行えないように第1回転テーブル8に連結された線形テーブル17が設けられている点がそれらとは異なっている。ゲル棒4は、この線形テーブル17上に回転可能に固定されているので、ゲル棒4が線形テーブル17に対して回転可能で、線形テーブル17が線形に動くことにより、物体軸6を、第1回転テーブル8の第1回転軸10と一致するように位置決めすることができる。もちろん、線形テーブル17は、第1回転テーブル8に対して回転可能となるように構成することもできる。この場合は、ゲル棒4を線形テーブル17に回転時に安定するように連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光断層撮影装置の概略透視図。
【図2】第1実施形態に基づく回転装置の側面図。
【図3】図2の回転装置の下面図。
【図4】図2の回転装置の一変更形態の下面図。
【図5】回転装置の別の実施形態の側面図。
【図6】図2の回転装置の一変更形態の下面図。
【符号の説明】
【0026】
1…回転装置、2…照明モジュール、3…検出モジュール、4…試料キャリア、5…被検物体、6…物体軸、7…第1位置決めモジュール、8…回転モジュール、9…第2位置決めモジュール、10…第1回転軸、11…第2位置決めモジュール、12…第2位置決めモジュール、13…第2回転軸、14…第3回転軸、15…第1回転モジュール、16…第2位置決めモジュール、17…第2位置決めモジュール、BA…照明軸、DA…検出軸、FS…蛍光放射、P1…矢印、P2…矢印、P3…矢印、P4…矢印、P5…矢印、S…制御モジュール、S1…第1キャリッジ、S2…第2キャリッジ、TO…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物体(5)を取り付けた試料キャリア(4)が、予め設定された物体軸(6)の周りを回転できるように構成された光断層撮影装置用回転装置(1)であって、
第1回転軸(10)の周りでの回転を引き起こすことが可能な回転モジュール(8;15)と、
該回転モジュール(8)に連結され、該回転モジュール(8;15)を該第1回転軸(10)に沿って位置決めすることが可能な第1位置決めモジュール(7)と、
該回転モジュール(8;15)に連結され、該試料キャリア(4)を該被検物体(5)と共に固定することが可能な第2位置決めモジュール(9;11、12;16;17)とを備え、
該回転モジュール(8;15)による回転の際に該物体(5)が該物体軸(6)の周りを回転するように、該第2位置決めモジュール(9;11、12;16;17)により、該物体軸(6)を該第1回転軸(10)に対して相対的に位置決めすることが可能である、回転装置。
【請求項2】
前記回転モジュール(8)が、前記第1回転軸(10)の周りを回転できるとともに、前記第2位置決めモジュール(9;11、12;16;17)により、前記物体軸(6)を、前記第1回転軸(10)と一致するように位置決めすることが可能となるような、第1回転テーブルを有する、請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記第2位置決めモジュールが、前記回転モジュール(8)に回転不能に連結されたx−yテーブル(9)を備える、請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記第2位置決めモジュールが、第2および第3の回転テーブル(11、12)を備えており、前記第2回転テーブル(11)が第2回転軸(13)の周りを回転できるように前記第1回転テーブル(8)に固定され、前記第3回転テーブル(12)が第3回転軸(14)の周りを回転できるように前記第2回転テーブル(11)に固定され、前記第1の回転軸(10)と前記第2の回転軸(13)とが一致せず、かつ前記第2の回転軸(13)と前記第3の回転軸(14)とが一致しない、請求項2に記載の回転装置。
【請求項5】
前記第2位置決めモジュールが、直線移動装置を介して前記第1回転テーブル(8)に連結された第2テーブル(17)を備えており、前記第2テーブル(17)に固定された前記試料キャリア(4)が前記第1回転テーブル(8)に対して相対的に回転可能である、請求項2に記載の回転テーブル。
【請求項6】
前記第2テーブル(17)が前記第1回転テーブル(8)に対して相対的に回転可能である、請求項5に記載の回転装置。
【請求項7】
前記回転モジュールが、前記第2位置決めモジュール(16)を前記第1回転軸(10)の周りを回転するように制御するx−yテーブル(15)を備え、前記第2位置決めモジュール(16)が、前記回転モジュールの前記x−yテーブルに回転不能に連結された回転テーブルを備える、請求項1に記載の回転装置。
【請求項8】
光断層撮影装置であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の回転装置(1)と、
前記物体(5)を照明するための照明モジュール(2)と、
前記物体(5)の少なくとも1つの光学切断面を検出するための検出モジュール(3)と、
前記断層撮影装置を制御するための制御モジュール(4)と
を備える光断層撮影装置。
【請求項9】
前記光断層撮影装置が顕微鏡として形成されている、請求項8に記載の光断層撮影装置。
【請求項10】
前記光断層撮影装置がレーザ走査型顕微鏡として形成されている、請求項8または9に記載の光断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−51802(P2008−51802A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168676(P2007−168676)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロイメージング ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss MicroImaging GmbH
【Fターム(参考)】