説明

光書込型表示装置

【課題】簡易な構成で容易に、表示媒体における書込及び初期化に必要な光強度の低下が図れる光書込型表示装置を提供する。
【解決手段】光書込型表示装置10では、前処理では、書込処理において前処理を行わずに書込処理を行う場合には必要であった第3の強度より小さい第1の強度の書込光を光導電層20に露光する。そして、書込処理において、該第1の強度の書込光の照射と、電極15及び電極22への第2の強度の電圧値の電圧を印加する。また、前処理では、初期化処理において前処理を行わずに書込処理を行う場合には必要であった第2の強度より小さい第1の強度の書込光を光導電層20に露光する。そして、初期化処理において、該第1の強度の書込光の照射と、電極15及び電極22への第1の強度の電圧値の電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光書込型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光書き込み型表示デバイスは、所定の電圧を素子に印加しつつ、受光した光量により光スイッチング素子のインピーダンスを変化させ、表示素子に印加される電圧あるいは電流を制御することにより、表示素子を駆動し、画像を表示するものである。特に、メモリ性のある表示素子と光導電性スイッチング素子を積層し、これに、電圧を印加すると共に、光画像を入射し、書き込みを行う光書き込み型表示媒体は、書き込み装置から媒体を切り離して持ち歩くことが可能な電子ペーパー媒体として注目されている。
【0003】
光書き込み型表示媒体の表示素子としては、例えば、ポリマーに分散しメモリ性を付与したネマチック液晶、コレステリック液晶、強誘電液晶のような液晶表示素子、あるいは電気泳動素子や電界回転素子、トナー電界移動型素子や、これらをカプセル化した素子等が検討されている。
【0004】
これら、受光した光量により電圧あるいは電流を制御できるような光スイッチング素子としては、例えば、電子写真の分野で用いられるアモルファスシリコン素子、有機光導電体を用いた機能分離型二層構造の光導電素子、さらに、電荷輸送層(以下、「CTL」という場合がある)の上下に電荷発生層(以下、「CGL」という場合がある)、を形成した構造(以下、デュアルCGL構造と称する)の光導電素子が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、表示素子としては、メモリ性を有するコレステリック液晶を表示層材料として用いたものが検討されている。
上記液晶分子が螺旋構造を持つコレステリック液晶は、螺旋軸に入射した光を右円偏光と左円偏光に分け、螺旋の捩じれ方向に一致する円偏光成分をブラッグ反射し、残りの光を透過させる選択反射現象を起こす。反射光の中心波長λ、及び反射波長幅Δλは、螺旋ピッチをp、螺旋軸に直交する平面内の平均屈折率をn、複屈折率をΔnとすると、それぞれλ=n・p、Δλ=Δn・pで表され、コレステリック液晶層による反射光は螺旋ピッチに依存した鮮やかな色を呈する。
【0006】
コレステリック液晶は、図2(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ、同図(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック、及び同図(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック、の3つの状態を示す。
【0007】
上記の3つの状態のうち、プレーナ及びフォーカルコニックは、無電圧で双安定に存在することができる。したがって、コレステリック液晶の配向状態は、液晶層に印加される電圧に対して一義的に決まらず、プレーナが初期状態の場合には、印加電圧の増加に伴って、プレーナ、フォーカルコニック、ホメオトロピックの順に変化し、フォーカルコニックが初期状態の場合には、印加電圧の増加に伴って、フォーカルコニック、ホメオトロピックの順に変化する。
【0008】
一方、液晶層に印加した電圧を急激にゼロにした場合には、プレーナとフォーカルコニックはそのままの状態を維持し、ホメオトロピックはプレーナに変化する。
【0009】
したがって、液晶層に電圧を印加した後に電圧を急激にゼロにしたときのコレステリック液晶層は、図3に示すようなスイッチング挙動を示し、液晶層に加わる分圧がVfh(上側閾値)以上のときには、ホメオトロピックからプレーナに変化した選択反射状態となり、Vpf(下側閾値電圧)とVfhとの間のときには、フォーカルコニックによる透過状態となり、Vpf以下のときには、電圧印加前の状態を継続した状態、すなわちプレーナによる選択反射状態又はフォーカルコニックによる透過状態となる。
【0010】
現在、主として開発が進められている光書込み型電子ペーパーでは、例えば、一対の電極間に液晶層である表示層と光導電体層である光導電層とを例えば光吸収層を挟んで積層挟持してなる表示媒体について、一対の電極に所定の電圧を印加した状態で光導電層側の表面を照射することで、所望の記録画像を書き込んでいる。具体的には、一対の電極に所定の電圧を印加した状態で照射を行うことで光導電層に光電流が流れて液晶層の照射領域に係る分圧が増大して、照射領域がホメオトロピックに変化し、電圧が解除されることでプラナー状態に変化する。これによって、画像が書き込まれる(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
光書込み型電子ペーパーにおいては、感度向上のため様々な試みがなされており、この電子ペーパーに適用可能な技術としては、例えば、特許文献2には、表面処理層を有するアルミニウム製基体に有機感光層が形成される有機の高感度感光体において、アルミニウム製基体の表面処理層を特定の範囲のインピーダンスを有するように構成することで、高感度の感光体を提供する技術が開示されている。
【0012】
また、特許文献2においては、ガラス基板上に形成されたITO透明電極の下部電極上に樹脂分散有機半導体層が形成され、その樹脂分散有機半導体層上に金蒸着膜の上部電極を形成する。そして、この樹脂分散有機半導体層を、ペリレン顔料とポリカーボネートをTHF溶液中で混合した分散液をスピンコート法により塗布して乾燥させる。このように構成し、電極に電圧を印加しながら樹脂分散有機半導体層に光照射することで、倍増された光照射誘起電流を得ている。
【特許文献1】特開2004−12569号公報
【特許文献2】特開平5−019515号公報
【特許文献3】特開2002−076430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、本構成を有さない場合と比して、表示媒体における書込及び初期化に必要な光強度の低下が図れる光書込型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、一対の電極の間に、予め定められた波長領域の書込光を吸収することにより該書込光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す光導電層と、前記一対の電極に印加された電圧による前記光導電層の電気的特性分布に応じた分圧が印加されるコレステリック液晶層と、が少なくとも積層された表示媒体と、
前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記光導電層に前記書込光を照射する照射手段と、
予め定められた第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御することによって前記光導電層に励起子を発生させる前処理を行った後に、
前記第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御すると共に予め定められた第1の電圧値の第1の電圧を前記一対の電極間に印加するように前記電圧印加手段を制御することにより、前記コレステリック液晶層の配向をそろえる第1の状態変化を生じさせて該コレステリック液晶層を初期化する初期化処理、
及び前記第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御すると共に予め定められた第2の電圧値の第2の電圧を前記一対の電極間に印加するように前記電圧印加手段を制御することにより、前記コレステリック液晶層における少なくとも一部の配向を変化させる第2の状態変化を生じさせて該コレステリック液晶層へ画像を書き込む書込処理、
の少なくとも一方を行う制御手段と、
を備えた光書込型表示装置である。
【0015】
請求項2に係る発明は、前記表示媒体は、前記制御手段による前記照射手段の制御によって、前記前処理の行われる前の状態においては、前記第1の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加されると共に前記第1の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときには、前記コレステリック液晶層における前記第1の状態変化が生じず、該第1の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加された状態で該第1の強度を超える第2の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときに、前記コレステリック液晶における前記第1の状態変化が生じることを特徴とする請求項1に記載の光書込型表示装置である。
【0016】
請求項3に係る発明は、前記表示媒体は、前記制御手段による前記照射手段の制御によって、前記前処理の行われる前の状態においては、前記第2の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加されると共に前記第1の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときには、前記コレステリック液晶層における前記第2の状態変化が生じず、該第2の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加された状態で該第1の強度を超える第3の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときに、前記コレステリック液晶における前記第2の状態変化が生じる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光書込型表示装置である。
【0017】
請求項4に係る発明は、前記制御手段は、前記前処理において、前記第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御することによって前記光導電層に励起子を発生させると共に、更に該励起子を自由キャリアに分離させる第3の電圧値の第3の電圧を前記一対の電圧間に印加するように前記電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光書込型表示装置である。
【0018】
請求項5に係る発明は、前記第3の電圧値は、前記制御手段による前記照射手段の制御によって、前記前処理が行われた後の状態の前記表示媒体において、該第3の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加されたときの前記コレステリック液晶層にかかる分圧が、前記第1の強度の書込光の照射時に前記コレステリック液晶層のプレーナからフォーカルコニックへの状態変化の閾値を超えない電圧値であることを特徴とする請求項4に記載の光書込型表示装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、表示媒体における書込及び初期化に必要な光強度の低下が図れる、という効果を奏する。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、表示媒体における初期化に必要な光強度の低下が、更に図れる、という効果を奏する。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、表示媒体における書込に必要な光強度の低下が、更に図れる、という効果を奏する。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、表示媒体における書込及び初期化に必要な光強度の低下が、更に図れる、という効果を奏する。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、表示媒体における書込及び初期化に必要な光強度の低下が、更に図れる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の光書込型表示装置及び光書き込み方法の一の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本実施の形態の光書込型表示装置10は、表示媒体12と、書込装置14と、を備えている。
【0026】
本実施の形態では、表示媒体12は、表示面側(図1中、X側)から順に、基板13、電極15、液晶層17、光吸収層19、ラミネート層18、デュアルCGL構造の光導電層(光導電体層)20、電極22、及び基板24が積層されて構成されている。
【0027】
表示媒体12が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体に相当し、電極15及び電極22が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体の一対の電極に相当する。また、液晶層17が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体のコレステリック液晶層に相当し、光導電層20が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体の光導電層に相当する。また、書込装置14の後述する制御部28が、本発明の光書込型表示装置の制御手段に相当する。
【0028】
基板13及び基板24は、各機能層を基板間に保持し、表示媒体12の構造を維持する目的の部材である。基板13及び基板24は、外力に耐える強度を有するシート形状の物体であり、表示面側に設けられた基板13は少なくとも入射光を、表示面と反対側に設けられた基板24は、後述する書込光を少なくとも透過する。また、これらの基板13及び基板24は、フレキシブル性を有することが好ましい。
【0029】
基板13及び基板24を構成する具体的な材料としては、無機シート(たとえばガラス・シリコン)、高分子フィルム(たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリスルホン、PES(ポリエーテルスルホン)、PC(ポリカーボネート)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド)等が挙げられる。
なお、本実施形態では、光導電層(電荷発生層、電荷輸送層)に有機材料を用いるため、高温で熱処理をする工程がないので、フレキシブル基板が得られること、成形が容易なこと、コストの点などから光透過性の高分子フィルム基板を用いることが有利である。
これらの基板13、及び基板24の厚みとしては、50μm以上500μm以下の範囲程度が好適である。
【0030】
電極15及び電極22は、詳細を後述する書込装置14から印加された電圧を、表示媒体12内の各機能層へ面均一に印加するための部材である。このため、電極15及び電極22は、面均一な導電性を有し、表示面側に設けられた電極15は少なくとも入射光を、表示面と反対側に設けられた電極22は、後述する書込光を少なくとも透過する。なお、本実施の形態において、「導電」及び「導電性」とはシート抵抗が500Ω/□以下のものを示す。
【0031】
電極15及び電極22としては、金属(たとえば金、アルミニウム)、金属酸化物(たとえば酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO))、導電性有機高分子(たとえばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などで形成された導電性薄膜が挙げられる。なお、これらの電極15及び電極22各々の表面および/または裏面には、密着力改善膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
【0032】
また、電極15及び電極22は、上記基板13及び基板24の各々の上にスパッタリングされて形成されているが、必ずしもスパッタリングによる必要はなく、印刷、CVD、蒸着などにより形成してもよい。
【0033】
光導電層(光導電体層)20は、上記電極15と電極22との間に設けられ、内部光電効果をもち、書込光の照射強度に応じてインピーダンス特性が変化することにより、該書込光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す層である。
【0034】
本実施の形態においては、光導電層20は、図1に示すように、表示面側から順に、電荷発生層(CGL)20A、電荷輸送層(CTL)20B、電荷発生層(CGL)20Cが順に積層されたDual−CGl構造とされている。
【0035】
電荷発生層20Aは、書込光を吸収して電荷を発生させる機能を有する層である。すなわち、書込光とは、光導電層20の電荷発生層20Aの吸収する吸収波長領域の光を示している。電荷発生層20Aとしては、書込光を吸収して励起子(電子とホールの対)を発生させ、電荷発生層20Aの内部、または電荷発生層20Aと電荷輸送層20Bとの界面で自由キャリアに効率良く分離させられるものが好ましい。
なお、この書込光が、本発明の光書込型表示装置において照射手段によって光導電層へ照射される光に相当する。
【0036】
電荷発生層20Aとしては、電荷発生材料をバインダー樹脂に分散したものなどが挙げられる。この電荷発生材料としては、金属又は無金属フタロシアニン顔料、スクアリウム顔料、アズレニウム顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ジブロモアントアントロン顔料などの多環キノン顔料、等が適用可能であるが、フタロシアニン顔料である、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、あるいはチタニルフタロシアニンの一種類かあるいは混合物を主成分とする電荷発生材料が好ましい。
【0037】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)がi)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°、ii)7.7°、16.5°、25.1°及び26.6°、iii)7.9°、16.5°、24.4°及び27.6°、iv)7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°、v) 6.8°、12.8°、15.8°及び26.0°又はvi)7.4°、9.9°、25.0°、26.2°及び28.2°に強い回折ピークを有するような結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
【0038】
クロロガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°、又は6.8°、17.3°、23.6°及び26.9°、又は8.7°〜9.2°、17.6°、24.0°、27.4°及び28.8°に強い回折ピークを有する結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
また、チタニルフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°,27.3°に回折ピークをもつ結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
【0039】
電荷発生層20Aに用い得るバインダー樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂を含む)、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂などが適用可能である。特に、ポリビニルアセタール樹脂やカルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂は、電荷発生材料を良好に分散させるため、好ましいバインダー樹脂である。
【0040】
電荷発生層20Aにおける電荷発生材料等(電荷輸送材料を添加する場合はそれも含む)の低分子化合物とバインダー樹脂との混合比(低分子化合物/バインダー樹脂)は、1/10乃至20/1の範囲とすることが好ましく、1/1乃至10/1の範囲とすることがより好ましい。
【0041】
電荷発生層20Aの作製方法としては、真空蒸着法やスパッタ法などドライな膜形成法のほか、溶剤を用いるスピンコート法、ディップ法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法などが適用可能である。いずれの方式も、a−Siやフォトダイオード作製におけるような基板加熱や厳しい工程管理は不要である。ただし、前記電荷輸送材料を混合して用いる場合には、作製の容易性等から溶剤を用いる塗布により作製することが好ましい。この溶剤としては、少なくとも電荷輸送層20Bに損傷(電荷輸送層の膨潤やクラックの発生等)を与えない溶剤が好ましい。このため、電荷発生層20Aの形成溶剤として用いられる溶媒としては、電荷輸送層20Bを構成する材料にもよるが、一般に、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系などの溶媒が有効である。中でも、アルコール等の分子中に水酸基を有する溶媒は、ポリカーボネート系樹脂をバインダーとした電荷輸送層上に作製する電荷発生層20A形成塗布液の溶媒として最適である。
【0042】
電荷発生層20A形成塗布液の調製については、前記溶剤(またはバインダー樹脂を溶解した溶液)中に、前記電荷発生材料と必要に応じて添加される電荷輸送材料とを前記好ましい混合比率で添加し混合、分散させる。混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いる常法が適用される。分散の際、電荷発生材料の粒子サイズを0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
電荷発生層20A形成塗布液の固形分含有量の濃度は、1質量%以上30質量%以下の範囲とすることが好ましい。1質量%未満では膜厚が薄すぎて電気特性が得られない場合があり、30質量%を超えると粘度が高すぎて膜形成が困難になる場合がある。また、1質量%未満、あるいは30質量%を超えると、電荷発生材料微粒子の分散安定性が悪く、保存安定性や成膜性が悪化するといった問題が現れる場合がある。
【0043】
電荷発生層20Aの膜厚は、10nm以上1μm以下の範囲が好ましく、20nm以上500nm以下の範囲がより好ましい。10nmより薄いと、光感度が不足しかつ均一な膜の作製が難しくなる場合があり、また、1μmより厚くなると、光感度は飽和し、膜内応力によって剥離が生じ易くなる場合がある。
【0044】
電荷発生層20Cとしては、上記電荷発生層20Aと同様に、電荷発生材料をバインダー樹脂に分散したものが挙げられ、上記説明した電荷発生層20Aにおいて例示した電荷発生材料が同様に用いられる。
なお、電荷発生層20Cには、上記説明した電荷発生層20Aと同じ電荷発生材料、及びバインダー樹脂が同様に使用されることが製造のしやすさから望ましい。
【0045】
なお、電荷発生層20Cにおける電荷発生材料とバインダー樹脂との混合比、塗布液の調製、形成方法、膜厚等は、上記電荷発生層20Aで述べた内容に準ずるため、詳細な説明を省略する。
【0046】
電荷輸送層20Bは、電荷発生層20Aまたは電荷発生層20Cで発生した電荷が注入されて、印加された電場方向にドリフトする機能を有する層である。一般に電荷輸送層20Bは、電荷発生層20A及び電荷発生層20Cの数10倍の厚みを有する。このため、電荷輸送層20Bの容量、電荷輸送層20Bの暗電流、および電荷輸送層20B内部に流れる電流が、光導電層20全体の明暗インピーダンスを決定付けている。
【0047】
電荷輸送層20Bは、電荷輸送材料を含んで構成され、電荷発生層20A及び電荷発生層20Cからの正孔(ホール)の注入が効率良く発生し(電荷発生層20Aとイオン化ポテンシャルが近いことが好ましい)、注入された正孔ができるだけ高速にホッピング移動するものが好適である。なお、書込光の非照射時のインピーダンスを高くするためには、熱キャリアによる暗電流は低い方が好ましい。
【0048】
電荷輸送層20Bに含まれる電荷輸送材料としては、ベンジジン系、カルバゾール系、オキサジアゾール系、ヒドラゾン系、スチルベン系、トリフェニルアミン系、トリフェニルメタン系などが適用される。なお、上記電荷輸送性材料は、ほとんどが正孔輸送性であり、本実施の形態では電荷輸送層20Bは実質的に正孔輸送層であるとして説明するが、このような形態に限られない。
また、これら電荷輸送性材料の分子構造を主鎖あるいは側鎖に有する電荷輸送性高分子を用いてもよい。特に、特開2007−279371号公報に例示されるような、主鎖に電荷輸送性の分子構造を有するものが好ましい。電荷輸送性高分子を電荷輸送性材料として使用する場合には、後で述べるバインダー樹脂は必ずしも使用しなくても良い。
【0049】
電荷輸送層20Bに含まれるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂等が適用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、電荷輸送層のバインダーとした場合、電荷輸送特性が良好である上に、強度や柔軟性、透明性のバランスに優れているため、好ましいものである。
【0050】
電荷輸送層20Bにおける電荷輸送材料とバインダー樹脂との混合比(電荷輸送材料/バインダー樹脂)は1/10乃至10/1の範囲が好ましく、3/7乃至7/3の範囲がより好ましい。
【0051】
電荷輸送層20Bの作製方法としては、真空蒸着法やスパッタ法などドライな膜形成法のほか、溶剤を用いるスピンコート法、ディップ法、ブレードコート法、ロールコート法などが適用可能である。溶剤塗布法の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0052】
電荷輸送層20Bの膜厚は、1μm以上100μm以下の範囲とすることが好ましく、3μm以上20μm以下の範囲とすることがより好ましい。電荷輸送層20Bの膜厚が1μm以上100μm以下であると、耐電圧が高く信頼性が確保されると共に、機能素子とのインピーダンスマッチングが容易となり設計が容易となる。
【0053】
液晶層17は、上記光導電層20より表示面側に、後述するラミネート層18及び光吸収層19を介して設けられている。
【0054】
液晶層17としては、コレステリック(カイラルネマチック)液晶の光干渉状態の変化を利用して、電場によって入射光の反射・透過状態を変調する機能を有し、選択した状態が無電場で保持される性質のものが用いられる。この液晶層としては、さらに、曲げや圧力などの外力に対して変形しない構造であることが好ましい。
【0055】
本実施の形態の液晶層17としては、コレステリック液晶および透明樹脂からなる自己保持型液晶複合体の液晶層が形成されてなるものが用いられる。すなわち、本実施の形態の液晶層17は、複合体として自己保持性を有するためスペーサ等を必要としない液晶層である。本実施形態では、液晶層17は、高分子マトリックス(透明樹脂)17A中にコレステリック液晶17Bが分散されて構成されている。なお、本実施の形態においては、液晶層17が自己保持型液晶複合体の液晶層であるとして説明するが、自己保持型液晶複合体であることは必須ではなく、単に液晶のみで液晶層を構成することとしても勿論構わない。
【0056】
コレステリック液晶17Bは、入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、液晶分子がらせん状に捩れて配向しており、らせん軸方向から入射した光のうち、らせんピッチに依存した特定の光を干渉反射する。この液晶分子は、電場によって配向が変化し、反射状態が変化される。このコレステリック液晶17Bは印加電圧に対して反射率が高く表示性能が優れており、またメモリ性を有することから、本実施形態の表示媒体12に特に有効に用いられる。なお、液晶層17を、自己保持型液晶複合体とする場合には、ドロップサイズが均一で、単層稠密に配置されていることが好ましい。
【0057】
コレステリック液晶17Bとして使用可能な具体的な液晶としては、ステロイド系コレステロール誘導体、あるいはネマチック液晶やスメクチック液晶(たとえばシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系)、またはこれらの混合物に、カイラル剤(たとえばステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系)を添加したもの等が挙げられる。
【0058】
液晶層17がコレステリック液晶17Bと高分子マトリックス17Aからなる自己保持型液晶複合体を形成する形態としては、コレステリック液晶の連続相中に網目状の樹脂を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にコレステリック液晶がドロップレット状に分散されたPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造(マイクロカプセル化されたものを含む)が用いられ、PNLC構造やPDLC構造とすることによって、コレステリック液晶と高分子の界面にアンカリング効果を生じ、無電界でのプレーナまたはフォーカルコニックの保持状態が、より安定となる。
【0059】
上記PNLC構造やPDLC構造は、高分子と液晶とを相分離させる公知の方法、例えば、アクリル系、チオール系、エポキシ系などの、熱や光、電子線などによって重合する高分子前駆体と液晶を混合し、均一相の状態から重合させて相分離させるPIPS(Poly merization Induced PhaseSeparation)法、ポリビニルアルコールなどの、液晶の溶解度が低い高分子と液晶とを混合し、攪拌懸濁させて、液晶を高分子中にドロップレット分散させるエマルジョン法、熱可塑性高分子と液晶とを混合し、均一相に加熱した状態から冷却して相分離させるTIPS(Thermally Induced Phase Separation)法、高分子と液晶とをクロロホルムなどの溶媒に溶かし、溶媒を蒸発させて高分子と液晶とを相分離させるSIPS(Solvent Induced Phase Separation)法などによって形成されるが、特に限定されるものではない。
【0060】
高分子マトリックス17Aは、コレステリック液晶17Bを保持し、表示媒体12の変形による液晶の流動(画像の変化)を抑制する機能を有するものであり、液晶材料に溶解せず、また液晶と相溶しない液体を溶剤とする高分子材料が好適に用いられる。また、高分子マトリックス17Aとしては、外力に耐える強度をもち、少なくとも入射光および書込光に対して高い透過性を示す材料であることが望まれる。
【0061】
高分子マトリックス17Aとして採用可能な材料としては、水溶性高分子材料(例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、エチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、イソプレン系スルホン酸ポリマー)、あるいは水性エマルジョン化できる材料(例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0062】
このコレステリック液晶17Bは、図2(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ、同図(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック、及び同図(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック、の3つの状態を示す。
【0063】
上記の3つの状態のうち、プレーナ及びフォーカルコニックは、無電圧で双安定に存在する。したがって、コレステリック液晶の配向状態は、液晶層にかかる電圧(すなわち、分圧)に対して一義的に決まらず、プレーナが初期状態の場合には、印加される分圧の増加に伴って、プレーナ、フォーカルコニック、ホメオトロピックの順に変化し、フォーカルコニックが初期状態の場合には、印加される分圧の増加に伴って、フォーカルコニック、ホメオトロピックの順に変化する特性を有している(図3参照)。
【0064】
一方、液晶層17にかかる分圧が急激にゼロとなった場合には、プレーナとフォーカルコニックはそのままの状態を維持し、ホメオトロピックはプレーナに変化する特性を有している(図3参照)。
【0065】
したがって、液晶層17に電圧を印加した後に電圧印加を解除することで、液晶層17にかかっていた分圧が急激にゼロとされたときの液晶層17は、図3に示すようなスイッチング挙動を示し、電圧印加解除前に液晶層17にかかっていた分圧がVfh(上側閾値)以上のときには、電圧印加解除後にはコレステリック液晶はホメオトロピックからプレーナに変化した選択反射状態となり、Vpf(下側閾値電圧)とVfhとの間のときには、フォーカルコニックによる透過状態となり、Vpf以下のときには、電圧印加前の状態を継続した状態、すなわちプレーナによる選択反射状態又はフォーカルコニックによる透過状態となる。
【0066】
なお、図3中、縦軸は正規化光反射率であり、最大光反射率を100、最小光反射率を0として、光反射率を正規化している。また、プレーナ、フォーカルコニックおよびホメオトロピックの各状態間には、遷移領域が存在するため、正規化光反射率が50以上の場合を選択反射状態、正規化光反射率が50未満の場合を透過状態と定義し、プレーナとフォーカルコニックの状態変化の閾値の電圧を上側閾値Vpfとし、フォーカルコニックとホメオトロピックの状態変化の閾値の電圧を下側閾値電圧Vfhとしている。
【0067】
この液晶層17と光導電層20との間には、光導電層20の電荷発生層20Aに接する側から順に、ラミネート層18及び光吸収層19が積層されている。
【0068】
ラミネート層18は、それぞれ上下基板内面に形成した各機能層を貼り合わせる際に、凹凸吸収および接着の役割を果たす目的で設けられる層である。ラミネート層18は、ガラス転移点の低い高分子材料からなり、熱や圧力によって貼り合わせる対象となる層(本実施の形態では光導電層20と液晶層17)を密着・接着させる材料が選択される。
【0069】
このラミネート層18に好適な材料としては、粘着性の高分子材料(例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂)が挙げられる。
【0070】
光吸収層(光吸収層)19とは、書込光と入射光とを光学分離し、相互干渉による誤動作を防ぐとともに、表示時に表示媒体12の非表示面側から入射する外光と表示画像を光学分離し、画質の劣化を防ぐ目的で設けられる層である。ただし、このような目的から、光吸収層19には、少なくとも電荷発生層20Aの吸収波長域の光、および液晶層17の反射波長域の光を吸収する機能が要求される。
【0071】
この光吸収層19としては、具体的には、無機顔料(例えばカドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系)、または有機染料や有機顔料(アゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系)を直接成膜する乾式法か、あるいはこれらを高分子バインダー(たとえばポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成される。光吸収層19の膜厚としては、1μm以上10μm以下とすることが望ましい。
なお、本実施の形態の表示媒体12においては、光吸収層19は、上記ラミネート層18を介して電荷発生層20A上に積層されている場合を説明するが、電荷発生層20A上に光吸収層19が直接積層された構成であってもよい。また、ラミネート層の材質および/または形成法によっては光導電層20にダメージを与えるものがあり、その場合にはラミネート層18と電荷発生層20Aとの間に絶縁性の隔離層を設けてもよい。
【0072】
このような構成の表示媒体12においては、電極15及び電極22間に電圧が印加されると、電極15と電極22との間に積層された各層には、それぞれの分圧が印加される。その状態で光導電層20に書込光が照射されると、その照射された書込光に応じて光導電層20の抵抗分布が変化するため、書込光に応じて液晶層17に印加される分圧が高くなる。液晶層17に印加される電圧分布が変化すると液晶の配向が変化するので、書込光に応じた情報が液晶層17に表示・記録されることとなる。
【0073】
具体的には、図4を参照して説明する。図4は、図1に示される構造の表示媒体12の等価回路を示す回路図である。図4中、Clc,CopcおよびRlc,Ropcは、それぞれ液晶層17および光導電層20の静電容量および抵抗値である。CeおよびReは、液晶層17および光導電層20以外の構成要素の等価静電容量および等価抵抗値である。
【0074】
表示媒体12の電極15と電極22との間に印加される電圧をVとすると、各構成要素には、各構成要素間のインピーダンス比によって決まる分圧Vlc,VopcおよびVeが印加される。さらに、書込光を照射すると、この書込光の強度に応じて光導電層20の抵抗値Ropcが変化するため、書込光の照射または非照射によって液晶層17に印加される分圧が制御される。具体的には、電極15及び電極22間に電圧を印加した状態で書込光により照射された照射領域は、光導電層20の抵抗値Ropcが小さくなって液晶層17に印加される分圧は、非照射領域に比べて大きくなる。
【0075】
ここで、図1に示す構成の表示媒体12において、電極22及び電極15間に電圧を所定時間印加した後に電圧印加を解除した場合には、液晶層17にかかる分圧(すなわち、書込光の非照射時に液晶層17にかかる分圧)は、電極間に印加された電圧に応じた分圧が液晶層17に印加された後に、分圧は急峻にゼロまで減衰する。更に、この電圧印加時に書込光の照射を行った場合には、液晶層17にかかる分圧は、非照射時の分圧より高くなり、電圧印加解除に応じて分圧は急峻にゼロまで減衰する。このように、電圧印加解除後の液晶層17にかかる分圧がゼロになる場合には、従来公知の技術に示されるように、電圧印加解除前に液晶層17に上側閾値Vfhを超える電圧値の分圧が印加されれば、電圧印加解除後には、コレステリック液晶17Bはホメオトロピックからプレーナに変化する。これによって、液晶層17に書き込まれた画像が確定されることとなる。
【0076】
なお、液晶層17への画像の書込について、本実施の形態及び後述する第2の実施の形態では、電圧印加解除前に液晶層17に上側閾値Vfhを超える電圧値の分圧を印加することによって、コレステリック液晶17Bの少なくとも一部の領域をホメオトロピックに状態変化させることを後述する「書込処理」として説明する。そして、この電圧印加の後に電圧印加解除することによって、コレステリック液晶17Bのホメオトロピックとされた領域をプレーナに変化させることで画像が確定されるとして説明する。
しかし、書込処理では、液晶層17のコレステリック液晶17Bの少なくとも一部の配向を変化させることで画像を書き込めば良く、このような形態に限られない。
例えば、コレステリック液晶17Bの少なくとも一部の領域をプレーナからフォーカルコニックへ変化させることを、書込処理としても良い。この場合には、電極22及び電極15間に印加する電圧として液晶層17に下側閾値Vpfを超え且つ上側閾値Vfh未満の電圧を印加することによって、書込処理を行えばよい。
【0077】
なお、詳細は後述するが、本実施の形態及び後述する第2の実施の形態では、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bを、配向のそろった状態とすることを、初期化処理として説明する。例えば、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bをプレーナ状態、またはフォーカルコニック状態にそろえることで、初期化処理が行われる。この初期化処理によって、液晶層17に書き込まれた画像が消去される。
【0078】
以下、本実施の形態の光書込型表示装置10について、詳細に説明する。なお、本実施の形態の光書込型表示装置10においては、表示媒体12としては、図1に示す構成の表示媒体12を用いる場合を想定して説明する。
【0079】
書込装置14は、表示媒体12に画像を書き込む装置であり、表示媒体12に対して書込光を照射する照射装置30、表示媒体12の電極15と電極22との間に電圧を印加する電圧印加部26、照射装置30と電圧印加部26とに電気的に接続され、これらを制御する制御部28、書込装置14の装置各部(本実施の形態では光源30A以外の装置各部)へ電力を供給する電源32を含んで構成されている。
【0080】
照射装置30は表示媒体12上に、表示媒体12の光導電層20の吸収する吸収波長領域の光としての書込光を表示媒体12へ照射する光源30Aと、光源30Aへ電力を供給する光源用電源30Bと、を含んで構成されている。この照射装置30は、表示媒体12の光導電層20の全領域に書込光を照射可能に構成されている。
【0081】
照射装置30としては、例えば、光源30Aが、光導電層20の全領域を覆うようにアレイ状に配列されて構成された構成が挙げられる。そして、例えば、各光源30Aを、液晶層17に表示する画像の各画素に応じた位置に配置し、各画素に応じて各光源から照射される光の照射、非照射、及び照射する光の強度が調整されることで、液晶層17に表示する画像の各画素に応じた書込光の照射、照射強度、及び非照射が調整される。
【0082】
照射装置30に設けられた光源30Aとしては、制御部28からの入力信号に基づいて、表示媒体12の光導電層20へ所望の書込光(スペクトル・強度・空間周波数)を照射するものであれば、特に制限されるものではない。なお、光源30Aにより照射される書込光としては、光導電層20の吸収波長域の光吸収率ができるだけ多い(例えば、80%以上)ことが好ましい。
【0083】
この光源30Aとしては、具体的には、冷陰極管、発光ダイオード(LED)をバックライトに使用した液晶パネルや、EL表示パネルなど二次元の光学像が照射可能なものが使用される。
【0084】
光源用電源30Bは、照射装置30に設けられた各光源30Aへ電力を供給するための電源である。この光源用電源30Bは、AC−DCコンバータもしくはバッテリーと電圧供給用の回路からなる。この大きさは、光源30Aから照射する光強度として大きな光強度が要求されるほど大きくなる傾向にある。本実施の形態の書込装置14においては、詳細は後述するが、書込処理及び初期化処理の前に行う前処理、初期化処理、及び書込処理の全ての処理において、書込や初期化を行うために従来必要であった光の強度より小さい第1の強度(詳細後述)の書込光を照射すればよいことから、大容量の電源を書込装置14に搭載する必要が無くなり、書込装置14及び光書込型表示装置10の小型化が図れる(詳細後述)。
なお、本実施の形態では、光源用電源30Bは、書込装置14の装置各部に電力を供給するための電源32とは別体として設けられる場合を説明するが、一体的に設けられた構成であってもよい。
【0085】
電圧印加部26は、制御部28からの入力信号に基づいて、表示媒体12の電極15と電極22との間に、該入力信号に応じた極性及び電圧値の電圧を、該入力信号に応じた時間印加するものであればよい。この電圧印加部26としては、例えばバイポーラ高電圧アンプ等が用いられる。
【0086】
この電圧印加部26による表示媒体12への電圧印加は、詳細には、接触端子25を介して、電極15及び電極22間になされる。ここで、接触端子25とは、電圧印加部26および表示媒体12の電極15及び電極22に接触して、両者の導通を行う部材であり、高い導電性を有し、電極15、電極22、および電圧印加部26との接触抵抗が小さいものが選択される。なお、接触端子25は、表示媒体12と書込装置14とを切りはなせるように、電極15及び電極22と、電圧印加部26と、のどちらか、あるいは両者から分離できる構造であることが好ましい。
【0087】
接触端子25としては、金属(たとえば金・銀・銅・アルミ・鉄)、炭素、これらを高分子中に分散させた複合体、導電性高分子(たとえばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などでできた端子で、電極を挟持するクリップ・コネクタ形状のものが挙げられる。
【0088】
制御部28は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等から構成されており、ROMに格納されたプログラムにしたがって書込装置14の装置各部を制御し、無線回線または有線回線を介して外部装置等から取得した画像データに応じた画像を表示媒体12に表示するように、電圧印加部26、及び照射装置30を制御する。
【0089】
制御部28は、機能的には、前処理部28Aと、書込処理部28Bと、初期化処理部28Cと、を含んで構成されている。
前処理部28Aは、表示媒体12の液晶層17に上記説明した上側閾値Vfh以上の分圧が印加されるように表示媒体12に電圧印加及び書込光照射を行う書込処理や、液晶層17のコレステリック液晶17Bの配向をそろえる初期化処理を行う前に行う前処理を行う機能部である。
この前処理とは、本実施の形態においては、表示媒体12の光導電層20に第1の強度(詳細後述)の書込光を照射することによって、光導電層20の電荷発生層20A及び電荷発生層20Cの少なくとも一方に励起子を発生させる処理を示している。すなわち、この前処理部28Aとは、具体的には、後述するステップ102〜ステップ104、及びステップ302〜ステップ304の処理を行う機能部である。
【0090】
書込処理部28Bは、上記前処理部28Aによって励起子の発生された状態の表示媒体12に、表示媒体12の液晶層17に上記説明した上側閾値Vfh以上の分圧が印加されるように、表示媒体12に電圧印加及び書込光照射を行う書込処理を行う機能部である。
この書込処理においては、詳細は後述するが、本実施の形態においては、上記前処理の行われた表示媒体12について、上記第1の強度の書込光を選択的に照射しながら電極15及び電極22間に第2の電圧値(詳細後述)の電圧を印加する処理が行われる。この書込処理が行われる事によって、光導電層20の該第1の強度の書込光の照射されている領域に対応する液晶層17の領域が、フォーカルコニックからホメオトロピックに状態変化され、この状態変化が生じることで、該液晶層17へ画像が書き込まれる。すなわち、この書込処理部28Bとは、具体的には、後述するステップ106〜ステップ108の処理を行う機能部である。
【0091】
初期化処理部28Cは、上記前処理部28Aによって励起子の発生された状態の表示媒体12について、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向をそろえることの可能な分圧が液晶層17に印加されるように、表示媒体12に電圧印加及び書込光照射を行う初期化処理を行う機能部である。この初期化処理では、詳細は後述するが、本実施の形態においては、上記前処理の行われた表示媒体12について、上記第1の強度の書込光を液晶層17の全領域に照射しながら電極15及び電極22間に第1の電圧値(詳細後述)の電圧を印加する処理が行われる。
この初期化処理によって、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向がそろえられる。
なお、本実施の形態及び下記で説明する第2の実施の形態では、初期化処理としては、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bをフォーカルコニック状態として、液晶の配向をそろえることを示すものとして説明するが、プレーナ状態にそろえる処理であってもよい。
【0092】
上記第1の強度(前処理時、書込処理時、初期化処理時に照射される書込光の強度)の書込光、及び上記第1の電圧値(初期化処理時に印加する電圧の電圧値)について詳細に説明する。
まず、第1の電圧値について説明する。まずは、上記初期化処理において表示媒体12に照射する光の強度を第2の強度として定めたとする。なお、第2の強度は、上記第1の強度より大きい値であるとする(第1の強度<第2の強度)。
そして、本実施の形態では、上記第1の強度の書込光の照射が未だなされていない状態の表示媒体12について、電極15及び電極22間に電圧を印加したときの液晶層17にかかる分圧が、上記第2の強度の書込光の非照射時には図3における下側閾値Vpfを超えず、該第2の強度の書込光の照射時には下側閾値Vpfを超えて且つ上側閾値Vfhを超えない値となるように、電極15及び電極22間に印加する電圧の閾値を、上記第2の電圧値として定めている。
【0093】
そして、本実施の形態では、上記第1の強度としては、上記第2の強度未満で、且つ後述する第3の強度未満の強度であって、且つ表示媒体12に照射したときに、表示媒体12の電荷発生層20A及び電荷発生層20Cにおいて励起子を発生させうる程度の強度以上の強度の光を定めている。
【0094】
このため、第1の強度の書込光は、第2の強度の書込光に比べて光強度が小さく、光導電層20へ照射することで光導電層20において励起子は発生するものの、光導電層20において励起子の未発生の状態の表示媒体12に該第1の強度の書込光を照射すると共に上記第1の電圧値の電圧を電極15及び電極22間に印加しても、該表示媒体12の液晶層17においては、フォーカルコニックへの状態変化は生じず、初期化処理は行えない。
【0095】
次に、上記第1の強度の書込光、及び上記第2の電圧値(書込処理時に印加する電圧の電圧値)について説明する。
まず、第2の電圧値について説明する。まずは、上記書込処理において表示媒体12に照射する光の強度を第3の強度として定めたとする。なお、第3の強度は、上記第1の強度より大きい値であるとする(第1の強度<第3の強度)。
【0096】
そして、本実施の形態では、上記第1の強度の書込光の照射が未だなされていない状態の表示媒体12について、電極15及び電極22間に電圧を印加したときの液晶層17にかかる分圧が、上記第3の強度の書込光の非照射時には図3における上側閾値Vfhを超えず、該第3の強度の書込光の照射時には上側閾値Vfhを超えるように、電極15及び電極22間に印加する電圧の閾値を、上記第2の電圧値として定めている。
【0097】
そして、本実施の形態では、上記第1の強度としては、上記第2の強度及び第3の強度未満の強度であって、且つ表示媒体12に照射したときに、表示媒体12の電荷発生層20A及び電荷発生層20Cにおいて励起子を発生させうる程度の強度以上の強度の光を定めている。
【0098】
このため、第1の強度の書込光は、第3の強度の書込光に比べて光強度が小さく、光導電層20へ照射することで光導電層20において励起子は発生するものの、光導電層20において励起子の未発生の状態の表示媒体12に該第1の強度の書込光を照射すると共に上記第2の電圧値の電圧を電極15及び電極22間に印加しても、該表示媒体12の液晶層17においては、フォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化は生じず、書込処理は行えない。
【0099】
なお、上述のように、なお、第1の強度(前処理時に照射する書込光の強度)と、第2の強度(前処理を行わずに初期化処理を行う時に照射する書込光の光量)と、第3の強度(前処理を行わずに書込処理を行う時に照射する書込光の光量)と、は、少なくとも、第1の強度<第2の強度の関係を示し、且つ第1の強度<第3の強度の関係を示している。
また、上記第1の強度は、上記第2の強度及び上記第3の強度より小さい強度であり、且つ光導電層20へ照射することで光導電層20において励起子を発生させうる強度であればよい。また、この第2の強度及び第3の強度は同じであっても異なっていても良い。
また、上記第1の電圧値と第2の電圧値とは、上記条件を満たせば良く、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0100】
表示媒体12は、書込装置14と一体化された構成であってもよいし、書込装置14と分離可能に構成されていてもよい。表示媒体12を書込装置14に対して分離可能に構成する場合には、例えば、表示媒体12を、図示を省略するスロット等に装着することで、表示媒体12の電極15及び電極22が電圧印加部26から電圧印加可能に接続されると共に、表示媒体12の液晶層17の照射装置30から書込光の照射可能な状態とされるように構成すればよい。
このように、表示媒体12を書込装置14に対して分離可能に構成した場合には、表示媒体12のみを単体で配布することが容易とされると共に、閲覧、回覧、配布等に容易に供される。また、表示媒体12を再度書込装置14のスロットに装着することで、新たな画像の書き込みや書き込んだ画像の消去も可能とされる。
【0101】
次に、本実施の形態の光書込型表示装置10における表示媒体12への画像書き込みについて説明する。
【0102】
制御部28では、書込装置14に表示媒体12が装着されることで表示媒体12が、電圧印加部26によって電極15及び電極22間に電圧印加可能で、且つ照射装置30から書込光の照射可能な状態とされると共に、図示を省略するスイッチが操作されて画像書き込み指示を示す信号が入力されると、電源32から装置各部へ電力が供給されると共に、光源用電源30Bから光源30Aへ電力が供給される。そして、制御部28では、図示を省略するROMに記憶された画像部照射書込プログラムを読み取ることで、図5に示す処理ルーチンを実行し、ステップ100へ進む。
【0103】
ステップ100では、外部装置から取得した画像データを読み取る。この画像データの読取りは、外部装置から有線回線または無線回線を介して取得した画像データを読み取ってもよいし、各種記録媒体から画像データを読み取ってもよい。
【0104】
次のステップ102では、上記第1の強度の書込光の光導電層20への照射を指示する照射指示信号を、照射装置30へ出力する。
照射指示信号を受け付けた照射装置30では、照射装置30の光源30Aから、光導電層20の画像形成対象の対応する各画素領域に向かって対応する光源30Aから、第1の強度の書込光の照射を開始する。
【0105】
次のステップ104では、上記第1の強度の書込光の照射から所定時間経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ106へ進む。
【0106】
ステップ104の所定時間とは、上記ステップ102の処理による第1の強度の書込光が照射されてから、該書込光の照射によって該第1の強度の書込光の照射された領域の光導電層20において所望の量の励起子が発生するまでの時間が予め計測されて定められる。この所望の量の励起子とは、後述する書込処理時において、第1の強度の書込光を照射しながら第2の電圧値の電圧が電極15と電極22間に印加されたときに、液晶層17に上記状態変化(フォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化)を生じさせる程度の分圧が印加されるように、該書込処理の前に光導電層20において発生させておくべき励起子の量を示している。この励起子の量、すなわち、ステップ104の所定時間は、予め計測して定めておけばよい。
【0107】
上記ステップ102〜ステップ104の処理によって前処理が行われたこととなる。
【0108】
次のステップ106では、上記第2の電圧値の電圧を、電極15と電極22との間に印加することを示す書込電圧印加指示信号を、電圧印加部26へ出力する。
書込電圧印加指示信号を受け付けた電圧印加部26では、上記ステップ102の処理によって第1の強度の書込光の照射されている表示媒体12に、更に電極15と電極22との間に第2の電圧値の電圧の印加を開始する。
【0109】
次のステップ108では、上記ステップ106で書込電圧印加指示信号を出力してから設定時間が経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ110へ進む。この設定時間とは、上記ステップ106の処理によって、第1の強度の書込光が照射された状態の表示媒体12に、電極15及び電極22間に第2の電圧値の電圧が印加されてから、液晶層17の該書込光の照射されている光導電層20に対応するコレステリック液晶17Bの領域が、フォーカルコニックからホメオトロピック状態となるまでの時間を予め測定し、この時間以上の時間を予め定めればよい。
【0110】
上記ステップ106〜ステップ108の処理によって書込処理が行われる。
【0111】
上記ステップ102〜ステップ108の処理が実行されることによって、第1の強度の書込光がまず照射されて前処理が実行された後に、更に該第1の強度の書込光の照射と第2の電圧値の電圧の印加がなされて書込処理の実行された表示媒体12の液晶層17には、コレステリック液晶17Bのフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の上側閾値(Vth)を超える電圧値の分圧が印加される。このため、図3に示すように、液晶層17の該書込光の照射された領域のコレステリック液晶17Bがホメオトロピック状態へと変化する。
【0112】
次のステップ110では、上記ステップ106の処理によって印加された電極15及び電極22間への電圧印加の解除を示す電圧印加解除指示信号を電圧印加部26へ出力する。電圧印加解除信号を受け付けた電圧印加部26は、電極15及び電極22間への電圧印加を解除する。これによって、液晶層17のホメオトロピックへと状態変化していた領域がプレーナへ変化し、画像が確定される。
【0113】
次のステップ112では、上記ステップ102で照射された書込光の照射の解除を示す、書込光照解除指示信号を照射装置30へ出力した後に、本ルーチンを終了する。書込光照射解除指示信号を受け付けた照射装置30は、表示媒体12への書込光の照射を解除する。
【0114】
上記ステップ100〜ステップ112の処理が実行されることによって、表示媒体12には、図6(A)に示す電圧波形40で変化する電圧が印加される。すなわち、書込処理が開始されるまで、すなわち前処理においては電極15及び電極22間に電圧は印加されず、書込処理期間(時間t2〜t3の間)には、第2の電圧値である電圧値V1の電圧が印加される。
また、この電圧印加に対応させて、図6(B)に示す照射波形42で変化する書込光が照射される。すなわち、前処理期間(図6では時間t1〜t2の間)には、第1の強度である強度W1の書込光が光導電層20へ照射される。そして、この第1の強度である強度W1の書込光の光導電層20への照射は、書込処理期間(t2〜t3)も継続して行われる。
【0115】
次に、本実施の形態の光書込型表示装置10における表示媒体12の初期化処理について説明する。
【0116】
制御部28では、書込装置14に表示媒体12が装着されることで表示媒体12が、電圧印加部26によって電極15及び電極22間に電圧印加可能で、且つ照射装置30から書込光の照射可能な状態とされると共に、図示を省略するスイッチが操作されて初期化処理指示を示す信号が入力されると、電源32から装置各部へ電力が供給されると共に、光源用電源30Bから光源30Aへ電力が供給される。そして、制御部28では、図示を省略するROMに記憶された初期化プログラムを読み取ることで、図14に示す処理ルーチンを実行し、ステップ302へ進み、ステップ302〜ステップ304の処理が実行されることによって、前処理が行われる。
【0117】
具体的には、ステップ302では、上記第1の強度の書込光の光導電層20の全領域への照射を指示する全領域照射指示信号を、照射装置30へ出力する。
全領域照射指示信号を受け付けた照射装置30では、照射装置30の光源30Aから、光導電層20の全領域に向かって、第1の強度の書込光の照射を開始する。
【0118】
次のステップ304では、上記第1の強度の書込光の照射から所定時間経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ306へ進む。このステップ304の処理時間は、ステップ104の所定時間と同じ意味であるため説明を省略する。
【0119】
ステップ302〜ステップ304の処理によって前処理が行われる。
【0120】
次のステップ306では、上記第1の電圧値の電圧を、電極15と電極22との間に印加することを示す初期化電圧印加指示信号を、電圧印加部26へ出力する。
初期化電圧印加指示信号を受け付けた電圧印加部26では、上記ステップ302の処理によって、光導電層20の全領域に第1の強度の書込光の照射されている表示媒体12について、更に電極15と電極22との間へ第1の電圧値の電圧の印加を開始する。
【0121】
次のステップ308では、上記ステップ306で初期化電圧印加指示信号を出力してから設定時間が経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ310へ進む。この設定時間とは、上記ステップ306の処理によって、第1の強度の書込光が照射された状態の表示媒体12に、電極15及び電極22間に第1の電圧値の電圧が印加されてから、液晶層17の該書込光の照射されている光導電層20の全領域のコレステリック液晶17Bの配向が、そろうまで(本実施の形態ではフォーカルコニック状態となるまで)の時間を予め測定し、この時間以上の時間を予め定めればよい。
【0122】
上記ステップ306〜ステップ308の処理によって初期化処理が行われる。
【0123】
上記ステップ302〜ステップ308の処理が実行されることによって、第1の強度の書込光がまず照射されて前処理が実行された後に、更に該第1の強度の書込光の照射と第1の電圧値の電圧の印加がなされた表示媒体12の液晶層17には、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bがフォーカルコニックへ状態変化する分圧が印加される。このため、液晶層17の全領域の液晶層17のコレステリック液晶17Bの配向がそろい、初期化がなされる。
【0124】
次のステップ310では、上記ステップ306の処理によって印加された電極15及び電極22間への電圧印加の解除を示す電圧印加解除指示信号を電圧印加部26へ出力する。次のステップ312では、上記ステップ302で照射された書込光の照射の解除を示す、書込光照解除指示信号を照射装置30へ出力した後に、本ルーチンを終了する。書込光照射解除指示信号を受け付けた照射装置30は、表示媒体12への書込光の照射を解除する。
【0125】
上記ステップ302〜ステップ312の処理が実行されることによって、初期化処理が開始されるまで、すなわち前処理においては電極15及び電極22間に電圧は印加されず、初期化処理の行われる期間には、第1の電圧値の電圧が印加される。
また、この電圧印加に対応させて、書込光が照射される。すなわち、前処理の行われる期間には、第1の強度の書込光が光導電層20へ照射される。そして、この第1の強度の書込光の光導電層20への照射は、初期化処理の行われる期間も継続して行われる。
【0126】
なお、上述のように、前処理を行わない場合、すなわち第1の強度の書込光の照射を行わない場合には、上記書込処理においては、電極15と電極22との間に第2の電圧値の電圧を印加された状態の表示媒体12の液晶層17に係る分圧が、上側閾値Vfhを超える値となるように調整するためには、光導電層20には、第1の強度より大きい第3の強度(図6中、強度W2)の書込光を照射する必要がある。
【0127】
同様に、前処理を行わない場合、すなわち第1の強度の書込光の照射を行わない場合には、初期化処理においては、電極15と電極22との間に第1の電圧値の電圧を印加された状態の表示媒体12の液晶層17に係る分圧が、液晶層17の配向のそろう範囲の電圧値となるように調整するためには、光導電層20には、第1の強度より大きい第2の強度の書込光を照射する必要がある。
【0128】
一方、本実施の形態の光書込型表示装置10によれば、書込処理時に表示媒体12へ照射する書込光の強度は、第3の強度より小さい第1の強度であればよく、該第1の強度の書込光の照射によって表示媒体12への画像書込が可能とされる。
また、本実施の形態の光書込型表示装置10によれば、初期化処理時に表示媒体12へ照射する書込光の強度は、第2の強度より小さい第1の強度であればよく、該第1の強度の書込光の照射によって表示媒体12の初期化が可能とされる。
【0129】
このため、光書込型表示装置10に搭載する光源30A用の光源用電源30Bとして最大照射強度が大きくなるように容量の大きい電源を搭載する必要が無くなり、光書込型表示装置10の小型化が図れる。
【0130】
これは、本実施の形態の光書込型表示装置10では、液晶層17への画像書込のための電極15及び電極22間への電圧印加前に、前処理が行われない場合には必要であった第3の強度より小さい第1の強度の書込光を光導電層20に露光することから、書込処理のための電圧印加前には光導電層20に励起子が蓄積された状態となっているためと考えられる。
【0131】
このため、書込処理時には、第3の強度より小さい第1の強度の書込光の照射と、電極15及び電極22への第2の電圧値の電圧の印加によって、液晶層17においてフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化を生じさせうる上側閾値Vfh以上の分圧がかかることとなり、前処理及び書込処理時の双方において、第1の強度より大きい第3の強度の書込光の照射を必要としなくなったためと考えられる。
【0132】
また、初期化処理時についても同様に、初期化処理前に行われる前処理によって、初期化処理前には光導電層20に励起子が蓄積された状態となっていると考えられる。このため、初期化処理時には、前処理が行われない場合には必要であった第2の強度より小さい第1の強度の書込光の照射と、電極15及び電極22への第1の電圧値の印加によって、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向のそろう分圧が液晶層17にかかることとなり、前処理及び初期化処理の双方において、第1の強度より大きい第2の強度の書込光の照射を必要としなくなったためと考えられる。
【0133】
従って、本実施の形態の光書込型表示装置10によれば、製法や構造を調整することにより光導電層の感度を向上させる場合に比べて、簡易な構成で容易に、表示媒体における書込時及び初期化処理時に必要な光強度の低下が図れる。
【0134】
なお、本実施の形態の表示媒体12では、光導電層20の電荷輸送層20Bとして、正孔を輸送する電荷輸送層を用いる場合を説明したが、正孔を輸送する電荷輸送層に変えて、電子を輸送する電荷輸送層を用いてもよい。なお、電荷輸送層20Bを、電子を輸送する電荷輸送層として機能させる場合には、例えば、電子移動物質を結着剤樹脂に溶解分散させたもの等を用いればよい。電子移動物質としては、公知のものが使用され、具体的には、フルオレノン系、ジフェノキノン系、イミド系等の電子吸引性物質やこれら電子吸引性物質を高分子化したもの等が挙げられる。
【0135】
なお、本実施の形態では、初期化処理及び書込処理を別々に実行する場合を説明したが、初期化処理の後に書込処理を連続して実行してもよく、書込処理の後に初期化処理を連続して実行してもよい。この場合には、制御部28において、図5に示すステップ100〜ステップ112の処理を実行した後に連続して図14に示すステップ302〜ステップ312の処理を実行、または、上記図14に示すステップ302〜ステップ312の処理を実行した後に連続して図5に示すステップ100〜ステップ112の処理を実行すればよい。
【0136】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、前処理と書込処理中、及び前処理と初期化処理中に第1の強度の書込光を照射する形態を説明したが、本実施の形態では、前処理において、第1の強度の書込光を照射すると共に、更に第1の電圧値及び第2の電圧値より小さい第3の電圧値の電圧を印加する形態を説明する。
【0137】
図7に示すように、本実施の形態の光書込型表示装置11は、表示媒体12と、書込装置40と、を備えている。
なお、本実施の形態の光書込型表示装置11は、第1の実施の形態で説明した光書込型表示装置10における書込装置14に変えて書込装置40を用いた以外は全て同一構成であり、同一部分には同一番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0138】
なお、光書込型表示装置11が、本発明の光書込型表示装置に相当する。また、表示媒体12が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体に相当し、電極15及び電極22が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体の一対の電極に相当する。また、液晶層17が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体のコレステリック液晶層に相当し、光導電層20が、本発明の光書込型表示装置の表示媒体の光導電層に相当する。また、書込装置40の後述する制御部29が、本発明の光書込型表示装置の制御手段に相当する。
【0139】
書込装置40は、表示媒体12に画像を書き込む装置であり、表示媒体12に対して書込光を照射する照射装置30、表示媒体12の電極15と電極22との間に電圧を印加する電圧印加部26、照射装置30と電圧印加部26とに電気的に接続され、これらを制御する制御部29、書込装置14の装置各部(本実施の形態では光源30A以外の装置各部)へ電力を供給する電源32を含んで構成されている。
なお、書込装置40の装置各部は、第1の実施の形態で説明した書込装置14の制御部28に変えて制御部29を設けた以外は全て同一構成であり、同一部分には同一符号を付与して詳細な説明を省略する。なお、照射装置30及び電圧印加部26は、本実施の形態では、制御部29の制御によって制御される。また、電源32は、電圧印加部26及び制御部29を含む装置各部(光源30A以外)に電力を供給する。光源30Aは、光源用電源30Bから電力を供給される。
【0140】
制御部29は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等から構成されており、ROMに格納されたプログラムにしたがって書込装置14の装置各部を制御し、無線回線または有線回線を介して外部装置等から取得した画像データに応じた画像を表示媒体12に表示するように、電圧印加部26、及び照射装置30を制御する。
【0141】
制御部29は、機能的には、前処理部29Aと、書込処理部29Bと、初期化処理部29Cと、を含んで構成されている。
前処理部29Aは、表示媒体12の液晶層17に上記説明した上側閾値Vfh以上の分圧が印加されるように表示媒体12に電圧印加及び書込光照射を行う書込処理、及び液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向をそろえる初期化処理を行う前に行う前処理を行う機能部である。
この前処理とは、本実施の形態においては、表示媒体12の光導電層20に、上記第1の実施の形態で説明した第1の強度の書込光を照射することによって、光導電層20の電荷発生層20A及び電荷発生層20Cの少なくとも一方に励起子を発生させると共に、電極15及び電極22間に第3の電圧値の電圧を印加することによって該発生した励起子を自由キャリアに分離する処理を示している。すなわち、この前処理部29Aとは、具体的には、後述するステップ202〜ステップ206、及びステップ402〜ステップ406の処理を行う機能部である。
【0142】
書込処理部29Bは、上記前処理部29Aによって自由キャリアの蓄積された状態の表示媒体12に、表示媒体12の液晶層17に上記説明した上側閾値Vfh以上の分圧が印加されるように表示媒体12に電圧印加及び書込光照射を行う書込処理を行う機能部である。
この書込処理とは、本実施の形態においては、上記前処理の行われた表示媒体12について、上記第1の強度の書込光を選択的に照射しながら電極15及び電極22間に上記第1の実施の形態で説明した第2の電圧値の電圧を印加する処理である。この書込処理が行われる事によって、光導電層20の該第1の強度の書込光の照射されている領域に対応する液晶層17の領域が、フォーカルコニックからホメオトロピックに状態変化され、この状態変化が生じることで、該液晶層17へ画像が書き込まれる。すなわち、この書込処理部29Bとは、具体的には、後述するステップ208〜ステップ210の処理を行う機能部である。
【0143】
初期化処理部29Cは、上記前処理部29Aによって励起子の発生された状態の表示媒体12について、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向をそろえることの可能な分圧が液晶層17に印加されるように、表示媒体12に電圧印加及び書込光照射を行う初期化処理を行う機能部である。
この初期化処理とは、本実施の形態においては、上記前処理の行われた表示媒体12について、上記第1の強度の書込光を液晶層17の全領域に照射しながら電極15及び電極22間に第1の実施の形態で説明した第1の電圧値の電圧を印加する処理である。この初期化処理によって、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向がそろえられる。なお、本実施の形態では、初期化処理としては、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bをフォーカルコニック状態として、液晶の配向をそろえることを示すものとして説明する。
【0144】
上記第1の強度(前処理時、書込処理時、初期化処理時に照射される書込光の強度)の書込光、及び上記第1の電圧値(初期化処理時に印加する電圧の電圧値)、及び上記第2の電圧値(書込処理時に印加する電圧の電圧値)については、上記第1の実施の形態で説明したため、説明を省略する。
【0145】
上述のように、本実施の形態の光書込型表示装置11では、前処理とは、本実施の形態においては、表示媒体12の光導電層20に第1の強度の書込光を照射することによって、光導電層20の電荷発生層20A及び電荷発生層20Cの少なくとも一方に励起子を発生させると共に、電極15及び電極22間に第3の電圧値の電圧を印加する処理を示している。
【0146】
この第3の電圧値は、少なくとも書込処理時に印加する第2の電圧の第2の電圧値、及び上記初期化処理時に印加する第1の電圧値の双方より低い値の電圧値である。
【0147】
このため、本実施の形態における前処理が実行されておらず、表示媒体12の光導電層20において自由キャリアの蓄積及び励起子の発生のなされていない状態の表示媒体12について、電極15及び電極22間に電圧を印加したときの液晶層17にかかる分圧が、上記第3の強度の書込光の非照射時と、照射時と、の双方において、図3における上側閾値Vfhを超えないように、電極15及び電極22間に印加する電圧の閾値を、上記第3の電圧値として定めている。
【0148】
また、本実施の形態では、初期化処理とは、コレステリック液晶17Bをフォーカルコニックにそろえる処理であるとして説明することから、第3の電圧値は、更に、本実施の形態における前処理が実行されておらず、表示媒体12の光導電層20において自由キャリアの蓄積及び励起子の発生のなされていない状態の表示媒体12について、電極15及び電極22間に電圧を印加したときの液晶層17にかかる分圧が、上記第2の強度の書込光の非照射時と、照射時と、の双方において、図3における下側閾値Vpfを超えないように、電極15及び電極22間に印加する電圧の閾値を、上記第3の電圧値として定めている。
【0149】
本実施の形態において、表示媒体12は、書込装置40と一体化された構成であってもよいし、書込装置40と分離可能に構成されていてもよい。表示媒体12を書込装置40に対して分離可能に構成する場合には、例えば、表示媒体12を、図示を省略するスロット等に装着することで、表示媒体12の電極15及び電極22が電圧印加部26から電圧印加可能に接続されると共に、表示媒体12の液晶層17の照射装置30から書込光の照射可能な状態とされるように構成すればよい。
このように、表示媒体12を書込装置40に対して分離可能に構成した場合には、表示媒体12のみを単体で配布することが容易とされると共に、閲覧、回覧、配布等に容易に供される。また、表示媒体12を再度書込装置40のスロットに装着することで、新たな画像の書き込みや書き込んだ画像の消去も可能とされる。
【0150】
次に、本実施の形態の光書込型表示装置11における表示媒体12への画像書き込みについて説明する。
【0151】
制御部29では、書込装置40に表示媒体12が装着されることで表示媒体12が、電圧印加部26によって電極15及び電極22間に電圧印加可能で、且つ照射装置30から書込光の照射可能な状態とされると共に、図示を省略するスイッチが操作されて画像書き込み指示を示す信号が入力されると、電源32から装置各部へ電力が供給されると共に、光源用電源30Bから光源30Aへ電力が供給される。そして、制御部29では、図示を省略するROMに記憶された画像部照射書込プログラムを読み取ることで、図8に示す処理ルーチンを実行し、ステップ200へ進む。
【0152】
ステップ200では、外部装置から取得した画像データを読み取る。この画像データの読取りは、外部装置から有線回線または無線回線を介して取得した画像データを読み取ってもよいし、各種記録媒体から画像データを読み取ってもよい。
【0153】
次のステップ202では、上記第1の強度の書込光の光導電層20への照射を指示する照射指示信号を、照射装置30へ出力する。
照射指示信号を受け付けた照射装置30では、照射装置30の光源30Aから、光導電層20の画像形成対象の対応する各画素領域に向かって対応する光源30Aから、第1の強度の書込光の照射を開始する。
【0154】
次のステップ204では、上記第3の電圧値の電圧を、電極15と電極22との間に印加することを示すキャリア生成電圧印加指示信号を、電圧印加部26へ出力する。
キャリア生成電圧印加指示信号を受け付けた電圧印加部26では、電極15と電極22との間に第3の電圧値の電圧の印加を開始する。
【0155】
次のステップ206では、上記第1の強度の書込光の照射に重ねて第3の電圧値の電圧の電極15及び電極22間への印加が開始されてから所定時間経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ208へ進む。
【0156】
ステップ206の所定時間とは、上記ステップ202及び上記ステップ204の処理によって、上記第1の強度の書込光の照射に重ねて第3の電圧値の電圧の電極15及び電極22間への印加が開始されてから、該第1の強度の書込光の照射及び該第3の電圧値の電圧の印加によって、該第1の強度の書込光の照射された領域の光導電層20において励起子が発生し、且つ発生した励起子が自由キャリアに分離されて、この分離された自由キャリアが所望の量、該光導電層20に蓄積されるまでの時間が予め計測されて定められる。この蓄積される所望の量の自由キャリアとは、後述する書込処理時において、第1の強度の書込光を照射しながら第2の電圧値の電圧が電極15と電極22間に印加されたときに、液晶層17に上記状態変化(フォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化)を生じさせる程度の分圧が印加されるように、該書込処理の前に光導電層20に蓄積させておくべき自由キャリアの量を示している。この自由キャリアの量、すなわち、ステップ206の所定時間は、予め計測して定めておけばよい。
【0157】
上記ステップ202〜ステップ206の処理によって前処理が行われたこととなる。
【0158】
次のステップ208では、上記第2の電圧値の電圧を、電極15と電極22との間に印加することを示す書込電圧印加指示信号を、電圧印加部26へ出力する。
書込電圧印加指示信号を受け付けた電圧印加部26では、上記ステップ202の処理によって第1の強度の書込光が照射され、上記ステップ204の処理によって第3の電圧値の電圧の印加されている表示媒体12について、該表示媒体12に印加する電圧値を上昇させて第2の電圧値の電圧の印加を開始する。
【0159】
次のステップ210では、上記ステップ208で書込電圧印加指示信号を出力してから設定時間が経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ212へ進む。この設定時間とは、上記ステップ208の処理によって、第1の強度の書込光が照射された状態の表示媒体12に、電極15及び電極22間に第3の電圧値の電圧が印加されてから、液晶層17の該書込光の照射されている光導電層20に対応するコレステリック液晶17Bの領域が、フォーカルコニックからホメオトロピック状態となるまでの時間を予め測定し、この時間以上の時間を予め定めればよい。
【0160】
上記ステップ208〜ステップ210の処理によって書込処理が行われたこととなる。
【0161】
上記ステップ202〜ステップ210の処理が実行されることによって、第1の強度の書込光が照射されると共に、第2の電圧値より小さい第3の電圧値の電圧が電極15及び電極22間に印加されて前処理が実行された後に、上記書込処理が実行される。このため、図3に示すように、液晶層17の該書込光の照射された領域のコレステリック液晶17Bがホメオトロピック状態へと変化する。
【0162】
次のステップ212では、上記ステップ208の処理によって印加された電極15及び電極22間への電圧印加の解除を示す電圧印加解除指示信号を電圧印加部26へ出力する。電圧印加解除信号を受け付けた電圧印加部26は、電極15及び電極22間への電圧印加を解除する。これによって、液晶層17のホメオトロピックへと状態変化していた領域がプレーナへ変化し、画像が確定される。
【0163】
次のステップ214では、上記ステップ202で照射された書込光の照射の解除を示す、書込光照解除指示信号を照射装置30へ出力した後に、本ルーチンを終了する。書込光照射解除指示信号を受け付けた照射装置30は、表示媒体12への書込光の照射を解除する。
【0164】
上記ステップ200〜ステップ214の処理が実行されることによって、表示媒体12には、図9(A)に示す電圧波形44で変化する電圧が印加される。
すなわち、前処理期間(図9では時間t1〜t2の間)においては電極15及び電極22間には第2の電圧値(V1)より小さい第3の電圧値(V2)の電圧が印加され、書込処理期間(時間t2〜t3の間)には、第2の電圧値である電圧値V1の電圧が印加される。
また、この電圧印加に対応させて、図9(B)に示す照射波形42で変化する書込光が照射される。すなわち、前処理期間(図9では時間t1〜t2の間)には、第1の強度である強度W1の書込光が光導電層20へ照射される。そして、この第1の強度である強度W1の書込光の光導電層20への照射は、書込処理期間(t2〜t3)も継続して行われる。
【0165】
次に、本実施の形態の光書込型表示装置11における表示媒体12の初期化処理について説明する。
【0166】
制御部29では、書込装置40に表示媒体12が装着されることで表示媒体12が、電圧印加部26によって電極15及び電極22間に電圧印加可能で、且つ照射装置30から書込光の照射可能な状態とされると共に、図示を省略するスイッチが操作されて初期化処理指示を示す信号が入力されると、電源32から装置各部へ電力が供給されると共に、光源用電源30Bから光源30Aへ電力が供給される。そして、制御部29では、図示を省略するROMに記憶された初期化プログラムを読み取ることで、図15に示す処理ルーチンを実行し、ステップ402へ進み、ステップ402〜ステップ406の処理が実行されることによって、前処理が行われる。
【0167】
具体的には、ステップ402では、上記第1の強度の書込光の光導電層20への照射を指示する照射指示信号を、照射装置30へ出力する。
照射指示信号を受け付けた照射装置30では、照射装置30の光源30Aから、光導電層20の全領域に向かって光源30Aから、第1の強度の書込光の照射を開始する。
【0168】
次のステップ404では、上記第3の電圧値の電圧を、電極15と電極22との間に印加することを示すキャリア生成電圧印加指示信号を、電圧印加部26へ出力する。
キャリア生成電圧印加指示信号を受け付けた電圧印加部26では、電極15と電極22との間に第3の電圧値の電圧の印加を開始する。
【0169】
次のステップ406では、上記第1の強度の書込光の照射に重ねて第3の電圧値の電圧の電極15及び電極22間への印加が開始されてから所定時間経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ408へ進む。この所定時間とは、上記ステップ206で説明した所定時間を同じであるため説明を省略する。
【0170】
上記ステップ402〜ステップ406の処理によって前処理が行われたこととなる。
【0171】
次のステップ408では、上記第1の電圧値の電圧を、電極15と電極22との間に印加することを示す初期化電圧印加指示信号を、電圧印加部26へ出力する。
初期化電圧印加指示信号を受け付けた電圧印加部26では、上記ステップ402〜ステップ404の処理によって、光導電層20の全領域に第1の強度の書込光の照射がなされると共に、電極15と電極22との電極間に第3の電圧値の電圧の印加された状態の表示媒体12について、印加電圧値を変化させて第1の電圧値の電圧の印加を開始する。
【0172】
次のステップ410では、上記ステップ408で初期化電圧印加指示信号を出力してから設定時間が経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、ステップ412へ進む。この設定時間とは、上記ステップ408の処理によって、光導電層20の全領域に第1の強度の書込光の照射がなされると共に、電極15と電極22との電極間に第3の電圧値の電圧の印加された状態の表示媒体12への印加電圧が変更されて、電極15及び電極22の電極間に第1の電圧値の電圧が印加されてから、液晶層17の該書込光の照射されている光導電層20の全領域のコレステリック液晶17Bの配向が、そろうまで(本実施の形態ではフォーカルコニック状態となるまで)の時間を予め測定し、この時間以上の時間を予め定めればよい。
【0173】
上記ステップ408〜ステップ410の処理によって初期化処理が行われる。
【0174】
上記ステップ408〜ステップ410の処理が実行されることによって、光導電層20の全領域に第1の強度の書込光の照射がなされると共に、電極15と電極22との電極間に第3の電圧値の電圧の印加される前処理が実行された後に、印加電圧値が変更されて第1の電圧値の電圧の印加と、第1の強度の書込光の照射のなされた表示媒体12の液晶層17には、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bがフォーカルコニックへ状態変化する分圧が印加される。このため、液晶層17の全領域の液晶層17のコレステリック液晶17Bの配向がそろい、初期化がなされる。
【0175】
次のステップ412では、上記ステップ408の処理によって印加された電極15及び電極22間への電圧印加の解除を示す電圧印加解除指示信号を電圧印加部26へ出力する。次のステップ414では、上記ステップ402で照射された書込光の照射の解除を示す、書込光照解除指示信号を照射装置30へ出力した後に、本ルーチンを終了する。書込光照射解除指示信号を受け付けた照射装置30は、表示媒体12への書込光の照射を解除する。
【0176】
上記ステップ402〜ステップ414の処理が実行されることによって、初期化処理が開始されるまで、すなわち前処理の行われる期間には、第1の強度の書込光が光導電層20へ照射されると共に、第3の電圧値の電圧が電極15及び電極22間に印加される。そして、この第1の強度の書込光の光導電層20への照射は、初期化処理の行われる期間も継続して行われる。また、初期化処理の行われる期間には、第1の電圧値の電圧が電極15及び電極22間に印加される。
【0177】
ここで、上述のように、本実施の形態における前処理において、第1の強度の書込光の照射を行わず且つ第3の電圧値の電圧を印加しない場合には、書込処理においては、電極15と電極22との間に第2の電圧値の電圧を印加された状態の表示媒体12の液晶層17に係る分圧を、上側閾値Vfhを超える値とするためには、光導電層20には、第1の強度より大きい第3の強度(図9(B)中、強度W2)の書込光を照射する必要がある。
【0178】
同様に、前処理を行わない場合、すなわち第1の強度の書込光の照射を行わず且つ第3の電圧値の電圧を印加しない場合には、初期化処理においては、電極15と電極22との間に第1の電圧値の電圧を印加された状態の表示媒体12の液晶層17に係る分圧が、液晶層17の配向のそろう範囲の電圧値となるように調整するためには、光導電層20には、第1の強度より大きい第2の強度の書込光を照射する必要がある。
【0179】
一方、本実施の形態の光書込型表示装置11によれば、書込処理時に表示媒体12へ照射する書込光の強度は、第3の強度より小さい第1の強度であればよく、該第1の強度の書込光の照射によって表示媒体12への画像書込が可能とされる。
また、本実施の形態の光書込型表示装置11によれば、初期化処理時に表示媒体12へ照射する書込光の強度は、第2の強度より小さい第1の強度であればよく、該第1の強度の書込光の照射によって表示媒体12の初期化が可能とされる。
【0180】
このため、光書込型表示装置11に搭載する光源30A用の光源用電源30Bとして最大照射強度が大きくなるように容量の大きい電源を搭載する必要が無くなり、光書込型表示装置11の小型化が図れる。
【0181】
これは、本実施の形態の光書込型表示装置11では、液晶層17への画像書込のための電極15及び電極22間への電圧印加前に、第3の強度より小さい第1の強度の書込光を光導電層20に照射すると共に少なくとも書込処理時に印加する第2の電圧値より小さい第3の電圧値の電圧を印加することから、画像書込のための電圧印加前に光導電層20には自由キャリアが蓄積された状態とされているためと考えられる。このため、書込処理時には、前処理が行われない場合には必要であった第3の強度より小さい第1の強度の書込光の照射と、電極15及び電極22への第1の強度の電圧値の電圧の印加によって、フォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化を生じさせうる上側閾値Vfh以上の分圧が液晶層17にかかることとなり、書込時に第1の強度より大きい第3の強度の光の照射を必要としなくなるためと考えられる。
【0182】
また、初期化処理時についても同様に、初期化処理前に行われる前処理によって、初期化処理時には、光導電層20に自由キャリアが蓄積された状態とされていると考えられる。このため、初期化処理時には、前処理が行われない場合には必要であった第2の強度より小さい第1の強度の書込光の照射と、電極15及び電極22への第1の電圧値の印加によって、液晶層17の全領域のコレステリック液晶17Bの配向のそろう分圧が液晶層17にかかることとなり、前処理及び初期化処理の双方において、第1の強度より大きい第2の強度の書込光の照射を必要としなくなったためと考えられる。
【0183】
従って、本実施の形態の光書込型表示装置11によれば、製法や構造を調整することにより光導電層の感度を向上させる場合に比べて、簡易な構成で容易に、表示媒体における書込処理時及び初期化処理時に必要な光強度の低下が図れる。
【0184】
なお、本実施の形態では、初期化処理及び書込処理を別々に実行する場合を説明したが、初期化処理の後に書込処理を連続して実行してもよく、書込処理の後に初期化処理を連続して実行してもよい。この場合には、制御部29において、図8に示すステップ200〜ステップ214の処理を実行した後に連続して図15に示すステップ402〜ステップ414の処理を実行、または、上記図15に示すステップ402〜ステップ414の処理を実行した後に連続して図8に示すステップ200〜ステップ214の処理を実行すればよい。
【0185】
<試験例>
以下、以上のような本発明の光書込型表示装置の効果を確認するために、以下のような試験を行った。ただし、これら各試験例は、本発明を制限するものではない。
【0186】
(試験例1)
(光書込型表示媒体の作製)
ITO透明電極がパターニングされた0.125mm厚のPET基板の上に、テトラヒドロフランを溶媒として、600nm以下の可視光に高い感度を持つジブロモアンスアンスロン顔料もしくはアンスロン系顔料をポリビニルブチラールに分散した溶液を200nm厚にスピンコート塗布し、その上に、モノクロロベンゼンを溶媒として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンをビスフェノールZポリカーボネートに分散した溶液を3μm厚にバーコート塗布することで、電極上に、シアン色の光を吸収する電荷発生層を形成した。
【0187】
この電荷発生層について、分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、500nm〜530nm付近に光吸収率が80%以上の吸収ピークを有する吸収スペクトルが得られた。
【0188】
次に、前記電荷発生層の上に電荷輸送層を形成した。具体的には、電荷輸送材N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビスフェニル−4−アミンと、バインダー樹脂としてポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、Z300)とを、質量比率を1:1として混合した後、これをモノクロロベンゼンに溶解させ10質量%の溶液(塗布液B)を調製した。これをアプリケーター(Gap:100μm)で塗布、乾燥することによって、前記下部電荷発生層上に10μm厚の電荷輸送層を形成した。
【0189】
更に、上記電極上に形成したシアン光の光を吸収する電荷発生層と同様にして、上記形成された電荷輸送層上に該電荷発生層を形成した。以上のようにして、光導電層を形成した。
【0190】
さらに、スピンコートにより、ポリビニルアルコール3質量%の水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール膜(膜厚約1μm)を形成した。これによって、ITO電極、光導電層の積層されたPET基板を調整した。
【0191】
ネマチック液晶E7(メルク社製)84質量部と、カイラル剤R811(メルク社製)10.8質量部と、カイラル剤R1011(メルク社製)2.7質量部とを混合して、選択反射波長が650nmであるコレステリック液晶100部を得た。このコレステリック液晶と、多価イソシアネートとしてタケネートD−110N(武田薬品工業社製)10質量部と、垂直配向成分の前駆体としてオクタデカノール3部(アルドリッチ社製)とを、酢酸エチル1000質量部中に溶解して油相組成物を調製した。これをポリビニルアルコール1質量%水溶液10、000質量部の中に投入し、ミキサーで撹拌・分散して体積平均粒径が7μmのエマルジョンを作製した。
これにポリアリルアミン(日東紡社製)の10%水溶液を100質量部加え、70℃で2時間加熱してポリウレアを壁材とするマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルを遠沈回収後、その固形成分の質量に対して1/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール10質量%水溶液を加えることにより塗布液Cを調整した。
【0192】
ITO膜付きのPETフィルムのITO膜面の上に、上記塗布液Cをワイヤーバー法にて塗布することにより液晶層(厚さ:35μm)を形成した。次に、カーボンブラックをポリビニルアルコール水溶液中に分散し(固形分:10質量%)、この分散液を前記表示素子における液晶層面上に塗布し、黒色の光吸収層(厚さ:3μm)を形成した。これによって、ITO電極、液晶層、及び光吸収層の積層されたPETフィルムを調整した。
【0193】
−表示媒体の調整−
更に、上記調整した、ITO電極、及び光導電層の積層されたPETフィルムの光導電層側表面に、2液型ポリウレタン系接着剤であるA50/A315(武田薬品工業社製)を塗布し、乾燥させて厚さ2μmのラミネート層を形成した。このラミネート層の上に、上記調整した、ITO電極、液晶層、及び光吸収層の積層されたPET基板を、光吸収層とラミネート層とが接するように密着させ、90℃でラミネートを行い、表示媒体を調整した。
【0194】
調整した表示媒体について、表示媒体の電極間(ITO電極間)に電圧を印加して液晶層にかかる分圧を後述する方法により測定し、図3に示すように、液晶層の液晶がフォーカルコニックからホメオトロピックへ状態変化する上側閾値Vfhを求めたところ、61Vであった。このため、調整した表示媒体は、液晶層にかかる分圧が61V以上であると、フォーカルコニックからホメオトロピックへ状態変化することが分かった。
【0195】
―評価―
上記調整した表示媒体について、前処理及び書込処理を行い、前処理において光導電層に波長510nmの光を50ms照射し、該前処理に連続して行う書込処理時には該波長510nmの光を10ms照射した。
また、該前処理においては、表示媒体の電極間(ITO電極間)には電圧を印加せず、該書込処理時には、該書込処理における光の照射期間に同期させて、該電極間に100Vの電圧を10ms継続印加した。
【0196】
そして、上記前処理及び書込処理において、光導電層へ照射する光の光量を、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々とした。そして、前処理及び書込処理時に上記各光量の光を照射した場合の各々について、書込処理時に液晶層にかかる分圧を測定した。測定結果を、図10の線図52で示した。
【0197】
―液晶層の分圧測定方法―
なお、液晶層にかかる分圧は、上記調整した表示媒体(合成容量:6nF)と60nFのコンデンサーとを直列接続し、電源、電圧計などを備えた外部回路に接続し、表示媒体とコンデンサーとの両端に上記100Vの電圧を印加してから10ms後に電圧印加を解除し、該電圧印加直後から電圧印加解除までの間に上記4種類の強度各々の上記波長510nmの光の各々を照射したときの、コンデンサーにかかる分圧を測定する事によって得た。
なお、このコンデンサーにかかる分圧の変化は、表示媒体中の液晶層にかかる分圧の変化とほぼ相似であり、コンデンサーにかかる分圧の変化を測定することによって、液晶層にかかる分圧の変化挙動が推定される。
【0198】
なお、本試験例1では、書込処理時に表示媒体の電極間に印加する電圧の電圧値(第2の電圧値)を、100Vに設定したが、このように第2の電圧値を100Vとしたのは、以下の理由による。まず、後述する比較試験例1の実験結果から、従来公知の方法で表示媒体に書込処理を行うときに光導電層に照射する光の強度として、第2の強度を200μW/cmとして定めた。そして、上記前処理時及び書込処理時に照射する特定波長(本試験例1では波長510nm)の光が未だ照射されていない状態の表示媒体について、表示媒体の電極間(図1で示すと電極15及び電極22)間に電圧を印加したときの液晶層にかかる分圧が、第2の強度としての200μW/cmの書込光の非照射時には図3における上側閾値Vfhを超えず、該200μW/cmの書込光の照射時には上側閾値Vfhを超える、電圧の閾値としての値を求めた結果、書込処理時に印加する電圧の電圧値を100Vとした。
【0199】
(試験例2)
上記試験例1で作製した表示媒体について、試験例1では、書込処理前には電極間(ITO電極間)に電圧を印加せず、書込処理時にのみ該電極間に電圧を印加した。本試験例2では、前処理において、書込処理時に電極間に印加する電圧の電圧値(第2の電圧値)より低い第3の電圧値の電圧を印加した。
【0200】
詳細には、本試験例2では、試験例1で調整した表示媒体について、前処理及び書込処理を行い、前処理において光導電層に波長510nmの光を50ms照射し、該前処理に連続して行う書込処理時には該波長510nmの光を10ms照射した。
また、該前処理において、表示媒体の電極間(ITO電極間)に20Vの電圧値(第3の電圧値)の電圧を印加し、書込処理時には、該書込処理における光の照射期間に同期させて、該電極間に100Vの電圧を10ms印加した。本試験例2において前処理及び書込処理において電極間に印加する電圧波形を図11に線図56で示した。
【0201】
なお、試験例1と同様に、本試験例2における上記前処理及び書込処理において、光導電層へ照射する光の光量を、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々とした。そして、前処理及び書込処理時に上記各光量の光を照射した場合の各々について、書込処理時に液晶層にかかる分圧を測定した。測定結果を、図10の線図54で示した。
【0202】
(比較試験例1)
上記試験例1で作製した表示媒体について、試験例1では、書込処理前には電極間(ITO電極間)に電圧を印加せず、書込処理時にのみ該電極間に電圧を印加した。本比較試験例1では、前処理を行わず、書込処理時にのみ電極間に第2の電圧値の電圧を印加すると共に書込光を照射した。
【0203】
詳細には、本比較試験例1では、試験例1で調整した表示媒体について、前処理及び書込処理を行い、前処理においては光導電層への光照射を行わず、該前処理に連続して行う書込処理時には該波長510nmの光を10ms照射した。
また、該前処理において、表示媒体の電極間(ITO電極間)への電圧印加は行わず、書込処理時には、該書込処理における光の照射期間に同期させて、該電極間に100Vの電圧を10ms印加した。
【0204】
なお、試験例1と同様に、本比較試験例1における上記書込処理において、光導電層へ照射する光の光量を、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々とした。そして、書込処理時に上記各光量の光を照射した場合の各々について、書込処理時に液晶層にかかる分圧を測定した。測定結果を、図10の線図50で示した。
【0205】
(試験例1〜試験例2、比較試験例1のまとめ)
図10に示すように、前処理を行わず書込処理時において表示媒体の電極間に100Vの電圧を10ms印加している期間中に50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々の光量の光を照射した比較試験例1の場合には、線図50に示されるように、書込処理時にフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の生じる上側閾値Vthとしての61Vの分圧が液晶層にかかるように、書込処理時に照射する光の強度を調整するためには、書込処理時に200μW/cmの強度の光を照射する必要があることが分かる(線図60と線図50との交点に対応する光量)。
【0206】
一方、前処理及び書込処理の双方において、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々の光量の光を照射した試験例1の場合には、線図52に示されるように、書込処理時にフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の生じる上側閾値Vthとしての61Vの分圧が液晶層にかかるように、書込処理時に照射する光の強度を調整するためには、書込処理時に150μW/cmの強度の光を照射する必要があることが分かる(線図60と線図52との交点に対応する光量)。このため、前処理を行わない、すなわち、前処理において光照射を行わない比較試験例1に比べて、試験例1では、前処理及び書込処理時に照射する光の強度の低下が図れ、小さい強度の光の照射による表示媒体への書込が可能となったといえる。
【0207】
さらに、前処理及び書込処理の双方において、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々の光量の光を照射し、且つ、前処理において更に20Vの電圧を表示媒体の電極間に印加した試験例2の場合には、線図54に示されるように、書込処理時にフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の生じる上側閾値Vthとしての61Vの分圧が液晶層にかかるように、書込処理時に照射する光の強度を調整するためには、書込処理時に約100μW/cmの強度の光を照射すればよいことが分かる(線図60と線図54との交点に対応する光量)。
このため、前処理を行わない、すなわち、前処理において光照射を行わない比較試験例1に比べて、試験例2では、前処理及び書込処理時に照射する光の強度の低下が図れ、小さい強度の光の照射による表示媒体への書込が可能となったといえる。また、前処理において電圧印加を行わない試験例1に比べて、さらなる光強度の低下が図れたといえる。
【0208】
(試験例3)
(光書込型表示媒体の作製)
上記試験例1で作製した表示媒体のシアン色の光を吸収する電荷発生層に変えて、赤色の光を吸収する電荷発生層を用いて表示媒体を作製した。
【0209】
具体的には、ITO透明電極がパターニングされた0.125mm厚のPET基板の上に、ブタノールを溶媒として、600nm以上の可視光に高い感度を持つチタニルフタロシアニン顔料をポリビニルブチラールに分散した溶液を200nm厚にスピンコート塗布し、その上に、モノクロロベンゼンを溶媒として、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンをビスフェノールZポリカーボネートに分散した溶液を3μm厚にバーコート塗布することで、赤色の光を吸収する電荷発生層を形成した。
【0210】
この電荷発生層について、分光光度計により吸収スペクトルを測定したところ、600nm以上の領域において光吸収率80%以上を示す吸収スペクトルが得られた。
【0211】
次に、前記電荷発生層の上に電荷輸送層を形成した。具体的には、電荷輸送材N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビスフェニル−4−アミンと、バインダー樹脂としてポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、Z300)とを、質量比率を1:1として混合した後、これをモノクロロベンゼンに溶解させ10質量%の溶液(塗布液B)を調製した。これをアプリケーター(Gap:100μm)で塗布、乾燥することによって、前記下部電荷発生層上に10μm厚の電荷輸送層を形成した。
【0212】
更に、上記電極上に形成したシアン光の光を吸収する電荷発生層と同様にして、上記形成された電荷輸送層上に該電荷発生層を形成した。以上のようにして、光導電層を形成した。
【0213】
さらに、スピンコートにより、ポリビニルアルコール3質量%の水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール膜(膜厚約1μm)を形成した。これによって、ITO電極、光導電層の積層されたPET基板を調整した。
【0214】
ネマチック液晶E7(メルク社製)84質量部と、カイラル剤R811(メルク社製)10.8質量部と、カイラル剤R1011(メルク社製)2.7質量部とを混合して、選択反射波長が650nmであるコレステリック液晶100部を得た。このコレステリック液晶と、多価イソシアネートとしてタケネートD−110N(武田薬品工業社製)10質量部と、垂直配向成分の前駆体としてオクタデカノール3部(アルドリッチ社製)とを、酢酸エチル1000質量部中に溶解して油相組成物を調製した。これをポリビニルアルコール1質量%水溶液10、000質量部の中に投入し、ミキサーで撹拌・分散して体積平均粒径が7μmのエマルジョンを作製した。
これにポリアリルアミン(日東紡社製)の10%水溶液を100質量部加え、70℃で2時間加熱してポリウレアを壁材とするマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルを遠沈回収後、その固形成分の質量に対して1/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール10質量%水溶液を加えることにより塗布液Cを調整した。
【0215】
ITO膜付きのPETフィルムのITO膜面の上に、上記塗布液Cをワイヤーバー法にて塗布することにより液晶層(厚さ:35μm)を形成した。次に、カーボンブラックをポリビニルアルコール水溶液中に分散し(固形分:10質量%)、この分散液を前記表示素子における液晶層面上に塗布し、黒色の光吸収層(厚さ:3μm)を形成した。これによって、ITO電極、液晶層、及び光吸収層の積層されたPETフィルムを調整した。
【0216】
−表示媒体の調整−
更に、上記調整した、ITO電極、及び光導電層の積層されたPETフィルムの光導電層側表面に、2液型ポリウレタン系接着剤であるA50/A315(武田薬品工業社製)を塗布し、乾燥させて厚さ2μmのラミネート層を形成した。このラミネート層の上に、上記調整した、ITO電極、液晶層、及び光吸収層の積層されたPET基板を、光吸収層とラミネート層とが接するように密着させ、90℃でラミネートを行い、表示媒体を調整した。
【0217】
調整した表示媒体について、表示媒体の電極間(ITO電極間)に電圧を印加して液晶層にかかる分圧を後述する方法により測定し、図3に示すように、液晶層の液晶がフォーカルコニックからホメオトロピックへ状態変化する上側閾値Vfhを求めたところ、57Vであった。このため、調整した表示媒体は、液晶層にかかる分圧が57V以上であると、フォーカルコニックからホメオトロピックへ状態変化することが分かった。
【0218】
―評価―
試験例3で調整した表示媒体について、前処理及び書込処理を行い、前処理において光導電層に波長600nmの光を50ms照射し、該前処理に連続して行う書込処理時には該波長600nmの光を10ms照射した。
また、該前処理においては、表示媒体の電極間(ITO電極間)には電圧を印加せず、該書込処理時には、該書込処理における光の照射期間に同期させて、該電極間に100Vの電圧を10ms継続印加した。
【0219】
そして、上記前処理及び書込処理において、光導電層へ照射する光の光量を、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々とした。そして、前処理及び書込処理時に上記各光量の光を照射した場合の各々について、書込処理時に液晶層にかかる分圧を測定した。測定結果を、図12の線図82で示した。
【0220】
なお、本試験例3では、書込処理時に表示媒体の電極間に印加する電圧の電圧値(第2の電圧値)を、100Vに設定したが、このように第2の電圧値を100Vとしたのは、以下の理由による。まず、後述する比較試験例2の実験結果から、従来公知の方法で表示媒体に書込処理を行うときに光導電層に照射する光の強度として、第2の強度を200μW/cmとして定めた。そして、上記前処理時及び書込処理時に照射する特定波長(本試験例1では波長600nm)の光が未だ照射されていない状態の表示媒体について、表示媒体の電極間(図1で示すと電極15及び電極22)間に電圧を印加したときの液晶層にかかる分圧が、第2の強度としての200μW/cmの書込光の非照射時には図3における上側閾値Vfhを超えず、該200μW/cmの書込光の照射時には上側閾値Vfhを超える、電圧の閾値としての値を求めた結果、書込処理時に印加する電圧の電圧値を100Vとした。
【0221】
(試験例4)
上記試験例3で作製した表示媒体について、試験例3では、書込処理前には電極間(ITO電極間)に電圧を印加せず、書込処理時にのみ該電極間に電圧を印加した。本試験例4では、前処理において、書込処理時に電極間に印加する電圧の電圧値(第2の電圧値)より低い第3の電圧値の電圧を印加した。
【0222】
詳細には、本試験例4では、試験例3で調整した表示媒体について、前処理及び書込処理を行い、前処理において光導電層に波長600nmの光を50ms照射し、該前処理に連続して行う書込処理時には該波長600nmの光を10ms照射した。
また、該前処理において、表示媒体の電極間(ITO電極間)に20Vの電圧値(第3の電圧値)の電圧を印加し、書込処理時には、該書込処理における光の照射期間に同期させて、該電極間に100Vの電圧を10ms印加した。本試験例4において前処理及び書込処理において電極間に印加する電圧波形を図13に線図86で示した。
【0223】
なお、試験例3と同様に、本試験例4における上記前処理及び書込処理において、光導電層へ照射する光の光量を、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cmの各々とした。そして、前処理及び書込処理時に上記各光量の光を照射した場合の各々について、書込処理時に液晶層にかかる分圧を測定した。測定結果を、図12の線図84で示した。
【0224】
(比較試験例2)
上記試験例3で作製した表示媒体について、試験例3では、書込処理前には電極間(ITO電極間)に電圧を印加せず、書込処理時にのみ該電極間に電圧を印加した。本比較試験例2では、前処理を行わず、書込処理時にのみ電極間に第2の電圧値の電圧を印加すると共に書込光を照射した。
【0225】
詳細には、本比較試験例2では、試験例3で調整した表示媒体について、前処理及び書込処理を行い、前処理においては光導電層への光照射を行わず、該前処理に連続して行う書込処理時には該波長600nmの光を10ms照射した。
また、該前処理において、表示媒体の電極間(ITO電極間)への電圧印加は行わず、書込処理時には、該書込処理における光の照射期間に同期させて、該電極間に100Vの電圧を10ms印加した。
【0226】
なお、試験例3と同様に、本比較試験例2における上記書込処理において、光導電層へ照射する光の光量を、0μW/cm、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々とした。そして、書込処理時に上記各光量の光を照射した場合の各々について、書込処理時に液晶層にかかる分圧を測定した。測定結果を、図12の線図70で示した。
【0227】
(試験例3〜試験例4、比較試験例2のまとめ)
図12に示すように、前処理を行わず書込処理時において表示媒体の電極間に100Vの電圧を10ms印加している期間中に0μW/cm、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々の光量の光を照射した比較試験例1の場合には、線図80に示されるように、書込処理時にフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の生じる上側閾値Vthとしての57Vの分圧が液晶層にかかるように、書込処理時に照射する光の強度を調整するためには、書込処理時に200μW/cmの強度の光を照射する必要があることが分かる(線図70と線図80との交点に対応する光量)。
【0228】
一方、前処理及び書込処理の双方において、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cm、200μW/cmの各々の光量の光を照射した試験例3の場合には、線図82に示されるように、書込処理時にフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の生じる上側閾値Vthとしての57Vの分圧が液晶層にかかるように、書込処理時に照射する光の強度を調整するためには、書込処理時に160μW/cmの強度の光を照射すればよい事が分かる(線図70と線図82との交点に対応する光量)。このため、前処理を行わない、すなわち、前処理において光照射を行わない比較試験例2に比べて、試験例3では、前処理及び書込処理時に照射する光の強度の低下が図れ、小さい強度の光の照射による表示媒体への書込が可能となったといえる。
【0229】
さらに、前処理及び書込処理の双方において、50μW/cm、100μW/cm、150μW/cmの各々の光量の光を照射し、且つ、前処理において更に20Vの電圧を表示媒体の電極間に印加した試験例4の場合には、線図84に示されるように、書込処理時にフォーカルコニックからホメオトロピックへの状態変化の生じる上側閾値Vthとしての57Vの分圧が液晶層にかかるように、書込処理時に照射する光の強度を調整するためには、書込処理時に約120μW/cmの強度の光を照射すればよいことが分かる(線図70と線図84との交点に対応する光量)。
このため、前処理を行わない、すなわち、前処理において光照射を行わない比較試験例2に比べて、試験例4では、前処理及び書込処理時に照射する光の強度の低下が図れ、小さい強度の光の照射による表示媒体への書込が可能となったといえる。また、前処理において電圧印加を行わない試験例3に比べて、さらなる光強度の低下が図れたといえる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】第1の実施形態に係る光書込型表示装置の一の形態を示す概略構成図である。
【図2】コレステリック液晶の分子配向と光学特性の関係を示す模式説明図であり、(A)はプレーナ状態、(B)はフォーカルコニック状態、(C)ホメオトロピック状態の各状態におけるものである。
【図3】印加電圧に対する液晶の電圧特性を示す図である。
【図4】図1に示される構造の表示媒体の等価回路を示す回路図である。
【図5】第1の実施形態に係る光書込型表示装置の制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【図6】(A)は、表示媒体の電極間に印加される電圧波形を示す線図であり、(B)は、表示媒体に照射される書込光の照射波形を示す線図である。
【図7】第2の実施形態に係る光書込型表示装置の一の形態を示す概略構成図である。
【図8】第2の実施形態に係る光書込型表示装置の制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【図9】(A)は、表示媒体の電極間に印加される電圧波形を示す線図であり、(B)は、表示媒体に照射される書込光の照射波形を示す線図である。
【図10】試験例1、試験例2、及び比較試験例1において表示媒体に照射した書込光の光量と、液晶層にかかる分圧との関係を示す線図である。
【図11】試験例2において表示媒体の電極間に印加される電圧波形を示す線図である。
【図12】試験例3、試験例4、及び比較試験例2において表示媒体に照射した書込光の光量と、液晶層にかかる分圧との関係を示す線図である。
【図13】試験例4において表示媒体の電極間に印加される電圧波形を示す線図である。
【図14】第1の実施形態に係る光書込型表示装置の制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態に係る光書込型表示装置の制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0231】
10 光書込型表示装置
11 光書込型表示装置
12 表示媒体
14 書込装置
40 書込装置
15 電極
17 液晶層
20 光導電層
22 電極
26 電圧印加部
28B 書込処理部
28A 前処理部
28 制御部
29B 書込処理部
29A 前処理部
29 制御部
30A 光源
30B 光源用電源
30 照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に、予め定められた波長領域の書込光を吸収することにより該書込光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す光導電層と、前記一対の電極に印加された電圧による前記光導電層の電気的特性分布に応じた分圧が印加されるコレステリック液晶層と、が少なくとも積層された表示媒体と、
前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記光導電層に前記書込光を照射する照射手段と、
予め定められた第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御することによって前記光導電層に励起子を発生させる前処理を行った後に、
前記第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御すると共に予め定められた第1の電圧値の第1の電圧を前記一対の電極間に印加するように前記電圧印加手段を制御することにより、前記コレステリック液晶層の配向をそろえる第1の状態変化を生じさせて該コレステリック液晶層を初期化する初期化処理、
及び前記第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御すると共に予め定められた第2の電圧値の第2の電圧を前記一対の電極間に印加するように前記電圧印加手段を制御することにより、前記コレステリック液晶層における少なくとも一部の配向を変化させる第2の状態変化を生じさせて該コレステリック液晶層へ画像を書き込む書込処理、
の少なくとも一方を行う制御手段と、
を備えた光書込型表示装置。
【請求項2】
前記表示媒体は、
前記制御手段による前記照射手段の制御によって、前記前処理の行われる前の状態においては、
前記第1の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加されると共に前記第1の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときには、前記コレステリック液晶層における前記第1の状態変化が生じず、
該第1の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加された状態で該第1の強度を超える第2の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときに、前記コレステリック液晶における前記第1の状態変化が生じることを特徴とする請求項1に記載の光書込型表示装置。
【請求項3】
前記表示媒体は、
前記制御手段による前記照射手段の制御によって、前記前処理の行われる前の状態においては、
前記第2の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加されると共に前記第1の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときには、前記コレステリック液晶層における前記第2の状態変化が生じず、
該第2の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加された状態で該第1の強度を超える第3の強度の前記書込光が前記光導電層に照射されたときに、前記コレステリック液晶における前記第2の状態変化が生じる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光書込型表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記前処理において、
前記第1の強度の前記書込光を前記光導電層へ照射するように前記照射手段を制御することによって前記光導電層に励起子を発生させると共に、更に該励起子を自由キャリアに分離させる第3の電圧値の第3の電圧を前記一対の電圧間に印加するように前記電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光書込型表示装置。
【請求項5】
前記第3の電圧値は、
前記制御手段による前記照射手段の制御によって、前記前処理が行われた後の状態の前記表示媒体において、
該第3の電圧値の電圧が前記一対の電極間に印加されたときの前記コレステリック液晶層にかかる分圧が、前記第1の強度の書込光の照射時に前記コレステリック液晶層のプレーナからフォーカルコニックへの状態変化の閾値を超えない電圧値であることを特徴とする請求項4に記載の光書込型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−156773(P2010−156773A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334112(P2008−334112)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】