説明

光束制御部材および発光装置

【課題】被照射面に合わせて出射光の進行方向を制御することができ、かつ直視したときの眩しさを低減することができる光束制御部材を提供すること。
【解決手段】光束制御部材100は、光束制御部材100の中央部に形成され、発光素子200から出射された光を入射する入射部110と、光束制御部材100の中央部と外周部との間に形成され、入射部110から入射した光を光束制御部材100の外周部に導光する板状の導光部120と、光束制御部材100の外周部に形成され、導光部120により導光された光を外部に出射する出射部130とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光の進行方向を制御する光束制御部材、および前記光束制御部材を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から、照明用の光源として、白熱電球や蛍光灯などに代わり、発光ダイオード(LED)が使用されるようになってきている。発光ダイオードを用いて被照射面を照らした場合、光源(発光ダイオード)の直下と光源から離れた位置との間で照度が大きく異なる。したがって、1つの発光ダイオードを用いて広い被照射面を照らした場合、被照射面の中央部と周縁部との間で照度が大きく異なってしまう。
【0003】
このような問題を解決すべく、発光ダイオードを用いて広い被照射面をある程度均一に照らす手段として、導光板を用いて発光ダイオードから出射された光の配光を広げることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、発光ダイオードおよび導光板を含む発光装置が開示されている。図1Aは、特許文献1に記載の発光装置10の斜視図である。図1Bは、図1AのA−A線の断面図である。図1Aおよび図1Bに示されるように、発光装置10は、発光素子20と、発光素子20と対向する位置に配置された第1の導光部30と、第1の導光部30の周囲に配置された板状の第2の導光部40とを有する。第2の導光部40の厚みは、中央部側から外周部側に向けて漸減している。第1の導光部30および第2の導光部40は、一体成形(二材成形)により形成されており、一つの導光板として機能する。
【0005】
発光素子20から出射された光は、第1の導光部30に入射する。第1の導光部30に入射した光の大部分は、第1の導光部30の反射面(出射面32と同じ面)で反射して第2の導光部40に入射する。第1の導光部30に入射した光の残部は、第1の導光部30の出射面32から外部へ出射される。第2の導光部40に入射した光は、第2の導光部40内を外周方向に進み、第2の導光部40の傾斜面42または傾斜面42の裏側に配置された白色シート(不図示)により反射され、第2の導光部40の出射面44から外部へ出射される。
【0006】
特許文献1に記載の発光装置10は、発光素子20から出射された光を、第1の導光部30の出射面32の全面および第2の導光部40の出射面44の全面から出射する。その結果、特許文献1に記載の発光装置10は、発光素子20から出射された光を広い被照射面にある程度均一に照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−250974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の全面発光型の発光装置10では、グレアが問題となることがある。すなわち、図1Aに示されるように、矢印50の方向から発光装置10を直視すると、出射面32,44の中心部から手前側の領域において、他の領域より極度に輝度が高い輝線60が発生する。このような輝線60の発生は、高品位な発光装置を提供する上では好ましくない。
【0009】
輝線60の発生を抑制する方法としては、特許文献1に記載されているように、導光板(第1の導光部30および第2の導光部40)内に光散乱粒子を配置して、出射光を散乱させることが考えられる。しかしながら、このように出射光を散乱させてしまうと、被照射面に合わせて出射光の進行方向を制御することが困難となってしまう。このため、輝線60の発生を抑制するために出射光を散乱させることは、好ましくない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被照射面に合わせて出射光の進行方向を制御することができ、かつ直視したときの眩しさを低減することができる光束制御部材を提供することを目的とする。また、本発明は、この光束制御部材を有する発光装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光束制御部材は、発光素子から出射された光の進行方向を制御する光束制御部材であって、前記光束制御部材の中央部に形成され、前記発光素子から出射された光を入射する入射部と、前記光束制御部材の中央部と外周部との間に形成され、前記入射部から入射した光を前記光束制御部材の外周部に導光する板状の導光部と、前記光束制御部材の外周部に形成され、前記導光部により導光された光を外部に出射する出射部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光束制御部材は、被照射面に合わせて出射光の進行方向を制御することができ、かつ直視したときの眩しさを低減することができる。したがって、本発明の光束制御部材を有する発光装置は、直視してもそれほど眩しくなく、高品位な照明を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは、特許文献1に記載の発光装置の斜視図である。図1Bは、図1AのA−A線の断面図である。
【図2】図2Aは、実施の形態の光束制御部材の上面斜視図であり、図2Bは、実施の形態の光束制御部材の下面斜視図である。
【図3】図3Aは、実施の形態の光束制御部材の平面図であり、図3Bは、実施の形態の光束制御部材の底面図である。
【図4】図4Aは、図3Aおよび図3Bに示されるB−B線の断面図であり、図4Bは、図4Aに示される出射部の拡大断面図である。
【図5】光束制御部材における光路の一例を示す図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、入射部の変形例を示す入射部の拡大断面図である。
【図7】図7Aおよび図7Bは、出射部の変形例を示す出射部の拡大断面図である。
【図8】図8Aは、実施の形態の発光装置の平面図であり、図8Bは、実施の形態の発光装置の底面図である。
【図9】図9Aは、図8Aおよび図8Bに示されるC−C線で外装部および基板を切断したときの実施の形態の発光装置の正面図である。図9Bは、図9Aに示される正面図において、さらにホルダおよび光束制御部材の一部を除去したときの発光装置の正面図である。
【図10】図10Aは、比較例の光束制御部材の上面斜視図であり、図10Bは、比較例の光束制御部材の下面斜視図である。
【図11】図11Aは、比較例の光束制御部材の平面図であり、図11Bは、比較例の光束制御部材の底面図である。
【図12】図12Aは、図11Aおよび図11Bに示されるD−D線の断面図であり、図12Bは、外周部の拡大断面図である。
【図13】輝線発生評価試験の方法を説明するための模式図である。
【図14】図14Aは、実施例の光束制御部材の写真である。図14Bは、図14Aに示されるE−E線の各点における輝度を示すグラフである。
【図15】図15Aは、比較例の光束制御部材の写真である。図15Bは、図15Aに示されるF−F線の各点における輝度を示すグラフである。
【図16】実施例の光束制御部材および比較例の光束制御部材における、光束制御部材の中心部からの距離と輝度の関係を示すグラフである。
【図17】図17Aおよび図17Bは、照度分布評価の方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の光束制御部材の代表例として、発光素子から出射された光を円環状に出射する光束制御部材について説明する。
【0015】
[光束制御部材の構成]
図2〜4は、本実施の形態の光束制御部材100の構成を示す図である。図2Aは、光束制御部材100の上面斜視図であり、図2Bは、光束制御部材100の下面斜視図である。図3Aは、光束制御部材100の平面図であり、図3Bは、光束制御部材100の底面図である。図4Aは、図3Aおよび図3Bに示されるB−B線の断面図であり、図4Bは、図4Aに示される出射部130の拡大断面図である。説明の便宜上、図4Aでは、光束制御部材100と共に発光素子200も図示している。
【0016】
光束制御部材100は、一体成形により形成されている。光束制御部材100の材料は、所望の波長の光を通過させ得るものであれば特に限定されない。たとえば、光束制御部材100の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの光透過性樹脂、またはガラスである。
【0017】
図2〜4に示されるように、光束制御部材100の形状は、中心軸CAを中心として回転対象(円対象)である。したがって、平面視したときの光束制御部材100の形状は、円形である(図3A参照)。光束制御部材100は、中心軸CAが発光素子200の光軸に合致するように、発光素子200が固定された基板(図示せず)上に取り付けられる(図4A参照)。発光素子200は、例えば白色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。
【0018】
図4Aに示されるように、光束制御部材100は、光束制御部材100の中央部に形成された入射部110と、光束制御部材100の中央部と外周部との間に形成された、板状の導光部120と、光束制御部材100の外周部に形成された出射部130とを有する。また、光束制御部材100は、光学的に悪影響を与えにくい位置に、円柱形状の凸部140を有する。この凸部140は、光束制御部材100をホルダ420(後述)に固定する際に使用される。
【0019】
入射部110は、発光素子200から出射された光を入射し、入射した光を導光部120に導く。図4Aに示されるように、入射部110は、入射面112、第1の全反射面114および第2の全反射面116を有する。
【0020】
入射面112は、発光素子200から出射された光を入射する。入射面112は、光束制御部材100の裏側(発光素子200が配置される側)において、発光素子200に対向する位置に形成されている第1の凹部150の内面である。第1の凹部150の形状は、略円錐台状である。入射面112は、中心軸CAを中心とする回転対称面であり、中心軸CAと交わるように形成されている。入射面112は、第1の凹部150の天面を構成する内天面112aと、第1の凹部150の側面を構成するテーパ状の内側面112bとを含む。内側面112bの直径は、内天面112a側から開口縁側に向けて漸増している。
【0021】
第1の全反射面114は、入射面112から入射した光の一部を第2の全反射面116に向けて反射させる。第1の全反射面114は、入射部110の底部の外縁から、第2の全反射面116側に向けて延びる面である。本実施の形態では、入射部110の底部の外縁から、入射部110と凸部140との接続部の外縁まで延びる面が第1の全反射面114となる。第1の全反射面114は、中心軸CAを中心とする回転対称面である。第1の全反射面114の直径は、入射面112側(底部側)から凸部140側に向けて漸増している。第1の全反射面114を構成する母線は、外側(中心軸CAから離れる側)に凸の円弧状曲線である(図4A参照)。本実施の形態では、第1の全反射面114は、非球面で形成されている。
【0022】
第2の全反射面116は、入射面112から入射した光および第1の全反射面114で反射した光を導光部120に向けて反射させる。第2の全反射面116は、光束制御部材100の表側(発光素子200が配置されない側)において、中心軸CAと交わるように形成されている第2の凹部152の内面である。第2の凹部152の形状は、略円錐状である。第2の全反射面116は、中心軸CAを中心とする回転対称面である。第2の全反射面116の直径は、入射面131側(裏側)から出射面132側(表側)に向けて漸増している。第2の全反射面116を構成する母線は、内側(中心軸CA側)に凸の円弧状曲線である(図4A参照)。本実施の形態では、第2の全反射面116は、中心軸CAにおいて収斂する非球面のテーパ形状に形成されている。
【0023】
導光部120は、入射部110の外側に形成された、板状の部材である。導光部120は、入射部110から入射した光を、実質的に外部に出射することなく光束制御部材100の外周部に導く。ここで「実質的に外部に出射しない」とは、発光素子200が中心軸CAと交わる一点からのみ光を発する点光源であると仮定した場合に、導光部120の表裏両面から外部に光が漏れないことを意味する。実際には、発光素子200は点光源ではないため、光が外部に出射されることはありうる。
【0024】
導光部120は、入射部110から入射した光を導光部120の表面および/または裏面で全反射させることで、入射部110から入射した光を実質的に外部に出射することなく光束制御部材100の外周部に導く。このため、導光部120の厚みは、一定であるか(図4A参照)、または入射部110側(中央側)から出射部130側(外周側)に向けて漸増する。
【0025】
出射部130は、板状の導光部120の外周部に形成されている。出射部130は、導光部120から入射した光を外部に出射する。図4Bに示されるように、出射部130は、第1の出射面132a、第2の出射面132bおよび第3の出射面132cを有する。第1の出射面132aは、光束制御部材100の表面(発光素子200と対向しない側の面)の外周部に位置する。第1の出射面132aは、主として、傾斜面134a,134b(後述)で反射された光を外部に出射する。第2の出射面132bおよび第3の出射面132cは、光束制御部材100の径方向(中心軸CAに直交する方向)の端部に位置する。第2の出射面132bおよび第3の出射面132cは、主として、傾斜面134a,134bで反射されなかった光を外部に出射する。
【0026】
図4Aおよび図4Bに示されるように、光束制御部材100の外周部には、2つの傾斜面134a,134bが形成されている。これらの傾斜面134a,134bは、導光部120から入射した光を反射して、第1の出射面132aから出射させる。本実施の形態の光束制御部材100では、2つの傾斜面134a,134bが形成されているが、傾斜面の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、2つ以上の傾斜面が形成されている場合は、各傾斜面の角度は、同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。図4Bに示されるように、各傾斜面134a,134bの角度を変えることで、光束制御部材100の配光特性をより詳細に設定することができる。
【0027】
[光束制御部材の効果]
図5は、光束制御部材100における光路の一例を示す図である。この図では、発光素子200が点光源であると仮定したときの光路を示している。また、シーリングライトとして最適な配光特性となるように、各構成要素の形状および位置が調整されている。
【0028】
図5に示されるように、発光素子200から出射された光160a〜dは、入射部110の入射面112a,112bから光束制御部材100内に入射する。光束制御部材100内に入射した光160a〜dは、入射部110の第1の全反射面114および/または第2の全反射面116で反射して、光束制御部材100の中心軸CAに対して略垂直方向の光となり、導光部120に導かれる。導光部120に到達した光160a〜dは、全反射をせずに直接出射部130に導かれるか、全反射をして出射部130に導かれる。このとき、導光部120内の光160a〜dが、外部に出射されることは実質的にない。出射部130に到達した光の一部160a,160bは、そのまま第2の出射面132bまたは第3の出射面132cから、水平方向(中心軸CAに対して垂直方向)または後方方向(発光素子200の光軸方向の反対の方向)に出射される。また、出射部130に到達した光の残部160c,160dは、傾斜面134a,134bで反射して、第1の出射面132aから、前方方向(発光素子200の光軸方向)に出射される。
【0029】
また、図5に示されるように、発光素子200から出射された光のうち、前方方向(光軸に対して0〜25°)の光160a,160bは、第2の出射面132bまたは第3の出射面132cから、水平方向または後方方向に出射される。すなわち、光束制御部材100を有する発光装置(後述)をシーリングライトとして使用した場合、発光素子200から出射された光のうちで一番明るい前方方向の光160a,160bは、天井方向に出射される。
【0030】
一方、発光素子200から出射された光のうち、斜め前方方向(光軸に対して25〜50°)の光160cおよび水平方向(光軸に対して50〜75°)の光160dは、第1の出射面132aから、前方方向に出射される。すなわち、光束制御部材100を有する発光装置(後述)をシーリングライトとして使用した場合、発光素子200から出射された光のうちでそれほど明るくない斜め前方方向の光160cおよび水平方向の光160dは、床方向または壁方向に出射される。
【0031】
このように、本実施の形態の光束制御部材100は、発光素子200から出射された光を、光束制御部材100の外周部に形成された出射部130のみから出射するため、直視したときに発生する輝線の長さが短い(実施例参照)。
【0032】
また、本実施の形態の光束制御部材100は、傾斜面134および出射面132の位置および形状を調整することで、出射光の進行方向を容易に制御することができる。たとえば、上述のように、発光素子200から出射された前方方向の光160a,160bを天井方向に出射することで、天井からの反射光を利用した間接照明を実現することが可能となる。
【0033】
以上のように、本実施の形態の光束制御部材100を有する発光装置は、直視してもそれほど眩しくなく、かつ高品位な照明を実現することができる。
【0034】
[光束制御部材の変形例]
上記の説明では、入射部110内に2つの全反射面114,116を形成した光束制御部材100について説明したが、入射部110の構成は、発光素子200から出射された光を導光部120に導くことができれば、特に限定されない。
【0035】
たとえば、図6Aに示されるように、入射部110内に、複数の傾斜面を有するフレネル部312と全反射面314とを形成してもよい。このようにすることで、発光素子200から出射された光を全反射面314で反射して、導光部120に導くことができる。また、図6Bに示されるように、発光素子200として側面発光型の発光素子を使用し、発光素子200に対向する位置に反射面316を形成してもよい。このようにすることで、発光素子200から出射された光を導光部120に直接導くことができる。
【0036】
また、上記の説明では、出射部130内に3つの出射面132a,132b,132cおよび2つの傾斜面134a,134bを形成した光束制御部材100について説明したが、出射部130の構成は、導光部120から入射した光を外部に出射することができれば、特に限定されない。
【0037】
たとえば、図7Aに示されるように、出射部130の表側(発光素子200が配置されていない側)に、凸曲面状の出射面332aを形成してもよい。また、図7Bに示されるように、出射部130の表側(発光素子200が配置されていない側)に、粗面化された出射面332bを形成してもよい。このようにすることで、導光部120から入射した光を出射面332a,332bから外部に出射することができる。
【0038】
また、上記の説明では、円環状に出射部130を形成した光束制御部材100について説明したが、平面視したときの出射部130の形状は、出射部130が光束制御部材の外周部に形成されていれば、特に限定されない。たとえば、平面視したときの出射部130の形状は、多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。
【0039】
[発光装置の構成]
次に、本実施の形態の光束制御部材100を有する発光装置について説明する。
【0040】
図8および図9は、本実施の形態の発光装置400の構成を示す図である。図8Aは、発光装置400の平面図であり、図8Bは、発光装置400の底面図である。図9Aは、図8Aおよび図8Bに示されるC−C線で外装部410および基板210を切断したときの発光装置400の正面図である。図9Bは、図9Aに示される正面図において、さらにホルダ420および光束制御部材100の一部を除去したときの発光装置400の正面図である。
【0041】
図8および図9に示されるように、発光装置400は、光束制御部材100、発光素子200、基板210、外装部410およびホルダ420を有する。
【0042】
発光素子200は、基板210上に実装されている。また、光束制御部材100の凸部140は、ホルダ420に嵌め込まれている。ホルダ420は、基板210に固定されており、基板210は、外装部410に固定されている。光束制御部材100は、その中心軸CAが発光素子200の光軸に合致するように配置されている。
【0043】
外装部410の材料は、目的に応じて選択されうる。たとえば、光束制御部材100の配光特性(一部の光が水平方向および後方方向に出射される)を活かす場合は、外装部410の材料は、透明材料であることが好ましい。一方、発光装置400の前方方向を主として照らす場合は、外装部410の材料は、高効率で光を反射させうる材料(白色材料や金属光沢面を形成できる材料など)であることが好ましい。
【0044】
[発光装置の効果]
本実施の形態の発光装置400は、発光素子200から出射された光を、光束制御部材100の外周部に形成された出射部130のみから出射するため、直視したときに発生する輝線の長さが短い(実施例参照)。また、本実施の形態の発光装置400は、光束制御部材100の各構成要素の位置および形状を調整することで、出射光の進行方向を容易に制御することができる。したがって、本実施の形態の発光装置400は、直視してもそれほど眩しくなく、かつ高品位な照明を実現することができる。
【0045】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0046】
1.光束制御部材の準備
図2〜4に示される本発明の光束制御部材100(実施例の光束制御部材100)と、図10〜12に示される比較例の光束制御部材500を準備した。
【0047】
図10Aは、比較例の光束制御部材500の上面斜視図であり、図10Bは、比較例の光束制御部材500の下面斜視図である。図11Aは、比較例の光束制御部材500の平面図であり、図11Bは、比較例の光束制御部材500の底面図である。図12Aは、図11Aおよび図11Bに示されるD−D線の断面図であり、図12Bは、外周部の拡大断面図である。説明の便宜上、図12Aでは、光束制御部材500と共に発光素子200も図示している。
【0048】
図10〜12に示されるように、比較例の光束制御部材500では、入射した光を外部に出射させるための傾斜面が、光束制御部材の中央部から外周部までの全体に亘って形成されている。すなわち、比較例の光束制御部材は、導光部を有していない点で実施例の光束制御部材と異なる。
【0049】
実施例の光束制御部材100および比較例の光束制御部材500は、いずれもPMMAを用いて一体成形により作製した。実施例の光束制御部材100の外径は、60mmである。比較例の光束制御部材500の外径は、110mmである。
【0050】
2.光束制御部材の評価
(1)輝線の長さの評価
図13に示されるように、光束制御部材100,500を発光素子200の上に設置し、基準面に対して30°の角度から見たときの輝度の分布を調べた。輝度の測定は、デジタルカメラ600を用いて光束制御部材100,500の写真を撮影し、得られた写真から専用のソフトウェアを用いて各ピクセルの輝度を数値化することで行った。
【0051】
図14Aは、実施例の光束制御部材100の写真である。この写真はグレースケールに変換されているが、元の写真では、輝度が高い箇所は赤色で、輝度が低い箇所は青色で表示されている。図14Bは、図14Aに示されるE−E線の各点における輝度を示すグラフである。このグラフの各点の位置は、図14Aの写真のE−E線上の各点の位置と対応している。これらの写真およびグラフにおいて、矢印の箇所に輝線が現れている。
【0052】
図15Aは、比較例の光束制御部材500の写真である。図15Bは、図15Aに示されるF−F線における輝度を示すグラフである。これらの写真およびグラフにおいて、矢印の箇所に輝線が現れている。
【0053】
図16は、実施例の光束制御部材100および比較例の光束制御部材500における、光束制御部材の中心部からの距離と輝度の関係を示すグラフである。このグラフでは、実施例の光束制御部材100および比較例の光束制御部材500のそれぞれについて、最も輝度が高い箇所(輝線)の輝度を100%としている。
【0054】
図16のグラフから、比較例の光束制御部材500では、輝線の長さが40mm程度であるのに対し、実施例の光束制御部材100では、輝線の長さが15mm程度であることがわかる。このことから、実施例の光束制御部材100は、比較例の光束制御部材500に比べて、直視しても眩しくないことが示唆される。
【0055】
(2)被照射面の照度分布の評価
図17Aに示されるように、3.5m四方の正方形状の被照射面610の中心部の上方2.5mの位置に、実施例の光束制御部材100または比較例の光束制御部材500を配置して、被照射面610の照度分布を測定した。被照射面610の照度は、図17Bに示される8点において測定した。被照射面610の照度の測定結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から、実施例の光束制御部材100は、比較例の光束制御部材500とほぼ同程度の照射能力を有していることがわかる。このことから、比較例の光束制御部材500のように、光束制御部材の全面から光を出射させなくても、被照射面を十分に照らしうることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光束制御部材は、例えば、シーリングライト用のレンズなどとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 発光装置
20 発光素子
30 第1の導光部
32 第1の導光部の出射面
40 第2の導光部
42 第2の導光部の傾斜面
44 第2の導光部の出射面
50 視線の方向
60 輝線
100 光束制御部材
110 入射部
112 入射面
112a 内天面
112b 内側面
114 第1の全反射面
116 第2の全反射面
120 導光部
130 出射部
132a 第1の出射面
132b 第2の出射面
132c 第3の出射面
134a,134b 傾斜面
140 凸部
150 第1の凹部
152 第2の凹部
160a〜d 発光素子から出射された光
200 発光素子
210 基板
312 フレネル部
314 全反射面
316 反射面
332a,332b 出射面
400 発光装置
410 外装部
420 ホルダ
500 比較例の光束制御部材
600 デジタルカメラ
610 被照射面
CA 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射された光の進行方向を制御する光束制御部材であって、
前記光束制御部材の中央部に形成され、前記発光素子から出射された光を入射する入射部と、
前記光束制御部材の中央部と外周部との間に形成され、前記入射部から入射した光を前記光束制御部材の外周部に導光する板状の導光部と、
前記光束制御部材の外周部に形成され、前記導光部により導光された光を外部に出射する出射部と、
を有する、光束制御部材。
【請求項2】
前記導光部の厚みは、一定であるか、または前記入射部側から前記出射部側に向けて漸増する、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項3】
前記出射部は、前記光束制御部材の外周部に形成された1または2以上の傾斜面を有する、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光束制御部材と、発光素子とを有し、
前記発光素子は、前記光束制御部材の中央部近傍に配置されている、
発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−20716(P2013−20716A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150805(P2011−150805)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】