光機能導波路材料および光増幅媒体、光増幅器、レーザ装置、光源
【課題】Erの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるホストガラスとしての適性とともに、光ファイバ作製等にて重要な熱安定性にとくにすぐれ、たとえば広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、光源に使用してとくに有効な、高機能で汎用性の高い光機能導波路材料を提供する。
【解決手段】光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、80≦TeO2 ≦97(モル%)、または、6<Ta2 O5 ≦12(モル%)、0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、80≦TeO2 ≦97(モル%)、0<Al2 O3 ≦4(モル%)の組成を有する。
【解決手段】光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、80≦TeO2 ≦97(モル%)、または、6<Ta2 O5 ≦12(モル%)、0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、80≦TeO2 ≦97(モル%)、0<Al2 O3 ≦4(モル%)の組成を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスである光機能導波路材料およびこの材料を用いた光増幅媒体、光増幅器、光源に関し、とくに、1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、光源に利用して有効である。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは伝送容量の拡大および機能向上のために、1本の光ファイバの中に複数の波長の光信号を合波して伝送したり、逆に1本の光ファイバを伝搬してきた複数の波長の光信号を波長ごとに分波したりする波長多重伝送技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)の研究開発が現在行われている。この伝送方式では、1本の光ファイバで複数の異なる波長の光信号を伝送し、伝送距離に応じて従来と同じように中継増幅する必要がある。そこで、光信号波長を増し伝送容量を上げるには、広い増幅波長帯を持つ光増幅器が必要になる。
【0003】
また、光通信システムを保守、監視するためのシステムの波長には1.61μmから1.66μmの間の波長が考えられており、保守、監視システムのための光源や光増幅器の開発が望まれている。
【0004】
近年、光通信分野への応用を目的として、コアに希土類元素を添加した光ファイバを光増幅媒体とした光ファイバ増幅器、例えばEr(エルビウム)添加光ファイバ増幅器(EDFA:Erbium Doped optical Fiber Amplifier )の研究開発が進められ、光通信システムへの応用が盛んに進められている。このEDFAは、シリカ系光ファイバの損失が最低となる1.5μm帯で動作し、30dB以上の高利得、低雑音、広い利得帯域、利得が偏波無依存、高い飽和出力などの優れた特徴を有することが知られている。
【0005】
上記EDFAをWDM伝送に応用するときに要求される性能の一つは、上記したように、増幅帯域が広いことである。これまで、増幅帯域の広いEDFAとして、フッ化物ガラスをEr添加光ファイバ増幅器のホストとして用いたフッ化物EDFAが開発されている。
【0006】
また、テルライトEDFAを用いると、従来の石英系EDFAやフッ化物系EDFA増幅帯域よりも2倍以上広い1.53μmから1.56μmまでの波長増幅帯域よりも2倍以上広い1.53μmから1.61μmまでの波長帯域での一括増幅が可能となる。したがって、将来の超大容量WDMシステム用EDFAとして注目されている。
【0007】
ところで、WDMシステム用EDFAとして要求される性能は、(1)増幅の広帯域性および(2)増幅の平坦性である。まず、増幅の広帯域性について述べる。
【0008】
このEr添加テルライト光ファイバを増幅媒体としたとき、増幅帯域が拡がるのは、テルライトガラス中では1.5μm帯の光増幅をひき起こすErの 4I13/3準位と 4I15/2準位の誘導放出断面が他のガラス中よりも大きくなり、特に、1.6μm帯の長波長域では他のガラス中より約2倍程の値を取るからである。従って、テルライトEDFAでは、他のEDFAに比べて長波長域で大きな利得が得やすくなっている。
【0009】
ところで、短波長域での増幅度は、基底準位の 4I15/2準位のErの占有率と4I13/3準位の占有率との差で決まる。すなわち、 4I15/2準位が全く占有されていなければ、利得は1.50μmのような短波長まで得ることができる。
【0010】
しかし、長波長域(例えば、1.60μm付近)で高い利得を得ようとして、ファイバ長を長くすると、 4I15/2準位のファイバ全体での占有率が上がり、短波長域での利得は得られなくなり、また、1.54μm付近の雑音指数(NF:Noise Figure)も上がってしまうことになる。従って、テルライト光ファイバであっても、1本の光ファイバでカバーできる増幅帯域は限られたものになってしまう。実際、1本のテルライト光ファイバを用いて得られる低NFで高利得な動作波長域は、1.55μmから1.61μmの60nm程度である。
【0011】
つぎに、WDMシステム用EDFAとして要求される第2の性質である増幅の平坦性について述べる。
【0012】
WDMシステム用EDFAとして要求される性能は、(1)増幅の広帯域性および(2)増幅の平坦性である。テルライトEDFAは増幅の広帯域性には優れているけれども、増幅の平坦性は劣る。例えば、利得ピーク波長1.56μmと1.60μmとでの利得偏差は15dB以上ある。したがって、利得の平坦化をはかるには、ファイバ・ブラッグ・グレーティング等の利得等化器をEDFAに適用する必要がある。しかし、利得偏差が大き過ぎる場合には平坦化するための利得等化器の設計が困難となったり、また複数の利得等化器を用いなければ利得等化ができなかったりするのが現状である。実際、テルライトEDFAの場合、利得偏差が15dB以上あるために、WDMシステムに適用される利得偏差が1dB以下のものが利得等化器を用いても実現されていない。
【0013】
EDFAの本来の増幅スペクトルの形状を変化させるには、誘導放出断面積スペクトルの形状を変える必要がある。
【0014】
テルライトEDFAの場合、その利得スペクトルを平坦化し、利得等化しやすくするには、1.6μm帯付近の誘導放出断面積が大きくなるようなファイバホストを用いると良い。これは、その場合、1.53μmから1.56μmまでの波長帯と1.6μm帯との利得偏差を低下させることができるためである。
【0015】
従来のテルライトEDFAのファイバホストとしては、TeO2 −ZnO−Na2 O−Bi2 O3 系ガラス(特許文献1)、TeO2 −ZnO−Li2 O−Bi2 O3 (特許文献2)などのガラスが用いられている。これらのガラス系では利得偏差は15dB以上になる。
【0016】
ここで、現在までの開発状況について簡単に説明する。
特許文献3〜6および特許文献7において、Cooleyらは希土類元素を添加したテルライトガラスでレーザ発振が可能なことを示している。しかし、Cooleyらはファイバ化までは行っておらず、ファイバ化に必要な光屈折率(比屈折率)の調整およびガラスの熱安定性には言及していない。
【0017】
一方、特許文献8において、Snitzerらは、テルライトガラスを用いればEDFAの増幅帯域が拡大し、さらに光増幅にはファイバ化が不可欠であるとして、光学活性元素である希土類元素を含み、かつファイバ化が可能なテルライトガラスの組成範囲を具体的に開示した。そのガラスはTeO2 ,R2 OおよびQO(RはLi以外の一価金属、Qは二価金属)よりなる3元系である。一価金属としてのLiは、熱安定性の低下などのために除外されている。
【0018】
特許文献6にてSnitzer らは、上記テルライトガラス中および石英系ガラス中でのエルビウムイオンの蛍光スペクトルを比較し、テルライトガラス中の方がスペクトル幅の広いことから、上記テルライトガラスを用いればEDFAの広帯域増幅が可能であり、さらに、プラセオジム、ネオジム等の添加が可能であることを示し、これら光学活性物質の添加により、上記3元系テルライトガラスを用いた光ファイバで光増幅が可能であるとしている。しかし、特許文献6には光増幅を実際に行ったことを示す利得、励起波長および信号波長などの具体的な記載は一切ない。すなわち、特許文献6は、単にファイバ化可能な3元系テルライトガラスの組成範囲を示し、光学活性な希土類元素を添加することが可能であることを示したにすぎない。
【0019】
さらにSnitzer らは、非特許文献1において、特許文献8に記載された以外の組成を含む種々のテルライトガラスの熱的および光学的特性を示している。しかし、ここでも光増幅およびレーザ発振についての具体的な記載はない。
【0020】
さらに、Snitzer らは、非特許文献1の直後に発行された非特許文献2において、初めてネオジム添加テルライトガラスの単一モードファイバを用いたレーザ発振に関して初めて報告している。
【0021】
上記単一モードファイバは、コアが76.9%TeO2 −6.0%Na2 O−15.5%ZnO−1.5%Bi2 O3 −0.1%Nd2 O3 、クラッドが75%TeO2 −5.0%Na2 O2−20.0%ZnOで示される組成からなり、818nm励起で1061nmのレーザ発振を行っている。非特許文献2中にファイバの損失は記載されていないが、非特許文献1中には、コア組成Nd2 O3−77%TeO2 −6.0%Na2 O−15.5%ZnO−1.5%Bi2 O3 、クラッド組成75%TeO2 −5.0%Na2 O2−20.0%ZnOのファイバ(非特許文献2に記載のものと同一と推定される)の損失が、1.55μmにおいて1500dB/km、励起光波長(0.98μm)において、3000dB/kmであることが記載されている(図7を参照。この図は後述するテルライトガラス中のEr3+の 4I13/2→ 4I15/2発光およびフッ化物ガラス中のEr3+の 4I13/2→ 4I15/2発光を比較したものである)。
【0022】
このファイバのコア組成は、Bi2 O3 が加わっている点で特許文献8の3元系と異なるが、上記3元系にBi2 O3 が加わった組成のガラスの熱安定性に関する記載は、非特許文献2にも、また非特許文献1、特許文献8にも一切ない。
【0023】
しかし、前述のフッ化物EDFAは増幅帯域が30nm程度であり、WDMの帯域拡大のためにファイバ増幅器の帯域拡大を行うのには、これだけではまだ不十分である。
【0024】
一方、これまで述べてきた通り、テルライトガラスは蛍光スペクトルの幅が広いことから、EDFAのホストとすれば増幅帯域を拡げられる可能性があることが示された。また、TeO2 ,R2 OおよびQO(RはLi以外の一価金属、Qは二価金属)よりなる3元系でファイバ化が可能であることも示され、前記組成を基本とするネオジム添加単一モードファイバで1061nmのレーザ発振が実現された。
【0025】
以下にテルライトEDFA実現のための課題を示す。
そのためにはまず、目的とするEDFAとこれまでに実現されたNd(ネオジム)添加ファイバレーザとの相違、すなわちガラス中のErの1.5μm帯発光とNdの1.06μm帯発光の相違を示す必要がある。
【0026】
前者の光学遷移は模式的に図17で示される。すなわち目的としている準位2から準位1への誘導放出を得るために、準位1から準位3(準位2よりエネルギーの高い準位)に励起して、準位3から準位2への緩和により準位1・2間の反転分布を形成している。これを3準位系という。一方、図18に示すように、誘導放出の終準位が基底準位ではなく、基底準位の上位準位である準位1のとき、これを4準位系という。3準位系は4準位系と比較して誘導放出の終準位が基底状態であるため反転分布を形成しにくい。したがって3準位系のEDFAでは励起光強度を強めるとともに、ファイバ自体も低損失化および高Δn(Δn:コア・クラッド間の比屈折率差)化が必要である。高Δn化は効率的な励起のためである。
【0027】
ここで、ファイバの損失が大きいと、たとえ光増幅は行えても増幅帯域が拡げられないことを簡単に示す。
【0028】
図19に、石英系EDFAとテルライトEDFAついてその利得の波長依存性の模式図を示す。テルライトEDFAは、この図のように、石英系EDFAよりも広帯域な光増幅が期待できる。しかし、石英系ガラス以外のガラスでは石英系ガラスと比較して通信波長帯での損失は大きい。そのため、光ファイバ増幅器ではこの損失が利得を実質的に低下させる。
【0029】
図20に模式的に示すように、損失が小さい場合はテルライトガラスの増幅帯域は前記のものに近いが、損失が大きくなると増幅帯域が小さくなる。
【0030】
ところで、最近のWDM伝送では、伝送容量の増大をはかるために1チャネル当りの伝送速度の高速化が進められている。そのためには、伝送路の一部を構成しているEr添加光ファイバ自体の波長分散特性の最適化をはかる必要があるが、これまで、このようなEr添加光ファイバ自体の波長分散に関して注意が払われていなかった。
【0031】
テルライトガラスの場合、材料分散値が零となる波長は、2μmよりも長波長帯に位置し、EDFAに使用する高NA(Numerical Aperture)ファイバの波長分散値は、1.55μm帯において、通常、−100ps/km/nm以下の値を取ることになる。このため、ファイバを10m程度の短尺で用いた場合でも、このファイバの波長分散値は−1ps/nm以下の大きな値となる。
【0032】
従って、テルライトEDFAを長距離、高速WDM伝送に使用するためには、その波長分散値をできるだけ零に近づける必要がある。ところが、上述したように、テルライトガラスの材料分散値は2μm以上の波長域で零となるため、テルライトガラスファイバでは、石英ファイバで行われているようなファイバの構造パラメータを最適化することによって1.55μm帯での波長分散値を零に近づけるという手法が取れないのが現実である。
【0033】
また、テルライト光ファイバは、1.3μm帯増幅用のPr(プラセオジム)のホストとしても使用できる。ところが、上述のように、テルライト光ファイバは、1.3μm帯において、絶対値で大きな波長分散値を持つ。そのため、テルライト光ファイバを使用して高速光信号を増幅する場合には、パルス波長のひずみが誘起されるので、波長分散値の補正をしないと、光通信システム中での使用が困難になる。
【特許文献1】平成9年特許願第30430号
【特許文献2】平成9年特許願第226890号
【特許文献3】米国特許第3,836,868号
【特許文献4】米国特許第3,836,869号
【特許文献5】米国特許第3,836,870号
【特許文献6】米国特許第3,836,871号
【特許文献7】米国特許第3,883,357号
【特許文献8】米国特許第5,251,062号
【非特許文献1】J. S. Wang et. al, Optical Materials, 3(1994), pp.187-203
【非特許文献2】J. S. Wang et. al, Optics Letters, 19(1994), pp.1448-1449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、本発明の課題は、光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、とくにErの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるファイバホスト(ホストガラス)としての適性にすぐれた光機能導波路材料を提供することにある。これとともに、この材料を光増幅媒体として用いることにより利得平坦化したEDFAを提供することにある。また、従来のEDFAの動作波長帯域を拡大して、より広帯域な領域の低雑音動作するEDFAを提供することにある。さらに、光学活性な希土類元素を添加して、従来のガラス材料では実現不可能だった機能、たとえば広帯域EDFAのような機能を発現できる光ファイバまたは光導波路を提供することを課題とする。また、上記光機能導波路材料を用い、とくに1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、さらに光源を提供することも課題とする。
上記以外の本発明の課題および特徴については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題の解決手段として、本発明では、以下のような光機能導波路材料、この光機能導波路材料を用いた光増幅媒体、光増幅器、レーザ装置、光源として、以下の手段を提供する。
【0036】
(1): 光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0037】
(2):(1)において、上記光機能導波路材料におけるTa2 O5 の添加量は、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)
の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光機能導波路材料。
【0038】
(3):光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦94(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0039】
(4):光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)、
4≦(BaO+SrO)≦12(モル%)、および
80≦TeO2 ≦88(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0040】
(5):(1)〜(4)のいずれかにおいて、少なくともコアにErを添加した光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、この材料ガラスにAl2 O3 を加えた組成を有することを特徴とする光機能導波路材料。
【0041】
(6):光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)、
0<Al2 O3 ≦4(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0042】
(7):コアガラスとクラッドガラスとを有する光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料からなることを特徴とする光増幅媒体。
【0043】
(8):(7)において、上記コアガラスの光機能導波路材料または上記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Erまたは、Erおよびイッテルビウム(Yb)が添加されていることを特徴とする光増幅媒体。
【0044】
(9):(7)または(8)において、上記コアガラスの光機能導波路材料または上記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、ホウ素、リン、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする光増幅媒体。
【0045】
(10):(7)〜(9)のいずれかにおいて、上記コアガラスの光機能導波路材料または上記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Gd,Eu,Dy,Ho,Tm、およびYbからなる群から選択される元素が添加されていることを特徴とする光増幅媒体。
【0046】
(11):(7)〜(10)のいずれかにおいて、少なくともコアにErを添加した材料ガラスからなる光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、上記材料ガラスの組成はAl2 O3 を加えた光機能導波路材料であること特徴とする光増幅媒体。
【0047】
(12):(7)〜(11)のいずれかにおいて、カットオフ波長が0.4μmから2.5μmであることを特徴とする光増幅媒体。
【0048】
(13):光共振器と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光共振器に備わる光増幅媒体の少なくとも一つは、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【0049】
(14):少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置したレーザ装置であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【0050】
(15):光増幅媒体と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光増幅媒体は、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【0051】
(16):光増幅媒体と、この光増幅媒体を励起する励起光および信号光をその増幅媒体に入力する入力手段とを備えた光増幅器であって、上記光増幅媒体は、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【0052】
(17):少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置した光増幅器であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、上記(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【0053】
(18):光機能導波路材料を増幅媒体とする光増幅器であって、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体の前後の少なくとも1ケ所に、その光増幅媒体とは異なる符号の波長分散値によって分散を補償する分散媒質が設けられていることを特徴とする光増幅器。
【0054】
(19):(18)において、上記光増幅媒体が、希土類元素および/または遷移金属元素を添加した光機能導波路材料からなる光導波路であることを特徴とする光増幅器。
【0055】
(20):(18)または(19)において、上記分散媒質が、光ファイバ、またはファイバ・ブラッグ・グレーティングであることを特徴とする光増幅器。
【0056】
(21):Erが添加された光ファイバを増幅媒体として含む光増幅部が複数個直列に配置されてなる光増幅器であって、
上記複数の光増幅部の第2段以降の少なくとも一つには、光ファイバ素材として(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料からなる光ファイバが用いられ、この光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の光増幅部には、Er添加濃度およびファイバ長積が上記光機能導波路材料光ファイバより小さいEr添加光ファイバが用いられていることを特徴とする光増幅器。
【0057】
(22):(21)において、増幅媒体の素材として、上記光機能導波路材料光ファイバとともに、フッ化物光ファイバ,石英系光ファイバ,フツリン酸光ファイバ,リン酸系光ファイバまたはカルコゲナイド光ファイバを用いることを特徴とする光増幅器。
【0058】
(23):(21)または(22)において、上記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の少なくとも一つの光増幅部に、その光機能導波路材料光ファイバ以外の光ファイバ素材が用いられていることを特徴とする光増幅器。
【0059】
(24):(21)〜(23)のいずれかにおいて、上記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段に配置された少なくとも一つの光ファイバのEr添加濃度および光ファイバ長積が、その光機能導波路材料光ファイバのものより小さいことを特徴とする光増幅器。
【0060】
(25):(21)〜(24)のいずれかにおいて、Erが添加された光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器であって、
Er添加濃度および光ファイバ長積の異なる光機能導波路材料光ファイバを少なくとも2つ以上直列に配置し、その配列の中では光ファイバ長積の小さな光ファイバが光ファイバ長積の大きな光ファイバの前段に配置されている配列構造を少なくとも一ケ所含むことを特徴とする光増幅器。
【0061】
(26):(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなる光機能導波路材料、または光導波路が(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体を用いたことを特徴とする光源。
【0062】
(27):(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなるガラス材料により形成される光導波路を光増幅媒体としたことを特徴とする光増幅器。
【0063】
(28):(27)において、上記光導波路または上記光ファイバの少なくとも一つは、その端に光カップラを配置し、この光カップラの少なくとも一つの端子に反射体を具備したことを特徴とする光増幅器。
【0064】
(29):(28)において、上記反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする光源。
【0065】
(30):(27)または(28)において、反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする請求項27または28に記載の光増幅器。
【発明の効果】
【0066】
上記手段により、光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、とくにErの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるファイバホストとしての適性にすぐれた光機能導波路材料を提供することができる。これとともに、この材料を光増幅媒体として用いることにより利得平坦化したEDFAを提供することができる。
また、従来のEDFAの動作波長帯域を拡大して、より広帯域な領域の低雑音動作するEDFAを提供することができる。さらに、光学活性な希土類元素を添加して、従来のガラス材料では実現不可能だった機能、たとえば広帯域EDFAのような機能を発現できる光ファイバまたは光導波路を提供することができる。
また、上記光機能導波路材料を用い、とくに1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、さらに光源を提供することもできる。
【0067】
上記以外の作用/効果については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
まず、本発明にもとづくTeO2 −Ba0−SrO−Ta2 O2 組成のガラス材料について説明する。このテルライト系ガラス材料は、本発明の実施形態では、その組成状態により次の3形態(第1〜第3の組成)にクラス分けすることができる。各組成(A〜C)はそれぞれに特有の効果および/または適用途を有する。
【0069】
すなわち、第1の形態(A)では、図1にその組成領域Aを示すように、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)
からなる組成を持つ。
【0070】
第2の形態(B)では、図2にその組成領域Bを示すように、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦94(モル%)
からなる組成を持つ。
【0071】
第3の形態(C)では、図3にその組成領域Cを示すように、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)、
4≦(BaO+SrO)≦12(モル%)、および
80≦TeO2 ≦88(モル%)
からなる組成を持つ。
【0072】
各組成(A〜C)おいて、(BaO+SrO)はBaとSrの合計割合(モル%)を示す。また、第1,2の組成において、Ta2 O5 および(BaO+SrO)はそれぞれゼロでない有意の添加量を組成分として含む。
【0073】
ファイバ化に対するガラスの熱安定性はDSC(differential scanning calorimetry :差走査熱量測定)の測定により評価できる。そのTx−Tgの値ΔT(Tx:結晶化温度、Tg:ガラス転移温度)が大きい値をもつガラスがより安定なガラスである。すなわち、単一モードファイバやフォトニッククリスタルファイバの作製時には、母材やガラス管の延伸工程と線引き工程の2回にわたってTg以上の温度にガラス母材を熱するため、TxがTgに近い温度であれば結晶核が次々に成長してファイバの散乱損失が増大する。逆に、Tx−Tgの値ΔTが大きければ低損失なファイバが作製できる。
とくに上記組成領域B,C内のガラスは、Tx−Tgの値ΔTが100℃以上の値を持ち、低損失なファイバ作製する用途に好適である。一方、上記組成(A〜C)からはずれた組成のガラスをコアおよびクラッド両方に使用しても、低損失なファイバの作製は困難になる。それらの組成(A〜C)のうち、とくにTa2 O5 の添加はガラスの安定性に対して大きな効果をもたらす。
【0074】
図4は、本発明の光機能導波路材料であるガラスのΔT(ΔT=Tx−Tg)を上記DSCで測定した結果を示す。測定はガラスの一部を粉砕し、一片30mgのバルクガラスを銀製金メッキのシール容器に充填し、アルゴンガス雰囲気中にて昇温速度10℃/分で行った。
【0075】
同図において、グラフ線(a)〜(c)は次の成分比(a)〜(c)にそれぞれ対応する。
(a):BaO:SrO:Ta2 O5 =1:1:2
(b):BaO:SrO:Ta2 O5 =1:1:4
(c):BaO:SrO:Ta2 O5 =1:1:1
同図からあきらかように、Tx−Tgの値ΔTは、Ta2 O5 =10モル%のときにΔTは237℃にもなる。
【0076】
また、Ta2 O5 の添加は屈折率制御の面からも重要な効果をもたらす。図5にTeO2 系ガラスの光屈折率n(波長632.8nmにおける比屈折率)のTa2 O5 添加量依存性を示す。同図において、グラフ線(a)〜(c)と成分比(a)〜(c)は上記と同じ対応である。同図に示すように、成分比およびTa2 O5 添加量を2モル%から12モル%まで変化させると、添加量に比例して屈折率nは2.115から2.17の間を取らせることができる。
【0077】
この特性を利用し、Ta2 O5 添加量を変化させることによって、コア・クラッド屈折率差(コア・クラッド間の比屈折率差)が0.2%程度の小さなものから2.5%程度の大きなものまで容易にファイバの設計を行うことができる。
【0078】
本発明にもとづく光増幅媒体は、光ファイバまたは光導波路を形成するコアガラスのテルライトガラスまたはクラッドガラスのテルライトガラスの少なくとも一つに、Er(エルビウム)またはErおよびYb(イッテルビウム)が添加されていることを特徴とする。
【0079】
本発明にもとづくレーザ装置は、光増幅媒体と励起光源とを有するレーザ装置であって、Erを添加したテルライトガラスを用いた光ファイバを光増幅媒体として用い、Erの 4I13/2準位から 4I15/2準位への誘導放出遷移を利用することを最も主要な特徴とする。
【0080】
図6はEr3+のエネルギー準位図である。この図では、上準位 4I13/2から基底準位 4I15/2への遷移により発光することが示されている。
【0081】
また、図7に示すように、Er3+の 4I13/2→ 4I15/2発光は、フッ化物ガラス中では他のガラス、例えば、石英ガラス中などよりも幅広い 4I13/2→ 4I15/2発光帯を有することが知られている。しかし、図7からわかるように、1.6μmより長波長側では発光強度は小さくなる。Erはフッ化物ガラス中にあっても、1.6μm以上の長波長での光増幅やレーザ発振は起こりにくくなる。
【0082】
しかし、Erはテルライトガラス中に添加されると、他のガラス中よりも強い電場を受け、その結果、 4I13/2や 4I15/2準位等の受けるスターク効果による準位中の拡がりが大きくなり、より長波長域でも誘導放出断面積を持つようになって、図7で見られるように1.65μm以上の長波長でも蛍光が存在する。
【0083】
従って、Erを少なくともコアに添加したテルライトファイバを光増幅媒体とすれば、Er添加石英ファイバやEr添加フッ化物ファイバでは実現できなかった1.5μmから1.7μmにかけての光増幅やレーザ装置が可能になる。
【0084】
テルライトガラスがホウ素、リンまたは水酸基のうち少なくとも一つを含むと、0.98μm光により 4I11/2準位を励起した場合も利得係数向上および雑音指数が改善される。すなわち、B−O,P−O,O−Hの振動エネルギーは、それぞれ約1400cm-1、1200cm-1、3700cm-1であり、これらを含まないテルライトガラスのフォノンエネルギーは600〜700cm-1であるので、倍以上大きくなる。このため、波長0.98μm付近の光でErの 4I11/2準位を直接励起して 4I13/2→ 4I15/2遷移による1.5μmの光増幅を起こすと、多音子放出よる緩和を受け易くなって、 4I13/2準位の励起効率が低下しにくくなる(図6)。また、 4I11/2準位から 4I13/2 準位への緩和が起きやすいと 、4I13/2準位を1.48μm付近の光で直接励起するよりも、 4I15/2準位を励起したのち 4I13/2準位を励起した方が、 4I13/2準位および 4I15/2準位間の反転分布が得やすく、したがって雑音特性も優れるという利点がある。
【0085】
以下、図面を参照しながら本発明にもとづく光増幅媒体とこの光増幅媒体を用いた広帯域光増幅器およびレーザ装置の実施例を詳細に説明する。
【0086】
[実施例1]
溶融後の組成が
(1)TeO2 (85モル%)−(BaO+SrO)(15モル%)、
(2)TeO2 (80モル%)−(BaO+SrO)(10モル%)−Ta2 O5 (10モル%)、
となるように、各組成(1)(2)の成分原料をそれぞれに調合し、各組成(1)(2)の調合原料をそれぞれ20gずつルツボに充填し、電気炉内で酸素雰囲気下、800℃で2時間溶融した。この後、200℃に予加熱したプレート上にてキャストし、得られたガラスを250℃で4時間アニールした。このガラスの一部を破砕し、一片30mgのバルクガラスと、メノウ乳鉢で粉々にしたパウダー30mgとの2種類のサンプルをそれぞれ銀製金メッキのシール容器に充填し、アルゴンガス雰囲気中、昇温速度10℃/分でDSC測定を行った。
Tx−Tgの値ΔTは、Ta2 O5 =0となる(1)のガラスでは20℃以下となり、Ta2 O5 =10モル%となる(2)のガラスでは237℃となった。とくに前記Cの範囲の組成では、熱安定性がΔT=200℃以上に向上していた。
【0087】
DSC測定値を基準にTx−Tg≧100℃となるガラスの使用で低損失なファイバの作製が可能であると述べたが、この範囲のガラスでは、3準位系の光学遷移を用いて高効率な光増幅を行うのに必要な損失0.1dB/m以下を実現することができる。
【0088】
[実施例2]
コアガラスおよびクラッドガラスとして前記B(図2)またはC(図3)に示した組成領域のものを用いる。これらの組成物を、白金ルツボ、または金ルツボを用いて酸素雰囲気で溶融し、吸引成形(サクション・キャスティング)法によりプリフォームを作製した。また、同じく前記A(図1)のガラス組成を用いてジャケット管を回転成形(ローテーショナル・キャスティング)法で作製した。これらプリフォーム、ジャケット管を用いてファイバ線引きした結果、最低損失が0.1dB/m以下、カットオフ波長が0.5μmから2.5μm、コア・クラッド屈折率差が0.2%から2.5%のテルライトファイバを作製することができた。
【0089】
また、コアまたはクラッドガラスにEr,Pr,Yb,Nd,Ce,Sm,Tm,Eu,Tb,HoまたはDy等の希土類を10重量%以下添加することができた(プリフォーム、ジャケット管の作製法については、非特許文献6を参照)。
【0090】
[実施例3]
実施例2と同様に、前記B,C領域のガラス組成を持つテルライトファイバを作成した。その結果、最低損失が0.1dB/m以下、カットオフ波長が0.5μmから2.5μm、コア・クラッド屈折率差が0.2%から2.5%のテルライトファイバを作製することができた。
また、コアガラスまたはクラッドガラスにEr,Pr,Yb,Nd,Ce,Sm,Tm,Eu,Tb,HoまたはDy等の希土類を10重量%以下添加することができた。
【0091】
[実施例4]
TeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)組成のガラスにErを1000ppm添加したものをコア材とし、TeO2 (82モル%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)組成のガラスをクラッド材とすることにより、カットオフ波長1.3μm、コア・クラッド屈折率差1.7%の光ファイバを形成し、これを光増幅媒体とした。この光増幅媒体を用いて1.5μmから1.7μmの波長帯の光増幅器を作製し、増幅実験を行った。励起波長として0.98μmを選び、1.5μmから1.7μm帯の信号光源としてDFB(Distributed FeedBack)レーザを用いた。
【0092】
図8は、本実施例の光増幅器の概略的構成を示す図である。信号光源101および励起光源102は光カップラ103を介して増幅用光ファイバ104の一端に接続され、増幅用光ファイバ104の他端には光アイソレータ105が接続されている。なお、各部品の接続は光ファイバ106(符号106a〜106d)で行われている。
【0093】
このような構成からなる光増幅器を用いた増幅実験により、1.5μmから1.7μmの間の波長で増幅利得を得ることができた。
【0094】
また、同じ光増幅媒体を用いて、図9で示すチューナブルな狭帯域バンドパスフィルタを挿入したリングレーザを構成した。かかるリングレーザは、図8の信号光源101の代りに、光アイソレータ105の出力側を光カップラ103に接続してリング状の光共振器を形成し、このリング状光共振器の途中に狭帯域バンドパスフィルタ107を挿入したものである。そして、狭帯域バンドパスフィルタ7の透過域を1.5μmから1.7μmの間で変動させ、励起光源102から光を入射してレーザ発振実験を行った。その結果、出力端108から上記波長帯でのレーザ発振を確認することができた。 なお、各部品の接続は光ファイバ106(符号106a〜106e)で行われている。
【0095】
以上の実施例では励起波長として0.98μmを使い、 4I11/2準位を励起したが、1.48μm帯の波長を用いて 4I13/2準位を直接励起しても良いことは言うまでもない。また、0.98μmより短波長の光で 4I11/2準位よりエネルギーの高い準位を励起しても良い。
【0096】
[実施例5]
図8に示す光増幅器を用い、1.5μm帯の光増幅実験を行った。励起波長は0.98μmであった。その結果、1.53μm以上の波長域で雑音指数が7dB以下で増幅することができた。
【0097】
[実施例6]
Erの代りにErおよびYbを共添加したガラスをコアとした以外は実施例3と同様な光ファイバを作製し、光増幅媒体とした。
この光増幅媒体を用い、実施例4および実施例5の構成で、光増幅実験およびレーザ発振実験を行った。励起波長として1.029μm(Yb添加YAGレーザ)、1.047μm(Nd添加YLFレーザ)、1.053μm(Nd添加YAGレーザ)、1.064(Nd添加YAGレーザ)等を使った。このようにYbをErと共添加した場合、YbからErへのエネルギー移動を利用することにより、上述したような波長で励起しても1.5μmから1.7μmの間でのレーザ発振および1.5μm帯の広帯域光増幅を確認することができた。
【0098】
以上の実施例1〜6では光ファイバの組成に着目した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、Cs2 O,Rb2 O,K2 O,Li2O,CaO,MgO,BeO,La2 O3 ,Y2 O3 ,Sc2O3 ,ThO2 ,HfO2 ,ZrO2 ,TiO2 ,Wo3 ,Tl2 O,CdO,PbO,In2 O3 ,Ga2 O3 などのいずれか一つ以上をTeO2 とともに含むガラスであってもよい(参照:ガラスハンドブック(第8編)、作花済夫他編集、朝倉書店、昭和50年発行)。また、ErまたはErおよびYbは、コアのみでなく、クラッドにも添加してもよい。
【0099】
さらに、光増幅器は、本発明の光増幅媒体と、この光増幅媒体を励起する励起光源と、信号光の入力および出力手段を有するものであれば、上述した構成に限定されるものではない。
【0100】
また、レーザ装置は、光ファイバで構成された光共振器の途中に本発明の光増幅媒体を挿入し、さらに、この光増幅媒体を励起する励起光源を有するものであれば、とくに限定されるものではない。
【0101】
[実施例7]
増幅用ファイバとしてEr1000ppmをコアに添加したファイバ4mを用いて1.5μm帯の増幅特性を測定した。コアガラス組成はTeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)とし、これにP2 O5 を5重量%添加した。クラッドガラス組成はTeO2 (82モル%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)とした。
コア・クラッド屈折率差は2.5%であり、カットオフ波長を0.96μmとした。
【0102】
0.98μmの光(光源は半導体レーザ)を励起光として1.5μm帯の小信号利得を測定したところ、リンを添加しないものに比較して利得効率は5倍増加し、2dB/mWに達した。また、入力信号レベルを−10dBmとして飽和領域での利得スペクトルを測定したところ、1530nmから1620nmまで90nm幅で利得がフラットになった(励起強度は200mWであった)。雑音指数はリンを添加しない場合は7dBであったが、リンを添加することにより4dBに低下した。このように、コアガラスとしてリンを添加することにより、利得係数および雑音指数が大幅に改善した。
また、P2 O5 の代りにB2 O3 を添加しても利得係数および雑音指数の改善が確認できた。
【0103】
[実施例8]
TeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)組成のガラスをコアガラスとしてこれにOH基を5000ppm、Erを1000ppm添加したところ、利得係数はOH基を添加しないときと比較して3倍増加することが確認できた。
リンを添加した場合より利得係数の増加の程度が低いのは、OH基の信号エネルギーが3700cm-1という大きな値を持つため、増幅の始準位である 4I13/2準位もわずかに多音子放出により緩和されるためである。
【0104】
図10は本発明にもとづくレーザ装置の一例を示。図中、参照符号111,111′は励起用半導体レーザ(波長:1480nm)、112,112′は信号光と励起光とを結合させる光カップラ、113,115は増幅用光ファイバ、114は光アイソレータをそれぞれ示す。信号光はAのポートより入射した後、Bのポートより出射する構成となっている。
【0105】
参照符号113の増幅用ファイバとしてErを1000ppm添加したZrF4 系のフッ化物ファイバ( 特許文献6)を用い、増幅用ファイバ115としてErを1000ppm添加したTeO2 −BaO−SrO −Ta2 O5 系のテルライトファイバを用いた。
【0106】
各ファイバのコア・クラッド屈折率差は共に2.5%であり、カットオフ波長は1.35μm、ファイバ長はそれぞれ10mおよび7mであった。参照符号111,111′の励起用半導体レーザの出力光強度を150mWとして1.5μm帯の利得スペクトルを測定した。得られた利得スペクトルを図11に示す。
【0107】
図11に示した利得スペクトルによれば、信号波長1530nmから1610nmまでの80nm幅で、信号利得を値の変化を示す曲線はフラットな状態となる。すなわち、そのような波長帯での信号利得は30dB近傍の値に維持されていることがわかる。したがって、このような波長帯ではゲインチルトも小さく抑えられることになる。Er添加フッ化物ファイバを用いた場合の利得がフラットになる波長幅は1530nmから1560nmの30nmであるので、利得がフラットになる波長幅は2倍以上に広がった。また、Er添加石英ファイバの場合は、フラットな波長幅はたかだか10nmであるので、これと比較すれば8倍にも広がったことになる。
【0108】
本実施例では、Er添加ZrF4 系フッ化物ファイバを前段に用い、Er添加テルライトファイバを後段に使用したが、この逆でも良い。また、フッ化物ファイバはInF3 系のフッ化物ファイバでも良い。さらに、Er添加酸化物多成分ガラスファイバを増幅用ファイバに加えても良い。要するに、増幅用光ファイバの一つとしてEr添加テルライトファイバを用いることが重要である。
【0109】
また、テルライトファイバの組成としては本実施例で使用されたものに限定されるものではない。
【0110】
また、増幅用光ファイバの励起法としては、前方励起、後方励起、双方向励起のいずれかを取っても良いことは言うまでもない。
【0111】
[実施例9]
図12は本発明にもとづくレーザ装置の他の実施例の概略的構成を示す。この実施例では、実施例1を用いた増幅用ファイバ113,115を波長可変バンドパスフィルタ117(バンド幅3nm)を介して直列に接続し、1480nmでの透過率が99%、1500nmから1630nmでの反射率が100%のミラー116を設けた。また、他端に1500nmから1630nmでの透過率が20%のミラー118を設けてレーザ発振を行った。その結果、信号波長1500nmから1630nmの広い範囲でレーザ発振を確認することができ、1.5μmで使用できる広帯域チューナブルレーザとして使用できることがわかった。
【0112】
以上説明したように、本発明の光増幅媒体を用いれば、これまで光ファイバ増幅器では不可能であった、1.5μmから1.7μmにかけての光増幅器やレーザ装置の構成が可能になり、1.55μm帯の光通信システムに用いられる保守・監視システムの高性能化が達成でき、光通信システムの安定な運用が可能になる。
【0113】
また、増幅波長域が広い特性を利用すれば、フェムト秒といったようなきわめて短い光パルスも効率良く増幅することができるようになり、波長多重光伝送システム中に用いる光増幅器としても有効である。
【0114】
[実施例10]
本実施例では、実施例4で用いた光ファイバ(テルライトファイバ)を使い、スーパールミネッセントレーザの動作を実施した。励起光源として1.48μmのレーザダイオードを用い、その光ファイバの一端に入射した。ファイバの他端はファイバ端面でのフレネル反射を抑えるため、角度10°で斜カットした。この他端からの出射スペクトルを測定したところ、1.46μmから1.64μmの幅広い発光スペクトルが観測され、ブロードバンドのスーパールミネッセントレーザ装置として使用できることがわかった。
【0115】
[実施例11]
図8に示す光増幅器の構成において、光アイソレータの後に、利得を等化するためのフィルタ(チャープド・ファイバ・ブラッグ・グレーティング、プログラマブルフィルタ、ファブリー・ペロー・エタロン型フィルタ、マッハツェンダー型フィルタ等)を挿入して光増幅特性を測定した。−30dBmの信号強度の光を入射させ、1.48μmで(200mW)励起したとき、フィルタを挿入しないと1530〜1580nmにかけて利得の山が観測されたが、フィルタを挿入して損失を調整することにより、その利得の山を打ち消すことができた。そして、1530nmから1610nmの波長域にかけてのWDM信号に対し、利得偏差0.2dB以下で動作できることが確認できた。
【0116】
[実施例12]
前記A(図1)の領域の組成を持つガラスをコアおよびクラッドとし、コアにCe,Pr,Gd,Nd,Eu,Sm,Tb,Tm,Dy,Ho,YbまたはErを添加することにより、導波路レーザおよび導波路型光増幅器として動作させた。その結果、0.3μm、1.3μm、0.31μm、1.07μm、0.61μm、0.59μm、0.54μm、1.48μm、3.0μm、1.49μm、1μm、1.55μm帯でそれぞれ動作する広帯域レーザ発振および広帯域光増幅が確認できた。
【0117】
[実施例13]
TeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)組成のガラスにErを2000ppm添加してコア材とし、TeO2 (82%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)組成のガラスをクラッド材とすることにより、カットオフ波長1.1μm、コア・クラッド屈折率差1.7%の光ファイバを形成し、これを増幅媒体とした。1.3μmにおけるファイバ損失は40dB/kmであった。この光ファイバを4m(ファイバ長)用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。励起波長は前方が0.98μm、後方が1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、1500〜1630nmの110nm帯域で、5dB以上の小信号利得が得られた。このとき、1530nm以上の波長での雑音指数は5dB以下であった。
【0118】
[実施例14]
実施例13と同様の光ファイバを15m用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。励起波長は前方後方とも1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、特に1580〜1630nmの50nm帯域で、35dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は5dBであった。
【0119】
[実施例15]
実施例13と同様の光ファイバを15m用いてレーザを構成した。キャビティは、全反射ミラーと1625nmで3%の反射率をもつファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いて構成した。励起波長は前方後方共に1.48μmの双方向励起を採用した。入射励起強度が300mWのとき、これまで石英ファイバやフッ化物ファイバで得ることのできなかった1625nmにおいて150mWの高出力が得られた。
【0120】
[実施例16]
TeO2 (97モル%)−(BaO+SrO)(1モル%)−Ta2 O5 (2モル%)ガラスにErを3wt%添加してコア材とし、TeO2(82モル%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)ガラスをクラッド材とし、カットオフ波長1.4μm、コア・クラッド屈折率差2.5%のファイバを形成し、これを増幅媒体とした。この光ファイバを3cm用いて小型の光増幅器を構成し、増幅実験を行った。
【0121】
励起波長は1.48μmの前方励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、1530〜1610nmの80nm帯域で、20dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は7dB以下であった。
【0122】
[実施例17]
TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の4元系ガラスをその他の組成を変えて作製するとともに、各組成ごとにDSCにより熱特性を測定した。その結果、前記Bの組成領域(図2)では、Tx−Tgが150℃以上の安定なガラスが得られた。また、前記Cでの組成領域(図3)では、Tx−Tgが170℃以上のさらに安定なガラスが得られた。このような熱的に安定なガラスを用いて光ファイバを作製すれば、ファイバ損失が低いだけでなく、歩留り率の高いファイバを大量に生産することができ、低価格化を実現することができる。
【0123】
そこで、前記Bの領域から選んだTeO2−(BaO+SrO)−Ta2 O5 組成のガラスを用い、コアにErを2000ppmを添加することにより、カットオフ波長1.1μm、コア・クラッド屈折率差1.5%の光ファイバを形成し、これを増幅媒体とした。1.2μmにおけるファイバ損失は20dB/kmであった。このファイバを3m用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。
【0124】
励起波長は前方が0.98μm、後方が1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、1530〜1610nmの80nm帯域で、20dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は5dB以下であった。
【0125】
[実施例18]
実施例17の光ファイバを15m用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。励起波長は前方後方とも1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、特に1580〜1630nmの50nm帯域で、20dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は5dB以下であった。
【0126】
[実施例19]
実施例17の光ファイバを15m用いてレーザを構成した。キャビティは、全反射ミラーと1625nmで3%の反射率をもつファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いて構成した。励起波長は前方後方とも1.48μmの双方向励起を採用した。入射励起強度が300mWのとき、これまで石英ファイバやフッ化物ファイバで得ることのできなった1625nmにおいて150mWの高出力が得られた。
【0127】
以上の実施例1〜19で用いられているテルライトガラスはTa2 O5 を含むことを特徴としているが、このようなテルライトガラスは熱安定性が高く、ファイバ化した際の損失を低く抑えることができ、さらに屈折率制御が容易であって高Δnのファイバを作製できることにより、効率の低い3準位系を利用するEDFAの増幅帯域拡大を可能とした。
【0128】
従来知られているファイバ化可能なテルライトガラスとしては、従来の技術で述べたSintzer 等のテルライトガラス(特許文献8)や特許文献9に記載のものがあるが、これらの文献にはTa2 O5 の屈折率やガラス安定性に対する効用の記載はない。本発明の光機能導波路材料は前述したように、Ta2 O5 を含んだテルライトガラスにおいて、Ta2 O5−BaO−SrO−TeO2 組成の特定領域にて特異的に得られる光機能に着目したものであって、特許文献8,9には開示のものとはあきらかに異なる。
Ta2 O5−BaO−SrO−TeO2 という組成だけに着目するならば、非特許文献3に記載の強誘電体ガラスセラミックがその組成を有する。しかし、その強誘電体ガラスセラミックはその組成領域および機能等において、本発明の光機能導波路材料とはまったく異なる。
【0129】
これまで述べてきたように、特許文献8に記載の3元系テルライトガラスは本発明の4元系(Ta2 O5−(BaO+SrO)−TeO2)テルライトガラスと比較して熱安定性が低く、そのため1.55μmにおける損失を1500dB/kmにまでしか低減することができない。これに対して、本発明では損失の低減を目的に種々の組成を検討した結果、Ta2 O5 を含む上記4元系(Ta2 O5−(BaO+SrO)−TeO2)が損失の低減に特異的に有効であることを見出した。さらにこの4元系ガラスは屈折率制御が容易なため、高屈折率差Δnの光ファイバが作製可能であり、これに低損失という特性を併せてはじめて高効率テルライトEDFAの実現に至った。
特許文献8の3元系テルライトガラスでは、効率の悪い3準位系を利用してEDFAを実現させるのは難しい。このことに関して、その特許文献8の明細書中のみならず、その後に提出された前記非特許文献1および2にも、EDFA実現に関する具体的記載は一切ない。
【0130】
さらに詳細に述べれば、特許文献8において、Snitzer らは、レーザはバルクガラスでも実現できるのに対して光増幅にはコアおよびクラッドを有するファイバ構造が必要であることを述べ、ファイバ化が可能であるテルライトガラスとして3元系テルライトガラスの組成範囲を示した。したがって光増幅の実現を目的としているものの、従来の文献(特許文献1と非特許文献1,2)においては、非特許文献2にてネオジムを用いたファイバレーザの記載があるのみである。光増幅の分野において、ネオジムは当初1.3μm帯の増幅への適用が有望視されていたが、非特許文献1中にも記載されているように、励起状態吸収のため1.3μm帯の増幅への適用は困難であるということが判明している。
【0131】
Ta2 O5 を含有するテルライトガラスは非特許文献1や特許文献9にも記載があるが、熱安定性と損失に関して記載されていない。これらの文献に記載されているものは、本発明の上記4元系とは全く異なる組成あるいは組成領域である。
【0132】
また、非特許文献1および2は、コア組成77%TeO2 −6.0%Na2 O−15.5%ZnO−1.5%Ta2 O5 の4元系テルライトガラスが記載され、特に非特許文献1中にはその損失まで記載されているが、損失は1.55μm帯において1500dB/kmという高値であり、ましてやTa2 O5 添加による熱安定性向上に関する記載や、熱安定性向上を想起させる記載は一切ない。非特許文献3には、前述したように、Ta2 O5−BaO−SrO−TeO2 のガラスセラミックに関する報告があるが、これにもガラス熱安定領域に関する記載はなく、そもそも同文献は光ファイバに関するものではない。
【0133】
上記実施例などで詳しく記載したとおり、本発明ではテルライトガラスの損失低減をめざしてそのテルライトガラスの組成を種々検討した結果、Ta2 O5 を含んだ上記4元系テルライトガラスが有効であることを解明した。これも実施例に記載済であるが、特にTa2 O5 の添加により熱安定性は飛躍的に向上し、テルライトガラスファイバの低損失化に成功した。さらに副次的効果として、コアとクラッドのTa2 O5 添加量の調整によりファイバの屈折率差Δnを自由に制御できることから高Δnファイバを作製でき、これらの相乗効果により低効率な3準位系を利用するEDFAにおいてその増幅帯域拡大に成功した。
【0134】
つぎに、テルライトEDFAの利得スペクトルがより平坦になるようなガラス組成について検討する。以下の実施例ではテルライトガラスまたはファイバにAlをホストとして添加することを主要な特徴とする。SiO2 系ガラスにAlを添加した場合、SiO2 系ガラスに添加されたErの誘導放出断面積の1.53μmと1.56μmとの間のへこみが無くなり、1.54μmから1.56μmにかけて平坦な利得が得られることが知られている(非特許文献4)。
【0135】
しかしながら、これは石英系ファイバに対するAlの添加効果であり、テルライト系ファイバに対してはその効果が不明であった。ここで、本発明者らは、以下の実施例にて示されるように、テルライトガラスへのAl添加により、1.53μmと1.56μmの誘導放出断面積のへこみを無くすとともに1.6μm帯の誘導放出断面積を変化させる(増大させる)ことができ、結果として、1.55μm帯と1.6μm帯との利得偏差を減少させることができることを見出した。
【0136】
[実施例20]
図13は、TeO2(88モル%) −(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5(8モル%) ガラス、およびTeO2(84モル%) −(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5(8モル%)− Al2 O3 (4モル%)ガラス中のErの1.5μm発光スペクトルをそれぞれ示す。同図からあきらかように、Al2 O3 を含有したガラスの発光スペクトルの1.6μm付近での強度は、Al2 O3を含有しないものに比べ強く、また、1.53μmと1.56μmとの間の谷の深さも浅くなっている。
【0137】
このAl2 O3 含有ガラス(TeO2 −(BaO+SrO)−Ta2 O5 系ガラス)をコア組成として、Er添加テルライトファイバ(カットオフ波長:1.3μm、Er濃度:4000ppm、長さ:0.9m)を作製し、1.48μmで励起(200mW)したところ、1.56μmと1.69μmとの利得偏差を10dB以下に低減できた。
【0138】
このファイバを増幅媒体として用いるとともに、利得等化器としてファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いたEDFAを構成したところ、1.53μmから1.60μmにわたって利得偏差が1dB以下のEDFAを実現することができた。Al2 O3 を含有しないファイバを用いた場合では、1.53μmと1.60μmの利得偏差が15dB以上あり、利得等化器を用いて利得補正を行っても、利得偏差を帯域70nmにわたって1dB以下にすることは困難であった。それがこの実施例のAl2 O3 含有ガラスをファイバホストに用いて、はじめて可能になった。
【0139】
このAl2 O3 含有ガラスをコア組成として、Er添加テルライトファイバ(カットオフ波長:1.3μm、Er濃度:4000ppm、長さ:0.9m)を作製し、1.48μmで励起(200mW)したところ、1.56μmと1.60μmとの利得偏差を10dB以下に低減できた。
【0140】
このファイバを増幅媒体として、マッハツェンダー型のフィルタ(損失媒体)を利得等化器としてEDFAを構成したところ、1.53μmから1.60μmにわたり利得偏差が1dB以下のEDFAを実現することができた。Al2 O3を含有しないファイバを用いた場合では、1.56μmと1.60μmの利得偏差が15dB以上あり、利得等化器を用いて利得補正を行っても、利得偏差を帯域70nmにわたって1dB以下にすることは困難であった。
【0141】
また、Er添加濃度1000ppmのファイバで2m長のファイバを用いて増幅スペクトルを測定したところ、Al2 O3 を含有していないファイバで見られた1.53μmと1.56μmとの間の利得の変動がなくなり、1.53μmから1.56μmにかけて利得の均一性が良いものが得られ、同波長域でのWDM伝送の応用に有利なことがわかった。
【0142】
このAl2 O3 の添加による利得特性の改善効果は、TeO2 −(BaO+SrO)−Ta2 O5 の特定組成領域(80≦TeO2 ≦97、0<(BaO+SrO)≦20、0<Ta2 O5 ≦12、単位モル%)にて特異的に現れる。そして、この特異領域では安定してファイバを形成できることが確認できた。
【0143】
以上の実施例ではAl2 O3 の濃度を4モル%としたが、これに限定されるわけではなく、0モル%よりも大きな濃度であれば、Al2 O3 の添加効果は確認できた。
【0144】
以下の実施例21〜26では、前述したようなテルライト光ファイバの特性を鑑み、これまでのテルライトEDFAの波長分散特性を改善した低波長分散特性を有するテルライトEDFAを説明する。
【0145】
以下の実施例では、テルライトガラスを増幅媒体として用いた光増幅器において、増幅媒体であるテルライトEDFAの前方または後方に、テルライトEDFAの持つ波長分散値とは異符号の波長分散値によって分散を補償する分散媒体を挿入した構造を取ることを最も主要な特徴とする。波長分散を制御する媒体としては、光ファイバやファイバ・ブラッグ・グレーティング等がある。
【0146】
従来のテルライトEDFAでは、テルライトEDFAの波長分散を補償する媒体を具備していないため、光増幅器内の波長分散が大きくなり、その結果、高速光信号の増幅を行うとエラーレートが上がって通信品質が劣化してしまう、という問題が生じる。これに対して、以下の実施例の構造を取ることにより、増幅器内の波長分散値を下げることができ、高速光信号の増幅を行っても、エラーレートが上がることなく、高い通信品質を保つことができる。
【0147】
[実施例21]
図14は、本発明に係る光増幅器の一構成例を示す。同図に示す光増幅器では、光信号が左側から入射して右側へ出射する構成になっている。入射信号光は、光アイソレータ201aを通過した後、光カップラ203により励起光源202からの励起光と合波される。励起光と合波された信号光は、分散媒質204を透過し、増幅用光ファイバ205に入射されて増幅される。光ファイバ205にて増幅された信号光は、光アイソレータ201bを通過して出力される。
【0148】
本実施例の光増幅器では、信号波長を1.55μmとし、励起光源202として発振波長が1.48μmの半導体レーザを用いた。増幅用光ファイバ205としては、Erのコア中への添加濃度が200ppm、カットオフ波長が1.3μm、コア・クラッド屈折率差(Δn)が1.4%であり、ファイバ長を10mとしたテルライト光ファイバを使用した。この光ファイバ205の1.55μmでの波長分散値は、−1.3ps/nmであった。また、分散媒質204としては、1.55μmでの波長分散値が17ps/km/nmの1.3μm零分散石英単一モード光ファイバ(いわゆるスタンダード単一モード光ファイバ)を使用した。この単一モード光ファイバの長さは、76mであった。
【0149】
この構成において、分散媒質204および増幅用光ファイバ205全体の波長分散を測定したところ、0.1ps/nm以下の値であった。
【0150】
このような光増幅器を用いて、波長1.55μmで40Gbit/sの高速光信号を増幅したところ、波長分散に起因するパルス波長のひずみは観測されなかった。従って、この構成の光増幅器を、ブースタアンプ、中継増幅器、またはプリアンプなどとして、高速光通信システムの中で用いても、通信の品質を著しく劣化させることなく使用できることがわかった。これに対して、比較のために、分散媒質204を挿入しないで、波長1.55μmで40Gbit/sの高速パルスの増幅を行わせたところ、パルス波形のひずみが観測され、高速光通信システムに応用することは困難なことがわかった。
【0151】
本実施例では、分散媒質204を光カップラ203と増幅用のEr添加テルライト光ファイバ205の間に設置したが、設置場所がここに限定されることはない。例えば、光アイソレータ201aの前段、光アイソレータ201aと光カップラ203との間、増幅用光ファイバ205と光アイソレータ201bとの間、または光アイソレータ201bの後段であっても良い。
【0152】
また、本実施例では、分散媒質204として、スタンダード単一モード光ファイバを用いたが、これに限定されることはなく、テルライト光ファイバ205の波長分散と異符号(あるいは逆符号)の波長分散値を持つ光ファイバであれば、使用することができる。
【0153】
また、分散媒質204として、光ファイバに限らず、チャープト・ファイバ・グレーティング(非特許文献5)などを用いても良い。
【0154】
なお、以上の説明では、分散媒質204を増幅用光ファイバ205の前後のいずれか一箇所に挿入するとしたが、分散媒質204の設置構成はこれに限定されるものではない。つまり、分散媒質204として光ファイバを用いる場合、光ファイバを分断して増幅用光ファイバ205の前後の適当な位置に設置しても良い。また、複数の異なる特性を持つ光ファイバを適当な位置に設置しても良い。さらに、光ファイバとチャープト・ファイバ・グレーティングをそれぞれ複数個併用しても良い。
【0155】
[実施例22]
本実施例では、図14における増幅用光ファイバ205として、コア中にPr(プラセオジム)が500ppm添加され、カットオフ波長が1.0μm、Δnが1.4%であって、ファイバ長を15mとしたテルライト光ファイバを用いた。また、励起光源2として、Nd(ネオジム)添加YLFレーザを用いた。さらに、分散媒質4として、チャープト・ファイバ・グレーティングを用いた。
このとき、テルライト光ファイバの1.31μmでの波長分散は、−3.15ps/nmあった。そこで、チャープト・ファイバ・グレーティングの波長分散値を3.15ps/nmに設定した。このような構成の増幅器で波長1.31μmの高速光信号の増幅を行った。
【0156】
[実施例23]
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、上記TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 ガラスを母材とし、コアにEr,Pr,TmまたはNdを添加して構成した光ファイバを用いた。分散媒質204として、石英光ファイバまたはチャープト・ファイバ・グレーティングを用いた。このような構成にて、各増幅波長での波長分散を補償しなから高速光パルスの増幅を行わせたところ、分散媒質204のないときに起こっていた光パルス波形のひずみは抑えられ、高速光通信システム中で使用可能なことが確認できた。
また、増幅用光ファイバ5として、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 −Al2 O3 系ガラスから構成した光ファイバを用いた場合でも、上記の効果を確認することができた。
【0157】
[実施例24]
本実施例は、上記実施例23におけるガラス系を母材とし、希土類元素も遷移金属元素も添加せずに構成したテルライト単一モード光ファイバ(カットオフ波長1.3μm、Δn1.4%、長さ1km)を用いて、ラマン増幅を行った。励起波長は1.48μmであり、1.5μm帯の光増幅を行った。
このとき、テルライト単一モード光ファイバの信号波長での波長分散は、−130ps/nmであった。分散媒質204として、スタンダード石英単一モード光ファイバを用いた。
【0158】
この分散媒質204をテルライト単一モード光ファイバ(増幅用光ファイバ)205の後段に配置して、光増幅を行った。この増幅用のスタンダード石英単一モード光ファイバ205を7.6kmの長さ使用したとき、(テルライト単一モード光ファイバの波長分散による)1.5μm帯の光パルスの波形ひずみを抑制することができた。
【0159】
また、従来のたとえば、特許文献9に記載のテルライト系ガラスを用いた場合よりも、広いラマン増幅帯域を得られることがわかった。これは、図15に示すように、Ta2 O5 を含むことにより、従来のものよりもラマン散乱スペクトルが広くなったためである。
【0160】
[実施例25]
本実施例では、Cr,Ni,またはTiを、前記実施例23で用いた組成のテルライト光ファイバのコアに添加して構成した増幅用光ファイバ205を用いて、1.5μm帯,1.5μm帯,1μm帯の光増幅をそれぞれ行った。分散媒質204としてスタンダード石英単一モード光ファイバを前記増幅用光ファイバ205の後段に接続し、高速光パルスの増幅を行ったところ、光パルスの波形ひずみ無しに光増幅をすることができた。
【0161】
以上の実施例では、本発明における光導波路が光ファイバである場合について説明したが、本発明における光導波路は、光ファイバばかりでなく平面型光導波路をも含むものである。本発明において、光導波路が平面型光導波路の場合でも、前記各実施例にて確認したと同様の本発明の効果が、実現される。
【0162】
以下、光導波路が平面型光導波路である場合の実施例を示す。
【0163】
[実施例26]
本実施例では、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 系ガラスを母材とし、コアにErの添加された平面型光導波路を図14の光ファイバ205の代わりに用いて、増幅媒体とした。分散媒質204として、光ファイバやファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いてその光導波路の分散を補正した。その結果、分散媒質204を用いない場合に比べ、パルス波形のひずみを小さくなるように1.5μm帯の光増幅をすることができた。
上記光導波路に添加したドーパントとしてPr,Tm,Nd,Ni,Ti,Crを用いた場合でも、パルス波形のひずみを小さく光増幅をすることができた。
【0164】
以上説明したように、テルライト光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器において、上記実施例21〜26の光増幅器構造を取ることにより、増幅媒体であるテルライトファイバ自体の持つ波長分散による光パルス波形のひずみの発生を抑えることができる。
【0165】
以下の実施例27〜31では、従来のテルライトEDFAの増幅帯域を1.53μmより短波長側にかつ1.56μmより長波長側に拡大することを目的としている。
【0166】
それを実現するため、以下の実施例では、Er添加テルライト光ファイバを、連結された少なくとも一つの光ファイバとして用い、このEr添加テルライト光ファイバの前段にそれよりも短尺な(または、Er濃度およびファイバ長積の小さな)Er添加テルライト光ファイバもしくは、異種素材をホストとするEr添加光ファイバを連結し、増幅媒体としている。異種素材としては、フッ化物ガラス(Er添加ZrF4 系フッ化物ガラス又はInF3 系フッ化物ガラス)や石英系ガラス,フツリン酸ガラス,リン酸ガラス,カルコゲナイトガラスが使用できる。
このような増幅器構造をとることにより、従来のテルライトEDFAよりも広い波長域にて低雑音で動作できるEDFAを実現することができる。
【0167】
[実施例27]
図16は、本発明に係る光増幅器の一構成例を示す図である。図中、201a,201b,201cは光アイソレータであり、202a,202bは励起光を導入するための光カップラであり、203a,203bは励起光源であり、205,206は増幅用光ファイバである。
【0168】
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、Erの濃度100ppmのAl(アルミニウム)添加石英光ファイバ(長さ25m,カットオフ波長1.2μm,濃度ファイバ長積2500m・ppm)を用いた。また、励起光源203aとして、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。さらに、増幅用光ファイバ206として、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の前記B,C組成領域のガラスを母材とし、Er添加濃度500ppmで、カットオフ波長が1.3μm(濃度ファイバ長積6000m・ppm)で、長さを12mとしたテルライト光ファイバを用いた。また、励起光源203bとして、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。
【0169】
光源203aの励起光量を70mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.525μmから1.610μmの85nmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。
このような広帯域で低雑音動作するEDFAは従来の構成では実現されていない。
増幅用光ファイバ206を用いない場合は、1.54μmより短波長では、雑音指数は5dBより高く、1.525μmでは10dB以上の値となっており、また、20dB以上の利得は1.53μmから1.61μmの80nm帯でのみ得られた。
【0170】
本実施例において、低雑音帯が短波長に伸び、結果としてEDFAの動作波長帯が拡がったのは、Er濃度ファイバ長積の小さな増幅用光ファイバをテルライト光ファイバの前段に配置し、高利得低雑音で1.525μmから1.54μmの波長を増幅した後、テルライト光ファイバの増幅を起こさせているためである。
【0171】
つぎに、本実施例の一変形例について説明する。
増幅用光ファイバ205として、Erの濃度1000ppmのAl(アルミニウム)添加石英光ファイバ(長さ12m,カットオフ波長1.2μm,濃度ファイバ長積12,000m・ppm、この積はエルビウム添加テルライトファイバのものよりも大きい)を用いた。
光源203aの励起光量を70mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.535μmから1.610μmの75mmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。
このような広帯域で低雑音動作するEDFAは従来の構成では実現されていない。
【0172】
[実施例28]
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、Er濃度100ppmファイバ長3.5mのZrF4 系フッ化物光ファイバ(カットオフ波長1.2μm,Er濃度ファイバ長積3500m・ppm)を用い、励起光源203として、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。また、増幅用光ファイバ206として、上記TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の前記B,C組成領域のガラスを母材とし、Er添加濃度が500ppmで、長さ12m、カットオフ波長が1.3μm(Er濃度ファイバ長積6000m・ppm)のテルライト光ファイバを用いた。さらに、励起光源203bとして発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。
【0173】
光源203aの励起光量を70mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.525μmから1.610μmの85nmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。増幅用光ファイバ206を用いない場合は、1.54μmより短波長では、雑音指数は5dBより高く、1.525μmでは10dB以上の値となっており、また、20dB以上の利得は1.53μmから1.61μmの80nm帯でしか得られなかった。
【0174】
[実施例29]
本実施例では、増幅用光ファイバ205,206共に上記TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の前記B,C組成領域のガラスを母材とし、Er添加濃度が500ppmで、カットオフ波長が1.3μmであるテルライト光ファイバを用いた。増幅用光ファイバ205ではファイバ長を3mとし、増幅用光ファイバ206ではファイバ長を12mとした。励起光源203aとしては、発振波長0.98μmの半導体レーザを用い、光源203bとしては、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。
【0175】
光源203の励起光量を100mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.525μmから1.610μmの85nmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。増幅用光ファイバ206を用いない場合は、1.54μmより短波長では、雑音指数は5dBより高く、1.525μmでは10dB以上の値となっており、また、20dB以上の利得は1.53μmから1.61μmの80nm帯でしか得られなかった。
【0176】
以上の実施例では、全て増幅用光ファイバ205,206をそれぞれ前方励起および後方励起としたが、励起法は特にこれらに限定されるものではなく、双方向励起を含めたいずれの励起法を取っても良い。
【0177】
[実施例30]
本実施例では、増幅用光ファイバ205としては、実施例27〜29のものを用い、増幅用光ファイバ206として、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5−Al2 O3 系ガラスを母材としたEr添加テルライト光ファイバ(Er濃度500ppm、長さ14m)を使用した。この場合も、増幅用光ファイバ4を用いることにより、用いないときよりも低雑音な増幅帯域の拡大を確認することができた。
【0178】
[実施例31]
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、Erが添加されたフツリン酸光ファイバ,リン酸光ファイバ,カルコゲナイト光ファイバを用いた。増幅用光ファイバ205のEr濃度ファイバ長積が、増幅用光ファイバ206のテルライト光ファイバより小さいとき、低雑音な増幅帯域の拡大を確認することができた。つまり、増幅用光ファイバ205の素材は、本発明の効果を発現させるためには、大きな問題にはならず、Er濃度ファイバ長積が重要なパラメータとなる。
【0179】
以上の実施例40〜44では、Er添加濃度ファイバ長積の異なる2つの光ファイバを増幅媒体としたが、3つ以上であっても良い。このとき、Er添加濃度光ファイバ長積の最小の光ファイバは最も後段以外はいずれの位置でも良いが、好ましくは最前段が良い。
【0180】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。
【特許文献9】特開平11−236240
【非特許文献3】J.Mater.Res.,Vol.17.,No5,May 2002, @2002 Materials Research Society,pp.12081212
【非特許文献4】Erbium-Doped Fiber Amplifiers(エルビウム添加ファイバ増幅器)、Emmanuel Desurvire著(エマニエルデサヴィア著)、出版社John Wiley & Sons、1994年
【非特許文献5】K.O.Hill CLEO/PACIFIC RIM SHORT COURSE '97“Photosensitivity and Bragg Gratings in Optical Waveguide”
【非特許文献6】Kanamori et al., Proceeding of 9th International Symposium on Non Oxide Glasses, P.74, 1994
【産業上の利用可能性】
【0181】
以上説明したように、本発明によれば、Erの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるファイバホストとして光増幅用テルライトガラスを提供するとともに、このガラスを光増幅媒体とした利得平坦化したテルライトEDFAを提供することが可能となる。また、従来のテルライトEDFAの動作波長帯域を拡大して、より広帯域な領域の低雑音動作するテルライトEDFAを提供することが可能となる。さらに、光学活性な希土類元素を添加してたとえば広帯域EDFAのような従来のガラスでは実現不可能だった機能を発現できるテルライトファイバを提供することを提供することが可能となる。
【0182】
また、上記テルライトガラスを用い、特に1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、さらに光源を提供することも可能となる。さらにまた、非石英系光ファイバと石英系光ファイバとを、あるいはコア屈折率が互いに異なる非石英系光ファイバ同士を確実にかつ低損失、低反射で接続する汎用的・実用的な接続技術を提供することが可能となる。したがって、上記光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた光増幅器およびレーザ装置の特性と、本来Er添加テルライト光ファイバ増幅器のもつ広帯域性を合わせると波長多重光伝送システムや光CATVシステムの高性能化を進めることができ、その結果、それらシステムを用いたサービスの高度化、経済化に大きく寄与できるという利点がある。
【0183】
また、広帯域の増幅器として波長多重光伝送システムで利用すれば伝送容量の格段の増大が期待でき、情報通信の低コスト化に寄与できる。また、光CATVシステムにおいて、そのゲインチルトが小さい特性を利用して使用すれば、従来は困難であった波長多重による高品質な映像の分配や中継が可能となり、やはり光CATVの低コスト化が達成できるという大きなメリットがある。さらに、レーザ装置として応用すれば各種波長多重光伝送システムの低コスト化や光計測の高性能化に寄与できる。
【0184】
またさらに、希土類添加光ファイバ増幅器としてではなく、広帯域ラマン増幅器の増幅媒体としての応用も光通信システムにおいて可能である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の光機能導波路材料であるガラスの第1の組成領域Aを示す座標図である。
【図2】本発明の光機能導波路材料であるガラスの第2の組成領域Bを示す座標図である。
【図3】本発明の光機能導波路材料であるガラスの第3の組成領域Cを示す座標図である。
【図4】本発明の光機能導波路材料であるガラスの結晶化温度と転移温度の差値ΔTを組成別に示すグラフである。
【図5】本発明の光機能導波路材料であるガラスの屈折率nのTa2 O5 添加量依存性を示すグラフである。
【図6】Er3+のエネルギー準位図である。
【図7】テルライト系ガラス中のErの 4I13/2→ 4I15/2発光スペクトルを表す図である。
【図8】本発明にもとづく光増幅器の一構成例を模式的に示す図である。
【図9】本発明にもとづくレーザ装置の一例を示す構成図である。
【図10】本発明にもとづくレーザ装置の別の例を示す構成図である。
【図11】本発明にもとづくレーザ装置で得られた利得スペクトルを表わす図である。
【図12】本発明にもとづくレーザ装置の他の例を示す構成図である。
【図13】TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 ガラス、およびTeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 −Al2 O3 ガラス中のErの1.5μm発光スペクトルをそれぞれ示す図である。
【図14】本発明にもとづく光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器の一構成例を示す図である。
【図15】本発明にもとづくガラスと従来のガラスのラマン散乱スペクトルを示す図である。
【図16】本発明にもとづく光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器の別の構成例を示す図である。
【図17】3準位系(Er3+の1.54μm付近)のエネルギー準位図(ただし、3準位系ではN1 ≠0)である。
【図18】4準位系(Nd3+の1.06μm付近)のエネルギー準位図(4準位系ではN1 =0)である。
【図19】石英系EDFAとテルライトEDFAの利得の波長依存性を示す模式図である。
【図20】損失の大小による増幅帯域の相違状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0186】
111,111′ 励起用半導体レーザ
112,112′ 光カップラ
113 増幅用光ファイバ
114 光アイソレータ
115 増幅用光ファイバ
116 ミラー
117 フィルタ
118 ミラー
201 光アイソレータ
202 励起光源
203 光カップラ
204 分散媒質
205 増幅用光ファイバ
206 増幅用光ファイバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスである光機能導波路材料およびこの材料を用いた光増幅媒体、光増幅器、光源に関し、とくに、1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、光源に利用して有効である。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは伝送容量の拡大および機能向上のために、1本の光ファイバの中に複数の波長の光信号を合波して伝送したり、逆に1本の光ファイバを伝搬してきた複数の波長の光信号を波長ごとに分波したりする波長多重伝送技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)の研究開発が現在行われている。この伝送方式では、1本の光ファイバで複数の異なる波長の光信号を伝送し、伝送距離に応じて従来と同じように中継増幅する必要がある。そこで、光信号波長を増し伝送容量を上げるには、広い増幅波長帯を持つ光増幅器が必要になる。
【0003】
また、光通信システムを保守、監視するためのシステムの波長には1.61μmから1.66μmの間の波長が考えられており、保守、監視システムのための光源や光増幅器の開発が望まれている。
【0004】
近年、光通信分野への応用を目的として、コアに希土類元素を添加した光ファイバを光増幅媒体とした光ファイバ増幅器、例えばEr(エルビウム)添加光ファイバ増幅器(EDFA:Erbium Doped optical Fiber Amplifier )の研究開発が進められ、光通信システムへの応用が盛んに進められている。このEDFAは、シリカ系光ファイバの損失が最低となる1.5μm帯で動作し、30dB以上の高利得、低雑音、広い利得帯域、利得が偏波無依存、高い飽和出力などの優れた特徴を有することが知られている。
【0005】
上記EDFAをWDM伝送に応用するときに要求される性能の一つは、上記したように、増幅帯域が広いことである。これまで、増幅帯域の広いEDFAとして、フッ化物ガラスをEr添加光ファイバ増幅器のホストとして用いたフッ化物EDFAが開発されている。
【0006】
また、テルライトEDFAを用いると、従来の石英系EDFAやフッ化物系EDFA増幅帯域よりも2倍以上広い1.53μmから1.56μmまでの波長増幅帯域よりも2倍以上広い1.53μmから1.61μmまでの波長帯域での一括増幅が可能となる。したがって、将来の超大容量WDMシステム用EDFAとして注目されている。
【0007】
ところで、WDMシステム用EDFAとして要求される性能は、(1)増幅の広帯域性および(2)増幅の平坦性である。まず、増幅の広帯域性について述べる。
【0008】
このEr添加テルライト光ファイバを増幅媒体としたとき、増幅帯域が拡がるのは、テルライトガラス中では1.5μm帯の光増幅をひき起こすErの 4I13/3準位と 4I15/2準位の誘導放出断面が他のガラス中よりも大きくなり、特に、1.6μm帯の長波長域では他のガラス中より約2倍程の値を取るからである。従って、テルライトEDFAでは、他のEDFAに比べて長波長域で大きな利得が得やすくなっている。
【0009】
ところで、短波長域での増幅度は、基底準位の 4I15/2準位のErの占有率と4I13/3準位の占有率との差で決まる。すなわち、 4I15/2準位が全く占有されていなければ、利得は1.50μmのような短波長まで得ることができる。
【0010】
しかし、長波長域(例えば、1.60μm付近)で高い利得を得ようとして、ファイバ長を長くすると、 4I15/2準位のファイバ全体での占有率が上がり、短波長域での利得は得られなくなり、また、1.54μm付近の雑音指数(NF:Noise Figure)も上がってしまうことになる。従って、テルライト光ファイバであっても、1本の光ファイバでカバーできる増幅帯域は限られたものになってしまう。実際、1本のテルライト光ファイバを用いて得られる低NFで高利得な動作波長域は、1.55μmから1.61μmの60nm程度である。
【0011】
つぎに、WDMシステム用EDFAとして要求される第2の性質である増幅の平坦性について述べる。
【0012】
WDMシステム用EDFAとして要求される性能は、(1)増幅の広帯域性および(2)増幅の平坦性である。テルライトEDFAは増幅の広帯域性には優れているけれども、増幅の平坦性は劣る。例えば、利得ピーク波長1.56μmと1.60μmとでの利得偏差は15dB以上ある。したがって、利得の平坦化をはかるには、ファイバ・ブラッグ・グレーティング等の利得等化器をEDFAに適用する必要がある。しかし、利得偏差が大き過ぎる場合には平坦化するための利得等化器の設計が困難となったり、また複数の利得等化器を用いなければ利得等化ができなかったりするのが現状である。実際、テルライトEDFAの場合、利得偏差が15dB以上あるために、WDMシステムに適用される利得偏差が1dB以下のものが利得等化器を用いても実現されていない。
【0013】
EDFAの本来の増幅スペクトルの形状を変化させるには、誘導放出断面積スペクトルの形状を変える必要がある。
【0014】
テルライトEDFAの場合、その利得スペクトルを平坦化し、利得等化しやすくするには、1.6μm帯付近の誘導放出断面積が大きくなるようなファイバホストを用いると良い。これは、その場合、1.53μmから1.56μmまでの波長帯と1.6μm帯との利得偏差を低下させることができるためである。
【0015】
従来のテルライトEDFAのファイバホストとしては、TeO2 −ZnO−Na2 O−Bi2 O3 系ガラス(特許文献1)、TeO2 −ZnO−Li2 O−Bi2 O3 (特許文献2)などのガラスが用いられている。これらのガラス系では利得偏差は15dB以上になる。
【0016】
ここで、現在までの開発状況について簡単に説明する。
特許文献3〜6および特許文献7において、Cooleyらは希土類元素を添加したテルライトガラスでレーザ発振が可能なことを示している。しかし、Cooleyらはファイバ化までは行っておらず、ファイバ化に必要な光屈折率(比屈折率)の調整およびガラスの熱安定性には言及していない。
【0017】
一方、特許文献8において、Snitzerらは、テルライトガラスを用いればEDFAの増幅帯域が拡大し、さらに光増幅にはファイバ化が不可欠であるとして、光学活性元素である希土類元素を含み、かつファイバ化が可能なテルライトガラスの組成範囲を具体的に開示した。そのガラスはTeO2 ,R2 OおよびQO(RはLi以外の一価金属、Qは二価金属)よりなる3元系である。一価金属としてのLiは、熱安定性の低下などのために除外されている。
【0018】
特許文献6にてSnitzer らは、上記テルライトガラス中および石英系ガラス中でのエルビウムイオンの蛍光スペクトルを比較し、テルライトガラス中の方がスペクトル幅の広いことから、上記テルライトガラスを用いればEDFAの広帯域増幅が可能であり、さらに、プラセオジム、ネオジム等の添加が可能であることを示し、これら光学活性物質の添加により、上記3元系テルライトガラスを用いた光ファイバで光増幅が可能であるとしている。しかし、特許文献6には光増幅を実際に行ったことを示す利得、励起波長および信号波長などの具体的な記載は一切ない。すなわち、特許文献6は、単にファイバ化可能な3元系テルライトガラスの組成範囲を示し、光学活性な希土類元素を添加することが可能であることを示したにすぎない。
【0019】
さらにSnitzer らは、非特許文献1において、特許文献8に記載された以外の組成を含む種々のテルライトガラスの熱的および光学的特性を示している。しかし、ここでも光増幅およびレーザ発振についての具体的な記載はない。
【0020】
さらに、Snitzer らは、非特許文献1の直後に発行された非特許文献2において、初めてネオジム添加テルライトガラスの単一モードファイバを用いたレーザ発振に関して初めて報告している。
【0021】
上記単一モードファイバは、コアが76.9%TeO2 −6.0%Na2 O−15.5%ZnO−1.5%Bi2 O3 −0.1%Nd2 O3 、クラッドが75%TeO2 −5.0%Na2 O2−20.0%ZnOで示される組成からなり、818nm励起で1061nmのレーザ発振を行っている。非特許文献2中にファイバの損失は記載されていないが、非特許文献1中には、コア組成Nd2 O3−77%TeO2 −6.0%Na2 O−15.5%ZnO−1.5%Bi2 O3 、クラッド組成75%TeO2 −5.0%Na2 O2−20.0%ZnOのファイバ(非特許文献2に記載のものと同一と推定される)の損失が、1.55μmにおいて1500dB/km、励起光波長(0.98μm)において、3000dB/kmであることが記載されている(図7を参照。この図は後述するテルライトガラス中のEr3+の 4I13/2→ 4I15/2発光およびフッ化物ガラス中のEr3+の 4I13/2→ 4I15/2発光を比較したものである)。
【0022】
このファイバのコア組成は、Bi2 O3 が加わっている点で特許文献8の3元系と異なるが、上記3元系にBi2 O3 が加わった組成のガラスの熱安定性に関する記載は、非特許文献2にも、また非特許文献1、特許文献8にも一切ない。
【0023】
しかし、前述のフッ化物EDFAは増幅帯域が30nm程度であり、WDMの帯域拡大のためにファイバ増幅器の帯域拡大を行うのには、これだけではまだ不十分である。
【0024】
一方、これまで述べてきた通り、テルライトガラスは蛍光スペクトルの幅が広いことから、EDFAのホストとすれば増幅帯域を拡げられる可能性があることが示された。また、TeO2 ,R2 OおよびQO(RはLi以外の一価金属、Qは二価金属)よりなる3元系でファイバ化が可能であることも示され、前記組成を基本とするネオジム添加単一モードファイバで1061nmのレーザ発振が実現された。
【0025】
以下にテルライトEDFA実現のための課題を示す。
そのためにはまず、目的とするEDFAとこれまでに実現されたNd(ネオジム)添加ファイバレーザとの相違、すなわちガラス中のErの1.5μm帯発光とNdの1.06μm帯発光の相違を示す必要がある。
【0026】
前者の光学遷移は模式的に図17で示される。すなわち目的としている準位2から準位1への誘導放出を得るために、準位1から準位3(準位2よりエネルギーの高い準位)に励起して、準位3から準位2への緩和により準位1・2間の反転分布を形成している。これを3準位系という。一方、図18に示すように、誘導放出の終準位が基底準位ではなく、基底準位の上位準位である準位1のとき、これを4準位系という。3準位系は4準位系と比較して誘導放出の終準位が基底状態であるため反転分布を形成しにくい。したがって3準位系のEDFAでは励起光強度を強めるとともに、ファイバ自体も低損失化および高Δn(Δn:コア・クラッド間の比屈折率差)化が必要である。高Δn化は効率的な励起のためである。
【0027】
ここで、ファイバの損失が大きいと、たとえ光増幅は行えても増幅帯域が拡げられないことを簡単に示す。
【0028】
図19に、石英系EDFAとテルライトEDFAついてその利得の波長依存性の模式図を示す。テルライトEDFAは、この図のように、石英系EDFAよりも広帯域な光増幅が期待できる。しかし、石英系ガラス以外のガラスでは石英系ガラスと比較して通信波長帯での損失は大きい。そのため、光ファイバ増幅器ではこの損失が利得を実質的に低下させる。
【0029】
図20に模式的に示すように、損失が小さい場合はテルライトガラスの増幅帯域は前記のものに近いが、損失が大きくなると増幅帯域が小さくなる。
【0030】
ところで、最近のWDM伝送では、伝送容量の増大をはかるために1チャネル当りの伝送速度の高速化が進められている。そのためには、伝送路の一部を構成しているEr添加光ファイバ自体の波長分散特性の最適化をはかる必要があるが、これまで、このようなEr添加光ファイバ自体の波長分散に関して注意が払われていなかった。
【0031】
テルライトガラスの場合、材料分散値が零となる波長は、2μmよりも長波長帯に位置し、EDFAに使用する高NA(Numerical Aperture)ファイバの波長分散値は、1.55μm帯において、通常、−100ps/km/nm以下の値を取ることになる。このため、ファイバを10m程度の短尺で用いた場合でも、このファイバの波長分散値は−1ps/nm以下の大きな値となる。
【0032】
従って、テルライトEDFAを長距離、高速WDM伝送に使用するためには、その波長分散値をできるだけ零に近づける必要がある。ところが、上述したように、テルライトガラスの材料分散値は2μm以上の波長域で零となるため、テルライトガラスファイバでは、石英ファイバで行われているようなファイバの構造パラメータを最適化することによって1.55μm帯での波長分散値を零に近づけるという手法が取れないのが現実である。
【0033】
また、テルライト光ファイバは、1.3μm帯増幅用のPr(プラセオジム)のホストとしても使用できる。ところが、上述のように、テルライト光ファイバは、1.3μm帯において、絶対値で大きな波長分散値を持つ。そのため、テルライト光ファイバを使用して高速光信号を増幅する場合には、パルス波長のひずみが誘起されるので、波長分散値の補正をしないと、光通信システム中での使用が困難になる。
【特許文献1】平成9年特許願第30430号
【特許文献2】平成9年特許願第226890号
【特許文献3】米国特許第3,836,868号
【特許文献4】米国特許第3,836,869号
【特許文献5】米国特許第3,836,870号
【特許文献6】米国特許第3,836,871号
【特許文献7】米国特許第3,883,357号
【特許文献8】米国特許第5,251,062号
【非特許文献1】J. S. Wang et. al, Optical Materials, 3(1994), pp.187-203
【非特許文献2】J. S. Wang et. al, Optics Letters, 19(1994), pp.1448-1449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、本発明の課題は、光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、とくにErの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるファイバホスト(ホストガラス)としての適性にすぐれた光機能導波路材料を提供することにある。これとともに、この材料を光増幅媒体として用いることにより利得平坦化したEDFAを提供することにある。また、従来のEDFAの動作波長帯域を拡大して、より広帯域な領域の低雑音動作するEDFAを提供することにある。さらに、光学活性な希土類元素を添加して、従来のガラス材料では実現不可能だった機能、たとえば広帯域EDFAのような機能を発現できる光ファイバまたは光導波路を提供することを課題とする。また、上記光機能導波路材料を用い、とくに1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、さらに光源を提供することも課題とする。
上記以外の本発明の課題および特徴については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題の解決手段として、本発明では、以下のような光機能導波路材料、この光機能導波路材料を用いた光増幅媒体、光増幅器、レーザ装置、光源として、以下の手段を提供する。
【0036】
(1): 光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0037】
(2):(1)において、上記光機能導波路材料におけるTa2 O5 の添加量は、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)
の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光機能導波路材料。
【0038】
(3):光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦94(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0039】
(4):光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)、
4≦(BaO+SrO)≦12(モル%)、および
80≦TeO2 ≦88(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0040】
(5):(1)〜(4)のいずれかにおいて、少なくともコアにErを添加した光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、この材料ガラスにAl2 O3 を加えた組成を有することを特徴とする光機能導波路材料。
【0041】
(6):光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)、
0<Al2 O3 ≦4(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【0042】
(7):コアガラスとクラッドガラスとを有する光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料からなることを特徴とする光増幅媒体。
【0043】
(8):(7)において、上記コアガラスの光機能導波路材料または上記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Erまたは、Erおよびイッテルビウム(Yb)が添加されていることを特徴とする光増幅媒体。
【0044】
(9):(7)または(8)において、上記コアガラスの光機能導波路材料または上記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、ホウ素、リン、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする光増幅媒体。
【0045】
(10):(7)〜(9)のいずれかにおいて、上記コアガラスの光機能導波路材料または上記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Gd,Eu,Dy,Ho,Tm、およびYbからなる群から選択される元素が添加されていることを特徴とする光増幅媒体。
【0046】
(11):(7)〜(10)のいずれかにおいて、少なくともコアにErを添加した材料ガラスからなる光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、上記材料ガラスの組成はAl2 O3 を加えた光機能導波路材料であること特徴とする光増幅媒体。
【0047】
(12):(7)〜(11)のいずれかにおいて、カットオフ波長が0.4μmから2.5μmであることを特徴とする光増幅媒体。
【0048】
(13):光共振器と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光共振器に備わる光増幅媒体の少なくとも一つは、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【0049】
(14):少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置したレーザ装置であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【0050】
(15):光増幅媒体と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光増幅媒体は、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【0051】
(16):光増幅媒体と、この光増幅媒体を励起する励起光および信号光をその増幅媒体に入力する入力手段とを備えた光増幅器であって、上記光増幅媒体は、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【0052】
(17):少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置した光増幅器であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、上記(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【0053】
(18):光機能導波路材料を増幅媒体とする光増幅器であって、(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体の前後の少なくとも1ケ所に、その光増幅媒体とは異なる符号の波長分散値によって分散を補償する分散媒質が設けられていることを特徴とする光増幅器。
【0054】
(19):(18)において、上記光増幅媒体が、希土類元素および/または遷移金属元素を添加した光機能導波路材料からなる光導波路であることを特徴とする光増幅器。
【0055】
(20):(18)または(19)において、上記分散媒質が、光ファイバ、またはファイバ・ブラッグ・グレーティングであることを特徴とする光増幅器。
【0056】
(21):Erが添加された光ファイバを増幅媒体として含む光増幅部が複数個直列に配置されてなる光増幅器であって、
上記複数の光増幅部の第2段以降の少なくとも一つには、光ファイバ素材として(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料からなる光ファイバが用いられ、この光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の光増幅部には、Er添加濃度およびファイバ長積が上記光機能導波路材料光ファイバより小さいEr添加光ファイバが用いられていることを特徴とする光増幅器。
【0057】
(22):(21)において、増幅媒体の素材として、上記光機能導波路材料光ファイバとともに、フッ化物光ファイバ,石英系光ファイバ,フツリン酸光ファイバ,リン酸系光ファイバまたはカルコゲナイド光ファイバを用いることを特徴とする光増幅器。
【0058】
(23):(21)または(22)において、上記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の少なくとも一つの光増幅部に、その光機能導波路材料光ファイバ以外の光ファイバ素材が用いられていることを特徴とする光増幅器。
【0059】
(24):(21)〜(23)のいずれかにおいて、上記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段に配置された少なくとも一つの光ファイバのEr添加濃度および光ファイバ長積が、その光機能導波路材料光ファイバのものより小さいことを特徴とする光増幅器。
【0060】
(25):(21)〜(24)のいずれかにおいて、Erが添加された光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器であって、
Er添加濃度および光ファイバ長積の異なる光機能導波路材料光ファイバを少なくとも2つ以上直列に配置し、その配列の中では光ファイバ長積の小さな光ファイバが光ファイバ長積の大きな光ファイバの前段に配置されている配列構造を少なくとも一ケ所含むことを特徴とする光増幅器。
【0061】
(26):(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなる光機能導波路材料、または光導波路が(7)〜(12)のいずれかに記載の光増幅媒体を用いたことを特徴とする光源。
【0062】
(27):(1)〜(6)のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなるガラス材料により形成される光導波路を光増幅媒体としたことを特徴とする光増幅器。
【0063】
(28):(27)において、上記光導波路または上記光ファイバの少なくとも一つは、その端に光カップラを配置し、この光カップラの少なくとも一つの端子に反射体を具備したことを特徴とする光増幅器。
【0064】
(29):(28)において、上記反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする光源。
【0065】
(30):(27)または(28)において、反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする請求項27または28に記載の光増幅器。
【発明の効果】
【0066】
上記手段により、光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、とくにErの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるファイバホストとしての適性にすぐれた光機能導波路材料を提供することができる。これとともに、この材料を光増幅媒体として用いることにより利得平坦化したEDFAを提供することができる。
また、従来のEDFAの動作波長帯域を拡大して、より広帯域な領域の低雑音動作するEDFAを提供することができる。さらに、光学活性な希土類元素を添加して、従来のガラス材料では実現不可能だった機能、たとえば広帯域EDFAのような機能を発現できる光ファイバまたは光導波路を提供することができる。
また、上記光機能導波路材料を用い、とくに1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、さらに光源を提供することもできる。
【0067】
上記以外の作用/効果については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
まず、本発明にもとづくTeO2 −Ba0−SrO−Ta2 O2 組成のガラス材料について説明する。このテルライト系ガラス材料は、本発明の実施形態では、その組成状態により次の3形態(第1〜第3の組成)にクラス分けすることができる。各組成(A〜C)はそれぞれに特有の効果および/または適用途を有する。
【0069】
すなわち、第1の形態(A)では、図1にその組成領域Aを示すように、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)
からなる組成を持つ。
【0070】
第2の形態(B)では、図2にその組成領域Bを示すように、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦94(モル%)
からなる組成を持つ。
【0071】
第3の形態(C)では、図3にその組成領域Cを示すように、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)、
4≦(BaO+SrO)≦12(モル%)、および
80≦TeO2 ≦88(モル%)
からなる組成を持つ。
【0072】
各組成(A〜C)おいて、(BaO+SrO)はBaとSrの合計割合(モル%)を示す。また、第1,2の組成において、Ta2 O5 および(BaO+SrO)はそれぞれゼロでない有意の添加量を組成分として含む。
【0073】
ファイバ化に対するガラスの熱安定性はDSC(differential scanning calorimetry :差走査熱量測定)の測定により評価できる。そのTx−Tgの値ΔT(Tx:結晶化温度、Tg:ガラス転移温度)が大きい値をもつガラスがより安定なガラスである。すなわち、単一モードファイバやフォトニッククリスタルファイバの作製時には、母材やガラス管の延伸工程と線引き工程の2回にわたってTg以上の温度にガラス母材を熱するため、TxがTgに近い温度であれば結晶核が次々に成長してファイバの散乱損失が増大する。逆に、Tx−Tgの値ΔTが大きければ低損失なファイバが作製できる。
とくに上記組成領域B,C内のガラスは、Tx−Tgの値ΔTが100℃以上の値を持ち、低損失なファイバ作製する用途に好適である。一方、上記組成(A〜C)からはずれた組成のガラスをコアおよびクラッド両方に使用しても、低損失なファイバの作製は困難になる。それらの組成(A〜C)のうち、とくにTa2 O5 の添加はガラスの安定性に対して大きな効果をもたらす。
【0074】
図4は、本発明の光機能導波路材料であるガラスのΔT(ΔT=Tx−Tg)を上記DSCで測定した結果を示す。測定はガラスの一部を粉砕し、一片30mgのバルクガラスを銀製金メッキのシール容器に充填し、アルゴンガス雰囲気中にて昇温速度10℃/分で行った。
【0075】
同図において、グラフ線(a)〜(c)は次の成分比(a)〜(c)にそれぞれ対応する。
(a):BaO:SrO:Ta2 O5 =1:1:2
(b):BaO:SrO:Ta2 O5 =1:1:4
(c):BaO:SrO:Ta2 O5 =1:1:1
同図からあきらかように、Tx−Tgの値ΔTは、Ta2 O5 =10モル%のときにΔTは237℃にもなる。
【0076】
また、Ta2 O5 の添加は屈折率制御の面からも重要な効果をもたらす。図5にTeO2 系ガラスの光屈折率n(波長632.8nmにおける比屈折率)のTa2 O5 添加量依存性を示す。同図において、グラフ線(a)〜(c)と成分比(a)〜(c)は上記と同じ対応である。同図に示すように、成分比およびTa2 O5 添加量を2モル%から12モル%まで変化させると、添加量に比例して屈折率nは2.115から2.17の間を取らせることができる。
【0077】
この特性を利用し、Ta2 O5 添加量を変化させることによって、コア・クラッド屈折率差(コア・クラッド間の比屈折率差)が0.2%程度の小さなものから2.5%程度の大きなものまで容易にファイバの設計を行うことができる。
【0078】
本発明にもとづく光増幅媒体は、光ファイバまたは光導波路を形成するコアガラスのテルライトガラスまたはクラッドガラスのテルライトガラスの少なくとも一つに、Er(エルビウム)またはErおよびYb(イッテルビウム)が添加されていることを特徴とする。
【0079】
本発明にもとづくレーザ装置は、光増幅媒体と励起光源とを有するレーザ装置であって、Erを添加したテルライトガラスを用いた光ファイバを光増幅媒体として用い、Erの 4I13/2準位から 4I15/2準位への誘導放出遷移を利用することを最も主要な特徴とする。
【0080】
図6はEr3+のエネルギー準位図である。この図では、上準位 4I13/2から基底準位 4I15/2への遷移により発光することが示されている。
【0081】
また、図7に示すように、Er3+の 4I13/2→ 4I15/2発光は、フッ化物ガラス中では他のガラス、例えば、石英ガラス中などよりも幅広い 4I13/2→ 4I15/2発光帯を有することが知られている。しかし、図7からわかるように、1.6μmより長波長側では発光強度は小さくなる。Erはフッ化物ガラス中にあっても、1.6μm以上の長波長での光増幅やレーザ発振は起こりにくくなる。
【0082】
しかし、Erはテルライトガラス中に添加されると、他のガラス中よりも強い電場を受け、その結果、 4I13/2や 4I15/2準位等の受けるスターク効果による準位中の拡がりが大きくなり、より長波長域でも誘導放出断面積を持つようになって、図7で見られるように1.65μm以上の長波長でも蛍光が存在する。
【0083】
従って、Erを少なくともコアに添加したテルライトファイバを光増幅媒体とすれば、Er添加石英ファイバやEr添加フッ化物ファイバでは実現できなかった1.5μmから1.7μmにかけての光増幅やレーザ装置が可能になる。
【0084】
テルライトガラスがホウ素、リンまたは水酸基のうち少なくとも一つを含むと、0.98μm光により 4I11/2準位を励起した場合も利得係数向上および雑音指数が改善される。すなわち、B−O,P−O,O−Hの振動エネルギーは、それぞれ約1400cm-1、1200cm-1、3700cm-1であり、これらを含まないテルライトガラスのフォノンエネルギーは600〜700cm-1であるので、倍以上大きくなる。このため、波長0.98μm付近の光でErの 4I11/2準位を直接励起して 4I13/2→ 4I15/2遷移による1.5μmの光増幅を起こすと、多音子放出よる緩和を受け易くなって、 4I13/2準位の励起効率が低下しにくくなる(図6)。また、 4I11/2準位から 4I13/2 準位への緩和が起きやすいと 、4I13/2準位を1.48μm付近の光で直接励起するよりも、 4I15/2準位を励起したのち 4I13/2準位を励起した方が、 4I13/2準位および 4I15/2準位間の反転分布が得やすく、したがって雑音特性も優れるという利点がある。
【0085】
以下、図面を参照しながら本発明にもとづく光増幅媒体とこの光増幅媒体を用いた広帯域光増幅器およびレーザ装置の実施例を詳細に説明する。
【0086】
[実施例1]
溶融後の組成が
(1)TeO2 (85モル%)−(BaO+SrO)(15モル%)、
(2)TeO2 (80モル%)−(BaO+SrO)(10モル%)−Ta2 O5 (10モル%)、
となるように、各組成(1)(2)の成分原料をそれぞれに調合し、各組成(1)(2)の調合原料をそれぞれ20gずつルツボに充填し、電気炉内で酸素雰囲気下、800℃で2時間溶融した。この後、200℃に予加熱したプレート上にてキャストし、得られたガラスを250℃で4時間アニールした。このガラスの一部を破砕し、一片30mgのバルクガラスと、メノウ乳鉢で粉々にしたパウダー30mgとの2種類のサンプルをそれぞれ銀製金メッキのシール容器に充填し、アルゴンガス雰囲気中、昇温速度10℃/分でDSC測定を行った。
Tx−Tgの値ΔTは、Ta2 O5 =0となる(1)のガラスでは20℃以下となり、Ta2 O5 =10モル%となる(2)のガラスでは237℃となった。とくに前記Cの範囲の組成では、熱安定性がΔT=200℃以上に向上していた。
【0087】
DSC測定値を基準にTx−Tg≧100℃となるガラスの使用で低損失なファイバの作製が可能であると述べたが、この範囲のガラスでは、3準位系の光学遷移を用いて高効率な光増幅を行うのに必要な損失0.1dB/m以下を実現することができる。
【0088】
[実施例2]
コアガラスおよびクラッドガラスとして前記B(図2)またはC(図3)に示した組成領域のものを用いる。これらの組成物を、白金ルツボ、または金ルツボを用いて酸素雰囲気で溶融し、吸引成形(サクション・キャスティング)法によりプリフォームを作製した。また、同じく前記A(図1)のガラス組成を用いてジャケット管を回転成形(ローテーショナル・キャスティング)法で作製した。これらプリフォーム、ジャケット管を用いてファイバ線引きした結果、最低損失が0.1dB/m以下、カットオフ波長が0.5μmから2.5μm、コア・クラッド屈折率差が0.2%から2.5%のテルライトファイバを作製することができた。
【0089】
また、コアまたはクラッドガラスにEr,Pr,Yb,Nd,Ce,Sm,Tm,Eu,Tb,HoまたはDy等の希土類を10重量%以下添加することができた(プリフォーム、ジャケット管の作製法については、非特許文献6を参照)。
【0090】
[実施例3]
実施例2と同様に、前記B,C領域のガラス組成を持つテルライトファイバを作成した。その結果、最低損失が0.1dB/m以下、カットオフ波長が0.5μmから2.5μm、コア・クラッド屈折率差が0.2%から2.5%のテルライトファイバを作製することができた。
また、コアガラスまたはクラッドガラスにEr,Pr,Yb,Nd,Ce,Sm,Tm,Eu,Tb,HoまたはDy等の希土類を10重量%以下添加することができた。
【0091】
[実施例4]
TeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)組成のガラスにErを1000ppm添加したものをコア材とし、TeO2 (82モル%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)組成のガラスをクラッド材とすることにより、カットオフ波長1.3μm、コア・クラッド屈折率差1.7%の光ファイバを形成し、これを光増幅媒体とした。この光増幅媒体を用いて1.5μmから1.7μmの波長帯の光増幅器を作製し、増幅実験を行った。励起波長として0.98μmを選び、1.5μmから1.7μm帯の信号光源としてDFB(Distributed FeedBack)レーザを用いた。
【0092】
図8は、本実施例の光増幅器の概略的構成を示す図である。信号光源101および励起光源102は光カップラ103を介して増幅用光ファイバ104の一端に接続され、増幅用光ファイバ104の他端には光アイソレータ105が接続されている。なお、各部品の接続は光ファイバ106(符号106a〜106d)で行われている。
【0093】
このような構成からなる光増幅器を用いた増幅実験により、1.5μmから1.7μmの間の波長で増幅利得を得ることができた。
【0094】
また、同じ光増幅媒体を用いて、図9で示すチューナブルな狭帯域バンドパスフィルタを挿入したリングレーザを構成した。かかるリングレーザは、図8の信号光源101の代りに、光アイソレータ105の出力側を光カップラ103に接続してリング状の光共振器を形成し、このリング状光共振器の途中に狭帯域バンドパスフィルタ107を挿入したものである。そして、狭帯域バンドパスフィルタ7の透過域を1.5μmから1.7μmの間で変動させ、励起光源102から光を入射してレーザ発振実験を行った。その結果、出力端108から上記波長帯でのレーザ発振を確認することができた。 なお、各部品の接続は光ファイバ106(符号106a〜106e)で行われている。
【0095】
以上の実施例では励起波長として0.98μmを使い、 4I11/2準位を励起したが、1.48μm帯の波長を用いて 4I13/2準位を直接励起しても良いことは言うまでもない。また、0.98μmより短波長の光で 4I11/2準位よりエネルギーの高い準位を励起しても良い。
【0096】
[実施例5]
図8に示す光増幅器を用い、1.5μm帯の光増幅実験を行った。励起波長は0.98μmであった。その結果、1.53μm以上の波長域で雑音指数が7dB以下で増幅することができた。
【0097】
[実施例6]
Erの代りにErおよびYbを共添加したガラスをコアとした以外は実施例3と同様な光ファイバを作製し、光増幅媒体とした。
この光増幅媒体を用い、実施例4および実施例5の構成で、光増幅実験およびレーザ発振実験を行った。励起波長として1.029μm(Yb添加YAGレーザ)、1.047μm(Nd添加YLFレーザ)、1.053μm(Nd添加YAGレーザ)、1.064(Nd添加YAGレーザ)等を使った。このようにYbをErと共添加した場合、YbからErへのエネルギー移動を利用することにより、上述したような波長で励起しても1.5μmから1.7μmの間でのレーザ発振および1.5μm帯の広帯域光増幅を確認することができた。
【0098】
以上の実施例1〜6では光ファイバの組成に着目した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、Cs2 O,Rb2 O,K2 O,Li2O,CaO,MgO,BeO,La2 O3 ,Y2 O3 ,Sc2O3 ,ThO2 ,HfO2 ,ZrO2 ,TiO2 ,Wo3 ,Tl2 O,CdO,PbO,In2 O3 ,Ga2 O3 などのいずれか一つ以上をTeO2 とともに含むガラスであってもよい(参照:ガラスハンドブック(第8編)、作花済夫他編集、朝倉書店、昭和50年発行)。また、ErまたはErおよびYbは、コアのみでなく、クラッドにも添加してもよい。
【0099】
さらに、光増幅器は、本発明の光増幅媒体と、この光増幅媒体を励起する励起光源と、信号光の入力および出力手段を有するものであれば、上述した構成に限定されるものではない。
【0100】
また、レーザ装置は、光ファイバで構成された光共振器の途中に本発明の光増幅媒体を挿入し、さらに、この光増幅媒体を励起する励起光源を有するものであれば、とくに限定されるものではない。
【0101】
[実施例7]
増幅用ファイバとしてEr1000ppmをコアに添加したファイバ4mを用いて1.5μm帯の増幅特性を測定した。コアガラス組成はTeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)とし、これにP2 O5 を5重量%添加した。クラッドガラス組成はTeO2 (82モル%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)とした。
コア・クラッド屈折率差は2.5%であり、カットオフ波長を0.96μmとした。
【0102】
0.98μmの光(光源は半導体レーザ)を励起光として1.5μm帯の小信号利得を測定したところ、リンを添加しないものに比較して利得効率は5倍増加し、2dB/mWに達した。また、入力信号レベルを−10dBmとして飽和領域での利得スペクトルを測定したところ、1530nmから1620nmまで90nm幅で利得がフラットになった(励起強度は200mWであった)。雑音指数はリンを添加しない場合は7dBであったが、リンを添加することにより4dBに低下した。このように、コアガラスとしてリンを添加することにより、利得係数および雑音指数が大幅に改善した。
また、P2 O5 の代りにB2 O3 を添加しても利得係数および雑音指数の改善が確認できた。
【0103】
[実施例8]
TeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)組成のガラスをコアガラスとしてこれにOH基を5000ppm、Erを1000ppm添加したところ、利得係数はOH基を添加しないときと比較して3倍増加することが確認できた。
リンを添加した場合より利得係数の増加の程度が低いのは、OH基の信号エネルギーが3700cm-1という大きな値を持つため、増幅の始準位である 4I13/2準位もわずかに多音子放出により緩和されるためである。
【0104】
図10は本発明にもとづくレーザ装置の一例を示。図中、参照符号111,111′は励起用半導体レーザ(波長:1480nm)、112,112′は信号光と励起光とを結合させる光カップラ、113,115は増幅用光ファイバ、114は光アイソレータをそれぞれ示す。信号光はAのポートより入射した後、Bのポートより出射する構成となっている。
【0105】
参照符号113の増幅用ファイバとしてErを1000ppm添加したZrF4 系のフッ化物ファイバ( 特許文献6)を用い、増幅用ファイバ115としてErを1000ppm添加したTeO2 −BaO−SrO −Ta2 O5 系のテルライトファイバを用いた。
【0106】
各ファイバのコア・クラッド屈折率差は共に2.5%であり、カットオフ波長は1.35μm、ファイバ長はそれぞれ10mおよび7mであった。参照符号111,111′の励起用半導体レーザの出力光強度を150mWとして1.5μm帯の利得スペクトルを測定した。得られた利得スペクトルを図11に示す。
【0107】
図11に示した利得スペクトルによれば、信号波長1530nmから1610nmまでの80nm幅で、信号利得を値の変化を示す曲線はフラットな状態となる。すなわち、そのような波長帯での信号利得は30dB近傍の値に維持されていることがわかる。したがって、このような波長帯ではゲインチルトも小さく抑えられることになる。Er添加フッ化物ファイバを用いた場合の利得がフラットになる波長幅は1530nmから1560nmの30nmであるので、利得がフラットになる波長幅は2倍以上に広がった。また、Er添加石英ファイバの場合は、フラットな波長幅はたかだか10nmであるので、これと比較すれば8倍にも広がったことになる。
【0108】
本実施例では、Er添加ZrF4 系フッ化物ファイバを前段に用い、Er添加テルライトファイバを後段に使用したが、この逆でも良い。また、フッ化物ファイバはInF3 系のフッ化物ファイバでも良い。さらに、Er添加酸化物多成分ガラスファイバを増幅用ファイバに加えても良い。要するに、増幅用光ファイバの一つとしてEr添加テルライトファイバを用いることが重要である。
【0109】
また、テルライトファイバの組成としては本実施例で使用されたものに限定されるものではない。
【0110】
また、増幅用光ファイバの励起法としては、前方励起、後方励起、双方向励起のいずれかを取っても良いことは言うまでもない。
【0111】
[実施例9]
図12は本発明にもとづくレーザ装置の他の実施例の概略的構成を示す。この実施例では、実施例1を用いた増幅用ファイバ113,115を波長可変バンドパスフィルタ117(バンド幅3nm)を介して直列に接続し、1480nmでの透過率が99%、1500nmから1630nmでの反射率が100%のミラー116を設けた。また、他端に1500nmから1630nmでの透過率が20%のミラー118を設けてレーザ発振を行った。その結果、信号波長1500nmから1630nmの広い範囲でレーザ発振を確認することができ、1.5μmで使用できる広帯域チューナブルレーザとして使用できることがわかった。
【0112】
以上説明したように、本発明の光増幅媒体を用いれば、これまで光ファイバ増幅器では不可能であった、1.5μmから1.7μmにかけての光増幅器やレーザ装置の構成が可能になり、1.55μm帯の光通信システムに用いられる保守・監視システムの高性能化が達成でき、光通信システムの安定な運用が可能になる。
【0113】
また、増幅波長域が広い特性を利用すれば、フェムト秒といったようなきわめて短い光パルスも効率良く増幅することができるようになり、波長多重光伝送システム中に用いる光増幅器としても有効である。
【0114】
[実施例10]
本実施例では、実施例4で用いた光ファイバ(テルライトファイバ)を使い、スーパールミネッセントレーザの動作を実施した。励起光源として1.48μmのレーザダイオードを用い、その光ファイバの一端に入射した。ファイバの他端はファイバ端面でのフレネル反射を抑えるため、角度10°で斜カットした。この他端からの出射スペクトルを測定したところ、1.46μmから1.64μmの幅広い発光スペクトルが観測され、ブロードバンドのスーパールミネッセントレーザ装置として使用できることがわかった。
【0115】
[実施例11]
図8に示す光増幅器の構成において、光アイソレータの後に、利得を等化するためのフィルタ(チャープド・ファイバ・ブラッグ・グレーティング、プログラマブルフィルタ、ファブリー・ペロー・エタロン型フィルタ、マッハツェンダー型フィルタ等)を挿入して光増幅特性を測定した。−30dBmの信号強度の光を入射させ、1.48μmで(200mW)励起したとき、フィルタを挿入しないと1530〜1580nmにかけて利得の山が観測されたが、フィルタを挿入して損失を調整することにより、その利得の山を打ち消すことができた。そして、1530nmから1610nmの波長域にかけてのWDM信号に対し、利得偏差0.2dB以下で動作できることが確認できた。
【0116】
[実施例12]
前記A(図1)の領域の組成を持つガラスをコアおよびクラッドとし、コアにCe,Pr,Gd,Nd,Eu,Sm,Tb,Tm,Dy,Ho,YbまたはErを添加することにより、導波路レーザおよび導波路型光増幅器として動作させた。その結果、0.3μm、1.3μm、0.31μm、1.07μm、0.61μm、0.59μm、0.54μm、1.48μm、3.0μm、1.49μm、1μm、1.55μm帯でそれぞれ動作する広帯域レーザ発振および広帯域光増幅が確認できた。
【0117】
[実施例13]
TeO2 (88モル%)−(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5 (8モル%)組成のガラスにErを2000ppm添加してコア材とし、TeO2 (82%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)組成のガラスをクラッド材とすることにより、カットオフ波長1.1μm、コア・クラッド屈折率差1.7%の光ファイバを形成し、これを増幅媒体とした。1.3μmにおけるファイバ損失は40dB/kmであった。この光ファイバを4m(ファイバ長)用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。励起波長は前方が0.98μm、後方が1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、1500〜1630nmの110nm帯域で、5dB以上の小信号利得が得られた。このとき、1530nm以上の波長での雑音指数は5dB以下であった。
【0118】
[実施例14]
実施例13と同様の光ファイバを15m用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。励起波長は前方後方とも1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、特に1580〜1630nmの50nm帯域で、35dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は5dBであった。
【0119】
[実施例15]
実施例13と同様の光ファイバを15m用いてレーザを構成した。キャビティは、全反射ミラーと1625nmで3%の反射率をもつファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いて構成した。励起波長は前方後方共に1.48μmの双方向励起を採用した。入射励起強度が300mWのとき、これまで石英ファイバやフッ化物ファイバで得ることのできなかった1625nmにおいて150mWの高出力が得られた。
【0120】
[実施例16]
TeO2 (97モル%)−(BaO+SrO)(1モル%)−Ta2 O5 (2モル%)ガラスにErを3wt%添加してコア材とし、TeO2(82モル%)−(BaO+SrO)(12モル%)−Ta2 O5 (6モル%)ガラスをクラッド材とし、カットオフ波長1.4μm、コア・クラッド屈折率差2.5%のファイバを形成し、これを増幅媒体とした。この光ファイバを3cm用いて小型の光増幅器を構成し、増幅実験を行った。
【0121】
励起波長は1.48μmの前方励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、1530〜1610nmの80nm帯域で、20dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は7dB以下であった。
【0122】
[実施例17]
TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の4元系ガラスをその他の組成を変えて作製するとともに、各組成ごとにDSCにより熱特性を測定した。その結果、前記Bの組成領域(図2)では、Tx−Tgが150℃以上の安定なガラスが得られた。また、前記Cでの組成領域(図3)では、Tx−Tgが170℃以上のさらに安定なガラスが得られた。このような熱的に安定なガラスを用いて光ファイバを作製すれば、ファイバ損失が低いだけでなく、歩留り率の高いファイバを大量に生産することができ、低価格化を実現することができる。
【0123】
そこで、前記Bの領域から選んだTeO2−(BaO+SrO)−Ta2 O5 組成のガラスを用い、コアにErを2000ppmを添加することにより、カットオフ波長1.1μm、コア・クラッド屈折率差1.5%の光ファイバを形成し、これを増幅媒体とした。1.2μmにおけるファイバ損失は20dB/kmであった。このファイバを3m用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。
【0124】
励起波長は前方が0.98μm、後方が1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、1530〜1610nmの80nm帯域で、20dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は5dB以下であった。
【0125】
[実施例18]
実施例17の光ファイバを15m用いて光増幅器を構成し、増幅実験を行った。励起波長は前方後方とも1.48μmの双方向励起を採用した。信号光源として1.5μmから1.7μm帯の波長可変レーザを使用した。増幅実験の結果、特に1580〜1630nmの50nm帯域で、20dB以上の小信号利得が得られた。このとき、雑音指数は5dB以下であった。
【0126】
[実施例19]
実施例17の光ファイバを15m用いてレーザを構成した。キャビティは、全反射ミラーと1625nmで3%の反射率をもつファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いて構成した。励起波長は前方後方とも1.48μmの双方向励起を採用した。入射励起強度が300mWのとき、これまで石英ファイバやフッ化物ファイバで得ることのできなった1625nmにおいて150mWの高出力が得られた。
【0127】
以上の実施例1〜19で用いられているテルライトガラスはTa2 O5 を含むことを特徴としているが、このようなテルライトガラスは熱安定性が高く、ファイバ化した際の損失を低く抑えることができ、さらに屈折率制御が容易であって高Δnのファイバを作製できることにより、効率の低い3準位系を利用するEDFAの増幅帯域拡大を可能とした。
【0128】
従来知られているファイバ化可能なテルライトガラスとしては、従来の技術で述べたSintzer 等のテルライトガラス(特許文献8)や特許文献9に記載のものがあるが、これらの文献にはTa2 O5 の屈折率やガラス安定性に対する効用の記載はない。本発明の光機能導波路材料は前述したように、Ta2 O5 を含んだテルライトガラスにおいて、Ta2 O5−BaO−SrO−TeO2 組成の特定領域にて特異的に得られる光機能に着目したものであって、特許文献8,9には開示のものとはあきらかに異なる。
Ta2 O5−BaO−SrO−TeO2 という組成だけに着目するならば、非特許文献3に記載の強誘電体ガラスセラミックがその組成を有する。しかし、その強誘電体ガラスセラミックはその組成領域および機能等において、本発明の光機能導波路材料とはまったく異なる。
【0129】
これまで述べてきたように、特許文献8に記載の3元系テルライトガラスは本発明の4元系(Ta2 O5−(BaO+SrO)−TeO2)テルライトガラスと比較して熱安定性が低く、そのため1.55μmにおける損失を1500dB/kmにまでしか低減することができない。これに対して、本発明では損失の低減を目的に種々の組成を検討した結果、Ta2 O5 を含む上記4元系(Ta2 O5−(BaO+SrO)−TeO2)が損失の低減に特異的に有効であることを見出した。さらにこの4元系ガラスは屈折率制御が容易なため、高屈折率差Δnの光ファイバが作製可能であり、これに低損失という特性を併せてはじめて高効率テルライトEDFAの実現に至った。
特許文献8の3元系テルライトガラスでは、効率の悪い3準位系を利用してEDFAを実現させるのは難しい。このことに関して、その特許文献8の明細書中のみならず、その後に提出された前記非特許文献1および2にも、EDFA実現に関する具体的記載は一切ない。
【0130】
さらに詳細に述べれば、特許文献8において、Snitzer らは、レーザはバルクガラスでも実現できるのに対して光増幅にはコアおよびクラッドを有するファイバ構造が必要であることを述べ、ファイバ化が可能であるテルライトガラスとして3元系テルライトガラスの組成範囲を示した。したがって光増幅の実現を目的としているものの、従来の文献(特許文献1と非特許文献1,2)においては、非特許文献2にてネオジムを用いたファイバレーザの記載があるのみである。光増幅の分野において、ネオジムは当初1.3μm帯の増幅への適用が有望視されていたが、非特許文献1中にも記載されているように、励起状態吸収のため1.3μm帯の増幅への適用は困難であるということが判明している。
【0131】
Ta2 O5 を含有するテルライトガラスは非特許文献1や特許文献9にも記載があるが、熱安定性と損失に関して記載されていない。これらの文献に記載されているものは、本発明の上記4元系とは全く異なる組成あるいは組成領域である。
【0132】
また、非特許文献1および2は、コア組成77%TeO2 −6.0%Na2 O−15.5%ZnO−1.5%Ta2 O5 の4元系テルライトガラスが記載され、特に非特許文献1中にはその損失まで記載されているが、損失は1.55μm帯において1500dB/kmという高値であり、ましてやTa2 O5 添加による熱安定性向上に関する記載や、熱安定性向上を想起させる記載は一切ない。非特許文献3には、前述したように、Ta2 O5−BaO−SrO−TeO2 のガラスセラミックに関する報告があるが、これにもガラス熱安定領域に関する記載はなく、そもそも同文献は光ファイバに関するものではない。
【0133】
上記実施例などで詳しく記載したとおり、本発明ではテルライトガラスの損失低減をめざしてそのテルライトガラスの組成を種々検討した結果、Ta2 O5 を含んだ上記4元系テルライトガラスが有効であることを解明した。これも実施例に記載済であるが、特にTa2 O5 の添加により熱安定性は飛躍的に向上し、テルライトガラスファイバの低損失化に成功した。さらに副次的効果として、コアとクラッドのTa2 O5 添加量の調整によりファイバの屈折率差Δnを自由に制御できることから高Δnファイバを作製でき、これらの相乗効果により低効率な3準位系を利用するEDFAにおいてその増幅帯域拡大に成功した。
【0134】
つぎに、テルライトEDFAの利得スペクトルがより平坦になるようなガラス組成について検討する。以下の実施例ではテルライトガラスまたはファイバにAlをホストとして添加することを主要な特徴とする。SiO2 系ガラスにAlを添加した場合、SiO2 系ガラスに添加されたErの誘導放出断面積の1.53μmと1.56μmとの間のへこみが無くなり、1.54μmから1.56μmにかけて平坦な利得が得られることが知られている(非特許文献4)。
【0135】
しかしながら、これは石英系ファイバに対するAlの添加効果であり、テルライト系ファイバに対してはその効果が不明であった。ここで、本発明者らは、以下の実施例にて示されるように、テルライトガラスへのAl添加により、1.53μmと1.56μmの誘導放出断面積のへこみを無くすとともに1.6μm帯の誘導放出断面積を変化させる(増大させる)ことができ、結果として、1.55μm帯と1.6μm帯との利得偏差を減少させることができることを見出した。
【0136】
[実施例20]
図13は、TeO2(88モル%) −(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5(8モル%) ガラス、およびTeO2(84モル%) −(BaO+SrO)(4モル%)−Ta2 O5(8モル%)− Al2 O3 (4モル%)ガラス中のErの1.5μm発光スペクトルをそれぞれ示す。同図からあきらかように、Al2 O3 を含有したガラスの発光スペクトルの1.6μm付近での強度は、Al2 O3を含有しないものに比べ強く、また、1.53μmと1.56μmとの間の谷の深さも浅くなっている。
【0137】
このAl2 O3 含有ガラス(TeO2 −(BaO+SrO)−Ta2 O5 系ガラス)をコア組成として、Er添加テルライトファイバ(カットオフ波長:1.3μm、Er濃度:4000ppm、長さ:0.9m)を作製し、1.48μmで励起(200mW)したところ、1.56μmと1.69μmとの利得偏差を10dB以下に低減できた。
【0138】
このファイバを増幅媒体として用いるとともに、利得等化器としてファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いたEDFAを構成したところ、1.53μmから1.60μmにわたって利得偏差が1dB以下のEDFAを実現することができた。Al2 O3 を含有しないファイバを用いた場合では、1.53μmと1.60μmの利得偏差が15dB以上あり、利得等化器を用いて利得補正を行っても、利得偏差を帯域70nmにわたって1dB以下にすることは困難であった。それがこの実施例のAl2 O3 含有ガラスをファイバホストに用いて、はじめて可能になった。
【0139】
このAl2 O3 含有ガラスをコア組成として、Er添加テルライトファイバ(カットオフ波長:1.3μm、Er濃度:4000ppm、長さ:0.9m)を作製し、1.48μmで励起(200mW)したところ、1.56μmと1.60μmとの利得偏差を10dB以下に低減できた。
【0140】
このファイバを増幅媒体として、マッハツェンダー型のフィルタ(損失媒体)を利得等化器としてEDFAを構成したところ、1.53μmから1.60μmにわたり利得偏差が1dB以下のEDFAを実現することができた。Al2 O3を含有しないファイバを用いた場合では、1.56μmと1.60μmの利得偏差が15dB以上あり、利得等化器を用いて利得補正を行っても、利得偏差を帯域70nmにわたって1dB以下にすることは困難であった。
【0141】
また、Er添加濃度1000ppmのファイバで2m長のファイバを用いて増幅スペクトルを測定したところ、Al2 O3 を含有していないファイバで見られた1.53μmと1.56μmとの間の利得の変動がなくなり、1.53μmから1.56μmにかけて利得の均一性が良いものが得られ、同波長域でのWDM伝送の応用に有利なことがわかった。
【0142】
このAl2 O3 の添加による利得特性の改善効果は、TeO2 −(BaO+SrO)−Ta2 O5 の特定組成領域(80≦TeO2 ≦97、0<(BaO+SrO)≦20、0<Ta2 O5 ≦12、単位モル%)にて特異的に現れる。そして、この特異領域では安定してファイバを形成できることが確認できた。
【0143】
以上の実施例ではAl2 O3 の濃度を4モル%としたが、これに限定されるわけではなく、0モル%よりも大きな濃度であれば、Al2 O3 の添加効果は確認できた。
【0144】
以下の実施例21〜26では、前述したようなテルライト光ファイバの特性を鑑み、これまでのテルライトEDFAの波長分散特性を改善した低波長分散特性を有するテルライトEDFAを説明する。
【0145】
以下の実施例では、テルライトガラスを増幅媒体として用いた光増幅器において、増幅媒体であるテルライトEDFAの前方または後方に、テルライトEDFAの持つ波長分散値とは異符号の波長分散値によって分散を補償する分散媒体を挿入した構造を取ることを最も主要な特徴とする。波長分散を制御する媒体としては、光ファイバやファイバ・ブラッグ・グレーティング等がある。
【0146】
従来のテルライトEDFAでは、テルライトEDFAの波長分散を補償する媒体を具備していないため、光増幅器内の波長分散が大きくなり、その結果、高速光信号の増幅を行うとエラーレートが上がって通信品質が劣化してしまう、という問題が生じる。これに対して、以下の実施例の構造を取ることにより、増幅器内の波長分散値を下げることができ、高速光信号の増幅を行っても、エラーレートが上がることなく、高い通信品質を保つことができる。
【0147】
[実施例21]
図14は、本発明に係る光増幅器の一構成例を示す。同図に示す光増幅器では、光信号が左側から入射して右側へ出射する構成になっている。入射信号光は、光アイソレータ201aを通過した後、光カップラ203により励起光源202からの励起光と合波される。励起光と合波された信号光は、分散媒質204を透過し、増幅用光ファイバ205に入射されて増幅される。光ファイバ205にて増幅された信号光は、光アイソレータ201bを通過して出力される。
【0148】
本実施例の光増幅器では、信号波長を1.55μmとし、励起光源202として発振波長が1.48μmの半導体レーザを用いた。増幅用光ファイバ205としては、Erのコア中への添加濃度が200ppm、カットオフ波長が1.3μm、コア・クラッド屈折率差(Δn)が1.4%であり、ファイバ長を10mとしたテルライト光ファイバを使用した。この光ファイバ205の1.55μmでの波長分散値は、−1.3ps/nmであった。また、分散媒質204としては、1.55μmでの波長分散値が17ps/km/nmの1.3μm零分散石英単一モード光ファイバ(いわゆるスタンダード単一モード光ファイバ)を使用した。この単一モード光ファイバの長さは、76mであった。
【0149】
この構成において、分散媒質204および増幅用光ファイバ205全体の波長分散を測定したところ、0.1ps/nm以下の値であった。
【0150】
このような光増幅器を用いて、波長1.55μmで40Gbit/sの高速光信号を増幅したところ、波長分散に起因するパルス波長のひずみは観測されなかった。従って、この構成の光増幅器を、ブースタアンプ、中継増幅器、またはプリアンプなどとして、高速光通信システムの中で用いても、通信の品質を著しく劣化させることなく使用できることがわかった。これに対して、比較のために、分散媒質204を挿入しないで、波長1.55μmで40Gbit/sの高速パルスの増幅を行わせたところ、パルス波形のひずみが観測され、高速光通信システムに応用することは困難なことがわかった。
【0151】
本実施例では、分散媒質204を光カップラ203と増幅用のEr添加テルライト光ファイバ205の間に設置したが、設置場所がここに限定されることはない。例えば、光アイソレータ201aの前段、光アイソレータ201aと光カップラ203との間、増幅用光ファイバ205と光アイソレータ201bとの間、または光アイソレータ201bの後段であっても良い。
【0152】
また、本実施例では、分散媒質204として、スタンダード単一モード光ファイバを用いたが、これに限定されることはなく、テルライト光ファイバ205の波長分散と異符号(あるいは逆符号)の波長分散値を持つ光ファイバであれば、使用することができる。
【0153】
また、分散媒質204として、光ファイバに限らず、チャープト・ファイバ・グレーティング(非特許文献5)などを用いても良い。
【0154】
なお、以上の説明では、分散媒質204を増幅用光ファイバ205の前後のいずれか一箇所に挿入するとしたが、分散媒質204の設置構成はこれに限定されるものではない。つまり、分散媒質204として光ファイバを用いる場合、光ファイバを分断して増幅用光ファイバ205の前後の適当な位置に設置しても良い。また、複数の異なる特性を持つ光ファイバを適当な位置に設置しても良い。さらに、光ファイバとチャープト・ファイバ・グレーティングをそれぞれ複数個併用しても良い。
【0155】
[実施例22]
本実施例では、図14における増幅用光ファイバ205として、コア中にPr(プラセオジム)が500ppm添加され、カットオフ波長が1.0μm、Δnが1.4%であって、ファイバ長を15mとしたテルライト光ファイバを用いた。また、励起光源2として、Nd(ネオジム)添加YLFレーザを用いた。さらに、分散媒質4として、チャープト・ファイバ・グレーティングを用いた。
このとき、テルライト光ファイバの1.31μmでの波長分散は、−3.15ps/nmあった。そこで、チャープト・ファイバ・グレーティングの波長分散値を3.15ps/nmに設定した。このような構成の増幅器で波長1.31μmの高速光信号の増幅を行った。
【0156】
[実施例23]
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、上記TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 ガラスを母材とし、コアにEr,Pr,TmまたはNdを添加して構成した光ファイバを用いた。分散媒質204として、石英光ファイバまたはチャープト・ファイバ・グレーティングを用いた。このような構成にて、各増幅波長での波長分散を補償しなから高速光パルスの増幅を行わせたところ、分散媒質204のないときに起こっていた光パルス波形のひずみは抑えられ、高速光通信システム中で使用可能なことが確認できた。
また、増幅用光ファイバ5として、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 −Al2 O3 系ガラスから構成した光ファイバを用いた場合でも、上記の効果を確認することができた。
【0157】
[実施例24]
本実施例は、上記実施例23におけるガラス系を母材とし、希土類元素も遷移金属元素も添加せずに構成したテルライト単一モード光ファイバ(カットオフ波長1.3μm、Δn1.4%、長さ1km)を用いて、ラマン増幅を行った。励起波長は1.48μmであり、1.5μm帯の光増幅を行った。
このとき、テルライト単一モード光ファイバの信号波長での波長分散は、−130ps/nmであった。分散媒質204として、スタンダード石英単一モード光ファイバを用いた。
【0158】
この分散媒質204をテルライト単一モード光ファイバ(増幅用光ファイバ)205の後段に配置して、光増幅を行った。この増幅用のスタンダード石英単一モード光ファイバ205を7.6kmの長さ使用したとき、(テルライト単一モード光ファイバの波長分散による)1.5μm帯の光パルスの波形ひずみを抑制することができた。
【0159】
また、従来のたとえば、特許文献9に記載のテルライト系ガラスを用いた場合よりも、広いラマン増幅帯域を得られることがわかった。これは、図15に示すように、Ta2 O5 を含むことにより、従来のものよりもラマン散乱スペクトルが広くなったためである。
【0160】
[実施例25]
本実施例では、Cr,Ni,またはTiを、前記実施例23で用いた組成のテルライト光ファイバのコアに添加して構成した増幅用光ファイバ205を用いて、1.5μm帯,1.5μm帯,1μm帯の光増幅をそれぞれ行った。分散媒質204としてスタンダード石英単一モード光ファイバを前記増幅用光ファイバ205の後段に接続し、高速光パルスの増幅を行ったところ、光パルスの波形ひずみ無しに光増幅をすることができた。
【0161】
以上の実施例では、本発明における光導波路が光ファイバである場合について説明したが、本発明における光導波路は、光ファイバばかりでなく平面型光導波路をも含むものである。本発明において、光導波路が平面型光導波路の場合でも、前記各実施例にて確認したと同様の本発明の効果が、実現される。
【0162】
以下、光導波路が平面型光導波路である場合の実施例を示す。
【0163】
[実施例26]
本実施例では、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 系ガラスを母材とし、コアにErの添加された平面型光導波路を図14の光ファイバ205の代わりに用いて、増幅媒体とした。分散媒質204として、光ファイバやファイバ・ブラッグ・グレーティングを用いてその光導波路の分散を補正した。その結果、分散媒質204を用いない場合に比べ、パルス波形のひずみを小さくなるように1.5μm帯の光増幅をすることができた。
上記光導波路に添加したドーパントとしてPr,Tm,Nd,Ni,Ti,Crを用いた場合でも、パルス波形のひずみを小さく光増幅をすることができた。
【0164】
以上説明したように、テルライト光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器において、上記実施例21〜26の光増幅器構造を取ることにより、増幅媒体であるテルライトファイバ自体の持つ波長分散による光パルス波形のひずみの発生を抑えることができる。
【0165】
以下の実施例27〜31では、従来のテルライトEDFAの増幅帯域を1.53μmより短波長側にかつ1.56μmより長波長側に拡大することを目的としている。
【0166】
それを実現するため、以下の実施例では、Er添加テルライト光ファイバを、連結された少なくとも一つの光ファイバとして用い、このEr添加テルライト光ファイバの前段にそれよりも短尺な(または、Er濃度およびファイバ長積の小さな)Er添加テルライト光ファイバもしくは、異種素材をホストとするEr添加光ファイバを連結し、増幅媒体としている。異種素材としては、フッ化物ガラス(Er添加ZrF4 系フッ化物ガラス又はInF3 系フッ化物ガラス)や石英系ガラス,フツリン酸ガラス,リン酸ガラス,カルコゲナイトガラスが使用できる。
このような増幅器構造をとることにより、従来のテルライトEDFAよりも広い波長域にて低雑音で動作できるEDFAを実現することができる。
【0167】
[実施例27]
図16は、本発明に係る光増幅器の一構成例を示す図である。図中、201a,201b,201cは光アイソレータであり、202a,202bは励起光を導入するための光カップラであり、203a,203bは励起光源であり、205,206は増幅用光ファイバである。
【0168】
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、Erの濃度100ppmのAl(アルミニウム)添加石英光ファイバ(長さ25m,カットオフ波長1.2μm,濃度ファイバ長積2500m・ppm)を用いた。また、励起光源203aとして、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。さらに、増幅用光ファイバ206として、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の前記B,C組成領域のガラスを母材とし、Er添加濃度500ppmで、カットオフ波長が1.3μm(濃度ファイバ長積6000m・ppm)で、長さを12mとしたテルライト光ファイバを用いた。また、励起光源203bとして、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。
【0169】
光源203aの励起光量を70mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.525μmから1.610μmの85nmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。
このような広帯域で低雑音動作するEDFAは従来の構成では実現されていない。
増幅用光ファイバ206を用いない場合は、1.54μmより短波長では、雑音指数は5dBより高く、1.525μmでは10dB以上の値となっており、また、20dB以上の利得は1.53μmから1.61μmの80nm帯でのみ得られた。
【0170】
本実施例において、低雑音帯が短波長に伸び、結果としてEDFAの動作波長帯が拡がったのは、Er濃度ファイバ長積の小さな増幅用光ファイバをテルライト光ファイバの前段に配置し、高利得低雑音で1.525μmから1.54μmの波長を増幅した後、テルライト光ファイバの増幅を起こさせているためである。
【0171】
つぎに、本実施例の一変形例について説明する。
増幅用光ファイバ205として、Erの濃度1000ppmのAl(アルミニウム)添加石英光ファイバ(長さ12m,カットオフ波長1.2μm,濃度ファイバ長積12,000m・ppm、この積はエルビウム添加テルライトファイバのものよりも大きい)を用いた。
光源203aの励起光量を70mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.535μmから1.610μmの75mmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。
このような広帯域で低雑音動作するEDFAは従来の構成では実現されていない。
【0172】
[実施例28]
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、Er濃度100ppmファイバ長3.5mのZrF4 系フッ化物光ファイバ(カットオフ波長1.2μm,Er濃度ファイバ長積3500m・ppm)を用い、励起光源203として、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。また、増幅用光ファイバ206として、上記TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の前記B,C組成領域のガラスを母材とし、Er添加濃度が500ppmで、長さ12m、カットオフ波長が1.3μm(Er濃度ファイバ長積6000m・ppm)のテルライト光ファイバを用いた。さらに、励起光源203bとして発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。
【0173】
光源203aの励起光量を70mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.525μmから1.610μmの85nmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。増幅用光ファイバ206を用いない場合は、1.54μmより短波長では、雑音指数は5dBより高く、1.525μmでは10dB以上の値となっており、また、20dB以上の利得は1.53μmから1.61μmの80nm帯でしか得られなかった。
【0174】
[実施例29]
本実施例では、増幅用光ファイバ205,206共に上記TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 の前記B,C組成領域のガラスを母材とし、Er添加濃度が500ppmで、カットオフ波長が1.3μmであるテルライト光ファイバを用いた。増幅用光ファイバ205ではファイバ長を3mとし、増幅用光ファイバ206ではファイバ長を12mとした。励起光源203aとしては、発振波長0.98μmの半導体レーザを用い、光源203bとしては、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いた。
【0175】
光源203の励起光量を100mWとし、光源203bの励起光量を150mWとしたとき、波長1.525μmから1.610μmの85nmの帯域で20dB以上の利得および5dB以下の雑音指数を確認することができた。増幅用光ファイバ206を用いない場合は、1.54μmより短波長では、雑音指数は5dBより高く、1.525μmでは10dB以上の値となっており、また、20dB以上の利得は1.53μmから1.61μmの80nm帯でしか得られなかった。
【0176】
以上の実施例では、全て増幅用光ファイバ205,206をそれぞれ前方励起および後方励起としたが、励起法は特にこれらに限定されるものではなく、双方向励起を含めたいずれの励起法を取っても良い。
【0177】
[実施例30]
本実施例では、増幅用光ファイバ205としては、実施例27〜29のものを用い、増幅用光ファイバ206として、TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5−Al2 O3 系ガラスを母材としたEr添加テルライト光ファイバ(Er濃度500ppm、長さ14m)を使用した。この場合も、増幅用光ファイバ4を用いることにより、用いないときよりも低雑音な増幅帯域の拡大を確認することができた。
【0178】
[実施例31]
本実施例では、増幅用光ファイバ205として、Erが添加されたフツリン酸光ファイバ,リン酸光ファイバ,カルコゲナイト光ファイバを用いた。増幅用光ファイバ205のEr濃度ファイバ長積が、増幅用光ファイバ206のテルライト光ファイバより小さいとき、低雑音な増幅帯域の拡大を確認することができた。つまり、増幅用光ファイバ205の素材は、本発明の効果を発現させるためには、大きな問題にはならず、Er濃度ファイバ長積が重要なパラメータとなる。
【0179】
以上の実施例40〜44では、Er添加濃度ファイバ長積の異なる2つの光ファイバを増幅媒体としたが、3つ以上であっても良い。このとき、Er添加濃度光ファイバ長積の最小の光ファイバは最も後段以外はいずれの位置でも良いが、好ましくは最前段が良い。
【0180】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。
【特許文献9】特開平11−236240
【非特許文献3】J.Mater.Res.,Vol.17.,No5,May 2002, @2002 Materials Research Society,pp.12081212
【非特許文献4】Erbium-Doped Fiber Amplifiers(エルビウム添加ファイバ増幅器)、Emmanuel Desurvire著(エマニエルデサヴィア著)、出版社John Wiley & Sons、1994年
【非特許文献5】K.O.Hill CLEO/PACIFIC RIM SHORT COURSE '97“Photosensitivity and Bragg Gratings in Optical Waveguide”
【非特許文献6】Kanamori et al., Proceeding of 9th International Symposium on Non Oxide Glasses, P.74, 1994
【産業上の利用可能性】
【0181】
以上説明したように、本発明によれば、Erの1.5μm帯の誘導放出断面積がより平坦になるファイバホストとして光増幅用テルライトガラスを提供するとともに、このガラスを光増幅媒体とした利得平坦化したテルライトEDFAを提供することが可能となる。また、従来のテルライトEDFAの動作波長帯域を拡大して、より広帯域な領域の低雑音動作するテルライトEDFAを提供することが可能となる。さらに、光学活性な希土類元素を添加してたとえば広帯域EDFAのような従来のガラスでは実現不可能だった機能を発現できるテルライトファイバを提供することを提供することが可能となる。
【0182】
また、上記テルライトガラスを用い、特に1.5μmから1.7μmの波長域でも動作可能な広帯域の光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた広帯域かつ低雑音特性を有する光増幅器、レーザ装置、さらに光源を提供することも可能となる。さらにまた、非石英系光ファイバと石英系光ファイバとを、あるいはコア屈折率が互いに異なる非石英系光ファイバ同士を確実にかつ低損失、低反射で接続する汎用的・実用的な接続技術を提供することが可能となる。したがって、上記光増幅媒体、この光増幅媒体を用いた光増幅器およびレーザ装置の特性と、本来Er添加テルライト光ファイバ増幅器のもつ広帯域性を合わせると波長多重光伝送システムや光CATVシステムの高性能化を進めることができ、その結果、それらシステムを用いたサービスの高度化、経済化に大きく寄与できるという利点がある。
【0183】
また、広帯域の増幅器として波長多重光伝送システムで利用すれば伝送容量の格段の増大が期待でき、情報通信の低コスト化に寄与できる。また、光CATVシステムにおいて、そのゲインチルトが小さい特性を利用して使用すれば、従来は困難であった波長多重による高品質な映像の分配や中継が可能となり、やはり光CATVの低コスト化が達成できるという大きなメリットがある。さらに、レーザ装置として応用すれば各種波長多重光伝送システムの低コスト化や光計測の高性能化に寄与できる。
【0184】
またさらに、希土類添加光ファイバ増幅器としてではなく、広帯域ラマン増幅器の増幅媒体としての応用も光通信システムにおいて可能である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の光機能導波路材料であるガラスの第1の組成領域Aを示す座標図である。
【図2】本発明の光機能導波路材料であるガラスの第2の組成領域Bを示す座標図である。
【図3】本発明の光機能導波路材料であるガラスの第3の組成領域Cを示す座標図である。
【図4】本発明の光機能導波路材料であるガラスの結晶化温度と転移温度の差値ΔTを組成別に示すグラフである。
【図5】本発明の光機能導波路材料であるガラスの屈折率nのTa2 O5 添加量依存性を示すグラフである。
【図6】Er3+のエネルギー準位図である。
【図7】テルライト系ガラス中のErの 4I13/2→ 4I15/2発光スペクトルを表す図である。
【図8】本発明にもとづく光増幅器の一構成例を模式的に示す図である。
【図9】本発明にもとづくレーザ装置の一例を示す構成図である。
【図10】本発明にもとづくレーザ装置の別の例を示す構成図である。
【図11】本発明にもとづくレーザ装置で得られた利得スペクトルを表わす図である。
【図12】本発明にもとづくレーザ装置の他の例を示す構成図である。
【図13】TeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 ガラス、およびTeO2 −BaO−SrO−Ta2 O5 −Al2 O3 ガラス中のErの1.5μm発光スペクトルをそれぞれ示す図である。
【図14】本発明にもとづく光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器の一構成例を示す図である。
【図15】本発明にもとづくガラスと従来のガラスのラマン散乱スペクトルを示す図である。
【図16】本発明にもとづく光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器の別の構成例を示す図である。
【図17】3準位系(Er3+の1.54μm付近)のエネルギー準位図(ただし、3準位系ではN1 ≠0)である。
【図18】4準位系(Nd3+の1.06μm付近)のエネルギー準位図(4準位系ではN1 =0)である。
【図19】石英系EDFAとテルライトEDFAの利得の波長依存性を示す模式図である。
【図20】損失の大小による増幅帯域の相違状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0186】
111,111′ 励起用半導体レーザ
112,112′ 光カップラ
113 増幅用光ファイバ
114 光アイソレータ
115 増幅用光ファイバ
116 ミラー
117 フィルタ
118 ミラー
201 光アイソレータ
202 励起光源
203 光カップラ
204 分散媒質
205 増幅用光ファイバ
206 増幅用光ファイバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項2】
前記光機能導波路材料におけるTa2 O5 の添加量は、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)
の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光機能導波路材料。
【請求項3】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦94(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項4】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)、
4≦(BaO+SrO)≦12(モル%)、および
80≦TeO2 ≦88(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項5】
少なくともコアにEr(エルビウム)を添加した光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、この材料ガラスにAl2 O3 を加えた組成を有すること特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光機能導波路材料。
【請求項6】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)、
0<Al2 O3 ≦4(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項7】
コアガラスとクラッドガラスとを有する光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料からなることを特徴とする光増幅媒体。
【請求項8】
前記コアガラスの光機能導波路材料または前記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Erまたは、Erおよびイッテルビウム(Yb)が添加されていることを特徴とする請求項7に記載の光増幅媒体。
【請求項9】
前記コアガラスの光機能導波路材料または前記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、ホウ素、リン、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の光増幅媒体。
【請求項10】
前記コアガラスの光機能導波路材料または前記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Gd,Eu,Dy,Ho,Tm、およびYbからなる群から選択される元素が添加されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の光増幅媒体。
【請求項11】
少なくともコアにErを添加した材料ガラスからなる光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、上記材料ガラスの組成はAl2 O3 を加えた光機能導波路材料であること特徴とする請求項9に記載の光増幅媒体。
【請求項12】
カットオフ波長が0.4μmから2.5μmであることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の光増幅媒体。
【請求項13】
光共振器と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光共振器に備わる光増幅媒体の少なくとも一つは、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【請求項14】
少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置したレーザ装置であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【請求項15】
光増幅媒体と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光増幅媒体は、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【請求項16】
光増幅媒体と、この光増幅媒体を励起する励起光および信号光をその増幅媒体に入力する入力手段とを備えた光増幅器であって、上記光増幅媒体は、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【請求項17】
少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置した光増幅器であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【請求項18】
光機能導波路材料を増幅媒体とする光増幅器であって、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体の前後の少なくとも1ケ所に、その光増幅媒体とは異なる符号の波長分散値によって分散を補償する分散媒質が設けられていることを特徴とする光増幅器。
【請求項19】
前記光増幅媒体が、希土類元素および/または遷移金属元素を添加した光機能導波路材料からなる光導波路であることを特徴とする請求項18に記載の光増幅器。
【請求項20】
前記分散媒質が、光ファイバ、またはファイバ・ブラッグ・グレーティングであることを特徴とする請求項18または19に記載の光増幅器。
【請求項21】
Erが添加された光ファイバを増幅媒体として含む光増幅部が複数個直列に配置されてなる光増幅器であって、
上記複数の光増幅部の第2段以降の少なくとも一つには、光ファイバ素材として請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料からなる光ファイバが用いられ、この光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の光増幅部には、Er添加濃度およびファイバ長積が上記光機能導波路材料光ファイバより小さいEr添加光ファイバが用いられていることを特徴とする光増幅器。
【請求項22】
前記増幅媒体の素材として、前記光機能導波路材料光ファイバとともに、フッ化物光ファイバ,石英系光ファイバ,フツリン酸光ファイバ,リン酸系光ファイバまたはカルコゲナイド光ファイバを用いることを特徴とする請求項21に記載の光増幅器。
【請求項23】
前記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の少なくとも一つの光増幅部に、その光機能導波路材料光ファイバ以外の光ファイバ素材が用いられていることを特徴とする請求項21または22に記載の光増幅器。
【請求項24】
前記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段に配置された少なくとも一つの光ファイバのEr添加濃度および光ファイバ長積が、その光機能導波路材料光ファイバのものより小さいことを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の光増幅器。
【請求項25】
Erが添加された光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器であって、
Er添加濃度および光ファイバ長積の異なる光機能導波路材料光ファイバを少なくとも2つ以上直列に配置し、その配列の中では光ファイバ長積の小さな光ファイバが光ファイバ長積の大きな光ファイバの前段に配置されている配列構造を少なくとも一ケ所含むことを特徴とする請求項14〜24のいずれかに記載の光増幅器。
【請求項26】
請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなる光機能導波路材料、または光導波路が請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体を用いたことを特徴とする光源。
【請求項27】
請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなるガラス材料により形成される光導波路を光増幅媒体としたことを特徴とする光増幅器。
【請求項28】
前記光導波路または前期光ファイバの少なくとも一つは、その端に光カップラを配置し、この光カップラの少なくとも一つの端子に反射体を具備したことを特徴とする請求項27に記載の光増幅器。
【請求項29】
前記反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする請求項28に記載の光源。
【請求項30】
前記反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする請求項27または28に記載の光増幅器。
【請求項1】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項2】
前記光機能導波路材料におけるTa2 O5 の添加量は、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)
の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光機能導波路材料。
【請求項3】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦94(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項4】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
6≦Ta2 O5 ≦12(モル%)、
4≦(BaO+SrO)≦12(モル%)、および
80≦TeO2 ≦88(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項5】
少なくともコアにEr(エルビウム)を添加した光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、この材料ガラスにAl2 O3 を加えた組成を有すること特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光機能導波路材料。
【請求項6】
光ファイバまたは光導波路用の材料ガラスであって、
0<Ta2 O5 ≦12(モル%)、
0<(BaO+SrO)≦20(モル%)、および
80≦TeO2 ≦97(モル%)、
0<Al2 O3 ≦4(モル%)
からなる組成を持つことを特徴とする光機能導波路材料。
【請求項7】
コアガラスとクラッドガラスとを有する光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料からなることを特徴とする光増幅媒体。
【請求項8】
前記コアガラスの光機能導波路材料または前記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Erまたは、Erおよびイッテルビウム(Yb)が添加されていることを特徴とする請求項7に記載の光増幅媒体。
【請求項9】
前記コアガラスの光機能導波路材料または前記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、ホウ素、リン、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の光増幅媒体。
【請求項10】
前記コアガラスの光機能導波路材料または前記クラッドガラスの光機能導波路材料の少なくとも一つは、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Gd,Eu,Dy,Ho,Tm、およびYbからなる群から選択される元素が添加されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の光増幅媒体。
【請求項11】
少なくともコアにErを添加した材料ガラスからなる光ファイバまたは光導波路からなる光増幅媒体であって、上記材料ガラスの組成はAl2 O3 を加えた光機能導波路材料であること特徴とする請求項9に記載の光増幅媒体。
【請求項12】
カットオフ波長が0.4μmから2.5μmであることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の光増幅媒体。
【請求項13】
光共振器と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光共振器に備わる光増幅媒体の少なくとも一つは、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【請求項14】
少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置したレーザ装置であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【請求項15】
光増幅媒体と励起光源を有するレーザ装置であって、上記光増幅媒体は、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とするレーザ装置。
【請求項16】
光増幅媒体と、この光増幅媒体を励起する励起光および信号光をその増幅媒体に入力する入力手段とを備えた光増幅器であって、上記光増幅媒体は、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【請求項17】
少なくともコアにErを添加した光ファイバよりなる光増幅媒体を複数直列に配置した光増幅器であって、上記光増幅媒体の少なくとも一つは、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体からなることを特徴とする光増幅器。
【請求項18】
光機能導波路材料を増幅媒体とする光増幅器であって、請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体の前後の少なくとも1ケ所に、その光増幅媒体とは異なる符号の波長分散値によって分散を補償する分散媒質が設けられていることを特徴とする光増幅器。
【請求項19】
前記光増幅媒体が、希土類元素および/または遷移金属元素を添加した光機能導波路材料からなる光導波路であることを特徴とする請求項18に記載の光増幅器。
【請求項20】
前記分散媒質が、光ファイバ、またはファイバ・ブラッグ・グレーティングであることを特徴とする請求項18または19に記載の光増幅器。
【請求項21】
Erが添加された光ファイバを増幅媒体として含む光増幅部が複数個直列に配置されてなる光増幅器であって、
上記複数の光増幅部の第2段以降の少なくとも一つには、光ファイバ素材として請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料からなる光ファイバが用いられ、この光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の光増幅部には、Er添加濃度およびファイバ長積が上記光機能導波路材料光ファイバより小さいEr添加光ファイバが用いられていることを特徴とする光増幅器。
【請求項22】
前記増幅媒体の素材として、前記光機能導波路材料光ファイバとともに、フッ化物光ファイバ,石英系光ファイバ,フツリン酸光ファイバ,リン酸系光ファイバまたはカルコゲナイド光ファイバを用いることを特徴とする請求項21に記載の光増幅器。
【請求項23】
前記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段の少なくとも一つの光増幅部に、その光機能導波路材料光ファイバ以外の光ファイバ素材が用いられていることを特徴とする請求項21または22に記載の光増幅器。
【請求項24】
前記光機能導波路材料光ファイバからなる光増幅部の前段に配置された少なくとも一つの光ファイバのEr添加濃度および光ファイバ長積が、その光機能導波路材料光ファイバのものより小さいことを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の光増幅器。
【請求項25】
Erが添加された光ファイバを増幅媒体として用いた光増幅器であって、
Er添加濃度および光ファイバ長積の異なる光機能導波路材料光ファイバを少なくとも2つ以上直列に配置し、その配列の中では光ファイバ長積の小さな光ファイバが光ファイバ長積の大きな光ファイバの前段に配置されている配列構造を少なくとも一ケ所含むことを特徴とする請求項14〜24のいずれかに記載の光増幅器。
【請求項26】
請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなる光機能導波路材料、または光導波路が請求項7〜12のいずれかに記載の光増幅媒体を用いたことを特徴とする光源。
【請求項27】
請求項1〜6のいずれかに記載の光機能導波路材料にErを添加してなるガラス材料により形成される光導波路を光増幅媒体としたことを特徴とする光増幅器。
【請求項28】
前記光導波路または前期光ファイバの少なくとも一つは、その端に光カップラを配置し、この光カップラの少なくとも一つの端子に反射体を具備したことを特徴とする請求項27に記載の光増幅器。
【請求項29】
前記反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする請求項28に記載の光源。
【請求項30】
前記反射体が誘電体多層膜フィルタまたはファイバ・ブラッグ・グレーティングからなることを特徴とする請求項27または28に記載の光増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−62916(P2006−62916A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248738(P2004−248738)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(592032636)学校法人トヨタ学園 (57)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(592032636)学校法人トヨタ学園 (57)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】
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