説明

光波長合分波器

【課題】従来の光波長合分波器は、合波用チップ及び分波用チップの2つのチップを備えるので、大型で製造コストが高い課題がある。また、別の光波長合分波器は、2つの回路が形成されているので、一方の回路で合波を行い他方の回路で分波を行うことができる。だが、別の光波長合分波器は、2つの回路の中心波長の差が原因となり、光学特性が劣化する課題がある。
【解決手段】光波長合分波器は、(0.5+N)に所定の長さを乗じた距離で隣接し、第1スラブ導波路の中心軸の延長線が2本の第1光導波路の中間点を通過する2本の第1光導波路と所定の長さの半分の距離で隣接する複数の第2光導波路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の光導波路長差を有する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路とアレイ導波路の両端の側に形成されたスラブ導波路をコアに形成した光波長合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アレイ導波路を用いた光波長合分波器は、光ファイバー通信網等で必要とされる波長多重化技術の要となる主要部品として、期待されている。
【0003】
図6を用いて、従来の光波長合分波器90を例に、従来の光波長合分波器について説明する。図6は、光波長合分波器90の概念図である。図6には、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、アレイ導波路24、第2スラブ導波路25、第2光導波路26、第1チップ92a、第2チップ92b及びパッケージ94が図示されている。
【0004】
第1チップ92a及び第2チップ92bに、基板上に積層されたコアのパターンとして、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、第2スラブ導波路25及び第2光導波路26が、形成される。アレイ導波路24は、複数のチャネル導波路23からなる。また、パッケージ94は、第1チップ92a及び第2チップ92bの2つのチップからなる。
【0005】
光波長合分波器90は、第1チップ92aの第2光導波路26に入力された光信号を合波して第1光導波路21から出力することができる。また、光波長合分波器90は、第2チップ92bの第1光導波路21に入力された光信号を分波して第2光導波路26から出力することができる。パッケージ94に2つのチップが形成されているので、光波長合分波器90は、合波と分波を同時にすることができる。
【0006】
図7を用いて、特許文献1で開示される光波長合分波器91を例に、従来の別の光波長合分波器について説明する。図7は、光波長合分波器91の概念図である。図7には、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、アレイ導波路24a、アレイ導波路24b、第2スラブ導波路25、第2光導波路26及びチップ93が図示されている。
【0007】
チップ93に、基板上に積層されたコアのパターンとして、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、第2スラブ導波路25及び第2光導波路26が、2組形成される。言い換えると、チップ93は、合波及び分波を同時にすることができる2つのパターンが形成される。チップ93に2つのパターンが形成されているので、光波長合分波器91は、合波及び分波を同時にすることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−14245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6の光波長合分波器90は、2つのチップを備えるので、大型で製造コストが高くなる課題がある。図7の光波長合分波器91は、図6の光波長合分波器90の課題を解決する為になされたものである。
【0010】
しかし、図7の光波長合分波器91は、2つのパターンの中心波長の差が原因となり、光学特性が劣化する課題がある。図8及び図9を用いて、前述した課題について説明する。
【0011】
図8は、エッチング工程における基板の断面図である。図8には、光源95、基板96、アンダークラッド層97a、パターン98a、パターン98b及びフォトレジスト99が図示されている。
【0012】
フォトリソグラフィ及びエッチングで前述したコアにパターンを形成する際、所望の回路が描かれたフォトマスク(図8には図示していない。)を介して、フォトレジスト99は、露光される。フォトレジスト99の露光面と光源95の出力光とのなす角が同じであれば、パターン98a及びパターン98bの形状は、略同一になる(図8には図示していない。)。だが、フォトレジスト99の露光面と光源95の出力光とのなす角は、基板96の位置によって異なることがある(図8を参照。)。特に、図7のアレイ導波路24a及びアレイ導波路24bのように位置が離れる箇所では、フォトレジスト99の露光面と光源95の出力光とのなす角は、異なる場合がある。フォトレジスト99の露光面と光源95の出力光とのなす角が異なる状態でフォトレジスト99を露光し、エッチングを行うと、パターン98a及びパターン98bの形状は、異なる場合がある。例えば、パターン98aの断面は、平行四辺形であるが、パターン98bの断面の形状は、長方形となっている。
【0013】
また、エッチング条件によっては、パターン98a及びパターン98bの厚みが異なることもある(図8には図示していない。)。パターン98a及びパターン98bの形状や厚みが異なると、光波長合分波器91は、2つのパターンの光路長が異なる場合がある。2つのパターンの光路長が異なると、光波長合分波器91は、中心波長の差を有することになる。
【0014】
図9は、オーバークラッド層を積層した後の基板の断面図である。図9には、基板96、アンダークラッド層97a、オーバークラッド層97b、パターン98a及びパターン98bが図示されている。
【0015】
図9に示すように、形状や厚みが異なるパターン98a及びパターン98bが形成された基板96に、オーバークラッド層97bを積層すると、オーバークラッド層97b及びアンダークラッド層97aからなるクラッド層の肉厚は、均一とならない。クラッド層の肉厚が均一でないと、内部応力が均一とならずに、クラッド層内部の屈折率が変化する。クラッド層内部の屈折率が変化すると、光波長合分波器91は、2つのパターンの光路長が異なる場合がある。2つのパターンの光路長が異なると、光波長合分波器91は、中心波長の差を有することになる。
【0016】
基板を加熱又は冷却して、中心波長は、調整できることが知られている。例えば、ヒーターやペルチェ素子を用いて、基板を加熱又は冷却することができる。だが、光波長合分波器91は、チップ93に2つのパターンが形成されているので、加熱又は冷却して中心波長を調整することは難しい。
【0017】
上記をまとめると、エッチング条件等の違いで、図7の光波長合分波器91は、コアに形成されるパターンの形状や厚みが異なり、クラッド層の肉厚が均一にならず、中心波長の差を有することがある。中心波長の差を有する光波長合分波器91は、光学特性が劣化する課題がある。
【0018】
本発明は、前記課題を解決する為になされたもので、小型で光学特性が劣化しにくい光波長合分波器を提供することを目的とする。また、2系統の光通信網を伝搬する前記光信号をそれぞれ分波、合波及び分波又はそれぞれ分波することができる光波長合分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、(0.5+N)に所定の長さを乗じた距離で隣接し、前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線が前記2本の第1光導波路の中間点を通過する前記2本の第1光導波路と所定の長さの半分の距離で隣接する前記複数の第2光導波路とを備える光波長合分波器である。
【0020】
具体的に、本願第1の発明は、基板上に形成されたクラッド層と前記クラッド層に囲まれ前記クラッド層より高い屈折率のコアとを有し、前記コアのパターンとして、複数の波長の光信号を伝搬する2本の第1光導波路と、前記第1光導波路の一方の端に接続し、光信号を回折する第1スラブ導波路と、一定の光導波路長差を有し、一方の端が前記第1スラブ導波路の前記第1光導波路が位置する側と対向する側に接続する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路の他方の端に接続し、光信号を回折する第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路の前記アレイ導波路が位置する側と対向する側に接続し、光信号を伝搬する複数の第2光導波路と、が形成された光波長合分波器であって、前記2本の第1光導波路は、(0.5+N)に所定の長さを乗じた距離で隣接し、前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線は、前記2本の第1光導波路の中間点を通過し、前記複数の第2光導波路は、前記所定の長さの半分の距離で隣接することを特徴とする光波長合分波器(但し、Nは零又は任意の自然数。)である。
【0021】
前記光波長合分波器は、中心波長の差を少なくしつつ、前記パターンを1つのチップに形成することができる。従って、小型で光学特性が劣化しにくい光波長合分波器を提供することができる。
【0022】
上記目的を達成するために、本願第2の発明は、第2スラブ導波路が結合点の一部又は全部及び中間点の一部又は全部に形成され、一方の第1光導波路及び他方の第1光導波路が一方の前記第1光導波路及び他方の第1光導波路の中間点を第1スラブ導波路の中心軸の延長線が通過し、一方の第1光導波路を伝搬する光信号が結合点の一部又は全部に形成された第2光導波路との間で結合し、他の前記第1光導波路を伝搬する光信号が中間点の一部又は全部に形成された第2光導波路との間で結合するように形成される光波長合分波器である。
【0023】
具体的に、本願第2の発明は、基板上に形成されたクラッド層と前記クラッド層に囲まれ前記クラッド層より高い屈折率のコアとを有し、前記コアのパターンとして、一定の波長間隔を有する光信号を伝搬する2本の第1光導波路と、前記第1光導波路の一方の端に接続し、光信号を回折する第1スラブ導波路と、一定の光導波路長差を有し、一方の端が前記第1スラブ導波路の前記第1光導波路が位置する側と対向する側に接続する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路の他方の端に接続し、光信号を回折する第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路の前記アレイ導波路が位置する側と対向する側に接続し、それぞれが単一の波長の光信号を伝搬する複数の第2光導波路と、が形成された光波長合分波器であって、前記第2光導波路は、一方の前記第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記第2スラブ導波路の前記第2光導波路が接続する面に結合する結合点の一部又は全部及び前記第2スラブ導波路の前記結合点の中間となる中間点の一部又は全部に形成され、前記一方の第1光導波路及び他方の前記第1光導波路は、前記一方の第1光導波路及び前記他方の第1光導波路の中間点を前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線が通過し、前記一方の第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記結合点の一部又は全部に形成された前記第2光導波路に結合し、前記他の第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記中間点の一部又は全部に形成された前記第2光導波路に結合するように形成されることを特徴とする光波長合分波器である。
【0024】
前記光波長合分波器は、中心波長の差を少なくしつつ、前記パターンを1つのチップに形成することができる。従って、小型で光学特性が劣化しにくい光波長合分波器を提供することができる。
【0025】
本願第2の発明において、前記一方の第1光導波路は、前記一定の波長間隔を有する前記光信号が入力され、前記第2スラブ導波路の前記結合点に形成された前記第2光導波路は、分波された前記単一の波長を有する前記光信号をそれぞれ出力し、前記他方の第1光導波路は、前記一定の波長間隔を有する前記光信号が入力され、前記第2スラブ導波路の前記中間点に形成された前記第2光導波路は、分波された前記単一の波長を有する前記光信号をそれぞれ出力することが好ましい。
【0026】
前記光波長合分波器は、前記一方の第1光導波路に入力された前記光信号を分波して前記第2光導波路から出力し、前記他方の第1光導波路に入力された前記光信号を分波して前記第2光導波路から出力することができる。従って、2系統の光通信網を伝搬する前記光信号をそれぞれ分波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【0027】
本願第2の発明において、前記第2スラブ導波路の前記結合点に形成された前記第2光導波路は、前記単一の波長を有する前記光信号がそれぞれ入力され、前記一方の第1光導波路は、合波された前記一定の波長間隔を有する前記光信号を出力し、前記他方の第1光導波路は、前記一定の波長間隔を有する前記光信号が入力され、前記第2スラブ導波路の前記中間点に形成された前記第2光導波路は、分波された前記単一の波長を有する前記光信号をそれぞれ出力することが好ましい。
【0028】
前記光波長合分波器は、前記第2光導波路に入力された前記光信号を合波して前記一方の第1光導波路から出力し、前記他方の第1光導波路に入力された前記光信号を分波して前記第2光導波路から出力することができる。従って、2系統の光通信網を伝搬する前記光信号を合波及び分波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【0029】
本願第2の発明において、前記第2スラブ導波路の前記結合点に形成された前記第2光導波路は、前記単一の波長を有する前記光信号がそれぞれ入力され、前記一方の第1光導波路は、合波された前記一定の波長間隔を有する前記光信号を出力し、前記第2スラブ導波路の前記中間点に形成された前記第2光導波路は、前記単一の波長を有する前記光信号がそれぞれ入力され、前記他方の第1光導波路は、合波された前記一定の波長間隔を有する前記光信号を出力することが好ましい。
【0030】
前記光波長合分波器は、前記第2光導波路に入力された前記光信号を合波して前記一方の第1光導波路及び前記他方の第1光導波路から出力することができる。従って、2系統の光通信網を伝搬する前記光信号をそれぞれ合波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、小型で光学特性が劣化しにくい光波長合分波器を提供することができる。また、2系統の光通信網を伝搬する前記光信号をそれぞれ分波、合波及び分波又はそれぞれ分波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものでない。
【0033】
(実施の形態1)
本願第1の実施形態は、基板上に形成されたクラッド層と前記クラッド層に囲まれ前記クラッド層より高い屈折率のコアとを有し、前記コアのパターンとして、複数の波長の光信号を伝搬する2本の第1光導波路と、前記第1光導波路の一方の端に接続し、光信号を回折する第1スラブ導波路と、一定の光導波路長差を有し、一方の端が前記第1スラブ導波路の前記第1光導波路が位置する側と対向する側に接続する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路の他方の端に接続し、光信号を回折する第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路の前記アレイ導波路が位置する側と対向する側に接続し、光信号を伝搬する複数の第2光導波路と、が形成された光波長合分波器であって、前記2本の第1光導波路は、(0.5+N)に所定の長さを乗じた距離で隣接し、前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線は、前記2本の第1光導波路の中間点を通過し、前記複数の第2光導波路は、前記所定の長さの半分の距離で隣接することを特徴とする光波長合分波器(但し、Nは零又は任意の自然数。)である。
【0034】
図1から図3を用いて第1の実施形態に係る光波長合分波器10を説明する。図1は、光波長合分波器10の概念図である。光波長合分波器10は、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、アレイ導波路24、第2スラブ導波路25及び第2光導波路26を備える。
【0035】
図2は、第1光導波路21と第1スラブ導波路22との接続箇所の拡大図である。図2には、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、第1光導波路の距離40及び第1スラブ導波路の中心軸の延長線41が図示されている。
【0036】
図3は、第2スラブ導波路25と第2光導波路26との接続箇所の拡大図である。図3には、第2スラブ導波路25、第2光導波路26及び第2光導波路の距離42が図示されている。
【0037】
光波長合分波器10の製造について説明する。光波長合分波器10は、基板(図1から図3には図示していない。)に形成されてもよい。例えば、基板の素材としては、シリコン(Si)又は石英ガラス(SiO)をあげることができる。クラッド層は、前述した基板に石英ガラスを積層して形成してもよい。コアは、屈折率を高くする不純物を混合した石英ガラスを前述したクラッド層に積層して形成してもよい。例えば、クラッド層やコアを積層する方法としては、火炎蓄積法(FHD法)、CVD法(化学気相成長法)又はスパッタ法をあげることができる。
【0038】
また、クラッド層は、屈折率を低くする不純物を混合した石英ガラスを前述した基板に積層して形成してもよい。コアは、前述したクラッド層に石英ガラスを積層して形成してもよい。
【0039】
例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングで前述したコアにパターンとして、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、アレイ導波路24、第2スラブ導波路25及び第2光導波路26は、形成されてもよい。
【0040】
図2に示すように、2本の第1光導波路21の中間点を第1スラブ導波路の中心軸の延長線41が通過するように、2本の第1光導波路21は、形成されてもよい。
【0041】
また、2本の第1光導波路21は、第1光導波路の距離40が(0.5+N)に所定の長さAを乗じた距離となるように形成されてもよい。Nは、零又は任意の自然数である。なお、所定の長さAは、後述する第2導波路の形成にも関係する。
【0042】
所定の長さAは、光波長合分波器10の中心波長、チャネル数及び波長間隔より試算してもよい。例えば、所定の長さAは、10マイクロメートル、20マイクロメートル等であってもよい。また、第1光導波路の距離40は、30マイクロメートル、60マイクロメートルであってもよい。なお、所定の長さA及び第1光導波路の距離40は、上記に限定されるものではない。
【0043】
第1スラブ導波路22は、第1光導波路21の一方の端に接続するように形成されてもよい。
【0044】
複数のチャネル導波路23は、一方の端が第1スラブ導波路22の第1光導波路21が位置する側と対向する側に接続するように形成されてもよい。また、チャネル導波路23のそれぞれは、一定の光導波路長差を有する。アレイ導波路24は、複数のチャネル導波路23からなるものである。
【0045】
第2スラブ導波路25は、アレイ導波路24の第1スラブ導波路22に接続する端と対向する他方の端に接続するように形成されてもよい。
【0046】
第2光導波路26は、第2スラブ導波路25のアレイ導波路24が位置する側と対向する側に接続するように形成されてもよい。図3に示すように、第2光導波路26は、第2光導波路の距離42が所定の長さAの半分となるように形成されてもよい。
【0047】
前述したコアに、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、アレイ導波路24、第2スラブ導波路25及び第2光導波路26をパターンとして形成したら、クラッド層を再度積層してもよい。
【0048】
クラッド層を再度積層したら、前述した基板を、1000度以上で加熱してもよい。前述した基板の上面に積層したクラッド層と再度積層したクラッド層の屈折率が同じであれば、加熱後に一体となり1つのクラッド層を形成する。
【0049】
なお、以下のようにすると、後述する第2の実施形態に係る光波長合分波器11を製造することができる。第2光導波路26は、一方の第1光導波路21を伝搬する光信号が、第2スラブ導波路25の第2光導波路26が接続する面に結合する結合点の全てに形成されてもよい。また、第2光導波路26は、前述した結合点の一部に形成されてもよい。さらに、第2光導波路26は、第2スラブ導波路25の第2光導波路26が接続する面であって、前述した結合点の中間となる中間点の全てに形成されてもよい。また、第2光導波路26は、前述した第2スラブ導波路25の中間点の一部に形成されてもよい。
【0050】
一方の第1光導波路21及び他方の第1光導波路21は、一方の第1光導波路21及び他方の第1光導波路21の中間点を第1スラブ導波路22の中心軸の延長線が通過するように形成される。一方の第1光導波路21は、一方の第1光導波路21を伝搬する光信号が前述した結合点の一部又は全部に形成された第2光導波路26との間で結合するように形成される。また、他方の第1光導波路21は、他方の第1光導波路21を伝搬する光信号が前述した第2スラブ導波路25の中間点の一部又は全部に形成された第2光導波路26との間で結合するように形成される。
【0051】
すなわち、前述した結合点とは、一方の第1光導波路21を伝搬する光信号が分波されて、第2スラブ導波路25の第2光導波路26が接続する面に結合する箇所となる。また、前述した第2スラブ導波路25の中間点とは、他方の第1光導波路21を伝搬する光信号が分波されて、第2スラブ導波路25の第2光導波路26が接続する面に結合する箇所となる。以上のように、第2の実施形態に係る光波長合分波器11を製造することができる。
【0052】
光波長合分波器10が、小型で光学特性が劣化しにくい点について説明する。光波長合分波器10は、同じパターンを前述したコアの離れた場所に形成する必要はない。例えば、図1のアレイ導波路24は、図7のアレイ導波路24a及びアレイ導波路24bのように、離れた場所に形成されることはない。よって、前述したコアの形状や厚みが異なることは少なく、クラッド層の肉厚が均一に近づき、中心波長の差が少なくなる。光波長合分波器10は、中心波長の差を少なくしつつ、前述したコアに形成するパターンを1つのチップに形成することができる。中心波長の差が少なくなると、光波長合分波器10は、光学特性が劣化しにくくなる。従って、小型で光学特性が劣化しにくい光波長合分波器を提供することができる。
【0053】
(実施の形態2)
本願第2の実施形態は、基板上に形成されたクラッド層と前記クラッド層に囲まれ前記クラッド層より高い屈折率のコアとを有し、前記コアのパターンとして、一定の波長間隔を有する光信号を伝搬する2本の第1光導波路と、前記第1光導波路の一方の端に接続し、光信号を回折する第1スラブ導波路と、一定の光導波路長差を有し、一方の端が前記第1スラブ導波路の前記第1光導波路が位置する側と対向する側に接続する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路の他方の端に接続し、光信号を回折する第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路の前記アレイ導波路が位置する側と対向する側に接続し、それぞれが単一の波長の光信号を伝搬する複数の第2光導波路と、が形成された光波長合分波器であって、前記第2光導波路は、一方の前記第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記第2スラブ導波路の前記第2光導波路が接続する面に結合する結合点の一部又は全部及び前記第2スラブ導波路の前記結合点の中間となる中間点の一部又は全部に形成され、前記一方の第1光導波路及び他方の前記第1光導波路は、前記一方の第1光導波路及び前記他方の第1光導波路の中間点を前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線が通過し、前記一方の第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記結合点の一部又は全部に形成された前記第2光導波路に結合し、前記他の第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記中間点の一部又は全部に形成された前記第2光導波路に結合するように形成されることを特徴とする光波長合分波器である。
【0054】
図4を用いて、本願第2の実施形態に係る光波長合分波器11について説明する。図4は、光波長合分波器11の概念図である。光波長合分波器11は、第1光導波路21、第1スラブ導波路22、チャネル導波路23、アレイ導波路24、第2スラブ導波路25及び第2光導波路26を備える。
【0055】
光波長合分波器11は、前述したように、図1の光波長合分波器10と同様に製造することができる。
【0056】
例えば、一定の波長間隔を有する光信号が、第1光導波路21に入力される。第1光導波路21から出力された光信号は、第1スラブ導波路22で回折され、チャネル導波路23に入力される。それぞれのチャネル導波路23が一定の光導波路長差を有していることで、チャネル導波路23から出力された光信号は、位相が一定量ずれることになる。位相が一定量ずれている光信号は、第2スラブ導波路25で回折された際に互いに干渉する。干渉された結果、光信号は、波長ごとに分波され、特定の第2光導波路26に出力される。
【0057】
また、単一の波長を有する光信号は、特定の第2光導波路26に入力される。第2光導波路26から出力された光信号は、第2スラブ導波路25で回折され、チャネル導波路23に入力される。それぞれのチャネル導波路23が一定の光導波路長差を有していることで、チャネル導波路23から出力された光信号は、位相が一定量ずれることになる。位相が一定量ずれている光信号は、第1スラブ導波路22で回折された際に互いに干渉する。干渉された結果、光信号は、一定の波長間隔で合波され、第1光導波路21に出力される。
【0058】
図1の光波長合分波器10と同様に、光波長合分波器11は、中心波長の差を少なくしつつ、前述したパターンを1つのチップに形成することができる。従って、小型で光学特性が劣化しにくい光波長合分波器を提供することができる。
【0059】
本願第2の実施形態において、一方の第1光導波路21に一定の波長間隔を有する光信号を入力すると、光波長合分波器11は、第2スラブ導波路25の結合点に形成された第2光導波路26から、分波された単一の波長を有する光信号を出力することができる。また、光波長合分波器11は、他方の第1光導波路21に一定の波長間隔を有する光信号を入力すると、第2スラブ導波路25の中間点に形成された第2光導波路26から、分波された単一の波長を有する光信号を出力することができる。従って、2系統の光通信網を伝搬する光信号をそれぞれ分波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【0060】
本願第2の実施形態において、第2スラブ導波路25の結合点に形成された第2光導波路26に単一の波長を有する光信号を入力すると、光波長合分波器11は、一方の第1光導波路21から、合波された一定の波長間隔を有する光信号を出力することができる。また、他方の第1光導波路21に一定の波長間隔を有する光信号を入力すると、光波長合分波器11は、第2スラブ導波路25の中間点に形成された第2光導波路26から、分波された単一の波長を有する光信号を出力することができる。従って、2系統の光通信網を伝搬する光信号を合波及び分波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【0061】
本願第2の実施形態において、第2スラブ導波路25の結合点に形成された第2光導波路26に単一の波長を有する光信号を入力すると、光波長合分波器11は、一方の第1光導波路21から、合波された一定の波長間隔を有する光信号を出力することができる。また、第2スラブ導波路25の中間点に形成された第2光導波路26に単一の波長を有する光信号を入力すると、光波長合分波器11は、他方の第1光導波路21から、合波された一定の波長間隔を有する光信号を出力することができる。従って、2系統の光通信網を伝搬する光信号をそれぞれ合波することができる光波長合分波器を提供することができる。
【0062】
なお、図5は、本願発明に係る光波長合分波器と従来の光波長合分波器の中心波長の差を示した図である。図5は、縦軸が中心波長差、横軸が試作台数である。図5において、中心波長の差の絶対値の平均は、本願発明に係る光波長合分波器が0.0012ナノメートルであり、従来の光波長合分波器が0.044ナノメートルである。また、中心波長の差の標準偏差は、本願発明に係る光波長合分波器が0.004ナノメートルであり、従来の光波長合分波器が0.057ナノメートルである。よって、本願発明に係る光波長合分波器は、従来の光波長合分波器に比べ、中心波長の差のばらつきを1/10程度に低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の光波長合分波器は、光分合波器や光スイッチ等の光学部品として光ファイバー通信網で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本願第1の発明の一の実施形態に係る光波長合分波器の概念図である。
【図2】図1における、第1光導波路と第1スラブ導波路との接続箇所の拡大図である。
【図3】図1における、第2スラブ導波路と第2光導波路との接続箇所の拡大図である。
【図4】本願第2の発明の一の実施形態に係る光波長合分波器の概念図である。
【図5】本願の発明に係る光波長合分波器と従来の光波長合分波器との中心波長の差を示した図である。
【図6】従来の光波長合分波器の概念図である。
【図7】従来の別の光波長合分波器の概念図である。
【図8】エッチング工程における基板の断面図である。
【図9】オーバークラッド層を積層した後の基板の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10、11、90、91 光波長合分波器
21 第1光導波路
22 第1スラブ導波路
23 チャネル導波路
24、24a、24b アレイ導波路
25 第2スラブ導波路
26 第2光導波路
40 第1光導波路の距離
41 第1スラブ導波路の中心軸の延長線
42 第2光導波路の距離
92a 第1チップ
92b 第2チップ
93 チップ
94 パッケージ
95 光源
96 基板
97a アンダークラッド層
97b オーバークラッド層
98a パターン
98b パターン
99 フォトレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたクラッド層と前記クラッド層に囲まれ前記クラッド層より高い屈折率のコアとを有し、前記コアのパターンとして、
複数の波長の光信号を伝搬する2本の第1光導波路と、
前記第1光導波路の一方の端に接続し、光信号を回折する第1スラブ導波路と、
一定の光導波路長差を有し、一方の端が前記第1スラブ導波路の前記第1光導波路が位置する側と対向する側に接続する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、
前記アレイ導波路の他方の端に接続し、光信号を回折する第2スラブ導波路と、
前記第2スラブ導波路の前記アレイ導波路が位置する側と対向する側に接続し、光信号を伝搬する複数の第2光導波路と、が形成された光波長合分波器であって、
前記2本の第1光導波路は、(0.5+N)に所定の長さを乗じた距離で隣接し、前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線は、前記2本の第1光導波路の中間点を通過し、前記複数の第2光導波路は、前記所定の長さの半分の距離で隣接することを特徴とする光波長合分波器(但し、Nは零又は任意の自然数。)。
【請求項2】
基板上に形成されたクラッド層と前記クラッド層に囲まれ前記クラッド層より高い屈折率のコアとを有し、前記コアのパターンとして、
一定の波長間隔を有する光信号を伝搬する2本の第1光導波路と、
前記第1光導波路の一方の端に接続し、光信号を回折する第1スラブ導波路と、
一定の光導波路長差を有し、一方の端が前記第1スラブ導波路の前記第1光導波路が位置する側と対向する側に接続する複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、
前記アレイ導波路の他方の端に接続し、光信号を回折する第2スラブ導波路と、
前記第2スラブ導波路の前記アレイ導波路が位置する側と対向する側に接続し、それぞれが単一の波長の光信号を伝搬する複数の第2光導波路と、が形成された光波長合分波器であって、
前記第2光導波路は、一方の前記第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記第2スラブ導波路の前記第2光導波路が接続する面に結合する結合点の一部又は全部及び前記第2スラブ導波路の前記結合点の中間となる中間点の一部又は全部に形成され、前記一方の第1光導波路及び他方の前記第1光導波路は、前記一方の第1光導波路及び前記他方の第1光導波路の中間点を前記第1スラブ導波路の中心軸の延長線が通過し、前記一方の第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記結合点の一部又は全部に形成された前記第2光導波路に結合し、前記他の第1光導波路を伝搬する前記光信号が前記中間点の一部又は全部に形成された前記第2光導波路に結合するように形成されることを特徴とする光波長合分波器。
【請求項3】
前記一方の第1光導波路は、前記一定の波長間隔を有する前記光信号が入力され、前記第2スラブ導波路の前記結合点に形成された前記第2光導波路は、分波された前記単一の波長を有する前記光信号をそれぞれ出力し、前記他方の第1光導波路は、前記一定の波長間隔を有する前記光信号が入力され、前記第2スラブ導波路の前記中間点に形成された前記第2光導波路は、分波された前記単一の波長を有する前記光信号をそれぞれ出力することを特徴とする請求項2に記載の光波長合分波器。
【請求項4】
前記第2スラブ導波路の前記結合点に形成された前記第2光導波路は、前記単一の波長を有する前記光信号がそれぞれ入力され、前記一方の第1光導波路は、合波された前記一定の波長間隔を有する前記光信号を出力し、前記他方の第1光導波路は、前記一定の波長間隔を有する前記光信号が入力され、前記第2スラブ導波路の前記中間点に形成された前記第2光導波路は、分波された前記単一の波長を有する前記光信号をそれぞれ出力することを特徴とする請求項2に記載の光波長合分波器。
【請求項5】
前記第2スラブ導波路の前記結合点に形成された前記第2光導波路は、前記単一の波長を有する前記光信号がそれぞれ入力され、前記一方の第1光導波路は、合波された前記一定の波長間隔を有する前記光信号を出力し、前記第2スラブ導波路の前記中間点に形成された前記第2光導波路は、前記単一の波長を有する前記光信号がそれぞれ入力され、前記他方の第1光導波路は、合波された前記一定の波長間隔を有する前記光信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の光波長合分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−94063(P2007−94063A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283952(P2005−283952)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】